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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/32 20180101AFI20231108BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20231108BHJP
【FI】
F24F11/32
F24F11/89
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019204623
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021076333
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】二渡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 陽介
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161489(JP,A)
【文献】特開2009-264598(JP,A)
【文献】特開2013-096657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の情報通信技術用機器が設置されたサーバ室に適用される空調システムにおいて、
前記サーバ室内の複数箇所それぞれに設けられ、各箇所で当該サーバ室の空気温度を検出する複数の温度センサと、
前記サーバ室内に空調風を供給する複数の空調機であって、複数の前記温度センサのうち少なくとも1つの温度センサの検出温度を利用して空調能力を制御可能な複数の空調機と、
複数の前記温度センサそれぞれが検出した検出温度のうちいずれかの検出温度を、複数の前記空調機のいずれかで利用可能とするセンサ利用判断部とを備え、
複数の前記空調機のうち必要な空調能力が発生していない1つ又は複数の空調機を異常空調機とし、複数の前記空調機のうち異常空調機以外の1つ又は複数の空調機を正常空調機としたとき、
前記センサ利用判断部は、
異常空調機の有無を判断する第1機能、及び
異常空調機が利用していた検出温度を正常空調機においても利用可能な状態とする第2機能を発揮可能であり、
異常空調機が利用していた検出温度(以下、異常温度という。)を利用する正常空調機を利用空調機とし、複数の前記空調機それぞれが必要な空調能力が発生している状態を通常時としたとき、
利用空調機は、「異常温度と予め決められた温度(以下、設定温度という。)との温度差」及び「当該利用空調機が通常時に利用していた検出温度と設定温度との温度差」を利用して空調能力を制御する空調システム。
【請求項2】
正常空調機が発生している空調能力が、異常空調機が発生する前に比べて、予め決められ範囲を越えて変化した1つ又は複数の正常空調機を関連空調機とし、当該変化した空調能力を変化量としたとき、
前記第2機能の実行時に関連空調機が複数ある場合には、前記センサ利用判断部は、前記変化量を利用して利用空調機を決定することが可能である請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記センサ利用判断部は、前記変化量が最も大きい関連空調機を利用空調機とする請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記センサ利用判断部は、異常空調機があると判断した後、予め決められた時間が経過したときに、利用空調機を決定する請求項2又は3に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の空調機を備える空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の空調システムでは、複数の温度センサのいずれかと複数の空調機のいずれかとを対応付けて各空調機を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-64375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の空調システムでは、例えば、いずれかの空調機がサーモオフ又は手動操作や故障により運転停止し、又は空調能力が低下したことにより、当該空調機において必要な空調能力が発生していない状態になった場合は、当該空調機が担当する空調エリアが、事実上、無監視状態になってしまう。なお、空調エリアとは、当該空調機により空気温度等が監視・調整される空間をいう。
【0005】
本開示は、上記点に鑑み、いずれかの空調エリアが、事実上、無監視状態になってしまうことを抑制可能な空調システムの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
複数の情報通信技術用機器()が設置されたサーバ室に適用される空調システムは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、サーバ室(SR)内の複数箇所それぞれに設けられ、各箇所で当該サーバ室(SR)の空気温度を検出する複数の温度センサ(S1~S5)と、サーバ室(SR)内に空調風を供給する複数の空調機(51~54)であって、複数の温度センサ(S1~S5)のうち少なくとも1つの温度センサ(S1~S5)の検出温度を利用して空調能力を制御可能な複数の空調機(51~54)と、複数の温度センサ(S1~S5)それぞれが検出した検出温度(Td)のうちいずれかの検出温度を、複数の空調機(51~54)のいずれかで利用可能とするセンサ利用判断部(7)であって、異常空調機の有無を判断する第1機能、及び異常空調機が利用していた検出温度を正常空調機においても利用可能な状態とする第2機能を発揮可能なセンサ利用判断部(7)とである。
【0007】
なお、異常空調機は、複数の空調機(51~54)のうち必要な空調能力が発生していない1つ又は複数の空調機であり、正常空調機は、複数の空調機(51~54)のうち異常空調機以外の1つ又は複数の空調機である。
【0008】
これにより、当該空調システムでは、異常空調機において必要な空調能力が発生していない状態になった場合には、当該異常空調機が担当する空調エリアは、正常空調機にて監視・調整可能な状態となり得る。
【0009】
したがって、いずれかの空調機がサーモオフ又は手動や故障により運転停止し、又は空調能力が低下したことにより、当該空調機において必要な空調能力が発生していない状態になった場合であっても、当該空調機が担当する空調エリアが、事実上、無監視状態になってしまうことが抑制され得る。
【0010】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る空調システムを示す図である。
図2】第1実施形態に係る空調システムを示す図である。
図3】第1実施形態に係る関連付け処理を示す図である。
図4】第1実施形態に係る利用空調機決定処理を示す図である。
図5】第2実施形態に係る空調システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0013】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された空調システムは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素を備える。
【0014】
(第1実施形態)
<1.空調システムの概要>
本実施形態は、サーバ室に適用される空調システムに本開示に係る空調システムの一例が適用されたものである。サーバ室SR内には、複数の空調機51~54(図1参照)及び複数のラック3A~3D(図2参照)が設置されている。
【0015】
各空調機51~54は、サーバ室SR内に空調風(本実施形態では、冷風)を供給する。なお、複数の空調機51~54それぞれは、図2に示されるように、サーバ室SRの床下から当該サーバ室SR内に冷風を供給する。
【0016】
複数のラック3A~3Dそれぞれは、少なくとも1つの情報通信技術用機器(図示せず。)が搭載される棚である。つまり、サーバ室SRには、複数の情報通信技術用機器(以下、ICT機器という。)が設置されている。各ICT装置は、少なくとも情報処理を実行する情報処理ユニット(例えば、CPUやGPU等)を有する。
【0017】
各ICT機器は、情報処理を実行する際に発熱する。このため、各空調機51~54は、ICT機器(情報処理ユニット)の温度を予め決められた温度範囲に維持すべく、冷風をサーバ室SR内に供給する。
【0018】
複数のラック3A~3Dは、列状に配置されてラック列を構成している。本実施形態では、図1に示されるように、サーバ室SR内には、少なくとも1つ(本実施形態では、複数)のラック列R1~R5が構成されている。
【0019】
各ラック列R1~R5を挟んで一方側の空間(以下、コールドアイルCiという。)には、冷風が供給される。各ICT機器を冷却して温度が上昇した空気は、各ラック列R1~R5を挟んで他方側の空間(以下、ホットアイルHiという。)に排出される。
【0020】
各コールドアイルCiと各ホットアイルHiとは、仕切部材(図示せず。)にて仕切られている。このため、各コールドアイルCiに供給された冷風は、ラック3A~3Dのいずれかを流通していずれかのホットアイルHiに流れ込む。
【0021】
各ホットアイルHi内の空気は、いずれかの空調機51~54に吸引されて冷却される。本実施形態では、各ホットアイルHi内の空気は、サーバ室SRの天井側空間を経由していずれかの空調機51~54に吸引される。
【0022】
<2.空調システムの詳細>
<2.1 各空調機の構成及び作動>
<各空調機の構成>
各空調機51~54は、図2に示されるように、冷却器5A、送風機5B及び制御部5C等を少なくとも有する。冷却器5Aは、空気を冷却するための熱交換器である。送風機5Bは、サーバ室SR内から空気を吸引するとともに、冷却器5Aを通過した空気を当該サーバ室SRに供給する。
【0023】
<各空調機の作動>
制御部5Cは、冷却器5Aで発生させる冷却能力、及び送風機5Bの送風量のうち少なくとも一方(以下、空調能力という。)を制御する。本実施形態に係る制御部5Cは、複数の温度センサS1~S5(図1参照)のうち当該制御部5Cに関連付けられた温度センサの検出温度が目標とする温度(以下、設定温度という。)となるように空調能力を変更制御する。
【0024】
すなわち、図1に示されるように、サーバ室SR内には、複数の温度センサS1~S5が配置されている。各温度センサS1~S5は、サーバ室SR内の複数箇所それぞれに設けられて当該箇所でサーバ室SRの空気温度を検出する。
【0025】
本実施形態では、複数の温度センサS1~S5それぞれは、いずれかのコールドアイルCi内に配置されている。つまり、本実施形態に係る設定温度は、目標とする「コールドアイルCi内の空気温度」である。
【0026】
そして、各空調機51~54の制御部5Cは、当該制御部5Cに関連付けられた温度センサの検出温度を利用して空調能力を制御する。具体的には、各空調機51~54は、検出温度と設定温度との差の絶対値が小さくなるように、空調能力を変更制御する。
【0027】
すなわち、温度センサS1は空調機51の制御部5Cに関連付けられている。温度センサS2は空調機52の制御部5Cに関連付けられている。温度センサS3、S4は空調機53の制御部5Cに関連付けられている。温度センサS5は空調機55の制御部5Cに関連付けられている。
【0028】
例えば、温度センサS1の検出温度が設定温度より高い場合には、空調機51の制御部5Cは、空調能力を現時の空調能力より大きくする。温度センサS1の検出温度が設定温度より低い場合には、空調機51の制御部5Cは、空調能力を現時の空調能力より小さくする。
【0029】
他の空調機52~54の作動も空調機51と同じである。なお、空調機53は、|温度センサS3の検出温度-設定温度|と|温度センサS4の検出温度-設定温度|とのうち大きい方を利用して空調能力を制御する。
【0030】
設定温度は、各温度センサS1~S5、つまりサーバ室SR内の複数箇所毎に予め決められた温度である。したがって、各制御部5Cは、「(1)関連付けられた温度センサについての設定温度Ts」及び「(2)当該温度センサの検出温度Td」を利用して空調能力を制御する。
【0031】
以下、温度センサSn(但し、n=1、2、3、4、5)についての設定温度Tsを設定温度Tsn(但し、n=1、2、3、4、5)と記す。なお、以下の説明は、理解を容易にする観点から、全ての設定温度Tsnを同一であるとしている。さらに、温度センサSnの検出温度Tdを検出温度Tdn(但し、n=1、2、3、4、5)と記し、空調機5n(但し、n=1、2、3、4)の制御部5Cを制御部5Cnと記す。
【0032】
<2.2 関連付け変更処理>
<関連付け変更処理の概要>
複数の温度センサS1~S5のいずれかと複数の空調機51~54のいずれかとの関連付けは、通常時においては、予め決められた対応関係、つまり上記の関連付けである。そして、空調システムは、非常時に関連付け変更処理を実行する。
【0033】
なお、「通常時」とは、各空調機5nが必要な空調能力発生している状態をいう。必要な空調能力とは、検出温度Tdnを設定温度Tsnに近づけるために必要な空調能力をいう。
【0034】
「非常時」とは、例えば、いずれかの空調機5nがサーモオフ又は手動操作や故障により運転停止し、又は空調能力が低下したことにより、当該空調機において必要な空調能力が発生していない状態をいう。
【0035】
以下、複数の空調機5nのうち必要な空調能力が発生していない1つ又は複数の空調機を異常空調機という。複数の空調機5nのうち異常空調機以外の1つ又は複数の空調機を正常空調機という。
【0036】
関連付け変更処理においては、異常空調機が利用していた検出温度Td(以下、異常温度Teという。)が正常空調機においても利用可能な状態となる。以下、異常温度Teが利用可能となった正常空調機を利用空調機という。
【0037】
つまり、異常空調機が発生すると、利用空調機は、|異常温度Te-設定温度Ts|を利用して空調能力を制御することができる。具体的には、制御部5Cは、少なくとも2つの温度差のうちいずれか大きい方の温度差が小さくなるように、空調能力を制御する。
【0038】
2つの温度差のうち第1の温度差は、|異常温度Te-設定温度Ts|である。2つの温度差のうち第2の温度差は、|検出温度Td-設定温度Ts|である。なお、当該検出温度Tdは、利用空調機が通常時に利用していた検出温度Tdである。
【0039】
したがって、例えば、空調機51が異常空調機となり、空調機52が利用空調機となった場合、制御部5C2は、|検出温度Td1(異常温度Te)-設定温度Ts1|及び|検出温度Td2-設定温度Ts2|のうちいずれか大きい方の温度差が小さくなるように、空調能力を制御する。
【0040】
なお、制御部5Cは、2つの温度差のうちいずれか大きい方の温度差が小さくなるように空調能力を制御するので、上記「第2の温度差」が小さくなるように空調能力が制御される場合もあり得る。
【0041】
しかし、本実施形態に係る空調システムでは、全ての設定温度Tsが同一であり、かつ、異常空調機からの冷風供給が停止又は減少しているので、多くの場合、第1の温度差が第2の温度差より大きくなるので、多くの場合、制御部5Cは、第1の温度差が小さくなるように空調能力を制御する。
【0042】
本実施形態に係る空調システムでは、統合制御部7にて関連付け変更処理が実行される。統合制御部7は、ROM、RAM及びCPU等を有するマイクロコンピュータにて構成されている。
【0043】
なお、関連付け変更処理を実行するためのプログラムは、統合制御部7に設けられたフラッシュメモリ等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。統合制御部7には、検出温度Tdn及び空調機5nの作動状態を示す信号等が少なくとも入力されている。統合制御部7は、空調機5nの作動状態を示す信号を利用して正常時であるか非常時であるかを判断する。
【0044】
<関連付け変更処理の詳細>
統合制御部7は、異常空調が少なくとも1つ発生し、空調システムが非常時となったと判断したときに、関連付け変更処理を実行する。すなわち、図3に示されるように、統合制御部7は、異常空調機があると判断した後、予め決められた時間が経過したときに(S1:YES)、利用空調機を決定する(S3)。なお、(S1)及び(S3)は、図3に示された制御ステップ番号を示す。
【0045】
S3において、統合制御部7は、正常空調機が1つの場合は、その1つの正常空調機を利用空調機とする。統合制御部7は、正常空調機が複数ある場合には、利用空調機決定処理を実行して1つの利用空調を決定する。
【0046】
外部制御装置9は、異常空調機が複数ある場合には、各異常空調機について関連付け変更処理を実行する。このとき、1つ正常空調機が複数の異常温度Teを利用する状態になった場合には、当該正常空調機は、最も大きい「設定温度との温度差」が小さくなるように空調能力を制御する。
【0047】
なお、統合制御部7は、異常空調機が発生した場合には、その旨を空調システムの管理者に報知する。そして、異常空調機が消滅したことを管理者が統合制御部7に入力したきに、統合制御部7は、空調システムを通常時に復帰させる。
【0048】
<利用空調機決定処理>
利用空調機決定処理は、複数の正常空調機のうち、異常空調機が担当する空調エリア(以下、異常エリアという。)との関連性が大きい正常空調機を利用空調機とするための処理である。
【0049】
すなわち、異常空調機が発生すると、異常エリアへの空調風の供給が停止又は減少するので、異常エリアの空気温度が上昇する。当該異常エリアの空気温度が上昇すると、正常空調機が担当する空調エリア(以下、正常エリアという。)の空気温度も上昇する可能性が高い。
【0050】
そして、正常エリアの検出温度Tdが上昇すると、このため、当該正常エリアを担当している正常空調機は、検出温度Tdの上昇に応じて空調能力を増大させる。
そこで、本実施形態に係る統合制御部7は、異常空調機が発生した後に、空調能力が最も大きく増大した正常空調機を最も関連性が大きい正常空調機とみなして、当該正常空調機を利用空調機とする。
【0051】
具体的には、統合制御部7は、図4に示されるように、各正常空調機の変化量を取得した後(S5)、変化量が最も大きい関連空調機を利用空調機とする(S7)。なお、(S5)及び(S7)は、図4に示された制御ステップ番号を示す。
【0052】
なお、関連空調機とは、正常空調機が発生している空調能力が、異常空調機が発生する前に比べて、予め決められ範囲を越えて変化した1つ又は複数の正常空調機をいう。変化量とは、当該変化した空調能力をいう。
【0053】
つまり、統合制御部7は、変化量を関連性の大きさを示すパラメータとして利用空調機を決定する。なお、本実施形態に係る統合制御部7は、温度センサSnの検出温度を利用して空調能力を把握する。
【0054】
具体的には、統合制御部7は、異常空調機が発生する前に比べて、最も大きく検出温度Tdが上昇した温度センサSnが、正常時に関連付けられていた正常空調機(関連空調機)を利用空調機とする。
【0055】
<3.本実施形態に係る空調システムの特徴>
本実施形態に係る空調システムでは、異常空調機において必要な空調能力が発生していない状態になった場合には、当該異常空調機が担当する空調エリア、つまり異常エリアは、正常空調機にて監視・調整可能な状態となり得る。
【0056】
したがって、いずれかの空調機がサーモオフ又は手動や故障により運転停止等したことにより、当該空調機において必要な空調能力が発生していない状態になった場合であっても、異常エリアが、事実上、無監視状態になってしまうことが抑制され得る。
【0057】
本実施形態に係る空調システムは、空調能力の変化量を利用して利用空調機を決定する。これにより、異常エリアとの関連性が大きい正常空調機が利用空調機とされるので、異常エリアが効果的、かつ、適切に監視・調整され得る。
【0058】
本実施形態に係る空調システムは、異常空調機があると判断した後、予め決められた時間が経過したときに、利用空調機を決定する。これにより、異常エリアとの関連性が大きい正常空調機が確実に選定され得る。
【0059】
つまり、異常空調機が発生した直後では、正常エリアの検出温度Tdが異常エリアの影響を受けて変化していない可能性が高い。しかし、異常空調機の発生後、所定時間が経過したときであれば、異常エリアの影響を受けて正常エリアの検出温度Tdが変化している可能性が高い。
【0060】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係る統合制御部7は、温度センサS1~S5の検出温度Tdを利用して空調能力を把握した。これに対して、本実施形態に係る統合制御部7は、吸込温度センサの検出温度を利用して空調能力を把握する。
【0061】
すなわち、図5に示されるように、空調システムは、空調機51~54それぞれに吸い込まれた空気の温度を検出する複数の吸込温度センサSSn(但し、n=1、2、3、4)を備えている。
【0062】
各吸込温度センサSSnの検出温度は統合制御部7に入力されている。そして、統合制御部7は、異常空調機が発生した場合には、当該検出温度が最も上昇した吸込温度センサSSnに関連付けられた空調機を異常エリアとの関連性が大きい正常空調機とみなして、当該空調機を利用空調機とする。
【0063】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
(第3実施形態)
上述の実施形態に係る統合制御部7は、空調能力の変化量を利用して利用空調機を決定した。これに対して、本実施形態に係る統合制御部7は、予め決められた対応関係に従って利用空調機を決定する。
【0064】
すなわち、統合制御部7又は不揮発性記憶部(図示せず。)には、異常空調機が発生した場合に備えて、異常空調機と利用空調機との対応関係が予め決め記憶されている。そして、統合制御部7は、当該記憶されている対応関係に従って利用空調機を決定する。
【0065】
なお、対応関係とは、例えば、(a)空調機51が異常空調機となった場合には空調機52を利用空調機とし、(b)空調機54が異常空調機となった場合には空調機53を利用空調機とする等を主たる内容とするものである。
【0066】
(第4実施形態)
上述の実施形態に係る統合制御部7は、空調能力の変化量を利用して利用空調機を決定した。これに対して、本実施形態に係る統合制御部7は、異常エリアとの距離が最も小さい正常空調機にて異常空調機が利用していた検出温度を利用可能とする。
【0067】
すなわち、複数の温度センサS1~S5のうち異常空調機が利用していた温度センサを異常センサとしたとき、統合制御部7は、異常センサから正常空調機までの距離を把握することが可能性である。
【0068】
そして、統合制御部7は、異常エリアとの距離が最も小さい正常空調機にて異常センサの検出温度を利用可能とする。なお、本実施形態では、異常エリアとの距離を把握する手法は不問である。
【0069】
因みに、統合制御部7は、例えば、各温度センサS1~S5と各空調機51~54との距離が予め記憶されている場合には、当該記憶されている距離を利用して異常エリアとの距離を把握する。
【0070】
また、例えば、各温度センサS1~S5に無線発信機が設けられている場合には、統合制御部7は、当該無線発信機を利用して異常エリアとの距離を把握することも可能である。
【0071】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、異常センサの検出温度Tdが利用空調機の空調能力制御に用いる検出温度Tdとして利用可能とする構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0072】
すなわち、当該開示は、例えば、統合制御部7が異常センサの検出温度Tdに応じて利用空調機の空調能力制御に用いる設定温度Tsを変更する構成であってもよい。なお、この場合、設定温度Tsを小さくように変更することが望ましい。
【0073】
第1及び第2実施形態では、空調能力の変化量が最も大きい関連空調機を利用空調機とした。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、空調能力の変化量が予め決められた値よりも大きい関連空調機を利用空調機としてもよい。なお、この場合、複数の空調機が利用空調機となる場合があり得る。
【0074】
上述の実施形態に係る空調機は、|異常温度Te-設定温度Ts|と|検出温度Td-設定温度Ts|とのうち大きい値を用いて空調能力を制御した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、(異常温度Te-設定温度Ts)と(検出温度Td-設定温度Ts)とのうち大きい値を用いて空調能力が制御される構成であってもよい。
【0075】
上述の実施形態では、1つの異常空調機が発生する例であった。しかし、本開示の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、複数の異常空調機が発生する場合にも適用可能である。なお、複数の異常空調機が発生した場合には、最も温度上昇が大きい異常センサの検出温度Tdが利用可能となる構成が望ましい。
【0076】
上述の実施形態では、例えば、温度センサS1は1つの温度センサにて構成され、1つの検出温度を出力する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
すなわち、当該開示は、例えば、ラック列R1のコールドアイルCiにおいて、複数箇所それぞれに配置された複数の温度センサにて温度センサS1が構成されていてもよい。この場合には、温度センサS1を構成する複数の温度センサのうち最も温度高い温度センサの検出温度を温度センサS1の検出温度Tdとすることが望ましい。
【0077】
上述の実施形態では、全ての設定温度Tsが同一であった。しかし、本開示の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、設定温度Tsが空調エリアn(温度センサSnが担当する範囲)毎に異なる空調システムにも適用可能である。
【0078】
上述の実施形態に係る空調システムは、3つ以上の空調機を備える構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、2つの空調機を備える空調システムにもて適用可能である。なお、この場合は、利用空調機決定処理は実質的に不要である。
【0079】
上述の実施形態に係る空調システムでは、統合制御部7にて関連付け変更処理及び利用空調機決定処理が実行される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、関連付け変更処理及び利用空調機決定処理のうち少なくとも一方の処理が空調機51~54のいずれかで実行可能な構成であってもよい。
【0080】
上述の実施形態に係る設定温度は、目標とする「コールドアイルCi内の空気温度」であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、目標とする「ホットアイルHi内の空気温度」を設定温度とする空調システムであってもよい。
【0081】
第2実施形態に係る統合制御部7は、吸込温度センサの検出温度 を利用して空調能力を把握した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、冷却器5Aで発生している冷却能力(例えば、圧縮機の回転数)や送風機5Bの送風量(送風用モータの回転数)等を利用して空調能力を把握してもよい。
【0082】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0083】
51~54… 空調機 7… 統合制御部 S1~S5… 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5