(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】改良された安定性を有するドープされた金属ハロゲン化物ペロブスカイト及びそれを含む太陽電池
(51)【国際特許分類】
C01G 21/16 20060101AFI20231108BHJP
H01L 31/0216 20140101ALI20231108BHJP
【FI】
C01G21/16
H01L31/04 240
(21)【出願番号】P 2020568347
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(86)【国際出願番号】 CA2019050804
(87)【国際公開番号】W WO2019232643
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-06-07
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514221779
【氏名又は名称】ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サイダミノヴ,マクスド
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュンファン
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン,アンキット
(72)【発明者】
【氏名】ヴォズニイ,オレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】サージェント,エドワード エイチ.
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0005762(US,A1)
【文献】特表2019-504454(JP,A)
【文献】国際公開第2017/128987(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0338045(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0380136(US,A1)
【文献】特表2015-535390(JP,A)
【文献】特表2018-536995(JP,A)
【文献】国際公開第2017/089819(WO,A1)
【文献】特開2015-046582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00-23/08
H10L 31/00、31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式ABX
3
[式中、
Aはホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)
、及びメチルアンモニウム(MA)
の混合物を含み、
Bは鉛(Pb)及びカドミウム(Cd)の混合物を含み、
Xは臭化物(Br)、並びにヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)のうちの少なくとも1種を含む]
を有するペロブスカイト化合物。
【請求項2】
AがCs
xMA
yFA
1-x-yであり[式中、xは0<x<1の範囲であり、yは0<y<1の範囲であり、x+y<1である]、BがPb
iCd
1-iであり[式中、iは0<i<1の範囲である]、ヨウ化物が存在する場合、XがI
mBr
3-mであり[式中、mは0<m<3の範囲である]、塩化物のみが存在する場合、XがBr
nCl
3-nであり[式中、nは0<n<3の範囲である]、I及びClの両方が存在する場合、XがI
kBr
hCl
3-h-kである[式中、kは0<k<3の範囲であり、hは0<h<3の範囲であり、k+h<3である]、請求項1に記載のペロブスカイト化合物。
【請求項3】
AがCs
0.05MA
0.15FA
0.8であり、BがPb
0.97Cd
0.03であり、XがI
2.55Br
0.45である、請求項1又は2に記載のペロブスカイト化合物。
【請求項4】
式ABX
3
[式中、
Aはホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)、メチルアンモニウム(MA)、グアニジニウム(GA)、ジメチルアンモニウム(DMA)、及びエチルアンモニウム(EA)のうちの2種以上を含み、
Bは鉛(Pb)
及びカドミウム(Cd
)を含み、
Xは臭化物(Br)、並びにヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)のうちの少なくとも1種を含む]
を有するペロブスカイト化合物。
【請求項5】
B
が亜鉛(Zn
)を
さらに含む、請求項4に記載の式ABX
3を有するペロブスカイト化合物。
【請求項6】
B
はスズ(Sn
)をさらに含
む、
請求項4に記載のペロブスカイト化合物。
【請求項7】
B
はスズ(Sn
)及び亜鉛(Zn
)をさらに含
む、
請求項4に記載のペロブスカイト化合物。
【請求項8】
Bはマンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びゲルマニウム(Ge)のうちのいずれか1種以上をさらに含む、請求項4に記載のペロブスカイト化合物。
【請求項9】
Aはホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)、及びメチルアンモニウム(MA)の混合物を含む、請求項4から8のいずれか一項に記載のペロブスカイト化合物。
【請求項10】
基材、前記基材の上面上の第1の電子伝導性層、
電子伝導性層の上面上に配置された電子輸送層の層、
前記電子輸送層の上面上の請求項1、2又は3に記載のペロブスカイト化合物の層、
前記ペロブスカイト化合物の層の上面上に配置された正孔輸送層、及び
前記正孔輸送層の上面上に配置された第2の電気伝導性層
を含む太陽電池であって、
前記第1及び第2の電子伝導性層は電気伝導性電極がその一端で取り付けられており、前記電気伝導性電極の他端は負荷に取り付けられていて、前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップより長い波長の光が前記太陽電池に入射すると電流が生成する、前記太陽電池。
【請求項11】
前記ペロブスカイト化合物の層が約50nm~約100ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項
10に記載の太陽電池。
【請求項12】
基材、前記基材の上面上の第1の電子伝導性層、
電子伝導性層の上面上に配置された電子輸送層の層、
前記電子輸送層の上面上の請求項4又は5に記載のペロブスカイト化合物の層、
前記ペロブスカイト化合物の層の上面上に配置された正孔輸送層、及び
前記正孔輸送層の上面上に配置された第2の電気伝導性層
を含む太陽電池であって、
前記第1及び第2の電子伝導性層は電気伝導性電極がその一端で取り付けられており、前記電気伝導性電極の他端は負荷に取り付けられていて、前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップより長い波長の光が前記太陽電池に入射すると電流が生成する、前記太陽電池。
【請求項13】
前記ペロブスカイト化合物の層が約50nm~約100ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項
12に記載の太陽電池。
【請求項14】
基材、前記基材の上面上の第1の電子伝導性層、
電子伝導性層の上面上に配置された電子輸送層の層、
前記電子輸送層の上面上の請求項6
又は7に記載のペロブスカイト化合物の層、
前記ペロブスカイト化合物の層の上面上に配置された正孔輸送層、及び
前記正孔輸送層の上面上に配置された第2の電気伝導性層
を含む太陽電池であって、
前記第1及び第2の電子伝導性層は電気伝導性電極がその一端で取り付けられており、前記電気伝導性電極の他端は負荷に取り付けられていて、前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップより長い波長の光が前記太陽電池に入射すると電流が生成する、前記太陽電池。
【請求項15】
前記ペロブスカイト化合物の層が約50nm~約100ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項
14に記載の太陽電池。
【請求項16】
基材、前記基材の上面上の第1の電子伝導性層、
電子伝導性層の上面上に配置された電子輸送層の層、
前記電子輸送層の上面上の請求項
8に記載のペロブスカイト化合物の層、
前記ペロブスカイト化合物の層の上面上に配置された正孔輸送層、及び
前記正孔輸送層の上面上に配置された第2の電気伝導性層
を含む太陽電池であって、
前記第1及び第2の電子伝導性層は電気伝導性電極がその一端で取り付けられており、前記電気伝導性電極の他端は負荷に取り付けられていて、前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップより長い波長の光が前記太陽電池に入射すると電流が生成する、前記太陽電池。
【請求項17】
前記ペロブスカイト化合物の層が約50nm~約100ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項
16に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽光発電に用途を有する有機-無機ハロゲン化物ペロブスカイト材料に関し、特に改良された安定性のためのハロゲン化物ペロブスカイトの金属カチオンサイトのドーピングに関する。実施形態は鉛ハロゲン化物ペロブスカイトのPbカチオンサイトにおけるドーピングを含む。例示的な安定性の改良としては、改良された空気安定性が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
MAPbI3に基づく太陽電池(MA=CH3NH3
+)の電力変換効率(PCE)はこの5年で急激に改良された。しかしながら、MAPbI3の不安定性のため、この活性材料の太陽電池(PSC)技術への適用可能性は制限されている。最近、接合部及びキャリア選択層のエンジニアリングによって、PSCの安定性の増大に関して注目に値する前進がなされた。今や、更により安定なペロブスカイト活性層の開発は更に努力を必要とするトピックである。低次元構造体の組込みはペロブスカイトの安定性を改良する魅力的なアプローチであるが、目下のところPCEの質を落とす。
【0003】
MAをFA(HC(NH2)2
+)で置換すると高温での分解に対して比較的安定なペロブスカイトを生成することが判明した1。しかしながら、室温において、FAPbI3はFAカチオンの大きなサイズのため構造的に不安定であり、黄色い非機能的な相に自発的に変わる。最近、FAPbI3の構造上の不安定性が、FAをMA及び/又はCsで、並びにIをBrで部分的に置換することでペロブスカイトのGoldschmidtトレランスファクターをエンジニアリングすることによって対処された2-4。カチオン/アニオン-混合ペロブスカイト太陽電池は最大電力点(MPP)条件で連続した照明及び窒素流の下、数百時間安定に作動することが示された5。
【0004】
混合ペロブスカイトの構造上の安定性は、立体効果及び混合エントロピーからのエネルギー利得の点から理解することができる6,7。それにもかかわらず、これらのペロブスカイトの分解を防止するメカニズムは完全には理解されていないままである。分解に対する安定性を支配する要因を理解すると、周囲空気(air ambient)に対してより耐性があるPSCの製作が可能になる。空気耐性がある太陽電池の必要性は費用効果の良い光電池カプセル化材料の高い水蒸気及び酸素透過速度(それぞれWVTR及びOTR)から生じ、そのような材料は今までPSCの保護には不充分であり、対照的に、最良の代替手段である大気バリアはペロブスカイトに効果があるが、コストが増大する(表1)。周囲空気に耐性があるペロブスカイト活性層を開発すると、実用的なカプセル化技術を確実に応用することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Eperon, G. E. et al. Formamidinium lead trihalide: a broadly tunable perovskite for efficient planar heterojunction solar cells. Energy Environ. Sci. 7, 982 (2014).
【文献】Li, Z. et al. Stabilizing Perovskite Structures by Tuning Tolerance Factor: Formation of Formamidinium and Cesium Lead Iodide Solid-State Alloys. Chem. Mater. 28, 284-292 (2016).
【文献】Jeon, N. J. et al. Compositional engineering of perovskite materials for high-performance solar cells. Nature 517, 476-480 (2015).
【文献】Saliba, M. et al. Cesium-containing triple cation perovskite solar cells: improved stability, reproducibility and high efficiency. Energy Environ. Sci. 9, 1989-1997 (2016).
【文献】Saliba, M. et al. Incorporation of rubidium cations into perovskite solar cells improves photovoltaic performance. Science 354, 206-209 (2016).
【文献】Syzgantseva, O. A., Saliba, M., Gratzel, M. & Rothlisberger, U. Stabilization of the Perovskite Phase of Formamidinium Lead Triiodide by Methylammonium, Cs, and/or Rb Doping. J. Phys. Chem. Lett. 8, 1191-1196 (2017).
【文献】Yi, C. et al. Entropic stabilization of mixed A-cation ABX 3 metal halide perovskites for high performance perovskite solar cells. Energy Environ. Sci. 9, 656-662 (2016).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ペロブスカイトが高密度の空孔を有することを見出した。これらの空孔は酸素分子を吸収し、照明されるとそれらの分子をスーパーオキシド種に変換する。後者はペロブスカイトと反応してペロブスカイトを分解する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次いで本発明者らは周囲空気中のペロブスカイトの安定性を改良する方法を開発した。本発明者らはペロブスカイトに金属(Cd、Zn、Hg、Ba、Ca、Srを含む)をドープし、このドーピングにより、ペロブスカイト中の空孔の密度が低下し、ペロブスカイトの寿命がかなり増大することを見出した。
【0008】
本発明者らは、無機及び有機イオン(例えばCs+、ホルムアミジニウム及びメチルアンモニウムカチオン、Pb2+、Br-、I-)を上述したドーパントと共に含有するペロブスカイト太陽電池が、相対湿度50%の周囲空気中で1ヶ月以内の貯蔵の間安定な効率を示すことを実証した。対照的に、技術水準のペロブスカイト太陽電池は類似の(analogues)条件下で試験すると殆ど二分の一に低下した効率を示す。
【0009】
従って、1つの態様において、本開示は、式ABX3
[式中、Aはホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)及びメチルアンモニウム(MA)を含み、Bは鉛(Pb)及びカドミウム(Cd)の混合物を含み、Xは臭化物(Br)、並びにヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)のうちの少なくとも1種を含む]を有するペロブスカイト化合物を提供する。
【0010】
この態様において、AはCsxMAyFA1-x-yであってもよく、ここでxは0<x<1の範囲であり、yは0<y<1の範囲であり、x+y<1であり、BはPbiCd1-iであり、ここでiは0<i<1の範囲であり、ヨウ化物が存在する場合、XはImBr3-mであり、ここでmは0<m<3の範囲であり、塩化物のみが存在する場合、XはBrnCl3-nであり、ここでnは0<n<3の範囲であり、I及びClの両方が存在する場合、XはIkBrhCl3-h-kであり、ここでkは0<k<3の範囲であり、hは0<h<3の範囲であり、k+h<3である。
【0011】
AはCs0.05MA0.15FA0.8であってもよく、BはPb0.97Cd0.03であってもよく、XはI2.55Br0.45であってもよい。
【0012】
本開示はまた、式ABX3[式中、Aはホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)、メチルアンモニウム(MA)、グアニジニウム(GA)、ジメチルアンモニウム(dymethylammonium)(DMA)、及びエチルアンモニウム(EA)の2種以上を含み、Bは鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)の2種以上を含み、Xは臭化物(Br)、並びにヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)のうちの少なくとも1種を含む]を有するペロブスカイト化合物も提供する。
【0013】
この実施形態において、Bは鉛(Pb)、並びにカドミウム(Cd)及び亜鉛(Zn)のうちの少なくとも1種を含み得る。
【0014】
本開示はまた、式ABX3[式中Aはホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)、メチルアンモニウム(MA)、グアニジニウム(GA)、ジメチルアンモニウム(DMA)、及びエチルアンモニウム(EA)のうちの少なくとも2種を含み、Bは鉛(Pb)及びスズ(Sn)の混合物を含み、Xは臭化物(Br)、ヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)の混合物を含む]を有するペロブスカイト化合物も提供する。
【0015】
本開示はまた、式ABX3[式中、Aはホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)、メチルアンモニウム(MA)、グアニジニウム(GA)、ジメチルアンモニウム(DMA)、及びエチルアンモニウム(EA)のうちの少なくとも2種を含み、Bは鉛(Pb)及びスズ(Sn)の混合物、並びにカドミウム(Cd)及び亜鉛(Zn)のうちの少なくとも1種を含み、Xは臭化物(Br)、並びにヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)のうちの少なくとも1種を含む]を有するペロブスカイト化合物も提供する。
【0016】
本開示はまた、基材、基材の上面上の第1の電子伝導性層、電子伝導性層の上面上に配置された電子輸送層の層、電子輸送層の上面上の本明細書に開示されているペロブスカイトの層、ペロブスカイト化合物の層の上面上に配置された正孔輸送層、正孔輸送層の上面上に配置された第2の電気伝導性層を含む太陽電池であって、第1及び第2の電子伝導性層は電気伝導性電極がその一端で取り付けられており、電気伝導性電極の他端は負荷に取り付けられていて、ペロブスカイト化合物のバンドギャップより大きい波長の光が太陽電池に入射すると電流が生成するようになっている、太陽電池も提供する。
【0017】
ペロブスカイト化合物の層は約50nm~約100ミクロンの範囲、より好ましくは約300~約800nmの範囲の厚さを有し得る。
【0018】
本発明の機能的な態様及び有利な態様の更なる理解は以下の詳細な説明及び図面を参照することによって実現することができる。
【0019】
ここで、図面を参照して、様々な実施形態を単に例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】
図1A~1DはCsMAFA単結晶の特徴付けに関し、
図1Aは粉砕結晶のXRDを示し、単一の相を裏付けている。ピークは立方結晶相で指数付けされ、a=6.25Åである。挿入図は単結晶の写真である。
【
図1B】
図1Bは劈開したCsMAFA結晶のCs 3d準位のXPSスペクトルを示す。
【
図1C】
図1Cはホルムアミジニウムとメチルアンモニウムの両方のカチオンの存在を明らかにしている固体
1HNMRを示す。
【
図1D】
図1DはCsMAFA及びFAPbI
3単結晶の光ルミネッセンス寿命トレースを示す。
【
図2A】
図2A~2Bはアンチサイト及びSchottky空孔の形成エネルギーに関し、
図2Aは、DFTを使用してシミュレートされたペロブスカイト組成物及びDFT計算に使用されたスーパーセルのイオンを示すのに使用されている記号を説明する。
【
図2B】
図2Bは、FAPbI
3及びCsMAFAペロブスカイトのアンチサイト及びSchottky空孔の形成エネルギーを示す。DFTによりシミュレートされた組成物は、FA
108Pb
108I
324(FAPbI
3)、Cs
2MA
12FA
94Pb
108Br
55I
269(CsMAFA')、Cs
8MA
12FA
88Pb
108Br
55I
269(CsMAFA)である。
【
図3A】
図3A~3Cは格子緩和のメカニズムに関し、
図3Aは、点欠陥の形成(右側のパネル)又は小さいイオンの取込み(左側のパネル)のいずれかによって減少する局所歪み(中央のパネル)を説明する概要を示し、変形角(θ=180°-角(B-X-B'))が歪み緩和により減少することを示す。
【
図3B】
図3Bは(002)面内の歪みを示す概要を示し、歪みは小さいB/X-サイトイオンの取込みにより減少する。
【
図4A】
図4A~4EはCsMAFA、Cl及びCdを含有するペロブスカイトフィルムの特徴付けに関し、
図4Aは、フィルムを610nmの光及び酸素吹きつけ下でエージングさせたヒドロエチジンアリコートの規格化された光ルミネッセンス強度を示し、スーパーオキシド生成の収量を表わしている。
【
図4B】
図4Bは時間で積分した光ルミネッセンススペクトルを示す。
【
図4C】
図4Cは時間で微分した光ルミネッセンストレースを示す。
【
図4D】
図4DはCdを含有するペロブスカイト太陽電池の表面SEM画像を示し、スケールバーは500nmの長さを表わし、太陽電池により発生した電力は前面及び背後電極を通して集められる。
【
図4E】
図4EはCdを含有するペロブスカイト太陽電池の断面SEM画像を示す。スケールバーは500nmの長さを表わす。
【
図5A】
図5A~5DはCsMAFA、Cl及びCdを含有するペロブスカイト太陽電池の性能に関し、
図5Aは新鮮なペロブスカイト太陽電池の電力変換効率を4つの同じ実験で製作された各組成に対して30のデバイスの統計値と共に示す。
【
図5B】
図5Bは周囲空気(RH50%)中でエージングさせた際の太陽電池の電力変換効率の展開を示す。
【
図5C】
図5Cは、周囲空気(air ambient air)中で420nmのカットオフのUV-フィルターを用いた最大電力点条件下でのカプセル化されていないペロブスカイト太陽電池の作動を示す。
【
図5D】
図5Dは、窒素雰囲気中で420nmのカットオフのUV-フィルターを用いた最大電力点条件下でのカプセル化されていないペロブスカイト太陽電池の作動を示す。
【
図6A】
図6A~6CはXPSプロフィールに関し、
図6AはCsMAFA結晶中のPb 4fのXPSを示す。
【
図6B】
図6BはCsMAFA結晶中のI 3dのXPSを示す。
【
図6C】
図6CはCsMAFA結晶中のBr 3dのXPSを示す。
【
図7A】
図7A~7Cはペロブスカイト中の格子歪み緩和のメカニズムに関し、
図7Aは立方最密充填モデルにおけるペロブスカイト構造を表わす。
【
図7B】
図7Bは立方最密充填モデルにおけるペロブスカイト構造を表わす。
【
図7C】
図7Cは構造歪みを示すFAPbI
3における最密充填層を示し、構造歪みは点欠陥の形成又は小さいCs及びBrイオンの取込みのいずれかによって減少する。
【
図8A】
図8A~8Dは、DFTスーパーセルから測定される混合ペロブスカイト中の結合距離(L)及び変形角(θ=180°-角(B-X-B'))に関し(Nはスーパーセル内のB-X結合及びB-X-B'角の指数を示す)、
図8AはPb-X結合距離を示す。
【
図8D】
図8DはPb-X-Pb及びCd-X-Pb角を示す。
【
図9A】
図9A~9Bはヒドロエチジンによるスーパーオキシド生成をトレースすることに関し、
図9Aは赤色蛍光染料を形成するための(照明下、ペロブスカイトフィルム上で形成された)スーパーオキシド種によるヒドロエチジンの酸化を示す。
【
図9B】
図9Bは照明及び乾燥空気によるガス処理下でペロブスカイトフィルムのエージング中のプローブ溶液の経時的光ルミネッセンスを示す。
【
図10A】
図10A~10CはI空孔形成のDFT計算に使用される構造配置に関し、
図10AはI空孔配置を示す。最初に本発明者らは、混合ペロブスカイト構造内の8つの異なるランダムなI空孔を考え、最低の形成エネルギーを有する1つ(最もありそうな空孔サイトに対応する)を選択した。次に、ハロゲン化物空孔形成に関するClの役割を調べるために、本発明者らは10個のI原子を10個のCl原子とランダムに置換し、Clに起因する空孔形成の抑制を、
【0021】
【0022】
【数2】
は、I-空孔形成がCl原子の存在下で抑制されるエネルギーであり、E
Cl、EはCl原子の存在下及び不在下のエネルギーであり、
【0023】
【数3】
はI-空孔を有する、及び有しない構造のエネルギーである]と定義した。本発明者らはI-空孔に対してCl原子の5つの異なるランダムな位置を考えた。
【
図10B】
図10Bは金属置換配置を示す。ハロゲン化物空孔形成に関する金属(Me=Cd、Hg又はZn)置換の役割を調べるために、本発明者らは5個のPb原子を5個のMe原子とランダムに置換し、Meに起因する空孔形成の抑制を、
【0024】
【0025】
【数5】
はI-空孔形成がMe原子の存在下で抑制されるエネルギーである]と定義した。本発明者らはI-空孔に対してMe原子の5つの異なるランダムな位置を考えた。
【
図10C】
図10Cは、イオンがCs
8MA
12FA
88Pb
108Br
55I
269の様々な配置において置換された(10Iが10Clで、5Pbが5Meで、Me=Cd、Hg又はZn)とき、I-空孔形成が変化するエネルギーを示す。
【
図11A】
図11A~11CはPbI
2空孔形成のためのDFT計算に使用される構造配置に関し、
図11AはPbI空孔配置を示す。
【
図11B】
図11BはPbI
2空孔配置を示す。PbI
2空孔形成に関するClの役割を調べるために、本発明者らは混合ペロブスカイト構造の8つの異なるランダムなI空孔を考え、最低の形成エネルギーを有する1つ(最もありそうな空孔サイトに対応する、
図10)を選択した。同様に、本発明者らはPb空孔及び最低の形成エネルギーを有するもう1つ別のI空孔形成を見出し、こうして最も安定なPbI
2空孔を特定した。本発明者らは次に様々な配置において1つのランダムなI原子をClで置換し、それらの中のPbI
2空孔の形成エネルギーを得た。本発明者らは次いでClに起因する空孔形成の抑制を
【0026】
【数6】
[式中、E
PbI2vacはCsMAFAにおけるPbI
2空孔形成エネルギーであり、
【0027】
【数7】
はIがClにより置換されている配置中のPbI
2空孔形成エネルギーである]と定義した。本発明者らはPbI
2-空孔に対してCl原子の7つの異なるランダムな位置を考えた。Pb空孔とI空孔は大きい単位格子内で遠く離れている。従って、1つのサイトの付近の局所歪みが空孔の1つの形成に影響を及ぼす場合、他のものは影響を受けないままである。言い換えると、PbI
2対の形成エネルギーはI空孔と同一の程度に影響を受ける。
【
図11C】
図11Cは、I原子がCl原子で置換されているとき、I-空孔及びPbI
2-空孔形成が抑制されるエネルギーを示す。
【
図12A】
図12A~12Cは周囲空気中でエージングした後のCsMAFA、Clを含有するペロブスカイトフィルム、及びペロブスカイト太陽電池の写真に関し、
図12Aは0.7M溶液からガラス上に堆積させた7日後のフィルムを示し、百分率は供給溶液中のClの濃度を示す。
【
図12B】
図12Bは1.4M溶液から堆積させた7日後のフィルムを示し、百分率は供給溶液中のClの濃度を示す。
【
図12C】
図12CはCsMAFA及びCsMAFA-Clに基づく新鮮な及びエージングさせた(30日後)ペロブスカイト太陽電池(1.4M濃度の前駆体溶液由来)を示し、CsMAFA太陽電池の漂白を実証している。新鮮なペロブスカイトフィルムは約775nmに吸収限界を示した。空気中で加熱した後、吸収プロフィールの強度はペロブスカイト相の減少の結果として低下する。吸収を25%低減するのに必要とされる時間はCsMAFAよりCsMAFA-Clの方が二倍長い。
【
図13A】
図13A~13Bはペロブスカイトフィルムの吸収に関し、
図13Aは周囲空気中で熱応力(85℃)に曝露されたClでキャッピングされたTiO
2上のペロブスカイトフィルム(この構造はペロブスカイト太陽電池に使用される)の吸収の時間による変化を示す。
【
図13B】
図13Bは、I(t=0)に規格化された、時間の関数としてのλ=700nmでのピーク強度I(t)を示す。
【
図14A】
図14A~14BはバルクXPSに関し、
図14Aは対応する単結晶におけるCl及びPb XPSピークを示し、これらの結晶格子内への取込みを示している。
【
図14B】
図14Bは対応する単結晶におけるCd及びPb XPSピークを示し、これらの結晶格子内への取込みを示している。
【
図15A】
図15Aは異なるCl含有率を有するCsMAFAフィルムの光ルミネッセンススペクトルを示す。低いCl含有率はPLピークの位置に目立った影響を及ぼさなかった。しかし、高いCl含有率(5%)はPLのブルーシフトを引き起こし、恐らくCsClの急速な沈殿のために黄色いFAPbI
3相及びPbI
2の形成を引き起こし、FA及びIに富む成分が残り、その結果として続いて黄色い相を形成したと思われる。従って、本発明者らは1%のCl含有率を有するCsMAFAに焦点を当てた。
【
図15B】
図15Bはガラス基材上に5%のClを有するCsMAFAフィルムのXRDパターンを示す。黄色い相及びPbI
2ピークはそれぞれ*及び#として示されている。
【
図16B】
図16Bは、Cl取込みが、CsMAFA単結晶と比較して、短い再結合期間の統合した寄与を二分の一に低下させ、長い再結合期間の積分カウントを顕著に増大させることを明らかにする光ルミネッセンストレースを示す。傾向は対応する薄いフィルムで同様であることが分かった。
【
図17A】
図17A~17Bは形態学の比較に関し、
図17Aは新たに製作されたCsMAFA、Cd及びClフィルムのXRDパターンを示す。
【
図17B】
図17BはTiO
2/ITO基材上のフィルムの上面図のSEM画像をペロブスカイト太陽電池の断面図のSEM画像と共に示す。
【
図18】
図18は新たに製作されたペロブスカイト太陽電池のJ
sc、FF及びV
ocを示す。
【
図19B】
図19Bは、JV曲線と一致する電流を示す対応する電池のEQEスペクトルを示す。
【
図20】
図20は周囲空気中最大電力点条件下でのカプセル化されていないペロブスカイト太陽電池の作動を示す。
【
図21】
図21はMACl及びVBClで不動態化されたCsMAFAフィルムの光ルミネッセンススペクトルを示す。
【
図22】
図22は新鮮な及びエージングさせたデバイスのJV曲線を示す。
【
図23】
図23は同一のバッチで製作された異なるドーパントを有する新たに製作されたペロブスカイト太陽電池の電力変換効率を示す。
【
図24】
図24はヒステリシス指数(Hysteresis Index)
【0028】
【発明を実施するための形態】
【0029】
限定することなく、本明細書に記載されているシステムの大部分は空気中で安定なペロブスカイト及びそれを合成する方法に関する。要求されている通り、本発明の実施形態が本明細書に開示されている。しかしながら、開示されている実施形態は単に代表例であり、本発明は多くの様々な代わりの形態で具現されてもよいと理解されたい。
【0030】
添付の図は、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、本明細書に組み込まれ、その一部を形成し、本開示の幾つかの態様及び実施形態を例示しており、本明細書中の記載と共に、空気中で安定なペロブスカイトを生産するプロセスの原理を説明する役に立つ。図面は、装置のえり抜きの実施形態を説明する目的で、理解の補助としてのみ挙げられており、本開示の限定の定義と解釈するべきでない。教示の目的であり、限定することはないが、例示される実施形態は空気中で安定なペロブスカイトに向けられている。
【0031】
本明細書で使用される用語「約」は、寸法、温度又はその他の物理的な性質若しくは特性の範囲と共に使用されるとき、平均して殆どの寸法が満たすが統計的に寸法がこの領域の外に存在し得る実施形態を排除しないように、寸法の範囲の上限及び下限に存在してもよい僅かな変動を含むことを意味する。
【0032】
本明細書に開示されている全ての実施形態に対して、ハロゲン化物ペロブスカイトの一般式(brutto-formula)はABX3[式中のAは一価の有機若しくは無機カチオン又はこれらの混合物であり、Bは二価のカチオン及びこれらの混合物であり、Xはハロゲン化物アニオン又はこれらの混合物である]である。ABX3中のA、B及びXの化学量論は、A種の数が合計1になり、Bが合計1になり、X'が合計3になるようになっている。
【0033】
従って、1つの実施形態において、本開示は、Aがホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)及びメチルアンモニウム(MA)を含有し、Bが鉛(Pb)及びカドミウム(Cd)の混合物であり、Xが臭化物(Br)、並びにヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)の2種の成分のうちの少なくとも1種を含む、化合物ABX3を提供する。
【0034】
特定の実施形態において、AはCsxMAyFA1-x-yであり[式中、xは0<x<1の範囲であり、yは0<y<1の範囲であり、x+y<1である]、BはPbiCd1-iであり[式中、iは0<i<1の範囲である]、ヨウ化物が存在する場合、XはImBr3-mであり[式中、mは0<m<3の範囲である]、塩化物のみが存在する場合、XはBrnCl3-nであり[式中、nは0<n<3の範囲である]、I及びClの両方が存在する場合、XはIkBrhCl3-h-kである[式中、kは0<k<3の範囲であり、hは0<h<3の範囲であり、k+h<3である]。
【0035】
別の特定の実施形態において、AはCs0.05MA0.15FA0.8であり、BはPb0.97Cd0.03であり、XはI2.55Br0.45である。
【0036】
別の実施形態において、本開示は、Aがホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)、メチルアンモニウム(MA)、グアニジニウム(GA)、ジメチルアンモニウム(DMA)、エチルアンモニウム(EA)のうちの少なくとも2種の構成成分を含有し、Bが鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)のうちの2種以上を含み、Xが臭化物(Br)、並びにヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)のうちの少なくとも1種を含む、化合物ABX3を提供する。
【0037】
特定の実施形態において、Bは鉛(Pb)、並びにカドミウム(Cd)及び亜鉛(Zn)のうちの少なくとも1種を含む。
【0038】
B種が水銀(Hg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)を含んでいたこのペロブスカイトシステムのための合成された実施形態は機能しなかったことが観察された。
【0039】
別の実施形態において、本開示は、Aがホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)、メチルアンモニウム(MA)、グアニジニウム(GA)、ジメチルアンモニウム(DMA)、エチルアンモニウム(EA)のうちの少なくとも2種の成分を含有し、Xが臭化物(Br)、ヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)の混合物を含有し、Bが鉛(Pb)及びスズ(Sn)の混合物を含有する、化合物ABX3に関する。
【0040】
別の態様において、本開示は、Aがホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)、メチルアンモニウム(MA)、グアニジニウム(GA)、ジメチルアンモニウム(DMA)、エチルアンモニウム(EA)のうちの少なくとも2種の成分を含有し、Xが臭化物(Br)、並びにヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)の2種の成分のうちの少なくとも1種を含有し、Bが鉛(Pb)及びスズ(Sn)の混合物、並びにカドミウム(Cd)及び亜鉛(Zn)の2種の成分のうちの少なくとも1種を含有する、化合物ABX3に関する。
【0041】
太陽電池
本明細書に開示されているペロブスカイト化合物は太陽電池に使用するのに有用である。
図4EはCdを含有するペロブスカイト太陽電池の断面SEM画像を示し、ここでスケールバーは500nmの長さを表わす。基材(例えばガラス)は電子伝導性のインジウムスズ酸化物(ITO)層で被覆され、その上に本明細書に開示されているペロブスカイト化合物で構成されるペロブスカイト層が堆積される。次いでTiO
2-Clの層がITO層の上に堆積される。TiO
2-Clは電子輸送層(ETL)である。代わりのETLは、ドープされている及びドープされていない酸化物、例えば酸化スズ(SnO
2)、Alをドープした酸化亜鉛(ZnO)、並びに有機化合物、例えばフェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)である。それらはナノ粒子又は分子溶液のスピンコーティング、スプレーコーティング、スパッタリング、化学蒸着(CVD)、化学浴析出(CBD)により堆積させることができる。
【0042】
次いで本明細書に開示されているABX3化合物で構成されるペロブスカイト層をTiO2-Clの上部上に堆積させる。ペロブスカイトフィルムを二段階スピンコーティング法で堆積させた。第1の段階は1,000r.p.m.で10秒(s)であり、第2の段階は6,000r.p.m.で20sであった。クロロベンゼン(150μl)を第2のスピンコーティング段階中手順の終了5s前にスピンしている基材上に滴下した。次いで直ちに基材をホットプレート上に移し100℃で30分加熱した。或いは、ペロブスカイトは逐次堆積、熱蒸発、及びそれらの組合せによって堆積させることができる。ペロブスカイト層は約50nm~約100ミクロンの範囲の厚さを有することができ、より好ましくは約300~約800nmの範囲の厚さを有する。
【0043】
次いでSpiro-OMe-TAD(2,2',7,7'-テトラキス[N,N-ジ(4-メトキシフェニル)アミノ]-9,9'-スピロビフルオレン)の層をペロブスカイト層の上に堆積させる。Spiro-OMe-TADは正孔輸送層(HTL)である。代わりのHTLには、無機化合物、例えば酸化ニッケル(NiO)、チオシアン酸銅(CuSCN)、酸化銅(Cu2O)、酸化タングステン(WO3)、及び有機化合物、例えばポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)、ポリ[5,5-ビス(2-ブチルオクチル)-(2,2-ビチオフェン)-4,4'-ジカルボキシレート-alt-5,5'-2,2'-ビチオフェン](PDCBT)がある。それらはナノ粒子又は分子溶液のスピンコーティング、スプレーコーティング、スパッタリング、化学蒸着(CVD)、化学浴析出(CBD)、熱蒸発により堆積させることができる。
【0044】
Spiro-OMe-TADの層が堆積させられたら、金(Au)電気伝導性層を堆積させて太陽電池を形成する。代わりの伝導性層は銀(Ag)、銅(Cu)、インジウムスズ酸化物(ITO)である。それらは熱蒸発、電子ビーム蒸着及びスパッタリングにより堆積させることができる。
【0045】
次いで電極が、同様に負荷に接続される2つの電気伝導性層に取り付けられる。前面の電気伝導性層並びに正孔及び電子輸送層を構成する材料は使用される特定のABX3化合物のバンドギャップより大きいエネルギーの光に対して透明であって、各種の層を通ってABX3層に入り電子を価電子帯から伝導帯へ励起する光の伝播を確実にし、電子は次いで反対の方向に離れて、負荷を通って流れ、こうして仕事をする電流を生じる。
【0046】
ここで、特定のABX3化合物を使用して以下の非限定的実施例により本開示を例示する。
【実施例】
【0047】
ここで我々は、単一のカチオン/ハロゲン化物FAPbI3において、局所の格子歪みが、最近PSCの劣化の主要な原因であることが示された点欠陥の形成を誘発することを報告する。本発明者らは次いで、技術水準のCsMAFAペロブスカイト(Cs0.05MA0.15FA0.8PbI2.55Br0.45、最も性能の高いPSCと同一の組成)におけるCs/MA/Brイオンの取込みが、この材料の印象的な初期性能と一致して空孔に対する形成の高いエネルギーを有することを示す。しかしながら、本発明者らはまた、そのような欠陥がたとえまれであるとしても水及び酸素分子に対して高い親和性を有すること、及び、それらは小さい密度でさえ極めて有害であることも示す。更にCs/Br含有量を増大するとバンドギャップをブルーシフトさせ、これはPSC電力変換効率に不利に作用する。
【0048】
従って、本発明者らは空孔形成を抑制する新しい戦略を追求した。本明細書においては、思慮深く選択されたB-サイトドーパントの、混合ペロブスカイト結晶の格子中への取込みについて報告する。カドミウム(Cd)が混合ペロブスカイト格子中に取り込まれ、残存する格子歪みを解放し、空孔の形成に関連するエネルギーコストを更に増大した。得られたカプセル化されていないPSCは顕著に拡大された安定性を示し、相対湿度(RH)50%の周囲空気中で30日貯蔵後その初期のPCEの>90%を維持する。また、これらの同じ周囲空気RH条件下で技術水準のCsMAFAペロブスカイト太陽電池と比較して1桁長い作動MPP寿命も示す。
【0049】
CsMAFA単結晶の特性
本発明者らは最初に、なぜ混合CsMAFAペロブスカイトが太陽電池活性層でMAPbI
3又はFAPbI
3より良好に機能するのか理解しようと努力した。初めに、我々の焦点をバルク結晶特性に絞るため、即ち、薄いフィルムに豊富な粒界の影響を排除して、本発明者らは第1にCsMAFA単結晶の特性を研究した。
図1aの挿入図は昇温結晶化(inverse temperature crystallization)(ITC)
8により合成された約7mm×7mm×3mmのCsMAFA結晶を示す。粉砕結晶の粉末X線回折(PXRD)はFAPbI
3(a=6.36Å)より僅かに小さいa=6.25Åの単位格子パラメーターを有する単一の立方相を示し(
図1a)、結晶格子内へのCs及びBrの上首尾の取込みを示した。Cs(
図1b)、Pb、I、及びBr(
図6)の量をX線光電子分光法(XPS)を使用し、MA及びFAを固体水素核磁気共鳴(
1HNMR)(
図1c)により定量化した。結晶の元素組成は供給溶液と同様であることが判明した(表2)。CsMAFA単結晶の光ルミネッセンス(PL)寿命測定(
図1d)により、際立って長いキャリア寿命(それぞれ速い及び遅い成分の約0.3及び約3.7μs)が明らかになった。これらの値は同様に成長させた黒色のFAPbI
3単結晶(
図1d)及びMAPbI
3
8より最大で6倍も大きく、CsMAFAの実質的に減少したトラップ状態を示している。この知見は、単一のカチオン/ハロゲン化物ペロブスカイトと比べて混合ペロブスカイトの改良された性能と一致する。
【0050】
ペロブスカイトにおける格子歪み緩和のメカニズム
CsMAFAの改良された安定性の元を理解するために、本発明者らは、密度汎関数理論(DFT)を使用して、108のABX
3単純胞(
図2a)からなる大きいスーパーセルに対するFAPbI
3及びCsMAFA並びにアンチサイト及びSchottky空孔(化学量論量のアニオン及びカチオン空孔)の形成エネルギーを計算した。本発明者らは化合物の形成エネルギーに著しい差を見出さなかったが、これは混合の結果前駆体への不均化に対するこれらのCsMAFA組成物の大幅な熱力学的安定化が生じなかったことを示している(表3)。同様に、最も可能性が高い深い電子トラップであるPb-Iアンチサイトの形成は、FAに富む材料においてそれらの高い形成エネルギーを考えるとやはりありそうにない(
図2b)。
【0051】
対照的に、本発明者らは、ヨウ化鉛空孔に関連する形成エネルギーに有意な差を見出した(
図2b)。FAPbI
3で、このエネルギーは約3×10
17cm
-3の平衡PbI
2空孔密度に対応して(表4)際立って低い(約0.25eV)。FA及びIがそれぞれCs/MA及びBrにより一部置換されると、PbI
2空孔形成エネルギーは10
9倍と評価される空孔濃度の低減に対応して3倍より大きく増大する。
【0052】
本発明者らはこれを
図3aに描かれている格子歪み緩和の経路によって説明する。歪みは、ケージの変形及びBX
6八面体の傾きを引き起こすAカチオンと鉛ハロゲン化物ケージサイズとの間のイオンサイズの不一致に由来する(
図3a、中央のパネル)。FAPbI
3における歪みはFAPbI
3中の点欠陥の形成により減少する(
図3a、右側のパネル、及び
図7)。この空孔形成による格子緩和のメカニズムは酸化物ペロブスカイトで観察されている
9。
【0053】
空孔の形成に関する格子歪み緩和の役割を更に解明するために、本発明者らは、FAPbI
3においてケージを2%拡大し(これはPb-I-Pb変形角を小さくし、結果は小さいイオンの取込みによっても達成される、
図8)、PbI
2空孔形成エネルギーが0.55eV増大することを見出した。これは、小さいイオンの取込みがCsMAFAにおいて新しい格子歪み緩和経路を開くことにより欠陥の形成を防止することを示唆しており(
図3、左側のパネル)、これは他の場合単一のカチオン/アニオンペロブスカイトにおける空孔形成によって達せられる。
【0054】
ペロブスカイト分解における空孔及びその抑制のための戦略
ペロブスカイト空孔は浅い電子トラップであるが、周囲の環境と反応すると深いトラップを形成せしめ、空孔支援分解メカニズムによってペロブスカイト分解を助ける可能性がある(
図3a)。単一のカチオン/アニオンペロブスカイトにおいて、格子歪みは空孔の形成により熱力学的に緩和され、空孔は次いで水及び酸素分子に攻撃され、空孔サイトにおける水及び酸素分子の吸収は原始表面(pristine surfaces)よりもずっと有利である
10。しかしながら、CsMAFAペロブスカイトにおける空孔の密度は小さいイオンの取込みによる格子歪み緩和に起因して数桁減少し、これによりCsMAFAに基づくデバイスの分解を顕著に抑制する。
【0055】
本発明者らは、ペロブスカイトにおける空孔により媒介されるスーパーオキシド生成の速度を測定することによって我々のコンピューターによる研究の結果を実験的に研究した。本発明者らは、スーパーオキシド収量が、CsMAFAフィルムにおいてMAPbI
3及びFAPbI
3フィルムと比較して有意に減少することを見出した(
図4a)。スーパーオキシド生成速度は、
図9に記載され、以前の研究
10で詳述されているようにヒドロエチジン蛍光プローブを使用して測定した。
【0056】
ペロブスカイト分解の空孔支援メカニズムは、周囲空気中でのペロブスカイトの安定性を更に増大する手段を提案する。我々の観念は、B/Xサイト(
図3b)に残存する格子歪みを緩和して、電子トラップを導入することなく最も豊富な欠陥の形成エネルギーを更に最大化することである。従って本発明者らは、異原子価の(heterovalent)ドーパントがより多くの欠陥を導入し得ることに留意して、候補として等原子価のドーパントを選んだ(
図3c、表5)。本発明者らは、I
-対イオンがソフトな塩基である一方でハードなルイス酸は太陽電池の性能を低下させるので、ソフトなルイス酸がこの目的に有望な候補であることを示す。これはPearsonのハードな及びソフトな酸及び塩基(HSAB)概念、ソフトな酸はソフトな塩基とより強い結合を形成する一方、ハードな酸はハードな塩基とより強い結合を形成するという概念と一致する。
【0057】
空孔の密度を低下させ、安定性を改良するClの取込み
本発明者らは、この目的のための有望な最初の試みとしてCl-の取込みから始めたが、これはCl-がI-と等電子であり、その小さいイオン半径のために格子歪みを更に低減する可能性があるからである。以前の報告では、MAPbI3溶液中にブレンドされたClが最終的なペロブスカイトフィルムにおいてキャリア輸送を増進することを見出し11、その組成は最初前駆体溶液と同様にMAPbI2Clであると考えた。最近の研究は、最終の結晶格子中にClがないこと、及びClが境界面にのみ存在すると思われるのでその役割はMAPbI3の形態学的進化に帰することを確立した12。ここで本発明者らは空孔の形成を阻止することを目的として、代わりにCsMAFA格子内へのCl取込みを研究し、Clに対して周囲空気に耐性があるペロブスカイトを可能にする新しい役割を確認した。
【0058】
本発明者らは、格子歪みを緩和し、空孔密度を低下する上でのClの役割を調べるために最初にDFT計算を行なった。本発明者らは、IがClにより部分的に置換されると、Pb-X-Pb変形角と共にPb-X結合距離が低減することを見出した(
図8)。本発明者らは次いで格子内の最もエネルギー的に有利な位置でCsMAFAにI-空孔を作り出し、様々な隣接するサイトでイオンを置換(IをClと)した(
図10)。本発明者らは、全ての配置について、I-空孔形成がClの存在下で≧0.3eV抑制されることを見出した。本発明者らは荷電欠陥の形成がペロブスカイト中の対荷電欠陥(counter-charged defect)の形成を好み、その後電荷中性Schottky欠陥対を形成する(
図11)ことに留意している。
【0059】
Clを含有するCsMAFAフィルムは、溶液内で混合されたCl源としてPbCl
2を使用して製作した(詳細については方法参照)。減少したスーパーオキシド生成は、Clが欠陥の密度を抑制することを示している(
図4a)。特に、RH50%の周囲空気中で、CsMAFAフィルムは7日未満以内に悪化したが、Clを含むフィルムは暗いままであった(
図12)。周囲空気中における熱応力(85℃)に対するペロブスカイトフィルムの安定性を、その吸収スペクトルをモニターすることにより試験した(
図13)。吸収の変化はペロブスカイトの有効厚さの変化を表わす。本発明者らはClを含有するCsMAFAフィルムに対して吸収変化の2×低い割合(2x lower rate)を観察したが、これは対照のCsMAFAフィルムより改良された安定性を示す。
【0060】
結晶構造内にClが取り込まれるかどうかを確認するために、Clの存在下で単結晶を成長させ、結晶の劈開された内部のXPSを実行した。結果はCsMAFAペロブスカイト内へのClの上首尾の取込みを示した(
図14)。こうして、MAPbI
3とは対照的に、CsMAFAはClを受け入れることが可能である。本発明者らはこれを、CsMAFAハロゲン化物サイトの約1/6をBrが占めること(Brに基づくペロブスカイトはI及びClの両方と固溶体を形成することができる)
13及びCsの存在(CsPbI
3はCsPbI
3に対するClの溶解度付近のレベルでClを受け入れることができる)
14に留意することにより説明する。
【0061】
Cdの取込み
小さい一価のハロゲンアニオン(Cl)の取込みによる格子歪み緩和のメカニズムは空孔の形成を抑制し、その結果として安定性を高めた。しかしながら、追加のClの取込みはバンドギャップを増大し、太陽電池にとって望ましくない(
図15)。従って、本発明者らは我々の格子歪み緩和の概念を、B-サイトドーパントを含むように拡大した(
図3c)。本発明者らは、Pbと等原子価であるが、トラップを導入することなく更なる歪み緩和のための必要条件であるより小さいイオン半径を有する(表5)Cdを選んだ。
【0062】
DFT計算は、Cd取込みが実際に格子歪みを緩和し(
図8)、I-空孔の形成エネルギーを≧0.5eV(
図10)、即ちCl取込みの抑制より明らかに大きい程度に抑制することを示した。
【0063】
本発明者らは、Cdを有するフィルムで更にかなり減少した割合のスーパーオキシド生成を測定した(
図4a)。本発明者らはまた、以前の知見
15と一致して、ペロブスカイト結晶格子内へのCdの上首尾の取込みも観察した(
図14)。本発明者らは、Rbを含有するCsMAFAがスーパーオキシド生成の速度の低下を示さなかったことに留意している(
図4a)。これは、Rbが結晶格子内に取り込まれなかったことに由来し得る。
【0064】
Cl及びCdの取込みはフィルムのPL強度をそれぞれ5及び10倍増大した(
図4b)。PL寿命測定は、Cl及びCd取込みが短い再結合期間の統合した寄与を二分の一に低減し、長い再結合期間の積分カウントを顕著に増大する(
図4c、
図16)ことを明らかにした。同じXRD回折パターン及びSEM画像(
図4d、e、
図17)は、格子パラメーター及び形態学が本発明で使用されるCl及びCd濃度で保存されることを示している。
【0065】
ペロブスカイト太陽電池の性能及び安定性
Cl及びCdフィルムにおける安定性を改良することを目的として、本発明者らはPSCデバイスに対するCl及びCd統合の影響を定量化しようとした。本発明者らは20.1%保証されたPCEを有するClでキャッピングされたTiO2上の最近報告されたCsMAFA PSCに従うPSCを平面構造で製作した。後者は対照デバイスとしても役立つ。
【0066】
新たに製作されたCsMAFA、Cl-及びCd-PSCは同様な約20.5%の平均PCE、1.16VのV
oc、約80%のFF及び約22mA/cm
2のJ
scを示した(
図5a、
図18及び24)。後者は外部量子収率(EQE)測定と一致する(
図19)。
【0067】
デバイスはRH50%の周囲空気中で貯蔵された場合安定性に大きな差を示した(
図5b)。カプセル化されていないCl-及びCd-PSCは暗所で周囲空気中30日間貯蔵後その初期PCEの>95%を保持した。対照的に、CsMAFA PSCはその初期PCEの60%のみを保持し、漂白を示す(
図5b)。
【0068】
本発明者らはまた、周囲空気中MPP作動及び連続照明下でのカプセル化されていないPSCの光安定性も調べた。CsMAFA電池は相対的な-1.5%/分の直線状の傾きでPCEの急速な低下を示し、一方Cl及びCd電池はそれぞれ6及び15倍寿命を延ばした(
図5c、
図20)。Cdを含有するPSCの延長された安定性は我々らの計算の結果及びスーパーオキシド生成速度の我々の実験的測定と一致している。窒素雰囲気中で、全てのPSCは数十時間の連続MPP後その初期PCEの>90%を保持していたが(
図5d)、これはその分解において空気中の湿気及び酸素が極めて重大な役割を果たすことを示している。
【0069】
ペロブスカイト中の欠陥は照明下でハロゲン化物の分離を助け、ヒステリシス(hysteresis)を引き起こす。本明細書での知見と一致して、本発明者らはMAPbI
3及びFAPbI
3に基づくPSCにおける大きいヒステリシスを見出したが、混合PSCに対するヒステリシスは無視できるほどであった(表6)。MACl及びビニルベンジルクロリド(VBCl)によるCsMAFA処理も表面不動態化の結果PLピークを高めた(
図21)。しかしながら、デバイスは不十分な性能及び大きいヒステリシスを示した(表6、
図22)。本発明者らはこれを処理後の非化学量論的な表面組成に起因すると考える。バルク内及び表面における欠陥のエンジニアリングはPSCにおける性能及び安定性の組合せにとって極めて重要でありそうである。
【0070】
提案された空孔エンジニアリングメカニズムを考慮して、本発明者らはまた、他の二価のドーパント、例えばハードなルイス酸(2族:Ba、Ca、Sr)及びソフトなルイス酸(12族:Hg及びZn)のPSCの性能に対する影響も研究した(
図23)。ハードなルイス酸は、恐らく取込みの欠如及びトラップの形成のため顕著に低下した時間ゼロのPCEを示した。これは、ソフトなI
-塩基がソフトな酸Pb
2+とより強い結合を形成するというHSAB理論と一致する。ZnをドープしたPSCは有望な安定性を示した。しかしながら、デバイスの時間ゼロのPCEは僅かに低下した。これは今後の研究対象である。Hgを含有するPSCは反対の傾向、同等な初期PCEであるが、しかし数日以内の実質的な劣化を示した。これは、恐らく、より多くの空孔を導入する異原子価のHg
+の生成のためであろう。これらの知見は、Znが空孔の形成を抑制するが、Hgは空孔形成促進剤であるという我々のDFT知見(
図10)と一致する。
【0071】
標準的な光電池カプセル化材料はペロブスカイトの数日以内の完全な劣化に充分な速度で水及び酸素を伝えるので(表1)、現実的なカプセル化技術を確実に使用することができるように周囲空気中で高まった作動安定性を示すPSCを実現することが望ましい。混合CsMAFAペロブスカイトは単一のカチオン/アニオンペロブスカイトと比較して空孔を形成しにくく、従って分解に対してより安定である。CsMAFA格子内へのCd及びClの取込みによる原子空孔の抑制は技術水準のPSCの周囲空気中のMPP作動安定性を1桁更に高める。これは次にカプセル化材料に対する必要条件及びその処理条件を顕著に緩和する。提案された劣化メカニズム及び格子歪み緩和による空孔エンジニアリング戦略は実用的なカプセル化材料による25年の作動寿命を有するPSCに向かう引き続く進歩を可能にする新しい道を開く。
【0072】
【0073】
従来のカプセル化材料は1日に0.05gの水を透過し、これはペロブスカイトフィルムを破壊するのに十分である。幾つかの研究は、酸素が照明下でペロブスカイトに対して水と同じく厳しいことを示した。カプセル化材料は通常WVTRの値よりも高い値のOTRを有する。従って、現在使用されているカプセル化材料はPSCに不適切である。
【0074】
【0075】
【0076】
FAPbI3の形成エネルギーはDFT-D3及びDFT-D2ファンデルワールス相互作用を使用してそれぞれ0.10eV及び0.39eVであった。これらの正の値は、黒色の相がFAPbI3の黄色い相と比較して熱力学的に不安定であるという実験の観察と一致している。
【0077】
【0078】
FAPbI3の欠陥化学はMAPbI3の欠陥化学と比較して実質的に異なる。MAPbI3はMAI空孔の低い形成エネルギーのためにMAI空孔の高い密度(約1020cm-3)を有する。対照的に、FAPbI3においてFAI空孔の形成エネルギーはPbI2より際立って高く、PbI2空孔が好ましいことを示している。加えて、FAPbI3はMAPbI3より点欠陥が形成しにくく、FAPbI3に基づくペロブスカイトの分解に対する共通して観察される改良された安定性の主要因となっている。
【0079】
【0080】
【0081】
参考文献
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本発明は、以下の態様を含む。
[項1]
式ABX
3
[式中、
Aはホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)及びメチルアンモニウム(MA)を含み、
Bは鉛(Pb)及びカドミウム(Cd)の混合物を含み、
Xは臭化物(Br)、並びにヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)のうちの少なくとも1種を含む]
を有するペロブスカイト化合物。
[項2]
AがCs
x
MA
y
FA
1-x-y
であり[式中、xは0<x<1の範囲であり、yは0<y<1の範囲であり、x+y<1である]、BがPb
i
Cd
1-i
であり[式中、iは0<i<1の範囲である]、ヨウ化物が存在する場合、XがI
m
Br
3-m
であり[式中、mは0<m<3の範囲である]、塩化物のみが存在する場合、XがBr
n
Cl
3-n
であり[式中、nは0<n<3の範囲である]、I及びClの両方が存在する場合、XがI
k
Br
h
Cl
3-h-k
である[式中、kは0<k<3の範囲であり、hは0<h<3の範囲であり、k+h<3である]、項1に記載のペロブスカイト化合物。
[項3]
AがCs
0.05
MA
0.15
FA
0.8
であり、BがPb
0.97
Cd
0.03
であり、XがI
2.55
Br
0.45
である、項1又は2に記載のペロブスカイト化合物。
[項4]
式ABX
3
[式中、
Aはホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)、メチルアンモニウム(MA)、グアニジニウム(GA)、ジメチルアンモニウム(DMA)、及びエチルアンモニウム(EA)のうちの2種以上を含み、
Bは鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)のうちの2種以上を含み、
Xは臭化物(Br)、並びにヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)のうちの少なくとも1種を含む]
を有するペロブスカイト化合物。
[項5]
Bが鉛(Pb)、並びにカドミウム(Cd)及び亜鉛(Zn)のうちの少なくとも1種を含む、項4に記載の式ABX
3
を有するペロブスカイト化合物。
[項6]
式ABX
3
[式中、
Aはホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)、メチルアンモニウム(MA)、グアニジニウム(GA)、ジメチルアンモニウム(DMA)、及びエチルアンモニウム(EA)のうちの少なくとも2種を含み、
Bは鉛(Pb)及びスズ(Sn)の混合物を含み、
Xは臭化物(Br)、ヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)の混合物を含む]
を有するペロブスカイト化合物。
[項7]
式ABX
3
。
[式中、
Aはホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)、メチルアンモニウム(MA)、グアニジニウム(GA)、ジメチルアンモニウム(DMA)、及びエチルアンモニウム(EA)のうちの少なくとも2種を含み、
Bは鉛(Pb)及びスズ(Sn)の混合物、並びにカドミウム(Cd)及び亜鉛(Zn)のうちの少なくとも1種を含み、
Xは臭化物(Br)、並びにヨウ化物(I)及び塩化物(Cl)のうちの少なくとも1種を含む]
を有するペロブスカイト化合物。
[項8]
基材、前記基材の上面上の第1の電子伝導性層、
電子伝導性層の上面上に配置された電子輸送層の層、
前記電子輸送層の上面上の項1、2又は3に記載のペロブスカイト化合物の層、
前記ペロブスカイト化合物の層の上面上に配置された正孔輸送層、及び
前記正孔輸送層の上面上に配置された第2の電気伝導性層
を含む太陽電池であって、
前記第1及び第2の電子伝導性層は電気伝導性電極がその一端で取り付けられており、前記電気伝導性電極の他端は負荷に取り付けられていて、前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップより長い波長の光が前記太陽電池に入射すると電流が生成する、前記太陽電池。
[項9]
前記ペロブスカイト化合物の層が約50nm~約100ミクロンの範囲の厚さを有する、項8に記載の太陽電池。
[項10]
基材、前記基材の上面上の第1の電子伝導性層、
電子伝導性層の上面上に配置された電子輸送層の層、
前記電子輸送層の上面上の項4又は5に記載のペロブスカイト化合物の層、
前記ペロブスカイト化合物の層の上面上に配置された正孔輸送層、及び
前記正孔輸送層の上面上に配置された第2の電気伝導性層
を含む太陽電池であって、
前記第1及び第2の電子伝導性層は電気伝導性電極がその一端で取り付けられており、前記電気伝導性電極の他端は負荷に取り付けられていて、前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップより長い波長の光が前記太陽電池に入射すると電流が生成する、前記太陽電池。
[項11]
前記ペロブスカイト化合物の層が約50nm~約100ミクロンの範囲の厚さを有する、項10に記載の太陽電池。
[項12]
基材、前記基材の上面上の第1の電子伝導性層、
電子伝導性層の上面上に配置された電子輸送層の層、
前記電子輸送層の上面上の項6に記載のペロブスカイト化合物の層、
前記ペロブスカイト化合物の層の上面上に配置された正孔輸送層、及び
前記正孔輸送層の上面上に配置された第2の電気伝導性層
を含む太陽電池であって、
前記第1及び第2の電子伝導性層は電気伝導性電極がその一端で取り付けられており、前記電気伝導性電極の他端は負荷に取り付けられていて、前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップより長い波長の光が前記太陽電池に入射すると電流が生成する、前記太陽電池。
[項13]
前記ペロブスカイト化合物の層が約50nm~約100ミクロンの範囲の厚さを有する、項12に記載の太陽電池。
[項14]
基材、前記基材の上面上の第1の電子伝導性層、
電子伝導性層の上面上に配置された電子輸送層の層、
前記電子輸送層の上面上の項7に記載のペロブスカイト化合物の層、
前記ペロブスカイト化合物の層の上面上に配置された正孔輸送層、及び
前記正孔輸送層の上面上に配置された第2の電気伝導性層
を含む太陽電池であって、
前記第1及び第2の電子伝導性層は電気伝導性電極がその一端で取り付けられており、前記電気伝導性電極の他端は負荷に取り付けられていて、前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップより長い波長の光が前記太陽電池に入射すると電流が生成する、前記太陽電池。
[項15]
前記ペロブスカイト化合物の層が約50nm~約100ミクロンの範囲の厚さを有する、項14に記載の太陽電池。