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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20231108BHJP
   G01N 23/12 20180101ALI20231108BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020209441
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096378
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】古跡 健悟
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 大典
(72)【発明者】
【氏名】下島 直己
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-106187(JP,A)
【文献】特開2011-033505(JP,A)
【文献】特開2006-010398(JP,A)
【文献】特開2004-317334(JP,A)
【文献】特開2017-180828(JP,A)
【文献】特開2006-010451(JP,A)
【文献】特開平01-105144(JP,A)
【文献】特開平04-323537(JP,A)
【文献】特開2006-010637(JP,A)
【文献】登録実用新案第3111697(JP,U)
【文献】特開2003-227804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N23/00-G01N23/2276
G01N21/00-G01N21/01
G01N21/17-G01N21/61
G01N21/84-G01N21/958
G01N33/00-G01N33/46
B65B、B65C、B65D、B65F、B65G、B65H
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水(W)に流されて搬送される被検査物(A)に所定の検査位置(X)でX線を照射し、被検査物を透過したX線の透過量に基づいて被検査物の品質を検査するX線検査装置(1)であって、
前記検査位置の上流側に配置されて被検査物と水を搬送する第1搬送路(R1)と、
前記第1搬送路と所定間隔をおいて前記検査位置の下流側に配置され、検査済みの被検査物を搬送する第2搬送路(R2)と、
前記検査位置を経由して前記第1搬送路と前記第2搬送路の内部に着脱可能に配置された可撓性のシート材料からなり、上流側が前記第1搬送路外に延びる第3搬送路(R3)と、
を有することを特徴とするX線検査装置(1)。
【請求項2】
前記所定間隔をおいて前記第1搬送路(R1)と前記第2搬送路(R2)を一体に保持する保持部材(20)を有することを特徴とする請求項1記載のX線検査装置(1)。
【請求項3】
前記検査位置(X)における前記第3搬送路(R3)は、上方が開放された半円形の断面形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のX線検査装置(1)。
【請求項4】
前記第3搬送路(R3)が軟質の樹脂シートによって形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載のX線検査装置(1)。
【請求項5】
前記第1搬送路(R1)の上流側に接続されて内部に水が流れる供給路(10)と、
前記供給路の上側に設けられて被検査物が投入される投入口(11)と、
をさらに有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のX線検査装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水とともに搬送される被検査物にX線を照射し、X線の透過量に基づいて被検査物の品質を検査するX線検査装置に係り、特に清掃性が高いために衛生的であり、例えば生の海産物の異物混入等の検査を高精度で行なうことができるX線検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、X線異物検出装置の発明が開示されている。このX線異物検出装置1は、パイプライン10内を流動搬送される被検体に所定の検出位置PでX線を照射し、被検体を透過するX線を検出し、透過したX線の透過量に基づいて被検体における異物混入の有無を検出することができる。特に、この発明によれば、少なくとも検出位置Pにおけるパイプライン10の断面形状が、被検体が通過できる程度の扁平形状に押し潰された形状であるため、パイプライン内を流動搬送される被検体に向けて照射されるX線の透過距離を均等に、且つ短くすることができるため、被検体に混入している異物を確実に検出することができるものとされている。
【0003】
下記特許文献2には、X線異物検出装置の発明が開示されている。このX線異物検出装置1は、搬送手段7により循環して駆動される無端状のバケット部材5と、X線源3及びX線検出器8を備えている。バケット部材の凹部6には、水面Lが存在する状態の水Wとゆで卵4が収納され、照射領域Sを通過することによりX線の透過画像が取得される。ゆで卵4の一部が水面Lの下方で水に浸っているので、X線の透過量は全体的に減少し、その変化は比較的緩慢になるため異物の誤判定の恐れが少なく、また清掃性乃至メンテナンス性にも優れているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-10398号公報
【文献】特開2014-106187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
貝類の剥き身等のような海産物の異物混入をX線検査装置で検出する場合には、被検査物を冷凍した状態で検査に供することが一般的であった。ところが、冷凍品をX線で検査する場合、冷凍品の角張っているエッジ状の部分ではX線の透過量が比較的に急峻な変化を示すため、異物の検出感度が低下するという問題があった。また、異物を検出した場合、冷凍品から異物を除去することは困難であり、除去できなければ製品全体を排除するしかなく、歩留りがよくないという問題もあった。
【0006】
上述した問題を考慮すると、貝類の剥き身等のような海産物については生の状態で検査することが好ましいが、搬送ベルトに被検査物を載せて搬送しながら検査するタイプのX線検査装置では、冷凍品の場合には衛生面の問題は少ないものの、生の海産物の場合には被検査物が接触する搬送ベルトでの菌コントロールが難しく、採用しにくいという問題があった。
【0007】
そこで、生の海産物等については、搬送ベルトではなく流水で搬送しながら、X線で検査することが好ましいと考えられ、前述したように特許文献1に示したようなX線検査装置が提案されていた。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された発明によれば、前述した通り、水とともに被検査物を搬送するパイプラインは、検査位置では被検体が通過可能な程度の扁平形状に押し潰された形状となっているため、検査位置において流速が変化して水流に乱れや気泡が生じる場合があり、例えばホタテのように相当な大きさのある被検査物を単品ごとに検査する場合には向きが安定せず、検査精度が低下してしまう場合があるという問題があった。また、生の海産物を取り扱う場合には、清掃性が高く、衛生的であることが要求されるが、閉鎖されたパイプラインを装置から取り外して内部を清掃することは困難であった。
【0009】
また、特許文献2に開示された発明によれば、被検査物であるゆで卵は、循環して回動される無端コンベア状のバケット部材の凹部に収納されて搬送されるが、この無端状のバケット部材を搬送機構から取り外し、多数の凹部を個々に清掃する作業は煩雑であり、その清掃性は必ずしも高くはなかった。また、バケット部材の凹部にゆで卵を収納して搬送する機構であるため、被検査物を流水で搬送する場合に較べれば搬送力が十分に高いとはいえず、検査の処理速度には限界があった。
【0010】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、清掃性が高いために衛生的であり、検査の精度と処理速度が十分に高く、特に生の海産物の異物混入に適用して効果の高いX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載されたX線検査装置1によれば、
水Wに流されて搬送される被検査物Aに所定の検査位置XでX線を照射し、被検査物Aを透過したX線の透過量に基づいて被検査物Aの品質を検査するX線検査装置1であって、
前記検査位置Xの上流側に配置されて被検査物Aと水Wを搬送する第1搬送路R1と、
前記第1搬送路R1と所定間隔をおいて前記検査位置Xの下流側に配置され、検査済みの被検査物Aを搬送する第2搬送路R2と、
前記検査位置Xを経由して前記第1搬送路R1と前記第2搬送路R2の内部に着脱可能に配置された可撓性のシート材料からなり、上流側が前記第1搬送路外に延びる第3搬送路R3と、
を有することを特徴としている。
なお、本願発明において「水」とは、H2 Oのみを意味するものではなく、広く液体状の物質全般を示している。
【0012】
請求項2に記載されたX線検査装置1は、請求項1記載のX線検査装置1において、
前記所定間隔をおいて前記第1搬送路R1と前記第2搬送路R2を一体に保持する保持部材20を有することを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載されたX線検査装置1は、請求項1又は2に記載のX線検査装置1において、
前記検査位置Xにおける前記第3搬送路R3は、上方が開放された半円形の断面形状を有することを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載されたX線検査装置1は、請求項1乃至3の何れか一つに記載のX線検査装置1において、
前記第3搬送路R3が軟質の樹脂シートによって形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載されたX線検査装置1は、請求項1乃至4の何れか一つに記載のX線検査装置1において、
前記第1搬送路R1の上流側に接続されて内部に水が流れる供給路10と、
前記供給路10の上側に設けられて被検査物Aが投入される投入口11と、
をさらに有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載されたX線検査装置によれば、第1搬送路と第2搬送路が検査位置を挟んで上流と下流にそれぞれ配置され、可撓性のシート材料からなる第3搬送路が検査位置を経由して第1搬送路と第2搬送路の内部に着脱可能に配置された構成であるため、検査位置を通過する被検査物は、特に継ぎ目や凹凸のない第3搬送路の中を、水流に乱れや気泡が生じることなく水とともに搬送されるので、相当の大きさのある被検査物であっても検査位置における姿勢が安定し、十分に高い検査精度が得られる。また、第3搬送路は、第1搬送路と第2搬送路から容易に引き抜いて清掃できるので、このX線検査装置の清掃性は高く、衛生的である。また、被検査物は水とともに第1搬送路から第3搬送路、そして第3搬送路から第2搬送路へと搬送されるため、このX線検査装置の搬送速度は十分に大きく、高い処理効率が得られる。また、特に被検査物が生の海産物である場合には、被検査物を流す水を塩水とすれば、被検査物を流す水が真水である場合とは異なり、浸透圧の影響で被検査物が膨らんでしまうという問題も解消できる。なお、本発明の水としては、塩水、真水以外の他の液体を利用することも可能であり、被検査物の種類に応じて選択することができる。
【0017】
請求項2に記載されたX線検査装置によれば、第1搬送路と第2搬送路を保持部材の所定位置に取り付けるだけで、両搬送路を同軸に設定することができ、さらにX線による検査位置となる第1搬送路と第2搬送路の搬送方向に関する隙間の部分が所定間隔となるよう正確に設定することができる。
【0018】
請求項3に記載されたX線検査装置によれば、検査位置を通過する第3搬送路は、搬送方向に直交する断面で見れば、上方の半分を除去して下方の半分を残したような略半円形の断面形状となっている。第3搬送路が開口のない円筒形であれば、円形の断面の頂部を透過するX線により、X線画像においてシート材料による吸収の影響が強く表れてしまうが、上述の通り実施形態の第3搬送路R3は上方の半分が除去された形状であるため、シート材料によるX線の吸収の影響が小さくなる。従って、X線の透過量が急激に変化するエッジ状の部分が被検査物Aの透過画像に生じることはなく、この点においても高い検査精度が保証される。
【0019】
請求項4に記載されたX線検査装置によれば、第1搬送路と第2搬送路の間に設けられる第3搬送路を、一枚の軟質の樹脂シートを第1搬送路と第2搬送路の内形状に沿って変形させることで継ぎ目のない連続した経路として形成することが容易である。このため、検査位置を含む第3搬送路の内部における水流に乱れや気泡が生じることが確実に抑止でき、検査位置における被検査物の姿勢がさらに安定化し、十分に高い検査精度が確実に得られる。
【0020】
請求項5に記載されたX線検査装置によれば、検査位置の上流側にある第1搬送路の上流側に接続された供給路から内部に水を流入させるとともに、この供給路の上側に設けた投入口から被検査物を投入することにより、被検査物を水流に乗せて下流の第1搬送路に向けて搬送させるため、被検査物は検査位置に到達するまでに水流中での姿勢が安定化し、検査位置では検査に好ましい姿勢でX線の照射を受けるため、X線による検査精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態のX線検査装置の正面図である。
図2】実施形態のX線検査装置の検査位置付近における搬送路を示す図であって、分図(a)は分図(b)中に示したa-a切断線における断面図であり、分図(b)は、分図(a)中に示したb-b切断線における断面図である。
図3】実施形態のX線検査装置における搬送路と、この搬送路を保持する保持部材を示す図であって、分図(a)は斜視図、分図(b)は平面図、分図(c)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態であるX線検査装置1について図1図3を参照して説明する。
図1はX線検査装置1とその付属装置を示す正面図であり、同図を参照してX線検査装置1の概要を説明する。
X線検査装置1は、円筒形の搬送路R(管、パイプ、チューブ等)の中で塩水と被検査物を流して搬送し、検査位置においてX線を照射し、被検査物を透過したX線の透過量に基づいて被検査物における異物の有無等を検査する装置である。
【0023】
被検査物としては、その大きさや形状に対応した適当な内径の搬送路Rを選択することにより、個々の被検査物が搬送路R内を搬送方向に一列に並んで搬送されうるような固体の食品を対象とするが、本実施形態では特に生の海産物、例えばホタテやカキ等の貝の剥き身を好適な対象とする。被検査物を流す流体として塩水を使用するのは、被検査物である生の海産物を流すための水が真水であると浸透圧の影響で被検査物が膨らんでしまうからである。海水等の塩水を搬送流体として使用すれば、被検査物が海産物であっても浸透圧の問題は生じない。なお、実施形態のX線検査装置1は、ゆで卵等の海産物以外の固体の食品も対象とすることができるが、その場合には被検査物を搬送する流体は塩水ではなく、真水を用いた方がよい。
【0024】
図1に示すように、X線検査装置1は、その内部において被検査物にX線を照射して検査を行なうための筐体2を備えている。筐体2は、X線が透過しにくい素材により、X線が外部に漏洩しにくい遮蔽構造で形成されており、支持脚3によって床面F上に設置されている。塩水と被検査物を流すための搬送路Rは、矢印Cで示す搬送方向の下流に向けて低くなるように傾斜しており、正面から見て筐体2の左右の壁部を貫通するような構造で設けられている。図1では、搬送方向Cは左から右に向いており、右方へ向けて下降する傾斜となっている。詳細は後述するが、図1において筐体2内に隠れ線で示した搬送路Rの中央には、搬送方向Cに沿った所定長さにわたり部分的に上側が開放された箇所があるが、この領域がX線による検査位置Xである。なお、図1では図示の都合上、搬送路Rは一系統のみが示されているが、図1の奥行き方向(紙面垂直方向の奥側)にもう一系統の搬送路Rが存在する(図3を参照して後述する。)。また、筐体2の正面側には開放可能な扉4が設けられており、これを開放すれば、搬送路R及び検査位置Xにアクセスすることができる。
【0025】
図1には示していないが、筐体2の内部には、搬送路Rの検査位置Xの上方にX線照射部が照射方向を下向きにして配置されており、下方の検査位置Xに向けてX線を照射するようになっている。また、これも図示はしないが、筐体2の内部には、搬送路Rの検査位置Xの下方にX線検出器が配置されており、検査位置Xを通過する被検査物と塩水(及び後述する第3搬送路R3)を透過したX線を検出して被検査物の透過画像が取得できるようになっている。そして、図1に示す筐体2の内部に設けられた制御部が、被検査物の透過画像から被検査物における異物の有無を判定する。なお、筐体2の前面側には、X線検査装置1を操作するための操作盤5と、取得した透過画像を含む種々の情報を表示する表示部6が設けられている。
【0026】
図1に示すように、X線検査装置1の搬送路Rの上流側には、供給路10が接続されている。供給路10は搬送路Rと同径の円筒形であり、図1では左端部が途切れて示されているが、さらに上流に延設されていてもよい。この供給路10は、供給路10の内部に塩水が供給されるように構成されている。例えば、供給路10の左端部の開口に塩水の供給管を接続してもよい。また、供給路10の周面の上側には、被検査物の大きさに適合した大きさの投入口11が設けられており、供給路10の内部に被検査物を投入できるようになっている。供給路10に対する塩水の供給位置は、投入口11よりも上流であり、投入口11から投入された被検査物は塩水の流れに乗って下流へ搬送され、搬送路Rを円滑に流下していくことができる。
【0027】
図1に示すように、X線検査装置1の搬送路Rの下流側には排出路12が接続されている。排出路12は搬送路Rと同径の短い円筒形であり、下方に湾曲した下流側は開放された排出口13になっている。排出路12の排出口13に隣接して被検査物の選別装置14が設けられている。選別装置14は、揺動自在の選別経路15と不合格品の収納容器16を備えている。選別装置14は、X線検査装置1の制御部から送られた検査結果に基づく選別信号を受けて選別経路15を作動させ、排出路12の排出口13から排出された被検査物のうち、不合格となった被検査物の搬送経路を切り替え、不合格品の収納容器16に落下させて収納する。
【0028】
図1に示すように、選別装置14の選別経路15に隣接して案内経路17が設けられている。案内経路17は下流に向けて傾斜しており、案内経路17の下流側の端部の下方には、搬送コンベア18が設けられている。搬送コンベア18は、網状の無端ベルトの上に合格と判定された被検査物を受け、被検査物に付着した塩水を無端ベルト越しに滴下させて水切りしながら被検査物を搬送し、図示しない良品受け箱に搬送する。
【0029】
図2は、X線検査装置1の検査位置X付近における搬送路Rの構造と、塩水Wの流下によって搬送される被検査物Aの搬送状態を示す断面図であり、この図2を主に参照しつつX線検査装置1の搬送路R及び搬送における作用効果について説明する。
本実施形態において、被検査物A及び塩水Wは、供給路10に供給され、X線検査装置1を通過して排出路12の排出口13から排出されるが、その経路のうち、筐体2を貫通している部分がX線検査装置1の搬送路Rである。搬送路Rは、第1搬送路R1と第2搬送路R2の2本の管を含んでいる。第1搬送路R1は、検査位置Xの上流側に配置され、供給された被検査物Aと塩水Wを下流に搬送する。第2搬送路R2は、第1搬送路R1と所定間隔をおいて第1搬送路R1と同軸となるように検査位置Xの下流側に配置され、検査済みの被検査物A及び塩水Wを下流に搬送する。第1搬送路R1と第2搬送路R2は、前述した通り円筒形の管、パイプ、チューブ等で構成されている。材質としては、塩水Wに触れても腐食しにくく、かつX線に対する遮蔽能力の高い金属、例えばステンレス等が好ましい。
【0030】
図2に示すように、第1搬送路R1と第2搬送路R2の内部には第3搬送路R3が挿入されており、第1搬送路R1と第2搬送路R2の隙間である検査位置Xを経由するように配置されている。すなわち、X線検査装置1の搬送路Rは第1~第3の3つの搬送路R1、R2、R3によって構成されている。第3搬送路R3は、可撓性のシート材料である軟質の樹脂シートから構成されているが、この樹脂シートは自由状態では矩形状であり、その形状・寸法は、所定の寸法・配置で組み立てられた第1搬送路R1及び第2搬送路R2に挿入した場合、次のような形状、構造が得られるように設定されている。すなわち、第3搬送路R3となる樹脂シートを、第1搬送路R1と第2搬送路R2の内部に挿入すると、当該樹脂シートは弾性的に屈曲して第1搬送路R1及び第2搬送路R2の曲率に沿って変形し、図2(a)及び(b)に示すように、搬送方向C(塩水Wの流れ方向)に直交する切断面(図2(b))で見た場合、上方の半分(円周の180°に相当する分)を除去して下方の半分を残した略半円形の断面形状の第3搬送路R3となる。
【0031】
樹脂シートは、第1搬送路R1及び第2搬送路R2の内部に挿入して湾曲した形状となっても、被検査物A及び塩水Wを流す際の力に耐えうる程度の強度を有し、また使用時に被検査物A及び塩水Wとの摩擦・衝突に耐えうる耐摩耗性及び衝撃吸収性を備えるものが好ましく、さらに食品を搬送するために食品衛生法(厚生省告示第370号)に適合している必要がある。このような材質の樹脂シートとしては、例えば熱可塑性又は熱硬化性のシートであるポリウレタンのシートを用いることができる。
【0032】
搬送路Rの構造、具体的には第1搬送路R1及び第2搬送路R2の径、第1搬送路R1及び第2搬送路R2の搬送方向Cの間隔(すなわち搬送方向Cに関する検査位置Xの幅)、及び第3搬送路R3の大きさは、搬送に関係する種々の条件に応じて設定する。条件としては、被検査物Aの形状と大きさ、また搬送路Rの傾斜や供給される塩水Wの量等によって定まる搬送路R内の水深、搬送速度等が挙げられる。検査精度をより高くするためには、姿勢が安定した被検査物Aが塩水Wに浸漬した状態で搬送路R内を搬送方向Cに1個ずつ並んで搬送されていくことが好ましいが、そのためには被検査物Aの形状と大きさに適した内径の搬送路Rを選択する等、搬送路Rの構造を最適に設定することが必要である。
【0033】
具体的な一例を挙げると、図1に示したような傾斜の搬送路Rにおいて、水揚げされた直径30cm程度、高さ15cm程度の円盤型である生のホタテを搬送する場合、第1搬送路R1及び第2搬送路R2の内径を9cm、第1搬送路R1及び第2搬送路R2の搬送方向Cの間隔(検査位置Xの搬送方向の長さ)を4cm、断面半円形の第3搬送路R3の内径(深さ)を4.5cm程度とし、7~10リットル/分で塩水Wを流せば、被検査物Aであるホタテは、図2(a)に示すような状態で搬送される。図2(a)は、搬送方向Cに平行で搬送路Rの中心を通る鉛直面を切断面とした断面図である。
【0034】
図2(a)に示すように、被検査物Aであるホタテは、継ぎ目も凹凸もない滑らかな第3搬送路R3の内部を塩水Wに全体を浸漬した状態で塩水Wとともに流されるが、検査位置Xを含む第3搬送路R3の中では、水流に乱れや気泡が生じることがないので、搬送路R内における被検査物Aの姿勢は安定している。ホタテは偏平な円盤状であるため、実施形態においては円盤の上下面を水平にした安定した姿勢で搬送され、この安定した姿勢で検査位置Xを通過することができる。さらに、図2(b)に示すように、被検査物Aであるホタテは、第3搬送路R3内においてその全体が塩水Wに浸漬されているが、塩水W中においてホタテの存在しない部分はホタテの外形よりも小さいため、図2(a)に示すように、搬送方向Cに関して後方にあるホタテが前方のホタテを追い越したり、前方のホタテに乗り上げて重なったりすることは起こりにくく、搬送路R内を搬送方向Cに1個ずつ並んで搬送されていく。このため、ホタテは安定した姿勢で検査位置Xを1個ずつ通過することができるので、高い検査精度を得ることができる。
【0035】
また、このX線検査装置1によれば、検査位置Xにある第3搬送路R3は、図2(b)に示すように、搬送方向Cに直交する断面で見れば、上方の半分を除去して下方の半分を残したような略半円形の断面形状となっている。仮に第3搬送路R3が開口のない円筒形であれば、円形の断面の頂部を透過するX線により、X線画像においてシート材料による吸収の影響が強く表れてしまうが、上述の通り実施形態の第3搬送路R3は上方の半分が除去された形状であるため、シート材料によるX線の吸収の影響が小さくなる。従って、X線の透過量が急激に変化するエッジ状の部分が被検査物Aの透過画像に生じることはなく、この点においても高い検査精度が保証される。
【0036】
また、X線照射部から照射されたX線は、検査位置Xにおいて塩水Wと被検査物Aを透過し、さらに第3搬送路R3の底面を透過してX線検出器に到達する。ここで、被検査物Aは全体が塩水Wに浸漬された状態にある。塩水Wがなければ、被検査物Aの厚さや内部構造が変化する部分では、X線検出器によって取得されるX線画像にはX線の透過量が比較的急峻な変化を示すエッジ状の部分が表れ、このエッジ状の部分が異物を示しているとの誤判定を招きやすい。しかしながら、実施形態では被検査物Aの全体が塩水Wの下方にあり、塩水Wに浸っている範囲ではX線の透過量が全体的に減少し、その変化も比較的緩慢になるため、このような誤判定の恐れは少なくなる。
【0037】
また、異物はX線の透過量の急峻な変化を見つけて検出するため、被検査物Aが塩水Wに浸っていない場合に、X線の透過量が比較的急峻な変化を示す部分(例えば冷凍のホタテの角の部分)又はその近傍に異物がある場合には、X線の透過量の変化に基づいて異物を発見することが困難になる場合がある。しかしながら、この発明では、生のホタテを被検査物Aとしており、全体を塩水Wに浸漬して搬送しながら検査するため、被検査物Aのみを透過するX線の透過量が比較的緩慢な変化を示すので、このような被検査物Aに異物が存在していれば、その異物の部分では被検査物Aと異物の両方を透過したX線の透過量が比較的急峻な変化を示し、異物の存在が強調されるため、X線の透過量の変化に基づいて異物を発見することが容易となる。
【0038】
このように、実施形態のX線検査装置1によれば、異物検出の誤判定が生じにくく、また異物の見逃しも起こりにくく、総じて検査精度が高いという効果が得られる。
【0039】
図3は、以上説明した第1及び第2搬送路R1、R2と、これらを保持する保持部材20を示す図である。
保持部材20は、第1部材21と第2部材22の二つの部材から構成される。各部材21,22は、4つの側面によって構成された略正方形の枠状体である。第1部材21の一対の側面には、二系統2本の第1搬送路R1,R1が互いに平行に所定の傾斜角度で貫通して固定されている。第2部材22の一対の側面には、二系統2本の第2搬送路R2,R2が、二系統2本の第1搬送路R1,R1と同軸の配置となるように、所定の傾斜角度で貫通して固定されている。第1部材21と第2部材22のその他の側面には、重量軽減のために肉抜きの孔が設けられている。
【0040】
図1を参照して作業員の手作業による搬送路Rの設置作業及び清掃時の分解作業について説明する。
まず搬送路Rの設置にあたっては、図1に示す筐体2の扉4を開放し、第1部材21と第2部材22を筐体2内に挿入して所定の位置で固定する。これによって第1搬送路R1と第2搬送路R2は筐体2内で所定間隔をおいて同軸に配置される。また、第1搬送路R1と第2搬送路R2の隙間は所定間隔に設定され、搬送方向Cに関する隙間の中央は、X線が照射される検査位置Xに一致する。ここで、第1搬送路R1の上流側の開口から、第3搬送路R3となる樹脂シートを丸めながら挿入し、第2搬送路R2内に挿入する。第1搬送路R1の下流側の開口から突出した第3搬送路R3が、検査位置Xの隙間において第2搬送路R2の開口に挿入しにくい場合は、作業員が隙間において樹脂シートの移動を補助してもよい。第3搬送路R3を第2搬送路R2の内部の所定位置まで挿入したら、再び扉4を閉止する。
【0041】
次に搬送路Rの清掃にあたっては、X線検査装置1に接続されている供給路10を取り外し、第1搬送路R1の上流側の開口から第3搬送路R3を上流側に引き抜く。第1搬送路R1及び第2搬送路R2から引き抜いた第3搬送路R3は平坦な状態に復元するため、清掃し易い。次に、必要な場合には、図1に示す筐体2の扉4を開放し、第1部材21と第2部材22の固定を解除して筐体2外に搬出し、第1部材21と第2部材22を清掃する。
【0042】
このように、実施形態のX線検査装置1によれば、最も汚れやすく、第1及び第2搬送路R2に対して挿入又は引き抜くだけの簡単な操作で容易に着脱することができる。
【0043】
なお、図3を参照した上記説明では、保持部材20を構成する第1部材21と第2部材22は別体であり、それぞれ筐体2内の所定位置に取り付けることで第1搬送路R1と第2搬送路R2の位置決めを行なっていたが、次のような構造の変形例でもよい。すなわち、第1部材21と第2部材22を一体化した単一の保持部材に、第1搬送路R1と第2搬送路R2を、同軸かつ搬送方向Cが連続するような所定の傾斜角度で搬送方向Cに所定間隔をおいて固定しておく。このようにすれば、単一の保持部材20を筐体2内の所定位置に搬入して固定するだけの作業で、筐体2内における第1搬送路R1と第2搬送路R2の配置、位置決めが完成する。
【0044】
なお、図3に示した実施形態には示していないが、図1において、筐体2の両側面に表れている板部23は、上述した変形例の場合に追加して適用可能な構成を、実施形態の図面に重ねて示したものである。すなわち、この板部23は、変形例の単一の保持部材の上流側の側面と、下流側の側面に設けうる部材であり、ここに設けた取っ手を作業員が手で持つことによって筐体2に対する搬送路Rの着脱作業を容易化することができる。
【0045】
冷凍ホタテを被検査物とした場合には、異物が検出されれば解凍して異物を除去し、再度冷凍する必要があるが、解凍時にはドリップが流出して品質が低下し、衛生上の問題も生じるため、冷凍したホタテを検査のために解凍することは好ましくない。ところが、以上説明した実施形態のX線検査装置1によれば、冷凍前の生のホタテを被検査物として高い検査精度で検査することができ、しかも清掃性が高いので衛生的でもあるという実用上顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0046】
1…X線検査装置
2…筐体
10…供給路
11…投入口
20…保持部材
R…搬送路
R1…第1搬送路
R2…第2搬送路
R3…第3搬送路
W…塩水
A…被検査物
X…検査位置
C…搬送方向
図1
図2
図3