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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】エアロゾル発生装置
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/40 20200101AFI20231108BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20231108BHJP
   A24F 40/50 20200101ALI20231108BHJP
   A24F 40/46 20200101ALI20231108BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F40/20
A24F40/50
A24F40/46
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020567502
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019064766
(87)【国際公開番号】W WO2019234142
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】18176548.8
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】デュマン オグズ
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-178730(JP,A)
【文献】特表2018-511316(JP,A)
【文献】特表2014-533513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00~47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置であって、
エアロゾル形成基体を受容するための空洞を有する装置ハウジングと、
前記空洞の中に受容されたエアロゾル形成基体を加熱するために前記空洞の中に延びる発熱体であって、少なくとも二つの加熱領域を備える発熱体と、
移動可能な空洞底部であって、その位置が前記空洞の長さを画定する移動可能な空洞底部と、
前記空洞底部を前記空洞の中の選択された位置に移動させるように適合された制御であって、前記選択された位置が前記発熱体にて長軸方向位置である、制御と、を備えるエアロゾル発生装置。
【請求項2】
前記移動可能な空洞底部が、少なくとも一つの延びた位置と引っ込んだ位置の間で選択的に移動可能であり、前記引っ込んだ位置は、前記空洞の最大長さに対応し、かつ少なくとも一つの延びた位置は、前記発熱体の先端と前記引っ込んだ位置の間の位置に対応する、請求項1に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項3】
前記移動可能な空洞底部が、前記発熱体を開口の中に案内するための前記開口を備える、請求項1~2のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項4】
前記移動可能な空洞底部が別個のプレート、好ましくはディスクである、請求項3に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項5】
前記少なくとも二つの加熱領域が選択的に加熱可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項6】
前記移動可能な空洞底部の選択された位置が、加熱領域の遠位端に対応する、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項7】
前記発熱体に対する前記移動可能な空洞底部の前記選択された位置に依存して、前記発熱体に供給された電力を調節するように適合された電力制御を備える、請求項1~のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項8】
前記エアロゾル発生装置の中の電源からの同一の電力で前記加熱領域の各々において同一の温度が発生されるようなサイズおよび配設で各加熱領域内の加熱トラックが適合されている、請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項9】
前記移動可能な空洞底部が、前記エアロゾル発生装置の電源を前記発熱体の加熱領域の電気加熱トラックに電気的に接続する電気的接続を備える、請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項10】
前記移動可能な空洞底部が、使用済みのエアロゾル形成基体を前記発熱体から取り外すための抜き出し位置に移動可能である、請求項1~のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項11】
前記発熱体が、前記移動可能な空洞底部の前記開口を通って延びる加熱ブレードまたは加熱ピンである、請求項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置と、前記空洞の中に収容されるエアロゾル形成基体含有エアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生システムであって、前記発熱体の先端と前記移動可能な空洞底部の間の距離が、前記エアロゾル発生物品の中の前記エアロゾル形成基体の長さに対応する、エアロゾル発生システム。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置を調製する方法であって、
前記エアロゾル発生装置の装置ハウジングの中の空洞の空洞底部を前記空洞の中の位置から発熱体の長さに沿って前記発熱体に対して選択された位置に移動させることであって、この発熱体が前記空洞の中に延び、これによって前記空洞の長さを画定し、この長さが前記空洞の最大長さよりも短い、移動させることと、
その後、前記発熱体によって前記エアロゾル形成基体を加熱するために、前記空洞の中のエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体を受容することと、を含む、方法。
【請求項14】
電源から前記発熱体に電力を供給することと、
前記発熱体に対して前記移動可能な空洞底部の前記選択された位置に依存して前記供給された電力を調節することと、をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生装置に関し、具体的には異なるサイズのエアロゾル形成基体を有するエアロゾル発生物品用のエアロゾル発生装置に関する。本発明はまた、こうした物品とともに使用するエアロゾル発生装置を調製するため方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装置の空洞の中に挿入される、スティック様の消耗品のための周知の電子装置がある。消耗品の中のエアロゾル形成基体のプラグは、エアロゾルを発生するために装置の発熱体によって加熱される。エアロゾル形成基体プラグの長さと発熱体の長さの関係は、基体のすべてを加熱することができるために、また基体を加熱し、物品の他の部品(例えば、フィルター部品)を加熱しないために相関するべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ故に、先行技術の装置の不都合を解消するエアロゾル発生装置に対するニーズがある。特に、加熱されるエアロゾル形成基体の異なるサイズに関してより高い融通性を提供するエアロゾル発生装置に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、エアロゾル発生装置が提供されている。装置は、エアロゾル形成基体(例えば、エアロゾル発生物品、好ましくはロッド状の物品のエアロゾル形成基体)を受容するための空洞を有する装置ハウジングを備える。物品の少なくとも一部分は、空洞の中に収容されてもよい。物品の少なくとも一部分は、エアロゾル形成基体を備える。物品のすべてのエアロゾル形成基体は、空洞の中に収容されていることが好ましい。装置は、空洞の中に受容されたエアロゾル形成基体を加熱するために、または空洞の中に受容されたエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体を加熱するために空洞の中に延びる発熱体を備える。空洞は移動可能な空洞底部を備え、空洞底部の位置は空洞の長さを画定する。装置の制御は、空洞底部を空洞の中の選択された位置に移動させるように適合されている。制御はユーザーによって起動されていることが好ましい。ユーザーは、制御スイッチまたは制御ボタンを操作することが好ましい。
【0005】
空洞底部の選択された位置は、発熱体にて長軸方向位置である。移動可能な空洞底部は、発熱体に沿って、それ故に発熱体の長さに沿って移動可能である。選択された位置は、別個の選択された位置であることが好ましい。空洞底部は、例えば空洞の中へのエアロゾル発生物品の挿入後に、空洞底部が、好ましくは遠位方向にも近位方向にも移動しないように、選択された位置に固定されていてもよいことが好ましい。空洞底部は、制御を起動することによって、例えば制御ボタンを押す、または制御スイッチを動かすことによって、選択された位置から解放されていることが好ましい。
【0006】
空洞底部は、空洞底部に直接取り付けられた機械的手段によって移動されていることが好ましい。機械的手段(例えば、支柱、案内要素、またはスイッチ)は、ユーザーによって手動で、または駆動手段によって移動されてもよい。駆動手段は、エアロゾル発生装置の中の制御によって電子的に制御されていることが好ましい。
【0007】
移動可能な空洞底部は、少なくとも一つの延びた位置と引っ込んだ位置の間で選択的に移動可能であることが好ましい。引っ込んだ位置は、空洞の最大長さに対応する。空洞底部の引っ込んだ位置において、エアロゾル形成基体の最大長さは空洞の中に挿入可能である。空洞底部の引っ込んだ位置において、発熱体の最大長さは、エアロゾル形成基体の加熱するために使用可能であることが好ましい。発熱体はエアロゾル形成基体と直接接触していることが好ましい。
【0008】
少なくとも一つの延びた位置は、発熱体の先端と引っ込んだ位置の間の位置に対応する。空洞底部の延びた位置において、空洞の長さはその最大長さより短い。空洞底部の延びた部分において、エアロゾル形成基体の最大長さより短い長さは空洞の中に挿入可能である。空洞底部の幾つかの延びた位置は、空洞底部の幾つかの選択可能な、好ましくは別個の位置に対応する。これらの幾つかの延びた位置は、空洞の中に挿入可能なエアロゾル形成基体の異なる長さに対応し、このエアロゾル形成基体は発熱体と接触する。空洞の長さおよびエアロゾル形成基体と接触する発熱体の長さはそれ故に、加熱されるエアロゾル形成基体の異なる長さに対して最適化されうる。それ故に、発熱体がエアロゾル形成基体を通り、例えば物品のフィルター部品の中に貫通し、フィルター部品の加熱に伴い不快な味覚を生じさせる可能性を防止できる場合がある。また、空洞の中に挿入されたより長い基体は、基体のより長い部分が発熱体と接触せず、加熱されない場合があるため、ユーザーに送達されるエアロゾルに関する効果がないままになることも防止される場合がある。発熱体は基体の上に同一の長さ(または深さ)まで挿入されるため、より長い基体の加熱された部分は、より短い基体に対して変化しないことになる。
【0009】
移動可能な空洞底部は、発熱体を開口の中に案内するための開口と、発熱体に沿った空洞底部とを備えることが好ましい。空洞底部の開口は、空洞底部の中心に配設された中央の開口であることが好ましい。開口は対称な形状を有することが好ましい。開口は、空洞底部に対称に配設されていることが好ましい。
【0010】
発熱体の断面、および空洞底部の開口の形態とサイズは、発熱体が空洞底部の開口で摺動可能であるように設計されている。それ故に、開口の形態とサイズは、発熱体の断面より大きい。発熱体の断面および空洞底部の開口は、空洞底部が摺動可能な方法で発熱体の外側にぴったり合うような形状およびサイズで相互に対応することが好ましい。
【0011】
移動可能な空洞底部は、別個のプレートであることが好ましい。例えば、移動可能な空洞底部はディスクであり、発熱体が開口を通って延びるための開口を備える。
【0012】
発熱体は少なくとも二つの加熱領域を備え、これらの加熱領域は、これらの加熱領域と接触する、またはその近くにあるエアロゾル形成基体を加熱するために加熱可能である。発熱体は、二つ、三つ、またはそれ以上の加熱領域を備えてもよい。発熱体は、二つの加熱領域を備えることが好ましい。
【0013】
少なくとも二つの加熱領域は、選択的に加熱可能であることが好ましい。それ故に、発熱体は、各加熱領域が個別に加熱されてもよいように構築されてもよい。各加熱領域の加熱は、個別に制御されうることが好ましい。発熱体の、二つ以上、またはすべての加熱領域は、一つ、二つ以上、またはすべての加熱領域が同時に加熱されてもよいように、接続されてもよい。
【0014】
少なくとも二つの加熱領域は、発熱体の長さに沿って直列に配設されていることが好ましい。
【0015】
別の方法として、両面発熱体(例えば、加熱ブレード)が使用される場合、一つの加熱領域は発熱体の一方の側に配設されてもよく、また別の加熱領域は発熱体の反対側に配設されてもよい。両面上の二つの加熱領域は、加熱ブレードの異なる長さにわたって延びることが好ましい。
【0016】
移動可能な空洞底部の選択された位置は、発熱体の加熱領域の遠位端に対応することが好ましい。これによって空洞底部は、引っ込んだ位置に、好ましくはすべての加熱領域の遠位に位置付けられてもよい。または、空洞底部は、二つの加熱領域の間に位置する延びた位置に位置付けられてもよい。空洞底部(空洞の挿入端とは反対にある)に近接して配設されている、発熱体の加熱領域(複数可)のみが、加熱されることが好ましい。
【0017】
エアロゾル形成基体は、空洞の中で空洞底部までにしか配設されなくてもよい。それ故に、加熱をこうした近位に配設された加熱領域に制限することによって、電力が節約される場合があり、かつ電池電力供給の延長が達成される場合がある。加えて、加熱は、エアロゾル形成基体が存在する加熱領域に制限される場合がある。それ故に、基体が存在しない空洞の中の部分は加熱されないことが好ましい。
【0018】
「近位」とは、装置の口側端方向、またはエアロゾル発生物品が装置の中に挿入される装置の端部として理解される。「近位」はまた、エアロゾル発生物品のフィルター端とは反対の位置を定義する。それに応じて、「遠位」とは、近位端の反対側または空洞の反対側の、装置の反対側の端として理解される。「遠位」はまた、エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体端とは反対の位置を定義する。
【0019】
エアロゾル発生装置は電流制御を備える。
【0020】
電力は、発熱体のすべての加熱領域に提供されてもよく、または発熱体の一つまたは一部の加熱領域にのみ提供されてもよい。電力制御は、発熱体に対する移動可能な空洞底部の選択された位置に依存して、発熱体への電源を調節するように適合されていることが好ましい。それ故に、発熱体への電力供給は、発熱体に沿って配設された空洞底部の位置に依存して、行われることが好ましい。発熱体への電力は、加熱される加熱領域(複数可)のサイズに合わせて調節されることが好ましい。例えば、発熱体への電力は、空洞底部が引っ込んだ位置にある時の発熱体への電力と比較して、空洞底部が延びた位置にある時に低減される場合がある。
【0021】
発熱体の開始プロセスとして、発熱体全体または発熱体のすべての加熱領域には、電力が提供され、加熱されてもよい。これによって、発熱体はより速く加熱される場合がある。しかしながら、普通の喫煙プロセス中に、エアロゾル形成基体と接触する加熱領域のみが起動されていることが好ましい。
【0022】
ある加熱領域は、別の加熱領域より高い温度に加熱されてもよい。例えば、一つの加熱領域は、基体の別の部分からの第二の加熱領域よりも多くエアロゾル形成物質を基体の一つの部分から放出させるように意図されてもよい。別の方法として、または追加的に、一つの加熱領域は、第一のタイプのエアロゾル形成基体を加熱することが意図されてもよく、また別の加熱領域は、第二のタイプのエアロゾル形成基体を加熱することが意図されてもよい。第一のタイプおよび第二のタイプのエアロゾル形成基体は、異なる基体から特定の物質が放出される時に、温度が異なっていてもよい。
【0023】
異なる加熱領域は同一の温度に加熱可能であることが好ましい。異なる加熱領域は、加熱領域のサイズとは無関係に同一の温度に加熱可能であることが好ましい。異なる加熱領域は、加熱領域への同一の電力供給によって同一の温度に加熱可能であることが好ましい。特に、大きい加熱領域は、小さい加熱領域と同一の温度に加熱可能であることが好ましい。
【0024】
発熱体の加熱領域内に加熱経路を形成する加熱トラック(複数可)は、例えばトラックの幅またはトラックの長さなど、サイズおよび配設が違っていてもよい。各加熱領域内の加熱トラック(複数可)は例えば、エアロゾル発生装置の中の電源からの同一の電力で加熱領域の各々において同一の温度が発生されるようなサイズおよび配設で適合されている。異なる加熱領域の同一または異なる温度はまた、発熱体上の加熱領域の加熱トラックのための材料の特定の選択によって変化してもよい。例えば、材料の異なる電気抵抗率に起因して異なる温度を達成するために、白金、金、および銀が、異なる加熱領域で使用されてもよい。
【0025】
移動可能な空洞底部は、エアロゾル発生装置の電源を発熱体の電気加熱式トラックに、特に発熱体の加熱領域の加熱トラックに電気的に接続する電気的接続を備えてもよい。空洞底部の電気的接続は、厳密にその加熱されるべき加熱領域(複数可)の電気加熱式トラックに接続されていることが好ましい。電源から、空洞底部の遠位に配設された加熱領域の加熱トラックへの電気的接続は確立されないことが好ましい。
【0026】
本発明による装置の一部の実施形態において、移動可能な空洞底部は、使用済みのエアロゾル形成基体を発熱体から取り外すために、好ましくは使用済みのエアロゾル形成基体を空洞から抜き出すために、抜き出し位置に移動可能である。抜き出し位置は、発熱体の先端にて空洞底部の位置に実質的に対応することが好ましい。空洞および発熱体の構造に依存して、抜き出し位置は、空洞の開いた挿入端に対応してもよい。
【0027】
空洞底部の延びた位置は、使用済みの基体を抜き出すための抜き出し位置よりも長い空洞の長さに常に対応する。延びた位置は、物品のエアロゾル形成基体のある特定の長さを空洞の中に挿入し、そしてその基体を加熱することを可能にする。抜き出し位置において、基体は空洞から取り外されるべきである。
【0028】
発熱体に沿った空洞底部を抜き出し位置に移動することは、発熱体のためだけでなく、空洞壁のためのクリーニング機能を果たしてもよい。
【0029】
装置は、引っ込んだ位置、少なくとも一つの延びた位置、および抜き出し位置を有することが好ましい。空洞底部は、引っ込んだ位置から少なくとも一つの延びた位置に移動可能であるだけでなく、抜き出し位置にも移動可能であり、また逆も可能であることが好ましい。
【0030】
空洞底部は、これらの位置のうちのいずれかで、引っ込んだ位置で、少なくとも一つの延びた位置で、および抜き出し位置で、解放可能に固定されてもよいことが好ましい。
【0031】
固定は、例えばエアロゾル発生物品を空洞の中に挿入する時に、空洞底部が好ましくは遠位方向にも近位方向にも移動可能ではないように、予め形成されていることが好ましい。空洞底部は、制御を起動することによって、例えば制御ボタンを押すこと、または制御スイッチを動かすこと、または例えば回転ロックなどの解放機構を起動することによって、それぞれの位置から解放可能であることが好ましい。
【0032】
発熱体は空洞の軸方向中心に配設されていることが好ましい。発熱体は、空洞の長軸方向軸に沿って空洞の中に延びることが好ましい。
【0033】
発熱体は加熱ブレードまたは加熱ピンであることが好ましい。加熱ブレードまたはヒーターピンは、移動可能な空洞底部の開口を通って延びる。
【0034】
発熱体には、エアロゾル形成基体の中への発熱体の挿入を容易にするために、発熱体の先端に尖った先が提供されていることが好ましい。
【0035】
本発明による、および本明細書に記載の通りのエアロゾル発生装置を備えるエアロゾル発生システムも提供されている。エアロゾル形成基体含有エアロゾル発生物品は空洞の中に収容されるものであり、発熱体の先端と移動可能な空洞底部の間の距離は、エアロゾル発生物品の中のエアロゾル形成基体の長さに対応する。発熱体が少なくとも二つの加熱領域を備える時に、発熱体の長さ方向における起動された加熱領域の長さの合計は、物品の中のエアロゾル発生基体の長さに実質的に対応することが好ましい。それ故に、発熱体の加熱可能な領域の長さは、加熱される基体の全長に実質的に対応することが好ましい。これによって、加熱可能ではないことによっていかなる基体も無駄にならず、また基体が存在しない場合には発熱体のいかなる領域も加熱されない。
【0036】
本発明の別の態様によると、本発明による、および本明細書に記載の通りのエアロゾル発生装置を調製する方法が提供されている。方法は、エアロゾル発生装置の装置ハウジングの中の空洞の空洞底部を、空洞の中の位置、好ましくは空洞の中の引っ込んだ位置または抜き出し位置から、装置の発熱体の長さに沿ってかつ装置の発熱体の長さ以内で、発熱体に対して選択された位置に移動する工程を含み、これによって空洞の長さを画定し、この長さは空洞の最大長さより短い。
【0037】
選択された位置は、発熱体の先端に対して遠位の発熱体の長さに沿ったどこかである。選択された位置は引っ込んだ位置に対応せず、この引っ込んだ位置は空洞の最大長さに対応する。選択された位置はまた、抜き出し位置(使用済み基体の排出を支援する)に対応しない。発熱体は装置の空洞の中に延びる。方法の後続の工程は、発熱体によってエアロゾル形成基体を加熱するために、空洞の最大長さより短い長さを有する空洞の中に、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体を受容することを含む。
【0038】
方法は、電源から発熱体に電力を供給する工程と、発熱体に対してまたは空洞に対してそれぞれ、移動可能な空洞底部の選択された位置に依存して供給された電力を調節する工程とをさらに含むことが好ましい。これによって、加熱される発熱体の領域のサイズは、空洞底部の位置および空洞の長さと直接的に相関する。
【0039】
方法は、空洞底部を加熱領域の遠位端に位置付けることを含むことが好ましい。
【0040】
方法は、空洞底部を延びた位置に固定すること、空洞底部を引っ込んだ位置に固定すること、空洞底部を抜き出し位置に固定することを含んでもよい。方法は、これらの固定する工程の一つのみ、すべて、または任意の組み合わせを含んでもよい。
【0041】
方法のさらなる特徴および利点は、本発明によるエアロゾル発生装置に関して説明されてきた。
【0042】
本発明を実施形態に関してさらに記述し、それらの実施形態を以下の図面によって図示する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、延びた位置にある空洞底部を有するエアロゾル発生装置の断面を示す。
図2図2は、引っ込んだ位置および延びた位置にある空洞底部を有する加熱ブレードの斜視図である。
図3図3は、二つの加熱領域を有する加熱ブレード上の加熱トラックの一実施例の概略図である。
図4図4は、本発明の加熱原理の概略図である。
図5図5は、空洞底部の移動機構の概略図である。
図6図6は、空洞底部の別の移動機構の概略図である。
図7図7は、図6の移動機構の空洞底部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、装置ハウジング1を備えるエアロゾル発生装置を示す。装置ハウジング1の近位部は、エアロゾル形成基体(例えば、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体)を受容するための空洞10を備える。装置ハウジング1の遠位部は、装置の動作および制御のための電池11およびPCB電子回路12を備える。
【0045】
空洞10の側壁は、装置ハウジング1の内壁100によって形成されている。側壁100は、ロッド状のエアロゾル形成基体を受容するための円筒状の空洞を形成することが好ましい。空洞10の側壁100は、抜き出し装置の側壁によって形成されていることが好ましい。空洞10の底部は、移動可能なディスク101によって形成されている。ディスク101は、空洞10の長軸方向軸に沿って空洞10の中で移動可能である。
【0046】
電子回路12および電池11に接続された加熱ブレード13は、空洞10の中に延びる。ブレード13は空洞10の軸方向中心に配設されている。
【0047】
図1において、底部101は、空洞10の中の最も引っ込んだ位置に配設されていないが、空洞10の中のブレード13の約3分の1の長さに延びた位置に配設されている。
【0048】
図1でのブレード13の先端130と空洞底部101の間の距離は、例えば12mmの長さを有するエアロゾル形成基体を受容するように選ばれてもよい。ブレード13の先端130と空洞の最大長さに対応する空洞底部101の引っ込んだ位置との間の距離は次に、例えば17mmの長さを有するエアロゾル形成基体を受容するように選ばれる。それ故に、先端130と空洞底部101の間の距離132は、図1の延びた位置において約11.75mmであり、また先端と空洞底部の引っ込んだ位置との間の距離133は約16.75mmである。
【0049】
空洞底部101は、加熱ブレード13の先端130まで移動することができること好ましいが、空洞底部101が依然として加熱ブレード13と接触していることが好ましい。空洞底部101のこの抜き出し位置において、以前に空洞の中にあったエアロゾル形成基体またはエアロゾル発生物品は空洞底部101によって、実質的に空洞10の外に移動されている。これによって、基体または物品は空洞10から簡単に取り外されてもよい。
【0050】
空洞底部101は、最も引っ込んだ位置に、および延びた位置に、また抜き出し位置にも固定されてもよいことが好ましい。こうした固定は、例えば空洞底部をそれぞれの位置に固定する固定機構もしくは係止機構の起動ボタン、スイッチ、または電子的もしくは機械的な解放の起動によって、解放または克服されてもよい。
【0051】
図2において、加熱ブレード13が、引っ込んだ位置2および延びた位置22にある空洞底部101とともに、図示の目的で示されている。空洞底部101は、ブレード13が通過する長方形の開口を備える。空洞底部101は、引っ込んだ位置2から延びた位置22までブレード13に沿って移動されてもよく、またその逆も可能である。
【0052】
使用可能な、または加熱されるべきエアロゾル形成基体の量またはサイズに依存して、空洞底部101は、加熱ブレードの多少の表面が、加熱ブレード13の外側に押し付けられたエアロゾル形成基体と接触するようにして、加熱ブレード13に沿って位置付けられている。それ故に、空洞底部が延びた位置22にある場合、エアロゾル形成基体の挿入のために使用可能な空洞10の長さは縮小されている。
【0053】
図3は、二つの加熱領域24、25が提供された加熱ブレード13の実施例を示す。これらの加熱領域は、加熱ブレード13の先端130、すなわち近位端に向かう一つの加熱領域25と、加熱ブレード13の基部、すなわち遠位端に向かう一つの加熱領域24である。
【0054】
二つの加熱領域24、25は、二つの加熱の選択肢を作り出す。一つの加熱の選択肢は、加熱領域25を一つの領域として加熱することであり、それ故に加熱ブレード13の表面積の約3分の2のみを加熱する。第二の加熱の選択肢は、加熱領域24と加熱領域25の両方を加熱することであり、それ故に加熱ブレード13の表面全体(加熱ブレードが空洞の中に配設されていない、および電子機器に接触している部分を除く)を加熱することである。
【0055】
加熱領域25の長さ(長さはブレード13の長軸方向軸300に沿って測定される)は、短い基体プラグ、例えば短いたばこプラグを加熱するために使用されてもよく、また組み合わされた加熱領域24と加熱領域25の長さは、より長い基体プラグ、例えばより長いたばこプラグを加熱するために使用されてもよい。
【0056】
加熱領域25の長さは、装置で使用される普通のヒートスティックの基体プラグの長さ、例えばエアロゾル形成基体の12mmの長さ(すなわち吸煙約14回分の約6グラム)に対応することが好ましい。それ故に、次に組み合わされた加熱領域24と加熱領域25の長さは、特大スティックの基体プラグの長さ、例えばエアロゾル形成基体の17mmの長さ(すなわち吸煙約18回分の約8.5グラム)に対応することが好ましい。
【0057】
電気接点112が提供された図3に示すブレード13の一部は、空洞10の中に配設されない、かつ好ましくは加熱されない。
【0058】
ブレード13には、加熱ブレード13の加熱領域24、25をそれぞれ加熱するための加熱経路を形成する、加熱用トラック240、250が提供されている。図3の実施例において、抵抗トラック240は、加熱領域24内で加熱ブレード13の長軸方向軸300に対して横断方向に配設されていて、抵抗トラック250は加熱領域25内で加熱ブレード13の長軸方向軸300に平行に配設されている。
【0059】
これは二つの加熱領域についての一実施例であるが、二つ以上の加熱領域の場合では、その他の加熱トラックの配設が可能である。特に、加熱トラックの長さ、幅、および配設は、それぞれの加熱領域内で、ある特定の温度を達成するように選ばれてもよい。特に、加熱トラックの長さ、幅、および配設は、異なる加熱領域において、同一の特定の温度、または異なる特定の温度を達成するように選ばれてもよい。
【0060】
図4の概略図は、装置の電力および制御部品11、12と、電力および制御部品11、12に接続された加熱ブレード13とを示す。円筒状のエアロゾル形成基体プラグ4、例えばロッド状のエアロゾル発生物品のプラグ4は、加熱ブレード13の先端130に対して押し付けられる。基体プラグ4は、基体プラグ4の全長が加熱ブレード13の外側に配設され、かつ加熱ブレード13と接触するように、加熱ブレード13の外側に位置付けられていることが好ましい。加熱ブレード13は、加熱ブレード13の長さに沿って連続して配設された四つの加熱領域26、27、28、29を備える。
【0061】
加熱領域26、27、28、29は、加熱ブレード13の特定の部分のみを加熱するように、個別に起動されてもよいことが好ましい。加熱領域は、先端130が最初に基体プラグ4の中に挿入されるところである、ブレードの先端130(加熱領域29)から開始して、(加熱領域28、次に27、そして次に26にわたって)ブレード13の基部に延びる、加熱領域を区切る、個別の領域であることが好ましい。
【0062】
好ましい一実施形態において、例えば最遠位に配設された加熱領域26が起動される時に、ブレードの領域26と先端130の間のすべての加熱領域27、28、29も起動される(加熱領域28が起動される時はまた、加熱領域29のみが起動される)。それ故に、ブレード13の基部から(または起動された領域28および29の場合、ブレードのほぼ中央から)開始する異なる起動された加熱領域の累計の長さは、エアロゾル発生物品の中のエアロゾル形成基体プラグ4の全長と同一または同様であることが好ましい。ブレード13の先端130も基体4によって覆われているように、また基体4が最も効率的な方法で加熱され、その一例として、すべての基体が加熱され、それ故にすべての基体の物質がユーザーに使用可能になり、また二つ目の例として、エネルギーが基体を加熱するためのみに使用される加熱基体なしで加熱される領域がないように、エアロゾル形成基体プラグ4の長さは、加熱領域の全長よりわずかに長いことが最も好ましい。例えば、基体は、基体によって覆われた累計の加熱領域の全長より、または空洞の中の加熱ブレードの長さより約0.25mmだけ長い。典型的に、ブレード13の先端領域は、最先端または最近位に配設された加熱領域29とともに加熱される。
【0063】
各加熱領域26、27、28、29および加熱ブレード13全体には、それぞれ対応する異なる接続する抵抗加熱トラック260、270、280、290が提供されていて、各加熱領域26、27、28、29を選択的に起動することを可能にする。加熱トラック260、270、280、290は、装置の電力および電子部品11、12に接続されている。
【0064】
加熱領域の起動は一般に、装置によって管理されてもよい。
【0065】
空洞底部(図4に図示せず)は、幾つかの別個の加熱ブレード13に対する相対位置に移動され、かつ位置付けられていることが好ましい。空洞底部101には四つの選択された位置があり、最遠位の位置は引っ込んだ位置2に対応する。空洞底部101が引っ込んだ位置2に位置付けられる場合、加熱ブレード13の全長、およびすべての加熱領域26、27、28、29が、エアロゾル形成基体4を加熱するために使用可能である。その他の選択された位置は、ブレード13の異なるサイズにされた加熱される部分を画定する、異なる延びた位置22に対応する。空洞底部101は、好ましくは独占的に加熱領域全体が加熱基体のために使用可能であるように、加熱領域の間に位置付けられてもよい。空洞底部101には、電子回路および電力部品11、12を、空洞底部の近位に配設された加熱領域26、27、28、29の加熱トラック260、270、280、290に独占的に接続するために、対応する電気的接続が提供されてもよい。別の方法として、加熱トラックへの電源は、空洞底部の位置情報を表す信号に従って動作する電子回路および電力部品11、12によって電子的に制御される。
【0066】
図5は、ディスク形状を有する空洞底部101および三本の規則的に配設された支柱53の実施例である。支柱53は、ディスクが空洞10に沿って移動してもよいように、ディスクの周囲と同一平面上に取り付けられている。装置の中の駆動機構(図示せず)は支柱53に接続されていて、支柱53を介して加熱ブレード13に沿って空洞底部101を動かす。装置はボタンを備えることが好ましく、このボタンは押された時に、装置の電子回路内で信号をトリガーし、この電子回路はボタンによって選択された空洞10の中の位置に空洞底部101を移動させるための駆動機構を制御する。
【0067】
図6は、機械的に移動された空洞底部101の実施例を示す。空洞の壁(例えば、抜き出し装置によって、または装置ハウジング1によって直接的に形成された空洞の壁)は、空洞10の長さに沿って、または空洞10の長さの一部分に沿って長軸方向に配設された四つの案内トラック51を含む。案内トラック51は、例えば案内トラック51の中の空洞底部101を案内するための溝またはスリットである。
【0068】
スリットまたは溝は、ディスク形状の空洞底部101の周囲に配設された案内部50、52に対応する。空洞底部101は、図7に、より詳細に示す通り、加熱ブレード13を通過させるための中央に配設された長方形の開口1010を備える。空洞底部101はまた、ディスクの周囲の周りに規則的に配置された四つの案内部を備える。三つの案内部は、ディスクの平面から半径方向外向きに延びる突出部52である。一つの案内部はスイッチ50である。スイッチ50は、空洞底部101をその選択された位置に移動させるユーザーによって直接動作される手動スイッチであってもよい。スイッチ50はまた、ユーザーによって動作可能である適切な機械的外部スイッチに接続されている内部スイッチであってもよい。一部の実施形態において、例えば空気の直接的な経路が環境から空洞10に通るのを防止するために、空洞10と環境の間の直接的な接続を防止することが有利である場合がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7