(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20231108BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20231108BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20231108BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231108BHJP
F28D 20/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F01N3/24 L
F01N3/28 301E
F01N3/10 Z
B01D53/94 280
F28D20/00 G
(21)【出願番号】P 2020148084
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岡田 祐一
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-218986(JP,A)
【文献】特開2015-200193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
F01N 3/28
F01N 3/10
B01D 53/94
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排ガスが流れる排気通路に設けられた第1の触媒装置であり、水和反応によって発熱し、脱水反応によって吸熱する蓄熱材を含む、該第1の触媒装置と、
前記第1の触媒の下流側において前記排気通路に設けられ、前記排ガスに含まれる窒素酸化物を還元する第2の触媒装置と、
前記第2の触媒に還元剤を供給する還元剤供給部と、
前記第1の触媒装置の電気抵抗値を測定する抵抗値測定部と、
前記第1の触媒装置を加熱する加熱部と、
前記加熱部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1の触媒装置の電気抵抗値が所定の閾値よりも低いときに前記加熱部によって前記第1の触媒装置を加熱する、排気浄化装置。
【請求項2】
前記蓄熱材は、酸化マグネシウムを含む、請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記加熱部は、前記第1の触媒装置を加熱する電気ヒータを含む、請求項1又は2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記第1の触媒装置は、酸化触媒を更に含む、請求項1~3の何れか一項に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記加熱部は、前記第1の触媒装置の上流側で前記排気通路に燃料を供給する燃料供給装置を含む、請求項4に記載の排気浄化装置。
【請求項6】
前記抵抗値測定部は、前記第1の触媒装置に取り付けられた一対の電極を有し、前記一対の電極間の電気抵抗値を取得する、請求項1~5の何れか一項に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、エンジンから排出された排ガスを処理する排ガス浄化触媒が記載されている。この排ガス浄化触媒は、ハニカム構造又はモノリス構造を有する担体と、排ガス中の水蒸気と反応して発熱する化学蓄熱材を含む被覆層と、被覆層上に担持された触媒層とを有している。被覆層に含まれる化学蓄熱材は、排ガス温度が低いときに排ガスに含まれる水蒸気と反応して発熱することで触媒を早期に活性化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の排ガス浄化触媒では、排ガスの温度が高いときに化学蓄熱材を脱水することで当該化学蓄熱材を発熱可能な状態に再生している。しかしながら、運転状況によっては、排ガス温度が十分に高くなる前に車両が停止する等して化学蓄熱材を十分に脱水することができないことがある。この場合には、車両の冷間始動時に蓄熱材を発熱させることができなくなり、触媒を早期に活性化することが困難となる。
【0005】
そこで、蓄熱材を適切なタイミングで再生することが可能な排気浄化装置を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、エンジンからの排ガスが流れる排気通路に設けられた第1の触媒装置であり、水和反応によって発熱し、脱水反応によって吸熱する蓄熱材を含む、該第1の触媒装置と、第1の触媒の下流側において排気通路に設けられ、排ガスに含まれる窒素酸化物を還元する第2の触媒装置と、第2の触媒に還元剤を供給する還元剤供給部と、第1の触媒装置の内部の電気抵抗値を測定する抵抗値測定部と、第1の触媒装置を加熱する加熱部と、加熱部の動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、第1の触媒装置の内部の電気抵抗値が所定の閾値よりも低いときに加熱部によって第1の触媒装置を加熱する。
【0007】
一般的に、蓄熱材の水和反応が進行するにつれて蓄熱材の電気抵抗値は減少する。上記態様の排気浄化装置では、蓄熱材を含む第1の触媒装置の電気抵抗値が所定の閾値よりも低いときに加熱部によって第1の触媒装置を加熱しているので、水和反応が進行した蓄熱材を脱水することができる。したがって、適切なタイミングで蓄熱材を発熱可能な状態に再生することが可能となる。
【0008】
一実施形態では、蓄熱材は、酸化マグネシウムを含んでいてもよい。酸化マグネシウムは、水和反応によって発熱し、水和物として水酸化マグネシウムを生成する。一方、生成された水酸化マグネシウムは、高温時に脱水反応によって吸熱して酸化マグネシウムに戻る。このような性質を有する酸化マグネシウムを蓄熱材として用いることで、例えば冷間始動時に第2の触媒装置を早期に活性化することができる。
【0009】
一実施形態では、加熱部は、第1の触媒装置を加熱する電気ヒータを含んでいていてもよい。この実施形態では、電気ヒータによって第1の触媒装置を容易に加熱することができる。
【0010】
一実施形態では、第1の触媒装置は、酸化触媒を更に含んでいてもよい。この酸化触媒によって排ガスに含まれる有害物質を酸化して浄化することができる。
【0011】
一実施形態では、加熱部は、排気通路に燃料を供給する燃料供給装置を含んでいてもよい。燃料供給装置から燃料を供給することよって、燃料の酸化作用で生じる熱によって第1の触媒装置を加熱することができる。
【0012】
一実施形態では、抵抗値測定部は、第1の触媒装置に取り付けられた一対の電極を有し、一対の電極間の電気的抵抗値を取得してもよい。この実施形態では、一対の電極間の電気抵抗値に基づいて、蓄熱材の水和反応の状態を推定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様及び種々の実施形態によれば、蓄熱材を適切なタイミングで再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る排気浄化装置を含むエンジンシステムを概略的に示す図である。
【
図3】酸化触媒及びフィルタ装置の構造を概略的に示す断面図である。
【
図4】蓄熱材が発熱したときの排気通路内の排ガスの温度の経時的変化を示す図である。
【
図5】蓄熱材が吸熱したときの排気通路内の排ガスの温度の経時的変化を示す図である。
【
図6】蓄熱材の水和反応の度合いと電気抵抗値との関係を示す図である。
【
図7】冷間始動後の選択還元触媒の温度の経時的変化を示す図である。
【
図8】別の実施形態に係る排気浄化装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととし、同一又は相当の部分に対する重複した説明は省略する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る排気浄化装置を含むエンジンシステムを概略的に示す図である。
図1に示す排気浄化装置30は、トラック等の車両に搭載され、車両のエンジン10によって発生した排ガスを浄化する。なお、本明細書では、エンジン10から発生する一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO
2)等をまとめて窒素酸化物(NOx)と称する。
【0017】
図1に示すように、
図1に示すエンジンシステム1は、エンジン10、燃料供給装置20及び排気浄化装置30を備えている。エンジン10は、例えばディーゼルエンジンであり、複数のシリンダ10aを備えている。複数のシリンダ10aには、複数のシリンダ10a内に空気を供給する吸気マニホールド12、及び、複数のシリンダ10aから排ガスを排出する排気マニホールド13が接続されている。
【0018】
吸気マニホールド12には、吸気管14が接続されている。吸気管14には、吸気の上流側からコンプレッサ15及びインタークーラー16が順に設けられている。コンプレッサ15には、吸気が流入する導入管17が接続されている。導入管17にはエアクリーナ18が設けられている。
【0019】
排気マニホールド13には、タービン19を介して排気管25が接続されている。排気管25は、エンジン10からの排ガスが流れる排気通路26を提供する(
図2参照)。タービン19は、連結軸を介してコンプレッサ15に連結されている。タービン19は、エンジン10の排気マニホールド13から排出された排ガスの流れによって回転する。コンプレッサ15は、タービン19の回転に伴って回転し、導入管17から空気(吸気)を取り込み、圧縮された空気を吸気管14へ送り出す。すなわち、コンプレッサ15及びタービン19は、ターボチャージャーを構成する。吸気管14内に導入された空気は、吸気マニホールド12を通って複数のシリンダ10aへ導入される。複数のシリンダ10a内に導入された空気は各シリンダ10a内で圧縮され、圧縮された空気中に後述する燃料が噴射されることで当該燃料がシリンダ10a内で燃焼される。
【0020】
燃料供給装置20は、燃料タンク21、燃料ポンプ22、燃料供給路23、複数のインジェクタ24を有している。燃料ポンプ22は、燃料タンク21に貯えられた軽油等の燃料を燃料供給路23を介して複数のインジェクタ24に圧送する。複数のインジェクタ24は、エンジン10の複数のシリンダ10aに近接して設置され、燃料タンク21から供給された燃料を複数のシリンダ10a内にそれぞれ噴射する。なお、複数のインジェクタ24からエンジン10へ噴射される燃料の量は、後述する制御装置40によって制御される。
【0021】
インジェクタ24によって噴射された燃料は、各シリンダ10a内で燃焼され、各シリンダ10a内に配置されたピストンをシリンダ10a内で往復移動させる。ピストンが往復運動することにより、エンジン10に連結されたクランクシャフトが回転し、クラッチを介して車両のプロペラシャフトが回転する。燃料の燃焼によって排気マニホールド13から排出された排ガスは、排気管25に排出される。
【0022】
一実施形態の排気浄化装置30は、排ガスに含まれる有害物質を浄化する装置であり、後処理装置30Aを備えている。後処理装置30Aは、排気管25に接続されている。
図2は、後処理装置30Aを概略的に示す断面図である。
図2に示すように、後処理装置30Aは、酸化触媒(第1の触媒装置)31、フィルタ装置(第1の触媒装置)32、選択還元触媒(第2の触媒装置)33及びアンモニア低減触媒34を備えている。酸化触媒31、フィルタ装置32、選択還元触媒33及びアンモニア低減触媒34は、排気管25と共に排気通路26を構成するケース30c内に収容されており、排ガスの流れ方向の上流側からこの順に配置されている。
【0023】
図2に示すように、酸化触媒31は、排気通路26の上流部に設けられている。酸化触媒31は、エンジン10からの排ガスに含まれる炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化して浄化する。
【0024】
フィルタ装置32は、排気通路26内において酸化触媒31の下流側に配置されている。フィルタ装置32は、例えばDPF(Diesel Particulate Filter)であり、排ガスに含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集する。
【0025】
選択還元触媒33は、排気通路26内においてフィルタ装置32の下流側に設けられている。選択還元触媒33は、例えばアンモニア(NH3)を還元剤として排ガスに含まれるNOxを窒素(N2)及び水(H2O)に還元する。選択還元触媒33は、例えば触媒成分として銅ゼオライト又は鉄ゼオライトを含んでいる。選択還元触媒33は、例えば180℃以上のときに活性化され、排ガスに含まれるNOxを還元する。
【0026】
アンモニア低減触媒34は、排気通路26内において選択還元触媒33の下流側に設けられている。アンモニア低減触媒34は、例えばゼオライト触媒を含み、選択還元触媒33をスリップ(通過)した過剰なアンモニアを酸化して浄化する。
【0027】
排ガスの流れ方向において、フィルタ装置32と選択還元触媒33との間には、還元剤供給装置35が設けられている。還元剤供給装置35は、選択還元触媒33に還元剤を供給する。例えば、還元剤供給装置35は、選択還元触媒33の上流側において排気通路26内に尿素水を噴射する。噴射された尿素水は、排ガスの熱でアンモニア(NH3)に分解され、排ガスと共に選択還元触媒33に供給される。選択還元触媒33へ供給されたアンモニアは、選択還元触媒33上で排ガスに含まれるNOxを還元する。なお、還元剤供給装置35は、還元剤の噴射量を制御する弁体を有しており、当該弁体の開度は、後述する制御装置40によって制御される。
【0028】
また、後処理装置30Aには、その内部を流れる排ガスの温度を計測する温度センサ36,37が設けられている。温度センサ36は、排気通路26における酸化触媒31の上流側に設けられ、酸化触媒31へ導入される排ガスの温度を計測する。温度センサ37は、排ガスの流れ方向においてフィルタ装置32と選択還元触媒33との間に設けられ、選択還元触媒33へ導入される排ガスの温度を計測する。温度センサ36,37は、計測された排ガスの温度を示す情報を後述する制御装置40に出力する。
【0029】
酸化触媒31及びフィルタ装置32についてより詳細に説明する。
図3は、酸化触媒31及びフィルタ装置32の構造を概略的に示す断面図である。
図3に示すように、酸化触媒31は、担体51、触媒層52及び蓄熱材53を有している。担体51は、例えばコージェライト又は炭化ケイ素(SiC)によって構成されている。触媒層52は、担体51の表面に形成され、例えば白金等の触媒成分を含んでいる。この貴金属触媒は、排ガスに含まれる物質を酸化させる酸化触媒である。蓄熱材53は、触媒層52上に担持されている。蓄熱材53は、排ガスに含まれる水分と接触することで水和反応を生じて発熱(水和熱)し、高温の排ガスに晒されることで脱水反応を生じて吸熱する性質を有している。水和反応及び脱水反応を生じさせる蓄熱材53としては、例えばアルカリ土類金属、ゼオライト、ランタン硫酸塩、酸化マグネシウム等が例示される。
【0030】
また、フィルタ装置32は、酸化触媒31と同様に、担体51、触媒層52及び蓄熱材53を含んでいる。フィルタ装置32の担体51は、排ガスに含まれる粒子状物質を捕捉するために、例えば多孔質のセラミックス体によって構成されている。
【0031】
図2に示すように、後処理装置30Aは、ヒータ31h,32h及び抵抗値測定部38を更に備えている。ヒータ31h,32hは、例えば電気ヒータであり、図示しない電源から電力が印加されることで発熱し、酸化触媒31及びフィルタ装置32に担持された蓄熱材53に脱水反応が生じさせる。ヒータ31h,32hは、酸化触媒31及びフィルタ装置32をそれぞれ加熱する加熱部として機能する。
【0032】
抵抗値測定部38は、一対の電極38a、一対の電極38b及び抵抗値測定装置38cを含んでいる。一対の電極38aは酸化触媒31の内部に配置されており、一対の電極38bはフィルタ装置32の内部に配置されている。抵抗値測定装置38cは、一対の電極38a及び一対の電極38bに電気的に接続されており、一対の電極38a間の電気抵抗値、及び、一対の電極38b間の電気抵抗値を測定する。測定された一対の電極38a間の電気抵抗値管の電気抵抗値、及び、一対の電極38bの間の電気抵抗値は、酸化触媒31及びフィルタ装置32の電気抵抗値である。抵抗値測定装置38cは、測定された電気抵抗値を後述する制御装置40に出力する。
【0033】
上述のように、酸化触媒31及びフィルタ装置32に担持された蓄熱材53は、エンジン10からの排ガスに含まれる水と接触して水和反応を生じる。この水和反応により蓄熱材53は発熱し、酸化触媒31及びフィルタ装置32を通過する排ガスを加熱する。
図4(a)及び
図4(b)は、水和反応によって蓄熱材53が発熱したときの温度センサ36,37でそれぞれ測定された排ガスの温度の経時的変化の一例を示している。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、排ガスに含まれる水分との水和反応によって蓄熱材53が発熱すると、フィルタ装置32と選択還元触媒33との間で測定された排ガスの単位時間あたりの上昇温度Δt
Bは、酸化触媒31の上流側で測定された排ガスの単位時間あたりの上昇温度Δt
Aよりも大きくなる。すなわち、蓄熱材53が加熱することにより、選択還元触媒33に導入される排ガスの温度が上昇し、選択還元触媒33が加熱される。
【0034】
一方、蓄熱材53は、高温の排ガスに晒されることにより脱水反応を生じる。蓄熱材53に脱水反応が生じると、蓄熱材53は、酸化触媒31及びフィルタ装置32を流れる排ガスの熱を吸熱する。
図5(a)及び
図5(b)は、脱水反応によって蓄熱材53が吸熱したときに温度センサ36,37でそれぞれ測定された排ガスの温度の経時的変化の一例を示している。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、蓄熱材53に脱水反応が生じると、フィルタ装置32と選択還元触媒33との間で測定された排ガスの単位時間あたりの上昇温度Δt
Bは、酸化触媒31の上流で測定された排ガスの単位時間あたりの上昇温度Δt
Aよりも小さくなる。
【0035】
図6は、蓄熱材53の水和反応の進行度合いと電気抵抗値との関係を示している。
図6に示すように、蓄熱材53は、水和反応を生じると水の分子が付加されることで電気抵抗値が小さくなる。例えば、蓄熱材53として酸化マグネシウムを用いた場合には、水和反応によって水酸化マグネシウムが生成される。水酸化マグネシウムは、酸化マグネシウムよりも低い電気抵抗値を有している。したがって、水和反応によって酸化触媒31又はフィルタ装置32の内部に存在する水酸化マグネシウムの量が増加すると、酸化触媒31又はフィルタ装置32の電気抵抗値が減少する。反対に、水酸化マグネシウムが脱水され、酸化触媒31又はフィルタ装置32の内部に存在する酸化マグネシウムの量が増加すると、酸化触媒31又はフィルタ装置32の電気抵抗値は増加する。
【0036】
再び
図1を参照する。
図1に示すように、排気浄化装置30は制御装置40を更に備えている。制御装置40は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路等を有する電子制御ユニットであり、排気浄化装置30全体の動作を制御する。制御装置40は、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより後述する各種機能を実現する。
【0037】
制御装置40は、例えばヒータ31h,32h、還元剤供給装置(還元剤供給部)35、温度センサ36,37及び抵抗値測定部38と通信可能に接続されている。例えば、制御装置40は、温度センサ36,37で計測された排ガスの温度情報を取得し、取得した温度情報に基づいて還元剤供給装置35から供給される還元剤の量を制御する。例えば、制御装置40は、温度センサ37で計測された排ガスの温度が活性化温度(例えば180℃)に達すると、還元剤供給装置35を制御して尿素水を噴射させる。
【0038】
また、制御装置40は、抵抗値測定部38によって測定された酸化触媒31及びフィルタ装置32の電気抵抗値に基づいて、ヒータ31h,32hの動作を制御する。例えば、制御装置40は、抵抗値測定部38によって測定された酸化触媒31の電気抵抗値が所定の閾値よりも低い場合には、ヒータ31hに電圧を印加して酸化触媒31を加熱する。同様に、制御装置40は、抵抗値測定部38によって測定されたフィルタ装置32の電気抵抗値が所定の閾値よりも低い場合には、ヒータ32hに電圧を印加してフィルタ装置32を加熱する。
【0039】
ここで、酸化触媒31又はフィルタ装置32の電気抵抗値が所定の閾値よりも低い場合には、酸化触媒31又はフィルタ装置32に担持された蓄熱材53の水和反応が進んでおり、それ以上の発熱ができない状態であることが推測される。そこで、制御装置40は、ヒータ31h,32hによって酸化触媒31及びフィルタ装置32を加熱することで、これら酸化触媒31及びフィルタ装置32に担持された蓄熱材53を脱水する。その結果、蓄熱材53は、水和反応によって発熱可能な状態に再生される。
【0040】
一方、酸化触媒31及びフィルタ装置32の電気抵抗値が所定の閾値以上である場合には、酸化触媒31及びフィルタ装置32に担持された蓄熱材53の水和反応が進んでおらず、発熱可能な状態であると推測される。そこで、制御装置40は、抵抗値測定部38によって測定された酸化触媒31及びフィルタ装置32電気抵抗値が所定の閾値以上である場合には、ヒータ31h,32hの動作を停止する。
【0041】
次に、実施例及び比較例を用いて排気浄化装置30の作用効果についてより具体的に説明する。実施例では、
図2に示す排気浄化装置30を用いて、エンジン10を冷間始動させたときの選択還元触媒33の温度の経時的変化を測定した。一方、比較例では、蓄熱材53を含まない点を除き排気浄化装置30と同じ装置を用いて、エンジン10を冷間始動させたときの選択還元触媒33の温度の経時的変化を測定した。
図7は、実施例及び比較例で測定された選択還元触媒33の温度の経時的変化を示している。
図7に示すように、排気浄化装置30では、エンジン10の冷間始動時に酸化触媒31及びフィルタ装置32に担持された蓄熱材53が排ガスに含まれる水分と反応して発熱することで、比較例と比較して、選択還元触媒33が活性化されるまでの時間を短縮化できることが確認された。
【0042】
次に、別の実施形態に係る排気浄化装置について説明する。以下では、
図2に示す排気浄化装置30との相違点について主に説明し、重複する説明は省略する。
【0043】
図8は、別に示す実施形態に係る排気浄化装置50を概略的に示す図である。排気浄化装置50は、後処理装置30Bを備えている。後処理装置30Bは、ヒータ31h,32hに代えて、燃料供給装置39を備えている点で
図2に示す後処理装置30Aと相違している。
【0044】
燃料供給装置39は、排気通路26における酸化触媒31の上流側に設けられ、排気通路26内に燃料を噴射する。燃料供給装置39から排気通路26内に噴射された燃料は、排ガスに添加されて酸化触媒31及びフィルタ装置32に供給される。
【0045】
排気浄化装置50の制御装置40は、抵抗値測定部38によって測定された酸化触媒31及びフィルタ装置32の電気抵抗値が所定の閾値よりも低い場合には、燃料供給装置39を制御して排気通路26内に燃料を噴射する。酸化触媒31及びフィルタ装置32に供給された燃料は、触媒層52に含まれる触媒成分によって酸化され、酸化反応によって生じる熱によって蓄熱材53を加熱する。その結果、蓄熱材53が脱水され、水和反応によって発熱可能な状態に再生される。この実施形態では、燃料供給装置39が、酸化触媒31及びフィルタ装置32を加熱する加熱部として機能する。
【0046】
以上説明したように、上述の排気浄化装置30,50は、蓄熱材53を含む酸化触媒31及びフィルタ装置32を備えている。これら酸化触媒31及びフィルタ装置32に水分を含む排ガスが供給されることで、蓄熱材53が水和反応を生じて発熱する。これにより、酸化触媒31及びフィルタユニットを通過する排ガスが加熱されるので、例えばエンジン10の冷間始動時に選択還元触媒33が活性化するまでの時間を短縮化することができる。
【0047】
また、酸化触媒31及びフィルタユニット上に担持された蓄熱材53は、水和反応が進むにつれて電気抵抗値が低くなる。そこで、排気浄化装置30,50では、抵抗値測定部38によって測定された酸化触媒31及びフィルタ装置32の電気抵抗値が所定の閾値よりも低い場合には、制御装置40が、ヒータ31h,32h又は燃料供給装置39を動作させることで酸化触媒31及びフィルタ装置32を加熱する。これにより、酸化触媒31及びフィルタ装置32上に担持された蓄熱材53が加熱されて脱水される。その結果、蓄熱材53は、水和反応よって発熱可能な状態に再生される。このように、上述の排気浄化装置30,50では、蓄熱材53が適切なタイミングで再生されるので、例えばエンジン10の冷間始動時に選択還元触媒33を再び加熱することが可能となる。
【0048】
以上、種々の実施形態に係る排気浄化装置について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。
【0049】
例えば、
図8に示す排気浄化装置50では、排気管25に取り付けられた燃料供給装置39から燃料を噴射することで酸化触媒31及びフィルタ装置32を加熱しているが、例えば燃料供給装置20から燃料を供給してもよい。例えば、排気浄化装置50の制御装置40は、酸化触媒31及びフィルタ装置32の電気抵抗値が所定の閾値よりも低い場合に、エンジン出力を得るためにシリンダ10a内に燃料を噴射するメイン噴射と、メイン噴射の後に追加的に燃料を噴射するポスト噴射とが行われるように燃料供給装置20を制御する。ポスト噴射によってシリンダ10a内に供給された未燃の燃料は、排ガスに添加された状態で酸化触媒31及びフィルタ装置32に供給される。酸化触媒31及びフィルタ装置32に供給された燃料は、触媒層52に含まれる触媒成分によって酸化され、酸化反応によって生じる熱によって蓄熱材53を加熱する。その結果、蓄熱材53が脱水され、発熱可能な状態に再生される。
【0050】
また、上記実施形態では、酸化触媒31及びフィルタ装置32に蓄熱材53が含まれているが、酸化触媒31及びフィルタ装置32の一方のみに蓄熱材53が含まれていてもよい。さらに、上述の種々の実施形態は、矛盾が生じない範囲で組み合わせることが可能である。例えば、一実施形態に係る排気浄化装置は、ヒータ31h,32hと燃料供給装置39の双方を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…エンジン、20,39…燃料供給装置、26…排気通路、30,50…排気浄化装置、31…酸化触媒(第1の触媒装置)、31h,32h…ヒータ(加熱部)、32…フィルタ装置(第1の触媒装置)、33…選択還元触媒(第2の触媒装置)、38…抵抗値測定部、38a,38b…一対の電極、40…制御装置、53…蓄熱材。