(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/10 20060101AFI20231108BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20231108BHJP
H01R 13/42 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
H01R13/10 B
H01R13/52 301E
H01R13/42 B
(21)【出願番号】P 2019225002
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】小林 亨
(72)【発明者】
【氏名】中山 勇樹
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-216256(JP,A)
【文献】特開2002-033149(JP,A)
【文献】特開2008-171636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42-13/436
H01R 13/10-13/11
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具が端末に設けられる電線付き端子と、前記端子金具が収容係止されるコネクタハウジングと、該コネクタハウジングの後部に配置されて前記端子金具が通過する封止部材と、該封止部材を前記コネクタハウジングに保持した状態で前記端子金具が通過する封止部材カバーとを備え、
前記端子金具は、
電線を接続する部分としての電線接続部よりも端子先端側に位置する断面略矩形で箱形となる箱形状部を有し、
該箱形状部の両側部には、挿入時回転防止用として、端子軸に直交する方向に突出し且つ前記端子軸に沿って所定の間隔で配置される一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとが形成され、
前記端子金具は、この一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとが前記封止部材の挿通孔の孔長さよりも大きな間隔で端子軸に沿って配置される
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の
コネクタにおいて、
前記一対の第一スタビライザと前記一対の第二スタビライザは、前記両側部を外側に打ち出すことにより、曲面となる第一曲面頂部と第二曲面頂部とを有する形状にそれぞれ突出形成される
ことを特徴とする
コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の
コネクタにおいて、
前記一対の第一スタビライザは、前記第一曲面頂部がスタビライザ中央位置よりも前記端子先端側に位置する不等辺三角形状に突出形成され、且つ、前記一対の第二スタビライザも前記第二曲面頂部がスタビライザ中央位置よりも前記電線接続部側に位置する不等辺三角形状に突出形成される
ことを特徴とする
コネクタ。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の
コネクタにおいて、
前記箱形状部は、雌形の電気接触部として形成される
ことを特徴とする
コネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載の
コネクタにおいて、
前記箱形状部の前記両側部を繋ぐ壁には、端子係止突起と該端子係止突起に連続するランスホールとが前記端子軸に沿って形成される
ことを特徴とする
コネクタ。
【請求項6】
請求項
1、2、3、4又は5に記載のコネクタにおいて、
前記コネクタハウジングと前記封止部材カバーとにそれぞれ形成される端子通過部には、前記一対の第一スタビライザと前記一対の第二スタビライザとが摺接可能な一対の壁と、該一対の壁に連続する段部とが形成される
ことを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転防止用としてスタビライザを有する端子金具と、この端子金具が収容されるコネクタとに関する。
【背景技術】
【0002】
電線束の端末に設けられて電気的な接続に用いるコネクタは、コネクタハウジングと、このコネクタハウジングの端子収容室に収容係止される端子金具と、コネクタハウジングの後部に配置される封止部材(マットシール)と、この封止部材を保持する封止部材カバーとを備えて構成される(例えば特許文献1参照)。コネクタハウジングの後部から端子収容室における係止部分にかけては、端子金具を案内するための溝が形成される。この溝に挿入状態になり案内される部分は、端子金具の一部を折り曲げて形成されたスタビライザである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術にあっては、端子収容室に向けて端子金具を挿入する作業時に、端子金具が挿入軸(端子軸)を中心に回転する方向にずれてしまう(すなわち回転してしまう)ことが起こる。これは端子金具が封止部材を通過する際にスタビライザが案内されないことが原因であるが、封止部材の機能を考えると、スタビライザを案内するための溝の形成は困難である。端子金具の回転を防止するための対策が必要である。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、挿入時の回転防止が可能な端子金具を備えたコネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のコネクタは、端子金具が端末に設けられる電線付き端子と、前記端子金具が収容係止されるコネクタハウジングと、該コネクタハウジングの後部に配置されて前記端子金具が通過する封止部材と、該封止部材を前記コネクタハウジングに保持した状態で前記端子金具が通過する封止部材カバーとを備え、前記端子金具は、電線を接続する部分としての電線接続部よりも端子先端側に位置する断面略矩形で箱形となる箱形状部を有し、該箱形状部の両側部には、挿入時回転防止用として、端子軸に直交する方向に突出し且つ前記端子軸に沿って所定の間隔で配置される一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとが形成され、前記端子金具は、この一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとが前記封止部材の挿通孔の孔長さよりも大きな間隔で端子軸に沿って配置されることを特徴とする。
【0007】
このような請求項1の特徴を有する本発明によれば、端子金具の一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとが封止部材の挿通孔の孔長さよりも大きな間隔で端子軸に沿って配置されることから、一対の第一スタビライザが封止部材を通過する際に一対の第二スタビライザの方に回転防止の機能を発揮させることができ、また、一対の第二スタビライザが封止部材を通過する際には、一対の第一スタビライザの方に回転防止の機能を発揮させることができる。従って、端子挿入作業を良好に行うことができ、これによりコネクタハウジングに端子金具を確実に収容係止することができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のコネクタにおいて、前記一対の第一スタビライザと前記一対の第二スタビライザは、前記両側部を外側に打ち出すことにより、曲面となる第一曲面頂部と第二曲面頂部とを有する形状にそれぞれ突出形成されることを特徴とする。
【0009】
このような請求項2の特徴を有する本発明によれば、曲面となる第一曲面頂部を有する一対の第一スタビライザと、曲面となる第二曲面頂部を有する一対の第二スタビライザとが形成されることから、挿入作業時においては、例えば封止部材を通過する際に一対の第一スタビライザや一対の第二スタビライザが封止部材を傷付けてしまうことがない。従って、封止部材の機能を低下させてしまうような損傷を防止することができる。本発明によれば、打ち出しにより曲面を形成することから、エッジが生じた場合と比べて格段に損傷防止を図ることができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載のコネクタにおいて、前記一対の第一スタビライザは、前記第一曲面頂部がスタビライザ中央位置よりも前記端子先端側に位置する不等辺三角形状に突出形成され、且つ、前記一対の第二スタビライザも前記第二曲面頂部がスタビライザ中央位置よりも前記電線接続部側に位置する不等辺三角形状に突出形成されることを特徴とする。
【0011】
このような請求項3の特徴を有する本発明によれば、一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとがそれぞれ不等辺三角形状に突出形成され、また、この突出の際に形成される第一曲面頂部と第二曲面頂部とが距離の離れた状態に配置形成されて距離が稼げるようになることから、例えば厚みのある封止部材でもこれを通過する際に、確実に上記回転防止の機能を発揮させることができる。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、請求項1、2又は3に記載のコネクタにおいて、前記箱形状部は、雌形の電気接触部として形成されることを特徴とする。
【0013】
このような請求項4の特徴を有する本発明によれば、箱形状部が雌形の電気接触部として形成されることから、端子金具を雌端子として提供することができる。尚、箱形状部よりも端子先端側にピン状の電気接触部を形成すれば、雄形の端子金具としても提供することができるのは勿論である。
【0014】
請求項5に記載の本発明は、請求項4に記載のコネクタにおいて、前記箱形状部の前記両側部を繋ぐ壁には、端子係止突起と該端子係止突起に連続するランスホールとが前記端子軸に沿って形成されることを特徴とする。
【0015】
このような請求項5の特徴を有する本発明によれば、端子係止突起とランスホールとが形成された壁とは別の壁に一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとが配置形成されることから、端子係止突起とランスホールの形成が一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザの間隔設定に影響されず、結果、回転防止の機能を確実に発揮させることができる。
【0018】
請求項6に記載の本発明は、請求項1、2、3,4又は5に記載のコネクタにおいて、前記コネクタハウジングと前記封止部材カバーとにそれぞれ形成される端子通過部には、前記一対の第一スタビライザと前記一対の第二スタビライザとが摺接可能な一対の壁と、該一対の壁に連続する段部とが形成されることを特徴とする。
【0019】
このような請求項6の特徴を有する本発明によれば、コネクタハウジングの端子通過部と封止部材カバーの端子通過部とに段部が形成されることから、端子挿入作業の際に端子金具が回転しようとしても一対の第一スタビライザや一対の第二スタビライザが段部に当接することで回転を防止することができる。本発明によれば、端子金具自身のみならず端子通過部の方でも回転防止機能を持たせることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のコネクタによれば、挿入時の回転防止をすることができる端子金具を備えることから、より良いものを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の端子金具を備えたコネクタの一実施形態を示す図であり、(a)は雌コネクタ及び雄コネクタの斜視図、(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図3】本発明の端子金具である雌端子の底面図である。
【
図4】一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとの間隔を示す図である。
【
図5】一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとをマットシールカバーの端子通過部に位置させた時の作用を示す図である。
【
図7】一対の第一スタビライザをマットシールに挿通した時の作用を示す図である。
【
図8】一対の第一スタビライザをマットシールから通過させた時の作用を示す図である。
【
図9】一対の第二スタビライザをマットシールに挿通した時の作用を示す図である。
【
図10】一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとをコネクタハウジングの端子通過部に位置させた時の作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
コネクタは、端子金具が端末に設けられる電線付き端子と、この端子金具が収容係止されるコネクタハウジングと、コネクタハウジングの後部に配置されて端子金具が通過する封止部材と、この封止部材をコネクタハウジングに保持した状態で端子金具が通過する封止部材カバーとを備えて構成される。端子金具は、この一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとが封止部材の挿通孔の孔長さよりも大きな間隔で端子軸に沿って配置される。
【実施例】
【0023】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1は本発明の端子金具を備えたコネクタの一実施形態を示す斜視図である。また、
図2は雌コネクタの構成を示す分解斜視図、
図3は本発明の端子金具である雌端子の底面図、
図4は一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとの間隔を示す図、
図5~
図11は端子挿入作業における一対の第一スタビライザと一対の第二スタビライザとの作用を示す図である。
【0024】
<コネクタ1について>
図1において、ここで示すコネクタ1は、例えば自動車に搭載される機器間を電気的に接続するために設けられる。このようなコネクタ1は、ワイヤハーネスの電線束の端末に設けられる。コネクタ1は、雌コネクタ2(コネクタ)と、この雌コネクタ2の接続相手になる雄コネクタ3とを備えて構成される。
【0025】
<雌コネクタ2について>
図1及び
図2において、雌コネクタ2は、コネクタハウジング4と、このコネクタハウジング4に収容されるマットシール5(封止部材)と、コネクタハウジング4の後方からマットシール5を保持するマットシールカバー6(封止部材カバー)と、コネクタハウジング4の前部に装着されるフロントホルダー7と、このフロントホルダー7及びコネクタハウジング4の間に介在するパッキン8と、コネクタハウジング4の前部に装着される二重係止用のスペーサ9と、マットシールカバー6及びマットシール5を貫通しコネクタハウジング4に収容される複数の電線付き端子10と、この複数の電線付き端子10の電線引き出し方向を規制するための電線カバー11と、コネクタハウジング4に対し回動自在に装着されるレバー12とを備えて構成される。
【0026】
コネクタハウジング4は、樹脂成形品であって、マットシール収容室13及び複数の端子収容室14を有する。また、コネクタハウジング4は、マットシール収容室13から複数の端子収容室14に向けて真っ直ぐのびる端子通過部15を複数有する。また、コネクタハウジング4は、レバー12に対する一対の回転軸16を有する。マットシールカバー6、フロントホルダー7、スペーサ9、及びレバー12もコネクタハウジング4と同様に樹脂成形品であって、マットシールカバー6はコネクタハウジング4の後部に対して嵌合する嵌合構造を、また、フロントホルダー7及びスペーサ9はコネクタハウジング4の前部に対して嵌合する嵌合構造をそれぞれ有する。マットシール5及びパッキン8は、ゴム製のシール部材である。マットシールカバー6も真っ直ぐのびる端子通過部17を複数有する。この端子通過部17は、コネクタハウジング4の端子通過部15の位置に合わせて配置される。尚、端子通過部15、17については後述するものとする。
【0027】
複数の電線付き端子10は、電線18の端末に本発明に係る雌端子19を圧着したものであって、この雌端子19は、矩形箱形の電気接触部20(箱形状部)と、電線18の端末を圧着する電線接続部21と、これら電気接触部20及び電線接続部21を繋ぐ連結部22とを有する。雌端子19は、対応する端子収容室14でランス23に係止される。電線18は、断面円形の導体と、この導体を覆う絶縁体(被覆)とを備えて構成される。複数の電線付き端子10は、マットシール5に挿通(貫通する)されて、マットシール5の後述する挿通孔32が電線18に対し水密に(液密に)密着するような組み付け状態になるものとする。
【0028】
雌コネクタ2は、複数の電線付き端子10とコネクタハウジング4との間がマットシール5によりシールされた防水コネクタである。また、この雌コネクタ2は、コネクタ嵌合の際にレバー12を回動させると、相手となる雄コネクタ3に引き寄せられるコネクタである。すなわち、低挿入力(Low Insetion Force)で電気的な接続が行えるLIFコネクタである。
【0029】
<端子通過部15及び端子通過部17について>
図11において、コネクタハウジング4には、本発明に係る雌端子19が通過する端子通過部15が形成される。また、
図6に示すように、マットシールカバー6にも雌端子19が通過する端子通過部17が形成される。これら端子通過部15及び端子通過部17は、コネクタハウジング4及びマットシールカバー6をそれぞれ貫通する孔形状に形成される。端子通過部15及び端子通過部17は、これらを囲む壁によって断面が非円形の孔形状に形成される。
【0030】
上記の囲む壁は、一対の側壁24(壁)と、上壁25と、下壁26とを有して構成される。一対の側壁24には、後述する一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39とが摺接する摺接面27が形成される。この摺接面27は、断面視で図の上下方向に真っ直ぐな面に形成される。上壁25には、曲率の大きな円弧の面(円弧面28)が形成される。一対の摺接面27と円弧面28との連続部分には、一対の段部29が形成される。この一対の段部29は、図の左右方向に短くのびるストレートな面を有するように形成される。一対の段部29は、一対の第一スタビライザ38及び一対の第二スタビライザ39に対する回り止め、ガイド部、位置決め等の機能を有する部分に形成される。下壁26は、上壁25の円弧面28よりも小さな曲率の円弧面30を有する。この円弧面30は、後述する端子係止突起35が摺接する面に形成される。
【0031】
<マットシール5について>
図1及び
図5において、マットシール5は、封止用の部材(シール用の部材)として備えられる。マットシール5には、マットシール本体31を前後方向に貫通する挿通孔32が複数形成される。複数の挿通孔32は、複数の電線付き端子10の雌端子19が通過する部分に形成される。また、複数の挿通孔32は、複数の電線付き端子10の電線18に対し水密に密着する部分に形成される。
【0032】
<雌端子19の電気接触部20(箱形状部)について>
図3において、雌端子19は、上記したように電気接触部20(箱形状部)を有する。電気接触部20は、断面略矩形で箱形状の部分に形成される。電気接触部20は、金属板を打ち抜いた後に複数回曲げられて形成される。尚、
図3に示す雌端子19は、これを下側(底面側)から見たものであって、引用符号33の部分が電気接触部20の底壁として形成される。底壁33は、端子軸CLに沿って長くなる長方形状に形成される。このような底壁33の反対側には、電気接触部20の天井壁34が配置される。天井壁34は、折り曲げにより壁が重なるように(
図6参照)形成される。天井壁34には、端子係止突起35(
図6参照)と、この端子係止突起35に連続するランスホール36とが端子軸CLに沿って形成される。底壁33と天井壁34とを繋ぐ壁には、一対の側壁37(側部)が形成される。一対の側壁37は、左右に位置する壁として形成される。このような一対の側壁37には、一対の第一スタビライザ38と、一対の第二スタビライザ39とが形成される。
【0033】
<一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39について>
図3、
図4、
図6、及び
図11において、一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39は、本発明の特徴部分であって、対応する端子収容室14に雌端子19が係止されるまでの間、回転防止部分として機能するように形成される。別な言い方をすれば、挿入時回転防止用の部分として形成される。一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39は、一対の側壁37に配置され、且つ、一対の側壁37では底壁33の近傍に配置される。一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39は、端子軸CLに直交する方向に突出形成される。また、一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39は、端子軸CLに沿って所定の間隔Sで配置される。尚、所定の間隔Sは、マットシール5の厚みT(
図5参照)よりも長くなるものとする(又は挿通孔32の孔長さよりも長くなるものとする)。一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39は、端子係止突起35とランスホール36とが形成される天井壁34でない壁に配置されることから、所定の間隔Sの確保が可能に形成される。すなわち、一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39は、端子係止突起35とランスホール36に影響されずに配置形成される。
【0034】
一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39は、一対の側壁37を外側に打ち出して形成される。一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39は、上記打ち出しに伴い、曲面となる第一曲面頂部40と第二曲面頂部41とを有する図示の形状に形成される。曲面となる第一曲面頂部40と第二曲面頂部41は、マットシール5を通過する際に傷を付けない頂点部分(頂部)に形成される。
【0035】
図4において、一対の第一スタビライザ38は、第一曲面頂部40がスタビライザ中央位置よりも端子先端42の側に位置する不等辺三角形状に突出形成される。すなわち、所定の間隔Sが頂点距離D1の分だけ増加するように形成される。一方、一対の第二スタビライザ39も第二曲面頂部41がスタビライザ中央位置よりも電線接続部21の側に位置する不等辺三角形状に突出形成される。すなわち、所定の間隔Sが頂点距離D2の分だけ増加するように形成される。尚、
図4の上側に示す雌端子19′の形状でも本発明の特徴を有しており、有効になるのは勿論である。
【0036】
<一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39との作用について>
以下、
図5ないし
図11を参照しながら一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39との作用について説明をする。
【0037】
図5において、コネクタハウジング4に対しマットシール5とマットシールカバー6とが組み付けられると、端子収容室14(
図1参照)に向けて端子通過部15と挿通孔32と端子通過部17とが一直線に並ぶ状態に雌コネクタ2は形成される。端子通過部17に対し電線付き端子10の雌端子19を挿通していくと、端子通過部17の一対の摺接面27に対し一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39とが摺接する。この状態において、雌端子19は回転してしまうことがない(
図6参照)。そのため、端子収容室14に向けて真っ直ぐ雌端子19が挿通される。尚、仮に雌端子19が回転しようとしても、端子通過部17の一対の摺接面27に対し一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39とが接していることから回転しない。また、強制的に回転させようとしても一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39とが一対の段部29に当接して規制されることから、回転することがない。
【0038】
図7において、マットシール5の挿通孔32に対し雌端子19の端子先端42や一対の第一スタビライザ38の部分が挿入されると、この時、端子通過部17の一対の摺接面27に対し一対の第二スタビライザ39が摺接したままの状態であるので、雌端子19は回転してしまうことがない。そして、
図8において、雌端子19の端子先端42や一対の第一スタビライザ38の部分が挿通孔32を通過しても、端子通過部17の一対の摺接面27に対し一対の第二スタビライザ39が摺接したままの状態であるので、雌端子19は回転してしまうことがない。また、一対の第一スタビライザ38がコネクタハウジング4の端子通過部15の一対の摺接面27に対し摺接した状態にもなることから、雌端子19は回転してしまうことがない。
【0039】
図9において、マットシール5の挿通孔32に対し一対の第二スタビライザ39の部分が挿入されると、この時、端子通過部15の一対の摺接面27に対し一対の第一スタビライザ38が既に摺接したままの状態であるので、雌端子19は回転してしまうことがない。そして、
図10において、一対の第二スタビライザ39の部分が挿通孔32を通過しても、端子通過部15の一対の摺接面27に対し一対の第一スタビライザ38が摺接したままの状態であるので、雌端子19は回転してしまうことがない。また、一対の第二スタビライザ39が端子通過部15の一対の摺接面27に対し摺接した状態にもなることから、雌端子19は回転してしまうことがない(
図11参照)。そのため、端子収容室14に向けて真っ直ぐ雌端子19が挿通される。尚、仮に雌端子19が回転しようとしても、端子通過部15の一対の摺接面27に対し一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39とが接していることから回転しない。また、強制的に回転させようとしても一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39とが一対の段部29に当接して規制されることから、回転することがない。
【0040】
<効果について>
以上、
図1ないし
図11を参照しながら説明してきたように、本発明の一実施形態である雌端子19(端子金具)によれば、一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39とが形成され、そして、これらが所定の間隔S(所定の間隔S>マットシール5の厚みT)で配置されることから、挿入作業時において、一対の第一スタビライザ38の部分がマットシール5(封止部材)を通過する際には一対の第二スタビライザ39の方に回転防止の機能を発揮させることができる。また、一対の第二スタビライザ39の部分がマットシール5(挿通孔32)を通過する際には、一対の第一スタビライザ38の方に回転防止の機能を発揮させることができる。
【0041】
また、雌端子19によれば、曲面となる第一曲面頂部40を有する一対の第一スタビライザ38と、曲面となる第二曲面頂部41を有する一対の第二スタビライザ39とが形成されることから、挿入作業時においては、挿通孔32を通過する際に一対の第一スタビライザ38や一対の第二スタビライザ39がマットシール5を傷付けてしまうことがない。従って、マットシール5の機能を低下させてしまうような損傷を防止することができる。雌端子19によれば、打ち出しにより曲面を形成することから、エッジが生じた場合(例えば前述した特許文献1のスタビライザ)と比べて格段に損傷防止を図ることができる。
【0042】
また、雌端子19によれば、一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39とがそれぞれ不等辺三角形状に突出するように形成され、また、この突出の際に形成される第一曲面頂部40と第二曲面頂部41とが距離の離れた状態に配置形成されて距離を稼げるようになることから、厚みのあるマットシール5(挿通孔32)でもこれを通過する際に、確実に上記回転防止の機能を発揮させることができる。
【0043】
この他、雌コネクタ2に関しては、雌端子19を備えたコネクタであり、雌端子19の一対の第一スタビライザ38と一対の第二スタビライザ39とがマットシール5(挿通孔32)の厚みTよりも大きな間隔(所定の間隔S)で端子軸CLに沿って配置されることから、一対の第一スタビライザ38の部分が挿通孔32を通過する際に一対の第二スタビライザ39の方に回転防止の機能を発揮させることができ、また、一対の第二スタビライザ39の部分が挿通孔32を通過する際には、一対の第一スタビライザ38の方に回転防止の機能を発揮させることができる。従って、端子挿入作業を良好に行うことができ、これによりコネクタハウジング4に雌端子19を確実に収容係止することができる。
【0044】
また、雌コネクタ2によれば、コネクタハウジング4の端子通過部15とマットシールカバー6の端子通過部17とに一対の段部29が形成されることから、端子挿入作業の際に雌端子19が回転しようとしても一対の第一スタビライザ38や一対の第二スタビライザ39が一対の段部29に当接することで回転を防止することができる。雌コネクタ2によれば、雌端子19のみならず端子通過部15、端子通過部17の方でも回転防止機能を持たせることができる。
【0045】
従って、雌端子19によれば、挿入時の回転防止をすることができるという効果を奏する。また、雌コネクタ2によれば、雌端子19を備えることから、より良いものを提供することができるという効果を奏する。
【0046】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1…コネクタ、 2…雌コネクタ(コネクタ)、 3…雄コネクタ、 4…コネクタハウジング、 5…マットシール(封止部材)、 6…マットシールカバー(封止部材カバー)、 7…フロントホルダー、 8…パッキン、 9…スペーサ、 10…電線付き端子、 11…電線カバー、 12…レバー、 13…マットシール収容室、 14…端子収容室、 15、17…端子通過部、 16…回転軸、 18…電線、 19…雌端子(端子金具)、 20…電気接触部(箱形状部)、 21…電線接続部、 22…連結部、 23…ランス、 24…側壁(壁)、 25…上壁、 26…下壁、 27…摺接面、 28、30…円弧面、 29…段部、 31…マットシール本体、 32…挿通孔、 33…底壁、 34…天井壁、 35…端子係止突起、 36…ランスホール、 37…側壁(側部)、 38…第一スタビライザ、 39…第二スタビライザ、 40…第一曲面頂部、 41…第二曲面頂部、 42…端子先端、 CL…端子軸、 S…所定の間隔