(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】破断面検査装置及び破断面検査方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20231108BHJP
G01M 13/00 20190101ALI20231108BHJP
G01M 17/007 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G01M13/00
G01M17/007 Z
(21)【出願番号】P 2019217865
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000139687
【氏名又は名称】株式会社安永
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 僚祐
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-211195(JP,A)
【文献】特開2012-73142(JP,A)
【文献】特許第6591131(JP,B1)
【文献】特開2016-170624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - 11/30
G01M 13/00
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の破断分割により生じる第1破断面及び第2破断面を検査する破断面検査装置であって、
前記第1破断面及び前記第2破断面のそれぞれの二次元データ及び三次元データを取得するデータ取得部と、
前記二次元データから前記第1破断面の第1輪郭及び前記第2破断面の第2輪郭を抽出する輪郭抽出部と、
前記第2輪郭をアフィン変換して前記第1輪郭に変換するときの変換量を算出する変換量算出部と、
前記第2破断面の前記三次元データを前記変換量でアフィン変換して歪み補正データを算出する歪み補正部と、
前記第1破断面の前記三次元データと前記歪み補正データとを比較する比較部と、を備える破断面検査装置。
【請求項2】
前記データ取得部は、前記二次元データ及び前記三次元データを同一の位置から同一の角度で取得する、請求項1に記載の破断面検査装置。
【請求項3】
前記三次元データから前記第1破断面の第1最小二乗平面及び前記第2破断面の第2最小二乗平面を算出する平面算出部と、
前記第1最小二乗平面を前記第2最小二乗平面に変換するときの補正量を算出する補正量算出部と、を備え、
前記比較部は、前記第1破断面の前記三次元データと前記補正量により補正された前記歪み補正データとを比較する、請求項1又は2に記載の破断面検査装置。
【請求項4】
前記第1破断面及び前記第2破断面の少なくとも一方の最小二乗平面に対する最小二乗誤差を所定の誤差閾値と比較する起伏判定部を備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の破断面検査装置。
【請求項5】
部品の破断分割により生じる第1破断面及び第2破断面を検査する破断面検査方法であって、
前記第1破断面及び前記第2破断面のそれぞれの二次元データ及び三次元データを取得するデータ取得工程と、
前記二次元データから前記第1破断面の第1輪郭及び前記第2破断面の第2輪郭を抽出する輪郭抽出工程と、
前記第2輪郭をアフィン変換して前記第1輪郭に変換するときの変換量を算出する変換量算出工程と、
前記第2破断面の前記三次元データを前記変換量でアフィン変換して歪み補正データを算出する歪み補正工程と、
前記第1破断面の前記三次元データと前記歪み補正データとを比較する比較工程と、を含む破断面検査方法。
【請求項6】
前記データ取得工程においては、前記二次元データ及び前記三次元データが同一の位置から同一の角度で取得される、請求項5に記載の破断面検査方法。
【請求項7】
前記三次元データから前記第1破断面の第1最小二乗平面及び前記第2破断面の第2最小二乗平面を算出する平面算出工程と、
前記第1最小二乗平面を前記第2最小二乗平面に変換するときの補正量を算出する補正量算出工程と、を含み、
前記比較工程においては、前記第1破断面の前記三次元データと前記補正量により補正された前記歪み補正データとを比較する、請求項5又は6に記載の破断面検査方法。
【請求項8】
前記第1破断面及び前記第2破断面の少なくとも一方の最小二乗平面に対する最小二乗誤差を所定の誤差閾値と比較する起伏判定工程を含む、請求項5乃至7のいずれかに記載の破断面検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破断面検査装置及び破断面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジンに使用されるコネクティングロッド(コンロッド)は、ピストンとクランクシャフトとを連結し、当該ピストンの往復運動を当該クランクシャフトの回転運動に変換する部材として広く使用されている。コンロッドは、いわゆるFS(Fracture Splitting)工法により、大端部をロッド部とキャップ部とに破断して分割(半割)し、クランクシャフトに組み付けて互いをボルト締結することにより、互いの破断面に生じた凹凸を位置決めに用いて安価に製造することができる。
【0003】
ここで、FS工法により形成されるコンロッドは、ロッド部とキャップ部とに破断するときに破断面の一部が欠損した場合には、両者の破断面を再結合させた結合面において空隙が生じて強度が低下することになる。このような問題に対し、例えば特許文献1及び2に開示された従来技術では、コンロッドの破断面の凹凸形状を測定し、破断時の欠損を評価する破断面検査方法が用いられている。
【0004】
より具体的には、特許文献1の従来技術は、破断分割したロッド部及びキャップ部を固定用治具に配置すると共に、破断面に照射したレーザ光の投射像を異なる角度から撮像することにより凹凸の三次元データを取得し、一方の破断面の撮像データを上下左右に反転して他方の撮像データとの凹凸高さの差分を算出することにより、生産ラインに対してオンラインで破断面の検査を行う方法である。
【0005】
また、特許文献2の従来技術は、ロッド部及びキャップ部の破断面を撮像するCCDカメラの合焦制御情報により凹凸の三次元データを取得し、破断面の輪郭上に設定した複数の特徴点から双方に共通する基準面を設定すると共に、当該基準面と破断面との距離を測定点ごとにロッド部とキャップ部とで比較することにより、複雑なプログラムを用いることなく破断面の検査を行う方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-211195号公報
【文献】特開2012-73142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の各従来技術では、撮像装置に対する破断面の傾斜角及び距離がロッド部とキャップ部とで互いに異なる場合、当該撮像装置の画角に対する撮像破断面の比率も異なることから、対応する2つの破断面でデータ点の座標が一致しないことにより測定精度が低下する虞が生じる。特に、特許文献1の従来技術では、同時に測定したロッド部及びキャップ部の破断面の三次元データにおいて、撮像データの平面上の位置座標により破断面の領域を特定しているため、データ取得の時点で既に破断面の座標が一致しない場合には、ロッド部とキャップ部との対応するデータ点が全てずれてしまい、適切な破断面検査を行うことができない。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高速かつ高精度で部品の破断面を検査することができる破断面検査装置、及び破断面検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、部品の破断分割により生じる第1破断面及び第2破断面を検査する破断面検査装置であって、前記第1破断面及び前記第2破断面のそれぞれの二次元データ及び三次元データを取得するデータ取得部と、前記二次元データから前記第1破断面の第1輪郭及び前記第2破断面の第2輪郭を抽出する輪郭抽出部と、前記第2輪郭をアフィン変換して前記第1輪郭に変換するときの変換量を算出する変換量算出部と、前記第2破断面の前記三次元データを前記変換量でアフィン変換して歪み補正データを算出する歪み補正部と、前記第1破断面の前記三次元データと前記歪み補正データとを比較する比較部と、を備える破断面検査装置である。
【0010】
破断面検査装置は、検査対象となる第1破断面及び第2破断面について、二次元データに基づいて第1輪郭及び第2輪郭をそれぞれ算出すると共に、第2輪郭を第1輪郭にアフィン変換する変換量を用いて第2破断面の三次元データをアフィン変換する。このとき得られる第2破断面についての歪み補正データは、三次元データを取得する方向から平面視した場合に第1破断面の三次元データとデータ点の座標がそれぞれ一致することになる。そのため、破断面検査装置は、第1破断面の三次元データと第2破断面の歪み補正データとをそれぞれのデータ点ごとに比較することができる。また、アフィン変換に係る変換量の算出、及び歪み補正データへのアフィン変換は、二次元座標においてのみ演算されるため、演算処理を高速化することが可能となる。従って、本発明の第1の態様に係る破断面検査装置によれば、高速かつ高精度で部品の破断面を検査することができる。
【0011】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、上記した本発明の第1の態様において、前記データ取得部は、前記二次元データ及び前記三次元データを同一の位置から同一の角度で取得する、破断面検査装置である。
【0012】
本発明の第2の態様に係る破断面検査装置によれば、各破断面の二次元データ及び三次元データが例えば同一の撮像装置により取得されることで、両者の撮像領域が必ず完全に一致することになり、より高速かつ高精度で部品の破断面を検査することができる。
【0013】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、上記した本発明の第1又は2の態様において、前記三次元データから前記第1破断面の第1最小二乗平面及び前記第2破断面の第2最小二乗平面を算出する平面算出部と、前記第1最小二乗平面を前記第2最小二乗平面に変換するときの補正量を算出する補正量算出部と、を備え、前記比較部は、前記第1破断面の前記三次元データと前記補正量により補正された前記歪み補正データとを比較する、破断面検査装置である。
【0014】
本発明の第3の態様に係る破断面検査装置によれば、各破断面のそれぞれの最小二乗平面を算出し、両者の相対的な傾斜角に対応する補正量に基づいて、歪み補正データのそれぞれのデータ点がアフィン変換に対して垂直な方向に補正されるため、第1破断面と第2破断面との相対的な傾斜角が比較的大きい場合であっても、より高速かつ高精度で部品の破断面を検査することができる。
【0015】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、上記した本発明の第1乃至3のいずれかの態様において、前記第1破断面及び前記第2破断面の少なくとも一方の最小二乗平面に対する最小二乗誤差を所定の誤差閾値と比較する起伏判定部を備える、破断面検査装置である。
【0016】
本発明の第4の態様に係る破断面検査装置によれば、各破断面の三次元データに基づいて各破断面と近似平面としての最小二乗平面との最小二乗誤差を算出することにより、各破断面の凹凸がFS工法に適した十分な起伏を有しているか否かを判定することができる。
【0017】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、部品の破断分割により生じる第1破断面及び第2破断面を検査する破断面検査方法であって、前記第1破断面及び前記第2破断面のそれぞれの二次元データ及び三次元データを取得するデータ取得工程と、前記二次元データから前記第1破断面の第1輪郭及び前記第2破断面の第2輪郭を抽出する輪郭抽出工程と、前記第2輪郭をアフィン変換して前記第1輪郭に変換するときの変換量を算出する変換量算出工程と、前記第2破断面の前記三次元データを前記変換量でアフィン変換して歪み補正データを算出する歪み補正工程と、前記第1破断面の前記三次元データと前記歪み補正データとを比較する比較工程と、を含む破断面検査方法である。
【0018】
破断面検査方法においては、検査対象となる第1破断面及び第2破断面について、二次元データに基づいて第1輪郭及び第2輪郭がそれぞれ算出されると共に、第2輪郭を第1輪郭にアフィン変換する変換量を用いて第2破断面の三次元データがアフィン変換される。このとき得られる第2破断面についての歪み補正データは、三次元データを取得する方向から平面視した場合に第1破断面の三次元データとデータ点の座標がそれぞれ一致することになる。そのため、破断面検査方法によれば、第1破断面の三次元データと第2破断面の歪み補正データとをそれぞれのデータ点ごとに比較することができる。また、アフィン変換に係る変換量の算出、及び歪み補正データへのアフィン変換は、二次元座標においてのみ演算されるため、演算処理を高速化することが可能となる。従って、本発明の第5の態様に係る破断面検査方法によれば、高速かつ高精度で部品の破断面を検査することができる。
【0019】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、上記した本発明の第5の態様において、前記データ取得工程においては、前記二次元データ及び前記三次元データが同一の位置から同一の角度で取得される、破断面検査方法である。
【0020】
本発明の第6の態様に係る破断面検査方法によれば、各破断面の二次元データ及び三次元データが例えば同一の撮像装置により取得されることで、両者の撮像領域が必ず完全に一致することになり、より高速かつ高精度で部品の破断面を検査することができる。
【0021】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、上記した本発明の第5又は6の態様において、前記三次元データから前記第1破断面の第1最小二乗平面及び前記第2破断面の第2最小二乗平面を算出する平面算出工程と、前記第1最小二乗平面を前記第2最小二乗平面に変換するときの補正量を算出する補正量算出工程と、を含み、前記比較工程においては、前記第1破断面の前記三次元データと前記補正量により補正された前記歪み補正データとを比較する、破断面検査方法である。
【0022】
本発明の第7の態様に係る破断面検査方法によれば、各破断面のそれぞれの最小二乗平面が算出され、両者の相対的な傾斜角に対応する補正量に基づいて、歪み補正データのそれぞれのデータ点がアフィン変換に対して垂直な方向に補正されるため、データ取得部に対して第1破断面と第2破断面との相対的な傾斜角が比較的大きい場合であっても、より高速かつ高精度で部品の破断面を検査することができる。
【0023】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、上記した本発明の第5乃至7の態様において、前記第1破断面及び前記第2破断面の少なくとも一方の最小二乗平面に対する最小二乗誤差を所定の誤差閾値と比較する起伏判定工程を含む、破断面検査方法である。
【0024】
本発明の第8の態様に係る破断面検査方法によれば、各破断面の三次元データに基づいて各破断面と近似平面としての最小二乗平面との最小二乗誤差を算出することにより、各破断面の凹凸がFS工法に適した十分な起伏を有しているか否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高速かつ高精度で部品の破断面を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る破断面検査の対象となる部品の正面図及び分解図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る破断面検査装置の全体構成図である。
【
図3】第1破断面及び第2破断面が撮像装置に対して互いに異なる角度で撮像される状態を模式的に示す側面図である。
【
図4】第1破断面及び第2破断面が撮像装置に対して互いに異なる距離で撮像される状態を模式的に示す側面図である。
【
図5】本発明に係る破断面検査方法の手順を示すフローチャートである。
【
図6】第1破断面及び第2破断面の二次元データの一例を表す模式図である。
【
図7】第1破断面及び第2破断面の三次元データの一例を表す模式図である。
【
図9】第2破断面の歪み補正データを傾斜角に応じて補正する工程を示す模式図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る破断面検査装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0028】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る破断面検査の対象となる部品の正面図及び分解図である。より具体的には、本実施形態における部品は、一般の車両用エンジンを構成する金属製部品としてのコネクティングロッド(以下、コンロッド1という)である。尚、本発明に係る破断面検査が適用される部品は、破断分割により生じる2つの破断面の噛み合わせ検査を要する部品であればよく、コンロッド1に限定されるものではない。
【0029】
本実施形態に係るコンロッド1は、
図1(a)に示すように、ピストンピン孔2を有する小端部3と、クランクピン孔4を有する大端部5と、これら小端部3と大端部5とを連結するロッド6とを有している。また、大端部5は、図示しないクランクピンを挟み込めるよう、ロッド部P1と半円弧形のキャップ部P2とに分割される(FS工法:Fracture Splitting)。そして、コンロッド1は、ロッド部P1とキャップ部P2とを連通するように形成された一対のボルト孔7にボルト8をそれぞれ挿入することにより、クランクピンをクランクピン孔4に挟み込んだ状態でロッド部P1とキャップ部P2とが締結される。これにより、コンロッド1は、互いの破断面に生じた凹凸を位置決めに用いて安価に製造することができる。
【0030】
ここで、コンロッド1は、ロッド部P1とキャップ部P2とを破断分割することにより、
図1(b)に示すように、一対の第1破断面FS1及び第2破断面FS2が生じると共に、一対の第3破断面FS3及び第4破断面FS4が生じることになる。また、本実施形態においては、平面視した場合の各破断面の形状が略長方形であるものとし、第1破断面FS1及びこれに対応する第2破断面FS2のそれぞれの頂点をA~D、A´~D´として説明する。尚、以下では、主に第1破断面FS1及び第2破断面FS2について説明することとし、両者と同様の関係にある第3破断面FS3及び第4破断面FS4については詳細な説明を省略する。
【0031】
ところで、FS工法により形成されるコンロッド1は、ロッド部P1とキャップ部P2とに破断するときに破断面の一部が欠損した場合には、両者の破断面を再結合させた結合面において空隙が生じて強度が低下する虞が生じる。そのため、コンロッド1は、各破断面の凹凸の三次元データに基づいて、欠損の有無等の破断面の状態に関する破断面検査を行う必要が生じる。
【0032】
図2は、本発明の第1実施形態に係る破断面検査装置10の全体構成図である。破断面検査装置10は、ロッド部P1及びキャップ部P2からなる検査対象物Pの破断面における三次元データを取得して破断面検査を行う。ここで、本実施形態においては、第1破断面FS1及び第2破断面FS2の三次元データを個別に取得するものとして説明するが、両者を同時に取得してもよく、更には第1破断面FS1~第4破断面FS4の三次元データを同時に取得してもよい。破断面検査装置10は、データ取得部20、照明装置30、搬送装置40、及び制御装置50を備える。
【0033】
データ取得部20は、検査対象物Pの第1破断面FS1及び第2破断面FS2のそれぞれの二次元データ及び三次元データを取得する。より具体的には、本実施形態に係るデータ取得部20は、例えばCCDカメラからなる撮像装置21、及びプロジェクタとしての投射装置22を含む。そして、データ取得部20は、各破断面の画像としての二次元データを取得すると共に、各破断面の三次元データを取得する。本実施形態に係る当該三次元データは、制御装置50において、公知の位相シフト法により生成される。
【0034】
より具体的には、制御装置50は、投射装置22から検査対象物Pの破断面に対し正弦波状の光強度分布を有する光パターンを当該正弦波の位相を変化させながら投射し、撮像装置21を介して当該破断面の複数の三次元データ生成用画像を取得する。そして、制御装置50は、検査対象物Pに投射された光パターンが破断面の凹凸に伴い歪むことを利用して、複数の三次元データ生成用画像に基づいて、破断面における凹凸の三次元データを構成することができる。
【0035】
照明装置30は、撮像装置21によって検査対象物Pの二次元データを取得する場合の光源として用いられると共に、三次元データを取得する場合の補助光源として用いてもよい。尚、本実施形態においては、検査対象物Pの両側から照明光を投射しているが、照明装置30の数及び配置は、条件に応じて適宜変更することができる。
【0036】
搬送装置40は、例えばベルトコンベアからなり、破断面検査を行うための位置、すなわち本実施形態においては撮像装置21の直下に検査対象物Pを搬送する。このとき、検査対象物Pは、破断面が撮像装置21を向くように搬送装置40上の台座部40aに固定されている。
【0037】
制御装置50は、例えば予め記憶されたプログラムを実行可能な公知のマイコン制御回路又は汎用計算機からなり、データ取得部20、照明装置30、及び搬送装置40に接続されることにより各接続先の制御及び信号送受を行いつつ、後述する破断面検査方法に係る手順を実行するなど、破断面検査装置10の全体を統括制御する。また、制御装置50は、データ処理に係る機能的なモジュールとして、輪郭抽出部51、変換量算出部52、歪み補正部53、平面算出部54、補正量算出部55、比較部56、及び起伏判定部57を含む。各モジュールの働きについては後述する破断面検査方法と共に説明する。
【0038】
次に、破断面検査における課題について
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、第1破断面FS1及び第2破断面FS2が撮像装置21に対して互いに異なる角度で撮像される状態を模式的に示す側面図である。より具体的には、ロッド部P1の第1破断面FS1が撮像装置21のレンズ面に対して略平行となる状態で撮像される場合が
図3(a)で表され、キャップ部P2の第2破断面FS2が撮像装置21のレンズ面に対して傾斜した状態で撮像される場合が
図3(b)で表されている。例えば、キャップ部P2が台座部40aに対して僅かに傾斜した状態で固定されている場合等に
図3(b)のような状態となり得る。尚、
図3(b)では、第2破断面FS2の傾斜角を大幅に強調して示している。また、
図3及び
図4においては、撮像装置21が画角内を等角でサンプリングする概念を放射状の破線で示している。
【0039】
第1破断面FS1及び第2破断面FS2のそれぞれが
図3に示される状態で撮像された場合、各破断面の撮像画像におけるデータ数が異なるほか、仮に対応する点A及び点A´の位置座標を揃えるように平行移動させたとしても、対応する2つの破断面でデータ点の座標がずれて一致しなくなってしまい、対応する位置どうしの比較ができなくなってしまう。更に、ロッド部P1及びキャップ部P2は、破断分割の際に大端部5に対して破断面自体が傾斜して形成されることもあるため、台座部40aに固定される際の傾斜と相まって、両者の比較が一層困難になる。
【0040】
図4は、第1破断面FS1及び第2破断面FS2が撮像装置21に対して互いに異なる距離で撮像される状態を模式的に示す側面図である。より具体的には、ロッド部P1の第1破断面FS1が撮像装置21のレンズ面に対して相対的に近い状態で撮像される場合が
図4(a)で表され、キャップ部P2の第2破断面FS2が撮像装置21のレンズ面に対して相対的に遠い状態で撮像される場合が
図4(b)で表されている。例えば、ロッド部P1とキャップ部P2との形状の違いに伴って台座部40aへの固定形態が異なる場合や、大端部5における破断位置が僅かにずれた場合等に
図4(b)のような状態となり得る。尚、
図4では、撮像装置21から第1破断面FS1及び第2破断面FS2までのそれぞれの距離差を大幅に強調して示している。
【0041】
第1破断面FS1及び第2破断面FS2のそれぞれが
図4に示される状態で撮像された場合、各破断面の撮像画像におけるデータ数が異なるほか、仮に対応する点A及び点A´の位置座標を揃えるように平行移動させたとしても、対応する2つの破断面でデータ点の座標がずれて一致しなくなってしまい、やはり対応する位置どうしの比較ができなくなってしまう。
【0042】
続いて、破断面検査における上記課題を解決するための本発明の破断面検査方法について説明する。
図5は、本発明に係る破断面検査方法の手順を示すフローチャートである。制御装置50は、
図5のフローチャートに示すプログラムを実行することにより、ロッド部P1及びキャップ部P2の破断面を検査する。
【0043】
破断面検査方法に係るプログラムがスタートすると、制御装置50は、撮像装置21の直下にロッド部P1を搬送するよう搬送装置40を制御した上で、撮像装置21を介して第1破断面FS1の二次元データを取得する(ステップS1)。すなわち、撮像装置21は、ロッド部P1の第1破断面FS1を撮像する。
【0044】
続いて、制御装置50は、搬送装置40を停止させたまま、データ取得部20を介して位相シフト法により複数の三次元データ生成用画像を取得すると共に、第1破断面FS1の三次元データを取得する(ステップS2)。尚、ステップS1及びステップS2における撮像装置21及び第1破断面FS1の位置関係に変動はないため、両ステップで撮像された二次元データと三次元データとの撮像領域は全く同じものとなる。
【0045】
次に、制御装置50は、撮像装置21の直下にキャップ部P2を搬送するよう搬送装置40を制御した上で、撮像装置21を介して第2破断面FS2の二次元データを取得する(ステップS3)。すなわち、撮像装置21は、キャップ部P2の第2破断面FS2を撮像する。
【0046】
また、制御装置50は、搬送装置40を停止させたまま、データ取得部20を介して位相シフト法により複数の三次元データ生成用画像を取得すると共に、第2破断面FS2の三次元データを取得する(ステップS4)。尚、ステップS3及びステップS4における撮像装置21及び第2破断面FS2の位置関係についても変動はないため、両ステップで撮像された二次元データと三次元データとの撮像領域は全く同じものとなる。
【0047】
ここで、本実施形態においては、二次元データ及び三次元データの取得を第1破断面FS1及び第2破断面FS2に対して個別に行なっているが、第1破断面FS1及び第2破断面FS2のそれぞれに対して、データ取得部20が二次元データ及び三次元データを同一の位置から同一の角度で取得する限り、ステップS1乃至ステップS4の順序は問わず、又は並行して同時に行なってもよい(データ取得工程)。
【0048】
各破断面の二次元データ及び三次元データが取得されると、制御装置50の輪郭抽出部51は、ロッド部P1及びキャップ部P2のそれぞれの二次元データにおいて、第1破断面FS1の第1輪郭及び第2破断面FS2の第2輪郭をそれぞれ抽出する(ステップS5、輪郭抽出工程)。輪郭抽出は、画像処理分野で一般的に使用されるエッジ検出等の手法を用いて行うことができる。
【0049】
図6は、第1破断面FS1及び第2破断面FS2の二次元データの一例を表す模式図である。ここで、本実施形態においては、第1破断面FS1は、例えば
図4(a)に示されるように撮像装置21のレンズ面に対して略平行に配置されている場合には、
図6においてImg(FS1)で示されるような第1破断面FS1の二次元データが取得される。この場合、輪郭抽出部51は、ステップS5のタイミングにおいて、第1破断面FS1の二次元データImg(FS1)から長方形の第1輪郭ABCDを抽出することになる。
【0050】
これに対し、第2破断面FS2は、例えば
図3(b)及び
図4(b)に示されるように撮像装置21のレンズ面に対して傾斜し且つ相対的に遠くに配置され、更に画角中心からずれた状態で撮像される場合には、
図6において第2破断面FS2の二次元データImg(FS2)で示されるような二次元データが取得される。この場合、輪郭抽出部51は、ステップS5のタイミングにおいて、第2破断面FS2の二次元データImg(FS2)から台形の第2輪郭A´B´C´D´を抽出することになる。尚、各破断面の輪郭は、撮像装置21に対する傾斜角及び傾斜方向により他の形状にもなり得る。
【0051】
ここで、
図6における第2破断面FS2の二次元データImg(FS2)には、破線によって第1破断面FS1の第1輪郭を重ねて示している。このように、第1輪郭と第2輪郭とが互いに異なる場合には、撮像装置21のレンズ面に対して平行な平面(XY平面)上において、第1破断面FS1と第2破断面FS2との間で対応する位置座標どうしを単純に比較できないことになる。そのため、制御装置50の変換量算出部52は、抽出された第2輪郭を第1輪郭に一致させるようにアフィン変換し、そのときの変換量X(affine)を算出する(ステップS6、変換量算出工程)。
【0052】
次に、制御装置50の歪み補正部53は、二次元データに基づいて算出された変換量X(affine)を使用して、第2破断面FS2の三次元データをアフィン変換する(ステップS7、歪み補正工程)。
図7は、第1破断面FS1及び第2破断面FS2の三次元データの一例を表す模式図である。ここで、
図7においては、データ取得工程において取得された第1破断面FS1及び第2破断面FS2の三次元データをそれぞれVol(FS1)、Vol(FS2)として示している。
【0053】
歪み補正工程においては、歪み補正部53は、第2破断面FS2の三次元データVol(FS2)に対し、図中の矢印Tx、Tyで示すようにXY平面の軸方向に変換量X(affine)でアフィン変換することで、第2破断面FS2についての歪み補正データαVol(FS2)を算出する。このとき、歪み補正部53は、歪み補正データαVol(FS2)におけるデータ点の座標位置が第1破断面FS1の三次元データVol(FS1)の座標位置のそれぞれと一致するように補完処理によりデータ数を増加させている。補完処理については、画像処理分野で一般的に使用される線形補完等の手法を用いて行うことができる。
【0054】
ここで、撮像装置21のレンズ面に対する第1破断面FS1と第2破断面FS2との相対的な傾斜角が無視できる程度に小さい場合には、第1破断面FS1の三次元データVol(FS1)と第2破断面FS2の歪み補正データαVol(FS2)とを比較することにより破断面検査を行うことができる。一方、当該傾斜角が無視できない程度に大きい場合には、制御装置50は、次に説明する平面算出工程により当該傾斜角の大きさを算出し、XY平面に垂直なZ方向に対して歪み補正データαVol(FS2)を補正してもよい。
【0055】
図8は、平面算出工程を示す模式図である。制御装置50の平面算出部54は、第1破断面FS1及び第2破断面FS2の三次元データの相対的な傾斜角を把握するため、第1破断面FS1を平面で近似する第1最小二乗平面Sls1と第2破断面FS2を平面で近似する第2最小二乗平面Sls2とを算出する(ステップS8、平面算出工程)。
【0056】
より具体的には、平面算出部54は、第1破断面FS1の三次元データに対し、傾斜角を変数とする平面との最小二乗誤差を算出することにより、第1破断面FS1との二乗誤差が最小となる傾斜角の第1最小二乗平面Sls1を特定する。また、平面算出部54は、第2破断面FS2の三次元データに対しても同様に、第2破断面FS2との二乗誤差が最小となる傾斜角の第2最小二乗平面Sls2を特定する。これにより平面算出部54は、三次元データにおいてXY平面に垂直な高さ情報(Z方向)を揃えるため、第2最小二乗平面Sls2を第1最小二乗平面Sls1に変換するときの補正量X(angle)を算出する(ステップS9、補正量算出工程)。尚、最小二乗誤差の算出方法自体については公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、それぞれの最小二乗誤差のうち少なくとも一方は、後の工程においても使用する。
【0057】
図9は、第2破断面FS2の歪み補正データαVol(FS2)を傾斜角に応じて補正する工程を示す模式図である。ここでは、制御装置50の歪み補正部53は、第2破断面FS2の歪み補正データαVol(FS2)におけるそれぞれのデータ点を、補正量X(angle)に基づいて図中の矢印Tzで示すようにZ方向に補正することで、Z方向に補正された歪み補正データβVol(FS2)を算出する(ステップS10)。これにより、第2破断面FS2の凹凸は、第1破断面FS1に対する相対的な傾斜角が比較的大きい場合であっても、第1破断面FS1の三次元データVol(FS1)と比較可能な歪み補正データβVol(FS2)として算出されることになる。
【0058】
そして、ステップS10において歪み補正データβVol(FS2)が得られると、制御装置50の比較部56は、第1破断面FS1の三次元データVol(FS1)と第2破断面FS2の歪み補正データβVol(FS2)とを対応する座標位置ごとに比較することにより、第1破断面FS1と第2破断面FS2との凹凸形状の対応関係を算出する。より具体的には、比較部56は、第1破断面FS1の三次元データVol(FS1)と歪み補正データβVol(FS2)との破断面どうしの差分値(欠損量)を算出し、当該差分値が予め任意に設定される所定の欠損閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップS11、比較工程)。ステップS11において差分値が欠損閾値よりも小さいと判定されることにより(ステップS11でYes)、ロッド部P1とキャップ部P2とを再結合させる場合の欠損量が十分に少ないことが確認できる。
【0059】
ところで、第1破断面FS1及び第2破断面FS2の欠損量が十分に少ない状態であっても、各破断面の凹凸が極めて小さく平坦度が高い場合には、各破断面の互いの凹凸を位置決めに用いるFS工法の効果を十分に発揮できない可能性が生じる。そのため、制御装置50は、上記の欠損評価に加え、各破断面に十分な凹凸が存在するか否かの起伏判定を行う。
【0060】
より具体的には、平面算出工程において算出された第1破断面FS1及び第2破断面FS2の少なくとも一方の最小二乗誤差を破断面の凹凸の指標とすることができることから、制御装置50の起伏判定部57は、当該最小二乗誤差が予め任意に設定される所定の誤差閾値よりも大きい場合に、各破断面に十分な凹凸が存在しているものと判定することができる(ステップS12、起伏判定工程)。これにより、制御装置50は、各破断面における欠損評価に加え、各破断面の起伏が十分か否かを評価することができる。
【0061】
そして、制御装置50は、各破断面の上記した欠損評価及び起伏評価が共に良好である場合に(ステップS12でYes)、検査対象物Pの各破断面が再結合に適した良好な状態であるとしてOK判定を行い(ステップS13)、破断面検査方法に係る一連のプログラムを終了する。
【0062】
一方、制御装置50は、各破断面の上記した欠損評価及び起伏評価のいずれかが良好でない場合には(ステップS11又はステップS12でNo)、検査対象物Pの各破断面が良好な状態でないとしてNG判定を行い(ステップS14)、破断面検査方法に係る一連のプログラムを終了する。尚、複数の検査対象物Pを連続的に検査する場合には、当該プログラムを連続的に実行してもよい。
【0063】
以上のように、本発明に係る破断面検査装置10は、検査対象となる第1破断面FS1及び第2破断面FS2について、それぞれの二次元データImg(FS2)、Img(FS1)に基づいて第1輪郭及び第2輪郭をそれぞれ算出すると共に、第2輪郭を第1輪郭にアフィン変換する変換量X(affine)を用いて第2破断面FS2の三次元データVol(FS2)をアフィン変換する。このとき得られる第2破断面についての歪み補正データαVol(FS2)は、三次元データを取得する方向から平面視した場合に第1破断面FS1の三次元データVol(FS1)とデータ点の座標がそれぞれ一致することになる。そのため、破断面検査装置10は、第1破断面FS1の三次元データVol(FS1)と第2破断面FS2の歪み補正データαVol(FS2)とをそれぞれのデータ点ごとに比較することができる。また、アフィン変換に係る変換量X(affine)の算出、及び歪み補正データαVol(FS2)へのアフィン変換は、二次元座標においてのみ演算されるため、演算処理を高速化することが可能となる。従って、本発明の第1実施形態に係る破断面検査装置10によれば、高速かつ高精度で部品の破断面を検査することができる。
【0064】
また、本発明の第1実施形態に係る破断面検査装置10によれば、各破断面の二次元データ及び三次元データが同一の撮像装置21により取得されることで、両者の撮像領域が必ず完全に一致することになり、より高速かつ高精度で部品の破断面を検査することができる。
【0065】
更に、本発明の第1実施形態に係る破断面検査装置10によれば、第1破断面FS1の第1最小二乗平面Sls1と第2破断面FS2の第2最小二乗平面Sls2とをそれぞれ算出し、両者の相対的な傾斜角に対応する補正量X(angle)に基づいて、歪み補正データαVol(FS2)のそれぞれのデータ点をアフィン変換に対して垂直な方向Tzに補正することにより、データ取得部20に対して第1破断面FS1と第2破断面FS2との相対的な傾斜角が比較的大きい場合であっても、より高速かつ高精度で部品の破断面を検査することができる。
【0066】
そして、本発明の第1実施形態に係る破断面検査装置10によれば、各破断面の三次元データに基づいて各破断面と近似平面としての最小二乗平面との最小二乗誤差を算出することにより、各破断面の凹凸がFS工法に適した十分な起伏を有しているか否かを判定することができる。
【0067】
<第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態に係る破断面検査装置60について説明する。第2実施形態に係る破断面検査装置60は、上記した実施形態の破断面検査装置10におけるデータ取得部20の構成、及び検査対象物Pのデータ取得方法が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0068】
図10は、本発明の第2実施形態に係る破断面検査装置60の全体構成図である。破断面検査装置60のデータ取得部20は、検査対象物Pの斜め上方から破断面の2次元データを取得するよう配置される第1実施形態と同様の撮像装置21、及び検査対象物Pの直上から破断面の三次元データを取得するための3D測定装置23から構成されている。ここで、3D測定装置23としては、例えばレーザを利用した公知の非接触表面測定機を採用することができる。
【0069】
すなわち、第2実施形態においては、各破断面の二次元データ及び三次元データが、撮像装置21と3D測定装置23とのそれぞれによって独立して取得される。このとき、撮像装置21と3D測定装置23とは、座標変換により測定領域の位置合わせができるよう、相対配置及び画角の相対角度が固定且つ既知に設定されている。
【0070】
そのため、第2実施形態に係る破断面検査装置60は、各破断面の二次元データ及び三次元データを同一の位置から同一の角度で取得せずとも、
図5に示す破断面検査方法の手順をそのまま適用することができる。従って、破断面検査装置60は、第1実施形態と同様に、第2破断面FS2の三次元データVol(FS2)を変換量X(affine)で変換することにより歪み補正データαVol(FS2)を算出することができ、高速かつ高精度で部品の破断面を検査することができる。
【0071】
以上で、本発明に係る実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば上記の第1実施形態では、コンロッド1の各破断面を平面視した場合の輪郭形状を長方形として例示したが、実際の当該輪郭形状はこれに限られず様々な形状を取り得る。また、上記の第1実施形態では、位相シフト法により三次元データを取得する方法を例示したが、二次元データ取得用の撮像装置21により三次元データを取得することができれば、他の方法であってもよい。更に、上記の第1実施形態では、ロッド部P2の第2破断面FS2をキャップ部P1の第1破断面FS1に合わせるように変換する形態を例示したが、キャップ部P1の第1破断面FS1をロッド部P2の第2破断面FS2に合わせるように変換してもよい。そして、上記の第1実施形態では、
図5に示す破断面検査方法において、ステップS7におけるアフィン変換の後にステップS10における補正を行う形態を例示したが、変換量X(affine)と補正量X(angle)とを合成した新たな補正量により、第2破断面FS2の三次元データVol(FS2)から歪み補正データβVol(FS2)を算出してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 コンロッド
10、60 破断面検査装置
20 データ取得部
50 制御装置
51 輪郭抽出部
52 変換量算出部
53 歪み補正部
54 平面算出部
55 補正量算出部
56 比較部
57 起伏判定部
P1 キャップ部
P2 ロッド部
FS1 第1破断面
FS2 第2破断面