(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ファウリングリリースコーティングシステムを確立するための方法
(51)【国際特許分類】
B05D 5/00 20060101AFI20231108BHJP
B05D 1/38 20060101ALI20231108BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231108BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231108BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20231108BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231108BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20231108BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20231108BHJP
【FI】
B05D5/00 H
B05D1/38
B05D7/24 302Y
B05D7/24 303E
B32B27/00 101
B32B27/18 Z
C09D7/63
C09D183/04
C09D7/65
(21)【出願番号】P 2020567549
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2019064431
(87)【国際公開番号】W WO2019233985
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-05-06
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501477945
【氏名又は名称】ヘンペル エイ/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】キム・フルクト・セレンセン
(72)【発明者】
【氏名】アナス・ブロム
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト・カモス・ノゲル
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・メラー・オルセン
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-518970(JP,A)
【文献】特表2017-525786(JP,A)
【文献】特開2016-098349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B32B1/00-43/00
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の連続的な工程を含む、基材の表面上にファウリングリリースコーティングシステムを確立する方法:
a.要すれば、1層以上のプライマー組成物を前記基材の表面上に塗布し、前記層を硬化させ、それによって、下塗した基材を形成する工程;
b.1層以上の液体形態のシリコーン含有タイ・コート組成物を前記下塗した基材又は前記基材の表面上に塗布し、前記層を硬化させ、それによって硬化したタイ・コート層を形成する工程;
c.前記硬化したタイ・コート層上に1層以上のファウリングリリースコーティング組成物を塗布し、前記ファウリングリリースコーティング組成物を硬化させる工程であって、前記ファウリングリリースコーティング組成物は、少なくとも40乾燥重量%の前記コーティング組成物を構成する縮合硬化性ポリシロキサン系バインダーマトリックスを含み、65重量%を上回る前記バインダーマトリックスがポリシロキサン部分で表され、前記タイ・コート組成物及び/又は前記ファウリングリリースコーティング組成物が、ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分を含み、及び前記タイ・コート組成物及び/又は前記ファウリングリリースコーティング組成物が
、一般式II
【化1】
[式中、
各R1は、独立して直鎖又は分岐鎖のC
1
~C
4
アルキルであり;
R2は、-H、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C
1~30
アルキル、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C
2~30
アルケニル、要すれば置換されたアリール、-OH、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C
1~30
アルコキシ、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C
1~30
アルケニルオキシ、要すれば置換されたアリールオキシ、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C
1~30
アルキルカルボニル、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C
1~30
-アルケニルカルボニル、及び要すれば置換されたアリールカルボニルから選択され;
R4は水素原子を表すか、又はC
1~30
アルキル、C
1~30
アルケニル、アリール、C
1~30
アルコキシ、C
1~30
アルケニルオキシ、アリールオキシ、C
1~30
アルキルカルボニル、C
1~30
-アルケニルカルボニル、アリールカルボニル、C
1~30
アルキルカルボニルオキシ、C
1~30
-アルケニルカルボニルオキシ、及びアリールカルボニルオキシ、特にC
1~8
-アルコキシ、C
1~8
-アルケニルオキシ、アリールオキシ、C
1~8
-アルキルカルボニルオキシ、C
1~8
-アルケニルカルボニルオキシ、及びアリールカルボニルオキシ、及び/又はポリマーへの連結点から選択される1種又は2種の置換基であり、ここで、R4のための前記置換基の2つは、スピロ構造を形成し得、置換基R4は、各々独立して一般式IIを有する1種以上の立体障害アミン部位につながっていてもよい。]
の2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン部位から選択される1種以上の立体障害アミンをさらに含み、前記立体障害アミンが、前記タイ・コート組成物及び/又は前記ファウリングリリースコーティング組成物の0.05~10乾燥重量%の合計量で存在する、工程。
【請求項2】
式中、R2がHでなく、及び/又はR2が-OHでない、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記立体障害アミンが、一般式IIの2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン部位を含み、ピペリジン誘導体が、N-C
1~30-アルキルピペリジン誘導体、N-C
1~30-アルケニルピペリジン誘導体、N-アリールピペリジン誘導体、N-C
1~30-アルコキシピペリジン誘導体、N-C
1~30-アルケニルオキシピペリジン誘導体、N-アリールオキシピペリジン誘導体、N-C
1~30-アルキルカルボニルピペリジン誘導体、N-C
1~30-アルケニルカルボニルピペリジン誘導体、及びN-アリールカルボニルピペリジン誘導体、から選択される、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
障害アミン部位、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン部位が、コーティング層当たり0.003~0.5mol/kgの量で被覆中に存在する、請求項
1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記立体障害アミン、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体が、20℃で液体形態である、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分が、一般式(I)
【化2】
[式中、
各POAは、ポリ(オキシアルキレン)部位を表し、
各FAは、C
8~30脂肪アシル部位を表し、
Rは、アルコールR(OH)
X+Yの有機残基を表し、前記有機残基は2~50の炭素原子を有し、及び
Xは1~5、Yは0~10及びX+Yは1~12である。
]
のポリ(オキシアルキレン)変性アルコールから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記タイ・コート組成物が、好ましくはヒドロキシ官能性ポリシロキサン、C1~C4アルコキシ官能性ポリシロキサン、アミノ官能性ポリシロキサン及びエポキシ官能性ポリシロキサンから選択される1種以上の架橋性ポリシロキサンを含む、請求項
1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記タイ・コート組成物が、全タイ・コート組成物の湿重量で、3~90%、好ましくは10~80%、より好ましくは20~60%、さらにもっと好ましくは3~15%、より好ましくは40%を上回る、前記1種以上の架橋性ポリシロキサン含む、請求項
1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記タイ・コート組成物が、2つ以上の加水分解性基を有する1つ以上の加水分解性シランをさらに含む、請求項
1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記タイ・コート組成物が、全タイ・コート組成物の湿重量で、30%までの、2つ以上の加水分解性基を有する、前記1つ以上の加水分解性シランを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記タイ・コート組成物が、1種以上のエポキシ官能性ポリマーを含む、請求項
1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記プライマー組成物が、エポキシ系プライマー組成物である、請求項
1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記立体障害アミン、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体が、例えば共有結合により、縮合硬化性ポリシロキサン系バインダーマトリックス又は充填剤、例えばシリカに固定化される、請求項
1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリ(オキシアルキレン)鎖が、200~50、000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有する、請求項
1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分が、ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルから選択される、請求項
1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリ(オキシアルキレン)鎖が、前記ポリシロキサン系バインダーマトリックスに共有結合している、請求項
1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記タイ・コートが、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルを含む、請求項
1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記タイ・コートが、請求項1~
3のいずれか一項において定義された1種以上の立体障害アミンを含む、請求項
1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
a.基材、
b.要すれば1種以上のプライマー層、
c.少なくとも1種のシリコーン含有タイ・コート層、
d.少なくとも40乾燥重量%のその被覆を構成する縮合硬化ポリシロキサン系バインダーマトリックスを含むファウリングリリース層であって、65重量%を上回る前記バインダーマトリックスがポリシロキサン部分で表され、前記被覆がポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分を含む、ファウリングリリース層、
を含むファウリングリリースコーティングシステムであって、
前記タイ・コート層及び/又はファウリングリリース層は、
一般式II
【化3】
[式中、
各R1は、独立して直鎖又は分岐鎖のC
1
~C
4
アルキルであり;
R2は、-H、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C
1~30
アルキル、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C
2~30
アルケニル、要すれば置換されたアリール、-OH、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C
1~30
アルコキシ、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C
1~30
アルケニルオキシ、要すれば置換されたアリールオキシ、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C
1~30
アルキルカルボニル、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C
1~30
-アルケニルカルボニル、及び要すれば置換されたアリールカルボニルから選択され;
R4は水素原子を表すか、又はC
1~30
アルキル、C
1~30
アルケニル、アリール、C
1~30
アルコキシ、C
1~30
アルケニルオキシ、アリールオキシ、C
1~30
アルキルカルボニル、C
1~30
-アルケニルカルボニル、アリールカルボニル、C
1~30
アルキルカルボニルオキシ、C
1~30
-アルケニルカルボニルオキシ、及びアリールカルボニルオキシ、特にC
1~8
-アルコキシ、C
1~8
-アルケニルオキシ、アリールオキシ、C
1~8
-アルキルカルボニルオキシ、C
1~8
-アルケニルカルボニルオキシ、及びアリールカルボニルオキシ、及び/又はポリマーへの連結点から選択される1種又は2種の置換基であり、ここで、R4のための前記置換基の2つは、スピロ構造を形成し得、置換基R4は、各々独立して一般式IIを有する1種以上の立体障害アミン部位につながっていてもよい。]
の2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン部位から選択される1種以上の立体障害アミンをさらに含み、前記立体障害アミンが、前記タイ・コート組成物及び/又は前記ファウリングリリースコーティング組成物の0.05~10乾燥重量%の合計量で存在する、ファウリングリリースコーティングシステム。
【請求項20】
前記タイ・コート層が、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルを含む、請求項
19に記載のコーティングシステム
【請求項21】
前記タイ・コート層が、請求項1~5のいずれか一項において定義された1種以上の立体障害アミンを含む、請求項
19又は20に記載のコーティングシステム。
【請求項22】
障害アミン部位、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン部位が前記タイ・コート層中に、層の0.003~0.5mol/kgの量で存在する、請求項
21に記載のコーティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
基材の表面上にファウリングリリース(fouling-release)コーティングシステムを確立するための方法並びにファウリングリリースコーティングシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
水生構造物、特に水、とりわけ海水と接触する浸漬海洋構造物は、海洋生物によって汚損される傾向を有する。このような海洋生物の定着を抑制する又はそれらの放出を促進するために、例えば、船舶、ブイ、船の構造などのような構造には、防汚及びファウリングリリース塗装システムが多量に使用される。
【0003】
鋼構造物のためのファウリングリリースコーティングシステムは、典型的には、3つの主要な層、すなわち、鋼基材に塗布した防食層、ファウリングリリース層、及びしばしば「タイ・コート(tie-coat)」と呼ばれる、多くの場合、非相溶性の防食層とファウリングリリース層との間の強い結合を確立するための中間層を含む。
【0004】
海洋への用途のためのシリコーン系ファウリングリリースコーティング及びコーティングシステムは、典型的には、様々な種類の変質に対して比較的安定したシステムとみなされる。ゆえに、例えば、光安定剤は、ポリシロキサン/シリコーンポリマー分子本来のUV安定性のため、ポリシロキサン系ファウリングリリースコーティングには必要とされない。
【0005】
このようなファウリングリリースコーティングの現代の種類の例は、国際公開第2011/076856号、国際公開第2013/000479号、国際公開第2014/117786号及び国際公開第2016/004961号に記載されているものである。この分野における他の文献は、国際公開第2016/088630号、米国特許出願公開第2003232910号明細書、特開2010280852号公報、国際公開第2013000478号及び国際公開第9800017号を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2011/076856号
【文献】国際公開第2013/000479号
【文献】国際公開第2014/117786号
【文献】国際公開第2016/004961号
【文献】国際公開第2016/088630号
【文献】米国特許出願公開第2003232910号明細書
【文献】特開2010280852号公報
【文献】国際公開第2013000478号
【文献】国際公開第9800017号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、障害アミン(hindered amine)、特にピペリジン誘導体(障害アミンの光安定剤として既知のものなど)及びポリ(オキシアルキレン)成分をポリシロキサン系海洋ファウリングリリースコーティング中において組み合わせることにより、上記のコーティングの防汚性能が著しく改善することを現在確認している。驚くべきことに、この効果は、コーティングが海水に浸漬され、それによって日光から隠れた場合でさえ明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基材の表面上にファウリングリリースコーティングシステムを確立するための方法がこのように提供され、この方法は、以下の連続的な工程を含む;
a.要すれば、1層以上のプライマー組成物を上記基材の表面上に塗布し、上記層を硬化させ、それによって、下塗した基材を形成する工程;
b.1層以上の液体形態のシリコーン含有タイ・コート組成物を上記下塗した基材又は上記基材の表面上に塗布し、上記層を硬化させ、それによって硬化したタイ・コート層を形成する工程;
c.上記硬化したタイ・コート層上に1層以上のファウリングリリースコーティング組成物を塗布し、ここで、上記ファウリングリリースコーティング組成物が、少なくとも40乾燥重量%の上記コーティング組成物を構成する、縮合硬化性ポリシロキサン系バインダーマトリックスを含み、上記バインダーマトリックスの65重量%を上回るポリシロキサン部分で表され、上記ファウリングリリースコーティング組成物を硬化させる工程;
ここで、上記タイ・コート組成物及び/又は上記ファウリングリリースコーティング組成物は、ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分を含み、及び
ここで、上記タイ・コート組成物及び/又は上記ファウリングリリースコーティング組成物は、1種以上の立体障害アミン(sterically hindered amine)、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体をさらに含む。
【0009】
この方法により得られるファウリングリリースコーティングシステムも提供される。
a.基材、
b.要すれば1種以上のプライマー層、
c.少なくとも1種のシリコーン含有タイ・コート層
d.少なくとも40乾燥重量%のその被覆を構成する縮合硬化性ポリシロキサン系バインダーマトリックスを含むファウリングリリース層であって、上記バインダーマトリックスが65重量%を上回るポリシロキサン部分で表され、上記被覆がポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分を含む、ファウリングリリース層、
を含むファウリングリリースコーティングシステムであって、
上記タイ・コート層及び/又は上記ファウリングリリース層は、1種以上の立体障害アミン、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体をさらに含む、ファウリングリリースコーティングシステムもまた提供される。
【0010】
本発明のさらなる詳細は、従属請求項及び以下の説明に提示される。
【0011】
<詳細な開示>
第1の形態において、基材の表面上にファウリングリリースコーティングシステムを確立するための方法が提供される。
【0012】
「基材」という用語は、コーティング組成物をその上に塗布し得る固体材料を意味することを意図する。基材は、典型的には、鋼、鉄、アルミニウムなどの金属、又はガラス繊維を含む。最も興味深い実施形態において、基材は、金属基材、特に鋼基材である。代替的な実施形態において、基材はガラス繊維基材である。
【0013】
「表面」という用語は、通常の意味で使用され、本発明のファウリングリリースコーティングシステムが塗布される対象物の外側の境界を指す。したがって、基材の表面は、「本来の(native)」表面(例えば、鋼の表面)のいずれであってもよい。しかしながら、典型的には、基材は、例えば防食性コーティングで被覆されており、そのようなコーティングによって基材の表面が構成される。代替的に、基材は、塗装被覆、例えば、擦り切れた防汚被覆又は同様のものを持ち得る。存在する場合、防食被覆は、典型的には、100~600μm、例として150~450μm、例えば200~400μmの合計乾燥フィルム厚で塗布される。
【0014】
本発明に従ったコーティングのために適した表面の特定の例は、船(ボート、ヨット、モーターボート、発動機艇(motor launches)、巨船、タグボート、タンカー、コンテナ船舶及びその他の貨物船舶、潜水艦、及びあらゆる種類の艦艇を含むが、これらに限定されない)、パイプ、海岸及び沖合の機械、橋脚、杭、橋梁下部工、水力設備及び構造物、水中油井構造物、ネット及び他の水生養殖設備、及びブイなどのあらゆる種類の構造物及び物体の表面である。
【0015】
<プライマーコーティング>
第1の任意の工程において、方法は、1層以上のプライマー組成物を上記基材の表面上に塗布し、上記層を硬化させ、それによって下塗した基材を形成する工程を含む。このようにして、下塗した基材は、硬化したプライマー層で被覆された基材を構成する。
【0016】
プライマー組成物は、典型的にはエポキシ系プライマー組成物である。適切なエポキシ系被覆は、ヘンぺル(Hempel)・ライト・プライマー45557、ヘンパドゥール(Hempadur)17634及びヘンパドゥール15570のような市販品である。
【0017】
「エポキシ系組成物」という用語は、1種以上のエポキシ樹脂、1種以上の硬化剤、いずれかの反応性エポキシ希釈剤(diluents)及びいずれかの反応性アクリル変性剤(modifier)の組み合わせとして解釈されるべきである。
【0018】
「エポキシ系組成物」は、分子当たり2種以上のエポキシ基を含有する芳香族又は非芳香族エポキシ樹脂(例えば、水素化エポキシ樹脂)から選択される1種以上のエポキシ樹脂を含み、それは、架橋剤として作用する1種以上の適切な硬化剤と一緒になって、内部、末端又は環状構造に配置される。粘度を低下させ、塗布及び物理的性能を改善するために、単官能性グリシジルエーテル類又は脂肪族、脂環式又は芳香族化合物のエステル類からの反応性希釈剤との組み合わせを含み得る。
【0019】
適切なエポキシ系組成物は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラックエポキシ、非芳香族エポキシ、脂環式エポキシ、エポキシ化ポリスルフィド、グリシジルエステル及びエポキシ官能性アクリル樹脂又はこれのいずれかの組合せから選択されるエポキシ及び変性エポキシ樹脂を含むと考えられる。
【0020】
エポキシ系プライマー組成物はまた、窒素につながった少なくとも2つの反応性水素原子を含む化合物又はポリマーから選択される1種以上の硬化剤を含む。
【0021】
適切な硬化剤は、脂肪族アミン及びポリアミン(例えば脂環式アミン及びポリアミン)、ポリアミドアミン、ポリオキシアルキレンアミン(例えばポリオキシアルキレンジアミン)、アミノ化ポリアルコキシエーテル(例えば、「ジェファミン」として市販されているもの)、アルキレンアミン(例えばアルキレンジアミン)、アラルキルアミン、芳香族アミン、マンニッヒ塩基(例えば、「フェンアルカミン」として市販されているもの)、アミノ官能性シランから選択されるアミン又はアミノ官能性ポリマーを含み、及びそれらのエポキシ付加体及び誘導体を含むと考えられる。当業者は、エポキシ付加物が、カート・ワイゲル(Kurt Weigel)の「エポキシ樹脂ワニス(EPOXIDHARZLACKE)」、1965年、科学出版社M.B.H(Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft M.B.H.)、シュトゥットガルト(Stuttgart)、203-210頁に記載されているように、窒素原子に結合した活性水素を含む1種以上のアミンとの、準化学量論的なエポキシの反応生成物であることを知っているであろう。
【0022】
プライマー組成物は、典型的には、20~900μm、例として20~750μm、例えば50~600μmの乾燥フィルム厚で塗布され、硬化される。
【0023】
「塗布する」という用語は、いずれの層/組成物に関して、塗装業界における通常の意味で使用される。したがって、「塗布する」は、いずれかの従来の手段、例えば、ブラシ、ローラー、噴霧、ディッピングなどによって行われる。商業的に最も興味深いコーティング組成物を「塗布する」手法は、噴霧によるものである。噴霧は、当業者に知られた従来の噴霧装置によってもたらされる。
【0024】
<タイ・コート>
第2の工程において、方法は、1層以上の液体形態のシリコーン含有タイ・コート組成物を、上記下塗した基材又は上記基材の表面上に塗布し、上記層を硬化させ、それによって硬化したタイ・コート層を形成する工程を含む。
【0025】
一般に適したタイ・コート組成物は、特許文献、国際公開第2014/166492号、国際公開第2010/018164号及び国際公開第2005/033219号に見出される被覆である。
【0026】
タイ・コート組成物はシリコーン含有物である。従って、タイ・コート組成物は、ヒドロキシ官能性ポリシロキサン、C1~C4アルコキシ官能性ポリシロキサン、アミノ官能性ポリシロキサン及びエポキシ官能性ポリシロキサンから好ましく選択される、1種以上の架橋性ポリシロキサンを好適に含む。
【0027】
好適には、タイ・コート組成物は、全タイ・コート組成物の湿重量で、3~90%、好ましくは10~80%、より好ましくは20~60%の1種以上の上記架橋性ポリシロキサンを含む。さらに好ましくは、タイ・コート組成物は、全タイ・コート組成物の湿重量で、3~15%又は40%を上回る1種以上の上記架橋性ポリシロキサンを含む。
【0028】
タイ・コート組成物は、2つ以上の加水分解性基を有する1つ以上の加水分解性シランをさらに含んでもよい。上記タイ・コート組成物は、全タイ・コート組成物の湿重量で、30%までの2つ以上の加水分解性基を有する1つ以上の上記加水分解性シランを好適に含む。
【0029】
タイ・コート組成物は、1種以上のエポキシ官能性又はイソシアネート官能性ポリマーを含んでもよい。このようにして、下層(underlying)のエポキシプライマー層との良好な相溶性を達成することができる。タイ・コート組成物中のエポキシ官能性ポリマーは、架橋性ポリシロキサンと好適に架橋可能である。プライマー組成物のための上記エポキシ樹脂のいずれも、タイ・コート組成物中のエポキシ官能性ポリマーとして適し得る。
【0030】
タイ・コート組成物は、さらに、架橋を促進する縮合触媒を含んでもよい。適切な触媒の例は、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズ-2-エチルヘキソエート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジオクトエート、ジオクチルスズ-2-エチルヘキソエート、ジオクチルスズネオデカノエート、ナフテン酸スズ、酪酸スズ、オレイン酸スズ、カプリル酸スズ、2-エチルヘキソエート鉄、2-エチルオクトエート鉛、2-エチルヘキソエートコバルト、2-エチルヘキソエートマンガン、2-エチルヘキソエート亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト及びナフテン酸チタンなどの有機カルボン酸の有機金属及び金属塩;;1、2-ジシクロヘキシル-3-(1-ピペリジル)グアニジン(仏国特許出願公開第2930778号);1-ブチル-2、3-ジシクロヘキシル-1、3-ジメチルグアニジン(国際公開第2010149869号)などの、グアニジン誘導体のような3級アミン及び1、4-エチレンピペラジン(DABCO)及び2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのさらなる3級アミンを含む触媒、を含む。
【0031】
触媒は単独で使用してもよいし、2種以上の触媒の組み合わせとして使用してもよい。使用する触媒の量は、触媒及び架橋剤の反応性、及びその後の被覆/乾燥時間までの所望の再コーティング間隔に依存する。好ましい実施形態において、触媒濃度は、0.01~10重量%、例として0.01~4%、例として0.005~2%、特にエポキシ系バインダーシステム及び硬化剤の合計配合量の0.001~1%である。
【0032】
タイ・コート組成物は、溶剤及び添加剤をさらに含んでもよい。
【0033】
溶媒の例は、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールなどのアルコール、ホワイトスピリット、シクロヘキサン、トルエン、キシレン及びナフサ溶媒などの脂肪族、脂環式脂肪族及び芳香族炭化水素、酢酸メトキシプロピル、酢酸n-ブチル及び酢酸2-エトキシエチルなどのエステル;オクタメチルトリシロキサン及びそれらの混合物である。
【0034】
溶媒が存在する場合、典型的にはタイ・コート組成物の5~50容量%を構成する。
【0035】
添加剤の例を以下に示す:
(i)オルガノポリシロキサンのような非反応性流体;例えば、ポリジメチルシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン;石油及びそれらの組合せ;
(ii)プロピレンオキシド又はエチレンオキシドの誘導体、例えばアルキルフェノールエチレンオキシド縮合物(アルキルフェノールエトキシレート)のような界面活性剤;リノール酸のエトキシル化モノエタノールアミドのような不飽和脂肪酸のエトキシル化モノエタノールアミド;ドデシル硫酸ナトリウム;及び大豆レシチン;
(iii)エム・アッシュ(M.Ash)及びアイ・アッシュ(I.Ash)著「塗装・コーティング原料ハンドブック第1巻」、1996年、ゴワー出版社(Gower Publ.Ltd)、イギリス、821-823頁及び849-851頁に記載されているような湿潤剤及び分散剤;
(iv)コロイドシリカ、含水ケイ酸アルミニウム(ベントナイト)、アルミニウムトリステアレート、アルミニウムモノステアレート、キサンタンガム、クリソタイル、発熱性シリカ、水添加ヒマシオイル、有機変性粘土、ポリアミドワックス及びポリエチレンワックスなどの増粘剤及び沈降防止剤;及び
(v)1、4-ビス(ブチルアミノ)アントラキノン及び他のアントラキノン誘導体のような染料;トルイジン染料、など。
【0036】
いずれの添加剤は、典型的には、タイ・コート組成物の0~30乾燥重量%、例えば0~15%を構成する。
【0037】
そのうえ、タイ・コート組成物は、顔料及び充填剤を含み得る。
【0038】
顔料及び充填剤は、本発明においては、接着性能にあまり関係ないタイ・コート組成物に添加することができる成分としてみなされる。「顔料」は、通常、最終的なタイ・コート組成物を非透明及び非半透明にすることを特徴とし、一方、「充填剤」は、通常、タイ・コート組成物を非半透明にせず、被覆された組成物の下のいずれの材料を隠すことに著しく寄与しないことを特徴とする。
【0039】
顔料の例は、二酸化チタン、赤色酸化鉄、酸化亜鉛、カーボンブラック、グラファイト、黄色酸化鉄、赤色モリブデート、黄色モリブデート、硫化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸アルミニウムナトリウム、キナクリドン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、黒色酸化鉄、インダントロンブルー、酸化コバルトアルミニウム、カルバゾールジオキサジン、酸化クロム、イソインドリンオレンジ、ビス-アセトアセト-o-トリジオール、ベンズイミダゾロン、キナフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、テトラクロロイソインドリノン及びキノフタロンイエローのグレード(grades)である。
【0040】
充填剤の例は、方解石、ドロマイト、タルク、雲母、長石、硫酸バリウム、カオリン、ネフェリン、シリカ、パーライト、酸化マグネシウム、及び石英粉などの炭酸カルシウムである。充填剤(及び顔料)は、ナノチューブ又は繊維の形で添加することもできるので、上述の充填剤の例は別として、タイ・コート組成物は、繊維、例えば参照により本明細書に組み込まれる国際公開第00/77102号に一般的及び具体的に記載されているものを含んでもよい。
【0041】
いずれの顔料及び/又は充填剤は、典型的には、タイ・コート組成物の0~60乾燥重量%、例として0~50%、好ましくは5~45%、例として5~40%又は5~35%を構成する。
【0042】
タイ・コート組成物の簡便な塗布(例えば、噴霧、ブラシ、ローラー塗布技術)を促進する目的で、タイ・コート組成物は、典型的には25~25、000mPa・sの範囲、例として150~15、000mPa・sの範囲、特に200~4000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明のタイ・コートは、次のような古いエポキシ系被覆に塗布される。
洗浄して、汚染物質を除去している古いエポキシ系被覆、又は
洗浄して、汚染物質を除去し、研磨、スイープなどによって粗くされた古いエポキシ系被覆。
【0044】
ある特定の形態において、タイ・コートは、本明細書に記載されるように、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルを含む。
【0045】
別の特定の形態において、タイ・コートは、本明細書に記載されるように、1種以上の立体障害アミンを含む。上記障害アミン部位(moieties)、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン部位は、コーティング層当たり0.003~0.5mol/kgの量で好適に存在する。
【0046】
特に好ましい形態において、タイ・コートは、本明細書に記載されるように、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイル及び1種以上の立体障害アミンの両方を含んでもよい。
【0047】
<ファウリングリリースコーティング組成物>
第3の工程において、方法は、上記硬化したタイ・コート層上に1層以上のファウリングリリースコーティング組成物を塗布し、上記ファウリングリリースコーティング組成物を硬化させることを含む。これにより、ファウリングリリースコーティングシステムが確立される。
【0048】
「ファウリングリリース」(並びに「ファウリング制御」)という表現は、水性環境又は水性液体(例えば、タンク、パイプなどの内部)にさらされた表面のあらゆる種類の生物学的汚染(すなわち表面への生物の定着)に関することと理解されるべきである。しかしながら、本明細書で定義されるコーティングは、海洋生物汚損、すなわち、海洋環境、特に海水へ表面をさらすことに関連して生じる生物汚損を回避又は低減するために特に関連すると考えられる。
【0049】
ファウリングリリースコーティング組成物は、少なくとも40乾燥重量%の上記コーティング組成物を構成する縮合硬化性ポリシロキサン系バインダーマトリックスを含み、縮合硬化性ポリシロキサン系バインダーマトリックスの65重量%を上回るポリシロキサン部分で表される。
【0050】
<ポリシロキサン系バインダーマトリックス>
ポリシロキサン系バインダーマトリックスは、反応性ポリシロキサンバインダーコンポーネント、例えば、(ポリジアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン又はそれらの組合せなどの)官能性オルガノポリシロキサン、架橋剤、シリケート(例えばエチルシリケート)などで構成されると理解されるべきである。したがって、このようなコンポーネント間の反応は、典型的には3次元の共有結合的に相互接続されたネットワ-クの形態でバインダーマトリックスをもたらすと考えられる。それゆえ、ポリシロキサン系バインダーマトリックスは架橋される。
【0051】
ファウリングリリース性組成物の硬化は、縮合反応によるシロキサン結合の形成による重合/架橋により行われる。縮合硬化は、上記バインダーマトリックスの骨格にSi-O-Si繰り返し単位のみから成るバインダーマトリックスを提供する。
【0052】
ポリシロキサン系バインダーマトリックスは、末端及び/又はペンダント(pendant)官能性をもつ官能性オルガノポリシロキサンであるポリシロキサン系バインダーから調製される。末端の官能性が優先される。官能性は、例えばアルコキシ基、ケトオキシム基などの加水分解可能な基で有り得て、官能性はシラノール基で有り得る。1分子当たり最低2種の反応基が好ましい。分子が2種の反応性基のみ、例えばシラノール基を含有する場合には、所望の架橋密度を得るために、さらなる反応物、架橋剤を使用する必要があるかもしれない。架橋剤は、例えば、メチルトリメトキシシランのようなアルコキシシランで有り得るが、以下に説明するように、広範囲の有用なシランが入手可能である。シランはそのまま、又はその加水分解-縮合生成物として使用することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、ポリシロキサン系バインダーシステムを含むファウリングリリースコーティング組成物(すなわち、ファウリングリリース被覆の調製のための組成物)は、当業者に明らかなように、縮合硬化性組成物であってもよい。
【0054】
その例は、シラノール反応性ポリジオルガノシロキサン及び加水分解性基をもつシランに基づく2種のコンポーネントの縮合硬化性組成物、又はアルコキシ又は他の加水分解性反応性をもつポリジオルガノシロキサンに基づく1種のコンポーネントの縮合硬化性組成物である。
【0055】
ある実施形態において、バインダー相は、(i)バインダー、及びバインダー(i)がマトリックスの形成に関与するために加水分解性基または他の反応性基を含むべきである(ii)架橋剤、を含む。
【0056】
バインダー(i)は、典型的には、コーティング組成物の40~90乾燥重量%(同様に被覆の乾燥重量)を構成する。
【0057】
架橋剤(ii)は、好ましくは0~10乾燥重量%(同様に被覆の乾燥重量)のコーティング組成物を構成し、例えば、下記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物、その部分加水分解-縮合生成物、又は2つの混合物である:
【0058】
【0059】
式中、各Rは独立して1~6の炭素原子の未置換又は置換された一価の炭化水素基又は加水分解性基を表し、各Xは独立して加水分解性基を表し、aは0~1などの0~2の整数を表す。
【0060】
ポリマー化学の技術分野において、「部分加水分解-縮合生成物」という用語は、オリゴマー又はポリマーを生成する縮合反応において化合物がそれ自体と反応することが許容されているような化合物を指すことがよく知られている。しかしながら、このようなオリゴマー又はポリマーは、架橋反応において使用される反応性/加水分解性基を依然として保持する。
【0061】
式(2)で示される化合物は、バインダー(i)のための架橋剤として作用する。バインダー(i)及び架橋剤(ii)を配合することにより、組成物を、1つの硬化性RTV(室温で加硫可能な)コンポーネントとして配合することができる。バインダー(i)の末端ケイ素基上の反応性がジメトキシ又はトリメトキシのような容易に加水分解可能な基から成る場合、フィルムを硬化させるために別の架橋剤は通常必要ではない。硬化機構の背景にある技術及び架橋剤の例は、米国特許出願公開第2004/006190号明細書に記載されている。
【0062】
ある実施形態において、Rは、ポリ(オキシアルキレン)基などの親水性基を表す。この場合、ケイ素原子とポリ(オキシアルキレン)基との間にC2~5-アルキルスペーサーを有することが好ましい。したがって、オルガノポリシロキサンはオキシアルキレンドメインを有してもよい。
【0063】
好ましい架橋剤は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン;テトラプロポキシシラン;テトラn-ブトキシシラン;ビニルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン;ビニルトリス(アセトキシム)シラン;メチルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン;メチルトリス(アセトキシム)シラン;ビニルトリメトキシシラン;メチルトリメトキシシラン;ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン;テトラセトキシシラン;メチルトリアセトキシシラン;エチルトリアセトキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン;ジ-t-ブトキシ-ジアセトキシシラン;メチルトリス(エチルラクテート)シラン及びビニルトリス(エチルラクテート)シラン並びにこれらの加水分解-縮合生成物から選択されるものである。
【0064】
より好ましい架橋剤は、テトラエトキシシラン;ビニルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン;メチルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン;ビニルトリメトキシシラン;メチルトリス-(メチルエチル-オキシイミノ)シラン;メチルトリス(エチルラクテート)シランビニルトリス(エチルラクテート)シラン並びにその加水分解-縮合生成物である。
【0065】
より好ましい架橋剤は、テトラエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;メチルトリス(エチル-ラクテート)シラン;ビニルトリス(エチルラクテート)シラン並びにその加水分解-縮合生成物である。特定の実施形態において、上記架橋剤は、テトラエトキシシラン又はその加水分解-縮合生成物である。別の特定の実施形態において、上記架橋剤は、ビニルトリメトキシシラン又はその加水分解-縮合生成物である。さらに別の具体的な実施形態において、上記架橋剤は、メチルトリス(エチルラクテート)シラン又はその加水分解-縮合生成物である。さらに別の特定の実施形態において、上記架橋剤は、ビニルトリス(エチル-ラクテート)シラン又はその加水分解-縮合生成物である。さらなるある実施形態において、上記架橋剤は、加水分解-縮合生成物である。別の実施形態において、上記架橋剤は、加水分解-縮合生成物ではない。
【0066】
他の興味深い架橋剤は、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン並びにそれらの加水分解-縮合生成物から選択されるものである。
【0067】
いくつかの興味深い実施形態において、ポリシロキサン系バインダーは、ポリジメチルシロキサン系バインダーを含む。
【0068】
他の興味深い実施形態において、バインダーは、フルオロ変性物、例えば、シラノール末端ポリ(トリフルオロプロピル-メチルシロキサン)のようなフルオロアルキル変性ポリシロキサンバインダーを含んでもよい。
【0069】
ポリシロキサン系バインダーマトリックスは、典型的には、コーティング組成物又は(場合によっては)硬化被覆の少なくとも40乾燥重量%、少なくとも50乾燥重量%、好ましくは少なくとも60乾燥重量%、例えば少なくとも70乾燥重量%、特に50~90乾燥重量%、又は50~98乾燥重量%、例えば50~96乾燥重量%、特に60~95乾燥重量%、又は50~95乾燥重量%、又は60~94乾燥重量%、又は70~96乾燥重量%、又はさらに70~94乾燥重量%、又は75~93乾燥重量%、又は75~92乾燥重量%を構成する。
【0070】
バインダーは、他の成分、例えば添加剤、顔料、充填剤、殺生物剤など、ならびにいずれかのポリ(オキシアルキレン)変性アルコール(下記参照)、いずれかのポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイル(下記参照)、立体障害アミン(例えば、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体)をファウリングリリース被覆中に組み込む架橋マトリックスの形態である。
【0071】
いくつかの実施形態において、ポリシロキサン系バインダーマトリックスは、バインダーマトリックスの一部として、例えば国際公開第2013/000478号に開示されているように、末端及び/又はペンダントのポリ(オキシアルキレン)鎖、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン及びポリ(オキシエチレン-co-オキシプロピレン)から選択されるポリ(オキシアルキレン)鎖(以下も参照のこと)を含んでいてもよい。
【0072】
「ポリシロキサン系バインダーマトリックス」という用語は、バインダーマトリックスが大部分はポリシロキサン部分から成ること、すなわち、バインダーマトリックスの65重量%を上回る、好ましくは70重量%を上回る、例えば75重量%を上回るポリシロキサン部分で表されることを意味することを意図する。好ましくは、ポリシロキサン部分は、バインダーマトリックス(すなわち、バインダーコンポーネント及びいずれかの架橋剤)の65~100重量%、例えば65~99.9重量%、特に70~100重量%、又は70~99重量%、又は70~98重量%、又は75~97重量%、さらに又は75~99重量%、又は80~98重量%、又は90~97重量%を構成する。バインダーマトリックスの残りは、例えば、存在する場合、いずれかのポリ(オキシアルキレン)鎖及びいずれかの(非ポリシロキサン型)架橋剤から作られ得る。いくつかの重要な実施形態において、ポリシロキサン系バインダーマトリックスは、ポリシロキサン部分及びいずれかの非ポリシロキサン型架橋剤の残基のみから成る。重要なことに、「ポリシロキサン系バインダーマトリックス」という用語は、従来の意味で理解されるべきであり、すなわち、バインダーマトリックスは、ポリシロキサン部分の骨格構造を有する。「ポリシロキサン」という用語は、ケイ素原子と酸素原子が交互になり、炭素原子を欠く骨格を有するようなポリマーを示すことがよく知られている(「ニュー・エンサイクロペディア・ブリタニカ(New Encyclopedia Britannica)」30巻、マイクロペディアIX巻、1975年、シリコーンを参照してポリシロキサンを定義)。同様に、ポリオルガノシロキサンという用語は、ケイ素原子上に有機(すなわち、炭素系)置換基をもつポリシロキサン骨格を意味することを意図する。
【0073】
所定の出発材料(又は付加物)についてポリシロキサン部分及び他のいずれかの部分のそれぞれの量を計算する場合、典型的には、この2つの間を区別することはかなり簡単である。しかしながら、2つの間のいずれかのリンカーについてのいずれかの疑いを排除するために、いずれかのポリ(オキシアルキレン)鎖(ここでは例としてのみ言及する)は、部位がポリシロキサン部分に共有結合しているケイ素原子までのすべての原子を含むが、ケイ素原子を含まないことが理解されるべきである。例として、[ポリシロキサン-O]-Si(Me)2-CH2CH2CH2CH2-[ポリ(オキシアルキレン)]型の構造では、[ポリシロキサン-O]-Si(Me)2部分はシリコーン部分として説明され、一方、CH2CH2CH2-[ポリ(オキシアルキレン)]はポリ(オキシアルキレン)鎖として説明される。
【0074】
<触媒>
ファウリングリリース被覆を形成するために使用されるコーティング組成物は、架橋を促進する縮合触媒をさらに含んでもよい。適切な触媒の例は、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズ-2-エチルヘキサノエート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジオクトエート、ジオクチルスズ-2-エチルヘキサノエート、ジオクチルスズジネオデカノエート、ナフテン酸スズ、酪酸スズ、オレイン酸スズ、カプリル酸スズ、ビスマス-2-エチルヘキサノエート、ビスマスオクタノエート、ビスマスネオデカノエート、2-エチルヘキサノエート鉄、2-エチルオクトエート鉛、2-エチルヘキサノエートコバルト、2-エチルヘキサノエートマンガン、2-エチルヘキサノエート亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、及びナフテン酸チタンなどの有機カルボン酸の有機金属及び金属塩;テトラブチルチタネート、テトラキス(2-エチルヘキシル)チタネート、トリエタノールアミンチタネート、テトラ(イソプロペノキシ)チタネート、チタンテトラブタノレート、チタンタトラプロパノレート;チタンテトライソプロパノレート、ジルコニウムテトラプロパノレート、ジルコニウムテトラブタノレート;ジイソプロピルビス(アセチルアセトニル)チタネートのようなキレートされたチタネートなどのチタネート及びジルコネートエステルを含む。さらなる触媒は、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン及び1、4-エチレンエピペラジンなどの3級アミンを含む。さらなる例は、グアニジン系触媒を含む。縮合触媒のさらなる例は、国際公開第2008/132196号及び米国特許出願公開第2004/006190号明細書に記載されている。
【0075】
触媒は単独で使用してもよいし、2種以上の触媒を組み合わせて使用してもよい。ある実施形態において、上記触媒は、スズ及び酸化チタン(チタンネート)から成る群から選択される。具体的なある実施形態において、上記触媒はスズ系である。ある実施形態において、スズを含まない触媒が含まれる。別の実施形態において、上記触媒は、1種以上の酸化チタン(チタンネート)を含む。使用する触媒の量は、触媒及び架橋剤の反応性及び所望の乾燥時間に依存する。好ましい実施形態において、触媒濃度は、バインダー(i)及び架橋剤(ii)の合計配合量の重量の、0.01~10重量%、例えば0.01~3.0重量%、もしくは5.0~10重量%、もしくは0.1~4.0重量%、もしくは1.0~6.0重量%である。
【0076】
いくつかの実施形態において、触媒は含まれない。
【0077】
<溶剤、添加剤、顔料及び充填剤>
ファウリングリリース被覆を形成するために使用されるコーティング組成物は、さらに溶媒及び添加剤を含んでもよい。
【0078】
溶媒の例は、ホワイトスピリット、シクロヘキサン、トルエン、キシレン及びナフサ溶媒などの脂肪族、脂環式脂肪族及び芳香族炭化水素、酢酸メトキシプロピル、酢酸n-ブチル及び酢酸2-エトキシエチルなどのエステル;オクタメチルトリシロキサン及びそれらの混合物である。代替的に、溶媒システムは、水を含んでもよく、又は水系(溶媒システム中の>50%の水)であってもよい。
【0079】
ある実施形態において、溶媒は、ホワイトスピリット、シクロヘキサン、トルエン、キシレン及びナフサ溶媒などの脂肪族、脂環式脂肪族及び芳香族炭化水素、酢酸メトキシプロピル、酢酸n-ブチル及び酢酸2-エトキシエチルなどのエステル;オクタメチルトリシロキサン及びそれらの混合物、好ましくは110℃以上の沸点を有するこれらの溶媒から選択される。
【0080】
溶媒が存在する場合、典型的にはコーティング組成物の5~50容量%を構成する。このような成分は被覆の乾燥/硬化中に蒸発しているので、最終被覆には実質的にいずれの溶剤もないことが理解される。
【0081】
添加剤の例を以下に示す:
(i)オルガノポリシロキサンのような非反応性流体;例えば、ポリジメチルシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン;石油及びそれらの組合せ;
(ii)不飽和脂肪酸のエトキシル化モノエタノールアミド、例えばリノール酸のエトキシル化モノエタノールアミドのような界面活性剤;ドデシル硫酸ナトリウム;及び大豆レシチン;
(iii)エム・アッシュ及びアイ・アッシュ著「塗装・コーティング原料ハンドブック第1巻」、1996年、ゴワー出版社、イギリス、821-823頁及び849-851頁に記載されているような湿潤剤及び分散剤;
(iv)コロイドシリカ、含水ケイ酸アルミニウム(ベントナイト)、アルミニウムトリステアレート、アルミニウムモノステアレート、キサンタンガム、クリソタイル、発熱性シリカ、水添加ヒマシオイル、有機変性粘土、ポリアミドワックス及びポリエチレンワックスなどの増粘剤及び沈降防止剤(例えばチキソトロピー剤);
(v)1、4-ビス(ブチルアミノ)アントラキノン及び他のアントラキノン誘導体のような染料;トルイジン染料、など;及び
(vi)ビス(tert-ブチル)ヒドロキノン、2、6-ビス(tert-ブチル)フェノール、レゾルシノール、4-tert-ブチルカテコール、トリス(2、4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3、5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート塩)などの酸化防止剤。
【0082】
いずれの添加剤も、典型的には、0~30乾燥重量%、例として0~15%のコーティング組成物又は(場合によっては)硬化被覆を構成する。
【0083】
好ましくは、コーティング組成物は、好ましくはコーティング組成物又は(場合によっては)硬化被覆の0.2~10乾燥重量%、例として0.5~5乾燥重量%、例えば0.6~4乾燥重量%の量で、1種以上の増粘剤及び/又は沈降防止剤(例えばチキソトロピ-剤)を含む。
【0084】
そのうえ、ファウリングリリース被覆の形成のために使用される被覆組成物は、顔料及びフィラーを含んでもよい。
【0085】
顔料及び充填剤は、本発明においては、接着性能にあまり関係ない被覆組成物に添加することができる成分としてみなされる。「顔料」は、通常、最終的な塗装被覆を非透明及び非半透明にすることを特徴とし、一方、「充填剤」は、通常、塗装を非半透明にせず、コーティングの下のいずれの材料を隠すことに著しく寄与しないことを特徴とする。
【0086】
顔料の例は、二酸化チタン、赤色酸化鉄、酸化亜鉛、カーボンブラック、グラファイト、黄色酸化鉄、赤色モリブデート、黄色モリブデート、硫化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸アルミニウムナトリウム、キナクリドン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、黒色酸化鉄、インダントロンブルー、酸化コバルトアルミニウム、カルバゾールジオキサジン、酸化クロム、イソインドリンオレンジ、ビス-アセトアセト-o-トリジオール、ベンズイミダゾロン、キナフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、テトラクロロイソインドリノン及びキノフタロンイエローのグレードである。
【0087】
充填剤の例は、方解石、ドロマイト、タルク、雲母、長石、硫酸バリウム、カオリン、ネフェリン、シリカ、パーライト、酸化マグネシウム、及び石英粉などの炭酸カルシウムである。充填剤(及び顔料)は、ナノチューブ又は繊維の形で添加することもできるので、上述の充填剤の例は別として、被覆組成物は、繊維、例えば参照により本明細書に組み込まれる国際公開第00/77102号に一般的及び具体的に記載されているものを含んでもよい。
【0088】
いずれの顔料及び/又はフィラーは、典型的には、コーティング組成物又は(場合によっては)硬化被覆の0~60乾燥重量%、例として0~50乾燥重量%、好ましくは5~45乾燥重量%、例として5~40乾燥重量%、又は5~35乾燥重量%、又は0.5~25乾燥重量%、又は1~20%乾燥重量を構成する。いずれの顔料及び/又は充填剤の密度を考慮すると、このような成分は、典型的にはコーティング組成物又は(場合によっては)硬化被覆の固形分の、0.2~20%、例として0.5~15%を構成する。
【0089】
被覆組成物(例えば、噴霧、ブラシ、ローラー塗布技術)の簡便な塗布を促進する目的で、被覆組成物は、典型的には25~25、000mPa・sの範囲、例として150~15、000mPa・sの範囲、特に200~4、000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0090】
<ポリ(オキシアルキレン)鎖>
ファウリングリリース被覆及びタイ・コート(及び対応するコーティング組成物)は、ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分を含む。このようなポリ(オキシアルキレン)鎖の性質は、このようなポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分が、ポリ(オキシアルキレン)鎖が1つ以上の部位を構成する個別的な(discrete)分子であってもよく、又はポリ(オキシアルキレン)鎖が、例えばペンダント又は末端基としてバインダーマトリックスに共有結合的に取り込まれてもよいという点で、むしろ多様であり得る。
【0091】
ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分において、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、つながっている酸素原子(又は他とつながっているヘテロ原子)までの全ての原子を含むが、酸素原子を含まないことを理解するべきである。例として、[ポリシロキサン-O]-Si(Me)2-CH2CH2CH2-[ポリ(オキシアルキレン)](ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサン及び以下に詳細に記載されるポリ(オキシアルキレン)変性バインダーマトリックスと同様)型の構造では、[ポリシロキサン-O]-Si(Me)2-部分はシリコーン部分として説明され、一方、-CH2CH2CH2-[ポリ(オキシアルキレン)]はポリ(オキシアルキレン)鎖として説明される。別の例として、(ポリ(オキシアルキレン)-O-)X-R-(-O-FA)Y(以下に詳細に記載されるポリ(オキシアルキレン)変性アルコールと同様)型の構造では、-(-O-)X-R-(-O-FA)Y部分は、アルコール部分として説明され、ポリ(オキシアルキレン)はポリ(オキシアルキレン)鎖として説明される。
【0092】
好ましくは、上記ポリ(オキシアルキレン)鎖の各々は、少なくとも3つの繰り返し単位、例として少なくとも5つの繰り返し単位を含む。多くの興味深い実施形態において、鎖は、3~200、又は5~150、又は5~100の繰り返し単位などの3~1、000の繰り返し単位を含む。別の興味深い実施形態において、鎖は3~30の繰り返し単位、例として3~20の繰り返し単位、例として3~15の、さらに又は4~12の繰り返し単位を含む。さらに別の興味深い実施形態において、鎖は6から20の繰り返し単位、例として8から15の繰り返し単位を含む。
【0093】
最も興味深い形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、100~50、000g/molの範囲、例として100~30、000g/molの範囲、特に200~20、000g/molの範囲、又は200~10、000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。他の興味深い実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、200~5、000g/mol、例として200~2、500g/molさらに又は300~1、000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0094】
ポリ(オキシアルキレン)鎖は、典型的には、ポリ(エチレングリコール)鎖、ポリ(プロピレングリコール)鎖及びポリ(エチレングリコールco-プロピレングリコール)鎖から選択される。後者の例は、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)、及びポリ(エチレングリコール-ランダム-プロピレングリコール)である。
【0095】
<ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイル>
ある実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分は、非反応性ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルから選択される。式(A)、(B)又は(C)のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルのような例は、国際公開第2014/117786号(特にその33~37頁を参照)に開示されている。
【0096】
このようなポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、同一分子内の親水性及び親オイル性基の両方の内容物のため、界面活性剤及び乳化剤として広く使用される。ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、非反応性であり、すなわち、オイルは、バインダー又はいずれかの個々のバインダーコンポーネントと反応し得る基を含有しないように選択される。それゆえ、ポリ(オキシアルキレン)変性シリコーンオイルは、ポリ(オキシアルキレン)変性シリコーンオイルがバインダーに共有結合しないように、バインダーコンポーネントに関して特に非反応性であることが意図されるが、代わりに、原理的にこのようなシリコーンオイルが多かれ少なかれ自由に移動し得るバインダーフィルムに自由に埋め込まれる。特に、ポリ(オキシアルキレン)変性シリコーンオイルは、さらに以下のシリコーンオイル(A)、(B)及び(C)の例の例示的な説明に従って、ポリシロキサンバインダーコンポーネント(又はいずれかの架橋剤)に対する反応基を欠いている。シリコーンオイルは、室温で周囲の空気又はコーティング組成物に含有されるいずれかのバインダーコンポーネント又はいずれかの添加剤とのいかなる意味での化学反応を起こさない限り、「官能性」基、例えばC-OH基を持っていてもよいことが受け入れられる。
【0097】
特に興味深いのは、ポリ(オキシアルキレン)鎖の相対重量が全重量の1%以上(例:1~90%)、例として、5%以上(例:5~80%)、特にポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルの全重量の10%以上(例:10~70%)であるポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルである。ある実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖の相対重量は、ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルの全重量の25~60%、例として30~50%の範囲である。
【0098】
好ましい実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、100~100、000g/molの範囲、例として250~75、000g/molの範囲、特に500~50、000g/molの範囲、又は500~30、000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0099】
別の好ましい実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、500~20、000g/mol、例として1、000~10、000g/mol、又は1、000~7、500g/mol、さらに又は1、500~5、000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0100】
また、(存在する場合)ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、10~20、000mPa・s、例として20~10、000mPa・s、特に40~5、000mPa・sの範囲の粘度を有する場合も好ましい。
【0101】
本発明のある変形例において、ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、ポリ(オキシアルキレン)鎖にそれがグラフト化されたポリシロキサンである。このようなポリ(オキシアルキレン)変性シリコーンオイルの構造の例示的な例は、式(A)である:
【0102】
【0103】
式中、
各R1はC1~5-アルキル(直鎖状又は分岐状の炭化水素基を含む)及びアリール(例えばフェニル(-C6H5))、特にメチルから独立して選択される;
各R2は-H、C1~4-アルキル(例えば-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、CH(CH3)2、CH2CH2CH2CH3)、フェニル(-C6H5)、及びC1~4-アルキルカルボニル(例えば-C(=O)CH3、-C(=O)CH2CH3及び-C(=O)CH2CH2CH3)、特に-H及びメチルから独立して選択される;
各R3は-CH2CH2-及び-CH2CH(CH3)-から独立して選択される;
各R4は-(CH2)2~6-から選択される;
xは0~2500、yは1~100、x+yは1~2000である;
及びnは0~50、mは0~50、及びm+nは1~70である。
【0104】
本明細書における上記式(A)のある実施形態において、n+mは、3から60の繰り返し単位、例として3から50の繰り返し単位、例として3から30さらに又は4から20の繰り返し単位を含む。さらに又は別の興味深い実施形態において、n+mは、6から40の繰り返し単位、例として8から30又は10から25の繰り返し単位を含む。
【0105】
本明細書における上記式(A)のある具体的な実施形態において、x+yは50未満、例として30未満、又は20未満である。別の具体的な実施形態において、x+yは、3から50の繰り返し単位、例として3から30の繰り返し単位、例として8から30、又は例として15から45、又は例として3から15、さらに又は4から12の繰り返し単位を含む。さらに別の興味深い実施形態において、x+yは6から20の繰り返し単位、例として8から15の繰り返し単位を含む。
【0106】
本発明の別の変形例において、ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、ポリ(オキシアルキレン)鎖の骨格に組み込まれたポリシロキサンである。このようなポリ(オキシアルキレン)変性シリコーンオイルの構造の例示的な例は、式(B):
【0107】
【0108】
式中
各R1は、C1~5-アルキル(直鎖状又は分岐状の炭化水素基を含む)及びアリール(例えばフェニル(-C6H5))、特にメチルから独立して選択される;
各R2は、-H、C1~4-アルキル(例えば-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、CH(CH3)2、CH2CH2CH2CH3)、フェニル(-C6H5)、及びC1~4-アルキルカルボニル(例えば-C(=O)CH3、-C(=O)CH2CH3及び-C(=O)CH2CH2CH3)、特に-H及びメチルから独立して選択される;
各R3は、-CH2CH2-及び-CH2CH(CH3)-から独立して選択される;
各R4は、-(CH2)2~6-から選択される;
xは1~2500;及び
nは0~50、mは0~50、及びm+nは1~70である。
【0109】
本明細書における上記式(B)のある実施形態において、n+mは、3から60の繰り返し単位、例として3から50の繰り返し単位、例として3から30さらに又は4から20の繰り返し単位を含む。さらに別の興味深い実施形態において、n+mは、6から40の繰り返し単位、例として8から30又は10から25の繰り返し単位を含む。
【0110】
本明細書における上記式(B)のある実施形態において、xは、3から1000の繰り返し単位、例として3から200、又は5から150、又は5から100の繰り返し単位、例えば5から50の繰り返し単位を含む。別の興味深い実施形態において、xは、3から30の繰り返し単位、例として3から20の繰り返し単位、例として3から15さらに又は4から12の繰り返し単位を含む。さらに別の興味深い実施形態において、xは、6から20の繰り返し単位、例として8から15の繰り返し単位、又は8から50、又は10から45、又は20から40の繰り返し単位を含む。
【0111】
本明細書における上記式(B)のある実施形態において、n+m+xは、3から120の繰り返し単位、例として3から100の繰り返し単位、例として3から80さらに又は4から50の繰り返し単位を含む。さらに別の興味深い実施形態において、n+m+xは、6から40の繰り返し単位、例として8から35の繰り返し単位、例えば8から30の繰り返し単位を含む。
【0112】
本明細書における上記式(B)のある実施形態において、n+m+xは、3から30の繰り返し単位、例として3から20の繰り返し単位、例として3から15、さらに又は4から12の繰り返し単位を含む。さらに別の興味深い実施形態において、n+m+xは、6から20の繰り返し単位、例えば8から25の繰り返し単位、例として8から15の繰り返し単位を含む。
【0113】
このさらに別の変形例において、ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、ポリ(オキシアルキレン)鎖の骨格に取り込まれ、ポリ(オキシアルキレン)鎖にグラフト化されたポリシロキサンである。このようなポリ(オキシアルキレン)変性シリコーンオイルの構造の例示的な例は、式(C)である:
【0114】
【0115】
式中、
各R1は、C1~5-アルキル(直鎖状又は分岐状の炭化水素基を含む)及びアリール(例えばフェニル(-C6H5))、特にメチルから独立して選択される;
各R2は、-H、C1~4-アルキル(例えば-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)2、-CH2CH2CH2CH3)、フェニル(-C6H5)、及びC1~4-アルキルカルボニル(例えば、-C(=O)CH3、-C(=O)CH2CH3及び-C(=O)CH2CH2CH3)、特に-H及びメチルから独立して選択される;
各R3は-CH2CH2-及び-CH2CH(CH3)-から独立して選択される;
各R4は-(CH2)2~6-から選択される;
xは0~2500、yは1~100、及びx+yは1~2000;
kは0~50、lは0~50、及びk+lは1~50;及び
nは0~50、mは0~50、及びm+nは1~50である。
【0116】
本明細書における上記式(C)のある実施形態において、n+mは、3から60の繰り返し単位、例として3から50の繰り返し単位、例として3から30さらに又は4から20の繰り返し単位を含む。さらに別の興味深い実施形態において、n+mは、6から40の繰り返し単位、例として8から30又は10から25の繰り返し単位を含む。
【0117】
本明細書における上記式(C)のある実施形態において、k+lは、3から60の繰り返し単位、例として3から50の繰り返し単位、例として3から30さらに又は4から20の繰り返し単位を含む。さらに別の興味深い実施形態において、k+lは、6から40の繰り返し単位、例として8から30又は10から25の繰り返し単位を含む。
【0118】
本明細書中における上記式(C)のある実施形態において、x+yは、50未満、例として30未満、又は20未満である。別の具体的な実施形態において、x+yは、3~50の繰り返し単位、例として3~30の繰り返し単位、例として8~30、又は例として15~45、又は例として3~15、さらに又は4~12の繰り返し単位を含む。さらに別の興味深い実施形態において、x+yは、6から20の繰り返し単位、例として8から15の繰り返し単位を含む。
【0119】
上記構造式(A)、(B)及び(C)において、-CH2CH(CH3)-、-CH2CH(CH2CH3)-などの基が、2つの可能な向き(orientation)のいずれかで存在し得る。同様に、x及びy回存在するセグメントは、典型的には、ポリシロキサン構造内でランダムに分布するか、又はブロックとして分布することが理解されるべきである。
【0120】
これらの実施形態及び変形例において、ポリ(オキシアルキレン)は、好ましくは、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン及びポリ(オキシエチレン-co-オキシプロピレン)から選択され、これらは、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)及びポリ(エチレングリコールco-プロピレングリコール)と呼ばれることもある。それゆえ、上記構造式(A)、(B)及び(C)において、2つの酸素原子をつないでいる各R3は、-CH2CH2-及び-CH2CH(CH3)-から好ましくは選ばれ、一方ケイ素原子及び酸素原子をつないでいる各R3は、C2~5-アルキルから好ましくは選ばれる。
【0121】
好ましくは、非反応性ポリ(オキシルアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、芳香族置換基を欠いている。
【0122】
1種以上の非反応性ポリ(オキシルアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、存在する場合、異なる種類、例えば上記の2種以上の種類であり得ることが理解されるべきである。
【0123】
興味深い市販の非反応性ポリ(オキシアルキレン)変性シリコーンオイルは、OFX-5103、OFX-190、OFX 5211、OFX-5247、OFX-3667及びOFX-193(すべてはザイアメター(Xiameter)から)、BYKからのBYK-331、DBE-621、ゲレスト(Gelest)からのCMS-222、CoatOSil 3501、Silwet 7280、CoatOSil 7210、CoatOSil 7200、CoatOSil 7602、CoatOSil 1220 (すべてモメンティブ(Momentive)から)、エボニック工業(Evonik industries)からのTEGO Glide 410及びTEGO Glide 435、及び信越からのKF 945である。
【0124】
存在する場合、1種以上のポリ(オキシルアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、典型的にはコーティング組成物(そして硬化した被覆の中で)中に0.01~20乾燥重量%、例えば0.05~10乾燥重量%の量で含まれる。特定の実施形態において、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、コーティング組成物/硬化被覆の0.05~7%乾燥重量、例えば0.1~5乾燥重量%、特に0.5~3%乾燥重量を構成する。特定の他の実施形態において、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルは、コーティング組成物/硬化被覆の1~10乾燥重量%、例えば2~9乾燥重量%、特に2~7乾燥重量%、又は3~7乾燥重量%、又は3~5乾燥重量%、又は4~8乾燥重量%を構成する。
【0125】
ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルがコーティング組成物中(そして硬化した被覆中)に存在する場合、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、典型的には0.005~10乾燥重量%、例えば0.025~5乾燥重量%を構成する。特定の実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、コーティング組成物/硬化被覆の0.025~3.5乾燥重量%、例えば0.05~2.5乾燥重量%、特に0.25~1.5乾燥重量%を構成する。特定の他の実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、コーティング組成物/硬化被覆の0.5~5乾燥重量%、例えば1~4.5乾燥重量%、特に1~3.5乾燥重量%、又は乾1.5~3.5乾燥重量%、又は1.5~2.5乾燥重量%、又は2~4乾燥重量%を構成する。
【0126】
<ポリ(オキシアルキレン)変性アルコール>
他の実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖を有するコンポーネントは、一般式(I)のポリ(オキシアルキレン)変性アルコールから選択される:
【0127】
【0128】
式中、
各POAは、ポリ(オキシアルキレン)部位を表し、
各FAは、C8~30の脂肪アシル部位を表し、
Rは、アルコールR(OH)X+Yの有機残基を表し、上記有機残基は2~50の炭素原子を有する、及び
Xは1~5、Yは0~10及びX+Yは1~12である。
【0129】
上記式(I)において、POA-O-に関連する-O-は、ポリ(オキシアルキレン)及びアルコールの有機残基に共有結合しているエーテル酸素を表す。脂肪酸アシル部位FAは、-O-FAの-O-と一緒になってエステル結合(-O-C(=O)-)を形成する長鎖アシル部位である。
【0130】
有機残基は、典型的には純粋な炭化水素由来であり、すなわち、環構造の一部であるか又は環構造に直接結合している1~5つのエーテル結合(-C-O-C-)を含んでもよいことを除いては、直鎖状、分枝鎖状、環状、不飽和及び/又は芳香族部位から成る。いくつかの実施形態において、有機残基は純粋に炭化水素由来である。
【0131】
ある実施形態において、アルコールR(OH)X+Yの有機残基Rは、2~50の炭素原子、例として3~50の炭素原子を有し、直鎖、分岐鎖及び/又は不飽和部位のみを有する。
【0132】
別の実施形態において、アルコールR(OH)X+Yの有機残基Rは、2~50の炭素原子、例として3~50の炭素原子を有し、置換フェノール、ソルビタン又はステロールから選択される。
【0133】
上述の実施形態におけるような有機残基Rは、典型的には、2~50の炭素原子、例えば3~50の炭素原子、又は6~50の炭素原子、例として8~45の炭素原子、例えば9~40の炭素原子、又は10~35の炭素原子を有する。
【0134】
X+Yが1である実施形態において、有機残基は、典型的には、6~50の炭素原子を有する。
【0135】
典型的には、ポリ(オキシアルキレン)部位POAは、各々、R1O-[R2-O]n-R3-部位を表し、ここで、R1は、水素、C1~4-アルキル-C(=O)-及びC1~4-アルキルから選択され;各R2及びR3は、エチル-1、2-エン及びプロピル-1、2-エンから選択され;及びnは1~150の整数である。
【0136】
ポリ(オキシアルキレン)部位POAは、典型的には、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン及びポリ(オキシエチレン-co-オキシプロピレン)から選択されるポリ(オキシアルキレン)部位である。
【0137】
いくつかの興味深い実施形態において、nは4~150、例として5~100、例として6~75、特に6~30の範囲である。
【0138】
ある実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)は、ポリオキシエチレン及びポリ(オキシエチレン-co-オキシプロピレン)、好ましくはポリ(オキシアルキレン)、例えば、100~20、000g/mol、例として、200~20、000g/mol、特に300~5、000g/molの数平均分子量を有するものから選択される。
【0139】
本発明のある変形例において、ポリ(オキシアルキレン)は、ポリオキシエチレンから選択される。これの例示的な例は、PEG-30及びPEG-75である。
【0140】
本発明の別の変形例において、ポリ(オキシアルキレン)はポリ(オキシエチレン-co-オキシプロピレン)から選択される。これの例示的な例は、PEG-5/PPG-5及びPEG-10/PPG-3.5である。
【0141】
アルコールR(OH)X+Yの部分的エステル化で脂肪酸アシル部位FAをもたらす脂肪酸は、C8~30の脂肪酸、例としてC10~24の脂肪酸ある。いくつかの変種において、脂肪酸は、1種以上の不飽和結合を含んでもよい。脂肪酸の例は、ステアリン酸、ラウリン酸及びオレイン酸である。
【0142】
式(I)中、(POA-O-)X-R-(-O-FA)Y、Xは1~5であり、Yは0~10であり、X+Yは1~12である。いくつかの実施形態においてXは1~5であり、Yは0である。他の実施形態において、Xは1であり、Yは1~10である。さらに他の実施形態において、Xは1~3であり、Yは1~5である。
【0143】
いくつかの実施形態において、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性アルコールは、0~60℃、例として0~45℃、特に0~30℃の融点を有する。
【0144】
さらなる実施形態において、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性アルコールは、20~55mN/m、例として25~50mN/m、例えば25~45mN/m、又は30~50mN/m、好ましくは30~45mN/mの水中の臨界ミセル濃度を超える表面張力を有する。表面張力は、実施例の項で記載したように決定される。
【0145】
ある実施形態において、被覆は、1~10乾燥重量%、例として2~8乾燥重量%、特に3~7乾燥重量%の1種以上の上記ポリ(オキシアルキレン)変性アルコールを含む。
【0146】
別の実施形態において、被覆は、固形分で1~10%、例として2~8%、特に3~7%の1種以上の上記ポリ(オキシアルキレン)変性アルコールを含む。
【0147】
さらに別の実施形態において、被覆(又は対応するコーティングシステム)は、1~20、例として2~18、特に3~16g/m2の1種以上の上記ポリ(オキシアルキレン)変性アルコールを含む。
【0148】
1つの特定の実施形態において、被覆は、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ステロールを含むか、それから成る1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性アルコールを含む。
【0149】
ステロールはテルペン由来の化合物で、一般構造式(II)を共有している。
【0150】
【0151】
式中、(A環の)3位はヒドロキシ官能基であり、(コレステロールに似ている)式中17位は、典型的に(C20~C27の鎖が最も典型的な構成として提供される)分枝脂肪族鎖をもつ。4位、1位などの他の位置も、構造が、例えばコレステロールのように炭素5と6の間に、又はラノステロールのように炭素8と9の間にエチレン性不飽和二重結合を含有し得るのと同様に、置換基(典型的にはメチル基)を持ち得る。また、ステロールは、3位の水酸基以外の水酸基を1種以上有してもよい。
【0152】
いくつかの実施形態においてステロールはアルコールR-OHを表し、それゆえX+Yは1である。
【0153】
3位のヒドロキシ基は、官能基化、例えばポリ(オキシアルキレン)によるようなエーテル変性に利用でき、ポリ(オキシアルキレン)変性ステロールを与える。
【0154】
ポリ(オキシアルキレン)変性ステロールは、ステロールアルコールとアルキレンオキシドとを反応させ、それによりアルコールにより開始される開環重合によりポリアルキレンオキシドを重合させることにより製造することができる。そのようなステロールの典型的な供給源は、クローダ(Croda)によるアクアローズ(Aqualose)、ビーエイエスエフ(BASF)によるジェネロール(Generol)、及びリポケミカルズ(Lipo chemicals)によるリポラン(Lipolan)である。ステロール類の3-ヒドロキシ基をポリ(オキシアルキレン類)で官能基化することは、殺生物剤、特に亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン及びジネブのような有機殺生物剤と組み合わせたファウルリングリリースコーティングにおいて特に有用な化合物を与えることが見出された。
【0155】
本発明において、「ポリ(オキシアルキレン)変性ステロール」は、主に3位のポリ(オキシアルキレン)でエーテル官能基化された(すなわち3位の-OHがPOA-O-に置換された)一般構造式(II)のステロールから成る生成物として理解されるべきである。
【0156】
本発明において、「主に~から成る」という用語は、「ポリ(オキシアルキレン)変性ステロール」の固形分重量の少なくとも75%が、3位でポリ(オキシアルキレン)によりエーテル官能基化された一般構造(II)のステロールから成ることを意味する。好ましくは、「ポリ(オキシアルキレン)変性ステロール」固形分重量の、少なくとも80%、例として少なくとも85又は少なくとも90%は、このようなステロールから成る。一般構造式(II)のエーテル官能基化されたステロールの含有量が100%未満であるのは、多くの「ステロール」の市販品質が少量の不純物を含むという事実による。
【0157】
ポリ(オキシアルキレン)変性ステロールの例は、アクアロ-ス(Aqualose)L30及びポリコール(Polychol)20(例えば、クローダ)、PEG75フレーク(例えば、NK化学)である。
【0158】
別の特定の実施形態において、アルコールR(OH)X+Yは、フェノール類から選択される。
【0159】
フェノールは、一般構造式(III)の化合物である:
【0160】
【0161】
式中、1位は、ヒドロキシ官能基であり、2、3、4、5又は6-位の水素は、直鎖状、分枝鎖状、環状、不飽和及び/又は芳香族部位で置換されていてもよく、さらに上記のように式-O-FAの脂肪アシル部位を持っていてもよい。1つの興味深い変種において、フェニルが置換されており、特に、2-、4-及び6-位がそれぞれ、例えばスチリル、ノニル及び/又はブチル基で置換されている。それゆえ、後者の場合、アルコールは、トリスチリルフェノール、ノニルフェノール及びトリブチルフェノールから選択され得る。
【0162】
1位のヒドロキシ基は、ポリ(オキシアルキレン)によりさらに上記のように官能基化のために利用でき、ポリ(オキシアルキレン)変性フェノールを与える。
【0163】
フェノール系化合物の例は、Sapogenat T080(例えば、クラリアント(Clarian))及びSerdox NSP14(例えば、クローダ)である。
【0164】
さらに別の特定の実施形態において、アルコールR(OH)X+Yはソルビタンである。ソルビタンは一般構造式(IV)の化合物である:
【0165】
【0166】
一般式R(OH)4のアルコールに相当する。ソルビタンは、脂肪酸によって4つのOH基のうち3つまでが部分的なエステル化により変性され、1つ以上ポリ(オキシアルキレン)変性に利用できる、変性されていないOH基を残す。式(I)(POA-O-)X-R-(-O-FA)Yのいくつかの実施形態において、Xは1~3、Yは1~3、及びX+Yは4、例えば式中、Xは1~2、Yは2~3、及びX+Yは4である。
【0167】
具体的な実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)変性ソルビタンは、ソルビタントリオレートに基づいており、ポリ(オキシアルキレン)により、さらに上記のように官能基化するために利用できる-OH基を1つだけ残して、ポリ(オキシアルキレン)変性ソルビタントリオレート、すなわちXは1であり、Yは3である、を与える。
【0168】
さらに別の特定の実施形態において、アルコールは、飽和直鎖第1級アルコール及び飽和分枝鎖第2級又は第3級アルコールなどのC6~30の飽和直鎖又は分枝鎖アルコールから選択される。ヒドロキシ基は官能基化、例えばポリ(オキシアルキレン)によるエーテル変性に利用可能であり、ポリ(オキシアルキレン)変性C6~30アルコール、例えば、直鎖第1級アルコール及びポリ(オキシアルキレン)変性分岐鎖第2級及び/又は第3級アルコールを与える。いくつかの実施形態において、このようなアルコールは、8~30の炭素原子、例として10~24の炭素原子を有する。
【0169】
上記アルコールの具体例は、例としてC10~15飽和直鎖第1級アルコール、分岐鎖C13アルコール、オレイルアルコールなどのC8~30アルキルアルコールである。
【0170】
そのようなアルコールの例は、例えばクローダTween85である。
【0171】
上記の実施形態は、独立して又は組み合わせて見ることができることを理解されるべきである。それゆえ、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性アルコールは、上記で特定した種類の異なるものによって、又は同じ種類内のいくつかの変種によって表してもよい。
【0172】
存在する場合、1種以上のポリ(オキシルアルキレン)変性アルコールは、典型的にはコーティング組成物中(及び硬化した被覆の中)に0.01~20乾燥重量%、例えば0.05~10乾燥重量%の量で含まれる。特定の実施形態において、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性アルコールは、0.05~7乾燥重量%、例えば0.1~5乾燥重量%、特に0.5~3乾燥重量%のコーティング組成物/硬化被覆を構成する。特定の他の実施形態において、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性アルコールは、コーティング組成物/硬化被覆の1~10乾燥重量%、例えば2~9乾燥重量%、特に2~7乾燥重量%、又は3~7乾燥重量%、又は3~5乾燥重量%、又は4~8%乾燥重量を構成する。
【0173】
ポリ(オキシアルキレン)変性アルコールがコーティング組成物中(及び硬化した被覆の中)に存在する場合、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、典型的には0.005~10乾燥重量%、例えば0.025~5%を構成する。特定の実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、コーティング組成物/硬化被覆の、0.025~3.5乾燥重量%、例えば0.05~2.5乾燥重量%、特に0.25~1.5乾燥重量%を構成する。特定の他の実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、コーティング組成物/硬化被覆の、0.5~5乾燥重量%、例えば1~4.5乾燥重量%、特に1~3.5乾燥重量%、又は1.5~3.5乾燥重量%、又は1.5~2.5乾燥重量%、又は2~4乾燥重量%を構成する。
【0174】
<バインダーマトリックスのポリ(オキシアルキレン)変性>
ある変形例において、バインダーマトリックスは、その一部としてポリ(オキシアルキレン)鎖を共有結合的に含んでいる。存在する場合、このようなポリ(オキシアルキレン)鎖は、好ましくはバインダーマトリックスの1~30重量%、例として2~20重量%、例えば1~10重量%を構成する。
【0175】
ポリシロキサン系バインダーマトリックスに含まれるポリ(オキシアルキレン)鎖は、もちろん、ケイ素起源でないことが理解されるべきである。
【0176】
ある実施形態において、バインダーは、下記一般式(1)で表される硬化性ジオルガノポリシロキサンを含む。
【0177】
【0178】
式中、各A1は、ヒドロキシル基、加水分解性基、及びアミン又はエポキシのような他の官能基から独立して選択される;各A2は、アルキル、アリール、アルケニル及び加水分解性基から独立して選択される;各A3及びA4は、アルキル、アリールアルケニル及びポリ(オキシアルキレン)基から独立して選択され、式中、A3及び/又はA4がポリ(オキシアルキレン)基である場合、そのような基は、C2~5-アルキレンリンカーを介してケイ素原子に結合し得る;a=1~25000、b=1~2500及びa+bが少なくとも5である。
【0179】
ある代替的な実施形態において、バインダーは下記一般式(1x)で表される硬化性ジオルガノポリシロキサンを含む:
【0180】
【0181】
式中、各A1、A2、A3、A4、a及びbは、上記式(1)について上記のとおりであり、式中各A5は酸素又は炭素数2~5のアルキル基から独立して選択される。
【0182】
別の実施形態において、ポリシロキサンバインダーは、以下に示すように側鎖(ペンダント基)としてグラフトされたポリ(オキシアルキレン)鎖を有し、水素化官能性ポリシロキサンと、例えばアリル基又はビニル基などの不飽和基(-CH=CH2)を含有するポリ(オキシアルキレン)コンポーネントとの間のヒドロシリル化反応によって、式(1c)に従って白金などのヒドロシリル化触媒の存在下で調製することができる。ここで、ポリ(オキシアルキレン)化合物の例は、末端アリルポリ(エチレングリコール)である。この合成は、60~150℃のような高温で行われる。ポリマーを硬化させるためには、加水分解可能な基、又はビニルトリメトキシシランのような他の反応性の基で官能基化する必要がある。反応は、ポリシロキサンにポリ(オキシアルキレン)鎖をグラフトする場合と同じ原理に従い、それは式(1b)で概説され、官能基化は、ポリ(オキシアルキレン)基の結合の前に行うことができるが、必須ではない。
【0183】
反応(1b)から得られるバインダーは、式(1c)で概説されるように、ポリ(エチレングリコール)モノアリルエーテルでさらに変性され、ポリ(オキシアルキレン)鎖で変性された硬化性ポリシロキサンが得られる。
【0184】
【0185】
【0186】
得られたバインダーは、そのまま、又は(式1に示された一般の種類の)硬化性ジオルガノシロキサンと組み合わせて用いることができる。
【0187】
加水分解性シランをポリシロキサンにグラフトする前に(すなわち、式(1b)及び(1c)に記載の合成とは逆の順序で)ポリ(オキシアルキレン)鎖をポリシロキサンにグラフトすることが可能である。
【0188】
それゆえ、ある興味深い実施形態において、ポリシロキサン系バインダーマトリックスを含む硬化塗装コーティングは、その一部としてペンダントのポリ(オキシアルキレン)鎖を含む。
【0189】
「ペンダント」という表現は、ポリ(オキシアルキレン)鎖がポリシロキサン骨格に非末端位置で結合しており、そのような部位が一端のみに結合してペンダントポリ(オキシアルキレン)鎖がポリシロキサン骨格(マトリックス)に「グラフト」を形成することを意味する。これは、「分岐鎖」として呼ばれ得る。
【0190】
ペンダントのポリ(オキシアルキレン)鎖は、遊離末端(free end)において原則として、例えば殺生物効果などを示す遊離末端における官能基(非反応性官能)をもつ。しかしながら、ほとんどの実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、そのような官能基を持っていないが、本来のポリ(オキシアルキレン)形態の形態であり、アルキル基と同様に末端キャップされている可能性があり、又はヒドロキシル基又はメトキシで終わっている可能性がある。
【0191】
バインダーの別の変形例は、ポリシロキサン(A)とポリ(オキシアルキレン)ポリマー(B)とのA-B-Aコポリマーである。ポリマーの構造の例を式(1d)に示す。この変形例において、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの単位をポリシロキサンの骨格に導入して交互ブロック共重合体を形成する。バインダーにポリ(オキシアルキレン)基を導入することは、参考文献国際公開第2008/132196号に記載のようにバインダーの親水性を高めることができる。バインダーは、単独又は組み合わせて使用することができ、コポリマーの構造はA-B-A及びB-A-Bであり得る。B-A-Bの場合、シリコーン部分の末端基はポリ(オキシアルキレン)鎖によって塞がれるため、ペンダント硬化性官能性が必要である。
【0192】
【0193】
さらに別の変形例において、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、アリル基又はビニル基などの少なくとも1つの不飽和基(-CH=CH2)を含有するポリ(オキシアルキレン)化合物と、ヒドリド基、例えば、HSi(R*)3基を有するシランのヒドロシリル化より得られ、式中、各R*は、C1~4-アルキル及びC1~4-アルコキシ(例:メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシ)、から独立して選択され、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン又はメチルジメトキシシランなど少なくとも1つがC1~4-アルコキシであり、ヒドロシリル化触媒、例えば白金の存在下で、硬化性ポリ(オキシアルキレン)をもたらす。反応は、60~150℃のような高温で行われる。合成は、式(1e)に概説される。ポリマーは、例えば、コンポーネント(i)(式1)と組み合わせて使用しなければならない。有用なシランのさらなる例は、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、tert-ブチルジエトキシシランを含むが、これらに限定されない。
【0194】
【0195】
ある変形例において、親水性は、式(2a)で表される一般型のようなポリ(オキシアルキレン)シランを使用して得ることができる(又は上記の項で概説したようにバインダー(i)にポリ(オキシアルキレン)鎖を導入することによって得られる親水性を加えることができる)。ポリ(オキシアルキレン)シランは、バインダーコンポーネント(式(1)又は(1e))中のシラノール又はポリ(オキシアルキレン)鎖と反応し、それによってポリ(オキシアルキレン)鎖を取り込む。
【0196】
【0197】
式中、
各Rは、1~6炭素原子の非置換もしくは一価の置換炭化水素基又は加水分解性基を独立して表す。
各Xは、加水分解性基を独立して表す。
各R2は、-H、C1~4-アルキル(例:-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)2、-CH2CH2CH2CH3)、フェニル(-C6H5)、及びC1~4-アルキルカルボニル(例:-C(=O)CH3、-C(=O)CH2CH3及び-C(=O)CH2CH2CH3)、特に-H及びメチルから独立して選択される;
各R3は、C2~5-アルキレン(例:-CH2CH2-、-CH2CH(CH3)-、CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH2CH3)-)、アリーレン(例:1、4-フェニレン)、及びアリール(例:1-フェニルエチレン)で置換されたC2~5-アルキレンから、特にC2~5-アルキレン、例えば-CH2CH2-及び-CH2CH(CH3)-)から独立して選択される;
pは3~50であり;
aは0~2であり;
zは1~3である。
【0198】
オルガノポリシロキサン中にオキシアルキレン単位を導入することは、特にエチレンオキシド型-[CH2CH2-O]-を使用する場合に、バインダーの親水性を増加させる。
【0199】
さらなる形態において、バインダーのポリ(オキシアルキレン)変性は、(上記のように)A-B-A変性及びペンダントポリ(オキシアルキレン)鎖の両方から成る。
【0200】
ポリ(オキシアルキレン)鎖がポリシロキサン系バインダーマトリックスの一部を形成する被覆、すなわち、部位がバインダーマトリックスに共有結合的に組み込まれることが理解されるべきである。形成された共有結合は好ましくは非加水分解性であることも理解されるべきである。
【0201】
ポリシロキサン系バインダーマトリックスに含まれるポリ(オキシアルキレン)鎖は、もちろん、ケイ素起源でないことが理解されるべきである。
【0202】
ポリシロキサンポリマー骨格への上記ポリ(オキシアルキレン)鎖の取り込みは、典型的には、連結基を介して行われる。連結基は、2つの相互反応官能基;ポリシロキサン骨格上の1つの官能基及びポリ(オキシアルキレン)鎖上の1つの官能基、の反応の生成物として理解される。例えば、アミン結合基は、例えば、グリシジルエーテルと1級又は2級アミンとの反応の結果であるが、それだけに限らない。ポリ(オキシアルキレン)鎖とポリシロキサン骨格との間の有用な連結基の例は:アミン基、エーテル基、アミド基、1、2、3トリアゾール、C-C結合C-C二重結合、C-C三重結合、Si-C結合、C-S結合、S-S結合、ウレタン基、尿素基である。最も好ましい連結基は、白金によって触媒されるヒドロシリル化反応によって調製されるSi-C結合であり、ここでポリシロキサン骨格上の官能基がヒドリドであり、ポリ(オキシアルキレン)鎖上の官能基がアリル基である。
【0203】
いくつかの実施形態においてポリ(オキシアルキレン)鎖は、バインダーマトリックスに対して永続的な親水性の寄与を与えることが好ましい。それゆえ、そのような実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、好ましくは、海水中で加水分解可能ないずれかの結合がない。それゆえ、好ましくは、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、エステル結合又は酸無水物結合を含まない。
【0204】
上記のポリシロキサン系バインダーシステムが、バインダーマトリックスの一部として、ポリ(オキシアルキレン)鎖で変性された1種以上のポリシロキサンコンポーネントを含むことを特徴とする場合、そのようなポリシロキサンコンポーネントは、他のポリシロキサンコンポーネントと反応し、架橋剤は、バインダーシステムに親水性能を与える。あるいは、ポリシロキサンバインダー又はポリ(オキシアルキレン)鎖と反応し、非加水分解性結合を形成することを可能にする反応性シランで官能基化されたポリ(オキシアルキレン)鎖、又はポリ(オキシアルキレン)鎖も使用することができる。
【0205】
ポリシロキサンコンポーネントは、ポリシロキサン系バインダーシステムの他の成分との反応を容易にするために、Si-OH基のようなケイ素反応性基、Si-OR基(例えばアルコキシ、オキシム、アセトキシなど)のような加水分解性基などを含まなければならない。
【0206】
ポリ(オキシアルキレン)変性鎖が、コーティング組成物中(及び硬化した被覆の中)でバインダーマトリックスに共有結合して存在する場合、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、典型的には1~30乾燥重量%、例えば2~25%を構成する。特定の実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、コーティング組成物/硬化被覆の、3~20乾燥重量%、例えば5~20乾燥重量%、特に6~17乾燥重量%を構成する。特定の他の実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖は、コーティング組成物/硬化被覆の、3~15乾燥重量%、例えば4~12乾燥重量%、特に3~10乾燥重量%、又は4~9乾燥重量%、又は5~10乾燥重量%、又は7~12乾燥重量%を構成する。
【0207】
<立体障害アミン>
ファウリングリリース被覆及び/又はタイ・コート(及び対応するコーティング組成物)の必須のコンポーネントは、1種以上の立体障害アミン(特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体)である。本発明者らは、このような立体障害アミンの障害アミン部位(例えば、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン部分)を、ポリ(オキシアルキレン)鎖を含む成分と組み合わせて使用した場合、浸漬されたポリシロキサン系ファウリングリリース被覆/システムの防汚性能が向上することを見出した。
【0208】
ある実施形態において、立体障害アミンはタイ・コート組成物及び被覆中に存在する。別の実施形態において、立体障害アミンは、ファウリングリリース組成物及び被覆中に存在する。
【0209】
立体障害アミンモチーフ(例えば、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジンモチーフ)の存在が立体障害アミンの官能性のために重要な役割を果たしていると考えられる。そうでなければ、個別的な分子として存在するもの、オリゴマー又はポリマー構造の一部であるもの、及びバインダーマトリックスに共有結合的に組み込まれているものを含む、広範囲の誘導体が塗布可能であると把握される。
【0210】
ある実施形態において、立体障害アミンは、一般式Iの障害アミン部位を含む:
【0211】
【0212】
式中、
各R1は、独立して直鎖又は分岐鎖のC1~C4アルキル、好ましくはメチルである;
【0213】
R2は、-H、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C1~30アルキル、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C2~30アルケニル、要すれば置換されたアリール、-OH(N-O・に相当)、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C1~30アルコキシ、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C1~30アルケニルオキシ、要すれば置換されたアリールオキシ、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C1~30アルキルカルボニル、要すれば置換された直鎖又は分岐鎖C1~30-アルケニルカルボニル、及び要すれば置換されたアリールカルボニルから選択される。
【0214】
R3は、間にある-C(R1)2-N(R2)-C(R1)2-基と一緒になってN-複素環5-、6-又は7-員環を形成する、要すれば置換された二価の基である。
【0215】
及び式中、上述の意味を有するR2及び/又はR3は、各々独立して一般式Iを有する1種以上の障害アミン部位につながり得る。
【0216】
好ましくは、R1はメチルである。
【0217】
いくつかの実施形態において、R2は、要すれば置換されたC1~30アルキル、要すれば置換されたC1~30アルケニル、要すれば置換されたアリール、-OH、要すれば置換されたC1~30アルコキシ、要すれば置換されたC1~30アルケニルオキシ、要すれば置換されたアリールオキシ、要すれば置換されたC1~30アルキルカルボニル、要すれば置換されたC1~30-アルケニルカルボニル、及び要すれば置換されたアリールカルボニル、特に要すれば置換されたC1~30アルキル、要すれば置換されたC1~30アルケニル、要すれば置換されたアリール、要すれば置換されたC1~8アルコキシ、要すれば置換されたC1~8アルケニルオキシ、要すれば置換されたアリールオキシ、要すれば置換されたC1~8アルキルカルボニル、要すれば置換されたC1~8-アルケニルカルボニル、及び要すれば置換されたアリールカルボニルから選択されている。
【0218】
別の実施形態において、R2は、C1~4-アルキル、C1~4-アルコキシ、C1~4-アルキルカルボニルから選択される。
【0219】
いくつかの実施形態においてR3は、-CH2-C(~)-CH2-(ピペリジンに相当)及び-CH2-N(~)-CH2-(ピペラジンに相当)、特に-CH2-C(~)-CH2-から選択され、式中、「~」は、水素原子及び/又は置換基、リンカー、骨格、デンドリマー、又はポリマーなどに対する連結点(attachment point)を示す。
【0220】
特定の実施形態において、R3は、-CH2-C(R4)-CH2-(ピペリジンに相当)及び-CH2-N(R4)-CH2-(ピペラジンに相当)、特に-CH2-C(R4)-CH2-から選択され、式中、R4は、(一般的及び具体的に)下記一般式IIで定義される通りである。
【0221】
ファウリングリリース性組成物/タイ・コート組成物中の、ファウリングリリース性被覆を導く2級アミンの存在は、ポリシロキサン系バインダーマトリックスの形成に有害な影響を有するので、今のところ、R2は、-Hでないことが好ましい、
【0222】
また、R2は好ましくは-H及び-OHから選択されるべきではないと考えられる。
【0223】
いくつかの実施形態において、立体障害アミンは、ただ1種の障害アミン部位、特に一般式II(下記)のピペリジン部位を含む個別的な分子である。
【0224】
他の実施形態において、立体障害アミンは、例えば2~20の障害アミン部位、特に一般式II(下記)のピペリジン部位を含むオリゴマーである。本明細書の変形例において、部位は互いにつながっている。
【0225】
さらに他の形態において、立体障害アミンは、ポリマー構造の反復骨格部位又は反復グラフト化部位として、例えば、5~200の障害アミン部位、特に一般式II(下記)のピペリジン部位を含むポリマーオリゴマーである。
【0226】
上述の変形例において、立体障害アミンがポリシロキサン系バインダーマトリックスに固定化される。
【0227】
より詳細には、立体障害アミンは、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体から選択され、すなわち、障害アミン部位は、一般式IIの2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン部位である:
【0228】
【0229】
式中、R1及びR2は、上記のように定義される;R4は水素原子及び/又はポリマーへの連結点を表す。
【0230】
いくつかの変形例において、R4としての置換基は、さらに以下でヘテロ環への置換基として定義されるこれらの置換基から選択される。
【0231】
ある形態において、R4は、0(ピペリジンの4位が置換されていない場合)、C1~30-アルキル、C1~30-アルケニル、アリール、ヒドロキシ、C1~30-アルコキシ、C1~30-アルケニルオキシ、アリールオキシ、C1~30-アルキルカルボニル、C1~30-アルケニルカルボニル、アリールカルボニル、C1~30-アルキルカルボニルオキシ、C1~30-アルケニルカルボニルオキシ、及びアリールカルボニルオキシから選択される1種又は2種の置換基を表す:式中、上述の意味をもつ置換基R4は、各々独立して一般式IIを有する1種以上の障害アミン部位につながっていてもよい。
【0232】
いくつかの実施形態においてR4は、C1~30-アルキル、C1~30-アルケニル、アリール、C1~30-アルコキシ、C1~30-アルケニルオキシ、アリールオキシ、C1~30-アルキルカルボニル、C1~30-アルケニルカルボニル、アリールカルボニル、C1~30-アルキルカルボニルオキシ、C1~30-アルケニルカルボニルオキシ、及びアリールカルボニルオキシから、特にC1~8-アルコキシ、C1~8-アルケニルオキシ、アリールオキシ、C1~8-アルキルカルボニルオキシ、C1~8-アルケニルカルボニルオキシ、及びアリールカルボニルオキシから選択される。
【0233】
他の実施形態においてR4は、スピロ構造、例えばヘテロ環性のスピロ構造を形成する2つの置換基を表す。「スピロ」という用語は、有機化学において通常の意味、すなわち、共通の原子を共有する2つ以上の環、を有する。
【0234】
2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体のような立体障害アミンの変形は、文献中及び商業的供給源において非常に豊富である。例えば、個別的な分子としての2,2,6,6-テトラアルキルピペリジンは、ポリシロキサン系コーティング中で容易に移動するという事実のために、水溶性を改変するなどの構造的な誘導化によって、及び/又は分子量を増加させる(移動度を低下させる)ことによって、さらに又は立体障害アミン部位(例えばピペリジン部位)の共有結合的固定化によって、移動する傾向を改変することが望ましい。
【0235】
ある実施形態において、立体障害アミン部位は個別的な分子内に存在する。
【0236】
別の実施形態において、立体障害アミン部位は、オリゴマー構造又はポリマー構造の一部として存在する。
【0237】
さらに別の実施形態において、立体障害アミン部位は、バインダーマトリックスに固定化されて存在する。
【0238】
したがって、以下では、例示の目的のために、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体の種々の例が紹介される。
【0239】
いくつかの実施形態において、ピペリジン誘導体は個別的な分子として存在する。
【0240】
他の実施形態において、ピペリジン誘導体は、オリゴマー又はポリマー構造の一部のものである。
【0241】
ある変形例において、このようなオリゴマー/ポリマー性ピペリジン誘導体は、例えば国際公開第2016/105974号に開示されている(メタ)アクリレートの性質のものであり、式(Rb)m-Ra-NH-C(=O)-L-Xを有する、式中
【0242】
Xは以下であり;
【0243】
【0244】
R1、R2、R7及びR8は、C1~4-アルキル、好ましくはメチルから独立して選択される;
R3、R4、R5及びR6は、水素及びC1~4-アルキル、好ましくは水素から独立して選択される;
Aは、一般式I及び一般式IIについては上記のR3として選択され、好ましくはN-Hではない;
Lは、-O-及び単結合、好ましくは-O-から選択される;
mは1~6までの整数である;
Raは、m+1の原子価、好ましくはC1~6-アルキレン又はポリ炭化水素基を有する連結基である;
Rbは、式O-C(=O)-C(Rd)=CH2式中、Rdがメチル又は水素の(アルキル)アクリロイルオキシ官能基である。
【0245】
別の変形例において、ピペリジン誘導体は、以下のセグメントを含むポリマーから独立して選択される:
【0246】
【0247】
式中、nは3~100の整数を示す。
【0248】
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン型の市販の立体障害アミンの例示的な例は、サボ・エス・ピ-・エイ(Sabo S.p.A.)社のサボスタブ(Sabostab)UV65(N-CH3)、サボスタブUV40(N-H)、サボスタブUV79(N-H);クラリアント社のホスタビン(Hostavin)(N-Acyl)、ホスタビン3070(Oligomeric);ビーエーエスエフ社のティヌビン(Tinuvin)622(オリゴマー)、ティヌビン144(N-CH3)、フレイムスタブ(Flamestab)NOR116(N-O-R)、チマソーブ(Chimassocib)944(N-H)、ティヌビン249(N-O-R)、ティヌビン440(N-Acyl)、ティヌビン152(N-O-R)、ティヌビン123(N-O-R)、ウビヌル(Uvinul)4050H(N-H)、リグノスタブ(Lignostab)1198(N-O・単量体)、ウビヌル5050H(N-H、ポリマー);アデカパルマロール(Adeka Palmarole)社のエイディ-ケイ・スタブ(ADK STAB)LA-52(N-CH3)、エイディーケイ・スタブLA-68(N-H)、エイディーケイ・スタブLA-82(N-CH3);及びジェレスト(Gelest)社のユービーエス(UBS)-0822(N-H、シロキサン)、ユービーエス-0541(N-H、シロキサン)である。
【0249】
典型的には、立体障害アミン、例えばピペリジン誘導体は、上記被覆(又はコーティング組成物)の、0.05~10乾燥重量%、例として0.08~8%、又は例として0.1~7%、例として0.12~5%、特に0.15~3%の合計量で存在する。
【0250】
立体障害アミンモチーフ、例えば、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジンモチーフは、少なくとも部分的に、改善された性能の要因であると考えられたので、障害アミン部位、特に、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン部位は、好ましくは、被覆の0.003~0.5、例として0.005~0.2、例えば、0.008~0.2、特に0.01~0.1mol/kgの量で存在すべきであると考えられる。
【0251】
別の実施形態において、立体障害アミン部位、例えば2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン部位は、ポリ(オキシアルキレン)鎖の0.015~100、例として0.04~100、特に0.08~15、mol/kgの量で被覆中に存在する。
【0252】
ポリ(オキシアルキレン)鎖が被覆の個別的な分子中に存在する(すなわち、固定化されていない)ある実施形態において、被覆は、典型的には、0.3~12、例として0.4~8、特に0.5~6g/m2の上記ポリ(オキシアルキレン)鎖、及び0.1~20、例として0.2~10、特に0.3~6g/m2の1種以上の上記立体障害アミン、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体を含む。
【0253】
ポリ(オキシアルキレン)鎖が被覆の個別的な分子中に存在する(すなわち、固定化されていない)別の実施形態において、被覆は、0.3~6乾燥重量%、例として0.4~4乾燥重量%、特に0.5~3乾燥重量%の1種以上の上記ポリ(オキシアルキレン)鎖、及び0.1~10乾燥重量%、例として0.2~5乾燥重量%、特に0.3~3乾燥重量%の1種以上の上記立体障害アミン、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体を含む。
【0254】
ポリ(オキシアルキレン)鎖がバインダーに固定化されるさらに別の実施形態において、被覆は、典型的には、1~60、例として2~40、特に3~30g/m2の上記ポリ(オキシアルキレン)鎖、及び0.1~20、例として0.2~10、特に0.3~6g/m2の1種以上の上記立体障害アミン、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体を含む。
【0255】
ポリ(オキシアルキレン)鎖が被覆の個別的な分子中に存在する(すなわち、固定化されていない)、別の実施形態において、被覆は、1~30乾燥重量%、例として、2~20乾燥重量%、特に3~15乾燥重量%の、1種以上の上記ポリ(オキシアルキレン)鎖及び0.1~10乾燥重量%、例として、0.2~5乾燥重量%、特に0.3~3乾燥重量%の、1種以上の上記立体障害アミン、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体を含む。
【0256】
立体障害アミンが一般式IIである場合、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体は、典型的には以下の種類から選択される:N-Hピペリジン誘導体、N-C1~30アルキルピペリジン誘導体、N-C1~30アルケニルピペリジン誘導体、N-アリールピペリジン誘導体、N-ヒドロキシピペリジン誘導体、N-C1~30アルコキシピペリジン誘導体、N-C1~30アルケニルオキシピペリジン誘導体、N-アリールオキシピペリジン誘導体、N-C1~30アルキルカルボニルピペリジン誘導体、N-C1~30-アルケニルカルボニルピペリジン誘導体、及びN-アリールカルボニルピペリジン誘導体。Nの置換基は、上記R3について定義したように置換され得る。
【0257】
好ましいのは、以下の種類である:N-C1~30-アルキルピペリジン誘導体、N-C1~30-アルケニルピペリジン誘導体、N-アリールピペリジン誘導体、N-C1~30-アルコキシピペリジン誘導体、N-C1~30-アルケニルオキシピペリジン誘導体、N-アリールオキシピペリジン誘導体、N-C1~30-アルキルカルボニルピペリジン誘導体、N-C1~30-アルケニルカルボニルピペリジン誘導体、及びN-アリールカルボニルピペリジン誘導体。
【0258】
いくつかの実施形態において、以下の種類がより好ましい:N-C1~30アルキルピペリジン誘導体、N-C1~30アルケニルピペリジン誘導体、及びN-アリールピペリジン誘導体、特にN-C1~30アルキルピペリジン誘導体。
【0259】
他の実施形態において、以下の種類がより好ましい:N-C1~30アルコキシピペリジン誘導体、N-C1~30アルケニルオキシピペリジン誘導体、及びN-アリールオキシピペリジン誘導体、特にN-C1~30アルコキシピペリジン誘導体。
【0260】
さらに他の実施形態において、以下の種類がより好ましい:N-C1~30アルキルカルボニルピペリジン誘導体、N-C1~30-アルケニルカルボニルピペリジン誘導体、及びN-アリールカルボニルピペリジン誘導体、特にN-C1~30アルキルカルボニルピペリジン誘導体。
【0261】
2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン部位のN原子上の置換基の種類(又はその不存在)は、ピペリジン誘導体のpKa値に影響し、これは同様にポリ(オキシアルキレン)鎖に対する安定化効果の効率に影響し得る。
【0262】
例えば、上記の典型的な基クラスのpKa値(及びpKb値)は次のとおりである:
【0263】
【0264】
特定の理論に縛られることなく、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体のpKa値は、好ましくは8.5未満であるべきと把握される。それゆえ、Nが置換されている(すなわち、N-Hではない)ことが好ましい。より好ましくは、pKaは8.0未満、例として7.0未満、例えば6.0未満又は5.0未満ですらある。
【0265】
そのうえ、式I又はIIの全体構造中の2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体(並びに一般的に立体障害アミン)は、いかなる1級アミン又は2級アミンも含まないことが好ましい。そのうえ、式I又はIIの構造は、好ましくは、いかなる嵩高くない3級アミンも含まない。
【0266】
上記の実施形態は、独立して又は組み合わせて見ることができることが理解されるべきである。
【0267】
いくつかの実施形態において、このような2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体は、20℃で液体形態である。
【0268】
いくつかの実施形態において、立体障害アミン、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体は、最大0.1重量%、好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0.001重量%未満、さらにより好ましくは0.0001重量%未満の20℃の水における溶解度を有する。
【0269】
ある実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分は、ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイル及びポリ(オキシアルキレン)変性アルコール(上記の「ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイル」及び「ポリ(オキシアルキレン)変性アルコール類」の項を参照)から選択される。
【0270】
別の実施形態において、ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分は、バインダーマトリックスのポリ(オキシアルキレン)変性から選択される(上記の「バインダーマトリックスのポリ(オキシアルキレン)変性」の項を参照)。
【0271】
いずれのR基(特にR1、R2、R3及びR4)は、「要すれば置換された」と記載されている場合、これは、それがハロゲン(-F、-Cl、-Br又はI)、-C1~C4アルキル、又はOHでいずれかの適切な位置で置換され得ることを意味する。
【0272】
<殺生物剤>
特に必要ではないが、被覆は1種以上の殺生物剤を含み得ることが理解されるべきである。
【0273】
本発明においては、「殺生物剤」という用語は、化学的又は生物学的手段により、いずれかの有害な生物を破壊し、抑止し、無害化し、その作用を防止し、又はそれ以外の場合は、制御効果を発揮することを意図した活性物質を意味することを意図する。
【0274】
殺生物剤の例示的な例は、ビス(ジメチルジ-チオカルバメート)亜鉛、エチレン-ビス-(ジ-チオ-カルバメート)亜鉛、エチレン-ビス-(ジチオ-カルバメート)-マンガン、ジメチルジチオカルバメート亜鉛、及びこれらの間の錯体のような金属-ジチオカルバメート;ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジン-チオナートO、S)-銅;アクリル酸銅;ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジン-チオナートO、S)-亜鉛;フェニル-(ビスピリジル)-二塩化ビスマス;銅粉に似ている銅-ニッケル合金のような銅金属合金などの金属殺生物剤;チオシアン酸銅、塩基性炭酸銅、水酸化銅、メタホウ酸バリウム、塩化銅、塩化銀、硝酸銀及び硫化銅などの金属塩;3a、4、7、7a-テトラヒドロ-2-((トリクロロ-メチル)-チオ)-1H-イソインドゥール1、3(2H)-ジオン、ピリジン-トリフェニルボラン、1-(2、4、6-トリクロロ-フェニル)-1H-ピロール2、5-ジオン、2、3、5、6-テトラクロロ-4-(メチル-スルホニル)-ピリジン、2-メチル-チオ-4-tert-ブチル-アミノ-6-シクロ-プロピル-アミン-s-トリアジン、キノリン誘導体などの複素環式窒素化合物;2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、4、5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4、5-ジクロロ-2-オクチル-3(2H)-イソチアゾリン(Sea-Nine(R)-211N)、1、2-ベンズ-イソ-チアゾリン-3-オン、及び2-(チオシアナートメチル-チオ)-ベンゾ-チアゾールなどの複素環式硫黄化合物;N-(1、3-ビス(ヒドロキシルメチル)-2、5-ジオキソ-4-イミダゾリジニル)-N、N’-ビス(ヒドロキシメチル)-尿素、及びN-(3、4-ジクロロ-フェニル)-N、N-ジメチル尿素、N、N-ジメチル-クロロフェニル尿素などの尿素誘導体;カルボン酸のアミド又はイミド;スルホン酸、及び2、4、6-トリクロロフェニルマレイミド、1、1-ジクロロ-N-((ジ-メチル--アミノ)-スルホニル)-1-フルオロ-N(4-メチル-フェニル)-メタン-スルフェンアミド、2、2-ジブロモ-3-ニトリロ-プロピオンアミド、N-(フルオロジクロロ-メチル-チオ)-フタルイミド、N、N-ジ-メチル-N’-フェニル-N’-(フルオロジクロロ-メチル-チオ)-スルフアミド、及びN-メチロールホルムアミド;などのスルフェン酸;2-((3-ヨ-ド-2-プロピニル)オキシ)-エタノールフェニルカルバメート及びN、N-ジデシル-N-メチル-ポリ(オキシ-エチル)-アンモニウムプロピオネートのようなカルボン酸の塩又はエステル;ジヒドロアビエチル-アミン及びココ-ジ-メチル-アミンなどのアミン;ジ(2-ヒドロキシ-エトキシ)メタン、5、5’-ジクロロ-2、2’-ジヒドロキシ-ジフェニルメタン、及びメチレン-ビスチオシアネートなどの置換メタン;2、4、5、6-テトラクロロ-1、3-ベンゼンジカルボニトリル、1、1-ジクロロ-N-((ジメチル-アミノ)-スルホニル)-1-フルオロ-N-フェニルメタンスルフェンアミド、及び1-((ジヨ-ドメチル)スルホニル)-4-メチル-ベンゼンなどの置換ベンゼン;トリ-n-ブチル-テトラデシルホスホニウムクロリドなどのテトラルキルホスホニウムハロゲン化合物;n-ドデシルグアニジンヒドロ-クロリドなどのグアニジン誘導体;ビス-(ジメチルチオカルバモイル)-ジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド;メデトミジンなどのイミダゾール含有化合物;2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール;ビス(N-シクロヘキシル-ジアゼニウムジオキシ)銅、チアベンダゾール、N-トリハロメチルチオフタルイミド、トリハロメチルチオスルファミド、カプサイシン、3-ヨ-ド-2-プロピニルブチルカルバメート、1、4-ジチアアントラキノン-2、3-ジカルボニトリル(ジチアノン)、3-ブチル-5-(ジブロモメチリデン)-2(5H)-フラノンなどのフラノン、アベルメクチンなどの大環状ラクトン;及びそれらの混合物から選択されるものである。
【0275】
現在、(もし存在すれば)殺生物剤はスズを含まないことが好ましい。
【0276】
今のところ、好ましい殺生物剤は、2、4、5、6-テトラクロロイソフタロニトリル(クロロタロニル)、チオシアン酸銅(スルホシアン酸銅)、N-ジクロロ-フルオロメチルチオ-N’、N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド(ジクロフルアニド)、3-(3、4-ジクロロ-フェニル)-1、1-ジメチル尿素(ジウロン)、N2-tert-ブチル-N4-シクロプロピル-6-メチルチオ-1、3、5-トリアジン-2、4-ジアミン(シブトリン)、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール3-カルボニトリル(2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール;トラロピリル)、N2-tert-ブチル-N4-シクロプロピル-6-メチルチオ-1、3、5-トリアジン-2、4-ジアミン(シブトリン)、(RS)4-[1-(2、3-ジメチルフェニル)エチル]-3H-イミダゾール(メデトミジン)、4、5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT、シーナイン(R)211N)、ジクロロ-N-((ジメチル-アミノ)スルホニル)フルオロ-N-(p-トリル)メタン-スルフェンアミド(トリルフルアニド)、2-(チオシアノメチルチオ)-1、3-ベンゾチアゾール((2-ベンゾチアゾリルチオ)-メチルチオシアネート;TCMTB)、トリフェニルボランピリジン(TPBP);ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジン-チオナートO、S)-(T-4)亜鉛(ピリジンチオン亜鉛;ジンクピリチオン)、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジン-チオナートO、S)-T-4)銅(銅ピリジンチオン;銅ピリチオン)、エチレン-1、2-ビス-ジチオカルバメート亜鉛(エチレン-N-N’-ジチオカルバメート亜鉛;ジネブ)、酸化銅(i)、金属銅、3-(3、4-ジクロロフェニル)-1、1-ジメチル尿素(ジウロン)及びジヨ-ドメチル-p-トリルスルホン;アミカル(Amical)48から成る群から選択されるものである。好ましくは少なくとも1つの殺生物剤が上記リストから選択される。
【0277】
(1種以上の殺生物剤を含む変種の)好ましい実施形態において、殺生物剤は、ぬめり及び藻類のような軟らかい汚れに対して有効な殺生物剤の中から好ましく選択される。このような殺生物剤の例は、N2-tert-ブチル-N4-シクロプロピル-6-メチルチオ-1、3、5-トリアジン-2、4-ジアミン(シブトリン)、4、5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT、シーナイン(R)211N)、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオナートO、S)-(T-4)亜鉛(ピリジンチオン亜鉛;ジンクピリチオン)、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオナートO、S)-T-4)銅(銅ピリジンチオン;銅ピリチオン;銅オマジン)及びエチレン-1、2-ビス-ジチオカルバメート亜鉛(エチレン-N-N’-ジチオカルバメート亜鉛;ジネブ)、銅(I)酸化物、金属銅、チオシアン酸銅、(スルホシアン酸銅)、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジン-チオナートO、S)-T-4)銅(銅ピリジンチオン;銅ピリチオン;銅オマジン)である。
【0278】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種の殺生物剤は、有機殺生物剤である。さらに特に好ましい実施形態において、1種以上の殺生物剤は、亜鉛ピリチオン又は銅ピリチオンなどのピリチオン錯体、のような有機殺生物剤である。有機殺生物剤は、完全に又は部分的に有機起源のものである。
【0279】
ある重要な実施形態において、1種以上の殺生物剤は、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオナートO、S)-(T-4)亜鉛(ピリジンチオン亜鉛;ピリチオン亜鉛)、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオナートO、S)-(T-4)銅(銅ピリジンチオン;ピリチオン銅)及びエチレン-1、2-ビス-ジチオカルバメート亜鉛(エチレン-N-N’-ジチオカルバメート亜鉛;ジネブ)の少なくとも1種を含む。
【0280】
米国特許出願公開第7、377、968号明細書に記載されているように、例えば、高い水溶性又はマトリックス組成との高い不混和性のために殺生物剤がフィルムから急速に枯渇する場合、殺生物剤の用量を制御し、フィルム中の有効寿命を延長する手段として、カプセルの形態で殺生物剤の1種以上を添加することが有利であり得る。カプセル化された殺生物剤はまた、遊離殺生物剤がポリシロキサンマトリックスの性能を、防汚コーティング(例えば、機械的完全性(mechanical integrity)、乾燥時間など)としての使用に有害な状態に変化させる場合に添加され得る。
【0281】
ある実施形態において、殺生物剤は、4、5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(シーナイン(Sea-Nine)CR2)でカプセル化される。
【0282】
殺生物剤は、0~20mg/L、例として0.00001~20mg/Lの範囲の25℃の水における溶解度を好ましくは有する。
【0283】
ある実施形態において、被覆は、2~20乾燥重量%、例として4~16乾燥重量%、特に5~13乾燥重量%の1種以上の上記殺生物剤を含む。
【0284】
別の実施形態において、被覆は、1種以上の上記殺生物剤の固形分の1~13%、例として2~10%、特に3~8%を含む。
【0285】
さらに別の実施形態において、被覆は、1種以上の上記殺生物剤の、2~35、例として3~30、特に4~25g/m2を含む。
【0286】
上記の実施形態は、独立して又は組み合わせて塗布されてもよいことを理解されるべきである。
【0287】
いくつかの実施形態において、殺生物剤は含まれない。
【0288】
<本発明の特定の実施形態>
ある実施形態において、ファウリングリリース組成物は、以下を含む:
【0289】
40~98乾燥重量%、例として60~95乾燥重量%のポリシロキサン系バインダーマトリックスであって、ここでバインダーマトリックスの65重量%を上回るポリシロキサン部分で表されるバインダーマトリックス、
0.1~20乾燥重量%、例として1~10乾燥重量%の、1種以上の添加剤、
0~25乾燥重量%、例として0.1~15乾燥重量%の、1種以上の顔料及び充填剤、
0.5~10乾燥重量%、例として0.7~8乾燥重量%、特に1~6乾燥重量%の、1種以上のポリ(オキシアルキレン)鎖、及び
0.05~10乾燥重量%、例として0.1~7乾燥重量%、特に0.15~5乾燥重量%の、1種以上のピペリジン誘導体。
【0290】
別の実施形態において、ファウリングリリース組成物は、以下を含む:
【0291】
50~90乾燥重量%のポリシロキサン系バインダーマトリックスであって、バインダーマトリックスの60%を上回る、特に60~99.5%、さらに又は70~99%、又は90~97%がポリシロキサン部分で表され、バインダーマトリックスの残りは、好ましくは、親水性オリゴマー/ポリマー部位及びいずれかの架橋剤から作られる、バインダーマトリックス。好ましくはバインダーマトリックスの1~30重量%、例として2~20重量%、例えば1~10重量%を構成する親水性オリゴマー/ポリマー部位、
0.1~20乾燥重量%、例として1~10乾燥重量%の、1種以上の添加剤、
0~25乾燥重量%、例として0.1~15乾燥重量%の、1種以上の顔料及び充填剤、及び
0.05~10乾燥重量%、例として0.1~7乾燥重量%、特に0.15~5乾燥重量%の、1種以上のピペリジン誘導体。
【0292】
別の実施形態において、ファウリングリリース組成物は、以下を含む:
【0293】
50~90乾燥重量%のポリシロキサン系バインダーマトリックスであって、バインダーマトリックスの60重量%を上回る、特に60~99.5%、さらに又は70~99%、又は90~97%がポリシロキサン部分で表され、バインダーマトリックスの残りは、好ましくは、親水性オリゴマー/ポリマー部位及びいずれかの架橋剤から作られるバインダーマトリックス。好ましくはバインダーマトリックスの1~30重量%、例として2~20重量%、例えば1~10重量%を構成する親水性オリゴマー/ポリマー部位、
1~10乾燥重量%の、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイル、
0.1~20乾燥重量%、例として1~10乾燥重量%の、1種以上の添加剤、
0~25乾燥重量%、例として0.1~15乾燥重量%の、1種以上の顔料及び充填剤、及び
0.05~10乾燥重量%、例として0.1~7乾燥重量%、特に0.15~5乾燥重量%の、1種以上のピペリジン誘導体。
【0294】
別の実施形態において、、ファウリングリリース組成物は、以下を含む:
【0295】
固体体積で40~98%、例として60~95%のポリシロキサン系バインダーマトリックスであって、バインダーマトリックスの65重量%を上回るポリシロキサン部分で表されるバインダーマトリックス、
固体体積で0.1%~20%、例として0.1%~15%の、1種以上の添加剤、
固体体積で1~10%、例として2~8%の、1種以上の顔料及び充填剤、
固体体積で1~30%、例として2~20%、特に3~15%の、1種以上のポリ(オキシアルキレン)鎖の;及び
固体体積で0.05~10%、例として0.1~7%、特に0.15~5%の、1種以上の上記ピペリジン誘導体。
【0296】
より特定の実施形態において、上述のファウリングリリース被覆(及び対応するコーティング組成物)は、ポリ(オキシアルキレン鎖)を含む成分として、固体体積で、1~15%、例として1~12%、特に2~9%の1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルを、特に600~30、000、例として800~20、000又は1、000~10、000、より具体的には1、400~10、000又は1、400~7、000g/molの分子量、及び4~16、例として5~15又は6~14、特に7~13のHLBで含む。
【0297】
より特定の実施形態において、上述のファウリングリリース被覆(及び対応するコーティング組成物)は、ポリ(オキシアルキレン鎖)を含む成分として、固体体積で、1~15%、例として1~12%、特に2~9%の本明細書における上記において定義された1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性アルコールを、500~5、000、例として600~4、000又は600~3、000g/molの分子量及び6~16、例として7~16又は8~16、特に9~15のHLBで含む。
【0298】
上記実施形態の変形例において、立体障害アミンは、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体(一般式II)から選択される。
【0299】
ある実施形態において、1種以上のポリ(オキシアルキレン)鎖の全量と1種以上の立体障害アミン、例として2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体との間の重量比は、1:0.01から1:3、例として1:0.02から1:2、特に1:0.04から1:1.5の範囲である。
【0300】
上記実施形態の変形例において、立体障害アミン、例えばピペリジン誘導体は、上記被覆(又はコーティング組成物)の0.05~10乾燥重量%、例として0.08~8乾燥重量%、又は例として0.1~7乾燥重量%、例として0.12~5乾燥重量%、特に0.15~3乾燥重量%の合計量で存在する。
【0301】
ある実施形態において、タイ・コート組成物は、以下を含む:
【0302】
全タイ・コート組成物の湿重量で、3~90%、好ましくは10~80%、より好ましくは20~60%の1種以上の上記架橋性ポリシロキサン、
0.1~20乾燥重量%、例として1~10乾燥重量%の、1種以上の添加剤、
0~25乾燥重量%、例として0.1~15乾燥重量%の、1種以上の顔料及び充填剤、
0.5~10乾燥重量%、例として0.7~8乾燥重量%、特に1~6乾燥重量%の、1種以上のポリ(オキシアルキレン)鎖、及び
0.05~10乾燥重量%、例として0.1~7乾燥重量%、特に0.15~5乾燥重量%の、1種以上のピペリジン誘導体。
【0303】
別の実施形態において、タイ・コート組成物は、以下を含む:
【0304】
全タイ・コート組成物の湿重量で、3~90%、好ましくは10~80%、より好ましくは20~60%の1種以上の上記架橋性ポリシロキサン。
好ましくはバインダーマトリックスの1~30重量%、例として2~20重量%、例えば1~10重量%を構成する親水性オリゴマー/ポリマー部位、
0.1~20乾燥重量%、例として1~10乾燥重量%の、1種以上の添加剤、
0~25乾燥重量%、例として0.1~15乾燥重量%の、1種以上の顔料及び充填剤、及び
0.05~10乾燥重量%、例として0.1~7乾燥重量%、特に0.15~5乾燥重量%の、1種以上のピペリジン誘導体。
【0305】
別の実施形態において、タイ・コート組成物は、以下を含む:
【0306】
全タイ・コート組成物の湿重量で3~90%、好ましくは10~80%、より好ましくは20~60%の1種以上の上記架橋性ポリシロキサン。好ましくはバインダーマトリックスの1~30重量%、例として2~20重量%、例えば1~10重量%を構成する親水性オリゴマー/ポリマー部位、
1~10乾燥重量%の、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイル、
0.1~20乾燥重量%、例として1~10乾燥重量%の、1種以上の添加剤、
0~25乾燥重量%、例として0.1~15乾燥重量%の、1種以上の顔料及び充填剤、及び
0.05~10乾燥重量%、例として0.1~7乾燥重量%、特に0.15~5乾燥重量%の、1種以上のピペリジン誘導体。
【0307】
別の実施形態において、タイ・コート組成物は、以下を含む:
全タイ・コート組成物の湿重量で、3~90重量%、好ましくは10~80重量%、より好ましくは20~60重量%の、1種以上の上記架橋性ポリシロキサンであって、バインダーマトリックスの65重量%を上回るポリシロキサン部分によって表される架橋性ポリシロキサン、
固体体積で1~30%、例として2~20%、特に3~15%の、1種以上のポリ(オキシアルキレン)鎖;及び
固体体積で0.05~10%、例として0.1~7%、特に0.15~5%の、1種以上の上記ピペリジン誘導体。
【0308】
ある実施形態において、タイ・コート組成物は、以下を含む:
【0309】
全タイ・コート組成物の湿重量で3~15%の、1種以上の上記架橋性ポリシロキサン、
0.1~20乾燥重量%、例として1~10乾燥重量%の、1種以上の添加剤、
0~25乾燥重量%、例として0.1~15乾燥重量%の、1種以上の顔料及び充填剤、
0.5~10乾燥重量%、例として0.7~8乾燥重量%の、特に1~6乾燥重量%の、1種以上のポリ(オキシアルキレン)鎖、及び
0.05~10乾燥重量%、例として0.1~7乾燥重量%、特に0.15~5乾燥重量%の、1種以上のピペリジン誘導体。
【0310】
別の実施形態において、タイ・コート組成物は、以下を含む:
【0311】
全タイ・コート組成物の湿重量で、3~15%の1種以上の上記架橋性ポリシロキサン。
親水性オリゴマー/ポリマー部位は、好ましくはバインダーマトリックスの1~30重量%、例として2~20重量%、例えば1~10重量%を構成する。
0.1~20乾燥重量%、例として1~10乾燥重量%の、1種以上の添加剤、
0~25乾燥重量%、例として0.1~15乾燥重量%の、1種以上の顔料及び充填剤、及び
0.05~10乾燥重量%、例として0.1~7乾燥重量%、特に0.15~5乾燥重量%の、1種以上のピペリジン誘導体。
【0312】
別の実施形態において、タイ・コート組成物は、以下を含む:
【0313】
全タイ・コート組成物の湿重量で、3~15%の1種以上の上記架橋性ポリシロキサン。親水性オリゴマー/ポリマー部位は、好ましくはバインダーマトリックスの1~30重量%、例として2~20重量%、例えば1~10重量%を構成する。
1~10乾燥重量%の、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイル、
0.1~20乾燥重量%、例として1~10乾燥重量%の、1種以上の添加剤、
0~25乾燥重量%、例として0.1~15乾燥重量%の、1種以上の顔料及び充填剤、及び
0.05~10乾燥重量%、例として0.1~7乾燥重量%、特に0.15~5乾燥重量%の、1種以上のピペリジン誘導体。
【0314】
別の実施形態において、タイ・コート組成物は、以下を含む:
【0315】
全タイ・コート組成物の湿重量で、3~15%の1種以上の上記架橋性ポリシロキサンであって、65重量%を上回るバインダーマトリックスがポリシロキサン部分で表される、
固体体積で1~30%、例として2~20%、特に3~15%の、1種以上のポリ(オキシアルキレン)鎖;及び
固体体積で0.05~10%、例として0.1~7%、特に0.15~5%の、1種以上の上記ピペリジン誘導体。
【0316】
ある実施形態において、タイ・コート組成物は、以下を含む:
【0317】
全タイ・コート組成物の湿重量で、>40%の1種以上の上記架橋性ポリシロキサン、
0.1~20乾燥重量%、例として1~10乾燥重量%の、1種以上の添加剤、
0~25乾燥重量%、例として0.1~15乾燥重量%の、1種以上の顔料及び充填剤、
0.5~10乾燥重量%、例として0.7~8乾燥重量%、特に1~6乾燥重量%の、1つ以上のポリ(オキシアルキレン)鎖、及び
0.05~10乾燥重量%、例として0.1~7乾燥重量%、特に0.15~5乾燥重量%の、1種以上のピペリジン誘導体。
【0318】
別の実施形態において、タイ・コート組成物は、以下を含む:
【0319】
全タイ・コート組成物の湿重量で、>40%の1種以上の上記架橋性ポリシロキサン。親水性オリゴマー/ポリマー部位は、好ましくはバインダーマトリックスの1~30重量%、例として2~20重量%、例えば1~10重量%を構成する。
0.1~20乾燥重量%、例として1~10乾燥重量%の、1種以上の添加剤、
0~25乾燥重量%、例として0.1~15乾燥重量%の、1種以上の顔料及び充填剤、及び
0.05~10乾燥重量%、例として0.1~7乾燥重量%、特に0.15~5乾燥重量%の、1種以上のピペリジン誘導体。
【0320】
別の実施形態において、タイ・コート組成物は、以下を含む:
【0321】
全タイ・コート組成物の湿重量で、>40%の1種以上の上記架橋性ポリシロキサン。
親水性オリゴマー/ポリマー部位は、好ましくはバインダーマトリックスの1~30重量%、例として2~20重量%、例えば1~10重量%を構成する。
1~10乾燥重量%の、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイル、
0.1~20乾燥重量%、例として1~10乾燥重量%の、1種以上の添加剤、
0~25乾燥重量%、例として0.1~15乾燥重量%の、1種以上の顔料及び充填剤、及び
0.05~10乾燥重量%、例として0.1~7乾燥重量%、特に0.15~5乾燥重量%の、1種以上のピペリジン誘導体。
【0322】
別の実施形態において、タイ・コート組成物は、以下を含む:
【0323】
全タイ・コート組成物の湿重量で、>40%の1種以上の上記架橋性ポリシロキサンであって、バインダーマトリックスの65%重量を上回るポリシロキサン部分で表され、固体体積で1~30%、例として2~20%、特に3~15%の、1種以上のポリ(オキシアルキレン)鎖;及び
固体体積で0.05~10%、例として0.1~7%、特に0.15~5%の1種以上の上記ピペリジン誘導体。
【0324】
さらに特定の実施形態において、タイ・コート組成物は、ポリ(オキシアルキレン鎖)を含む成分として、固体体積で、1~15%、例として1~12%、特に2~9%の、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルを、特に600~30、000、例として800~20、000又は1、000~10、000、より具体的には1、400~10、000又は1、400~7、000g/molの分子量、及び4~16、例として5~15又は6~14、特に7~13のHLBで含む。
【0325】
より特定の実施形態において、タイ・コート組成物は、ポリ(オキシアルキレン鎖)を含む成分として、固体体積で、1~15%、例として1~12%、特に2~9%の、本明細書における上記において定義された1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性アルコールを、特に500~5、000、例として600~4、000又は600~3、000g/molの分子量、及び6~16、例として7~16又は8~16、特に9~15のHLBで含む。
【0326】
上記実施形態の変形例において、立体障害アミンは、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体(一般式II)から選択される。
【0327】
ある実施形態において、1種以上のポリ(オキシアルキレン)鎖の全量と1種以上の立体障害アミン、例として2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体との間の重量比は、1:0.01から1:3、例として1:0.02から1:2、特に1:0.04から1:1.5の範囲である。
【0328】
上記実施形態の変形例において、立体障害アミン、例えばピペリジン誘導体は、上記被覆(又はコーティング組成物)の0.05~10乾燥重量%、例として0.08~8乾燥重量%、又は例として0.1~7乾燥重量%、例として0.12~5乾燥重量%、特に0.15~3乾燥重量%の合計量で存在する。
【0329】
<ファウリングリリースコーティングシステム>
ある形態において、本発明の方法によって得られるファウリングリリースコーティングシステムが与えられる。上記方法について本明細書に記載される全てのコンポーネント及び層の全ての詳細もまた、ファウリングリリースシステムに関連する。
【0330】
第2の形態において、以下を含むファウリングリリースコーティングシステムが与えられる。
【0331】
a.基材、
b.要すれば1種以上のプライマー層、
c.少なくとも1種のシリコーン含有タイ・コート層、
d.上記被覆の少なくとも40乾燥重量%を構成する縮合硬化ポリシロキサン系バインダーマトリックスを含むファウリングリリース層であって、上記バインダーマトリックスの65重量%を上回るポリシロキサン部分で表され、上記被覆がポリ(オキシアルキレン)鎖を有する成分を含むファウリングリリース層、
ここで、上記タイ・コート層及び/又はファウリングリリース層は、1種以上の立体障害アミン、特に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体をさらに含む。
【0332】
このようなコーティングシステムの、ある態様において、上記タイ・コートは、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイルを含む。別の態様において、上記タイ・コートは、本明細書で定義されるように、1種以上の立体障害アミンを含む。このようなコーティングシステムの別の態様において、上記タイ・コートは、本明細書で定義されるように、1種以上のポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンオイル及び1種以上の立体障害アミンの両方を含む。
【0333】
(2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体などの)立体障害アミンをタイ・被覆中に、ポリ(オキシアルキレン)鎖をファウリングリリース被覆中に含むことは、第1の被覆が立体障害アミンを含有しないシステムと比較して、ファウリングリリースコーティングシステムのファウリングリリース性能の寿命を改善すると考えられる。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体のような立体的に障害されたアミンは、下層のコーティングからシリコーンファウリングリリースコーティングに移動することができると考えられる。下層のタイ・コートが柔らかい種類のものである場合、下にあるハードコーティングと比較して、これはより大きな範囲でおそらく起こるであろう。
【0334】
<コーティング組成物の塗布>
本発明のコーティング組成物は、典型的には、基材の表面の少なくとも一部に塗布される。
【0335】
「塗布する」という用語は、塗装業界では通常の意味で使用される。したがって、「塗布する」は、いずれかの従来の手段、例えば、ブラシ、ローラー、噴霧、ディッピングなどによって行われる。商業的に最も興味深いコーティング組成物を「塗布する」手法は、噴霧によるものである。それゆえ、コーティング組成物は噴霧可能であることが好ましい。噴霧は、当業者に知られている従来の噴霧装置によって行われる。コーティングは、典型的には、50~600μm、例として50~500μm、例えば75~400μm、又は100~300μmの乾燥膜厚で塗布される。
【0336】
さらに、コーティング組成物は、たわみ抵抗に関して、ASTM D 4400-99(すなわち、たわむことなく垂直面に適切な膜厚で塗布される能力に関する)を参照すると、少なくとも70μmまでの、例として少なくとも200μmまでの、例えば少なくとも300μmまでの、好ましくは少なくとも400μmまでの、特に少なくとも600μmまでの、湿潤膜厚に対してたわみ抵抗を示すようなものが好ましい。
【0337】
「基材の表面の少なくとも一部」という用語は、コーティング組成物が表面のいずれかの画分に塗布され得るという事実を意味する。多くの塗布では、コーティング組成物は、表面(例:船体)が水、例えば海水と接触する基材(例:船)の少なくとも一部に塗布される。
【0338】
「基材」という用語は、コーティング組成物をその上に塗布する固体材料を意味することを意図する。基材は、典型的には、鋼、鉄、アルミニウムなどの金属又はガラス繊維強化ポリエステルを含む。最も興味深い実施形態において、基材は、金属基材、特に鋼基材である。代替的な実施形態において、基材は、ガラス繊維強化ポリエステル基材である。いくつかの実施形態において基材は、海洋構造物の最外面の少なくとも一部である。
【0339】
「表面」という用語は、通常の意味で使用され、対象物の外側の境界を指す。このような表面の特定の例は、船(ボート、ヨット、モーターボート、発動機艇、巨船、タグボート、タンカー、コンテナ船舶及びその他の貨物船舶、潜水艦、及びあらゆる種類の艦艇を含むが、これらに限定されない)、パイプ、海岸及び沖合の機械、橋脚、杭、橋梁下部工、浮揚装置、水力設備及び構造物、水中油井構造物、ネット及び他の水生養殖設備、ブイなどのあらゆる種類の構造物及び物体のような、海洋構造物の表面である。
【0340】
基材の表面は、「本来の」表面(例えば、鋼の表面)のいずれかであってもよい。しかしながら、基材の表面がこのようなコーティングで構成されるように、基材は、典型的には、例えば、防食コーティング及び/又はタイ・コートで被覆される。存在する場合、(防食及び/又はタイ)コーティングは、典型的には、50~600μm、例として150~450μm、例えば200~400μm、又は20~200μmの合計乾燥膜厚で塗布される。代替的に、基材は、塗装被覆、例えば、擦り切れたファウルリングリリース塗装被覆又は同様のものを持ってもよい。
【0341】
ある重要な実施形態において、基材は、防食エポキシ系コーティング、例えば硬化エポキシ系コーティング又はショッププライマー、例えば亜鉛が豊富なショッププライマーのような防食コーティングで被覆された金属基材(例:鋼基材)である。別の関連する実施形態において、基材は、エポキシプライマーコーティングで被覆されたガラス繊維強化ポリエステル基材である。
【0342】
本発明の主要な態様の被覆は、典型的には、最外面の被覆(別名トップコート)として塗布され、すなわち、被覆は、環境、例えば、水生環境にさらされる。しかしながら、本発明の主要な態様の被覆は、代替的に、被覆中の浸出可能なコンポーネントの浸出速度の制御を得て改善するために、本発明の主要な態様に記載された被覆が、1種以上の他の被覆組成物の1種以上の層で被覆される層状システムとして塗布されてもよいことを理解されるべきである。
【0343】
海洋構造物へのコーティング組成物の塗布に先立って、海洋構造物は、最初に、数層を含み得るプライマーシステムで被覆されてもよく、当該プライマーシステムは、海洋構造物へのコーティング組成物の塗布に関連して使用される従来のプライマーシステムのいずれであってもよい。従って、プライマーシステムは、要すれば、防食プライマーの後に接着促進プライマーの層を含み得る。
【0344】
ここで、本発明は、基材の表面上にファウリングリリースコーティングシステムを確立する方法であって、以下の連続的な工程を含む方法に関する;
【0345】
a)1層以上のプライマー組成物を上記基材の表面上に塗布し、それによって、下塗した基材を形成する工程、
【0346】
b)上記下塗した基材の表面上に1層以上のタイ・コート組成物を塗布し、上記層を硬化させ、それによって硬化したタイ・コートを形成する工程、及び
【0347】
c)上記硬化したタイ・コートの表面上に1層以上の本明細書で定義したようなファウリングリリースコーティング組成物を塗布し、上記層を硬化させ、それによって、本明細書における上記(主要な態様)において定義された硬化したファウリングリリース被覆を形成する工程。
【0348】
上記の方法のいくつかの、今のところあまり好ましくない変形例において、硬化したファウリングリリース被覆は、トップコート、例えばPDMS系トップコートでさらに被覆されてもよい。
【0349】
ここで、本発明は、(別の態様によれば)基材の表面上にファウリングリリースコーティングシステムを確立する方法であって、以下の連続的な工程を含む方法に関する;
【0350】
a)上記基材の表面、例えば、場合によっては、本来の基材又は既に1種以上のコーティングをもつ基材のいずれかに、1層以上の本明細書で定義されているようなファウリングリリースコーティング組成物を塗布し、上記層を硬化させ、それによって、代替の態様について、本明細書における上記において定義されているような硬化した第1の被覆を形成する工程、及び
【0351】
b)上記の硬化した第1の被覆の表面上に1層以上の本明細書において定義されたファウリングリリースコーティング組成物を塗布し、上記層を硬化させ、それによって、代替の態様について、本明細書における上記において定義された硬化した第2の被覆を形成する工程。
【0352】
本発明はまた、(別の態様によれば)基材の表面上にファウリングリリースコーティングシステムを確立する方法であって、以下の連続的な工程を含む方法に関する;
【0353】
a)1層以上のプライマー組成物を上記基材の表面上に塗布し、上記層を硬化させ、それによって下塗した基材を形成する工程、
【0354】
b)要すれば、1層以上のタイ・コート組成物を上記下塗した基材の表面上に塗布し、上記層を硬化させ、それによって硬化したタイ・コートを形成する工程;
【0355】
c)1層以上の本明細書において定義されたようなファウリングリリースコーティング組成物を、場合によっては、上記下塗した基材の表面又は上記タイ・コートの表面上に塗布し、上記層を硬化させ、それによって、代替の態様について本明細書における上記において定義されたような硬化した第1の被覆を形成する工程、
【0356】
d)上記の硬化した第1の被覆の表面上に1層以上の本明細書において定義されたファウリングリリースコーティング組成物を塗布し、上記層を硬化させ、それによって、代替の態様について本明細書における上記において定義された硬化した第2の被覆を形成する工程。
【0357】
本発明は、さらに、以下の連続的な工程を含む、古くなった防汚コーティングシステムの表面上に、ファウリングリリースコーティングシステムを確立する方法に関する。
【0358】
a)1層以上のシーラー/リンクコート組成物を上記基材の表面上に塗布し、上記層を硬化させ、それによって埋められた(sealed)基材を形成する工程、
【0359】
b)要すれば、1層以上のタイ・コート組成物を上記埋められた基材の表面上に塗布し、上記層を硬化させ、それによって硬化したタイ・コートを形成する工程;
【0360】
c)1層以上の本明細書において定義されたようなファウリングリリースコーティング組成物を、場合によっては、上記下塗した基材の表面又は上記タイ・コートの表面上に塗布し、上記層を硬化させ、それによって、代替の態様について本明細書における上記において定義されたような硬化した第1の被覆を形成する工程、及び
【0361】
d)1層以上の上記硬化した第1の被覆の表面上に本明細書において定義されたファウリングリリースコーティング組成物を塗布し、上記層を硬化させ、それによって、代替の態様について本明細書における上記において定義された硬化した第2の被覆を形成する工程。
【0362】
本発明はさらに、以下の連続的な工程を含む、古くなったファウリングリリースコーティングシステムの表面上にファウリングリリースコーティングシステムを確立する方法に関する。
【0363】
a)要すれば、1層以上のタイ・コート組成物を上記古くなったファウリングリリースコーティングシステムの表面上に塗布し、上記層を硬化させ、それによって硬化したタイ・コートを形成する工程;
【0364】
b)1層以上の本明細書において定義されたファウリングリリースコーティング組成物を、場合によっては、上記下塗した基材の表面又は上記タイ・コートの表面上に塗布し、上記層を硬化させ、それによって、代替の態様について本明細書における上記において定義されているような硬化した第1の被覆を形成する工程、及び
【0365】
c)上記の硬化した第1の被覆の表面上に1層以上の本明細書において定義されたファウリングリリースコーティング組成物を塗布し、上記層を硬化させ、それによって、代替の態様について本明細書における上記において定義された硬化した第2の被覆を形成する工程。
【0366】
<海洋構造物>
また、本発明は、それらの表面の少なくとも一部に、本明細書における上記において定義されたような最外面のファウリングリリースコーティングシステム(又は(1つの)被覆)を含む、海洋構造物を与える。特に、最外面のコーティングをもつ外面の少なくとも一部は、上記の構造の水没部である。
【0367】
コーティング組成物、基材表面にコーティングを確立する方法、及びコーティングの特性は、本明細書における上記において与えられた指示に従う。
【0368】
ある実施形態において、海洋構造物のファウリングリリースコーティングシステムは、本明細書に記載するように、防食層、タイ・コート、及びファウリングリリースコーティングシステムから成り得る。
【0369】
代替的な実施形態において、ファウリングリリースコーティング組成物は、使用したファウリングリリースコーティングシステムの上部、例えば使用したポリシロキサン系ファウリングリリースコーティングの上部に塗布される。
【0370】
上記海洋構造物のある特定の実施形態において、防食層は、100~600μm、例として150~450μm、例えば200~400μmの合計乾燥膜厚を有し;タイ・コートは、50~500μm、例として50~400μm、例えば75~350μm、75~300μm、75~250μmの合計乾燥膜厚を有し;及びファウリングリリースコーティングは、20~500μm、例として20~400μm、例えば50~300μmの合計乾燥膜厚を有する。
【0371】
海洋構造物のさらなる実施形態は、上記の構造の最外面の少なくとも一部が以下を含むファウリングリリースコーティングシステムで被覆されるものである。
【0372】
1~4層、例として2~4層の塗布により確立された合計乾燥膜厚150~400μmのエポキシ系コーティングの防食層;
1~2層の塗布により確立された合計乾燥膜厚20~400μmのタイ・コート;及び
1~2層の塗布により(主要な態様に従って)確立された合計乾燥膜厚20~400μmのファウリングリリースコーティング。
【0373】
海洋構造物のさらなる実施形態は、上記構造物の最外面の少なくとも一部が以下を含む(代替的な態様の)ファウリングリリースコーティングシステムで被覆されるものである。
【0374】
1~4層、例として2~4層の塗布によって確立された合計乾燥膜厚150~400μmのエポキシ系コーティングの防食層;
1~2層の塗布により確立された合計乾燥膜厚20~400μmのタイ・コート;
1~2層の塗布により確立された合計乾燥膜厚20~400μm;
ファウリングリリースコーティングの第1被覆(代替的な態様を参照);
1~2層の塗布により確立された合計乾燥膜厚20~400μmのファウリングリリースコーティングの第2被覆(代替的な態様を参照)。
【0375】
上記の海洋構造物の別の実施形態において、タイ・コートの使用なしで、防食層上に直接、ファウリングリリースコーティングが塗布される。
【0376】
<一般的な注意事項>
本願明細書及び特許請求の範囲は、ポリシロキサンなどに言及することがあるが、本明細書で定義されるコーティング組成物は、1種又は2種以上の種類の個々の成分を含み得ることを理解するべきである。このような実施形態において、各成分の合計量は、個々の成分について上記の量に対応すべきである。
【0377】
化合物、ポリシロキサン、薬剤などの表現においては、1種又は2種以上の個々の成分の種類が存在し得ることを示す。
【0378】
一方、「1種」という表現が使用された場合、各成分はたった1種しか存在しない。
【0379】
「乾燥重量%」という表現は、場合によっては、被覆又はコーティング組成物の乾燥重量に基づく各成分の百分率を意味すると理解されるべきである。最も実用的な目的のためには(したがって、特に明記しない限り)、硬化被覆を指すときの「乾燥重量%」は、コーティング組成物の「乾燥重量%」と同一である。
【実施例】
【0380】
<粘度>
請求項を伴う本出願の発明において、粘度は25℃でISO 2555:1989に従って測定される。
【0381】
<pKa値の決定>
2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体のような立体障害アミンのpKa値は、非水滴定によって測定される。水中の既知のpKa値をもつ有機標準物質を、非水性媒体(1:1アセトニトリル:クロロホルム及び0.1N過塩素酸/ジオキサン滴定システム)中で滴定して、pKaに対する半中和点電位の非水性キャリブレーションプロットを生成する。次いで、「未知の」障害アミンを滴定して半中和点電位を決定し、外挿してこのキャリブレーションプロットから対応するpKaを得る。
【0382】
<HLB値の決定>
ポリ(オキシアルキレン)で変性した分子のHLB(親水親オイルバランス)値はグリフィン(Griffin)の方法に従って決定される。
HLB値=20*Mh/M
式中、Mhは分子中の親水性(例えば、ポリ(オキシアルキレン))基の重量であり、Mは分子全体の重量である。
【0383】
<モデル塗装の調製方法>
パート(i):バインダー、溶媒、顔料、殺生物剤(該当する場合)、立体障害アミン(例えば2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体)、いずれかのポリ(オキシアルキレン)変性シリコーンオイル又はアルコール及び添加剤を、回転翼ディスクを備えたダイアフ(Diaf)溶解器上で(例えば、1Lの缶に入った直径70mmの回転翼ディスクを2000rpmで15分間)混合する。
【0384】
パート(ii):硬化剤、溶媒、触媒及び2、4-ペンタンジオンを回転翼ディスクを備えたダイアフ溶解器上で(例えば、1Lの缶に入った直径70mmの回転翼ディスクを500rpmで2分間)混合する。
【0385】
塗布前に、パート(i)及びパート(ii)を、実施例で与えられた組成物に従って一緒に混合し、その後、混合物を攪拌して均一性を得る
【0386】
<防汚性能試験>
[いかだ試験]
【0387】
<パネルの準備>
コーティングの接着を容易にするために片面をサンドブラストしたアクリルパネル(150×200mm)に、100μm(DFT)の市販のエポキシ(HEMPELライトプライマー45551)を空気噴霧により塗布し、被覆する。室温で6~24時間乾燥した後、300μmのクリアランスのドクターブレードによりタイ・コートを塗布する。16~30時間乾燥した後、400μmのクリアランスのドクターブレードによりトップコート塗装組成物を塗布する。パネルは、いかだに浸漬する前に少なくとも72時間乾燥させる。
【0388】
<試験>
パネルは2つの異なる場所:スペイン及びシンガポールで試験される。
【0389】
<スペインの試験場>
スペイン北東部のビラノバ(Vilanova)に位置する。この試験場では、パネルを平均温度17~18℃で37~38ppmの範囲の塩分の海水に浸漬する。
【0390】
<シンガポールの試験場>
この試験場では、パネルを29~31℃の範囲の温度で、29~31ppmの範囲の塩分の海水に浸漬する。
【0391】
パネルを4~12週間毎に検査し、以下の尺度に従って評価する:
【0392】
【0393】
<例>
防汚性能の試験には、以下のモデル塗装が調整され得る。モデル塗装表内のすべての項目は、特に明記されていない限り、重量で表示されている。
【0394】
<材料>
【0395】
【0396】
【0397】
実施例1~4は、ポリ(オキシアルキレン)変性シロキサンオイル及び(さまざまな水準の)N-O-Rの障害アミンを含む塗装の防汚性能が、ポリ(オキシアルキレン)変性シロキサンオイルのみを含む参考例と比較して改善された効果を示す。
【0398】
【0399】
実施例5~8は、ポリ(オキシアルキレン)変性シロキサンオイル及び(さまざまな水準の)N-O-Rの障害アミンを含む塗装の防汚性能が、ポリ(オキシアルキレン)変性シロキサンオイルのみを含む参考例に比べて改善された効果を示す。
【0400】
【0401】
実施例9~12は、ポリ(オキシアルキレン)変性シロキサンオイル及び(さまざまな水準の)N-CH3の障害アミンを含む塗装の防汚性能が、ポリ(オキシアルキレン)変性シロキサンオイルのみを含む参考例と比較して改善された効果を示す。
【0402】
【0403】
実施例13~15は、ポリ(オキシアルキレン)変性シロキサンオイルのみを含む参考例に比べて、実施例1~12とは別のポリ(オキシアルキレン)バインダーシステムにおいて、ポリ(オキシアルキレン)変性シロキサンオイル及びN-O-Rの障害アミン又はシラン変性N-CH3の障害アミンを含む塗装の防汚性能の改善された効果の他の例を示す。
【0404】
【0405】
実施例16及び17は、ポリ(オキシアルキレン)変性ラノリンオイル又はポリ(オキシアルキレン)変性シロキサンオイル及びN-O-Rの障害アミンを含む塗装の防汚性能の改善された効果、及びこれら2つのオイルの同等の良好な効果を示す。
【0406】
【0407】
実施例18及び19は、ポリ(オキシアルキレン)変性シロキサンオイル及び/又はシラン変性ポリ(オキシアルキレン)及びN-O-Rの障害アミンを含む塗装の防汚性能の改善された効果を示す。
【0408】
【0409】
実施例20~22は、ポリ(オキシアルキレン)変性シロキサンオイル及びN-H又はN-CH3の障害アミンを含む塗装の防汚性能の改善された効果を証明する。