(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
A01F 12/54 20060101AFI20231108BHJP
A01F 12/44 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A01F12/54 C
A01F12/44 Z
(21)【出願番号】P 2020109149
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中西 雄大
(72)【発明者】
【氏名】田代 元
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-092649(JP,A)
【文献】実開昭56-096948(JP,U)
【文献】特開昭57-079820(JP,A)
【文献】特開2014-117242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0320587(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/32 - 12/44
A01F 12/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を脱穀処理する脱穀部と、前記脱穀部の下方に設けられ、前記脱穀部によって脱穀処理されて前記脱穀部から漏下してきた脱穀処理物を穀粒と異物とに選別処理する選別部と、を有する脱穀装置と、
前記脱穀装置の後部に連結され、前記脱穀部による脱穀処理後の排ワラを処理する排ワラ処理装置と、が備えられ、
前記脱穀部に、扱室と、前記扱室に収容されて回転軸芯を中心に駆動回転して作物を扱き処理する扱胴と、前記扱胴の下方に配置された受網と、前記扱室における作物移送方向終端箇所に形成され、前記扱胴の後端部と前記受網の後端部との間からの排ワラを扱室から排出する排塵口と、が備えられ、
前記選別部に、前記受網から漏下してきた脱穀処理物を揺動により選別処理する揺動選別装置が備えられ、
前記排塵口と前記排ワラ処理装置とに亘って後ろ下がりの状態で設けられ、前記排塵口から排出された排ワラを前記排ワラ処理装置に向けて案内する流下案内部が備えられ、
前記排塵口から排出された排ワラを前記排ワラ処理装置に向けて送る排塵経路と、前記受網から漏下した前記脱穀処理物のうち前記選別部の後方へ送り出されたものを排出する排出経路と、が前記流下案内部で分離され、
前記受網の後端部と前記揺動選別装置の後端部との間
から前記流下案内部より下側の前記排出経路を通って機外に排出される穀粒を検出する穀粒検出センサが、前記流下案内部のうち、前記排ワラ処理装置とは反対側の領域に備えられている収穫機。
【請求項2】
作物を脱穀処理する脱穀部と、前記脱穀部の下方に設けられ、前記脱穀部によって脱穀処理されて前記脱穀部から漏下してきた脱穀処理物を穀粒と異物とに選別処理する選別部と、を有する脱穀装置と、
前記脱穀装置の後部に連結され、前記脱穀部による脱穀処理後の排ワラを処理する排ワラ処理装置と、が備えられ、
前記脱穀部に、扱室と、前記扱室に収容されて回転軸芯を中心に駆動回転して作物を扱き処理する扱胴と、前記扱胴の下方に配置された受網と、前記扱室における作物移送方向終端箇所に形成され、前記扱胴の後端部と前記受網の後端部との間からの排ワラを扱室から排出する排塵口と、が備えられ、
前記選別部に、前記受網から漏下してきた脱穀処理物を揺動により選別処理する揺動選別装置が備えられ、
前記排塵口と前記排ワラ処理装置とに亘って後ろ下がりの状態で設けられ、前記排塵口から排出された排ワラを前記排ワラ処理装置に向けて案内する流下案内部が備えられ、
前記流下案内部のうち、前記排ワラ処理装置が配置された側と反対側の面にカバーを備えており、
前記受網の後端部と前記揺動選別装置の後端部との間を通って機外に排出される穀粒を検出する穀粒検出センサが、検出面を前記カバーから露出させる状態で、
前記流下案内部のうち前記排ワラ処理装置とは反対側の領域において前記流下案内部と前記カバーとの間に配置されてい
る収穫機。
【請求項3】
前記穀粒検出センサが、前記回転軸芯に沿う方向視において、前記流下案内部の横幅方向での外端近傍に配置されている請求項1
または2に記載の収穫機。
【請求項4】
前記穀粒検出センサが、前記穀粒の衝突時の圧力を検出する感圧センサで構成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の収穫機。
【請求項5】
前記穀粒検出センサの検出結果に基づき、機外に排出される穀粒量を穀粒ロスとして判定する穀粒ロス判定部を備えている請求項1~4のいずれか一項に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫物を脱穀することにより穀粒を得る収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された収穫機(文献ではコンバイン)では、稲を収穫する作業において、収穫物を脱穀装置で脱穀処理し、穀粒を選別して回収する構成が記載されている。また、この特許文献1の収穫の脱穀作業では、扱胴の回転により受網から漏下した処理物を、選別部(文献では揺動選別体)で篩選別し、唐箕(文献では唐箕ファン)からの選別風により風選別する構成が記載されている。
【0003】
更に、特許文献1では、選別室後壁のカバーに音センサを設け、排塵物に含まれる飛散穀粒が衝突した際の衝突音から飛散穀粒を検出できる構成を備えている。
【0004】
また、特許文献2には、脱穀装置の選別部(文献では揺動選別機構)で脱穀を行い、この選別部に選別風を供給する唐箕を備えており、脱穀時に選別部で発生する浮遊塵を排出する排塵ファンを備えた構成が記載されている。
【0005】
この特許文献2では、排塵ファンにおいて排塵を斜下方に送るフードの延出端の内面にセンサを取り付けており、揺動選別機構からワラ屑と共に穀粒が排出された場合には、ワラ屑は排塵ファンの送風によって下方に吹き飛ばされるものの、穀粒は比較的比重が大きく空気抵抗による減衰が低く、センサの感知面を強く打撃するため穀粒の検出を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-102610号公報
【文献】特開昭61-96916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に示されるように、脱穀時に穀粒の無駄な排出を適正に検出することは、穀粒ロスを低減する観点から重要である。
【0008】
ここで、穀粒が排出される現象を考えると、特許文献1,2に記載されるように、選別部での選別時に発生するワラ屑に穀粒が混ざり込む状態で選別風によって排出される現象の他に、受網から漏下した穀粒が選別部に達する以前に、選別風によって流されてきたワラ屑に接触する状態で排出される現象も想像できた。
【0009】
特許文献1,2の明細書の記載、図面の記載から判断して、自動脱穀型のコンバイン(収穫機)では、扱室で扱き処理された処理物は、処理物の移送方向での終端位置の排塵口から排出され、更に、排塵ファンによって外部に排出される。
【0010】
このような構成であるため、特許文献1,2の何れの構成であっても、ワラ屑のワラ小片が浮遊する空間に飛散する穀粒をセンサで検出することになり、検出精度の低下を招きやすいものであった。
【0011】
このような理由から、脱穀処理物を選別する選別部から穀粒が機外に排出される場合には、排出される穀粒を正確に検出できる収穫機が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る収穫機の特徴構成は、作物を脱穀処理する脱穀部と、前記脱穀部の下方に設けられ、前記脱穀部によって脱穀処理されて前記脱穀部から漏下してきた脱穀処理物を穀粒と異物とに選別処理する選別部と、を有する脱穀装置と、前記脱穀装置の後部に連結され、前記脱穀部による脱穀処理後の排ワラを処理する排ワラ処理装置と、が備えられ、前記脱穀部に、扱室と、前記扱室に収容されて回転軸芯を中心に駆動回転して作物を扱き処理する扱胴と、前記扱胴の下方に配置された受網と、前記扱室における作物移送方向終端箇所に形成され、前記扱胴の後端部と前記受網の後端部との間からの排ワラを扱室から排出する排塵口と、が備えられ、前記選別部に、前記受網から漏下してきた脱穀処理物を揺動により選別処理する揺動選別装置が備えられ、前記排塵口と前記排ワラ処理装置とに亘って後ろ下がりの状態で設けられ、前記排塵口から排出された排ワラを前記排ワラ処理装置に向けて案内する流下案内部が備えられ、前記排塵口から排出された排ワラを前記排ワラ処理装置に向けて送る排塵経路と、前記受網から漏下した前記脱穀処理物のうち前記選別部の後方へ送り出されたものを排出する排出経路と、が前記流下案内部で分離され、前記受網の後端部と前記揺動選別装置の後端部との間から前記流下案内部より下側の前記排出経路を通って機外に排出される穀粒を検出する穀粒検出センサが、前記流下案内部のうち、前記排ワラ処理装置とは反対側の領域に備えられている点にある。
【0013】
この特徴構成によると、扱室の脱穀処理物のうち、受網から漏下しなかった排ワラ等は排塵口から排出され、流下案内部に沿って流下し排ワラ処理部で処理される。また、受網から漏下した脱穀処理物に含まれる穀粒のうち揺動選別装置において、例えば、跳ね上げられたものは、受網の後端と揺動選別装置の後端との間を通り機外に排出される。このように排出される穀粒は、流下案内部のうち排ワラ処理装置と反対側に備えた穀粒検出センサに衝突することにより検出される。この構成では、流下案内部に穀粒検出センサを支持できるため、穀粒検出センサを支持するためにブラケット類を用いる必要がない。また、この構成では、排塵口から排出される排ワラや塵埃等を、流下案内部に沿って機外に送り出すため、穀粒が飛散する空間に対して排塵口からの塵埃等が侵入することがなく、例えば、揺動選別装置の後端から飛散する穀粒が、塵埃に接触して飛散速度が減じられる現象を招くことがなく、検出精度を向上できる。
従って、脱穀処理物を選別する選別部から穀粒が機外に排出される場合には、排出される穀粒を正確に検出できる収穫機が構成された。
【0014】
上記構成に加えた構成として、前記穀粒検出センサが、前記回転軸芯に沿う方向視において、前記流下案内部の横幅方向での外端近傍に配置されても良い。
【0015】
受網が回転軸芯を中心とする円弧状に形成され、平面視において受網の中央領域(軸芯と重複する領域)から外側に離れる領域ほど、漏下面が仮想水平面に対して傾斜することになる。このため、受網から揺動選別装置に漏下する脱穀処理物の分布は、受網の中央領域と比較して、この中央領域から外方に離れる領域ほど増大し、受網から揺動選別装置に漏下する穀粒の分布も、揺動選別装置の機体横方向で中央と比較して機体横方向での外端近くが増大し、揺動選別部の後端から機外に排出される穀粒量も中央部より横幅方向の外端近くが増大する。このような理由から、穀粒検出センサを、回転軸芯に沿う方向視において、流下案内部の横幅方向での外端近傍に配置することで揺動選別装置の後端から飛散する穀粒を良好に検出できる。
【0016】
本発明に係る収穫機の別の特徴構成は、作物を脱穀処理する脱穀部と、前記脱穀部の下方に設けられ、前記脱穀部によって脱穀処理されて前記脱穀部から漏下してきた脱穀処理物を穀粒と異物とに選別処理する選別部と、を有する脱穀装置と、前記脱穀装置の後部に連結され、前記脱穀部による脱穀処理後の排ワラを処理する排ワラ処理装置と、が備えられ、前記脱穀部に、扱室と、前記扱室に収容されて回転軸芯を中心に駆動回転して作物を扱き処理する扱胴と、前記扱胴の下方に配置された受網と、前記扱室における作物移送方向終端箇所に形成され、前記扱胴の後端部と前記受網の後端部との間からの排ワラを扱室から排出する排塵口と、が備えられ、前記選別部に、前記受網から漏下してきた脱穀処理物を揺動により選別処理する揺動選別装置が備えられ、前記排塵口と前記排ワラ処理装置とに亘って後ろ下がりの状態で設けられ、前記排塵口から排出された排ワラを前記排ワラ処理装置に向けて案内する流下案内部が備えられ、前記流下案内部のうち、前記排ワラ処理装置が配置された側と反対側の面にカバーを備えており、前記受網の後端部と前記揺動選別装置の後端部との間を通って機外に排出される穀粒を検出する穀粒検出センサが、検出面を前記カバーから露出させる状態で、前記流下案内部のうち前記排ワラ処理装置とは反対側の領域において前記流下案内部と前記カバーとの間に配置されている点にある。
【0017】
この特徴構成によると、扱室の脱穀処理物のうち、受網から漏下しなかった排ワラ等は排塵口から排出され、流下案内部に沿って流下し排ワラ処理部で処理される。また、受網から漏下した脱穀処理物に含まれる穀粒のうち揺動選別装置において、例えば、跳ね上げられたものは、受網の後端と揺動選別装置の後端との間を通り機外に排出される。このように排出される穀粒は、流下案内部のうち排ワラ処理装置と反対側に備えた穀粒検出センサに衝突することにより検出される。この構成では、流下案内部に穀粒検出センサを支持できるため、穀粒検出センサを支持するためにブラケット類を用いる必要がない。また、この構成では、排塵口から排出される排ワラや塵埃等を、流下案内部に沿って機外に送り出すため、穀粒が飛散する空間に対して排塵口からの塵埃等が侵入することがなく、例えば、揺動選別装置の後端から飛散する穀粒が、塵埃に接触して飛散速度が減じられる現象を招くことがなく、検出精度を向上できる。
これによると、流下案内体と、カバーとの間の空間に穀粒検出センサを配置することで穀粒検出センサと配線とを保護できる。また、例えば、カバーに形成した開口から検出面を露出させるように穀粒検出センサを配置することで穀粒を良好に検出できる。
従って、脱穀処理物を選別する選別部から穀粒が機外に排出される場合には、排出される穀粒を正確に検出できる収穫機が構成された。
【0018】
上記構成に加えた構成として、前記穀粒検出センサが、前記穀粒の衝突時の圧力を検出する感圧センサで構成されても良い。
【0019】
これによると、切れワラ等の塵埃のように穀粒より比重が小さい物が接触した際の検出値と、穀粒が接触した際の検出値との間に閾値を設定する等の処理により穀粒検出センサでの穀粒の検出精度の向上が可能となる。
【0020】
上記構成に加えた構成として、前記穀粒検出センサの検出結果に基づき、機外に排出される穀粒量を穀粒ロスとして判定する穀粒ロス判定部を備えても良い。
【0021】
これによると、穀粒検出センサの検出結果に基づいて、穀粒ロスを判定できるため、穀粒ロスが閾値を超えた場合に、穀粒ロスを抑制するための自動制御を行わせることや、実行報知ランプを点灯させることで作業者に対応を促すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図6】センサ類の配置を示す脱穀装置の縦断側面図である。
【
図7】揚送装置と還元装置との位置関係を示す横断平面図である。
【
図10】第1チャフシーブと第2チャフシーブとを示す側面図である。
【
図11】チャフリップの揺動構造を示す断面図である。
【
図12】起立姿勢にある規制リップを示す断面図である。
【
図13】倒伏姿勢にある規制リップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1、
図2に収穫機の一例としての普通型コンバインAの側面と平面とを示している。これらの図において、矢印Fの方向を走行機体1の前後方向の「前」、矢印Bの方向を走行機体1の前後方向の「後」、矢印Lの方向を走行機体1の左右方向で「左」、矢印Rの方向を走行機体1の左右方向の「右」と定義する。また、矢印Uの方向を走行機体1の上下方向の「上」、矢印Dの方向を走行機体1の上下方向の「下」と定義する。
【0024】
普通型コンバインA(以下、コンバインAと略称する)は、走行機体1に備えたクローラ式の走行装置2によって走行自在に構成され、走行機体1に脱穀装置Tを備えている。このコンバインAは、圃場の作物(稲、麦、大豆、菜種など)を刈り取る刈取部4を走行機体1の前部に備え、この刈取部4で刈り取った作物(以下、収穫物と称する)を脱穀装置Tに供給するフィーダ11を備えている。
【0025】
コンバインAは、脱穀装置Tで選別された穀粒を貯留する穀粒タンク12を、脱穀装置Tに並列する位置に備えている。また、穀粒タンク12には貯留されている穀粒を排出する穀粒排出装置13を備えている。
【0026】
図1、
図2に示すように、刈取部4は、作物を掻き込むリール5と、圃場の作物を切断するバリカン型の切断装置6と、刈り取られた作物(収穫物)を横方向での中央側に送ることでフィーダ11に供給するオーガ7とを備えている。
【0027】
このコンバインAは、刈取部4の右後方で、フィーダ11と並列する位置に運転部9が備えられている。運転部9は、キャビン10によって覆われている。図面には示していないが、運転部9の下方にはエンジン、冷却ファン、ラジエータ等が収容されている。エンジンの駆動力が走行装置2や、刈取部4、脱穀装置T等に伝えられる。
【0028】
このようにコンバインAが構成されるため、収穫作業を行う場合には、刈取部4での刈り取り高さを、収穫対象の刈り取りが可能な高さに設定し、走行機体1を前進させることにより、収穫対象の作物がリール5によって後方に引き寄せられつつ、株元が切断装置6で切断される。このように収穫された収穫物がオーガ7によってフィーダ11の前方に集められ、フィーダ11によって脱穀装置Tに供給される。そして、脱穀装置Tでは、供給された収穫物を処理することで穀粒が回収され、穀粒タンク12に貯留される。
【0029】
〔脱穀装置〕
図3~
図6に示すように脱穀装置Tは、フィーダ11で供給された収穫物を脱穀する脱穀部20を上部に配置し、この脱穀部20から供給された脱穀処理物を、穀粒と異物とに選別処理する選別部30を下部に配置し、脱穀部20の排塵口25から排出された排ワラを細断処理する排ワラ処理装置50を、選別部30の後方に配置している。
【0030】
〔脱穀装置:脱穀部〕
脱穀部20は、フィーダ11で収穫物が供給される扱室21を有すると共に、この扱室21の内部に前後向き姿勢の回転軸芯Xで駆動回転自在に扱胴22を収容し、この扱胴22の下側に回転軸芯Xに沿う方向視において、
図4、
図5に示すように全体的に回転軸芯Xを中心とする円弧状となる受網23を配置している。尚、扱胴22は、
図4に示すように、正面視において時計回りに駆動回転される。
【0031】
扱室21は、左右の側壁21aと、前後の端部壁21bと、上部の上壁21cとを備えており、上壁21cの下面(内面)には複数の送塵弁24を備えている。扱胴22は、前後方向に貫通する扱胴軸22aを有し、この扱胴軸22aの端部を、前後の端部壁21bに対し、前後向き姿勢の回転軸芯Xで回転自在に支承している。更に、扱室21は、収穫物の移動方向での終端箇所に対し、受網23の後端から後側の端部壁21bに亘る領域に排塵口25が形成されている。
【0032】
図4、
図5に示すように、複数の送塵弁24は、縦向き姿勢の軸部24aを介して揺動自在に上壁21cに支持されている。複数の送塵弁24は、扱胴22の回転に伴い扱室21の内部で扱胴22と共に回転する収穫物の移送方向の終端側(
図3において右側)に移送するように平面視において回転軸芯Xに対して傾斜する姿勢で備えられている。これにより、扱室21に供給された収穫物は、複数の送塵弁24によって移送され、排塵口25から排出される。
【0033】
また、送塵弁24は、軸部24aを中心とする揺動姿勢の変更により、収穫物の単位時間あたりの移送距離の変更を可能にする。具体的な構成は図面に示していないが、複数の送塵弁24は、等しい角度だけ同時に揺動できるようにリンク機構によって連係している。脱穀装置Tは、電動モータの駆動力により軸部24aを中心として複数の送塵弁24の揺動姿勢を変更する送塵弁制御ユニット71を備えている。
【0034】
図3に示すように、扱胴22は、扱胴軸22aと一体回転する複数の棒状の扱胴フレームに対して複数の扱歯22bを外方に突出する形態で設けた構造を有している。受網23は、回転軸芯Xに沿う方向視において、円弧状となる複数の縦フレームと、この縦フレームに対し回転軸芯Xに平行姿勢となる複数の横フレームとを格子状に配置することにより、多数の漏下用開口が形成されている。
【0035】
これにより、脱穀部20は、フィーダ11から扱室21に供給された収穫物を、駆動回転する扱胴22で扱き処理を行い、この扱き処理により穀稈から分離した穀粒を含む脱穀処理物を受網23に漏下させる。また、扱室21では、前述したように、扱胴22の回転に伴い扱室21で収穫物が回転し、この収穫物が複数の送塵弁24に接触することで後方に移送され、扱き処理を終えた収穫物が排ワラとして排塵口25から排出される。
【0036】
〔脱穀装置:選別部〕
図3に示すように、選別部30は、受網23の下方に配置された揺動選別装置31と、この揺動選別装置31を前後方向に揺動させる揺動駆動機構32と、揺動選別装置31に対して前方から後方に向けて選別風を供給する唐箕33を備えている。
【0037】
尚、揺動駆動機構32は、エンジンの駆動力で回転する偏心軸等からの作動力により、揺動選別装置31の全体の後方へ移動と上方への移動とを同時に行わせ、揺動選別装置31の全体の前方への移動と下方への移動とを同時に行わせるように前後方向に長いループ状の軌跡に沿った駆動を実現する。
【0038】
この選別部30は、
図3、
図7に示すように揺動選別装置31の下方に、選別された穀粒を一番物として回収する一番物回収部34と、揺動選別装置31での選別により切れワラ等の異物を含み単粒化が不充分な穀粒を二番物として回収する二番物回収部35と、を備えている。
【0039】
一番物回収部34は、一番物(穀粒)を横方向に搬送する一番スクリュー34Sを備え、この一番スクリュー34Sで搬送された一番物を穀粒タンク12に供給するように縦姿勢の揚送機構36が脱穀装置Tと穀粒タンク12との間に配置されている。
【0040】
また、二番物回収部35は、二番物を横方向に搬送する二番スクリュー35Sとして構成され、この二番スクリュー35Sで搬送された二番物を、中間搬送ケース37aから還元スクリュー37Sに送り、揺動選別装置31の前部に戻すように斜め姿勢の還元装置37が脱穀装置Tの外部に配置されている。
【0041】
揚送機構36は、
図7~
図9に示すように、縦長姿勢の揚送ケース36aの内部の下部に駆動スプロケット36bを備え、上部に従動スプロケット(図示せず)を備え、これらに巻回した無端チェーン36dに複数のバケット36eを備えている。尚、図面には示していないが、揚送機構36は、揚送ケース36aの上端に送られた穀粒を穀粒タンク12に送り込む機構を有している。
【0042】
駆動スプロケット36bは、一番スクリュー34Sのシャフトと連結している。一番スクリュー34Sで搬送される穀粒を揚送ケース36aの下部に供給する中間筒38を、選別部30の外壁と、揚送ケース36aとの間に備えている。
【0043】
中間筒38は、一番スクリュー34Sの端部を内装しており、この中間筒38から揚送ケース36aに送られる穀粒を、上昇を始めるバケット36eの開口部に効率良く供給するため、
図9に示すように、中間筒38の断面の一部を外方に膨らむ形状に成形することで膨出空間38Tが形成されている。
【0044】
尚、実施形態では、中間筒38の内周の下側が、一番スクリュー34Sの外周に沿うように円筒状に形成され、この中間筒38の内周の上側の一部を外方に膨らませて膨出空間38Tが形成されている。これにより、膨出空間38Tにおいて一番スクリュー34Sに接触しない穀粒でも揚送ケース36aの内部に送り、上昇を始めるバケット36eの開口部に対して効率的に供給できる。
【0045】
図3、
図7に示すように、還元装置37は、二番スクリュー35Sの外端部の駆動力が中間搬送ケース37aと、還元スクリュー37Sとに伝えられる駆動構造を有しており、二番スクリュー35Sで搬送された二番物を中間搬送ケース37aと、還元スクリュー37Sとを介して揺動選別装置31の前部に戻す作動を行う。
【0046】
図3に示すように、揺動選別装置31は、上下方向に開放する枠状のシーブケース41の内部に、グレンパン42と、第1チャフシーブ43と、ストローラック44と、第2チャフシーブ45とを前部から後部に亘る領域に配置し、第1チャフシーブ43の下側にグレンシーブ46を配置している。
【0047】
この揺動選別装置31は、シーブケース41が上下方向に開放する枠状の構造物であり、唐箕33から選別風が供給される状態で、シーブケース41が揺動することにより、第1チャフシーブ43と第2チャフシーブ45とにおいて脱穀処理物から穀粒を選別し、更に、網状のグレンシーブ46で穀粒を漏下させる、所謂、篩い選別を実現する。
【0048】
この揺動選別装置31では、グレンパン42の後端に連なる位置に第1チャフシーブ43を配置し、この第1チャフシーブ43の後端にストローラック44を配置している。また、第2チャフシーブ45は、ストローラック44の下側からシーブケース41の後端縁41aの近傍に亘る領域に配置されている。ストローラック44は、複数のラック材を、シーブケース41の横方向に平行姿勢で配置して構成されている。
【0049】
図10に示すように、第1チャフシーブ43は、前後方向において設定間隔で配置される複数の板状の第1チャフリップ43aを有し、これら複数の第1チャフリップ43aが、シーブケース41に対し横向き姿勢の揺動軸芯を中心に揺動自在に支持されている。これと同様に、第2チャフシーブ45は、前後方向において設定間隔で配置される複数の板状の第2チャフリップ45aを有し、これら複数の第2チャフリップ45aが、シーブケース41に対し横向き姿勢の揺動軸芯を中心に揺動自在に支持されている。
【0050】
複数の第1チャフリップ43aと、複数の第2チャフリップ45aとの揺動構造は共通している。つまり、
図11に示すように、第1チャフリップ43aと、第2チャフリップ45aとは、幅方向での両端部にコ字状のロッド材47を固設しており、左右のロッド材47の上端と下端とを横外方向に屈曲させ、この上端を上部支軸47aとしてシーブケース41の側壁の内側に支承している。
【0051】
第1チャフリップ43aと、第2チャフリップ45aとは、左右の上部支軸47aの軸芯を中心に揺動することになり、この左右の上部支軸47aの軸芯が揺動軸芯となる。
【0052】
また、左右のロッド材47は、下端の下部支軸47bが、作動プレート48に貫通する状態で係合している。左右の作動プレート48は、シーブケース41に対して前後方向に移動自在に支持され、左右の作動プレート48が、第1チャフシーブ43と前後方向に作動することで、複数の第1チャフリップ43aと、第2チャフシーブ45複数の第2チャフリップ45aの揺動姿勢を同時に設定する。
【0053】
具体的な構成は示していないが、脱穀装置Tは、第1チャフシーブ43の作動プレート48と、第2チャフシーブ45の作動プレート48とを電動モータの駆動力によって同時に同じ方向に作動させるように
図10に示すシーブ角制御ユニット72を備えている。ここで、揺動姿勢は、各々のチャフリップが起立姿勢(揺動端が上方に向かう姿勢)にある角度が最大であり、揺動端が後方に向かう倒伏姿勢の角度を最小として定義している。
【0054】
特に、揺動選別装置31では、
図10、
図12、
図13に示すように、複数の第2チャフリップ45aのうち、脱穀処理物の移送方向での下流側に配置された1つのものを、他の第2チャフリップ45aの上方への突出量より長くした規制リップLxとして備えている。他の第2チャフリップ45aを基準にした突出量を突出長Laとして示している。
【0055】
第2チャフシーブ45は、
図12に示す起立姿勢から
図13に示す倒伏姿勢の間で揺動自在に構成されている。そして、規制リップLxは、起立姿勢において脱穀処理物の漏下量が最大となる。また、規制リップLxは、倒伏姿勢において脱穀処理物の漏下量が最小となり、この規制リップLxの上端部がシーブケース41の後端縁41aより後方に張出量Lbだけ張り出す状態となる。
【0056】
この脱穀装置Tは、
図3、
図6に示すように第1チャフシーブ43の第1チャフリップ43aの上端に積層した脱穀処理物の厚さから処理量を検出する処理量センサS3を備えている。この処理量センサS3は、脱穀装置Tのフレーム等に対して横向き姿勢の支軸を基準に下端が後方に変位できるように揺動自在に支持さいたセンサプレート15と、センサプレート15の揺動姿勢を検出するポテンショメータ16とで構成されている。
【0057】
この処理量センサS3は、脱穀部20から選別部30に供給される脱穀処理物の量が増大した場合には、この増大に伴い、センサプレート15の揺動量が増大することになる。これにより、センサプレート15の揺動量から選別部30における処理量の検出を可能にしている。
【0058】
このように選別部30が構成されるため、選別部30が脱穀処理物を選別する際には、唐箕33からの選別風がシーブケース41の上方と、下方とを前から後に流れると同時に、この選別風の一部がグレンシーブ46と、第1チャフシーブ43と第2チャフシーブ45とにおいて下から上に流れる。
【0059】
また、受網23の前部から漏下する脱穀処理物のうち、受網23の前部位置から漏下するものがグレンパン42に供給され、受網23の中間部から漏下するものが第1チャフシーブ43に供給され、受網23の後部から漏下するものが第2チャフシーブ45に供給される。更に、脱穀処理物のうち、グレンパン42に供給されたものは、シーブケース41の揺動に伴い第1チャフシーブ43に供給される。
【0060】
第1チャフシーブ43は、シーブケース41と一体的に揺動することにより、脱穀処理物を下方に漏下させる。これとは逆に、第1チャフシーブ43は、漏下が不能となる脱穀処理物を漏下させず、揺動により第1チャフシーブ43の上部に沿って後方に送ることになる。また、第1チャフシーブ43を漏下した脱穀処理物は、グレンシーブ46で穀粒だけが篩い選別され、グレンシーブ46を漏下することで一番物として一番物回収部34で回収される。
【0061】
また、前述したように第1チャフシーブ43の上部を後方に送られた脱穀処理物は、第2チャフシーブ45に供給される。尚、このように供給される際に、脱穀処理物のうち切れワラ等の軽量のものは、選別風により後方に吹き飛ばされ、
図3、
図6に示す排出経路EX1から脱穀装置Tの外部に排出される。
【0062】
また、第2チャフシーブ45は、シーブケース41と一体的に揺動することにより、脱穀処理物を下方に漏下させる。これとは逆に、第2チャフシーブ45は、漏下が不能となる脱穀処理物を漏下させず、揺動により第2チャフシーブ45の上部に沿って後方に送ることになる。また、第2チャフシーブ45を漏下した脱穀処理物は、二番物として二番物回収部35に回収される。前述したように第2チャフシーブ45の上部を後方に送られた脱穀処理物は、選別風により後方に吹き飛ばされ、
図3、
図6に示す排出経路EX1から脱穀装置Tの外部に排出される。
【0063】
これにより、選別部30は、一番物回収部34で回収された穀粒を、揚送機構36の作動によって穀粒タンク12に供給して貯留する。また、選別部30は、二番物回収部35で回収された二番物を、還元装置37の作動によって揺動選別装置31の前部に戻すことになる。これにより、還元された二番物に含まれる穀粒は、揺動選別装置31において分離され、一番物回収部34で回収される。
【0064】
排出経路EX1は、シーブケース41の後端と、
図3、
図4に示す排ワラ処理装置50の流下案内板26(流下案内部の一例)との間に、脱穀処理物を後方の斜め下方に排出する空間として形成されている。
【0065】
〔脱穀装置:排ワラ処理装置〕
図3、
図4に示すように、排塵口25から排出される排ワラを後方(扱室21での収穫物の移動方向と同方向)の斜め下方に送り出す流下案内板26が、脱穀装置Tの後部位置に備えられている。この流下案内板26の上面において排ワラを送り出す経路が排塵経路EX2となる。
【0066】
排ワラ処理装置50は、流下案内板26上方に配置された横向き姿勢のカッター軸51と、カッター軸51に備えた複数のカッター刃52と、機体側面視で、カッター刃52と重複する位置となるように、流下案内板26の上面に突出する状態で固定された複数の固定刃53とを備えている。
【0067】
また、排ワラ処理装置50は、機体側面視において複数のカッター刃52を、十字方向に延びるように姿勢を設定し、複数のカッター刃52を、カッター軸51の軸芯に沿う方向において設定間隔で配置している。このような構成から、排ワラ処理装置50は、カッター軸51の駆動回転により、排塵口25から排塵経路EX2に排出された排ワラを、複数のカッター刃52と固定刃53とにより細断して排出する細断ユニットとして機能する。
【0068】
また、脱穀部20は、
図3、
図4、
図6に示すように、扱室21のうち、受網23の後端位置と、扱室21の左右の側壁21aとの間に排ワラや塵埃等の一部が、選別部30に流入する不都合を抑制する規制板55を備えている。
【0069】
〔脱穀装置:センサ〕
このコンバインAは、
図3、
図4、
図6に示すように、揺動選別装置31から排出経路EX1に穀粒が排出される不都合を検出するため、流下案内板26のうち排ワラ処理装置50と反対側の領域に揺動選別装置31から飛散する穀粒を検出する穀粒検出センサS1を備えている。
【0070】
つまり、流下案内板26の下側に、縦向き姿勢でカバー27が備えられている。このカバー27は、横幅方向で外端近傍となる2箇所に開口27a(
図4を参照)を形成しており、この2箇所の開口27aから検出面を露出させるように穀粒検出センサS1を備えることで2つの穀粒検出センサS1を揺動選別装置31の後端に対する近接配置を実現している。
【0071】
特に、受網23が回転軸芯Xを中心とする円弧状に形成されているため、受網23を漏下する脱穀処理物の分布は、平面視において受網23の中央領域(回転軸芯Xと重複する領域)から左右方向の外側に離れる領域ほど増大する傾向がある。従って、揺動選別装置31から飛散する穀粒は、左右方向での中央と比較して、左右方向の外側の領域からのものが多くなり、カバー27の左右方向での外側に偏位した位置に穀粒検出センサS1を配置することにより、揺動選別装置31の後端から飛散する穀粒の効率的な検出を実現している。
【0072】
穀粒検出センサS1は、排出経路EX1に飛散した穀粒が検出面に衝突する際の圧力を電気信号として検出する感圧センサとして機能するものが用いられている。また、この構成では、穀粒検出センサS1の本体や、配線をカバー27で保護することになる。
【0073】
更に、このコンバインAは、
図4~
図6に示すように、受網23の下側で選別部30の上側となる領域のうち、扱室21での脱穀処理物(作物)の移送方向の下流側の部位で、受網23の周方向での両側部と、左右の側壁内側との間となる空間に、受網23から漏下する穀粒を検出する漏下量センサS2を備えている。尚、2つの漏下量センサS2は、
図4、
図5に示す方向視において受網23の両側部より低い位置に配置されるものであり、受網23の最も低い位置より高い位置に配置されることになる。
【0074】
漏下量センサS2は、受網23を漏下した穀粒が衝突する際の圧力を電気信号として検出するように感圧センサとして機能するものが用いられている。
【0075】
左右の漏下量センサS2は、下側ほど中央に近づく傾斜姿勢で備えれている。つまり、左右の側壁21aの内側には、支持部が、下側ほど左右方向での中央に近づく傾斜姿勢となる支持フレーム28を備えている。従って、漏下量センサS2が、支持フレーム28の支持部に支持されることにより、漏下量センサS2は、回転軸芯Xに沿う方向視において受網23の両側部の夫々の姿勢に沿う姿勢(漏下量センサS2に近接する位置の受網23の接線と平行となる姿勢)で備えられる。尚、このように漏下量センサS2が備えられることにより、漏下量センサS2の検出面も受網23の両側部の姿勢に沿う傾斜姿勢となる。
【0076】
支持フレーム28は、扱室21の左右の側壁21aの内面に支持され、支持フレーム28に漏下量センサS2を支持することにより、漏下量センサS2の検出面に穀粒が入射する角度を90度に近付け、穀粒を高い感度で検出できるように構成されている。
【0077】
また、
図5、
図6に示すように、脱穀部20は、受網23の下側で選別部30の上側となる領域のうち、移送方向で漏下量センサS2より上流側に、回転軸芯Xに交差する縦向き姿勢の仕切壁29を備えている。
【0078】
仕切壁29は、左右の漏下量センサS2より上流側で扱室21の左右の側壁21aの内面に支持され、受網23のうち、漏下量センサS2より上流側を漏下した穀粒が漏下量センサS2の検出面に接触する不都合を防止することで、穀粒の誤検出を抑制している。
【0079】
図2、
図3、
図6に示すように、左右の仕切壁29のうち、走行機体1の右側に配置されるものが左側に配置されるものより前側に配置されている。これと同様に、左右の漏下量センサS2のうち、走行機体1の右側に配置されるものが左側に配置されるものより前側に配置されている。特に、
図3に示すように、右側の仕切壁29は、ストローラック44と第2チャフシーブ45とが上下に重複する領域の上側に配置され、左側の仕切壁29は、第2チャフシーブ45の前後方向での中央領域の上側に配置されている。
【0080】
〔脱穀制御装置〕
図14に示すように、このコンバインAは、揺動選別装置31から排出経路EX1に対して穀粒が無駄に排出される穀粒ロス、及び、排塵口25から排塵経路EX2に対して穀粒が無駄に排出される穀粒ロスの低減を実現する脱穀制御装置60を備えている。
【0081】
脱穀制御装置60は、マイクロプロセッサや、DSP(Digital Signal Processor)等のようにプログラムによる処理を可能にする処理機能を有している。脱穀制御装置60は、前述した一対の穀粒検出センサS1の検出信号と、前述した一対の漏下量センサS2と、処理量センサS3とからの検出信号を取得する。また、脱穀制御装置60は、送塵弁制御ユニット71と、シーブ角制御ユニット72と、表示ユニット73とに制御信号を出力する。尚、表示ユニット73は、運転部9のキャビン10の内部に配置され、作業者に対して必要な情報を表示する。
【0082】
脱穀制御装置60は、穀粒ロス判定部61と、穀粒ロス推定部62と、ロス低減制御部63とを備えている。これらはソフトウエアとして構成されるものである。尚、穀粒ロス判定部61と、穀粒ロス推定部62と、ロス低減制御部63とは、一部がロジック回路やEEPROM等のハードウエアで構成されても良い。
【0083】
穀粒ロス判定部61は、穀粒検出センサS1の検出信号に基づき排出経路EX1から排出される穀粒量(穀粒ロス)を判定する。穀粒ロス推定部62は、漏下量センサS2の検出信号に基づき排塵経路EX2から排出される穀粒量を穀粒ロスとして推定すると共に、処理量センサS3の検出信号に基づいて排出経路EX1から排出される穀粒量を穀粒ロスとして推定する。
【0084】
特に、穀粒ロス推定部62は、予め行ったシミュレーションにより左右の漏下量センサS2の検出信号の値と、穀粒ロスとを取得する相関テーブルを作成しておき、漏下量センサS2の検出信号で相関テーブルを参照することにより、排塵経路EX2から排出される穀粒量(穀粒ロス)の推定を実現している。
【0085】
ロス低減制御部63は、穀粒検出センサS1の検出信号と、漏下量センサS2と、処理量センサS3とからの検出信号に基づいて送塵弁制御ユニット71とシーブ角制御ユニット72との少なくとも一方を制御することで穀粒ロスの低減を実現する。
【0086】
〔脱穀制御装置:排出経路EX1での穀粒ロスの低減〕
例えば、揺動選別装置31に供給される収穫物量が増大した場合には、穀粒が、シーブケース41の後端から排出経路EX1に排出されることがある。このように排出経路EX1に穀粒が排出される場合には選別風の風圧によって飛散するため、穀粒検出センサS1は、穀粒の衝突を圧力に基づいて検出することが可能となる。
【0087】
穀粒ロス判定部61は、穀粒検出センサS1で検出される穀粒量が、予め設定された閾値を超えた場合に判定した穀粒量を穀粒ロスとする。この判定では、穀粒検出センサS1で検出される穀粒量の全てを穀粒ロスとみなすことも可能であるが、穀粒検出センサS1で検出される穀粒には多少の誤差を含むため、閾値を設定し、この閾値を超えた場合に判定した穀粒量を穀粒ロスとしている。
【0088】
そして、穀粒ロス判定部61が、穀粒ロスを判定した場合には、ロス低減制御部63が、シーブ角制御ユニット72を介して第1チャフシーブ43と第2チャフシーブ45とのチャフリップの角度を穀粒ロスの値に比例して増大させる制御を行う。この制御により、第1チャフシーブ43と第2チャフシーブ45とにおける脱穀処理物の下方への漏下量を増大させ、排出経路EX1から無駄に排出される穀粒のロスの抑制を実現する。
【0089】
尚、選別部30は、選別風の風圧によりシーブケース41の後端から排出経路EX1に沿って脱穀処理物が下側に排出される。そして、脱穀処理物に穀粒が含まれている場合には、脱穀処理物に含まれる切れワラや塵埃のように比重が小さいものが、選別風により排出経路EX1に沿って下側に送り出され、比重が大きい穀粒が飛散により穀粒検出センサS1の検出面に到達する。これにより、穀粒量の検出精度の向上が実現される。
【0090】
また、処理量センサS3で検出される脱穀処理物の量が、予め設定された閾値を超えた場合にも、穀粒ロス推定部62が、穀粒ロスを推定する。つまり、処理量センサS3は、揺動選別装置31の第1チャフシーブ43に堆積する脱穀処理物の量を検出するものであるため、穀粒ロス推定部62は、脱穀処理物の量に比例した量の穀粒がシーブケース41の後端から排出される現象を推定する。
【0091】
このように、処理量センサS3で検出した脱穀処理物の量に基づいて、穀粒ロス推定部62が穀粒ロスを判定した場合にも、前述と同様に、ロス低減制御部63が、シーブ角制御ユニット72を介して第1チャフシーブ43と第2チャフシーブ45とのチャフリップの角度を増大させる制御を行うことにより、第1チャフシーブ43と第2チャフシーブ45とにおける脱穀処理物の下方への漏下量を増大させ、排出経路EX1から無駄に排出される穀粒のロスを抑制している。
【0092】
特に、揺動選別装置31では、第2チャフシーブ45の複数の第2チャフリップ45aのうち、揺動選別装置31での脱穀処理物の移送方向の後端位置のものを規制リップLxとして、他の第2チャフリップ45aより上方への突出量を大きくしている。このため、第2チャフシーブ45の角度を増大することで、第2チャフシーブ45の後端部位で脱穀処理物の流れを制限し、この部位において脱穀処理物に含まれる穀粒の漏下を促進し、穀粒ロスの低減を一層良好に実現している。
【0093】
〔脱穀制御装置:排塵経路EX2での穀粒ロスの低減〕
例えば、扱室21に供給される収穫物の量が増大した場合には、排塵経路EX2から排出される排ワラに混ざり込む状態で排出される穀粒量が増大する現象に繋がるものであった。
【0094】
また、排塵経路EX2から排出される穀粒量は、排塵口25の近傍の受網23を漏下する穀粒量から推定可能である。このような理由から、受網23のうち、収穫物の移送方向の下流側の部位を漏下する穀粒量を漏下量センサS2で検出し、このように検出される穀粒量に基づいて穀粒ロス推定部62が排塵経路EX2から排出される穀粒量を穀粒ロスとして推定する。このように推定した穀粒ロスが、予め設定された閾値を超えた場合には、ロス低減制御部63が送塵弁制御ユニット71を介して送塵弁24を制御することで、排塵経路EX2から排出される穀粒ロスの低減を図っている。
【0095】
つまり、送塵弁24の姿勢を制御(収穫物の移送速度を低減するように角度を設定する制御)することで、扱室21における収穫物の扱き処理に費やす時間を長くして受網23から漏下する脱穀処理物の量を増大させ、結果として、排塵経路EX2から排出される穀粒ロスの抑制を実現している。
【0096】
この制御では、送塵弁24の姿勢の制御により、収穫物が扱室21に供給されるタイミングから、排塵口25から排出されるまでの時間を長くする。このため、扱室21に対して過剰な量の収穫物が供給されないように、脱穀制御装置60は、表示ユニット73に対して、走行速度の低減を促す情報をメッセージ情報や、アイコン等を表示する。これにより、作業者が、人為操作によってコンバインAの走行速度を減速することにより、扱室21に適正な量の収穫物を供給して収穫作業の継続を可能にする。
【0097】
特に、このコンバインAは、表示ユニット73に表示される情報として、穀粒ロスの低減が充分に行われていないことを示すメッセージ情報や、アイコン等を表示することにより、自動的な制御によって穀粒ロスを低減するだけでなく、作業者の人為的な操作により一層良好に穀粒ロスの低減を実現する。
【0098】
〔実施形態の作用効果〕
このように、流下案内板26の下側に縦向き姿勢で備えたカバー27に穀粒検出センサS1を備えるため、穀粒検出センサS1を支持するためのブラケット類を用いる必要がない。穀粒検出センサS1の検出面を縦向き姿勢に設定し、穀粒検出センサS1を揺動選別装置31の後端に近接して配置できるため、揺動選別装置31の後端から飛散する穀粒の良好な検出も可能となる。
【0099】
また、排塵口25から排出される排ワラや塵埃等を送る空間と、穀粒検出センサS1が配置される空間とが、流下案内体26で分離されるため、揺動選別装置31の後端から機外に向けて穀粒が飛散した場合には、穀粒が飛散する空間に排塵口25から排出された塵埃等が侵入することはなく、飛散する穀粒が塵埃等に接触して飛散速度が減じられる現象を抑制し、穀粒を検出する制度を高く維持できる。
【0100】
また、受網23は、回転軸芯Xに沿う方向で円弧状であるため、回転軸芯Xに沿う方向視での受網23の両側部(扱室21の側壁21aに近傍部)における脱穀処理物の漏下量が、受網23の中央部における脱穀処理物の漏下量より多い。従って、排出経路EX1に飛散する穀粒量は、流下案内板26の幅方向の両端部の近傍で増大する傾向にある。このような理由から、カバー27の横幅方向での外端近傍となる2箇所に穀粒検出センサS1を備えることで排出経路EX1に飛散する穀粒量を高精度で検出する。
【0101】
穀粒検出センサS1で検出された穀粒量に基づいて、穀粒ロス判定部61が穀粒ロスを判定した場合には、シーブ角制御ユニット72が、第1チャフシーブ43と第2チャフシーブ45とのチャフリップの角度を増大させる制御を行い、第1チャフシーブ43と第2チャフシーブ45とにおける脱穀処理物の漏下量を増大させ、排出経路EX1から無駄に排出される穀粒のロスを抑制できる。
【0102】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0103】
(a)唐箕33による風量を調節できるように、例えば、エンジンから唐箕33に伝えられる回転数を変更するベルト無段型の変速機構、あるいは、ベルトテンション式の複数のクラッチを備え、これらの変速を実現するアクチュエータを備える。
【0104】
この別実施形態(a)では、穀粒ロス判定部61で、穀粒ロスを判定した場合に、前述したシーブ角制御ユニット72によってチャフリップの角度を増大させる制御を行うと同時に、選別風の風量を増大させる制御を行うことにより、選別性能を高め、穀粒ロスの低減を可能にする。
【0105】
(b)揺動選別装置31による、単位時間あたりの揺動回数を調節できるように、前述した別実施形態(a)と同様に、エンジンから揺動駆動機構32に駆動力を伝える伝動系にベルト無段型の変速機構、あるいは、ベルトテンション式の複数のクラッチを備え、これらの変速を実現するアクチュエータを備える。
【0106】
この別実施形態(b)では、穀粒ロスが判定された場合に、前述したシーブ角制御ユニット72によってチャフリップの角度を増大させる制御を行うと同時に、揺動選別装置31の揺動回数を増大させる制御を行うことにより、選別性能を高め、穀粒ロスの低減を可能にする。
【0107】
(c)第1チャフシーブ43と第2チャフシーブ45との2種のチャフシーブを備える構成に換えて、例えば、単一のチャフシーブを備えて選別部30を構成する。この構成ではチャフシーブを単純化できる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、収穫物を脱穀する収穫機に利用することができる。
【符号の説明】
【0109】
20 脱穀部
21 扱室
22 扱胴
23 受網
25 排塵口
26 流下案内板(流下案内部)
27 カバー
30 選別部
31 揺動選別装置
50 排ワラ処理装置
61 穀粒ロス判定部
T 脱穀装置
X 回転軸芯
S1 穀粒検出センサ