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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/64 20060101AFI20231108BHJP
   H01R 13/631 20060101ALI20231108BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R13/631
H01R13/52 301H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021171079
(22)【出願日】2021-10-19
(65)【公開番号】P2023061221
(43)【公開日】2023-05-01
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 慧
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-521485(JP,A)
【文献】特開2017-216178(JP,A)
【文献】特開2012-248415(JP,A)
【文献】特開2012-169220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/64
H01R 13/631
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具と、前記端子金具に繋がる電線と、前記端子金具を収容し且つ相手側コネクタとの嵌合箇所を構成する第1ハウジングと、前記第1ハウジングの外周を取り囲むように配置されるシール部材と、前記シール部材の前記第1ハウジングからの抜け止めを行うように前記第1ハウジングに装着されるフロントホルダと、前記相手側コネクタとの嵌合状態を検知するためのショート端子を有する第2ハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記第2ハウジングは、
前記ショート端子を前記相手側コネクタに向けた姿勢にて、前記相手側コネクタとの嵌合方向に交差する向きに変位可能な状態にて、前記第1ハウジングに組み付けられ、且つ、前記フロントホルダによって抜け止めされる、
コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記第2ハウジングは、
前記相手側コネクタから離れる向きに突出する突起部を有し、
前記第1ハウジングは、
前記突起部が差し込まれる凹部を有し、
前記突起部と前記凹部の内壁との間に変位用隙間があることにより、前記第2ハウジングが前記嵌合方向に交差する向きに変位可能である、
コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコネクタであって、
前記第2ハウジングは、
前記第1ハウジングの前記嵌合箇所に組み付けられる、
コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側コネクタとの嵌合状態を検知可能なコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インバータ等の機器に接続されることになる板状の端子金具をハウジングに収容したコネクタが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。このようなコネクタは、一般に、高圧コネクタと呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-187918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の高圧コネクタのようなコネクタには、安全性の観点等から、コネクタと相手側コネクタとの嵌合状態を検知するための工夫が施される場合がある。例えば、U字形状の小型の端子金具(いわゆるショート端子)をハウジングに埋め込んでおき、嵌合時に相手側コネクタ内の一対の電極にショート端子を接触させてショート回路を構成することで、嵌合状態を検知できる。しかし、コネクタの製造公差等に起因してショート端子と相手側コネクタの電極との過度な位置ズレが生じると、嵌合自体は適正になされても、ショート端子を相手側コネクタの電極に接続させ難くなる可能性がある。
【0005】
本発明の目的の一つは、ショート端子の位置合わせが容易なコネクタの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、以下を特徴としている。
【0007】
端子金具と、前記端子金具に繋がる電線と、前記端子金具を収容し且つ相手側コネクタとの嵌合箇所を構成する第1ハウジングと、前記第1ハウジングの外周を取り囲むように配置されるシール部材と、前記シール部材の前記第1ハウジングからの抜け止めを行うように前記第1ハウジングに装着されるフロントホルダと、前記相手側コネクタとの嵌合状態を検知するためのショート端子を有する第2ハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記第2ハウジングは、
前記ショート端子を前記相手側コネクタに向けた姿勢にて、前記相手側コネクタとの嵌合方向に交差する向きに変位可能な状態にて、前記第1ハウジングに組み付けられ、且つ、前記フロントホルダによって抜け止めされる、
コネクタであること。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコネクタによれば、相手側コネクタとの嵌合箇所を構成する第1ハウジングとは別に、ショート端子を有する第2ハウジングを、第1ハウジングに組み付ける。第2ハウジングは、ショート端子を相手側コネクタに向けた姿勢にて、相手側コネクタとの嵌合方向に交差する向きに変位可能な状態にて、第1ハウジングに組み付けられる。よって、第2ハウジングの変位によって製造公差等による位置ズレを吸収できる。したがって、本構成のコネクタは、ショート端子をハウジング埋め込む構造のコネクタに比べ、ショート端子の位置合わせが容易である。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すコネクタの分解斜視図である。
図3図3は、図2に示す第2ハウジングとショート端子とを示す。
図4図4は、第2ハウジングの側面図である。
図5図5は、第2ハウジングの上面図である。
図6図6は、図1に示すコネクタの下面図である(電線の図示は省略)。
図7図7は、図6のA-A断面図である。
図8図8は、図6のB-B断面図である。
図9図9は、図8のC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタ1について説明する。図1に示すコネクタ1は、コネクタ1が有する一対の電線20と、コネクタ1に嵌合される相手側コネクタ(図示省略)と、を電気的に接続する中継コネクタとして機能する。コネクタ1は、相手側コネクタとの嵌合状態を検知するショート端子90(図1及び図3等参照)を備えている。ショート端子90の具体的な機能については後述する。
【0012】
以下、説明の便宜上、図1等に示すように、「前後方向」、「上下方向」及び「幅方向」を定義する。「前後方向」、「上下方向」及び「幅方向」は、互いに直交している。前後方向は、コネクタ1と相手側コネクタとの嵌合方向と一致しており、「前」及び「後」はそれぞれ、コネクタ1における相手側コネクタとの嵌合の進行側及び退行側に対応している。
【0013】
図1及び図2に示すように、コネクタ1は、一対の端子金具10と、一対の端子金具10に繋がる一対の電線20と、一対の端子金具10を収容する第1ハウジング30と、第1ハウジング30に後側から装着されるシールドシェル40と、シールドシェル40及び一対の電線20を覆うブーツ50と、第1ハウジング30に前側から装着されるパッキン60、フロントホルダ70及び第2ハウジング80と、第2ハウジング80に装着されるショート端子90と、を備える。以下、コネクタ1を構成する各部材について順に説明する。
【0014】
まず、端子金具10及び電線20について説明する。端子金具10は、金属板に対してプレス加工及び曲げ加工等を施すことで形成されており、前後方向に延びる形状を有している。端子金具10は、前後方向に延びる細長い平板状の端子部11(図1図2及び図8等参照)と、端子部11の後端部に位置する接続部12(図8参照)と、を一体に有する。接続部12には、電線20の端部が接続される。
【0015】
電線20は、図8に示すように、金属製の導体芯線21と、導体芯線21を覆う絶縁被覆22とで構成されている。電線20の端部では、絶縁被覆22が除去されて導体芯線21が露出しており、露出した導体芯線21に端子金具10の接続部12が加締め固定されている。これにより、端子金具10に繋がる電線20が、端子金具10の接続部12から後方に延出している。
【0016】
次いで、第1ハウジング30について説明する。第1ハウジング30は、樹脂成形品である。第1ハウジング30は、図2図7及び図8等に示すように、前後方向に延びる筒状の形状を有しており、前後方向からみて幅方向に長い扁平な形状を有している。第1ハウジング30の前後方向中央部の外周には、全周に亘って径方向外側に突出するフランジ部31が形成されている。第1ハウジング30におけるフランジ部31より前側の部分が、相手側コネクタの筒状の相手側嵌合部(図示省略)に内挿されて嵌合する嵌合部32を構成し、第1ハウジング30におけるフランジ部31より後側の部分が、シールドシェル40に内挿される挿入部33を構成している(図7及び図8参照)。
【0017】
第1ハウジング30の内部には、幅方向に間隔を空けて並ぶ一対の箇所の各々にて、前側から後側に向けて、端子挿通孔34、端子収容室35及びパッキン収容部36が、この順に、且つ、互いに前後方向に連通するように、形成されている。端子挿通孔34の前端は、第1ハウジング30の前端(嵌合部32の前端)に開口し、パッキン収容部36の後端は、第1ハウジング30の後端(挿入部33の後端)に開口している。
【0018】
端子挿通孔34には、端子金具10の端子部11が挿通され、端子収容室35には、端子金具10の接続部12が収容され、パッキン収容部36には、一対の電線20の外周を覆う後述するパッキン93(図8参照)が収容されることになる(図8参照)。
【0019】
第1ハウジング30の嵌合部32における一対の端子挿通孔34の下部には、前方に開口し且つ後方に窪む凹部37が形成されている(図7図9参照)。凹部37には、第2ハウジング80の後述する突起部82(図3等参照)が差し込まれることになる(図7図9参照)。
【0020】
次いで、シールドシェル40について説明する。金属製のシールドシェル40は、図1図2図7及び図8に示すように、第1ハウジング30の挿入部33に外挿可能な前後方向に延びる筒状の形状を有している。シールドシェル40は、第1ハウジング30の挿入部33に後側から装着されて、第1ハウジング30内部に位置する一対の電線20への電磁ノイズの伝達を防止する機能を果たす機能を有する。
【0021】
次いで、ブーツ50について説明する。ゴム製のブーツ50は、図1及び図2に示すように、前後方向に延びる筒状の形状を有し、シールドシェル40の外周を覆う大径部51と、シールドシェル40から後方に延出する一対の電線20の外周を覆う小径部52と、大径部51と小径部52とを連結する繋ぎ部53と、を一体に備える。ブーツ50は、シールドシェル40から後方に延出する一対の電線20を保護する機能を果たす。
【0022】
以上説明した一対の端子金具10、一対の電線20、第1ハウジング30、シールドシェル40及びブーツ50は、コネクタ1の一部であるサブアッセンブリ2(図2参照)を構成する。サブアッセンブリ2の組み付けは、以下の手順で行われる。
【0023】
まず、一対の電線20の端部を、後側から、ブーツ50及びシールドシェル40の中空部にこの順に挿入して、ブーツ50及びシールドシェル40を一対の電線20に挿通させておく。次いで、一対の電線20に、ホルダ94(図7及び図8参照)を挿通させる。樹脂製のホルダ94には、幅方向に間隔を空けて並ぶ一対の貫通孔95(図8参照)が形成されている。一対の電線20の端部を、後側から、一対の貫通孔95に挿入することで、ホルダ94が一対の電線20に挿通される。次いで、一対の電線20の各々に、環状のゴム製のパッキン93(図8参照)を挿通させる。次いで、各電線20の端部における露出した導体芯線21に、端子金具10の接続部12を加締め固定する。
【0024】
次いで、一対の電線20が繋がる一対の端子金具10を、第1ハウジング30に収容させる。このため、各端子金具10が、第1ハウジング30の内部に後側から挿入される。これにより、各端子部11が対応する端子挿通孔34に挿通され、且つ、各接続部12が対応する端子収容室35に収容される。端子金具10の挿入完了状態では、一対の端子部11の前方部分が、第1ハウジング30の前端(嵌合部32の前端)から前方へ突出し(図2参照)、且つ、一対の端子金具10から後方に延出する一対の電線20が、第1ハウジング30の後端(挿入部33の後端)から後方へ延出している。端子金具10の挿入完了状態では、図8に示すように、端子部11に設けられた係止孔11aと端子挿通孔34に設けられた係止突起34aとが係合することで、端子金具10の第1ハウジング30からの後方への抜けが防止される。
【0025】
次いで、一対の電線20に挿通されている一対のパッキン93を、一対の電線20に対して前方へ相対移動させて、第1ハウジング30の一対のパッキン収容部36に収容させると共に、一対の電線20に挿通されているホルダ94を、一対の電線20に対して前方へ相対移動させて、第1ハウジング30の後端(挿入部33の後端)に装着させる。パッキン93の収容完了状態では、パッキン93は、電線20の外周面とパッキン収容部36の内周面との間で押圧挟持されており(図8参照)、電線20とパッキン収容部36との間の隙間を封止する機能を果たす。ホルダ94の装着完了状態では、図8に示すように、ホルダ94に設けられた係止孔96と挿入部33の外周に設けられた係止突起33aとが係合することで、ホルダ94の第1ハウジング30からの後方への脱落が防止される。ホルダ94は、一対のパッキン93の後側に隣接配置されることで、一対のパッキン93の第1ハウジング30からの後側への脱落を防止する機能を果たす。
【0026】
次いで、一対の電線20に挿通されているシールドシェル40を、後側から、第1ハウジング30の挿入部33に装着する。このため、シールドシェル40が、第1ハウジング30の挿入部33に外挿される。シールドシェル40の装着完了状態では、図7に示すように、シールドシェル40に設けられた係止片41と挿入部33の外周に設けられた係止孔33bとが係合することで、シールドシェル40の第1ハウジング30からの後側への脱落を防止する機能を果たす。
【0027】
次いで、一対の電線20に挿通されているブーツ50を、一対の電線20に対して前方へ相対移動させて、ブーツ50の大径部51をシールドシェル40の外周に装着する。これにより、ブーツ50の装着が完了すると共に、サブアッセンブリ2の組み付けが完了し、図2に示すサブアッセンブリ2が得られる。
【0028】
次いで、パッキン60について説明する。ゴム製のパッキン60は、図2に示すように、前後方向に延びる筒状の形状を有しており、前後方向からみて、第1ハウジング30の嵌合部32の外周形状に対応して、幅方向に長い扁平な形状を有している。パッキン60は、前側から、サブアッセンブリ2における嵌合部32の外周に装着される(図1及び図7等参照)。コネクタ1と相手側コネクタとの嵌合により相手側コネクタの筒状の相手側嵌合部が嵌合部32に外挿された状態において、嵌合部32に装着されたパッキン60は、嵌合部32の外周面と相手側嵌合部の内周面との間で押圧挟持される。これにより、嵌合部32と相手側嵌合部との間の隙間を封止する機能を果たす。
【0029】
次いで、第2ハウジング80及びショート端子90について説明する。第2ハウジング80は、樹脂成形品であり、相手側コネクタとの嵌合状態を検知する機能を果たすショート端子90を保持する機能を果たす。ショート端子90は、図3に示すように、前後方向及び上下方向に延びる平板状の基部91と、基部91の前端の上下端から前方に延びる一対の棒状の端子部92と、を一体に備える。
【0030】
第2ハウジング80は、図3図5に示すように、前後方向に延びる矩形筒状の本体部81を備える。本体部81は、前方に開口する一方で、後方は後壁(図示省略)により塞がれている。コネクタ1と相手側コネクタとの嵌合時、本体部81の内部空間には、相手側コネクタの嵌合検知用嵌合突部(図示省略)が挿入されることになる。
【0031】
本体部81には、本体部81の後壁から後方に突出する突起部82が一体に設けられている。突起部82は、本体部81の後壁の幅方向中央部から後方に突出し且つ上下方向に延びる中央突起部83と、中央突起部83の上下方向中央部から幅方向両側に延び且つ本体部81の後壁から前方に延びる一対の平板部84と、を備える。各平板部84の幅方向外側端縁には、前後方向に延びる片持ち梁状の弾性片85が一体に形成されている。幅方向一方側の弾性片85と、幅方向他方側の弾性片85とは、固定端及び自由端の位置が、前後方向にて互いに逆になっている。各弾性片85の自由端には、下方に突出する突部85aが形成されている。本体部81には、本体部81の後壁から連続して幅方向両側に突出し且つ上下方向に延びる一対の平板状のフランジ部86が形成されている。
【0032】
中央突起部83の内部には、前方に開口し且つ後方に窪む圧入凹部83aが形成されている(図9参照)。圧入凹部83aは、本体部81の内部空間と前後方向に連通している。圧入凹部83aには、前方から、ショート端子90の基部91(図3参照)が圧入される。これにより、ショート端子90は、一対の端子部92が本体部81の後壁から前方に突出して本体部81の内部空間に位置するように、第2ハウジング80に固定される。
【0033】
第2ハウジング80は、前側から、突起部82(中央突起部83+一対の平板部84)が、サブアッセンブリ2における第1ハウジング30の凹部37に挿し込まれることで、第1ハウジング30に装着される(図7図9参照)。突起部82が第1ハウジング30の凹部37に挿し込まれた状態では、図7図9に示すように、突起部82の側面の周囲に隙間Hが存在することで、突起部82(即ち、第2ハウジング80)は、凹部37(即ち、第1ハウジング30)に対して、前後方向に直交する任意の方向に変位可能となっている。突起部82が第1ハウジング30の凹部37に挿し込まれた状態にて、第2ハウジング80を第1ハウジング30に対して下方に移動させると、一対の弾性片85の突部85aが凹部37の底壁と接触する。この状態から、第2ハウジング80を下方に押圧すると、一対の突部85aが凹部37の底壁から受ける上向きの力により一対の弾性片85が上方に弾性変形し、一対の弾性片85による下向きの弾性復元力により、第2ハウジング80が上方に押し返される。
【0034】
次いで、フロントホルダ70について説明する。フロントホルダ70は、パッキン60及び第2ハウジング80の第1ハウジング30からの前側への脱落を防止する機能を果たす。フロントホルダ70は、樹脂成形品であり、図2に示すように、筒状部71を備える。筒状部71は、前後方向に延びる筒状の形状を有しており、前後方向からみて、第1ハウジング30の嵌合部32の外周形状に対応して、幅方向に長い扁平な形状を有している。筒状部71の下部の幅方向中央部には、筒状部71の前端から後方に向けて窪む矩形状切欠き71aが形成されている。切欠き71aは、第2ハウジング80の本体部81とフロントホルダ70との干渉を防止するために設けられている。
【0035】
筒状部71の内部には、筒状部71の前後方向中央より前側に位置にて筒状部71の内部空間を前後に仕切るように延びる平板状の隔壁72が形成されている。隔壁72には、一対の端子金具10の端子部11を挿通させるための幅方向に延びるスリット73(貫通孔)が形成されている。隔壁72には、スリット73の下部の幅方向中央部にて、矩形状の切欠き74が形成されている。切欠き74の上端はスリット73に連通し、切欠き74の下端は切欠き71aに連通している。切欠き74も、切欠き71aと同様、第2ハウジング80の本体部81とフロントホルダ70との干渉を防止するために設けられている。
【0036】
フロントホルダ70は、サブアッセンブリ2にパッキン60及び第2ハウジング80が装着された状態において、前側から、一対の端子金具10の端子部11がスリット73に挿通され、且つ、第2ハウジング80の本体部81が切欠き74を通過するように、嵌合部32の外周に装着される(図1及び図7等参照)。
【0037】
フロントホルダ70の装着完了状態では、一対の端子金具10の端子部11の前方部分、及び、第2ハウジング80の本体部81の前方部分が、フロントホルダ70の隔壁72から前方へ突出している。換言すれば、一対の端子部11、及び、第2ハウジング80に固定されたショート端子90の一対の端子部92が、前方に露出している。フロントホルダ70の装着完了状態では、図7に示すように、嵌合部32の外周に設けられた係止孔32aとフロントホルダ70に設けられた係止突起75とが係合することで、フロントホルダ70の第1ハウジング30からの前方への抜けが防止される。
【0038】
図8から理解できるように、フロントホルダ70の装着完了状態では、筒状部71がパッキン60の前側に隣接配置されることで、パッキン60の第1ハウジング30からの前側への脱落が防止され、且つ、第2ハウジング80の一対のフランジ部86が第1ハウジング30の前端(嵌合部32の前端)とフロントホルダ70の隔壁72とで前後方向に挟持されることで、フロントホルダ70の第1ハウジング30からの前側への脱落が防止される。以上、フロントホルダ70の装着が完了することで、コネクタ1の組み付けが完了し、図1に示すコネクタ1が得られる。以上、コネクタ1を構成する各部材について説明した。
【0039】
コネクタ1の組付完了状態において、上述した隙間H(図7図9参照)の範囲内で第2ハウジング80を第1ハウジング30に対して前後方向に直交する任意の方向に変位させても、第2ハウジング80の本体部81がフロントホルダ70の切欠き71aの縁部及び切欠き74の縁部に干渉しない(図6参照)。即ち、第1ハウジング30の嵌合部32(凹部37)に組み付けられた第2ハウジング80は、ショート端子90の一対の端子部92を相手側コネクタへ向けた姿勢を維持しながら、隙間Hの範囲内で第1ハウジング30に対して前後方向に直交する任意の方向に変位可能となっている。
【0040】
組み付けが完了したコネクタ1は、相手側コネクタと嵌合される。コネクタ1と相手側コネクタとを嵌合させるためには、相手側コネクタの筒状の相手側嵌合部が、コネクタ1の嵌合部32に外挿される。この相手側嵌合部の嵌合部32への外挿に伴い、相手側嵌合部に設けられた嵌合検知用嵌合突部が、第2ハウジング80の本体部81の内部空間に挿入される。嵌合検知用嵌合突部には、ショート端子90の一対の端子部92に対応して、一対のメス端子部(図示諸略)が収容されている。一対のメス端子部は、相手側コネクタに設けられている嵌合検知用信号回路に接続されている。一対のメス端子部がショート端子90の一対の端子部92とそれぞれ接続されていない状態では、嵌合検知用信号回路が遮断されている。
【0041】
コネクタ1と相手側コネクタとの嵌合により、相手側コネクタの嵌合検知用嵌合突部が本体部81の内部空間に挿入されることで、ショート端子90の一対の端子部92と一対のメス端子部とがそれぞれ電気的に接続される。これにより、嵌合検知用信号回路が接続される。このように、嵌合検知用信号回路の遮断から接続への移行を電気的に検知することで、コネクタ1と相手側コネクタとの嵌合が検知される。
【0042】
ここで、上述したように、コネクタ1では、ショート端子90を収容する第2ハウジング80が第1ハウジング30(嵌合部32)に対して隙間Hの範囲内で第1ハウジング30に対して前後方向に直交する任意の方向に変位可能となっている。このため、コネクタ1の製造公差や相手側コネクタの製造公差等に起因して、コネクタ1と相手側コネクタとの嵌合の際に、ショート端子90端子部92と相手側コネクタのメス端子部との位置ズレ(前後方向に直交する方向の位置ズレ)が生じていても、当該位置ズレが消滅する向きに第2ハウジング80が第1ハウジング30(嵌合部32)に対して相対移動することで、当該位置ズレを吸収できる。
【0043】
更に、相手側コネクタに、嵌合検知用信号回路(嵌合検知用嵌合突部や一対のメス端子部を含む)が設けられていない場合、ショート端子90を収容する第2ハウジング80の第1ハウジング30への組み付けを省略するだけで、コネクタ1を構成する他の部材の形状等を何ら変更することなく、コネクタ1を、ショート端子90を備えない構造に変更することができる。
【0044】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るコネクタ1によれば、相手側コネクタとの嵌合箇所(嵌合部32)を構成する第1ハウジング30とは別に、ショート端子90を有する第2ハウジング80を、第1ハウジング30に組み付ける。第2ハウジング80は、ショート端子90を相手側コネクタに向けた姿勢にて、相手側コネクタとの嵌合方向に交差する向きに変位可能な状態にて、第1ハウジング30に組み付けられる。よって、第2ハウジング80の変位によって製造公差等による位置ずれを吸収できる。したがって、本実施形態に係るコネクタ1は、ショート端子90の位置合わせが容易である。
【0045】
更に、第2ハウジング80が有する突起部82が第1ハウジング30の凹部37に差し込まれ、突起部82と凹部37の内壁との間に変位用隙間(隙間H)があることにより、第2ハウジング80が嵌合方向に交差する向きに変位可能になっている。これにより、第2ハウジング80を変位可能に第1ハウジング30に組み付けることができる。
【0046】
更に、第2ハウジング80が第1ハウジング30の嵌合箇所(嵌合部32)に組み付けられることで、第1ハウジング30の他の箇所に組み付ける場合に比べ、コネクタ1を小型化できる。
【0047】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0048】
上記実施形態では、第2ハウジング80の突起部82が第1ハウジング30の凹部37に挿し込まれた状態にて突起部82の側面の周囲に隙間Hが存在することで、第2ハウジング80が第1ハウジング30に対して、前後方向に直交する任意の方向に変位可能となっている。これに対し、第2ハウジング80が第1ハウジング30に対して、前後方向に直交する任意の方向に変位可能である状態が確保される限りにおいて、どのような構造により第2ハウジング80が第1ハウジング30に対して組み付けられていてもよい。
【0049】
更に、上記実施形態では、第2ハウジング80が第1ハウジング30の嵌合箇所(嵌合部32)に組み付けられている。これに対し、第2ハウジング80が第1ハウジング30の嵌合箇所(嵌合部32)以外の箇所に組み付けられていてもよい。
【0050】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0051】
[1]
端子金具(10)と、前記端子金具(10)に繋がる電線(20)と、前記端子金具(10)を収容し且つ相手側コネクタとの嵌合箇所(32)を構成する第1ハウジング(30)と、前記第1ハウジング(30)の外周を取り囲むように配置されるシール部材(60)と、前記シール部材(60)の前記第1ハウジング(30)からの抜け止めを行うように前記第1ハウジング(30)に装着されるフロントホルダ(70)と、前記相手側コネクタとの嵌合状態を検知するためのショート端子(90)を有する第2ハウジング(80)と、を備えるコネクタ(1)であって、
前記第2ハウジング(80)は、
前記ショート端子(90)を前記相手側コネクタに向けた姿勢にて、前記相手側コネクタとの嵌合方向に交差する向きに変位可能な状態にて、前記第1ハウジング(30)に組み付けられ、且つ、前記フロントホルダ(70)によって抜け止めされる、
コネクタ(1)。
【0052】
上記[1]の構成のコネクタによれば、相手側コネクタとの嵌合箇所を構成する第1ハウジングとは別に、ショート端子を有する第2ハウジングを、第1ハウジングに組み付ける。第2ハウジングは、ショート端子を相手側コネクタに向けた姿勢にて、相手側コネクタとの嵌合方向に交差する向きに変位可能な状態にて、第1ハウジングに組み付けられる。よって、第2ハウジングの変位によって製造公差等による位置ずれを吸収できる。したがって、本構成のコネクタは、ショート端子の位置合わせが容易である。
【0053】
[2]
上記[1]に記載のコネクタ(1)であって、
前記第2ハウジング(80)は、
前記相手側コネクタから離れる向きに突出する突起部(82)を有し、
前記第1ハウジング(30)は、
前記突起部(82)が差し込まれる凹部(37)を有し、
前記突起部(82)と前記凹部(37)の内壁との間に変位用隙間(H)があることにより、前記第2ハウジング(80)が前記嵌合方向に交差する向きに変位可能である、
コネクタ(1)。
【0054】
上記[2]の構成のコネクタによれば、第2ハウジングが有する突起部が第1ハウジングの凹部に差し込まれ、突起部と凹部の内壁との間に変位用隙間があることにより、第2ハウジングが嵌合方向に交差する向きに変位可能になっている。これにより、第2ハウジングを変位可能に第1ハウジングに組み付けることができる。
【0055】
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のコネクタ(1)であって、
前記第2ハウジング(80)は、
前記第1ハウジング(30)の前記嵌合箇所(32)に組み付けられる、
コネクタ(1)。
【0056】
上記[3]の構成のコネクタによれば、第2ハウジングが第1ハウジングの嵌合箇所に組み付けられることで、他の箇所に第2ハウジングを組み付ける場合に比べ、コネクタを全体的に小型化できる。
【符号の説明】
【0057】
1 コネクタ
10 端子金具
20 電線
30 第1ハウジング
32 嵌合部(嵌合箇所)
37 凹部
60 パッキン(シール部材)
70 フロントホルダ
80 第2ハウジング
82 突起部
90 ショート端子
H 隙間(変位用隙間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9