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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/10 20060101AFI20231108BHJP
   B62D 21/18 20060101ALI20231108BHJP
   A01D 67/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B62D55/10 Z
B62D21/18 A
A01D67/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020183843
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073693
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】森本 龍滋
(72)【発明者】
【氏名】相田 宙
(72)【発明者】
【氏名】籔中 歩荷
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-046152(JP,A)
【文献】実開昭53-064429(JP,U)
【文献】実開昭59-110283(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/10
B62D 21/18
A01D 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機及び作業装置が搭載された機体フレームと、
左右方向で前記機体フレームの下方に入り込む状態で設けられたクローラベルトと、前後方向に沿って延ばされたトラックフレームとを有する左右の走行装置と、
左右の前記トラックフレームにわたって架設されるとともに、前記機体フレームに連結された繋ぎフレームと、が備えられ、
前記繋ぎフレームに、左右の前記トラックフレームよりも高い位置で左右方向に沿って延びる中間フレーム部分と、前記中間フレーム部分の左右両端部から横外側ほど低くなる傾斜姿勢で延ばされ、左右の前記トラックフレームに連結される左右の外端フレーム部分と、が備えられ、
前記中間フレーム部分が、前記中間フレーム部分の延長方向に沿って横外方へ向けて前記クローラベルトの上側経路部分の下方に入り込む位置にまで延出されており、
前記中間フレーム部分のうち、左右方向で前記クローラベルトと重複する位置の横フレーム部分を前方から覆う前カバー部と、前記横フレーム部分を後方から覆う後カバー部と、を有するカバーが備えられ、
前記前カバー部は、前記横フレーム部分の上面前部から、前下がりの傾斜状態で延出され、かつ、前記後カバー部は、前記横フレーム部分の上面後部から、後ろ下がりの傾斜状態で延出されている作業機。
【請求項2】
前記カバーに、前記前カバー部の左右方向外端部と前記後カバー部の左右方向外端部とにわたる外側カバー部が備えられている請求項1記載の作業機。
【請求項3】
前記カバーの下方が開放されている請求項1又は2記載の作業機。
【請求項4】
前記機体フレームに、前後方向に沿う状態で前記中間フレーム部分と交差する前後向きフレームが備えられ、
前記カバーと前記前後向きフレームとの上下の隙間を塞ぐ塞ぎ部材が設けられている請求項1~3のいずれか一項記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機及び各種作業装置を搭載した機体フレームが、左右のトラックフレームにわたる横向きの繋ぎフレームを介してクローラ走行装置に支持されている作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クローラ走行装置の左右のトラックフレームにわたる横向きの繋ぎフレームは、中間フレーム部分よりも横外方が低くなる左右両側の外端フレーム部分を備えてアーチ状に形成されている。そして、外端フレーム部分とは別に、中間フレーム部分の延長方向に沿って横外方へ向けて延出された横フレーム部分を備えることにより、トラックフレームと繋ぎフレームとの連結強度を高めるようにした構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-4761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、外端フレーム部分と横フレーム部分が上下方向の支脚部材で連結され、トラックフレームと繋ぎフレームとの連結強度が効果的に高められる点で有用なものである。この構造によれば、トラックフレームとともに横フレーム部分もクローラベルトの左右幅内に入り込む状態となり、機体フレームの下面と横フレーム部分の上面との間にクローラベルトの通路となる空間が形成されている。
この構造を備えた作業機が、粘土質などの泥濘地で前後進を繰り返しながら走行し、作業を行う場合に、クローラベルトの上面に大量の粘着泥土や藁屑などが付着し、大きな塊状の物体となってベルト上面を運ばれることがある。このような事態が生じると、塊状の物体が機体フレームの下面と接触し、ゴム製のクローラベルトは下方へ押されて大きく変形することがある。その結果、クローラベルトの一部が横フレーム部分の端面や下側に回り込んで接触したり、駆動輪の周辺の構造物の隙間に詰まったりして損傷するという不具合が生じる虞があり、この点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、クローラベルトの上面に大きな塊状の物体が付着して搬送された際に、クローラベルト自体が大きく変形して周辺構造物と接触し損傷することを避けられるようにして、クローラベルトの耐久性向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業機の特徴構成は、
原動機及び作業装置が搭載された機体フレームと、
左右方向で前記機体フレームの下方に入り込む状態で設けられたクローラベルトと、前後方向に沿って延ばされたトラックフレームとを有する左右の走行装置と、
左右の前記トラックフレームにわたって架設されるとともに、前記機体フレームに連結された繋ぎフレームと、が備えられ、
前記繋ぎフレームに、左右の前記トラックフレームよりも高い位置で左右方向に沿って延びる中間フレーム部分と、前記中間フレーム部分の左右両端部から横外側ほど低くなる傾斜姿勢で延ばされ、左右の前記トラックフレームに連結される左右の外端フレーム部分と、が備えられ、
前記中間フレーム部分が、前記中間フレーム部分の延長方向に沿って横外方へ向けて前記クローラベルトの上側経路部分の下方に入り込む位置にまで延出されており、
前記中間フレーム部分のうち、左右方向で前記クローラベルトと重複する位置の横フレーム部分を前方から覆う前カバー部と、前記横フレーム部分を後方から覆う後カバー部と、を有するカバーが備えられ、
前記前カバー部は、前記横フレーム部分の上面前部から、前下がりの傾斜状態で延出され、かつ、前記後カバー部は、前記横フレーム部分の上面後部から、後ろ下がりの傾斜状態で延出されている点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、次の作用を奏する。
すなわち、大量の粘着泥土や藁屑などによる大きな塊状の物体がクローラベルトの上面に乗って運ばれると、その塊状の物体が機体フレームの下面と接触してクローラベルトを大きく押し下げようとする現象が生じる。このとき、押し下げられようとするクローラベルトの下面側(内周面側)が、前進時であれば後カバー部の後下がりの傾斜面に沿って押し上げ方向に案内され、押し下げ作用に抗して、押し下げ前の通常の軌道での駆動回転状態に戻すことが可能となる。また、後進時であれば、前カバー部の前下がりの傾斜面に沿ってやはり押し上げ方向に案内され、押し下げ作用に抗して通常の軌道での駆動回転状態に戻すことが可能となる。
【0008】
したがって、クローラベルトの一部が塊状の物体によって大きく押し下げられて、横フレーム部分の下側に回り込んだり、屈曲して横フレーム部分の端部に強く圧接したり、あるいは、駆動輪の周辺の構造物の隙間に詰まったりするような事態の発生を未然に抑止し得て、クローラベルトの損傷を回避し易いという利点がある。
【0009】
本発明において、前記カバーに、前記前カバー部の左右方向外端部と前記後カバー部の左右方向外端部とにわたる外側カバー部が備えられていると好適である。
【0010】
本構成によると、クローラベルトが横フレーム部分の端部に当接する状態にまで変形させられることがあっても、横フレーム部分の端部に比べて遙かに面積の大きい外側カバー部が存在していることにより、クローラベルトが横フレーム部分の端部に強く圧接したり、引っかかったりすること無く、もとの状態に戻り易くなっている。
【0011】
【0012】
【0013】
本発明において、前記カバーの下方が開放されていると好適である。
【0014】
本構成によると、カバーの下方が開放されているので、カバーの構造簡素化や軽量化を図ることができる。
【0015】
本発明において、前記機体フレームに、前後方向に沿う状態で前記中間レーム部分と交差する前後向きフレームが備えられ、
前記カバーと前記前後向きフレームとの上下の隙間を塞ぐ塞ぎ部材が設けられていると好適である。
【0016】
本構成によると、塞ぎ部材がカバーと前後向きフレームとの上下の隙間を塞ぐ状態で設けられているので、カバーの後カバー部、又はカバーの前カバー部の強度を増すことができる。
また、カバーの後カバー部、又は前カバー部によって案内されるクローラベルトが、前下がりや後下がりの傾斜面に対して横ずれすることを規制でき、そのクローラベルトや、上に乗る塊状の物体が、後カバー部、又は前カバー部の裏面側へ回り込んでしまうような事態の発生も抑制し易い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】作業機全体の左側面図である。
図2】クローラ走行装置の左側面を示すとともにクローラベルトの変形状態を説明する左側面図である。
図3】クローラ走行装置においてクローラベルトの一部を切除した正面図である。
図4】クローラ走行装置の左前部分を示す一部切り欠き平面図である。
図5】クローラ走行装置の前部における誘導カバー取付箇所付近を示す正面視での部分断面図である。
図6】誘導カバーの取付箇所付近におけるクローラベルトの作用状態を示す説明図である。
図7】誘導カバーの取付箇所付近を示す分解斜視図である。
図8】誘導カバーが存在しない場合におけるクローラベルトの作用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用した普通型コンバインにおいて、走行機体の作業走行時における前進側の進行方向(図1,2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(図1,2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(図3における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(図3における矢印L参照)が「左」である。
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を作業機の一例としての普通型コンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0020】
〔全体構成〕
図1に示される普通型コンバイン(「作業機」の一例)の走行機体1は、左右一対のクローラ走行装置2(走行装置に相当する)を備えて自走可能に構成されている。左右のクローラ走行装置2は、機体フレーム10に搭載されたエンジン11(原動機に相当する)からトランスミッション12に伝達される駆動力によって駆動される。この左右のクローラ走行装置2が、後述する繋ぎフレーム3を介して機体フレーム10を下方から支持している。
走行機体1には、運転操作が行われる運転部13、圃場に植立する穀稈を刈り取り処理する刈取搬送装置14、刈取穀稈の脱穀処理を行う脱穀装置15、脱穀処理後の穀粒を貯留する穀粒貯留タンクによって構成された穀粒貯留部16、穀粒貯留部16に貯留された穀粒を外部へ排出可能な装置(図示せず)、等の各種作業装置が備えられている。
【0021】
運転部13は、走行機体の前部の右横側部分に位置している。運転部13には、操縦者が着座可能な運転座席13a、各種操作入力を行うための操作レバー13b、搭乗空間の上方を覆う庇状のキャノピ13cが設けられている。運転座席13aは、エンジン11の上方に配置されている。
【0022】
刈取搬送装置14は、走行機体の前端部に位置している。刈取搬送装置14は、機体フレーム10に対して昇降シリンダ(図示せず)により下降作業位置と上昇非作業位置との間で横軸心回りに昇降可能に支持されている。刈取搬送装置14には、回転駆動により植立穀稈を掻き込む掻込リール14a、掻込リール14aにより掻き込まれた植立穀稈の株元を切断する切断装置14b、刈取穀稈を左右方向に寄せ集めながら後方に向けて搬送する横送りオーガ14c、横送りオーガ14cから搬送されてくる刈取穀稈を脱穀装置15の入口に向けて斜め後ろ上がりに搬送するフィーダ14dが備えられている。
【0023】
脱穀装置15は、走行機体の左側後部に位置している。脱穀装置15は、フィーダ14dから送られてくる刈取穀稈の全稈を脱穀処理する。脱穀装置15により脱穀処理された穀粒は、穀粒を揚送搬送可能な揚穀装置15aにより、穀粒貯留部16に搬送される。
【0024】
穀粒貯留部16は、脱穀処理された穀粒を貯留するための貯留空間として用いられる貯留用ホッパー(図外)と、その貯留用ホッパーから排出される穀粒を籾袋等に回収するための回収部(図外)とが備えられている。
【0025】
このように構成された普通型コンバインは、クローラ走行装置2を駆動して走行機体1を走行させながら、圃場に植立する植立穀稈を下降作業位置となった刈取搬送装置14により刈り取り処理する。刈り取り処理された穀稈の全稈をフィーダ14dで脱穀装置15へ向けて後方搬送し、脱穀装置15で脱穀処理する。脱穀処理して得られた穀粒を穀粒貯留部16に搬送供給して貯留する。穀粒貯留部16に貯留された穀粒は、図外の回収部で籾袋に投入されるなどして回収される。つまり、普通型コンバインは、圃場に植立するイネ、麦、大豆等の作物を刈り取って、作物の全稈を脱穀処理する全稈投入型コンバインである。
【0026】
〔クローラ走行装置〕
図1,2に示すように、クローラ走行装置2は、繋ぎフレーム3によって連結される左右一対のトラックフレーム20,20と、そのトラックフレーム20に支持されたベルト巻回駆動部2Aと、ベルト巻回駆動部2Aに巻回されるクローラベルト25と、を備えている。
各トラックフレーム20には、その前部に駆動輪21が、後部に緊張輪22が、それぞれ支持されている。そして駆動輪21と緊張輪22の中間部におけるトラックフレーム20の下方(接地側)に、前後方向に間隔をあけて複数の接地転輪23が設けられ、トラックフレーム20の上方(非接地側)における後部寄りの箇所に、上部転輪24が設けられている。
上記の駆動輪21、緊張輪22、複数の接地転輪23、及び上部転輪24、の各輪体にわたってゴム製のクローラベルト25が巻回されている。これらの駆動輪21、緊張輪22、接地転輪23、上部転輪24が、トラックフレーム20に支持されたベルト巻回駆動部2Aに相当する。
【0027】
駆動輪21には、図2乃至図4に示すように、機体フレーム10の前部に支持されているトランスミッション12から左右両側へ延出された駆動軸12aを介してエンジン11の動力が伝達される。駆動輪21の正転(図2における反時計回りの回転)で走行機体1が前進し、駆動輪21の逆転(図2における時計回りの回転)で走行機体1が後進するように駆動される。
緊張輪22は、トラックフレーム20の後部に対して前後方向で相対移動することにより出退可能に支持されたスライドフレーム20aに装着されている。トラックフレーム20の後端部からのスライドフレーム20aの出退量を調節することにより、クローラベルト25の張力を変更調節可能に構成されている。
【0028】
左右のトラックフレーム20,20は、トラックフレーム20,20の前後方向における前部と後部の二箇所で、繋ぎフレーム3,3を介して連結されている。前後の繋ぎフレーム3,3は、それぞれが前後方向視でアーチ状に形成され、左右方向の各端部が、左右の各トラックフレーム20,20に対して溶接固定されている。
【0029】
〔繋ぎフレーム〕
前後の繋ぎフレーム3,3は次のように構成されている。
すなわち、各繋ぎフレーム3は、左右のトラックフレーム20,20よりも高い位置で水平方向に沿う中間フレーム部分30と、その中間フレーム部分30よりも横外方が低くなる左右両側の外端フレーム部分31とを備えている。これらの中間フレーム部分30と、外端フレーム部分31とは、金属製の角筒状部材や曲げ加工された板材を溶接加工して一体に構成したものである。
中間フレーム部分30は、中間フレーム部分30の延長方向に沿って横外方へ向けられ、クローラベルト25の上側経路部分の下方に入り込む位置にまで延出されている。この中間フレーム部分30のうち、左右方向でクローラベルト25と重複する位置にある重複部分が、後述する誘導カバー4(カバーに相当する)の装着対象となる横フレーム部分32である。
【0030】
クローラ走行装置2に支持される機体フレーム10は、上記の前後の繋ぎフレーム3,3を介して支持される。
機体フレーム10自体は、左右のトラックフレーム20,20同士の間に位置する左右一対の前後向きフレーム10A,10A、及びその前後向きフレーム10A,10Aに直交する方向の複数の左右向きフレーム10Bを備えて、平面視で格子状に形成されている。
前後向きフレーム10Aは、角筒状部材を上下二段に重ねて、重ね合わせ箇所を溶接固定した部材によって構成され、上方位置の上段フレーム10Aaと下方位置の下段フレーム10Abとの組み合わせで構成されている。
左右向きフレーム10Bは、前後向きフレーム10Aの上に乗る上横フレーム10Baと、前後向きフレーム10Aのうちの下段フレーム10Abと同じ高さ位置で直交するように溶接固定される下横フレーム10Bbと、の組み合わせで構成されている。
【0031】
図4乃至図7に示されるように、中間フレーム部分30は、左右のトラックフレーム20,20同士の間に位置する左右の前後向きフレーム10Aにわたる範囲において、水平方向に沿う姿勢で配設された角筒状部材で構成されている。 この中間フレーム部分30は、図5及び図7に示すように、左右向きフレーム10Bのうちの、下横フレーム10Bbの下側に重なる状態で設置されており、下横フレーム10Bbと連結固定されている。
【0032】
中間フレーム部分30として用いられる角筒状部材は、そのまま中間フレーム部分30の延長方向に沿って横外方へ延出されており、前後向きフレーム10Aの存在位置を越えて横外方へ延出された部分が、横フレーム部分32として用いられる。
この横フレーム部分32は、図3乃至図6に示されているように、左右方向でクローラベルト25の上側経路部分の下方に横フレーム部分32が入り込む位置にまで延出されていて、左右方向でクローラベルト25と重複する位置関係にある。
【0033】
また、横フレーム部分32は、図3乃至図6に示されているように、中間フレーム部分30の上面30aよりも少し低くなるように、角筒状部材の上部が切除され、図7に示すように切除部分を上側から覆う上片板材33が溶接固定されている。これによって、横フレーム部分32の上面32aとなる上片板材33の上向き面の高さが、中間フレーム部分30の上面30aよりも少し低くなっている。
このように、横フレーム部分32の上面32aの高さを少しでも低くすることにより、その上方に位置する機体フレーム10の下面との距離L1を長くし、横フレーム部分32の上面32aと機体フレーム10の下面との間に形成されるクローラベルト25の上側経路部分が移動するための移動用空間S1を広く確保できるようにしてある。
【0034】
外端フレーム部分31は、中間フレーム部分30の左右両側から横外側ほど低くなる傾斜姿勢で斜め下方へ延設され、その低くなった外端部がトラックフレーム20に溶接固定されている。
説明を加えると、外端フレーム部分31は、横フレーム部分32を含む中間フレーム部分30の端部における前向き面に当接する前当て板31aと、横フレーム部分32を含む中間フレーム部分30の端部における後ろ向き面に当接する後当て板31b(図4参照)と、その前当て板31a及び後ろ当て板31bの横外向きの端縁に当接する状態で溶接固定された横当て板31cと、を備えている。
【0035】
前当て板31aと後当て板31bとは、下部側が互いに近接する側へ折り曲げられてい
る。折り曲げられて近接する端縁同士が当接する状態で下部端縁同士を溶接固定することにより、断面形状がチャンネル状となる。そのチャンネル状の開放側を横当て板31cで閉塞して溶接固定することにより、全体としては略矩形断面の脚部分が形成される。
このように中間フレーム部分30の左右両側に斜め下方へ延設された外端フレーム部分31が設けられることにより、繋ぎフレーム3は、前後方向視でアーチ状に形成される。
【0036】
〔カバー〕
図2乃至図7に示すように、繋ぎフレーム3の中間フレーム部分30のうち、左右方向でクローラベルト25と重複するところの横フレーム部分32の前後を覆うように誘導カバー4が設けられている。誘導カバー4は、中間フレーム部分30の左右両側に存在する横フレーム部分32を、それぞれ覆うように設けられているが、説明の便宜上、左側の誘導カバー4についてのみ説明する。
この誘導カバー4は、左右方向でクローラベルト25と重複する部分であるところの横フレーム部分32を、前方から覆う前カバー部40と、後方から覆う後カバー部41と、を備えている。
【0037】
前カバー部40は、横フレーム部分32の上面前部から、前下がりの傾斜状態で横フレーム部分32よりも前側に延出されている。後カバー部41は、横フレーム部分32の上面後部から、後下がりの傾斜状態で横フレーム部分32よりも後側に延出されている。
前カバー部40の下端部は、図5及び図7に示すように、トラックフレーム20の上面よりも少し高い位置にあるが、後述する外側カバー部43を介してトラックフレーム20の上面に連結されている。後カバー部41の下端は、図2及び図7に示すように、トラックフレーム20の上面に当接する状態で、その上面に溶接固定されている。
【0038】
誘導カバー4は、上記の前カバー部40と後カバー部41のみならず、横フレーム部分32の上面32aに対向する位置に上面カバー部42を備えている。この上面カバー部42と前カバー部40及び後カバー部41は一連の金属板で一体に屈曲形成されている。
また、誘導カバー4には、前カバー部40の左右方向外端部と後カバー部41の左右方向外端部とにわたる外側カバー部43が備えられている。外側カバー部43の前後の端縁は、前カバー部40の左右方向外端部と後カバー部41の左右方向外端部、及びトラックフレーム20の上面に溶接固定されている。
さらに誘導カバー4には、前カバー部40の左右方向内端部と外端フレーム部分31の前部とに亘る前内側カバー部44Fと、後カバー部41の左右方向内端部と外端フレーム部分31の後部とに亘る後内側カバー部44Rと、が備えられている。
この実施形態において前記前内側カバー部44F及び前記後内側カバー部44Rは、図4及び図7に示されるように設けられている。つまり、前内側カバー部44Fは、前カバー部40の左右方向内端部において内端縁よりも少し左右方向外側に位置する内壁部位と、外端フレーム部分31の前部と、に亘って形成されている。そして、後内側カバー部44Rは、後カバー部41の左右方向内端部において内端縁よりも少し左右方向外側に位置する内壁部位と、外端フレーム部分31の後部と、に亘って形成されている。
このようにして、誘導カバー4は、左右方向視では山形の頂部が平坦にされた台形状であり、前後方向視では、ほぼ矩形形状である。底面側は覆われずに開放された構造となっている。
【0039】
そして、機体フレーム10の前後向きフレーム10Aと、誘導カバー4の後カバー部41とにわたって、誘導カバー4と前後向きフレーム10Aとの上下方向での隙間を塞ぐ塞ぎ部材45が設けられている。
この塞ぎ部材45は、図2及び図4に示すように、塊状の物体m1が、クローラベルト25に乗って運ばれる際にクローラベルト25が変形したとき、クローラベルト25自体や塊状の物体m1が機体左右方向での中央側へずれ動くことを抑制して、確実に塊状の物体m1を前方側へ送り出し、クローラベルト25の上面から取り除かれ易くするためのものである。
【0040】
〔カバーの機能〕
クローラ走行装置2が粘土質などの泥濘地で前後進を繰り返しながら走行し作業を行う場合に、図2に仮想線で示すように、クローラベルト25の上面に大量の粘着泥土や藁屑などが付着し、大きな塊状の物体m1となってベルト上面を運ばれることがある。
このような大きな塊状の物体m1は、機体フレーム10の下面による制約を受けて上方へ持ち上げられることを阻止されて、搬送中にクローラベルト25の上側経路部分を下方へ押し込むように作用する。そして、上部転輪24の位置を過ぎて駆動輪21に到達するまでの間におけるクローラベルト25の上側経路部分では下方から支えるものがない。このため、クローラベルト25の上側経路部分は、通常の上側経路部分の軌道(駆動輪21の上端と上部転輪24の上端とを結ぶ線分に沿う経路)から下方へ外れて、図2に太い仮想線で示すように下方へ押し込まれた垂れ下がり状に変形する傾向がある。
【0041】
このとき、上述した本発明の誘導カバー4が設けられていない場合には、クローラベルト25上の塊状の物体m1が駆動輪21の存在する箇所に近づいて、クローラベルト25の上面が機体フレーム10の下面に接近するに伴って、図8に示す状態となる。
つまり、塊状の物体m1が駆動輪21の存在する箇所に近づいてくると、図8で仮想線に示すように、クローラベルト25の機体内方側の部分が塊状の物体m1によって大きく下方へ押し込まれた状態に屈曲変形させられ、そのままの状態でさらに駆動輪21の存在する箇所に近づいてくるので、クローラベルト25が駆動輪21の周辺の構造物の隙間に詰まったり引っかかるなどして、損傷を招いてしまう虞がある。
【0042】
これに比べて、本発明の誘導カバー4が設けられていると、クローラベルト25の上側経路部分に対して誘導カバー4が次のように作用する。
つまり、図6に示す細い仮想線は、クローラベルト25の上側経路部分において、塊状の物体m1が誘導カバー4の存在箇所近くに到達し、後カバー部41の前下がり傾斜面での案内作用が開始されようとする状態を示している。この状態では、クローラベルト25の上側経路部分と機体フレーム10の下面との間隔d1が比較的広いので、塊状の物体m1はあまり強くは圧縮されておらず、クローラベルト25の上側経路部分を極端に強く押し下げるものではない。
図6に示す太い仮想線は、クローラベルト25の上側経路部分が後カバー部41の前下がり傾斜面での案内作用を受けて誘導カバー4の頂部に到達し、上面カバー部42に乗り上げた状態を示している。この状態では、クローラベルト25の上側経路部分と機体フレーム10の下面との間隔d2がかなり狭くなり、塊状の物体m1を強く圧縮することになる。しかしながら、クローラベルト25の上側経路部分は誘導カバー4で下方から支持されているので、大きく変形することを避けられ、塊状の物体m1を前方へ送り出し排出することができる。
【0043】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、繋ぎフレーム3の中間フレーム部分30と横フレーム部分32とが一連の角筒状部材で構成された構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。例えば、中間フレーム部分30と横フレーム部分32とを別々の部材で構成し、夫々が前後向きフレーム10Aと交差する状態で配置されたものであってもよい。このとき、中間フレーム部分30が左右の前後向きフレーム10Aにわたり、横フレーム部分32が左右の前後向きフレーム10Aにわたるとともに、さらに横外方に延出されたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0044】
(2)上記実施形態においては、誘導カバー4は、後カバー部41の下端がトラックフレーム20の上面に溶接固定され、前カバー部40の下端がトラックフレーム20の上面から離れて位置する構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。例えば、後カバー部41の下端も、前カバー部40の下端も、ともにトラックフレーム20の上面に溶接固定されたものであっても良く、また、ともにトラックフレーム20の上面から離れて位置するものであっても良い。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0045】
(3)上記実施形態では、誘導カバー4として、前カバー部40の左右方向外端部と後カバー部41の左右方向外端部とにわたって外側カバー部43を設けた構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。例えば、外側カバー部43を省略したものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0046】
(4)上記実施形態では、誘導カバー4として、前カバー部40の左右方向内端部と外端フレーム部分31の前部とに亘る前内側カバー部44Fと、後カバー部41の左右方向内端部と外端フレーム部分31の後部とに亘る後内側カバー部44Rと、が備えられた構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。例えば、前内側カバー部44Fと後内側カバー部44Rとのうちの一方、もしくは両方を省略したものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0047】
(5)上記実施形態においては、誘導カバー4の下方が開放され構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。例えば、図示はしないが誘導カバー4の下方を閉塞するための何らかの部材を設けたものであってよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0048】
(6)上記実施形態においては、誘導カバー4と前後向きフレームとの上下の隙間を塞ぐ塞ぎ部材45が設けられた構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。例えば、図示はしないが塞ぎ部材45を省いた構造のものであってよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、普通型コンバインに限らず自脱形コンバインや草刈機など、クローラ走行装置を備える各種の作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
3 繋ぎフレーム
4 カバー(誘導カバー)
10 機体フレーム
10A 前後向きフレーム
11 原動機
20 トラックフレーム
25 クローラベルト
30 中間フレーム部分
31 外端フレーム部分
32 横フレーム部分
40 前カバー部
41 後カバー部
43 外側カバー部
44F 前内側カバー部
44R 後内側カバー部
45 塞ぎ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8