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  • 特許-固形化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20231108BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231108BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/25
A61K8/29
A61K8/89
A61K8/81
A61K8/37
A61Q1/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019218505
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021088517
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 寛史
(72)【発明者】
【氏名】中野 祐輔
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193607(JP,A)
【文献】特開2016-056171(JP,A)
【文献】特開2011-231102(JP,A)
【文献】特開2014-129281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)煙霧状シリカおよび微粒子酸化チタンから選択される1種以上の粉末 0.1~2質量%以下
(b)非極性炭化水素系ワックス 4質量%以上
(c)架橋型オルガノポリシロキサン 1~8質量%
(d)(a)成分以外の粉末 5~30質量%
(e)65質量%以上の非揮発性低粘度油分
を含有し
前記(b)成分が、30℃で固形の油分であり、
前記(e)成分が、30℃においてB型粘度計で測定した粘度が21,000mPa・s以下の非揮発性油分である、固形化粧料。
【請求項2】
前記(a)成分が疎水化煙霧状シリカである、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記(c)成分と、前記(d)成分との配合比が1:1~1:16.5である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
30℃においてB型粘度計で測定した粘度が21,000mPa・sを超える半固形油分を含まない、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
スティック状である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットな仕上がりでありながら、塗布時の延び広がりの良さに優れる固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料を肌に塗布した際の仕上がりの質感として、ツヤが抑えられ、きめの整った肌に見せるマット感が求められている。しかしながら、化粧料において肌に潤いを与えるための油性成分が多くなれば、ツヤ感が強くなり、求めるマット感が得られにくくなる。
【0003】
一般的に、粉末や粉末同士を結合させるための固化剤の配合量を多くしてマットな仕上がりを得ることが行われている。しかし、粉末を多く配合すると乾燥感が強くなり、化粧膜が重い印象となる。また、固化剤を多く配合すると塗布する際の延び広がりが悪くなるという問題が生じる。
さらに、マットな仕上がりを得るために、揮発性成分を配合することも一般的に行われているが、乾燥を感じるという問題があった。
【0004】
一方、特許文献1では、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物と、固形油と、粉体とを配合することにより、マットな仕上がりに優れ、延び広がりの良い化粧料を得ているが、当該化粧料はゲル状であるため、より成型性が良く、携帯の利便性に優れる固形化粧料が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-088099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、マットな仕上がりでありながら、なめらかに塗り広げることができる固形化粧料、特にスティック状固形化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、煙霧状シリカおよび微粒子酸化チタンから選択される1種以上の粉末、ワックス、架橋型オルガノポリシロキサン、前記粉末以外の粉末、および非揮発性低粘度油分の組み合わせにより、マットな仕上がりと塗布時の延び広がりの良さが両立した、成形性に優れる化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(a)煙霧状シリカおよび微粒子酸化チタンから選択される1種以上の粉末 0.1~2質量%以下
(b)ワックス 4質量%以上
(c)架橋型オルガノポリシロキサン 1~8質量%
(d)(a)成分以外の粉末 5~30質量%、および
(e)60質量%以上の非揮発性低粘度油分
を含有してなる、固形化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記構成とすることにより、肌に塗布する際の化粧料の延び広がりに優れ、塗布した肌に潤いを付与しながら、マットな仕上がりを有する化粧料を得ることができる。また、本願発明の化粧料は成形性が良いため、スティック状化粧料とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】架橋型オルガノポリシロキサンと粉末の配合量変化と試料の評価
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の固形化粧料は、(a)煙霧状シリカおよび微粒子酸化チタンから選択される1種以上の粉末と、(b)ワックスと、(c)架橋型オルガノポリシロキサンと、(d)(a)成分以外の粉末と、(e)非揮発性低粘度油分とを含有することを特徴とする。以下、本発明の固形化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0012】
(a)煙霧状シリカおよび微粒子酸化チタンから選択される1種以上の粉末
本発明に係る化粧料に配合される(a)煙霧状シリカおよび微粒子酸化チタンから選択される1種以上の粉末(以下、単に「(a)成分」と称する場合がある)は、通常化粧料に使用可能な煙霧状シリカまたは微粒子酸化チタンから選択されればよく、特に限定されないが、以下のように定義することができる。
【0013】
本発明の煙霧状シリカは、通常化粧料に用いられるシリカ(無水珪酸)であって、平均粒子径が1~50nm、好ましくは1~20nmである微粒子シリカを指す。この煙霧状シリカの平均粒子径は透過型電子顕微鏡あるいはレーザー散乱・回折法等によって測定することができる。
【0014】
本発明の煙霧状シリカには、親水性シリカ、および、前記親水性シリカの表面を疎水化処理したシリカが含まれる。前記疎水化処理の方法としては、トリメチルシリルクロライドおよびヘキサメチルジシラザン等によるトリメチルシロキシ化処理、ジメチルジクロロシランおよびトリメチルクロルシラン等によるシリル化処理、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いたコーティング焼き付け処理、ジメチルポリシロキサン、金属石鹸等によるコーティング等が挙げられる。
【0015】
煙霧状シリカの市販品としては、親水性であるAEROSIL 200、300、ジメチルジクロロシラン処理品であるAEROSIL R972、R974、ポリジメチルシロキサン処理品であるAEROSIL R202、シリコーンオイル処理品であるAEROSIL RY200(以上すべて、日本アエロジル社製)等が挙げられる。
これらの煙霧状シリカは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明の微粒子酸化チタンは、通常化粧料に用いられるものであって、平均一次粒子径が100nm以下の二酸化チタンを指す。この微粒子酸化チタンの平均粒子径は透過型電子顕微鏡あるいはレーザー散乱・回折法等によって測定することができる。本発明の微粒子酸化チタンの形状は、球状、楕円形状、破砕状等であり特に限定されない。
【0017】
本発明の微粒子酸化チタンは、表面疎水化処理が施されていてもよい。表面処理の方法としては、メチルハイドロゲンポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;その他、レシチン処理;金属石鹸処理;脂肪酸処理;アルキルリン酸エステル処理等が挙げられる。
【0018】
微粒子酸化チタンの市販品としては、MT-100TV(テイカ株式会社製)、TTO-S-4(石原テクノ株式会社製)等が挙げられる。
【0019】
本発明の(a)成分としては、煙霧状シリカおよび微粒子酸化チタンから選択される1種以上を混合して用いてもよい。
本発明の化粧料における(a)成分の配合量は、化粧料全量に対して0.1~2質量%以下であり、好ましくは0.1~2質量%未満である。配合量が0.1質量%未満であると十分なマット感が得られず、2質量%を超えると化粧料の成形性が悪くなる。
【0020】
(b)ワックス
本発明に係る固形化粧料に配合される(b)ワックス(以下、単に「(b)成分」と称する場合がある)は、通常化粧料に使用可能なワックスから選択することができる。例として、30℃で固形の油分であって、天然由来および合成の、油脂、炭化水素油、ロウ類、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油等が挙げられる。
【0021】
油脂としては、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0022】
炭化水素油としては、オゾケライト、セレシン、モクロウ、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプスワックス等が挙げられる。
【0023】
ロウ類としては、ミツロウ、ラノリン、カルナバワックス、キャンデリラロウ、米ぬかロウ(ライスワックス)、ゲイロウ、ホホバ油、ヌカロウ、モンタンロウ、カポックロウ、ベイベリーロウ、セラックロウ、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、硬質ラノリン、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0024】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸等が挙げられる。
【0025】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等);分岐鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール))等が挙げられる。
【0026】
エステル油としては、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸イヌリン、水素添加ホホバ油等が挙げられる。
【0027】
これらワックスは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ワックスの中でも、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の非極性炭化水素系ワックス、ミツロウ等の40~80℃の融点を有するロウ類から選択されるのが好ましい。
【0028】
本発明の固形化粧料における(b)成分の配合量は、化粧料全量に対して4質量%以上であり、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上である。配合量の上限としては15質量%以下であることが好ましい。配合量が4質量%未満であると化粧料の成形性が悪くなり、固形化粧料が調製できない。
【0029】
(c)架橋型オルガノポリシロキサン
本発明に係る固形化粧料に配合される(c)架橋型オルガノポリシロキサン(以下、単に「(c)成分」と称する場合がある)は、ポリジメチルシロキサンを三次元架橋させたシロキサンエラストマー(シリコーンエラストマー)であり、本発明においては特に非乳化性のものを指す。
【0030】
本発明の(c)成分の具体例としては、メチルポリシロキサンクロスポリマー、メチルフェニルポリシロキサンクロスポリマー等が挙げられる。これら非乳化性架橋型シロキサンエラストマーは、シリコーン油、ミネラルオイル、トリエチルヘキサノイン、スクワラン等の各種油分に膨潤された膨潤物の形態で市販されているものを用いることができる。具体例としては以下のものが挙げられる。
【0031】
メチルポリシロキサンクロスポリマーの膨潤物としては、9040シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は12%)、9041シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン5mPa・sの混合物で架橋物は16%)、9045シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は12.5%)、EL-8040IDシリコーンオーガニックブレンド(ジメチコンクロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は18%)(以上、東レ・ダウコーニング社製)等のジメチコンクロスポリマーの膨潤物や、KSG-15((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は4~10%)、KSG-16((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ジメチコン6mPa・sの混合物で架橋物は20~30%)、KSG-1610((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、メチルトリメチコンの混合物で架橋物は15~20%)(以上、信越化学工業社製)等のジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーの膨潤物等が挙げられる。
【0032】
メチルフェニルポリシロキサンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-18A((ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンの混合物で架橋物は10~20%)(信越化学工業社製)等のジメチコン/フェニルジメチコンクロスポリマー等が挙げられる。
本発明においては、上記の架橋型シロキサンエラストマーから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
本発明の化粧料における(c)成分の配合量は、化粧料全量に対して、実分として1~8質量%であり、好ましくは1~6質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。配合量が1質量%未満であると、十分なマット感が得られず、8質量%を超えると化粧料の成形性が劣り、塗布時の延び広がりが悪くなる。
【0034】
(d)粉末
本発明に係る固形化粧料に配合される(d)粉末(以下、単に「(d)成分」と称する場合がある)は、特に限定されず、通常化粧料に配合可能な粉末成分であって、前記(a)成分を除く粉末成分を指す。(d)粉末としては、球状粉末、板状粉末、色材等が挙げられる。ただし、本発明の(d)粉末として中空粉体は含まない。本発明の固形化粧料は、中空粉体を配合しなくとも、塗布時の延び広がりが良好で、マットな仕上がりを有する化粧料を得ることができる。よって、本発明の固形化粧料の態様には、中空粉体を含まない態様が含まれる。
【0035】
通常化粧料においては、使用感を改善するために球状粉末が汎用されるが、本発明においては球状粉末を配合しなくとも使用感に優れた化粧料を得ることができる。よって、本発明の固形化粧料の態様には、球状粉末の配合量を3質量%以下あるいは1質量%以下とした態様や、球状粉末を含まない態様が含まれる。
【0036】
球状粉末としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、オルガノポリシロキサンエラストマー、ポリスチレン、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリエチレン、スチレンとアクリル酸の共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、ポリ四フッ化エチレン、シリコーン樹脂等の球状樹脂粉末が挙げられる。
【0037】
板状粉末としては、例えば、マイカ、合成マイカ、タルク、セリサイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウムマグネシウム、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素等の無機粉体類、N-アシルリジン等の有機粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン等の複合粉体類等が挙げられる。
【0038】
色材として、顔料、パール剤、ラメ剤、これらをレーキ化したものなど、化粧料に通常配合されるものを使用することができる。
【0039】
色材としては、例えば、無機白色系顔料(二酸化チタン、酸化亜鉛)、無機赤色系顔料(酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄)、無機褐色系顔料(γ-酸化鉄)、無機黄色系顔料(黄酸化鉄、黄土)、無機黒色系顔料(黒酸化鉄、カーボン、低次酸化チタン)、無機紫色系顔料(マンゴバイオレット、コバルトバイオレット)、無機緑色系顔料(酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト)、無機青色系顔料(群青、紺青)、パール顔料(酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔)、金属粉末顔料(アルミニウムパウダ一、カッパーパウダー)、有機顔料(赤色202号、赤色205号、赤色220号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号)、ジルコニウム、バリウム、アルミニウムレーキの有機顔料(赤色3号、赤色104号、赤色227号、赤色401号、橙色205号、黄色4号、黄色202号、緑色3号、青色1号)、天然色素(クロロフィル、カルチノイド系(β-カロチン)、カルサミン、コチニール、カルコン、クルクミン、ベタニン、フラボノール、フラボン、アントシアニジン、アントラキノン、ナフトキノン)、機能性顔料(窒化ホウ素、フォトクロミック顔料、合成フッ素金雲母、鉄含有合成フッ素金雲母、微粒子複合粉体(ハイブリッドファインパウダー))等が挙げられる。
【0040】
顔料、パール剤、ラメ剤などの粉末として、親水化処理した粉末を用いてもよい。親水化処理した粉末としては、当分野で知られる親水化処理を施したものを用いることができる。親水化処理は有機処理、無機処理共に可能である。親水化処理剤としては、特に限定されるものではないが、多価アルコール、多糖類、水溶性高分子、金属アルコキシド、水ガラス等が挙げられる。
【0041】
本発明の固形化粧料における(d)成分の配合量は、化粧料全量に対して5~30質量%であり、好ましくは7~24質量%である。(d)成分の配合量が5質量%未満であると十分なマット感が得られず、30質量%を超えると化粧料の成形性が劣り、塗布時の延び広がりが悪くなる。
【0042】
本発明の固形化粧料においては、化粧料の成形性および塗布時の延び広がりに優れる化粧料を得る観点から、(c)架橋型オルガノポリシロキサンと、(d)(a)成分以外の粉末との配合比を1:1~1:16.5、好ましくは1:1~1:8とするのがよい。
【0043】
(e)非揮発性低粘度油分
本発明に係る固形化粧料に配合される(e)非揮発性低粘度油分(以下、単に「(e)成分」と称する場合がある)は、通常化粧料に配合可能な非揮発性油分であって、30℃においてB型粘度計で測定した粘度が21,000mPa・s以下である非揮発性油分を指す。本発明の化粧料においては配合する液状油分の粘度が高くなるほど、塗布時の延び広がりが劣る傾向がある。本明細書においては、30℃においてB型粘度計で測定した粘度が21,000mPa・sを超える油分を半固形油分と定義する。一方、B型粘度計で測定できず、硬度で表される油分を固形油と定義する。
(e)成分の具体例として、シリコーン油、極性油分、炭化水素油、天然油脂類および半合成油等が挙げられる。
【0044】
シリコーン油としては、例えば、5mPa・s以上のメチルポリシロキサン(ジメチコン)、フェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等が挙げられる。
【0045】
極性油分としては、例えば、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリ(カプリル/カプリン)酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、セバシン酸ジエチルヘキシル、オクチルドデカノール、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、オキシステアリン酸オキシステアリル、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、トリオクタノイン、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヒマシ油、セパシン酸ジイソプロピル、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0046】
炭化水素油としては、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、重質流動イソパラフィン、ポリイソブチレン、α-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。天然油脂類および半合成油としては、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、カヤ油、肝油、キョウニン油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サザンカ油、サフラワー油、シナギリ油、シナモン油、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、日本キリ油、胚芽油、パーシック油、パーム油、レッドパーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ油、ホホパ油、マカデミアナッツ油、綿実油、ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、落花生油、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、POEラノリンアルコールエーテル、P0Eラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、P0E水素添加ラノリンアルコールエーテル、卵黄油等が挙げられる。
本発明においては、上記の非揮発性低粘度油から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
本発明の化粧料における(e)成分の配合量は、化粧料全量に対して60質量%以上であり、好ましくは65質量%以上である。配合量が60質量%未満であると塗布時の延び広がりが悪くなる。
【0048】
本発明の固形化粧料は、揮発性油分を配合しなくとも、マットな仕上がりを有する化粧料を得ることができる。よって、本発明の固形化粧料の態様には、揮発性油分を含まない態様が含まれる。また、揮発性油分を配合する場合は、その配合量を化粧料全量に対して10質量%以下とすることが好ましい。揮発性油分の配合量が10質量%を超えると経時的に乾燥感が感じられる傾向がある。
【0049】
本発明の固形化粧料においては、トリメチルシロキシケイ酸等の有機シリコーン樹脂を配合しなくとも使用性に優れた化粧料を得ることができる。よって、本発明の態様には、有機シリコーン樹脂を含まない態様が含まれる。
【0050】
本発明の固形化粧料における任意成分は上記に限られず、化粧料に配合可能な他の任意成分を本発明の効果を損ねない範囲で配合することができる。例えば、界面活性剤、増粘剤、セラミド類、ビタミン類、紫外線吸収剤、キレート剤、殺菌剤、防腐剤、植物抽出液、アミノ酸、各種薬剤、エタノール等の低級アルコール類等が挙げられる。
【0051】
本発明の固形化粧料においては、30℃で半固形の油分を配合すると塗布時の化粧料の延び広がりが悪くなる傾向がある。したがって、本発明の固形化粧料の態様には、ワセリン、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、マカダミアナッツ油ポリグリセリル-6エステルズベヘネート、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2等の半固形油分を3質量%以下とすることが好ましい。また、本発明の固形化粧料の態様には、半固形油分を含まない態様が含まれる。
【0052】
本発明の固形化粧料は、従来から用いられている方法に従って製造することができる。簡潔に言えば、成分を均一に溶解混合し、脱気して金型に流し込み、冷却固化後容器に収納し固形化粧料を得ることができる。
【0053】
なお、本明細書で用いる「固形化粧料」または「固形状化粧料」という語は化粧料の分野で通常用いられている意味に解され、例えば、50℃以下の温度において組成物全体が流動性を示さず、通常の保管条件下において著しい変形を示さない形態または状態と定義することができる。
【0054】
本発明の固形化粧料は、ファンデーション、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、頬紅、口紅等のメーキャップ化粧料、リップスティック、サンスクリーン等のスキンケア化粧料、化粧下地等として提供することができる。
本発明の固形化粧料は、限定するものではないが、広口容器に充填したバーム状や、スティック状とすることができる。本発明の化粧料は成形性が良いので、スティック状化粧料に適する。
【実施例
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
【0056】
実施例の記載に先立ち、本発明の化粧料に用いた試験方法および評価方法について説明する。
評価1:成形性
90℃で加熱溶解した試料を口径が12.5φの金型に流し込み、冷却固化後の試料の成形状態を確認した。成形に問題がなかったものを「良好」、90℃での試料の流動性が低く、金型の先端まで試料が流れ込まず成形ができなかったものを「不良」とした。
【0057】
評価2:マット感および塗布時の延び広がりのなめらかさ
各試料について、専門パネル10名による使用テストを行い、塗布したときの仕上がりのマットな質感(表中では「マット感」と表記)、塗布時の延び広がりのなめらかさ(表中では「なめらかさ」と表記)について、下記の5段階に評価し点数化し、平均値を算出することによって評価した。
5:非常に良い
4:良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
(評価基準)
A:平均点が4.5点以上
B:平均点が3.5点以上4.5点未満
C:平均点が2.5点以上3.5点未満
D:平均点が1.5点以上2.5点未満
E:平均点が1.5点未満
【0058】
1.実施例1-1~1-3
下記の表1に記載の組成を有する試料を均一に溶解混合し、脱気して金型に流し込み、冷却固化後容器に収納しリップスティックを調製した。調製した試料について、成形性、塗布面の仕上がりのマットな質感、塗布時の延び広がりのなめらかさを評価した。
【0059】
【表1】
*1:AEROSIL R972(日本アエロジル社製)
*2:9041シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン5mPa・sの混合物、配合量はシリコーンクロスポリマー実分濃度で記載)(東レ・ダウコーニング社製)
*3:KSG-16((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ジメチコン6mPa・sの混合物、配合量はシリコーンクロスポリマー実分濃度で記載)(信越化学工業社製)
【0060】
表1に示されるように、(a)成分として煙霧状シリカを用いた場合(実施例1-1、実施例1-3)および微粒子酸化チタンを用いた場合(実施例1-2)のいずれにおいても、マット感に優れ、延び広がりの良好な固形化粧料が得られた。
【0061】
2.配合量変化と試料の評価
次に、(1)煙霧状シリカ、(2)ワックス、(3)架橋型オルガノポリシロキサンと粉末について、それぞれ配合量を変化させたときの試料の評価を行った。以下、試料は成分を均一に溶解混合し、脱気して金型に流し込み、冷却固化後容器に収納しリップスティックを調製した。成分組成および評価試験結果を表2~4に示す。
【0062】
(1)煙霧状シリカの配合量変化と試料の評価
煙霧状シリカの配合量を0質量%~4質量%に変化させたときの試料の評価を行った。結果を下記の表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示されるように、(a)成分を2質量%以下とした試料(実施例2-1、実施例2-2)ではマット感に優れ、延び広がりの良好な固形化粧料が得られた。一方、(a)を配合しない試料(比較例2-1)では、マットな仕上がりが得られなかった。また、配合量を4質量%とした試料(比較例2-2)では、化粧料全体の流動性が大きくなり、固形に成型することができなかった。
【0065】
(2)ワックスの配合量変化と試料の評価
ワックスの配合量を1~10質量%に変化させたときの試料の評価を行った。結果を下記の表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
表3に示されるように、ワックスの配合量を合計5質量%以上とした試料(実施例3-1~3-6)では、十分なマット感があり、塗布時の延び広がりに優れた固形化粧料が得られた。一方、ワックスの配合量を合計3質量%以下とした試料(比較例3-1~3-4)では、化粧料全体の流動性が大きくなり、固形に成型することができなかった。
【0068】
(3)架橋型オルガノポリシロキサンと粉末の配合量変化と試料の評価
表1の実施例1-1の試料について、架橋型オルガノポリシロキサンの配合量を0~10質量%に、粉末の配合量を4~34質量%に変化させたときの試料の評価を行った。結果を図1に示す。
図1に示されるように、架橋型オルガノポリシロキサンを配合しなかった場合には仕上がりのマット感が得られなかった。一方、架橋型オルガノポリシロキサンの配合量を10質量%とすると成形性が悪くなるとともに、塗布時の延び広がりが劣っていた。さらに、粉末の配合量を4質量%とした場合には仕上がりのマット感が得られなかった。一方、34質量%配合した場合には、成形性が悪くなり、塗布時の延び広がりも劣っていた。
【0069】
3.油分についての検討
次に、下記の表4に記載の組成を有するリップスティックを調製し、マット感および塗布時の延び広がりのなめらかさについて評価した。結果は表4に併せて示す。
【0070】
【表4】
【0071】
表4に示されるように、(e)非揮発性低粘度油分の配合量を60質量%以上とした試料(実施例4-1、実施例4-2)では、マット感に優れ、延び広がりの良好な固形化粧料が得られた。一方、(e)成分の配合量を60質量%未満とした試料(比較例4-5)では延び広がりが悪かった。また、(e)成分の配合量を60質量%以上とした場合であっても粘度の高い半固形油分を7.5質量%配合した試料(比較例4-1)では、延び広がりのなめらかさが劣る傾向が見られた。(e)成分の配合量を60質量%未満とし、かつ、半固形油分を配合した試料(比較例4-2~4-4)においても塗布時の延び広がりが劣っていた。
図1