(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】カーペット支持層組成物
(51)【国際特許分類】
A47G 27/02 20060101AFI20231108BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231108BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231108BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20231108BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20231108BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20231108BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20231108BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20231108BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20231108BHJP
D06N 7/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A47G27/02 102
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/26
C08K3/30
C08K3/34
C08K3/36
C08K3/40
C08L23/00
D06N7/00
(21)【出願番号】P 2020500831
(86)(22)【出願日】2018-07-03
(86)【国際出願番号】 EP2018067966
(87)【国際公開番号】W WO2019011725
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-04-05
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】512280873
【氏名又は名称】タルケット・ゲーデーエル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・バスタン
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/132879(WO,A1)
【文献】特開平10-276888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 27/00 - 27/06
B32B 1/00 - 43/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
D06M 13/00 - 15/715
D06N 1/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーペット支持層組成物であって、
-少なくとも10重量%~50重量%以下の半結晶性ポリオレフィン又は2つ以上の半結晶性ポリオレフィンのブレンドであって、前記半結晶性ポリオレフィン又は前記半結晶性ポリオレフィンのブレンドは、(共)重合C2オレフィンの重量パーセントが50未満であり、(共)重合C3~C8アルファオレフィンの重量パーセントが50以上であることを特徴とする、半結晶性ポリオレフィン又は2つ以上の半結晶性ポリオレフィンのブレンドと、
-ISO 13320によるレーザー光散乱測定から得られる、少なくとも10μm~最大1000μmの体積平均粒径(D50)を特徴とする、50重量%以上~最大90重量%の1つ以上の無機充填剤と、
を含み、
前記カーペット支持層組成物(充填剤が含まれる)は、10~40℃の温度範囲内の融解熱(ΔH
10→40℃)が、10~170℃の温度範囲内の前記カーペット支持層組成物(充填剤が含まれる)の融解熱(ΔH
10→170℃)の12.5%未満を有し、前記融解熱は示差走査熱量計で測定される、カーペット支持層組成物。
【請求項2】
前記半結晶性ポリオレフィン又は前記半結晶性ポリオレフィンのブレンドは、ASTM D2240による、少なくとも65のショアA硬度を有する、請求項1に記載のカーペット支持層組成物。
【請求項3】
前記1つ以上のポリオレフィンのC3~C8アルファ-オレフィンは、プロペン、1-ブテン、1-オクテン又はこれらの組み合わせである、請求項1又は2に記載のカーペット支持層組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、プロペン-エテンコポリマー、プロペン-1-ブテンコポリマー、1-ブテン-エテンコポリマー、プロペン-1-ブテン-エテンコポリマー及び1-オクテン-エテンコポリマーからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のカーペット支持層組成物。
【請求項5】
前記無機充填剤は、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、重晶石(硫酸バリウム)、ボーキサイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン、シリカ、ガラス、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のカーペット支持層組成物。
【請求項6】
ワックス、油及び粘着付与剤からなる群から選択される1つ以上の加工添加剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のカーペット支持層組成物。
【請求項7】
前記加工添加剤が、前記半結晶性ポリオレフィン部分又は前記半結晶性ポリオレフィンのブレンド部分の80重量%以下と置き換えられる、請求項6に記載のカーペット支持層組成物。
【請求項8】
前記加工添加剤が、前記半結晶性ポリオレフィン部分又は前記半結晶性ポリオレフィンのブレンド部分の45重量%以下と置き換えられる、請求項
6に記載のカーペット支持層組成物。
【請求項9】
ISO 11443による回転式粘度計での160℃での溶融粘度が10Pas~5000Pasであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のカーペット支持層組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のカーペット支持層組成物を含むカーペット支持層を含むカーペット。
【請求項11】
前記カーペット支持層は、1600~4000g/m
2の表面密度、及び0.4~4.0mmの層の厚さを有する、請求項10に記載のカーペット。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のカーペットを作製する方法であって、
a)請求項1~9のいずれか一項に記載のカーペット支持層組成物を、一次支持材料の裏側に押出しコーティングすることであって、前記一次支持材料は表側及び裏側を有し、複数の繊維は前記一次支持材料に取り付けられ、前記表側から伸長し、前記裏側に露出されることと、
b)前記カーペット支持層組成物を冷却し、前記カーペット支持層を形成することと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記押出しコーティングは、130~170℃の温度で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程a)の前記押出しコーティングされたカーペット支持層組成物を、工程b)で冷却する前に、130~170℃の温度で、1~60秒の時間、その後の熱処理にかける更なる工程を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペット支持のための組成物、特にポリオレフィンと充填剤とを含む組成物に関する。又、本発明は、カーペット支持組成物を含むカーペット、及びカーペット支持組成物を含むカーペットを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの従来のカーペットは、一次支持層から上方に延びる切断された又は切断されていないループの形態の繊維タフトを備えた一次支持層と、一次支持層の裏側の二次支持層とを含む。
【0003】
(特許文献1)は、タフト及びフィラメントが未完成のカーペットに結合するプロセスを開示しており、これは、タフト及びフィラメントを未完成のカーペットに結合するために、20~1,500g/m2のコーティング重量で未完成のカーペットの裏側への溶融物として、50~100重量%の1つ以上の実質的に非晶質のポリ-アルファ-オレフィンを含むコーティング組成物を塗布することを含み、この場合に、190℃でのコーティング組成物の溶融粘度は200mPas~20,000mPasである。
【0004】
ポリ-アルファ-オレフィンは、0~100重量%の4~10の炭素原子を有する1つ以上のアルファ-オレフィン、0~100重量%のプロペン及び0~20重量%のエテンの重合モノマー単位を含む。
【0005】
コーティング組成物は、0~5重量%の結晶性ポリオレフィン、0~35重量%の充填剤又は顔料、及び0~15重量%のワックスの1つ以上を更に含む。
【0006】
(特許文献2)は、
-一次支持材料と、
-一次支持材料に取り付けられた複数の繊維と、
-接着剤組成物と、
を含むカーペットを開示しており、この場合に、接着剤組成物は、50%以上の短鎖分岐分布指数を有することを特徴とする少なくとも1つの均一に分岐したエチレンポリマーと、組成物の1~75重量パーセントの量の充填剤とを含み、接着剤組成物は、繊維を実質的に通過し実質的に固化する。好ましくは、エチレンポリマーは実質的に非晶質又は完全に非晶質である。充填剤の代表例には、これらに限定されないが、石灰岩(主にCaCO3)、大理石、石英、シリカ、及び重晶石(主にBaSO4)が含まれる。適切な粒径は、約1~約50μmの範囲である。
【0007】
(特許文献3)は、
-(C)0~30重量部の結晶性ポリプロピレンとともに(A)50~90重量%の非晶性ポリオレフィンと(B)10~50重量%の粘着付与剤(例えば、天然ロジン又は変性ロジン)から構成される100重量部の樹脂成分と、
-炭酸マグネシウムを含む25~900重量部の充填剤と、
をブレンドすることにより得られる、タイルカーペットを支持するための樹脂組成物を開示している。MgCO3充填剤の粒径は、1~500μm、好ましくは10~300μmである。ポリオレフィンは、エチレンとプロピレンのランダムコポリマーであり得、この場合に、エチレン含有量は0~30重量%である。
【0008】
(特許文献4)は、
-表側と裏側を有する一次支持層と、
-一次支持層に取り付けられた複数の繊維と、
-少なくとも約60重量%のプロピレン誘導単位と約5~約25重量%のエチレンを誘導単位とを含む、結晶化度が制限された少なくとも1つのプロピレン系エラストマーを含む、一次支持層の裏側に取り付けられた第2の層と、
を含むカーペットを記載している。支持層は、層の総重量に基づいて、最大80重量%の有機及び/又は無機充填剤を含み得る。適切な充填剤は、とりわけ、炭酸カルシウム、アルミニウム三水和物、タルクである。
【0009】
(特許文献5)は、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーと、充填剤とを含むポリマー組成物を開示している。エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーは、一定量の結晶化度を有するブロックコポリマーであり、充填剤は、好ましくは3.2~8μmの粒径を有し、30~95%の量でポリマー組成物に存在する。ポリマー組成物は、自動車の床材用途に使用できる。
【0010】
(特許文献6)は、床カバーのためのポリオレフィンを開示しており、この場合に、ポリオレフィンは、20重量%以下のエチレン、70~100重量%又は20重量%以下のプロピレン及び/又は70~100重量%又は20重量%以下の1-ブテン又は別の直鎖1-オレフィンを含み、比率の合計は100重量%であり、13C-NMRで決定されたプロペントライアドのトライアド分布は、アイソタクチック比率が75~98重量%、アタクチック比率が20重量%未満、及びシンジオタクチック比率が20重量%以下であり、及び/又は、13C-NMRで決定された1-ブテントライアドのトライアド分布は、アイソタクチック比率が10~98重量%、アタクチック比率が1~85重量%、及びシンジオタクチック比率が20重量%以下である。ポリオレフィンは、ポリオレフィンと充填剤とを含むホットメルト配合物に基づいて、80重量%以下の無機及び/又は有機と混合することができる。
【0011】
(特許文献7)は、
(a)一次支持層と、
(b)一次支持層に取り付けられた複数の繊維と、
(c)一次支持層の裏側に取り付けられた第2の層と、
を含むカーペットを開示しており、この場合に、一次支持層と第2の層の少なくとも1つは、
(i)第1のプロピレン系ポリマーであって、第1のプロピレン系ポリマーは、プロピレンのホモポリマー、又はプロピレンとエチレンのコポリマー、又はC4~C10アルファ-オレフィンである第1のプロピレン系ポリマーと、
(ii)第2のプロピレン系ポリマーであって、第2のプロピレン系ポリマーは、プロピレンのホモポリマー、プロピレンとエチレンのコポリマー、又はC4~C10アルファ-オレフィンであり、第2のプロピレン系ポリマーは、第1のプロピレン系ポリマーとは異なる、第2のプロピレン系ポリマーと、
を含むポリマーブレンドを含み、ポリマーブレンドは、ASTM D-3236に従って190℃で測定された約500~約25,000cPの溶融粘度を有する。層のいずれか1つは、充填剤及び/又は添加剤を含むことができる。充填剤は、層の総重量に基づいて、最大約80重量%で存在し得る。ポリマーブレンドは、5J/g~90J/g未満の融解熱と、0℃超且つ110℃未満の結晶化温度を有し得る。
【0012】
(特許文献8)は、
(a)エラストマーポリマーを含む、10~50重量%の第1のポリマー成分と、
(b)50~90重量%の充填材と、
(c)第1のポリマー成分と充填剤を結合するフリーラジカル源を提供する、0.1~5重量%の相溶化剤と、
を含むカーペット支持組成物を開示している。充填剤は、フライアッシュ、すりガラス、炭酸カルシウム、タルク、粘土、又はこれらの組み合わせを含む。第1のポリマー成分は、
-75~95重量%のプロピレン誘導単位、及びエチレン又はC4~C12アルファ-オレフィンの少なくとも1つから誘導された約5~25重量%の単位、
-DSCにより決定される、約75J/g以下の融解熱、
-2~65のパーセント結晶化度を有するプロピレン系コポリマーである。
組成物は、第2のポリマー成分を更に含み得る。第2のポリマー成分は、官能化/修飾ホモポリマーなどのホモポリマー、官能化/修飾コポリマーなどのコポリマー、オリゴマー、官能化/修飾炭化水素粘着付与樹脂などの炭化水素粘着付与樹脂、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0013】
カーペットは、使用中に、寸法の安定性を危険に曝す周囲の温度及び湿度の変化などの大気の変動を受けやすい。寸法の不安定性を改善し、カールを防ぐためには、柔軟な支持材が不可欠であるが、支持層を形成するポリマーの柔軟性は、充填剤と添加剤の添加によって悪影響を受けることが一般的に知られている。例えば、耐火性などの、経済的な理由と性能上の理由の両方で、充填剤が配合に加えられる。
【0014】
ポリオレフィン/充填剤ブレンドの柔軟性に対する充填剤の悪影響は、前述の充填剤の粒径に依存しこれに比例する。その他の点では、ポリオレフィンの局所的な過熱を引き起こし、ポリマー組成に依存し、過酸化物により開始された架橋による粘度の増加、又は鎖の切断による支持層の物理的特性の損失をもたらすポリマーの劣化を引き起こすため、低い粒径の充填剤は、ブレンドの加工に悪影響を及ぼす。
【0015】
特に、高いレベル(重量で50%超)のエテンを含むポリマーは、架橋劣化により高温処理中に粘度が増加し、特に高充填化合物の場合、処理性能が低下する。反対に、高いレベルのC3~C8モノマーを含むポリマーは、熱処理中に架橋する傾向がない。更に、多量の低い粒径の充填剤は、未完成のカーペットへの支持層の接着に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許出願公開第2004/0052952号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0280093号明細書
【文献】特開平5-132870号公報
【文献】米国特許出願公開第2014/0017439号明細書
【文献】米国特許第7,741,397号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0285246号明細書
【文献】国際公開第2015/100073号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2016/0102429号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、従来技術のカーペット支持層の欠点を示さないカーペット支持層を提供することを目的とする。更なる態様では、大気条件に依存しない寸法安定性を示すカーペットの製造を可能にするカーペット支持層を提供することが本発明の目的であり、カーペット支持層は問題のないプロセスによって適用可能である。本発明の更なる態様の目的は、カーペット自体に加えてカーペット支持層を含むカーペットの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の態様によれば、本発明は、
-少なくとも10重量%~50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、最も好ましくは20重量%以下の半結晶性ポリオレフィン又は2つ以上の半結晶性ポリオレフィンのブレンドであって、前述のポリオレフィン又は2つ以上のポリオレフィンのブレンドは、(共)重合C2オレフィンの重量パーセントが50未満であり、C3~C8アルファオレフィンの重量パーセントが50以上であることを特徴とする半結晶性ポリオレフィン又は2つ以上の半結晶性ポリオレフィンのブレンドと、
-ISO 13320によるレーザー光散乱測定から得られる、少なくとも10μm、好ましくは20μm超、より好ましくは50μm超、最も好ましくは100μm超、又は更には200μm超~最大1000μmの体積平均粒径(D50)を特徴とする、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上~最大90重量%の1つ以上の無機充填剤と、を含むカーペット支持層組成物に関し、カーペット支持層組成物は、10~40℃の温度範囲内の融解熱(ΔH10→40℃)が、10~170℃の温度範囲内の融解熱(ΔH10→170℃)の12.5%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満であることを特徴とし、融解熱は示差走査熱量計で測定される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を開示する:
-ポリオレフィン又はポリオレフィンのブレンドは、ASTM D2240による、少なくとも65、好ましくは少なくとも70、より好ましくは少なくとも75、最も好ましくは少なくとも80、更には少なくとも85、又は更には少なくとも90のショアA硬度を有する、
-1つ以上のポリオレフィンのC3~C8アルファ-オレフィンは、C3~C8アルファ-オレフィンの異性体及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、
-1つ以上のポリオレフィンのC3~C8アルファ-オレフィンは、プロペン、1-ブテン、1-オクテン又はこれらの組み合わせである、
-ポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、プロペン-エテンコポリマー、プロペン-1-ブテンコポリマー、1-ブテン-エテンコポリマー、プロペン-1-ブテン-エテンコポリマー及び1-オクテン-エテンコポリマーからなる群から選択される、
-無機充填剤は、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、重晶石(硫酸バリウム)、ボーキサイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン、シリカ、ガラス、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、
-カーペット支持層組成物は、ワックス、油及び粘着付与剤からなる群から選択される1つ以上の加工添加剤を含む、
-カーペット支持層組成物は、
・少なくとも10重量%から50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、最も好ましくは20重量%以下のI、好ましくはII、より好ましくはIII、最も好ましくはIVと、
・ISO 13320によるレーザー光散乱測定から得られる、少なくとも10μm、好ましくは20μm超、より好ましくは50μm超、最も好ましくは100μm超、又は更には200μm超~最大1000μmの体積平均粒径(D50)を特徴とする、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上~最大90重量%の1つ以上の無機充填剤と、
を含み、
この場合に、
I.20重量%以上の1つ以上のポリオレフィンと、80重量%以下の1つ以上の加工添加剤とを含み、
II.25重量%以上の1つ以上のポリオレフィンと、75重量%以下の1つ以上の加工添加剤とを含み、
III.35重量%以上の1つ以上のポリオレフィンと、65重量%以下の1つ以上の加工添加剤とを含み、
IV.45重量%以上の1つ以上のポリオレフィンと、55重量%以下の1つ以上の加工添加剤とを含み、
-カーペット支持層組成物は、
・少なくとも10重量%から50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、最も好ましくは20重量%以下のV、好ましくはVI、より好ましくはVIIと、
・ISO 13320によるレーザー光散乱測定から得られる、少なくとも10μm、好ましくは20μm超、より好ましくは50μm超、最も好ましくは100μm超、又は更には200μm超~最大1000μmの体積平均粒径(D50)を特徴とする、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上~最大90重量%の1つ以上の無機充填剤と、
を含み
この場合に、
V.55重量%以上の1つ以上のポリオレフィンと、45重量%以下の加工添加剤とを含み、
VI.65重量%以上の1つ以上のポリオレフィンと、35重量%以下の1つ以上の加工添加剤とを含み、
VII.80重量%以上の1つ以上のポリオレフィンと、20重量%以下の1つ以上の加工添加剤とを含み、
-カーペット支持層組成物は、ISO 11443による回転式粘度計の160℃での溶融粘度が10Pas~5000Pas、好ましくは20Pas~2500Pas、より好ましくは50~500Pasであることを特徴とする。
【0020】
更なる態様では、本発明は、本発明のカーペット支持層組成物を含むカーペット支持層を含むカーペットに関する。
【0021】
本発明によるカーペットの好ましい特徴は、
-支持層は、1600~4000g/m2、好ましくは1700~3500g/m2、より好ましくは1800~3000g/m2、最も好ましくは1900~2500g/m2の表面密度を有することと、
-支持層の厚さは、0.4~4.0mm、好ましくは0.5~3.5mm、より好ましくは0.7~2.5mm、最も好ましくは0.8~2.0mmであることと、
を含む。
【0022】
本発明は、
a)本発明のカーペット支持層組成物を、一次支持材料の裏側に押出しコーティングし、前述の一次支持材料は表側及び裏側を有し、複数の繊維は一次支持材料に取り付けられ、表側から伸長し、裏側に露出される工程と、
b)カーペット層組成物を冷却し、カーペット支持層を形成する工程と、
を含む、カーペットを作製する方法を更に開示する。
【0023】
カーペットの作製方法の好ましい実施形態は、
-押出しコーティングは、130~170℃、好ましくは140~160℃の温度で行われること、
-更なる工程は、工程a)の押出しコーティングされたカーペット支持層組成物を、工程b)で冷却する前に、130~170℃、好ましくは140~160℃の温度で、1~60秒、好ましくは5~30秒、より好ましくは10~20秒の期間、その後の熱処理にかける工程を含むことを更に開示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明によれば、周囲条件と独立して、顕著な寸法安定性を示す、カーペットタイル及びカーペットロール用のカーペット支持層が提供され、前述のカーペット支持層は、半結晶性ポリオレフィン又は半結晶性ポリオレフィンのブレンド、1つ以上の充填剤、並びに任意選択的にワックス、油、粘着付与剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の化合物から得られる。
【0025】
本発明のカーペット支持層に使用されるポリオレフィンは、1つ以上のC2~C8オレフィンの重合から得られる。
【0026】
1つのポリオレフィンが使用される場合、前述のポリオレフィンは、50重量%以上の(共)重合C3~C8アルファオレフィンを含む。
【0027】
ポリオレフィンのブレンドを使用する場合、ポリオレフィンのブレンドは50重量%以上のC3~C8アルファ-オレフィンを含むという条件で、1つ以上の前述のポリオレフィンは、50重量%未満の(共)重合C3~C8アルファ-オレフィンを含み得る。
【0028】
(共)重合C3~C8アルファオレフィンは、好ましくはプロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、及び1-オクテンからなる群から選択される。
【0029】
イソペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、5-メチル-1-ヘキセン、3-メチル-1-ヘプテン、4-メチル-1-ヘプテン、5-メチル-1-ヘプテン、6-メチル-1-ヘプテン、3.3-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル1-ヘキセン、5,5-ジメチル-1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、3,5-ジメチル-1-ヘキセン、4,5-ジメチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、5-エチル-1-ヘキセン、3-メチル-4-エチル-1-ペンテン、3-エチル-4-メチル-1-ペンテン及び3-メチル-3-エチル-1-ペンテンからなる群から選択されるアルファ-オレフィンが任意選択的に使用される。
【0030】
好ましくは、C3~C8アルファ-オレフィンは、プロペン、1-ブテン、1-オクテン又はこれらの組み合わせである。
【0031】
好ましくは、ポリオレフィンは、ポリプロピレンホモポリマー又はプロピレン系コポリマーである。
【0032】
好ましくは、ポリオレフィンは、ポリブチレン-1ホモポリマー又は1-ブテン系コポリマーであり、より好ましくは、ポリオレフィンは、1-ブテン系コポリマーである。
【0033】
プロピレン系コポリマーは、プロピレン系コポリマーの総重量に基づいて、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上、又は更には90重量%以上のプロピレン誘導単位を含む。同様に、エチレン又はC4~C8アルファ-オレフィンの少なくとも1つから誘導される単位は、プロピレン系コポリマーの重量に基づいて、50重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは30重量%未満、最も好ましくは20重量%未満、又は更には10重量%未満の量で存在し得る。
【0034】
1-ブテン系コポリマーは、1-ブテン系コポリマーの総重量に基づいて、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上の1-ブテン誘導単位を含む。同様に、エチレン、プロピレン、又はC5~C8アルファ-オレフィンの少なくとも1つから誘導される単位は、1-ブテン系コポリマーの重量に基づいて、50重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは30重量%未満、最も好ましくは20重量%未満の量で存在し得る。好ましくは、1-ブテン系コポリマーは、85重量%未満の重合1-ブテンと、15重量%以上の重合プロペン及び/又はエテンとを含み、エテンの重量パーセントは50未満である。
【0035】
好ましくは、ポリオレフィンは、ポリプロピレン、プロペン-エテンコポリマー、プロペン-1-ブテンコポリマー、1-ブテン-エテンコポリマー、プロペン-1-ブテン-エテンコポリマー及び1-オクテン-エテンコポリマーからなる群から選択される。
【0036】
好ましくは、ポリオレフィンは50重量%未満の重合エテンを含む。
【0037】
ポリオレフィンのブレンドを使用する場合、ポリオレフィンのブレンドが50重量%未満のエテンを含むという条件で、1つ以上の前述のポリオレフィンは50重量%超の(共)重合エテンを含み得る。
【0038】
ポリオレフィン又はポリオレフィンブレンドは、
-75J/g以下、好ましくは70J/g以下、より好ましくは50J/g以下、最も好ましくは45J/g以下、又は更には35J/g以下、及び10J/g超、好ましくは20J/g超、より好ましくは25J/g超の融解熱(ΔHf)、
-20~160℃、好ましくは30~150℃、より好ましくは40~140℃の溶融ピーク温度が特徴である、半結晶性ポリオレフィン又はポリオレフィンブレンドであり、融解熱(ΔHf)及び溶融ピーク温度は、示差走査熱量測定(DSC)により10℃/分の加熱勾配で決定される。溶融ピーク温度は、DSC曲線のピークで決定される。融解熱(ΔHf)及び溶融ピーク温度の決定のために、ポリオレフィン又はポリオレフィンブレンドの試料は、初めに14℃の温度で48時間保存され、その後10℃/分の勾配で0℃の温度まで冷却される。0℃で5分後、DSC曲線を記録するために試料を10℃/分の加熱勾配で加熱する。
【0039】
ポリオレフィンは、更に好ましくは、ポリスチレン標準に対して、1,2,4-トリクロロベンゼンでのゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される、
-2,500~250,000g/モル、好ましくは10,000~250,000g/モル、より好ましくは25,000~200,000g/モルの数平均分子量(Mn)、
-1.5~20、好ましくは1.5~15、より好ましくは1.5~5、最も好ましくは1.8~約3、又は更には1.8~約2.5の多分散性(DP)が特徴である。
【0040】
好ましくは、ポリオレフィン又はポリオレフィンのブレンドは、ASTM D2240による、少なくとも65、好ましくは少なくとも70、より好ましくは少なくとも75、最も好ましくは少なくとも80、更には少なくとも85、又は更には少なくとも90のショアA硬度が更に特徴である。
【0041】
1つ以上のポリオレフィンに以下が任意選択的にブレンドされる:
-炭化水素は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族修飾脂肪族炭化水素、少なくとも1つの脂肪酸エステルで修飾された芳香族及び脂肪族炭化水素、又はこれらの任意の組み合わせを含む、少なくとも1つの炭化水素を含む粘着付与剤。炭化水素粘着付与剤の市販の例には、例えば、Escorez(商標)(Escorez 1102及び5600)(ExxonMobil Corp.)、及びStruktol(商標)TR016(Struktol Company of America)、及び/又はEastmann TackifiersのRegalite(Regalite 1090)が含まれる。粘着付与剤は水素化処理される場合とされない場合がある、
-微結晶ワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、ポリプロピレンワックス又はこれらの組み合わせから選択されるワックス。好ましくは、微結晶ワックス及び/又はポリプロピレンワックスを使用することができる。市販のワックスには、これに限定されないが、Sasolwax(登録商標)C80(Sasol)及びA-C(登録商標)1660(Honeywell)、及び/又はShellのMicrocrystalline Wax LMP又はMicrocriytalline Wax HMP、及び/又はAlphaのMMP Waxが含まれる、
-油、例えば、植物油及び誘導体化植物油、水素化処理された重ナフテン石油、パラフィン油又はこれらの組み合わせから選択される油を使用することができる。ナフテン油の市販の例は、KN 4006及びKN 4008(PetrochinaのKunLun Lubricant Company)及びLP 150及びLP 350(Kukdong Oil and Chemicals)及び/又はTotalのFinavestan 360 B及び/又はPetroCenterの加工油6116 WOPである。好ましくは、油は、化合物の臭いを最小限に抑えるために水素化処理されたパラフィンに基づく。
【0042】
任意選択的に、1つ以上の油及び/又は1つ以上のワックス及び/又は1つ以上の粘着付与剤を含む1つ以上のポリオレフィンに、石炭フライアッシュ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウムなどの炭酸塩、硫酸バリウム、カーボンブラック、金属酸化物、無機材料、天然材料、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ボーキサイト、タルク、雲母、重晶石、カオリン、シリカ、再生ガラス、又は産業用ガラス、合成及び天然繊維、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の充填剤が加えられる。好ましくは、充填剤は、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、重晶石、カオリン、シリカ、ガラス、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0043】
1つ以上の充填剤は、ISO 13320によるレーザー光散乱測定から得られる、10μm超、好ましくは20μm超、より好ましくは50μm超、最も好ましくは100超、又は更には200μm超~最大1000μmの体積中央粒径(D50)を特徴とする。
【0044】
レーザー回折の技術は、レーザービームを通過する粒子が、そのサイズに直接関係する角度で光を散乱させるという原理:大きな粒子は低い角度で散乱し、小さな粒子は高い角度で散乱する、に基づいている。レーザー回折は、球状粒子の形態を仮定して、フラウンホーファー近似及びミー理論によって正確に記述される。
【0045】
約1.0重量%の充填剤粒子を含む濃縮懸濁液が、適切な湿潤剤及び/又は分散剤を使用して調製される。適切な溶媒は、例えば、水、又は有機溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、オクタン又はメチルエチルケトンである。試料プレゼンテーションシステム(sample presentation system)により、試験対象の材料が、既知の再現可能な分散状態の均一な粒子流としてレーザービームを通過することが保証される。
【0046】
典型的には、粒径分布は、ISO 13320による(Horiba Scientific)の粒径分析装置(HORIBA 920)を使用したレーザー光散乱によって測定される。
【0047】
粒径の測定は、充填剤の濃度が粒径分析計で表示される透過率が75~90%になるまで、充填剤の濃縮懸濁液が一滴ずつ加えられる、純粋な溶媒、例えば、150mlのメチルエチルケトンにおいて行われる。
【0048】
従って、本発明のカーペット支持層は、
-ポリオレフィン又はポリオレフィンのブレンドは50以上の(共)重合したC3~C8アルファ-オレフィンの重量パーセントを有することを特徴とする、少なくとも10重量%から50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下の半結晶性ポリオレフィン又は2つ以上の半結晶性ポリオレフィンのブレンドと、
-ISO 13320によるレーザー光散乱測定から得られる、10μm超、好ましくは20μm超、より好ましくは50μm超、最も好ましくは100μm超、又は更には200μm超~最大1000μmの体積平均粒径(D50)を特徴とする、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上~最大90重量%の1つ以上の無機充填剤と、
を含む組成物を含み、支持層組成物は、10~40℃の温度範囲内の融解熱(ΔH10→40℃)が、10~170℃の温度範囲内の融解熱(ΔH10→170℃)の12.5%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満であることを特徴とし、融解熱は示差走査熱量計で測定される。
【0049】
融解熱のパーセントを決定するために、支持層組成物の試料は、配合後、まず14℃の温度で48時間保存され、その後10℃/分の勾配で0℃の温度まで冷却される。0℃で5分後、試料を10℃/分の加熱勾配で170℃の温度まで加熱することにより、融解熱が決定される。10~40℃の温度範囲内の融解熱(ΔH10→40℃)は、熱流束を前述の温度範囲に積分することにより決定される。
【0050】
カーペット支持層は、80重量%以下、有利には75重量%以下、有利には65重量%以下、有利には55重量%以下、有利には45重量%以下、有利には35重量%以下、有利には20重量%以下の半結晶性ポリオレフィン又は半結晶性ポリオレフィンのブレンドを置き換える1つ以上のワックス、油及び/又は粘着付与剤を更に含み得、従って、カーペット支持配合のポリオレフィン部分は、
-20重量%以上の1つ以上のポリオレフィン、並びに80重量%以下の1つ以上のワックス、油及び/又は粘着付与剤(混合物又はブレンドI)、
-25重量%以上の1つ以上のポリオレフィン、並びに75重量%以下の1つ以上のワックス、油及び/又は粘着付与剤(混合物又はブレンドII)、
-35重量%以上の1つ以上のポリオレフィン、並びに65重量%以下の1つ以上のワックス、油、及び/又は粘着付与剤(混合物又はブレンドIII)、
-45重量%以上の1つ以上のポリオレフィン、並びに55重量%以下の1つ以上のワックス、油及び/又は粘着付与剤(混合物又はブレンドIV)、
-55重量%以上の1つ以上のポリオレフィン、並びに45重量%以下の1つ以上のワックス、油及び/又は粘着付与剤(混合物又はブレンドV)、
-65重量%以上の1つ以上のポリオレフィン、並びに35重量%以下の1つ以上のワックス、油、及び/又は粘着付与剤(混合物又はブレンドVI)、
-80重量%以上の1つ以上のポリオレフィン、並びに20重量%以下の1つ以上のワックス、油、及び/又は粘着付与剤(混合物又はブレンドVII)に変換される。
【0051】
この特定の場合では、カーペット支持組成物は、
-少なくとも10重量%から50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下のI、II、III、IV、V、VI、又はVIIの混合物又はブレンドと、
-50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上~最大90重量%の1つ以上の無機充填剤と、
を含む組成物を含む。
【0052】
本発明者らは、カーペット支持組成物のそれぞれの構成成分の融解熱が、他の構成成分によってある程度影響を受けるが、完成したカーペット支持組成物の熱特性が、それから誘導されるカーペット支持層の寸法安定性において、つまり完成したカーペットにおいて決定的であることを認めた。
【0053】
粘着付与剤が本発明のカーペット支持組成物に使用される場合、それらは好ましくは1つ以上の油及び/又は1つ以上のワックスと組み合わせて使用される。本発明者らは、粘着付与剤自体の使用(=油及び/又はワックスなし)が、誘導されたカーペット支持層の寸法安定性に悪影響を及ぼすことを認めた。
【0054】
本発明者らは、ポリオレフィン又はポリオレフィンブレンドの唯一の部分的な代替物としてのワックスの使用が、誘導されたカーペット支持層の寸法安定性に悪影響を及ぼす可能性があることも認めた。
【0055】
本発明者らは、境界ショア硬度(65~70)及び境界融解熱(ΔHf約25J/g)を特徴とするポリオレフィン又はポリオレフィンブレンドにおいて、ワックス、油、及び粘着付与剤が、カーペット支持組成物で省略されることが好ましいことも認めた。
【0056】
本発明者らは、以下のことを見出した:
-ポリオレフィンにおける(共)重合C3~C8アルファ-オレフィンの重量パーセント、
-充填剤の重量パーセント及び粒径、
-並びにワックス、油、及び/又は粘着性付与剤の種類と重量パーセントが、10~170℃の温度範囲での融解熱(ΔH10→170℃)の値に対する10~40℃の温度範囲での支持層組成物の融解熱(ΔH10→40℃)の値において重要であり、次いで12.5%未満の相対値が、
-カーペット支持層の適切な降伏強度を得て、満足のいく取り扱い及び寸法安定性を特徴とするカーペットをもたらすこと、
-ポリオレフィンの熱劣化を厳密に最小限に抑えること、
-良好な寸法安定性、
-未完成のカーペットへの支持層組成物の良好な接着を保証することにおいて主要な決定的特性である。
【0057】
本発明者らは、限られた数の実験により、当業者が、10~170℃の温度範囲の融解熱(ΔH10→170℃)の12.5%未満、又は更には10%未満、又は更には5%未満の、10~40℃の温度範囲の融解熱(ΔH10→40℃)を伴う支持層組成物をもたらす、ポリオレフィン、充填剤、ワックス、油及び粘着付与剤の正しい組み合わせを得ることができ、これから誘導されるカーペットタイルの長期寸法安定性が確保されることを個人的に経験した。
【0058】
本発明による組成物は、抗菌剤、殺生物剤、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、又はこれらの任意の組み合わせなどの1つ以上の更なる添加剤を任意選択的に含むことができる。好ましくは、組成物は、少なくとも難燃剤、熱安定剤又はこれらの組み合わせを含む。
【0059】
例えば、安定剤を組成物に加えて、熱安定性を提供することができる。安定剤を使用して、本発明の組成物を含む生成物の製造で遭遇する条件を含む、熱及び酸素への曝露によって引き起こされる劣化を最小限に抑えることができる。
【0060】
特に好ましい安定剤は、例えば、Irganox 1010及びIrganox 1076(BASF)などの立体障害フェノール系酸化防止剤、並びにDoverphos(登録商標)S-9228(Dover Chem. Corp)又はWeston(登録商標)TNPP(Addivant)などの、ホスホナイト又はホスファイトタイプの安定剤である。
【0061】
難燃剤は、好ましくは、ハロゲン化及び非ハロゲン化難燃剤、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化臭素及び水酸化亜鉛から選択される。又、液体難燃剤は、例えば、リン酸可塑剤に使用できる。
【0062】
本発明による組成物は、任意選択的に0.1%~5%の1つ以上の更なる添加剤を含む。
【0063】
本発明による組成物は、以下によって特徴付けられる:
-10Pas~5000Pas、好ましくは20Pas~2500Pas、より好ましくは50~500PasのISO 11443:2005による回転式粘度計での160℃での溶融粘度、
-300秒以下、好ましくは200秒以下、より好ましくは150秒以下、最も好ましくは120秒以下の開放時間、更に好ましい範囲は、100秒以下、60秒以下、45秒以下、30秒以下、20秒以下、特に1~30秒であり、開放時間は、組成物が処理可能である、即ち、結果として塗布装置の潜在的な閉塞及び汚染が回避される、固化又は部分的に固化しない期間を意味する。
【0064】
本発明による組成物は、好ましくは、適切な加熱ミキサー、例えば、二軸スクリュー又は一軸スクリュー押出し機で、130~170℃、好ましくは140~160℃の内部温度で配合される。内部温度とは、溶融物の実際の温度を意味し、前述の溶融物の調製及び加工のための機器の設定温度ではない。
【0065】
溶融物は、押出しコーティングにより、第1の支持材料の裏側に塗布され、前述の第1の支持材料は、表側と裏側を有し、複数の繊維が第1の支持材料に取り付けられ、第1の支持材料の表側から伸長し、第1の支持材料の裏側で露出される。
【0066】
130~170℃、好ましくは140~160℃の温度で放置された溶融ブレンド組成物は、第1の支持材料の裏側に薄膜の形態で塗布され、冷却の際にカーペット支持層を形成し、層の厚さは、0.4~4.0mm、好ましくは0.6~3.0mm、より好ましくは0.8~2.0mmであり、1600~4000g/m2、好ましくは1700~3500g/m2、より好ましくは1800~3000g/m2、最も好ましくは1900~2500g/m2の表面密度に対応する。
【0067】
任意選択的に、押出し被覆されたカーペット支持層組成物は、冷却する前に、130~170℃、好ましくは140~160℃の温度で、1~60秒、好ましくは5~30秒、より好ましくは10~20秒の期間、その後の熱処理にかけられる。
【0068】
カーペットは、タイル又はロールとして作製及び適用される。
【0069】
このようにして得られたカーペットは、様々な大気温度及び湿度条件でのカールを防ぐために満足のいく寸法安定性を証明している。
【実施例】
【0070】
実施例1~26
以下の例示的な実施例は、単に本発明を例示することを意味するものであり、本発明の範囲を限定又は別様に定義することを意図するものではない。
【0071】
表1~3では、カーペット支持層組成物のΔH10→40℃の融解熱パーセント(100×ΔH10→40℃/ΔH10→170℃)に対する充填剤含有量、充填剤の粒径、及び添加剤含有量の影響が示されている。ポリオレフィン、添加剤、及び充填剤の量は、部で示される。
【0072】
【0073】
【0074】
表2では、実施例9は、支持層組成の(100×ΔH10→40℃/ΔH10→170℃)値が12.5%を超えているため、比較である。
【0075】
-実施例2、9及び10では、添加剤は、Shellの原油の真空蒸留の残渣に由来する微結晶水素化マイクロワックスであるLMPワックスである。
-実施例4~6では、35部の添加剤は、20部の粘着付与剤、5部の鉱油、及び10部のLMPワックスを含み、粘着付与剤は、ExxonMobilのEscorez 1102又はEscorez 5600であり、鉱油は、PetroCenterのProcessing oil 6116 WOPである。
【0076】
【0077】
【0078】
-実施例19、20及び22では、35部の添加剤は、20部の粘着付与剤、5部の鉱油、及び10部のAlphaのMMPワックスを含み、
-実施例21では、60部の添加剤は、40部の粘着付与剤、10部の油、及び10部のMMPワックスを含み、
-実施例24では、75部の添加剤は、25部の粘着付与剤、25部の油、及びShellの12.5部のHMP Microcrystallineワックス、及びAlphaの12.5部のMMPワックスを含み、
-実施例25では、80部の添加剤は、25部の粘着付与剤、30部の油、及び25部のHMP Microcrystallineワックスを含む。
-実施例26では、17.25部の添加剤は、粘着付与剤のみからなる。
【0079】
表1から4では:
-Carbocia 310は、体積中央粒径(D50)が200μmの炭酸カルシウムであり、
-Durcal 10は、体積中央粒径(D50)が10μmの炭酸カルシウムであり、
-BLは、体積中央粒径(D50)が30μmの炭酸カルシウムであり、
-Omyacarb 130 GUは、体積中央粒径(D50)が150μmの炭酸カルシウムであり、
-Carbocia 1300は、体積中央粒径(D50)が650μmの炭酸カルシウムであり、
-Vestoplast 408は、94のショアA、41℃にピークを有する33~49℃の温度範囲で0.76J/gの融解熱(ΔHf)、及び104.8℃にピークを有する72~115℃の温度範囲で40.86J/gの融解熱(ΔHf)を有する高1-ブテン、プロピレンエチレンコポリマーである。
-Vestoplast 508は、74のショアA、43℃にピークを有する26~80℃の温度範囲で23.94J/gの融解熱(ΔHf)を有する高1-ブテン、プロピレンエチレンコポリマーである。
-Vestoplast 708は、67のショアA、42℃にピークを有する29~117℃の温度範囲で24.9J/gの融解熱(ΔHf)を有する高1-ブテン、プロピレンエチレンコポリマーである。
-Vistamaxx 8880は、93のショアA、48及び89℃にピークを有する22~120℃の温度範囲で43.4J/gの融解熱(ΔHf)を有するメタロセンプロピレンエチレンコポリマーである。
-Vistamax 6502は、71のショアA、45.9℃にピークを有する27~110℃の温度範囲で25.82J/gの融解熱(ΔHf)を有するメタロセンプロピレンエチレンコポリマーである。
-Licocene 1602は、82のショアA、55及び72.3℃にピークを有する30~95℃の温度範囲で34.08J/gの融解熱(ΔHf)を有するメタロセンプロピレンエチレンコポリマーである。
-Licocene 2602は、90のショアA、43℃と83℃にピークを有する24~102℃の温度範囲で76.3J/gの融解熱(ΔHf)を有するメタロセンプロピレンエチレンコポリマーである。
-Licocene 3602は、97のショアA、100.35℃にピークを有する28~117℃の温度範囲で56J/gの融解熱(ΔHf)を有するメタロセンプロピレンエチレンコポリマーである。
-Engage 8100は、73のショアA、40℃と74℃にピークを有する32~90℃の温度範囲で36J/gの融解熱(ΔHf)を有するエチレン-オクテンコポリマーである。
-LMPワックスは、12~75℃(ピーク48℃)の温度範囲で156J/gの融解熱(ΔHf)を有するShellの微結晶ワックスである。
-MMPワックスは、17~85℃(ピーク49.6℃)の温度範囲で158J/gの融解熱(ΔHf)を有するShellの微結晶ワックスである。
-HMPワックスは、30~95℃の温度範囲(ピーク77.3℃)で232.8J/gの融解熱(ΔHf)を有するShellの微結晶ワックスである。
この場合に、
-融解熱(ΔHf)は、Mettler Toledoの「DSC1 STARe System」を用いてDSCによって決定され、この場合に、ポリオレフィン、加工添加剤又は配合された支持層組成物は、初めに14℃で48時間金属冷却プレートに保存され、その後10℃/分の勾配で0℃の温度まで冷却される。0℃で5分後、試料を10℃/分の加熱勾配で170℃の温度まで加熱することにより、融解熱が決定される。10℃付近の不規則なベースラインの特定の場合では、試料を-10又は-20℃の温度まで冷却し、そこからDSC測定を開始し、こうして影響を受けず再現性のある融解熱値が保証される。熱流束が170℃を超える特定の場合では、DSCは170℃より10~20℃高い温度まで記録され、融解熱値は10℃からこれ以上の熱流束がない温度までの熱流束を積分して得られる。試料の体積は、約5~25mgに相当する5~10μリットルの範囲である。
-ショアA硬度は、10℃/分で23℃に溶融及び冷却し、23℃で48時間調整した後、ポリオレフィン又はポリオレフィンブレンドにて測定される。
【0080】
表1及び2に、充填剤含有量、ポリオレフィンのショアA硬度及び添加剤添加の影響を示す。
【0081】
表3に、充填剤含有量及び粒径の影響を示す(実施例11~18)。実施例12は比較のために示す。
【0082】
表4に、高充填剤濃度のポリオレフィンのブレンドを実施例19~22にて示す。同じ表では、実施例23~25は、ポリオレフィンの1つ(Engage 8100)が62の共重合エテン重量パーセントを有するポリオレフィンブレンドを示している。共重合エテンの重量パーセントが6であるVistamaxx 8880との混合物では、ポリマーブレンドは、
-実施例23において40のエテンのパーセント及び80のショアA硬度、
-実施例24及び25において34のエテンのパーセント及び85のショアA硬度が特徴である。
【0083】
更に、実施例24及び25は、高い重量パーセントの添加剤を含むカーペット支持組成物を示している。
【0084】
実施例9は、ワックス自体を使用することの影響、即ち、油及び/又は粘着付与剤と組み合わせて使用しないことの影響を示している。
【0085】
実施例26は、粘着付与剤自体を使用することの影響、即ち、油及び/又はワックスと組み合わせて使用しないことの影響を示している。
【0086】
実施例27
寸法変化は、直線ステッチループレベル500×500mmの正方形の試験タイルで評価され、この場合に、
-タフト状ナイロン糸条の重量は900g/m2、タフト密度は1インチあたり12針であり、
-支持層は、2200g/m2の密度、及び1.5mmの厚さを有し、厚さは、必要な重量が求められる指標値である。
【0087】
カーペット試験タイルを、初めに温度10℃及び相対湿度25%で100時間調整した。寸法安定性試験は、2.5mの側辺を有する6.25m2の正方形に50cmの側辺を有する25平方のカーペット試験タイルを設置することによって実行し、この場合に、6.25m2の正方形の第1の側辺は、機械方向の5つのカーペット試験タイルからなり、6.25m2の正方形の第2の側辺は、第1の側辺と直角を形成し、横方向の5つのカーペット試験タイルからなる。6.25m2の正方形は、第2の側辺に平行な、横方向のタイルの平行なストリップに対応する、機械方向の、第1の側辺に平行なタイルのストリップで更に充填された。互いに接触しているタイルは、並んで、6.25m2の正方形の端でブロックされ、個々のタイルの各寸法のばらつきが、ドーミング又はカーリングによって見える内部応力を示唆していることを確証した。その後、試験パネルを温度40℃及び相対湿度65%で80時間曝し、ここでカールを測定した。
【0088】
(100×ΔH10→40℃/ΔH10→170℃)値が12.5%未満の支持層を含むカーペット試験タイルは、許容可能な寸法変化、即ち、タイルの端で1mm未満の浮き上がりを示す。
【0089】
本発明者らは更に、
-5%未満の(100×ΔH10→40℃/ΔH10→170℃)値を有する支持層組成物では、タイルの端で浮き上がりは観察されない、
-5~10%未満の(100×ΔH10→40℃/ΔH10→170℃)値を有する支持層組成物では、0~0.5mm未満の端で浮き上がりが観察される、
-10~12.5%未満の(100×ΔH10→40℃/ΔH10→170℃)値を有する支持層組成物では、0.5~1mm未満の端で浮き上がりが観察されることを認めた。
【0090】
(100×ΔH10→40℃/ΔH10→170℃)値が12.5%以上の支持層を含むカーペット試験タイルは、比較例である例9及び26のように、許容できない寸法変化、即ち、実施例9の場合は1mm~2mm未満、実施例26の場合は2mm~7mm未満のタイルの端で浮き上がりを示す。
【0091】
本発明者らは、各成分(充填剤を含む)の融解熱が、カーペット支持層組成物の他の成分の存在によって強く影響される可能性があり、熱特性は、完成したカーペット支持層組成物について測定する必要があることを認めた。
【0092】
本発明による支持層を含むカーペット試験タイルは、様々な温度及び/又は湿度条件下で顕著な寸法安定性を示すのに十分な剛性を有することを証明している。