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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】高周波電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231108BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H05H1/46 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019236594
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021106462
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大上 泰幸
【審査官】町田 舞
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/093269(WO,A1)
【文献】特開2003-143861(JP,A)
【文献】特開2011-217482(JP,A)
【文献】特開2004-273533(JP,A)
【文献】特開2014-204655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42-7/98
H05H 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続される負荷に対して高周波出力を供給する高周波電源装置であって、
少なくとも2つの電力増幅器と、
少なくとも1つの電力合成部と、
前記電力合成部から出力され、前記負荷に供給する進行波電力信号と、前記負荷からの反射波電力信号と、を検出する高周波電力検出部と、
前記検出した進行波電力信号および反射波電力信号の変化量によって、負荷急変を検出し、前記負荷急変を検出した場合に前記電力増幅器の各位相を変化させて、前記高周波出力を変化させるように構成された制御部と、を備え
前記制御部は、
負荷急変時に前記電力増幅器の位相を変化させる負荷急変時保護機能に関する複数の条件を設定するための設定画面であって、前記負荷急変時保護機能を適用する保護機能適用時間を設定することが可能なように構成される設定画面を生成し、当該設定画面を表示装置の表示画面上に表示し、前記設定画面を介して入力された前記複数の条件に基づいて、前記負荷急変時保護機能を動作させ、
前記保護機能適用時間を掛けて、前記電力増幅器の各位相を徐々に変化させる、高周波電源装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記進行波電力信号および反射波電力信号からそれぞれの基本波信号を取り出し、基本波進行波電力信号および基本波反射波電力信号の変化量を演算し、当該変化量に基づいて前記負荷急変を検出する、高周波電源装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御部は、前記進行波電力信号もしくは反射波電力信号が、単調増加する場合、あるいは、増減を繰り返しながら増加する場合に、前記変化量を演算する、高周波電源装置。
【請求項4】
請求項において、
前記設定画面は、前記負荷急変時保護機能の解除後に前記電力増幅器の位相を元に戻すまでの移行時間と、前記負荷急変時保護機能の解除からフィードバック制御に復帰する時の電力の立ち上げ時間を設定することが可能なように構成され、
前記制御部は、前記移行時間を掛けて前記電力増幅器の各位相を徐々に元に戻すと共に、前記立ち上げ時間を掛けて前記高周波出力を立ち上げる、高周波電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波電源装置における保護機能は、負荷からの反射波電力信号値が予め決められた閾値を超えた場合に当該閾値を下回るように進行波電力信号値を下げるように増幅器の出力を低下させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-143861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記保護機能は、高周波電源装置におけるフィードバック制御によって実現されている。このため、応答速度は進行波電力が一定の場合のフィードバック制御よりも遅くなることが一般的である。また、リニア方式の電力増幅器を搭載した高周波電源装置の応答速度に比べ、スイッチング方式の電力増幅器を搭載した高周波電源装置の応答速度はさらに遅くなってしまう。特に、進行波電力や反射波電力が急激に変化する負荷急変が発生した場合には、出力抑制制御が十分に働かないことがあり、高周波電源装置内部の部品に多大な電気的ストレスを与えることがある。さらに、不要な進行波電力の急増は、高周波電源装置に接続されるプラズマ装置(負荷)へのダメージを引き起こす可能性がある。このような負荷急変対策として、例えば、特許文献1では、直流電源部の平滑用コンデンサに対して並列にコンデンサ放電用スイッチと電流制限用抵抗器とを設け、負荷インピーダンスの過渡的な変化検出時に瞬時に放電させることにより、負荷に供給されるエネルギーを抑制することが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、上述のように、コンデンサ放電用スイッチと電流制限用抵抗器を追加して搭載する必要があり、高周波電源装置の大型化を招くという課題がある。
【0006】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高周波電源装置の大型化を招かずに負荷急変時における高周波電源装置内の部品および接続された負荷装置への電気的ストレスを低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本実施形態は、接続される負荷に対して高周波出力を供給する高周波電源装置であって、少なくとも2つの電力増幅器と、少なくとも1つの電力合成部と、電力合成部から出力され、負荷に供給する進行波電力信号と、負荷からの反射波電力信号と、を検出する高周波電力検出部と、検出した進行波電力信号および反射波電力信号の変化量によって、負荷急変を検出し、負荷急変を検出した場合に電力増幅器の各位相を変化させて、高周波出力を変化させるように構成された制御部と、を備える、高周波電源装置について開示する。
【0008】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例をいかなる意味においても限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高周波電源装置の大型化を招かずに負荷急変時における高周波電源装置内の部品および接続された負荷装置への電気的ストレスを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スイッチングアンプ方式の電力増幅器を用いた場合の進行波電力上昇率とリニアアンプ方式の電力増幅器を用いた場合の進行波電力上昇率を示す図(シミュレーション結果)である。
図2】スイッチング方式の電力増幅器を用いて、図1の場合と同様の条件で負荷急変時の進行波電力急増を実機確認した結果を示す図である。
図3】本実施形態による高周波電源装置10の概略構成例を示すブロック図である。
図4】DC-RF変換部1_121およびDC-RF変換部2_122の内部構成例を示す図である。
図5】合成部13の内部構成例を示す図である。
図6】進行波電力/反射波電力増加量演算部18の内部構成例を示す図である。
図7】本実施形態による、負荷急変検出および負荷急変検出時の保護処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図8】本実施形態による、負荷急変検出時の保護機能の解除処理を説明するためのフローチャートである。
図9図7および図8で説明した負荷急変保護動作および保護動作解除の一連の流れを説明するためのタイムチャートである。
図10】本実施形態による負荷急変保護機能に関する各種パラメータを設定するためのパラメータ設定画面1000の構成例を示す図である。
図11】負荷急変として検出可能な電力変化の態様例を示す図である。
図12】本実施形態による保護機能を負荷急変時に動作させたときの効果(シミュレーション)を説明するための図である。
図13】本実施形態による保護機能を負荷急変時に動作させたときの効果(実測値)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態による高周波電源装置は、2以上の増幅器(DC-RF変換器)を有し、通常時は各増幅器が出力する電力信号の位相差をゼロとして同相の電力を合成して出力するとともに、負荷急変検知時は上記2以上の増幅器からの電力信号の位相をずらす(位相差を設ける)ようにする。そして、当該高周波電源装置は、合成器(合成部)において電力を消費させ、負荷(例えば、プラズマ処理装置)側に余計な電力が供給されないようにして負荷急変によるダメージが発生しないように動作する。当該位相差は、負荷急変の程度によって適宜設定することができるが、例えば、2つの増幅器を備える場合には180°に設定することができ、また、例えば、3つの増幅器を備える場合には120°に設定することができる。
【0012】
以下、本実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0013】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0014】
更に、本開示の実施形態は、後述されるように、汎用コンピュータ上で稼動するソフトウェアで実装しても良いし専用ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実装しても良い。
【0015】
以下では「各処理部(例えば、負荷急変判定部や位相シフト量決定部など)」を動作主体として本開示の実施形態における各処理について説明を行うが、プログラムは制御部(プロセッサ)によって実行されることで定められた処理をメモリ及び通信ポート(通信制御装置)を用いながら行うため、制御部(プロセッサ)を動作主体とした説明としてもよい。
【0016】
<負荷急変による影響の詳細と本開示が適用可能な電力増幅器の方式>
例えば、プラズマ処理装置(高周波電源装置に接続される負荷)がプラズマ処理を行う際には、アーク放電や負荷急変がしばしば発生する。この負荷急変現象は、高周波電源装置が備える反射保護やロス保護などのフィードバックによる出力抑制制御の応答速度を上回る速度で発生することがしばしばある。この場合、高周波電源の出力抑制制御は十分に出力を抑制するまでは働いていない状態にあるため、電源の出力が大幅に増加し、高周波電源内部の電気的ストレス増加による部品破損やプラズマ処理装置への過電力印加によるプラズマ処理装置への電気的ストレス増加を招くおそれがある。また、プラズマ処理装置への過電力印加はプラズマそのものの不安定さを招く可能性もある。プラズマそのものが不安定になることによって負荷が不安定となり、高周波電源装置への電気的ストレスの増加を招く結果に至ることもあり得る。高周波電源装置内では、特に、AC-DC変換部やDC-DC変換部、DC-RF変換部(電力増幅器)における、ダイオードやMOSFETなどの半導体部品に対する電気的ストレスが大きくなる。
【0017】
図1は、スイッチングアンプ方式の電力増幅器を用いた場合の進行波電力上昇率とリニアアンプ方式の電力増幅器を用いた場合の進行波電力上昇率を示す図(シミュレーション結果)である。図1では、50Ωの負荷(このときの電力比率を1としている)から急にγ=0.99の全反射負荷に変化した場合の進行波電力の上昇率が示されている。スイッチング方式(図1左側)では、γ=0.99になったときに、50Ωのときの電力が一瞬で10倍近くの電力に跳ね上がっていることがわかる。また、スイッチングアンプ方式とリニアアンプ方式とを比較すると、負荷急変による高周波電源装置の出力電力上昇は、リニア方式の電力増幅器に比べ、スイッチング方式の電力増幅器の方が比較的大きいことが分かる。
【0018】
図2は、スイッチング方式の電力増幅器を用いて、図1の場合と同様の条件で負荷急変時の進行波電力急増を実機確認した結果を示す図である。図2からも分かるように、実機を用いた場合でも、整合状態(負荷が50Ωで整合している状態)での出力に対し、負荷急変時には、進行波電力が瞬時に10倍程度になることが確認された。このような、状況では高周波電源内の部品、特に電力増幅器のMOSFETに大きな電気的ストレスが発生し、最悪には破損に至る。
【0019】
以上から分かるように、負荷急変時における高周波電源装置へのダメージは、電力増幅器としてスイッチングアンプ方式を用いた場合に大きくなることが分かる。以下に説明する本実施形態は、スイッチング方式の電力増幅器を備えた高周波電源装置に対して効果的ではある。ただし、リニア方式の電力増幅器を備えた高周波電源装置に適用してもよいことは言うまでもない。
【0020】
<高周波電源装置の構成>
図3は、本実施形態による高周波電源装置10の概略構成例を示すブロック図である。図3には、高周波電源装置10に、商用電源50と、インピーダンス整合器30と、負荷(例えば、プラズマ処理装置)40とが接続されている状態が示されている。インピーダンス整合器30は、負荷40を高周波電源装置10に接続したときに、高周波電源装置側の出力インピーダンスと負荷側の入力インピーダンスの整合を取る機能を有している。電力伝送を効率的に行うためである。インピーダンス整合器30は、例えば、2つの可変コンデンサ、あるいは、1つの固定コンデンサと1つの可変コンデンサを備えている。
【0021】
図3に示されるように、高周波電源装置10は、直流電源部11と、電力増幅部12と、合成部13と、高周波電力検出部14と、制御部15と、PWM信号生成部16と、高周波信号生成部(発振部)17と、進行波電力/反射波電力増加量演算部18と、入力部19と、表示部20と、を備え、プラズマ処理装置などの負荷40に対して高周波出力(RF出力)を供給する。
【0022】
(i)直流電源部11は、例えば、AC-DC変換部111と、DC-DC変換部112とによって構成される。AC-DC変換部111は、商用電源50に基づいてDC-DC変換部112への入力電圧(直流電圧)Vccを生成する。AC-DC変換部111は、例えば、4個の半導体整流素子をブリッジ接続した整流回路で商用電源50から入力される商用電圧を整流し、平滑回路で整流後のレベルを平滑化して直流電圧Vccを生成する周知の電源回路で構成される。DC-DC変換部112は、AC-DC変換部111から入力される直流電圧Vccを任意の電圧値の直流電圧Vdcに変換して、電力増幅部12に出力する。DC-DC変換部112は、後述するPWM信号生成部16から入力されるPWM信号SPWMに基づいて、PWM信号SPWMのデューティ比(以下、PWMデューティ比という)に応じた直流電圧Vdcを出力する。PWMデューティ比が大きいほど、直流電圧Vdcが大きくなる。
【0023】
(ii)電力増幅部12は、複数のDC-RF変換部1_121からDC-RF変換部2_122(図3では、2つのDC-RF変換部1_121とDC-RF変換部2_122が示されているが2つに限定されない)を含んでおり、DC-DC変換部112から入力される直流電力を、予め設定された高周波電力に変換する。
【0024】
図4は、DC-RF変換部1_121およびDC-RF変換部2_121の内部構成例を示す図である。DC-RF変換部1_121および2_122は、図4に示されるように、ハーフ・ブリッジ型のD級アンプで構成することができる。D級アンプは、一対の電源端子b,b’の間に2つの同一タイプの半導体スイッチ素子QBの直列回路を接続し、2つの半導体スイッチ素子QBの接続点nと出力端子cとの間に出力回路401を接続した構成である。出力回路1201は、直流カット用のコンデンサと、コンデンサとリアクトルのL型回路とを縦属接続したフィルタ回路である。トランスT2は、一対の半導体スイッチ素子QBの駆動を行うドライブ回路を構成している。トランスT2は、一次巻線に高周波電圧vが入力され、一方の二次巻線(図4では上側の二次巻線)から高周波電圧vと同相の高周波電圧v’を出力し、他方の二次巻線(図4では下側の二次巻線)から高周波電圧vと逆相の高周波電圧-v’を出力する。高周波電圧v’は一方の半導体スイッチ素子QB図4では上側の半導体スイッチ素子QB)に入力され、高周波電圧-v’は他方の半導体スイッチ素子QB図4では下側の半導体スイッチ素子QB)に入力される。トランスT2の一次巻線に入力される高周波電圧vは、例えば、400kHz、2.0MHz、13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz、60MHzなどのプラズマ処理用に規定された出力周波数fの正弦波電圧である。
【0025】
DC-RF変換部1_121の電源端子bと電源端子b'は、それぞれDC-RF変換部2_122の電源端子bと電源端子b'に接続され、電源端子bと電源端子b’の間にDC-DC変換部112から出力される直流電圧Vdcが供給される。一対の半導体スイッチ素子QBにはNチャネル型のMOSFETを用いることができるが、バイポーラトランジスタ等の他の種類のトランジスタを用いてもよい。また、一対の半導体スイッチ素子QBをNチャネル型とPチャネル型を組み合わせたコンプリメンタリ型にしてもよい。この場合は、トランスT2の二次巻線は一つでよく、高周波電圧v’をそれぞれNチャネル型のMOSFETとPチャネル型のMOSFETのゲートに入力すればよい。
【0026】
DC-RF変換部1_121およびDC-RF変換部2_122の各トランスT2の一次巻線に入力される高周波電圧va,vbは、高周波信号生成部17で生成される。高周波信号生成部17は、va=A・sin(ω・t+φa)、v=A・sin(ω・t+φb)で表わされる高周波電圧va、vbを生成する。なお、角周波数ω=2πfであり、以下でも、出力周波数fの代わりに角周波数ωを用いる場合がある。高周波電圧vaの初期位相φaは0[deg]に固定されており、高周波電圧vbの初期位相φbは可変である。高周波信号生成部(発振部)17は、制御部15から入力される位相差θ=φb-φaの情報に基づいて高周波電圧vbの初期位相φ b(=θ)を変化させる。位相差θの変化のさせ方については後述する。なお、初期位相φbを0[deg]に固定して、初期位相φaを可変としてもよいし、初期位相φa、φbとも可変としてもよい。例えば、初期位相φaを0[deg]から-90[deg]まで変更可能とし、初期位相φbを0[deg]から90[deg]まで変更可能として、位相差θ=90[deg]の場合はφa=-45[deg]、φb=45[deg]を設定するようにしてもよい。
【0027】
DC-RF変換部1_121では、高周波電圧va=A・sin(ω・t)がトランスT2の一次巻線に入力されると、トランスT2の一方の二次巻線から同相の高周波電圧va’=A’・sin(ω・t)が出力され、トランスT2の他方の二次巻線から逆相の高周波電圧-va’=-A’・sin(ω・t)が出力される。同相の高周波電圧va’は、一方の半導体スイッチ素子QB図4では上側の半導体スイッチ素子QB)に入力され、逆相の高周波電圧-va ’は、他方の半導体スイッチ素子QB図4では下側の半導体スイッチ素子QB)に入力される。2つの半導体スイッチ素子QBは、Nチャネル型MOSFETであるから、一方の半導体スイッチ素子QBは、高周波電圧va’のハイレベル期間にオン動作をし、他方の半導体スイッチ素子QBは、高周波電圧-va’のハイレベル期間にオン動作をする。すなわち、2つの半導体スイッチ素子QBは、高周波電圧va’の半周期毎に交互にオン・オフ動作を繰り返す。
【0028】
2つの半導体スイッチ素子QBが交互にオン・オフ動作を繰り返すことによって、接続点nの電圧vnは、va’>0の期間に「Vdc」となり、va’≦0の期間に接地レベルとなるように矩形波状に変化する。その矩形波が出力回路401で直流分とスイッチングノイズとを除去されて、出力端子c,c’から高周波電圧vaを増幅した高周波電圧VPA=V・sin(ω・t)として出力される。
【0029】
DC-RF変換部2_122は、上述したDC-RF変換部1_121と同様の動作を行い、入力された高周波電圧vbを増幅した高周波電圧vPB=V・sin(ω・t+θ)を出力する。
【0030】
通常時(負荷急変が検出されていない時)は、位相差θ=φb-φaは0(ゼロ)に設定される。一方、負荷急変検出時は、位相差(位相シフト量)θ=180°と設定される。ただし、負荷急変検出時において、常に位相差θ=180°に設定しなければならいないと言うことではない。合成部13から出力される電力値を低減できればよいからである。
【0031】
なお、本実施形態では、DC-RF変換部1_121およびDC-RF変換部2_122をハーフ・ブリッジ型のアンプで構成しているが、フル・ブリッジ型やプッシュ・プル型のアンプで構成してもよい。また、スイッチングアンプに限定されず、リニアアンプを用いるようにしてもよい。
【0032】
(iii)図5は、合成部13の内部構成例を示す図である。合成部13は、電力増幅部12から出力される2つの高周波電力PAおよびPBを合成する。合成部13は、例えば、図5に示す伝送トランスT3と抵抗Rとからなるハイブリッド回路によって構成される。ハイブリッド回路は、1つのサム・ポートNSと2つの入力ポートNAおよびNBを有し、入力ポートNAに入力される交流電圧と入力ポートNBに入力される交流電圧に位相差があると、入力電力のうち位相差に応じた一部の電力を抵抗Rで熱消費し、残りの電力を出力する機能を有する。
【0033】
図5に示すように、DC-RF変換部1_121から出力される高周波電圧vPAは、一方の入力ポートNAに入力され、DC-RF変換部2_122ら出力される高周波電圧vPBは、他方の入力ポートNBに入力され、サム・ポートNSから高周波電圧vPXが出力される。
【0034】
サム・ポートNSに接続される負荷のインピーダンスが「Ro/2」の場合(合成部13と負荷40とがインピーダンス整合している場合)のサム・ポートNSから出力される高周波電流iPXと高周波電圧vPXは、高周波電圧vPAおよびvPBをそれぞれvPA=V・sin(ω・t)、vPB=V・sin(ω・t+θ)とすると、下記のようになる。
【0035】
抵抗Rの両端の電圧vRは、
vR=vPA -vPB =V・[sin(ω・t)-sin(ω・t+θ)] ・・・ (1)であり、
入力ポートNAおよびNBから伝送トランスT3に流れ込む電流iAおよびiBと抵抗Rを流れる電流iRは、
A =vPA/Ro=V・sin(ω・t)/Ro ・・・ (2)
B =vPB/Ro=V・sin(ω・t+θ)/Ro ・・・ (3)
R =vR/(2・R o )
=V・[sin(ω・t)-sin(ω・t+θ)]/(2・Ro) ・・・ (4)である。
【0036】
したがって、伝送トランスT3の一次巻線と二次巻線に流れる電流iLAおよびiLBは、
LA =iA -iR =V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/(2・Ro) ・・・ (5)
LB =iB +iR =V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/(2・Ro) ・・・ (6)で表わされ、
サム・ポートNSから出力される高周波電流iPXと高周波電圧vPXは、
PX =iLA +iLB=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/Ro ・・・ (7)
PX =iPX・(Ro/2)
=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/2
=V・[sin{(ω・t+θ/2)-θ/2}+sin{(ω・t+θ/2)+θ/2}]/2
=V・[sin(ω・t+θ/2)・cos(θ/2)-cos(ω・t+θ/2)・sin(θ/2)
+sin(ω・t+θ/2)・cos(θ/2)+cos(ω・t+θ/2)・sin(θ/2)]/2
=V・cos(θ/2)・sin(ω・t+θ/2) ・・・ (8)となる。
【0037】
また、出力ポートNSから出力される電力PXと抵抗Rで消費される電力PRを求めると、
X =vPX 2/(Ro/2)=2・vPX 2/Ro
=V2・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]2/(2・Ro)
=2・[V・cos(θ/2)]2・sin2(ω・t+θ/2)/Ro ・・・ (9)
R =vR 2/(2・Ro)
=V2・[sin(ω・t)-sin(ω・t+θ)]2/(2・Ro)
=V2・[sin{(ω・t+θ/2)-θ/2}-sin{(ω・t+θ/2)+θ/2}]2/(2・Ro)
=V2・[sin(ω・t+θ/2)・cos(θ/2)-cos(ω・t+θ/2)・sin(θ/2)
- sin(ω・t+θ/2)・cos(θ/2)-cos(ω・t+θ/2)・sin(θ/2)]2/(2・Ro)
=V2・[-2cos(ω・t+θ/2)・sin(θ/2)]2/(2・R o )
=2・[V・sin(θ/2)]2・cos2(ω・t+θ/2)/Ro ・・・ (10)となる。
【0038】
入力ポートNAおよびNBから入力される電力PAおよびPBは、PA=V2・sin 2(ω・t)/Ro、PB=V2・sin2(ω・t+θ)/Roであるから、合成部13に入力される電力Pinは、
in =PA+PB=V2・[sin2(ω・t)+sin 2(ω・t+θ)]/Roである。
【0039】
一方、合成部13から出力される電力PXと抵抗Rで熱消費される電力PRの合計電力Psumは、
sum =PX+PR
=V2・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]2/(2・Ro)
+V2・[sin(ω・t)-sin(ω・t+θ)]2/(2・Ro)
=V2・[2sin2(ω・t)+2sin2(ω・t+θ)]/(2・Ro)
=V2・[sin2(ω・t)+sin2(ω・t+θ)]/Roであるから、
in=Psumである。
【0040】
したがって、θ=0[deg](通常時:整合状態(例えばインピーダンスが50Ωのとき))であればPR=0となり、入力電力Pinがそのまま出力電力PX(同位相の電力が合成される)となって合成部13から出力される。通常時は同相で動作するため、合成部(合成器)13における損失はなく、一定の合成電力が出力される。θ=180[deg](負荷急変時)であればPX=0となり、合成部13からの出力が0になる。そして、0[deg]<θ<180[deg]のときは、入力電力PAおよびPBを位相差θに応じた所定の割合η(θ)で合成した合成電力が、出力電力PXとして合成部13から出力される。
【0041】
つまり、位相差θに応じた所定の割合η(θ)は、式(9)に示されるようにcos2(θ/2)である。電力の合成割合η(θ)は、位相差θが0[deg])の場合に100%であり、位相差θが大きくなるのに応じてcos2(θ/2)の特性で単調に小さくなり、位相差θが180[deg]の場合に0%になる。位相差を180°とした場合には、整合状態と同じ状態を生成することができる。この場合、合成部13の抵抗Rで電力が消費され、合成部13から負荷40側に電力が供給されることがなくなる。
【0042】
なお、本実施形態では、第1の位相差θ1および第2の位相差θ2を、0[deg]から180[deg]までの範囲の値として設定しているが、これに限られない。例えば、180[deg]から360[deg]までの範囲の値として設定してもよいし、0[deg]から-180[deg]までの範囲の値として設定してもよい。また、合成部13は、ハイブリッド回路と同様の機能を果たすものであれば、他の回路であってもよい。例えば、特開2008-28923号公報に記載の高周波電力合成器や実開平4-48715号公報に記載の出力合成回路を用いることができる。
【0043】
(iv)高周波電力検出部14は、合成部13で生成された高周波出力(RF出力:高周波電圧vout)を、インピーダンス整合器30を介してプラズマ負荷(プラズマ処理装置)等の負荷40に供給する。また、高周波電力検出部14は、方向性結合器を含み、その方向性結合器から高周波出力(高周波電圧vout)に含まれる進行波電圧vfと反射波電圧vrを検出する。そして、高周波電力検出部14は、進行波電圧vfを進行波電力Pfに変換して進行波電力/反射波電力増加量演算部18に出力する。また、反射波電圧vrを反射波電力Prに変換して進行波電力/反射波電力増加量演算部18に出力する。
【0044】
(v)進行波電力/反射波電力増加量演算部18は、進行波電力信号および反射波電力信号を受信し、進行波および反射波それぞれの増加量を演算し、各増加量を制御部15の負荷急変判定部151に供給する。
【0045】
図6は、進行波電力/反射波電力増加量演算部18の内部構成例を示す図である。図6に示されるように、進行波電力/反射波電力増加量演算部18は、アナログ信号である進行波電力信号および反射波電力信号をディジタル値に変換するAD変換器1811および1812と、ディジタル化された進行波電力信号および反射波電力信号から基本波(例えば、13.56MHzの周波数信号)のみを抽出し、それ以外の周波数信号をカットするディジタルフィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)1821および1822と、基本波進行波検出信号の増加量を演算する進行波電力増加量演算部1831と、基本波反射波検出信号の増加量を演算する反射波電力増加量演算部1832と、を含み、演算したそれぞれの増加量を、負荷急変を判定する負荷急変判定部151に供給する。なお、進行波電力/反射波電力増加量演算部18は、例えば、FPGAやCPUなどで構成することができる。また、制御部15の中に進行波電力/反射波電力増加量演算部18の機能を含めてもよい。さらに、進行波検出信号および反射波検出信号を処理する際、フィルタを介さずにディジタル化された信号から高調波や異周波成分を含めた信号の変化を検知するように構成してもよい。また、図6におけるディジタルフィルタ1821および1822は、基本波を取り出すためのバンドパスフィルタに限定されず、高調波などの異周波を取り出すためのバンドパスフィルタであってもよい。
【0046】
(vi)制御部15は、基本波進行波検出信号の増加量および基本波反射波検出信号の増加量に基づいて負荷急変の有無を判定する負荷急変判定部151と、負荷急変時における高調波信号の位相シフト量(高周波電圧vaおよびvbの位相差θ)を決定する位相シフト量決定部152と、を備えている。このように、制御部15は、高周波電源装置10が出力する進行波電力Pfと、高周波信号生成部17で生成される2つの高周波電圧vaおよびvbの位相差θを制御する。制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を備えるマイクロコンピュータによって構成することができる。制御部15は、CPUがROMに記憶された所定の制御プログラム(負荷急変判定部151および位相シフト量決定部152を実現するプログラムを含む)を実行することにより、高周波電源装置10が出力する進行波電力Pf、2つの高周波電圧vaおよびvbの振幅A、周波数f、および位相差θ等を制御する。また、制御部15は、目標電力PfsをPWM信号生成部16に出力する。
【0047】
また、制御部15は、ユーザによる入力部19からの入力、または、予め設定されたプログラムによる自動入力によって、パルス状の高周波電力のパルス周波数、および、パルス状の高周波電力の第1レベルと第2レベルとのデューティ比(以下、パルスデューティ比という)の情報を取得する。例えば、パルス周波数としては、高周波電圧vaおよびvbよりも周波数の低い(周期の長い)所定の周波数(例えば10kHz)が設定され、パルスデューティ比としては例えば50%が設定される。制御部15は、パルス周波数およびパルスデューティ比に基づいて、パルス状の高周波電力のパルス波形を指令するための出力制御信号を生成する。そして、制御部15は、出力制御信号のハイレベル期間に位相差θを第1の位相差θ1とし、ローレベル期間に位相差θを第2の位相差θ2とするように切り替える。
【0048】
(vii)PWM信号生成部16は、DC-DC変換部112を駆動するためのPWM信号SPWMを生成し、そのPWM信号SPWMをDC-DC変換部112に出力する。PWM信号生成部16は、あらかじめ設定されたPWMデューティ比に応じて、PWM信号SPWMを生成する。DC-DC変換部112から出力される直流電圧Vdcを大きくしたい場合は、大きなデューティ比が設定される。また、DC-DC変換部112から出力される直流電圧Vdcを小さくしたい場合は、小さなデューティ比が設定される。PWMデューティ比は、制御部15から提供される、パルスのハイレベル期間の目標出力電力Pfsに基づいて設定される。例えば、PWM信号生成部16が目標出力電力PfsとPWMデューティ比との関係を示すテーブルや関係式を有しており、そのテーブルや関係式に基づいてPWMデューティ比を設定するようにしてもよい。そのため、目標出力電力Pfsが変更されない限りPWMデューティ比は一定であるので、DC-DC変換部112から出力される直流電圧Vdcも一定である。
【0049】
(viii)高周波信号生成部17は、DC-RF変換部1_121内の半導体スイッチ素子QBの駆動を制御する高周波電圧vaと第2のDC-RF変換部4B内の半導体スイッチ素子QBの駆動を制御する高周波電圧vbとを生成する。高周波信号生成部17は、制御部15から入力される振幅A、出力周波数f、位相差(位相シフト量)θに基づいて高周波電圧vaおよびvbを生成して、高周波電圧vaをDC-RF変換部1_121に出力し、高周波電圧vbをDC-RF変換部2_122に出力する。
【0050】
(ix)入力部19は、ユーザ(オペレータ)が制御部15に対して指示を入力する手段であり、例えば、キーボード、機械的スイッチ、マウスやタッチパネルなどのポインティングデバイス、およびマイク等が該当する。後述するように、ユーザによる指示入力には、例えば、目標電力設定値(基準電力値)、各種出力電力変調パラメータ、および各種出力周波数変調パラメータが含まれる。
【0051】
(x)表示部20は、例えば、制御部15の指令に基づいて、各種出力電力変調および出力周波数変調パラメータを入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、負荷に供給中のRF出力レベル、検出した進行波電力信号値および反射波電力信号値、負荷急変発生の有無、負荷急変発生時の負荷急変保護が作動中であることを示す情報などを表示したりする。
【0052】
<負荷急変時の保護機能の内容>
図7は、本実施形態による、負荷急変検出および負荷急変検出時の保護処理の詳細を説明するためのフローチャートである。本実施形態による負荷急変検出処理では、以下で説明するステップ701およびステップ702において、進行波電力信号Pおよび反射波電力信号Pと定格電力および設定電力との関係をチェックしている。定格電力との関係をチェックするのは、高周波電源装置10が許容する最大電力値との関係を見ないと、それ以上の電力を出力したときに高周波電源装置10が破損する可能性(最大限界)があり、電源を保護するためである。また、設定電力との関係をチェックするのは、急峻な負荷変動を正確に検出するためである。例えば、電力が短い期間(後述のように50μsの時間間隔)に200%(設定電力の2倍)にもなるような場合には急峻な負荷変動と判断し、10%程度の増加であれば急峻な負荷変動とは判断しないようにしている。つまり、負荷変動が急峻でなければ定格基準の保護閾値を超えることはまずない。たとえこの定格基準の保護閾値を超えたとしても設定電力の閾値を短い期間で超えた場合にのみ負荷変動が大きいと判断して保護するようにしている。
【0053】
なお、本実施形態による負荷急変検出処理は、判別継続時間、増加量しきい値をパラメータ化(変数化)しており、例えば判別継続時間を短く設定した場合は、瞬時の変化に対する判定も行うことが可能である。また、負荷急変判別処理における判別方法は1つのみに限定されず、複数の判別方法を用意することができる。この場合、それぞれの判別方法において、判別時間や増加量の閾値を個別に設定することで、様々な負荷変化に対する検出が可能となる。
【0054】
(i)ステップ701
制御部15の負荷急変判定部151は、進行波電力/反射波電力増加量演算部18から進行波電力信号Pfおよび反射波電力信号Pを取得し(高周波電力検出部14から直接取得する形態でもよい)、進行波電力信号Pおよび反射波電力信号Pが定格基準(高周波電源装置10が連続動作するために許容可能な電力の最大値)の保護閾値(予め設定される第1閾値)を超えるか(あるいは、第1閾値以上か)否か判断する。進行波電力信号Pおよび反射波電力信号Pが定格基準の保護閾値を超える(あるいは、第1閾値以上の)場合(ステップ701でYesの場合)、負荷急変が起こったと判断され、処理はステップ704に移行する。一方、進行波電力信号Pおよび反射波電力信号Pが定格基準の保護閾値以下(あるいは第1閾値未満)の場合(ステップ701でNoの場合)、処理はステップ702に移行する。
【0055】
(ii)ステップ702
負荷急変判定部151は、進行波電力信号Pおよび反射波電力信号Pが設定電力基準の保護閾値(予め設定される第2閾値)を超えるか(あるいは、第2閾値以上か)否か判断する。これにより負荷変動が発生したか判断される。
【0056】
進行波電力信号Pおよび反射波電力信号Pが設定電力基準の保護閾値(第2閾値)を超える(あるいは、第2閾値以上の)場合(ステップ702でYesの場合)、処理はステップ703に移行する。進行波電力信号Pおよび反射波電力信号Pが設定電力基準の保護閾値以下(あるいは、第2閾値未満)の場合(ステップ702でNoの場合)、処理はステップ701に戻る。
【0057】
(iii)ステップ703
負荷急変判定部151は、進行波電力信号Pおよび反射波電力信号Pが所定時間(例えば、50μs)前の進行波電力信号Pおよび反射波電力信号Pとの差分、あるいは、例えば直近の所定時間(例えば、50μs)間隔における進行波電力信号Pfおよび反射波電力信号Pの増加量が所定の閾値(予め設定される第3閾値)を超えるか(あるいは、第3閾値以上か)判断する。ステップ703では、ステップ702で検知された負荷変動が急峻な負荷変動(アーク検知(数10から数100μsの応答速度で検知)でも検知できないような急峻な負荷変動)であるか判断される。緩やかな(所定時間以上掛けて変動する)負荷変動であれば、通常の動作(位相差を制御するのではなく、DC-DC変換部112へのフィードバック制御で対応)によって反射波電力が下げられる。
【0058】
上記差分または上記増加量が所定の閾値(予め設定される第3閾値)を超える(あるいは第3閾値以上の)場合(ステップ703でYesの場合)、処理はステップ704に移行する。一方、上記差分または上記増加量が所定の閾値(予め設定される第3閾値)以下(あるいは第3閾値未満)の場合(ステップ703でNoの場合)、処理はステップ701に戻る。
【0059】
(iv)ステップ704
制御部15の位相シフト量決定部152は、直近の所定時間以内(例えば、200ms以内)に所定回数(例えば、3回)以上の保護処理(位相シフト)を実行したか否か判断する。保護回数が所定回数に達している場合(ステップ704でYesの場合)、処理はステップ705に移行する。一方、保護回数が所定回数に未だ達していない場合(ステップ704でNoの場合)、処理はステップ706に移行する。
【0060】
(v)ステップ705
制御部15は、これ以上保護処理を実行できず、電力供給を継続できないと判断し、警報音あるいは警報表示を発生させるとともに、負荷40への電力供給を停止する。このように、予め定められた時間内の負荷急変判定回数をカウントし、予め定められた回数に達した場合は高周波出力を停止することにより、それ以上の電気的ストレスを排除することが可能となる。
【0061】
(vi)ステップ706
制御部15は、周波数整合動作を無効とする。すなわち、高周波電源装置10の出力周波数fを所定範囲内(例えば、規定の出力周波数の±5%、±10%等の範囲内)で変化させて、高周波電源装置10から負荷側を見たインピーダンスを調整する動作を停止させる。この際、出力周波数fは、例えば、保護処理開始時点での周波数に固定される。もちろん、この周波数に限定されるものではなく、例えば、規定の出力周波数f(13.56MHz)に設定してもよい。
【0062】
(vii)ステップ707
位相シフト量決定部152は、所定の設定時間(後述のパラメータ「開始位相シフト時間」に相当)掛けてDC-RF変換部1_121とDC-RF変換部2_122の位相が所定量(例えば、180度)ずれるように位相シフト量を高周波信号生成部17に出力する。そして、高周波信号生成部17(2つ以上の発振器を含む)は、位相シフト量決定部152から提供された位相シフト量に応じた位相で高周波信号(RF信号)を電力増幅部12に出力する。なお、位相シフト制御時は電力増幅部12から出力された電力は合成部13内の抵抗によって消費され、高周波電源装置10の出力としては負荷40側に出力されない。このため、出力電力は垂下していくことになる。
【0063】
(viii)ステップ708
制御部15は、DC-DC変換部112のDC設定と制御部15に含まれる補償器(図示せず)をクリア(リセット)する。当該クリア処理が行われると、負荷急変時の保護処理は終了する。なお、再起動の動作は、後述の保護機能の解除処理で行われる(ステップ805参照)。
【0064】
<負荷急変保護機能解除の内容>>
図8は、本実施形態による、負荷急変検出時の保護機能の解除処理を説明するためのフローチャートである。
【0065】
(i)ステップ801
制御部15は、図7に示す負荷急変検出時の保護処理(位相シフト制御(ステップ707)に相当)を開始してから、所定時間(例えば、100μs:後述の「解除時間」というパラメータで規定される)経過したか否か判断する。保護処理を開始してから100μs経過している場合(ステップ801でYesの場合)、処理はステップ804に移行する。保護処理を開始してから未だ100μs経過していない場合(ステップ801でNoの場合)、処理はステップ802に移行する。
【0066】
(ii)ステップ802
制御部15は、進行波電力信号Pおよび反射波電力信号Pが設定電力値の所定割合(例えば、100%)以下であるか否か判断する。進行波電力信号Pおよび反射波電力信号Pが設定電力値の所定割合以下である場合(ステップ802でYesの場合)、処理はステップ803に移行する。一方、進行波電力信号Pおよび反射波電力信号Pが設定電力値の所定割合より大きい場合(ステップ802でNoの場合)、処理はステップ801に戻る。
【0067】
(iii)ステップ803
制御部15は、進行波電力信号Pが定格電力値の所定割合(例えば、10%)以下であるか否か判断する。進行波電力信号Pが定格電力値の所定割合以下である場合(ステップ803でYesの場合)、処理はステップ804に移行する。一方、進行波電力信号Pが定格電力値の所定割合より大きい場合(ステップ803でNoの場合)、処理はステップ801に戻る。
【0068】
(iv)ステップ804
高周波信号生成部17は、所定の設定時間(ステップ707における設定時間(後述のパラメータ「開始位相シフト時間」に相当))掛けて、位相シフト量決定部152から提供された位相シフト量(目標値)までずらしながら、高周波信号(RF信号)を電力増幅部12に出力する。位相を目標位置までずらし終えたら、処理はステップ805に移行する。
【0069】
(v)ステップ805
制御部15は、DC-DC変換部112におけるDC設定のための制御信号を再度送信開始し、制御部15に含まれる補償器(図示せず)の動作を復帰させる(動作のリスタート)。
【0070】
(vi)ステップ806
制御部15は、保護機能を無効にする無効時間(後述のパラメータに含まれる「保護再開待ち時間」に相当)待って、保護の必要性の判定処理(つまり、負荷急変検出処理)、および周波数整合処理を再開する。当該処理再開により、負荷急変保護機能解除処理が終了する。
【0071】
<保護動作および保護動作解除の一連の流れ>
図9は、図7および図8で説明した負荷急変保護動作および保護動作解除の一連の流れを説明するためのタイムチャートである。
ここで、図9に示すように、時間t1で負荷急変が開始し、図7のフローチャートに基づく処理によって時間t2に負荷急変と判定されたとする。そして、時間t3で位相シフト制御が開始される。時間t1からt3までの間は、進行波電力の値は上昇し続けている。時間t3で位相シフト制御が開始されると、例えば0度から180度へ徐々に位相シフトするに従って、進行波電力値が下降していく。時間(t4-t3)の値は、位相シフト制御区間であり、後述のパラメータ「開始位相シフト時間」によって規定される。位相シフト制御区間が終了した(時間t4)場合、あるいは出力電力が予め決められた電力まで垂下した場合、位相シフト制御が解除され(保護動作解除)、上述のように、DC設定動作と補償器の動作が再開されて通常の電力フィードバック制御に移行する。そして、時間t5になると、通常の電力フィードバック制御によって高周波電源装置10の出力は所定の電力に復帰する。
【0072】
<パラメータ設定画面構成例>
図10は、本実施形態による負荷急変保護機能に関する各種パラメータを設定するためのパラメータ設定画面1000の構成例を示す図である。パラメータ設定画面1000は、例えば、表示部20の表示画面に表示されるGUI(Graphical User Interface)であって、各項目の値は入力部19を介してユーザによって入力される。
【0073】
パラメータ設定画面1000は、設定項目として、例えば、開始対象モニタ選択1001と、開始進行波電力(設定)[%]1002と、開始進行波電力(定格)[%]1003と、開始判定時間[20ns]1004と、開始位相シフト時間[20ns]1005と、開始シフト位相[°]1006と、DC設定選択1007と、解除時間[μs]1008と、解除対象モニタ選択1009と、解除電力(設定)[%]1010と、解除位相シフト時間[20ns]1011と、整合再開待ち時間「ms」1012と、アラーム判定時間[ms]1013と、アラーム判定回数1014と、無効時間(RF ON時)[ms]1015と、無効時間(設定変更)[ms]816と、開始反射波電力(定格)[%]1017と、保護再開待ち時間[ms]1018と、解除反射波電力(定格)[%]1019と、復帰時スローアップ1020と、立ち上がり時Pf時定数1021と、保護無効設定電力[W]1022と、を含んでいる。
【0074】
開始対象モニタ選択1001は、急変判定対象を進行波電力もしくは反射波電力、あるいはその両方のいずれかに選択するための項目である。
【0075】
開始電力(設定)[%]1002は、電力設定値(電力設定基準)に対してどの程度の割合(%)で電力が増加したときに位相シフト制御を開始するかを示す情報である。例えば10kWで動作する電源装置において、開始電力(設定)[%]1002が200%に設定されている場合、20kWまで電力が上昇したときに位相シフト制御を実行するフェーズであると判断される。
【0076】
開始電力(定格)[%]1003は、定格電力に対してどの程度の割合の電力値となったときに位相シフト制御を開始するかを示す情報である。定格電力は、電源装置そのものが持っている電力値が30kWである場合、例えば、開始電力(定格)[%]1003を115%に設定したとすると、進行波電力値Pfが34.5kWになったときに位相シフト制御を実行するフェーズであると判断される。
【0077】
開始判定時間[20ns]1004は、開始判定時間を示す情報であり、上記ステップ703において、「所定時間」に相当する時間を付与するパラメータとなっている。例えば、この欄に、「2500」という値が入っていた場合、開始判定時間は2500×20ns=0.05msということになる。
開始位相シフト時間[20ns]1005は、保護開始(位相シフト制御開始)から開始シフト位相になるまでの位相シフト移行時間を示す情報である。開始位相シフト時間[20ns]1005は、図9における位相シフト制御区間に相当する時間である。開始位相シフト時間掛けて徐々に位相が目標量(開始シフト位相[°]1006で規定される)まで変化するように制御するようにしてもよい。
【0078】
開始シフト位相[°]1006は、位相シフト制御時の位相シフト量を示す情報である。DC設定選択1007は、保護解除後の復帰時における、電力フィードバック制御操作量を示す情報である。復帰時の操作量は0(ゼロ)からスタートすることが可能であるが、例えば、半導体処理装置の付加状況によっては、保護開始前の操作量を引き継いだり、予め定められた固定値にしてもよい。
【0079】
解除時間[μs]1008は、保護開始から保護解除までの時間を示す情報である。解除対象モニタ選択1009は、保護解除判定を進行波電力あるいは反射波電力のいずれに選択するかを示す情報である。例えば、解除対象モニタ選択1009が「1」の場合には進行波電力、「0」の場合には反射波電力が選択されている。解除電力(設定)[%]1010は、保護を解除する進行波電力の閾値を示す情報である。保護中に進行波電力が設定電力の所定割合(%)以下になったときに保護が解除される。
【0080】
解除位相シフト時間[20ns]1011は、保護解除後から位相シフト量を元に戻すまでの移行時間を示す情報である。図9の通常制御への移行区間に相当する時間(t5-t4)である。整合再開待ち時間[ms]1012は、保護解除後、周波数整合を再開するまでの待ち時間を示す情報である。
【0081】
アラーム判定時間[ms]1013は、保護機能を動作させるか否かを決定するための時間を示す情報である。アラーム判定回数1014は、保護機能を動作させるか否かを決定するための回数を示す情報である。アラーム判定時間内にアラーム判定回数分の保護機能が動作した場合、アラームが出力され、高周波出力が停止される。
【0082】
無効時間(RF ON時)[ms]1015は、RF ON以降から保護機能を無効にする時間を示す情報である。つまり、無効時間(RF ON時)[ms]1015が設定されている場合には、RFがONとなった後、設定された時間保護機能が無効にされる。無効時間(設定変更)[ms]1016は、電力設定変更から保護機能を無効にする時間を示す情報である。つまり、電力設定変更直後から設定された時間保護機能が無効にされる。
【0083】
開始反射波電力(定格)[%]1017は、位相シフト制御を開始する電力を定格電力に対してどの程度の割合以上の反射波電力になった場合とするかと示す情報である。つまり、保護機能動作中に反射波電力値が定格電力の設定割合(開始反射波電力(定格)[%]1017で規定された%)以下になったときに保護機能が解除される。
【0084】
保護再開待ち時間[ms]1018は、保護機能解除後から保護機能有効までの待ち時間を示す情報である。図8のステップ806の無効時間に相当するものである。解除反射波電力(定格)[%]1019は、保護機能を解除するときの進行波電力の閾値を示す情報である。
【0085】
復帰時スローアップ1020は、保護機能解除から復帰時の電力設定スローアップ時間を示す情報である。つまり、保護機能解除から高周波出力復帰時には電力がスローアップして立ち上げられるが、この立ち上げに掛ける時間である。図9における通常制御への移行区間に相当するものである。立ち上がり時のPf時定数1021は、保護機能開始時の電力設定立下り時定数を示す情報である。保護機能開始後に設定電力は0(ゼロ)に引き下げられるまでの時間を示している(時間を掛けて0にするか直ぐに0にするか)。保護無効設定電力[W]1022は、保護機能を有効にするときの設定電力の閾値を示す情報である。閾値以下の設定電力の場合には、開始電力(設定)[%]1003の閾値による保護機能は無効(負荷急変に対する保護がなされない)とされる。従って、図7による処理の実行は、負荷急変に対する保護機能が有効(enable)であることが前提となる。
【0086】
<負荷急変の例>
図11は、負荷急変として検出可能な電力変化の態様例を示す図である。本実施形態では、負荷急変か否か判断する場合、負荷変化量の累積値に基づくことができる。
【0087】
図11において、データAは、進行波電力もしくは反射波電力が単調に増加し続けた場合である。データBは、進行波電力もしくは反射波電力が一旦増加量閾値付近まで上昇した後、元の電力もしくはその付近まで低下し、再度増加して閾値を超える場合である。データCは、比較的小さな増減を繰り返した場合である。
【0088】
例えば、データBの場合、時間1.5μsから2.5μsの間で電力値が下降しているので、負荷急変ではないように見えるが、上述のように、負荷急変か否かは電力増加の累積値で見ることもできるので、データBの場合も負荷急変と判断するように設定することができ、負荷急変に対する保護機能が動作することになる。
【0089】
<負荷急変に対する保護機能の効果>
図12は、本実施形態による保護機能を負荷急変時に動作させたときの効果(シミュレーション)を説明するための図(電流値のシミュレーション波形)である。図12Aは、保護機能を動作させないときの電流値(電力増幅器のスイッチング素子(MOSFETなど)に流れる電流値)の推移を示すグラフである。図12Bは、保護機能を動作させたときの電流値の推移を示すグラフである。図13は、本実施形態による保護機能を負荷急変時に動作させたときの効果(電力値の実測値)を説明するための図(図13は方向性結合器で電圧変換された電力値をオシロスコープで表示した波形)である。図13Aは、保護機能を動作させないときの電力値の推移を示すグラフである。図13Bは、保護機能を動作させたときの電力値の推移を示すグラフである。
【0090】
図12Aに示されるように、位相シフト制御による保護機能を動作させない場合には、負荷急変後に電流値が急増している。一方、図12Bに示されるように、位相シフト制御による保護機能を動作させた場合には、周波数整合動作時と同等の電流値に制御されていることが分かる。また、図13AおよびBに示されるように、実測の場合でも、位相シフト制御による保護機能を動作させることにより、出力電力が抑制されていることが分かる。
【0091】
<まとめ>
(i)本実施形態のよる高周波電源装置10は、検出した進行波電力信号および反射波電力信号の変化量によって、負荷急変を検出し、負荷急変を検出した場合に少なくとも2つの電力増幅器の各位相を変化させて、高周波出力を変化させる。これにより、合成部(電力合成部)13に入力される電力および電流の急激な上昇を抑制することができるようになる。
【0092】
具体的には、図7に示されるように、高周波電源装置10は、進行波電力信号あるいは反射波電力信号が所定の定格電力を基準とした第1閾値(開始電力(定格)[%]1003)を超えている場合に、電力増幅器の各位相を変化させる負荷急変保護機能を動作させる。また、高周波電源装置10は、進行波電力信号あるいは反射波電力信号が第1閾値以下であり(図7のステップ701でNoの場合)、進行波電力信号あるいは反射波電力信号が所定の設定電力を基準とした第2閾値を超えた場合(ステップ702でYesの場合)、設定された判定時間(例えば、50μs前あるいは直近の50μs間)における進行波電力信号および反射波電力信号の変化量が第3閾値を超えたか判断し、変化量が第3閾値を超えた場合(ステップ703でYesの場合)に、負荷急変保護機能を動作させるように構成されている。このように、進行波電力信号あるいは反射波電力信号と、定格電圧との関係および設定電圧との関係から負荷急変の有無を検出するので、負荷急変の発生を確実に検出することができ、負荷への電気的ストレスを低減することができるようになる。
【0093】
上記進行波電力信号および反射波電力信号の変化量を演算する場合、例えば、それぞれの信号から基本波信号を取り出し、それに基づいて上記変化量を演算してもよい。進行波電力信号および反射波電力信号の主たる成分は基本波信号である。したがって、ディジタルフィルタ(バンドパスフィルタ)によって、基本波信号を取り出すことにより、精度が高い電力演算が可能となり、より適切な保護動作が可能となる。
【0094】
さらに、高周波電源装置10は、進行波電力信号もしくは反射波電力信号が、単調増加する場合、あるいは、増減を繰り返しながら増加する場合に、変化量を演算するように構成される。このようにすることにより、一見すると負荷急変ではないと思われるが実は負荷に対するストレスが過大となっている電力増加を負荷急変として検知することができるようになる。
【0095】
高周波電源装置10は、負荷急変時に電力増幅器の位相を変化させる負荷急変保護機能に関する複数の条件を設定するための設定画面を生成し、当該設定画面を表示装置の表示画面上に表示してユーザに提示する。そして、当該装置10は、設定画面(図10)を介して入力された複数の条件(各パラメータ値は、ユーザによって入力されるようにしてもよいし、プログラムによって入力されるようにしてもよい)に基づいて、負荷急変保護機能を動作させる。このようにすることにより、高周波電源装置10に接続される負荷40の種類に応じて、最適なパラメータを用いることが可能となる。例えば、設定画面は、負荷急変時保護機能を適用する保護機能適用時間(開始位相シフト時間[20ns]1005)を設定することが可能なように構成される。高周波電源装置10は、負荷急変を検出したとき、この保護機能適用時間を掛けて、電力増幅器の各位相を徐々に変化させる(例えば、180度まで)ように構成されている。また、設定画面は、負荷急変時保護機能の解除後に電力増幅器の位相を元に戻すまでの移行時間(解除位相シフト時間[20ns]1011)と、負荷急変時保護機能の解除からフィードバック制御に復帰する時の電力の立ち上げ時間(復帰時スローアップ1020)を設定することが可能なように構成されている。そして、高周波電源装置10は、移行時間を掛けて電力増幅器の各位相を徐々に元に戻すと共に、立ち上げ時間を掛けて高周波出力を立ち上げる。このようにすることにより、負荷急変時の位相シフト制御の際、および位相シフト制御から通常制御に復帰する際に、高周波電源装置10および負荷40に無用なストレスを与える事態を回避することができる。
【0096】
(ii)本開示は、実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本開示を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0097】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0098】
さらに、実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワーク(添付図面には図示せず)を介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
【0099】
最後に、ここで述べたプロセス及び技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはなく、コンポーネントの如何なる相応しい組み合わせによってでも実装できることを理解する必要がある。更に、汎用目的の多様なタイプのデバイスがここで記述した内容に従って使用可能である。ここで述べた方法のステップを実行するのに、専用の装置を構築するのが有益である場合もある。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本開示は、具体例に関連して記述したが、これらは、すべての観点において限定の為ではなく説明の為である。本分野にスキルのある者には、本開示を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア、及びファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0100】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【符号の説明】
【0101】
10 高周波電源装置
11 直流電源部
12 電力増幅部
13 合成部
14 高周波電力検出部
15 制御部
16 PWM信号生成部
17 高周波信号生成部
18 進行波電力/反射波電力増加量演算部
19 入力部
20 表示部
30 インピーダンス整合器
40 負荷
50 商用電源
121 DC-RF変換部1
122 DC-RF変換部2
151 負荷急変判定部
152 位相シフト量決定部
図1
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