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  • 特許-風速データの使用方法 図1
  • 特許-風速データの使用方法 図2
  • 特許-風速データの使用方法 図3
  • 特許-風速データの使用方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】風速データの使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 9/02 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G01M9/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020063161
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162437
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 優輝
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-067074(JP,A)
【文献】特開2018-004568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 9/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風速データを、深層学習により風速分布を予測する際の学習データとして用いる方法であって、
前記風速データが、風洞実験で得られた風速データであり、
前記風速データを用いて作成した教師画像の各座標の画素値と、深層学習により予測された予測画像の各座標の画素値である予測値と、予め設定された損失関数とから、前記教師画像と前記予測画像との誤差を算出する際に、
前記教師画像の風洞実験の計測点以外の座標の画素値と前記予測画像の前記計測点以外の座標の予測値の画素値との誤差分を排除することを特徴とする風速データの使用方法。
【請求項2】
損失関数を設定する損失関数設定ステップと、
風洞実験で得られた風速データから、計測点の座標の画素値を風速に応じた値とし、計測点以外の座標の画素値を予め設定した画素値とした風速分布画像を求めてこれを学習データの教師画像とする画像変換ステップと、
前記教師画像の計測点の座標に対応する画素値を1とし、前記計測点以外の座標に対応する座標の画素値を0とした誤差伝播制御画像を作成する制御用画像作成ステップと、
前記教師画像と、前記予測画像と、前記誤差伝播制御画像と、前記損失関数とから、誤差を算出する誤差算出ステップとを備え、
前記誤差算出ステップでは、
前記教師画像の座標の画素値と深層学習の予測値の画素値との誤差に、前記誤差伝播制御画像の当該座標の画素値を積算した値を用いて、前記誤差を算出することを特徴とする請求項1に記載の風速データの使用方法。
【請求項3】
前記制御用画像作成ステップでは、前記計測点周りの座標である周辺座標の画素値を、前記計測点と周辺座標との距離に応じた、0よりも大きくかつ1未満の値としたことを特徴とする請求項2に記載の風速データの使用方法。
【請求項4】
風速データを、深層学習により風速分布を予測する際の学習データとして用いる方法であって、
前記風速データが、風洞実験で得られた風速データと、流体力学を用いた数値シミュレーション解析で得られた風速データの両方であり、
前記風速データを用いて作成した教師画像の各座標の画素値と、深層学習により予測された予測画像の各座標の画素値である予測値と、予め設定された損失関数とから、前記教師画像と前記予測画像との誤差を算出する際に、
前記風速データが前記風洞実験で得られた風速データである場合には、
前記教師画像の風洞実験の計測点以外の座標の画素値と前記予測画像の前記計測点以外の座標の予測値の画素値との誤差分を排除し、
前記風速データが前記数値シミュレーション解析で得られた風速データである場合には、
前記教師画像の前記数値シミュレーション解析の計算値の誤差分を全て使用することを特徴とする風速データの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深層学習を用いて建物周辺等の風速分布を予測する装置の学習方法に関するもので、特に、風速データを深層学習における学習データとして使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、深層学習を用いて、建物周りの風速分布を予測する方法が提案されている。
具体的には、予め得られている構造物の形状データ及び風向きデータと、それに対応する風速分布のデータとをニューラルネットワークで学習させておき、このニューラルネットワークに風速分布を予測する建物の形状データと風向きデータ等を入力することで、建物周辺に生じる風速分布を予測する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-4568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、風速の予測方法としては、風洞実験や流体力学を用いた数値シミュレーション(以下、CFD解析という)などが挙げられるが、ニューラルネットワークの学習データとしては、主に、CFD解析より得られた風速分画像や風速比分布画像が用いられている。これは、風洞実験では、局所的に精度の良い結果が得られるが、計測点の数が少ないためである。
したがって、風速画像分布を学習データとした場合には、風洞実験で得られた結果は、学習データとして用いることができなかった。
しかしながら、風洞実験から得られた結果は数多く存在するので、これらのデータを学習データとして利用することができれば、風速分布画像の予測精度を向上させることができると考えられる。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、風速データを、風速分布を予測する深層学習の学習に用いる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、風速データを、深層学習により風速分布を予測する際の学習データとして用いる方法であって、前記風速データが、風洞実験で得られた風速データであり、前記風速データを用いて作成した教師画像の各座標の画素値と、深層学習により予測された予測画像の各座標の画素値である予測値と、予め設定された損失関数とから、前記教師画像と前記予測画像との誤差を算出する際に、前記教師画像の風洞実験の計測点以外の座標の画素値と前記予測画像の前記計測点以外の座標の予測値の画素値との誤差分を排除することを特徴とする。
これにより、風速データとして、風洞実験で得られた風速データを用いた場合には、風洞実験が行われた座標(計測点)のみの誤差について学習することができるので、風洞実験で得られた風速データを、CFD解析のデータと全く同じ形式で学習を行うことができる。すなわち、既存の手法では学習データとすることのできなかった風洞実験により得られたデータを学習データとして扱うことが可能となった。その結果、学習データを大幅に増加させることができるので、風速分布画像の予測精度を向上させることができる。
なお、深層学習は、入力層と出力層とを含む、層数が4層以上の畳み込みニューラルネットワークを指す。また、風速分布は、特定位置の風速を基準とした風速比の分布である風速比分布も含む。
また、損失関数を設定する損失関数設定ステップと、風洞実験で得られた風速データから、計測点の座標の画素値を風速に応じた値とし、計測点以外の座標の画素値を予め設定した画素値とした風速分布画像を求めてこれを学習データの教師画像とする画像変換ステップと、前記教師画像の計測点の座標に対応する画素値を1とし、前記計測点以外の座標に対応する座標の画素値を0とした誤差伝播制御画像を作成する制御用画像作成ステップと、前記教師画像と、前記予測画像と、前記誤差伝播制御画像と、前記損失関数とから、誤差を算出する誤差算出ステップと、を備え、前記誤差算出ステップでは、前記教師画像の座標の画素値と深層学習の予測値の画素値との誤差に、前記誤差伝播制御画像の当該座標の画素値を積算した値を用いて、前記誤差を算出するようにしたので、精度の高い風速分布予測を行うことができる。
また、前記制御用画像作成ステップでは、前記計測点周りの座標である周辺座標の画素値を、前記計測点と周辺座標との距離に応じた、0よりも大きくかつ1未満の値としたので、風洞実験による実測値に加えて、計測点周りの推定値についても誤差の算出に使用することができる。したがって、学習データを大幅に増加させることができ、風速分布画像の予測精度を更に向上させることができる。
【0007】
また、本発明は、風速データを、深層学習により風速分布を予測する際の学習データとして用いる方法であって、前記風速データが、風洞実験で得られた風速データと、流体力学を用いた数値シミュレーション解析で得られた風速データの両方であり、前記風速データを用いて作成した教師画像の各座標の画素値と、深層学習により予測された予測画像の各座標の画素値である予測値と、予め設定された損失関数とから、前記教師画像と前記予測画像との誤差を算出する際に、前記風速データが前記風洞実験で得られた風速データである場合には、前記教師画像の風洞実験の計測点以外の座標の画素値と前記予測画像の前記計測点以外の座標の予測値の画素値との誤差分を排除し、前記風速データが前記数値シミュレーション解析で得られた風速データである場合には、前記教師画像の前記数値シミュレーション解析の計算値の誤差分を全て使用することを特徴とする。
このように、風洞実験で得られた風速データと、流体力学を用いた数値シミュレーション解析で得られた風速データの両方を学習データとして使用すれば、学習データの数が更に増加するので、風速分布画像の予測精度を更に向上させることができる。
【0008】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係わる風速分布の推定装置を示す図である。
図2】教師画像と誤差伝播用画像の一例を示す図である。
図3】風洞実験で得られた風速データの使用方法を示すフローチャートである。
図4】風洞実験で得られた風速データを用いた教師画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施の形態に係る風速分布の推定装置10の構成を示す図で、同図において、11は入力手段、12は入力画像作成手段、13は風速分布画像作成手段、14は風速データ入力手段、15は教師画像作成手段、16は制御用画像作成手段、17は誤差算出手段、18は表示手段である。
入力手段11と風速データ入力手段14とは、例えば、キーボードやスキャナー等が用いられる。また、入力画像作成手段12、風速分布画像作成手段13、及び、教師画像作成手段15~誤差算出手段17までの各手段は、ROMやRAMなどの記憶装置とマイクロコンピュータのプログラムとから構成される。
入力手段11は、風速分布を推定する箇所の道路や建物の形状など情報(以下、地図情報という)と、風向きの情報とを入力し、入力画像作成手段12に出力する。
入力画像作成手段12は、入力された地図情報を画像に変換した建物群画像Ginを作成するとともに、風向きの情報から、風向きが予め設定された所定の方向(ここでは、北風)になるように建物群画像を回転させて、風向き指定建物群画像を、風速分布画像作成手段13に出力する。
風速分布画像作成手段13は、2層以上の中間層を有する畳み込みニューラルネットワーク(以下、ニューラルネットワークという)を備えた風速データ生成部13aと、風速データ生成部13aで生成された風速の予測値から、風速分布画像を作成する風速分布画像作成部13bとを備える。
風速データ生成部13aでは、風向き指定建物群画像を、ニューラルネットワークに入力し、地図上の座標(xi,yj)に対応する建物群画像の画素(以下、ピクセルという)ごとに、ニューラルネットワークの出力値である風速の予測値Zs(xi,yj)を出力し、風速分布画像作成部13bは、風速の予測値Zs(xi,yj)を風速分布画像の各ピクセルの画素値とした風速分布画像を作成して、表示手段18に送る。
なお、風向き指定建物群画像の建物20に対応するピクセルの座標は、ニューラルネットワークには入力しないものとする。
風速分布画像としては、例えば、当該ピクセルの風速の予測値が0であれば白(画素値;255)とし、予め設定された最大風速(例えば、30m/s)であれば黒(画素値;0)とする256階調のグレースケール画像、すなわち、画素値が0~255のうちの風速の予測値に相当する濃淡を有する画像や、風速の予測値が2m/s以下であれば空色、25~30m/sであれば赤にするなど、風速の予測値に応じた色付けした画像であってもよい。要は、画像の各ピクセルに、風速の予測値に応じた数値を持たせればよい。例えば、カラー画像なら、RGBの各階調を与えなくても、空色には1、赤色には7などの数値を画素値として持たせればよい。
本例では、風速分布画像を濃淡画像とした。なお、階調は256階調である必要はなく、2階調以上であればよい。
表示手段18は、風速分布画像作成手段13で作成された風速分布画像Goutを表示画面18Gに表示する。
【0011】
風速データ入力手段14は、風洞実験を行った箇所(以下、計測点という)を含むの道路や建物20の形状など情報(以下、計測地図情報という)と、計測点の値である風速の実験値を教師画像作成手段15に出力する。なお、風速を計測したときの風向きは予め設定した方向(ここでは、北風)とする。
教師画像作成手段15は、図2(a)に示すような、入力された地図情報を画像に変換した教師用建物群画像G1を作成するとともに、この教師用建物群画像G1を風速分布画像に変換した画像である教師画像G2を作成する。具体的には、計測点の座標P(x、y)を含むピクセルの画素値を、上記の風速分布画像Goutの画素値と同様に、計測された風速に対応する値とし、計測点以外の座標の画素値を予め設定した画素値(例えば、255)とした画像を作成し、これを教師画像とする。
図2(b)は教師画像の一例を示す図で、教師画像の各ピクセルの濃淡は、風速が大きいほど濃く、風速が小さいほど淡くなる。また、計測点以外の座標を含むピクセルは、白色(画素値;255)で表される。
制御用画像作成手段16は、ニューラルネットワークの学習時おける誤差の伝播を制御する制御用画像としての誤差伝播制御画像を作成する。
図2(c)に示すように、誤差伝播制御画像は、教師画像と同じサイズで、かつ、教師画像の計測点の座標に対応する画素値を1とし、計測点以外の座標に対応する座標の画素値を0とした画像である。
【0012】
誤差算出手段17は、損失関数修正部17aと誤差算出部17bとを備える。
損失関数修正部17aは、ニューラルネットワークの学習時に使用する損失関数に、制御用画像作成手段16で作成した誤差伝播制御画像の画素値を適用するように修正するもので、例えば、損失関数として、平均二乗誤差(Mean Square Error)を用いた場合、損失関数は、以下の式(1)のように修正される。
【数1】
ここで、Nはバッチサイズであり、Zrk(xi,yj)は、k番目のバッチの教師画像の座標(xi,yj)に対応するピクセルの画素値(正解値)であり、Zsk(xi,yj)は、ニューラルネットワークの出力値である、予測画像の座標(xi,yj)に対応するピクセルの画素値である。すなわち、Zsk(xi,yj)は、座標(xi,yj)における風速の予測値の大きさに対応する画素値(予測値)である(k=1~N)。
また、Ak(xi,yj)は、誤差伝播制御画像の座標(xi,yj)に対応するピクセルの画素値で、バッチ番号kごとに設定される。上記したように、Ak(xi,yj)は、計測点では1、計測点以外では0である。
誤差算出部17bは、上記の式(1)を用いて、予測値と正解値との誤差を算出する。上記の式(1)では、座標(xi,yj)が計測点である場合には、Ak(xi,yj)=1であるので、(Zrk-Zsk2×Ak=は(Zrk-Zsk2となるが、座標(xi,yj)が計測点以外の点である場合には、Ak(xi,yj)=0であるので、(Zrk-Zsk2×Ak=0となる。
このように、本例では、損失関数として、上記の式(1)のような修正した損失関数を用いることで、風洞実験が行なわれた座標(xi,yj)については、誤差が伝播されるが、それ以外の座標では誤差が伝播されない。
したがって、風洞実験が行なわれた座標(xi,yj)のみの誤差について学習できるだけでなく、流体解析により得られたデータと全く同じ形式で学習することができる。
誤差算出手段17は、上記式(1)を用いて座標(xi,yj)における誤差MSE’ (xi,yj)を算出し、この誤差MSE’(x,y)を、風速分布画像作成手段13のニューラルネットワークに戻す。
ニューラルネットワークでは、この、誤差MSE’(xi,yj)を最小にするように、畳み込みのフィルタ等の画像処理条件を修正する。
なお、損失関数として、平均絶対値誤差や平均二乗対数誤差などの、他の損失関数を用いてもよい。
ニューラルネットワークの学習には、風速分布画像作成手段13~誤差算出手段17までの各手段が使用され、風速分布画像の作成には、入力手段11~風速分布画像作成手段13までの各手段、及び、表示手段18が使用される。
【0013】
次に、風洞実験で得られた風速データを深層学習の学習データとして用いる方法について、図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、風速データ入力手段14に、道路や建物20の形状など情報と計測点における風速の実験値を入力(ステップS10)し、教師画像作成手段15にて、教師画像G2kを作成する(ステップS11)。教師画像G2kは、図2(b)に示した教師画像G2と同様に、計測点の座標(xi、yj)を含むピクセルの画素値を、計測された風速に対応する値とし、計測点以外の座標の画素値を0とした濃淡画像である。なお、教師画像G2kは、バッチ番号ごとに作成される(k=1~N;Nはバッチサイズ)。
次に、制御用画像作成手段16にて、教師画像G2kの計測点(xi,yj)の座標に対応する画素値を1とし、計測点以外の座標に対応する座標の画素値を0とした誤差伝播制御画像を作成する(ステップS12)。
次に、ニューラルネットワークの学習時に使用する損失関数を上記の式(1)のように修正(ステップS13)した後、教師画像の座標G2(xi,yj)に対応するピクセルの画素値Zr(xi,yj)と、ニューラルネットワークの予測値である、座標(xi,yj)に対応するピクセルの画素値Zsk(xi,yj)と、誤差伝播制御画像の座標(xi,yj)に対応するピクセルの画素値Ak(xi,yj)とを、上記式(1)に代入して、誤差MSE’(x,y)を算出(ステップS14)し、この誤差MSE’ (xi,yj)を、風速分布画像作成手段13のニューラルネットワークに戻す。
最後に、誤差MSE’ (xi,yj)が最小になるように、畳み込みのフィルタ等の処理条件を修正する(ステップS15)ことで、ニューラルネットワークを完成させる。
なお、上記学習は、複数の教師画像(正解画像)を用い、誤差MSE’ (xi,yj)が収束するまで行うことが好ましい。
【0014】
図1に示した風速分布画像Goutの作成手順は、以下の通りである。
なお、ニューラルネットワークの学習は完了しているものとする。
まず、風速分布を推定する箇所の道路や建物の形状など情報と風向きの情報とを入力し、入力された情報を画像に変換した建物群画像Ginを作成する。
次に、上記の学習が完了したニューラルネットワークを用いて、各座標(xi,yj)の風速の予測値Zs(xi,yj)を求める。
そして、この求められた風速の予測値Zs(xi,yj)を、風速分布画像の各ピクセルの画素値とした風速分布画像Goutを作成した後、作成された風速分布画像Goutを表示手段18の表示画面18Gに表示する。
【0015】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0016】
例えば、前記実施形態では、計測点以外の座標の画素値を所定値とするとともに、誤差伝播制御画像の座標(xi,yj)に対応するピクセルの画素値A(xi,yj)を、計測点では1、計測点以外では0としたが、計測点の風速から、計測点以外の座標で、かつ、計測点周りの座標(xi,yj)の画素値を推測してもよい。
例えば、図4(a)に示すように、教師用建物群画像G1において、風速値が計測点P(xi,yj)を中心にガウス分布しているとすると、計測点P(xi,yj)の周りの座標(xi’,yj’)に対応するピクセルの画素値は、計測点P(xi,yj)の画素値をVijとしたときに、Vi’j’=p・Vijとなる(0<p<1)。
したがって、教師画像G2の各ピクセルの濃淡分布も、図4(b)に示すように、計測点の周辺のピクセルでも濃淡がつけられた画像となる。
また、新たに濃淡がつけられたピクセルは、計測値を持っているので、図4(c)に示すように、誤差伝播制御画像G3の座標(xi’,yj’)に対応するピクセルの画素値Ak(xi’,yj’)も1とする必要がある。
このように、計測点周りの座標(xi’,yj’)について風速を推定し、この推定された風速も学習データとして使用すれば、風速分布の予測精度を向上させることができる。
また、前記実施形態では、建物20のある区域の風速分布を求めたが、本発明は、滑走路などの、建物がない区域の風速分布を求めることも可能である。
【0017】
また、前記実施形態では、風洞実験で得られた風速データを風速分布を予測する深層学習の学習データとして用いたが、風洞実験の風速データから作成した風速分布画像とCFD解析より得られた風速データから作成した風速分画像の両方を教師画像としてもよい。
CFD解析で得られた風速データを教師布画像とする場合、風向き指定建物群画像の建物20に対応するピクセルの座標以外の座標には、全て、CFD解析で得られた風速の計算値が与えられているので、誤差伝播制御画像の座標(xi,yj)に対応するピクセルの画素値Ak(xi,yj)を全て1とすればよい。すなわち、CFD解析で得られた風速データから作成したを風速分布画像を教師画像とした場合には、CFD解析の計算値の誤差分を全て使用して、誤差MSE’ (xi,yj)を算出すればよい。
なお、損失関数を修正せず、従来の損失関数を用いて誤差を算出してもよい。
【符号の説明】
【0018】
10 風速分布の推定装置、11 入力手段、12 入力画像作成手段、
13 風速分布画像作成手段、13a 風速データ生成部、
13b 風速分布画像作成部、14 風速データ入力手段、15 教師画像作成手段、
16 制御用画像作成手段、17 誤差算出手段、17a 損失関数修正部、
17b 誤差算出部、18 表示手段、18G 表示画面、20 建物。
図1
図2
図3
図4