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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】腫瘍細胞の浸潤能を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20231108BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20231108BHJP
   C12M 3/00 20060101ALN20231108BHJP
   C12N 5/09 20100101ALN20231108BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N33/48 M
C12M3/00 A
C12N5/09
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019566253
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2018064129
(87)【国際公開番号】W WO2018219980
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】17305633.4
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル・テリー
(72)【発明者】
【氏名】ヨラン・マルガロン
(72)【発明者】
【氏名】オディル・フィルホル-コシェ
【審査官】中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506247(JP,A)
【文献】Dev. Cell,2017年,Vol. 40,pp. 168-184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍細胞の浸潤能を予測するための方法であって:
- 平面基板と、前記基板上で接着性細胞を培養するための少なくとも2組の2つの接着パターンとを含む培養デバイスを提供する工程であり、
各組における2つの接着パターンが、第1の接着パターン上の細胞が別の接着パターンに達することを防止するための本質的に非接着性の介入領域によって互いに十分に分離されており;2つの接着パターン及び介入領域で覆われる面積が、2つの動物細胞を接着するのに十分であり、2つの接着パターンの各組が、細胞非親和性周辺領域によって隔離されており、
前記本質的に非接着性の介入領域が、2つの接着パターン間に位置し、第1の接着パターンから同組の第2の接着パターンに達することを可能にしないために適した幅を有する、単一の接着領域を場合により含む非接着性領域である、工程と;
- 少なくとも1つの腫瘍細胞を、2つの接着パターンの各組におけるいずれか1つの接着パターン上に播種する工程と;
- 2つの接着パターンの前記組における各接着パターン上での1回の細胞分裂から1つの細胞対が得られるように、前記少なくとも1つの腫瘍細胞を培養する工程と;
- 前記腫瘍細胞の2つの接着パターンの前記少なくとも2組上に、各細胞対に対して以下の少なくとも3つのパラメーター:
- 2つの接着パターンの各組に対する核間距離であって、前記細胞対の2個の前記腫瘍細胞の核の間の距離である核間距離;
- 2つの接着パターンの各組に対する、前記細胞対の細胞-細胞接続性であって、細胞対を囲む凸包絡の面積と細胞対の面積との差である細胞-細胞接続性
;及び
- 2つの接着パターンの前記組の全細胞集団に対する高度に極性化した細胞の割合であって、高度に極性化した細胞が、
【数1】
という条件での
【数2】
(式中、xは、細胞間結合に向かう核-核軸上のセントロソームの位置であり、yは、核-核軸に対して垂直の軸上のセントロソームの位置であり、単位は、核の半径である)
として定義される三角形領域において、細胞-細胞結合に近接して位置するセントロソームを有する細胞であり;
高度に極性化した細胞の割合が、上記で定義した高極性化を有する細胞数の全細胞数に対する比×100である、割合
を測定する工程と;
- 少なくとも3つの測定されたパラメーターに基づき、所定の浸潤能を有する参照細胞との比較により腫瘍細胞浸潤能を決定する工程と
を含む方法。
【請求項2】
2つの接着パターン間の距離が、2/3D~4/3Dの範囲内であり、Dは、何の制限もない支持体上の細胞で覆われた面Sを有する円盤の直径であり、前記本質的に非接着性の介入領域における任意の単一接着区域が、1/4D未満の幅を有し、各細胞の接着パターンで覆われる面積が、何の制限もない支持体上の細胞で覆われた細胞面Sの80%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2つの接着パターンの組が、Hの形態を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
試験した腫瘍細胞に加えて、所定の浸潤能を有する参照細胞が、デバイス上に播種され、培養され、パラメーターが測定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記参照細胞が、非常に低い浸潤能を有するか、又は浸潤能を有さない細胞、低浸潤能を有する細胞、中程度の浸潤能を有する細胞、高浸潤能を有する細胞及び非常に高い浸潤能を有する細胞からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
統計解析が、試験した腫瘍細胞と最も高い類似性を有する参照細胞を決定するために行われる、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
統計解析が、主成分分析法によって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記本質的に非接着性の介入領域が、ポリ(エチレングリコール)の誘導体で覆われる不活性面である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
対象の診断又は予後に有用な情報を提供するための方法であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を行い、それによって、対象からの腫瘍細胞の浸潤能を決定する工程を含む方法。
【請求項10】
対象における腫瘍の治療のための分子の効率を評価するための方法であって、分子を対象の腫瘍からの腫瘍細胞と接触させる工程と、分子で処理した腫瘍細胞の浸潤能を決定する工程と、分子で処理した腫瘍細胞の決定した浸潤能を非処理腫瘍細胞の浸潤能と比較する工程と、浸潤能が減少した場合、分子を選択する工程とを含み、腫瘍細胞の浸潤能が、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法によって決定される、方法。
【請求項11】
腫瘍が、固形腫瘍である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
固形腫瘍が、癌腫である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
腫瘍が、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、腎がん、甲状腺がん、前立腺がん、肝がん、膵がん、頭頸部がん及び卵巣がんからなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
腫瘍が、乳がん、結腸がん、肺がん、腎がん及び甲状腺がんから選択される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、特に腫瘍学の分野に関する。より特には、本発明は、浸潤性の観点で腫瘍を分類するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がん浸潤は、原発性新生物性組織から遠位器官内の転移播種へ局所的に起こる病態生理学的プロセスである。
【0003】
腫瘍からのがん診断は、実際に、主として腫瘍生検の組織学検査によって達成される。試料組成の定性的推定(細胞及び核の形態、有糸分裂頻度)に基づいて、臨床医は、スカーフ-ブルーム-リチャードソングレード分類システムのエルストン-エリス改良(Elston CWら(1991年)、Histopathology. 19:403~410頁)としても公知のノッティンガム組織学スコアシステム又はWHO/IARC分類(Lantuejoul Sら(2016年)、Ann Pathol. 36:5~14頁)を使用することによって腫瘍を3グレードに分類することができる。そのような分類に基づいて、これらの方法は、がん浸潤性を推定するために使用され、最良の治療選択肢を選択するために重要である。しかしながら、これらの方法は、手術のために損傷した組織試料からの組織学的特徴の主観的で定性的な推定に基づくので、腫瘍由来細胞特徴を強固に定量することができず、腫瘍をそれらの浸潤能について正確に分類することができない。
【0004】
浸潤腫瘍細胞は最初に、それらの極性の再配向を含む、それらの細胞内組織化としてのそれらの全体的な形態の深遠な再組織化を包含する。実際に、細胞の、その内部極性を外部手がかりに適合させる能力における欠陥は、がんの特質であり(Wodarz Aら(2007年)、Nat Cell Biol. 9:1016~1024頁;Lee Mら(2008年)、J Cell Sci. 121:1141~1150頁)、細胞極性のレギュレーターは、腫瘍サプレッサーとして作用し得る(Royer Cら(2011年)、Cell Death Differ. 18(9):1470~1477頁)。静止状態から細胞浸潤を誘発する主要な分子事象プログラムは、上皮間葉転換(EMT:epithelial-to-mesenchymal transition)と呼ばれる。この多ステッププロセスは、(1)上皮極性の逆転、(2)部分的~完全な細胞個別化及び(3)浸潤を開始する周囲組織への細胞散乱を含む(Yeung KTら(2017年)、Mol Oncol. 11:28~39頁)。最近の研究では、Theryとその共同研究者らは、極性逆転が、EMTの重要な事象であることを示している(Burute Mら(2017年)、Dev Cell. 40、168~184頁)。
【0005】
細胞極性の必要条件として、核形成オルガネラ:セントロソームから発する微小管の異方性分布によって内部細胞組織化の非対称が与えられる(Bornens M(2008年)、Nat Rev Mol Cell Biol. 9:874~886頁)。セントロソームは、主要な微小管組織化中心として示されており、内部細胞極性に大いに関連する偏心性の位置決めを採用している。細胞極性の特質として、セントロソームは、百個を超える調節タンパク質と関連付けられており、そのために、それは、オルガネラ位置決め及びシグナル伝達経路の空間的オーガナイザーである(Doxsey Sら(2005年)、Annu Rev Cell Dev Biol. 21:411~434頁)。上皮細胞においては著しく、セントロソームは、頂極において細胞-細胞結合に近接して位置するが、細胞分離、及び接着性哺乳動物細胞の培養のために古典的に使用される無制限の面であるペトリ皿上へのプレーティング後は、この位置決めは破壊される。このことは、無制限の接着面上での接着性細胞の古典的培養は、セントロソーム位置決め調節のこの重要な特徴を捉えることができず、次いで、腫瘍浸潤の開始中に起こる微妙な変化を明らかにするためには好適でないことを示唆する。
【0006】
特定の定められた位置における細胞の接着を促進するために、EP1664266及びEP2180042は、細胞が接着することができる定められた形状を有する、接着性マイクロパターンと呼ばれる接着面を含む培養デバイスを開示している。また、これらの特許出願は、細胞形状及び内部組織化を制御するための方法、並びに生物学的に活性な化合物をスクリーニングするためのそのようなデバイスの使用を開示している。そのようなデバイスにおいては、細胞がそのような面に結合すると、それらは面の全体の形状を採用するために提供される接着性の手がかりを使用し、一方で細胞のオルガネラは、制御された組織化に配置される。その後、細胞は、接着面の幾何を採用する空間的配置から正常化され得る。
【0007】
上皮細胞極性の開始及び維持に関連する高度な機械的手がかりを再現することによって、M.Theryのグループによってなされた最近の躍進は、Hマイクロパターン上で培養されたMCF10A細胞対からなる最小限上皮モデルを開示しており、これは、位置決めの点でセントロソームのin vivo表現型を完全に反映している(Burute Mら(2017年)、Dev Cell. 40、168~184頁)。この研究は、Hマイクロパターン上で24時間培養されたMCF10A細胞は分裂し、得られた細胞対は、高度に正常化された内部組織化を伴う標準化形状を採用する(セントロソームは、集中化されておらず、細胞間結合に近接していることが見られ;核-セントロソーム軸は、この結合に向かって配向している)ことを示す。それぞれ、ペリセントリン抗体及びヘキスト法を使用したセントロソーム及び核染色、自動画像取得及び処理後、細胞極性記述子の定量は、極性化細胞を結合に隔離する非常に強固な結果を示す(MCF10Aにおいて72%)。EMTインデューサー、TGF-ベータの添加は、極性化MCF10A細胞を32%まで大いに低下させ、極性指数の転換を誘発し、核間及びセントロソーム間距離を増大させる。開示されている記述子は、健康な細胞種内でEMTを白か黒かで検出するのに効率的であるが、この研究は、腫瘍浸潤を評価することに焦点を当てていない。更に、Burute Mらで用いられた方法は、実施例の節で例示されるように、段階的な浸潤性のがん細胞を精密に比較するためには適していない。
【0008】
腫瘍診断は実際に、主観的である。実際に、組織学検査は、手術のために損傷した組織試料からの特徴の主観的で定性的な推定に基づくので、腫瘍由来細胞特徴を強固に定量することができず、次いで、腫瘍をそれらの浸潤能について正確に分類することができない。加えて、腫瘍診断は、治療選択肢と直接的に関連付けられていない。それゆえ、とりわけ予後のため及び個別化医療における効率的な薬種を予測するための比較試験として、腫瘍をそれらの浸潤能の点で分類するための方法が未だに強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】EP1664266
【文献】EP2180042
【文献】WO2010/046459
【非特許文献】
【0010】
【文献】Elston CWら(1991年)、Histopathology. 19:403~410頁
【文献】Lantuejoul Sら(2016年)、Ann Pathol. 36:5~14頁
【文献】Wodarz Aら(2007年)、Nat Cell Biol. 9:1016~1024頁
【文献】Lee Mら(2008年)、J Cell Sci. 121:1141~1150頁
【文献】Royer Cら(2011年)、Cell Death Differ. 18(9):1470~1477頁
【文献】Yeung KTら(2017年)、Mol Oncol. 11:28~39頁
【文献】Burute Mら(2017年)、Dev Cell. 40、168~184頁
【文献】Bornens M(2008年)、Nat Rev Mol Cell Biol. 9:874~886頁
【文献】Doxsey Sら(2005年)、Annu Rev Cell Dev Biol. 21:411~434頁
【文献】Whitesidesら(Annu. Rev. Biomed. Eng.、2001年、335~373頁、より特に、341~345頁)
【文献】Taubeら、2010年、PNAS, 107、15449~15454頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、浸潤性及び薬物応答の点で腫瘍を分類するための方法に関する。そのような分類に基づく方法は、腫瘍細胞の浸潤能を示し、予後の概要を示すがん診断に有用である場合があり、腫瘍浸潤又は増殖を低下させる分子からの抗腫瘍効果を予測する個別化医療専門の比較試験として使用することができる。
【0012】
したがって、本発明は、腫瘍細胞の浸潤能を予測するための方法であって:
- 平面基板と、前記基板上で接着性細胞を培養するための少なくとも2組の2つの接着パターンとを含む培養デバイスを提供する工程であり、
2つの接着パターンが、第1の接着パターン上の細胞が別の接着パターンに達することを防止するための本質的に非接着性の介入領域によって互いに十分に分離されており;2つの接着パターン及び介入領域で覆われる面積が、2つの動物細胞を接着するのに十分であり、2つの接着パターンの各組が、細胞非親和性周辺領域によって隔離されている、工程と;
- 少なくとも1つの腫瘍細胞を、2つの接着パターンの前記組上に播種する工程と;
- 2つの接着パターンの前記組上での1回の細胞分裂から1つの細胞対が得られるように、前記腫瘍細胞を培養する工程と;
- 前記腫瘍細胞の2つの接着パターンの前記組ごとに、以下の少なくとも3つのパラメーター:
- 2つの接着パターンの各組の核間距離;
- 2つの接着パターンの各組の細胞-細胞接続性;及び
- 2つの接着パターンの前記組の全細胞集団に対する高度に極性化した細胞の割合
を測定する工程と;
- 少なくとも3つの測定されたパラメーターに基づき、腫瘍細胞浸潤能を決定する工程と
を含む方法に関する。
【0013】
好ましくは、2つの接着パターン間の距離は、約2/3D~約4/3Dの範囲内であり、Dは、何の制限もない支持体上の細胞で覆われた面Sの直径であり、各細胞の接着パターンで覆われる面積は、何の制限もない支持体上の細胞で覆われた細胞面Sの80%未満である。特に、2つの接着パターンの組は、Hの形態を有する。
【0014】
好ましくは、高度に極性化した細胞は、
【数3】
という条件での
【数4】
(式中、xは、細胞間結合に向かう核-核軸上のセントロソームの位置であり、yは、核-核軸に対して垂直の軸上のセントロソームの位置であり、単位は、核の半径である)
として定義される三角形領域において、細胞-細胞結合に近接して位置するセントロソームを有する細胞である。
【0015】
好ましくは、細胞-細胞接続性は、細胞対を囲む凸包絡の面積と細胞対の面積との差である。
【0016】
好ましくは、試験した腫瘍細胞に加えて、所定の浸潤能を有する参照細胞は、デバイス上に播種され、培養され、パラメーターが測定される。特に、前記参照細胞は、非常に低い浸潤能を有するか、又は浸潤能を有さない細胞、低浸潤能を有する細胞、中程度の浸潤能を有する細胞、高浸潤能を有する細胞及び非常に高い浸潤能を有する細胞からなる群から選択される。
【0017】
好ましくは、腫瘍細胞の浸潤能は、参照細胞との比較によって決定される。特に、統計解析は、試験した腫瘍細胞と最も高い類似性を有する参照細胞を決定するために行われる。より好ましくは、統計解析は、主成分分析法によって行われる。
【0018】
また、本発明は、対象の診断又は予後に有用な情報を提供するための方法であって、本発明による腫瘍細胞の浸潤能を予測するための方法を行う工程を含む方法に関する。
【0019】
本発明は、対象における腫瘍の治療のための分子の効率を評価するための方法であって、分子を対象の腫瘍からの腫瘍細胞と接触させる工程と、分子で処理した腫瘍細胞の浸潤能を決定する工程と、分子で処理した腫瘍細胞の決定した浸潤能を非処理腫瘍細胞の浸潤能と比較する工程と、浸潤能が減少した場合、分子を選択する工程とを含み、腫瘍細胞の浸潤能が、本発明による腫瘍細胞の浸潤能を予測するための方法によって決定される、方法に更に関する。
【0020】
好ましくは、腫瘍は、固形腫瘍である。特に、固形腫瘍は、癌腫である。好ましくは、腫瘍は、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、腎がん、甲状腺がん、前立腺がん、肝がん、膵がん、頭頸部がん及び卵巣がんからなる群から、好ましくは、乳がん、結腸がん、肺がん、腎がん及び甲状腺がんから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1-1】図1A。本発明により腫瘍細胞をそれらの浸潤能について区別するために使用される関連形態学的記述子及び統計手技を示す図である。構造記述子として、高度に極性化した細胞の割合を、核質量中心からのセントロソームの相対座標として個々の細胞において定量する。誤って極性化したセントロソームは除去し(灰色プロット)、その後、全セントロソーム集団に対する、フィルターにかけた、結合に向かうセントロソーム(黒色プロット)の割合を計算する。本発明により使用される更なる記述子は、核間距離、及び細胞対を囲む凸包絡(破線)の面積と細胞対の面積との差として定義される細胞-細胞接続性である。段階的な浸潤能を有する13個の乳腺癌の記述子の結果を示す。
図1-2】図1Aの続き。
図1-3】図1B。本発明により腫瘍細胞をそれらの浸潤能について区別するために使用される関連形態学的記述子及び統計手技を示す図である。本発明による記述子間の相関を示す、結果の主成分分析から決定した、記述子の固有ベクトル表示。
図2A】本発明により実行される研究の結果を例示する図である。各細胞株の平均値に集中させたデータの散布図は、重ね合わせた固有ベクトルを再現する。
図2B】本発明により実行される研究の結果を例示する図である。本発明による3つの記述子を使用した13個の細胞株のクラスター化を示す、研究から得た系統樹。各反復を個々に分類する。ピアソンの相関、n>300個の解析した細胞。
図2C】本発明により実行される研究の結果を例示する図である。反復の、それらの分類によるスコア付け。MCF10A及びMDA-MB-231は、それぞれ、低浸潤性(スコア=1)及び高浸潤性(スコア=4)参照としての任意の組である。
図2D】本発明により実行される研究の結果を例示する図である。13個の細胞株の、反復スコアの平均値によるそれらの浸潤能についての、それに続く最終的な分類。
図3A】比較データを示す図である。Burute Mら((2017年)、Dev Cell. 40、168~184頁)において使用される方法及びなぜこの方法が腫瘍をそれらの浸潤能によって分類するために採用されないのかを例示する図である。MCF10A細胞においてEMTを評価するためのBurute Mら((2017年)、Dev Cell. 40、168~184頁)において使用される記述子:極性化した細胞の割合、極性指数、核間距離及びセントロソーム間距離。
図3B】Burute Mら((2017年)、Dev Cell. 40、168~184頁)において使用される方法及びなぜこの方法が腫瘍をそれらの浸潤能によって分類するために採用されないのかを例示する図である。Burute Mら((2017年)、Dev Cell. 40、168~184頁)において示される記述子を使用した13個の細胞株のクラスター化を示す、研究の系統樹結果。ピアソンの相関、n>300個の解析した細胞(3重)。
図3C】Burute Mら((2017年)、Dev Cell. 40、168~184頁)において使用される方法及びなぜこの方法が腫瘍をそれらの浸潤能によって分類するために採用されないのかを例示する図である。13個の細胞株のそれらの浸潤能についての、それに続く分類。
図4A】比較データを示す図である。腫瘍細胞をそれらの浸潤能について効率的に区別するための、高度に極性化した細胞の割合の記述子の重要度を例示する図である。極性化した細胞の割合及び核間距離を、Burute Mら((2017年)、Dev Cell. 40、168~184頁)によって定量し、細胞-細胞接続性の記述子を、本発明において規定する通りに決定する。
図4B】腫瘍細胞をそれらの浸潤能について効率的に区別するための、高度に極性化した細胞の割合の記述子の重要度を例示する図である。この方法による反復のクラスター化を示す、得られる系統樹。
図4C】腫瘍細胞をそれらの浸潤能について効率的に区別するための、高度に極性化した細胞の割合の記述子の重要度を例示する図である。この方法による13個の細胞株のそれらの浸潤能についての最終的な分類。MCF10A及びMDA-MB-231は、それぞれ、低浸潤性及び高浸潤性参照としての任意の組である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、腫瘍をその浸潤能について正確に分類する方法を提供する。この方法は、腫瘍をその浸潤能について分類するために必要十分である3つのパラメーターの組合せに基づく。3つの必須パラメーターは、数組の2つの接着パターンごとの核間距離、細胞-細胞接続性及び全細胞集団に対する高度に極性化した細胞の割合である。もちろん、これらの3つの必須パラメーターと、追加のパラメーターを組み合わせてもよい。
【0023】
本発明の1つの利点は、この分類からの結果が、診断のための腫瘍生理病理を計算するのみでなく、潜在的な悪性度の予測及び次いで、患者の予後も提供することである。
【0024】
本発明の別の利点は、本分類法が、腫瘍から培養された細胞のふるまいに影響を及ぼす化合物の効率から、この特定の腫瘍を治療するための前記化合物の治療的又は緩和的効率までの外挿を可能にすることである。
【0025】
したがって、本発明は、腫瘍細胞の浸潤能を予測するための方法であって:
- 接着性細胞を前記基板上で培養するための2つの接着パターンの組を含む培養デバイスを提供する工程と;
- 少なくとも1つの腫瘍細胞を、2つの接着パターンの前記組上に播種する工程と;
- 2つの接着パターンの前記組上での1回の細胞分裂から1つの細胞対が得られるように、前記腫瘍細胞を培養する工程と;
- 2つの接着パターンの前記組ごとに、以下の3つのパラメーター:
- 2つの接着パターンの各組の核間距離;
- 2つの接着パターンの各組の細胞-細胞接続性;及び
- 2つの接着パターンの前記組の全細胞集団に対する高度に極性化した細胞の割合
を測定する工程と;
- 3つの測定されたパラメーターに基づき、腫瘍細胞浸潤性を決定する工程と
を含む方法に関する。
【0026】
培養デバイス
培養デバイスは、特許出願WO2010/046459で開示されているデバイスである。特に、それは、細胞の回転運動を防止し、それらに空間的接着状態を与え、力学的平衡及び静止した再現性のあるコンフォメーションの達成を可能にする特定の幾何を有する接着パターンの組を含む。WO2010/046459は、力学的に安定した再現性のあるコンフォメーションにより、多細胞配置で2つの細胞を接着するためのデバイスの設計を可能にする規則を提供する。規則は、以下の、多細胞配置の各細胞につき1つの接着パターンである。2つの接着パターン間の区域は、介入領域と呼ばれている。接着パターンは、第1の接着パターン上の細胞が別の接着パターンに達することを防止するための本質的に非接着性の介入領域によって互いに十分に分離されている。もちろん、また、接着パターンは、細胞間の相互作用を可能にするのに十分に近くなければならない。介入領域がおよそ細胞の面の1つの直径(D)であることが確立されている。接着パターンは好ましくは、細胞の表面積(S)より小さい。これらの小さい接着パターンは、(非接着性領域によって)細胞に十分な自由度を提供して、細胞が互いに対してくい込むことを可能にするので、重要である。それらの2つの制約(接着パターン及び他の相互作用細胞)間の平衡は、相互作用細胞を安定化し、細胞が自然な位置を採用することを可能にし、それゆえ、安定かつ再現性がある。細胞に十分な自由度を提供するために、介入領域は、本質的に非接着性である。しかしながら、介入領域は、接着領域、より好ましくは単一の接着領域を含んでもよく、それによって、細胞が互いに会合し、相互作用接触を確立することを補助する。介入区域のこの接着領域の幅は、狭くなければならない(細胞の直径の1/2未満)。実際に、この領域が大き過ぎる場合、それは、細胞が他の接着パターンに達することを可能にし得る。介入領域を伴う2つの接着パターンの面積は、2つの動物細胞を接着するのに十分である。もちろん、周囲細胞(多細胞配置に関与していない)による多細胞配置の妨害を避けるために、パターンの各組は、細胞非親和性領域によって囲まれる。
【0027】
本発明のデバイスは、面を規定するプレート、及び第1の接着パターン上の細胞が別の接着パターンに達することを防止するための本質的に非接着性の介入領域によって互いに十分に分離されている少なくとも2組の2つの接着パターンを含み、介入領域を伴う2つの接着パターンの面積は、2つの動物細胞を接着するのに十分である。換言すれば、2つの接着パターン及び介入領域で覆われる面積は、2つの動物細胞を接着するのに十分であり、各細胞は、1つの個々の接着パターンに接着する。特に、プレートは、平面を規定する。特に、2つの接着パターン及び介入領域で覆われる面積は、単一の細胞で覆われるには大き過ぎる。したがって、この面積は、1Sをはるかに超える。例えば、2つの細胞の多細胞配置のために、この面積は、約2Sである。各接着パターンの凸包絡によって規定される面積は、約1/2S~約3/2Sの範囲内であり、Sは、何の制限もない、細胞で覆われた面積である。好ましい実施形態においては、各接着パターンの凸包絡によって規定される面積は、約3/4S~約5/4Sの範囲内であり、より好ましくは、約Sである。例えば、Sは、1~2,500μm2、より好ましくは、1~1,000μm2、更により好ましくは、1~500μm2又は500~900μm2の範囲内であってもよい。Sは、細胞種に依存し得る。しかしながら、各接着パターンの凸包絡によって規定される面積は、高割合の非接着性領域、例えば、少なくとも20、30、40又は50%、好ましくは、20~70%、30~60%又は40~50%の非接着性領域を含む。或いは、各細胞の接着パターンで覆われる面積は、細胞面Sの80、70、60又は50%未満である。例えば、各接着パターンの面積は、細胞面Sの30~80%、40~70%又は50~60%である。また、この面積は、力学的平衡に達したときに1つの細胞で覆われた面として定義され得る。
【0028】
各接着パターンの凸包絡は、あらゆる種類の形態(例えば、円盤、正方形、長方形、台形、円盤片、楕円等)を有し得る。この凸包絡上で、長軸及び短軸が規定され得る。
【0029】
接着パターンは、単一の接続した接着面から、及び/又はいくつかの接続していない接着面から形成され得る。「単一の接続した接着面」によって、好ましくは、実線又は実曲線が意図される。「接続していない接着面」によって、好ましくは、点線若しくは破線、若しくは点曲線若しくは破曲線、又は別個の点若しくは領域が意図される。好ましい実施形態においては、接着パターンは、線、曲線及び点から選択される接着要素の組合せからなる。接着点、線、曲線又は縁の幅は、好ましくは、0.1~100μm、より好ましくは、1~50μm、更により好ましくは、約8μmである。
【0030】
好ましい実施形態においては、1組内の2つの接着パターン間の距離は、約2/3D~約4/3Dの範囲内である。好ましい実施形態においては、1組内の2つの接着パターンは、約3/4D~約5/4D、より好ましくは、約Dの距離分、分離されている。好ましい実施形態においては、本質的に非接着性の介入領域は、単一の接着区域を含む。単一の接着区域は、細胞が別の接着パターンに達することを可能にしないために適している。つまり、この単一の接着区域は狭くなければならない。実際に、接着パターンの大軸に平行の長く細い接着線は、細胞が別の接着パターンに達することを可能にし得るので、適切でない。例えば、接着区域は、1組の2つの接着パターン間に位置し、D未満、好ましくは、1/2D未満、好ましくは、1/3D未満、より好ましくは、1/4D未満の幅を有する区域である。一実施形態においては、接着区域は、例えば、線又は曲線として、2つの接着パターンを接続し得る。別の実施形態においては、接着区域は、2つの接着パターンとの接続をまったく伴わずに2つの接着パターン間に存在し得る。理論に束縛されるものではないが、この接着区域は、2つの細胞が細胞-細胞相互作用を確立することを補助すると考えられる。好ましい実施形態においては、本質的に非接着性の介入領域の50%、より好ましくは、60、75、80、85又は90%は、非接着性である。単一の接着区域は、接着区域を形成する、単一の接続した接着面から、及び/又はいくつかの接続していない接着面からなり得る。
【0031】
最も好ましい実施形態においては、本発明のデバイスは、1組の2つの接着パターン間の距離が、約2/3D~約4/3D、好ましくは、約3/4D~約5/4Dの範囲内であり、より好ましくは、約Dであり;本質的に非接着性の介入領域が、単一の接着区域を含み、前記単一の接着区域が、2つの接着パターン間に位置し、D未満、好ましくは、1/2D未満、好ましくは、1/3D未満、より好ましくは、1/4D未満の幅を有し;各細胞の接着パターンで覆われる面積が、細胞面Sの80、70、60又は50%未満であるようなものである。
【0032】
特定の実施形態においては、1組の2つの接着パターンは、以下の形態:C、X、H、Z及びΠを採用し得る。最も好ましい実施形態においては、2つの接着パターンの組は、Hの形態を有する。好ましくは、前記デバイスは、複数の組の、細胞が接着しない細胞非親和性領域によって互いに隔離されている2つの接着パターンを含む。より特に、前記デバイスは、少なくとも2組の2つの接着パターン、好ましくは少なくとも5、10、100、1000、10000又は100000組の2つの接着パターンを含む。好ましい実施形態においては、前記デバイスは、5~25000組の2つの接着パターン/cm2、より好ましくは、5000~10000組の2つの接着パターン/cm2、更により好ましくは、約7500組の2つの接着パターン/cm2を含む。
【0033】
接着パターン又は区域は、細胞結合を促進する分子を含む。これらの分子は、組織培養用ポリスチレン皿におけるような酸化型ポリスチレンのように非特異的であり得る。また、分子は、特異的接着分子、例として、当業者に周知であり、抗原、抗体、細胞接着分子、細胞外マトリックス分子、例として、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、合成ペプチド、炭水化物等を含む接着分子であり得る。好ましくは、前記接着パターンは、細胞外マトリックス分子、より好ましくは、フィブロネクチンを含む。
【0034】
非接着面は、不活性面である。適切な不活性面は、ポリ(エチレングリコール)の誘導体で覆われる面である。
【0035】
プレートは、共焦点、光学及び/又は蛍光顕微鏡法に便利な支持体である。より好ましい実施形態においては、プレートは、酸化型ポリスチレンの薄層で覆われていることもある、ガラスである。例えば、本発明による便利なプレートは、カバーガラス又はスライドである。また、支持体は、細胞培養のために改変されたプラスチックであってもよい。また、それは、熱成形プラスチックプレート又は組織培養用ペトリ皿であってもよい。プレートは、好ましくは、ウェルがまったくない平面を指すことが、本発明において理解される。或いは、プレートは、5~100kPaを含むヤング率を有する軟物質であってもよい。
【0036】
本発明によるデバイスは、同じプレート上に、各群が異なる培地中でインキュベートされ得るように互いに分離されている、1組の接着パターンのいくつかの群を含み得る。例えば、1組の接着パターンのある群は、試験化合物と接触させてもよく、別の群は、別の試験化合物と接触させるか、又はいずれの試験化合物とも接触させなくてもよい。この分離は、物理障壁、例として、テフロン(登録商標)シールによって提供することができる。例えば、SPI Supplies社のSPI Teflon(登録商標)、Aname社のTeflon(登録商標)Printed Slidesを参照されたい。
【0037】
接着パターン及び区域並びに細胞非親和性領域を有する本発明によるデバイスは、マイクロパターン加工によって形成される。マイクロコンタクトプリンティング法又はUVパターン加工を使用することができる。標準法は、当業者に周知である。概略のために、Whitesidesら(Annu. Rev. Biomed. Eng.、2001年、335~373頁、より特に、341~345頁)を参照されたい。
【0038】
腫瘍細胞
試験される腫瘍細胞は、あらゆる腫瘍細胞であり得る。好ましくは、腫瘍細胞は、腫瘍を有する対象から得ることができる。腫瘍細胞は、腫瘍細胞を含有する対象の生物学的試料から得ることができる。そのような生物学的試料の例として、生検、器官、組織又は細胞試料が挙げられる。好ましくは、生物学的試料は、生検試料である。
【0039】
対象は、好ましくは、哺乳動物である。それは、ヒト又は動物であり得る。動物は、ペットであり得る。例えば、対象は、中でも、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ及び非ヒト霊長類であり得る。
【0040】
あらゆる種類の腫瘍細胞を、本発明において使用することができる。細胞は、例えば、線維芽細胞、内皮及び上皮細胞であり得る。好ましい実施形態においては、細胞は、上皮細胞である。
【0041】
例えば、腫瘍細胞は、固形腫瘍又は造血性腫瘍からの腫瘍細胞であり得る。好ましくは、腫瘍細胞は、固形腫瘍からの腫瘍細胞である。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫及びリンパ腫である。好ましい実施形態においては、固形腫瘍は、癌腫である。
【0042】
腫瘍は、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、腎がん、甲状腺がん、前立腺がん、肝がん、膵がん、頭頸部がん及び卵巣がんからなる群から、好ましくは、乳がん、結腸がん、肺がん、腎がん及び甲状腺がんから選択され得る。
【0043】
したがって、本方法は、対象からの腫瘍細胞を提供する事前工程を含み得る。
【0044】
参照細胞
試験する腫瘍細胞に加えて、参照細胞を、培養デバイス上で並行して使用してもよい。
【0045】
参照細胞は、浸潤能が以前に確率/決定されている細胞である。これらの細胞は、浸潤性のレベルを決定するために使用される。例えば、1つの第1の参照細胞は、低浸潤能を有してもよく、1つの第2の参照細胞は、高浸潤能を有してもよい。任意選択で、いくつかの参照細胞、例として、非常に低い浸潤能を有するか、又は浸潤能を有さない細胞、低浸潤能を有する細胞、中程度の浸潤能を有する細胞、高浸潤能を有する細胞及び非常に高い浸潤能を有する細胞からなる群から選択される細胞を使用してもよい。好ましい実施形態においては、本方法において少なくとも4つの参照細胞:非常に低い浸潤能を有するか、又は浸潤能を有さない細胞、低浸潤能を有する細胞、中程度の浸潤能を有する細胞、高浸潤能又は非常に高い浸潤能を有する細胞が使用される。
【0046】
例えば、浸潤能を有さないか、又は非常に低い浸潤能を有する細胞は、非腫瘍細胞(例えば、MCF10A又はRPE1)であり得る。低浸潤能を有する細胞は、例えば、HCC1143、Hs578T、MDA-MB-468、HCC38、HCC70であり得る。中程度の浸潤能を有する細胞は、例えば、BT-549、MDA-MB-157、BT-20、HCC1937であり得る。高浸潤能を有する細胞は、MDA-MB-231又はMDA-MB-436であり得る。特に、MDA-MB-231細胞株は、非常に浸潤性の細胞として公知である。
【0047】
参照細胞の浸潤能は、当業者が利用可能なあらゆる方法及び分類によって決定することができる。浸潤能は、ノッティンガム組織学スコアシステム(スカーフ-ブルーム-リチャードソングレード分類システムのエルストン-エリス改良)又はWHO/IARC分類により決定することができる。浸潤能とは、細胞の、隣接又は遠位組織に浸潤する能力を意味する。細胞の運動性は、例えば、金コロイド法により測定することができる。金コロイド法は、細胞を、コロイド金を粘着させたカバーガラス上に播種し、細胞の移動軌跡上に形成された金がない部分の面積を計算し、それによって細胞の運動性を測定する方法である。細胞の運動性及び浸潤能は、ボイデンチャンバーアッセイ等によって評価することができる。ボイデンチャンバーアッセイにおいては、最初に、コーティングしていない多孔性PET膜を通過した細胞数によって運動性を評価し、その後、基底膜でコーティングしたPET膜を使用して、基底膜を分解して、孔を通過し、膜の下に移動した細胞数を測定し、移動した細胞数に対する比を測定し、それによって、細胞の浸潤能を評価する。
【0048】
或いは、細胞の浸潤能は、2D若しくは3Dマトリックス上の移動細胞の経時的顕微鏡検査法、スクラッチ/創傷治癒アッセイ又は軟寒天浸潤アッセイによって測定することができる。
【0049】
培養、固定、染色並びに画像取得及び処理
本方法は、少なくとも1つの腫瘍細胞を、2つの接着パターンの前記組上に播種する工程と、2つの接着パターンの前記組上での1回の細胞分裂から1つの細胞対が得られるように、前記腫瘍細胞を培養する工程とを含む。より特に、腫瘍細胞は、デバイス上で、接着パターンの前記組上で腫瘍細胞が2つの細胞に分裂し、各前記接着パターンに接着し、力学的平衡に達するのに十分な期間、培養される。期間は、腫瘍細胞に依存してもよく、当業者に周知である。このインキュベーション時間は、典型的に1~2日の範囲内である。一般的に、24時間の期間が十分である。
【0050】
好ましい実施形態においては、様々なレベルの浸潤能を有するいくつかの参照細胞も播種し、試験する細胞腫瘍と同時に培養デバイス上で培養する。
【0051】
例えば、細胞は、1mm2のチップ当たり10,000~100,000個の細胞、例えば、1mm2のチップ当たり約25,000個の細胞の密度で播種してもよい。本方法は、非結合細胞を除去するためにすすぎ工程を含んでもよい。
【0052】
このインキュベーション時間の終わりに、細胞は、当技術分野で公知のあらゆる方法によって、例えば、冷メタノールを使用することによって固定され得る。その後、セントロソーム及び核を可視化するために、細胞を染色する。例えば、セントロソームは、セントリン、ペリセントリン、ガンマ-チューブリン、ニネイン(ninein)、Cep164、Cep192、Odf1、セネキシン(cenexin)、セントリオリン及び/又はPLK4、好ましくはペリセントリンに対する抗体で免疫染色される。例えば、核は、ヘキスト標識法又はDAPI(4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)によって染色することができる。その後、あらゆる好適な顕微鏡法により、2つの接着パターンの組上の細胞の画像を取得する。画像取得は、自動で達成され得る。
【0053】
画像解析は、対の細胞の内部組織化をモニターする。好ましくは、それは、核及びセントロソーム2値化処理、前記核及びセントロソームの質量中心の計算、前記対の核-核ベクトル及び前記対の個々の細胞内の核-セントロソームベクトルの長さ及び配向の計算並びに細胞対全体の面積及びその凸包絡の面積を含む。
【0054】
好ましい実施形態においては、画像処理は、例えば、鋳型適合法;対の各細胞内の、例えば、閾値処理及びサイズフィルタリングに基づく、核及びセントロソームの検出を使用する、2つの接着パターンの組の個別化を含み;各対について、セントロソーム及び核質量中心の座標並びに細胞対全体の面積及びその凸包絡の面積を計算する。
【0055】
好ましい実施形態においては、細胞種当たり少なくとも50個の細胞対が、解析のために必要である。しかしながら、本方法は、細胞種当たり50~1000個の細胞対、好ましくは、約100個の細胞対を使用することを完了し得る。
【0056】
その後、腫瘍細胞をその浸潤能について分類するために必要十分な3つのパラメーター、つまり、核間距離、細胞-細胞接続性及び全細胞集団に対する高度に極性化した細胞の割合を測定する。試験する腫瘍細胞につき、及び参照細胞につき、これらのパラメーターを測定する。
【0057】
核間距離
核間距離は、2つの接着パターンの組上の2つの細胞の核間の長さである。より特に、核間距離は、対の2つの細胞の核質量中心間の長さである。
【0058】
細胞-細胞接続性
細胞-細胞接続性は、細胞対を囲む凸包絡の面積と細胞対の面積との差として定義される。細胞-細胞接続性を、図1Aで例示する。破線は、細胞対を囲む凸包絡である。灰色線は、細胞対の面積を規定し、網掛けした面積は、細胞対を囲む凸包絡の面積と細胞対の面積との差である。細胞対の平均面積は一般的に、1100μm2である。
【0059】
高度に極性化した細胞の割合
細胞極性化は、図1Aで示す通り、核-核軸及び垂直軸に対するセントロソームの位置に基づいて決定される。好ましくは、核-セントロソームベクトル配向は、細胞間結合に向かう核-核軸について測定される。核-セントロソーム距離は、核半径について正規化される。したがって、正の座標は、隣接細胞に向かう核-セントロソーム軸に対応し、大きな値は、高度に偏心性のセントロソーム位置に対応した。
【0060】
高度に極性化した細胞は、参照の核-核軸におけるその核からセントロソームの相対座標として定量され、核の最大半径は、任意の単位である。その後、高度に極性化した細胞は、
【数5】
という条件での
【数6】
(式中、xは、細胞間結合に向かう核-核軸上のセントロソームの位置であり、yは、核-核軸に対して垂直の軸上のセントロソームの位置であり、単位は、任意の核半径である)
として定義される三角形領域において、細胞-細胞結合に近接して位置するセントロソームを有する細胞として定義される。したがって、1は、細胞核の半径の長さに対応する。
【0061】
例えば、図1Aでは、破線は、高度に極性化した細胞に対応する面積を規定する。全細胞集団に対する高度に極性化した細胞の割合は、各種の細胞(例えば、試験した腫瘍細胞、参照細胞)に対する、試験した全細胞数に対する上記で定義した高極性化を有する細胞数である。より特に、それは、上記で定義した高極性化を有する細胞数の全細胞数に対する比×100である。
【0062】
高度に極性化した細胞の割合は、弱い浸潤能力を有する腫瘍における細胞の割合を例示する。それは、腫瘍の浸潤能に逆相関する。
【0063】
追加の記述子
細胞腫瘍の浸潤能を決定するために、追加の記述子又はパラメーターを更に考慮してもよい。例えば、そのような追加のパラメーターは、核-セントロソーム距離、核直径、核-セントロソーム距離と核直径との比、細胞対の面積、核-セントロソーム軸と核-核軸との間の角度、細胞対の固体性(凸包絡の細胞対面積に対する比)、細胞対の固体性の変動係数、細胞対内セントロソーム-セントロソーム距離、極性指数(特に、Buruteら、2017年で定義される通り;また図1Aを参照のこと)及び全集団に対する完全極性反転を有する細胞の割合からなる群において選択することができる。
【0064】
浸潤性の決定
少なくとも3つのパラメーターに基づき、特に、所定の浸潤能を有する参照細胞との比較によって、試験した腫瘍細胞の浸潤能を決定することができる。
【0065】
第1の態様においては、図1B及び図2Aで示す通り、少なくとも3つのパラメーターに基づく固有ベクトル表示において、各細胞を個々にプロットしてもよい。
【0066】
第2の態様においては、試験した腫瘍細胞と最も高い類似性を有する参照細胞を決定するために、統計解析を行う。好ましくは、主成分分析法によって統計解析を行う。この解析においては、各パラメーター又は記述子は、それらの重要度を調節するために加重してもよい。
【0067】
統計解析により、スコアの決定が可能になる。統計解析により、浸潤能の様々なカテゴリーにおける分類が可能になる。特定の実施形態においては、本方法は、腫瘍細胞を4つのカテゴリーのうちの1つに分ける分類を可能にし、そのカテゴリーとは、1)浸潤能を有さないか、又は非常に低い浸潤能、2)低浸潤能、3)中程度の浸潤能及び4)高浸潤能である。
【0068】
診断のための使用
細胞腫瘍の浸潤能の決定は、特に、腫瘍学分野において、診断目的のために有用であり得る。それゆえ、本発明による方法は、診断又は予後目的のために使用することができる。特に、それは、対象の腫瘍を分類するために使用することができる。
【0069】
薬物効率を予測するための使用
本発明による方法は、対象における腫瘍の治療のための分子の効率を評価するために使用することができる。実際に、それは、分子の、腫瘍細胞の浸潤能を減少させる能力を測定するために使用することができる。また、分子によって、異なる分子の組合せが考慮される。
【0070】
その後、本方法が、分子の、腫瘍細胞の浸潤能を改変する効率を評価するために行われる場合、腫瘍細胞は、2つの接着パターンの組上に播種される前に、2つの接着パターンの組上に播種された後に、又は播種前後に分子と接触させてもよい。加えて、この関係においては、1群の腫瘍細胞を分子と接触させ、別の群は接触させない(対照群)。任意選択で、腫瘍細胞の更なる群を、腫瘍細胞の浸潤能を減少させることが公知の分子と接触させてもよい(陽性対照として)。任意選択で、腫瘍細胞を、分子の組合せと、又は様々な分子と(分子毎に1群の腫瘍細胞)接触させてもよい。
【0071】
本方法は、分子が、対象からの腫瘍細胞の浸潤能を減少させる場合、前記対象を治療するのに効率的として分子を選択する工程を更に含み得る。
【0072】
したがって、対象における腫瘍の治療のための分子の効率を評価するための方法は、分子を対象の腫瘍からの腫瘍細胞と接触させる工程と、分子で処理した腫瘍細胞の浸潤能を決定する工程と、分子で処理した腫瘍細胞の決定した浸潤能を非処理腫瘍細胞の浸潤能と比較する工程と、浸潤能が減少した場合、分子を選択する工程とを含む。
【0073】
別の態様においては、また、本発明は、対象における腫瘍の治療のための分子の効率を評価するための方法であって、本発明による方法によって前記患者の腫瘍細胞の浸潤能を決定する工程と、前記患者の腫瘍細胞と同じカテゴリーの浸潤能に分類される腫瘍細胞に効率的であることが公知の分子を選択する工程とを含む方法に関する。
【0074】
定義
「浸潤能」によって、細胞の、隣接又は遠位組織に浸潤する能力が意図される。
【0075】
「凸包絡」によって、2つの接着パターンの組を含有する最小凸多角形が意図される。
【0076】
「凸包絡によって規定される面積」によって、凸包絡に含まれる区域で覆われる面積が意図される。
【0077】
「S」によって、何の制限もない支持体上の真核細胞(例えば、ペトリ皿、プラスチック又はガラス製のカバーガラス上の細胞)で覆われる面を指すと意図される。
【0078】
「D」によって、前記面Sを有する円盤の直径を指すと意図される。
【0079】
「2つの接着パターン間の距離」によって、2つの接着パターンの2つのより緊密な点の間の距離が意図される。
【0080】
「約」によって、5%を超えるか、又は5%未満の値が意図される。
【0081】
「対」によって、1組の2つの接着パターン上に固定された2つの細胞が意図される。
【0082】
「記述子」によって、解析した細胞の特徴を定量するパラメーターを意味する。
【実施例
【0083】
段階的な浸潤能を有する13個の細胞株に関する研究を、三重で実行した。図1Aにおいて示す通り、各細胞株について、核間距離、細胞-細胞接続性及び高度に極性化した細胞の割合を定量し、それらの各々の平均値により正規化した。これらの値の主成分分析後、固有ベクトルを、図1Bで表す。この表示により、「細胞-細胞接続性」記述子と「高度に極性化した細胞の割合」記述子との反相関を可視化することができる。更に、「核間距離」は、他の記述子と相関しないことが分かる。
【0084】
次に、図2Aで示す通り、各細胞株反復を、固有ベクトル表示において個々にプロットする。その後、各細胞株反復を他からそれぞれ分類するために、ピアソンの相関を使用してプロット座標を計算する。得られる系統樹を、図2Bで示す。その結果、2つの主要なファミリーは正確に区別することができ、各ファミリーは2つのサブファミリーを包含する。MCF10A及びRPE1細胞株は、非腫瘍性であることが公知であるので、それらは、非浸潤性対照として使用される。MDA-MB-231は、非常に浸潤性であることが公知の三種陰性乳癌腫細胞株であるので、高浸潤性対照として使用される。図2Cで示す通り、細胞株及び反復を個々にスコア付けすることによって、平均値スコアにより、細胞株を4つのサブファミリーに忠実に分類することが可能になる。この分類に基づいて、各細胞株の浸潤能を、図2Dで示す通り決定する。この分類の全体的な検査により、がん細胞株から非がん(MCF10A、RPE1)細胞株をクラスター化すること、及び低浸潤性上皮細胞を転移(MDA-MB-468)~高浸潤性間葉系細胞(MDA-MB-231、MDA-MB-436、MDA-MB-157)と区別することができたことが示される。更に、本発明による方法は、各細胞株の組織学的分類と92%の相関、それらのTNBC分類と84%の相関及びそれらのTaubらのシグネチャー(Taubeら、2010年、PNAS, 107、15449~15454頁)と84%の相関を示す。まとめると、これらの結果は、本発明による方法は、13個の乳癌腫細胞株をそれらの浸潤能について効率的に分類することができることを示す。
【0085】
Burute Mら((2017年)、Dev Cell. 40、168~184頁)で用いられる方法は、段階的な浸潤性のがん細胞を精密に比較するために適していないことを示すために、本発明者らは、図3Aで例示する通り、この研究において開示されている記述子を使用することによって13個の乳癌腫細胞株を分類することを直接試みている。図3B及び図3Cで示す通り、ピアソンの相関解析からの結果は、細胞株を2つのファミリーに分類することのみを可能にし、がん性細胞と非がん性細胞との区別を避け、続いて、試験した細胞株を関連して分類することができなかった。
【0086】
更に、腫瘍細胞をそれらの浸潤能について効率的に区別するための「高度に極性化した細胞の割合」記述子の重要度を例示するために、本発明者らは、図4Aで例示する通り、前記記述子を、Burute Mら((2017年)、Dev Cell. 40、168~184頁)により定量した「極性化細胞の割合」記述子で置換することによって、本発明による方法を再試験した。散布図、及び図4Bで示すピアソンの相関から得られる系統樹により、13個の乳癌腫細胞株を3つのファミリーにクラスター化することが可能になる。しかしながら、最終的な図4Cの分類について、それは非がん(MCF10A、RPE1)細胞をがん細胞からクラスター化することができなかったので、及び非がん(RPE1)細胞株及び転移性高浸潤性細胞株(MDA-MB-231)が同じ分類となるので、この方法は、細胞をそれらの浸潤能について区別することができない。
【0087】
まとめると、これらの結果は、本発明による方法のみが、13個の乳癌腫細胞株をそれらの浸潤能について効率的に分類することができることを示す。
【0088】
材料及び方法
細胞培養
BT20、Hs578T、RPE1、MDA-MB-157、MDA-MB-231、MDA-MB-436及びMDA-MB-468細胞株を、10%FBS(biowest社)及び1%抗生-抗真菌剤(Gibco社)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(Gibco社)中で培養した。BT-549、HCC38、HCC70、HCC1143、HCC1937を、10%FBS及び1%抗生-抗真菌剤を補充したRPMI 1640(Gibco社)中で培養した。MCF10Aを、ATCCプロトコールに従ってMEGM増殖培地(Lonza社)中で培養した。
【0089】
細胞マイクロパターン加工
CYTOO社(www.cytoo.com)により、20mm2チップ形式において、H 1100μm2として細胞接着パターンを達成した。培養培地中、1チップ当たり500,000個の細胞密度で細胞を播種し、24時間インキュベートした。
【0090】
免疫染色
冷メタノール(-20℃)を使用して細胞を10分間固定し、3回のPBS(Euromedex社)洗浄工程後、0.2%triton X100(Sigma社)15分間、3%BSA(Sigma社)10分間を使用して免疫染色を行った。ペリセントリンターゲティング一次抗体(Abcam社)を3%BSA中で添加して45分間、その後、ヤギ抗ウサギAlexa488二次抗体(LifeTech社)を添加して30分間置いた。3回のPBS洗浄後、ProLong Gold antifade試薬及びDAPI(LifeTech社)を使用して、チップを顕微鏡スライド上に載せた。
【0091】
画像取得
40倍対物レンズを伴うEclipse-Ti回転盤顕微鏡(Nikon社)を使用して、画像を取得した。MetaMorphソフトウェア(Molecular Devices社)に記載されている自家製実行記録を使用して、取得を自動で達成した。
【0092】
画像処理
ImageJ(NIH)マクロを使用して画像処理を行った。第1に、鋳型適合法を使用して蛍光細胞-接着パターンを個別化した。第2に、対の各細胞内の閾値処理及びサイズフィルタリングに基づいて、核及びセントロソームの検出を実行した。細胞対のみが更なる解析について考察されることを考慮して、2つの核及び2つのセントロソームを包含する細胞の群を排他的に保持した。核質量中心を計算し、各セントロソームを最も近い核に割り当てる。第3に、核-セントロソーム及び核-核ベクトルを計算した。
【0093】
その後、対内の各細胞の配向及び接続性を定量するために、処理後工程を実行した。
【0094】
核間距離を、核-核ベクトルの長さとして測定した。
【0095】
細胞-細胞接続性を、細胞対を囲む凸包絡の面積と細胞対の面積との差として定義した。
【0096】
全集団に対する高度に極性化した細胞の割合を、参照の核-核軸におけるセントロソームの、その核からの相対座標として定量し、ここで核の最大半径は、任意の単位であった。その後、高度に極性化した細胞を:
【数7】
という条件での
【数8】
として定義される三角形領域において、細胞-細胞結合に近接して位置するセントロソームを有する細胞として定義した。
【0097】
統計解析
測定の関連性を増大させるために、主成分分析と呼ばれる統計手技を使用して構造記述子を加重し、XLSTATソフトウェアを使用して計算した。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C