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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】プラント操業支援装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20231108BHJP
   G05B 19/05 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G05B23/02 301Z
G05B23/02 301Y
G05B19/05 F
G05B19/05 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020211320
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098010
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】小松 孝史
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/132479(WO,A1)
【文献】特開2018-180995(JP,A)
【文献】特開2005-18142(JP,A)
【文献】特開平7-271432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G05B 19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PLCが生成した複数のアラームを、制御ネットワークを介して前記PLCから収集するアラーム収集手段と、
PLCが送受信する操業データを、前記制御ネットワークを介して収集する操業データ収集手段と、
あらかじめ設定された前記複数のアラームのそれぞれに設定された表示条件にもとづいて、前記複数のアラームのそれぞれの表示または非表示を決定するアラーム抑制機能と、
前記アラーム抑制機能によって表示すると決定された場合に、前記アラームを表示する画面出力手段と、
を備え、
前記アラーム抑制機能は、
前記複数のアラームのそれぞれが表示されるか非表示とされるかをそれぞれ判定する表示判定ステップを実行し、
前記複数のアラームのそれぞれが生成されたときの操業データにもとづいて、操業条件を判定する操業条件判定ステップを実行し、
前記操業条件判定ステップでは、前記操業データが工程の異常を表す場合には、前記複数のアラームのうちから前記工程の異常を表す第1アラームを前記表示判定ステップにかかわらず表示し、
前記操業データが前記工程の正常を表す場合には、前記複数のアラームのうち前記表示判定ステップで表示するとされるアラームを表示するプラント操業支援装置。
【請求項2】
前記操業データ収集手段は、
前記制御ネットワークを介して接続された複数の表示端末の識別情報および前記複数の表示端末にログインしているオペレータの属性情報を収集し、
前記アラーム抑制機能は、
前記識別情報にもとづいて、前記複数の表示端末のうちのいずれに表示させるかを判定する表示端末判定ステップを実行し、
前記属性情報にもとづいて、前記複数のアラームのそれぞれを表示させるか非表示とさせるかを判定するオペレータ属性判定ステップを実行する請求項1記載のプラント操業支援装置。
【請求項3】
前記複数のアラームの少なくとも1つのアラームについて、発報時の要因が分析され、前記1つのアラームに前記要因を紐づけて記録するデータベースに前記要因を入力して更新し、更新された情報を閲覧可能にするアラーム登録手段をさらに備えた請求項1または2に記載のプラント操業支援装置。
【請求項4】
前記1つのアラームについて前記要因による更新後、同一の要因または異なる要因を入力して更新した場合に、前記表示判定ステップにおける判定基準を更新するアラーム抑制学習機能をさらに備えた請求項3記載のプラント操業支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、PLCが発報するアラームを管理するプラント操業支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製品や紙製品、フィルム製品等を製造するプラントでは、各機器の動作を制御するために、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)を設ける。プラント内に設置されたPLCは、制御ネットワークによってシステム構築され、プラント内の情報を共有する。
【0003】
システムが正常に稼働しているか否かは、オペレータが、プラント内に設置された表示端末に表示されるアラームリストを見ることで、具体的に知ることができる。これらのアラームの中には、PLCや制御ネットワークの異常を示すアラームや、接続されているセンサの異常を示すアラーム、コイル位置情報のずれを示すアラーム、制御異常を示すもの等々、多種多様である。
【0004】
そのため、操業の状態によっては、アラームが短時間で大量に発生し、重要なアラームやすぐに処置しなくてはならないアラームが、その他のアラームに埋もれてしまうことがある。また、アラームを見ても、そのアラームに対して、具体的にどのような処置をしてよいかわからず、操業対応が遅れることがある。
【0005】
特許文献1では、アラームの発報確率と故障が発生する確率とがとり得る範囲を表す領域を可視化することでアラームの品質評価を行う方法について述べられている。アラームの品質評価を行うことで、ユーザーがアラームの品質や信頼度を判断できるが、不要なアラームの発生が抑制されるわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-28619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、PLCが出力するアラームの表示の要、不要を判定して、システム監視を容易にするプラント操業支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係るプラント操業支援装置は、PLCが生成した複数のアラームを、制御ネットワークを介して前記PLCから収集するアラーム収集手段と、PLCが送受信する操業データを、前記制御ネットワークを介して収集する操業データ収集手段と、あらかじめ設定された前記複数のアラームのそれぞれに設定された表示条件にもとづいて、前記複数のアラームのそれぞれの表示または非表示を決定するアラーム抑制機能と、前記アラーム抑制機能によって表示すると決定された場合に、前記アラームを表示する画面出力手段と、を備える。前記アラーム抑制機能は、前記複数のアラームのそれぞれが表示されるか非表示とされるかをそれぞれ判定する表示判定ステップを実行し、前記複数のアラームのそれぞれが生成されたときの操業データにもとづいて、操業条件を判定する操業条件判定ステップを実行し、前記操業条件判定ステップでは、前記操業データが工程の異常を表す場合には、前記複数のアラームのうちから前記工程の異常を表す第1アラームを前記表示判定ステップにかかわらず表示し、前記操業データが前記工程の正常を表す場合には、前記複数のアラームのうち前記表示判定ステップで表示するとされるアラームを表示する。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態では、PLCが出力するアラームを、表示が必要なものと不要なものとに判定して、システム監視を容易にするプラント操業支援装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るプラント操業支援装置を例示する模式的なブロック図である。
図2】実施形態のプラント操業支援装置で参照されるデータベースの一例を示す模式図である。
図3】実施形態のプラント操業支援装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
図4】実施形態のプラント操業支援装置で参照されるテーブルの一例を示す模式図である。
図5】実施形態のプラント操業支援装置で参照されるデータベースの一例を示す模式図である。
図6】実施形態のプラント操業支援装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係るプラント操業支援装置を例示する模式的なブロック図である。
図1には、鉄鋼製造制御システム100が示されており、以下の説明では、実施形態のプラント操業支援装置10は、鉄鋼製造制御システム100において動作、運転されるものとして説明する。なお、プラント操業支援装置は、鉄鋼製造プラントに限らず、PLCを用いてシステム構築された他の製造プラントにおける制御システムに適用できることはいうまでもない。
図1に示すように、プラント操業支援装置10は、制御ネットワーク6を介して、PLC1,2,3および表示端末4,5に接続されている。制御ネットワーク6は、高速で定周期の制御信号等の伝送が可能な通信ネットワークである。
【0013】
PLC1,2,3は、プログラマブルロジックコントローラである。PLC1,2,3には、あらかじめ制御用プログラムが導入されている。PLC1,2,3は、通常のプラントの操業においては、各製造工程や製造工程に配置された機械、製造している材の状態、位置等を検出するセンサからの信号を受信して、導入されている制御用プログラムにしたがって、制御信号等を生成し、機械等の負荷を駆動する電動機やその他のアクチュエータ等を制御する。
【0014】
PLC1,2,3は、あらかじめ導入された制御用プログラムによって、担当している工程や機械等に異常等が生じたときには、異常等の状態に応じたアラームを発報する。
【0015】
プラント操業支援装置10は、PLC1,2,3が発報したアラームおよびPLC1,2,3が送受信するセンサの信号および制御信号を含む操業データを受信し、これらにもとづいて、表示が必要なアラームを抽出し、表示端末4,5に抽出されたアラームを送信する。
【0016】
表示端末4,5は、上述のように、プラント操業支援装置10から送信されたアラーム信号を受信して、適切に表示する。表示端末4,5は、制御ネットワーク6上で識別することができる識別番号あるいはアドレスを有しており、表示端末4,5の識別番号等は、操業データとして、制御ネットワーク6を介して、プラント操業支援装置10に送信される。なお、表示端末4,5は、鉄鋼製造制御システム100が通常の運転をしているときには、PLC1,2,3から送信されてくる信号や、制御ネットワーク6上の信号を用いて、操業状態を監視できるような画面を表示している。
【0017】
表示端末4,5は、オペレータOP1~OP3によって操作される。表示端末4,5には、たとえば1人のオペレータがログインする。各オペレータOP1~OP3は、独自のID番号を有しており、表示端末4,5へのログインに際しては、ID番号やID番号を含む識別番号を入力する。ID番号等は、プラント操業支援装置10に送信され、プラント操業支援装置10は、表示端末4,5から受信する表示端末4,5の識別情報およびログインオペレータのID番号を、操業データとして受信する。表示端末4,5の識別番号等およびオペレータOP1~OP3のID番号等により、プラント操業支援装置10は、どのオペレータOP1~OP3がどの表示端末4,5にログインしているかを認識することができる。
【0018】
なお、この例では、3台のPLC1,2,3および2台の表示端末4,5が設けられた鉄鋼製造制御システム100を前提に説明をするが、PLCおよび表示端末の台数に制限はなく、システムの要求に応じた台数がそれぞれ設けられる。また、3人のオペレータOP1~OP3が表示端末4,5を操作する場合について説明するが、オペレータの人数についても制限はなく、1人や2人でももちろんかまわないし、4人以上であってもよい。
【0019】
プラント操業支援装置10の構成について詳細に説明する。
プラント操業支援装置10は、アラーム収集手段11と、操業データ収集手段12と、データ蓄積手段13と、アラーム抑制機能14と、画面出力手段17と、を備える。プラント操業支援装置10は、アラーム登録手段16をさらに備え、好ましくは、アラーム抑制学習機能15をさらに備える。
【0020】
アラーム収集手段11は、制御ネットワーク6を介して、PLC1,2,3から発報されたアラームデータを収集する。アラームデータには、後述するように、データごとにアラーム番号が付与されており、プラント操業支援装置10は、受信したアラームデータがどのアラームであるかを識別することができる。
【0021】
操業データ収集手段12は、制御ネットワーク6を介して、PLC1,2,3が送受信する制御信号等を含む操業データを収集する。収集する操業データは、時系列のデータであり、たとえば、圧延機を駆動する電動機の速度指令値やトルク値等である。収集する操業データは、あらかじめ設定されている。設定された操業データは、プラント操業支援装置10の稼働とともに、時系列データとしてすべて収集し、データ蓄積手段13や一時記憶装置等の記憶容量に応じて、必要な部分以外を廃棄する等してもよい。
【0022】
アラーム収集手段11によって収集されたアラームデータおよび操業データ収集手段12によって収集された操業データは、アラーム抑制機能14によって処理される。収集されたアラームデータおよび操業データは、データ蓄積手段13に送られて、データ蓄積手段13は、取得したアラームデータおよび操業データを記憶されたデータベースに格納する。
【0023】
アラーム抑制機能14は、あらかじめ設定された判定基準にしたがって、受信したアラームを表示するか否かを判定する。アラーム抑制機能14では、すべてのPLC1,2,3の制御プログラムに設定されたアラームについて表示するか否かがあらかじめ設定されている。
【0024】
アラーム抑制機能14には、収集した操業データに関する論理演算機能を有しており、複数の操業データによる論理演算結果が真(論理値=“1”)の場合にアラームを指定の表示端末に表示し、他の場合にアラームを非表示にすることができる。
【0025】
操業データ収集手段12が収集する操業データには、表示端末4,5の識別情報が含まれているので、アラーム抑制機能14にあらかじめ表示端末4,5の識別情報を設定することができ、アラームを表示する表示端末を設定することができる。
【0026】
操業データ収集手段12が収集する操業データには、表示端末4,5の識別情報のほか、ログインしているオペレータのID番号等の情報を含まれている。アラーム抑制機能14は、オペレータOP1~OP3のID番号等にもとづいて、アラームごとの表示有無があらかじめ設定されており、ログインしているオペレータに応じてアラーム表示の有無を設定することができる。
【0027】
実施形態のプラント操業支援装置10の動作について説明する。
図2は、実施形態のプラント操業支援装置で参照されるデータベースの一例を示す模式図である。
図2に示したデータベース20は、データ蓄積手段13に記憶されている。図2に示すように、データベース20は、複数の欄22a~22kを有している。複数の欄22a~22kのうち、欄22c,22dのほかは、あらかじめ値やデータが設定されている。アラーム抑制機能14は、データベース20を読み出して、欄22a~22kに設定されたデータにもとづいて、アラームの表示、非表示を決定する。
【0028】
欄22aには、アラーム番号が設定されている。設定されるアラームは、PLC1,2,3が生成し、発報することができるすべてのアラームである。アラーム番号は、PLC1,2,3に設定されたアラームと1対1に対応するように設定されており、それぞれ識別されることができる。欄22bのシンボルは、表示されたときにアラームの内容がわかるように任意に設定することができる。
【0029】
欄22cには、アラームビットが設定される。アラームビットは、どのアラーム番号を有するアラームが発報されたかを表している。この例では、アラーム番号:1のアラームが発報され、他のアラーム番号を有するアラームは、発報されていないことを表している。欄22dには、アラームビットが1に設定された時刻が格納される。
【0030】
欄22eには、アラームの重要度が設定される。この例では、3レベルの重要度が設定されており、たとえば、重要度がもっとも高い“H”では、欄22fに設定された表示選択ビットが“1”であるか“0”であるかにかかわらず、アラームを表示する。また、欄22g,22hでは、表示端末の選択、表示オペレータの選択について設定がなされるが、重要度“H”の場合には、欄22f,22gの設定にかかわらずすべての表示端末4,5およびすべての表示オペレータに対してアラームを表示するようにしてもよい。また、重要度“H”の場合には、後述する操業条件判定をスキップして、アラームを表示する。重要度“H”のアラームは、アラーム抑制機能14によって非表示とされることが禁止される場合に設定される。たとえば、重要度“H”のアラームが発報される場合とは、製造ラインの一部を停止して、緊急に点検等を要する事象等が該当する。実施形態のプラント操業支援装置10では、アラーム抑制機能14によって、重要度“H”のアラームが発報された場合に、他のアラームの発報を抑制して、オペレータが、確実に緊急点検等の非常行動をとることができるようにする。
【0031】
他の重要度“M”、“L”の場合には、欄22fに設定された表示選択ビットが“1”の場合に、アラームを表示し、表示選択ビットが“0”の場合に、アラームを非表示にする。重要度については、3レベルに限ることなく、2レベルでもよいし、4レベル以上としてもよい。レベル数にかかわらず、もっとも高い重要度のアラームは、アラーム抑制機能14によらず、設定された表示端末、表示オペレータに応じて、表示される。
【0032】
欄22gには、受信したアラームをどの表示端末4,5に表示するかを選択するデータが設定されている。アラーム番号:1を有するアラームを受信した場合には、表示端末4,5の両方にアラームを表示する。アラーム番号:2を有するアラームを受信した場合には、表示端末4にアラームを表示する。アラーム番号:3を有するアラームを有するアラームを受信した場合には、表示端末5にアラームを表示する。上述のように、設定された重要度に応じて、この欄22gの設定と異なる表示とするようにしてもよい。
【0033】
欄22hには、表示オペレータのID番号に応じたデータが設定される。表示オペレータとは、表示端末4,5にログインしたオペレータをいう。表示オペレータのID番号には、オペレータの役職や職種が紐づけられている。ID番号は、社員番号のようにオペレータにあらかじめ付与されており、すでに役職等が紐づけられているものを利用してもよいし、別途ID番号と役職等に紐づけて用いるようにしてもよい。プラント操業支援装置10では、ログインしたID番号に紐づけられた役職等に応じて、表示されるアラームを設定することができる。
【0034】
この例では、アラーム番号:1を有するアラームの場合には、マネージャを表す“M”およびエンジニアを表す“E1”が設定されている。この例のように、エンジニアも職種に応じて、たとえば“E1”、“E2”のように、識別できるようにしてもよい。アラーム番号:2を有するアラームの場合には、エンジニア“E1”が設定されている。アラーム番号:3を有するアラームの場合には、すべての職種のエンジニアを表す“E”が設定されている。
【0035】
この例では、プラント操業支援装置10は、アラーム番号:1を有するアラームを受信した場合には、表示端末4,5にログインしているオペレータのID番号がマネージャ“M”またはエンジニア“E1”に紐づけられているときに、アラームを表示することを許可する。プラント操業支援装置10は、アラーム番号:2を有するアラームを受信した場合には、表示端末4,5にログインしているオペレータのID番号がエンジニア“E1”に紐づけられているときに、アラームを表示することを許可する。プラント操業支援装置10は、アラーム番号:3を有するアラームを受信した場合には、表示端末4,5にログインしているオペレータのID番号がすべてのエンジニア“E”に紐づけられているときに、アラームを表示することを許可する。
【0036】
表示オペレータの区別は、上述のほか、階層的な区分としてもよいし、上述の区分に階層的な区分を組み合わせてもよい。たとえば、マネージャ“M”に設定された場合には、すべてのエンジニア“E”の表示レベルを含むようにしてもよい。役職等や階層的な区分のほか、タイムシフトで勤務するオペレータに対して、タイムシフトごとにアラームの表示、非表示を異ならせるようにしてもよい。
【0037】
欄22kには、選択された表示端末4,5に出力するメッセージのテキストデータが格納されている。この例では、テキストデータとしているが、音声ファイルや画像ファイル、動画ファイル等を設定することによって、設定された音声や画像、動画を表示端末4,5に出力するようにしてもよい。
【0038】
上述したように、欄22eに設定される重要度データは、重要度に応じて表示選択や表示端末、表示オペレータの設定にかかわらず、全表示端末および全表示オペレータに対して強制的に表示するようにしてもよい。
【0039】
図3は、実施形態のプラント操業支援装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
図3を用いて、アラーム抑制機能14の一連の動作について説明する。
図3には、PLC1,2,3のいずれかでアラームが発報された場合のアラーム抑制機能14の動作フローが示されている。アラーム抑制機能14は、データベース20を参照して、発報されたアラームのアラーム番号に対応するデータセットを抽出する。データセットとは、アラーム番号に対応する各欄22b~22kに格納されたデータの組である。なお、アラーム抑制機能14は、アラームを受信したアラーム番号に対応するアラームビット(欄22c)に“1”を入力し、欄22dに発報時刻を記録する。
【0040】
図3に示すように、ステップS1において、アラーム抑制機能14は、抽出したデータセットの欄22fを参照して、データが“1”の場合には、処理を次のステップS2に遷移させる。アラーム抑制機能14は、欄22fのデータが“0”の場合には、アラームを非表示とすることに決定し、処理を終了する。処理の終了後は、アラーム抑制機能14は、次のアラームが発報されるまで待機する。
【0041】
ステップS2において、アラーム抑制機能14は、抽出したデータセットの欄22gを参照して、受信したアラームを表示する表示端末4,5を選択する。たとえば、図2に示したデータベース20において、アラーム番号:1を有するアラームを受信した場合には、アラーム抑制機能14は、2つの表示端末4,5(図2では表示端末A,Bと表記)にアラームを表示可能とする。アラーム番号:3を有するアラームを受信した場合には、アラーム抑制機能14は、表示端末5(図2では表示端末Bと表記)にアラームを表示可能とし、表示端末4には、アラームを非表示する。なお、抽出したデータセットに表示すべき表示端末が設定されていない場合には、アラーム抑制機能14は、アラームを非表示にして処理を終了する。
【0042】
ステップS3において、アラーム抑制機能14は、抽出したデータセットの欄22hを参照して、受信したアラームがどのオペレータOP1~OP3の役職等に対して表示を許可されているかを判定する。たとえば、図2に示したデータベース20において、アラーム番号:1を有するアラームを受信した場合には、アラーム抑制機能14は、表示端末4,5にログインしているオペレータOP1~OP3の役職等が“M”または“E1”である場合には、表示端末4,5の両方に、アラームを表示する。アラーム番号:3を有するアラームを受信した場合には、アラーム抑制機能14は、表示端末5にログインしているオペレータOP1~OP3のID番号がすべての職種のエンジニア“E”であることを表しているときに、表示端末5(図2では表示端末Bと表記)にアラームを表示する。エンジニア“E”が表示端末5以外の表示端末にログインしている場合には、アラームを非表示にして、アラーム抑制機能14は、処理を終了する。
【0043】
ステップS4において、アラーム抑制機能14は、操業データ収集手段12によって収集された操業データを参照して、受信したアラームの表示可否を判定する。操業条件判定においては、アラーム抑制機能14は、1つ以上の操業データを用いて、アラームの表示可否を判定する。
【0044】
操業条件判定の方法について説明する。
図4は、実施形態のプラント操業支援装置で参照されるテーブルの一例を示す模式図である。
図4には、操業条件判定用のテーブル24の一例が示されている。このテーブル24は、たとえばデータ蓄積手段13に記憶されており、アラーム抑制機能14は、ステップS4を実行する際に、データ蓄積手段13にアクセスしてテーブル24を参照する。アラーム抑制機能14は、データ蓄積手段13から読み出したテーブル24を図示しない一時記憶装置等に格納し、一時記憶装置等に格納されたデータを参照するようにしてもよい。
【0045】
図4に示すように、テーブル24は、複数の欄26a~26eを有している。欄26aには、操業条件番号のデータが格納されている。操業条件番号とは、操業データ収集手段12によって収集された操業データごとにあらかじめ付与されている番号であり、操業データを識別するために設けられている。欄26bには、操業条件番号を付与された操業データを容易に判別できるように任意の記号等によってシンボルが格納されている。シンボルは、HMI画面上で用いている用品のシンボル等を用いてもよい。
【0046】
欄26cには、アクティブフラグが設定されている。アクティブフラグは、対応する操業条件番号の操業データがアクティブ、すなわち正常であることを示している。アクティブフラグのデータが“1”のときに、アラーム抑制機能14は、その操業条件番号に対応する操業データが正常であることを表している。アクティブフラグのデータが“0”のときには、アラーム抑制機能14は、その操業条件番号に対応する操業データが何らかの異常状態にあることを表している。
【0047】
アラーム抑制機能14は、テーブル24を用いて、複数の操業データのアクティブフラグの論理演算を行い、演算結果が“1”のときにアラームを表示し、演算結果が“0”のときにアラームを非表示にする。なお、欄26dには、操業条件番号に対応する操業データに関する事項がテキストデータでコメントとして格納されている。欄26dに任意のテキストデータを入力することによって、その操業データがアクティブである場合の状態を容易に認識することができる。
【0048】
図4の例では、操業条件番号000001~000004の4つの操業データのアクティブフラグの論理演算を欄26eを用いて行うようにしている。この例の論理演算をシンボルで示すと、以下のようになる。
[{(aaaaa)AND(bbbbb)}OR(ccccc)]AND(ddddd)
【0049】
この例では、「電源断」となる場合には、論理演算の結果は、すべて“0”となる。ここで設定される電源は、「電源断」となることによって、電源断以外の大量のアラームが各PLC1,2,3によって生成されるようなものが選定される。つまり、この電源が「電源断」となった場合には、直接的な「電源断」アラームのみを表示することとし、他のアラームをアラーム抑制機能14のステップS4の操業条件判定でフィルタリングすることを目的とする。なお、この電源に直接的に関連するアラームは、重要度が“H”に設定されており、上述のテーブル24によって、非表示とされたアラームにかかわらず、アラームの表示がされる。
【0050】
たとえば、操業条件000004を付与された電源に関する情報は、図2に示したデータベース20において、重要度を“H”に設定されている。そのため、この電源が「電源断」となった場合には、ステップS1において、表示選択ビットに設定にかかわらず、設定された表示端末にアラーム表示される。
【0051】
このようにして、実施形態のプラント操業支援装置10は、大量に発報され得るアラームをアラーム抑制機能14によって、操業データも参照しながらフィルタリングし、必要なアラームを必要な表示端末に表示するようにすることができる。
【0052】
上述では、ステップS1からステップS4までをこの順序で実行する場合について説明したが、各ステップS1~S4の実行順序は、これに限らず、どの順序で実行してもよい。
【0053】
次に、実施形態のプラント操業支援装置10のアラーム登録手段16の機能について説明する。
図5は、実施形態のプラント操業支援装置で参照されるデータベースの一例を示す模式図である。
図5には、データベース20aを表す模式図が示されている。このデータベース20aは、図2において説明したデータベース20にデータを追加することにより生成されたものである。欄22bに格納されたシンボルは、図2の欄22bのシンボルであり、図2の欄22aのアラーム番号に対応している。また、欄22kの出力メッセージも図2の欄22kの出力メッセージである。つまり、データベース20aの欄22m~22xは、データベース20の各アラーム番号に対応するように、事後的に追加されたデータが格納される。
【0054】
図5に示すように、データベース20aは、欄22m~22xを有している。欄22m~22xには、アラームが発報され、表示された場合に、アラームの発報要因、つまり、事故等の原因調査を行った結果がテキストデータで格納されている。プラント操業支援装置10のオペレータは、アラームの要因や実際に行った対応方法をアラーム番号ごとに入力することができる。オペレータは、データベース20aにアクセスして、アラーム番号を指定することによって、そのアラーム番号を有するアラームが発報されたときの処置等を参照することができる。
【0055】
アラーム登録手段16を用いたアラームの要因および対応方法の登録方法について説明する。
図6は、実施形態のプラント操業支援装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
図6には、アラーム登録手段16によるデータベース20aの更新手順が示されている。
図6に示すように、ステップS11において、オペレータによってアラームが選択され、アラーム登録手段16によって、データベース20aから選択されたアラーム番号を有するアラームのデータセットが抽出される。
【0056】
ステップS12において、アラーム登録手段16は、抽出されたデータセットのうち、欄22k~22xの内容を表示端末4,5に表示する。たとえば画面出力手段17によって、表示端末4,5への表示の形態が決定される。
【0057】
ステップS13において、オペレータは、データベース20aの欄22m~22xへのデータの新規登録か否かを選択し、アラーム登録手段16は、新規登録の場合には、次のステップS14に処理を遷移させ、新規登録でない場合には、処理を終了する。
【0058】
ステップS14において、アラーム登録手段16は、登録画面を表示する。登録画面は、データベース20aの欄22m~22xにデータを入力するためのインタフェース画面画面である。登録画面は、たとえば、画面出力手段17に設定された形態で表示端末4,5に表示される。
【0059】
ステップS15において、オペレータは、登録画面にしたがって、アラームの発生要因や対応方法を実際の故障解析等の結果にもとづいて入力する。アラーム登録手段16は、入力されたテキストデータ等を一時的に記憶する。
【0060】
ステップS16において、アラーム登録手段16は、一時的に記憶したテキストデータ等で、データベース20aを更新し、処理を終了する。
【0061】
このようにして、実施形態のプラント操業支援装置10では、発報されたアラームについて、発生要因等を記録として残すようにすることができる。
【0062】
アラーム抑制学習機能15の動作について説明する。
アラーム抑制学習機能15は、アラーム登録手段16の動作に連動して、機能させることができる。アラーム抑制学習機能15は、図6に示したステップS16においてアラーム登録手段16がデータベース20aの更新を行う際に動作する。
【0063】
具体的には、アラーム抑制学習機能15では、1つのアラーム番号を有するアラームが発報され、複数回にわたって、そのアラームについてデータベース20aの更新がなされた場合に、あらかじめ入力されているデータを修正する。
【0064】
より具体的には、たとえば図2のデータベース20のアラーム番号:3を有するアラームが発報され、伝送ネットワークの伝送障害があり、ネットワーク調査のみを行って、データベース20aを更新した以降に、同じアラームが発報された後の処置である。同一の処置をしたことをデータベース20aに入力して更新すると、アラーム抑制学習機能15は、図2に示した欄22eの重要度を“L”から“M”に自動的に修正してデータベース20aを更新する。その後さらに同じアラームが発報され、データベース20aのデータを更新すると、欄22eの重要度を“M”から“H”に引き上げる。この場合に、欄22kの出力メッセージに、たとえば「再調査要」のように表示するようにしてもよいし、重要度を“H”に引き上げた際、あるいは、その後さらに同じアラームが発報された際のデータベース20a更新時に、図3に示したアラーム抑制機能14の各フィルタリング機能をキャンセルして、条件によらずにアラームを表示させるようにしてもよい。
【0065】
このようにして、プラント操業支援装置10では、アラーム抑制学習機能15によって、アラーム登録手段16によって入力され更新された情報にもとづいて、アラーム抑制学習機能15の動作をより適切になるように、好ましくは最適になるように修正する。
【0066】
実施形態のプラント操業支援装置10は、演算処理装置および記憶装置を備えたコンピュータ装置であってもよい。プラント操業支援装置10をコンピュータ装置で実現するには、演算処理装置が、記憶装置に記憶されたプログラムの各ステップを読み出して逐次実行することによって実現される。上述したアラーム収集手段11、操業データ収集手段12、アラーム抑制機能14、アラーム登録手段16、アラーム抑制学習機能15および画面出力手段17の一部または全部は、プログラムで実行されるステップにより実現される。プログラムは、データ蓄積手段13に記憶してもよいし、データ蓄積手段13とは別の記憶装置に記憶してもよい。
【0067】
実施形態のプラント操業支援装置10の効果について説明する。
実施形態のプラント操業支援装置10は、アラーム収集手段11およびアラーム抑制機能14を備えており、PLC1,2,3によって発報されたアラームを一旦収集し、アラーム抑制機能14に設定された判定基準に合致するアラームを表示する。そのため、大量にアラームが発報されても、アラーム抑制機能14によって表示することが適切なアラームを判定し、選択して表示することができる。PLC1,2,3については、何らの改造も要しない。また、PLC1,2,3以外の鉄鋼製造制御システム100に接続されている表示端末4,5等の各種装置等についても何ら変更、改造等を要しない。
【0068】
実施形態のプラント操業支援装置10は、操業データ収集手段12を備えており、想定される操業条件を操業データの組み合わせによって把握することが可能になる。操業条件に応じて、アラームの表示と非表示を判定することによって、特定の装置等の故障等によって発生する可能性のある大量のアラームの表示を抑制して、特定の装置等の故障等によって発報されたアラームが埋もれてしまう状況を回避することができる。
【0069】
より具体的には、プラント操業支援装置10では、不要なアラームの表示を抑制するためにあらかじめ設定されたデータベース20を参照することができ、データベース20には、PLC1,2,3が発報するアラームごとに付与されたアラーム番号に応じて、アラーム表示の有無を設定できる。そのため、不要なアラームは、初期的に排除される。
【0070】
プラント操業支援装置10のデータベース20には、アラーム番号ごとのアラーム表示の有無のほか、アラームを表示する表示端末4,5の設定や、表示端末4,5にログインしているオペレータOP1~OP3に応じて、アラームの表示を選択的に設定することできる。そのため、表示端末単位およびログインオペレータ単位でアラームの表示の有無が設定され、必要なアラームをより適切な対象に表示させることができる。
【0071】
アラーム抑制機能14では、収集された操業データを用いて、操業状況に応じてアラームの表示の有無を決定でき、操業データによる操業条件の決定には、論理演算を用いるので、確実にアラームの表示を排除したい条件を抽出することができる。
【0072】
プラント操業支援装置10は、さらにアラーム登録手段16を備えることができるので、発報されたアラームに関する情報を事後的に入力して、その後のアラーム発報時の処理等に役立てることができ、ひいては製造ラインの品質向上計画の立案や確認等に利用することもできる。
【0073】
プラント操業支援装置10は、さらにアラーム抑制学習機能15を備えることができるので、アラーム登録手段16によって登録、更新された情報や、初期的にデータベース20に入力されたデータや条件等が適切であるか否かを判定して、より適切な条件を設定するようにデータベース20aを更新することができる。
【0074】
以上説明した実施形態によれば、PLCが出力するアラームを、表示が必要なものと不要なものとに自動的に判定して、アラームによるシステム監視を容易にするプラント操業支援装置を実現することができる。
【0075】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0076】
1、2,3 PLC、4,5 表示端末、6 制御ネットワーク、10 プラント操業支援装置、11 アラーム収集手段、12 操業データ収集手段、13 データ蓄積手段、14 アラーム抑制機能、15 アラーム抑制学習機能、16 アラーム登録手段、17 画面出力手段、20,20a データベース、24 テーブル、100 鉄鋼製造制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6