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  • 特許-温度推定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】温度推定装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231108BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20231108BHJP
   G01R 31/374 20190101ALI20231108BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20231108BHJP
   G01R 31/3842 20190101ALI20231108BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
G01R31/367
G01R31/374
G01R31/3828
G01R31/3842
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020016127
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021125915
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】矢口 優
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-118022(JP,A)
【文献】特開2011-014395(JP,A)
【文献】特開2009-099375(JP,A)
【文献】特開2003-185504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
G01R 31/36 - 31/44
H01M 10/42 - 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の温度を推定するための温度推定装置であって、
前記二次電池の電圧値が一定以上変化したときに、前記電圧値の変化が生じた第1時刻と前記第1時刻から一定時間前の第2時刻との間の時間における前記二次電池の電流値、及び、前記電圧値の変化量に基づいた回帰式を用いて、前記二次電池の温度を推定する温度推定部を備える、
温度推定装置。
【請求項2】
前記第1時刻と前記第2時刻との間の時間を複数の時間領域に分割し、前記時間領域のそれぞれにおいて前記二次電池の電流値を積算することによって、前記時間領域のそれぞれにおける電流量を取得する電流量取得部をさらに備え、
前記温度推定部は、前記電圧値の変化量、及び、前記時間領域のそれぞれにおける前記電流量を説明変数とし、前記温度を目的変数とする前記回帰式を用いて、前記温度を推定する、
請求項1に記載の温度推定装置。
【請求項3】
前記二次電池の起動時における開回路電圧から推定された充電状態に、前記起動時から前記第1時刻までの電流量を積算することにより、前記第1時刻における仮の充電状態である仮充電状態を算出する仮充電状態算出部をさらに備え、
前記温度推定部は、前記回帰式において、前記仮充電状態をさらに説明変数として用いる、
請求項1又は2に記載の温度推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二次電池の温度推定装置が記載されている。この温度推定装置は、所定の周波数のリップル電流を二次電池に発生させるリップル生成部と、二次電池の充放電電流を検出するための電流検出部と、二次電池の電圧を検出するための電圧検出部と、二次電池にリップル電流が発生したときに検出される電流及び電圧に基づいて、二次電池のインピーダンスを推定するインピーダンス推定部と、推定されたインピーダンスに基づいて二次電池の温度を推定する温度推定部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-18532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリ内部の温度は、バッテリを使用するうえで重要な要素である。しかしながら、従来では、バッテリ内部の温度を直接的にセンシングすることが困難であるため、バッテリが実装された基板等にサーミスタを配置し、そこで測定された温度をバッテリ内部の温度として扱う場合があった。これに対して、上記の温度推定装置によれば、温度センサを用いることなく、精度よく二次電池の温度が推定可能であるとされている。一方で、上記の温度推定装置では、温度の推定のために、二次電池にリップル電流を発生させるための構成が必要となる。したがって、より簡単な構成で正確に二次電池の温度を推定可能とすることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、簡単な構成で二次電池の温度を正確に推定可能な温度推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る温度推定装置は、二次電池の温度を推定するための温度推定装置であって、二次電池の電圧値が一定以上変化したときに、電圧値の変化が生じた第1時刻と第1時刻から一定時間前の第2時刻との間の時間における二次電池の電流値、及び、電圧値の変化量に基づいた回帰式を用いて、二次電池の温度を推定する温度推定部を備える。
【0007】
この装置では、温度の推定に際して、二次電池の電圧値が一定以上変化した第1時刻と、第1時刻の一定時間前の第2時刻との間の時間における電流値、及び、当該電圧の変化量に基づいた回帰式を用いて、二次電池の温度を推定する。このため、この装置によれば、二次電池に対して別途処理を施すための構成を用いることなく、簡単な構成で二次電池の温度を正確に推定可能である。
【0008】
本発明に係る温度推定装置は、第1時刻と第2時刻との間の時間を複数の時間領域に分割し、時間領域のそれぞれにおいて二次電池の電流値を積算することによって、時間領域のそれぞれにおける電流量を取得する電流量取得部をさらに備え、温度推定部は、電圧値の変化量、及び、時間領域のそれぞれにおける電流量を説明変数とし、温度を目的変数とする回帰式を用いて、温度を推定してもよい。このように、温度の推定に用いる回帰式において、電流量を説明変数として用いることができる。
【0009】
本発明に係る温度推定装置は、二次電池の起動時における開回路電圧から推定された充電状態に、起動時から第1時刻までの電流量を積算することにより、第1時刻における仮の充電状態である仮充電状態を算出する仮充電状態算出部をさらに備え、温度推定部は、回帰式において、仮充電状態をさらに説明変数として用いてもよい。このように、温度の推定に用いる回帰式において、一般的な手法により推定された充電状態を、仮充電状態として説明変数にさらに用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単な構成で二次電池の温度を正確に推定可能な温度推定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るバッテリシステムの構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示された温度推定装置の機能的な構成を示す模式図である。
図3図3は、バッテリの電圧値及び電流値の時間変化を示すグラフである。
図4図4は、バッテリの電流値の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照した詳細な説明を行う。各図において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0013】
図1は、一実施形態に係るバッテリシステムの構成を示す模式図である。図1に示されるバッテリシステム100は、例えば、ハイブリッド車両や電動車両等の車両に搭載されている。バッテリシステム100は、バッテリ50を備えている。バッテリ50は、任意の二次電池であり、一例としてリチウムイオン二次電池である。バッテリ50は、インバータ60を介してモータ70に電気的に接続されている。バッテリ50は、モータ70に電力を供給する。モータ70は、例えば上述した車両の駆動に用いられる。
【0014】
バッテリシステム100は、バッテリ50の内部の温度を推定するための温度推定システム10を備えている。温度推定システム10は、温度推定装置1と、電流センサ20と、電圧センサ30と、を有している。電流センサ20は、バッテリ50に接続され、バッテリ50の充放電の際の電流値を検出する。電圧センサ30は、バッテリ50に接続され、バッテリ50の電圧値を検出する。温度推定装置1は、電流センサ20及び電圧センサ30に電気的に接続されている。
【0015】
温度推定装置1は、電流センサ20及び電圧センサ30から検出結果を示す情報を取得し、取得した情報に基づいてバッテリ50の内部の温度を推定する。温度推定装置1は、例えば、バッテリ監視システム(Battery Management System)に構成され得る。また、温度推定装置1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する電子制御ユニットにおいて構成され得る。温度推定装置1の後述する各機能部は、ROMに記録されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより実現され得る。
【0016】
図2は、図1に示された温度推定装置の機能的な構成を示す模式図である。図3は、バッテリの電圧値及び電流値の時間変化を示すグラフである。図2,3に示されるように、温度推定装置1は、電流量取得部2、仮充電状態算出部3、及び、温度推定部4を有している。
【0017】
温度推定部4は、バッテリ50の電圧値Vが一定以上変化したときに、電圧値Vの変化が生じた第1時刻T1と第1時刻T1から一定時間前の第2時刻T2との間の時間tnにおけるバッテリ50の電流値I、及び、電圧値Vの変化量Vdに基づいた回帰式を用いて、バッテリ50の温度を推定する。そのために、温度推定装置1では、電流量及び充電状態を取得する。
【0018】
すなわち、温度推定装置1では、電流量取得部2が、バッテリ50の充放電の電流値I(A)に基づいて、第1時刻T1と第1時刻T1から一定時間(例えば100秒~200秒)前の第2時刻T2との間の時間tにおけるバッテリ50の電流量を取得する。より具体的には、電流量取得部2は、第1時刻T1と第2時刻T2の間の時間tを、複数の時間領域m、m、…、mに分割する。そして、電流量取得部2は、時間領域m、m、…、mのそれぞれにおいて、バッテリ50の電流値Iを積算(積分)することによって、時間領域m、m、…、mのそれぞれにおける電流量X(Ah),X(Ah),…X(Ah)を取得する。
【0019】
仮充電状態算出部3は、バッテリ50の起動時における開回路電圧から推定された充電状態である起動時充電状態に、起動時から第1時刻T1までの電流量を積算することにより、第1時刻T1における仮の充電状態である仮充電状態を算出する。開回路電圧からの充電状態の推定は、例えば、予め用意されたマップを参照することにより行うことができる。
【0020】
そして、温度推定部4は、電圧値Vの変化量Vd、及び、時間領域m、m、…、mのそれぞれにおける電流量X、X、…、Xを説明変数とし、温度Wを目的変数とする回帰式(下記式(1))を用いて、温度Wを推定する。下記式(1)におけるa、b、c、d、eは、回帰係数である。
W=aV+bX+cX+…+dX+e・・・(1)
【0021】
なお、温度推定部4は、上記式(1)において、バッテリ50の充電状態をさらに説明変数として用いることができる。回帰式に用いる充電状態としては、上記のように仮充電状態算出部3が算出した仮充電状態を用いることもできるし、別の回帰式により推定した充電状態を用いることもできる。バッテリ50の充電状態を回帰式により推定する場合について説明する。
【0022】
図4は、バッテリの電流値の時間変化を示すグラフである。温度推定装置1では、電流量取得部2が、バッテリ50の充放電の電流値I(A)に基づいて、第1時刻T3と第1時刻T3から一定時間(例えば100秒~200秒)前の第2時刻T4との間の時間tにおけるバッテリ50の電流量を取得する。より具体的には、電流量取得部2は、第1時刻T3と第2時刻T4の間の時間tを、複数の時間領域n、n、…、nに分割する。そして、電流量取得部2は、時間領域n、n、…、nのそれぞれにおいて、バッテリ50の電流値Iを積算(積分)することによって、時間領域n、n、…、nのそれぞれにおける電流量Y(Ah),Y(Ah),…Y(Ah)を取得する。
【0023】
また、温度推定装置1は、第1時刻T3と第2時刻T4との間の時間tにおけるバッテリ50の電流値Iに基づいた回帰式を用いて、バッテリ50の変動電圧(ドロップ電圧)を推定する。より具体的には、温度推定装置1は、第1時刻T3におけるバッテリ50の電流値I、及び、時間領域n、n、…、nのそれぞれにおける電流量Y,Y,…、Yを説明変数とし、変動電圧Vを目的変数とする回帰式(下記式(2))を用いて、変動電圧Vを推定する。下記式(2)におけるf、g、h、j、kは、回帰係数である。
=fI+gX+hX+…+jX+k・・・(2)
【0024】
なお、温度推定装置1は、上記式(2)において、仮充電状態算出部3が算出した仮充電状態をさらに説明変数として用いることができる。
【0025】
また、温度推定装置1は、第1時刻T3におけるバッテリ50の電圧値から変動電圧Vを減算することにより、第1時刻T3におけるバッテリ50の開回路電圧を算出する。さらに、温度推定装置1は、算出された第1時刻T3における開回路電圧に基づいて、第1時刻T3における充電状態を推定する。一例として、温度推定装置1は、開回路電圧と充電状態とが関連付けられたマップを参照することにより、開回路電圧から充電状態を推定することができる。
【0026】
そして、温度推定部4は、このようにして推定されたバッテリ50の充電状態を、上記式(1)において、説明変数としてさらに用いる。なお、一例として、第1時刻T3は第1時刻T1と同一でもよく、第2時刻T4は第2時刻T2と同一でもよい。
【0027】
以上説明したように、温度推定装置1では、温度の推定に際して、バッテリ50の電圧値Vが一定以上変化した第1時刻T1と、第1時刻T1の一定時間前の第2時刻T2との間の時間tにおける電流値I、及び、当該電圧値Vの変化量Vに基づいた回帰式を用いて、バッテリ50の温度を推定する。このため、温度推定装置1によれば、バッテリ50に対して別途処理を施すための構成を用いることなく、簡単な構成でバッテリ50の温度を正確に推定可能である。
【0028】
また、温度推定装置1は、第1時刻T1と第2時刻T2との間の時間を複数の時間領域m、m、…、mに分割し、時間領域m、m、…、mのそれぞれにおいてバッテリ50の電流値を積算することによって、時間領域m、m、…、mのそれぞれにおける電流量X、X、…、Xを取得する電流量取得部2をさらに備える。そして、温度推定部4は、電圧値Vの変化量V、及び、時間領域m、m、…、mのそれぞれにおける電流量X、X、…、Xを説明変数とし、温度Wを目的変数とする回帰式を用いて、温度Wを推定する。このように、温度Wの推定に用いる回帰式において、電流量X、X、…、Xを説明変数として用いることができる。
【0029】
さらに、温度推定装置1は、バッテリ50の起動時における開回路電圧から推定された充電状態に、起動時から第1時刻T1までの電流量を積算することにより、第1時刻T1における仮の充電状態である仮充電状態を算出する仮充電状態算出部3をさらに備える。そして、温度推定部4は、回帰式において、仮充電状態をさらに説明変数として用いてもよい。このように、温度Wの推定に用いる回帰式において、一般的な手法により推定された充電状態を、仮充電状態として説明変数にさらに用いることができる。
【0030】
以上の実施形態は、本発明の一形態について説明したものである。したがって、本発明は、上述した温度推定装置1を任意に変形したものとされ得る。
【符号の説明】
【0031】
1…温度推定装置、2…電流量取得部、3…仮充電状態算出部、50…バッテリ。
図1
図2
図3
図4