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特許7381301学習済みモデルの生成方法、学習済みモデルの生成システム、推論装置、およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】学習済みモデルの生成方法、学習済みモデルの生成システム、推論装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20231108BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20231108BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20231108BHJP
【FI】
A61B5/0245 200
A61B5/0245 100D
A61B5/0245 100B
A61B5/08
G06N20/00 130
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019206134
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021078538
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松沢 航
(72)【発明者】
【氏名】佐野 宙人
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/186955(WO,A1)
【文献】特開2010-187993(JP,A)
【文献】特開2016-122269(JP,A)
【文献】特開2019-005220(JP,A)
【文献】特開2014-041426(JP,A)
【文献】特開2017-146635(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167556(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0180841(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/0538
A61B 5/06-5/398
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより実行される、被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルの生成方法であって、
実際に被検者から取得された波形データまたは生体情報モニタの性能評価用にデータベースとして公開されている波形データから正しく算出された生体パラメータの値に対応する第一データを取得するステップと、
入力された波形データから取得される前記生体パラメータの値を自動的に算出して第二データとして出力するアルゴリズムへ、前記波形データを入力するステップと、
前記第二データを前記第一データと照合することにより、当該第二データに対応する前記生体パラメータの値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む第三データを生成するステップと、
記波形データと前記第三データを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデルを生成するステップと、
を含んでいる、
学習済みモデルの生成方法。
【請求項2】
記波形データは、心電図波形データであり、
記生体パラメータは、心拍数である、
請求項に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項3】
コンピュータにより実行される、被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルの生成方法であって、
第一波形データから正しく算出された第一生体パラメータの値に対応する第一データを取得するステップと、
入力された波形データから取得される第二生体パラメータの値を自動的に算出して第二データとして出力するアルゴリズムへ、第二波形データを入力するステップと、
前記第二データを前記第一データと照合することにより、当該第二データに対応する前記第二生体パラメータの値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む第三データを生成するステップと、
前記第二波形データと前記第三データを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデルを生成するステップと、
を含んでいる、
前記第一波形データと前記第二波形データは、同一の被検者から取得されるものであり、
前記第一生体パラメータの種別と前記第二生体パラメータの種別は、相違している
習済みモデルの生成方法。
【請求項4】
前記第一波形データは、心電図波形データであり、
前記第二波形データは、観血的動脈圧波形データであり、
前記第一生体パラメータは、心拍数であり、
前記第二生体パラメータは、脈拍数である、
請求項に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項5】
コンピュータにより実行される、被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルの生成方法であって、
第一波形データから正しく算出された第一生体パラメータの値に対応する第一データを取得するステップと、
入力された波形データから取得される第二生体パラメータの値を自動的に算出して第二データとして出力するアルゴリズムへ、第二波形データを入力するステップと、
前記第二データを前記第一データと照合することにより、当該第二データに対応する前記第二生体パラメータの値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む第三データを生成するステップと、
前記第二波形データと前記第三データを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデルを生成するステップと、
を含んでおり、
前記第一波形データと前記第二波形データは、同一の被検者から相違する手法により取得されるものであり、
前記第一生体パラメータの種別と前記第二生体パラメータの種別は、同一である
習済みモデルの生成方法。
【請求項6】
前記第一波形データは、カプノグラム波形データであり、
前記第二波形データは、インピーダンス呼吸波形データであり、
前記第一生体パラメータと前記第二生体パラメータは、呼吸数である、
請求項に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項7】
被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルを生成するシステムであって、
教師データ生成装置と、
学習済みモデル生成装置と、
を備えており、
前記教師データ生成装置は、
実際に被検者から取得された波形データまたは生体情報モニタの性能評価用にデータベースとして公開されている波形データから正しく算出された生体パラメータの値に対応する第一データと、入力された波形データから取得される当該生体パラメータの値を自動的に算出して第二データとして出力するアルゴリズムに当該波形データを入力することにより算出された当該第二データとを受け付ける第一入力インターフェースと、
前記第二データを前記第一データと照合することにより、当該第二データに対応する前記生体パラメータの値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む第三データを生成する第一プロセッサと、
前記第三データを出力する出力インターフェースと、
を備えており、
前記学習済みモデル生成装置は、
記波形データと前記第三データを受け付ける第二入力インターフェースと、
記波形データと前記第三データを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデルを生成する第二プロセッサと、
を備えている、
学習済みモデルの生成システム。
【請求項8】
被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルを生成するシステムであって、
教師データ生成装置と、
学習済みモデル生成装置と、
を備えており、
前記教師データ生成装置は、
第一波形データから正しく算出された第一生体パラメータの値に対応する第一データと、入力された波形データから取得される第二生体パラメータの値を自動的に算出して第二データとして出力するアルゴリズムに第二波形データを入力することにより算出された当該第二データとを受け付ける第一入力インターフェースと、
前記第二データを前記第一データと照合することにより、当該第二データに対応する前記第二生体パラメータの値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む第三データを生成する第一プロセッサと、
前記第三データを出力する出力インターフェースと、
を備えており、
前記学習済みモデル生成装置は、
前記第二波形データと前記第三データを受け付ける第二入力インターフェースと、
前記第二波形データと前記第三データを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデルを生成する第二プロセッサと、
を備えており、
前記第一波形データと前記第二波形データは、同一の被検者から取得されるものであり、
前記第一生体パラメータの種別と前記第二生体パラメータの種別は、相違している、
学習済みモデルの生成システム。
【請求項9】
被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルを生成するシステムであって、
教師データ生成装置と、
学習済みモデル生成装置と、
を備えており、
前記教師データ生成装置は、
第一波形データから正しく算出された第一生体パラメータの値に対応する第一データと、入力された波形データから取得される第二生体パラメータの値を自動的に算出して第二データとして出力するアルゴリズムに第二波形データを入力することにより算出された当該第二データとを受け付ける第一入力インターフェースと、
前記第二データを前記第一データと照合することにより、当該第二データに対応する前記第二生体パラメータの値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む第三データを生成する第一プロセッサと、
前記第三データを出力する出力インターフェースと、
を備えており、
前記学習済みモデル生成装置は、
前記第二波形データと前記第三データを受け付ける第二入力インターフェースと、
前記第二波形データと前記第三データを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデルを生成する第二プロセッサと、
を備えており、
前記第一波形データと前記第二波形データは、同一の被検者から相違する手法により取得されるものであり、
前記第一生体パラメータの種別と前記第二生体パラメータの種別は、同一である、
学習済みモデルの生成システム。
【請求項10】
教師データ生成装置と学習済みモデル生成装置を含むシステムにおいて実行されるコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、
前記教師データ生成装置に、
実際に被検者から取得された波形データまたは生体情報モニタの性能評価用にデータベースとして公開されている波形データから正しく算出された生体パラメータの値に対応する第一データと、入力された波形データから取得される当該生体パラメータの値を自動的に算出して第二データとして出力するアルゴリズムに当該波形データを入力することにより取得された当該第二データとを受け付けさせ、
前記第二データを前記第一データと照合することにより、当該第二データに対応する前記生体パラメータの値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む第三データを生成させ、
前記第三データを出力させ、
前記学習済みモデル生成装置に、
記波形データと前記第三データを受け付けさせ、
記波形データと前記第三データを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルを生成させる、コンピュータプログラム。
【請求項11】
教師データ生成装置と学習済みモデル生成装置を含むシステムにおいて実行されるコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、
前記教師データ生成装置に、
第一波形データから正しく算出された第一生体パラメータの値に対応する第一データと、入力された波形データから取得される第二生体パラメータの値を自動的に算出して第二データとして出力するアルゴリズムに第二波形データを入力することにより取得された当該第二データとを受け付けさせ、
前記第二データを前記第一データと照合することにより、当該第二データに対応する前記第二生体パラメータの値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む第三データを生成させ、
前記第三データを出力させ、
前記学習済みモデル生成装置に、
前記第二波形データと前記第三データを受け付けさせ、
前記第二波形データと前記第三データを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルを生成させ、
前記第一波形データと前記第二波形データは、同一の被検者から取得されるものであり、
前記第一生体パラメータの種別と前記第二生体パラメータの種別は、相違している、
コンピュータプログラム。
【請求項12】
教師データ生成装置と学習済みモデル生成装置を含むシステムにおいて実行されるコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、
前記教師データ生成装置に、
第一波形データから正しく算出された第一生体パラメータの値に対応する第一データと、入力された波形データから取得される第二生体パラメータの値を自動的に算出して第二データとして出力するアルゴリズムに第二波形データを入力することにより取得された当該第二データとを受け付けさせ、
前記第二データを前記第一データと照合することにより、当該第二データに対応する前記第二生体パラメータの値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む第三データを生成させ、
前記第三データを出力させ、
前記学習済みモデル生成装置に、
前記第二波形データと前記第三データを受け付けさせ、
前記第二波形データと前記第三データを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルを生成させ、
前記第一波形データと前記第二波形データは、同一の被検者から相違する手法により取得されるものであり、
前記第一生体パラメータの種別と前記第二生体パラメータの種別は、同一である、
コンピュータプログラム。
【請求項13】
被検者から取得された波形データを受け付ける入力インターフェースと、
前記波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率に対応する推論データを生成するプロセッサと、
前記推論データを出力する出力インターフェースと、
を備えており、
前記プロセッサは、請求項1からのいずれか一項に記載の学習済みモデルの生成方法により生成された学習済みモデルを用いて前記推論データを生成する、
推論装置。
【請求項14】
前記波形データに基づいて自動的に算出された前記所定の生体パラメータの値を出力データとして出力するアルゴリズムを実行するデータ処理装置を備えており、
前記データ処理装置は、前記出力データに対して前記推論データに基づく処理を適用する、
請求項13に記載の推論装置。
【請求項15】
前記所定の生体パラメータの種別は、前記学習済みモデルの生成に用いられた生体パラメータの種別と同一である、
請求項13または14に記載の推論装置。
【請求項16】
前記所定の生体パラメータの種別は、前記学習済みモデルの生成に用いられた生体パラメータの種別と異なっている、
請求項13または14に記載の推論装置。
【請求項17】
被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置によって実行されるコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記推論装置に、
被検者から取得された波形データを受け付けさせ、
請求項1からのいずれか一項に記載の学習済みモデルの生成方法によって生成された学習済みモデルに前記波形データを入力させ、
前記学習済みモデルからの出力に基づいて、前記確率に対応する推論データを生成させ、
前記推論データを出力させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルを生成する方法、および当該学習済みモデルを生成するシステムに関連する。本発明は、当該推論装置、および当該推論装置において実行されるコンピュータプログラムにも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、生体情報モニタを開示している。被検者に装着されたセンサなどを通じて取得された患者や被検者の生体パラメータの値は、生体情報モニタによる監視や表示に供される。当該値が正常状態からの逸脱を示すと、生体情報モニタは、アラームを出力して医療従事者に報知を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-102671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、被検者の生理的現象に起因する生体パラメータの値を精度よく抽出可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための一態様は、被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルの生成方法であって、
第一波形データから正しく算出された第一生体パラメータの値に対応する第一データを取得するステップと、
入力された波形データから取得される第二生体パラメータの値を自動的に算出して第二データとして出力するアルゴリズムへ、第二波形データを入力するステップと、
前記第二データを前記第一データと照合することにより、当該第二データに対応する前記第二生体パラメータの値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む第三データを生成するステップと、
前記第二波形データと前記第三データを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデルを生成するステップと、
を含んでいる。
【0006】
上記の目的を達成するための一態様は、被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルを生成するシステムであって、
教師データ生成装置と、
学習済みモデル生成装置と、
を備えており、
前記教師データ生成装置は、
第一波形データから正しく算出された第一生体パラメータの値に対応する第一データと、入力された波形データから取得される第二生体パラメータの値を自動的に算出して第二データとして出力するアルゴリズムに第二波形データを入力することにより算出された当該第二データとを受け付ける第一入力インターフェースと、
前記第二データを前記第一データと照合することにより、当該第二データに対応する前記第二生体パラメータの値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む第三データを生成する第一プロセッサと、
前記第三データを出力する出力インターフェースと、
を備えており、
前記学習済みモデル生成装置は、
前記第二波形データと前記第三データを受け付ける第二入力インターフェースと、
前記第二波形データと前記第三データを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデルを生成する第二プロセッサと、
を備えている。
【0007】
上記の目的を達成するための一態様は、教師データ生成装置と学習済みモデル生成装置を含むシステムにおいて実行されるコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、
前記教師データ生成装置に、
第一波形データから正しく算出された第一生体パラメータの値に対応する第一データと、入力された波形データから取得される第二生体パラメータの値を自動的に算出して第二データとして出力するアルゴリズムに第二波形データを入力することにより取得された当該第二データとを受け付けさせ、
前記第二データを前記第一データと照合することにより、当該第二データに対応する前記第二生体パラメータの値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む第三データを生成させ、
前記第三データを出力させ、
前記学習済みモデル生成装置に、
前記第二波形データと前記第三データを受け付けさせ、
前記第二波形データと前記第三データを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置に適用するための学習済みモデルを生成させる。
【0008】
上記のような構成によれば、アルゴリズムによって自動的に算出された第二生体パラメータの値が、正しく算出されたことが知られている第一生体パラメータの値との照合に供される。したがって、照合の結果として得られる教師ラベルは、入力される第二波形データに対して当該アルゴリズムが正しく、あるいは誤って第二生体パラメータの値を算出する傾向あるいは癖を反映しうる。このような教師ラベルを含む教師データを用いてニューラルネットワークに学習させるので、生成される学習済みモデルは、ある第二波形データが当該アルゴリズムに入力された際に第二生体パラメータの値が正しく算出される確率を精度よく推論できる。換言すると、被検者の生理的現象に起因する第二生体パラメータの値と、アルゴリズムの誤解析に起因する第二生体パラメータの値との判別に係る推論精度が高まる。
【0009】
上記の目的を達成するための一態様は、推論装置であって、
被検者から取得された波形データを受け付ける入力インターフェースと、
前記波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率に対応する推論データを生成するプロセッサと、
前記推論データを出力する出力インターフェースと、
を備えており、
前記プロセッサは、上記の学習済みモデルの生成方法により生成された学習済みモデルを用いて前記推論データを生成する。
【0010】
上記の目的を達成するための一態様は、被検者から取得された波形データに基づいて所定の生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論する推論装置によって実行されるコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記推論装置に、
被検者から取得された波形データを受け付けさせ、
上記の学習済みモデルの生成方法によって生成された学習済みモデルに前記波形データを入力させ、
前記学習済みモデルからの出力に基づいて、前記確率に対応する推論データを生成させ、
前記推論データを出力させる。
【0011】
上記のような構成によれば、波形データがアルゴリズムに入力された際に所定の生体パラメータが正しく算出される確率を精度よく推論できる学習済みモデルが用いられるので、被検者の生理的現象に起因する生体パラメータの値とアルゴリズムの誤解析に起因する生体パラメータの値との判別に係る推論が、推論装置により精度よく行なわれうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第一実施形態に係る学習済みモデルの生成と利用を例示している。
図2】心電図波形データと第一心拍数データの関係を例示している。
図3】心電図波形データと第二心拍数データの関係を例示している。
図4】被検者から取得された心拍数の経時変化を示すデータを例示している。
図5】推論装置による処理を経た心拍数の経時変化を示すデータを例示している。
図6】第二実施形態に係る学習済みモデルの生成と利用を例示している。
図7】第三実施形態に係る学習済みモデルの生成と利用を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例を以下詳細に説明する。
【0014】
図1は、第一実施形態に係る学習済みモデル生成システム10の機能構成を例示している。学習済みモデル生成システム10は、後述する推論装置20において実行される処理アルゴリズムである学習済みモデルM1を生成するシステムである。学習済みモデル生成システム10は、教師データ生成装置11と学習済みモデル生成装置12を含んでいる。
【0015】
教師データ生成装置11は、入力インターフェース111を備えている。入力インターフェース111は、第一心拍数データH1および第二心拍数データH2を受け付けるように構成されている。入力インターフェース111は、第一入力インターフェースの一例である。
【0016】
第一心拍数データH1は、心電図波形データE1から正しく算出された心拍数の値を示すデータである。心電図波形データE1は、第一波形データの一例である。心拍数は、第一生体パラメータの一例である。第一心拍数データH1は、第一データの一例である。
【0017】
図2は、心電図波形データE1と第一心拍数データH1の関係を例示している。心電図波形データE1は、被検者の心臓の生理学的電気活動の経時変化を示している。心電図波形データE1は、心臓の拍動に伴って変化する。1分間あたりの当該変化の回数を計数することにより、第一心拍数データH1が算出される。図2において上下方向に延びる破線は、心電図波形データE1において心拍数の計数に供された部分を表している。同図においては、波形が表示されている時間内(例えば10秒間)に12回の心拍が計数されている。
【0018】
すなわち、学習済みモデルM1の生成にあたっては、心電図波形データE1から第一心拍数データH1が取得される処理(図1におけるSTEP11)が行なわれる。第一心拍数データH1に対応する心拍数の計数は、心電図波形データE1を目視することによってなされてもよいし、適当な計数ソフトウェアを用いてなされてもよい。心電図波形データE1は、心電図センサなどを用いて実際に被検者から取得された波形データが用いられてもよいし、心電図モニタの性能評価用にデータベースとして公開されている波形データが用いられてもよい。
【0019】
第二心拍数データH2は、特定の心拍数算出アルゴリズムにより心電図波形データE1から自動的に算出された心拍数の値を示すデータである。心拍数算出アルゴリズムは、例えば、心電図モニタに搭載されたプロセッサにより実行されるものでありうる。心拍数算出アルゴリズムは、入力された心電図波形データにおける波形形状の特徴などに基づいて、自動的に心拍数を算出するように構成されている。心電図波形データE1は、第二波形データの一例である。心拍数は、第二生体パラメータの一例である。第二心拍数データH2は、第二データの一例である。
【0020】
すなわち、学習済みモデルM1の生成にあたっては、心電図波形データE1から第二心拍数データH2が取得される処理(図1におけるSTEP12)が行なわれる。
【0021】
図3は、心電図波形データE1と第二心拍数データH2の関係を例示している。図3に例示されている心電図波形データE1は、図2に例示されている心電図波形データE1と同一である。同一の心電図波形データE1に基づいていながら、図3に示される例においては、12回ではなく19回の心拍が計数されている。この事実は、第二心拍数データH2の取得に使用された心拍数算出アルゴリズムが、誤検出された心拍に基づいて計数を行ないうることを意味している。
【0022】
図4は、被検者から実際に取得された心電図波形データE1を上記の心拍数算出アルゴリズムに入力することにより自動的に算出された心拍数の経時変化を例示している。グラフ中に含まれる複数の点の各々は、所定時間内(例えば1分間)に検出された心拍数に対応している。
【0023】
図5においては、図4に例示された複数の心拍数の値のうち、誤って算出されたものを白丸で表している。誤って算出された心拍数データを除外しうる一つの手法は、心拍数について閾値範囲を設定することである。例えば、心拍数が下限閾値Th1と上限閾値Th2の間に収まっていない心拍数データが除外されうる。しかしながら、図5に示されるように、閾値範囲内であっても誤って算出された心拍数データは存在しうるし、逆に閾値範囲外であっても正しく算出された心拍数データは存在しうる。前者は心拍数算出アルゴリズムの誤解析に基づくものであり、後者は被検者における何らかの生理的現象に起因して心拍数が上昇した場合に対応している。心拍数算出アルゴリズムの誤解析は、例えば、高振幅のT波をQRS波と誤認識して心拍数を多く計数してしまう現象(いわゆるダブルカウント)によって生じうる。心拍数算出アルゴリズムの誤解析は、被検者の体動、被検者に装着された電極の劣化や脱落などの外部ノイズによっても生じうる。
【0024】
図1に例示されるように、教師データ生成装置11は、プロセッサ112を備えている。プロセッサ112は、第二心拍数データH2を第一心拍数データH1と照合することにより、第二心拍数データH2に対応する心拍数の値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む教師データT1を生成するように構成されている。プロセッサ112は、第一プロセッサの一例である。教師データT1は、第三データの一例である。
【0025】
図2に例示された第一心拍数データH1と図3に例示された第二心拍数データH2が照合に供された場合、教師データT1は、第二心拍数データH2に対応する心拍数は不正解であることを示す教師ラベルを含む。
【0026】
なお、正解であることを示す教師ラベルを含むために、必ずしも第一心拍数データH1に対応する心拍数と第二心拍数データH2に対応する心拍数が完全に一致していることを要しない。第一心拍数データH1に対応する心拍数に対する第二心拍数データH2に対応する心拍数の誤差が許容範囲内であれば、教師データT1は、正解を示す教師データを含みうる。
【0027】
すなわち、学習済みモデルM1の生成にあたっては、心拍数算出アルゴリズムにより自動的に算出された心拍数に対応する第二心拍数データH2を第一心拍数データH1と照合することにより、当該心拍数が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む教師データT1を生成する処理(図1におけるSTEP13)が行なわれる。
【0028】
上記のような機能を有するプロセッサ112は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0029】
プロセッサ112は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。プロセッサ112は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0030】
図1に例示されるように、教師データ生成装置11は、出力インターフェース113を備えている。出力インターフェース113は、プロセッサ112により生成された教師データT1を出力するように構成されている。
【0031】
学習済みモデル生成装置12は、入力インターフェース121を備えている。入力インターフェース121は、心電図波形データE1と教師データT1を受け付けるように構成されている。入力インターフェース121は、第二入力インターフェースの一例である。
【0032】
学習済みモデル生成装置12は、プロセッサ122を備えている。プロセッサ122は、心電図波形データE1と教師データT1を用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデルM1を生成するように構成されている。プロセッサ122は、第二プロセッサの一例である。
【0033】
学習済みモデルM1は、心電図波形データを入力とし、心電図波形データに基づいて心拍数が正しく算出される確率に対応する推論データを出力とする処理アルゴリズムとして生成される。推論データは、算出された確率に対応するスコア(例えば1から5までの値のいずれか)などに対応付けられてもよい。
【0034】
すなわち、学習済みモデルM1の生成にあたっては、心電図波形データE1と教師データT1を用いてニューラルネットワークに学習させる処理(図1におけるSTEP14)が行なわれる。ニューラルネットワークに学習される処理としては、周知の教師あり学習に係る手法が適宜に使用される。
【0035】
上記のような機能を有するプロセッサ122は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0036】
プロセッサ122は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGA、TPUなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。プロセッサ122は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0037】
教師データ生成装置11と学習済みモデル生成装置12が相互に独立した装置として提供される場合、教師データ生成装置11の出力インターフェース113と学習済みモデル生成装置12の入力インターフェース121は、有線通信または無線通信を許容するように接続されうる。すなわち、出力インターフェース113と入力インターフェース121は、物理的な通信インターフェースでありうる。
【0038】
教師データ生成装置11と学習済みモデル生成装置12は、同一の装置内において実現される機能的実体であってもよい。この場合、教師データ生成装置11のプロセッサ112の機能の少なくとも一部は、学習済みモデル生成装置12のプロセッサ122によって実現されうる。また、出力インターフェース113と入力インターフェース121は、論理的なインターフェースでありうる。
【0039】
上記のような構成によれば、心拍数算出アルゴリズムによって自動的に算出された心拍数が、正しく算出されたことが知られている心拍数との照合に供される。したがって、照合の結果として得られる教師ラベルは、入力される心電図波形データE1に対して当該心拍数算出アルゴリズムが正しく、あるいは誤って心拍数を算出する傾向あるいは癖を反映しうる。このような教師ラベルを含む教師データT1を用いてニューラルネットワークに学習させるので、生成される学習済みモデルM1は、ある心電図波形データが当該心拍数算出アルゴリズムに入力された際に心拍数が正しく算出される確率を精度よく推論できる。換言すると、被検者の生理的現象に起因する心拍数の値と、心拍数算出アルゴリズムの誤解析に起因する心拍数の値との判別に係る推論精度が高まる。
【0040】
本例においては、正しく算出された心拍数の値に対応する第一心拍数データH1を取得するために使用される心電図波形データE1が、第一心拍数データH1との照合に供される第二心拍数データH2を取得するために心拍数算出アルゴリズムに入力される心電図波形データを兼ねている。教師データT1を生成するために照合に供される生体パラメータが、ともに心拍数であるので、同じ心電図波形データE1に基づいて正解または不正解の判定がなされることにより、学習の精度を向上させることができる。
【0041】
図1に例示されるように、学習済みモデル生成装置12によって生成された学習済みモデルM1は、推論装置20に適用される。
【0042】
推論装置20は、入力インターフェース21を備えている。入力インターフェース21は、心電図センサなどを通じて被検者から取得された心電図波形データE2を受け付けるように構成されている。
【0043】
推論装置20は、プロセッサ22を備えている。プロセッサ22は、心電図波形データE2から心拍数が正しく算出される確率を推論するように構成されている。学習済みモデルM1は、当該推論のためにプロセッサ22により実行される処理アルゴリズムである。この場合、学習済みモデルM1は、心電図波形データE2を入力とし、心電図波形データE2に基づいて心拍数が正しく算出される確率に対応する推論データI1を出力する。
【0044】
すなわち、推論装置20は、被検者から取得された心電図波形データE2に基づいて心拍数が正しく算出される確率を推論する処理(図1におけるSTEP15)を実行する。
【0045】
上記のような機能を有するプロセッサ22は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0046】
プロセッサ22は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。プロセッサ22は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0047】
推論装置20は、出力インターフェース23を備えている。出力インターフェース23は、推論データI1を出力するように構成されている。
【0048】
上記のような構成によれば、心電図波形データが心拍数算出アルゴリズムに入力された際に心拍数が正しく算出される確率を精度よく推論できる学習済みモデルM1が用いられるので、被検者の生理的現象に起因する心拍数の値と心拍数算出アルゴリズムの誤解析に起因する心拍数の値との判別に係る推論が、推論装置20により精度よく行なわれうる。
【0049】
推論装置20は、データ処理装置24を備えている。データ処理装置24は、入力インターフェース21が受け付けた心電図波形データE2に基づいて、自動的に心拍数を算出する心拍数算出アルゴリズムを実行するように構成されている。本例においては、データ処理装置24により実行される心拍数算出アルゴリズムは、学習済みモデルM1を生成する際に第二心拍数データH2を取得するために使用された心拍数算出アルゴリズムと同じである。これにより、心電図波形データE2に基づいて自動的に算出された心拍数に対応する心拍数データH3が生成される。
【0050】
すなわち、データ処理装置24は、被検者から取得された心電図波形データE2に基づいて自動的に算出された心拍数に対応する心拍数データH3を生成する処理(図1におけるSTEP16)を実行する。心拍数データH3は、図4に例示されるような態様で提示されうる。
【0051】
加えて、データ処理装置24は、出力インターフェース23より出力された推論データI1に基づく処理を心拍数データH3に適用することにより、処理済み心拍数データH4を生成するように構成されている。
【0052】
すなわち、データ処理装置24は、被検者から取得された心電図波形データE2に基づいて自動的に算出された心拍数に対して、心電図波形データE2に基づいて心拍数が正しく算出される確率に基づく処理(図1におけるSTEP17)を実行する。
【0053】
例えば、心拍数データH3のうち心拍数が正しく算出された確率が所定の閾値を上回るものと上回らないものとが異なる色で表示されるように、処理済み心拍数データH4が構成されうる。このように構成された処理済み心拍数データH4に基づく表示は、図5に例示される態様で提供されうる。同図においては、心拍数が正しく算出された確率が所定の閾値を上回るデータは黒丸で表示されており、心拍数が正しく算出された確率が所定の閾値を上回るデータは白丸で表示されている。確率が所定の閾値を上回るか否かで態様が相違していれば、データを示すシンボルの形状や点滅の有無が適宜に選択されてもよい。
【0054】
あるいは、心拍数データH3のうち心拍数が正しく算出された確率が所定の閾値を上回るもののみが表示されるように、処理済み心拍数データH4が構成されうる。この場合、図5に黒丸で示されているデータのみが表示に供される。逆に、心拍数データH3のうち心拍数が正しく算出された確率が所定の閾値を上回らないもののみが表示されるように、処理済み心拍数データH4が構成されてもよい。この場合、図5に白丸で示されているデータのみが表示に供される。
【0055】
推論装置20は、不図示の表示装置を備えうる。この場合、処理済み心拍数データH4に対応する表示が、当該表示装置において提供される。処理済み心拍数データH4に対応する表示は、表示装置を備えた外部装置においてなされてもよい。この場合、推論装置20は、処理済み心拍数データH4を、不図示の通信インターフェースを通じて当該外部装置へ送信する。
【0056】
上記のような機能を有するデータ処理装置24は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0057】
データ処理装置24は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。データ処理装置24は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0058】
プロセッサ22とデータ処理装置24が相互に独立した装置として提供される場合、出力インターフェース23は、両者の間のデータ通信を仲介する物理的なインターフェースでありうる。プロセッサ22とデータ処理装置24は、同一の制御装置内において実現される機能的実体であってもよい。この場合、出力インターフェース23は、論理的なインターフェースでありうる。
【0059】
上記のような構成によれば、被検者から取得された心電図波形データE2が心拍数算出アルゴリズムに入力された際に心拍数が正しく算出される確率に係る高い精度の推論結果を用いて、被検者の生理的現象に起因する心拍数の値を精度よく抽出できる。
【0060】
本例においては、推論装置20は、被検者から取得された心電図波形データE2に基づいて正しく心拍数が算出される確率を推論している。推論に用いられる学習済みモデルM1は、共通の心電図波形データE1から取得された第一心拍数データH1と第二心拍数データH2を用いて生成されている。
【0061】
別例として、推論装置20は、被検者から取得されたカプノグラムデータに基づいて正しく呼吸数が算出される確率を推論するように構成されうる。カプノグラムデータは、カプノメータなどを用いて被検者から取得される。カプノグラムデータは、被検者の呼気中における二酸化炭素濃度の経時変化に対応する。呼吸数は、所定時間内に被検者によりなされる呼吸の数である。カプノグラムデータは、波形データの一例である。呼吸数は、生体パラメータの一例である。
【0062】
この場合、推論装置20による推論に使用される学習済みモデルM1は、共通のカプノグラムデータから取得された第一呼吸数データと第二呼吸数データの照合に基づいて生成される。第一呼吸数データは、カプノグラムデータから正しく算出された呼吸数を示すデータである。第二呼吸数データは、特定の呼吸数算出アルゴリズムにより同じカプノグラムデータから自動的に算出された呼吸数を示すデータである。第一呼吸数データは、第一データの一例である。第二呼吸数データは、第二データの一例である。推論装置20において使用される呼吸数算出アルゴリズムは、第二呼吸数データを取得するために使用される呼吸数算出アルゴリズムと同じである。
【0063】
図6は、第二実施形態に係る学習済みモデル生成システム30の機能構成を例示している。学習済みモデル生成システム30は、後述する推論装置40において実行される処理アルゴリズムである学習済みモデルM2を生成するシステムである。学習済みモデル生成システム30は、教師データ生成装置31と学習済みモデル生成装置32を含んでいる。
【0064】
教師データ生成装置31は、入力インターフェース311を備えている。入力インターフェース311は、心拍数データHおよび脈拍数データPを受け付けるように構成されている。入力インターフェース311は、第一入力インターフェースの一例である。
【0065】
心電図波形データEは、心電図センサなどを用いて被検者から取得される。心電図波形データEは、当該被検者の心臓の生理学的電気活動に対応している。心拍数データHは、心電図波形データEから正しく算出された心拍数の値を示すデータである。心電図波形データEは、第一波形データの一例である。心拍数は、第一生体パラメータの一例である。心拍数データHは、第一データの一例である。
【0066】
すなわち、学習済みモデルM2の生成にあたっては、心電図波形データEから心拍数データHが取得される処理(図6におけるSTEP21)が行なわれる。心拍数データHに対応する心拍数の計数は、心電図波形データEを目視することによってなされてもよいし、適当な計数ソフトウェアを用いてなされてもよい。
【0067】
観血的動脈圧波形データB1は、カテーテルなどを用いて被検者から取得される。心電図波形データEと観血的動脈圧波形データB1は、同じ被検者から同時に取得されることを要する。観血的動脈圧波形データB1は、当該被検者の観血的動脈圧値の経時変化に対応している。
【0068】
脈拍数データPは、特定の脈拍数算出アルゴリズムにより観血的動脈圧波形データB1から自動的に算出された脈拍数の値を示すデータである。脈拍数算出アルゴリズムは、例えば、生体情報モニタに搭載されたプロセッサにより実行されるものでありうる。脈拍数算出アルゴリズムは、入力された観血的動脈圧波形データにおける血圧値の変動タイミングなどに基づいて、自動的に脈拍数を算出するように構成されている。観血的動脈圧波形データB1は、第二波形データの一例である。脈拍数は、第二生体パラメータの一例である。脈拍数データPは、第二データの一例である。
【0069】
すなわち、学習済みモデルM2の生成にあたっては、観血的動脈圧波形データB1から脈拍数データPが取得される処理(図6におけるSTEP22)が行なわれる。
【0070】
図6に例示されるように、教師データ生成装置31は、プロセッサ312を備えている。プロセッサ312は、脈拍数データPを心拍数データHと照合することにより、脈拍数データPに対応する脈拍数の値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む教師データT2を生成するように構成されている。プロセッサ312は、第一プロセッサの一例である。教師データT2は、第三データの一例である。
【0071】
なお、正解であることを示す教師ラベルを含むために、必ずしも心拍数データHに対応する心拍数と脈拍数データPに対応する脈拍数が完全に一致していることを要しない。心拍数データHに対応する心拍数に対する脈拍数データPに対応する脈拍数の誤差が許容範囲内であれば、教師データT2は、正解を示す教師データを含みうる。
【0072】
すなわち、学習済みモデルM2の生成にあたっては、脈拍数算出アルゴリズムにより自動的に算出された脈拍数に対応する脈拍数データPを心拍数データHと照合することにより、当該脈拍数が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む教師データT2を生成する処理(図6におけるSTEP23)が行なわれる。
【0073】
上記のような機能を有するプロセッサ312は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0074】
プロセッサ312は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。プロセッサ312は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0075】
図6に例示されるように、教師データ生成装置31は、出力インターフェース313を備えている。出力インターフェース313は、プロセッサ312により生成された教師データT2を出力するように構成されている。
【0076】
学習済みモデル生成装置32は、入力インターフェース321を備えている。入力インターフェース321は、観血的動脈圧波形データB1と教師データT2を受け付けるように構成されている。入力インターフェース321は、第二入力インターフェースの一例である。
【0077】
学習済みモデル生成装置32は、プロセッサ322を備えている。プロセッサ322は、観血的動脈圧波形データB1と教師データT2を用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデルM2を生成するように構成されている。プロセッサ322は、第二プロセッサの一例である。
【0078】
学習済みモデルM2は、観血的動脈圧波形データを入力とし、観血的動脈圧波形データに基づいて脈拍数が正しく算出される確率に対応する推論データを出力とする処理アルゴリズムとして生成される。推論データは、算出された確率に対応するスコア(例えば1から5までの値のいずれか)などに対応付けられてもよい。
【0079】
すなわち、学習済みモデルM2の生成にあたっては、観血的動脈圧波形データB1と教師データT2を用いてニューラルネットワークに学習させる処理(図6におけるSTEP24)が行なわれる。ニューラルネットワークに学習される処理としては、周知の教師あり学習に係る手法が適宜に使用される。
【0080】
上記のような機能を有するプロセッサ322は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0081】
プロセッサ322は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGA、TPUなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。プロセッサ322は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0082】
教師データ生成装置31と学習済みモデル生成装置32が相互に独立した装置として提供される場合、教師データ生成装置31の出力インターフェース313と学習済みモデル生成装置32の入力インターフェース321は、有線通信または無線通信を許容するように接続されうる。すなわち、出力インターフェース313と入力インターフェース321は、物理的な通信インターフェースでありうる。
【0083】
教師データ生成装置31と学習済みモデル生成装置32は、同一の装置内において実現される機能的実体であってもよい。この場合、教師データ生成装置31のプロセッサ312の機能の少なくとも一部は、学習済みモデル生成装置32のプロセッサ322によって実現されうる。また、出力インターフェース313と入力インターフェース321は、論理的なインターフェースでありうる。
【0084】
観血的動脈圧の測定は、手術中や重篤患者に対して行なわれることが一般的であるので、被検者の体動に影響を受けることは比較的少ないものの、大気圧開放ゼロ点校正等の理由で脈拍数や観血的動脈圧値の算出が正確に行なわれない場合がある。他方、これらの事象が心電図波形に与える影響は比較的小さい。上記のような構成によれば、脈拍数算出アルゴリズムによって自動的に算出された脈拍数が、正しく算出されたことが知られている心拍数との照合に供される。したがって、照合の結果として得られる教師ラベルは、入力される観血的動脈圧波形データB1に対して当該脈拍数算出アルゴリズムが正しく、あるいは誤って脈拍数を算出する傾向あるいは癖を反映しうる。このような教師ラベルを含む教師データT2を用いてニューラルネットワークに学習させるので、生成される学習済みモデルM2は、ある観血的動脈圧波形データが当該脈拍数算出アルゴリズムに入力された際に脈拍数が正しく算出される確率を精度よく推論できる。換言すると、被検者の生理的現象に起因する脈拍数の値と、脈拍数算出アルゴリズムの誤解析に起因する脈拍数の値との判別に係る推論精度が高まる。
【0085】
本例においては、学習済みモデルM2の生成に使用される心拍数と脈拍数を算出するために、心電図波形データEと観血的動脈圧波形データB1が、同一の被検者から取得されている。すなわち、学習済みモデルM2を生成するために種別が相違する二つの生体パラメータが使用され、相違する二つの手法により当該二つの生体パラメータが取得されている。脈拍数は、脈波波形データに基づいて算出されてもよい。脈波波形データは、パルスフォトメトリプローブなどを用いて血液の吸光度の経時変化を非観血的に測定することによって取得されうる。あるいは、脈波波形データは、非観血的動脈圧計などを用いてカフ内圧の経時変化を測定することによって取得されうる。
【0086】
図6に例示されるように、学習済みモデル生成装置32によって生成された学習済みモデルM2は、推論装置40に適用される。
【0087】
推論装置40は、入力インターフェース41を備えている。入力インターフェース41は、カテーテルなどを通じて被検者から取得された観血的動脈圧波形データB2を受け付けるように構成されている。
【0088】
推論装置40は、プロセッサ42を備えている。プロセッサ42は、観血的動脈圧波形データB2から観血的動脈圧値が正しく算出される確率を推論するように構成されている。学習済みモデルM2は、当該推論のためにプロセッサ42により実行される処理アルゴリズムである。この場合、学習済みモデルM2は、観血的動脈圧波形データB2を入力とし、観血的動脈圧波形データB2に基づいて観血的動脈圧値が正しく算出される確率に対応する推論データI2を出力する。
【0089】
すなわち、推論装置40は、被検者から取得された観血的動脈圧波形データB2に基づき観血的動脈圧値が正しく算出される確率を推論する処理(図6におけるSTEP25)を実行する。
【0090】
上記のような機能を有するプロセッサ42は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0091】
プロセッサ42は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。プロセッサ42は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0092】
推論装置40は、出力インターフェース43を備えている。出力インターフェース43は、推論データI2を出力するように構成されている。
【0093】
学習済みモデル生成システム30により生成された学習済みモデルM2は、入力された観血的動脈圧波形データに基づいて正しく脈拍数が算出される確率を推論するように構成されている。他方、推論装置40により推論されるのは、被検者から取得された観血的動脈圧波形データに基づいて正しく観血的動脈圧値が算出される確率であり、学習済みモデルM2が本来対象とする確率とは異なる。しかしながら、正しく脈拍数を算出できないような観血的動脈圧波形データに基づいて観血的動脈圧値を正しく算出することは困難である。したがって、脈拍数が正しく算出される確率を精度よく推論できる学習済みモデルM2を用いることにより、被検者から取得された観血的動脈圧波形データに基づいて正しく観血的動脈圧値が算出される確率も精度よく推論できる。
【0094】
推論装置40は、データ処理装置44を備えている。データ処理装置44は、入力インターフェース41が受け付けた観血的動脈圧波形データB2に基づいて、自動的に観血的動脈圧値(拡張期血圧値と収縮期血圧値、および平均血圧値の少なくとも一つ)を算出する観血的動脈圧算出アルゴリズムを実行するように構成されている。
【0095】
すなわち、データ処理装置44は、被検者から取得された観血的動脈圧波形データB2に基づいて自動的に算出された心拍数に対応する観血的動脈圧値データBP1を生成する処理(図6におけるSTEP26)を実行する。
【0096】
加えて、データ処理装置44は、出力インターフェース43より出力された推論データI2に基づく処理を観血的動脈圧値データBP1に適用することにより、処理済み観血的動脈圧値データBP2を生成するように構成されている。
【0097】
すなわち、データ処理装置44は、被検者から取得された観血的動脈圧波形データB2に基づいて自動的に算出された観血的動脈圧値に対して、観血的動脈圧波形データB2に基づいて観血的動脈圧値が正しく算出される確率に基づく処理(図6におけるSTEP27)を実行する。
【0098】
例えば、観血的動脈圧値データBP1のうち観血的動脈圧値が正しく算出された確率が所定の閾値を上回るものと上回らないものとが異なる色で表示されるように、処理済み観血的動脈圧値データBP2が構成されうる。確率が所定の閾値を上回るか否かで態様が相違していれば、データを示すシンボルの形状や点滅の有無が適宜に選択されてもよい。
【0099】
あるいは、観血的動脈圧値データBP1のうち観血的動脈圧値が正しく算出された確率が所定の閾値を上回るもののみが表示されるように、処理済み観血的動脈圧値データBP2が構成されうる。逆に、観血的動脈圧値データBP1のうち心拍数が正しく算出された確率が所定の閾値を上回らないもののみが表示されるように、処理済み観血的動脈圧値データBP2が構成されてもよい。
【0100】
推論装置40は、不図示の表示装置を備えうる。この場合、処理済み観血的動脈圧値データBP2に対応する表示が、当該表示装置において提供される。処理済み観血的動脈圧値データBP2に対応する表示は、表示装置を備えた外部装置においてなされてもよい。この場合、推論装置40は、処理済み観血的動脈圧値データBP2を、不図示の通信インターフェースを通じて当該外部装置へ送信する。
【0101】
上記のような機能を有するデータ処理装置44は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0102】
データ処理装置44は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。データ処理装置44は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0103】
プロセッサ42とデータ処理装置44が相互に独立した装置として提供される場合、出力インターフェース43は、両者の間のデータ通信を仲介する物理的なインターフェースでありうる。プロセッサ42とデータ処理装置44は、同一の制御装置内において実現される機能的実体であってもよい。この場合、出力インターフェース43は、論理的なインターフェースでありうる。
【0104】
上記のような構成によれば、被検者から取得された観血的動脈圧波形データB2が観血的動脈圧算出アルゴリズムに入力された際に観血的動脈圧値が正しく算出される確率に係る高い精度の推論結果を用いて、被検者の生理的現象に起因する観血的動脈圧値を精度よく抽出できる。
【0105】
本例においては、推論装置40は、被検者から取得された観血的動脈圧波形データB2に基づいて観血的動脈圧値が正しく算出される確率を推論している。入力された心室圧波形データに基づいて脈拍数が正しく算出される確率を推論する学習済みモデルM2が用いられる場合、推論装置40は、被検者から取得された心室圧波形データに基づいて心室圧が正しく算出される確率を推論するように構成されてもよい。心室圧は、生体パラメータの一例である。
【0106】
本例においては、推論装置40は、被検者から観血的に取得された観血的動脈圧波形データB2に基づいて観血的動脈圧値が正しく算出される確率を推論している。しかしながら、推論装置40は、被検者から非観血的に取得された非観血動脈圧波形データに基づいて所定の生体パラメータが正しく算出される確率を推論するように構成されうる。
【0107】
例えば、非観血動脈圧波形データに基づいて正しく脈拍数が算出される確率を推論するように学習済みモデルM2が生成される場合、推論装置40は、この学習済みモデルM2を用いて、被検者から取得された非観血動脈圧波形データに基づいて正しく非観血血圧値(拡張期血圧値と収縮期血圧値の少なくとも一方)が算出される確率を推論してもよい。
【0108】
例えば、脈波波形データに基づいて正しく脈拍数が算出される確率を推論するように学習済みモデルM2が生成される場合、推論装置40は、この学習済みモデルM2を用いて、被検者から取得された脈波波形データに基づいて正しく動脈血酸素飽和度(SpO2)が算出される確率を推論してもよい。
【0109】
本例においては、推論装置40は、相違する手法により取得された相違する生体パラメータに基づいて生成された学習済みモデルM2を用いて、学習済みモデルM2により推論される確率に係る生体パラメータとは異なる生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論している。しかしながら、推論装置40は、共通する波形データから取得された同種の生体パラメータに基づいて生成された学習済みモデルM1を用いて、学習済みモデルM1により推論される確率に係る生体パラメータとは異なる生体パラメータの値が正しく算出される確率を推論してもよい。
【0110】
例えば、推論装置40は、共通の心電図波形データE1に基づいて生成され、入力された心電図波形データに基づいて正しく心拍数が算出される確率を推論する学習済みモデルM1を用いて、被検者から取得された心電図波形データに基づいて正しくST値、QT間隔、QTcが算出される確率を推論するように構成されうる。
【0111】
例えば、推論装置40は、共通のカプノグラムデータに基づいて生成され、入力されたカプノグラムデータに基づいて正しく呼吸数が算出される確率を推論する学習済みモデルM1を用いて、被検者から取得されたカプノグラムデータに基づいて正しく呼気終末期二酸化炭素分圧(EtCO2)が算出される確率を推論するように構成されうる。
【0112】
図7は、第三実施形態に係る学習済みモデル生成システム50の機能構成を例示している。学習済みモデル生成システム50は、後述する推論装置60において実行される処理アルゴリズムである学習済みモデルM3を生成するシステムである。学習済みモデル生成システム50は、教師データ生成装置51と学習済みモデル生成装置52を含んでいる。
【0113】
教師データ生成装置51は、入力インターフェース511を備えている。入力インターフェース511は、カプノグラムデータCおよびインピーダンス呼吸波形データR1を受け付けるように構成されている。入力インターフェース511は、第一入力インターフェースの一例である。
【0114】
カプノグラムデータCは、カプノメータなどを用いて被検者から取得される。カプノグラムデータCは、カプノグラムデータCは、当該被検者の呼気中における二酸化炭素濃度の経時変化に対応する。第一呼吸数データN1は、カプノグラムデータCから正しく算出された呼吸数の値を示すデータである。呼吸数は、所定時間内に被検者によりなされる呼吸の数である。カプノグラムデータCは、第一波形データの一例である。呼吸数は、第一生体パラメータの一例である。第一呼吸数データN1は、第一データの一例である。
【0115】
すなわち、学習済みモデルM3の生成にあたっては、カプノグラムデータCから第一呼吸数データN1が取得される処理(図7におけるSTEP31)が行なわれる。第一呼吸数データN1に対応する呼吸数の計数は、カプノグラムデータCを目視することによってなされてもよいし、適当な計数ソフトウェアを用いてなされてもよい。
【0116】
インピーダンス呼吸波形データR1は、被検者に装着された複数の電極間におけるインピーダンスの経時変化に対応している。カプノグラムデータCとインピーダンス呼吸波形データR1は、同じ被検者から同時に取得されることを要する。
【0117】
第二呼吸数データN2は、特定の呼吸数算出アルゴリズムによりインピーダンス呼吸波形データR1から自動的に算出された呼吸数の値を示すデータである。呼吸数算出アルゴリズムは、例えば、心電図モニタに搭載されたプロセッサにより実行されるものでありうる。呼吸数算出アルゴリズムは、入力されたインピーダンス呼吸波形データにおけるインピーダンス値の変動タイミングなどに基づいて、自動的に呼吸数を算出するように構成されている。インピーダンス呼吸波形データR1は、第二波形データの一例である。呼吸数は、第二生体パラメータの一例である。第二呼吸数データN2は、第二データの一例である。
【0118】
すなわち、学習済みモデルM3の生成にあたっては、インピーダンス呼吸波形データR1から第二呼吸数データN2が取得される処理(図7におけるSTEP32)が行なわれる。
【0119】
図7に例示されるように、教師データ生成装置51は、プロセッサ512を備えている。プロセッサ512は、第二呼吸数データN2を第一呼吸数データN1と照合することにより、第二呼吸数データN2に対応する呼吸数の値が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む教師データT3を生成するように構成されている。プロセッサ512は、第一プロセッサの一例である。教師データT3は、第三データの一例である。
【0120】
なお、正解であることを示す教師ラベルを含むために、必ずしも第一呼吸数データN1に対応する呼吸数と第二呼吸数データN2に対応する呼吸数が完全に一致していることを要しない。第一呼吸数データN1に対応する呼吸数に対する第二呼吸数データN2に対応する呼吸数の誤差が許容範囲内であれば、教師データT3は、正解を示す教師データを含みうる。
【0121】
すなわち、学習済みモデルM3の生成にあたっては、呼吸数算出アルゴリズムにより自動的に算出された呼吸数に対応する第二呼吸数データN2を第一呼吸数データN1と照合することにより、当該呼吸数が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む教師データT3を生成する処理(図7におけるSTEP33)が行なわれる。
【0122】
上記のような機能を有するプロセッサ512は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0123】
プロセッサ512は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。プロセッサ512は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0124】
図7に例示されるように、教師データ生成装置51は、出力インターフェース513を備えている。出力インターフェース513は、プロセッサ512により生成された教師データT3を出力するように構成されている。
【0125】
学習済みモデル生成装置52は、入力インターフェース521を備えている。入力インターフェース521は、インピーダンス呼吸データR1と教師データT3を受け付けるように構成されている。入力インターフェース521は、第二入力インターフェースの一例である。
【0126】
学習済みモデル生成装置52は、プロセッサ522を備えている。プロセッサ522は、インピーダンス呼吸波形データR1と教師データT3を用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデルM3を生成するように構成されている。プロセッサ522は、第二プロセッサの一例である。
【0127】
学習済みモデルM3は、インピーダンス呼吸波形データを入力とし、インピーダンス呼吸波形データに基づいて呼吸数が正しく算出される確率に対応する推論データを出力とする処理アルゴリズムとして生成される。
【0128】
すなわち、学習済みモデルM3の生成にあたっては、インピーダンス呼吸波形データR1と教師データT3を用いてニューラルネットワークに学習させる処理(図7におけるSTEP34)が行なわれる。ニューラルネットワークに学習される処理としては、周知の教師あり学習に係る手法が適宜に使用される。
【0129】
上記のような機能を有するプロセッサ522は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0130】
プロセッサ522は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGA、TPUなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。プロセッサ522は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0131】
教師データ生成装置51と学習済みモデル生成装置52が相互に独立した装置として提供される場合、教師データ生成装置51の出力インターフェース513と学習済みモデル生成装置52の入力インターフェース521は、有線通信または無線通信を許容するように接続されうる。すなわち、出力インターフェース513と入力インターフェース521は、物理的な通信インターフェースでありうる。
【0132】
教師データ生成装置51と学習済みモデル生成装置52は、同一の装置内において実現される機能的実体であってもよい。この場合、教師データ生成装置51のプロセッサ512の機能の少なくとも一部は、学習済みモデル生成装置52のプロセッサ522によって実現されうる。また、出力インターフェース513と入力インターフェース521は、論理的なインターフェースでありうる。
【0133】
上記のような構成によれば、呼吸数算出アルゴリズムによって自動的に算出された呼吸数が、正しく算出されたことが知られている呼吸数との照合に供される。したがって、照合の結果として得られる教師ラベルは、入力されるインピーダンス呼吸波形データR1に対して当該呼吸数算出アルゴリズムが正しく、あるいは誤って呼吸数を算出する傾向あるいは癖を反映しうる。このような教師ラベルを含む教師データT3を用いてニューラルネットワークに学習させるので、生成される学習済みモデルM3は、あるインピーダンス呼吸波形データが当該呼吸数算出アルゴリズムに入力された際に呼吸数が正しく算出される確率を精度よく推論できる。
【0134】
また、被検者に複数の電極を装着して取得されるインピーダンス呼吸波形データは、心電図電極を共用して簡易に取得可能であるものの、胸郭の動きに基づいて呼吸数が算出されるので、体動や電極起因のノイズの影響を受けやすいことが知られている。他方、呼吸数に対応するカプノグラムデータを取得するためには、被検者の口元にマスクを固定する必要があるものの、当該マスクを通じて取得された呼吸数の正確性については比較的高い信頼性が得られている。上記のような構成によれば、同じ被検者から同時に取得されたカプノグラムデータC1とインピーダンス呼吸波形データR1から算出された呼吸数同士を照合することによって教師データT3が生成されるので、インピーダンス呼吸波形データに基づいて正しく呼吸数が算出される確率の推論について、効果的な学習をニューラルネットワークに行なわせることができる。
【0135】
したがって、被検者の生理的現象に起因する呼吸数の値と、呼吸数算出アルゴリズムの誤解析に起因する呼吸数の値との判別に係る推論精度が高まる。
【0136】
図7に例示されるように、学習済みモデル生成装置52によって生成された学習済みモデルM3は、推論装置60に適用される。
【0137】
推論装置60は、入力インターフェース61を備えている。入力インターフェース61は、被検者に装着された複数の電極を通じて取得されたインピーダンス呼吸波形データR2を受け付けるように構成されている。
【0138】
推論装置60は、プロセッサ62を備えている。プロセッサ62は、インピーダンス呼吸波形データR2から呼吸数が正しく算出される確率を推論するように構成されている。学習済みモデルM3は、当該推論のためにプロセッサ62により実行される処理アルゴリズムである。この場合、学習済みモデルM3は、インピーダンス呼吸波形データR2を入力とし、インピーダンス呼吸波形データR2に基づいて呼吸数が正しく算出される確率に対応する推論データI3を出力する。
【0139】
すなわち、推論装置60は、被検者から取得されたインピーダンス呼吸波形データR2に基づき呼吸数が正しく算出される確率を推論する処理(図7におけるSTEP35)を実行する。
【0140】
上記のような機能を有するプロセッサ62は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0141】
プロセッサ62は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。プロセッサ62は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0142】
推論装置60は、出力インターフェース63を備えている。出力インターフェース63は、推論データI3を出力するように構成されている。
【0143】
上記のような構成によれば、インピーダンス呼吸データが呼吸数算出アルゴリズムに入力された際に呼吸数が正しく算出される確率を精度よく推論できる学習済みモデルM3が用いられるので、被検者の生理的現象に起因する呼吸数の値と呼吸数算出アルゴリズムの誤解析に起因する呼吸数の値との判別に係る推論が、推論装置60により精度よく行なわれうる。
【0144】
推論装置60は、データ処理装置64を備えている。データ処理装置64は、入力インターフェース61が受け付けたインピーダンス呼吸波形データR2に基づいて、自動的に呼吸数を算出する呼吸数算出アルゴリズムを実行するように構成されている。本例においては、データ処理装置44により実行される呼吸数算出アルゴリズムは、学習済みモデルM3を生成する際に第二呼吸数データN2を取得するために使用された呼吸数算出アルゴリズムと同じである。これにより、インピーダンス呼吸波形データR2に基づいて自動的に算出された呼吸数に対応する呼吸数データN3が生成される。
【0145】
すなわち、データ処理装置64は、被検者から取得されたインピーダンス呼吸波形データR2に基づいて自動的に算出された呼吸数に対応する呼吸数データN3を生成する処理(図7におけるSTEP36)を実行する。
【0146】
加えて、データ処理装置64は、出力インターフェース63より出力された推論データI3に基づく処理を呼吸数データN3に適用することにより、処理済み呼吸数データN4を生成するように構成されている。
【0147】
すなわち、データ処理装置64は、被検者から取得されたインピーダンス呼吸波形データR2に基づいて自動的に算出された呼吸数に対して、インピーダンス呼吸波形データR2に基づいて呼吸数が正しく算出される確率に基づく処理(図7におけるSTEP37)を実行する。
【0148】
例えば、呼吸数データN3のうち呼吸数が正しく算出された確率が所定の閾値を上回るものと上回らないものとが異なる色で表示されるように、処理済み呼吸数データN4が構成されうる。確率が所定の閾値を上回るか否かで態様が相違していれば、データを示すシンボルの形状や点滅の有無が適宜に選択されてもよい。
【0149】
あるいは、呼吸数データN3のうち呼吸数が正しく算出された確率が所定の閾値を上回るもののみが表示されるように、処理済み呼吸数データN4が構成されうる。逆に、呼吸数データN3のうち呼吸数が正しく算出された確率が所定の閾値を上回らないもののみが表示されるように、処理済み呼吸数データN4が構成されてもよい。
【0150】
推論装置60は、不図示の表示装置を備えうる。この場合、処理済み呼吸数データN4に対応する表示が、当該表示装置において提供される。処理済み呼吸数データN4に対応する表示は、表示装置を備えた外部装置においてなされてもよい。この場合、推論装置60は、処理済み呼吸数データN4を、不図示の通信インターフェースを通じて当該外部装置へ送信する。
【0151】
上記のような機能を有するデータ処理装置64は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0152】
データ処理装置64は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。データ処理装置64は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0153】
プロセッサ62とデータ処理装置64が相互に独立した装置として提供される場合、出力インターフェース63は、両者の間のデータ通信を仲介する物理的なインターフェースでありうる。プロセッサ62とデータ処理装置64は、同一の制御装置内において実現される機能的実体であってもよい。この場合、出力インターフェース63は、論理的なインターフェースでありうる。
【0154】
上記のような構成によれば、被検者から取得されたインピーダンス呼吸波形データR2が呼吸数算出アルゴリズムに入力された際に呼吸数が正しく算出される確率に係る高い精度の推論結果を用いて、被検者の生理的現象に起因する呼吸数を精度よく抽出できる。
【0155】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【符号の説明】
【0156】
10、30、50:学習済みモデル生成システム、11、31、51:教師データ生成装置、111、311、511:入力インターフェース、112、312、512:プロセッサ、113、313、513:出力インターフェース、12、32、52:学習済みモデル生成装置、121、321、521:入力インターフェース、122、322、522:プロセッサ、20、40、60:推論装置、21、41、61:入力インターフェース、22、42、62:プロセッサ、23、43、63:出力インターフェース、24、44、64:データ処理装置、B1、B2:観血的動脈圧波形データ、C:カプノグラムデータ、E、E1、E2:心電図波形データ、H:心拍数データ、H1:第一心拍数データ、H2:第二心拍数データ、I1、I2、I3:推論データ、M1、M2、M3:学習済みモデル、N1:第一呼吸数データ、N2:第二呼吸数データ、P:脈拍数データ、R1、R2:インピーダンス呼吸波形データ、T1、T2、T3:教師データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7