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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】カテーテル挿入システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/08 20060101AFI20231108BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61M25/08 500
A61B18/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020558086
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2019030566
(87)【国際公開番号】W WO2020105228
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2018217403
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】桂 英毅
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0277333(US,A1)
【文献】特表2018-524136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0276389(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/08
A61B 18/00
A61B 34/00
A61B 1/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のカテーテルを保持するとともに前記カテーテルの長軸方向に沿って前進可能な第1保持部と、
前記第1保持部よりも基端側において前記カテーテルを保持するとともに前記カテーテルの長軸方向に沿って前進可能な第2保持部と、
前記第1保持部および前記第2保持部の作動を制御する挿入制御部と、を有し、
前記挿入制御部は、前記第1保持部に向かって前記第2保持部を前進させて前記カテーテルを撓ませた状態で、前記第1保持部のみが前進するように前記第1保持部および前記第2保持部の作動を制御する、カテーテル挿入システム。
【請求項2】
長尺状のシースおよび作動要素を含む前記カテーテルと、
前記シースの基端部に連結されるとともに前記作動要素を作動させるカテーテル作動部と、をさらに有する、請求項1に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項3】
前記作動要素は、前記シースの先端部を屈曲自在な曲げ部を含む、請求項2に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項4】
前記作動要素は、前記シースの先端部に配置され、検査波を前方に向かって送信するとともに生体組織で反射した検査波を受信する検査部を含む、請求項2または請求項3に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項5】
前記作動要素は、前記シースの先端部に配置されるとともに生体組織を切断する切断部を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項6】
前記カテーテルは、前記シースの外側に配置され、かつ、前記シースの先端部において前記シースの内側に折り返されたチューブ部材をさらに有し、
前記挿入制御部は、前記切断部が生体組織を切断している状態で前記シースが前進し、前記チューブ部材の折り返された部分が前記シースの外側に繰り出されるように、前記第1保持部および前記第2保持部の作動を制御する、請求項5に記載のカテーテル挿入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル挿入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、カテーテルを生体管腔に自動的に挿入するロボットアームが開示されている。ロボットアームは、カテーテルの基端部を保持し、カテーテルを生体管腔に押し込むことによって、カテーテルを生体管腔に挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/010207号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カテーテルの基端部には、他の機器が連結される場合がある。このような場合、上記特許文献1に開示されているようなロボットアームでは、カテーテルは、基端部に連結された他の機器に引っ張られて、生体内にスムーズに挿入されない。
【0005】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、カテーテルをスムーズに挿入できるカテーテル挿入システム、カテーテル挿入方法、および挿入部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明に係るカテーテル挿入システムは、長尺状のカテーテルを保持するとともに前記カテーテルの長軸方向に沿って前進可能な第1保持部と、前記第1保持部よりも基端側において前記カテーテルを保持するとともに前記カテーテルの長軸方向に沿って前進可能な第2保持部と、前記第1保持部および前記第2保持部の作動を制御する挿入制御部と、を有し、前記挿入制御部は、前記第1保持部に向かって前記第2保持部を前進させることによって前記カテーテルを撓ませた状態で、前記第1保持部のみが前進するように前記第1保持部および前記第2保持部の作動を制御する。
【0007】
上記目的を達成する本発明に係るカテーテル挿入方法は、長尺状のカテーテルを第1保持部によって保持し、かつ、前記第1保持部よりも基端側において前記カテーテルを第2保持部によって保持し、前記カテーテルの長軸方向に沿って前記第2保持部を前記第1保持部に向かって前進させることによって前記カテーテルを撓ませ、前記第1保持部のみを前進させることによって、前記カテーテルを生体に挿入する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るカテーテル挿入システムおよびカテーテル挿入方法によれば、生体内にカテーテルをスムーズに挿入できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るカテーテル挿入システムを示す概略図である。
図2】第1実施形態に係るカテーテル挿入システムのブロック図である。
図3】第1実施形態に係るカテーテル挿入システムのカテーテルを示す概略平面である。
図4図3に示すカテーテルの先端部を拡大して示す部分断面図である。
図5】第1実施形態に係るカテーテル挿入システムの挿入部を示す斜視図である。
図6図5に示す挿入部の動作の説明に供する図である。
図7】第1実施形態に係るカテーテル挿入方法のフローチャートである。
図8】第1実施形態に係るカテーテル挿入システムを肺の検査に適用した例を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るカテーテル挿入システムのブロック図である。
図10】第2実施形態に係るカテーテル挿入システムのカテーテルを示す概略平面図である。
図11図10に示すカテーテルの先端部を拡大して示す部分断面図である。
図12】第2実施形態に係るカテーテル挿入システムの挿入部の動作の説明に供する図である。
図13】第2実施形態に係るカテーテル挿入システムを膵臓の検査に適用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るカテーテル挿入システム100を示す概略図である。図2は、第1実施形態に係るカテーテル挿入システム100のブロック図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るカテーテル挿入システム100は、カテーテル110の作動要素を作動させるカテーテル作動部120がカテーテル110の基端部に連結された状態で、カテーテル110を生体管腔に挿入するシステムである。
【0013】
本実施形態に係るカテーテル挿入システム100は、図1および図2を参照して概説すると、カテーテル110と、カテーテル作動部120と、挿入部130と、使用者端末140と、を有する。以下、カテーテル挿入システム100の各部について詳述する。
【0014】
(カテーテル)
図3は、第1実施形態に係るカテーテル挿入システム100のカテーテル110を示す概略平面図である。図4は、図3に示すカテーテル110の先端部を拡大して示す部分断面図である。
【0015】
図3および図4に示すように、本実施形態に係るカテーテル110は、長尺状のシース111と、シース111の先端部を屈曲自在な曲げ部112と、シース111の先端部に配置されるとともに検査波を送受信する検査部113と、曲げ部112および検査部113に接続される信号線114と、シース111の基端部に取り付けられたハブ115と、を有する。曲げ部112および検査部113は、カテーテル110の作動要素である。以下、カテーテル110の各部について詳述する。
【0016】
なお、以下の説明では、カテーテル110の延在方向(長手方向)を「長軸方向」と称する。カテーテル110において、長軸方向において生体内に挿入する側を「先端側」、その反対側を「基端側」と称する。また、カテーテル110の各部において、先端(最先端)および先端から一定の範囲を「先端部」、基端(最基端)および基端から一定の範囲を「基端部」と称する。
【0017】
シース111は、検査部113および信号線114が配置される内腔111aを備える。シース111は、可撓性を有する材料で形成されている。そのような材料としては、特に限定されず、例えば、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、これらのうちの1種または2種以上を組合せたもの(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド、積層体等)等が挙げられる。なお、シース111の外表面には、湿潤時に潤滑性を示す親水性潤滑被覆層を配置することが可能である。
【0018】
曲げ部112は、例えば、電圧が付加されることによって屈曲するアクチュエータによって構成できる。そのようなアクチュエータとしては、特に限定されないが、例えば、電気活性ポリマー(EAP:Electroactive Polymer)を利用したものが挙げられる。曲げ部112は、本実施形態では、シース111の先端部に配置されている。曲げ部112は、図4(A)および(B)に示すように、電圧が付加されることによって屈曲する。そのため、曲げ部112の変形に伴ってシース111の先端部が屈曲する。ただし、曲げ部112の構成は、シース111を屈曲できる限り特に限定されない。
【0019】
検査部113は、生体内で検査波を送信するとともに生体組織で反射した検査波を受信できる限り特に限定されないが、例えば、超音波を送受信する超音波振動子、および/または、赤外線等の光を送受信する光学素子(レンズやミラー)等によって構成できる。検査部113は、検査波をシース111の長軸方向における先端側に向かって送信する。なお、図3および図4では、検査部114を矩形状に示しているが、検査部114の形状は図3および図4の形状に特に限定されない。
【0020】
信号線114は、曲げ部112および検査部113に接続されて、電気信号や光信号等の信号を伝達する。信号線114は、曲げ部112に接続される第1信号線114aと、検査部113に接続される第2信号線114bと、を有する。
【0021】
ハブ115は、円筒形状を有している。図3に示すように、ハブ115の内腔には、信号線114に接続されたコネクタ部116が配置されている。ハブ115の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0022】
また、カテーテル110の先端部には、X線透視下等で造影性を備えるマーカ(図示省略)等が設けられていてもよい。
【0023】
(カテーテル作動部)
図2に示すように、カテーテル作動部120は、カテーテル110の基端部に連結されるとともに、カテーテル110の作動要素である曲げ部112および検査部113を作動させる。
【0024】
図2に示すように、カテーテル作動部120は、曲げ作動部121、検査作動部122、カテーテル制御部123、通信部124、および回転部125を有する。以下、カテーテル作動部120の各部について詳述する。
【0025】
曲げ作動部121は、曲げ部112を作動させる(屈曲させる)ための電気信号を発生させる。曲げ作動部121は、公知の電圧発生器等によって構成できる。曲げ作動部121は、カテーテル110とカテーテル作動部とか連結された状態で、第1信号線114aおよびコネクタ部116(図3および図4参照)を介して曲げ部112に電気的に接続されている。
【0026】
検査作動部122は、検査部113を作動させる(検査波を送信させる)ための電気信号や光信号等の信号を発生させるとともに、検査部113からの信号を受信する。検査作動部122は、カテーテル110とカテーテル作動部とか連結された状態で、第2信号線114bおよびコネクタ部116(図3および図4参照)を介して検査部113に接続されている。
【0027】
カテーテル制御部123は、後述する使用者端末140の統括制御部141からの指示に基づいて、カテーテル作動部120の各部の作動を制御する。カテーテル制御部123は、CPU、RAM、ROM等を含む。CPUがROMに予め格納されている各種プログラムをそれぞれRAMに読み出して実行することにより、所定の動作制御が実施される。
【0028】
通信部124は、使用者端末140等と通信するためのインターフェースである。なお、カテーテル作動部120および使用者端末140は、例えば、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の通信機能による無線通信方式、その他の非接触式の無線通信を採用することができる。
【0029】
回転部125は、図6(C)に示すように、後述する挿入部130の第1保持部131および第2保持部132の回転に連動するように、カテーテル作動部120の内部の構成要素120a(曲げ作動部121、検査作動部122、カテーテル制御部123、通信部124等)を回転させる。
【0030】
(挿入部)
図5は、第1実施形態に係るカテーテル挿入システム100の挿入部130を示す斜視図である。図6は、図5に示す挿入部130の動作の説明に供する図である。図5に示すように、挿入部130は、第1保持部131、第2保持部132、第3保持部133、および支持部134を有する。以下、挿入部130の各部について詳述する。
【0031】
第1保持部131は、カテーテル110のシース111を保持する。第2保持部132は、第1保持部131よりも基端側においてカテーテル110のシース111を保持する。第3保持部は、カテーテル作動部120を保持する。各保持部131、132、133は、本実施形態では、対象物を挟持することによって保持している。ただし、各保持部131、132、133が対象物を保持する方法は、特に限定されない。
【0032】
第1保持部131は、カテーテル110を保持した状態と保持を解除した状態とを切り替え自在に構成している。
【0033】
各保持部131、132、133は、プッシャ等の駆動部材(図示省略)を含み、カテーテル110の長軸方向に沿って前進後退自在である。なお、本明細書において「前進する」とは、長軸方向における先端側に(生体に接近する方向に)移動することを意味する。また、本明細書において「後退する」とは、長軸方向における基端側に(生体から離間する方向に)移動することを意味する。
【0034】
第1保持部131および第2保持部132は、モータ等の駆動部材(図示省略)を含み、図6(C)に示すように、カテーテル110を保持した状態で、カテーテル110をカテーテル110の長軸周りに回転自在に構成している。
【0035】
次に、各保持部131、132、133の動作について説明する。まず、図6(A)に示すように、第1保持部131がカテーテル110を保持し、第2保持部132が第1保持部131よりも基端側においてカテーテル110を保持し、第3保持部133がカテーテル作動部120を保持する。次に、図6(B)に示すように、第2保持部132および第3保持部133が、第1保持部131に向かって前進する。これによって、カテーテル110が撓む。
【0036】
次に、図6(C)に示すように、第1保持部131のみが前進する。これによって、カテーテル110の撓みが解消され、カテーテル110が生体に挿入される。なお、この際、曲げ部113によってカテーテル110の先端部を屈曲させた状態で、各保持部131、132、133は、カテーテル110およびカテーテル作動部120の内部の構成要素120aを、カテーテル110の長軸周りに回転させてもよい。これによって、挿入部130は、カテーテル110の進行方向を調整しながらカテーテル110を挿入させることができる。次に、図6(D)に示すように、第1保持部131は、保持を解除し後退する。そして、挿入部130は、再び図6(A)~(D)に示す動作を繰り返すことによって、カテーテル110を徐々に生体に挿入できる。
【0037】
図1に示すように、支持部134は、第1保持部131、第2保持部132、および第3保持部133を支持する。支持部134は、取付部135によってベッドや手術台等に取り付けられてもよい。また、支持部134の姿勢は、姿勢変更部136によって調整されてもよい。これによってカテーテル110の挿入角度を調整できる。姿勢変更部136は、本実施形態では、サーボモータ等の駆動部材(図示省略)を含み、図1に矢印a1で示すように支持部134を取付部135に対して回転自在である。また、姿勢変更部136は、本実施形態では、図1に矢印a2で示すように、支持部134の先端部において支持部134を回転自在である。また、取付部135には、人が挿入部130に不用意に接触することを防止するために、バリケード137が設けられていてもよい。
【0038】
図2に示すように、挿入部130は、挿入制御部138および通信部139をさらに有する。
【0039】
挿入制御部138は、後述する使用者端末140の統括制御部141からの指示に基づいて、挿入部130の各部の作動を制御する。挿入制御部138は、CPU、RAM、ROM等を含む。CPUがROMに予め格納されている各種プログラムをそれぞれRAMに読み出して実行することにより、所定の動作制御が実施される。
【0040】
通信部139は、使用者端末140等と通信するためのインターフェースである。なお、挿入部130および使用者端末140は、例えば、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の通信機能による無線通信方式、その他の非接触式の無線通信、有線通信を採用することができる。
【0041】
(使用者端末)
使用者端末140は、統括制御部141、記憶部142、入出力I/F143、および通信部144を有する。統括制御部141、記憶部142、入出力I/F143、および通信部144は、バス(図示省略)に接続されており、バスを介して相互にデータ等をやり取りする。以下、各部について説明する。
【0042】
統括制御部141は、カテーテル作動部120、および挿入部130の作動を制御する。また、統括制御部141は使用者端末140の各部の作動を制御する。統括制御部141は、CPUによって構成されており、記憶部142に記憶されている各種プログラムに従って、各部の制御や各種の演算処理などを実行する。
【0043】
記憶部142は、各種プログラムや各種データを記憶するROM、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや各種データを記憶するハードディスク等によって構成している。記憶部142は、CTやMRIによって取得される生体の3Dマップ等を記憶してもよい。
【0044】
入出力I/F143は、キーボード、マウス、スキャナ、マイク等の入力装置およびディスプレイ、スピーカ、プリンタ等の出力装置を接続するためのインターフェースである。
【0045】
通信部144は、カテーテル作動部120および挿入部130等と通信するためのインターフェースである。
【0046】
(カテーテル挿入方法)
図7は、第1実施形態に係るカテーテル挿方法のフローチャートである。図8は、第1実施形態に係るカテーテル挿入システム100を肺の検査に適用した例を示す図である。以下、第1実施形態に係るカテーテル挿入システム100を肺の検査に適用した例によって、本実施形態に係るカテーテル挿入方法を説明する。
【0047】
まず、使用者は、図1に示すように、カテーテル110およびカテーテル作動部120を挿入部130にセットする。カテーテル110の内腔には、プライミング液が充填される(プライミング)。プライミングは、使用者が行ってもよいし、カテーテル挿入システム100が行ってもよい。また、カテーテル110の先端部は、口の中に配置される。カテーテル110の先端部の配置は、使用者が行ってもよいし、カテーテル挿入システム100が行ってもよい。
【0048】
次に、使用者は、使用者端末140を操作して、カテーテル挿入システム100にカテーテル110を生体内に挿入するように指示する。この際、使用者は、使用者端末140を操作して、カテーテルを送達させる目的地等を設定できる。目的地としては、例えば、図8に示すように、肺胞の近傍の細気管支H等が挙げられる。カテーテル110は、内視鏡と比較して外径が小さいため、内視鏡では到達できない肺胞の近傍の細気管支Hに到達できる。
【0049】
次に、図7に示すように、統括制御部141は、生体の3Dマップに基づいて挿入経路を決定する(ステップS1)。
【0050】
次に、統括制御部141は、挿入経路に沿ってカテーテル110を所定長さだけ挿入するように、カテーテル制御部123および挿入制御部138に指示する(ステップS2)。指示を受けて、カテーテル制御部123および挿入制御部138は、挿入経路に沿ってカテーテル110を所定長さだけ挿入する。
【0051】
具体的には、まず、カテーテル制御部123に、検査部113に検査波を送受信するように指示する。これによって、統括制御部141は、カテーテル110の進行方向に生体組織が存在するか否か、および生体組織までの距離等を把握できる。なお、肺は、血管のように血液等が存在しないため、超音波だけでなく赤外線等の光を検査波として用いることができる。次に、統括制御部141は、検査波の受信信号およびステップS1で決定した挿入経路等に基づいて、カテーテル110の先端部の進行方向および挿入する所定長さ等を決定する。次に、統括制御部141は、決定した進行方向に所定長さの分だけカテーテル110が挿入されるように、カテーテル制御部123および挿入制御部138に指示する。カテーテル制御部123および挿入制御部138は、各部の作動を制御して、決定した進行方向に挿入長さの分だけカテーテル110を挿入する。なお、この際の各保持部131、132、133の動作は上述した通りであるため(図6参照)、省略する。
【0052】
次に、統括制御部141は、カテーテル110の先端部が目的地に到達したか否かを判断する(ステップS3)。カテーテル110の先端部が目的地に到達したか否かは、検査波の受信信号やカテーテル110の先端部に設けられたマーカの位置等に基づいて判断できる。肺の気管支は分岐等が多く、手動でのカテーテル110の挿入には習熟を要するが、カテーテル挿入システム100によれば、自動的にカテーテル110を挿入できるため、術者の習熟が不要となる。
【0053】
カテーテル110の先端部が目的地に到達したと判断された場合(ステップS3:Yes)、カテーテル挿入システム100によるカテーテル110の挿入が完了する。カテーテル110が目的地に到達した後は、使用者やカテーテル挿入システム100が必要な検査や処置を行う。例えば、使用者やカテーテル挿入システム100は、肺の内部の撮像や肺の生体組織の採取を行う。
【0054】
カテーテル110の先端部が目的地に到達していないと判断された場合(ステップS3:No)、カテーテル挿入システム100は、ステップS2を再び実行する。
【0055】
以上、本実施形態に係るカテーテルの挿入方法を説明したが、カテーテルの挿入方法は上記に限定されない。例えば、カテーテル110が挿入される生体管腔は、肺の気管支に限定されず、血管や尿道等であってもよい。また、上記挿入方法では、検査波による検査をした後にカテーテルを所定長さの分だけ挿入する例を説明したが、検査波による検査をしながらカテーテルを挿入してもよい。また、挿入経路は、カテーテル110の挿入途中で変更してもよい。
【0056】
(作用効果)
以上説明したように、上記実施形態に係るカテーテル挿入システム100は、長尺状のカテーテル110を保持するとともにカテーテル110の長軸方向に沿って前進可能な第1保持部131と、第1保持部131よりも基端側においてカテーテル110を保持するとともにカテーテル110の長軸方向に沿って前進可能な第2保持部132と、第1保持部131および第2保持部132の作動を制御する挿入制御部138と、を有する。挿入制御部138は、第1保持部131に向かって第2保持部132を前進させてカテーテル110を撓ませた状態で、第1保持部131のみが前進するように第1保持部131および第2保持部132の作動を制御する。
【0057】
また、上記実施形態に係るカテーテル挿入方法は、長尺状のカテーテル110を第1保持部131によって保持し、かつ、第1保持部131よりも基端側においてカテーテル110を第2保持部132によって保持する。そして、カテーテル110の長軸方向に沿って第2保持部132を第1保持部131に向かって前進させることによってカテーテル110を撓ませる。そして、第1保持部131のみを前進させることによって、カテーテル110を生体に挿入する。
【0058】
上記カテーテル挿入システム100およびカテーテル挿入方法によれば、第1保持部131および第2保持部132によってカテーテル110に撓みが形成された状態で、第1保持部131のみを前進させることによってカテーテル110が生体内に挿入される。そのため、カテーテル110を挿入する際に、カテーテル110の基端部に連結された他の器具による張力がカテーテル110に加わることを抑制できる。したがって、上記カテーテル挿入システム100およびカテーテル挿入方法によれば、カテーテル110をスムーズに挿入できる。
【0059】
また、カテーテル挿入システム100は、長尺状のシース111および作動要素を含むカテーテル110と、シース111の基端部に連結されるとともに作動要素を作動させるカテーテル作動部120と、をさらに有する。そのため、カテーテル110を挿入する際に、カテーテル作動部120による張力がカテーテル110に加わることを抑制できる。したがって、カテーテル挿入システム100によれば、カテーテルの作動要素の機能を発揮させつつ、カテーテル110をスムーズに挿入できる。
【0060】
また、作動要素は、シース111の先端部を屈曲自在な曲げ部112を含む。そのため、カテーテル挿入システム100は、曲げ部112によってシース111の先端部を屈曲させることで、シース111の進行方向を調整できる。これによって、カテーテル挿入システム100は、カテーテル110をスムーズに生体内に挿入できる。
【0061】
また、作動要素は、シース111の先端部に配置され、検査波を前方に向かって送信するとともに生体組織において反射した検査波を受信する検査部113を含む。そのため、カテーテル挿入システム100は、検査部113によって前方を検査し、検査結果に基づいてカテーテル110を生体内に挿入できる。これによって、カテーテル挿入システム100は、カテーテル110をスムーズに生体内に挿入できる。
【0062】
<第2実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態に係るカテーテル挿入システム200のブロック図である。第2実施形態に係るカテーテル挿入システム200は、生体組織を切断しながらカテーテル210を挿入させ、生体組織の間に医療用長尺体の通路となるチューブ部材211を配置する点で第1実施形態に係るカテーテル挿入システム100と相違する。
【0063】
第2実施形態に係るカテーテル挿入システム200は、カテーテル210、カテーテル作動部220、挿入部230、および使用者端末140を有する。以下、第2実施形態に係るカテーテル挿入システム200の各部について詳述する。なお、第1実施形態に係るカテーテル挿入システム100と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0064】
(カテーテル)
図10は、第2実施形態に係るカテーテル挿入システム200のカテーテル210を示す概略平面図である。図11は、図10に示すカテーテル210の先端部を拡大して示す部分断面図である。図10および図11に示すように、カテーテル210は、シース111、曲げ部112、切断部213、信号線214、ハブ115、およびチューブ部材211を有する。曲げ部112および切断部213が、カテーテル210の作動要素にあたる。
【0065】
切断部213は、シース111の先端部に配置されるとともに生体組織を切断する。切断部213は、生体組織を切断できる限り特に限定されないが、例えば、ボールチップ型の電気メス等によって構成できる。なお、本実施形態に係るカテーテルは、検査部を有さないが、カテーテルは、曲げ部、検査部、および切断部の全てを有していてもよい。
【0066】
信号線214は、曲げ部112に電気的に接続される第1信号線114aと、切断部213に電気的に接続される第2信号線214bと、を有する。
【0067】
図11に示すように、チューブ部材211は、シース111の外側に配置され、かつ、シース111の先端においてシース111の内側に折り返されている。後述する切断部によって生体組織を切断しつつ、挿入部230によってシース111が前進することによって、チューブ部材211の折り返された部分211aがシース111の外側に繰り出される。これによって、生体組織の間にチューブ部材211を配置できる。生体組織の間に配置したチューブ部材211は、他の医療用長尺体を挿入するための通路を形成する。
【0068】
チューブ部材211は、生体適合性を備える材料である限り特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリオルソエステル、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリペプチド、多糖、タンパク質、セルロースからなる群から選択される重合体等の生分解性材料等が挙げられる。
【0069】
また、カテーテル210の先端部には、X線透視下で造影性を備えるマーカ(図示省略)が設けられていてもよい。
【0070】
(カテーテル作動部)
図9に示すように、カテーテル作動部220は、曲げ作動部121、切断作動部222、カテーテル制御部123、通信部124、および回転部125を有する。
【0071】
切断作動部222は、特に限定されないが、例えば、電気メスに電流を供給する公知の電流発生器等によって構成できる。
【0072】
(挿入部)
図12は、第2実施形態に係るカテーテルシステム200の挿入部230の動作の説明に供する図である。図12に示すように、挿入部230は、第1保持部131、第2保持部132、第3保持部133、第4保持部231および支持部134を有する。また、図9に示すように、挿入部230は、挿入制御部138および通信部139をさらに有する。
【0073】
図12に示すように、第4保持部231は、チューブ部材211の基端部を保持する。第4保持部231は、支持部134に固定されている。
【0074】
次に、各保持部131、132、133、231の動作について説明する。まず、図12(A)に示すように、第1保持部131がシース111を保持し、第2保持部132が第1保持部よりも基端側においてシース111を保持し、第3保持部がカテーテル作動部120を保持し、第4保持部231がチューブ部材211の基端部を保持する。次に、図12(B)に示すように、第2保持部132および第3保持部133が、第1保持部に向かって前進する。これによって、シース111が撓む。次に、図12(C)に示すように、切断部213が作動した状態で第1保持部131のみが前進する。これによってシース111が生体に挿入され、シース111の挿入に伴って、図11に示すように、チューブ部材211の折り返された部分211aがシース111の外側に繰り出される。次に、図12(D)に示すように、第1保持部131は、保持を解除し後退する。そして、再び図12(A)~(D)に示す動作を繰り返すことによって、生体組織の間にチューブ部材211を配置することができる。
【0075】
(カテーテル挿入方法)
図13は、第2実施形態に係るカテーテル挿入システムを膵臓Sの検査に適用した例を示す図である。以下、第2実施形態に係るカテーテル挿入システム200を膵臓Sの検査に適用した例によって、本実施形態に係るカテーテル挿入方法を説明する。
【0076】
まず、使用者は、カテーテル210およびカテーテル作動部220を挿入部230にセットする。カテーテル210の内腔には、プライミング液が充填される(プライミング)。プライミングは、使用者が行ってもよいし、カテーテル挿入システム200が行ってもよい。また、カテーテル210の先端部は、腹部等の体表上に配置される。カテーテル210の先端部の配置は、使用者が行ってもよいし、カテーテル挿入システム200が行ってもよい。
【0077】
次に、使用者は、使用者端末140を操作して、カテーテル挿入システム100にカテーテル110を生体内に挿入するように指示する。この際、使用者は、使用者端末140を操作して、カテーテルを送達させる目的地等を設定できる。目的地としては、例えば、図13(A)に示すように、胃Gと膵臓Sの間等が挙げられる。
【0078】
次に、統括制御部141は、生体の3Dマップに基づいて挿入経路を決定する(ステップS1、図7参照)。
【0079】
次に、統括制御部141は、挿入経路に沿ってカテーテル110を所定長さだけ挿入するように、カテーテル制御部123および挿入制御部138に指示する(ステップS2、図7参照)。指示を受けて、カテーテル制御部123および挿入制御部138は、挿入経路に沿ってカテーテル210を所定長さだけ挿入する。
【0080】
具体的には、まず、統括制御部141は、挿入経路に基づいて、カテーテル210の先端部の進行方向および挿入する所定長さ等を決定する。次に、統括制御部141は、決定した進行方向に所定長さの分だけカテーテル210が挿入されるように、カテーテル制御部123および挿入制御部138に指示する。カテーテル制御部123および挿入制御部138は、各部の作動を制御して、決定した進行方向に挿入長さの分だけカテーテル210を挿入する。なお、この際の各保持部131、132、133、231の動作は上述した通りであるため(図12参照)、省略する。
【0081】
次に、統括制御部141は、シース111の先端部が目的地に到達したか否かを判断する(ステップS3)。シース111の先端部が目的地に到達したか否かは、カテーテル210の先端部のマーカの位置等によって判断できる。
【0082】
シース111の先端部が目的地に到達したと判断された場合(ステップS3:Yes)、カテーテル挿入システム200によるカテーテル210の挿入が完了する。
【0083】
カテーテル210が目的地に到達した後は、必要な検査や処置を行う。処置は、使用者が行ってもよいし、カテーテル挿入システム200が行ってもよい。例えば、図13(A)および(B)に示すように、生体組織の間に配置されたチューブ部材211からシース111および切断部213を抜去し、チューブ部材211の内腔を介してバルーンカテーテルBを挿入してもよい。次に、図12(C)に示すように、バルーンカテーテルBのバルーンを拡張させ、膵臓と胃を離間させてもよい。なお、シミュレーション等により、バルーンの拡張によって各臓器が所望の動作を行うように、バルーンの形状を設計することが好ましい。次に、バルーンカテーテルBの内腔に、カメラや光源等を挿入し、膵臓Sを撮像してもよい。
【0084】
シース111の先端部が目的地に到達していないと判断された場合(ステップS3:No)、カテーテル挿入システム100は再びステップS2を行う。
【0085】
以上、本実施形態に係るカテーテル挿入方法を説明したが、カテーテル挿入方法は上記に限定されない。例えば、カテーテルを送達する目的地は、膵臓と胃の間ではなく、胆のうと膵臓の間や前立腺と膀胱の間等の他の臓器間や組織間であってもよい。また、例えば、チューブ部材を配置した後は、チューブ部材の内腔にバルーンカテーテルを挿入するのではなく、膵臓の生体組織を採取する医療器具を挿入してもよい。
【0086】
(作用効果)
上記第2実施形態に係るカテーテル挿入システム200では、作動要素は、シース111の先端部に配置されるとともに生体組織を切断する切断部213を含む。そのため、カテーテル挿入システム200は、生体組織を切断しながらカテーテル210を挿入することができる。
【0087】
また、カテーテル210は、シース111の外側に配置され、かつ、シース111の先端においてシース111の内側に折り返されたチューブ部材211をさらに有する。挿入制御部138は、切断部213が生体組織を切断している状態でシース111が前進し、チューブ部材211の折り返された部分211aがシース111の外側に繰り出されるように、第1保持部131および第2保持部132の作動を制御する。そのため、生体組織の間にチューブ部材211を配置できる。
【0088】
以上、実施形態を通じて本発明に係るカテーテル挿入システムおよびカテーテル挿入方法を説明したが、本発明は明細書において説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0089】
例えば、本発明のカテーテル挿入システムによって挿入されるカテーテルは、第1実施形態および第2実施形態に係るカテーテルに限定されない。例えば、本発明のカテーテル挿入システムによって挿入されるカテーテルは、作動要素として電流が流れることにより生体組織を焼灼する電極等を備えるアブレーションカテーテルであってもよい。本発明のカテーテル挿入システムは、例えば、細く複雑な形状の心臓の静脈にアブレーションカテーテルを自動挿入するために用いてもよい。
【0090】
例えば、上記実施形態では、カテーテルを所定長さの分だけ挿入した後、第1保持部のみを後退させたが(図6(D)および図12(D)参照)、カテーテルを所定長さの分だけ挿入した後、第1保持部は後退させなくてもよい。また、カテーテルを所定長さの分だけ挿入した後、第1保持部だけでなく第2保持部も保持を解除させて後退させてもよい。
【0091】
また、例えば、上記実施形態では、挿入部が第2保持部と第3保持部が別体で構成されていたが、第2保持部と第3保持部は一体的に構成されていてもよい。
【0092】
また、カテーテル挿入システムにおける各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピュータのいずれによっても実現してもよい。また、プログラムは、インターネットなどのネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。
【0093】
本出願は、2018年11月20日に出願された日本国特許出願第2018-217403号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0094】
100、200 カテーテル挿入システム、
110、210 カテーテル、
111 シース、
112 曲げ部、
113 検査部、
120、220 カテーテル作動部、
130、230 挿入部、
131 第1保持部、
132 第2保持部、
138 挿入制御部、
211 チューブ部材、
211a シースの内側に折り返された部分、
213 切断部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13