(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ロボット、人型ロボットおよびロボットの倒れ制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20231108BHJP
H02P 3/00 20060101ALI20231108BHJP
H02P 5/46 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B25J19/00 C
H02P3/00 D
H02P5/46 J
(21)【出願番号】P 2019226950
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】掃部 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】烏山 純一
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-153327(JP,A)
【文献】特開2019-014008(JP,A)
【文献】特開2013-179741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/00
H02P 3/00
H02P 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の関節を含むロボット本体部と、
前記複数の関節の各々に設けられる複数のモータと、
前記モータに電力を供給する電力供給経路に電気的に接続可能に構成され、前記モータの回転により発生する電気エネルギを消費する抵抗成分を含み、前記抵抗成分により前記電気エネルギを消費することによりダイナミックブレーキを作動させる抵抗回路部とを備え、
前記抵抗回路部は、異常停止時に前記モータを停止させる際に、前記電力供給経路に対する前記抵抗成分の抵抗値を変化させることにより、
前記モータが停止するまで前記ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている、ロボット。
【請求項2】
前記抵抗回路部は、異常停止時に前記モータを停止させる際に、前記電力供給経路に対する前記抵抗成分の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返すことにより、前記電力供給経路に対する前記抵抗成分の抵抗値を変化させて、前記ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記抵抗回路部は、前記モータにおいて発生する回生エネルギを消費する回生抵抗を有する回生抵抗回路部を含む、請求項1または2に記載のロボット。
【請求項4】
前記回生抵抗回路部は、通常動作時に前記回生抵抗を作動させる場合の作動電圧よりも低い作動電圧で異常停止時に前記電力供給経路に対して前記回生抵抗を接続する動作を行うように構成されている、請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
前記抵抗回路部は、異常停止信号に基づいて、通常動作から異常停止時の動作に切り替える制御を行うように構成されている、請求項4に記載のロボット。
【請求項6】
前記ロボット本体部は、人間の複数の関節に対応する前記複数の関節を有する人型ロボット本体部を含む、請求項
1に記載のロボット。
【請求項7】
前記抵抗回路部は、前記ロボット本体部の倒れを制御する際に、前記電力供給経路に対する前記抵抗成分の抵抗値を変化させることにより、前記モータが停止するまで前記ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている、請求項1~
6のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項8】
複数の関節を含むロボット本体部と、
前記複数の関節の各々に設けられる複数のモータと、
前記モータに電力を供給する電力供給経路に電気的に接続可能に構成され、前記モータの回転により発生する電気エネルギを消費する抵抗成分を含み、前記抵抗成分により前記電気エネルギを消費することによりダイナミックブレーキを作動させる抵抗回路部と、
前記電力供給経路の電圧を検出するための電圧検出部
と、を備え、
前記抵抗回路部は、異常停止時に前記モータを停止させる際に、前記電圧検出部により検出された前記電力供給経路の電圧に基づいて、前記電力供給経路に対する前記抵抗成分の抵抗値を変化させることにより、前記モータが停止するまで前記ダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御を行うように構成されている
、ロボット。
【請求項9】
前記抵抗回路部は、異常停止時に前記モータを停止させる際に、前記電圧検出部により検出された前記電力供給経路の電圧と、所定の基準電圧との比較に基づいて、前記電力供給経路に対する前記抵抗成分の抵抗値を変化させることにより、前記モータが停止するまで前記ダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御を行うように構成されている、請求項
8に記載のロボット。
【請求項10】
前記抵抗回路部は、異常停止時に前記モータを停止させる際に、前記電圧検出部により検出された前記電力供給経路の電圧が前記所定の基準電圧を超えた場合に、前記電力供給経路に対して前記抵抗成分の抵抗値を増加させる動作を行うとともに、前記電力供給経路の電圧が前記所定の基準電圧以下の場合に、前記電力供給経路に対して前記抵抗成分の抵抗値を減少させる動作を行うことにより、前記モータが停止するまで前記ダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御を行うように構成されている、請求項
9に記載のロボット。
【請求項11】
前記抵抗回路部は、前記電力供給経路に対する前記抵抗成分の接続状態と非接続状態とを切り替えるスイッチ部をさらに含み、
前記抵抗回路部は、異常停止時に前記モータを停止させる際に、前記所定の基準電圧に基づいて、前記スイッチ部のオン動作とオフ動作とを交互に繰り返すことにより、前記電力供給経路に対する前記抵抗成分の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返すことによって、前記モータが停止するまで前記ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている、請求項
9または
10に記載のロボット。
【請求項12】
前記所定の基準電圧は、変更可能に構成されている、請求項
9~
11のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項13】
前記抵抗成分は、前記複数の関節毎に設けられている前記複数のモータに対して共通に設けられており、
前記抵抗回路部は、異常停止時に前記モータを停止させる際に、前記複数のモータに対して共通に設けられている前記抵抗成分の前記電力供給経路に対する抵抗値を変化させることにより、前記複数のモータに対する前記ダイナミックブレーキの制動力を一括して制御するように構成されている、請求項1~
12のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項14】
人間の複数の関節に対応する複数の関節を含む人型ロボット本体部と、
前記複数の関節の各々に設けられる複数のモータと、
前記モータに電力を供給する電力供給経路に電気的に接続可能に構成され、前記モータの回転により発生する電気エネルギを消費する抵抗成分を含み、前記抵抗成分により前記電気エネルギを消費することによりダイナミックブレーキを作動させる抵抗回路部とを備え、
前記抵抗回路部は、異常停止時に前記モータを停止させる際に、前記電力供給経路に対する前記抵抗成分の抵抗値を変化させることにより、
前記モータが停止するまで前記ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている、人型ロボット。
【請求項15】
複数の関節を含むロボットの異常停止時における倒れ制御方法であって、
前記複数の関節の各々に設けられる複数のモータに電力を供給する電力供給経路の電圧を検出するステップと、
検出された前記電力供給経路の電圧に基づいて、前記電力供給経路に電気的に接続可能に構成され前記モータの回転により発生する電気エネルギを抵抗成分により消費することによりダイナミックブレーキを作動させる抵抗回路部における前記抵抗成分の、前記電力供給経路に対する抵抗値を変化させることにより、前記ダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御を行うステップとを備える、ロボットの倒れ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボット、人型ロボットおよびロボットの倒れ制御方法に関し、特に、ダイナミックブレーキが作動されるロボット、人型ロボットおよびロボットの倒れ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイナミックブレーキが作動されるロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、永久磁石を有するモータを制動させる際に、回生回路をダイナミックブレーキとして利用するモータ制御回路が開示されている。また、上記特許文献1には、ロボットのような複数のモータが使用される機種に対して、上記モータ制御回路を適用可能であることが記載されている。
【0004】
具体的には、上記特許文献1に開示されているモータ制御回路は、モータと、モータを駆動するための駆動回路とを備えている。駆動回路は、ブリッジ回路を構成する4つのバイポーラトランジスタからなるトランジスタ(トランジスタTr1、Tr2、Tr3およびTr4)を含む。詳細には、トランジスタTr1およびトランジスタTr2が互いに直列に接続されている。また、トランジスタTr3およびトランジスタTr4が互いに直列に接続されている。トランジスタTr1およびトランジスタTr2の接続点と、トランジスタTr3およびトランジスタTr4の接続点との間にモータが接続されている。また、4つのトランジスタTr1、Tr2、Tr3およびTr4には、それぞれ、並列にダイオードD1、D2、D3およびD4が接続されている。また、互いに直列に接続されるトランジスタTr1およびトランジスタTr2に対して並列に、回生電力消費用抵抗と、回生発生時にオンされる回生用トランジスタとが接続されている。
【0005】
そして、上記特許文献1に開示されているモータ制御回路では、モータが非常停止される際には、モータへの電力の供給が停止されるため、モータが慣性回転される。この際、モータは、発電モードとなっている。そして、発電モードにおいて、回生用トランジスタがオンされる。これにより、モータ、ダイオードD1、回生電力消費用抵抗、回生用トランジスタ、ダイオードD4、および、モータからなる閉じた経路が形成される。これにより、モータによって発電された電力(モータの回転エネルギ)が回生電力消費用抵抗により熱として消費される。その結果、モータに対して、ダイナミックブレーキが作用することになるので、モータに制動力が働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のモータ制御回路のように、モータが非常停止される際に、モータに対するダイナミックブレーキの作用をモータが停止するまで継続的に作用させた場合、モータに対するダイナミックブレーキの制動力が強過ぎる場合があると考えらえる。特に、上記特許文献1のモータ制御回路を人型ロボットのような2足歩行ロボットのモータに適用した場合、非常停止時(異常停止時)にダイナミックブレーキの制動力が強過ぎることに起因して、急激にロボットが停止する。その結果、ロボットが勢いよく転倒することにより、ロボットが破損する場合があるという問題点がある。また、上記特許文献1のモータ制御回路を4足歩行ロボットのモータに適用した場合、非常停止時(異常停止時)に4足歩行ロボットは転倒しないものの、非常停止による衝撃により破損する場合があるという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、異常停止時における破損を抑制することが可能なロボット、人型ロボットおよびロボットの倒れ制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面によるロボットは、複数の関節を含むロボット本体部と、複数の関節の各々に設けられる複数のモータと、モータに電力を供給する電力供給経路に電気的に接続可能に構成され、モータの回転により発生する電気エネルギを消費する抵抗成分を含み、抵抗成分により電気エネルギを消費することによりダイナミックブレーキを作動させる抵抗回路部とを備え、抵抗回路部は、異常停止時にモータを停止させる際に、電力供給経路に対する抵抗成分の抵抗値を変化させることにより、モータが停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている。なお、抵抗回路部は、ハードウェアによって構成されている抵抗回路部と、少なくとも一部がソフトウェアによって構成されている抵抗回路部との両方を含む広い概念である。また、抵抗成分とは、抵抗と、半導体素子による抵抗成分とを含む広い概念である。また、異常停止とは、ユーザの操作によってロボットを非常停止させることと、異常によってロボットが異常停止することとを含む広い概念である。
【0010】
この発明の第1の局面によるロボットでは、上記のように、抵抗回路部は、異常停止時にモータを停止させる際に、電力供給経路に対する抵抗成分の抵抗値を変化させることにより、ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている。これにより、異常停止時にモータを停止させる際に、ダイナミックブレーキの制動力が減少されるので、比較的緩やかにロボットが停止する。これにより、ロボットが人型ロボットのように2足歩行ロボットの場合、ロボットが勢いよく転倒するのが抑制される。つまり、ロボットは、緩やかに倒れ込む。また、4足歩行ロボットの場合、非常停止による衝撃を緩和することができる。これらの結果、異常停止時における破損を抑制することができる。
【0011】
また、ダイナミックブレーキの制動力が強すぎる場合、ロボットの関節がダイナミックブレーキの強い制動力により固定された状態でロボットが転倒する場合がある。これによっても、ロボットが破損する場合がある。これに対して、本発明の第1の局面によるロボットでは、上記のように、ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成することによって、関節がダイナミックブレーキの強い制動力により固定されるのが抑制されるので、関節が固定された状態でロボットが転倒することに起因するロボットの破損を抑制することができる。特に、人型ロボットに本発明を適用した場合には、腕(アーム)が上がった状態、および、膝が伸びた状態で関節(肩関節および膝関節)が強い制動力により固定されるのを抑制することができるとともに、減少された弱い制動力により腕が下がった状態および膝が折れ曲がった状態(しゃがみ込んだ姿勢)に徐々に移行して転倒させることができる。これにより、特に、人型ロボットにおいて、転倒することに起因する破損を効果的に抑制することができる。
この発明の第2の局面によるロボットは、複数の関節を含むロボット本体部と、複数の関節の各々に設けられる複数のモータと、モータに電力を供給する電力供給経路に電気的に接続可能に構成され、モータの回転により発生する電気エネルギを消費する抵抗成分を含み、抵抗成分により電気エネルギを消費することによりダイナミックブレーキを作動させる抵抗回路部と、電力供給経路の電圧を検出するための電圧検出部と、を備え、抵抗回路部は、異常停止時にモータを停止させる際に、電圧検出部により検出された電力供給経路の電圧に基づいて、電力供給経路に対する抵抗成分の抵抗値を変化させることにより、モータが停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御を行うように構成されている。
【0012】
この発明の第3の局面による人型ロボットは、人間の複数の関節に対応する複数の関節を含む人型ロボット本体部と、複数の関節の各々に設けられる複数のモータと、モータに電力を供給する電力供給経路に電気的に接続可能に構成され、モータの回転により発生する電気エネルギを消費する抵抗成分を含み、抵抗成分により電気エネルギを消費することによりダイナミックブレーキを作動させる抵抗回路部とを備え、抵抗回路部は、異常停止時にモータを停止させる際に、電力供給経路に対する抵抗成分の抵抗値を変化させることにより、モータが停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている。なお、抵抗回路部は、ハードウェアによって構成されている抵抗回路部と、少なくとも一部がソフトウェアによって構成されている抵抗回路部との両方を含む広い概念である。また、抵抗成分とは、抵抗と、半導体素子による抵抗成分とを含む広い概念である。また、異常停止とは、ユーザの操作によってロボットを非常停止させることと、異常によってロボットが異常停止することとを含む広い概念である。
【0013】
この発明の第3の局面による人型ロボットでは、上記のように、抵抗回路部は、異常停止時にモータを停止させる際に、電力供給経路に対する抵抗成分の抵抗値を変化させることにより、ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている。これにより、異常停止時にモータを停止させる際に、ダイナミックブレーキの制動力が減少されるので、比較的緩やかに人型ロボットが停止する。これにより、人型ロボットが勢いよく転倒するのが抑制される。つまり、人型ロボットは、緩やかに倒れ込む。その結果、異常停止時における破損を抑制することができる。
【0014】
また、ダイナミックブレーキの制動力が強すぎる場合、人型ロボットの関節がダイナミックブレーキの強い制動力により固定された状態で人型ロボットが転倒する場合がある。これによっても、人型ロボットが破損する場合がある。これに対して、本発明の第2の局面による人型ロボットでは、上記のように、ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成することによって、関節がダイナミックブレーキの強い制動力により固定されるのが抑制されるので、関節が固定された状態で人型ロボットが転倒することに起因する人型ロボットの破損を抑制することができる。また、人型ロボットの腕(アーム)が上がった状態、および、膝が伸びた状態で関節(肩関節および膝関節)が強い制動力により固定されるのを抑制することができるとともに、減少された弱い制動力により腕が下がった状態および膝が折れ曲がった状態(しゃがみ込んだ姿勢)に徐々に移行して転倒させることができる。これにより、特に、人型ロボットにおいて、転倒することに起因する破損を効果的に抑制することができる。
【0015】
この発明の第4の局面によるロボットの倒れ制御方法は、複数の関節を含むロボットの異常停止時における倒れ制御方法であって、複数の関節の各々に設けられる複数のモータに電力を供給する電力供給経路の電圧を検出するステップと、検出された電力供給経路の電圧に基づいて、電力供給経路に電気的に接続可能に構成されモータの回転により発生する電気エネルギを抵抗成分により消費することによりダイナミックブレーキを作動させる抵抗回路部における抵抗成分の、電力供給経路に対する抵抗値を変化させることにより、ダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御を行うステップとを備える。なお、抵抗回路部は、ハードウェアによって構成されている抵抗回路部と、少なくとも一部がソフトウェアによって構成されている抵抗回路部との両方を含む広い概念である。また、抵抗成分とは、抵抗と、半導体素子による抵抗成分とを含む広い概念である。また、異常停止とは、ユーザの操作によってロボットを非常停止させることと、異常によってロボットが異常停止することとを含む広い概念である。
【0016】
この発明の第4の局面によるロボットの倒れ制御方法では、上記のように、検出された電力供給経路の電圧に基づいて、電力供給経路に電気的に接続可能に構成されモータの回転により発生する電気エネルギを抵抗成分により消費することによりダイナミックブレーキを作動させる抵抗回路部における抵抗成分の、電力供給経路に対する抵抗値を変化させることにより、ダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御を行うステップを備える。これにより、異常停止時にモータを停止させる際に、ダイナミックブレーキの制動力が減少されるので、比較的緩やかにロボットが停止する。これにより、ロボットが人型ロボットのように2足歩行ロボットの場合、ロボットが勢いよく転倒するのが抑制される。つまり、ロボットは、緩やかに倒れ込む。また、4足歩行ロボットの場合、非常停止による衝撃を緩和することができる。これらの結果、異常停止時における破損を抑制することが可能なロボットの倒れ制御方法を提供することができる。
【0017】
また、ダイナミックブレーキの制動力が強すぎる場合、ロボットの関節がダイナミックブレーキの強い制動力により固定された状態でロボットが転倒する場合がある。これによっても、ロボットが破損する場合がある。これに対して、本発明の第3の局面によるロボットでは、上記のように、ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成することによって、関節がダイナミックブレーキの強い制動力により固定されるのが抑制されるので、関節が固定された状態で人型ロボットが転倒することに起因するロボットの破損を抑制することが可能なロボットの倒れ制御方法を提供することができる。特に、人型ロボットに本発明を適用した場合には、腕(アーム)が上がった状態、および、膝が伸びた状態で関節(肩関節および膝関節)が強い制動力により固定されるのを抑制することができるとともに、減少された弱い制動力により腕が下がった状態および膝が折れ曲がった状態(しゃがみ込んだ姿勢)に徐々に移行して転倒させることができる。これにより、特に、人型ロボットにおいて、転倒することに起因する破損を効果的に抑制することが可能なロボットの倒れ制御方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、異常停止時における破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態による人型ロボットの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による人型ロボット(人型ロボット本体部)のブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態による人型ロボットのアンプの回路図である。
【
図4】本発明の一実施形態による人型ロボットの回生抵抗回路部の回路図である。
【
図5】本発明の一実施形態による人型ロボットの倒れ制御方法を説明するためのフロー図である。
【
図6】本発明の一実施形態による人型ロボットがしゃがみ込む状態を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による人型ロボットの腕部が水平方向に沿うように配置された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1~
図4を参照して、本実施形態による人型ロボット100(人型ロボット本体部100a)の構成について説明する。また、人型ロボット100は、ヒューマノイドとも呼ばれる。なお、人型ロボット100および人型ロボット本体部100aは、それぞれ、特許請求の範囲の「ロボット」および「ロボット本体部」の一例である。
【0022】
図1に示すように、人型ロボット100は、頭部1、首部2、上胴体部3、下胴体部4、腕部5、手部6、脚部7、および、足部8を備えている。上胴体部3と下胴体部4とは、腰関節10aを介して屈曲可能に接続されている。これにより、上胴体部3は、下胴体部4に対して、前屈動作、後屈動作、および、左右の旋回動作を行うことが可能である。下胴体部4は、人間の骨盤に対応する。また、腰関節10aは、人間の腰に対応している。
【0023】
また、腕部5は、複数のリンク20と、複数のリンク20を屈曲可能に支持する肘関節10bとを有する。そして、隣り合うリンク20が肘関節10bを介して互いに屈曲することにより、腕部5は、屈曲動作を行う。
【0024】
手部6は、腕部5の先端に設けられている。手部6は、複数のリンク(図示せず)と、複数のリンクを屈曲可能に支持する指関節(図示せず)とを有する。
【0025】
脚部7は、複数のリンク20と、複数のリンク20を屈曲可能に支持する膝関節10cとを有する。そして、隣り合うリンク20が膝関節10cを介して互いに屈曲することにより、脚部7は、屈曲動作を行う。そして、脚部7の屈曲動作が制御されることにより足部8を移動させることによって、人型ロボット100は、二足歩行を行うことが可能になる。
【0026】
上胴体部3と腕部5とは、肩関節10dにより接続されている。また、下胴体部4と脚部7とは、股関節10eにより接続されている。脚部7と足部8とは、足関節(足首の関節)10fにより接続されている。なお、腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fは、特許請求の範囲の「関節」の一例である。
【0027】
上記の腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fには、各々、腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fを駆動させるためのモータ30が設けられている。モータ30によって、腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fを駆動させることにより、人型ロボット100は、屈曲動作や旋回動作を行う。なお、実際には、
図1に図示された部位以外の部位にも関節およびモータ30が設けられているが、説明の簡略化のため省略している。
【0028】
図2に示すように、人型ロボット100(人型ロボット本体部100a)には、上記のモータ30に加えて、回生抵抗回路部60を含む制御回路部50と、電源70と、アンプユニット80とが設けられている。制御回路部50は、アンプユニット80に対して、指令を出力する。なお、
図2では、破線の矢印は、通信信号を表している。また、細い実線の矢印は、制御電力を表している。また、太い実線の矢印は、モータ30を駆動するモータ電力を表している。
【0029】
本実施形態では、回生抵抗回路部60には、電源70からモータ駆動電力が供給される。そして、回生抵抗回路部60は、アンプユニット80に対して、モータ30を駆動するための電力を供給するように構成されている。なお、回生抵抗回路部60の詳細な構成は、後述する。また、回生抵抗回路部60は、特許請求の範囲の「抵抗回路部」の一例である。
【0030】
制御回路部50には、電源70から制御電力が供給される。そして、制御回路部50は、アンプユニット80を制御するための電力を供給するように構成されている。
【0031】
アンプユニット80は、各々、複数のアンプ(サーボアンプ)81を含む。アンプ81は、上記腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10f(
図1参照)などに設けられた複数のモータ30の各々に対して設けられている。また、アンプ81は、モータ30の駆動を制御する。
【0032】
図3に示すように、アンプ81は、インバータ部81aと、インバータ部81aを制御する制御部81bとを含む。インバータ部81aは、上アームを構成する3つの半導体スイッチング素子SW1、SW2およびSW3と、下アームを構成する3つの半導体スイッチング素子SW4、SW5およびSW6とを含む。制御部81bにより、半導体スイッチング素子SW1~SW6のオンオフが制御されることにより、モータ30に所望の3相(U、VおよびW)の電力が供給される。
【0033】
(回生抵抗回路部の詳細な構成)
次に、
図2および
図4を参照して、本実施形態による回生抵抗回路部60の詳細な構成について説明する。
【0034】
図4に示すように、回生抵抗回路部60は、電源70(
図2参照)からモータ30(アンプユニット80のアンプ81)にモータ駆動電力を供給するための電力供給配線61が設けられている。電力供給配線61は、正側電位(P)に接続される正側電位配線61a、負側電位(N)に接続される負側電位配線61b、および、アース電位(E)に接続される接地電位配線61cを含む。また、電力供給配線61の一方端は、電源70に接続されるコネクタ62aに接続されている。また、電力供給配線61の他方端は、アンプユニット80のアンプ81に接続される複数のコネクタ62cに接続されている。なお、電力供給配線61は、特許請求の範囲の「電力供給経路」の一例である。
【0035】
回生抵抗回路部60は、モータ30にモータ駆動電力を供給する電力供給配線61に電気的に接続可能に構成されている回生抵抗63を含んでいる。回生抵抗63は、モータ30の回転により発生する電気エネルギ(回生エネルギ)を消費するように構成されている。具体的には、回生抵抗63の一方端は、正側電位配線61aに接続されるとともに、回生抵抗63の他方端は、後述するトランジスタTr1を介して負側電位配線61bに接続されている。ここで、本実施形態では、回生抵抗回路部60は、通常動作時には、回生抵抗63による回生動作を行い、非常停止時には、回生抵抗63を用いて制動力が減少されたダイナミックブレーキを作動させる動作を行う。この点については、後に詳細に説明する。なお、通常動作時における回生動作においても回生抵抗63による非常停止時よりも制動力の強いダイナミックブレーキが作動する。また、回生抵抗63は、通常時の回生動作における電力供給配線61の電圧の上昇を抑制するために、一般的な人型ロボット100には、予め設けられている。また、モータ30は、腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fに対応して複数設けられている一方、回生抵抗63は、複数のモータ30に対して共通に設けられている。なお、回生抵抗63は、特許請求の範囲の「抵抗成分」の一例である。また、非常停止は、特許請求の範囲の「異常停止」の一例である。
【0036】
回生抵抗回路部60には、トランジスタTr1が設けられている。トランジスタTr1のゲートGは、後述する回生抵抗制御回路部64に接続されている。トランジスタTr1のドレインDは、回生抵抗63に接続されている。トランジスタTr1のソースSは、負側電位配線61bに接続されている。なお、トランジスタTr1は、特許請求の範囲の「スイッチ部」の一例である。
【0037】
回生抵抗回路部60には、回生抵抗制御回路部64が設けられている。回生抵抗制御回路部64は、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作(回生抵抗63が電力供給配線61に電気的に接続された状態にする動作)と非接続動作(回生抵抗63が電力供給配線61に電気的に接続された状態を解除する動作)とを制御するように構成されている。また、回生抵抗制御回路部64は、通常時の回生動作の際には、正側電位配線61aの電圧と、第1基準電圧とを比較する。また、回生抵抗制御回路部64は、非常停止時には、正側電位配線61aの電圧と、第2基準電圧とを比較する。なお、本実施形態では、第2基準電圧は、変更可能に構成されている。同様に、第1基準電圧は、変更可能に構成されている。なお、回生抵抗制御回路部64は、特許請求の範囲の「電圧検出部」の一例である。また、第2基準電圧は、特許請求の範囲の「所定の基準電圧」の一例である。
【0038】
回生抵抗回路部60の回生抵抗制御回路部64には、非常停止ボタン40から非常停止信号が入力される。
【0039】
(通常時の回生動作)
通常時には、人型ロボット100のモータ30(
図2参照)に対して、減速や反転の指令が行われる際に電力の回生が行われる。電力の回生の際に、電力供給配線61の電圧が大きくなり過ぎないように、回生抵抗63が接続される。これにより、回生される電力の一部が回生抵抗63によって熱として消費されるので、電力供給配線61の電圧が大きくなり過ぎるのを抑制することが可能になる。また、回生された電力のうち、回生抵抗63によって熱として消費されない部分は、電源70に蓄電される。以下、詳細に説明する。
【0040】
通常時には、正側電位配線61aの電圧と、第1基準電圧とが回生抵抗制御回路部64により比較される。正側電位配線61aの電圧が、第1基準電圧よりも大きい場合、回生抵抗制御回路部64から、トランジスタTr1のゲートに対して、トランジスタTr1をオンさせる信号が出力される。これにより、回生抵抗63が正側電位配線61aと負側電位配線61bとの間に電気的に接続されることにより、電力供給配線61の電圧が低下する。一方、正側電位配線61aの電圧が、第1基準電圧以下の場合、回生抵抗制御回路部64から、トランジスタTr1のゲートに対して、トランジスタTr1をオフさせる信号が出力される。これにより、回生抵抗63の正側電位配線61aおよび負側電位配線61bに対する接続状態が解除されることにより、電力供給配線61の電圧が上昇する。その結果、正側電位配線61a自体の電圧は、第1基準電圧に応じた比較的高い電圧(たとえば、200V)に維持される。言い換えると、通常時に正側電位配線61a自体の電圧が、たとえば200Vに維持されるように、第1基準電圧が調整されている。
【0041】
(非常停止時のダイナミックブレーキ弱め制御)
人型ロボット100の非常停止について説明する。非常停止とは、ユーザが非常停止ボタン40(
図2参照)を押下(操作)することにより、モータ30を停止させることによって、人型ロボット100を停止させる動作である。非常停止時には、アンプ81(
図2参照)の動作が停止されるとともに、電源70からの電力供給が停止される。すなわち、電源70側から、電力供給配線61には電力が供給されない。また、非常停止時に、電力供給配線61に対して、回生抵抗63(
図4参照)が接続(電気的に接続)されることにより、正側電位配線61a、アンプ81、モータ30、負側電位配線61b、トランジスタTr1、回生抵抗63、および、正側電位配線61aからなる閉じた経路が形成される。その結果、モータ30によって発電された電力(モータ30の回転エネルギ)が回生抵抗63により熱として消費されるので、モータ30に対して、ダイナミックブレーキが作用する。これにより、モータ30に制動力が働く。
【0042】
ここで、本実施形態では、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を変化させることにより、ダイナミックブレーキの制動力を減少させるダイナミックブレーキ弱め制御を行うように構成されている。具体的には、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返すことにより、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を変化させて、ダイナミックブレーキの制動力を減少させるダイナミックブレーキ弱め制御を行うように構成されている。つまり、電力供給配線61に対して回生抵抗63を接続して、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を0よりも大きくするとともに、電力供給配線61に対して回生抵抗63を非接続にして、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を0にする。そして、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返すことにより、ダイナミックブレーキの制動力が作用する状態と、作用しない状態とが交互に繰り返される。これにより、人型ロボット100は、徐々に姿勢を変化させる。
【0043】
また、本実施形態では、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を変化させる(接続動作と非接続動作とを交互に繰り返す)ことにより、モータ30が停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させるダイナミックブレーキ弱め制御を行うように構成されている。すなわち、人間の複数の関節に対応する腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fを有している人型ロボット100の動作が完全に停止されるまで、ダイナミックブレーキの制動力が減少される。
【0044】
また、本実施形態では、回生抵抗回路部60は、人型ロボット本体部100aの倒れを制御する際に、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を変化させる(接続動作と非接続動作とを交互に繰り返す)ことにより、モータ30が停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている。人型ロボット本体部100aには、人型ロボット本体部100aの腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fを固定する(姿勢を維持する)ための機械的なブレーキ(電磁ブレーキ)などは設けられていない。このため、非常停止時には、最終的に、人型ロボット本体部100aは、倒れ込む。本実施形態では、回生抵抗回路部60により電気的に制動力が減少されたダイナミックブレーキを作動させることによって、人型ロボット本体部100aの倒れ込み方が比較的緩やかな倒れ込みになるように制御する。
【0045】
また、本実施形態では、回生抵抗回路部60は、非常停止信号に基づいて、通常動作から非常停止時の動作に切り替える制御を行うように構成されている。具体的には、ユーザが非常停止ボタン40(
図2参照)を押下(操作)することに基づいて、非常停止信号が回生抵抗制御回路部64に入力されて、通常動作から非常停止時の動作に切り替えられる。
【0046】
ここで、本実施形態では、回生抵抗回路部60は、通常動作時に回生抵抗63を作動させる場合の作動電圧よりも低い作動電圧で非常停止時に電力供給配線61に対して回生抵抗63を接続する動作を行うように構成されている。具体的には、上記のように、通常動作時(回生時)には、回生抵抗制御回路部64は、比較的高い第1基準電圧の作動電圧で、電力供給配線61に対して回生抵抗63を接続して、回生動作を行う。一方、非常停止時には、回生抵抗制御回路部64は、比較的低い第2基準電圧の作動電圧で、電力供給配線61に対して回生抵抗63を接続して、ダイナミックブレーキを作用させる動作を行う。
【0047】
また、本実施形態では、電力供給配線61(正側電位配線61a)の電圧が、回生抵抗制御回路部64により検出される。そして、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、回生抵抗制御回路部64により検出された電力供給配線61の電圧に基づいて、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を変化させる(接続動作と非接続動作とを交互に繰り返す)ことにより、モータ30が停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御を行うように構成されている。具体的には、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、回生抵抗制御回路部64により検出された電力供給配線61の電圧と、第2基準電圧とを比較する。そして、回生抵抗回路部60は、電力供給配線61の電圧と、第2基準電圧との比較に基づいて、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返させる。これにより、モータ30が停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御が行われる。
【0048】
具体的には、本実施形態では、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、回生抵抗制御回路部64により検出された電力供給配線61(正側電位配線61a)の電圧が第2基準電圧を超えた場合に、電力供給配線61に対して回生抵抗63の抵抗値を増加させる(回生抵抗63を接続する)動作を行う。すなわち、回生抵抗制御回路部64により検出された電圧が第2基準電圧を超える場合に、回生抵抗制御回路部64から出力されるHレベルの信号に基づいて、電力供給配線61に対して回生抵抗63が接続される。また、電力供給配線61の電圧が第2基準電圧以下の場合に、電力供給配線61に対して回生抵抗63の抵抗値を減少させる(回生抵抗63を非接続とする)動作が行われる。すなわち、回生抵抗制御回路部64により検出された電圧が第2基準電圧以下の場合に回生抵抗制御回路部64から出力されるLレベルの信号に基づいて、電力供給配線61に対して回生抵抗63が非接続とされる。
【0049】
また、本実施形態では、回生抵抗回路部60には、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続状態と非接続状態とを切り替えるトランジスタTr1が設けられている。そして、非常停止時にモータ30を停止させる際に、第2基準電圧に基づいて、トランジスタTr1がオン動作とオフ動作とを交互に繰り返すことにより、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作と非接続動作とが交互に繰り返される。すなわち、回生抵抗制御回路部64により検出された電圧が第2基準電圧を超える場合に回生抵抗制御回路部64から出力されるHレベルの信号に基づいてトランジスタTr1がオンされる。これにより、電力供給配線61に対して回生抵抗63が接続される。また、回生抵抗制御回路部64により検出された電圧が第2基準電圧を以下の場合に回生抵抗制御回路部64から出力されるLレベルの信号に基づいてトランジスタTr1がオフされる。これにより、電力供給配線61に対して回生抵抗63が非接続とされる。
【0050】
そして、正側電位配線61aの電圧が、第1基準電圧よりも大きい場合、回生抵抗63が正側電位配線61aと負側電位配線61bとの間に電気的に接続されることにより、電力供給配線61の電圧が低下する。また、正側電位配線61aの電圧が、第2基準電圧以下の場合、回生抵抗63の正側電位配線61aおよび負側電位配線61bに対する接続状態が解除されることにより、電力供給配線61の電圧が上昇する。その結果、正側電位配線61a自体の電圧は、比較的低い第2基準電圧に応じた電圧(たとえば、30V以上60V以下)に維持される。言い換えると、非常停止時に、正側電位配線61a自体の電圧が、たとえば30V以上60V以下の所定電圧に維持されるように、第2基準電圧が調整されている。これにより、回生抵抗63が正側電位配線61aおよび負側電位配線61bに接続されることより作用するダイナミックブレーキの制動力が比較的小さくなる。すなわち、通常動作時のように正側電位配線61a自体の電圧が比較的大きい(200Vなど)場合と比べて、ダイナミックブレーキの制動力が弱められる。
【0051】
また、本実施形態では、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、複数のモータ30に対して共通に設けられている回生抵抗63の電力供給配線61に対する抵抗値を変化させる(接続動作と非接続動作とを交互に繰り返す)ことにより、複数のモータ30に対するダイナミックブレーキの制動力を一括して制御するように構成されている。すなわち、回生抵抗63が複数のモータ30に対して共通に設けられているので、回生抵抗63が接続されることよって発生するダイナミックブレーキの制動力は、複数のモータ30の各々において略同じである。回生抵抗63が接続されることより、全てのモータ30に対してダイナミックブレーキが作用する。また、回生抵抗63が非接続とされることより、全てのモータ30に対するダイナミックブレーキの作動が停止される。
【0052】
非常停止時には、電力の供給が停止されるため、ソフトウェアによってダイナミックブレーキの制動力を低減する動作を行う場合には、ダイナミックブレーキの制動力を低減する動作に対する信頼性を確保するのが困難な場合がある。そこで、非常停止時に、回生抵抗制御回路部64において比較器(図示せず)などを用いてハードウェアによってダイナミックブレーキの制動力を低減する動作を行うことによって、ダイナミックブレーキの制動力を低減する動作に対する信頼性を向上させることが可能になる。
【0053】
(非常停止時の状態の解除)
また、非常停止時の動作が行われた後、ダイナミックブレーキ解除信号が回生抵抗回路部60(
図4参照)に入力されることにより、通常時と同様の動作が行われる。すなわち、ダイナミックブレーキの作用が解除されて、通常時の回生動作が可能になる。
【0054】
(倒れ制御方法)
次に、
図1、
図4および
図5を参照して、人型ロボット100の非常停止時における倒れ制御方法について説明する。
【0055】
図5に示すステップS1において、非常停止ボタン40が押下されることにより、回生抵抗制御回路部64(
図4参照)は、正側電位配線61aの電圧と第2基準電圧とを比較する状態となる。
【0056】
ステップS2において、腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fの各々に設けられる複数のモータ30に電力を供給する電力供給配線61の電圧が回生抵抗制御回路部64により検出される。
【0057】
ステップS3において、回生抵抗制御回路部64において、回生抵抗制御回路部64により検出された電力供給配線61の電圧と、第2基準電圧とが比較される。
【0058】
そして、本実施形態では、検出された電力供給配線61の電圧に基づいて、回生抵抗63の、電力供給配線61に対する抵抗値が変化されて(接続動作と非接続動作とが交互に繰り返されて)、ダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御が行われる。具体的には、ステップS3において、回生抵抗制御回路部64により検出された電力供給配線61の電圧が第2基準電圧よりも大きい場合、ステップS4に進んで、トランジスタTr1がオンされる。これにより、回生抵抗63が電力供給配線61に対して接続される。また、ステップS3において、回生抵抗制御回路部64により検出された電力供給配線61の電圧が第2基準電圧以下の場合、ステップS5に進んで、トランジスタTr1がオフされる。これにより、回生抵抗63が電力供給配線61に対して非接続とされる。
【0059】
なお、ステップS3~ステップS5の動作は、モータ30が停止するまで継続される。これにより、モータ30が停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御が行われる。
【0060】
次に、人型ロボット100が非常停止時に倒れる動作を、具体的に説明する。
【0061】
たとえば、
図1に示すように、非常停止時の前の時点において、人型ロボット100が直立しているとする。この状態で、非常停止ボタン40(
図2参照)が押下されると、アンプ81およびモータ30への電源の供給が停止される。また、非常停止ボタン40が押下されることにより、回生抵抗回路部60の回生抵抗制御回路部64(
図4参照)は、正側電位配線61aの電圧と第2基準電圧とを比較する状態となる。
【0062】
また、人型ロボット100では、腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10f(モータ30)を固定する(つまり、姿勢を維持する)ための機械的な電磁ブレーキが設けられていないので、アンプ81およびモータ30への電源の供給が停止されることにより、人型ロボット100は、姿勢を維持することができない。このため、人型ロボット100は、直立している状態から、
図6に示すように、脚部7の膝関節10cおよび股関節10eならびに足部8の足関節10fを折り曲げるように倒れこむ。
【0063】
膝関節10c、股関節10eおよび足関節10fを折り曲げる際、モータ30への電力の供給が停止されているため、モータ30は、発電を行うように動作する。そして、膝関節10c、股関節10eおよび足関節10fを折り曲げる際にモータ30の回転数が徐々に上昇するとともに、発電された電力(電圧)が上昇する。また、発電された電力は、電力供給配線61に供給される。これにより、電力供給配線61の電圧も上昇する。そして、電力供給配線61(正側電位配線61a)の電圧が回生抵抗制御回路部64によって検出される。
【0064】
そして、検出された電力供給配線61(正側電位配線61a)の電圧に基づいて、ダイナミックブレーキを作動させる回生抵抗63の、電力供給配線61に対する接続動作と非接続動作とを交互に繰り返すことにより、ダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御が行われる。なお、第2基準電圧は比較的低く設定されているので、モータ30に対するダイナミックブレーキは、モータ30の回転数が比較的小さい状態で作用し始めるとともに、ダイナミックブレーキの制動力は、比較的弱い。これにより、膝関節10c、股関節10eおよび足関節10fを緩やかに折り曲げるように、人型ロボット100の姿勢が移行された後、人型ロボット100は動作を停止する。その後、人型ロボット100は倒れ込む(転倒する)。このように、人型ロボット100は、比較的緩やかに停止するので、人型ロボット100が勢いよく転倒するのが抑制される。
【0065】
また、
図7に示すように、非常停止時の前の時点において、人型ロボット100の一対の腕部5のうちの一方が水平方向に沿うように配置されているとする。なお、
図7の人型ロボット100の状態で、非常停止ボタン40が押下されると、上記のように、膝関節10c、股関節10eおよび足関節10fも折り曲げられが、説明の簡略化のため、膝関節10c、股関節10eおよび足関節10fが折り曲げられずに、腕部5の姿勢のみが変化する場合について説明する。
【0066】
この状態で、非常停止ボタン40が押下されると、アンプ81およびモータ30への電源の供給が停止される。人型ロボット100では、肩関節10dを固定するためのブレーキが設けられていないので、腕部5の自重によって、肩関節10dが回動する。これにより、水平方向に沿うように配置されていた腕部5は、肩関節10dを中心として、弧を描くように回動する。この際、モータ30への電力の供給が停止されているため、モータ30は、発電を行うように動作する。そして、肩関節10dが回動している状態で、電力供給配線61の電圧が、回生抵抗制御回路部64によって第2基準電圧と比較され、回生抵抗63の接続動作と非接続動作とが交互に繰り返される。これにより、ダイナミックブレーキの制動力が弱められるので、腕部5は、肩関節10dを中心として、比較的緩やかに回動した後、停止する。このように、腕部5は、比較的緩やかに停止するので、腕部5が勢いよく上胴体部3または下胴体部4などに衝突するのが抑制される。
【0067】
また、人型ロボット100が動いている状態(モータ30の回転数が比較的高い場合)において、非常停止ボタン40が押下されると、モータ30によって発電される電力の電圧が比較的高いのでダイナミックブレーキが作用する。これにより、モータ30の回転数が低下し、発電される電力の電圧が第2基準電圧の近傍に低下した状態で、回生抵抗63の接続動作と非接続動作とが交互に繰り返される。これにより、ダイナミックブレーキの制動力が弱められる。その結果、人型ロボット100の関節が固定された状態(硬直状態)で人型ロボット100が転倒するのが抑制される。
【0068】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0069】
本実施形態では、上記のように、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を変化させることにより、ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている。これにより、非常停止時にモータ30を停止させる際に、ダイナミックブレーキの制動力が減少されるので、比較的緩やかに人型ロボット100が停止する。これにより、人型ロボット100が勢いよく転倒するのが抑制される。つまり、人型ロボット100は、緩やかに倒れ込む。その結果、非常停止時における破損を抑制することができる。
【0070】
また、ダイナミックブレーキの制動力が強すぎる場合、人型ロボット100の腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fがダイナミックブレーキの強い制動力により固定された状態で人型ロボット100が転倒する場合がある。これによっても、人型ロボット100が破損する場合がある。これに対して、本実施形態の人型ロボット100では、上記のように、ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成することによって、腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fがダイナミックブレーキの強い制動力により固定されるのが抑制されるので、腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fが固定された状態で人型ロボット100が転倒することに起因する人型ロボット100の破損を抑制することができる。特に、人型ロボット100では、腕部5(アーム)が上がった状態、および、膝9aが伸びた状態で関節(肩関節10dおよび膝関節10c)が強い制動力により固定されるのを抑制することができるとともに、減少された弱い制動力により腕部5が下がった状態および膝9aが折れ曲がった状態(しゃがみ込んだ姿勢)に徐々に移行して転倒させることができる。これにより、特に、人型ロボット100において、転倒することに起因する破損を効果的に抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、回生抵抗回路部60は、異常停止時にモータ30を停止させる際に、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返すことにより、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を変化させて、ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている。これにより、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返すだけで、容易に、ダイナミックブレーキの制動力を減少させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、回生抵抗回路部60は、モータ30において発生する回生エネルギを消費する回生抵抗63を有する。これにより、通常時において、人型ロボット100の減速の際などに行われる回生動作において発生する回生エネルギを消費する回生抵抗63を用いて、非常停止時のダイナミックブレーキを作用させることができる。これにより、通常時の回生動作に用いられる回生抵抗63と、非常停止時のダイナミックブレーキを作用させるための抵抗とを別個に設ける場合と異なり、人型ロボット100の回路構成が複雑になるのを抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、回生抵抗回路部60は、通常動作時に回生抵抗63を作動させる場合の作動電圧よりも低い作動電圧で非常停止時に電力供給配線61に対して回生抵抗63を接続する動作を行うように構成されている。これにより、モータ30の回転数が比較的小さい状態(モータ30の発電電圧が小さい状態)でダイナミックブレーキが作用するので、人型ロボット100の姿勢が大きく変化する前にダイナミックブレーキを作用させることができる。すなわち、非常停止時に、人型ロボット100の姿勢が徐々に変化されながら、人型ロボット100が停止される。これにより、人型ロボット100の姿勢が急激に変化することに起因して、人型ロボット100自身の一の部位(たとえば腕部5)が他の部位(たとえば上胴体部3、下胴体部4)に強い力で衝突するのを抑制することができる。その結果、ダイナミックブレーキの作用が遅れる(効かない)ことに起因する、人型ロボット100の破損を抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、回生抵抗回路部60は、非常停止信号に基づいて、通常動作から非常停止時の動作に切り替える制御を行うように構成されている。これにより、非常停止信号に基づいて、直ちに通常動作から非常停止時の動作に切り替えることができるので、非常停止時に迅速にモータ30に対してダイナミックブレーキを作用させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を変化させる(接続動作と非接続動作とを交互に繰り返す)ことにより、モータ30が停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている。これにより、モータ30が停止することにより人型ロボット100の動作が停止されるまでダイナミックブレーキの制動力を減少させることができるので、人型ロボット100の動作が完全に停止されるより前の途中の段階においてダイナミックブレーキの制動力が増加するのを抑制することができる。その結果、人型ロボット100の動作が完全に停止されるより前の途中の段階において、ダイナミックブレーキの制動力が強くなることに起因して人型ロボット100が勢いよく転倒するのを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、人型ロボット本体部100aは、人間の複数の関節に対応する腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fを有する。ここで、人型ロボット100(人型ロボット本体部100a)は、2足歩行を行うので、比較的転倒しやすい。このため、上記のように、非常停止時に、ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うことは、比較的転倒しやすい人型ロボット100が破損するのを抑制する場合において特に有効である。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、回生抵抗回路部60は、人型ロボット本体部100aの倒れを制御する際に、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を変化させる(接続動作と非接続動作とを交互に繰り返す)ことにより、モータ30が停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている。これにより、人型ロボット本体部100aの倒れ制御を行う際に、倒れる動作の期間中、ダイナミックブレーキの制動力が減少されるので、比較的緩やかに人型ロボット本体部100aが倒れ込むように制御することができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、電力供給配線61の電圧を検出するための回生抵抗制御回路部64をさらに備え、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、回生抵抗制御回路部64により検出された電力供給配線61の電圧に基づいて、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を変化させる(接続動作と非接続動作とを交互に繰り返す)ことにより、モータ30が停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御を行うように構成されている。ここで、モータ30の回転数の増加とともに、モータ30によって発電される電力の電圧(電力供給配線61の電圧)が高くなる。そこで、上記のように、回生抵抗制御回路部64により検出された電力供給配線61の電圧に基づいて、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返すことにより、モータ30の回転数(電圧)が過度に増加するのを抑制することができる。これにより、モータ30に対するダイナミックブレーキの制動力が過度に強くなるのを抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、回生抵抗制御回路部64により検出された電力供給配線61の電圧と、第2基準電圧との比較に基づいて、電力供給配線61に対する回生抵抗63の抵抗値を変化させる(接続動作と非接続動作とを交互に繰り返す)ことにより、モータ30が停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御を行うように構成されている。これにより、モータ30によって発電される電力の電圧が、第2基準電圧に応じた電圧よりも上昇するのが抑制されて、第2基準電圧に応じた電圧に近い電圧に維持されるので、モータ30に対するダイナミックブレーキの制動力を所望の弱い大きさに維持することができる
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、回生抵抗制御回路部64により検出された電力供給配線61の電圧が第2基準電圧を超えた場合に、電力供給配線61に対して回生抵抗63の抵抗値を増加させる(回生抵抗63を接続する)動作を行うとともに、電力供給配線61の電圧が第2基準電圧以下の場合に、電力供給配線61に対して回生抵抗63の抵抗値を減少させる(回生抵抗63を非接続とする)動作を行うことにより、モータ30が停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御を行うように構成されている。これにより、回生抵抗制御回路部64により検出された電力供給配線61の電圧が第2基準電圧を超えた場合に、電力供給配線61に対して回生抵抗63が接続されるので、電力供給配線61の電圧を低下させることができる。また、電力供給配線61の電圧が第2基準電圧以下の場合に、電力供給配線61に対して回生抵抗63が非接続とされるので、電力供給配線61の電圧を上昇させることができる。これにより、モータ30によって発電される電力の電圧を、容易に第2基準電圧に応じた電圧に近い電圧に維持することができる。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、回生抵抗回路部60は、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続状態と非接続状態とを切り替えるトランジスタTr1をさらに含み、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、第2基準電圧に基づいて、トランジスタTr1のオン動作とオフ動作とを交互に繰り返すことにより、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返すことによって、モータ30が停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行うように構成されている。これにより、トランジスタTr1のオン動作とオフ動作とを切り替えるだけで、容易に、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続状態と非接続状態とを切り替えることができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、第2基準電圧は、変更可能に構成されている。これにより、人型ロボット100の腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fに設けられるモータ30の仕様に応じて第2基準電圧を変更することができるので、モータ30などの仕様に応じて、適切に、ダイナミックブレーキの制動力を減少させることができる。
【0083】
また、本実施形態では、上記のように、回生抵抗63は、腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10f毎に設けられている複数のモータ30に対して共通に設けられており、回生抵抗回路部60は、非常停止時にモータ30を停止させる際に、複数のモータ30に対して共通に設けられている回生抵抗63の電力供給配線61に対する抵抗値を変化させる(接続動作と非接続動作とを交互に繰り返す)ことにより、複数のモータ30に対するダイナミックブレーキの制動力を一括して制御するように構成されている。これにより、複数のモータ30に対して個別に回生抵抗63を設ける場合と異なり、人型ロボット100の回生抵抗回路部60を構成する部品点数の増加および回生抵抗回路部60の回路構成の複雑化を抑制することができるので、人型ロボット100の小型化を図ることができる。
【0084】
また、本実施形態では、上記のように、検出された電力供給配線61の電圧に基づいて、電力供給配線61に電気的に接続可能に構成されモータ30の回転により発生する電気エネルギを回生抵抗63により消費することによりダイナミックブレーキを作動させる回生抵抗回路部60における回生抵抗63の、電力供給配線61に対する抵抗値を変化させることにより、ダイナミックブレーキの制動力を減少させるフィードバック制御を行うステップを備える。これにより、非常停止時にモータ30を停止させる際に、ダイナミックブレーキの制動力が減少されるので、非常停止時において人型ロボット100が勢いよく転倒することに起因する破損を抑制することが可能な人型ロボット100の倒れ制御方法を提供することができる。また、腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fがダイナミックブレーキの強い制動力により固定されるのが抑制されるので、腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10fが固定された状態で人型ロボット100が転倒することに起因する人型ロボット100の破損を抑制することが可能な人型ロボット100の倒れ制御方法を提供することができる。また、腕部5(アーム)が上がった状態、および、膝9aが伸びた状態で関節(肩関節10dおよび膝関節10c)が強い制動力により固定されるのを抑制することができるとともに、減少された弱い制動力により腕部5が下がった状態および膝9aが折れ曲がった状態(しゃがみ込んだ姿勢)に徐々に移行して転倒させることができるので、人型ロボット100において、転倒することに起因する破損を効果的に抑制することが可能な人型ロボット100の倒れ制御方法を提供することができる。
【0085】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0086】
たとえば、上記実施形態では、人型ロボット100に本発明が適用される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、人型ロボット100以外の動物を模した2足歩行のロボットや4足歩行ロボットなどに本発明を適用してもよい。4足歩行ロボットに適用した場合、非常停止による衝撃を緩和することができるので、異常停止時における破損を抑制することができる。
【0087】
また、上記実施形態では、電力供給配線61に対して回生抵抗63の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返すことにより、ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、電力供給配線61に対して常に接続された状態の回生抵抗の抵抗値を変化させることにより、ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行ってもよい。すなわち、電力供給配線61の電圧が第2基準電圧を超えた場合に、回生抵抗の抵抗値を大きくし、電力供給配線61の電圧が第2基準電圧以下の場合に、回生抵抗の抵抗値を小さくすることにより、ダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行ってもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、本発明の「抵抗成分」として回生抵抗63が用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明の「抵抗成分」として半導体素子による抵抗成分を用いてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、人型ロボット100に予め設けられる回生エネルギを消費する回生抵抗63を用いてダイナミックブレーキを作用させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、回生エネルギを消費する回生抵抗63とは別個に、ダイナミックブレーキを作用させるための専用の抵抗を設けてもよい。この場合、そのような専用の抵抗を有する抵抗回路部を回生抵抗回路部とは別個に設けてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、電力供給配線61に対して回生抵抗63が接続される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、モータ30とアンプ81とを接続する配線に、回生抵抗63を接続するようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、非常停止時に電力供給配線61に対して回生抵抗63を接続する基準となる第2基準電圧が、通常動作時に回生抵抗63を作動させる基準となる第1基準電圧よりも低い例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、通常動作時に回生抵抗63を作動させる基準となる第1基準電圧が比較的低ければ、第2基準電圧が第1基準電圧と同等であってもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、非常停止ボタン40がユーザにより押下されることにより、人型ロボット100が非常停止される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、人型ロボット100にセンサを設けて、センサが人型ロボット100の姿勢や動作を検知することに基づいて、人型ロボット100が自動的に非常停止されてもよい。また、人型ロボット100に異常が発生した場合に、モータ30が停止するまでダイナミックブレーキの制動力を減少させる制御を行ってもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、非常停止時にモータ30を停止させる際に、電力供給配線61の電圧に基づいて、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返す例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、モータ30の回転数を検出するとともに、検出されたモータの回転数に基づいて、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返してもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、トランジスタTr1がオン動作とオフ動作とを交互に繰り返すことにより、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作と非接続動作とが交互に繰り返される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、トランジスタTr1以外のスイッチ部(リレーなど)を用いて、電力供給配線61に対する回生抵抗63の接続動作と非接続動作とを交互に繰り返してもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、第1基準電圧および第2基準電圧が変更可能に構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1基準電圧および第2基準電圧が固定されていてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、回生抵抗63が、複数のモータ30に対して共通に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、回生抵抗63が、複数のモータ30に対して個別に設けられていてもよい。これにより、腰関節10a、肘関節10b、膝関節10c、肩関節10d、股関節10eおよび足関節10f毎にダイナミックブレーキの制動力を個別に制御することが可能になる。
【符号の説明】
【0097】
10a 腰関節(関節)
10b 肘関節(関節)
10c 膝関節(関節)
10d 肩関節(関節)
10e 股関節(関節)
10f 足関節(関節)
30 モータ
60 回生抵抗回路部(抵抗回路部)
61 電力供給配線(電力供給経路)
63 回生抵抗(抵抗成分)
64 回生抵抗制御回路部(電圧検出部)
100 人型ロボット(ロボット)
100a 人型ロボット本体部(ロボット本体部)
Tr1 トランジスタ(スイッチ部)