IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NTTアノードエナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-誤操作防止装置 図1
  • 特許-誤操作防止装置 図2
  • 特許-誤操作防止装置 図3
  • 特許-誤操作防止装置 図4
  • 特許-誤操作防止装置 図5
  • 特許-誤操作防止装置 図6
  • 特許-誤操作防止装置 図7
  • 特許-誤操作防止装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】誤操作防止装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20231108BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20231108BHJP
   H01H 31/06 20060101ALI20231108BHJP
   H01H 33/48 20060101ALI20231108BHJP
   H01H 33/46 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/00
H01H31/06
H01H33/48
H01H33/46 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020080317
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021175346
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】520039179
【氏名又は名称】NTTアノードエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後川 知仁
(72)【発明者】
【氏名】坂井 努
(72)【発明者】
【氏名】植木 達也
(72)【発明者】
【氏名】今井 秀一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】小路 拡
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将人
(72)【発明者】
【氏名】馬場 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏男
(72)【発明者】
【氏名】幾世橋 智
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-160919(JP,A)
【文献】特開2003-90859(JP,A)
【文献】特開2003-223833(JP,A)
【文献】特開平3-289309(JP,A)
【文献】実開平3-62429(JP,U)
【文献】特表2002-533690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 7/00
H01H 31/06
H01H 33/48
H01H 33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家の停電作業後に行われる復電作業時の作業者の所定操作を防止する誤操作防止装置であって、
前記停電作業の際に、柱上気中開閉器からの電力の前記需要家への供給、及び停止を切り替える断路器の一次側と大地との間に接続され、前記断路器の一次側を地絡する短絡接地部と、
前記短絡接地部が前記断路器の一次側と前記大地との間に接続されている際に、前記作業者が、前記断路器への電力の供給が停止されている停電状態から、前記断路器への電力が供給される通電状態へと前記柱上気中開閉器の作動状態を切り替える、前記柱上気中開閉器の切替操作を行うことを防止する誤操作防止信号を出力する信号出力部を備えた、
誤操作防止装置。
【請求項2】
前記切替操作の際に前記作業者が保持する前記柱上気中開閉器の操作紐と前記作業者との間の距離を測定する測距部と、
前記測距部が前記操作紐と前記作業者との間の距離が所定の範囲内となったことを検出した際に、前記作業者に通知を行う距離通知部を更に備え、
前記測距部は、
前記誤操作防止信号が出力されると前記距離の測定を開始する、
請求項1に記載の誤操作防止装置。
【請求項3】
前記切替操作の際に前記作業者によって保持される前記柱上気中開閉器の操作紐の保持操作部が収容される操作箱の開閉状態を切り替える開閉切替部を更に備え、
前記開閉切替部は、
前記誤操作防止信号に基づいて、前記作業者が前記保持操作部を取り出して前記切替操作を行うことを可能とする前記操作箱の開状態と、前記作業者が前記保持操作部を取り出して前記切替操作を行うことを不可とする前記操作箱の閉状態とを切り替える、
請求項1に記載の誤操作防止装置。
【請求項4】
前記短絡接地部を取り外して前記断路器の一次側が地絡された状態を解除する前記作業者による解除操作を規制する解除規制部と、
前記短絡接地部を収容する収容部と、
前記開閉切替部を制御する制御部と、
を更に備え、
前記解除規制部は、
前記解除操作を可能とする解除状態と、前記解除操作を不可とする規制状態とを切り替える解除規制切替部を備え、
前記収容部は、
前記作業者による前記短絡接地部の出し入れを可能とする解放状態と、前記作業者による前記短絡接地部の出し入れを不可とする閉鎖状態とを切り替える解放閉鎖切替部を備えており、
前記制御部は、
前記誤操作防止信号の出力の状態、前記解除規制部の状態、及び前記収容部の状態に基づいて前記開閉切替部を制御する、
請求項3に記載の誤操作防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、需要家の電力施設などの停電作業後に行われる復電作業時の、作業者の誤操作を防止する誤操作防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
需要家の電力設備の年次点検等のために自家用構内を商用電力系統から切り離す際には、電力会社と需要家の責任分界点に設けられている柱上気中開閉器(PAS)によってその切り離しが行われる。そして、施設内の高圧受電盤の断路器(DS)を解放した後に、断路器の一次側に短絡接地金具が取り付けられて、点検等の作業が行われる。この短絡接地金具は、作業中に万が一、誤って送電が行われた場合の作業者の感電を防止する安全対策を目的として取り付けられるものである。
【0003】
そして作業の終了後には、短絡接地金具を取り外して、復電作業が行われる。この際、誤って短絡接地金具を取り付けたままの状態で復電作業を行ってしまうことを防止する必要があるが、その対策としては、作業者に対する手順徹底や、作業者による目視確認に依存しており、そのような誤操作が発生する可能性を完全になくすことは難しい。
【0004】
従来、このような復電作業時のヒューマンエラーを防止することを目的とした接地状態管理装置が知られている(特許文献1参照。)。この接地状態管理装置では、接地状態となっている短絡接地器具が存在する場合に、制御装置によって接地装置の駆動制御部の操作が無効とされるとともに、表示手段による接地表示の状態が解除されない状態となる。このため、接地装置の切り操作が行われなくなると共に、回路を復旧できる状態ではないことが視覚的に表示され、ヒューマンエラーの発生が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-23778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に記載された技術では、装置の構成が大掛かりで複雑であるため、需要家毎にそのような装置を導入することは難しいという問題があった。
【0007】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであって、復電作業時における作業者の誤操作を防止することが可能な、簡易な構成の誤操作防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示は以下の手段を提供する。
本開示の誤操作防止装置は、需要家の停電作業後に行われる復電作業時の作業者の所定操作を防止する誤操作防止装置であって、前記停電作業の際に、柱上気中開閉器からの電力の前記需要家への供給、及び停止を切り替える断路器の一次側と大地との間に接続され、前記断路器の一次側を地絡する短絡接地部と、前記短絡接地部が前記断路器の一次側と前記大地との間に接続されている際に、前記作業者が、前記断路器への電力の供給が停止されている停電状態から、前記断路器への電力が供給される通電状態へと前記柱上気中開閉器の作動状態を切り替える、前記柱上気中開閉器の切替操作を行うことを防止する誤操作防止信号を出力する信号出力部を備えたことを特徴とする。
【0009】
本開示の誤操作防止装置によれば、短絡接地部が、断路器の一次側と大地との間に接続されている際に、作業者が、柱上気中開閉器の作動状態を切り替える切替操作を行うことを防止する誤操作防止信号が、信号出力部から出力される。
【0010】
このため、断路器の一次側が短絡接地部によって地絡されている状態で、作業者が誤って柱上気中開閉器を操作して、断路器への電力が供給される通電状態(需要家の自家用構内に電力が供給される状態)へと柱上気中開閉器を切り替えてしまうことが防がれる。
【0011】
上記においては、前記切替操作の際に前記作業者が保持する前記柱上気中開閉器の操作紐と前記作業者との間の距離を測定する測距部と、前記測距部が前記操作紐と前記作業者との間の距離が所定の範囲内となったことを検出した際に、前記作業者に通知を行う距離通知部を更に備え、前記測距部は、前記誤操作防止信号が出力されると前記距離の測定を開始することが好ましい。
【0012】
このようにすることにより、短絡接地部が断路器の一次側と大地との間に接続されて、信号出力部から誤操作防止信号が出力されると、測距部が、操作紐と作業者との間の距離の測定を開始する。そして、作業者と操作紐との間の距離が所定の範囲内になると、距離通知部がそのことを作業者に通知する。
【0013】
このため作業者は、例えば柱上気中開閉器の作動状態を切り替えるために操作紐に近づくと、短絡接地部が断路器の一次側と大地との間に接続された状態であることを、距離通知部からの通知によって知ることができる。そして作業者が、断路器の一次側が地絡されている状態で、誤って柱上気中開閉器を操作してしまうことが防がれる。
【0014】
上記においては、前記切替操作の際に前記作業者によって保持される前記柱上気中開閉器の操作紐の保持操作部が収容される操作箱の開閉状態を切り替える開閉切替部を更に備え、前記開閉切替部は、前記誤操作防止信号に基づいて、前記作業者が前記保持操作部を取り出して前記切替操作を行うことを可能とする前記操作箱の開状態と、前記作業者が前記保持操作部を取り出して前記切替操作を行うことを不可とする前記操作箱の閉状態とを切り替えることが好ましい。
【0015】
このようにすることにより、誤操作防止信号に従って、柱上気中開閉器の操作紐の保持操作部が収容される操作箱の開閉状態が切り替えられる。このため、例えば短絡接地部が断路器の一次側と大地との間に接続されている際に、開閉切替部が操作箱を閉状態とすることで、柱上気中開閉器の切替作業が規制され、作業者による誤操作が防がれる。
【0016】
上記においては、前記短絡接地部を取り外して前記断路器の一次側が地絡された状態を解除する前記作業者による解除操作を規制する解除規制部と、前記短絡接地部を収容する収容部と、前記開閉切替部を制御する制御部とを更に備え、前記解除規制部は、前記解除操作を可能とする解除状態と、前記解除操作を不可とする規制状態とを切り替える解除規制切替部を備え、前記収容部は、前記作業者による前記短絡接地部の出し入れを可能とする解放状態と、前記作業者による前記短絡接地部の出し入れを不可とする閉鎖状態とを切り替える解放閉鎖切替部を備えており、前記制御部は、前記誤操作防止信号の出力の状態、前記解除規制部の状態、及び前記収容部の状態に基づいて前記開閉切替部を制御することが好ましい。
【0017】
このようにすることにより、短絡接地部、解除規制部、及び収容部がそれぞれ所定の状態となっている場合に、操作箱が開状態となるような制御を行うことができる。このため、所定の手順に従った作業を行わなければ、作業者が柱上気中開閉器の切替作業を行うことができないようにすることができ、作業者による誤操作を防ぐことが可能となる。また、所定の操作を行わなければ、その次の作業を行うことができないようにすることもできるため、例えば短絡接地部の接続を忘れて停電作業を行ってしまうことも防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、復電作業時における作業者の誤操作を防止することができる簡易な構成の誤操作防止装置を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る誤操作防止装置の使用状態を説明する概略図である。
図2】需要家の高圧受電設備を説明する単線結線図の一例である。
図3】第1の実施形態に係る誤操作防止装置の作動を説明するフロー図である。
図4】第2の実施形態に係る誤操作防止装置の使用状態を説明する概略図である。
図5】第2の実施形態に係る誤操作防止装置の作動を説明するフロー図である。
図6】第3の実施形態に係る誤操作防止装置の使用状態を説明する概略図である。
図7】第3の実施形態に係る誤操作防止装置の作動を説明するフロー図である。
図8】第3の実施形態に係る誤操作防止装置の各部の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1の実施形態〕
<1-1 構成の説明>
以下、第1の実施形態に係る誤操作防止装置1について図1から図3を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態の誤操作防止装置1は、需要家の電力設備の年次点検等の作業後に行われる復電作業の際に、作業者が誤った操作を行うことを防止するための装置である。具体的には、高圧受電設備の一次側を地絡させた状態のまま、点検等の作業後に作業者が、誤って復電作業を行ってしまうことを防ぐためのものである。
【0022】
本実施形態の誤操作防止装置1は、短絡接地金具11、地絡検出部12、測距部13、及び距離通知部14から主に構成されている。短絡接地金具11は、電力設備の点検作業等の際に、電力設備の所定の箇所を地絡させるために用いられる、公知の短絡アース用器具である。
【0023】
本実施形態において短絡接地金具11は、電力設備の点検作業中に、詳細は後述する需要家の高圧受電設備5の断路器51の一次側を地絡させるために用いられる公知の短絡アース線である例に適用して以降の説明を行う。
【0024】
即ち短絡接地金具11が、接地ケーブル11aと、その両端に設けられたクリップ11b、11cから構成された公知の短絡アース用ケーブルである例に適用して以降の説明を行う。作業者は、クリップ11b、11cの一方を大地に、その他方を、地絡を行う箇所にクランプすることで、所定の箇所を地絡させることができる。
【0025】
なお本実施形態において「大地」とは、大地に接続された接地端子や、接地された導電性を有する部分などをいう。以降の説明において、この接地端子や接地された導電性を有する部分などの地絡に用いられる部分を「接地端子等」とも記載する。なお短絡接地金具11は、電力設備等に関する作業を行う際に、所定の箇所を地絡させるために用いられるその他の公知の器具であってもよい。
【0026】
本実施形態における高圧受電設備5は、需要家に設けられた公知の電力設備である。この高圧受電設備5には、断路器51(以降において「DS51」とも記載する。)の他、真空しゃ断機52(以降において「VCB52」とも記載する。)が主に備えられている。また高圧受電設備5には、地絡方向継電器(DGR)53、零相変流器(ZCT)54、計器用変成器(PCT)55、避雷器(LA)56、過電流継電器(OCR)57、変流器(CT)58、高圧負荷開閉器(LBS)59、変圧器(T)60、及びコンデンサ(SC)61などを主に備えている。なお高圧受電設備5は、公知の高圧受電設備が備えるその他の公知の機器等を備えていてもよい。なお高圧受電設備5の各部については、公知の部分であるためその詳細な説明を省略する。
【0027】
本実施形態において高圧受電設備5には、作業者が、断路器51や真空しゃ断機52の操作を行う高圧受電盤を開閉自在に覆う開閉扉50が備えられている。即ち開閉扉50を開いた状態とすると、作業者は、断路器51や真空しゃ断機52等の操作を行えるようになり、開閉扉50を閉じた状態とすると、作業者による高圧受電盤の操作が規制される。
【0028】
本実施形態では、短絡接地金具11の一方の側のクリップ11bが、断路器51の一次側の部分E(図2参照。)に接続され、他方の側のクリップ11cが接地端子等に接続される例に適用して以降の説明を行う。
【0029】
なお図1では、説明のために一つの短絡接地金具11が、断路器51の一次側を地絡している様子を記載しているが、実際には、複数の短絡接地金具11によって断路器51の一次側の各相が地絡される。また、図1では説明のために短絡接地金具11のクリップ11cが、高圧受電設備5の外側の接地端子等に接続されている例を記載しているが、クリップ11cは、高圧受電設備5の内側(開閉扉50の内側)の、接地端子やその他の接地されている導電性を有した部分に接続されてもよい。
【0030】
地絡検出部12は、短絡接地金具11の取付状態を検出する部分である。即ち地絡検出部12は、短絡接地金具11が、所定の部分と大地の間を接続している状態(地絡している状態)であるか否かを検出する部分である。換言すれば、地絡検出部12は、短絡接地金具11が、断路器51の一次側を地絡している状態を検知する部分である。また地絡検出部12は、短絡接地金具11が所定の部分(断路器51の一次側)を地絡している場合に、そのことを通知する信号を出力する機能も有している。なお以降において、地絡検出部12が出力するこの信号を「誤操作防止信号」とも記載する。
【0031】
本実施形態において地絡検出部12は、定電圧低周波交流電源の電圧を重畳させ、監視電源の電圧に対する漏れ電流を検出する公知の絶縁監視装置と同様の原理によって、短絡接地金具11の取付状態を検出する例に適用して以降の説明を行う。なお地絡検出部12は、その他の公知の方法によってその取付状態を検出するものであってもよい。
【0032】
また本実施形態において地絡検出部12は、公知の近距離無線通信規格に従った無線信号によって誤操作防止信号を出力する例に適用して説明を行う。なお地絡検出部12は、有線などの他の公知の通信方法によって誤操作防止信号を出力してもよい。
【0033】
また本実施形態において一つの地絡検出部12が、断路器51の一次側の各相を地絡するそれぞれの短絡接地金具11の接続状態を検出するものである例に適用して以降の説明を行う。そして地絡検出部12が、短絡接地金具11の少なくとも一つが、断路器51の一次側のいずれかの相を地絡していることを検知すると、誤操作防止信号を出力する例に適用して以降の説明を行う。
【0034】
なお地絡検出部12は、断路器51の一次側の各相を地絡する短絡接地金具11のそれぞれに個別に設けられていてもよい。そして各地絡検出部12が、他の信号と識別可能な誤操作防止信号をそれぞれ出力する構成としてもよい。本実施形態における短絡接地金具11が、短絡接地部の一例である。また地絡検出部12が、信号出力部の一例である。
【0035】
測距部13は、柱上気中開閉器3(以降において「PAS3」とも記載する。)の操作を行うための操作紐31と、PAS3の操作を行う作業者との間の距離を計測し、その間の距離が所定の範囲内となった際に、所定の信号を出力する部分である。また距離通知部14は、測距部13からの信号を受信した際に、操作紐31と作業者との間の距離が所定の範囲内となったことを作業者に通知する部分である。
【0036】
ここで柱上気中開閉器3は、商用電源系統と需要家の受電設備との間に設けられている公知の器具であり、需要家の自家用構内を商用電力系統から切り離す際に用いられるものである。換言すれば柱上気中開閉器3は、電力会社と需要家の責任分界点に設けられ、需要家の設備に対して電力の供給が行われる通電状態と、電力の供給が停止される停電状態とを切り替える器具である。なお図1では、説明のために柱上気中開閉器3と高圧受電設備5の間が一つの線にて結ばれている様子を示しているが、柱上気中開閉器3と高圧受電設備5の間は、三線にて接続されている(以降においても同様である。)。
【0037】
柱上気中開閉器3は、その側面に設けられたスイッチ35が作業者によって操作されることで、その作動状態の切替が行われる。具体的に説明を行うと、作業者がスイッチ35に取り付けられた操作紐31の端側の保持操作部32を保持し、操作紐31を引っ張ることによってその切替操作が行われる。
【0038】
本実施形態において測距部13は、無線通信を用いた公知の距離測定方法に従って操作紐31と作業者との間の距離を計測するものである例に適用して以降の説明を行う。具体的に説明を行うと、測距部13は、保持操作部32に取り付けられる送信部13aと、作業者に装着される受信部13bから構成されている例に適用して説明を行う。そして送信部13aが、公知の近距離無線通信規格に従った無線信号を所定の時間間隔で送信し、その信号を受信した受信部13bが、送信部13aと受信部13bの間の距離、即ち操作紐31と作業者との間の距離を、公知の距離測定方法に従って算出する。そして、その距離が所定の範囲となった際に、受信部13bが、そのことを通知する信号を出力する例に適用して以降の説明を行う。
【0039】
また本実施形態において距離通知部14は、作業者に装着され、受信部13bからの信号を受信すると、振動とアラーム音によってそのことを作業者に通知するものである例に適用して以降の説明を行う。距離通知部14は、図示されていない表示部にそのことを表示して作業者に通知を行ったり、図示されていないランプを点灯や点滅をさせて作業者に通知を行ったりする機能を有したものであってもよい。
【0040】
なお受信部13bと距離通知部14は、それぞれが一体として構成されたものであってもよい。例えば、受信部13b、及び距離通知部14が、近距離無線通信規格に従った電波の受信機能を備えた公知の携帯情報端末などであってもよく、送信部13aがBLEなどの公知の近距離無線通信規格に従った電波を送信するビーコン送信機等であってもよい。なお測距部13は、超音波や赤外線などを用いた他の公知の距離測定方法によってその距離を計測するものであってもよい。
【0041】
<1-2> 作動の説明
次に、上記のように構成された誤操作防止装置1の作動について、主に図3を参照し、その使用手順に従って説明を行う。
【0042】
はじめに作業者が、公知の作業手順に従い需要家の施設の停電作業を行う(S10)。即ち、需要家の自家用構内を商用電力系統から切り離す作業を行う。具体的に説明すると、はじめに高圧受電設備5の真空しゃ断機52を開放(OFF)し、続いて操作紐31を操作して柱上気中開閉器3を開放状態(停電状態)に切り替える。そして、高圧受電設備5の断路器51を開放(OFF)にする。
【0043】
なお少なくとも柱上気中開閉器3の操作が行われるまでに、受信部13bと距離通知部14が作業者に装着され、送信部13aが保持操作部32に取り付けられた状態としておく。
【0044】
所定の手順に従い停電作業が行われたら、断路器51の一次側の各相に、短絡接地金具11を接続する(S20)。具体的には、短絡接地金具11の一方のクリップ11bを断路器51の一次側に接続し、他方のクリップ11cを接地端子等に接続する。短絡接地金具11が、断路器51の一次側と接地端子等との間に接続されると、地絡検出部12がその状態を検知し、誤操作防止信号を出力する。
【0045】
地絡検出部12から誤操作防止信号が出力されると、測距部13は、操作紐31と作業者との間の距離の測定を開始する(S30)。本実施形態では、誤操作防止信号を受信した送信部13aが、測定に用いられる信号の出力を開始し、受信部13bが当該信号を受信して、送信部13aと受信部13bとの間の距離の測定を開始する例に適用して以降の説明を行う。なお送信部13aが、常に距離の測定に用いられる信号を出力しており、受信部13bが、誤操作防止信号を受信するとその距離の測定を開始する処理を開始する構成としてもよい。
【0046】
受信部13bは、距離の測定を行うと、測定した距離が所定の範囲内であるか判断する処理を行う(S40)。測定した距離が所定の範囲外であった場合には(S40にてNo)、受信部13bは距離の測定を継続する。
【0047】
測定した距離が所定の範囲内であった場合には(S40にてYes)、受信部13bは、作業者が保持操作部32に近接していると判断して、そのことを通知する信号を出力する。即ち受信部13bは、距離通知部14を作動させるための信号を出力する。
【0048】
受信部13bが信号を出力すると、距離通知部14は、断路器51の一次側が地絡された状態で作業者が保持操作部32に近接していることを、作業者に通知する作動を行う(S50)。具体的に説明を行うと距離通知部14は、振動するとともに、アラーム音を鳴動させることで、作業者にそのことを通知する作動を行う。この作動によって作業者は、断路器51の一次側が地絡している状態で、自身が柱上気中開閉器3の保持操作部32に近づいていることを知覚する。
【0049】
点検作業等の作業が終了したことにより、作業者は復電の準備作業を行う。具体的には、断路器51の一次側を地絡していた短絡接地金具11を取り外す(S60)。全ての短絡接地金具11が取り外されると、地絡検出部12はその状態を検出して誤操作防止信号の出力を停止する。誤操作防止信号の出力が停止されると、測距部13は、距離の測定を停止する。
【0050】
全ての短絡接地金具11を取り外したら、作業者は、公知の手順に従って復電作業を行う(S70)。具体的に作業者は、断路器51を投入(ON)する。続いて操作紐31を操作して、柱上気中開閉器3を投入する。即ち、柱上気中開閉器3を通電状態に切り替える。この際、測距部13は距離の測定を停止しているため、作業者が保持操作部32に近づいても、距離通知部14は作動しない。更に作業者は、真空しゃ断機52を投入(ON)して、施設への電力の供給を再開する。
【0051】
上記のように構成された誤操作防止装置1によれば、短絡接地金具11が断路器51の一次側と接地端子等(大地)との間に接続されている場合には、地絡検出部12がその状態を検知する。そして地絡検出部12は、断路器51の一次側が地絡されている状態で、作業者が所定の操作を行うことを防ぐための誤操作防止信号を出力する。
【0052】
このため、断路器51の一次側が短絡接地金具11によって地絡されている状態で、作業者が、柱上気中開閉器3を停電状態から通電状態へと切り替える切り替え操作を、誤って行ってしまうことが防がれる。また、誤操作防止装置1は、その構成が簡易であり、大規模なシステムを必要としないため、多くの需要家の電力設備の点検等の際に用いることが容易である。
【0053】
また、短絡接地金具11が断路器51の一次側と接地端子等との間に接続され、地絡検出部12から誤操作防止信号が出力されると、測距部13が、操作紐31と作業者との間の距離の測定を開始する。そして、作業者と操作紐31との間の距離が所定の範囲内になると、距離通知部14がそのことを作業者に通知する作動を行う。
【0054】
このため作業者が、断路器51の一次側が地絡されている状態で、操作紐31に近づくと、作業者は、断路器51の一次側が地絡されている状態であることを直ちに認識することができる。よって作業者が、断路器51の一次側が短絡接地金具11によって地絡されている状態で、誤って柱上気中開閉器3の切替操作を行ってしまうことが防がれる。
【0055】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態について図4から図5を参照しながら説明する。
本実施形態の誤操作防止装置1Aの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、作業者による柱上気中開閉器3の切替作業を規制する開閉切替部15を備えている点が第1の実施形態と相違する。従って本実施形態では、相違する点について主に説明を行い、第1の実施形態と同一の部分等については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0056】
<2-1 構成の説明>
本実施形態に係る誤操作防止装置1Aは、短絡接地金具11、地絡検出部12、及び開閉切替部15から主に構成されている。開閉切替部15は、保持操作部32が収容される、詳細は後述する操作箱33の操作箱蓋34の開閉状態を切り替えるものである。
【0057】
本実施形態において開閉切替部15は、操作箱蓋34に取り付けられた、外部からの信号によって制御される公知の電子鍵である例に適用して以降の説明を行う。より具体的に説明を行うと、開閉切替部15は、地絡検出部12からの誤操作防止信号に従って、施錠状態と開錠状態が切り替わる電子鍵である。
【0058】
ここで操作箱33は、保持操作部32の近傍に設けられ、保持操作部32を固定して収容する、金属板などからできた略直方体の公知の箱である。なお、操作箱33の素材や形状は、保持操作部32を収容する用途に適したものであれば、特に上記に限定されるものではない。
【0059】
操作箱33には、開閉可能な操作箱蓋34が備えられている。作業者は、柱上気中開閉器3の切替作業を行う際には、操作箱蓋34を開いて保持操作部32を取り出し、操作紐31を操作して柱上気中開閉器3の切替作業を行う。
【0060】
なお操作箱33の内部には、保持操作部32を固定する図示されていない固定具が設けられている。保持操作部32が操作箱33に収容される際に、この固定具に固定されると、作業者は、操作紐31の操作を行うことができなくなる。即ち柱上気中開閉器3の切替操作を行うことができなくなる。
【0061】
本実施形態における開閉切替部15は、誤操作防止信号に従って、操作箱蓋34の開閉状態が切り替わる。即ち、誤操作防止信号が出力され、開閉切替部15が作動して操作箱蓋34を施錠する状態となると、操作箱33は閉状態となり、作業者が、保持操作部32を取り出すことができなくなる。換言すれば、作業者が、操作紐31を操作して柱上気中開閉器3の切替作業を行うことができなくなる。
【0062】
また誤操作防止信号の出力が停止するなどして開閉切替部15が開錠すると、操作箱33は開状態となり、作業者は操作箱蓋34を開けて保持操作部32を取り出すことができるようになる。即ち、作業者は、操作紐31を操作して柱上気中開閉器3の切替作業を行うことができるようになる。
【0063】
なお開閉切替部15は、図示されていない操作部を備えており、作業者は、操作部を操作することで、開閉切替部15の開錠、及び施錠を切り替えられることができるようになっている。但しこの場合において、作業者による操作部の操作は、誤操作防止信号が出力されている際には無効となるように制御されている。即ち誤操作防止信号が出力されている際に、作業者が操作部を操作しても、作業者は、開閉切替部15を開錠することができないように構成されている。
【0064】
<2-2> 作動の説明
続いて本実施形態にかかる誤操作防止装置1Aの作動について、主に図5を参照し、その使用手順に従って説明を行う。
【0065】
はじめに、第1の実施形態と同様の手順で停電作業を行う(S100)。作業者は、柱上気中開閉器3の切替操作を行った後、操作箱33の内側の固定具に保持操作部32を固定し、操作箱蓋34を閉じておく。
【0066】
続いて作業者は、断路器51の一次側の各相と接地端子等の間に、短絡接地金具11を接続し、断路器51の一次側が地絡された状態とする(S110)。断路器51の一次側が、短絡接地金具11によって地絡された状態となると、地絡検出部12はその状態を検知して、誤操作防止信号を出力する。
【0067】
地絡検出部12から誤操作防止信号が出力されると、開閉切替部15は、操作箱蓋34を施錠する。即ち操作箱33は、操作箱蓋34が開閉切替部15によって施錠され、作業者が保持操作部32を取り出して柱上気中開閉器3の切替操作を行うことができない閉状態となる(S120)。所定の停電作業が行われ、断路器51の一次側が短絡接地金具11によって地絡された状態となったら、作業者は所定の点検作業などの作業を行う。
【0068】
所定の作業が終了したら、作業者は復電の準備作業を行う。具体的に作業者は、断路器51の一次側を地絡していた短絡接地金具11を取り外す(S130)。短絡接地金具11が取り外されると、地絡検出部12はそのことを検出して、誤操作防止信号の出力を停止する。
【0069】
誤操作防止信号の出力が停止すると、開閉切替部15は、操作箱蓋34を開錠する(S140)。即ち操作箱33は、操作箱蓋34が開錠され、作業者が保持操作部32を取り出して柱上気中開閉器3の切替操作を行うことができる開状態となる。
【0070】
短絡接地金具11を取り外したら、作業者は、第1の実施形態と同様の手順で復電作業を行う(S150)。なお作業者は、柱上気中開閉器3の切替操作を行う際には、操作箱蓋34を開けて保持操作部32を取り出し、操作紐31を操作して柱上気中開閉器3の切替操作を行う。
【0071】
上記のように構成された誤操作防止装置1Aによれば、地絡検出部12からの誤操作防止信号によって、操作箱33の開閉状態が切り替えられる。即ち、短絡接地金具11が断路器51の一次側を地絡している際には、開閉切替部15によって操作箱蓋34が施錠され、操作箱33が、作業者が柱上気中開閉器3の切替操作を行うことができない閉状態となる。このため、短絡接地金具11が断路器51の一次側を地絡している状態で、作業者が誤って柱上気中開閉器3を通電状態に切り替えてしまうことが防がれる。
【0072】
なお上記実施形態では、開閉切替部15が、操作箱蓋34を施錠する電子鍵である例に適用して説明を行ったが、これに限定される訳ではない。例えば開閉切替部15が、保持操作部32が固定具から取り外されることを阻害する公知の構造の専用器具を規制する電子鍵であってもよい。あるいは開閉切替部15が、誤操作防止信号に従って作動して、作業者による操作紐31の操作や、柱上気中開閉器3の切替操作を規制可能な、その他の公知の構造の専用の器具であってもよい。
【0073】
〔第3の実施形態〕
次に、第3の実施形態について図6から図8を参照しながら説明する。
本実施形態の誤操作防止装置1Bの基本構成は、上記の実施形態と同様であるが、短絡接地金具11の取り外しを規制する解除規制切替部16と、操作箱33の開閉切替部15Bを主に制御する制御部17と、更に短絡接地金具11を収容する収容部18を備えている点が、上記の実施形態と主に相違する。従って本実施形態では、相違する点について主に説明を行い、上記の実施形態と同一の箇所については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0074】
<3-1 構成の説明>
本実施形態に係る誤操作防止装置1Bは、短絡接地金具11、地絡検出部12、開閉切替部15B、解除規制切替部16、制御部17、及び収容部18から主に構成されている。
【0075】
開閉切替部15Bは、操作箱蓋34に設けられた、第2の実施形態の開閉切替部15Bと同一の構成の電子鍵である。なお本実施形態において開閉切替部15Bは、詳細は後述する制御部17からの信号に従って、施錠状態と開錠状態が切り替えられる。
【0076】
また開閉切替部15Bは、自身の施錠、開錠状態を外部に通知する機能を有している。本実施形態において開閉切替部15Bは、施錠、及び開錠状態が切り替わる毎に、そのことを通知する信号を、公知の近距離無線通信規格に基づく電波によって送信する例に適用して説明を行う。なお開閉切替部15Bは、有線などの他の公知の通信方法によってそのような信号を出力してもよい。
【0077】
解除規制切替部16は、断路器51の一次側に取り付けられた短絡接地金具11の、作業者による取り外し作業を規制する部分である。換言すれば、解除規制切替部16は、断路器51の一次側が地絡された状態を、短絡接地金具11を取り外して解除する、作業者による解除操作を規制する部分である。
【0078】
本実施形態において解除規制切替部16は、地絡検出部12からの誤操作防止信号に従って作動して開錠と施錠の状態が切り替わる、高圧受電設備5の開閉扉50に設けられた公知の電子鍵である例に適用して以降の説明を行う。なお本実施形態における開閉扉50が、解除規制部の一例である。
【0079】
即ち解除規制切替部16は、作業者が開閉扉50を開けて短絡接地金具11の取り外し作業(解除操作)を行うことができる解除状態と、作業者が開閉扉50を開けて短絡接地金具11の取り外し作業(解除操作)を行うことができない規制状態とを切り替えるものである。
【0080】
解除規制切替部16は、作業者による操作を受け付ける図示されていない操作部も有しており、作業者は、この操作部を操作することで開錠と施錠の状態を切り替えることができる。
【0081】
解除規制切替部16は、自身の施錠、開錠の状態を制御部17などに通知する機能も有している。換言すれば解除規制切替部16は、開閉扉50が解除状態であるか、規制状態であるかを通知する機能を備えている。本実施形態において解除規制切替部16は、施錠、及び開錠が切り替わる毎に、そのことを通知する信号を、公知の近距離無線通信規格に基づく電波によって送信する例に適用して説明を行う。なお解除規制切替部16は、有線などの他の公知の通信方法によってそのような信号を出力してもよい。
【0082】
収容部18は、使用されていない短絡接地金具11を収容する部分である。本実施形態において収容部18は、短絡接地金具11を収容可能な大きさの公知の袋である例に適用して以降の説明を行う。
【0083】
収容部18は、その開閉を規制する解放閉鎖切替部19を備えている。換言すれば収容部18は、作業者が収容部18を開いて短絡接地金具11の出し入れを行うことができる解放状態と、作業者が収容部18を開いて短絡接地金具11の出し入れを行うことができない閉鎖状態とを切り替える解放閉鎖切替部19を備えている。
【0084】
本実施形態において解放閉鎖切替部19は、収容部18の開口部を閉じる紐やベルトに取り付けられた電子鍵である例に適用して以降の説明を行う。
【0085】
すなわち作業者は、解放閉鎖切替部19が開錠された状態である場合には、紐やベルトを緩めて収容部18を開き、短絡接地金具11の出し入れを行うことができる。一方。解放閉鎖切替部19が開錠された状態である場合には、収容部18の開口部を閉じている紐やベルトを緩めることができず、短絡接地金具11の出し入れを行うことができない。
【0086】
なお解放閉鎖切替部19は、図示されていない操作部を備えており、作業者による操作によって施錠と開錠が切り替わる。また解放閉鎖切替部19は、自身が施錠している状態であるか、開錠している状態であるかを制御部17などに通知する機能も有している。換言すれば解放閉鎖切替部19は、収容部18が解放状態であるか、閉鎖状態であるかを通知する機能を備えている。
【0087】
本実施形態において解放閉鎖切替部19は、公知の短距離無線通信規格に基づいて、その通知する信号を出力する例に適用して説明を行うが、解放閉鎖切替部19は、有線などのその他の公知の通信方法によってそのような信号を送信する構成としてもよい。
【0088】
なお収容部18は、短絡接地金具11を収容可能なものであれば、上記に限定される訳ではない。例えば収容部18は、蓋付きの箱であったり、その他の公知の収容容器であったりしてもよい。また解放閉鎖切替部19は、収容部18の解放状態と閉鎖状態の切替を行うことができるものであれば、その他の公知の規制器具であってもよい。
【0089】
制御部17は、誤操作防止信号の出力状態、解除規制切替部16の状態、解放閉鎖切替部19の状態に基づいて、開閉切替部15Bの制御を行う部分である。より具体的に説明を行うと制御部17は、短絡接地金具11の取付状態(断路器51の一次側が地絡されているか否か)、開閉扉50の状態(解除状態となっているか、あるいは規制状態か)、及び収容部18の状態(解放状態となっているか、あるいは閉鎖状態か)のそれぞれの状態に基づいて、開閉切替部15Bの制御を行うものである。
【0090】
そして制御部17は、誤操作防止信号の出力、解除規制切替部16、及び解放閉鎖切替部19のそれぞれが、予め定められた状態である場合には、開閉切替部15Bを開錠する信号を出力して、開閉扉50を開状態とする制御を行う。また制御部17は、それ以外の状態の場合には、開閉切替部15Bを施錠する信号を出力して、開閉扉50が閉状態となる制御を行う。あるいは開閉切替部15Bがすでに施錠されている場合には、その状態を維持して開閉扉50が閉状態で維持されるように制御を行う。本実施形態において制御部17は、CPUやメモリなどの記憶媒体から構成され、それらのハードウェアが当該記憶媒体に記憶された専用のソフトウェアと協働して上記の作動を行う電子機器である例に適用して説明を行う。なお制御部17は、同様の作動を行うものであれば、公知の電気素子からなる電気回路や電子回路から構成されたものであってもよい。
【0091】
<3-2> 作動の説明
続いて本実施形態にかかる誤操作防止装置1Bの作動について、主に図7~8を参照し、その使用手順に従って説明を行う。なお図8の上段には、図7に付した記号と同一の記号を記載している。
【0092】
本実施形態では、作業開始前において、収容部18は短絡接地金具11を収容して施錠された状態(閉鎖状態)であり、開閉扉50は閉じられ施錠された状態(規制状態)である例に適用して以降の説明を行う。更に操作箱33は、操作箱蓋34が閉じられ施錠されている状態(閉状態)である例に適用して説明を行う(図8の「START」欄参照。)。
【0093】
はじめに、短絡接地金具11を取り出すために、作業者は解放閉鎖切替部19を操作して収容部18を開放状態とする。具体的には、作業者が収容部18の開口部を閉じる紐やベルトに取り付けられた解放閉鎖切替部19を開錠し、収容部18の開口部を閉じている紐やベルトを緩めて収容部18から短絡接地金具11を取り出せるようにする(S200)。
【0094】
続いて作業者は、停電作業を行う。具体的には、はじめに解除規制切替部16を操作して高圧受電設備5の開閉扉50を解錠し(解除状態)、開閉扉50を開いて真空しゃ断機52を開放(OFF)する操作を行う(S205)。続いて作業者は、開閉切替部15Bを操作し、操作箱蓋34を開けることができるようにする。そして、操作箱33の中から保持操作部32を取り出し、操作紐31を操作して柱上気中開閉器3を開放する操作を行う。即ち、操作箱33を開状態として、柱上気中開閉器3を停電状態に切り替える(S210)。
【0095】
作業者は、柱上気中開閉器3の切替操作後に、保持操作部32を操作箱33の内側の図示されていない固定部に収容し、操作箱蓋34を閉じて施錠する。即ち操作箱33を閉状態とする(S215)。続いて作業者は、高圧受電設備5の高圧受電盤にて、断路器51を開放(OFF)する操作を行う(S220)。
【0096】
停電作業を終えたら作業者は、収容部18から短絡接地金具11を取り出して、短絡接地金具11を、断路器51の一次側と、高圧受電設備5の内部の接地端子等との間に接続する(S230)。断路器51の一次側が短絡接地金具11によって地絡されると、地絡検出部12は、その状態を検知して誤操作防止信号を出力する。
【0097】
地絡検出部12から誤操作防止信号が出力されると、開閉切替部15Bによって、操作箱蓋34は、閉じた状態が維持されるようになる。即ち操作箱33は、開閉切替部15Bによって作業者が保持操作部32を取り出して切替操作を行うことができない閉状態となる。
【0098】
作業者は、短絡接地金具11を断路器51の一次側と、高圧受電設備5の内部の接地端子等との間に接続した後、開閉扉50を閉じ、解除規制切替部16を操作して開閉扉50が施錠された状態とする(S240)。即ち作業者は、開閉扉50を、短絡接地金具11を取り外して断路器51の一次側が地絡された状態を解除する解除操作を行うことができない規制状態にする。
【0099】
断路器51の一次側が地絡されて開閉扉50が施錠され、停電作業が完了したら、作業者は点検等の作業を行う(S250)。
点検等の作業を終えたら、作業者は、復電作業を行う。はじめに作業者は、短絡接地金具11を取り外すため、解除規制切替部16を操作して開閉扉50を開錠する(S260)。即ち解除規制切替部16を操作して、開閉扉50を解除状態とする。なお解除規制切替部16は、開閉扉50が解除状態であることを通知する信号を出力する。
【0100】
開閉扉50を開錠したら、作業者は短絡接地金具11を取り外す(S270)。短絡接地金具11が取り外されて、断路器51の一次側が地絡された状態が解除されると、地絡検出部12はその状態を検知して、誤操作防止信号の出力を停止する。
【0101】
作業者は、取り外した短絡接地金具11を収容部18に収納し、紐やベルトなどを用いてその開口部を閉じたら、解放閉鎖切替部19にて施錠する(S280)。即ち収容部18を閉鎖状態とする。解放閉鎖切替部19は、施錠された状態となると、収容部18が施錠状態であることを通知する信号を出力する。作業者は、断路器51を投入(ON)する操作を行う(S285)。なお作業者は、収容部18を閉鎖状態とする前に、断路器51を投入(ON)する操作を行ってもよい。
【0102】
解放閉鎖切替部19が施錠状態となると、制御部17は、開閉切替部15Bを開錠状態にする信号を出力する。より具体的に説明を行うと、制御部17は、誤操作防止信号の出力が停止しており、開閉扉50が解除状態であって、収容部18が閉鎖状態(解放閉鎖切替部19が施錠状態)である場合に、開閉切替部15Bを開錠状態にする信号を出力する。制御部17が上記の信号を出力すると、開閉切替部15Bは開錠状態となり、操作箱33が開状態に切り替わる。操作箱33が開状態となったら、作業者は、操作箱蓋34を開けて操作紐31を操作し、柱上気中開閉器3を投入する。即ち、柱上気中開閉器3を通電状態に切り替える(S290)。作業者は、柱上気中開閉器3を通電状態に切り替えたら、保持操作部32を操作箱33の内側の固定部に収容し、操作箱蓋34を閉じて施錠する。即ち、操作箱33を閉状態とする(S295)。
【0103】
柱上気中開閉器3を通電状態に切り替えたら、作業者は、真空しゃ断機52を投入(ON)する操作を行う(S300)。そして開閉扉50を閉じ、解除規制切替部16を操作して開閉扉50を施錠する(S310)。即ち開閉扉50を規制状態にして作業を完了する。
【0104】
上記のように構成された誤操作防止装置1Bによれば、操作防止信号の出力の状態、開閉扉50の解除、規制の状態、及び収容部18の解放、閉鎖状態が所定の状態となった際に、制御部17が、操作箱33を開状態となるように開閉切替部15Bを制御する。即ち、短絡接地金具11が取り外されて地絡検出部12からの誤操作防止信号の出力が停止しており、高圧受電設備5の開閉扉50が解除状態であり、収容部18に短絡接地金具11が収納され閉鎖状態となっている場合に、操作箱蓋34が開錠されるように制御が行われる。一方制御部17は、断路器51の一次側が地絡された状態においては、所定の条件を満たさなければ、操作箱33が閉状態で維持される様に制御を行う。
【0105】
このため、所定の手順に従って作業を行わなければ、作業者は、保持操作部32を操作箱33から取り出して、柱上気中開閉器3の切替作業を行うことができない。このため作業者が、断路器51の一次側が地絡された状態で柱上気中開閉器3を通電状態に切り替えてしまうような誤操作を防ぐことが可能となる。
【0106】
なお、本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0107】
例えば、上記実施形態において制御部17が、解除規制切替部16の制御を行う構成としてもよい。即ち制御部17が、開閉扉50の解放状態と閉鎖状態の切替を制御するようにしてもよい。そして、例えば地絡検出部12から誤操作防止信号が出力されている状態でなければ、作業者が解除規制切替部16を操作しても、開閉扉50を施錠することができないようにしてもよい。このようにすれば、短絡接地金具11を接続しない状態で、作業者が開閉扉50を閉じて点検作業等の作業を行ってしまうことが防がれる。即ち、意図しない通電によって感電等のおそれのある状態で、作業者が点検作業等の作業を行ってしまうことを防ぐことが可能となる。
【0108】
更に制御部17が、例えば解放閉鎖切替部19が開錠されると鳴動するなどして、短絡接地金具11が取り出されたことを作業者に通知する作動を行う構成としてもよい。そして、地絡検出部12から誤操作防止信号が出力された際に、制御部17による作業者への通知が停止する構成としてもよい。このようにすれば、作業者が、短絡接地金具11を接続しない状態で、点検作業などの作業を行ってしまうことをより確実に防ぐことが可能となる。
【0109】
あるいは制御部17が、柱上気中開閉器3、断路器51、及び真空しゃ断機52などの投入、開放状態も検知する構成としてもよい。そして、柱上気中開閉器3、断路器51、及び真空しゃ断機52の投入、開放状態と、操作防止信号の出力の状態と、解除規制切替部16の状態と、更に解放閉鎖切替部19の状態が所定の状態となれなければ、作業者が次の作業が行えないように、制御部17が、開閉切替部15、解除規制切替部16、及び解放閉鎖切替部19を制御する構成としてもよい。このようにすれば、作業者は、予め定めた手順に従わなければ作業を行うことができなくなり、更に誤操作を防止することが可能となる。
【0110】
上記の実施形態では、解除規制部が開閉扉50であり、解除規制切替部16が、開閉扉50に設けられた電子鍵である例に適用して説明を行ったが、解除規制部、及び解除規制切替部16はこれに限定される訳ではない。解除規制部、及び解除規制切替部16は、短絡接地金具11を取り外して断路器51の一次側が地絡した状態を解除する解除操作を規制し、その規制の状態を通知する信号を出力できるものであれば、他の公知の構成が用いられてもよい。
【0111】
例えば解除規制部が、断路器51の一次側や、接地端子等に接続されたクリップ11b、11cの全体を覆うカバーであり、解除規制切替部16がそのカバーの取り外しを規制する電子鍵などであってもよい。あるいは解除規制部が、短絡接地金具11を取り外すために、クリップ11b、11cが開くことを妨げる、クリップ11b、11cに取り付けられる公知の構造の専用の器具であってもよい。そして解除規制切替部16が、その器具の取り外しを規制する電子鍵などであってもよい。
【0112】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0113】
1,1A,1B…誤操作防止装置 3…柱上気中開閉器 5…高圧受電設備
11…短絡接地金具(短絡接地部) 11a…接地ケーブル
11b,11c…クリップ 12…地絡検出部(信号出力部)
13…測距部 13a…送信部 13b…受信部 14…距離通知部
15,15B…開閉切替部 16…解除規制部 17…制御部
18…収容部 19…解放閉鎖切替部 31…操作紐 32…保持操作部
33…操作箱 34…操作箱蓋 35…スイッチ
50…開閉扉(解除規制部) 51…断路器 52…真空遮断機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8