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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】抗CD300f抗体およびその利用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20231108BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231108BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231108BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231108BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231108BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231108BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231108BHJP
   C12N 5/18 20060101ALI20231108BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231108BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231108BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K47/68
A61K51/10 100
A61P35/02
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/18
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12P21/08
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019527409
(86)(22)【出願日】2017-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 AU2017051288
(87)【国際公開番号】W WO2018094460
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-07-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】2016904779
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【微生物の受託番号】CBA  CBA20160029
(73)【特許権者】
【識別番号】516287689
【氏名又は名称】デンドロサイト バイオテック ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ハート,デレク ナイジェル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ジョージア ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】ガシオロースキー,ロビン
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】牧野 晃久
【審判官】天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-532873(JP,A)
【文献】国際公開第2009/051957(WO,A2)
【文献】Leukemia,2009年,Vol.23,pp.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
C07K 16/00- 16/46
JST7580/JSTPlus/JMEDPlus(JDream3)
PubMed
BIOSIS/CAPLUS/MEDLINE/EMBASE(STN)
Uniprot/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む重鎖可変領域、および
(b)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む軽鎖可変領域
を持つ、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
上記重鎖可変領域が、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
上記軽鎖可変領域が、配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
上記重鎖可変領域が、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
上記軽鎖可変領域が、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
上記重鎖が、配列番号13で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
上記軽鎖が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
上記抗体またはその抗原結合断片が、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、sFv、scFv、二重特異性抗体またはBiTEからなる群より選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片が、一部分に結合した免疫複合体。
【請求項10】
上記部分が治療部分である、請求項に記載の免疫複合体。
【請求項11】
上記治療部分が、細胞毒性剤、アポトーシス促進剤、放射性同位体、および免疫毒素からなる群から選択される、請求項10に記載の免疫複合体。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、または請求項11のいずれか1項に記載の免疫複合体を含む、薬学的組成物。
【請求項13】
CD300f発現に関連する状態を治療するための、請求項12に記載の薬物学的組成物。
【請求項14】
上記状態がAMLである、請求項13に記載の薬物学的組成物。
【請求項15】
請求項1~のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含むポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸を発現する、発現ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項18】
請求項1~のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、請求項11のいずれか1項に記載の免疫複合体、または請求項12~14のいずれか1項に記載の薬物学的組成物の、CD300f発現に関連する状態を治療するための薬剤の製造における使用。
【請求項19】
上記状態がAMLである、請求項18に記載の使用
【請求項20】
ブダペスト条約の下、セルバンクオーストラリアに寄託され、アクセッション番号CBA20160029に指定されている、ハイブリドーマ。
【請求項21】
請求項20に記載のハイブリドーマによって産生される、モノクローナル抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CD300fポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、および治療におけるその抗体またはその抗原結合断片の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
AMLのような骨髄性白血病は、血液細胞の骨髄系の癌である。AMLは、骨髄に蓄積して正常な血液細胞の産生を妨害する異常な白血球が、急速に増加することを特徴とする。AMLは、成体に影響を及ぼす最も一般的な急性白血病であり、AMLの発生率は年齢とともに増加する。結果として、AMLは、人口が高齢化するにつれて発生率が増加すると予想される。
【0003】
AMLのような骨髄性白血病の病因の理解における大きな進歩にもかかわらず、患者の転帰は依然として満足するものではない。AMLの主な治療は化学療法である。若年患者のかなりの割合は、同種骨髄移植を伴うまたは伴わない集中化学療法で治癒し得る。しかし、これらの治療法は、AMLと診断される患者の大部分を構成する高齢患者には適していない。抗体療法もまた、AMLの治療のために試験されている。この点に関して、CD33免疫複合体ゲムツズマブ・オゾガミシン(GO)が試験されたが、第III相試験における期待はずれの結果に続いて2010年に中止された。しかし、後に続く研究は、併用療法において、GOが数人の患者に対して、全体的な生存状況を改善したことを示した(Gamis AS, et al. J Clin Oncol. 2014;32(27):3021-32.; Hills RK, et al. The Lancet Oncology. 2014;15(9):986-96)。
【0004】
骨髄細胞系およびいくつかのAML試料の様々なプロテオミクスおよびトランスクリプトミクスによって、潜在的標的として同定されている他の標的としては、CD33に加えて、CD123、CD96、CD44、CD47、CD32、CLL-1、IRAPおよびTIM-3が挙げられる。これらの分子はすべて、骨髄系統の正常細胞によって多かれ少なかれ発現され、多数が健康な骨髄HSC上にも発現され、血液毒性の可能性を高める。
【0005】
AMLなどの骨髄性白血病の治療のために、急性骨髄性白血病細胞および/またはその前駆体上の標的に結合する代替分子が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
CD300fは、染色体17q25上の遺伝子複合体によってコードされる免疫調節分子のCD300fファミリーのメンバーである。これは、細胞質領域および細胞外ドメインを有する膜貫通糖タンパクである。細胞質領域は、阻害性ITIMおよびPI3Kリン酸化部位の両方を含む。CD300fは、AMLサンプルにおいてアップレギュレートされる。そのため、CD300fは、AMLなどのCD300fの発現に関連する状態の治療のための標的である。
【0007】
本発明者らは、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、本明細書中でDCR-2と称されるモノクローナル抗体を産生した。
【0008】
第1の態様は、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、および/または
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)
を含む重鎖可変領域を持つ、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0009】
第2の態様は、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、および/または
(b)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)
を含む軽鎖可変領域を持つ、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0010】
第3の態様は、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、
(a)以下を含む重鎖可変領域:
(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、および/または
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)、ならびに
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、および/または
(ii)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)
を持つ、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0011】
第4の態様は、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む、重鎖可変領域
(b)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)を含む、軽鎖可変領域
を持つ、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0012】
第5の態様は、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0013】
第6の態様は、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を持つ、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0014】
第7の態様は、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、
(a)以下を含む重鎖可変領域:
(i)モノクローナル抗体DCR-2の重鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、または
(ii)モノクローナル抗体DCR-2の重鎖可変領域のCDR1と同一である相補性決定領域1(CDR1)、モノクローナル抗体DCR-2の重鎖可変領域のCDR2と同一である相補性決定領域2(CDR2)、および/またはモノクローナル抗体DCR-2の重鎖可変領域のCDR3と同一である相補性決定領域3(CDR3)、および/または
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)モノクローナル抗体DCR-2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、または
(ii)モノクローナル抗体DCR-2の軽鎖可変領域のCDR1と同一の相補性決定領域1(CDR1)、モノクローナル抗体DCR-2の軽鎖可変領域のCDR2と同一の相補性決定領域2(CDR2)、および/またはモノクローナル抗体DCR-2の軽鎖可変領域のCDR3と同一の相補性決定領域3(CDR3)
を持つ、抗体または抗原結合断片を提供する。
【0015】
第8の態様は、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体であって、
(a)以下を含む重鎖可変領域:
(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、または
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)、および/または
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、または
(ii)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)
を持つ、抗体または抗原結合断片を提供し、
ここで、上記抗体またはその抗原結合断片は、一部分に結合される。
【0016】
第9の態様は、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、単離された抗体、またはその抗原結合断片であって、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を持つ、抗体またはその抗原結合断片を提供し、
ここで、上記抗体またはその抗原結合断片は、一部分に結合される。
【0017】
第10の態様は、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、
(a)下記を含む重鎖可変領域:
(i)モノクローナル抗体DCR-2の重鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、または
(ii)モノクローナル抗体DCR-2の重鎖可変領域のCDR1と同一である相補性決定領域1(CDR1)、モノクローナル抗体DCR-2の重鎖可変領域のCDR2と同一である相補性決定領域2(CDR2)、および/またはモノクローナル抗体DCR-2の重鎖可変領域のCDR3と同一である相補性決定領域3(CDR3)、および/または
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)モノクローナル抗体DCR-2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、または
(ii)モノクローナル抗体DCR-2の軽鎖可変領域のCDR1と同一の相補性決定領域1(CDR1)、モノクローナル抗体DCR-2の軽鎖可変領域のCDR2と同一の相補性決定領域2(CDR2)、および/またはモノクローナル抗体DCR-2の軽鎖可変領域のCDR3と同一の相補性決定領域3(CDR3)
を持つ、抗体またはその抗原結合断片を提供し、
ここで上記抗体またはその抗原結合断片は、一部分に結合している。
【0018】
第11の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片、または第7~第9の態様の免疫複合体を含む組成物を提供する。
【0019】
第12の態様は、
(a)下記を含む重鎖可変領域:
(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、および/または
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)、および/または
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、および/または
(ii)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)
を持つポリペプチドをコードする、核酸を提供する。
【0020】
第13の態様は、配列番号1で表されるアミノ酸配列および/または配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、核酸配列を提供する。
【0021】
第14の態様は、第1~第7の態様の抗体またはその抗原結合断片をコードする、核酸を提供する。
【0022】
第15の態様は、第12~第14の態様の核酸を含む、細胞を提供する。
【0023】
第16の態様は、第1~第7の態様の抗体またはその抗原結合断片、第8~第10の態様の免疫複合体、第11の態様の組成物、または第15の態様の細胞を、対象に、有効量投与することを含む、それらを必要とする上記対象における、CD300f発現に関連する状態を治療する方法を提供する。
【0024】
第16の代替的な態様は、第1~第7の態様の抗体またはその抗原結合断片、第8~第10の態様の免疫複合体、第11の態様の組成物、または第15の態様の細胞、またはCD300f発現に関連する状態を治療するための医薬の製造における、それらを必要とする対象におけるCD300f発現に関連する状態を治療するための医薬の製造における、第1~第7の態様の抗体またはその抗原結合断片、第8~第10の態様の免疫複合体、第11の態様の組成物、または第15の態様の細胞の使用を提供する。
【0025】
第17の態様は、第1~第7の態様の抗体またはその抗原結合断片、第8~第10の態様の免疫複合体、第11の態様の組成物、第12~第14の態様の核酸、または第15の態様の細胞を含むキットを提供する。
【0026】
第18の態様は、2016年9月27日に、ブダペスト条約の下、セルバンクオーストラリアに寄託され、アクセッション番号CBA20160029を割り当てられた、ハイブリドーマを提供する。
【0027】
第19の態様は、CD300fの細胞外ドメインに結合するためにDCR-2と断面競合する、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0028】
第20の態様は、第12~第14の態様の核酸を発現する、発現ベクターを提供する。
【0029】
第21の態様は、第20の態様の発現ベクターを含む、細胞を提供する。
【0030】
第22の態様は、2016年9月27日に、ブダペスト条約の下、セルバンクオーストラリアに寄託され、アクセッション番号CBA20160029を割り当てられたハイブリドーマによって産生される、モノクローナル抗体を提供する。
【0031】
第23の態様は、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を産生する方法であって、
(a)抗体またはその抗原結合断片の産生を可能にする条件下で、第15の態様の細胞または第18の態様のハイブリドーマをインキュベートする工程、および
(b)工程(a)において産生される上記抗体またはその抗原結合断片を単離する工程を含む、抗体またはその抗原結合断片を産生する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1A図1Cは、DCR-2および市販のCD300f抗体(UP-D1、UP-D2、234903、CML-1およびgLMIR3)の特異性を示すグラフである。図1Aは、フローサイトメトリーによって測定された、DCR-2および市販のCD300f抗体のCD300fトランスフェクトCHO細胞への結合度の結果を示すヒストグラムである。抗体結合(影なしヒストグラム)を、各抗体の関連アイソタイプ(影付きヒストグラム)と比較した。図1Bは、ELISAによって測定された、CD300f-Ig融合タンパク質に対する、DCR-2抗体および市販のCD300f抗体の結合度を示すグラフである。図1Cは、ELISAによって測定された、CD300b-Ig融合タンパク質に対する、DCR-2抗体および市販のCD300f抗体の結合度を示すグラフである。
図2図2は、骨髄由来細胞株HEL、HL-60、THP-1およびU937に対する、DCR-2および市販の抗体(UP-D1、UP-D2、234903、CML-1およびgLMIR3)の結合度についての幾何MFI比を示すグラフである。ELISAはn=2で実施され、エラーバーは代表的な結果の重複ウェルからのSEMを表す。
図3図3A~3Cは、健康な細胞および白血病細胞に対する、CD300f抗体の結合度を示すグラフである。図3A~3Cは、(A)マルチパラメータフローサイトメトリーによって評価された、健康なPBMC群(B)AML芽球およびCD34CD38白血病幹細胞(LSC)(n=5)、ならびに(C)Lin-CD34+CD38CD45RA-CD90+臍帯血造血幹細胞(n=3)に対する、DCR-2および市販のCD300f抗体UP-D1、UP-D2、234903、CML-1およびgLMIR3結合度の比較である。対象の群の幾何MFIを、アイソタイプ対照の幾何MFIで除して、「幾何MFI比」を得た。系統抗体(Lin)は、CD3、CD19、CD20、CD56およびC14に対するモノクローナル抗体を含む。
図4図4は、mAbUP-D2を用いて検出された種々の細胞上のCD300fの抗原濃度を示すグラフである。
図5図5A図5Eは、CD300f抗体DCR-2、UP-D1、UP-D2、234903、CML-1およびgLMIR3を用いた競合試験の結果を示すグラフである。CD300fトランスフェクトCHO細胞を、x軸に示されるような、飽和量のDCR-2または市販のCD300f抗体と共にインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、試験抗体(A)UP-D1(B)UP-D2(C)234903(D)ウサギCLM-1および(E)ヤギLMIR3で染色した。第2の抗体をブロックする第1の抗体の能力は、結合度パーセンテージとして計算され、結合度0%は完全なブロッキング(エピトープの完全な重複)を示し、結合度100%はブロッキングされていない(エピトープの重複なし)を示す(n=3)。
図6図6は、DCR-2の存在下における、CD300f(CHO-L5)を発現するCHO細胞に対する、CD300f抗体の結合度を示すグラフである。
図7図7は、DCR-2または243903の存在下における、細胞株HEL、HL-60およびTHP-1に対する、mAb UP-D2の結合度を示すグラフである。
図8図8A~8Eは、CD300fL4およびCD300fS4細胞外アイソフォームを発現するトランスフェクタントに対する、CD300f抗体の結合度を示すヒストグラム(左側)およびウェスタンブロット(右側)である。フローサイトメトリーによって、アミノ酸配列STPAPTTPTSTTFT(CD300fL4)を含むか、またはアミノ酸配列STPAPTTPTSTTFT(CD300fS4)を含まないCD300fのアイソフォームを発現するCHOトランスフェクタントに対する結合について、DCR-2および市販のCD300f抗体を試験した。各CD300f抗体(オープンヒストグラム)を、適切なアイソタイプ対照(影付きヒストグラム)と比較した。非還元(NR)および還元(R)条件下で分離したCD300fL4またはCD300fS4溶解物中のCD300fタンパク質のウェスタンブロット解析を、ヒストグラムの右側に示す。図8Fにおいて、CLM-1ペプチド抗体を用いて、CD300fS4トランスフェクタントよりもCD300fL4トランスフェクタントにより多くのCD300fタンパク質が発現されたが、PAGEゲル上でCD300fL4よりも5倍多くのCD300fS4溶解物を分離したにもかかわらず、gLMIR3は、CD300fL4のみに結合することを実証した。同様に、DCR-2、234903およびgLMIR3は、CD300fL4トランスフェクタントからの非還元溶解物にのみ結合することができ、一方、UP-D2は、ウエスタンによっていかなるタンパク質にも結合しなかった。アクチン結合をローディング対照として使用した。NRは非還元、Nは還元を表す。分子量マーカーは同定されている。
図9図9は、DCR-2の生体層干渉分析の結果を示す。BLItz System(Fortebio、Pall Life Sciences)を用いて、CD300fに対する親和性について、DCR-2を評価した。CD300f-Fc組換えタンパク質を、ヒトIgG Fc捕捉感知部に固定した。結合および解離について、各mAbをある5点で連続希釈したものを試験した。BLItz Proソフトウェアを用いて、グローバルフィッティング1:1結合モデルを用いて、速度定数を推定した。Aは実行条件を示し、Bはデータの分析を示す。
図10図10Aは、アイソタイプ対照(CMRF-81)と比較した、DCR-2によって生じたHL-60細胞の抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)を示すグラフである。図10Bは、抗マウスAF647(表面)によって検出された残りの表面Igと比較して、直接的に標識された抗体(全体)を経時的に監視することによって検出されたU937およびHL-60の表面からの、37℃におけるUP-D1およびDCR-2mAbの内部移行を示すグラフである。三角形はDCR-2を表し、円はUP-D1を表す。実線および黒塗り記号は全染色を表し、破線および白抜き記号は表面染色を表す。
図11図11は、芽球、LSCおよびHSCを同定するためのゲート解析を示す。(A)最初にPI陰性生存細胞にゲートをかけた後、造血幹細胞を、系統-CD45dimCD34+CD38-CD45RA-CD90+として同定した。(B)芽球を、CD45dimSSClowとして同定した。白血病幹細胞濃縮CD34+CD38画分を、当該ゲートから同定した。
図12図12は、DCR-2のマウス重鎖可変領域(A)、およびDCR-2の予想ヒト化マウス重鎖可変領域(B)のアミノ酸配列の並びを示す。CDR1、CDR2およびCD3配列は、示されるように破線の枠内に示される。ヒト配列で置換されたマウス配列のアミノ酸は、下線および太字で示される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
CD300fは、ヒト染色体17q25上の遺伝子複合体によってコードされる、免疫調節分子のCD300ファミリーのメンバーである。CD300fは、阻害性免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)およびホスファチジルイノシチド‐3‐キナーゼ(PI3K)リン酸化部位の両方を含む細胞質領域を有する膜貫通糖タンパクである。このファミリーの他のメンバーと同様に、CD300fは、単一のIg様細胞外ドメインを有する膜貫通糖タンパクである。
【0034】
本明細書に記載されるように、本発明者らは、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合するモノクローナル抗体を単離した。モノクローナル抗体は、本明細書ではDCR-2と呼ばれる。DCR-2を産生するハイブリドーマを、ブダペスト条約の下、セルバンクオーストラリア(CellBank Australia, 214 Hawkesbury Rd, Westmead, NSW 2145, Australia)に、2016年9月27日に寄託し、アクセッション番号をCBA20160029に指定した。
【0035】
本明細書に記載されるように、DCR-2は、AMLおよびCD34CD38白血病幹細胞(LSC)によって発現されるCD300fの複数のアイソフォームに結合する。より詳しく言うと、DCR-2は、配列STPAPTTPTSTTFTを含むCD300fのアイソフォーム(CD300fL4)と、配列STPAPTTPTSTTFTが存在しないCD300fのアイソフォーム(CD300fS4)とに結合する。
【0036】
また、本明細書に記載されるように、DCR-2は、CD300fを発現する細胞に対する市販のCD300fモノクローナル抗体であるUP-D2の結合度を増強する。したがって、DCR-2は、CD300fを発現する細胞に対するUP-D2の結合度および取り込みを増強するために、UP-D2と組み合わせて使用され得る。DCR-2を用いて、CD300fを発現する細胞に対するUP-D2またはUP-D2免疫複合体の結合を増強することは、AML細胞および白血病幹細胞などのCD300fを発現する細胞への、治療部分および/または診断部分の輸送を増強し得る。
【0037】
本明細書にさらに記載されるように、DCR-2自体は、ヒト前骨髄球性白血病細胞株HL-60において、抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)を示す。
【0038】
したがって、本開示の一態様はCD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片(本明細書ではDCR-2抗体またはその抗原結合断片とも称される)に関し、上記抗体またはその抗原結合断片は以下を含む:
(a)下記を含む重鎖可変領域:
(i)モノクローナル抗体DCR-2の重鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列、または
(ii)モノクローナル抗体DCR-2の重鎖可変領域のCDR1と同一である相補性決定領域1(CDR1)、モノクローナル抗体DCR-2の重鎖可変領域のCDR2と同一である相補性決定領域2(CDR2)、および/またはモノクローナル抗体DCR-2の重鎖可変領域のCDR3と同一である相補性決定領域3(CDR3)、および/または
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)モノクローナル抗体DCR-2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列、または
(ii)モノクローナル抗体DCR-2の軽鎖可変領域のCDR1と同一の相補性決定領域1(CDR1)、モノクローナル抗体DCR-2の軽鎖可変領域のCDR2と同一の相補性決定領域2(CDR2)、および/またはモノクローナル抗体DCR-2の軽鎖可変領域のCDR3と同一の相補性決定領域3(CDR3)。
【0039】
本発明者らは、DCR-2の重鎖可変領域およびDCR-2の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を決定した。
【0040】
【表1】
【0041】
DCR-2の重鎖可変領域(V)のアミノ酸配列は、以下のアミノ酸配列によって表される:
MESGGGLVQPGGPLKLSCAASGFGFSGSWMSWVRQAPGKGLEWIGQINPDSSTINYTPSLKDKFIISRDNAKNTLYLQINKVRSEDTALYYCARRGFFEGYSAWFAYW(配列番号1)
DCR-2の重鎖可変領域のCDR1のアミノ酸配列は、アミノ酸配列GFGFSGSW(配列番号2)によって表される。
【0042】
DCR-2の重鎖可変領域のCDR2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列INPDSSTI(配列番号3)によって表される。
【0043】
DCR-2の重鎖可変領域のCDR3のアミノ酸配列は、アミノ酸配列ARRGFFEGYSAWFAY(配列番号4)によって表される。
【0044】
DCR-2の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列は、以下のアミノ酸配列によって表
される:
MTQTPKFLLVSAGDRVTITCKASQSVSNDVAWYQQKP
GQSPSLLIYYASNRNTGVPDRFTGSGYETDFTFTISTVQA
EDLAVYFCQQDYTSPWTFGGG(配列番号5)。
【0045】
DCR-2の軽鎖可変領域のCDR1のアミノ酸配列は、アミノ酸配列QSVSND(配列番号6)によって表される。
【0046】
DCR-2の軽鎖可変領域のCDR2のアミノ酸配列は、アミノ酸配列YAS(配列番号7)によって表される。
【0047】
DCR-2の軽鎖可変領域のCDR3のアミノ酸配列は、アミノ酸配列QQDYTSPWT(配列番号8)によって表される。
【0048】
したがって、本開示の一態様ではCD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片に関し、上記抗体またはその抗原結合断片は以下を含む:
(a)下記を含む重鎖可変領域:
(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列、または
(ii)アミノ酸配列GFSGSW(配列番号2)を含む相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列INPDSSTI(配列番号3)を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/またはアミノ酸配列ARRGFFEGYSAWFAY(配列番号4)を含む相補性決定領域3(CDR3)、および/または
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列、または
(ii)アミノ酸配列QSVSND(配列番号6)を含む相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列YAS(配列番号7)を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/またはアミノ酸配列QQDYTSPWT(配列番号8)を含む相補性決定領域3(CDR3)。
【0049】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は以下を含む:
(a)以下を含む重鎖可変領域:
(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列、または
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)、および
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列
(ii)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)。
【0050】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は以下を含む:
(a)以下を含む重鎖可変領域:
(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列、および/または
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列。
【0051】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が以下を含む:
(a)以下を含む重鎖可変領域:
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)、または
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)。
【0052】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が以下を含む:
(a)以下を含む重鎖可変領域。
【0053】
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)、および
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号7で表されるアミノ酸配列と同一の相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)。
【0054】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0055】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一実施形態では、軽鎖可変領域が配列番号5で表されるアミノ酸配列と100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0056】
種々の実施形態では、CD300fに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片は以下を含む:
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(c)配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(d)配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(e)配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(f)配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む計鎖可変領域;
(g)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;
(h)配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;
(i)配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3;
(j)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;
(k)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、および配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3;
(l)配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3;
(m)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3;
(n)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
(o)配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
(p)配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(q)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、および配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
(r)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(s)配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(t)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(u)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;
(v)配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
(w)配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(x)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、および配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;
(y)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(z)配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(aa)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(bb)配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域;
(cc)配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域;
(dd)配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むCDR3、ならびに配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含むCDR1を含む軽鎖可変領域、アミノ酸を含むCDR2 配列番号7によって表される配列、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含むCDR3。
【0057】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、配列番号13で表されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0058】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0059】
一実施形態では、CD300fに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0060】
一実施形態では、CD300fに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0061】
一実施形態では、CD300fに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号6で表されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0062】
一実施形態では、CD300fに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0063】
一実施形態では、CD300fに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0064】
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、当業者に公知の任意の配列アルゴリズムを使用して特定し得る。例えば、配列分析プログラムであるFASTAパッケージ(Lipman & Pearson, (1985) Science 227(4693): 1435-1441)およびBLAST(Altschul et al. J. Mol. Biol. 215(3):403-410)が挙げられる。
【0065】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、10-7M未満、典型的には、10-8M未満、10-9M未満、9×10-10M未満、8×10-10未満、7×10-10未満、6×10-10未満、5×10-10未満、または4×10-10M未満の平衡解離定数(K)で、ヒトCD300fに結合する。
【0066】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、1×10-10~1×10-7M、典型的には、1×10-10~1×10-7M、1×10-10~1x10-8M、1x10-10~1×10-9M、1×10-10~9×10-10M、1×10-10-8x10-10M、または1x10-10~7×10-10M、2×10-10~6×10-10または3×10-10~5×10-10Mの平衡解離定数(K)で、ヒトCD300fに結合する。
【0067】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、約1×10-1-1以下のKで、ヒトCD300fに結合する。種々の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、1×10~5×10-1-1、典型的には、1×10~1×10-1-1のKで、ヒトCD300fに結合する。
【0068】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、5×10-2-1以下、典型的には1×10-2-1以下、5×10-3-1以下、1×10-3-1以下、又は5×10-4-1以下、4×10-4-1以下、3×10-4-1以下、または2×10-4-1以下の解離速度(off rate)でヒトCD300fに結合する。
【0069】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、5×10-2-1~1×10-5-1、1×10-2~5×10-5-1、5×10-3~5×10-4-1、1×10-3~5×10-4-1、または1×10-3~1×10-1の範囲の解離速度でヒトCD300fに結合する。
【0070】
別の態様は、2016年9月27日にセルバンクオーストラリア(CellBank Australia,214 Hawkesbury Road、Westmead、NSW 2145、Australia)にブダペスト条約の下で寄託され、アクセッション番号CBA20160029に指定されているハイブリドーマを提供する。ブダペスト条約の下に寄託され、アクセッション番号CNA20160029に指定されているハイブリドーマはDCR-2を発現する。
【0071】
別の態様は、ブダペスト条約の下に寄託され、アクセッション番号CNA20160029に指定されているハイブリドーマによって産生される抗体を提供する。
【0072】
抗体は、抗原に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を表す。抗体は、キメラ、ヒト化、脱免疫化、CDR移植、同時ヒト化(synhumanised)、二重特異性ヒト化(bi-specific human)を含む、組換え型であってもよく、または修飾されていてもよい。全長抗体は、典型的には、2つの重鎖に共有結合した2つの軽鎖を含む。全長抗体の各重鎖は、重鎖可変領域および重鎖定常領域を含む。全長抗体の各軽鎖は、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を含む。全長抗体は、以下のタイプのいずれかであり得る:IgG、IgM、IgE、IgD、IgA。一実施形態では、抗体はIgGである。
【0073】
本明細書で使用される、抗体の「抗原結合断片」という用語は、抗体の抗原結合ドメインを含み、典型的には、抗体全長として、同じエピトープに特異的に結合する抗体の一部を含む。典型的には、抗体の抗体断片は、抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域の一部を含む。典型的には、抗原結合断片が、重鎖可変領域のCDR1、2および/または3領域、および/または軽鎖可変領域のCDR1、2および/または3領域を含む。より典型的には、抗原結合断片が、重鎖可変領域のCDR1、2および3領域、および/または軽鎖可変領域のCDR1、2および3領域を含む。さらに典型的には、抗原結合断片が重鎖可変領域のCDR1、2および3領域、ならびに軽鎖可変領域のCDR1、2および3領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体の抗原結合断片は、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。重鎖可変領域および軽鎖可変領域の一部は、Fv断片などの別々のポリペプチド鎖上にあってもよく、または軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカー(「scFvタンパク質」)によって連結されている単一のポリペプチド鎖中にあってもよい。抗体の抗原結合断片の例としては、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、sFv、scFvなどが挙げられ得る。
【0074】
本明細書で使用される抗体の抗原結合断片は、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、sFv、scFvなどの抗体の抗原結合ドメインを含む1つ以上のポリペプチドを含む。
【0075】
本明細書で使用される「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原に特異的に結合できる抗体の領域のことを表す。典型的には、抗原結合ドメインは、抗体の軽鎖可変領域からのCDR1、CDR2および/またはCDR3、および/または抗体の重鎖可変領域からのCDR1、CDR2および/またはCDR3を含む。より典型的には、抗原結合ドメインは、抗体の軽鎖可変領域からのCDR1、CDR2およびCDR3、および/または抗体の重鎖可変領域からのCDR1、CDR2および/またはCDR3を含む。さらに典型的には、抗原結合ドメインが、抗体の軽鎖可変領域からのCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに抗体の重鎖可変領域からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0076】
「可変領域」という用語は、抗原に特異的に結合することができる抗体の軽鎖および/または重鎖の部分を表す。可変領域は、相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)を含む。フレームワーク領域は、相補性決定領域以外の可変領域である。
【0077】
「相補性決定領域」という用語は、抗体が抗原に特異的に結合する能力に主に関与する、抗体の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域の可変領域の3つのアミノ酸配列のうちの1つを指す。軽鎖および重鎖の可変領域の3つの相補性決定領域は、CDR1、CDR2およびCDR3と称される。
【0078】
軽鎖および重鎖の可変領域のCDR領域およびフレームワーク(FR)領域を決定するための方法は、当該分野で公知である。例えば、CDRおよびFRに割り当てられるアミノ酸位置は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institute of Health, Bethesda, MD, 1987 and 1991; Enhanced Clothia Numbering Scheme; Clothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917; Clothia et al. Nature 342: 877-883; HonnegherおよびPlukthun, J. Mol. Biol. 309: 657-670に従って定義され得る。抗体またはその抗原結合断片は、CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する。本明細書中で使用される「CD300fの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片」は、他の抗原も含め、より頻繁に、より迅速に、より長い時間にわたって、またはより高い親和性で、CD300fの細胞外ドメインと会合する抗体またはその抗原結合断片である。
【0079】
抗体由来の可変ドメインは、当該分野で公知であり、例えば、Sambrook and Russell, Eds, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed, vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に記載される、従来の技術により行われ得る。一般に、マウス抗体などの抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域配列は、RT-PCR、5’-RACE、およびcDNAライブラリースクリーニングなどの種々の分子クローニング手順によって得ることができる。
【0080】
本明細書中で使用される場合、キメラ抗体は、1つの種に由来する抗体、典型的にはマウス抗体の相補性決定領域(CDR)、典型的には可変領域を含む抗体タンパク質である。一方、抗体分子の定常ドメイン、およびいくつかの実施形態におけるフレームワーク領域(FR)は、別の種(例えば、ヒト)に由来する。
【0081】
ヒト化抗体は、CDRのアミノ酸配列が1つの種由来の抗体、例えばマウス抗体由来であり、定常領域、および典型的にはフレームワーク領域のアミノ酸配列が、ヒト抗体由来であるキメラ抗体の形態である。
【0082】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、キメラ抗体である。キメラ抗体は、DCR-2の相補性決定領域(CDR)、および典型的にはフレームワーク領域(FR)を含む。キメラ抗体は、ヒト抗体の軽鎖および重鎖定常領域を含み得る。キメラ化モノクローナル抗体に由来する抗体成分の使用は、マウス定常領域の免疫原性に関連する潜在的な問題を低減する。典型的には、抗体はヒト化抗体である。マウス抗体および抗体断片のヒト化は、当業者に公知であり、例えば、US5225539、US6054297、およびUS7566771に記載されている。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変鎖からのマウス相補的決定領域を、ヒト可変ドメインに移入し、次いで、マウス対応物のフレームワーク領域中のヒト残基を置換することによって産生され得る。ヒト定常領域配列に加えて、ヒトフレームワーク領域配列の使用は、HAMA反応を誘導する機会をさらに低減する。
【0083】
抗体は、種々の十分に確立された技術によって、血清およびハイブリドーマ培養物から単離および精製され得る。このような単離技術には、プロテイン-Aセファロースを用いるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが含まれる。例えば、Coligan at pages 2.7.1-2.7.12 and pages 2.9.1-2.9.3を参照されたい。また、Baines et al., "Purification of Immunoglobulin G (IgG)," in Methods in Molecular Biology, Vol. 10, pages 79-104 (The Humana Press, Inc. 1992)を参照されたい。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗体のその抗原結合断片が、抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域の一部を含む。重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域の一部は、Fv断片などの別々のポリペプチド鎖上にあってもよく、または軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカー(例えば、scFvタンパク質)によって連結されている単一のポリペプチド鎖中にあってもよい。抗体断片の例には、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv、sFv、scFvなどが含まれる。典型的には、抗体断片が、重鎖可変領域のCDR1、2および3領域、および/または軽鎖可変領域のCDR1、2および3領域を含む。特定のエピトープを認識する抗体断片は、公知の技術によって生成され得る。F(ab’)2断片は例えば、抗体分子のペプシン消化によって産生され得る。これらおよび他の方法は、例えば、Coliganによって、2.8.1~2.8.10ページおよび2.10.~2.10.4ページに記載されている。あるいは、Fab’発現ライブラリーが、所望の特異性を有するFab’断片の迅速かつ容易な同定を可能にするように構築され得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、抗体の抗原結合断片は、単鎖Fv分子(scFv)であり得る。単鎖Fv分子(scFv)は、典型的には軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、典型的にはペプチドリンカー(L)によって共有結合され、折り畳まれて抗原結合部位を形成する。重鎖可変領域および軽鎖可変領域は直接一緒に連結され得るが、当業者にとって当該領域が1つ以上のアミノ酸からなるペプチドリンカーによって分離され得ることは公知である。またペプチドリンカーおよびそれらの使用は、当該分野で公知である。一般に、ペプチドリンカーは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間の領域を連結するか、またはある最小距離または他の空間的関係を保存すること以外に、特異的な生物学的活性を有さない。しかし、ペプチドリンカーの構成アミノ酸は折り畳み、正味電荷、または疎水性などの分子のいくつかの特性に影響を及ぼすように選択され得る。単鎖Fv(scFv)抗体は、場合により、50アミノ酸以下、一般に40アミノ酸以下、好ましくは30アミノ酸以下、より好ましくは20アミノ酸以下の長さのペプチドリンカーを含む。
【0086】
scFv抗体を作製する方法は当該分野で公知であり、例えば、US5260203に記載されている。手短に言えば、免疫動物由来のB細胞由来のmRNAを単離し、cDNAを調製する。cDNAは、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域に特異的なプライマーを用いて増幅される。PCR産物を精製し、核酸配列を連結する。リンカーペプチドが所望される場合、ペプチドをコードする核酸配列を、重鎖核酸配列と軽鎖核酸配列との間に挿入される。scFvをコードする核酸をベクターに挿入し、適切な宿主細胞中で発現させる。所望の抗原に特異的に結合するscFvは、典型的にはファージディスプレイライブラリーのパンニング(panning)によって見出される。パンニングは、いくつかの方法のいずれかによって行うことができる。パンニングは、その表面上に所望の抗原を発現する細胞を使用するか、または所望の抗原で被覆された固体表面を使用して、簡便に実施され得る。好ましくは、上記表面は磁気ビーズであってもよい。結合していないファージを固体表面から洗い流し、結合したファージを溶出する。
【0087】
抗体の他の抗原結合断片を調製するための方法は、当該分野で公知である。例えば、抗原結合断片は、全長抗体のタンパク質分解加水分解によって、または大腸菌もしくは断片をコードするDNAの別の宿主における発現によって調製され得る。抗体断片は、従来の方法による全長抗体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体断片は、F(ab’)と示される約100Kdの断片を提供するために、ペプシンを用いた抗体の酵素的切断によって産生され得る。この断片は、チオール還元剤、および場合によりジスルフィド結合の開裂から生じるスルフヒドリル基のためのブロッキング基を使用してさらに開裂されて、約50KdのFab’一価断片を生成し得る。あるいは、パパインを用いた酵素的切断によって、2つの一価Fab断片およびFc断片を直接産生する。
【0088】
断片が無傷の抗体によって認識されるエピトープに結合する限り、抗体を切断する他の方法、例えば、重鎖を分離して一価の軽-重鎖断片を形成し、断片をさらに切断する方法、または他の酵素的、化学的もしくは遺伝的技術もまた、使用され得る。
【0089】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するか、または同じ抗原上の2つのエピトープに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトまたはヒト化抗体である。種々の実施形態では、二重特異抗体は、(a)DCR-2の結合特異性およびUP-D2の結合特異性、(b)DCR-2の結合特異性およびCD3の結合特異性、(c)DCR-2の結合特異性および別の癌抗原、典型的にはCD123、CD96、CD44、CD47またはCD33などのAML抗原の結合特異性を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体が、二重特異性T細胞エンゲイジャーである。Bi特異的T細胞エンゲイジャー(BiTE)は、人工的な二重特異的モノクローナル抗体のクラスである。BiTEは融合タンパク質であり、典型的には、異なる抗体の2つの単鎖可変断片(scFv)、または単一ペプチド鎖上の4つの異なる遺伝子由来のアミノ酸配列を含む。scFvの一方は腫瘍抗原(例えば、CD300f)に結合し、他方は一般に、CD3受容体を介してT細胞などのエフェクター細胞に結合する。二重特異性抗体を調製する方法は例えば、Laszlo et al. Blood. 2014 Jan 23; 123(4): 554-561; Loffler, Blood (2000), 95: 2098-103に記載されている。
【0091】
別の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が、キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)のためのキメラ抗原受容体である。この点に関して、シグナル伝達分子と共に、scFvなどの抗原結合ドメインを含むポリペプチドをコードする核酸を用いて、T細胞に形質導入し、CAR T細胞を産生することができる。CAR T細胞において発現される抗原結合ドメインは、非MHC制限様式で抗原を認識することができる。従って、T細胞の表面上における、例えば本明細書中に記載される抗体の抗原結合ドメインをコードするscFvの発現は、例えば、AML細胞または白血病幹細胞を標的化するのに有効であり得る。CAR T細胞の調製方法は当該分野で公知であり、例えば、Shannon et al. Blood, 25 June 2015 Volume 125, No. 26: 4017-4023; O’Hear et al. (2015) Haematologica; 100(3): 336-344に記載される。従って、一態様では、本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片を含むポリペプチドをコードする核酸を含む細胞が、提供される。典型的には、細胞が、配列番号1および配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むscFvなどのDCR-2抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドをコードする核酸を含む。一実施形態では、本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片を含むポリペプチドが、本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片の抗原結合ドメインおよびエンドドメインを含む。エンドドメインの例としては、T細胞受容体ゼータ鎖、CD3-ゼータ、CD3-ゼータ-CD28、CD3-ゼータ-CD28-OX40が挙げられる。典型的には、エンドドメインは膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、典型的には細胞膜にまたがる疎水性αヘリックスを含む。
【0092】
エピトープに対する交差競合を評価することによって、同じエピトープまたは重複エピトープに結合する他の抗体またはその抗原結合断片を単離するために、本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片が、使用され得る。本明細書中に記載される抗体またはその抗原結合断片との交差競合は、BIAcore分析、フローサイトメトリー、ELISA分析などの当技術分野で知られている方法を使用して評価することができる。したがって、別の態様では、DCR-2またはその抗原結合断片と断面競合する抗体またはその抗原結合断片が、CD300fの細胞外ドメインに結合するために提供され、DCR-2と交差競合する抗体またはその抗原結合断片は、UP-D2またはその抗原結合断片ではない。
【0093】
抗体またはその抗原結合断片は、一部分に結合され得る。したがって、別の態様は、
(a)以下を含む重鎖可変領域:
(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、例えば少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列、および/または
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)、および/または
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、典型的には少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列、または
(ii)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)
を含む免疫複合体を提供し、ここで、上記抗原またはその抗原結合断片は、一部分に結合される。
【0094】
上記部分は、抗体またはその抗原結合断片に直接的または間接的に結合され得る(例えば、間接的結合の場合、リンカーを含み得る)。部分の例としては、放射性同位元素(例えば、ヨウ素-131、イットリウム-90またはインジウム-111)、検出可能な標識(例えば、フルオロフォアまたは蛍光ナノクリスタル)、治療用化合物(例えば、化学療法剤または抗炎症剤)、コロイド(例えば、金)、毒素(例えば、リシン)、核酸、ペプチド(例えば、血清アルブミン結合ペプチド)、タンパク質(例えば、抗体または血清アルブミンの抗原結合ドメインを含むタンパク質)、対象における抗体または抗原結合タンパク質の半減期を増加させる化合物(例えば、ポリエチレングリコールまたはこの活動を有する他の水溶性ポリマー)またはそれらの混合物等が挙げられる。部分をタンパク質に結合するための方法は、当該分野で公知であり、例えば、WO2010/059821に記載されている。
【0095】
一実施形態では、上記部分が治療部分および/または診断部分である。
【0096】
一実施形態では、上記部分が治療部分である。治療部分は、疾患または状態の治療に有用な化合物、分子または原子である。治療部分の例としては、化学療法剤、アポトーシス促進剤、放射性同位体、免疫毒素複合体などの細胞毒性剤などの薬剤が挙げられる。細胞毒性剤は、細胞に対して毒である化合物である。細胞毒性剤の例としては、サイトカラシンB、グラミシジン、エメチン、テノポシド、コルヒチン、デュオカルマイシン、カリケアミシン、マイタンシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルビン、プレドニゾロン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、シクロホスファミド、プロカルバジン、パクリタキセル、イリノテカン、ゲムシタビン、フルオロラシル、シタラビン、オゾガマイシン、アドリアマイシン、エトポシド、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムイル、ダウノルビシン、モノメチルアウリスタチン(MMAE)が挙げられる。放射性同位元素の例としては、リン-32、銅-67、ヒ素-77、ロジウム-105、パラジウム-109、銀-111、スズ-1221、ヨウ素-125、ヨウ素-131、ホルミウム-166、ルテチウム-177、レニウム-186、イリジウム-194、金-199、アスタチウム-211、イトリウム-90、およびビスマス-212が挙げられる。免疫毒素の例は例えば、Wayne et al. (2016) Blood, 123: 2470-2477に記載されており、例えば、ジフテリア毒素A、リシン-dgA、シュードモナス外毒素A、グロノイン、破傷風を含む。
【0097】
一実施形態では、上記部分は診断部分である。診断部分は、抗体またはその抗原結合断片のその標的抗原への結合の検出に有用な化合物、分子または原子である。診断部分は、放射性核種または非放射性核種、造影剤(例えば、磁気共鳴画像法、コンピュータ断層撮影または超音波のための)を含み得る。診断部分は、例えば、放射性同位元素、染料(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン複合体を有する)、造影剤、蛍光化合物または分子、および磁気共鳴画像法(MRI)または陽電子放出断層撮影(PET)走査のための増強剤(例えば、常磁性イオン)を含む。一実施形態では、診断部分が放射性同位元素、磁気共鳴画像法に使用するための増強剤、および蛍光化合物からなる群から選択される。抗体成分に放射性金属または常磁性イオンを負荷するためには、イオンを結合させるための多数のキレート基が結合している長い尾部を有する試薬と抗体成分を反応させる必要があり得る。このような尾部は、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、DOTA、NOTA、NETA、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス-チオセミカルバゾン、ポリオキシムなどのキレート群、およびこの目的に有用であることが知られている同様の群に結合され得るペンダント群を有する、ポリリジン、多糖、または他の誘導されたもしくは誘導され得る鎖などの高分子であり得る。キレートを、標準化学を用いて抗体に結合させる。キレートは、通常、免疫反応性の損失値を最小にし、凝集および/または内部架橋を最小にして、分子への結合の形成を可能にする基によって抗体に連結される。
【0098】
一実施形態では、この部分がモノメチルアウリスタチンE(MMAE)である。部分がMMAEである免疫複合体を生成するために、例えば、Francisco et al. 2003, Blood, 102: 1458-1465に記載されているように、部分的に還元された抗体またはその抗原結合断片への複合体化のために、リソソームカテプシンB切断可能な自己溶血性ジペプチドバリン-シトルリン(ValCit)マレイミドリンカーをアウリスタチンEに連結することができる。
【0099】
DCR-2抗体、またはDCR-2抗体の一部、またはDCR-2抗体の抗原結合断片を含むポリペプチドをコードする核酸もまた、本明細書中に提供される。種々の実施形態において、核酸は、以下を含むポリペプチドをコードする:
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列
(c)配列番号3で表されるアミノ酸配列
(d)配列番号4で表されるアミノ酸配列
(e)配列番号5で表されるアミノ酸配列
(f)配列番号6で表されるアミノ酸配列
(g)配列番号7で表されるアミノ酸配列
(h)配列番号8で表されるアミノ酸配列
(i)配列番号2、3および4で表されるアミノ酸配列
(j)配列番号6、7および8で表されるアミノ酸配列
(k)配列番号2、3、4、6、7および8で表されるアミノ酸配列
(l)配列番号13で表されるアミノ酸配列
(m)配列番号14で表されるアミノ酸配列
(n)配列番号1で表されるアミノ酸配列および配列番号5で表されるアミノ酸配列。
【0100】
一実施形態において、DCR-2抗体、DCR-2抗体の一部、またはDCR-2抗体の抗原結合断片を含むポリペプチドをコードする核酸は、特定の宿主における発現のために最適化されたコドンである。例えば、配列番号11によって表される核酸配列は、抗TNF IgG1のヒト重鎖定常領域に連結されたDCR-2の重鎖可変領域、すなわちCHO細胞における発現のために最適化されたコドンをコードする核酸である。配列番号12で表される核酸配列は、CHO細胞における発現のために最適化されたコドンである抗TNFカッパ鎖のヒト軽鎖定常領域に連結されたDCR-2の軽鎖可変領域をコードする核酸である。核酸のコドン最適化のための方法は当該分野で公知であり、そして例えば、Raab et al. (2010) Systems and Synthetic Biology, 4(3),pp. 215-225; Graf et al. (2004) Methods Mol. Med. 94:197-210に記載されている。
【0101】
典型的には、DCR-2抗体またはその抗原結合断片を含むポリペプチドをコードする核酸は、抗体またはその抗原結合断片の発現のための1つ以上の調節配列に作動可能に連結される。「調節配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、内、または下流(3’非コード配列)に位置し、関連するコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、または翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列である。調節配列は当該分野で公知であり、そして例えば、転写調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、翻訳リーダー配列、イントロン、およびポリアデニル化シグナル配列)を含み得る。「作動可能に連結される」という表現は、コード配列の発現に影響を及ぼすような様式での調節配列の配置を指す。いくつかの実施形態では、例えば、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、キャップ構造、ポリA尾部、翻訳開始部位、シグナルペプチドをコードする配列、翻訳エンハンサー、転写エンハンサー、翻訳ターミネーター、転写ターミネーター、転写プロモーター、および/またはタンパク質の単離または細胞の特定の部分に対するタンパク質の標的化のための融合ペプチドをコードする核酸配列、を含む調節配列または他の核酸配列は、タンパク質をコードする核酸と作動可能に連結され得る(例えば、"Molecular Cloning: A Laboratory Manual", Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory, 3rd edition (2001)を参照)。利用される宿主細胞および/またはベクターに依存して、当該分野で公知の多数の適切な調節エレメントのいずれか1つが使用され得る。「コード配列」は特定のアミノ酸配列、例えば、抗体またはその抗原結合断片をコードするDNAまたはRNA配列を指す。コード配列は、コード配列中の核酸が異なる遺伝子由来であるという点で、キメラコード配列であってもよい。例えば、キメラ人工T細胞受容体は、scFvをコードするコード配列を、T細胞膜貫通およびエンドドメイン(例えば、CD3-ゼータ膜貫通およびエンドドメイン)をコードするコード配列に連結することによって調製され得る。コード配列は、典型的には、プロモーターに作動可能に連結される。プロモーターは、特定の状態下で、RNAポリメラーゼを結合すること、およびプロモーターから通常下流(3’方向)に位置するコード配列の転写を開始することが可能なDNA領域である。コード配列はまた、終結シグナルに作動可能に連結され得る。典型的には、コード配列は、発現ベクターにおけるコード配列の発現を容易にするために、調節配列に作動可能に連結される。発現ベクターはまた、コード配列の適切な翻訳に必要な配列を含み得る。発現ベクター中のコード配列は、構成的プロモーター、または特定の細胞型においてのみ転写を開始するか、もしくは宿主細胞がいくつかの特定の刺激に曝露される場合に転写を開始する調節可能なプロモーターの制御下にあり得る。例えば、抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸を含む発現ベクターにおいて、コード配列は、種々の宿主細胞においてコード配列を発現するかまたは種々の宿主細胞において誘導可能であるプロモーターに、作動可能に連結され得る。種々の宿主細胞で抗体またはその抗原結合断片の発現を容易にするために使用される調節配列は、当該分野で公知である。
【0102】
本明細書で使用される、核酸配列の「発現」は、コード配列によってコードされるポリペプチドを産生するためのコード配列を含む核酸配列の転写および翻訳をいう。
【0103】
細菌細胞における発現に適したプロモーターには、例えば、lacz、Ipp、温度感受性LまたはRプロモーター、T7、T3、SP6、または半人工プロモーター(例えば、IPTG誘導性tacプロモーターまたはlacUV5プロモーター)が含まれる。酵母細胞(例えば、Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiaeおよびS. pombeなど)における発現に適切なプロモーターとしては、例えば、以下の遺伝子ADH1、GAL1、GAL4、CUP1、PHO5、RPR1またはTEF1由来のプロモーターが挙げられる。哺乳動物細胞における発現に適切なプロモーターとしては例えば、レトロウイルスLTRエレメント、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、CMV IE(サイトメガロウイルス即時初期)プロモーター、EF1プロモーター(ヒト伸長因子1由来)、EM7プロモーター、UbCプロモーター(ヒトユビキチンC由来)からなる群より選択されるプロモーターが挙げられる。有用な哺乳動物宿主細胞株の例としては、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CVl株、ヒト胚腎臓株(HEK-293細胞)、仔ハムスター腎臓細胞(BHK)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、アフリカ緑色サル腎臓細胞(VERO-76)、または骨髄腫細胞(例えば、NS/0細胞)が挙げられる。
【0104】
DCR-2抗体またはその抗原結合断片を含むポリペプチドをコードする核酸は代表的にはベクター(例えば、発現ベクター)中の宿主細胞に導入される。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、試験管内、生体外または生体内のいずれかで、核酸を宿主細胞に移入するための任意のメカニズムを意味する。ベクターは、Promega、StratageneまたはInVitrogenなどの会社から商業的に入手することができる。ベクターはまた、例えば、Sambrook et al. (Cold Spring Harbor Laboratory, 3rd edition (2001))に概説されるように、標準的な分子生物学技術を使用して、個々に構築または改変され得る。ベクターは、タンパク質形質導入ドメインを含むポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る、所望のエレメントをコードする任意の数のヌクレオチド配列を含み得る。所望のエレメントをコードするこのようなヌクレオチド配列は例えば、転写プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーター、翻訳開始剤、翻訳、ターミネーター、リボソーム結合部位、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、キャップ構造、ポリA尾部、複製起点、検出可能なマーカー、親和性タグ、シグナルまたは標的ペプチドが挙げられる。適当なベクターの選択および/または構築は、例えば、細胞または宿主細胞の型、所望の転写および翻訳制御エレメントの型、所望のタンパク質の単離の手段、染色体組込みが所望されるかどうか、所望の選択過程の型を含むいくつかの因子に依存し得ることが理解されるであろう。
【0105】
適切なベクターとしては実施例に記載されるベクター、pCELF、pCELP、pcDNA3、pMC1neo、pXT1、pSG5、EBO-pSV2、pBPV-1、pBPV-MMTneo、pRSVgpt、pRSV2-dhfr、pUCTag、IZD35、pHB-ApR-1-neo、EBO-pcD-XN、pcDNA1/amp、pcDNA1/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2dhfr、pTk2、pMSG、pSVT7、pKoneoおよびpHygが挙げられるが、これらに限定されない。このようなベクターは、宿主細胞における自律複製のための複製起点、選択マーカー、多数の有用な制限酵素部位、高コピー数の可能性、および特定の細胞型において活性なプロモーターを含み得る。
【0106】
適当な宿主細胞は、発現される核酸、核酸に作動可能に連結された制御エレメント、および単離されたタンパク質の目的に依存する。適当な宿主細胞としては、哺乳動物細胞(例えば、CHO、HEK-293、仔ハムスター腎臓細胞(BHK)、VERO-76および骨髄腫細胞)が挙げられ得る。哺乳動物細胞における発現のために、適切なプロモーターは当該分野で公知であり、そして例えば、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、CMVプロモーター、EF1プロモーター、およびEM7プロモーターを含む。
【0107】
核酸がCART細胞の産生のためにT細胞において発現される実施形態において、宿主細胞はT細胞であり得る。CARTのためのT細胞は当該分野で公知の方法(例えば、白血球除去)を使用して単離され得る。CART細胞を調製するための方法は当該分野で公知であり、Shannon et al. (2015) Blood, 125(26): 4017-4023; O’Hear et al. (2015) Haematologica 100(3): 336-344に記載される。
【0108】
発現ベクターを産生するための方法、例えば、発現構築物/ベクターへのクローニングは、当該分野で公知であり、および/またはAusubel et al., (In: Current Protocols in Molecular Biology. Wiley Interscience, ISBN 047 150338, 1987)、およびSambrook et al., (In: Molecular Cloning: Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Third Edition 2001)およびUS7270969に記載されている。
【0109】
発現ベクターは、当該分野で公知の任意の方法を使用して、適当な宿主細胞に導入され得る。適切な方法には、数ある中でも例えば、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランによって媒介されるトランスフェクション、リポフェクタミン(Gibco、MD、USA)および/またはセルフェクチン(Gibco、MD、USA)を使用することなどによるリポソームによって媒介されるトランスフェクション、PEG媒介DNA取り込み、エレクトロポレーション、およびDNA被覆タングステンまたは金粒子(Agracetus Inc、WI、USA)などを用いたパーティクルボンバードメントなどが挙げられる。
【0110】
次に、DCR-2抗体またはその抗原結合断片を発現させるために使用される細胞を、DCR-2抗体またはその抗原結合断片を発現させるために当技術分野で知られている条件下で培養することができる。
【0111】
本明細書中に記載される抗体、またはその抗原結合断片、免疫複合体、核酸、および細胞は、薬学的組成物として処方され得る。したがって、さらなる態様は、
(a)本明細書中に記載される、単離されたDCR-2抗体またはその抗原結合断片
(b)治療または診断部分のような部分に結合した、本明細書中に記載される、単離されたDCR-2抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体
(c)本明細書中に記載される、DCR-2抗体を含むポリペプチドをコードする核酸、またはDCR-2抗体の一部、またはDCR-2抗体の抗原結合断片を含む細胞、または
(d)本明細書中に記載されるDCR-2抗体、またはその一部、またはDCR-2抗体の抗原結合断片を含むポリペプチドをコードする核酸、および
薬学的に許容可能な担体
を含む薬学的組成物を提供する。
【0112】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物が治療部分および/または診断部分に結合した、モノクローナル抗体UP-D2またはその抗原結合断片、またはUP-D2を含む免疫複合体またはその抗原結合断片をさらに含む。
【0113】
種々の実施形態では、上記組成物は以下を含む:
(a)本明細書中に記載される、DCR-2抗体またはその抗原結合断片
(b)本明細書中に記載される、DCR-2抗体またはその抗原結合断片およびUP-D2抗体またはその抗原結合断片
(c)本明細書に記載される、DCR-2抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体
(d)本明細書中に記載される、DCR-2抗体またはその抗原結合断片、およびUP-D2抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体
(e)本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片、およびUP-D2抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体、または
(f)または本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体、およびUP-D2抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体、およびその抗原結合断片、ならびに
薬学的に許容可能な担体。
【0114】
「薬学的に許容可能な担体」とは、当該組成物の他の成分と適合性があり、対象にとって有害ではないことを意味する。組成物は以下に記載されるような他の治療剤、例えば、従来の液体媒体または希釈剤、ならびに医薬製剤の分野で周知の技術(例えば、Remington: the Science and Practice of Pharmacy、21st Ed、2005、Lippincott Williams & Wilkinsを参照)に従って、所望の投与様式に適切な種類の薬学的添加剤(例えば、賦形剤、結合剤、防腐剤、安定剤、香料など)を含み得る。
【0115】
薬学的組成物は、典型的には、無菌注射用水性懸濁液の形態である。この懸濁液は公知技術に従って製剤化することができ、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した活性物質を含有する。このような賦形剤には懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴム)を含み得、分散剤または湿潤剤は、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)または脂肪酸とのアルキレンオキシドの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)または長鎖脂肪族アルコールとのエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)または脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとのエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、または脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルとのエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエート)であり得る。水性懸濁液はまた、1種以上の防腐剤(例えばエチル、またはn-プロピル、P-ヒドロキシベンゾエート)、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤、および1種以上の甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン)を含み得る。
【0116】
無菌注射用調整剤はまた、無毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒、例えば1,3-ブタンジオール中の水溶液中の無菌注射用溶液または懸濁液であってもよい。使用してよい許容可能な媒体及び溶媒に包含されるものは水、リンゲル液及び生理食塩水である。さらに、無菌の固定油を、溶媒または懸濁媒として常用できる。この目的のためには、任意の銘柄の固定油を使用してよく、例えば合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドが挙げられる。加えて、オレイン酸のような脂肪酸は、注射用製剤の調製において使用される。
【0117】
実施例に記載されるように、本発明者らは、DCR-2が、AMLおよび白血病幹細胞を含むCD300fを発現する細胞に結合することを見出した。DCR-2の使用は、AMLのような骨髄性白血病の文脈において記載されているが、本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片もまた、CD300f発現に関連する他の状態を治療するために使用され得ることを、当業者には理解されたい。
【0118】
従って、本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片は、CD300f発現に関連する状態に罹患している対象を治療するために使用され得る。従って、さらなる態様は、治療を必要とする対象に、CD300fに特異的に結合する有効量の抗体またはその抗原結合断片、またはその免疫複合体を投与する工程を含む、CD300f発現に関連する状態(例えば、AML)を治療する方法を提供し、
ここで、上記抗体とその抗原結合断片は以下を含む:
(a)以下を含む重鎖可変領域:
(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、70%、例えば少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列、および/または
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)、および/または
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一、70%、例えば少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列、および/または
(ii)配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域2(CDR2)、および/または配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域3(CDR3)。
【0119】
典型的には、上記状態は骨髄性白血病である。典型的には、骨髄性白血病はAMLである。
【0120】
一実施形態では、上記方法は、対象に、一部分、典型的には治療部分に連結したモノクローナル抗体UP-D2またはその抗原結合断片または誘導体、またはUP-D2またはその抗原結合断片または誘導体を含む免疫複合体を投与することを、さらに含む。
【0121】
種々の実施形態では、治療を必要とする対象に、
(a)本明細書中に記載されるDCR-2抗体、またはその抗原結合断片
(b)本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片、および本明細書中に記載されるUP-D2抗体またはその抗原結合断片
(c)治療部分に結合した、本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体
(d)本明細書中に記載されるDCR-2抗体を含むポリペプチドをコードする核酸、またはその一部、またはその抗原結合断片を含む細胞
(e)本明細書中に記載される、治療部分に結合したDCR-2抗体またはその抗原結合断片および本明細書中に記載されるUP-D2抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体、または
(f)本明細書中に記載される、治療部分に結合したDCR-2抗体またはその抗原結合断片および本明細書中に記載される、治療部分に結合したUP-D2抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体
を有効量投与することを含む、AMLなどのCD300f発現に関連する状態を治療する方法が提供される。
【0122】
典型的には、抗体、その抗原結合断片は、本明細書中に記載される薬学的に許容可能な組成物中で投与される。
【0123】
薬学的組成物は、任意の適切な手段によって、典型的には非経口的に、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、(経)皮内、または槽内注射または注入技術によって(例えば、無菌注射用溶液または懸濁液として)、非毒性の薬学的に許容可能な媒体または希釈剤を含む投薬単位製剤中で投与され得る。抗体またはその抗原結合断片は、例えば、即時放出または徐放性に適した形態で投与することができる。即時放出または徐放性は、化合物を含む適切な薬学的組成物の使用によって、特に徐放性の場合には皮下注入または浸透圧ポンプなどの装置の使用によって、達成され得る。
【0124】
投与のための薬学的組成物は、好都合には投薬単位形態で提供され得、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。一般に、薬学的組成物は、化合物を液体担体と均一かつ緊密に会合させることによって調製される。薬学的組成物において、活性化合物は、疾患のプロセスまたは状態に所望の効果をもたらすのに十分な量で含まれる。本明細書で使用する場合、「組成物」という用語は、特定の量の特定の成分を含む生成物、ならびに特定の量の特定の成分の組み合わせから直接または間接的に生じる任意の生成物を包含することを意図する。
【0125】
一般に、「治療する」という用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得るために、対象、組織または細胞に影響を及ぼすことを意味し、(a)疾患の要因となり得るが、それを有するとまだ診断されていない対象において疾患が発生するのを予防すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること、または(c)疾患の症状を軽減または改善すること、すなわち、疾患の症状の回復であることを含む。一実施形態では、処置はレシピエント被験体において、CD300f発現細胞(例えば、AMLおよび/またはLSC細胞)の数を減少させる結果を達成する。
【0126】
「対象」という用語は、本方法による治療を必要とする疾患を有する任意の動物を表す。霊長類(例えば、ヒト)に加えて、種々の他の哺乳類が、本発明の方法を使用して処置され得る。例えば、限定するものではないが、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラットまたは他のウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類もしくはネズミ種を含む哺乳動物を治療することができる。特に犬は多発性骨髄腫を発症することが知られている。
【0127】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床医によって求められている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発する抗体、その抗原結合断片または免疫複合体の量を指す。
【0128】
AMLの治療または予防において、適切な用量レベルは一般に、患者の体重kg当たり約0.01~50mg/日であり、これは、単回または複数回用量で投与され得る。好ましくは、投与量が約0.1~約25mg/kg/日、より好ましくは約0.5~約10mg/kg/日である。適切な用量レベルは、約0.01~25mg/kg/日、約0.05~10mg/kg/日、または約0.1~5mg/kg/日であり得る。この範囲内で、投与量は、0.05~0.5、0.5~5またはmg/kg/日であり得る。
【0129】
任意の特定の患者のための特定の用量レベルおよび投薬頻度は、変化され得、そして使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、一般的な健康、性別、食事、投与の様式および時間、排泄速度、薬物組み合わせ、特定の状態の重症度、ならびに治療を受ける宿主を含む種々の因子に依存することが理解される。
【0130】
また、AMLなどのCD300f発現に関連する状態の治療のための、本明細書に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片を含むキットであって、典型的には、抗体またはその抗原結合断片で充填された1つ以上の容器を含むキットもまた、本明細書に開示される。種々の実施形態では、上記キットは以下を含む:
(a)本明細書中に記載されるDCR-2抗体、またはその抗原結合断片
(b)本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片、および本明細書中に記載されるUP-D2抗体またはその抗原結合断片
(c)本明細書中に記載される、治療部分に結合したDCR-2抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体
(d)本明細書中に記載されるDCR-2抗体、またはその一部、またはその抗原結合断片を含むポリペプチドをコードする核酸を含む細胞
(e)本明細書中に記載される、治療部分に結合したDCR-2抗体またはその抗原結合断片および本明細書中に記載されるUP-D2抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体、または
(f)本明細書中に記載される、治療部分に結合したDCR-2抗体またはその抗原結合断片および本明細書中に記載される、治療部分に結合したUP-D2抗体またはその抗原結合断片を含む免疫複合体。
【0131】
別の実施形態では、キットが本明細書に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片を、1つ以上の容器中に含み、そしてCD300f発現に関連する状態(例えば、AML)の処置に有用な1つ以上の他の治療剤を含む。別の実施形態では、キットが本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片を、1つ以上の容器中に、および1つ以上の他の診断剤中に含む。さらなる実施形態では、CD300f発現に関連する状態(例えば、AML)の治療のための、本明細書中に記載されるDCR-2抗体またはその抗原結合断片、およびUP-D2抗体またはその抗原結合断片もしくは誘導体を含むキットを提供する。
【0132】
本明細書で使用される用語は特定の実施形態のみを説明するためのものであり、添付の限定された特許請求の範囲のみに本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は文脈が明確に指定することを示さない限り、複数形の言及を含む。したがって、例えば、「抗体」への言及は、複数の類似した抗体を含む。特記しない限り、本明細書で使用する専門用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0133】
本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の材料および方法を使用して、本発明を実施または試験することができるが、本明細書に記載するのは好ましい材料および方法である。
【0134】
本明細書で言及される全ての刊行物は、当該刊行物に報告され、本発明に関連して使用され得るプロトコルおよび試薬を説明および開示する目的で引用される。本明細書のいかなる内容も、先の発明を根拠にして、本発明が、参照した開示に先行する権利がないことを認めると解釈するものではない。
【0135】
本明細書で言及される全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。当業者であれば、広く説明されている本発明の意図または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されているように、本発明に対して多数の変形および/または修正を行うことができることを理解されたい。したがって、本実施形態はすべての点で例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。
【0136】
以下の請求項および本発明の先行する説明において、文脈が明示的な言語または必要な含意のために別途必要とする場合を除いて、「備える(comprise)」という用語または「備える(comprises)」もしくは「備えている(comprising)」などの変形は包括的な意味で、すなわち、述べられた特徴の存在を特定するために使用されるが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除するものではない。
【0137】
本発明の性質をより明確に理解できるように例示するために、以下の実施例を提供するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0138】
〔方法〕
[抗体]
モノクローナル抗体DCR-2(IgG1、κ)は、CD300f Igドメインの組換え体で形質転換させ、組換えタンパク質CD300f-Fc(Sino Biologicals)で発現量を増加させた、CHO形質転換を発現するCD300fで免疫を与えたマウスから収集された脾細胞を使用して生成した。また、当該脾細胞をNS-1骨髄腫細胞株に融合させた。
【0139】
DCR-2を発現する、実験産物であるハイブリドーマを、2016年9月27日に、ブダペスト条約の下、セルバンクオーストラリア(CellBank Australia, 214 Hawkesbury Rd., Westmead, NSW 2145, Australia)へ寄託し、アクセッション番号CBA20160029に指定した。
【0140】
本研究で使用した市販のCD300f抗体はモノクローナル抗体UP-D1(マウスIgG1、κ、EF660共役、Jomar Life Research, Victoria, Australia)、UP-D2(マウスIgG1、κ、PE共役および精製、Biolegend, CA, USA)および234903(ラットIgG2b、R&D Systems, MN, USA)であり、使用したポリクローナル抗体は、ウサギ抗体CLM-1(CLM-1、N-端末63-92、Abcam, Cambridge, UK)、ヤギ抗ヒトLMIR3(gLMIR3、R&D Systems, MN, USA)である。
【0141】
以下の抗体も使用した:CD45 V500(HI30クローン)、CD34 PE-CY7(581クローン)、CD38 V450(HB7クローン)およびBD Biosciencesから得た細胞の生育量を決定するためのヨウ化プロピジウム、CD141(PE)およびCD304(APC)(Miltenyi Biotech、R&D Systems)。
【0142】
[細胞株]
骨髄由来細胞株、HEL、HL-60、U937およびTHP-1(全てATCC由来)を、200mM GlutaMAX(ThermoFisher)、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(ThermoFisher)および10%熱不活化ウシ胎児血清を含む完全RPMI中で培養した。
【0143】
[ヒト検体]
静脈および骨髄サンプルを、インフォームドコンセントを行ったうえで、Concord Repatriation General Hospital(CRGH)の血液科(Department of Hematology)を通して募集した健康なボランティアから得た。単核細胞を、製造業者(GE Healthcare Life Sciences)の推奨設定を使用して、Ficoll-Paque密度勾配遠心分離を使用して調製した。過剰量のAML診断サンプルから単核芽球を調製した。表2は、AML試料の特性をまとめたものである。CRGH Human Ethics Committeeによりすべての手順は承認されている。
【0144】
【表2】
【0145】
【0146】
CD14+単球を、CD14MAB(M5E2クローン、BD Biosciences)で標識したPBMCから直接的に結合したFITCで精製し、BDインフラックス上でのサイトメトリーソーティングによって精製した。AMLサンプルは、BD Biosciences提供による以下のmABで表現型を決定した。CD45-v500(HI30クローン)、CD34-PE-CY7(581クローン)、CD-38V450(HB7クローン)およびCD33-PE(WM53クローン)。結果をFlowJo(Treestar)で分析した。最初にPI非生存細胞をグループとして分けた後、造血幹細胞を系統-CD45dimCD34+CD38-CD45RA-CD90+として同定した。芽球はCD45dimSSClowとして同定された。白血病幹細胞濃縮CD34+CD38画分をこのグループから同定した。
【0147】
その後ヨウ化プロピジウム(PI)を用いて生存率を決定した。AML芽球を、CD45-V500(BD Biosciences)で標識された末梢血または骨髄AMLサンプルから、SSCLoCD45dimグループに対してのサイトメトリーソーティングによって精製した。
【0148】
[CD300f形質転換体の生成]
リーダー配列の後に位置するc-mycエピトープを含む全長CD300f cDNA(アイソフォーム1)を、pBudベクター上のCMVプロモーターにクローニングした。CHO細胞を、Lipofectamine 3000を用いて生成物で形質転換し、ゼオシンで選別して安定な形質転換体を生成した。さらに、表面上にc-mycを発現する細胞をBDインフラックス上で選別した。CD300a、CD300fL4、CD300fS4も同様にCHO細胞で発現させた。全ての生成物の配列を、オーストラリアリサーチゲノムファシリティー(Australian Research Genome Facility)によって検証した。
【0149】
[フローサイトメトリー]
細胞を、異なるグループに区別するために、直接結合する特異的抗体またはアイソタイプ対照を用いて、標準的な手順に従って染色した。簡潔には、細胞を、PBS/0.5% BSAで希釈したmABと共に4℃で20分間インキュベートした。標識されていないマウス抗体を、種特異的Alexafluor(AF)488 F(ab)試薬(ヤギ抗マウス、ヤギ抗ラットまたはウサギ抗ヤギ、またはロバ抗ウサギ、Invitrogen)との2回目のインキュベーションで検出した。細胞の生死をそれぞれ、ヨウ化プロピジウム-試験により同定した。細胞の分析は、Accuri C6、Fortessa LSRまたはInflux(共にBD Biosciences)のいずれかで行った。
【0150】
ブロッキング実験は、0.5%BSA/PBS溶液中で、氷上で30分間、10のCD300f-CHO細胞を50%飽和濃度のブロッキング抗体と共に前培養することによって行われた。その後細胞を0.5%BSA/PBSで洗浄し、直接標識した試験抗体とインキュベートした。実験は3回繰り返された。パーセント結合度は、幾何平均蛍光強度(geometric mean fluorescence intensity)(MFI)を用いた計算式[ブロックされた抗体のMFI-ブロックされていないアイソタイプのMFI]/[ブロックされていない抗体のMFI-アイソタイプ対照]×100により決定された。
【0151】
[ELISA]
CD300f Igドメインに対する各抗体の特異性をELISAにより確認した。Maxisorpプレートを、炭酸緩衝液中のヤギ抗ヒトIg Fc(Sigma)で被覆し、5%BSA/PBSで阻害した後、CD300f-Ig、CD300b-Igまたは制御組換え融合タンパク質(Sino)を特定した。次いで、各抗体ならびに適切な実験対象およびアイソタイプ対照を、特定した融合タンパク質(またはコントロール)と共にインキュベートし、そしてそれらの結合を、適切なHRP標識二次抗体およびOPDを用いて検出した。
【0152】
[免疫沈降およびウェスタンブロット]
免疫沈降のために、2.5×10の細胞をスルホ-NHS-ビオチン(ThermoFisher)溶解物でビオチン化した後、M-PER緩衝液中で溶解した。タンパク質を、製造業者(ThermoFisher)の推奨設定に従って、タンパク質Gダイナビーズに結合した抗体で免疫沈降させた。免疫沈降タンパク質またはM-PER溶解物を、(還元条件のために)酸化防止剤を含むまたは含まない4~12%Bis-Tris Plusゲル(Invitrogen)上で分離し、iBlotシステム(Thermo)を用いてニトロセルロースに移した。膜を5%BSA/TTBSでブロックし、一次抗体、続いてHRP結合種特異的抗体とインキュベートし、増強化学発光(ECL)試薬(Clarity ECL kit, Bio Rad)で検出し、BioRad Chemidoc imaging systemを用いて分析した。ビオチン化タンパク質は、ストレプアビジン-HRPおよびECLで検出した。
【0153】
[遺伝子発現解析]
新たに精製した細胞グループまたは指数増殖期に増殖する細胞からの全RNAを、TRIzol試薬を製造業者(Thermo Fisher)の指示書に従って調製した。抽出したmRNAの完全性および量を、RNA 6000 Nano Bioanalyzer(Agilent Technologies)を用いて評価した。結果、使用した全てのRNAは、8.8を超えるRNA完全性数(RIN)を有していた。cDNAについては、100ngのDNase I(Thermo Fisher)処理RNAを、SuperScript IIIキット(Thermo Fisher)を用いてcDNAに逆転写した。加水分解プローブを、スプライス変異体を検出するように設計し、BLASTによる配列確認で特異性についてチェックした。300mMプライマー、300mM Fam BHQuencher標識プローブ(EBiosearch)および1xFast TAQMAN(登録商標)Master Mix(Thermo Fisher)を用いてcDNA上で遺伝子発現を行った。7500 Fast Real-time PCR system(Thermo Fisher)で、cDNAの重複サンプルを増幅した。スプライスバリアント増幅のCT値をUBC内因性遺伝子に対して正規化し、次式を用いてCD14cDNA基準試料に対する倍数変化として提示した。倍数変化=2-ΔΔCT(11)。全てのプライマー対のプライマー効率は98%より大きかった。プライマーおよびプローブ配列は、以下の通りである。
L5-L1(アイソフォーム1、3、4、7を検出)
5’TACCTGCTCCTCTTCTG(配列番号16);
L5-R1:5’CCAAGCCATTCACTGTT(配列番号17);
L5-P1:5’TCTCAGGCTACTCCATTGTCACACACTCAFAM-BHQ(配列番号18);
L5-SV1-1(アイソフォーム1、4、5を検出):5’CTTGGGTGCTGAGGAT(配列番号19);
L5-SV1-2:5’AGGTGGCTACTGAGGT(配列番号20);
L5-SV1-P:5’CAGGAACCGACGACTACTGCAACATGFAM-BHQ(配列番号21);
X5-3’-FSP(検出アイソフォーム2:5’CACCAGTCACCAAGAAAACTAG(配列版号22);
X5-3’-RSP:5’CATCCCCCGGCTGCTGTTGTC(配列番号23);
X5-3’-プローブ:5’CCAACTCTGACGCCACCAFAM-BHQ(配列番号24);
X4-3’-FSP(アイソフォーム1、4、5を検出):5’GTGGCCGCCTCACTTG(配列番号25);
X4-3’-RSP:5’GGGTCAGGTCTGCATAGCA(配列番号26);
X4-3’-プローブ:5’TTGGAGGATGATGAAGTACCAGCAGAFAM-BHQ(配列番号27);
X3-3’-FSP(アイソフォーム3を検出):5’GTCACACCAAGAAAACTAGCA(配列番号28);
X3-3’-RSP:5’GGAACCCTCACTCTGTTGTC(配列番号29);
X3-3’-プローブ:5’CCAACTCTGACGCCACCAFAM-BHQ (配列番号30);
X2-5’-FSP(アイソフォーム2、5、6を検出):5’GCCTCCCATCCAGCCATCTG(配列番号31);
X2-5’-RSP:5’GGAGTAGCCTTGACTTAGCA(配列番号32);
X2-5’-プローブ:5’ATGTGGCTGCCTCAGCTCGACCTOA(配列番号33);
UBC-F:5’TGAAGAAGAATCCATCAAGGAATTGA(配列番号34);
UBC-R:5’CAACAGGACCTGACTGAACTG(配列番号35);および
UBC-プローブ5’TGATCTGCACGGGACCCCTCCAFAM-BHQ(配列番号36)。
【0154】
全長の配列を増幅およびクローニングするために使用したプライマーは、以下のとおりである。
【0155】
CD300f_For_164:GCAGAAGCTTGGTACCTGTAGTTTGTTCC(配列番号37)
CD300f Rev:TATCGATTCGATTAGGAGGCCTGCTGTAGT(配列番号38)およびX2-5’-FSP。
【0156】
[細胞毒性に依存する抗体]
C57BL/6脾細胞を、100U/mlのヒトIL-2を含有する完全RPMI中で、指示されたエフェクター:標的の比でカルセイン標識HL-60細胞と共に培養した。培養物は、20μg/mlのCD300fまたはアイソタイプmABを含んでいた。死んだHL-60細胞(DAPI+カルセイン-)の割合を、フローサイトメトリーによって20時間培養した後に決定した。
【0157】
[CD300fの内部移行]
抗体の内部移行をフローサイトメトリーにより測定した。細胞をCD300f mAbで30分間氷上にて標識した後、37℃(またはコントロールとして氷)でインキュベートし、次いでPBS/0.5% BSA/0.02%アジ化物中で洗浄した。AF488またはAF647結合ヤギ抗マウスIgG(Fab')2(Thermo Scientific)を用いて残存抗体を検出した。内部移行は、アジ化物を用いて氷上の37℃/幾何MFI[mAb-アイソタイプにより標識]での幾何MFI[mAb-アイソタイプにより標識]として測定した。細胞表面のAF488に対する直接標識された共役内部移行の比率は、細胞表面上で内在化したCD300fの%の指標となった。共焦点顕微鏡を用いた検査のために、細胞を精製したgLMIR3抗体と共に4℃で1時間インキュベートし、次いで洗浄して余分な抗体を除去した後、37℃でインキュベートした。細胞をShandonサイトスピン中の顕微鏡スライド上で遠心分離し、アセトン中で固定し、次いでウサギ抗ヤギIgG-AF488で染色した。遠心し、標識前に固定した細胞であるコントロールを、免疫内在化前の膜染色を実証するために含めた。
【0158】
Leica TCS SP8 X共焦点顕微鏡および×63油浸対物レンズを用いて細胞を可視化した。画像をImageJソフトウェア(National Institutes of Health)で処理した。
【0159】
[DCR-2の配列決定]
全mRNAを、DCR2を発現するハイブリドーマ(アクセッション番号CBA20160029)から、TRIzol方を使用して、製造業者の指示に従って単離し、単離したmRNAをcDNAに逆転写した。得られたcDNAを、Krebber et al. Reliable cloning of functional antibody variable domains from hybridomas and spleen cell repertoires employing a reengineered phage display system. 1997. J Immunol Methods. 201: 35に記載される、プライマーを用いたV領域のPCR増幅のための鋳型として使用した。これらのプライマーは、DCR-2 cDNAからのV配列の増幅を可能にする。
【0160】
領域の配列を得るために、精製DCR-2モノクローナル抗体タンパク質をトリプシン消化し、続いて質量分光光度分析を行った。質量分析を用いて同定されたペプチドから、MASCOTを用いてDCR-2のV配列のFR1領域に対応するペプチドEVKLVESGGLVQPGGSLR(配列番号39)を同定した。したがって、このペプチドは、Essono, S. et al. A general method allowing the design of oligonucleotide primers to amplify the variable regions from immunoglobulin cDNA. 2003. J Immunol Methods. 279: 251により公開されているペプチドを基にしたプライマーの調整の基礎部分として使用でき、これにより配列が増幅されると予想された。本発明者らは、これらのプライマーに基づいてDCR-2 cDNAからV領域を増幅することに成功した。
【0161】
DCR-2のV領域を増幅するために使用したプライマーセットは、以下の通りであった:
5'-GAGGTGAAGCTGRTGGARTCTGG-3'(配列番号40)
(ここで、RはGまたはAである)。
【0162】
およびVPCR増幅産物を、ベクターpCR-BLUNT(Thermo Fisher Scientific)にクローニングし、そして核酸配列は、Westmead Institute for Medical Researchの、Australian Genome Reseach Facility(AGRF)におけるサンガー法シーケンシングによって決定した。V領域のアミノ酸配列を配列番号1に示す。増幅されたV領域のアミノ酸配列を配列番号5に示す。
【0163】
DCR-2重鎖結合領域は、配列GQGTLVTVを有する。
【0164】
定常領域と重複するDCR-2軽鎖配列は、配列TKLEIKRを有する。
【0165】
およびV配列を用いて、ヒト抗TNPκおよび抗TNP重IgG1重鎖の配列とコンピュータ内での組み合わせによりキメラmAb配列を生成した。ExpiCHO細胞(ThermoFisher Scientific)での発現のためのコドン最適化を、GeneArtウェブサイトの、GeneOptimizer(登録商標)sequence optimizationを介して完了させた(ThermoFisher Scientific)(Raab et al. (2010) Systems and Synthetic Biology, 4(3),pp. 215-225; Graf et al. (2004) Methods Mol. Med. 94:197-210)。DCR-2のV領域およびヒト抗TNP重IgG1重鎖の定常領域のコドン最適化組合せのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号11および13に示す。
【0166】
DCR-2のV領域およびヒト抗TNPκ鎖の定常領域のコドン最適化組合せのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号12および14に示す。
【0167】
〔結果〕
[CD300f抗体パネルの有効化]
本発明者らは開示されている方法に従って、DCR-2と比較するための抗体パネルを作成した。各抗体は、アイソフォーム1(アクセッション番号NP_620587)をコードする構築物から転写されたCHO形質転換細胞表面CD300fに結合させた(図1A)。CD300ファミリーは、白血球上に発現される独立した遺伝子(CD300a、CD300b、CD300c、CD300d、CD300e)によってコードされる他の分子を含む。これらは、IgドメインにおいてCD300fとよく似たアミノ酸配列を持つので、他のCD300ファミリーメンバーに対するDCR-2および他のCD300f抗体の結合度を決定した。最初に、他の阻害ファミリーメンバーであるCD300aについて、CHO形質転換細胞表面への結合度を調べた。DCR-2も、パネル中の他の抗体も、CD300aトランスフェクト細胞に結合しなかった(データは示さず)。CD300fおよびCD300b Ig様ドメインは75%同一であるので、本発明者らは、関連する種類それぞれのコントロールと比較して、CD300f Ig様ドメイン(図1B)およびCD300b Ig様ドメイン(図1C)に対する各抗体のELISAにおける結合度を評価した。DCR―2、UP―D1、UP―D2および234903mAbはCD300f Ig様ドメインに特異的であったが、CLM―1ペプチド抗体およびgLMIR3抗体は両方のCD300b関連分子のIgドメインに結合した。
【0168】
THP-1のみに結合するCLM-1抗体を除いたそれぞれの抗体は、4つのCD300fCD300b骨髄由来細胞株(Hel、HL-60、THP-1およびU937)への結合度を試験した(図2)。フローサイトメトリーMFI比(飽和状態における特定mAbの幾何MFI/対応種アイソタイプの幾何MFI)を比較すると、各mAbについて異なるパターンが観察された。UP-D1はU937、HL-60、およびTHP-1に対する高い幾何MFI結合を有していたが、HELに対する結合比率は低かった(図2)。234903クローンおよびDCR-2mAbは、U937に対する高い幾何MFI比率、HL-60およびTHP-1に対する低い結合比率、ならびにHELに対するさらに低い結合比率で、互いに同様の結合パターンを有した。マウスUP-D2クローニングおよびgLMIR3ポリクローナルは、同様の幾何MFIパターンを示した。このデータは、少なくとも4つのCD300fエピトープの存在が抗体パネルによって認識されることを示唆した。
【0169】
DCR-2および他の抗体を、健康なPBMC中のD300f単球群に対して試験した(図3A)。4つのmAbおよびgLMIR3抗体は、CD14CD16(従来型)およびCD14dimCD16(炎症性)単球群の両方に結合した。CLM-1抗体は、いずれの単球群にも結合しなかった。興味深いことに、UP-D2およびDCR-2クローンは、CD14CD16dim単球群よりも有意に強くCD14CD16単球に結合した(図3A)。このパターンは、234903 mAbで逆転し、有意により強くCD14CD16単球群に結合していた(図3A)。本発明者らは、5つの代表的なAMLサンプルについて、4つのmAbおよび2つのポリクローナル抗体を試験した。全ての抗体は、1つのサンプルのみからの芽球に結合したCLM-1抗体を除いて、AML芽球およびLSCの両方に結合した(図3B)。UP-D1、DCR-2および234903 mAbは、健康な臍帯血からのHSCに結合した(図3C)。UP-D2の弱い結合があり、健康なHSCに対するCLM-1抗体との結合はなかった(図3C)。
【0170】
骨髄由来細胞株の表面上のCD300fの抗原密度、および高い割合で芽球を有する多数の一次AMLサンプルを、定量用ビーズベースキットを使用して実験した。結果を図4に示す。CD300fアイソフォーム1CHO形質転換体は10分子/細胞を発現した。骨髄由来細胞株は、細胞あたり10分子のオーダーで発現した。一次AML芽球は、10~10分子/細胞の範囲のレベルでCD300fを発現した。
【0171】
[抗体による、異なるエピトープの認識]
本発明者らは、他のCD300f抗体の存在下でCD300fアイソフォーム1形質転換体に結合するDCR-2およびCD300fパネル内の他の抗体の能力を試験した。UP-D1はUP-D2またはgLMIR3の存在下で45%の結合度を示し、234903の存在下で65%の結合度を示した(図5)。同様に、UP-D2はUP-D1の存在下で30%の結合度を示し、234903またはgLMIR3の存在下で60~65%の結合度を示した。234903mAb結合はDCR―2およびgLMIR3により有意に阻害されたが、UP―D1またはUP―D2により阻害されなかった。CLM-1抗体は、抗体をブロックせず、アミノ酸残基63~92内のエピトープに結合しないことを示した。gLMIR3はそれぞれ234903およびUP-D1の存在下で70%および50%の結合を示したが、UP-D2mAbはその結合に影響を及ぼさなかった。CLM-1ペプチド抗体によって認識されるエピトープは、未成熟骨髄細胞上には存在せず、それらが成熟する際に上方調節されるので、他のエピトープと区別された。DCR-2に結合を妨げられなかったため、UP-D1は異なるエピトープに結合することが分かったが、234903mAbはDCR-2に結合を完全に妨げられたため、エピトープにおける潜在的な重複を示した。興味深いことに、DCR-2は、UP-D2の結合をブロックするのではなく、CD300fへのUP-D2の結合を増強した(図5B)。
【0172】
そこで、UP-D2の結合を増強するDCR-2の能力をさらに調査した。図6は、DCR-2の存在下でCD300f(CHO-L5)を発現するCHO細胞に対するCD300f抗体の結合度の結果を示す。図6から分かるように、DCR-2は、UP-D2の結合を有意に増強する。DCR-2はまた、これらの細胞株へのUP-D2結合に対するmAb 342903の効果と比較した場合、HEL、HL-60およびTHP-1細胞へのUP-D2の結合を増強した(図7)。
【0173】
これらの結果は、DCR-2が細胞上で発現されるCD300fへのUP-D2の結合を選択的に増強することを示す。
【0174】
複数のCD300f RNA転写物は、骨髄由来細胞株によって発現される。
一次AMLで発現したCD300f転写物を同定するために、健康なCD14単球、いくつかのAML試料および骨髄由来細胞株cDNA鋳型から完全な転写領域を増幅し、配列を決定した。エキソン1特異的プライマー(CD300fアイソフォーム1リーダー配列)を用いて、2つの配列を増幅した。第一の配列は20アミノ酸の短いエキソン4(CD300fS4)を有し、アイソフォーム1、2、3、5および7において見出された。第2の配列は追加の14アミノ酸残基(CD300fS4)(STPAPTTPTSTTFT)を含む、選択的スプライシングされたエキソン4を有し、アイソフォーム4および6において見出された。各AMLサンプルから少なくとも1つのアイソフォームを増幅した。これは、CD300f細胞外成分の複数の形態が一緒に発現され得ることを実証した。
【0175】
CD300fアイソフォームは、CD300f抗体によって認識される。
CHO細胞で発現したCD300fL4およびCD300fS4細胞外領域への結合について、直接結合した抗CD300f抗体を試験することで、CHO細胞で発現した場合、CD300fのCD300S4およびCD300fL4細胞外領域にすべて結合することを見出した(図8)。それぞれに対するUP―D1のMFI比を比較すると、UP―D1はCD300fS4と比べて3倍高い比率でCD300fL4に結合したが、UP―D2、234903、およびDCR―2のCD300fL4への結合度はCD300fS4と比べると半分未満であった。これは、UP-D1mAbがCD300f上の異なるエピトープに結合することを示唆した。ウェスタンブロット法により、234903、DCR―2 mAbおよびgLMIR3抗体が非還元条件下でCD300fL4由来の49kDタンパク質に結合することが示された。還元条件下では、抗体の結合度は著しく減少した。これらの結果は、CD300fの三次構造を決定するジスルフィド結合が抗体結合エピトープに影響を及ぼすことを示している。対照的に、10倍レベルのタンパク質を分析した場合でさえ、還元条件または非還元条件のいずれにおいてもCD300fS4形態への結合はほとんどなかった。形質転換体におけるCD300f発現を確認するために、CLM-1抗体を使用したが、CD300fS4タンパク質に対してmAbが結合しないか、または非常に弱い結合を形成する理由を説明することはできなかった。
【0176】
CD300f-Fc組換えタンパク質へのDCR-2の結合の原理を、BLItz System(Fortebio、Pall Life Sciences)におけるBio-Layer Interferometry analysisを使用して決定した。結果を図9に示す。
【0177】
CD300fに対する抗体はADCCを媒介し、CD300fと共に吸収される。
DCR―2は、IL―2活性化マウス脾細胞によるHL―60細胞株の抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)に有効であった(図10A)。さらに、37℃で30分後、40%のDCR-2および25%のUP-D1は、フローサイトメトリーによる計測では、HL-60またはU937の表面から吸収されたことが示された(図10B及び10C)。UP-D2は、CD300fに対して低い親和性を有することが見出され、吸収されるよりもむしろ結合を失うことになる。共焦点顕微鏡で確認されたCD300f抗体は37Cでのインキュベート後に、HL-60およびU937、健康なCD14単球およびAML芽球の表面膜から吸収された(図10B及び10C)。この時点ではほとんど表面CD300fは残っておらず、ほとんどのCD300f結合抗体が、結合したCD300fの表面の形態にかかわらず、吸収されたことを示している。
【0178】
[DCR-2配列]
DCR-2の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を配列決定した。配列番号1は、DCR-2重鎖可変領域のアミノ酸配列を表す。配列番号5は、DCR-2軽鎖可変領域のアミノ酸配列を表す。
【0179】
DCR-2重鎖結合領域は、配列GQGTLVTVを有する。
【0180】
定常領域と重複するDCR-2軽鎖配列は、配列TKLEIKRを有する。
【0181】
DCR2のV領域のヒト化
マウスDCR-2のV領域のアミノ酸配列をヒトV配列と整列させて、マウスDCR-2配列をヒト化するために変化させるべきアミノ酸を同定するために、マウスとヒトとの間で異なるフレームワーク領域中のアミノ酸を同定した。図12に示すのは、DCR-2のマウス(上部、A)および提案されたヒト化(下部、B)V領域のアラインメントである。上部の配列はマウスDCR-2Vアミノ酸配列を示し、下部の配列は提示されたヒト化DCR-2Vアミノ酸配列を示す。ヒト配列に変化させるアミノ酸残基は太字で下線を付してある。マウスDCR-2のCDR配列を囲む。
【0182】
〔考察〕
新しい抗体に基づく治療法の開発は、細胞表面タンパク質の対象を標的とする適切な抗体の利用可能性によって制限される。CD300fはCD300遺伝子ファミリーのメンバーとして同定され、CD300fはAML芽球およびCD34CD38LSC富化画分で発現されることを示した。本発明者らは、モノクローナル抗体DCR-2を産生した。
【0183】
mAbDCR-2は、高い親和性でCD300fを標的とする。DCR-2は、抗体依存性細胞媒介細胞毒性を媒介する。DCR-2はまた、CD300fへのUP-D2の結合を増強する。
【0184】
本発明者らは、DCR-2はAMLなどの骨髄性白血病の治療に有用だと想定している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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