(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】端子挿入装置及び端子挿入方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/20 20060101AFI20231108BHJP
H01R 13/42 20060101ALI20231108BHJP
【ＦＩ】
H01R43/20 A
H01R13/42 B
【請求項の数】
10
(21)【出願番号】P 2020000764
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021111460
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 秀隆
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開２０１３－０２０８３２（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開２００２－１１０３１０（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開２００３－２０３７４３（ＪＰ，Ａ）
(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)
Ｈ０１Ｒ ４３／２０
Ｈ０１Ｒ １３／４２
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を収容可能な端子収容室と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面と、前記端子収容室内において撓むランスと、を有するハウジングに、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入装置であって、前記端子の一部に係合する爪部と、前記爪部から延伸するバー本体と、を有する端子引込バーを備え、
前記バー本体は、前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、かつ、前記爪部が前記一部に係合した状態で前記接続面側に移動可能であり、
前記爪部は、前記バー本体が回動して、前記一部に係合される
ことを特徴とする端子挿入装置。
【請求項2】
前記爪部は、前記バー本体の延伸方向に対して交差する方向に延伸し、前記爪部が、前記端子の縁に係合する
ことを特徴とする請求項１に記載の端子挿入装置。
【請求項3】
前記爪部は、前記端子における、電気接触部と電線接続部とを連結する連結部の縁に係合することを特徴とする請求項２に記載の端子挿入装置。
【請求項4】
前記端子は、半筒状部を有し、前記バー本体の少なくとも一部が、前記半筒状部の内側を通って前記端子の一部に係合する
ことを特徴とする請求項２又は３に記載の端子挿入装置。
【請求項5】
端子を収容可能な端子収容室と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面と、前記端子収容室内において撓むランスと、を有するハウジングに、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入装置であって、
前記端子の一部に係合する爪部と、前記爪部から延伸するバー本体と、を有する端子引込バーを備え、
前記バー本体は、前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、かつ、前記爪部が前記一部に係合した状態で前記接続面側に移動可能であり、
前記端子引込バーは、二つの前記爪部を有し、
前記バー本体が、
各爪部からそれぞれ延伸する二つの延伸部と、
前記二つの延伸部間を連結する連結部と、
前記連結部から延伸する本体部と、を有する
ことを特徴とする端子挿入装置。
【請求項6】
貫通孔が設けられた底面を有し、前記接続面が前記底面に面するように前記ハウジングを保持するハウジング保持部を備え、前記爪部は、前記ハウジング保持部に保持された前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能である
ことを特徴とする請求項１～５のいずれか一項に記載の端子挿入装置。
【請求項7】
端子を収容可能な端子収容室と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面と、前記端子収容室内において撓むランスと、を有するハウジングに、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入装置であって、
前記端子の一部に係合する爪部と、前記爪部から延伸するバー本体と、を有する端子引込バーを備え、
前記バー本体は、前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、かつ、前記爪部が前記一部に係合した状態で前記接続面側に移動可能であり、
貫通孔が設けられた底面を有し、前記接続面が前記底面に面するように前記ハウジングを保持するハウジング保持部を備え、
前記爪部は、前記ハウジング保持部に保持された前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、
前記バー本体に接続され、前記端子引込バーを引込方向に変位させる引込治具ベースを備え、
前記引込治具ベースは、前記ハウジングが前記ハウジング保持部に保持された状態で、前記底面を挟んで前記前記ハウジングと対向する位置に配置される
ことを特徴とする端子挿入装置。
【請求項8】
前記バー本体の一端に接続され、前記バー本体の他端を中心に前記バー本体を回動するスライドベースを備え前記スライドベースは、前記ハウジングが前記ハウジング保持部に保持された状態で、前記底面を挟んで前記前記ハウジングと対向する位置に配置される
ことを特徴とする請求項７に記載の端子挿入装置。
【請求項9】
前記引込治具ベースは、第一リンク部を介して、前記バー本体が前記引込治具ベースに対して回動可能となるように、前記バー本体と連結され、前記スライドベースは、第二リンク部を介して、前記バー本体が前記スライドベースに対して回動可能となるように、前記バー本体と連結される
ことを特徴とする請求項８に記載の端子挿入装置。
【請求項10】
端子を収容可能な端子収容室と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面と、前記端子収容室内において撓むランスと、を有するハウジングに、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入方法であって、前記端子の一部に係合する爪部と、前記爪部から延伸するバー本体と、を有する端子引込バーのうち、少なくとも前記爪部を、前記接続面から前記端子収容室内に進入させ、
前記端子挿入面側において、前記爪部を前記端子の一部に係合させ、
前記爪部を前記端子の一部に係合させた状態で、前記バー本体を前記接続面側に引き込み、
前記爪部は、前記バー本体が回動して、前記一部に係合される
ことを特徴とする端子挿入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子挿入装置及び端子挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線が取り付けられた端子をコネクタボックスに挿入する際、電線を掴んで端子をハウジング内に挿し込み、この端子でハウジングランスを押して撓ませながら、ランスが弾性復帰する嵌合位置まで端子を挿入する。端子をスムーズに挿入するため、種々の技術が提案されている（例えば、特許文献１、２参照。）。特許文献１は、端子に設けられた弾性カール部が、ランスに形成されたテーパを摺接するコネクタを開示する。特許文献２は、ピンでランスを撓ませた状態で端子を挿入する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開２００１－２５７０２２号公報
【文献】特開２００３－２０３７４３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用のリレーボックス（Ｒ／Ｂ）やヒューズボックス（Ｆ／Ｂ）等の電気接続箱は、車両の制約により、リレーやヒューズ等の電装部品を分散配置することなく、電気接続箱を大型化させて一体化することが求められている。そこで、電気接続箱自体の強度向上を考慮して、ハウジングが高強度材料で構成されるように変わってきている。このため、端子を挿入するときにランスを撓ませるのに必要な力が大きくなっている。一方、ワイヤハーネスの軽量化が求められ、電線被覆の薄肉化ニーズが高まっている。すなわち、より細径化された（座屈荷重の低い）電線に取り付けられた端子を、撓ませにくいランスに嵌合させる必要がある。そこで、電線の腰折れ（座屈）を防ぐため、押し治具を使用して端子を押し込んだり、電流値に適した電線サイズよりも太い電線を使用している。
【0005】
しかしながら、押し治具を使用する場合、組付け時に押し治具をセットする作業時間がかかるため製品コストが上がったり、押し治具により電線被覆を損傷したり、押し治具の使用忘れにより電線の腰折れが発生することが懸念される。また、太い電線を使用する場合、コストや重量が上がってしまう。特許文献１に記載のコネクタであっても、細い電線に取り付けられた端子を挿入する際には電線の腰折れ発生のおそれがある。また、特許文献２に記載の端子挿入方法は、治具ピンをコネクタハウジングに挿入する際、ランスが治具ピンに押されて挿入方向にコネクタハウジングが変位し、ランスを撓ませられず、結果として電線の腰折れが発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子に取付けられた電線に挿入負荷をかけることなく端子をハウジング内に挿入して、電線の腰折れを防止できる端子挿入装置及び端子挿入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る端子挿入装置及び端子挿入方法は、下記（１）～（１０）を特徴としている。
（１）端子を収容可能な端子収容室と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面と、前記端子収容室内において撓むランスと、を有するハウジングに、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入装置であって、
前記端子の一部に係合する爪部と、前記爪部から延伸するバー本体と、を有する端子引込バーを備え、
前記バー本体は、前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、かつ、前記爪部が前記一部に係合した状態で前記接続面側に移動可能であり、
前記爪部は、前記バー本体が回動して、前記一部に係合される
ことを特徴とする端子挿入装置。
（２）前記爪部は、前記バー本体の延伸方向に対して交差する方向に延伸し、
前記爪部が、前記端子の縁に係合する
ことを特徴とする上記（１）に記載の端子挿入装置。
（３）前記爪部は、前記端子における、電気接触部と電線接続部とを連結する連結部の縁に係合する
ことを特徴とする上記（２）に記載の端子挿入装置。
（４）前記端子は、半筒状部を有し、
前記バー本体の少なくとも一部が、前記半筒状部の内側を通って前記端子の一部に係合する
ことを特徴とする上記（２）又は（３）に記載の端子挿入装置。
（５）端子を収容可能な端子収容室と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面と、前記端子収容室内において撓むランスと、を有するハウジングに、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入装置であって、
前記端子の一部に係合する爪部と、前記爪部から延伸するバー本体と、を有する端子引込バーを備え、
前記バー本体は、前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、かつ、前記爪部が前記一部に係合した状態で前記接続面側に移動可能であり、
前記端子引込バーは、二つの前記爪部を有し、
前記バー本体が、
各爪部からそれぞれ延伸する二つの延伸部と、
前記二つの延伸部間を連結する連結部と、
前記連結部から延伸する本体部と、を有する
ことを特徴とする端子挿入装置。
（６）貫通孔が設けられた底面を有し、前記接続面が前記底面に面するように前記ハウジングを保持するハウジング保持部を備え、
前記爪部は、前記ハウジング保持部に保持された前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能である
ことを特徴とする上記（１）～（５）のいずれか一に記載の端子挿入装置。
（７）端子を収容可能な端子収容室と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面と、前記端子収容室内において撓むランスと、を有するハウジングに、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入装置であって、
前記端子の一部に係合する爪部と、前記爪部から延伸するバー本体と、を有する端子引込バーを備え、
前記バー本体は、前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、かつ、前記爪部が前記一部に係合した状態で前記接続面側に移動可能であり、
貫通孔が設けられた底面を有し、前記接続面が前記底面に面するように前記ハウジングを保持するハウジング保持部を備え、
前記爪部は、前記ハウジング保持部に保持された前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、
前記バー本体に接続され、前記端子引込バーを引込方向に変位させる引込治具ベースを備え、
前記引込治具ベースは、前記ハウジングが前記ハウジング保持部に保持された状態で、前記底面を挟んで前記前記ハウジングと対向する位置に配置される
ことを特徴とする端子挿入装置。
（８）前記バー本体の一端に接続され、前記バー本体の他端を中心に前記バー本体を回動するスライドベースを備え
前記スライドベースは、前記ハウジングが前記ハウジング保持部に保持された状態で、前記底面を挟んで前記前記ハウジングと対向する位置に配置される
ことを特徴とする上記（７）に記載の端子挿入装置。
（９）前記引込治具ベースは、第一リンク部を介して、前記バー本体が前記引込治具ベースに対して回動可能となるように、前記バー本体と連結され、
前記スライドベースは、第二リンク部を介して、前記バー本体が前記スライドベースに対して回動可能となるように、前記バー本体と連結される
ことを特徴とする上記（８）に記載の端子挿入装置。
（１０）端子を収容可能な端子収容室と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面と、前記端子収容室内において撓むランスと、を有するハウジングに、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入方法であって、
前記端子の一部に係合する爪部と、前記爪部から延伸するバー本体と、を有する端子引込バーのうち、少なくとも前記爪部を、前記接続面から前記端子収容室内に進入させ、
前記端子挿入面側において、前記爪部を前記端子の一部に係合させ、
前記爪部を前記端子の一部に係合させた状態で、前記バー本体を前記接続面側に引き込み、
前記爪部は、前記バー本体が回動して、前記一部に係合される
ことを特徴とする端子挿入方法。
（１）端子を収容可能な端子収容室と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面と、前記端子収容室内において撓むランスと、を有するハウジングに、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入装置であって、
前記端子の一部に係合する爪部と、前記爪部から延伸するバー本体と、を有する端子引込バーを備え、
前記バー本体は、前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、かつ、前記爪部が前記一部に係合した状態で前記接続面側に移動可能であり、
前記爪部は、前記バー本体が回動して、前記一部に係合される
ことを特徴とする端子挿入装置。
（２）前記爪部は、前記バー本体の延伸方向に対して交差する方向に延伸し、
前記爪部が、前記端子の縁に係合する
ことを特徴とする上記（１）に記載の端子挿入装置。
（３）前記爪部は、前記端子における、電気接触部と電線接続部とを連結する連結部の縁に係合する
ことを特徴とする上記（２）に記載の端子挿入装置。
（４）前記端子は、半筒状部を有し、
前記バー本体の少なくとも一部が、前記半筒状部の内側を通って前記端子の一部に係合する
ことを特徴とする上記（２）又は（３）に記載の端子挿入装置。
（５）端子を収容可能な端子収容室と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面と、前記端子収容室内において撓むランスと、を有するハウジングに、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入装置であって、
前記端子の一部に係合する爪部と、前記爪部から延伸するバー本体と、を有する端子引込バーを備え、
前記バー本体は、前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、かつ、前記爪部が前記一部に係合した状態で前記接続面側に移動可能であり、
前記端子引込バーは、二つの前記爪部を有し、
前記バー本体が、
各爪部からそれぞれ延伸する二つの延伸部と、
前記二つの延伸部間を連結する連結部と、
前記連結部から延伸する本体部と、を有する
ことを特徴とする端子挿入装置。
（６）貫通孔が設けられた底面を有し、前記接続面が前記底面に面するように前記ハウジングを保持するハウジング保持部を備え、
前記爪部は、前記ハウジング保持部に保持された前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能である
ことを特徴とする上記（１）～（５）のいずれか一に記載の端子挿入装置。
（７）端子を収容可能な端子収容室と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面と、前記端子収容室内において撓むランスと、を有するハウジングに、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入装置であって、
前記端子の一部に係合する爪部と、前記爪部から延伸するバー本体と、を有する端子引込バーを備え、
前記バー本体は、前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、かつ、前記爪部が前記一部に係合した状態で前記接続面側に移動可能であり、
貫通孔が設けられた底面を有し、前記接続面が前記底面に面するように前記ハウジングを保持するハウジング保持部を備え、
前記爪部は、前記ハウジング保持部に保持された前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、
前記バー本体に接続され、前記端子引込バーを引込方向に変位させる引込治具ベースを備え、
前記引込治具ベースは、前記ハウジングが前記ハウジング保持部に保持された状態で、前記底面を挟んで前記前記ハウジングと対向する位置に配置される
ことを特徴とする端子挿入装置。
（８）前記バー本体の一端に接続され、前記バー本体の他端を中心に前記バー本体を回動するスライドベースを備え
前記スライドベースは、前記ハウジングが前記ハウジング保持部に保持された状態で、前記底面を挟んで前記前記ハウジングと対向する位置に配置される
ことを特徴とする上記（７）に記載の端子挿入装置。
（９）前記引込治具ベースは、第一リンク部を介して、前記バー本体が前記引込治具ベースに対して回動可能となるように、前記バー本体と連結され、
前記スライドベースは、第二リンク部を介して、前記バー本体が前記スライドベースに対して回動可能となるように、前記バー本体と連結される
ことを特徴とする上記（８）に記載の端子挿入装置。
（１０）端子を収容可能な端子収容室と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面と、前記端子収容室内において撓むランスと、を有するハウジングに、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入方法であって、
前記端子の一部に係合する爪部と、前記爪部から延伸するバー本体と、を有する端子引込バーのうち、少なくとも前記爪部を、前記接続面から前記端子収容室内に進入させ、
前記端子挿入面側において、前記爪部を前記端子の一部に係合させ、
前記爪部を前記端子の一部に係合させた状態で、前記バー本体を前記接続面側に引き込み、
前記爪部は、前記バー本体が回動して、前記一部に係合される
ことを特徴とする端子挿入方法。
【0008】
上記（１）の構成の端子挿入装置及び上記（１０）の構成の端子挿入方法によれば、バー本体をハウジングの端子収容室内に進入させ、端子挿入面側に配置された端子に爪部を係合させて、端子引込バーを接続面側に引き込む。これにより、端子がハウジングランスを撓ませながら進入する際、端子自体に力を加えて進入を補助するので、端子に取付けられた電線に負荷をかけることがない。よって、端子に取り付けられた電線が細い場合であっても、電線の腰折れ（座屈）を防止できる。したがって、細線化による、製品の軽量化、部品費低減によるコストダウンが可能となる。
【0009】
また、従来のように、端子挿入時に電線が腰折れしてしまう電線付端子に対して、挿入治具に端子をセットして挿入する必要がなくなるため、挿入治具を取り出し端子にセットしてケース嵌めを行う準備時間を廃止できる。また、挿入治具の使用忘れにより腰折れした電線の差し替え手直しを廃止できる。すなわち、製品のコストダウン、生産時間の短縮、品質の向上が可能となる。
【0010】
上記（２）の構成の端子挿入装置によれば、爪部が端子の縁に係合した状態を維持しやすくなるため、端子引込バーによって端子を端子収容室内に引き込みやすくなる。
【0011】
上記（３）の構成の端子挿入装置によれば、爪部を連結部の縁に係合させて、端子を端子収容室内に引き込むことができる。
【0012】
上記（４）の構成の端子挿入装置によれば、端子に接続された電線に負荷をかけることなくハウジングに端子を挿入できるため、平型接続端子に接続された電線を細線化できる。
【0013】
上記（５）の構成の端子挿入装置によれば、二つの爪部を端子に係合させることにより、係合安定性が高まる。また、ハウジングランスを二つの爪部間に位置させるように連結部の長さや間隔を設定することにより、端子引込バーとハウジングランスとの干渉を防止できる。
【0014】
上記（６）の構成の端子挿入装置によれば、ハウジング保持部によりハウジングが安定した姿勢で保持されるので、端子引込バーの挿入及び引き抜きを確実に行うことができる。
【0015】
上記（７）の構成の端子挿入装置によれば、引込治具ベースを変位させることにより、ハウジングへの端子の引き込みを行うことができる。
【0016】
上記（８）の構成の端子挿入装置によれば、スライドベースを移動させることにより、端子引込バーとハウジング保持部（底面）とのなす角度を変更できる。
【0017】
上記（９）の構成の端子挿入装置によれば、スライドベースを移動させることにより、端子引込バーを端子に引っ掛ける際、第一リンク部を支点とすることでがたつきがない状態とし、第二リンク部によって引込角度変更時の上下高さの変化を吸収することができる。
【0018】
更に、上記（１０）の構成の端子挿入方法によれば、爪部が端子に接触しないように端子収容室内に進入させた後、爪部を端子の所定位置に係合させることができるため、端子が損傷するおそれを低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、端子に取付けられた電線に挿入負荷をかけることなく端子をハウジング内に挿入して、電線の腰折れを防止できる。
【0020】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態（以下、「実施形態」という。）を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0023】
図１及び図２は、本発明の実施形態の端子挿入装置の分解斜視図である。図３及び図４は、本発明の実施形態の端子挿入装置における端子挿入方法を説明するための図であり、図２のＡ－Ａ断面を示す。本実施形態の端子挿入装置１は、コネクタボックス１０（ハウジング）に端子Ｔを挿入する際に、端子Ｔの挿入を支援するものである。端子挿入装置１は、コネクタボックス受け治具２０（ハウジング受け治具）と、端子引込バー３０と、引込治具ベース４０と、スライドベース５０と、を備える。以下の説明において、上下方向、左右方向、及び前後方向は互いに直交し、それぞれ、図１及び図２に示した方向とする。
【0024】
コネクタボックス１０は、リレーボックス、ヒューズボックス等の電気接続箱の合成樹脂製ハウジングであり、本実施形態において、端子挿入装置１によって複数の端子Ｔが挿入される対象である。コネクタボックス１０は、略直方体形状であり、複数のユニット（本実施形態では４つのユニット）を有する。一ユニットは、複数のタブ端子を有するリレー等の電装部品が接続される最小単位である。本実施形態では、一ユニットに、図１及び図２に示す方向に配列された４つの端子Ｔが挿入される例を示す。コネクタボックス１０の各ユニットは、４つの端子Ｔをそれぞれ収容可能な４つの端子収容室１１と、各端子収容室１１内においてそれぞれ撓む４つのランス１４と、を有する。また、コネクタボックス１０の各ユニットは、４つの端子Ｔが挿入される側の一面である端子挿入面１２と、端子挿入面１２と反対側の一面であって電装部品が接続される側の面である接続面１３と、を有する。
【0025】
端子収容室１１は、コネクタボックス１０の上下方向を貫通するように形成された、略直方体状の空間である。端子収容室１１を形成する、対向する一対の壁部１５、１６のうち、一方の壁部１５には、端子収容室１１内に突出するランス１４が一体に形成される。他方の壁部１６は、平坦に形成されており、端子Ｔの後述する基板部６１が摺接するようになっている。
【0026】
ランス１４は、図３及び図４に示すように、壁部１５の上下方向中央から下方向に向けて延在するアーム状の係止部材である。ランス１４は、端子Ｔが端子収容室１１内に完全に収容されると、端子Ｔの挿入方向（下方向）とは逆となる抜き方向（上方向）の移動を規制するように形成されている。
【0027】
ランス１４は、基端部１４ａと、中間部１４ｂと、先端部１４ｃと、係止突起部１４ｄと、で構成されている。ランス１４は、先端部１４ｃが壁部１６に向けて撓むとともに、係止突起部１４ｄが端子Ｔの後述する弾性カール部６２の後端部６２ａ（図１参照）に係合するように形成されている。
【0028】
基端部１４ａは、壁部１５の上下方向略中央に連続する部分である。中間部１４ｂは一端側が基端部１４ａに連成される部分であり、中間部１４ｂの壁部１６側の面の中央には、図３及び図４の断面視において直角三角形状のリブ１４ｅが一体に形成されている。リブ１４ｅを挟んだ両側には、一対のテーパが形成されている。一対のテーパは、端子収容室１１内に挿入される端子Ｔの後述する弾性カール部６２、６２（図１参照）が当接する部分に形成されている。中間部１４ｂの他端及び他端近傍には、係止突起部１４ｄと先端部１４ｃとが各々連成されている。
【0029】
【0030】
端子Ｔは、雌型であり、導電性を有する金属薄板をプレス加工することにより形成された、いわゆる平型接続端子である。端子Ｔは、略へら状の基板部６１と、基板部６１の前方側（図１の下側）に形成される一対の弾性カール部６２、６２（半筒状部）と、基板部６１の後方側（図１の上側）に形成される一対の導体圧着部６３、６３及び一対の被覆圧着部６４、６４とを備えている。
【0031】
また、端子Ｔは、基板部６１の前方側が図示しない電装部品の雄型端子（相手側端子）に対する電気接触用の部分として、基板部６１の後方側が例えば自動車用ワイヤハーネスを構成するうちの図示しない一つの電線に対する電線接続用の部分として構成されている。
【0032】
基板部６１の上記前方側には、打ち出しによって弾性カール部６２、６２側に膨出する電気接触凸部６５が形成されている。電気接触凸部６５は、弾性カール部６２の端部とで上記図示しない雄形の相手側端子を挟持するようになっている。また、電気接触凸部６５には、テーパが全周にわたって周設されており、テーパの前部が上記図示しない雄形の相手側端子を所定位置に案内するようになっている。
【0033】
弾性カール部６２、６２は、基板部６１の前方側の両側にそれぞれ連成されており、基板部６１の延在方向に沿う幅が幅広な片状に形成されている。また、その片の断面視が略Ｃ字状になるように内側に曲げられて、半筒状に形成されている。
【0034】
導体圧着部６３、６３は、図示しない電線の端末部分における被覆を皮剥して露出させた芯線部を圧着するための短冊片状の部分であって、基板部６１の後方側前寄りの両側にそれぞれに連成されている。導体圧着部６３、６３が加締められると芯線部が圧着されるようになる。
【0035】
尚、導体圧着部６３、６３と弾性カール部６２、６２との間、すなわち、電気接触部と電線接続部とを連結する連結部６８（図５参照）には、高さの低い枠部６６、６６（縁）が基板部６１の両側にそれぞれ連成されている。
【0036】
被覆圧着部６４、６４は、電線の被覆を圧着するための部分であって、導体圧着部６３、６３よりも長い短冊片状に形成されるとともに、基板部６１の後方側後ろ寄りの両側にそれぞれ連成されている。被覆圧着部６４、６４が加締められると被覆が圧着されて、電線被覆の後ろへのズレが防止されるようになる。
【0037】
コネクタボックス受け治具２０は、コネクタボックス１０を内部に収容するための空間２０Ａを有する、略直方体形状に形成された合成樹脂製又は金属製の部材である。コネクタボックス受け治具２０は、底面２１と、底面２１から立設した壁面２２と、を有する。また、コネクタボックス受け治具２０は、底面２１と壁面２２とがコネクタボックス１０の下面及び四つの側面における中央および下方を包囲する形状を有する。
【0038】
底面２１は、矩形状板材であり、コネクタボックス１０が載置された状態においてコネクタボックス１０の各端子収容室１１の下側開口部にそれぞれ対応する各位置に、端子引込バー３０を挿通可能な孔２１Ａ（貫通孔）が設けられる。本実施形態では孔２１Ａが円形状を有するが、孔２１Ａは、端子引込バー３０を挿通可能であれば、矩形状等、任意の形状でよい。
【0039】
壁面２２は、底面２１の四辺から矩形面がそれぞれ立設されて底面２１を取り囲む側面を形成する。壁面２２の高さ（上下方向の長さ）は、コネクタボックス１０の高さよりも低くされている。壁面２２がコネクタボックス１０の四つの側面における中央および下方を包囲することで、コネクタボックス１０の前後方向及び左右方向の移動が規制される。尚、壁面２２の高さは、コネクタボックス１０の高さよりも高いか又は同程度であってもよい。
【0040】
コネクタボックス受け治具２０は、図示しない作業台に載置される。作業台は、例えば、後述する端子引込バー３０、引込治具ベース４０及びスライドベース５０を内部に収容可能であり、端子引込バー３０の上下方向の移動を妨げない形状及び大きさの開口部を有する。
【0041】
端子引込バー３０は、端子の一部に係合する二つの爪部３１、３１と、爪部３１、３１から延伸するバー本体３２と、を有する金属製部材（板材）である。端子引込バー３０は、コネクタボックス受け治具２０の底面２１よりも下方において、孔２１Ａの位置に対応する位置に配置される。バー本体３２は、孔２１Ａを通ってコネクタボックス受け治具２０に収容されたコネクタボックス１０の端子収容室１１内に進入可能である。また、バー本体３２は、端子Ｔに端子引込バー３０を引っ掛けた状態、すなわち、爪部３１、３１が端子Ｔの枠部６６、６６（一部、縁）に係合した状態で、接続面１３側に移動可能である。
【0042】
図５は、端子Ｔに端子引込バー３０を引っ掛けた状態を示す。図５において、コネクタボックス１０及びコネクタボックス受け治具２０は、図示を省略している。実際には、図３（ｃ）に示すように、端子引込バー３０は、コネクタボックス受け治具２０に収容されたコネクタボックス１０の端子収容室１１内において、端子Ｔに係合している。
【0043】
図５に示すように、端子引込バー３０は、バー本体３２が、各爪部３１からそれぞれ延伸する二つの延伸部３３、３３と、二つの延伸部３３、３３間を連結する連結部３４と、連結部３４から延伸する本体部３５と、ピン孔部３６、３７と、を有する。爪部３１は、バー本体３２の延伸方向Ｄに対して交差する方向、具体的には、延伸方向Ｄと直交する方向に延伸している。
【0044】
延伸部３３は、端子引込バー３０の全長の略半分程度の長さを有する棒状部材であり、一端に爪部３１が設けられ、他端が連結部３４に連成されている。二つの延伸部３３は、コネクタボックス１０のランス１４と干渉しない程度の幅及び長さに設定され、連結部３４によって互いに連結されている。すなわち二つの延伸部３３、３３及び連結部３４は、Ｕ字形状に形成されている。
【0045】
本体部３５は、帯状部材であり、一端が連結部３４に連成され、他端にピン孔部３７が設けられる。また、本体部３５は、中央付近のピン孔部３７近傍にピン孔部３６を有する。ピン孔部３６、３７は、バー本体３２の幅方向（延伸方向Ｄに直交する方向、図１における前後方向）に延在する孔を有する膨出部であり、各孔に、後述する軸ピン７０、７２がそれぞれ挿通される。
【0046】
引込治具ベース４０は、バー本体３２に接続され、図示しない駆動手段によって移動されることにより、端子引込バー３０を引込方向Ｃに変位させる。引込治具ベース４０は、コネクタボックス１０がコネクタボックス受け治具２０に保持された状態で、底面２１を挟んでコネクタボックス１０と対向する位置に配置される。引込治具ベース４０は、中央付近に略矩形状の開口部４１を有する矩形板材であり、開口部４１の一辺に沿って、支承部４２が立設される。
【0047】
支承部４２は、端子引込バー３０の幅と同程度の間隔を有して配置された二つのＬ字部材４２Ａ、４２Ａと、二つのＬ字部材４２Ａ、４２Ａ間を接続する接続部４２Ｂと、を有する。Ｌ字部材４２Ａの一端には、軸ピン７０が挿通される孔が設けられる。支承部４２は、Ｌ字部材４２Ａ、４２Ａ間に配置された端子引込バー３０を支持する。Ｌ字部材４２Ａの孔及びピン孔部３６の孔に挿通された軸ピン７０は、頭部と逆側の端部の溝に嵌められた座金７１によって抜け止めされる。すなわち、引込治具ベース４０は、ピン孔部３６、軸ピン７０及び座金７１（第一リンク部）を介してバー本体３２が引込治具ベース４０に対して回動可能となるように、バー本体３２と連結される。
【0048】
スライドベース５０は、バー本体３２の一端に接続され、図示しない駆動手段によってスライド方向Ｂに移動されることにより、バー本体３２の他端を中心にバー本体３２を回動する。スライドベース５０は、中央付近に支承部５１を有する矩形板材である。
【0049】
支承部５１は、端子引込バー３０の幅と同程度の間隔を有して配置された二つの起立部５１Ａ、５１Ａと、二つの起立部５１Ａ、５１Ａ間を接続する接続部５１Ｂと、を有する。起立部５１Ａの一端には、軸ピン７２が挿通される孔が設けられる。支承部５１は、起立部５１Ａ、５１Ａ間に配置された端子引込バー３０を支持する。起立部５１Ａの孔及びピン孔部３７の孔に挿通された軸ピン７２は、頭部と逆側の端部の溝に嵌められた座金７３によって抜け止めされる。
【0050】
すなわち、スライドベース５０は、ピン孔部３７、軸ピン７２及び座金７３（第二リンク部）を介してバー本体３２がスライドベース５０に対して回動可能となるように、バー本体３２と連結される。スライドベース５０によりバー本体３２を回動させることにより、爪部３１、３１が端子Ｔに接触しないように端子収容室１１内に進入させた後、爪部３１、３１を端子Ｔの所定位置に係合させることができるため、端子Ｔが損傷するおそれを低減できる。
【0051】
スライドベース５０は、引込治具ベース４０の下方において、支承部５１が引込治具ベース４０の開口部４１を挿通するように配置される。コネクタボックス受け治具２０の下方において、スライドベース５０をスライド方向Ｂに移動することにより、端子引込バー３０と底面２１とのなす角度を変更できる。また、スライドベース５０をスライドさせることにより、端子引込バー３０を端子Ｔに引っ掛ける際、第一リンク部を支点とすることでがたつきがない状態とし、第二リンク部によって引込角度変更時の上下高さの変化を吸収することができる。
【0052】
次に、図３及び図４を参照して、端子挿入装置１における端子Ｔの挿入方法について説明する。図３及び図４では、右側の端子収容室１１において端子引込バー３０を挿入して端子Ｔに引っ掛け端子Ｔを引き込む（挿入する）例を説明し、他の端子収容室における端子Ｔの挿入については図示及び説明を省略する。また図３及び図４において、引込治具ベース４０及びスライドベース５０の図示を省略する。尚、端子挿入装置１において、端子Ｔのセットは、自動機で行ってもよいし、手動で行ってもよい。
【0053】
まず、図３（ａ）に示すように、コネクタボックス受け治具２０の内部（空間２０Ａ、図１参照）に、コネクタボックス１０を収容する。コネクタボックス１０の接続面１３がコネクタボックス受け治具２０の底面２１に当接している。この状態で、底面２１の孔２１Ａの下方、すなわち、接続面１３側から、直立姿勢（端子Ｔの挿入方向に対して傾斜していない姿勢）の端子引込バー３０を上方に移動させて端子収容室１１内に挿入する。端子引込バー３０は、爪部３１、３１が、ランス１４の形成されていない側の壁部１６に向かって突出するように配置されている。端子収容室１１内において、延伸部３３、３３の間にランス１４の係止突起部１４ｄが配置されるので、ランス１４と端子引込バー３０とは干渉しない。図３（ａ）において、少なくとも爪部３１、３１の一部が端子挿入面１２よりも上方（端子挿入室１１外）に突出しているので、端子引込バー３０を容易に端子Ｔに引っ掛けることができる。
【0054】
次に、図３（ｂ）に示すように、端子Ｔはコネクタボックス１０の上方（端子挿入面１２側）から、端子収容室１１内に挿入される（端子挿入面１２側において端子Ｔを配置（セット）する）。端子Ｔは、端子Ｔに取り付けられた図示しない電線が把持されて、セットされる。端子Ｔは、爪部３１、３１及び延伸部３３、３３が、弾性カール部６２、６２の内部、すなわち、弾性カール部６２、６２と基板部６１とで囲まれる空間、を通るように、配置される。図３（ｂ）において、端子引込バー３０は、スライドベース５０の支承部５１が引込治具ベース４０の支承部４２に近接するように位置されて、上下方向（端子Ｔの挿入方向）に対して傾斜した姿勢とされている。
【0055】
続いて、図３（ｃ）に示すように、端子Ｔを端子収容室１１内において下方に移動させ、爪部３１、３１が端子Ｔの枠部６６、６６（図５参照）の上方に位置した状態で、スライドベース５０を左側に（支承部５１が支承部４２から離間するように）変位させる。スライドベース５０が左に変位することにより端子引込バー３０が直立姿勢となり、爪部３１、３１が枠部６６、６６に係合する（図５参照）。このように、端子引込バー３０を端子Ｔに引っ掛ける。
【0056】
そして、端子引込バー３０を端子Ｔに引っ掛けた状態で、引込治具ベース４０を下方に変位させると、図４（ａ）に示すように、端子Ｔは、端子収容室１１内において下方に挿入される（端子Ｔが引き込まれる）。端子Ｔは、弾性カール部６２、６２をランス１４（リブ１４ｅの両端に設けられた一対のテーパ）に摺接しながら、先端部１４ｃが壁部１５側に近接するように、ランス１４を撓ませる。ランス１４の係止突起部１４ｄは弾性カール部６２、６２に乗り上げる。端子Ｔがランス１４を撓ませながら進入する際、端子Ｔ自体に力を加えて進入を補助するので、端子Ｔに取付けられた電線に負荷をかけることがない。よって、端子Ｔに取り付けられた電線が細い場合であっても、座屈を防止して、端子Ｔを適正挿入位置に到達させることができる。
【0057】
さらに端子Ｔが下方に引き込まれて、端子Ｔの先端６７（図１参照）が壁部１６に設けられたストップ壁１７に当接する（適正挿入位置に到達する）と、係止突起部１４ｄが弾性カール部６２、６２を通過し離れると、ランス１４は復元力により元の位置に復帰する。ランス１４の係止面１４ｆと端子Ｔの後端部６２ａとが当接して、ロックが完了する。その後、スライドベース５０を右側にスライドさせて、図４（ｂ）に示すように、端子引込バー３０を元の傾斜した角度に戻すと、爪部３１、３１が枠部６６、６６から離れる。次に引込治具ベース４０を下方に移動させて、端子引込バー３０を端子収容室１１外に移動させる。この状態で、端子Ｔが挿入されランス１４によって抜け止めされたコネクタボックス１０を、コネクタボックス受け治具２０から取り出すことができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の端子挿入装置１及び端子挿入方法によれば、バー本体３２を、コネクタボックス１０の端子収容室１１内に進入させ、端子挿入面１２側に配置された端子Ｔに爪部３１、３１を係合させて、端子引込バー３０を接続面１３側に引き込む。これにより、端子Ｔがランス１４を撓ませながら進入する際、端子Ｔ自体に力を加えて進入を補助するので、端子Ｔに取付けられた電線に負荷をかけることがない。よって、端子Ｔに取り付けられた電線が細い場合であっても、電線の腰折れ（座屈）を防止できる。したがって、細線化による、製品の軽量化、部品費低減によるコストダウンが可能となる。
【0059】
また、従来のように、端子挿入時に電線が腰折れしてしまう電線付端子に対して、挿入治具に端子をセットして挿入する必要がなくなるため、挿入治具を取り出し端子Ｔにセットしてケース嵌めを行う準備時間を廃止できる。また、挿入治具の使用忘れにより腰折れした電線の差し替え手直しを廃止できる。すなわち、製品のコストダウン、生産時間の短縮、品質の向上が可能となる。
【0060】
また、端子引込バー３０の二つの爪部３１、３１を端子Ｔに係合させることにより、係合安定性が高まる。さらに、爪部３１がバー本体３２の延伸方向Ｄに対して交差する方向に延伸することにより、爪部３１、３１が端子Ｔの縁（枠部６６、６６）に係合した状態を維持しやすくなるため、端子引込バー３０によって端子Ｔを端子収容室１１内に引き込みやすくなる。
【0061】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。上記実施形態では、電気接続箱のハウジングであるコネクタボックスに、端子を挿入する例を説明したが、本発明は、コネクタボックスに限定されず、例えば自動車用ワイヤハーネスの接続に用いられるコネクタのハウジング等に適用可能である。
【0062】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る端子挿入装置及び端子挿入方法の特徴をそれぞれ以下［１］～［１１］に簡潔に纏めて列記する。
［１］端子（Ｔ）を収容可能な端子収容室（１１）と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面（１２）と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面（１３）と、前記端子収容室内において撓むランス（１４）と、を有するハウジング（コネクタボックス１０）に、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入装置（１）であって、
前記端子の一部に係合する爪部（３１）と、前記爪部から延伸するバー本体（３２）と、を有する端子引込バー（３０）を備え、
前記バー本体は、前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、かつ、前記爪部が前記一部に係合した状態で前記接続面側に移動可能である
ことを特徴とする端子挿入装置（１）。
［２］前記爪部（３１）は、前記バー本体の延伸方向（Ｄ）に対して交差する方向に延伸し、
前記爪部が、前記端子の縁に係合する
ことを特徴とする上記［１］に記載の端子挿入装置。
［３］前記爪部（３１）は、前記端子における、電気接触部（弾性カール部６２、電気接触凸部６５）と電線接続部（導体圧着部６３、被覆圧着部６４）とを連結する連結部（６８）の縁（６６）に係合する
ことを特徴とする上記［２］に記載の端子挿入装置。
［４］前記端子は、半筒状部（弾性カール部６２）を有し、
前記バー本体の少なくとも一部が、前記半筒状部の内側を通って前記端子の一部に係合する
ことを特徴とする上記［２］又は［３］に記載の端子挿入装置。
［５］前記端子引込バーは、二つの前記爪部を有し、
前記バー本体（３２）が、
各爪部からそれぞれ延伸する二つの延伸部（３３）と、
前記二つの延伸部間を連結する連結部（３４）と、
前記連結部から延伸する本体部（３５）と、を有する
ことを特徴とする上記［１］～［４］のいずれか一に記載の端子挿入装置。
［６］貫通孔（孔２１Ａ）が設けられた底面（２１）を有し、前記接続面が前記底面に面するように前記ハウジングを保持するハウジング保持部（コネクタボックス受け治具２０）を備え、
前記爪部は、前記ハウジング保持部に保持された前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能である
ことを特徴とする上記［１］～［５］のいずれか一に記載の端子挿入装置。
［７］前記バー本体に接続され、前記端子引込バーを引込方向（Ｃ）に変位させる引込治具ベース（４０）を備え、
前記引込治具ベースは、前記ハウジングが前記ハウジング保持部に保持された状態で、前記底面を挟んで前記前記ハウジングと対向する位置に配置される
ことを特徴とする上記［６］に記載の端子挿入装置。
［８］前記バー本体の一端に接続され、前記バー本体の他端を中心に前記バー本体を回動するスライドベース（５０）を備え
前記スライドベースは、前記ハウジングが前記ハウジング保持部に保持された状態で、前記底面を挟んで前記前記ハウジングと対向する位置に配置される
ことを特徴とする上記［７］に記載の端子挿入装置。
［９］前記引込治具ベース（４０）は、第一リンク部（ピン孔部３６、軸ピン７０、座金７１）を介して、前記バー本体（３２）が前記引込治具ベースに対して回動可能となるように、前記バー本体と連結され、
前記スライドベース（５０）は、第二リンク部（ピン孔部３７、軸ピン７２、座金７３）を介して、前記バー本体（３２）が前記スライドベースに対して回動可能となるように、前記バー本体と連結される
ことを特徴とする上記［８］に記載の端子挿入装置。
［１０］端子（Ｔ）を収容可能な端子収容室（１１）と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面（１２）と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面（１３）と、前記端子収容室内において撓むランス（１４）と、を有するハウジング（コネクタボックス１０）に、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入方法であって、
前記端子の一部に係合する爪部（３１）と、前記爪部から延伸するバー本体（３２）と、を有する端子引込バー（３０）のうち、少なくとも前記爪部を、前記接続面から前記端子収容室内に進入させ、
前記端子挿入面側において、前記爪部を前記端子の一部に係合させ、
前記爪部を前記端子の一部に係合させた状態で、前記バー本体を前記接続面側に引き込む
ことを特徴とする端子挿入方法。
［１１］前記爪部は、前記バー本体が回動して、前記一部に係合される
ことを特徴とする上記［１０］に記載の端子挿入方法。
［１］端子（Ｔ）を収容可能な端子収容室（１１）と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面（１２）と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面（１３）と、前記端子収容室内において撓むランス（１４）と、を有するハウジング（コネクタボックス１０）に、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入装置（１）であって、
前記端子の一部に係合する爪部（３１）と、前記爪部から延伸するバー本体（３２）と、を有する端子引込バー（３０）を備え、
前記バー本体は、前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能であり、かつ、前記爪部が前記一部に係合した状態で前記接続面側に移動可能である
ことを特徴とする端子挿入装置（１）。
［２］前記爪部（３１）は、前記バー本体の延伸方向（Ｄ）に対して交差する方向に延伸し、
前記爪部が、前記端子の縁に係合する
ことを特徴とする上記［１］に記載の端子挿入装置。
［３］前記爪部（３１）は、前記端子における、電気接触部（弾性カール部６２、電気接触凸部６５）と電線接続部（導体圧着部６３、被覆圧着部６４）とを連結する連結部（６８）の縁（６６）に係合する
ことを特徴とする上記［２］に記載の端子挿入装置。
［４］前記端子は、半筒状部（弾性カール部６２）を有し、
前記バー本体の少なくとも一部が、前記半筒状部の内側を通って前記端子の一部に係合する
ことを特徴とする上記［２］又は［３］に記載の端子挿入装置。
［５］前記端子引込バーは、二つの前記爪部を有し、
前記バー本体（３２）が、
各爪部からそれぞれ延伸する二つの延伸部（３３）と、
前記二つの延伸部間を連結する連結部（３４）と、
前記連結部から延伸する本体部（３５）と、を有する
ことを特徴とする上記［１］～［４］のいずれか一に記載の端子挿入装置。
［６］貫通孔（孔２１Ａ）が設けられた底面（２１）を有し、前記接続面が前記底面に面するように前記ハウジングを保持するハウジング保持部（コネクタボックス受け治具２０）を備え、
前記爪部は、前記ハウジング保持部に保持された前記ハウジングの前記端子収容室内に進入可能である
ことを特徴とする上記［１］～［５］のいずれか一に記載の端子挿入装置。
［７］前記バー本体に接続され、前記端子引込バーを引込方向（Ｃ）に変位させる引込治具ベース（４０）を備え、
前記引込治具ベースは、前記ハウジングが前記ハウジング保持部に保持された状態で、前記底面を挟んで前記前記ハウジングと対向する位置に配置される
ことを特徴とする上記［６］に記載の端子挿入装置。
［８］前記バー本体の一端に接続され、前記バー本体の他端を中心に前記バー本体を回動するスライドベース（５０）を備え
前記スライドベースは、前記ハウジングが前記ハウジング保持部に保持された状態で、前記底面を挟んで前記前記ハウジングと対向する位置に配置される
ことを特徴とする上記［７］に記載の端子挿入装置。
［９］前記引込治具ベース（４０）は、第一リンク部（ピン孔部３６、軸ピン７０、座金７１）を介して、前記バー本体（３２）が前記引込治具ベースに対して回動可能となるように、前記バー本体と連結され、
前記スライドベース（５０）は、第二リンク部（ピン孔部３７、軸ピン７２、座金７３）を介して、前記バー本体（３２）が前記スライドベースに対して回動可能となるように、前記バー本体と連結される
ことを特徴とする上記［８］に記載の端子挿入装置。
［１０］端子（Ｔ）を収容可能な端子収容室（１１）と、前記端子が挿入される側の一面である端子挿入面（１２）と、前記端子挿入面と反対側の一面である接続面（１３）と、前記端子収容室内において撓むランス（１４）と、を有するハウジング（コネクタボックス１０）に、前記端子を挿入する際に、前記端子の挿入を支援する端子挿入方法であって、
前記端子の一部に係合する爪部（３１）と、前記爪部から延伸するバー本体（３２）と、を有する端子引込バー（３０）のうち、少なくとも前記爪部を、前記接続面から前記端子収容室内に進入させ、
前記端子挿入面側において、前記爪部を前記端子の一部に係合させ、
前記爪部を前記端子の一部に係合させた状態で、前記バー本体を前記接続面側に引き込む
ことを特徴とする端子挿入方法。
［１１］前記爪部は、前記バー本体が回動して、前記一部に係合される
ことを特徴とする上記［１０］に記載の端子挿入方法。
【符号の説明】
【0063】
１ 端子挿入装置
１０ コネクタボックス
１１ 端子収容室
１２ 端子挿入面
１３ 接続面
１４ ランス
２０ コネクタボックス受け治具
２１ 底面
２１Ａ 孔
２０Ａ 空間
２２ 壁面
３０ 端子引込バー
３１ 爪部
３２ バー本体
４０ 引込治具ベース
５０ スライドベース
Ｔ 端子
１０ コネクタボックス
１１ 端子収容室
１２ 端子挿入面
１３ 接続面
１４ ランス
２０ コネクタボックス受け治具
２１ 底面
２１Ａ 孔
２０Ａ 空間
２２ 壁面
３０ 端子引込バー
３１ 爪部
３２ バー本体
４０ 引込治具ベース
５０ スライドベース
Ｔ 端子
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】