IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

特許7381526減圧乾燥装置、減圧乾燥方法およびプログラム
<>
  • 特許-減圧乾燥装置、減圧乾燥方法およびプログラム 図1
  • 特許-減圧乾燥装置、減圧乾燥方法およびプログラム 図2
  • 特許-減圧乾燥装置、減圧乾燥方法およびプログラム 図3
  • 特許-減圧乾燥装置、減圧乾燥方法およびプログラム 図4
  • 特許-減圧乾燥装置、減圧乾燥方法およびプログラム 図5
  • 特許-減圧乾燥装置、減圧乾燥方法およびプログラム 図6
  • 特許-減圧乾燥装置、減圧乾燥方法およびプログラム 図7
  • 特許-減圧乾燥装置、減圧乾燥方法およびプログラム 図8
  • 特許-減圧乾燥装置、減圧乾燥方法およびプログラム 図9
  • 特許-減圧乾燥装置、減圧乾燥方法およびプログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】減圧乾燥装置、減圧乾燥方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/04 20060101AFI20231108BHJP
   F26B 9/06 20060101ALI20231108BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F26B5/04
F26B9/06 Z
H01L21/30 565
H01L21/30 567
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021134759
(22)【出願日】2021-08-20
(65)【公開番号】P2023028831
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】西岡 賢太郎
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-076211(JP,A)
【文献】特開2009-111234(JP,A)
【文献】特開2010-103480(JP,A)
【文献】特開2009-061381(JP,A)
【文献】特開2009-094182(JP,A)
【文献】特開平06-042862(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0115308(KR,A)
【文献】特開2011-064400(JP,A)
【文献】特開平09-320949(JP,A)
【文献】特開2002-372368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/04
F26B 9/06
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面に形成された塗膜を乾燥させる減圧乾燥装置であって、
前記基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内において前記基板を下方から支持する支持部と、
前記チャンバ内において前記支持部を下降位置と該下降位置よりも高い上昇位置との間で上下方向に昇降させる昇降部と、
前記チャンバの底板部に設けられた排気口から前記チャンバ内の雰囲気を排出する排気を行う排気部と、
前記チャンバの底板部に設けられた給気口から前記チャンバ内に気体を供給する給気を行う給気部と、
前記支持部に支持される基板と前記チャンバの底板部との間に位置するように配置された底面整流板と、
前記下降位置に配置されている前記支持部によって支持される基板と前記チャンバの側壁部との間において該側壁部の内面から間隔をあけて位置するように該側壁部の内側に位置しており、かつ前記下降位置に配置されている前記支持部によって支持される基板の周囲を囲むように配置された複数の側面整流板と、
前記排気部による排気および前記給気部による給気のうちの少なくとも一方が行われている際に、水平方向において前記支持部に支持される基板と前記側壁部との間に前記複数の側面整流板がある前記下降位置と、前記支持部に支持される基板が前記複数の側面整流板よりも上方に位置する前記上昇位置との間で、前記支持部を繰り返し昇降させるように前記昇降部を制御する制御部と、
を備えている、減圧乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧乾燥装置であって、
前記制御部は、前記排気部による排気および前記給気部による給気のそれぞれが行われている際に、前記下降位置と前記上昇位置との間で、前記支持部を繰り返し昇降させるように前記昇降部を制御する、減圧乾燥装置。
【請求項3】
基板を収容するチャンバと、該チャンバ内において前記基板を下方から支持する支持部と、前記チャンバ内において前記支持部を下降位置と該下降位置よりも高い上昇位置との間で上下方向に昇降させる昇降部と、前記チャンバの底板部に設けられた排気口から前記チャンバ内の雰囲気を排出する排気部と、前記チャンバの底板部に設けられた給気口から前記チャンバ内に気体を供給する給気部と、前記支持部に支持される基板と前記チャンバの底板部との間に位置するように配置された底面整流板と、前記下降位置に配置されている前記支持部によって支持される基板と前記チャンバの側壁部との間において該側壁部の内面から間隔をあけて位置するように該側壁部の内側に位置しており、かつ前記下降位置に配置されている前記支持部によって支持される基板の周囲を囲むように配置された複数の側面整流板と、を備えた減圧乾燥装置を用いて、前記基板の上面に形成された塗膜を乾燥させる減圧乾燥方法であって、
前記チャンバ内において前記支持部によって前記基板が下方から支持された状態で、前記排気部によって前記チャンバ内の雰囲気を排出させる排気工程と、
該排気工程の後に、前記チャンバ内において前記支持部によって前記基板が下方から支持された状態で、前記給気部によって前記チャンバ内に気体を供給させる給気工程と、
前記排気工程および前記給気工程のうちの少なくとも一方の工程が実行されている際に、水平方向において前記支持部に支持される基板と前記側壁部との間に前記複数の側面整流板がある前記下降位置と、前記支持部に支持される基板が前記複数の側面整流板よりも上方に位置する前記上昇位置との間で、前記昇降部によって前記支持部を繰り返し昇降させる昇降工程と、
を有する、減圧乾燥方法。
【請求項4】
請求項3に記載の減圧乾燥方法であって、
前記昇降工程は、前記排気工程が実行されている際に前記昇降部によって前記下降位置と前記上昇位置との間で前記支持部を繰り返し昇降させる第1昇降工程と、前記給気工程が実行されている際に前記昇降部によって前記下降位置と前記上昇位置との間で前記支持部を繰り返し昇降させる第2昇降工程と、を含む、減圧乾燥方法。
【請求項5】
基板を収容するチャンバと、該チャンバ内において前記基板を下方から支持する支持部と、前記チャンバ内において前記支持部を下降位置と該下降位置よりも高い上昇位置との間で上下方向に昇降させる昇降部と、前記チャンバの底板部に設けられた排気口から前記チャンバ内の雰囲気を排出する排気部と、前記チャンバの底板部に設けられた給気口から前記チャンバ内に気体を供給する給気部と、前記支持部に支持される基板と前記チャンバの底板部との間に位置するように配置された底面整流板と、前記下降位置に配置されている前記支持部によって支持される基板と前記チャンバの側壁部との間において該側壁部の内面から間隔をあけて位置するように該側壁部の内側に位置しており、かつ前記下降位置に配置されている前記支持部によって支持される基板の周囲を囲むように配置された複数の側面整流板と、前記排気部、前記給気部および前記昇降部を制御する制御部と、を備えた前記基板の上面に形成された塗膜を乾燥させる減圧乾燥装置において、前記制御部に含まれるプロセッサによって実行される際に、
前記制御部が、前記チャンバ内において前記支持部によって前記基板が下方から支持された状態で、前記排気部によって前記チャンバ内の雰囲気を排出させる排気工程と、
前記制御部が、前記排気工程の後に、前記チャンバ内において前記支持部によって前記基板が下方から支持された状態で、前記給気部によって前記チャンバ内に気体を供給させる給気工程と、
前記制御部が、前記排気工程および前記給気工程のうちの少なくとも一方の工程を実行させている際に、水平方向において前記支持部に支持される基板と前記側壁部との間に前記複数の側面整流板がある前記下降位置と、前記支持部に支持される基板が前記複数の側面整流板よりも上方に位置する前記上昇位置との間で、前記昇降部によって前記支持部を繰り返し昇降させる昇降工程と、を実行させる、プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムであって、
前記昇降工程は、前記制御部が、前記排気工程を実行させている際に前記昇降部によって前記下降位置と前記上昇位置との間で前記支持部を繰り返し昇降させる第1昇降工程と、前記制御部が、前記給気工程を実行させている際に前記昇降部によって前記下降位置と前記上昇位置との間で前記支持部を繰り返し昇降させる第2昇降工程と、を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の上面に形成された塗膜を減圧によって乾燥させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種の基板に塗布されたフォトレジスト等の塗膜を減圧乾燥する減圧乾燥装置が知られている(例えば、特許文献1等)。各種の基板には、例えば、各種のデバイスを形成するための半導体ウエハ、ガラス基板、またはセラミック基板等が適用される。各種のデバイスには、例えば、半導体装置、表示パネル、磁気ディスク、または光ディスク等が適用される。表示パネルには、例えば、液晶表示パネル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示パネル、またはプラズマ表示パネル等が適用される。
【0003】
減圧乾燥装置を用いて塗膜を乾燥する際には、例えば、チャンバ内において複数のピンが基板を支持している状態で、チャンバの底部の排気口を介して真空ポンプでチャンバ内から排気を行う。そして、例えば、真空度が所定値に到達するとチャンバ内からの排気を停止し、チャンバ内にガスを供給することでチャンバ内を大気圧に戻す。ガスには、例えば、窒素ガス等の不活性ガスまたは空気等が適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4335786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、減圧乾燥装置では、例えば、基板の上面に形成された塗膜において、場所に応じて乾燥速度が違っていれば、その乾燥速度の違いに応じた乾燥のムラ(乾燥ムラともいう)が生じ得る。乾燥ムラは、例えば、乾燥後の塗膜における厚さのばらつき等を生じさせる。
【0006】
例えば、チャンバ内の減圧時において、排気口を介してチャンバ内の気体を真空ポンプで排気する際に、基板の上方に継続的な特定のパターンの気流(第1定常流ともいう)が生じ得る。これにより、例えば、第1定常流に応じて、場所に応じた塗膜の乾燥速度に違いが生じ得る。その結果、例えば、塗膜のうちの第1定常流に応じた特定の箇所に筋状の乾燥ムラが生じ得る。ここでは、第1定常流は、例えば、チャンバの形状、およびチャンバ内に配置された基板を昇降させるための複数のピンが立設されたプレートの形状等に応じて生じ得る。
【0007】
また、例えば、排気による減圧後にチャンバ内にガスを供給することでチャンバ内を大気圧に戻す際に、基板の上方に継続的な特定のパターンの気流(第2定常流ともいう)が生じ得る。これにより、例えば、塗膜が半乾きの状態であれば、第2定常流に応じて、場所に応じた塗膜の乾燥速度に違いが生じ得る。その結果、例えば、塗膜のうちの第2定常流に応じた特定の箇所に筋状の乾燥ムラが生じ得る。ここでは、第2定常流は、例えば、チャンバの形状、およびチャンバ内に配置された基板を昇降させるための複数のピンが立設されたプレートの形状等に応じて生じ得る。
【0008】
また、例えば、基板において、複数のピンの接触により、複数のピンによって支持されている部分とその周辺の部分との間に温度差が生じ得る。これにより、例えば、複数のピンに起因する温度差に応じて、塗膜の乾燥速度に違いが生じ得る。その結果、例えば、塗膜において複数のピンの配置に応じた乾燥ムラが生じ得る。ここでは、例えば、塗膜の減圧乾燥時には、塗膜から溶剤等が気化する際に生じる気化熱によって基板の温度が低下するものの、複数のピンの熱容量が大きい場合にも、複数のピンが熱容量の大きなチャンバ等に連結されている場合にも、複数のピンの温度が変化し難い。このため、例えば、基板において複数のピンの配置に応じた温度差が生じ得る。
【0009】
また、例えば、チャンバ内の減圧時において、基板の上面のうちの塗膜が形成された領域(塗布領域ともいう)では、塗膜中の溶剤が気化するのに対し、基板の上面のうちの塗膜が形成されていない領域(非塗布領域ともいう)では、溶剤が気化しない。
【0010】
ここで、例えば、基板の上面の略全面にわたって塗膜が形成されている場合を想定する。この場合には、例えば、塗布領域の端部の上方では、基板上の外側等に向けて蒸発した溶剤の成分が拡散し易いため、蒸発した溶剤の成分の濃度が上昇し難く、塗布領域の端部における塗膜が乾燥し易い。一方、例えば、塗布領域の中央部の上方では、蒸発した溶剤の成分が拡散し難いため、蒸発した溶剤の成分の濃度が上昇し易く、塗布領域の中央部における塗膜が乾燥し難い。これにより、例えば、塗布領域のうちの中央部と端部との間で、乾燥速度に違いが生じ得る。その結果、例えば、塗布領域において、中央部と端部との間における乾燥速度の違いに起因した乾燥ムラが生じ得る。
【0011】
ここで、例えば、基板の上面のうちの複数のデバイスに応じた複数の領域のそれぞれに塗膜が形成されている場合を想定する。この場合には、例えば、各塗布領域の端部の上方では、基板上の外側もしくは非塗布領域上に向けて蒸発した溶剤の成分が拡散し易いため、蒸発した溶剤の成分の濃度が上昇し難く、各塗布領域の端部における塗膜が乾燥し易い。一方、例えば、各塗布領域の中央部の上方では、蒸発した溶剤の成分が拡散し難いため、蒸発した溶剤の成分の濃度が上昇し易く、各塗布領域の中央部における塗膜が乾燥し難い。これにより、例えば、各塗布領域の中央部と端部との間で、乾燥速度に違いが生じ得る。その結果、例えば、各塗布領域において、中央部と端部との間における乾燥速度の違いに起因した乾燥ムラが生じ得る。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板の上面に形成された塗膜をより均一に乾燥させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、第1の態様に係る減圧乾燥装置は、基板の上面に形成された塗膜を乾燥させる減圧乾燥装置であって、チャンバと、支持部と、昇降部と、排気部と、給気部と、底面整流板と、複数の側面整流板と、制御部と、を備えている。前記チャンバは、前記基板を収容する。前記支持部は、前記チャンバ内において前記基板を下方から支持する。前記昇降部は、前記チャンバ内において前記支持部を下降位置と該下降位置よりも高い上昇位置との間で上下方向に昇降させる。前記排気部は、前記チャンバの底板部に設けられた排気口から前記チャンバ内の雰囲気を排出する排気を行う。前記給気部は、前記チャンバの底板部に設けられた給気口から前記チャンバ内に気体を供給する給気を行う。前記底面整流板は、前記支持部に支持される基板と前記チャンバの底板部との間に位置するように配置されている。前記複数の側面整流板は、前記下降位置に配置されている前記支持部によって支持される基板と前記チャンバの側壁部との間において該側壁部の内面から間隔をあけて位置するように該側壁部の内側に位置しており、かつ前記下降位置に配置されている前記支持部によって支持される基板の周囲を囲むように配置されている。前記制御部は、前記排気部による排気および前記給気部による給気のうちの少なくとも一方が行われている際に、水平方向において前記支持部に支持される基板と前記側壁部との間に前記複数の側面整流板がある前記下降位置と、前記支持部に支持される基板が前記複数の側面整流板よりも上方に位置する前記上昇位置との間で、前記支持部を繰り返し昇降させるように前記昇降部を制御する。
【0014】
第2の態様に係る減圧乾燥装置は、第1の態様に係る減圧乾燥装置であって、前記制御部は、前記排気部による排気および前記給気部による給気のそれぞれが行われている際に、前記下降位置と前記上昇位置との間で、前記支持部を繰り返し昇降させるように前記昇降部を制御する。
【0015】
第3の態様に係る減圧乾燥方法は、基板を収容するチャンバと、該チャンバ内において前記基板を下方から支持する支持部と、前記チャンバ内において前記支持部を下降位置と該下降位置よりも高い上昇位置との間で上下方向に昇降させる昇降部と、前記チャンバの底板部に設けられた排気口から前記チャンバ内の雰囲気を排出する排気部と、前記チャンバの底板部に設けられた給気口から前記チャンバ内に気体を供給する給気部と、前記支持部に支持される基板と前記チャンバの底板部との間に位置するように配置された底面整流板と、前記下降位置に配置されている前記支持部によって支持される基板と前記チャンバの側壁部との間において該側壁部の内面から間隔をあけて位置するように該側壁部の内側に位置しており、かつ前記下降位置に配置されている前記支持部によって支持される基板の周囲を囲むように配置された複数の側面整流板と、を備えた減圧乾燥装置を用いて、前記基板の上面に形成された塗膜を乾燥させる減圧乾燥方法であって、排気工程と、給気工程と、昇降工程と、を有する。前記排気工程においては、前記チャンバ内において前記支持部によって前記基板が下方から支持された状態で、前記排気部によって前記チャンバ内の雰囲気を排出させる。前記給気工程においては、前記排気工程の後に、前記チャンバ内において前記支持部によって前記基板が下方から支持された状態で、前記給気部によって前記チャンバ内に気体を供給させる。前記昇降工程においては、前記排気工程および前記給気工程のうちの少なくとも一方の工程が実行されている際に、水平方向において前記支持部に支持される基板と前記側壁部との間に前記複数の側面整流板がある前記下降位置と、前記支持部に支持される基板が前記複数の側面整流板よりも上方に位置する前記上昇位置との間で、前記昇降部によって前記支持部を繰り返し昇降させる。
【0016】
第4の態様に係る減圧乾燥方法は、第3の態様に係る減圧乾燥方法であって、前記昇降工程は、前記排気工程が実行されている際に前記昇降部によって前記下降位置と前記上昇位置との間で前記支持部を繰り返し昇降させる第1昇降工程と、前記給気工程が実行されている際に前記昇降部によって前記下降位置と前記上昇位置との間で前記支持部を繰り返し昇降させる第2昇降工程と、を含む。
【0017】
第5の態様に係るプログラムは、基板を収容するチャンバと、該チャンバ内において前記基板を下方から支持する支持部と、前記チャンバ内において前記支持部を下降位置と該下降位置よりも高い上昇位置との間で上下方向に昇降させる昇降部と、前記チャンバの底板部に設けられた排気口から前記チャンバ内の雰囲気を排出する排気部と、前記チャンバの底板部に設けられた給気口から前記チャンバ内に気体を供給する給気部と、前記支持部に支持される基板と前記チャンバの底板部との間に位置するように配置された底面整流板と、前記下降位置に配置されている前記支持部によって支持される基板と前記チャンバの側壁部との間において該側壁部の内面から間隔をあけて位置するように該側壁部の内側に位置しており、かつ前記下降位置に配置されている前記支持部によって支持される基板の周囲を囲むように配置された複数の側面整流板と、前記排気部、前記給気部および前記昇降部を制御する制御部と、を備えた前記基板の上面に形成された塗膜を乾燥させる減圧乾燥装置において、前記制御部に含まれるプロセッサによって実行される際に、排気工程と、給気工程と、昇降工程と、を実行させる。前記排気工程においては、前記制御部が、前記チャンバ内において前記支持部によって前記基板が下方から支持された状態で、前記排気部によって前記チャンバ内の雰囲気を排出させる。前記給気工程においては、前記制御部が、前記排気工程の後に、前記チャンバ内において前記支持部によって前記基板が下方から支持された状態で、前記給気部によって前記チャンバ内に気体を供給させる。前記昇降工程においては、前記制御部が、前記排気工程および前記給気工程のうちの少なくとも一方の工程を実行させている際に、水平方向において前記支持部に支持される基板と前記側壁部との間に前記複数の側面整流板がある前記下降位置と、前記支持部に支持される基板が前記複数の側面整流板よりも上方に位置する前記上昇位置との間で、前記昇降部によって前記支持部を繰り返し昇降させる。
【0018】
第6の態様に係るプログラムは、第5の態様に係るプログラムであって、前記昇降工程は、前記制御部が、前記排気工程を実行させている際に前記昇降部によって前記下降位置と前記上昇位置との間で前記支持部を繰り返し昇降させる第1昇降工程と、前記制御部が、前記給気工程を実行させている際に前記昇降部によって前記下降位置と前記上昇位置との間で前記支持部を繰り返し昇降させる第2昇降工程と、を含む。
【発明の効果】
【0019】
第1の態様に係る減圧乾燥装置、第3の態様に係る減圧乾燥方法、および第5の態様に係るプログラムの何れによっても、例えば、チャンバ内の雰囲気の排出およびチャンバ内への気体の供給のうちの少なくとも一方が行われている際に、基板を繰り返して昇降させる。これにより、例えば、排気時および給気時のうちの少なくとも一方において、チャンバ内に気流の乱れを生じさせることができる。その結果、例えば、排気時および給気時のうちの少なくとも一方において、チャンバ内では、継続的な特定のパターンの気流が生じ難くなるとともに、塗膜上において塗膜から蒸発した溶剤の成分の濃度が偏り難くなる。したがって、例えば、基板の上面に形成された塗膜がより均一に乾燥され得る。
【0020】
第2の態様に係る減圧乾燥装置、第4の態様に係る減圧乾燥方法、および第6の態様に係るプログラムの何れによっても、例えば、チャンバ内の雰囲気の排出およびチャンバ内への気体の供給のそれぞれが行われている際に、基板を繰り返して昇降させる。これにより、例えば、排気時にも給気時にも、チャンバ内に気流の乱れを生じさせることができる。その結果、例えば、排気時にも給気時にも、チャンバ内では、継続的な特定のパターンの気流が生じ難くなるとともに、塗膜上において塗膜から蒸発した溶剤の成分の濃度が偏り難くなる。したがって、例えば、基板の上面に形成された塗膜がより均一に乾燥され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、一実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る減圧乾燥装置の横断面の一例を示す図である。
図3図3は、一実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を示す図である。
図4図4は、基板の一例を示す斜視図である。
図5図5は、基板の一部分の縦断面の一例を示す図である。
図6図6は、制御部において実現される機能を概念的に示したブロック図である。
図7図7は、一実施形態に係る減圧乾燥処理の流れの一例を示す流れ図である。
図8図8は、一変形例に係る減圧乾燥処理の流れの一例を示す流れ図である。
図9図9は、一変形例に係る減圧乾燥処理の流れの一例を示す流れ図である。
図10図10は、一変形例に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態および各種変形例について、図面を参照しつつ説明する。図面においては同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は正確に図示されたものではない。
【0023】
<1.減圧乾燥装置の構成>
図1は、一実施形態に係る減圧乾燥装置1の縦断面の一例を模式的に示す図である。図2は、一実施形態に係る減圧乾燥装置1の横断面の一例を模式的に示す図である。図3は、一実施形態に係る減圧乾燥装置1の縦断面の一例を示す模式的に図である。図1の縦断面と図3の縦断面とは、約90度異なる方向から見た関係を有する。図3では、図面の煩雑化を避けるために、後述する排気部30、給気部60、圧力計70および制御部80に関する構成が便宜的に省略されている。減圧乾燥装置1は、基板9の上面に形成された塗膜90(図5参照)を乾燥させる装置である。
【0024】
基板9には、例えば、ガラス基板、半導体ウエハ、またはセラミック基板等が適用される。基板9は、例えば、第1主面としての第1面F1(図4および図5参照)と、この第1面とは逆の第2主面としての第2面F2(図5参照)と、を有する平板状の基板である。例えば、減圧乾燥装置1では、基板9の第1面F1が基板9の上面とされ、基板9の第2面F2が基板9の下面とされる。ここでは、基板9に矩形のガラス基板が適用された具体例を適宜挙げて説明する。基板9の第1面F1には、例えば、予め有機材料および溶剤を含む処理液が塗布されることで、塗膜90が部分的に形成されている。処理液の塗布は、例えば、スリットコータまたはインクジェット装置等で行われる。処理液には、例えば、ポリイミド前駆体と溶媒とを含む液(PI液ともいう)またはレジスト液等の塗布液が適用される。ポリイミド前駆体には、例えば、ポリアミド酸(ポリアミック酸)等が適用される。溶媒には、例えば、NMP(N-メチル-2-ピロリドン:N-Methyl-2-Pyrrolidone)が適用される。また、例えば、減圧乾燥装置1が有機ELディスプレイの製造工程に適用される場合には、塗膜90が、減圧乾燥装置1で乾燥されることによって有機ELディスプレイパネルの正孔注入層、正孔輸送層、または発光層となる態様が採用されてもよい。
【0025】
図4は、基板9の一例を示す斜視図である。図5は、基板9の一部分の縦断面の一例を示す図である。図4で示されるように、基板9は、例えば、上面視において、縦横の長さが異なる長方形状の形態を有する。基板9の上面には、デバイス等が形成される領域(被形成領域とも塗布領域ともいう)A1が、複数配列されている。図4の例では、基板9の上面に、4つの矩形状の塗布領域A1が、2行2列のマトリックス状に配列されている。ただし、塗布領域A1の形状、数、配置は、この例に限定されるものではない。塗膜90は、減圧乾燥装置1による減圧乾燥工程よりも前の塗布工程において、スリットコータまたはインクジェット装置等によって、各塗布領域A1に、所望のパターンに従って形成される。所望のパターンには、例えば、回路のパターンが適用される。ここでは、例えば、図5で示されるように、各塗布領域A1は、塗膜90に覆われた領域(被覆領域ともいう)A3と、塗膜90に覆われていない露出した領域(露出領域ともいう)A4と、を有する。また、隣り合う塗布領域A1の間の領域(非塗布領域ともいう)A2は、塗膜90に覆われていない露出した領域(露出領域)A4となっている。
【0026】
図1および図2で示されるように、減圧乾燥装置1は、例えば、チャンバ10と、支持部20と、昇降部100と、排気部30と、給気部60と、制御部80と、を備えている。また、減圧乾燥装置1は、例えば、底面整流板40と、側面整流板50と、圧力計70と、を備えている。
【0027】
チャンバ10は、基板9を収容するための部分である。チャンバ10には、基板9を収容するための内部空間10sを有する耐圧容器が適用される。チャンバ10は、例えば、図示を省略した装置フレーム上に固定されている。チャンバ10の形状は、例えば、扁平な直方体状である。チャンバ10は、例えば、略正方形状の底板部11と、4つの側壁部12と、略正方形状の天板部13と、を有する。4つの側壁部12は、例えば、底板部11の4つの端辺と、天板部13の4つの端辺とを、上下方向に接続している。例えば、4つの側壁部12のうちの1つの側壁部12には、搬入出口14と、この搬入出口14を開閉するゲート部(ゲートバルブともいう)15と、が設けられている。ゲート部15は、例えば、開閉駆動部16に接続されている。図3では、図面の煩雑化を避けるために、開閉駆動部16が概念的に示されている。開閉駆動部16には、例えば、エアシリンダ等の駆動機構が適用される。ここでは、例えば、開閉駆動部16の動作によって、ゲート部15は、搬入出口14を閉鎖している位置(閉鎖位置ともいう)と、搬入出口14を開放している位置(開放位置ともいう)との間で移動することができる。
【0028】
ここで、例えば、ゲート部15が閉鎖位置に配置された状態では、チャンバ10の内部空間10sが密閉される。例えば、ゲート部15が開放位置に配置された状態では、搬入出口14を介して、チャンバ10の内部空間10sへの基板9の搬入およびチャンバ10の内部空間10sからの基板9の搬出を行うことができる。
【0029】
支持部20は、チャンバ10内において基板9を下方から支持する部分である。例えば、支持部20は、チャンバ10の内部空間10sに位置しており、チャンバ10の内部空間10sに収容された基板9を下方から支持することができる。支持部20は、例えば、複数の支持プレート21と、複数の支持ピン22と、を有する。複数の支持プレート21は、例えば、水平方向に間隔をあけて配列されている。各支持プレート21の上面には、複数の支持ピン22が立設されている。基板9は、例えば、複数の支持プレート21の上方に配置され、複数の支持ピン22の上端部が基板9の下面に接触することで、基板9が水平姿勢で支持される。
【0030】
昇降部100は、チャンバ10内において支持部20を昇降させる部分である。換言すれば、例えば、昇降部100は、チャンバ10の内部空間10sに位置している支持部20を昇降させることができる機構(昇降機構ともいう)を有する。この昇降部100により、例えば、支持部20に支持されている基板9が昇降され得る。図1では、図面の煩雑化を避けるために、昇降部100が概念的に示されている。図3で示されるように、昇降部100には、例えば、直動型モータまたはエアシリンダ等の駆動装置が適用される。昇降部100は、例えば、本体部100aと、移動部100bと、を有する。本体部100aは、例えば、チャンバ10の外部において、図示を省略した装置フレームに固定されている。移動部100bは、例えば、本体部100aに対して、上下方向に移動することができる。移動部100bには、例えば、棒状の部材等が適用される。移動部100bは、例えば、チャンバ10の底板部11の貫通孔11hに挿通された状態で位置している。そして、例えば、移動部100bの上端部に、支持部20が固定されている。ここでは、例えば、底板部11の下面と移動部100bとの間にベローズ等が設けられれば、底板部11と移動部100bとの隙間が密閉され得る。例えば、支持部20が複数の支持プレート21を有する場合には、移動部100bは、支持プレート21ごとに支持プレート21に固定されており且つ底板部11の貫通孔11hに挿通された棒状の部分(棒状部ともいう)と、複数の棒状部を連結している部分(連結部ともいう)と、連結部に接続されており且つ本体部100aに摺動可能に支持された部分(摺動部ともいう)と、を有する。
【0031】
ここで、例えば、昇降部100を動作させると、支持部20は、下降位置H1(図1および図3で一点鎖線で示した位置)と、下降位置H1よりも高い上昇位置H2(図1および図3で二点鎖線で示した位置)との間で、上下方向に昇降する。このとき、例えば、複数の支持プレート21は、一体的に昇降し得る。
【0032】
排気部30は、チャンバ10内の雰囲気を排出する動作(排気ともいう)を行う部分である。排気部30には、例えば、チャンバ10の内部空間10sから気体を吸引して、チャンバ10内の圧力を低下させる機構が適用される。図1および図2で示されるように、チャンバ10の底板部11には、例えば、4つの排気口16a,16b,16c,16dが設けられている。4つの排気口16a,16b,16c,16dは、例えば、支持部20に支持された基板9の下方に位置するように配置されている。また、4つの排気口16a,16b,16c,16dは、例えば、後述する底面整流板40の下方に位置している。排気部30は、例えば、4つの排気口16a,16b,16c,16dに接続された排気配管31と、4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdと、主バルブVeと、真空ポンプ32と、を有する。排気配管31は、例えば、4つの個別配管31a,31b,31c,31dと、1つの主配管31eと、を有する。例えば、個別配管31aの一端は、排気口16aに接続しており、個別配管31bの一端は、排気口16bに接続しており、個別配管31cの一端は、排気口16cに接続しており、個別配管31dの一端は、排気口16dに接続している。例えば、4つの個別配管31a,31b,31c,31dのそれぞれの他端は、合流して主配管31eの一端に接続されている。例えば、主配管31eの他端は、真空ポンプ32に接続している。例えば、個別バルブVaは、個別配管31aの経路上に設けられており、個別バルブVbは、個別配管31bの経路上に設けられており、個別バルブVcは、個別配管31cの経路上に設けられており、個別バルブVdは、個別配管31dの経路上に設けられている。例えば、主バルブVeは、主配管31eの経路上に設けられている。
【0033】
ここで、例えば、ゲート部15によって搬入出口14を閉鎖した状態で、4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdの少なくとも一部と、1つの主バルブVeとを開放し、真空ポンプ32を動作させると、チャンバ10内の気体が、排気配管31を介してチャンバ10の外部へ排出される。これにより、例えば、チャンバ10の内部空間10sの圧力を低下させることができる。
【0034】
4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdは、例えば、4つの排気口16a,16b,16c,16dからの排気量を、個別に調節するためのバルブである。4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdのそれぞれには、例えば、制御部80からの指令に基づいて開放状態と閉鎖状態との間で切り替えられる弁(開閉弁ともいう)が適用される。主バルブVeは、例えば、4つの排気口16a,16b,16c,16dからの合計の排気量を調整するためのバルブである。主バルブVeには、例えば、制御部80からの指令に基づいて開度が調節され得る弁(開度制御弁ともいう)が適用される。
【0035】
ここでは、例えば、4つの排気口16a,16b,16c,16dが、支持部20に支持された基板9の下方に位置することで、基板9の上方に排気口がある場合と比べて、基板9の上方における気体の流れの均一化が促進され、基板9の上面に形成された塗膜90における乾燥ムラの発生が低減され得る。
【0036】
底面整流板40は、排気部30によるチャンバ10内の減圧時に、内部空間10sにおける気体の流れを規制するためのプレートである。例えば、底面整流板40は、支持部20に支持される基板9と、チャンバ10の底板部11との間に位置するように配置されている。より具体的には、例えば、底面整流板40は、下降位置H1に配置されている支持部20から間隔をあけて位置するように支持部20の下側に配置されており、且つ底板部11の上面から間隔をあけて位置するように底板部11の上側に配置されている。また、底面整流板40は、例えば、底板部11の上面に沿って、水平に拡がるように位置している。底面整流板40は、例えば、チャンバ10の底板部11に、図示を省略した複数の支柱を介して固定されている。図2で示されるように、例えば、底面整流板40は、上面視において正方形状の形状を有する。そして、例えば、底面整流板40の上面視における各辺の長さは、長方形状の基板9の長辺および短辺のいずれよりも長い。このため、例えば、支持部20上に配置される基板9の向きに拘わらず、上面視において、底面整流板40は、基板9よりも大きい。また、底面整流板40は、例えば、昇降部100の移動部100bが挿通された状態にある貫通孔40hを有している。貫通孔40hにおいて、底面整流板40と移動部100bとは、ごく小さな間隔をあけて位置している。
【0037】
側面整流板50は、底面整流板40とともに、排気部30によるチャンバ10内の減圧時に、内部空間10sにおける気体の流れを規制するためのプレートである。例えば、側面整流板50は、下降位置H1に配置されている支持部20によって支持される基板9と、チャンバ10の側壁部12との間に位置するように配置されている。より具体的には、例えば、側面整流板50は、下降位置H1に配置されている支持部20に支持される基板9の端部から間隔をあけて基板9の外側に配置されており、且つ側壁部12の内面から間隔をあけて位置するように側壁部12の内側に位置している。ここでは、例えば、支持部20に支持される基板9の周囲を囲むように、4つの側面整流板50が配置されている。各側面整流板50は、例えば、側壁部12の内面に沿って拡がるように位置している。このため、例えば、4つの側面整流板50は、全体として、基板9を包囲する四角筒状の整流板を形成している。また、例えば、底面整流板40および4つの側面整流板50は、全体として、有底筒状の箱状の整流板を形成している。
【0038】
ここで、例えば、排気部30によるチャンバ10内の減圧時には、チャンバ10の内部空間10sの気体は、側面整流板50と側壁部12との間の空間、底面整流板40と底板部11との間の空間、および排気口16a,16b,16c,16dをこの記載の順に通って、チャンバ10の外部へ排出される。このように、例えば、気体が基板9から離れた空間を流れることで、基板9の近傍に気流が形成され難くなる。そして、基板9の周縁部において集中的な気流の発生が生じ難くなる。これにより、例えば、基板9の上面に形成された塗膜90の乾燥ムラの発生が低減され得る。
【0039】
また、ここで、例えば、図2で示されるように、底面整流板40および4つの側面整流板50によって形成される箱状の整流板は、上面視において正方形状の形状を有する。そして、この箱状の整流板の上面視における各辺の長さは、長方形状の基板9の長辺および短辺のいずれよりも長い。このため、例えば、支持部20上に配置される基板9の向きに拘わらず、排気部30によるチャンバ10内の減圧時において、内部空間10sにおける気体の流れが一様となり、基板9の向きによって内部空間10sにおける気体の流れが異なり難くなる。
【0040】
また、ここで、例えば、図2で示されるように、上面視において、4つの排気口16a,16b,16c,16dが、いずれも正方形状の底面整流板40の対角線41上に位置している構成が採用される。この場合には、例えば、各排気口16a,16b,16c,16dによって、底面整流板40の中央(2本の対角線41の交点)に対して対称な気流が形成され得る。これにより、例えば、チャンバ10の内部空間10sにおいて、より均一な気流が形成され得る。
【0041】
また、ここで、例えば、4つの側面整流板50のうちの3つの側面整流板50は、チャンバ10の側壁部12に固定されている。ただし、4つの側面整流板50のうちの残りの1つの側面整流板50は、例えば、チャンバ10と外部との間における基板9の搬入および搬出の経路を確保するために、側壁部12および底面整流板40に対して移動可能となっていてもよい。この場合には、この1つの側面整流板50は、例えば、ゲート部15とともに移動するように構成されてもよい。これにより、例えば、ゲート部15が閉鎖位置から開放位置へ移動すると、この1つの側面整流板50も移動し、チャンバ10と外部との間における基板9の搬入および搬出の経路が確保され得る。ここでは、例えば、移動可能な側面整流板50が、正規の位置(上述した箱状の整流板を構成する位置)に配置される際に、他の側面整流板50および底面整流板40とは非接触であれば、移動可能な側面整流板50と、他の側面整流板50および底面整流板40とが摺接しない。これにより、例えば、部材の摺接による粉塵の発生が生じ難い。一方で、例えば、移動可能な側面整流板50と、他の側面整流板50および底面整流板40とを互いに接触させた状態で箱状の整流板が構成されれば、箱状の整流板に隙間が生じ難い。この場合には、例えば、排気部30によるチャンバ10内の減圧時に、内部空間10sにおける気体の流れがより規制され得る。
【0042】
給気部60は、チャンバ10内に気体を供給する動作(給気ともいう)を行う部分である。給気部60には、例えば、排気部30による排気によって圧力が低下したチャンバ10の内部空間10sに気体を供給して、チャンバ10内の圧力を大気圧に戻すための機構が適用される。図1で示されるように、チャンバ10の底板部11には、例えば、給気口16fが設けられている。給気口16fは、例えば、底面整流板40の下方に位置している。給気部60は、給気口16fに接続された給気配管61と、給気バルブVfと、給気源62と、を有する。例えば、給気配管61の一端は、給気口16fに接続している。例えば、給気配管61の他端は、給気源62に接続している。例えば、給気バルブVfは、給気配管61の経路上に設けられている。
【0043】
ここで、例えば、給気バルブVfを開放すると、給気源62から給気配管61および給気口16fを介して、チャンバ10の内部空間10sに気体が供給される。これにより、チャンバ10内の気圧を上昇させることができる。給気源62から供給される気体は、例えば、窒素ガス等の不活性ガスであってもよいし、クリーンドライエアであってもよい。クリーンドライエアは、例えば、一般的な環境における空気に対してパーティクルおよび水分を除去する清浄化を施すことで準備され得る。
【0044】
圧力計70は、チャンバ10の内部空間10sの気圧を計測するセンサである。図1で示されるように、例えば、圧力計70は、チャンバ10の一部分に取り付けられている。圧力計70は、例えば、チャンバ10の内部空間10sの気圧を計測し、その計測結果を、制御部80へ出力することができる。
【0045】
制御部80は、減圧乾燥装置1の各部の動作を制御するためのユニットである。例えば、制御部80は、排気部30、給気部60および昇降部100等を制御することができる。制御部80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ801、RAM(Random Access Memory)等のメモリ802、およびハードディスクドライブ等の記憶部803を有するコンピュータによって構成されている。記憶部803には、例えば、減圧乾燥装置1において基板9上の塗膜90を減圧によって乾燥させる処理(減圧乾燥処理ともいう)を実行させるためのコンピュータプログラム(プログラムともいう)803pおよび各種のデータが記憶されている。記憶部803は、例えば、プログラム803pを記憶し、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記憶媒体としての役割を有する。制御部80は、例えば、記憶部803からメモリ802にプログラム803pおよびデータを読み出して、プロセッサ801においてプログラム803pおよびデータに従った演算処理を行うことで、減圧乾燥装置1の各部の動作を制御する。このため、例えば、プログラム803pは、減圧乾燥装置1において制御部80に含まれるプロセッサ801によって実行されることで、減圧乾燥処理を実行させることができる。
【0046】
また、制御部80には、例えば、入力部804、出力部805、通信部806およびドライブ807が接続されていてもよい。入力部804は、例えば、ユーザの動作等に応答して各種の信号を制御部80に入力する部分である。入力部804には、例えば、ユーザの操作に応じた信号を入力する操作部、ユーザの音声に応じた信号を入力するマイク、およびユーザの動きに応じた信号を入力する各種センサ等が含まれ得る。出力部805は、例えば、各種の情報をユーザが認識可能な態様で出力する部分である。出力部805には、例えば、表示部、プロジェクタ、およびスピーカ等が含まれ得る。表示部は、入力部804と一体化されたタッチパネルであってもよい。通信部806は、例えば、有線もしくは無線の通信手段等によってサーバ等の外部の装置との間で各種の情報の送受信を行う部分である。例えば、通信部806によって外部の装置から受信したプログラム803pが記憶部803に記憶されてもよい。ドライブ807は、例えば、磁気ディスクまたは光ディスク等の可搬性の記憶媒体807mの着脱が可能な部分である。このドライブ807は、例えば、記憶媒体807mが装着されている状態で、この記憶媒体807mと制御部80との間におけるデータの授受を行う。例えば、プログラム803pが記憶された記憶媒体807mがドライブ807に装着されることで、記憶媒体807mから記憶部803内にプログラム803pが読み込まれて記憶されてもよい。ここでは、記憶媒体807mは、例えば、プログラム803pを記憶し、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記憶媒体としての役割を有する。
【0047】
図6は、制御部80において実現される機能を概念的に示したブロック図である。図6で示されるように、制御部80は、例えば、開閉駆動部16、昇降部100、4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vd、主バルブVe、真空ポンプ32、給気バルブVf、および圧力計70と、それぞれ電気的に接続されている。制御部80は、例えば、圧力計70から出力される計測値を参照しつつ、上記各部の動作を制御することができる。
【0048】
図6で概念的に示したように、制御部80は、実現される機能的な構成として、例えば、開閉制御部81、昇降制御部82、切替制御部83、排気制御部84、ポンプ制御部85、および給気制御部86を有する。例えば、開閉制御部81は、開閉駆動部16の動作を制御する。例えば、昇降制御部82は、昇降部100の動作を制御する。例えば、切替制御部83は、4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdの開閉状態を個別に制御する。例えば、排気制御部84は、主バルブVeの開閉状態および開度を制御する。例えば、ポンプ制御部85は、真空ポンプ32の動作を制御する。例えば、給気制御部86は、給気バルブVfの開閉状態を制御する。制御部80における各部の機能は、例えば、上述したプログラム803p等に従った演算処理をプロセッサ801が行うことで実現される。
【0049】
<2.減圧乾燥処理>
次に、減圧乾燥装置1を用いた基板9の減圧乾燥処理について説明する。図7は、一実施形態に係る減圧乾燥処理の流れの一例を示す流れ図である。この減圧乾燥処理のフローは、例えば、制御部80に含まれるプロセッサ801においてプログラム803pが実行されることで実現される。ここでは、例えば、図7のステップS1からステップS10の処理がこの記載の順に行われる。
【0050】
減圧乾燥装置1を用いて減圧乾燥処理を行う際には、例えば、まず、基板9をチャンバ10内に搬入する(ステップS1)。このとき、基板9の上面には、未乾燥の塗膜90が形成されている状態にある。ステップS1では、例えば、まず、開閉制御部81が、開閉駆動部16を動作させて、ゲート部15を閉鎖位置から開放位置へ移動させることで、搬入出口14を開放する。そして、例えば、図示を省略した搬送ロボットが、フォーク状のハンドに基板9を載置しつつ、チャンバ10の搬入出口14を介して、チャンバ10の内部空間10sへ基板9を搬入する。この時点では、支持部20は、例えば、下降位置H1に配置されている。搬送ロボットは、例えば、支持部20の複数の支持プレート21の間へフォーク状のハンドを挿入しつつ、支持部20上に基板9を載置する。支持部20上に基板9が載置されると、搬送ロボットは、チャンバ10の外部へ退避する。そして、例えば、開閉制御部81が、再び開閉駆動部16を動作させて、ゲート部15を開放位置から閉鎖位置へ移動させることで、搬入出口14を閉鎖する。これにより、チャンバ10の内部空間10sに基板9が収容される。
【0051】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、支持部20を繰り返し昇降させる動作を開始する(ステップS2)。ここでは、例えば、昇降制御部82が、昇降部100によって、支持部20を繰り返し昇降させる動作を開始させる。このとき、例えば、支持部20が、上下方向において下降位置H1と上昇位置H2との間で昇降し始める。これにより、例えば、支持部20上に載置されている基板9が上下方向に昇降し始める。その結果、例えば、基板9の上面と、チャンバ10の天板部13との距離が、長い状態と短い状態との間で繰り返し変更される。ここでは、支持部20を昇降させる周期(サイクル)は、例えば、数秒程度に設定される。下降位置H1と上昇位置H2との間の距離は、例えば、10ミリメートル(mm)から100mm程度に設定される。
【0052】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、チャンバ10内からの排気を始める(ステップS3)。これにより、例えば、制御部80が、チャンバ10内において支持部20によって基板9が下方から支持された状態で、排気部30によってチャンバ10内の雰囲気を排出させる工程(排気工程ともいう)を実行させる。このとき、例えば、制御部80が、排気工程を実行させている際に、昇降部100によって支持部20を繰り返し昇降させる工程(第1昇降工程ともいう)を実行させている状態となる。換言すれば、制御部80は、例えば、排気部30による排気が行われている際に、支持部20を繰り返し昇降させるように昇降部100を制御する。
【0053】
ここでは、例えば、ポンプ制御部85が、真空ポンプ32の動作を開始させ、切替制御部83が、複数の個別バルブVa,Vb,Vc,Vdの少なくとも一部を開放するとともに、排気制御部84が、主バルブVeを開放させる。これにより、例えば、チャンバ10の内部空間10sから排気配管31への気体の排出が開始され、チャンバ10内の気圧が、大気圧から低下し始める。
【0054】
ここでは、例えば、チャンバ10内からの排気時に、支持部20の昇降が繰り返されることで、基板9の上面とチャンバ10の天板部13との間の空間が、縮小された状態と拡大された状態との間で繰り返し変更される。このとき、例えば、チャンバ10内に気流の乱れが生じる。これにより、例えば、塗膜90上において継続的な特定のパターンの気流(第1定常流ともいう)が発生する現象が生じ難くなる。その結果、例えば、塗膜90において場所に応じた乾燥速度の違いが生じ難くなり、塗膜90のうちの特定の箇所に筋状の乾燥ムラが生じる不具合が生じ難くなる。
【0055】
また、例えば、仮に複数の支持ピン22の存在によって基板9に温度差が生じても、基板9のうちの支持ピン22で支持された部分の直上における塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度と、その周辺における塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度との差が、気流の乱れによる撹拌作用によって低減され得る。換言すれば、例えば、塗膜90上において塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度が偏り難くなる。その結果、例えば、塗膜90のうちの支持ピン22の位置に応じた箇所に乾燥ムラが生じる不具合が生じ難くなる。
【0056】
また、例えば、基板9のうちの塗布領域A1の中央部の直上における塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度と、塗布領域A1の端部の直上における塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度との差が、気流の乱れによる撹拌作用によって低減され得る。換言すれば、例えば、塗膜90上において塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度が偏り難くなる。その結果、例えば、塗膜90のうちの塗布領域A1の形状に応じた箇所に乾燥ムラが生じる不具合が生じ難くなる。
【0057】
したがって、例えば、排気部30によってチャンバ10内からの排気が行われている際に、支持部20を繰り返し昇降させると、基板9の上面に形成された塗膜90がより均一に乾燥され得る。
【0058】
なお、例えば、排気部30による排気が行われている際に、排気制御部84によって主バルブVeの開度が適宜変更されてもよいし、切替制御部83によって4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdの開閉状態が順に切り替えられてもよい。
【0059】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、チャンバ10の内部空間10sが所定の真空度まで到達したか否か判定する(ステップS4)。ここでは、例えば、制御部80が、圧力計70による計測結果に応じて、チャンバ10の内部空間10sが所定の真空度に対応する所定の圧力まで低下したか否か判定する。例えば、内部空間10sが所定の真空度に到達するまで、ステップS4の判定が繰り返される。そして、内部空間10sが所定の真空度まで到達すると、減圧乾燥装置1は、チャンバ10内からの排気を終了する(ステップS5)。ここでは、例えば、排気制御部84が、主バルブVeを閉鎖させるとともに、ポンプ制御部85が、真空ポンプ32の動作を終了させる。これにより、例えば、チャンバ10の内部空間10sから排気配管31への気体の排出が終了される。ここで、例えば、排気の開始から終了までの時間は、例えば、300秒から500秒程度となり得る。
【0060】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、チャンバ10内への給気を始める(ステップS6)。これにより、例えば、制御部80が、排気工程の後に、チャンバ10内において支持部20によって基板9が下方から支持された状態で、給気部60によってチャンバ10内に気体を供給させる工程(給気工程ともいう)を実行させる。このとき、例えば、制御部80が、給気工程を実行させている際に、昇降部100によって支持部20を繰り返し昇降させる工程(第2昇降工程ともいう)を実行させている状態となる。換言すれば、制御部80は、例えば、給気部60による給気が行われている際に、支持部20を繰り返し昇降させるように昇降部100を制御する。
【0061】
ここでは、例えば、給気制御部86が、給気バルブVfを開放させる。これにより、例えば、給気源62から給気配管61および給気口16fを通ってチャンバ10の内部空間10sへ気体が供給され始める。このとき、チャンバ10内の気圧が、大気圧へ向けて上昇し始める。この給気工程では、例えば、チャンバ10内には、比較的強い気流が発生し得る。これに対して、例えば、塗膜90が十分に乾燥されていない半乾きの状態にある場合がある。
【0062】
ここでは、例えば、チャンバ10内への給気時に、支持部20の昇降が繰り返されることで、基板9の上面とチャンバ10の天板部13との間の空間が、縮小された状態と拡大された状態との間で繰り返し変更される。このとき、例えば、チャンバ10内に気流の乱れが生じる。これにより、例えば、塗膜90上において継続的な特定のパターンの気流(第2定常流ともいう)が発生する現象が生じ難くなる。その結果、例えば、塗膜90において場所に応じた乾燥速度の違いが生じ難くなり、塗膜90のうちの特定の箇所に筋状の乾燥ムラが生じる不具合が生じ難くなる。
【0063】
また、例えば、仮に複数の支持ピン22の存在によって基板9に温度差が生じても、基板9のうちの支持ピン22で支持された部分の直上における塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度と、その周辺における塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度との差が、気流の乱れによる撹拌作用によって低減され得る。換言すれば、例えば、塗膜90上において塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度が偏り難くなる。その結果、例えば、塗膜90のうちの支持ピン22の位置に応じた箇所に乾燥ムラが生じる不具合が生じ難くなる。
【0064】
また、例えば、基板9のうちの塗布領域A1の中央部の直上における塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度と、塗布領域A1の端部の直上における塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度との差が、気流の乱れによる撹拌作用によって低減され得る。換言すれば、例えば、塗膜90上において塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度が偏り難くなる。その結果、例えば、塗膜90のうちの塗布領域A1の形状に応じた箇所に乾燥ムラが生じる不具合が生じ難くなる。
【0065】
したがって、例えば、給気部60によってチャンバ10内への給気が行われている際に、支持部20を繰り返し昇降させると、基板9の上面に形成された塗膜90がより均一に乾燥され得る。
【0066】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、チャンバ10の内部空間10sが大気圧まで到達したか否か判定する(ステップS7)。ここでは、例えば、制御部80が、圧力計70による計測結果に応じて、チャンバ10の内部空間10sが大気圧まで到達したか否か判定する。例えば、内部空間10sが大気圧に到達するまで、ステップS7の判定が繰り返される。そして、内部空間10sが大気圧に到達すると、減圧乾燥装置1は、チャンバ10内への給気を終了する(ステップS8)。ここでは、例えば、給気制御部86が、給気バルブVfを閉鎖させる。これにより、例えば、給気源62から給気配管61および給気口16fを介したチャンバ10の内部空間10sへの気体の供給が終了される。ここで、例えば、給気の開始から終了までの時間は、例えば、50秒から150秒程度となり得る。
【0067】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、支持部20を繰り返し昇降させる動作を終了する(ステップS9)。ここでは、例えば、昇降制御部82が、昇降部100によって支持部20を繰り返し昇降させる動作を終了させる。このとき、例えば、支持部20が、下降位置H1に配置されている状態で、支持部20の昇降が停止される。
【0068】
そして、例えば、最後に、基板9をチャンバ10内から搬出する(ステップS10)。ステップS10では、例えば、まず、開閉制御部81が、開閉駆動部16を動作させて、ゲート部15を閉鎖位置から開放位置へ移動させることで、搬入出口14を開放する。そして、例えば、図示を省略した搬送ロボットが、支持部20に載置された乾燥済みの基板9を、チャンバ10の搬入出口14を介して、チャンバ10の外部へ搬出する。これにより、1枚の基板9に対する減圧乾燥処理が終了し得る。
【0069】
このように、減圧乾燥装置1を用いて基板9の上面に形成された塗膜90を乾燥させる方法(減圧乾燥方法ともいう)は、例えば、排気工程と、給気工程と、第1昇降工程および第2昇降工程と、を有する。別の観点から言えば、減圧乾燥装置1を用いた減圧乾燥方法は、例えば、排気工程と、給気工程と、第1昇降工程および第2昇降工程を含む、昇降部100によって支持部20を繰り返し昇降させる工程(昇降工程ともいう)と、を有する。換言すれば、制御部80は、例えば、排気部30による排気および給気部60による給気のそれぞれが行われている際に、支持部20を繰り返し昇降させるように昇降部100を制御する。
【0070】
以上のように、一実施形態に係る減圧乾燥装置1では、例えば、チャンバ10内の雰囲気の排出およびチャンバ10内への気体の供給のそれぞれが行われている際に、基板9を繰り返して昇降させる。これにより、例えば、チャンバ10内の排気時にもチャンバ10内への給気時にも、チャンバ10内において、気流の乱れを生じさせることができる。その結果、チャンバ10内の排気時にもチャンバ10内への給気時にも、基板9の上方に継続的な特定のパターンの気流が生じ難くなるとともに、塗膜90上において塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度が偏り難くなる。したがって、例えば、基板9の上面に形成された塗膜90がより均一に乾燥され得る。
【0071】
<3.変形例>
本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0072】
上記一実施形態では、例えば、制御部80は、排気部30による排気および給気部60による給気のうちの少なくとも一方が行われている際に、支持部20を繰り返し昇降させるように昇降部100を制御してもよい。換言すれば、減圧乾燥装置1を用いて減圧乾燥処理を行う際には、制御部80は、排気工程を実行させている際に昇降部100によって支持部20を繰り返し昇降させる工程(第1昇降工程)、および給気工程を実行させている際に昇降部100によって支持部20を繰り返し昇降させる工程(第2昇降工程)のうちの少なくとも一方を実行させてもよい。さらに換言すれば、例えば、減圧乾燥装置1を用いた減圧乾燥方法は、排気工程と、給気工程と、第1昇降工程と、を有していてもよいし、排気工程と、給気工程と、第2昇降工程と、を有していてもよい。別の観点から言えば、減圧乾燥装置1を用いた減圧乾燥方法は、例えば、排気工程と、給気工程と、排気工程および給気工程のうちの少なくとも一方の工程が実行されている際に、昇降部100によって支持部20を繰り返し昇降させる工程としての昇降工程と、を有していてもよい。換言すれば、昇降工程は、例えば、第1昇降工程および第2昇降工程のうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0073】
ここでは、例えば、チャンバ10内の雰囲気の排出およびチャンバ10内への気体の供給のうちの少なくとも一方が行われている際に、基板9を繰り返して昇降させることができる。これにより、例えば、排気時および給気時のうちの少なくとも一方において、チャンバ10内に気流の乱れを生じさせることができる。その結果、例えば、排気時および給気時のうちの少なくとも一方において、チャンバ10内では、継続的な特定のパターンの気流が生じ難くなるとともに、塗膜90上において塗膜90から蒸発した溶剤の成分の濃度が偏り難くなる。したがって、例えば、基板9の上面に形成された塗膜90がより均一に乾燥され得る。
【0074】
ここで、第1昇降工程および第2昇降工程のうちの第1昇降工程を実行させる減圧乾燥処理の一例について説明する。図8は、一変形例に係る減圧乾燥処理の流れの一例を示す流れ図である。この減圧乾燥処理のフローは、例えば、制御部80に含まれるプロセッサ801においてプログラム803pが実行されることで実現される。ここでは、例えば、図8のステップSa1からステップSa10の処理がこの記載の順に行われる。
【0075】
まず、基板9をチャンバ10内に搬入する(ステップSa1)。ここでは、例えば、上述したステップS1と同様な動作が行われる。
【0076】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、支持部20を繰り返し昇降させる動作を開始する(ステップSa2)。ここでは、例えば、上述したステップS2と同様な動作が行われる。
【0077】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、チャンバ10内からの排気を始める(ステップSa3)。ここでは、例えば、上述したステップS3と同様な動作が行われる。
【0078】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、チャンバ10の内部空間10sが所定の真空度まで到達したか否か判定する(ステップSa4)。ここでは、例えば、上述したステップS4と同様な動作が行われる。ここで、例えば、内部空間10sが所定の真空度に到達するまで、ステップSa4の判定が繰り返され、内部空間10sが所定の真空度まで到達すると、減圧乾燥装置1は、チャンバ10内からの排気を終了する(ステップSa5)。ここでは、例えば、上述したステップS5と同様な動作が行われる。
【0079】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、支持部20を繰り返し昇降させる動作を終了する(ステップSa6)。ここでは、例えば、上述したステップS9と同様な動作が行われる。
【0080】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、チャンバ10内への給気を始める(ステップSa7)。ここでは、例えば、上述したステップS6と同様な動作が行われる。
【0081】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、チャンバ10の内部空間10sが大気圧まで到達したか否か判定する(ステップSa8)。ここでは、例えば、上述したステップS7と同様な動作が行われる。ここで、例えば、内部空間10sが大気圧に到達すると、減圧乾燥装置1は、チャンバ10内への給気を終了する(ステップSa9)。ここでは、例えば、上述したステップS8と同様な動作が行われる。
【0082】
そして、例えば、最後に、基板9をチャンバ10内から搬出する(ステップSa10)。ここでは、例えば、上述したステップS10と同様な動作が行われる。
【0083】
また、ここで、第1昇降工程および第2昇降工程のうちの第2昇降工程を実行させる減圧乾燥処理の一例について説明する。図9は、一変形例に係る減圧乾燥処理の流れの一例を示す流れ図である。この減圧乾燥処理のフローは、例えば、制御部80に含まれるプロセッサ801においてプログラム803pが実行されることで実現される。ここでは、例えば、図9のステップSb1からステップSb10の処理がこの記載の順に行われる。
【0084】
まず、基板9をチャンバ10内に搬入する(ステップSb1)。ここでは、例えば、上述したステップS1およびステップSa1と同様な動作が行われる。
【0085】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、チャンバ10内からの排気を始める(ステップSb2)。ここでは、例えば、上述したステップS3およびステップSa3と同様な動作が行われる。
【0086】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、チャンバ10の内部空間10sが所定の真空度まで到達したか否か判定する(ステップSb3)。ここでは、例えば、上述したステップS4およびステップSa4と同様な動作が行われる。ここで、例えば、内部空間10sが所定の真空度に到達するまで、ステップSb3の判定が繰り返され、内部空間10sが所定の真空度まで到達すると、減圧乾燥装置1は、チャンバ10内からの排気を終了する(ステップSb4)。ここでは、例えば、上述したステップS5およびステップSa5と同様な動作が行われる。
【0087】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、支持部20を繰り返し昇降させる動作を開始する(ステップSb5)。ここでは、例えば、上述したステップS2およびステップSa2と同様な動作が行われる。
【0088】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、チャンバ10内への給気を始める(ステップSb6)。ここでは、例えば、上述したステップS6およびステップSa7と同様な動作が行われる。
【0089】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、チャンバ10の内部空間10sが大気圧まで到達したか否か判定する(ステップSb7)。ここでは、例えば、上述したステップS7およびステップSa8と同様な動作が行われる。ここで、例えば、内部空間10sが大気圧に到達すると、減圧乾燥装置1は、チャンバ10内への給気を終了する(ステップSb8)。ここでは、例えば、上述したステップS8およびステップSa9と同様な動作が行われる。
【0090】
次に、例えば、減圧乾燥装置1は、支持部20を繰り返し昇降させる動作を終了する(ステップSb9)。ここでは、例えば、上述したステップS9およびステップSa6と同様な動作が行われる。
【0091】
そして、例えば、最後に、基板9をチャンバ10内から搬出する(ステップSb10)。ここでは、例えば、上述したステップS10およびステップSa10と同様な動作が行われる。
【0092】
上記一実施形態では、例えば、制御部80は、排気部30による排気が行われている期間のうちの一部の期間において、支持部20を繰り返し昇降させるように昇降部100を制御してもよい。また、例えば、制御部80は、給気部60による給気が行われている期間のうちの一部の期間において、支持部20を繰り返し昇降させるように昇降部100を制御してもよい。換言すれば、減圧乾燥装置1を用いて減圧乾燥処理を行う際には、例えば、排気工程が実行されている期間のうちの一部の期間において第1昇降工程が実行されてもよいし、給気工程が実行されている期間のうちの一部の期間において第2昇降工程が実行されてもよい。ここでは、例えば、排気工程の実行が開始された後に、第1昇降工程の実行が開始されてもよいし、排気工程の実行が終了される前に、第1昇降工程の実行が終了されてもよい。また、例えば、給気工程の実行が開始された後に、第2昇降工程の実行が開始されてもよいし、給気工程の実行が終了される前に、第2昇降工程の実行が終了されてもよい。
【0093】
上記一実施形態では、例えば、チャンバ10が、4つの排気口16a,16b,16c,16dを有していたが、これに限られない。例えば、チャンバ10が有する排気口の数は、1つから3つおよび5つ以上の何れであってもよい。また、例えば、個別バルブVa,Vb,Vc,Vdは、なくてもよい。
【0094】
上記一実施形態では、減圧乾燥装置1は、基板9上の塗膜90を、減圧によって乾燥させるものであったが、これに限られない。例えば、減圧乾燥装置1は、減圧および加熱によって、基板9上の塗膜90を乾燥させるものであってもよい。
【0095】
上記一実施形態では、チャンバ10の側壁部12に、基板9の搬入出口14が設けられていたが、これに限られない。例えば、チャンバ10の4つの側壁部12および天板部13が一体の蓋部10lを構成しており、この蓋部10lが底板部11から分離して上方へ退避することができる構造が採用されてもよい。図10は、一変形例に係る減圧乾燥装置1の縦断面の一例を模式的に示す図である。ここでは、例えば、図10で示されるように、蓋部10lが、Oリング等のシール材10b介して底板部11に接触している状態にあれば、チャンバ10の内部空間10sが閉鎖された状態にある。ここで、例えば、開閉駆動部16によって、蓋部10lが上方に移動されることで、底板部11から上方へ分離し、チャンバ10の内部空間10sが開放される。このとき、例えば、チャンバ10の内部空間10sへの基板9の搬入およびチャンバ10の内部空間10sからの基板9の搬出を行うことができる。また、例えば、開閉駆動部16によって、蓋部10lが下方に移動されることで、この蓋部10lが、底板部11上のシール材10bに押し付けられることで、チャンバ10の内部空間10sが閉鎖される。また、ここでは、例えば、4つの側面整流板50は、蓋部10lに固定され、蓋部10lとともに上方へ移動可能であってもよい。このような構成が採用される場合には、例えば、内部空間10sを小さくすることが容易であり、排気の開始から終了までの時間は、60秒から100秒程度となり、給気の開始から終了までの時間は、10秒から30秒程度となり得る。
【0096】
上記一実施形態では、例えば、支持部20は種々の形態を有していてもよい。例えば、複数の支持プレート21は、一体的な1つの支持プレート21であってもよい。
【0097】
上記一実施形態では、例えば、底面整流板40がなくてもよいし、側面整流板50がなくてもよい。
【0098】
上記一実施形態では、例えば、減圧乾燥装置1における各種の動作は、例えば、入力部804に対するユーザの動作もしくは通信部806に対して外部の装置から入力された信号等に応答して、開始あるいは終了されてもよい。
【0099】
上記一実施形態では、例えば、制御部80において、実現される機能的な構成の少なくとも一部が、専用の電子回路等のハードウェアで構成されていてもよい。
【0100】
なお、上記一実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0101】
1 減圧乾燥装置
10 チャンバ
10s 内部空間
20 支持部
30 排気部
60 給気部
80 制御部
801 プロセッサ
803 記憶部
803p プログラム
807m 記憶媒体
9 基板
90 塗膜
100 昇降部
F1 第1面(上面)
F2 第2面(下面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10