(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】傾斜半導体メタマテリアルによる反射および回折の制御
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2020554101
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(86)【国際出願番号】 US2019019411
(87)【国際公開番号】W WO2019194911
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-11-15
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】ソーベル,スコット・アール
(72)【発明者】
【氏名】ファウンテイン,キャサリン・ティー
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0191354(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0014814(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105355697(CN,A)
【文献】米国特許第05080725(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0092222(US,A1)
【文献】国際公開第2011/047359(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 5/18
G02B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の波長帯において素子上に入射する放射光を吸収する吸収素子であって、
表面であって、当該表面に対して垂直な法線を定める、表面と、
前記表面に対して法線方向以外の角度配向で前記表面から延出する複数の離間されたナノピラーのアレイであって、前記ナノピラーが、前記放射光を吸収する前記波長帯に関係する断面直径および長さを有する、ナノピラーのアレイと、
を備え、
前記ナノピラーの全てが、前記表面から直接的に且つ前記表面に対して同一の角度配向となる角度を有することにより、前記ナノピラーが前記
法線方向を向く場合と比べて、前記ナノピラーが向けられ前記放射光が入射する一方の方向では、放射光の吸収を増加させると共に、前記法線方向に関し前記一方の方向の反対方向では、放射光の吸収を低減させ、
前記ナノピラーが円錐形状であり、各前記ナノピラーの断面直径が、当該ナノピラーの一端から、当該ナノピラーの逆側の一端まで一貫しない、吸収素子。
【請求項2】
請求項1記載の素子において、前記ナノピラーの角度配向が、前記法線方向に対して1°と、前記表面の見通し角との間である、素子。
【請求項3】
請求項2記載の素子において、前記ナノピラーの角度配向が、前記法線方向に対して45°である、素子。
【請求項4】
請求項1記載の素子において、各ナノピラーの最も広い直径が前記表面上であり、各ナノピラーの最も狭い直径が、前記表面とは逆側である、素子。
【請求項5】
請求項1記載の素子において、前記ナノピラーのアレイが半導体材料で作られる、素子。
【請求項6】
請求項5記載の素子において、前記ナノピラーのアレイが、a-Si、GaAs、GaN、InAs、InP、GaP、InSb、Bi
2Te
3、CdTe、CZTSSe、CIGSペロフスカイト、またはBiTeで作られる、素子。
【請求項7】
請求項5記載の素子において、前記ナノピラーのアレイが、
可視スペクトルにおいて光放射を吸収するためにInPで作られるか、
可視光および近赤外線スペクトルにおいて光放射を吸収するためにSiで作られるか、
中間波赤外線スペクトルにおいて光放射を吸収するためにInSbで作られるか、または
長波赤外線スペクトルにおいて光放射を吸収するためにBi
2Te
3で作られるか、
の何れである、素子。
【請求項8】
請求項1記載の素子において、前記ナノピラーの長さおよび直径が、前記波長帯に基づいて選択される、素子。
【請求項9】
請求項8記載の素子において、前記ナノピラーが直接遷移材料で作られ、前記ナノピラーの長さが、前記波長帯の中心を前記ピラー材料の屈折率の実部で除算した値の少なくとも2倍であり、前記ナノピラーの直径が、前記波長帯を前記ピラー材料の屈折率の実部で除算したものに等しい、素子。
【請求項10】
請求項1記載の素子において、前記ナノピラーのアレイが、保護コーティング内にカプセル化される、素子。
【請求項11】
特定の波長帯において、素子に入射する放射光を吸収する光吸収素子であって、
表面であって、当該表面に対して垂直な法線を定める、表面と、
法線方向以外の角度配向で前記表面から延出すると共に、前記特定の波長帯において前記放射光を吸収するように構成される、複数の離間された円錐形状半導体ナノピラーのアレイであって、
前記ナノピラーが前記放射光を吸収する前記波長帯に関係するサイズを有する、ナノピラーのアレイと、
を備え、前記ナノピラーの全てが、前記表面から直接的に且つ前記表面に対して同一の角度配向となる角度を有することにより、前記ナノピラーが前記
法線方向を向く場合と比べて、前記ナノピラーが向けられ前記放射光が入射する一方の方向では、放射光の吸収を増加させると共に、前記法線方向に関し前記一方の方向の反対方向では、放射光の吸収を低減させる、光吸収素子。
【請求項12】
請求項11記載の素子において、各ナノピラーの最も広い直径が前記表面上であり、各ナノピラーの最も狭い直径が、前記表面とは逆側である、素子。
【請求項13】
請求項11記載の素子において、前記ナノピラーの角度配向が、前記法線方向に対して1°と前記表面の見通し角との間である、素子。
【請求項14】
請求項13記載の素子において、前記ナノピラーの角度配向が、前記法線方向に対して45°である、素子。
【請求項15】
請求項11記載の素子において、前記ナノピラーのアレイが、a-Si、GaAs、GaN、InAs、InP、GaP、InSb、Bi
2Te
3、CdTe、CZTSSe、CIGSペロフスカイト、またはBiTeで作られる、素子。
【請求項16】
請求項11記載の素子において、前記ナノピラーのアレイが、
可視スペクトルにおいて光放射を吸収するためにInPで作られるか、
可視光および近赤外線スペクトルにおいて光放射を吸収するためにSiで作られるか、
中間波赤外線スペクトルにおいて光放射を吸収するためにInSbで作られるか、または
長波赤外線スペクトルにおいて光放射を吸収するためにBi
2Te
3で作られるか、
の何れである、素子。
【請求項17】
請求項11記載の素子において、前記ナノピラーのアレイが、保護コーティング内にカプセル化される、素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、一般的には、一定の波長において放射光を吸収する吸収素子に関し、更に特定すれば、垂直に対して傾斜したナノピラーのアレイを含み、特定の方向における素子の吸収応答を高めるように、角度非対称性を形成する光吸収素子に関する。
【従来技術】
【0002】
[0002] 電磁波の吸収は、特定の波長において、比較的広帯域であり入射角および偏光に感応しないことが、多くの用途には望ましい。例えば、受信機によって受信される通信信号の吸収度は、広い帯域幅および広い角度範囲にわたって高いことが望ましいのはもっともである。しかしながら、殆どの材料は、その材料の表面に入射するエネルギの多くを反射し、放射ビームの入射角(AOI)がSおよびP偏光双方の見通し角に近づくに連れて、反射が増大する。この材料の反射特性は、主にフレネル条件によるものであり、フレネル条件は、異なる屈折率を有する媒体間、例えば、空気から導波路に移動するときの光の挙動を記述する。材料の表面界面(surface interface)をナノ構造にすることにより、構造の単位セルのサイズが入射ビームの波長よりもはるかに小さくなり、ビームの吸収を改善できることが知られている。例えば、円筒状のナノポストを設けることにより、個々のナノ構造の一次方位角導波路モードへの強い結合に起因して、放射光の吸収増加を実現することができる。
【0003】
[0003] ガリウム・ナノピラーのような半導体ナノピラーのアレイを含む光吸収素子が、当技術分野では知られている。これらのナノピラーは、その比較的大きな表面積のために、光を捕獲し、したがって吸収することができる。半導体ナノピラー・アレイは入射する電磁場に感応し、充填密度およびピラー高というような、エネルギを吸収するときの構造の効率に影響を及ぼす可能性があることが、研究によって示されている。通例、傾斜型構造は、一方の媒体から他方の媒体への屈折率の勾配緩和(grading)に対処し、反射を最小限に抑えるのに役立つ。ナノピラーは、この制御を、一方の媒体から他方に遷移するときに、余りに大きな摂動に遭遇することから(from seeing too large of a perturbation)、入射電磁エネルギを和らげるのに役立つ方法として、可能にする。
【0004】
[0004] 知られているナノ構造設計の中には、二重直径(dual diameter)ナノピラーを採用するものもあり、エネルギを捕獲するのに有効であり、したがって、反射防止処置を使用せずに、光を吸収するのに有効である。二重直径ナノピラーを採用することにより、全長に沿って同じ直径を有するナノピラーによる吸収と比較して、入射光からより多くのエネルギを吸収することができる。当技術分野では、セル外形構造(geometry structure)対分散反射特性の関係を調査するために、方形、矩形、六角形等のような、円筒形以外の形状も検討されている。
【0005】
[0005] 吸収素子(absorber element)の吸収性能を高めるための反射制御に適した新規材料の開発には進展があったが、局所電磁場を操作することによって、追加の改善を行うことができる。シリコン・ナノピラーは、その表面における磁場促進(field enhancement)のように、一意の光学的挙動を小規模で呈し、異なるAOIにおいて反射性能を改善するその潜在力を明確に示す。電子ビーム・リソグラフィおよびウェハ規模プロセス(wafer scale processes)は、特定のスペクトル領域において促進(enhancement)を最大化するように調整することができる寸法を有するシリコン・ナノピラーを作成することができる。電磁スペクトルの赤外線領域における吸収に利用することができる他の技法には、自己集合プロセス(self-assembly process)を採用するものがあり、70°の堆積角で斜方蒸着によって、ポリスチレン・ナノスフェア(PSNS)の単一層にSiO2を被覆する。空気中において650°Cで焼鈍することによってPSNSを除去した後、SiO2ナノスフェア・クラウン(NSC:nano-spherical crown)の周期的アレイが残る。NSCテンプレート上において、80°の堆積角および470°Cの基板温度で、SiおよびFeを交互に堆積する。強力なシャドーイング効果によって、β-FeSi2の非密充填ナノピラー・アレイ(non-close-packed nano-pillar array)を製作することができる。β-FeSi2の周期的アレイは、温度を操作するのに有用であり、対象のIR用途に対して興味深い性能基準(performance metrics)を有することができる。
【0006】
[0006] 加えて、半導体ナノ構造のパターニングおよび生成のための低コスト・ナノスフェア・リソグラフィ方法が、従来のトップダウン製造技法に代わる潜在的な代替法を提供する。10~100nmの外形および10までのアスペクト比を有するシリコン・ナノピラー「フォーレスト」が、ナノスフェア・リソグラフィおよび深堀り反応性イオン・エッチングの組み合わせを使用するコスト効率的な選択肢によって製作されてきた。異なる長さ、直径、および密度のナノピラーを製造するためには、酸素プラズマおよび時間多重プロセスを使用して、ナノスフェア・エッチ・マスク被覆シリコン基板(nano - sphere etch mask coated silicon substrate)をエッチングすることができる。
【0007】
[0007] 今後のナノピラーの製作では、界面が明確に定められた軸状および放射状コア-シェル・ヘテロ構造も含むことができる。パターニングされたシリコン上における金属-有機化学蒸着(MOCVD:metal-organic chemical vapor deposition)選択的エリア・エピタキシによって設けられる、100nmから200nmの直径および数ミクロンの高さを有するナノピラーの均一アレイの成長によって、多次元での電子閉じ込めが生じ、電子-フォノン散乱率(rates of electron-phonon scattering)を低下させ、したがって、量子効率が更に高く、より長い波長において動作する材料を提供することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008] 半導体ナノピラーを採用する光吸収素子は、光を効果的に吸収することが示されている。しかしながら、これらの光学素子にはある種の欠点(limitations)がある。例えば、ナノピラーの半径がスペクトル吸収を制御すること、および均一な半径を有する円筒状ナノピラーが比較的狭帯域の吸収を呈することが示されている。更に、基板に関して法線に対して垂直に構成されたナノピラーを有する光吸収素子は、一般に、法線に対して±45°の角度で基板に入射する光でなければ効果的に吸収しないことが知られている。つまり、法線に対して45°と見通し角との間の角度から素子に入射する光は、効率的に吸収されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、傾斜(angled)円錐状ナノピラーを有する光吸収素子を製作する一連の製作ステップを示す。
【
図2】
図2は、傾斜円錐状ナノピラーを有する光吸収素子を製作する一連の製作ステップを示す。
【
図3】
図3は、傾斜円錐状ナノピラーを有する光吸収素子を製作する一連の製作ステップを示す。
【
図4】
図4は、傾斜円錐状ナノピラーを有する光吸収素子を製作する一連の製作ステップを示す。
【
図5】
図5は、最終的に製作された光吸収素子の等幅図である。
【
図6】
図6は、光学素子から分離したナノピラーの1本を、45°に傾けた場合を実線で示し、法線角度の場合を点線で示す側面図である。
【
図7】
図7は、横軸が波長、縦軸が吸収率を表し、法線方向に向けられたナノピラーを有する光吸収素子について、無偏光光の様々な波長に対する吸収特性を示すグラフである。
【
図8】
図8は、横軸が波長、縦軸が吸収率を表し、法線方向に対して45°に向けられた円錐状ナノピラーを有する光吸収素子について、無偏光光の様々な波長に対する吸収特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0014] 本開示の実施形態は、素子の吸収応答の角度非対称性を生じさせるために、法線に対して傾斜したナノピラーのアレイを含む光吸収素子を対象とするが、実施形態についての以下の論述は、本質的に例示に過ぎず、本開示を限定することも、その用途や使用を限定することも全く意図していない。
【0011】
[0015] 本開示は、適した半導体材料で作られ、一定のビーム方向に対して比較的広い帯域幅にわたって素子の吸収能力を高めるために、法線方向に対して傾斜した有形ナノピラーのアレイを有する放射光吸収エレメントを提案する。シリコンのような基礎的な半導体材料をサブ波長に基づいて(on a sub-wavelength basis)エッチングしてまたは成長させて、テーパー状円錐構造にすると、異なる反射および吸収特性が観察される。更に特定すると、あらゆる材料はそれ自体の特性エネルギ帯構造を有する。この帯構造のばらつきが、種々の材料において観察される広範囲の電気的特性の原因となる(responsible for)。半導体および絶縁体において、電子は複数のエネルギ帯に閉じ込められ、他の領域からの出入りが禁止される。「バンド・ギャップ」(band gap)という用語は、価電子帯の上端と導電帯の下端との間におけるエネルギ差を意味する。電子は帯間をジャンプすることができる。しかしながら、電子が価電子帯から導電帯までジャンプするためには、遷移のために特定の最小エネルギ量を必要とする。要求されるエネルギは、材料が異なれば、異なる。電子は、光子(熱)または光子(光)のいずれかを吸収することによって、導電帯にジャンプするのに十分なエネルギを得ることができる。本明細書において検討する材料は、各々、それ自体のバンド・ギャップを有し、これはその分散特性を判定するのに役立つ。
【0012】
[0016] 大きな帯域幅にわたって、異なる入射角および偏光に対してナノピラーを精度高くモデリングすることは、難しい問題である。偏光および入射角に関する共振周波数、帯域幅、高調波のばらつきを考慮しなければならない。加えて、異なる偏光および入射角に対して、広帯域要件に合致することができる適正な半導体材料を発見するプロセスは、非常に複雑になるのはもっともである。特定の種類の周期的アレイでは、等価実効屈折率は、偏光および入射角に対して複雑な依存性を有する。
【0013】
[0017]
図1~
図4は、光吸収素子10を製作するプロセスを示す一連の等幅図であり、最終的に製作された素子10を
図5に示す。尚、本明細書において説明する、光学素子10を製作するプロセスは単なる一例に過ぎず、最終的な吸収素子10を得るために、このプロセスの変形や他のプロセスも実行できることを注記しておく。更に、素子10は光スペクトルにおける放射光を吸収するために特定的に設計されるが、本明細書における論述にしたがって、他の波長帯に合わせた他の吸収素子も提供できることも注記しておく。
【0014】
[0018]
図1は、適した半導体材料で作られた半導体ウェハまたは基板12を示す。吸収に最良の半導体材料は、通例、材料のバンド・ギャップ未満の波長において高い屈折率を有し、対象の周波数帯域に対して高い損失を有する半導体材料である。適した半導体材料には、a-Siのような間接バンド・ギャップ材料(idirect bandgap material)、GaN、GaAs、InP、InSbのようなIII-V半導体材料、三元系および四元系(ternaries and quarternaries)等、CdTe、CZTSSe、CIGS、ペロフスカイト、BiTe等、ならびにa-Siのような間接バンド・ギャップ材料、GaPのようなIII-V半導体材料、三元系および四元系等を含むことができる。非限定的な一実施形態では、本明細書では、広帯域光放射吸収のために、3種類の異なる半導体材料を提案する。これらは、可視光のためのInP、可視光および近赤外線(NIR)光のためのSi、ならびに中間波IR(MWIR:mid-wave IR)光のためのInSbを含む。長波長IR(LWIR:long-wave IR)光に対してテルル化ビスマス(Bi
2Te
3)のような材料を検討するとき、半導体材料のバンドギャップ・エネルギを注意深く設計しなければならない。
【0015】
[0019] 基板12は、比較的平坦な上面18を有し、その上に、任意の適したフォトレジスト堆積プロセスによって、フォトレジスト層14をスピンする(spun)。次いで、電子ビーム・リソグラフィ・プロセスを実行して、フォトレジスト層14の上面をパターニングし、ナノポストを作成する位置を定める。次いで、フォトレジスト層14の電子ビーム露光部分が溶解するように、適した溶液中でフォトレジスト層14を現像して、この非限定的な実施形態に適した形状の孔16、ここでは、円形の孔を層14内に形成する。
【0016】
[0020] 次に、孔16を埋めるマスク層20をフォトレジスト層14上に堆積し、
図2に示すように、クロムのような任意の適したマスク材料を使用することができる。次に、
図3に示すように、基板12上に残る全てはマスク材料の円筒状キャップ22となるように、リフトオフ・プロセスにおいて適した化学薬品によってフォトレジスト層14を溶解する。次いで、基板12に反応性イオン・ドライ・エッチングを実行するように位置付けられた傾斜ステージ24または他の楔状デバイス上に、素子10を置き、ステージ24の角度によって決定される、90°以外の、基板12の表面18に対する角度で、円錐形状のナノピラー26のアレイ34を形成する。
図4に示すように、ナノピラー26の最大直径は基板12上にあり、ナノピラー26の最小直径は基板12の逆側となる。代替実施形態では、ナノピラー26の最大直径を基板12の逆側にすることができ、ナノピラー26の最小直径を基板12上にすることができる。この非限定的な実施形態では、ステージ24、つまりナノピラー26は、表面18および法線に対して45°に傾けられる。また、反応性イオン・ドライ・エッチングは、キャップ22の全てまたは殆どを除去する。尚、ナノピラー26のアレイ34は、正方形または長方形の形状または外形を有するように示されているが、これは非限定的な一例に過ぎないことを注記しておく。アレイ34は、六角形または不規則形状のような、個々の用途に適した任意の形状を有することができる。
【0017】
[0021] 反応性イオン・エッチングは、イオン源28からの高エネルギ・イオン32を使用して、ナノピラー26の長さを定める一定の深さまで、キャップ22周囲の基板12の部分を除去する。誘導結合プラズマ反応イオン・エッチング(ICP-RIE:inductively coupled plasma reactive ion etch)、深掘り反応性イオン・エッチング(DRIE:deep reactive ion etch)等のような、キャップ22のアンダーカットを抑えつつエッチングの所望の深さが得られる任意の適したドライ・エッチング・プロセスを採用することができる。イオン源28は、ナノピラー26の所望の角度配向(angle orientation)を得るために、素子10がステージ24に実装されていない場合には、素子10に向けてイオン32を概略的に表面18に対して垂直に発射する(direct)ように位置付けられている。一旦ナノピラー26が形成されたなら、PDMS(ポリジメチルシロキサン)コーティングまたは任意の他の適した保護用低屈折率材料のような、保護コーティング30内にナノピラー26をカプセル化することができる。次いで、カプセル化されたナノピラー26は、基板12の残りの部分が剥がされ、
図5に示すような最終素子10が得られる。吸収された信号を所望の場所に送るために、任意の適した方法で電線(図示せず)をナノピラー26に接続する。代替設計では、素子10が放射光を放出することもできる。
【0018】
[0022] 法線方向に対してナノピラー26を傾けることによって、法線方向から素子10を見下ろすと、素子10は角度非対称性を有することになる。これによって、素子10は、ナノピラー26が面している方向からの入射放射光に対する吸収応答を高めることが可能になる。言い換えると、ナノピラー26を一方の方向に向け、反対方向からは遠ざけるようにすることによって、その方向における素子10の吸収は、ナノピラー26が法線方向に上を向く場合よりも良くなる。入射ビームの吸収は、ナノピラー26が面する方向に対して±45°の方向において最良に行われるので、45°に配向されたナノピラーは、法線と素子10のその面に対する見通し角との間の放射光を吸収するが、ナノピラー28が垂直法線方向を向いている場合、45°と見通し角との間の放射光はさほど吸収されない。したがって、入射放射ビームの大まかな方向がわかっている場合、ナノピラー26をその方向に傾けることにより吸収が高まり、同時に他の方向からのノイズが低減する。他の実施形態では、入射放射光の方向に応じて、最良の吸収のために、ナノピラー26を他の角度に傾けなければならない場合もある。実際、ナノピラー26の角度は、法線に対して1°から見通し角、即ち、ビームの全てが表面18から反射される角度までの全域に適用することができる。
【0019】
[0023] 前述のように、ナノピラー26は円錐形状をなす。ナノピラー26をこのような形状にし、その長さにわたって一定の直径を有さないようにすることによって、素子10の吸収特性が一層広帯域になり、より広い帯域幅にわたって放射光を吸収するように改善され、したがって特定の吸収用途には一層効果的となる。しかしながら、例えば、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形、星形等というような任意の多角形形状、渦巻、弦巻、波形等というように、他の外形を有するピラー形状も等しく適用できるとして差し支えないことを強調しておく。更に、複数の断面形状を1つのナノピラーに組み込むこともでき、ナノピラーは、その長さに沿って動くと、異なる形状に移り変わる。
【0020】
[0024] ナノピラー26の長さおよび直径の選択は、吸収すべき所望の波長帯に左右される。一般に、直接遷移材料については、ナノピラー26の長さは、通例、帯域の中心波長を材料の屈折率の実部で除算した値の少なくとも2倍であり、長さが長い程性能は向上する。通例、ナノピラー26の直径は、大凡、帯域の中心波長を材料の屈折率の実部で除算した値である。間接遷移材料については、ナノピラー26の長さは、通例、帯域の中心波長を材料の屈折率の実部で除算した値の2倍よりもはるかに長い。ナノピラー26の具体的な長さおよび直径は、GaAsおよびInP半導体材料ならびに400および900nmの間の吸収波長帯の場合、長さが約1μm、直径が約50~200nmであり、InSb半導体材料ならびに1.5および5.5μmの間の吸収波長帯の場合、長さが約5μm、直径が約200nm~1μmであり、c-Si半導体材料ならびに400nmおよび1.1μmの間の吸収波長帯の場合、長さが約10μm、直径が約50nm~5μmである。可視光を吸収するための他の例をあげると、基板12はInPとしてもよく、各ナノピラー26は、最も狭い点における直径が80nm、最も広い点における直径が200nm、長さが3μmとすればよい。MWIRを吸収する場合、基板12はInSbとしてもよく、各ナノピラー26は、最も狭い点における直径が200nm、最も広い点における直径が1100nm、そして長さが15μmとすればよい。
【0021】
[0025] 以上で論じた非限定的な実施形態では、ナノピラー26が表面18に対して45°の角度に形成される。
図6は、素子10から分離したナノピラー26の1つの側面図であり、45°の角度に配向した場合を実線で示し、法線角度の場合を破線で示す。入射光ビームの方向を矢印で示す。この外形は、ナノピラーが入射ビームに対して真っ直ぐに向けられる(directly pointed at)ときに、最も効果的な吸収が得られることを示す。ナノピラー26の配向によって、素子10に入射する放射光に対して、素子のその側の半円において法線から見通し線までのいずれの方向からでも、適した吸収体が得られる。尚、逆側の半円では、法線および見通し線の間において放射光は吸収されない。
【0022】
[0026]
図7は、横軸が波長、縦軸が吸収率を表し、0°、20°、45°、60°、70°、75°、および80°のビーム入射角度に対する、法線方向に向けられたナノピラーの吸収特性を示すグラフである。
図8は、同じグラフであるが、0°、20°、45°、60°、70°のビーム入射角度に対する、45°の角度に向けられたナノピラー26についてであり、吸収性能の向上を示す。例えば、
図7は、45°のビーム角の吸収において、800nm周囲に凹みを示すが、
図8は、45°に向けられたナノピラー26について、この波長において凹みを示さない。
【0023】
[0027] 以上の論述は、本開示の例示的な実施形態を開示および説明したに過ぎない。当業者であれば、以下の特許請求の範囲に定める通りの本開示の主旨および範囲から逸脱することなく、このような論述ならびに添付図面および特許請求の範囲から、種々の変更、修正、および変形も行えることは容易に認められよう。