(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】温感化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/894 20060101AFI20231108BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20231108BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231108BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20231108BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20231108BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20231108BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20231108BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20231108BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231108BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20231108BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61K8/894
A61K8/41
A61K8/34
A61K8/891
A61K8/73
A61K8/36
A61K8/92
A61K8/06
A61Q19/00
A61Q17/04
A61Q1/00
(21)【出願番号】P 2020522150
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2019020584
(87)【国際公開番号】W WO2019230578
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/020618
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】白神 裕人
(72)【発明者】
【氏名】大道口 則子
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-115358(JP,A)
【文献】特開2013-129625(JP,A)
【文献】特開2012-246446(JP,A)
【文献】特開2013-010744(JP,A)
【文献】特開2001-206817(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0027858(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20~80質量%の多価アルコール、
1.25質量%より多くかつ15質量%以下の油相増粘剤、
乳化剤、
25℃における粘度が10,000mm
2
/s未満のポリエーテル変性シリコーン、および
0.1~10質量%の水
を含有し、
前記油相増粘剤が、非乳化性の架橋型シロキサンエラストマー、デキストリン脂肪酸エステル、疎水化修飾多糖類、脂肪酸およびワックスから選択される1種以上であり、
前記乳化剤が、25℃における粘度が10,000mm
2/s以上のポリエーテル変性シリコーンおよびジステアルジモニウムヘクトライトから選択される1種以上である、油中水型温感化粧料。
【請求項2】
前記乳化剤が、25℃における粘度が10,000mm
2/s以上のポリエーテル変性シリコーンである、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記乳化剤がジステアルジモニウムヘクトライトである、請求項1に記載の化粧料。
【請求項4】
前記油相増粘剤が非乳化性の架橋型シロキサンエラストマーである、請求項1に記載の化粧料。
【請求項5】
さらに美白薬剤を配合する、請求項1に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に塗布した際に温感を与える温感化粧料に関する。より詳しくは、乳化安定性に優れ、美容効果を発揮する、良好な使用感を有する油中水型温感化粧料に関する。
【0002】
一般に、肌に適度な温感を与えることは、皮膚の血行を促進して、新陳代謝が高まるとともに、血色改善効果、リラクゼーション効果、疲労回復効果などが得られることが知られている。よって、これらの効果を期待して、化粧料に発熱性物質を配合することが行われている。化粧料に配合する発熱性物質としては、多価アルコールなどの保湿剤や、ゼオライトや、金属塩又は金属酸化物などが広く用いられている。これらはいずれも吸湿性であり、皮膚上の水分と接触した際に発熱することによって皮膚に温感をもたらす。
【0003】
特許文献1においては、適度な粘性および優れた温感付与効果が得られることから、多価アルコールを特定の非イオン界面活性剤を用いて乳化して、多価アルコール中油型とした温感化粧料が提案されている。また、特許文献2では、発熱性の高いゼオライトを多価アルコール溶媒に分散させて温感付与効果を高める提案がされている。
上記のように、温感化粧料として種々の基剤が提案されているが、特許文献1の化粧料は、水中油型基剤で皮膚に多価アルコールがダイレクトに触れるため、べたつきが顕著に高い。そのため、皮膚へ塗布し一定時間経過した後に洗い流して使用されるリンスオフタイプの洗浄料であった。また、特許文献2の化粧料はリーブオンタイプではあるが、非水系であるため、美容効果を有する塩型の薬剤を含む水溶液を安定に配合することが困難である。
【0004】
よって、優れた温感付与効果を発揮しながら、安定性および使用性に優れ、美白成分等の美容効果を有する薬剤を配合することも可能な油中水型基剤に対する需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-37404号公報
【文献】特開2016-193841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた温感付与効果を発揮し、良好な使用感を有しながら、保存安定性に優れた油中水型温感化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討を行ったところ、多価アルコール、油相増粘剤、乳化剤および水を配合することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
多価アルコール、
油相増粘剤、
乳化剤、および
水
を含有する、油中水型温感化粧料を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の温感化粧料は、優れた温感付与効果を発揮するとともに、乳化安定性にも優れる。また、本発明の温感化粧料は、油中水型の温感化粧料とすることにより多価アルコールが皮膚にダイレクトに触れることが妨げられるため、保湿剤(多価アルコール)が高配合されているにもかかわらず、従来の水中油型あるいは多価アルコール中油型タイプの温感化粧料に比してべたつきが抑制される。よって、本発明の温感化粧料は、リーブオンタイプの温感化粧料基剤としても用いることができる。また、水を配合することが可能であるため、美白成分等の美容効果を有する塩型の薬剤も配合することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の温感化粧料は、多価アルコール、油相増粘剤、乳化剤および水を必須成分として含むことを特徴とする。以下、本発明について詳述する。
【0010】
<多価アルコール>
本発明の温感化粧料に用いられる多価アルコールは、肌に適用した際に温感を付与するものをいう。具体例として、限定するものではないが、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG-8等)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール、メチルグルセス-10、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、グルコース、ソルビトール、マルチトール、スクロース、ラフィノース、ヘキシレングリコール、1,2-ペンタンジオール、トレハロース等を挙げることができる。
これらのなかでも、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、メチルグルセス-10等を適宜配合して用いることが好ましい。
【0011】
また、多価アルコールの配合により、温感作用が生じて明るく血色感のよい肌へと導くと同時に、高保湿効果により乾燥による化粧崩れを防ぐこともできる。
【0012】
本発明の化粧料における多価アルコールの配合量は、化粧料全量に対して、20質量%以上、好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~70質量%である。多価アルコールの配合量が20質量%未満では使用時の温感が十分得られない。
【0013】
<油相増粘剤>
本発明の温感化粧料に用いられる油相増粘剤は、油相に粘性を付与し得るものをいう。例として、乳化性又は非乳化性の架橋型シロキサンエラストマー、デキストリン脂肪酸エステル、疎水化修飾多糖類、脂肪酸、ワックス等が挙げられる。なかでも、本発明においては、べたつきを抑制する観点から、非乳化性架橋型シロキサンエラストマーを用いるのが好ましい。
【0014】
非乳化性架橋型シロキサンエラストマーとしては、特に限定されるものではないが、メチルポリシロキサンクロスポリマー、メチルフェニルポリシロキサンクロスポリマー、ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマー、ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー、アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、セテアリルジメチコンクロスポリマー等が挙げられる。これら非乳化性架橋型シロキサンエラストマーは、シリコーン油、ミネラルオイル、トリエチルヘキサノイン、スクワラン等の各種油分に膨潤された膨潤物の形態で市販されているものを用いることができる。具体例としては以下のものが挙げられる。
【0015】
メチルポリシロキサンクロスポリマーとしては、9040シリコーンエラストマーブレンド、9041シリコーンエラストマーブレンド、9045シリコーンエラストマーブレンド、EL-8040IDシリコーンオーガニックブレンド(以上、東レ・ダウコーニング社製)等のジメチコンクロスポリマーや、KSG-15、KSG-16、KSG-1610(以上、信越化学工業社製)等のジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、KSP-100(信越化学工業社製)等のビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー、トスパール150KA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等のポリメチルシルセスキオキサン等が挙げられる。
【0016】
メチルフェニルポリシロキサンクロスポリマーとしては、KSG-18A(ジメチコン/フェニルビニルジメチコンクロスポリマー、信越化学工業社製)等のジメチコン/フェニルジメチコンクロスポリマー等が挙げられる。
【0017】
ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマーとしては、KSG-41A、KSG-42A、KSG-43、KSG-44(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0018】
ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-042Z、KSG-045Z(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0019】
アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマーとしては、VELVESIL 125、VELVESIL 034(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0020】
セテアリルジメチコンクロスポリマーとしては、VELVESIL DM(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0021】
本発明の化粧料における油相増粘剤の配合量は、化粧料全量に対して、1.25質量%より多くかつ15質量%以下、好ましくは1.26~12質量%、さらに好ましくは1.27~10質量%、より好ましくは1.28~10質量%である。油相増粘剤の配合量が1.25質量%以下であると乳化安定性に劣る傾向や使用性が劣る傾向があり、一方、15質量%を超えて配合すると安定な化粧料を調製することが困難になる場合がある。
【0022】
本発明の油相増粘剤としては、上記の非乳化性架橋型シロキサンエラストマーから選択される一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
<乳化剤>
本発明の温感化粧料に用いられる乳化剤は、比較的親油性が高く、多価アルコールを高配合する水性成分と油性成分との乳化安定効果を発揮し得るものをいう。本発明においては、特定の性質を有するポリエーテル変性シリコーン又は有機変性粘土鉱物が好ましく用いられる。
【0024】
本発明の乳化剤として用いられる、前記特定の性質を有するポリエーテル変性シリコーンとは、HLBが8.0以下のものであって、25℃における粘度が10,000mm2/s以上、好ましくは15,000mm2/s以上、さらに好ましくは20,000mm2/s以上である。粘度が10,000mm2/s未満であると良好な乳化安定性が得られない。
ポリエーテル変性シリコーンの具体例としてはPEG/PPG-19/19ジメチコン(商品名「BY11-030」、HLB=3、粘度30,000mm2/s;東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0025】
本発明に用いられる有機変性粘土鉱物としては、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、下記一般式(1)で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものを使用することができる。
[化1]
(X,Y)2―3(Si,Al)4O10(OH)2Z1/3・nH2O (1)
上記式中、XはAl、Fe(III)、Mn(III)又はCr(III)であり、YはMg、Fe(II)、Ni、Zn又はLiであり、ZはK、Na又はCaである。
【0026】
具体的にはモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト等の天然または合成(この場合、式中の(OH)基がフッ素で置換されたもの)のモンモリロナイト群(市販品としてはビーガム、クニピア、ラポナイト等)およびナトリウムシリシックマイカやナトリウムまたはリチウムテニオライトの名で知られる合成雲母(市販品としてはダイモナイト;トピー工業社製等)等の粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られる。
【0027】
ここで用いられる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は、下記一般式(2)で表されるものである。
【化2】
式中、R
1は炭素数10~22のアルキル基またはベンジル基、R
2はメチル基または炭素数10~22のアルキル基、R
3およびR
4は炭素数1~3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、Xはハロゲン原子またはメチルサルフェート残基を表す。
【0028】
かかる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、例えばドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、アラキルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルエチルアンモニウムクロリド、アラキルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルメチルアンモニウムクロリド、アラキルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、および相当するブロミド等、更にはジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。本発明の実施にあたっては、これらのうち一種または二種以上が任意に選択される。
【0029】
有機変性粘土鉱物の代表的なものとしては、ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライト(ジステアルジモニウムヘクトライト)、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。なかでも、ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライトが特に好ましい。市販品としては、ベントン27(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)およびベントン38VCG(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)等が挙げられる。
【0030】
本発明の化粧料における乳化剤の配合量は、化粧料全量に対して、0.1~5質量%、好ましくは0.2~4質量%、より好ましくは0.4~3質量%である。配合量が0.1質量%未満では粘度が出にくく安定性に劣り、5質量%を超えて配合すると乳化剤由来のべたつきや粉っぽさが生じ、使用性の点で好ましくない。
【0031】
<水>
本発明の温感化粧料においては、水性溶媒として、水(イオン交換水、精製水、自然水等)を配合することができる。ただし、水性溶媒が存在すると温感効果が低下するため、水性溶媒を配合する場合には、温感化粧料全量に対して、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下に抑えるべきである。よって、本発明の温感化粧料においては、美白薬剤等の薬剤を十分に溶解させ、かつ、温感実感を得る観点から、水の配合量を0.1~10質量%、あるいは1~10質量%、さらには0.1~8質量%、あるいは1~8質量%、よりさらには1~5質量%とすることが好ましい。
【0032】
<美白薬剤>
従来のリーブオンタイプの温感化粧料は非水系であり、水溶性の薬剤の配合が困難であったのに反して、本発明の温感化粧料は水を含むので、水溶性薬剤を配合することができる点に特徴を有する。
【0033】
配合される美白薬剤としては、通常の化粧料に配合される美白薬剤であればよく、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)、トラネキサム酸、コウジ酸、エラグ酸、アルブチン、アルコキシサリチル酸、およびこれらの塩又は誘導体などが挙げられる。より具体的な例として、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸エステルマグネシウム塩、L-アスコルビン酸グルコシド、2-O-エチル-L-アスコルビン酸、3-O-エチル-L-アスコルビン酸、4-メトキシサリチル酸ナトリウム塩、4-メトキシサリチル酸カリウム塩などが挙げられる。
本発明においては、4-メトキシサリチル酸カリウム塩が好ましく用いられる。
【0034】
また、美白薬剤以外の薬剤を配合することもできる。例えば薬剤の例として、ビタミンA、ビタミンAパルミテート、ビタミンAアセテート等のビタミンA誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2およびその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15およびその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール、β-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類;γ-オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、アルブチン、セファランチン等の各種薬剤、ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、オウゴン、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サクラリーフ等の植物の抽出物、β-カロチン等の色素等が挙げられる。
本発明の薬剤の配合量は、温感化粧料に溶解可能な配合量範囲内で任意に決定される。化粧料において十分な薬剤効果を得る観点から、0.5~4質量%、さらに1~3質量%であることが好ましい。
【0035】
<ポリエーテル変性シリコーン>
本発明においては、HLBが8.0以下であって、25℃における粘度が10,000mm2/s未満であるポリエーテル変性シリコーンを配合することにより、乳化安定性をさらに向上させることができる。なかでも、側鎖にアルキル鎖を持たず、直鎖状又は分岐鎖状のシリコーン骨格の側鎖にポリオキシアルキレン基を有するものが好ましい。
【0036】
シリコーン骨格が直鎖状であるポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、PEG-3ジメチコン(商品名「KF-6015」、HLB=4.5、粘度150mm2/s;信越化学工業社製)、PEG-9メチルエーテルジメチコン(商品名「KF-6016」、HLB=4.5、粘度150mm2/s;信越化学工業社製)、PEG-10ジメチコン(商品名「KF-6017P」、HLB=4.5、粘度850mm2/s;信越化学工業社製)、PEG-12ジメチコン(商品名「SH3772M」、HLB=6、粘度1,050mm2/s、商品名「SH3773M」、HLB=8、粘度650mm2/s、商品名「SH3775M」、HLB=5、粘度1,600mm2/s;以上すべて、東レ・ダウコーニング社製)、PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン(商品名「KF-6012」、HLB=7.0、粘度1,600mm2/s;信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0037】
シリコーン骨格が分岐鎖状であるポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名「KF-6028」、HLB=4、粘度900mm2/s;信越化学工業社製)、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名「KF-6038」、HLB=3、粘度700mm2/s;信越化学工業社製)、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン(商品名「KF-6048」、HLB=3.5、粘度2,700mm2/s;信越化学工業社製)などが挙げられる。
【0038】
本発明の化粧料におけるポリエーテル変性シリコーンの配合量は、化粧料全重量に対して0.1~10質量%以下、好ましくは0.3~6質量%、より好ましくは1~5質量%である。
【0039】
<油分>
本発明の温感化粧料には、肌へ塗布したときの使用感をよくするために、油分を配合することが好ましい。油分としては、通常の化粧料に用いることができる油分であれば、特に制限なく用いることができる。
【0040】
例えば、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油等の油脂類、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の脂肪酸類、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソパルミチン酸オクチル、オレイン酸イソデシル、エチルヘキサン酸セチル等のエステル類、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、オレフィンオリゴマー、水添ポリデセン、パラフィン、イソパラフィン、オクタン、デカン、ドデカン、イソドデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン等の炭化水素類、オクチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン、またはカプリリルメチコン等のシリコーン油類を挙げることができる。
【0041】
本発明の化粧料においては、上記の油分を複数組み合わせて配合してよい。油分の配合量は、化粧料全量に対して、10~50質量%、さらに好ましくは15~40質量%、より好ましくは15~35質量%である。油分の配合量が10質量%未満では外油相が少ないため乳化が困難であり、また、肌への塗布時の軽さや、のびの良さが十分に得られず、50質量%を超えて配合すると内水相が少ないため粘度が出にくく、安定性が損なわれることがある。
【0042】
<その他の成分>
本発明の温感化粧料には、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲内で通常化粧料に用いられる他の成分、例えば、粉末成分、紫外線防御剤、各種水性溶媒、増粘剤、金属イオン封鎖剤、糖、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、安定化剤、皮膚栄養剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0043】
本発明の温感化粧料を構成する水滴の平均乳化粒子径は10μm以下、さらには5μm以下であることが好ましい。水滴の平均乳化粒子径を小さくすることにより、乳化安定性が優れる。
【0044】
本発明の温感化粧料は、25℃でレオメーター(11.3mmφ、10mm針入)を用いて測定した硬度が6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上である。ワックスなどを併用しバーム状としても良い。このような硬度を有する本発明の乳化化粧料は、安定性に優れ、例えばジャー容器に充填すると流れることなく適度な硬さを保持している。
【0045】
本発明にかかる温感化粧料は、一層型であることを特徴とする。本発明にかかる温感化粧料は、水溶性薬剤を配合した場合であっても乳化安定性が良好であり、保湿剤を高配合しているにもかかわらず、べたつきがなく、優れた使用感を有する。このため、本発明にかかる温感化粧料は化粧料に広く応用することが可能であり、例えば、乳液、美容液、クリーム、マッサージ化粧料、サンスクリーン化粧料、化粧下地、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ等の任意の形態で提供することができる。
【0046】
本発明の温感化粧料は、常法により製造することができる。例としては、水相成分と油相成分をそれぞれ撹拌混合して均一な水相部と油相部を調製し、油相部に水相部を加えながら、撹拌混合して調製する。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。実施例に先立ち、本発明で用いた評価方法を説明する。
【0048】
(1)温感効果
調製した試料について専門パネラー10名によって実使用試験を実施した。具体的には、調製した試料を各パネラーの顔に塗布し、温感を下記の基準に従って評価した。
<評価基準>
A:専門パネラー8名以上が、温感効果があると認めた。
B:専門パネラー5名以上8名未満が、温感効果があると認めた。
C:専門パネラー3名以上5名未満が、温感効果があると認めた。
D:専門パネラー3名未満が、温感効果があると認めた。
【0049】
(2)安定性
各試料について、調製後に、それぞれ0℃、25℃、50℃に1か月間放置した後に室温に戻し、目視にて観察し、分離の有り無しで評価した。また、試料調製後の水滴の乳化粒子径を、顕微鏡にて測定した。平均乳化粒子は小さいほど乳化安定性が良く、10μmを超えると長期保管により分離が見られる傾向が高くなる。
【0050】
(3)硬度
ここで、上記における「硬度」は、レオメーター(不動工業社製)を用い、針径:11.3mmφ、針入距離:10mm、測定温度:25℃の条件下で測定した。
【0051】
(4)使用性
調製した試料について専門パネラー10名によって実使用試験を実施した。具体的には、調製した試料を各パネラーの顔に塗布し、べたつきの無さ、なめらかさ、のびの軽さを総合して下記の基準に従って評価した。
<評価基準>
A:専門パネラー8名以上が、使用性に優れると認めた。
B:専門パネラー5名以上8名未満が、使用性に優れると認めた。
C:専門パネラー3名以上5名未満が、使用性に優れると認めた。
D:専門パネラー3名未満が、使用性に優れると認めた。
【0052】
[実施例1~8、比較例1~7]
下記の表1および表2に示す処方にて化粧料を調製し、上記評価方法に従って各特性を評価した。結果を表1および表2に併せて示す。
【0053】
【0054】
【0055】
*1KSG-16(信越化学工業社製)
*2DC9041(東レ・ダウコーニング社製)
*3トスパール150KA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
*4KSG-18A(信越化学工業社製)
*5KSP-100(信越化学工業社製)
*6BY11-030(東レ・ダウコーニング社製)
*7ベントン38VCG(エレメンティスジャパン社製)
*8KF-6017P(信越化学工業社製)
*9KF-6048(信越化学工業社製)
*10KF-6028(信越化学工業社製)
【0056】
表の結果に示されるように、本願発明に係る保湿剤、油相増粘剤、乳化剤を含む組成物(実施例1)は、十分な温感効果が得られるとともに、乳化安定性にも優れ、べたつきが無く、使用感も良好であった。さらに、実施例2~8の組成物においては美白薬剤を安定に配合することができた。
【0057】
一方、油相増粘剤を含まない組成物(比較例1~3)および油相増粘剤の配合量が少ない場合(比較例4、5)には、安定性が著しく低下し、分離した。また、粘度の大きいポリエーテル変性シリコーンおよび有機変性粘土鉱物のいずれも含まない組成物(比較例6)は著しく安定性が低かった。また、水の配合量が多い場合(比較例7)には、十分な温感効果が得られなかった。