(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】転写調節要素及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20231108BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20231108BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20231108BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20231108BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20231108BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20231108BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20231108BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231108BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231108BHJP
C12N 15/863 20060101ALI20231108BHJP
C12N 15/866 20060101ALI20231108BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20231108BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20231108BHJP
C12N 15/56 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
A61K31/7088
A61K47/61
A61K38/46
A61K35/76
A61P3/00
A61K9/127
A61K9/14
A61K48/00
C12N15/863 Z
C12N15/866 Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N15/56 ZNA
(21)【出願番号】P 2020564045
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 US2019016692
(87)【国際公開番号】W WO2019153009
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-31
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520289475
【氏名又は名称】オーデンツ セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレイ,ジョン ティー.
【審査官】飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-505126(JP,A)
【文献】特表2015-523998(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0311290(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0218395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2のセグメントに作動可能に連結された第1のセグメントを含む核酸調節要素であって、前記第1のセグメントが、デスミンプロモータ
ーを含み、前記第2のセグメントが、シナプシンプロモータ
ーを含む、前記核酸調節要素。
【請求項2】
前記第1のセグメントの3'末端が、前記第2のセグメントの5'末端に作動可能に連結されている、請求項1に記載の核酸調節要素。
【請求項3】
前記第1のセグメントの5'末端が、前記第2のセグメントの3'末端に作動可能に連結されている、請求項1に記載の核酸調節要素。
【請求項4】
請求項
1に記載の核酸調節要素を含むベクターであって、前記核酸調節要素が、導入遺伝子に作動可能に連結されており、前記核酸調節要素が、細胞への前記ベクターの導入時に前記導入遺伝子の発現を誘導する、前記ベクター。
【請求項5】
前記導入遺伝子が、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)である、請求項
4に記載のベクター。
【請求項6】
前記細胞が、筋肉細胞、ニューロン、または肝細胞である、請求項
4に記載のベクター。
【請求項7】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項
4に記載のベクター。
【請求項8】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、及びワクシニアウイルスからなる群から選択される、請求項
7に記載のベクター。
【請求項9】
前記ウイルスベクターが、AAVである、請求項
8に記載のベクター。
【請求項10】
前記AAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAVrh74血清型である、請求項
9に記載のベクター。
【請求項11】
前記ウイルスベクターが、偽型AAVである、請求項
7に記載のベクター。
【請求項12】
前記偽型AAVが、rAAV2/8またはrAAV2/9である、請求項
11に記載のベクター。
【請求項13】
請求項
1に記載の核酸調節要素を含む核酸分子を含む組成物であって、前記組成物が、リポソーム、小胞、合成小胞、エキソソーム、合成エキソソーム、デンドリマー、またはナノ粒子である、前記組成物。
【請求項14】
前記核酸調節要素が、導入遺伝子に作動可能に連結されており、前記核酸調節要素が、細胞への前記組成物の導入時に前記導入遺伝子の発現を誘導する、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
細胞において導入遺伝子を発現させる方法
での使用のための請求項4に記載のベクターまたは請求項13に記載の組成物であって、
前記方法が、前記細胞における前記導入遺伝子の転写をシミュレートするのに十分な時間、前記細胞
を前記ベクターまたは前記組成物と接触させることを含む、前記
ベクターまたは組成物。
【請求項16】
前記導入遺伝子が、GAAである、請求項
15に記載の
使用のためのベクターまたは組成物。
【請求項17】
治療を必要とするヒト患者におけるポンペ病を治療するための、請求項
4に記載のベクターを含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項
4に記載のベクターを含むキットであって、前記ベクターを細胞と接触させ、それにより調節制御要素に作動可能に連結された導入遺伝子を発現させるように、前記キットのユーザーに指示する添付文書をさらに含む、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸バイオテクノロジーの分野に関し、対象となる遺伝子の発現を促進するための組成物及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポンペ病は、リソソームグリコーゲンの処理に関与する酵素をコードする酸性α-グルコシダーゼ(GAA)遺伝子の変異によって引き起こされるリソソーム蓄積障害である。ポンペ病の患者は、細胞内のグリコーゲンの蓄積、心臓、呼吸器、及び骨格筋の機能障害、ならびに中枢神経系の病理を含む、様々な組織にわたって臨床表現型を示す。これらの障害のうちのいくつかは、組換えヒトGAA(rhGAA)を使用した酵素補充療法(ERT)によって大幅に寛解される。臨床的有効性は、hGAA ERTの免疫原性及びいくつかの罹患組織へのrhGAAの取り込みの欠如によって制限されている。遺伝子療法もまた、この疾患の潜在的な治療パラダイムとして調査されている。ポンペの治療のための遺伝子治療法の開発は、免疫系が抗GAA免疫応答を増加するのを防止しながら、罹患組織で治療有効量のGAAの発現を達成することに伴う困難さによって妨げられている。このバランスを達成することができる転写調節要素に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、ポンペ病に冒されている細胞を含む特定の組織の細胞において、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)などの対象となる遺伝子の発現を促進するための組成物及び方法を提供する。本明細書に記載の組成物及び方法は、筋肉細胞(例えば、心筋細胞)、肝細胞、及び/または中枢神経系の細胞におけるGAAなどの導入遺伝子の転写を刺激する核酸調節要素に関する。本明細書に記載の核酸調節要素は、GAAなどの導入遺伝子に作動可能に連結され得、ポンペ病などのリソソーム蓄積障害の治療のために患者(例えば、ヒト患者)に投与され得る。有利には、本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、リソソーム蓄積障害に冒されている、筋肉細胞及び/またはニューロンにおけるポンペ病を有する患者などの患者におけるGAAの発現を促進することができ、肝臓での発現を同時に刺激し得る。これは、驚くべき治療効果をもたらす。機構によって限定されることなく、本開示は、本明細書に記載の転写調節要素が、部分的に、(i)リソソーム蓄積障害に冒されている細胞における導入遺伝子の発現を促進して、病理を寛解し、(ii)免疫寛容を促進する役割を果たす肝臓での発現を刺激することができるという発見に基づいている。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法は、患者におけるリソソーム酵素欠乏症(例えば、GAA欠乏症)の有害な影響を軽減しながら、遺伝子療法によって導入された酵素に対する免疫応答の増加を防ぐまたは減少させる方法において、ポンペ病などのリソソーム蓄積障害を治療するために使用することができる。
【0004】
第1の態様では、本発明は、第2のセグメントに作動可能に連結された第1のセグメントを含む核酸調節要素を特徴とし、第1のセグメントは、アポリポタンパク質E肝臓制御領域(ApoE-HCR)またはその機能部分を含み、第2のセグメントは、デスミンプロモーターまたはその機能部分を含む。第1のセグメントの3’末端は、第2のセグメントの5’末端に作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、第1のセグメントの5’末端は、第2のセグメントの3’末端に作動可能に連結されている。
【0005】
いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号4の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有するその機能部分を含む。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号4の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号4の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号4の核酸配列を有するその機能部分を含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号1の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有するその機能部分を含む。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号1の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号1の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号1の核酸配列を有するその機能部分を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号2の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有するその機能部分を含む。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号2の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号2の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号2の核酸配列を有するその機能部分を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号4の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号4の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号4の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号4の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。例えば、第1のセグメントは、配列番号4に示される核酸を含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号1の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号1の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号1の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。例えば、第1のセグメントは、配列番号1の核酸配列を有し得る。
【0010】
いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号2の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する。第1のセグメントは、配列番号2の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有し得る。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号2の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有し得る。例えば、第1のセグメントは、配列番号2の核酸配列を有し得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する。第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有し得る。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。例えば、第1のセグメントは、配列番号3の核酸配列を有し得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、第2のセグメントは、配列番号5の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する5’領域を含む。いくつかの実施形態において、5’領域は、配列番号5の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、5’領域は、配列番号5の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。例えば、5’領域は、配列番号5の核酸配列を有し得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、第2のセグメントは、配列番号6の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する3’領域を含み得る。いくつかの実施形態において、3’領域は、配列番号6の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、3’領域は、配列番号6の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。例えば、3’領域は、配列番号6の核酸配列を有し得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、第2のセグメントは、配列番号7の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第2のセグメントは、配列番号7の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第2のセグメントは、配列番号7の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。例えば、3’領域は、配列番号7の核酸配列を有し得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、核酸調節要素は、配列番号10の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、核酸調節要素は、配列番号10の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、核酸調節要素は、配列番号10の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。例えば、核酸調節要素は、配列番号10の核酸配列を有し得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、核酸調節要素は、配列番号12の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、核酸調節要素は、配列番号12の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、核酸調節要素は、配列番号12の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。例えば、核酸調節要素は、配列番号12の核酸配列を有し得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、核酸調節要素は、第1及び第2のセグメントに対して5’または3’に位置している第3のセグメントをさらに含む。第3のセグメントは、第1及び第2のセグメントに作動可能に連結され得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、第3のセグメントは、とりわけ、ニューロン、グリア細胞、または星状細胞などの、中枢神経系の細胞内でそれに作動可能に連結された導入遺伝子の発現を刺激するプロモーターを含む。いくつかの実施形態において、第3のセグメントは、シナプシンプロモーター、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIIプロモーター、チューブリンαIプロモーター、マイクロチューブリン関連タンパク質IB(MAP IB)プロモーター、ニューロン特異的エノラーゼプロモーター、血小板由来成長因子β鎖プロモーター、ニューロフィラメント軽鎖プロモーター、ニューロン特異的VGF遺伝子プロモーター、ニューロン核(NeuN)プロモーター、大腸腺腫様性ポリポーシス(APC)プロモーター、イオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba-1)プロモーター、及びホメオボックスタンパク質9(HB9)プロモーターから選択されるプロモーター、またはそれらのバリアント(例えば、野生型プロモーター遺伝子座の核酸配列と少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、またはそれ以上の配列同一性)を有し、中枢神経系の細胞への導入時にそれに作動可能に連結された導入遺伝子の転写を刺激することができるバリアント)、またはその機能部分を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、第3のセグメントは、ニューロンにおいてそれに作動可能に連結された導入遺伝子の発現を刺激するプロモーターを含む。いくつかの実施形態において、第3のセグメントは、シナプシンプロモーター、またはその機能部分を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、第3のセグメントは、配列番号8の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第3のセグメントは、配列番号8の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第3のセグメントは、配列番号8の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第3のセグメントは、配列番号8の核酸配列を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、核酸調節要素は、配列番号11の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、核酸調節要素は、配列番号11の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、核酸調節要素は、配列番号11の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。例えば、核酸調節要素は、配列番号11の核酸配列を有し得る。
【0022】
別の態様では、本発明は、第2のセグメントに作動可能に連結された第1のセグメントを含む核酸調節要素を特徴とし、第1のセグメントは、デスミンプロモーターまたはその機能部分を含み、第2のセグメントは、プロモーター、または、ニューロン、グリア細胞、または星状細胞などの中枢神経系の細胞においてそれに作動可能に連結された導入遺伝子の発現を刺激する、その機能部分を含む。いくつかの実施形態において、第2のセグメントは、シナプシンプロモーター、GFAPプロモーター、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIIプロモーター、チューブリンαIプロモーター、MAP IBプロモーター、ニューロン特異的エノラーゼプロモーター、血小板由来成長因子β鎖プロモーター、ニューロフィラメント軽鎖プロモーター、ニューロン特異的VGF遺伝子プロモーター、NeuNプロモーター、APCプロモーター、Iba-1プロモーター、及びHB9プロモーターから選択されるプロモーター、またはそのバリアント(例えば、野生型プロモーター遺伝子座の核酸配列と少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、またはそれ以上の配列同一性)を有し、中枢神経系の細胞への導入時にそれに作動可能に連結された導入遺伝子の転写を刺激することができるバリアント)、またはその機能部分を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、第2のセグメントは、ニューロンにおいてそれに作動可能に連結された導入遺伝子の発現を刺激するプロモーターを含む。いくつかの実施形態において、第2のセグメントは、シナプシンプロモーター、またはその機能部分を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、第1のセグメントの3’末端は、第2のセグメントの5’末端に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、第1のセグメントの5’末端は、第2のセグメントの3’末端に作動可能に連結されている。
【0025】
いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号5の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する5’領域を含む。いくつかの実施形態において、5’領域は、配列番号5の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、5’領域は、配列番号5の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。例えば、5’領域は、配列番号5の核酸配列を有し得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号6の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する3’領域を含む。いくつかの実施形態において、3’領域は、配列番号6の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、3’領域は、配列番号6の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。例えば、3’領域は、配列番号6の核酸配列を有し得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号7の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号7の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第1のセグメントは、配列番号7の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。例えば、第1のセグメントは、配列番号7の核酸配列を有し得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、第2のセグメントは、配列番号8の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第2のセグメントは、配列番号8の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第2のセグメントは、配列番号8の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第2のセグメントは、配列番号8の核酸配列を有する。
【0029】
別の態様では、本発明は、前述の態様またはその実施形態のうちのいずれかの核酸調節要素を含むベクターを特徴とする。核酸調節要素は、導入遺伝子に作動可能に連結され得、細胞(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞)へのベクターの導入時に導入遺伝子の発現を誘導し得る。細胞は、例えば、筋肉細胞(例えば、心筋細胞または骨格筋細胞)、ニューロン、または肝細胞であり得る。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、GAAなどのリソソーム酵素をコードする。いくつかの実施形態において、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはワクシニアウイルスなどのウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、AAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAVrh74血清型である。ウイルスベクターは、偽型AAV、例えば、組換えAAV(rAAV)2/8またはrAAV2/9であり得る。
【0030】
別の態様では、本発明は、上記の態様またはその実施形態のうちのいずれかの核酸調節要素を含む組成物を特徴とする。組成物は、例えば、リポソーム、小胞、合成小胞、エキソソーム、合成エキソソーム、デンドリマー、またはナノ粒子であり得る。組成物において、核酸調節要素は、導入遺伝子(例えば、GAAなどのリソソーム酵素をコードする導入遺伝子)に作動可能に連結され得る。
【0031】
さらに別の態様では、本発明は、細胞における導入遺伝子の転写をシミュレートするのに十分な時間、細胞を、前述の態様またはその実施形態のうちのいずれかのベクターまたは組成物と接触させることによって、細胞において導入遺伝子を発現させる方法を特徴とする。
【0032】
別の態様では、本発明は、患者に、治療有効量の本明細書に記載のベクターまたは組成物を投与することによって、治療を必要とする患者(例えば、ヒト患者などの哺乳動物患者)におけるポンペ病などのリソソーム蓄積症を治療する方法を特徴とする。
【0033】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載のベクターまたは組成物を含むキットを特徴とする。キットは、例えば、ベクターまたは組成物を細胞(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞)と接触させ、それにより調節要素に作動可能に連結された導入遺伝子を発現するように、キットのユーザーに指示する添付文書を含み得る。
【0034】
定義
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載されている値の上下10%以内の値を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ApoE-HCRエンハンサー」という用語は、ヒトアポリポタンパク質E肝臓制御領域を指し、その核酸配列が配列番号3に示されており、配列番号3の核酸配列と少なくとも85%の同一性(例えば、85%、86%、例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%もしくはそれ以上の同一性)を有し、導入遺伝子がエンハンサーに作動可能に連結されている場合、細胞(例えば、哺乳動物細胞、ヒト細胞、またはヒト肝細胞などの真核細胞)における導入遺伝子の発現を促進する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「保存的変異」、「保存的置換」、または「保存的アミノ酸置換」という用語は、極性、静電帯電、及び立体体積などの類似の物理化学的特性を示す1つ以上の異なるアミノ酸に対する1つ以上のアミノ酸の置換を指す。これらの特性は、以下の表1にある20個の天然アミノ酸のそれぞれについて要約される。
【0037】
【0038】
この表から、保存的アミノ酸ファミリーには、例えば、(i)G、A、V、L、I、P、及びM、(ii)D及びE、(iii)C、S、及びT、(iv)H、K、及びR、(v)N及びQ、ならびに(vi)F、Y、及びWが含まれることが考えられる。したがって、保存的変異または置換は、同じアミノ酸ファミリーのメンバーによる1つのアミノ酸に置換するものである(例えば、ThrによるSer、またはArgによるLysの置換)。
【0039】
本明細書で使用される場合、「デスミンプロモーター」という用語は、配列番号7に示される核酸、ならびに配列番号7の核酸配列と少なくとも85%の同一性(例えば、85%、86%、例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%もしくはそれ以上の同一性)を有し、導入遺伝子がエンハンサーに作動可能に連結されている場合、細胞(例えば、哺乳動物細胞、ヒト細胞、またはヒト肝細胞などの真核細胞)における導入遺伝子の発現を促進する、核酸を指す。
【0040】
転写調節要素との関連で、本明細書で使用される場合、「機能部分」という用語は、標的細胞において対象となる遺伝子の転写を刺激する能力を保持する、より大きな核酸の部分を指す。例えば、アポリポタンパク質E肝臓制御領域(ApoE-HCR)は、774ヌクレオチドのエンハンサーであり、その配列は配列番号3に示されている。193ヌクレオチド(その核酸配列は、配列番号1に記載されている)を含むこの遺伝子座の一部は、より大きな遺伝子座の転写活性化特性を保持することができる。したがって、配列番号1に示される193ヌクレオチド部分は、ApoE-HCR遺伝子座の「機能部分」である。追加の例として、全長エンハンサーの転写活性化特性を保持することができるApoE-HCR遺伝子座の別の部分は、配列番号2に示される320ヌクレオチドセグメントである。したがって、配列番号2に示される320ヌクレオチドの部分は、ApoE-HCR遺伝子座の「機能部分」である。さらなる例として、全長エンハンサーの転写活性化特性を保持することができるApoE-HCR遺伝子座の別の部分は、配列番号4に示される50ヌクレオチドセグメントである。したがって、配列番号4に示される50ヌクレオチドの部分はまた、ApoE-HCR遺伝子座の「機能部分」である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、第2の分子に結合された第1の分子を指し、その分子は、第1の分子が第2の分子の機能に影響を及ぼすように配置される。2つの分子は、単一の隣接する分子の一部であってもなくてもよく、隣接しても隣接しなくてもよい。例えば、プロモーターが細胞において対象となる転写可能なポリヌクレオチド分子の転写を調節する場合、プロモーターは、転写可能なポリヌクレオチド分子に作動可能に連結されている。追加的に、ある部分の転写活性化機能が他の部分の存在によって悪影響を受けないように、それらが結合されている場合、転写調節要素の2つの部分は、互いに作動可能に連結されている。2つの転写調節要素は、リンカー核酸(例えば、介在する非コード核酸)を介して互いに作動可能に連結され得るか、または介在するヌクレオチドが存在せずに互いに作動可能に連結され得る。
【0042】
参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に対する「配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成した後、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列における核酸またはアミノ酸と同一である候補配列における核酸またはアミノ酸の割合として定義される。核酸またはアミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、当該技術分野における技術の範囲内である様々な方式で、例えばBLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェアなどの、公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者は、比較されている配列の完全長にわたる最大のアライメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列をアライメントするために適切なパラメータを決定することができる。例えば、配列同一性パーセントの値は、配列比較コンピュータプログラムBLASTを使用して生成され得る。例として、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと対比した、所与の核酸またはアミノ酸配列Aの配列同一性パーセント(代替的に、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと対比したある特定の配列同一性パーセントを有する、所与の核酸またはアミノ酸配列Aと表現され得る)は、次のように算出される:
100×(分数X/Y)
式中、Xは、AとBのそのプログラムのアライメントにおいて、配列アライメントプログラム(例えば、BLAST)によって同一のマッチとしてスコア付けされたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、Yは、Bにおける核酸の総数である。核酸またはアミノ酸配列Aの長さが核酸またはアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの配列同一性パーセントは、Aに対するBのパーセントアミノ酸配列同一性と等しくないと認識されるであろう。
【0043】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、対象に罹患しているまたは罹患し得る特定の疾患または状態を予防、治療、または制御するために、哺乳動物などの対象、例えばヒトに投与される治療化合物を含む混合物を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、及び妥当な利益/リスク比に見合った他の合併症なしに、哺乳動物(例えば、ヒト)などの対象の組織との接触に適している、化合物、材料、組成物、及び/または剤形を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、対象から単離された検体(例えば、血液、血液成分(例えば、血清または血漿)、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、組織(例えば、胎盤または皮膚)、膵液、絨毛膜絨毛サンプル、または細胞)を指す。対象は、例えば、リソソーム蓄積障害(例えば、ポンペ病)などの本明細書に記載の疾患に罹患している患者であってよい。
【0046】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」及び「結合する」という語句は、例えば、詳細に抗体またはその抗原結合断片などのリガンドによって認識される、ポリペプチド及び他の生体分子の不均一な集団における、ポリペプチドなどの特定の分子の存在を決定する結合反応を指す。タンパク質に特異的に結合するリガンド(例えば、相補的ポリヌクレオチド)は、例えば、100nM未満のKDでタンパク質に結合し得る。例えば、タンパク質に特異的に結合するリガンドは、最大100nM(例えば、1pM~100nM)のKDでタンパク質に結合し得る。別の分子またはそのドメインへの特異的結合を示さないリガンドは、特定の分子またはそのドメインに対して100nMを超える(例えば、200nM、300nM、400nM、500nM、600nm、700nM、800nM、900nM、1μM、100μM、500μM、または1mMを超える)KDを示し得る。様々なアッセイ形式を使用して、特異タンパク質に対するリガンドの親和性を決定し得る。例えば、固相ELISAアッセイは、標的タンパク質に特異的に結合するリガンドを特定するために日常的に使用されている。特異タンパク質結合を決定するために使用することができるアッセイ形式及び条件の説明については、例えば、Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,New York(1988)及びHarlow & Lane,UsingAntibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,New York(1999)を参照のこと。
【0047】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書に記載の特定の疾患または状態(リソソーム蓄積障害、例えばポンペ病など)の治療を受ける生物を指す。対象及び患者の例には、本明細書に記載の疾患または状態の治療を受けている、ヒトなどの哺乳動物が含まれる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「シナプシンプロモーター」という用語は、配列番号8に示される核酸、及び配列番号8の核酸配列と少なくとも85%の同一性(例えば、85%、86%、例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%もしくはそれ以上の同一性)を有し、導入遺伝子がエンハンサーに作動可能に連結されている場合、細胞(例えば、哺乳動物細胞、ヒト細胞、またはヒト肝細胞などの真核細胞)における導入遺伝子の発現を促進するそのバリアントを指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「転写調節要素」という用語は、少なくとも部分的に、対象となる遺伝子の転写を制御する核酸を指す。転写調節要素には、プロモーター、エンハンサー、及び遺伝子転写を制御するまたは制御するのを助ける他の核酸(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれ得る。転写調節要素の例は、例えば、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185(Academic Press,San Diego,CA,1990)に記載されている。
【0050】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療」という用語は、目的が、とりわけ、ポンペ病などのリソソーム蓄積障害の進行などの望ましくない生理学的変化または障害を阻止または遅延(低下)させることである、治療的処置を指す。有益または所望の臨床結果としては、検出可能であるか検出不能であるかに関わらず、症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の病態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行の遅延または減速、疾患病態の寛解または緩和、及び(部分的か完全かに関わらず)緩解が挙げられるが、これらに限定されない。ポンペ病などのリソソーム蓄積障害との関連で、患者の治療は、例えば、GAAをコードする酸性α-グルコシダーゼ(GAA)タンパク質または核酸(例えば、DNAまたはRNA、例えばmRNA)の濃度の増加、またはGAA活性の増加(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、500倍、1,000倍またはそれ以上などの1つ以上の検出可能な変化として現れ得る。GAAタンパク質の濃度は、本明細書に記載のELISAアッセイを含む、当該技術分野で知られているタンパク質検出アッセイを使用して決定され得る。GAAをコードする核酸の濃度は、本明細書に記載の核酸検出アッセイ(例えば、RNA Seqアッセイ)を使用して決定され得る。GAAタンパク質及び核酸の検出のための例示的なプロトコルは、以下の実施例1に提供されている。追加的に、ポンペ病などのリソソーム蓄積障害に罹患している患者の治療は、患者の筋肉機能(例えば、心臓または骨格筋機能)の改善、ならびに筋肉協調の改善として現れ得る。筋肉機能を測定するための例示的な手順は、以下の実施例1に記載されている。
【0051】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、例えば、複製及び/または発現のために、細胞(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞)への対象となる遺伝子の送達のためのビヒクルとして機能し得る、核酸、例えば、DNAまたはRNAを指す。本明細書に記載の組成物及び方法と組み合わせて有用な例示的なベクターは、プラスミド、DNAベクター、RNAベクター、ビリオン、または他の適切なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)である。外因性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを原核細胞または真核細胞に送達するための様々なベクターが開発されている。そのような発現ベクターの例は、例えば、WO1994/11026に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列、ならびに例えば、タンパク質の発現及び/または哺乳動物細胞のゲノムへのこれらのポリヌクレオチド配列の統合に使用されるさらなる配列要素を含む。本明細書に記載の導入遺伝子の発現に使用することができる特定のベクターには、遺伝子転写を指示するプロモーター及びエンハンサー領域などの調節配列を含むプラスミドが含まれる。導入遺伝子の発現に対して他の有用なベクターには、これらの遺伝子の翻訳速度を高める、または遺伝子転写から生じるmRNAの安定性もしくは核輸出を改善するポリヌクレオチド配列が含まれる。これらの配列要素には、例えば、発現ベクター上で運ばれる遺伝子の効率的な転写を指示するために、5’及び3’非翻訳領域、内部リボソーム侵入部位(IRES)、及びポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本明細書に記載の発現ベクターはまた、そのようなベクターを含む細胞の選択のためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含み得る。適切なマーカーの例には、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、またはノウルセオトリシンなどの抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】様々なベクター内の要素の配置を示す図である。GAAco、ヒトコドン最適化酸性α-グルコシダーゼ遺伝子(GAA)、ITR、逆方向末端反復、SD、スプライスドナー、SA;スプライス受容体。
【
図2】1×10
13vg/kgで投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(黒丸)及び雌マウス(灰色三角)からの大腿四頭筋組織に投与してから1カ月後に評価されるGAA活性を示すグラフである。
【
図3】RNA-seq分析による1×10
13vg/kgで投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(丸)及び雌マウス(三角)からの肝組織において測定されるhGAA転写産物を示すグラフである。内因性マウスGAAの中央値発現レベルは、横線で示される。
【
図4】1×10
13vg/kgで投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(黒丸)及び雌マウス(灰色三角)からの肝組織に投与してから1カ月後に評価されるGAA活性を示すグラフである。
【
図5】A及びBは、1×10
13vg/kg(
図5A)または3×10
13vg/kg(
図5B)で投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(丸)及び雌マウス(三角)からの血清に投与してから1カ月後に評価される抗GAA抗体レベルを示すグラフである。
【
図6】A及びBは、1×10
13vg/kg(
図6A)または3x10
13vg/kg(
図6B)で投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(丸)及び雌マウス(三角)からの血清に投与してから1カ月後に評価されるGAA活性を示すグラフである。
【
図7】A及びBは、1×10
13vg/kg(
図7A)または3×10
13vg/kg(
図7B)で投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(丸)及び雌マウス(三角)からの大腿四頭筋組織切片に投与してから1カ月後に評価される病理学的スコア(表5に報告される)を示すグラフである。
【
図8】代表的なマウスのH&E及びPASで染色した切片からの画像を示し、ハイブリッドプロモーター及び肝臓を標的としたプロモーターによって指示されるhGAA導入遺伝子を含むベクターを投与したマウスにおける、GAA活性の上昇、グリコーゲンレベルの低下、及び筋肉の病理学的修復を示す対応する測定を示す。3×10
13vg/kgで投与した代表的な対照及びベクターで処置したマウスを、血清及び大腿四頭筋におけるGAA活性、ならびに大腿四頭筋におけるグリコーゲン蓄積について分析した。グリコーゲン蓄積スコアは、標準的な手順に従って、切断し、H&E及びPASで染色したイソペンタンで凍結した四頭筋からの組織切片から評価した。
【
図9】3×10
13vg/kgで投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(黒丸)及び雌マウス(灰色三角)からの脊髄に投与してから1カ月後に評価されるGAA活性を示すグラフである。
【
図10】RNA-seq分析による1×10
13vg/kgで投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(丸)及び雌マウス(三角)からの脊髄組織において測定されるhGAA転写産物の定量化を示すグラフである。内因性マウスGAAの中央値発現レベルは、横線で示される。
【
図11】肝臓またはCNS組織におけるベクターごとの発現レベルの比率をそれぞれ推定するために、肝臓または脳組織における平均ベクターコピー数(VCN)で除算した、RNA-Seq分析によって決定されるように、投与から1カ月後に、肝臓及び脊髄におけるRNA発現のレベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
特定の組織の細胞における、リソソーム酵素(例えば、酸性α-グルコシダーゼ(GAA))をコードする遺伝子などの対象となる遺伝子の転写を刺激する転写調節要素が、本明細書に記載されている。特に、本明細書に記載の転写調節要素は、ポンペ病などのリソソーム蓄積障害に冒されている組織における標的リソソーム酵素遺伝子の発現を促進し得る。そのような組織には、筋肉組織(例えば、心臓及び骨格筋組織)ならびに中枢神経系組織が含まれる。本明細書に記載の核酸調節要素は、GAAなどの導入遺伝子に作動可能に連結され、ポンペ病などのリソソーム蓄積障害の治療のために患者(例えば、ヒト患者)に投与するためのビヒクルに組み込まれ得る。送達ビヒクルは、本明細書に記載のウイルスベクターなどのベクター、または核酸を対象となる細胞に導入するための他の薬剤(例えば、本明細書に記載のリポソーム、小胞、エキソソーム、デンドリマー、またはナノ粒子)であり得る。
【0054】
本発明は、部分的に、(i)リソソーム蓄積障害に冒されている細胞における導入遺伝子の発現を促進して、病状を寛解させ、(ii)免疫寛容を促進する役割を果たす肝臓での発現を刺激するために使用することができるという発見に基づいている。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法は、リソソーム酵素欠乏症(例えば、GAA欠乏症)の筋肉組織への有害な影響を治療しながら、導入された酵素(例えばGAA)に対する免疫反応を防ぐまたは減少させるために、ポンペ病などのリソソーム蓄積障害を治療するために使用することができる。
【0055】
以下の項では、前述の有利な特性を示す転写調節要素について説明する。以下の項はまた、本明細書に記載の転写調節要素と併せて使用し得る様々な導入遺伝子、ウイルスベクター、及びトランスフェクション試薬、ならびに様々な障害の治療に本明細書に記載の組成物を使用する方法についても説明する。
【0056】
転写調節要素
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用され得る転写調節要素は、互いに作動可能に連結された様々な部分を含み得る。例えば、本明細書に記載の転写調節要素は、配列番号3に示されるようなアポリポタンパク質E肝臓制御領域(ApoE-HCR)またはその機能部分を含み得る。ApoE-HCRの例示的な機能部分は、Dang et al.,J.Biol.Chem.270:22577-22585(1995)に記載の配列番号2に示される320ヌクレオチド部分であり、その開示は、それがApoE-HCR遺伝子座及びその機能部分に関連するため、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用され得るApoE-HCR核酸の別の例は、ApoE-HCRの193ヌクレオチドセグメントであり、その核酸配列は、配列番号1に示されている。本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用され得るApoE-HCR核酸のさらなる例は、配列番号4に示される50ヌクレオチドセグメントである。本明細書に記載の組成物及び方法と併せて有用なさらなる核酸調節要素は、上記の核酸配列に関して少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99,9%もしくはそれ以上の配列同一性)を有する核酸分子を含む。
【0057】
追加的または代替的に、本明細書に記載の転写調節要素は、デスミンプロモーターまたはその機能部分を含み得る。例えば、調節要素は、デスミン転写開始部位に対して、ヒトデスミン遺伝子座の核酸-984~-644を含むデスミンプロモーターを含み得る。この構築物の核酸配列は、配列番号5に示されている。調節要素は、デスミン転写開始部位に対して、ヒトデスミン遺伝子座の核酸-269~+76を含むデスミンプロモーターを含み得る。この構築物の核酸配列は、配列番号6に示されている。調節要素は、デスミン転写開始点に対して、ヒトのデスミン遺伝子座のヌクレオチド-984~ヌクレオチド-644及びヌクレオチド-269~ヌクレオチド+76を含むデスミンプロモーターを形成するために、介在する核酸なしで、配列番号6の核酸に融合された配列番号5の核酸を含み得る。この調節要素の核酸配列は、配列番号7に示されている。本明細書に記載の組成物及び方法と併せて有用なさらなる核酸調節要素には、上記の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99,9%もしくはそれ以上の配列同一性)を有する核酸分子を含む。
【0058】
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用され得る転写調節要素は、とりわけ、ニューロン、グリア細胞、または星状細胞などの中枢神経系の細胞内でそれに作動可能に連結された導入遺伝子の発現を刺激するプロモーターを含む。そのようなプロモーターの例は、シナプシンプロモーター、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIIプロモーター、チューブリンαIプロモーター、マイクロチューブリン関連タンパク質IB(MAP IB)プロモーター、ニューロン特異的エノラーゼプロモーター、血小板由来成長因子β鎖プロモーター、ニューロフィラメント軽鎖プロモーター、ニューロン特異的VGF遺伝子プロモーター、ニューロン核(NeuN)プロモーター、大腸腺腫様性ポリポーシス(APC)プロモーター、イオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba-1)、及びホメオボックスタンパク質9(HB9)プロモーター、またはそれらのバリアント(例えば、野生型プロモーター遺伝子座の核酸配列と少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、またはそれ以上の配列同一性)を有し、中枢神経系の細胞への導入時にそれに作動可能に連結された導入遺伝子の転写を刺激することができるバリアント)、またはその機能部分を含む。
【0059】
例えば、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用され得る転写調節要素は、シナプシンプロモーターまたはその機能部分を含み得る。シナプシンプロモーター領域を含む例示的な調節要素は、配列番号8に示されている。この構築物は、シナプシン転写開始部位に対して、ヒトシナプシン遺伝子座のヌクレオチド-465~ヌクレオチド-90を含む。本明細書に記載の組成物及び方法と併せて有用なさらなる核酸調節要素には、この核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99,9%もしくはそれ以上の配列同一性)を有する核酸分子が含まれる。
【0060】
前述の核酸調節要素を、以下の表2に要約する。
【0061】
【0062】
上記の調節要素に加えて、本明細書に記載の調節要素には、ApoE-HCR要素またはその機能部分をデスミンプロモーター及び/またはシナプシンプロモーターに組み合わせることによって形成されたもの、またはその機能部分が含まれる。例えば、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて有用な調節要素には、デスミンプロモーターまたはその機能部分に作動可能に連結された、配列番号1に示されるApoE-HCRの193ヌクレオチドセグメントを含むものが含まれる。デスミンプロモーターの機能部分は、例えば、デスミン転写開始部位に対してヌクレオチド-984~-644に及ぶ核酸、またはデスミン転写開始部位に対してヌクレオチド-269~+76に及ぶ核酸であり得る。いくつかの実施形態において、ApoE-HCR要素またはその機能部分は、デスミン転写開始部位に対して、ヒトのデスミン遺伝子座のヌクレオチド-984~ヌクレオチド-644、及びヌクレオチド-269~ヌクレオチド+76を含むデスミンプロモーターに作動可能に連結されている。本明細書に記載の転写調節要素はまた、ApoE-HCR及び/またはデスミン調節要素と組み合わせて、シナプシンプロモーターまたはその機能部分も含み得る。
【0063】
転写調節要素の例示的な組み合わせを、以下の表3に示す。
【0064】
【0065】
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて有用なさらなる核酸調節要素には、表3に示される核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99,9%もしくはそれ以上の配列同一性)を有する核酸分子が含まれる。
【0066】
標的細胞への外因性核酸の送達のための方法
トランスフェクション技術
本明細書に記載の転写調節要素に作動可能に連結された導入遺伝子などの導入遺伝子を標的細胞に導入するために使用することができる技術は、当該技術分野で知られている。例えば、エレクトロポレーションを使用して、対象となる細胞に静電電位を印加することによって、哺乳動物細胞(例えば、ヒト標的細胞)を浸透させることができる。このようにして外部電場にさらされたヒト細胞などの哺乳動物細胞は、その後、外因性核酸の取り込みを起こしやすくなる。哺乳動物細胞のエレクトロポレーションは、例えば、Chu et al.,Nucleic Acids Research 15:1311(1987)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。同様の技術であるNucleofection(商標)は、外因性ポリヌクレオチドの真核細胞の核への取り込みを刺激するために、印加電場を利用する。Nucleofection(商標)及びこの技術を実行するために有用なプロトコルは、例えば、Distler et al.,Experimental Dermatology 14:315(2005)、ならびにUS2010/0317114に詳細に記載されており、そのそれぞれの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
標的細胞のトランスフェクションに有用な追加の技術には、スクイズポレーション法が含まれる。この技術は、負荷応力に応答して形成される膜状の孔を通して外因性DNAの取り込みを刺激するために、細胞の急速な機械的変形を誘発する。この技術は、ヒト標的細胞などの細胞への核酸の送達にベクターが必要とされないという点で有利である。スクイズポレーションは、例えば、Sharei et al.,Journal of Visualized Experiments 81:e50980(2013)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
リポフェクションは、標的細胞のトランスフェクションに有用な別の技術である。この方法は、リポソーム外部に向かって、第四級アミンまたはプロトン化アミンなどのカチオン性官能基を提示することが多い、リポソームへの核酸の負荷を伴う。細胞膜がアニオン性であるので、これにより、リポソームと細胞との間の静電相互作用が促進され、最終的に、例えば、リポソームと細胞膜との直接的な融合によって、または複合体のエンドサイトーシスによって外因性核酸が取り込まれる。リポフェクションは、例えば、米国特許第7,442,386号に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。外来核酸の取り込みを誘発するために細胞膜とのイオン相互作用を利用する同様の技法には、細胞とカチオン性ポリマー-核酸複合体との接触が含まれる。細胞膜との相互作用に好ましい正電荷を付与するようにポリヌクレオチドと会合する例示的なカチオン性分子は、活性化デンドリマー(例えば、Dennig,Topics in Current Chemistry 228:227(2003)に記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)及びジエチルアミノエチル(DEAE)-デキストランであり、トランスフェクション剤としてのその使用は、例えば、Gulick et al.,Current Protocols in Molecular Biology 40:I:9.2:9.2.1(1997)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。磁気ビーズは、この方法では、核酸の取り込みを誘導するために磁場印加を利用するので、穏やかで、かつ効率的な方法で標的細胞をトランスフェクトするのに使用することができる別のツールである。この技術は、例えば、US2010/0227406に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
標的細胞による外因性核酸の取り込みを誘導するのに有用な別のツールは、細胞を穏やかに透過処理し、ポリヌクレオチドが細胞膜に浸透するようにするために、特定の波長の電磁放射線に細胞を曝露することを伴う技法であるレーザーフェクションである。この技術は、例えば、Rhodes et al.,Methods in Cell Biology 82:309(2007)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
微小胞は、本明細書に記載の方法に従って標的細胞ゲノムを改変するのに使用することができる可能性のある別のビヒクルである。例えば、遺伝子または調節配列などの対象となるポリヌクレオチドを共有結合によって組み込むために細胞ゲノムを調製するために、糖タンパク質VSV-Gと、例えば、ゲノム改変タンパク質、例えば、ヌクレアーゼとの同時過剰発現によって誘導された微小胞を用いて、内因性ポリヌクレオチド配列の部位特異的切断を後で触媒するタンパク質を細胞に効率的に送達することができる。真核細胞の遺伝子組換えのための、ジェシクル(Gesicle)とも呼ばれる、このような小胞の使用は、例えば、Quinn et al.,Genetic Modification of Target Cells by Direct Delivery of Active Protein[abstract].In:Methylation changes in early embryonic genes in cancer[abstract]、in:Proceedings of the 18th Annual Meeting of the American Society of Gene and Cell Therapy;2015 May 13,AbstractNo.122に詳述に記載されている。
【0071】
遺伝子編集技術による標的遺伝子の取り込み
上記に加えて、対象となる遺伝子をヒト細胞などの標的細胞に組み込むために使用することができる様々なツールが開発されている。標的遺伝子をコードするポリヌクレオチドを標的細胞に組み込むために使用することができるそのような方法の1つは、トランスポゾンの使用を含む。トランスポゾンは、トランスポザーゼ酵素をコードし、5’切除部位及び3’切除部位に隣接する対象となるポリヌクレオチド配列または遺伝子を含有するポリヌクレオチドである。トランスポゾンが細胞内に送達されると、トランスポザーゼ遺伝子の発現が開始し、トランスポゾンから対象となる遺伝子を切断する活性酵素を生じる。この活性は、トランスポザーゼがトランスポゾン切除部位を部位特異的に認識することによって媒介される。場合によっては、これらの切除部位は、末端反復でもよく逆方向末端反復でもよい。対象となる遺伝子は、トランスポゾンから切り出されると、哺乳動物細胞の核ゲノム内に存在する同様の切除部位の、トランスポザーゼによって触媒される切断によって哺乳動物細胞ゲノムに組み込むことができる。これにより、切断された核DNAの相補的な切除部位に対象となる遺伝子が挿入され、その後に、対象となる遺伝子を哺乳動物細胞ゲノムのDNAにつなぐホスホジエステル結合の共有結合連結によって組み込みプロセスが完了する。ある特定の場合では、トランスポゾンは、標的遺伝子をコードする遺伝子が最初にRNA生成物に転写され、次いで、DNAに逆転写された後に、哺乳動物細胞ゲノムに組み込まれるようなレトロトランスポゾンでもよい。例示的なトランスポゾン系には、piggybacトランスポゾン(例えば、WO2010/085699に詳細に記載されている)及びsleeping beautyトランスポゾン(例えば、US2005/0112764で詳細に説明されている)であり、それらのそれぞれの開示は、対象となる細胞への遺伝子送達に使用するためのトランスポゾンに関係するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
標的遺伝子を標的細胞ゲノムに組み込むための別のツールは、元々、ウイルス感染に対する細菌及び古細菌の適応防御機構として進化した系である、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/Cas系である。CRISPR/Cas系は、プラスミドDNA内の回文配列リピート配列と、関連するCas9ヌクレアーゼを含む。この一組のDNAとタンパク質は、最初に、外来DNAをCRISPR遺伝子座に組み込むことによって、標的配列の部位特異的なDNA切断を誘導する。次いで、これらの外来配列を含有するポリヌクレオチドと、CRISPR遺伝子座のリピートスペーサー要素は、ガイドRNAを作り出すために宿主細胞内で転写され、その後に、ガイドRNAは標的配列にアニールして、この部位にCas9ヌクレアーゼを局在化することができる。このように、高度に部位特異的なcas9を介したDNA切断は、cas9を標的DNA分子に近づける相互作用はRNA:DNAハイブリダイゼーションによって支配されるため、外来ポリヌクレオチドにおいて起こすことができる。結果として、対象となる任意の標的DNA分子を切断するようにCRISPR/Cas系を設計することができる。この技法は、真核生物ゲノムを編集するために利用されており(Hwang et al.,Nature Biotechnology 31:227(2013))、DNAを切断した後に、標的遺伝子をコードする遺伝子を組み込むために標的細胞ゲノムを部位特異的に編集する効率的な手段として使用することができる。遺伝子発現を調節するためにCRISPR/Casを使用することは、例えば、米国特許第8,697,359号に記載されており、その開示は、ゲノム編集のためにCRISPR/Cas系の使用に関連するため、参照により本明細書に組み込まれる。標的細胞においてゲノムDNAを部位特異的に切断した後に対象となる遺伝子を組み込むための代替方法には、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の使用が含まれる。CRISPR/Cas系とは異なり、これらの酵素は、特異的な標的配列に局在させるためにガイドポリヌクレオチドを含有しない。その代わりに、標的特異性は、これらの酵素内のDNA結合ドメインによって制御される。ゲノム編集用途におけるZFNとTALENの使用は、例えば、Urnov et al.,Nature Reviews Genetics 11:636(2010)及びJoung et al.,Nature Reviews Molecular Cell Biology 14:49(2013)に記載されており、それらのそれぞれの開示は、ゲノム編集のための組成物及び方法に関連するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
標的遺伝子をコードするポリヌクレオチドを標的細胞のゲノムに組み込むために使用することができるさらなるゲノム編集技術には、ゲノムDNAを部位特異的に切断するように合理的に設計することができるARCUS(商標)メガヌクレアーゼの使用が含まれる。そのような酵素について確立されている規定された構造活性相関を考慮すると、標的遺伝子をコードする遺伝子を哺乳動物細胞のゲノムに組み込むためにこれらの酵素を使用することは、有利である。望ましい場所でDNAを選択的に切断して、標的遺伝子を標的細胞の核DNAに部位特異的に組み込むのを可能にするヌクレアーゼを作り出すために、単鎖メガヌクレアーゼを、ある特定のアミノ酸位置において改変することができる。これらの単鎖ヌクレアーゼは、例えば、米国特許第8,021,867号及びUS8,445,251において広範に説明されており、これらのそれぞれの開示は、ゲノム編集のための組成物及び方法に関連するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
標的細胞への外因性核酸の送達のためのベクター
核酸送達のためのウイルスベクター
ウイルスゲノムは、対象となる遺伝子を標的細胞(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞)のゲノムに効率的に送達するために使用することができる豊富なベクター供給源を提供する。ウイルスゲノム内に含まれるポリヌクレオチドは、典型的には、一般化または特殊化された形質導入によって標的細胞のゲノムに組み込まれるため、このようなゲノムは、特に、遺伝子送達に有用なベクターである。これらのプロセスは、天然のウイルス複製サイクルの一部として行われ、遺伝子組み込みを誘導するために追加のタンパク質または試薬を必要としない。ウイルスベクターの例には、AAV、レトロウイルス、アデノウイルス(例えば、Ad5、Ad26、Ad34、Ad35、及びAd48)、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えば、ピコルナウイルス及びアルファウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)を含む二本鎖DNAウイルス、ならびにポックスウイルス(例えば、ワクシニア、改変ワクシニアアンカラ(MVA)、鶏痘、及びカナリアポックス)が含まれる。本発明の抗体軽鎖及び重鎖または抗体断片をコードするポリヌクレオチドを送達するのに有用な他のウイルスには、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、及び肝炎ウイルスが含まれる。レトロウイルスの例には、トリ白血病肉腫ウイルス、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスが含まれる(Coffin,J.M.,Retroviridae:The viruses and their replication,In Fundamental Virology,Third Edition,B.N.Fields,et al.,Eds.,Lippincott-Raven Publishers,Philadelphia,1996)。他の例には、マウス白血病ウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウス乳腺腫瘍ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒヒ内因性ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、マソン・ファイザー(Mason Pfizer)サルウイルス、サル免疫不全ウイルス、サル肉腫ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、及びレンチウイルスが含まれる。ベクターの他の例は、例えば、米国特許第5,801,030号に記載されており、その開示は、遺伝子療法で使用するためのウイルスベクターに関連するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
核酸送達のためのAAVベクター
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物及び方法の核酸は、細胞へのそれらの導入を促進するために、rAAVベクター及び/またはビリオンに組み込まれる。本発明において有用なrAAVベクターは、(1)発現される導入遺伝子(例えば、GAAタンパク質をコードするポリヌクレオチド)及び(2)異種遺伝子の組み込み及び発現を促進するウイルス核酸を含む組換え核酸構築物である。ウイルス核酸は、ビリオンへのDNAの複製及びパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスで必要とされるAAVのそれらの配列を含み得る。典型的な用途では、導入遺伝子は、GAAをコードし、これは、ポンペ病などのリソソーム蓄積障害に罹患している患者のGAA欠乏症を修正するのに有用である。そのようなrAAVベクターはまた、マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子も含み得る。有用なrAAVベクターは、全体的または部分的に欠失したAAV WT遺伝子のうちの1つ以上を有するが、機能的な隣接ITR配列を保持する。AAV ITRは、特定の用途に適している任意の血清型(例えば、血清型2に由来する)であり得る。rAAVベクターを使用するための方法は、例えば、Tal et al.,J.Biomed.Sci.7:279-291(2000)及びMonahan and Samulski,Gene Delivery 7:24-30(2000)に記載されており、それらのそれぞれの開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関連するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
本明細書に記載の核酸及びベクターは、細胞への核酸またはベクターの導入を促進するために、rAAVビリオンに組み込むことができる。AAVのカプシドタンパク質は、ビリオンの外部の非核酸部分を構成し、AAV cap遺伝子によってコードされる。cap遺伝子は、ビリオンのアセンブリに必要な3つのウイルスコートタンパク質、VP1、VP2、及びVP3をコードする。rAAVビリオンの構築は、例えば、米国特許第5,173,414号、同第5,139,941号、同第5,863,541号、同第5,869,305号、同第6,057,152号、及び同第6,376,237号、ならびにRabinowitz et al.,J.Virol.76:791-801(2002)及びBowles et al.,J.Virol.77:423-432(2003)に記載されており、それらのそれぞれの開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関連するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて有用なrAAVビリオンには、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、及び9を含む様々なAAV血清型に由来するものが含まれる。筋肉細胞を標的とするために、少なくとも1つの血清型1カプシドタンパク質を含むrAAVビリオンが特に有用であり得る。血清型6カプシドタンパク質が血清型1カプシドタンパク質と構造的に類似しており、筋肉細胞でのGAAの高度発現をもたらすことが期待されるため、少なくとも1つの血清型6カプシドタンパク質を含むrAAVビリオンもまた、特に有用であり得る。rAAV血清型9はまた、筋肉細胞の効率的なトランスデューサーであることが分かっている。異なる血清型のAAVベクター及びAAVタンパク質の構築及び使用は、例えば、Chao et al.,Mol.Ther.2:619-623(2000)、Davidson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:3428-3432(2000)、Xiao et al.,J.Virol.72:2224-2232(1998)、Halbert et al.,J.Virol.74:1524-1532(2000)、Halbert et al.,J.Virol.75:6615-6624(2001)、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075-3081(2001)、それらのそれぞれの開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関連するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
偽型rAAVベクターもまた、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて有用である。偽型ベクターには、所定の血清型(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8など)以外の血清型に由来するカプシド遺伝子で偽型化された所定の血清型(例えば、AAV9)のAAVベクターが含まれる。例えば、代表的な偽型ベクターは、AAV血清型2由来のカプシド遺伝子で偽型化にされた治療用タンパク質をコードするAAV8またはAAV9ベクターである。偽型rAAVビリオンの構築及び使用を含む技術は、当該技術分野で知られており、例えば、Duan et al.,J.Virol.75:7662-7671(2001)、Halbert et al.,J.Virol.74:1524-1532(2000)、Zolotukhin et al.,Methods,28:158-167(2002)、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.,10:3075-3081(2001)に記載されている。
【0079】
ビリオンカプシド中に変異を有するAAVビリオンは、変異していないカプシドビリオンよりも効果的に特定の細胞型に感染させるために使用され得る。例えば、好適なAAV変異体は、AAVの特異的細胞型への標的化を促進するために、リガンド挿入変異を有し得る。挿入変異体、アラニンスクリーニング変異体、及びエピトープタグ変異体を含むAAVカプシド変異体の構築及び特徴付けは、Wu et al.,J.Virol.74:8635-45(2000)に記載されている。本発明の方法で使用することができる他のrAAVビリオンには、ウイルスの分子育種ならびにエキソンシャッフリングによって生成されたカプシドハイブリッドが含まれる。例えば、Soong et al.,Nat.Genet.,25:436-439(2000)及びKolman and Stemmer,Nat.Biotechnol.19:423-428(2001)を参照のこと。
【0080】
治療の方法
ポンペ病
ポンペ病(II型糖原病またはGSD IIとして知られている)は、リソソーム酵素GAAの欠乏によって引き起こされる。この疾患は、GAA欠乏症は、最終的には、すべての組織、特に横紋筋細胞にグリコーゲン蓄積をもたらす、先天性の代謝異常である。加えて、中枢神経系内のグリコーゲン蓄積の効果及び骨格筋機能へのその効果が、文書化されている。
【0081】
この障害には、乳児、若年、及び成人の3つの臨床形態が知られている。乳児ポンペ病は、出生直後に発症し、進行性の筋力低下及び心不全を呈する。ポンペの乳児型は、心筋症が急速に発症することも特徴としており、患者は多くの場合、典型的には人生の最初の年に死に至るミオパシー及び神経障害を示す。成人及び若年患者の症状は、後年に発生し、骨格筋及びニューロンが主に関与する。この形態のポンペ病を示す患者は、呼吸不全により最終的に死亡する。患者は、60年以上も例外的に生存し得る。疾患の重症度と残存酸性α-グルコシダーゼ活性との間には相関関係があり、その活性は、疾患の後期発症では正常の10~20%であり、早期発症型が2%未満である。
【0082】
ヒト酸性α-グルコシダーゼ
野生型GAAのアミノ酸配列は、以下の配列番号14に示されている。
MGVRHPPCSHRLLAVCALVSLATAALLGHILLHDFLLVPRELSGSSPVLEETHPAHQQGASRPGPRDAQAHPGRPRAVPTQCDVPPNSRFDCAPDKAITQEQCEARGCCYIPAKQGLQGAQMGQPWCFFPPSYPSYKLENLSSSEMGYTATLTRTTPTFFPKDILTLRLDVMMETENRLHFTIKDPANRRYEVPLETPHVHSRAPSPLYSVEFSEEPFGVIVRRQLDGRVLLNTTVAPLFFADQFLQLSTSLPSQYITGLAEHLSPLMLSTSWTRITLWNRDLAPTPGANLYGSHPFYLALEDGGSAHGVFLLNSNAMDVVLQPSPALSWRSTGGILDVYIFLGPEPKSVVQQYLDVVGYPFMPPYWGLGFHLCRWGYSSTAITRQVVENMTRAHFPLDVQWNDLDYMDSRRDFTFNKDGFRDFPAMVQELHQGGRRYMMIVDPAISSSGPAGSYRPYDEGLRRGVFITNETGQPLIGKVWPGSTAFPDFTNPTALAWWEDMVAEFHDQVPFDGMWIDMNEPSNFIRGSEDGCPNNELENPPYVPGVVGGTLQAATICASSHQFLSTHYNLHNLYGLTEAIASHRALVKARGTRPFVISRSTFAGHGRYAGHWTGDVWSSWEQLASSVPEILQFNLLGVPLVGADVCGFLGNTSEELCVRWTQLGAFYPFMRNHNSLLSLPQEPYSFSEPAQQAMRKALTLRYALLPHLYTLFHQAHVAGETVARPLFLEFPKDSSTWTVDHQLLWGEALLITPVLQAGKAEVTGYFPLGTWYDLQTVPVEALGSLPPPPAAPREPAIHSEGQWVTLPAPLDTINVHLRAGYIIPLQGPGLTTTESRQQPMALAVALTKGGEARGELFWDDGESLEVLERGAYTQVIFLARNNTIVNELVRVTSEGAGLQLQKVTVLGVATAPQQVLSNGVPVSNFTYSPDTKVLDICVSLLMGEQFLVSWC(配列番号14)
【0083】
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用され得るGAAポリペプチドをコードする例示的な遺伝子には、配列番号14に示される野生型GAAタンパク質をコードする遺伝子、ならびに配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)機能的GAA酵素が含まれる。本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用され得るGAAポリペプチドをコードする遺伝子は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して、1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するものなど、1つ以上のアミノ酸置換を有するものをさらに含む。例えば、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用され得るGAAポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列に対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有するものを含む。
【0084】
本明細書に記載の転写調節要素は、ポンペ病に罹患している患者などのリソソーム蓄積症患者に欠乏しているGAAなどの導入遺伝子に作動可能に連結することができる。本明細書に記載の調節要素の転写制御下にあるリソソーム酵素を含む構築物は、ベクター(または本明細書に記載の他のトランスフェクション剤)に組み込まれ、リソソーム蓄積障害を治療するために患者に投与され得る。有利には、本明細書に記載の転写調節要素は、筋肉細胞及び中枢神経系の細胞などの疾患に冒されている細胞における欠損リソソーム酵素(例えば、GAA)をコードする遺伝子の転写を促進し得る。さらに、本明細書に記載の調節要素は、患者が欠乏している酵素をコードする遺伝子の導入に他の方法で伴う可能性がある免疫応答を低減または排除するというさらなる利点を伝える。本明細書に記載の転写調節要素の有利な特性は、以下の実施例1でさらに詳細に報告されている。
【0085】
薬学的組成物、投与経路、及び単位用量
本明細書に記載の転写調節要素は、リソソーム酵素(例えば、GAA)などの導入遺伝子に作動可能に連結され、リソソーム蓄積障害(例えば、ポンペ病)に罹患しているヒト患者などの患者に投与するためのビヒクルに組み込まれ得る。治療用導入遺伝子に作動可能に連結された、本明細書に記載の転写調節要素を含むウイルスベクターなどのベクターを含む薬学的組成物は、当該技術分野で知られている方法を使用して調製することができる。例えば、そのような組成物は、例えば、生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)、参照により本明細書に組み込まれる)を使用して、例えば凍結乾燥製剤または水溶液の形で所望の形態で調製することができる。
【0086】
治療用導入遺伝子に作動可能に連結された転写調節要素を含む、本明細書に記載のAAVベクター及び他のものなどのウイルスベクターは、様々な投与経路によって患者(例えば、ヒト患者)に投与され得る。投与経路は、疾患の発症及び重症度によって変わり得、例えば、皮内、経皮、非経口、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮下、経皮、気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、灌流、洗浄、及び経口投与が含まれ得る。血管内投与には、患者の血管系への送達が含まれる。いくつかの実施形態において、投与は、血管内(静脈内)と見なされる血管への投与であり、いくつかの投与では、投与は、動脈(動脈内)と見なされる血管への投与である。静脈には、内頸静脈、末梢静脈、冠状静脈、肝臓静脈、門脈、大伏在静脈、肺静脈、上大静脈、下大静脈、胃静脈、脾臓静脈、下腸間膜静脈、上腸間膜静脈、頭側静脈、及び/または大腿静脈が含まれるが、これらに限定されない。動脈には、冠状動脈、肺動脈、上腕動脈、内頸動脈、大動脈弓、大腿動脈、末梢動脈、及び/または毛様体動脈が含まれるが、これらに限定されない。送達は、細動脈または毛細血管を介して、またはそれらに対するものであってよいことが企図される。
【0087】
治療レジメンは、変動し、多くの場合、疾患重症度ならびに患者の年齢、体重、及び性別に応じて異なり得る。治療には、対象となる遺伝子を様々な単位用量で標的細胞に導入するのに有用であると本明細書に記載のベクター(例えば、ウイルスベクター)または他の薬剤の投与が含まれ得る。各単位用量は、通常、所定の量の治療用組成物を含む。投与される量、ならびに特定の投与経路及び製剤は、臨床分野の当業者の技術の範囲内である。単位用量は、単回注射として投与される必要はないが、設定された期間にわたる連続的注入を含み得る。本明細書に記載のウイルスベクターの単位用量は、都合よく、ウイルス構築物のプラーク形成単位(pfu)で記載され得る。単位用量は、例えば、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012から1013pfu及びそれ以上の範囲であり得る。追加的または代替的に、ウイルスの種類及び達成可能な力価に応じて、1~100、10~50、100~1,000、あるいは最大約または少なくとも約1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、または1×1015もしくはそれ以上の感染性ウイルス粒子(vp)を送達し得、それらの間にあるすべての値及び範囲を含む。
【0088】
本明細書に記載の核酸及びウイルスベクターの混合物は、1つ以上の賦形剤、担体、または希釈剤と好適に混合された水中で調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液状ポリエチレングリコール及びこれらの混合物中、及び油中で調製され得る。これらの調製物は、通常の保存条件及び使用条件下で、微生物の発育を阻止するための保存剤を含有し得る。注射用途に好適な薬学的形態には、滅菌水溶液もしくは分散液、及び滅菌注射可能溶液もしくは分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる(US5,466,468に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。どんな場合でも、製剤は、滅菌であり得て、簡単にシリンジに入れることができる程度に流体であり得る。製剤は、製造及び貯蔵の条件下で安定し得り、細菌及び真菌などの微生物の混入作用から保存され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコールなど)、その好適な混合物及び/または植物油を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、また界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の抑制は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中の使用によってもたらされ得る。
【0089】
例えば、本明細書に記載の薬学的組成物を含む溶液は、必要に応じて、適切に緩衝化され得、液体希釈剤は、最初に十分な生理食塩水またはグルコースで等張化される。これらの特定の水溶液は、特に、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内の投与に適している。この点について、使用することができる滅菌水性媒体は、本開示に照らして、当業者に知られている。例えば、1用量を1mlのNaCl等張液中に溶解し、1000mlの皮下注射液に加えるか、予定注射部位に注射することができる。用量については、治療がなされる対象の状態に応じて、いくらかの変動が必然的に生じ得る。いずれにせよ、投与を担当する者が個々の対象に適切な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与の場合、調製物は、FDA生物学的製剤評価オフィスが要求する、滅菌性、発熱性、一般的安全性、及び純度の基準を満たす必要がある。
【実施例】
【0090】
以下の実施例は、本明細書に記載される組成物及び方法がどのように使用され、作製され、評価され得るかについての説明を当業者に行うために示されるものであり、単に例示的なものであるように意図されており、本発明者が本発明として見なす範囲を限定するようには意図されていない。
【0091】
実施例1.ポンペ病患者における酸性α-グルコシダーゼ遺伝子送達のために最適な組織発現の確立
目的
いくつかのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、ポンペのマウスモデルにおける一連の用量で、異なる組織(例えば、筋肉及び肝臓)での発現を標的とするように設計された。ポンペマウスモデルでの全身投与後、一連の用量で、異なる組織及び/または組織の組み合わせへのヒト酸性α-グルコシダーゼ遺伝子(hGAA)の発現を誘導するように設計された6つのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの結果を比較した。ポンペ病の治療のために全身投与されたAAV-GAAの臨床試験への翻訳のために、最適な多組織発現プロファイルを持つベクターが、選択された。
【0092】
この研究では、ベクター用量及び標的組織発現プロファイルを調べて、呼吸、心臓、及び骨格筋の機能、ならびに組織でのGAA活性及びグリコーゲンの蓄積を含む、患者におけるポンペ病に関連するこのモデルの様々なエンドポイントにどのように影響したかを判断した。本明細書に記載の発見は、AAV遺伝子療法のために最適化されたhGAAベクターの臨床翻訳を支持する。
【0093】
材料及び方法
ベクター及びベクター生成
ベクター2(AAV9-Des-hGAAco)、ベクター3(AAV8-LDes-hGAAco)、ベクター4(AAV8-LNDes-hGAAco)、ベクター5(AAV8-LDes2-hGAAco)、及びベクター6(AAV8-Des3-hGAAco)は、標準的な分子生物学技術を介してクローン化され、哺乳動物細胞への2-プラスミド一過性トランスフェクションに基づいたスケール化された生産方法で製造された。各ベクターのゲノム力価は、ddPCRにより決定した。候補ベクターを、以下の表4に要約する。構築物の逆方向末端反復(ITR)領域の一般的な構成の略図を、
図1に示す。
【0094】
【0095】
転写調節要素
ベクター番号1のGAA導入遺伝子に作動可能に連結された転写調節要素の核酸配列は、5’から3’に、ヒトα-1抗トリプシンプロモーター(以下の配列番号13に示されている)に作動可能に連結された、ApoE-HCR(配列番号1に示されている)の193ヌクレオチドセグメントを含む。この構築物で使用された、組み合わせられたApoE-HCR/ヒトα-1抗トリプシン調節要素の核酸配列は、配列番号9に示されている。
CCCCTAAAATGGGCAAACATTGCAAGCAGCAAACAGCAAACACACAGCCCTCCCTGCCTGCTGACCTTGGAGCTGGGGCAGAGGTCAGAGACCTCTCTGGGCCCATGCCACCTCCAACATCCACTCGACCCCTTGGAATTTCGGTGGAGAGGAGCAGAGGTTGTCCTGGCGTGGTTTAGGTAGTGTGAGAGGGGAATGACTCCTTTCGGTAAGTGCAGTGGAAGCTGTACACTGCCCAGGCAAAGCGTCCGGGCAGCGTAGGCGGGCGACTCAGATCCCAGCCAGTGcACTTAGCCCCTGTTTGCTCCTCCGATAACTGGGGTGACCTTGGTTAATATTCACCAGCAGCCTCCCCCGTTGCCCCTCTGGATCCACTGCTTAAATACGGACGAGGACAGGGCCCTGTCTCCTCAGCTTCAGGCACCACCACTGACCTGGGACAGTGAATC(配列番号9)
GAATGACTCCTTTCGGTAAGTGCAGTGGAAGCTGTACACTGCCCAGGCAAAGCGTCCGGGCAGCGTAGGCGGGCGACTCAGATCCCAGCCAGTGcACTTAGCCCCTGTTTGCTCCTCCGATAACTGGGGTGACCTTGGTTAATATTCACCAGCAGCCTCCCCCGTTGCCCCTCTGGATCCACTGCTTAAATACGGACGAGGACAGGGCCCTGTCTCCTCAGCTTCAGGCACCACCACTGACCTGGGACAGTGAATC(配列番号13)
【0096】
ベクター番号2のGAA導入遺伝子に作動可能に連結された転写調節要素の核酸配列は、短縮されたデスミンプロモーターである。この短縮されたデスミンプロモーターは、(デスミン転写開始部位に対してヌクレオチド-269~+70を含む)配列番号6の核酸配列を有する3’領域に融合された(デスミン転写開始部位に対してヌクレオチド-984~-644を含む)配列番号5の核酸配列を有する5’領域を含む。この構築物で使用される転写調節要素の核酸配列は、配列番号7に示されている。
【0097】
ベクター番号3のGAA導入遺伝子に作動可能に連結された転写調節要素の核酸配列は、5’から3’に、短縮されたデスミンプロモーターに作動可能に連結された、ApoE-HCR(配列番号1に示されている)の193ヌクレオチドセグメントを含む。この短縮されたデスミンプロモーターは、(デスミン転写開始部位に対してヌクレオチド-269~+70を含む)配列番号6の核酸配列を有する3’領域に融合された(デスミン転写開始部位に対してヌクレオチド-984~-644を含む)配列番号5の核酸配列を有する5’領域を含む。この構築物で使用される組み合わせられたデスミンプロモーターの核酸配列は、配列番号7に示されている。この構築物で使用される組み合わせられたApoE-HCR/デスミン転写調節要素の核酸配列は、配列番号10に示されている。
【0098】
ベクター番号4のGAA導入遺伝子に作動可能に連結された転写調節要素の核酸配列は、5’から3’に、短縮されたデスミンプロモーターに作動可能に連結された、ApoE-HCRの193ヌクレオチドセグメントに作動可能に連結されたシナプシンプロモーターを含む。この構築物で使用されるシナプシンプロモーターの核酸配列は、(シナプシン転写開始部位に対してヌクレオチド-465~-90を含む)配列番号8に示されている。この構築物で使用されるApoE-HCR領域のセグメントの核酸配列は、配列番号1に示されている。この構築物で使用される短縮されたデスミンプロモーターは、(デスミン転写開始部位に対してヌクレオチド-269~+70を含む)配列番号6の核酸配列を有する3’領域に融合された(デスミン転写開始部位に対してヌクレオチド-984~-644を含む)配列番号5の核酸配列を有する5’領域を含む。この構築物で使用される組み合わせられたデスミンプロモーターの核酸配列は、配列番号7に示されている。この構築物で使用される組み合わせられたシナプシン/ApoE-HCR/デスミン転写調節要素の核酸配列は、配列番号11に示されている。
【0099】
ベクター番号5のGAA導入遺伝子に作動可能に連結された転写調節要素の核酸配列は、5’から3’に、短縮されたデスミンプロモーターに作動可能に連結された、ApoE-HCR(配列番号4に示されている)の50ヌクレオチドセグメントを含む。この短縮されたデスミンプロモーターは、(デスミン転写開始部位に対してヌクレオチド-269~+70を含む)配列番号6の核酸配列を有する3’領域に融合された(デスミン転写開始部位に対してヌクレオチド-984~-644を含む)配列番号5の核酸配列を有する5’領域を含む。この構築物で使用される組み合わせられたデスミンプロモーターの核酸配列は、配列番号7に示されている。この構築物で使用される組み合わせられたApoE-HCR/デスミン転写調節要素の核酸配列は、配列番号12に示されている。
【0100】
ベクター番号6のGAA導入遺伝子に作動可能に連結された転写調節要素の核酸配列は、短縮されたデスミンプロモーターである。この短縮されたデスミンプロモーターは、(デスミン転写開始部位に対してヌクレオチド-269~+70を含む)配列番号6の核酸配列を有する3’領域に融合された(デスミン転写開始部位に対してヌクレオチド-984~-644を含む)配列番号5の核酸配列を有する5’領域を含む。この構築物で使用される転写調節要素の核酸配列は、配列番号7に示されている。
【0101】
インビボ研究
動物のすべての手順は、Institutional Animal Care and Use Committee of Jackson Laboratories,Bar Harbor,MEによって承認され、Jackson Laboratories,Bar Harbor,MEで行われた。B6.129-Gaawtマウス及びB6.129-Gaatm1Rabnホモ接合性変異マウスは、ジャクソン研究所から入手した。AAVロットは、ビヒクルで希釈することによって注射用に調製され、用量は、マウスの体重測定に従って、ベクターまたはビヒクルの単回静脈内投与によって、示されるように3×1012vg/kg、1×1013vg/kg、3×1013vg/kg、または1×1014vg/kgで投与された。臨床観察及び死亡率観察は、投与から研究の終了まで毎日行われた。投与から4週間または12週間後に、マウスを殺処分にし、剖検した。採取された組織は、処理され、その後の分析のために第三者開発業務受託機関に送られた。
【0102】
GAA活性
α-グルコシダーゼ(GAA)活性は、マウス組織(例えば、肝臓、心臓、脳、及び脊椎)ならびに血清で評価された。血清または組織ホモジネートを、GAAによって加水分解されて加水分解生成物4-メチルウンベリフェロン(4-MU)を生成する蛍光発生基質4-メチルウンベリフェリルα-D-グルコピラノシド(4-MUG)とインキュベートした。4-MUは、蛍光プレートリーダーで検出され、サンプルの酵素活性は、4-MU標準曲線を使用して定量化された。
【0103】
抗GAA抗体分析
Maxisorp 96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific)を、組換えhGAAタンパク質(R&D Systems)でコーティングした。ブロッキング後、1:200で希釈した血漿サンプルを、プレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。HRPにコンジュゲートした抗マウス二次抗体を、検出のために使用した。次いで、蛍光発生基質をウェルに加え、光強度をプレートリーダーで評価した。
【0104】
RNA-Seq分析
全RNAを組織から単離し、ポリAを選択した標準的なイルミナ鎖特異的プロトコルを使用してシークエンシングライブラリーを調製した。ライブラリーは、サンプルごとにインデックス化され、組織型ごとにプールし、4レーン(2×150bpリード)にわたってIllumina HiSeqによって配列決定した。アダプター配列は、最初にSkewerを使用してFASTQファイルからトリミングされ、次いでhGAAを含む転写産物量を、Salmon(GCバイアス及びストランド情報を考慮)を使用してトリミングされたFASTQファイルから定量化し、最後に転写数を、BioconductorからのDESeq2パッケージを使用してライブラリーサイズに対して正規化した。
【0105】
病理学的評価
イソペンタンで凍結した組織を切断し、標準的な手順に従って、H&E及びPASで染色した。次いで、切片を、訓練された病理学者が盲目的に分析し、以下の注釈(表5も参照のこと)に従ってスコアを評価した:1.正常、2.繊維の10~49%に見られる大小のグリコーゲン凝集体、3.繊維の50~90%に見られる大小のグリコーゲン凝集体、4.小さなグリコーゲンが繊維の90%超凝集し、大きなグリコーゲンがまれな繊維でのみ凝集する、5.小さなグリコーゲンが繊維の90%超凝集し、大きなグリコーゲンが繊維の30%超凝集する。
【0106】
結果
ハイブリッドプロモーターは、肝臓及び筋肉のGAA発現バランスを調整する
GAA活性は、筋肉及び肝臓組織で評価された。筋肉中のGAA活性を決定するために、1×10
13vg/kgで投与した対照及びベクターで処置したマウスについて雄(黒丸)及び雌マウス(灰色三角)からの大腿四頭筋組織におけるGAA活性は、投与から1カ月後に評価した(材料及び方法を参照のこと)(
図2)。肝組織中のGAA活性を決定するために、1×10
13vg/kgで投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(黒丸)及び雌マウス(灰色三角)からの肝組織に投与してから1カ月後にGAA活性を評価した(
図4)。追加的に、hGAA転写産物は、RNA-Seq分析によって1×10
13vg/kgで投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(丸)及び雌マウス(三角)からの肝組織において測定された(
図3)。内因性マウスGAAの中央値発現レベルは、横線で示される。
【0107】
これらの結果は、ハイブリッドプロモーター構築物が肝臓及び筋肉で発現されたことを示す。GAA活性は、筋肉を標的としたハイブリッドプロモーター構築物で大腿四頭筋に保存された。遺伝子操作された肝臓で増強されたプロモーター設計と一致して、ベクター1ならびにハイブリッドベクター3及び4は、肝臓で最高レベルの発現及び活性を示した。
【0108】
hGAAへの抗体反応性に対する肝臓発現の影響も評価された。抗GAA抗体レベルは、1×10
13vg/kg(
図5A)または3×10
13vg/kg(
図5B)で投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(黒丸)及び雌マウス(灰色三角)からの血清に投与してから1カ月後に評価した。さらに、GAA活性は、1x10
13vg/kg(
図6A)または3×10
13vg/kg(
図6B)で投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(黒丸)及び雌マウス(灰色三角)からの血清に投与してから1カ月後に評価した。
【0109】
肝臓の発現が上昇すると、hGAAに対する抗体反応性が低下する。hGAAに対する抗体反応性が低下すると、ベクター1、3、及び4の血清GAAが上昇した。要約すると、プロモーターの肝活性が上昇すると、用量依存的に抗GAA免疫原性が低下し、血清中のGAA活性レベルが上昇した。
【0110】
肝臓のみのプロモーターベクターと比較してハイブリッドプロモーターからの大腿四頭筋の病変の改善
筋肉の病変は、酵素補充療法によってヒトで修正することは古典的に困難である。筋肉の病変の改善における各ベクターの影響を判断するために、1×10
13vg/kg(
図7A)または3×10
13vg/kg(
図7B)で投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(黒丸)及び雌マウス(灰色三角)から切断した大腿四頭筋の病理学的スコア(表5)を、評価した。
【0111】
GAA活性、グリコーゲンレベル、及び筋肉の病理学的修復を、ハイブリッドプロモーターによって指示されるhGAA導入遺伝子を含むベクターを投与したマウスにおいて評価した。3×10
13vg/kgで投与した代表的な対照及びベクターで処置したマウスを、血清及び大腿四頭筋におけるGAA活性、ならびに大腿四頭筋におけるグリコーゲン蓄積について分析し、これらに対する値を
図8に報告される。グリコーゲン蓄積スコアは、標準的な手順に従って、切断し、H&E及びPASで染色したイソペンタンで凍結した大腿四頭筋からの組織切片から評価し、これらの値を
図8に報告される。代表的なマウスからのH&E及びPASで染色した切片からの画像もまた、
図8に示されている。
【0112】
筋肉の発現は、インビボでの筋肉の病変の改善に必要であった。ハイブリッドプロモーターで投与したマウスは、GAAマウスモデルで筋肉の病変スコアの改善を達成した。いくつかのベクターは、3×1013vg/kgの用量で雄マウス及び雌マウスにおける病理学的スコアの改善をもたらした。
【0113】
【0114】
脊髄におけるベクター3に関連するGAA活性及びデノボGAA転写産物の証拠
ハイブリッドベクターがCNSベースのポンペの症状を修復する能力を評価するために、GAA活性を、3×10
13vg/kg(
図9)で投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(黒丸)及び雌マウス(灰色三角)からの脊髄に投与してから1カ月後に評価した。追加的に、hGAA転写産物は、RNA-seq分析による1×10
13vg/kg(
図10)で投与した対照及びベクターで処置したマウスにおける雄マウス(丸)及び雌マウス(三角)からの脊髄組織において測定された。内因性マウスGAAの中央値発現レベルは、横線で示される。肝臓またはCNS組織におけるベクターごとの発現レベルの比率をそれぞれ推定するために、RNA-Seq分析によって決定されるように、肝臓または脊髄におけるRNA発現のレベルを、肝臓または脳組織における平均ベクターコピー数(VCN)で除算した(
図11)。
【0115】
これらの結果は、脊髄組織におけるベクター3からのGAA活性及びデノボGAA転写産物の証拠を示す。ベクター3における脊髄での発現は、VCNごとに、肝臓での発現と同等であった
【0116】
結論
この実施例によって示されるように、ベクター3のような操作された合成ハイブリッドプロモーターは、筋肉、肝臓、及びCNS組織における真正なhGAA発現を指示した。肝臓の寄与により、例えば、ベクター3に対して好ましい免疫原性プロファイルをもたらした。筋肉の寄与により、例えばベクター3に対して好ましいGAA活性、グリコーゲンの回復、及び筋肉の病理学的観察結果をもたらす。追加的に、脊髄及びデノボ転写産物におけるGAA活性に基づいてCNS活性(例えば、ベクター3に対する)が証明されている。本発明者らの所見は、ポンペ病のAAV遺伝子療法のために最適化されたhGAAベクターとして本明細書に記載のベクターの臨床翻訳を支持する。
【0117】
実施例2.転写調節要素に作動可能に連結されたGAA導入遺伝子を含むベクターの投与によるポンペ病の治療
当該技術分野で知られている従来の分子生物学技術を使用して、GAAなどの治療用タンパク質をコードする遺伝子は、転写調節要素(例えば、上記の実施例1に記載の転写調節要素)に作動可能に連結することができる。その後、遺伝子を、ウイルスベクターなどのベクターに組み込み、遺伝子の欠損に関連する疾患に罹患している患者に投与することができる。例えば、GAAの欠乏を特徴とするポンペ病、リソソーム蓄積障害に罹患している患者は、筋肉細胞、ニューロン、及び肝細胞におけるGAAを促進する転写調節要素の制御下でGAA遺伝子を含むウイルスベクターを投与することができる。例えば、偽型AAV2/8またはAAV2/9ベクターなどのAAVベクターは、ベクターの5’逆方向末端反復と3’逆方向末端反復との間にGAA遺伝子を組み込むベクターを生成することができ、遺伝子は、上記の実施例1に記載の転写調節要素の制御下に置くことができる。AAVベクターは、とりわけ、静脈内、筋肉内、または皮下などの様々な投与経路によって対象に投与することができる。
【0118】
ベクターを患者に投与した後、当業者は、様々な方法によって、GAA遺伝子の発現、及び療法に応答した患者の改善をモニタリングすることができる。例えば、医師は、治療法に対する患者の反応を確認するために、患者の筋肉機能(例えば、心筋機能)及び/またはグリコーゲン蓄積をモニタリングすることができる。患者の筋肉機能が改善し、及び/または療法を施した後のグリコーゲン蓄積レベルが低下したという所見は、患者が治療に好意的に反応することを示し得る。その後の用量は、必要に応じて決定及び投与することができる。
【0119】
他の実施形態
この本明細書に記述されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、各独立した刊行物または特許出願が、明確かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
本発明は、その具体的な実施形態と関連して説明してきたが、さらなる修正が可能であり、本出願は、一般に本発明の原理に従う、本発明のいかなる変形形態、用途、または適合も、本発明が関連する技術の範囲内で知られているまたは通例の実施の範囲内に入るような、以下で記載され、特許請求項の範囲内にある、基本的な特徴に適用され得るような本発明からの逸脱も含めて、包含することを意図するものであることを理解されよう。
【0121】
他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。
本発明は、以下を提供する。
1. 第2のセグメントに作動可能に連結された第1のセグメントを含む核酸調節要素であって、前記第1のセグメントが、アポリポタンパク質E肝臓制御領域(ApoE-HCR)またはその機能部分を含み、前記第2のセグメントが、デスミンプロモーターまたはその機能部分を含む、前記核酸調節要素。
2. 前記第1のセグメントの3’末端が、前記第2のセグメントの5’末端に作動可能に連結されている、上記1に記載の核酸調節要素。
3. 前記第1のセグメントの5’末端が、前記第2のセグメントの3’末端に作動可能に連結されている、上記1に記載の核酸調節要素。
4. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号4の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む、上記1~3のいずれかに記載の核酸調節要素。
5. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号4の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む、上記4に記載の核酸調節要素。
6. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号4の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む、上記5に記載の核酸調節要素。
7. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号4の核酸配列を有するその機能部分を含む、上記6に記載の核酸調節要素。
8. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号1の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む、上記1~3のいずれかに記載の核酸調節要素。
9. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号1の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む、上記8に記載の核酸調節要素。
10. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号1の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む、上記9に記載の核酸調節要素。
11. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号1の核酸配列を有するその機能部分を含む、上記10に記載の核酸調節要素。
12. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号2の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む、上記1~3のいずれかに記載の核酸調節要素。
13. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号2の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む、上記12に記載の核酸調節要素。
14. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号2の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有するその機能部分を含む、上記13に記載の核酸調節要素。
15. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列を有するApoE-HCRエンハンサー、または配列番号2の核酸配列を有するその機能部分を含む、上記14に記載の核酸調節要素。
16. 前記第1のセグメントが、配列番号4の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有する、上記1~15のいずれかに記載の核酸調節要素。
17. 前記第1のセグメントが、配列番号4の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する、上記16に記載の核酸調節要素。
18. 前記第1のセグメントが、配列番号4の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する、上記17に記載の核酸調節要素。
19. 前記第1のセグメントが、配列番号4の核酸配列を有する核酸を含む、上記18に記載の核酸調節要素。
20. 前記第1のセグメントが、配列番号1の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有する、上記1~15のいずれかに記載の核酸調節要素。
21. 前記第1のセグメントが、配列番号1の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する、上記20に記載の核酸調節要素。
22. 前記第1のセグメントが、配列番号1の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する、上記21に記載の核酸調節要素。
23. 前記第1のセグメントが、配列番号1の核酸配列を有する、上記22に記載の核酸調節要素。
24. 前記第1のセグメントが、配列番号2の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有する、上記1~15のいずれかに記載の核酸調節要素。
25. 前記第1のセグメントが、配列番号2の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する、上記24に記載の核酸調節要素。
26. 前記第1のセグメントが、配列番号2の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する、上記25に記載の核酸調節要素。
27. 前記第1のセグメントが、配列番号2の核酸配列を有する、上記26に記載の核酸調節要素。
28. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有する、上記1~15のいずれかに記載の核酸調節要素。
29. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する、上記28に記載の核酸調節要素。
30. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する、上記29に記載の核酸調節要素。
31. 前記第1のセグメントが、配列番号3の核酸配列を有する、上記30に記載の核酸調節要素。
32. 前記第2のセグメントが、配列番号5の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有する5’領域を含む、上記1~31のいずれかに記載の核酸調節要素。
33. 前記5’領域が、配列番号5の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する、上記32に記載の核酸調節要素。
34. 前記5’領域が、配列番号5の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する、上記33に記載の核酸調節要素。
35. 前記5’領域が、配列番号5の核酸配列を有する、上記34に記載の核酸調節要素。
36. 前記第2のセグメントが、配列番号6の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有する3’領域を含む、上記1~35のいずれかに記載の核酸調節要素。
37. 前記3’領域が、配列番号6の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する、上記36に記載の核酸調節要素。
38. 前記3’領域が、配列番号6の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する、上記37に記載の核酸調節要素。
39. 前記3’領域が、配列番号6の核酸配列を有する、上記38に記載の核酸調節要素。
40. 前記第2のセグメントが、配列番号7の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有する、上記1~39のいずれかに記載の核酸調節要素。
41. 前記第2のセグメントが、配列番号7の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する、上記40に記載の核酸調節要素。
42. 前記第2のセグメントが、配列番号7の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する、上記41に記載の核酸調節要素。
43. 前記第2のセグメントが、配列番号7の核酸配列を有する、上記42に記載の核酸調節要素。
44. 前記第1及び第2のセグメントに対して5’に位置し、それに作動可能に連結された第3のセグメントをさらに含み、前記第3のセグメントが、シナプシンプロモーターまたはその機能部分を含む、上記1~43のいずれかに記載の核酸調節要素。
45. 前記第3のセグメントが、配列番号8の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有する、上記44に記載の核酸調節要素。
46. 前記第3のセグメントが、配列番号8の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する、上記45に記載の核酸調節要素。
47. 前記第3のセグメントが、配列番号8の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する、上記46に記載の核酸調節要素。
48. 前記第3のセグメントが、配列番号8の核酸配列を有する、上記47に記載の核酸調節要素。
49.前記核酸調節要素が、配列番号10の核酸配列と少なくとも85%の同一性を有する、上記1に記載の核酸調節要素。
50. 前記核酸調節要素が、配列番号10の核酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、上記49に記載の核酸調節要素。
51. 前記核酸調節要素が、配列番号10の核酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、上記50に記載の核酸調節要素。
52. 前記核酸調節要素が、配列番号10の核酸配列を有する、上記51に記載の核酸調節要素。
53. 前記核酸調節要素が、配列番号12の核酸配列と少なくとも85%の同一性を有する、上記1に記載の核酸調節要素。
54. 前記核酸調節要素が、配列番号12の核酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、上記53に記載の核酸調節要素。
55. 前記核酸調節要素が、配列番号12の核酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、上記54に記載の核酸調節要素。
56. 前記核酸調節要素が、配列番号12の核酸配列を有する、上記55に記載の核酸調節要素。
57. 前記核酸調節要素が、配列番号11の核酸配列と少なくとも85%の同一性を有する、上記1に記載の核酸調節要素。
58. 前記核酸調節要素が、配列番号11の核酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、上記57に記載の核酸調節要素。
59. 前記核酸調節要素が、配列番号11の核酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、上記58に記載の核酸調節要素。
60. 前記核酸調節要素が、配列番号11の核酸配列を有する、上記59に記載の核酸調節要素。
61. 第2のセグメントに作動可能に連結された第1のセグメントを含む核酸調節要素であって、前記第1のセグメントが、デスミンプロモーターまたはその機能部分を含み、前記第2のセグメントが、シナプシンプロモーターまたはその機能部分を含む、前記核酸調節要素。
62. 前記第1のセグメントの3’末端が、前記第2のセグメントの5’末端に作動可能に連結されている、上記61に記載の核酸調節要素。
63. 前記第1のセグメントの5’末端が、前記第2のセグメントの3’末端に作動可能に連結されている、上記61に記載の核酸調節要素。
64. 前記第1のセグメントが、配列番号5の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有する5’領域を含む、上記61~63のいずれかに記載の核酸調節要素。
65. 前記5’領域が、配列番号5の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する、上記64に記載の核酸調節要素。
66. 前記5’領域が、配列番号5の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する、上記65に記載の核酸調節要素。
67. 前記5’領域が、配列番号5の核酸配列を有する、上記66に記載の核酸調節要素。
68. 前記第1のセグメントが、配列番号6の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有する3’領域を含む、上記61~67のいずれかに記載の核酸調節要素。
69. 前記3’領域が、配列番号6の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する、上記68に記載の核酸調節要素。
70. 前記3’領域が、配列番号6の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する、上記69に記載の核酸調節要素。
71. 前記3’領域が、配列番号6の核酸配列を有する、上記70に記載の核酸調節要素。
72. 前記第1のセグメントが、配列番号7の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有する、上記61~71のいずれかに記載の核酸調節要素。
73. 前記第1のセグメントが、配列番号7の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する、上記72に記載の核酸調節要素。
74. 前記第1のセグメントが、配列番号7の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する、上記73に記載の核酸調節要素。
75. 前記第1のセグメントが、配列番号7の核酸配列を有する、上記74に記載の核酸調節要素。
76. 前記第2のセグメントが、配列番号8の核酸配列と少なくとも85%同一である核酸配列を有する、上記61~75のいずれかに記載の核酸調節要素。
77. 前記第2のセグメントが、配列番号8の核酸配列と少なくとも90%同一である核酸配列を有する、上記76に記載の核酸調節要素。
78. 前記第2のセグメントが、配列番号8の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を有する、上記77に記載の核酸調節要素。
79. 前記第2のセグメントが、配列番号8の核酸配列を有する、上記78に記載の核酸調節要素。
80. 上記1~79のいずれかに記載の核酸調節要素を含むベクターであって、前記核酸調節要素が、導入遺伝子に作動可能に連結されており、前記核酸調節要素が、細胞への前記ベクターの導入時に前記導入遺伝子の発現を誘導する、前記ベクター。
81. 前記導入遺伝子が、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)である、上記80に記載のベクター。
82. 前記細胞が、筋肉細胞、ニューロン、または肝細胞である、上記80または81に記載のベクター。
83. 前記ベクターが、ウイルスベクターである、上記80~82のいずれかに記載のベクター。
84. 前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、及びワクシニアウイルスからなる群から選択される、上記83に記載のベクター。
85. 前記ウイルスベクターが、AAVである、上記84に記載のベクター。
86. 前記AAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAVrh74血清型である、上記85に記載のベクター。
87. 前記ウイルスベクターが、偽型AAVである、上記83に記載のベクター。
88. 前記偽型AAVが、rAAV2/8またはrAAV2/9である、上記87に記載のベクター。
89. 上記1~79のいずれかに記載の核酸調節要素を含む核酸分子を含む組成物であって、前記組成物が、リポソーム、小胞、合成小胞、エキソソーム、合成エキソソーム、デンドリマー、またはナノ粒子である、前記組成物。
90. 前記核酸調節要素が、導入遺伝子に作動可能に連結されており、前記核酸調節要素が、細胞への前記組成物の導入時に前記導入遺伝子の発現を誘導する、上記89に記載の組成物。
91. 細胞において導入遺伝子を発現させる方法であって、前記細胞における前記導入遺伝子の転写をシミュレートするのに十分な時間、前記細胞を、上記80~88のいずれかに記載のベクターあるいは上記89または90に記載の組成物と接触させることを含む、前記方法。
92. 前記導入遺伝子が、GAAである、上記91に記載の方法。
93. 治療を必要とするヒト患者におけるポンペ病を治療する方法であって、前記患者に、治療有効量の上記80~88のいずれかに記載のベクターあるいは上記89または90に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
94. 上記80~88のいずれかに記載のベクターあるいは上記89または90に記載の組成物を含むキットであって、前記ベクターまたは組成物を細胞と接触させ、それにより調節制御要素に作動可能に連結された導入遺伝子を発現させるように、前記キットのユーザーに指示する添付文書をさらに含む、前記キット。
【配列表】