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特許7381304ロータコアの端面に配置される端板を備える回転子および回転子を備える電動機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ロータコアの端面に配置される端板を備える回転子および回転子を備える電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20231108BHJP
【FI】
H02K1/278
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019212668
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021087242
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】杉本 靖典
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-125330(JP,A)
【文献】特開2003-259577(JP,A)
【文献】特開2009-171785(JP,A)
【文献】特開2008-312412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周りに回転するロータコアと、
前記ロータコアに支持され、前記ロータコアの外周面に配置された複数の磁石と、
前記ロータコアの両側の端面を挟むように配置された端板と、を備え、
前記端板は、磁性を有する材料にて形成されており、
前記端板は、前記磁石に対向する領域のうち少なくとも一部の領域に形成され、前記磁石の端面から前記端板の表面が遠ざかる形状を有する退避部を含み、
前記退避部は、前記ロータコアが接触する前記端板において径方向の端部に外周方向の全体にわたって形成された切欠き部を含み、
前記端板は、前記磁石の回転軸の延びる方向における両側の端面のうち少なくとも一方の端面から離れて配置され、
前記切欠き部は、径方向の先端が開口するように形成されている、回転子。
【請求項2】
前記磁石は、接着剤により前記ロータコアに固定されている、請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記端板は、前記磁石に対向し、前記磁石が前記回転軸の延びる方向に移動した時に前記磁石を支持する支持部を有し、
前記支持部は、前記切欠き部よりも径方向の内側の領域にて構成されている、請求項1または2に記載の回転子。
【請求項4】
請求項1に記載の回転子と、
前記回転子が内部に配置される固定子とを備える、電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータコアの端面に配置される端板を備える回転子および回転子を備える電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機は、回転軸の周りに回転する回転子と、回転子の周りに配置された固定子とを備える。従来の技術の回転子においては、回転軸に沿って延びるシャフトと、シャフトに固定されたロータコアと、ロータコアに固定された磁石とを含む構造が知られている。
【0003】
ロータコアの回転軸の延びる方向の両側の端面には、端板が配置されることが知られている。端板は、ロータコアの軸方向の両側の端面を挟むように形成されている。このような端板は、ボルトなどの締結部材により固定される(例えば、特開2006-238531号公報、および特開2012-120422号公報を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-238531号公報
【文献】特開2012-120422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータコアに固定されている複数の磁石は、例えば、外側の表面の磁極が交互にN極およびS極になるように配置される。電動機が効率良く回転するためには、1つの磁石の外側の表面のN極から出た磁束は、固定子のステータコアを通って、他の磁石のS極に向かうことが好ましい。すなわち、磁力線は、1つの磁石の外側の表面からステータコアを介して他の磁石の表面に向かうことが好ましい。
【0006】
ここで、ロータコアの軸方向の両側に配置されている端板は、ロータコアに固定されている磁石の端面に接触する。または、端板は、磁石に対して僅かな隙間を開けて配置される。端板が磁性を有する材料にて形成されている場合には、1つの磁石のN極から延びる磁力線は、端板を通って同一の磁石のS極に向かってしまう。1つの磁石のN極およびS極にて磁力線のループが形成され、磁束が漏れてしまうという問題がある。磁束が漏れると、電動機が発生するトルクに寄与する磁力が低減する。更に、端板を通る磁力線のループが形成されるために、端板が発熱して鉄損が生じる場合が有る。
【0007】
このために、従来の技術においては、ロータコアを挟む端板は、磁性を有しない材料にて形成されている。例えば、回転子の端板は、ステンレスまたはアルミニウム等により形成されている。しかしながら、ステンレスまたはアルミニウム等は、鉄などの磁性を有する材料よりも貴重な材料であり、回転子が高価になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の回転子は、回転軸の周りに回転するロータコアと、ロータコアに支持されロータコアの外周面に配置された複数の磁石と、ロータコアの両側の端面を挟むように配置された端板とを備える。端板は、磁性を有する材料にて形成されている。端板は、磁石に対向する領域のうち少なくとも一部の領域に形成され、磁石の端面から端板の表面が遠ざかる形状を有する退避部を含む。退避部は、ロータコアが接触する端板において径方向の端部に外周方向の全体にわたって形成された切欠き部を含む。端板は、磁石の回転軸の延びる方向における両側の端面のうち少なくとも一方の端面から離れて配置されている。切欠き部は、径方向の先端が開口するように形成されている。
【0009】
本開示の一態様の電動機は、上記の回転子と、回転子が内部に配置される固定子とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の態様では、磁性を有する端板を備えると共に、磁束の漏れを抑制する回転子、および回転子を備える電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態における電動機を回転軸に平行な面で切断した時の概略断面図である。
図2】第1の回転子のロータコア、磁石および端板の斜視図である。
図3】第1の回転子のロータコア、磁石および端板の分解斜視図である。
図4】第1の回転子の一部分を破断した時のロータコア、磁石および端板の斜視図である。
図5】第1の回転子の端板の斜視図である。
図6】第1の回転子のロータコア、磁石および端板の拡大断面図である。
図7】第1の回転子の製造方法を説明する断面図である。
図8】実施の形態における第2の回転子の端板の斜視図である。
図9】第2の回転子の端板の拡大平面図である。
図10】実施の形態における第3の回転子のロータコア、磁石、および端板の拡大断面図である。
図11】実施の形態における第4の回転子の端板の斜視図である。
図12】第4の回転子のロータコア、磁石、および端板の拡大断面図である。
図13】実施の形態における第5の回転子の端板の斜視図である。
図14】第5の回転子の端板の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図14を参照して、実施の形態における回転子および電動機について説明する。図1に、本実施の形態の第1の回転子を備える電動機を回転軸に平行な面で切断した時の概略断面図を示す。本実施の形態の電動機2は、回転軸51の周りに回転する回転子と回転子が内部に配置される固定子6とを備える。図1に示す例では、第1の回転子1が配置されている。
【0013】
第1の回転子1は、回転軸51の周りに回転するシャフト11を含む。シャフト11は、円柱状に形成されている。固定子6は、例えば、シャフト11の延びる方向に複数の電磁鋼板が積層されているステータコアを含む。固定子6は、ステータコアに支持され、周方向に沿って配置される複数のコイルを含む。固定子6は、ハウジング3に固定されている。シャフト11は、ベアリング4,5により支持されている。ベアリング4,5は、ハウジング3に支持されている。
【0014】
図2に、本実施の形態の第1の回転子のロータコア、磁石、および端板の斜視図を示す。図3に、本実施の形態の第1の回転子のロータコア、磁石、および端板の分解斜視図を示す。図1から図3を参照して、本実施の形態の第1の回転子1は、ロータコア12の表面に磁石13が配置されている表面磁石型の回転子である。
【0015】
回転子1は、シャフト11に固定されたロータコア12を備える。本実施の形態のロータコア12は、円筒の形状を有する円筒部12aを含む。ロータコア12は、回転軸51の周りに回転する。本実施の形態のロータコア12は、磁性を有する単一の部材により形成されている。例えば、ロータコア12は、鉄を主成分とする部材を切削することにより形成されることができる。ロータコアの構造は、この形態に限られない。ロータコアは、例えば、複数の電磁鋼板が回転軸の延びる方向に積層された積層体により構成されていていても構わない。
【0016】
回転子1は、ロータコア12に支持された複数の磁石13を含む。複数の磁石13は、ロータコア12の外周面に配置されている。本実施の形態の磁石13は、板状に形成された永久磁石である。複数の磁石13は、周方向に沿って一定の間隔にて配置されている。磁石の個数は、回転子の極数に依存する。回転子の極数に応じて、任意の個数の磁石をロータコアに固定することができる。
【0017】
磁石13は、ロータコア12の回転軸51の延びる方向において、一方の端部から他方の端部まで延びている。回転軸51の延びる方向における磁石13の長さは、ロータコア12の長さ以下になるように形成されている。複数の磁石13は、例えば、外側の表面が周方向に沿ってN極とS極とを繰り返すように配置されている。
【0018】
ロータコア12は、回転軸51に沿って延びる係止部12bを有する。係止部12bは、円筒部12aから径方向の外側に向かって突出するように形成されている。係止部12bは、ロータコア12の回転軸51の延びる方向に沿って、一方の端面から他方の端面まで延びるように形成されている。係止部12bは、磁石13の側面に接触するように形成されている。係止部12bは、周方向において磁石13を挟むように形成されている。磁石13は、2つの係止部12b同士の間に配置されている。本実施の形態における磁石13は、接着剤によりロータコア12に固定されている。なお、磁石13は、接着剤が使われずに、2つの係止部12bにて挟まれることによりロータコア12に固定されても構わない。また、接着剤にて磁石13がロータコア12に固定される場合には、周方向における磁石13の移動は接着剤により抑制される。このために、ロータコア12には磁石13を挟む係止部12bが形成されていなくても構わない。
【0019】
本実施の形態における回転子1は、ロータコア12の回転軸51の延びる方向の両側の端面を挟むように配置された2枚の端板14を有する。それぞれの端板14は、ロータコア12の断面形状に対応するように円環状に形成されている。それぞれの端板14は、シャフト11を挿通するための穴部14cを有する。なお、本実施の形態では、矢印61に示す方向(図2の下側)に配置されている端板14を一方の端板と称し、矢印61とは反対向き(図2の上側)に配置されている端板14を、他方の端板と称する。
【0020】
図4に、本実施の形態における第1の回転子のロータコア、磁石、および端板を破断した時の斜視図を示す。図2から図4を参照して、2枚の端板14は、締結部材としてのボルト31により互いに固定されている。ボルト31は、周方向に沿って一定の間隔にて配置されている。
【0021】
図2図3、および図4の下側に配置されている一方の端板14には、ボルト31を固定する為のねじ山が形成された穴部26が形成されている。ロータコア12の円筒部12aには、ボルト31を挿通するための貫通穴12cが形成されている。図2から図4の上側に配置されている他方の端板14には、ボルト31の頭部を支持するための挿入部25が形成されている。穴部26、貫通穴12c、および挿入部25は、互いに連通する位置に形成されている。
【0022】
端板14をロータコア12に固定する方法は、ボルト31にて固定する方法に限られず、任意の方法を採用することができる。例えば、溶接、接着、ロータコアの内周面への焼き嵌め、またはロータコアの内周面への圧入等にて端板をロータコアに固定することができる。また、ロータコアが電磁鋼板の積層体にて形成されておらずに、1つの鉄の部材を削ることにより形成されている場合がある。この場合には、ボルトがロータコアを貫通する必要はなく、ロータコアに底部を有するネジ穴を形成することができる。そして、このネジ穴にボルトを固定することができる。
【0023】
図5に、本実施の形態における端板の斜視図を示す。図5においては、2つの端板14のうち一方の端板14が示されている。他方の端板14には、前述の通りに穴部26の代わりに挿入部25が形成されている。他方の端板14には、一方の端板14と同様の切欠き部14aが形成されている。他方の端板14のその他の構成は、一方の端板14の構成と同様である。
【0024】
図6に、第1の回転子においてボルトが挿通している部分で切断した時のロータコア、磁石および端板の拡大断面図を示す。図5および図6を参照して、本実施の形態における端板14は、磁性を有する材料にて形成されている。例えば、端板14は、炭素鋼などの鉄を主成分とする材料にて形成されている。
【0025】
端板14は、ロータコア12に接触する面に形成された退避部としての切欠き部14aを有する。退避部は、磁石13の端面13aの側方に空間が形成される形状を有する。また、退避部は、端板14の表面が磁石13の端面13aから遠ざかる形状を有する。退避部は、磁石13に対向する領域のうち少なくとも一部の領域に形成されている。第1の回転子1においては、切欠き部14aは、端板14の径方向の外周部に形成されている。特に、切欠き部14aは、外周部の全体に形成されている。切欠き部14aは、端板14の周方向に沿って延びるように形成されている。
【0026】
ところで、本実施の形態においては、回転軸51の延びる方向において、磁石13の長さはロータコア12の長さよりも僅かに短くなるように形成されている。端板14は、ロータコア12の端面に接触することにより、ロータコア12を押圧する。端板14は、磁石13に接触すると、磁石13を挟む方向に磁石13を押圧する場合がある。この結果、磁石13が割れる虞がある。このために、本実施の形態の回転子1においては、磁石13が端板14により押圧されないように短く形成されている。
【0027】
第1の回転子1は、切欠き部14aの径方向の長さが磁石13の径方向の最大の厚さよりも短くなるように形成されている。端板14は、磁石13と対向するように形成された支持部14bを有する。支持部14bは、磁石13の端面13aに近接している。支持部14bは、磁石13が回転軸51の延びる方向に移動した時に磁石13と接触することにより、磁石13を支持するように形成されている。支持部14bは、切欠き部14aの周りの領域にて構成されている。第1の回転子1においては、支持部14bは、切欠き部14aよりも径方向の内側の領域にて構成されている。また、本実施の形態では、磁石13は接着剤によりロータコア12に固定されている。端板14の支持部14bと磁石13の端面13aとの間には、僅かな隙間が形成されている。
【0028】
本実施の形態における端板14は、磁性を有する材料にて形成されている。このために、ステンレスまたはアルミニウム等の貴重な材料を使用する必要がない。一方で、磁性を有する端板14に磁石13の端面13aが大きな面積にて接近または接触すると、磁石13の磁束が漏れる場合がある。すなわち、1個の磁石13にて、端板14の内部を通って磁力線のループが形成される場合がある。
【0029】
本実施の形態の第1の回転子1では、磁石13と端板14との間に空間が生成される退避部として、切欠き部14aが形成されている。切欠き部14aにより、端板14の表面を磁石13の端面13aから離すことができる。このために、1個の磁石にて磁力線のループが形成されることを抑制できる。本実施の形態の回転子を備える電動機は、磁束の漏れによるトルクの低下を抑制することができる。
【0030】
このように、本実施の形態の回転子では、貴重な材料の使用を避けながら、磁束の漏れを抑制することができる。この結果、安価で性能に優れた回転子および電動機を提供することができる。
【0031】
図7に、本実施の形態の第1の回転子の製造方法を説明するロータコア、磁石、および端板の拡大断面図を示す。作業者は、一方の端板14にロータコア12を配置する。この時に、ロータコア12に形成された貫通穴12cが一方の端板14に形成された穴部26に連通するようにロータコア12を配置する。ロータコア12および端板14は、固定具などの冶具により仮に固定する。
【0032】
次に、作業者は、ロータコア12の係止部12b同士の間の領域に接着剤35を塗布する。次に、作業者は、磁石13を係止部12b同士の間に配置する。作業者は、矢印62に示すように、磁石13を移動することにより、係止部12b同士の間に磁石13を挿入する。接着剤35は、磁石13とロータコア12の外周面との間に配置される。過剰な接着剤35は、矢印63に示すように磁石13により切欠き部14aに押し出される。この後に、他方の端板14を配置してボルト31により2枚の端板14をロータコア12に固定することができる。
【0033】
従来の技術においては、端板14に切欠き部14aが形成されていないために、過剰な接着剤は、磁石と端板との境界部分から外側に溢れる。作業者は、磁石と端板との境界部分から溢れる接着剤を拭き取る必要がある。これに対して、本実施の形態における第1の回転子では、過剰な接着剤35は、矢印63に示すように、切欠き部14aに移動して、外側に溢れることを回避することができる。このために、過剰な接着剤を拭き取る作業が不要になる。または、接着剤の乾燥後に過剰な接着剤を削り取る作業が不要になる。
【0034】
なお、接着剤35を多く配置した場合には、磁石13を係止部12b同士の間に挿入したときに、切欠き部14aから径方向の外側に接着剤35が飛び出る場合がある。この場合には、作業者は、接着剤35を拭き取ったり削り取ったりする作業を行っても構わない。この場合にも、切欠き部14aが形成されていることにより、切欠き部14aから飛び出る接着剤の量が少なくなり、作業者の作業を軽減することができる。
【0035】
図6を参照して、本実施の形態における端板14は、切欠き部14aよりも径方向の内側の領域にて構成され、磁石13と対向する支持部14bを有する。磁石13の接着剤35による固定が外れた場合に、磁石13が回転軸51に沿って移動する。支持部14bは、磁石13が移動した時に磁石13と接触して磁石13を支持するように形成されている。このために、磁石13の接着剤35による固定が外れてしまっても、磁石13が回転軸51の方向に移動することを抑制できる。特に、磁石13がロータコア12の端面から飛びだしてしまうことを抑制できる。
【0036】
更に、本実施の形態における磁石13は、接着剤35にてロータコア12に固定されているが、この形態に限られない。磁石13は、接着剤35にてロータコア12に固定されていなくても構わない。磁石13は、回転軸51の延びる方向に僅かに移動するように配置されていても構わない。この場合においても、端板14が支持部14bを有することにより、磁石13が動いてロータコア12の端面から飛び出すことを抑制できる。なお、本実施の形態における磁石13の端面13aは、端板14の支持部14bから僅かに離れているが、この形態に限られない。ボルト31にて端板14を締め付けることにより、磁石13の端面13aが端板14の支持部14bと接触していても構わない。
【0037】
図8に、本実施の形態における第2の回転子の端板の拡大斜視図を示す。第1の回転子1の端板14は、外周部の全体に切欠き部14aが形成されているが、この形態に限られない。退避部としての切欠き部14aは、磁石13が配置される領域の少なくも一部に形成されていれば構わない。第2の回転子は、2枚の端板15を備える。端板15は、複数の切欠き部15aを有する。切欠き部15aは、端板15の外周部において周方向に沿って形成されている。
【0038】
図9に、本実施の形態における第2の回転子の端板の拡大平面図を示す。図9には、磁石13が配置される領域41が破線にて示されている。図8および図9を参照して、切欠き部15aは、磁石が配置されている領域に対応して形成されている。切欠き部15aの周方向の長さは、磁石の周方向の長さよりも短く形成されている。切欠き部15aの周りに領域には、磁石13と対向する支持部15bが形成されている。なお、切欠き部15aの周方向の長さは、磁石13の周方向の長さと同じになる様に形成されていても構わない。または、切欠き部15aの周方向の長さは、磁石13の長さよりも短く形成されていても構わない。
【0039】
第2の回転子においても、切欠き部15aにより形成される空間により、磁束の漏れを抑制することできる。その他の構成、作用および効果については、第1の回転子と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0040】
図10に、本実施の形態における第3の回転子のロータコア、磁石、および端板の拡大断面図を示す。第3の回転子は、ロータコア12の両側に配置された2枚の端板16を備える。磁石13は、接着剤によりロータコア12に固定されている。端板16の外周部には、切欠き部16aが形成されている。切欠き部16aの径方向の長さは、磁石13の径方向の長さよりも長くなるように形成されている。端板16には、磁石13の端面13aと対向する支持部が形成されていない。磁石13は、切欠き部16aが形成されている領域の内部に配置されている。磁石13の端面13aの全体が端板16の表面から離れるように切欠き部16aが形成されている。
【0041】
第3の回転子の切欠き部16aの構成を採用することにより、磁石13の端面13aの側方に形成される空間が大きくなり、磁石13の磁束の漏れを抑制する効果が増大する。第3の回転子のその他の構成、作用および効果は、第1の回転子および第2の回転子と同様であるので、ここでは、説明を繰り返さない。
【0042】
上記の第1の回転子、第2の回転子、および第3の回転子においては、端板の外周部に切欠き部が形成されているが、この形態に限られない。切欠き部は、端板の径方向の端部に形成することができる。例えば、端板の内周部に切欠き部が形成されていても構わない。すなわち、切欠き部は、端板の内周面から径方向の外側に向かって形成されていても構わない。
【0043】
図11に、本実施の形態における第4の回転子の端板の斜視図を示す。図12に、本実施の形態における第4の回転子のロータコア、端板、および磁石の拡大断面図を示す。図11および図12を参照して、第4の回転子は、2枚の端板18を備える。端板18は、端板18の表面が磁石13の端面13aから遠ざかる形状を有する退避部として、凹部18aを含む。凹部18aは、端板18のロータコア12に接触する部分よりも凹む部分である。凹部18aは、磁石13の端面13aが配置される領域に形成されている。凹部18aは、周方向に沿って延びている。凹部18aは、磁石13の端面13aの少なくとも一部の領域が端板18に接触しないように形成されている。または、凹部18aは、磁石13の端面13aの少なくとも一部の領域が端板18に接近しないように形成されている。本実施の形態の第4の回転子では、凹部18aが周方向において1周する溝部にて構成されている。
【0044】
図11においては、穴部26が形成されている一方の端板18が示されている。挿入部25が形成されている他方の端板18についても、ロータコア12に接触する表面に一方の端板18と同様の凹部18aが形成されている。第4の回転子においても、磁石13の端面13aの少なくとも一部は、凹部18aにより形成される空間に接するために、磁束の漏れを抑制することができる。
【0045】
また、回転子を製造する工程において、磁石を係止部同士の間に配置する時に、過剰な接着剤は、凹部18aの内部に押し出される。凹部18aは、外周面に連通していないために、過剰な接着剤が回転子の外側に飛び出ることを抑制できる。このために、過剰な接着剤を拭き取る作業または削り取る作業が軽減される。
【0046】
本実施の形態の端板18は、磁石13の端面13aと対向するように形成された支持部18bを有する。支持部18bは、凹部18aの周りの領域にて構成されている。端板18が支持部18bを有することにより、磁石13が回転軸51の延びる方向に動くことを抑制することができる。特に、磁石13が接着剤にて固定されていない場合に、磁石13がロータコア12の端面から飛び出すことを抑制することができる。
【0047】
なお、第4の回転子においては、磁石13の端面と対向する支持部18bを有するが、この形態に限られない。端板には、支持部を有しないように凹部が形成されていても構わない。例えば、磁石の端面の全体が凹部の領域の内部に配置されるように形成されていても構わない。すなわち、磁石の端面が、凹部の領域の内部に配置される様に凹部が大きく形成されていても構わない。
【0048】
第4の回転子のその他の構成、作用および効果については、第1の回転子から第3の回転子と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0049】
図13に、本実施の形態における第5の回転子の端板の斜視図を示す。第5の回転子の端板19には、退避部として複数の凹部19aが形成されている。複数の凹部19aは、磁石13の領域に対応するように互いに離れて形成されている。凹部19aは、周方向に沿って形成されている。図13には、穴部26を有する一方の端板19が示されている。挿入部25を有する他方の端板19は、一方の端板19と同様の凹部19aを有する。
【0050】
図14に、第5の回転子において、複数の凹部が形成されている領域と磁石が配置される領域とを説明する端板の平面図を示す。図14においては、破線にて磁石13が配置される領域41が示されている。それぞれの凹部19aは、磁石が配置される領域41に対応して形成されている。また、この例においては、1個の磁石13に対して1個の凹部19aが形成されている。
【0051】
凹部19aの径方向の長さは、磁石13の径方向の最大の厚さよりも短くなるように形成されている。また、凹部19aの周方向の長さは、磁石13の周方向の長さよりも短くなるように形成されている。端板19の支持部19bは、磁石が配置される領域41のうち、凹部19aの周方向の側方の部分および凹部19aの径方向の側方の部分にて構成されている。端板19が支持部19bを含むことにより、磁石が回転軸51の延びる方向に移動することを抑制できる。
【0052】
第5の回転子のその他の構成、作用および効果については、第1の回転子から第4の回転子と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0053】
本実施の形態の第4の回転子および第5の回転子においては、端板に周方向に延びる凹部が形成されているが、この形態に限られない。凹部は、磁石に対向する領域のうち少なくとも一部の領域に形成されることができる。例えば、磁石が配置されている領域に点状の凹部が形成されていても構わない。
【0054】
上記の実施の形態の端板においては、切欠き部または凹部の一方の待避部が形成されているが、この形態に限られない。端板には、切欠き部および凹部のうち少なくとも一方を形成することができる。例えば、1つの端板に、切欠き部および凹部が周方向に沿って交互に形成されていても構わない。または、一方の端板に切欠き部が形成され、他方の端板に凹部が形成されていても構わない。
【0055】
本実施の形態における回転子は、ロータコアの外周面に複数の永久磁石が周方向に配置されている表面磁石型の回転子であるが、この形態に限られない。ロータコアの内部に永久磁石が埋め込まれている回転子にも本実施の形態の退避部を備える端板を配置することができる。
【0056】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される実施の形態の変更が含まれている。
【符号の説明】
【0057】
1 回転子
2 電動機
6 固定子
11 シャフト
12 ロータコア
13 磁石
13a 端面
14,15,16,18,19 端板
14a,15a,16a 切欠き部
14b,15b 支持部
18a,19a 凹部
18b,19b 支持部
35 接着剤
51 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図14