(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/09 20120101AFI20231108BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20231108BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20231108BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20231108BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60W30/09
B60W30/10
B60W50/14
B60W60/00
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2021181042
(22)【出願日】2021-11-05
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】梶原 悠吾
(72)【発明者】
【氏名】増掛 佑一
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-149122(JP,A)
【文献】特開2021-014232(JP,A)
【文献】特開2019-026210(JP,A)
【文献】特開2016-045713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00~60/00
G08G 1/00~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺状況を認識する認識部と、
前記自車両の乗員による入力操作を受け付ける入力部と、
前記入力部が前記入力操作を受け付けた場合に、前記自車両を減速して停止させる自動停止制御を行う制御部と、
前記入力部が前記入力操作を受け付けてから前記制御部が前記自動停止制御を開始するまでの第1の時間を設定する設定部と、
第1の情報出力装置を用いて前記自車両の乗員に対して第1の報知を行う乗員報知部と、
を備え、
前記制御部は、前記乗員報知部が前記乗員に対して前記第1の時間だけ前記第1の報知を行った後に前記自動停止制御を開始し、
前記設定部は、前記認識部による前記自車両の後続車両の認識結果に基づいて前記第1の時間を変更するものであり、
前記設定部は、前記認識結果として前記自車両と前記後続車両との車間距離を認識し、前記車間距離が下限値以下で前記第1の時間の最大値を与え、前記車間距離が上限値以上で前記第1の時間の最小値を与え、前記車間距離の前記下限値から前記上限値までの間では前記第1の時間が前記最大値から前記最小値まで単調減少する関数により前記第1の時間を決定する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記後続車両の認識結果は、前記後続車両の有無、および/または前記自車両と前記後続車両との間の距離を示す情報である、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記後続車両が認識され且つ前記後続車両と前記自車両との距離が閾値未満である場合、前記後続車両が認識されない場合または前記後続車両と前記自車両との距離が閾値以上である場合に比べて、前記第1の時間を長くする、
請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記自動停止制御の開始後に、第2の情報出力装置を用いて前記自車両の外部に対して第2の報知を行う外部報知部をさらに備え、
前記外部報知部は、前記後続車両の認識結果に基づいて前記第2の報知の態様を変更する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記外部報知部は、前記後続車両が認識され且つ前記後続車両と前記自車両との距離が閾値未満である場合、前記後続車両が認識されない場合または前記後続車両と前記自車両との距離が閾値以上である場合に比べて、前記第2の報知のタイミングを遅くする、
請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記後続車両の認識結果に基づいて、前記自動停止制御における前記自車両の減速の度合いを変更する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記後続車両が認識され且つ前記後続車両と前記自車両との距離が閾値未満である場合、前記後続車両が認識されない場合または前記後続車両と前記自車両との距離が閾値以上である場合に比べて、前記自動停止制御における前記自車両の減速を緩やかにする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記乗員について所定の動作を検出した場合に前記入力操作を取り消す入力取消部をさらに備え、
前記制御部は、前記入力操作の取り消しから第2の時間が経過するまでの間、前記乗員の承認を必要とする運転支援機能を抑制する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項9】
情報出力装置を用いて前記自車両の乗員に対して報知を行う乗員報知部をさらに備え、
前記乗員報知部は、前記設定部が前記第1の時間を変更した後に、前記後続車両が認識されなくなった場合または前記後続車両と前記自車両との距離が閾値以上となった場合に、前記自車両の乗員に第3の報知を行う、
請求項1から8のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項10】
コンピュータが、
自車両の周辺状況を認識し、
前記自車両の乗員による入力操作を受け付け、
前記入力操作を受け付けた場合に、前記自車両を減速して停止させる自動停止制御を行い、
前記入力操作を受け付けてから前記自動停止制御を開始するまでの第1の時間を設定する設定処理を実行し、
第1の情報出力装置を用いて前記自車両の乗員に対して第1の報知を行う車両制御方法であって、
前記乗員に対して前記第1の時間だけ前記第1の報知を行った後に前記自動停止制御を開始し、
前記設定処理において、前記自車両の後続車両の認識結果に基づいて前記第1の時間を変更するものであり、
前記認識結果として前記自車両と前記後続車両との車間距離を認識し、前記車間距離が下限値以下で前記第1の時間の最大値を与え、前記車間距離が上限値以上で前記第1の時間の最小値を与え、前記車間距離の前記下限値から前記上限値までの間では前記第1の時間が前記最大値から前記最小値まで単調減少する関数により前記第1の時間を決定する、
車両制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、
自車両の周辺状況を認識させ、
前記自車両の乗員による入力操作を受け付けさせ、
前記入力操作を受け付けた場合に、前記自車両を減速して停止させる自動停止制御を行わせ、
前記入力操作を受け付けてから前記自動停止制御を開始するまでの第1の時間を設定する設定処理を実行させ、
第1の情報出力装置を用いて前記自車両の乗員に対して第1の報知を行わせるためのプログラムであって、
前記乗員に対して前記第1の時間だけ前記第1の報知を行った後に前記自動停止制御を開始させ、
前記設定処理において、前記自車両の後続車両の認識結果に基づいて前記第1の時間を変更させるものであり、
前記認識結果として前記自車両と前記後続車両との車間距離を認識させ、前記車間距離が下限値以下で前記第1の時間の最大値を与え、前記車間距離が上限値以上で前記第1の時間の最小値を与え、前記車間距離の前記下限値から前記上限値までの間では前記第1の時間が前記最大値から前記最小値まで単調減少する関数により前記第1の時間を決定させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中の車両を自動的に停止させる様々な技術が開発されている。例えば、特許文献1には、車両の自動停止を実行するか否かを車両周辺の環境に応じて判定する技術が提案されている。また、例えば、特許文献2には、運転者の状態を監視し、運転者の体調異常が検知された場合に受容器(停車指示器)に対する指示入力を可能にする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-115971号公報
【文献】特許第5288045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のように、運転者の操作に応じて車両の自動停止制御を開始する場合、どのような状況で停車指示器を操作するかは運転者の判断に委ねられる。そのため、実際には、自動停止機能は、運転者の体調異常時に限らず、運転者が他の要因で車両を停止させたい場合にも使用されていた。しかしながら、従来技術ではこのような異なる目的での自動停止機能の使用に対しても画一的な制御が実施され、その目的に応じて適切に車両を停止させることができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、乗員の操作に応じて、より適切な態様で車両を自動停止させることができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
【0007】
(1):実施形態の車両制御装置は、自車両の周辺状況を認識する認識部と、前記自車両の乗員による入力操作を受け付ける入力部と、前記入力部が前記入力操作を受け付けた場合に、前記自車両を減速して停止させる自動停止制御を行う制御部と、前記入力部が前記入力操作を受け付けてから前記制御部が前記自動停止制御を開始するまでの第1の時間を設定する設定部と、を備え、前記設定部は、前記認識部による前記自車両の後続車両の認識結果に基づいて前記第1の時間を変更するものである。
【0008】
(2):上記(1)の態様において、前記後続車両の認識結果は、前記後続車両の有無、および/または前記自車両と前記後続車両との間の距離を示す情報である。
【0009】
(3):上記(1)または(2)の態様において、前記設定部は、前記後続車両が認識され且つ前記後続車両と前記自車両との距離が閾値未満である場合、前記後続車両が認識されない場合または前記後続車両と前記自車両との距離が閾値以上である場合に比べて、前記第1の時間を長くするものである。
【0010】
(4):上記(1)から(3)のいずれかの態様において、第1の情報出力装置を用いて前記自車両の乗員に対して第1の報知を行う乗員報知部をさらに備え、前記制御部は、前記乗員報知部が前記乗員に対して前記第1の時間だけ前記第1の報知を行った後に前記自動停止制御を開始するものである。
【0011】
(5):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記自動停止制御の開始後に、第2の情報出力装置を用いて前記自車両の外部に対して第2の報知を行う外部報知部をさらに備え、前記外部報知部は、前記後続車両の認識結果に基づいて前記第2の報知の態様を変更するものである。
【0012】
(6):上記(5)の態様において、前記外部報知部は、前記後続車両が認識され且つ前記後続車両と前記自車両との距離が閾値未満である場合、前記後続車両が認識されない場合または前記後続車両と前記自車両との距離が閾値以上である場合に比べて、前記第2の報知のタイミングを遅くするものである。
【0013】
(7):上記(1)から(6)のいずれかの態様において、前記制御部は、前記後続車両の認識結果に基づいて、前記自動停止制御における前記自車両の減速の度合いを変更するものである。
【0014】
(8):上記(1)から(7)のいずれかの態様において、前記制御部は、前記後続車両が認識され且つ前記後続車両と前記自車両との距離が閾値未満である場合、前記後続車両が認識されない場合または前記後続車両と前記自車両との距離が閾値以上である場合に比べて、前記自動停止制御における前記自車両の減速を緩やかにするものである。
【0015】
(9):上記(1)から(8)のいずれかの態様において、前記乗員について所定の動作を検出した場合に前記入力操作を取り消す入力取消部をさらに備え、前記制御部は、前記入力操作の取り消しから第2の時間が経過するまでの間、前記乗員の承認を必要とする運転支援機能を抑制するものである。
【0016】
(10):上記(1)から(9)のいずれかの態様において、情報出力装置を用いて前記自車両の乗員に対して報知を行う乗員報知部をさらに備え、前記乗員報知部は、前記設定部が前記第1の時間を変更した後に、前記後続車両が認識されなくなった場合または前記後続車両と前記自車両との距離が閾値以上となった場合に、前記自車両の乗員に第3の報知を行うものである。
【0017】
(11):実施形態の車両制御方法は、コンピュータが、自車両の周辺状況を認識し、前記自車両の乗員による入力操作を受け付け、前記入力操作を受け付けた場合に、前記自車両を減速して停止させる自動停止制御を行い、前記入力操作を受け付けてから前記自動停止制御を開始するまでの第1の時間を設定する設定処理を実行し、前記設定処理において、前記自車両の後続車両の認識結果に基づいて前記第1の時間を変更するものである。
【0018】
(12):実施形態のプログラムは、コンピュータに、自車両の周辺状況を認識させ、前記自車両の乗員による入力操作を受け付けさせ、前記入力操作を受け付けた場合に、前記自車両を減速して停止させる自動停止制御を行わせ、前記入力操作を受け付けてから前記自動停止制御を開始するまでの第1の時間を設定する設定処理を実行させ、前記設定処理において、前記自車両の後続車両の認識結果に基づいて前記第1の時間を変更させるものである。
【発明の効果】
【0019】
上記(1)~(12)の態様によれば、乗員の操作に応じて、より適切な態様で車両を自動停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ドライバ異常時緊急停止機能の概略を説明する図である。
【
図2】実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システムの構成図である。
【
図3】実施形態の車両制御装置がドライバ異常時緊急停止機能を実現する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】第1の制御例における応答確認時間の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0022】
<概略>
図1は、ドライバ異常時緊急停止機能の概略を説明する図である。ドライバ異常時緊急停止機能は乗員に異常が発生した場合に車両を自動停止させる機能であり、運転支援機能の一つである。ここでは、一例として、走行中の自車両Aの乗員(ここでは運転者とする)に体調異常が発生してから、自車両Aがドライバ異常時緊急停止機能によって停止するまでの流れを説明する。以下ではドライバ異常時緊急停止機能を略して「緊急停止機能」と記載する。
【0023】
まず、体調に異常が発生した乗員が、自車両Aに備えられた指示器に対して緊急停止機能の実行指示を入力する操作(以下「指示操作」という。)を行う(ステップS11:時刻t1)。この指示操作の入力に応じて、自車両Aは緊急停止機能を開始し、自動停止制御の待機状態に移行する。待機状態において、自車両Aは、所定の応答確認時間の間、乗員に対する呼びかけを行う(ステップS12)。ここでの乗員への呼びかけは「第1の報知」の一例であり、応答確認時間は「第1の時間」の一例である。
【0024】
続いて、ステップS12の呼びかけに対して、乗員が応答確認時間の間に応答した場合、自車両Aは自動停止制御の待機状態を解除して緊急停止機能を終了する(ステップS13:緊急停止機能解除)。一方、乗員が応答確認時間の間に応答しなかった場合、自車両Aは自動停止制御を開始する(ステップS14:時刻t2)。自車両Aは、自動停止制御により減速していき、最終的に停止する(ステップS15:時刻t4)。
【0025】
なお、自車両Aは、自動停止制御による停止の前後において、車外の人等に対して注意喚起等を報知するための外部報知動作を行う(ステップS16)。ここでの外部報知は「第2の報知」の一例である。また、自車両Aは、停止すると、車外の人や病院等に対して乗員の異常を報知するための外部報知動作を行う(ステップS17)。
【0026】
一方、自動停止制御が開始されてから自車両Aが停止するまでの間に、指示器に対して取消操作が入力された場合(時刻t3)、自車両Aは、実行中の自動停止制御を停止して緊急停止機能を終了する(ステップS18:緊急停止機能解除)。
【0027】
なお、待機状態において、自車両Aは加速を抑制することができる。また、待機状態において、自車両Aは、乗員の状態を仮の異常状態と認識し、経過時間に応じて異常状態の確度を高めていき、応答確認時間の間に乗員の応答がない場合に、乗員の状態を異常状態と確定してもよい。また、この場合、待機状態において、自車両Aは、乗員の異常状態の確度に応じて、加速の抑制度合いを制御してもよい。
【0028】
以上説明した緊急停止機能の流れは、乗員(ここでは運転者)の体調に異常が発生した場合を想定したものであるが、この例のように、乗員による指示操作を契機として作動する緊急停止機能の場合、どのような状況で指示操作が行われるかは乗員の判断に委ねられる。そのため、緊急停止機能は、本来は乗員の体調異常時における自動停止制御を実現するものとして位置づけられたが、実際には、自車両Aの単なる自動停止手段として任意のタイミングで使用される場合があった。
【0029】
しかしながら、このように様々な場面で使用されるにも関わらず、従来の緊急停止機能は利用場面によらない画一的な制御であったため、必ずしも適切なタイミングで自車両Aを停止させることができない場合があった。具体的には、従来の緊急停止機能は、乗員の体調異常時のように速やかな停車が望ましい場面での使用を想定したものであったため、後続車両が存在する場面など、緩やかな停車が望ましい場面で使用された場合に適切な減速が行うことができない可能性があった。また、これとは逆に、従来の緊急停止機能は、乗員の体調異常時よりもさらに緩やかな停車が望ましい場面で使用された場合においても適切な減速を行うことができない可能性があった。そのため、従来の緊急停止機能を使用した場合、自車両Aが周辺の走行環境を乱してしまう可能性があった。
【0030】
以下に説明する実施形態の車両制御装置は、このような課題を解決し、乗員の操作に応じて、より適切な態様で車両を自動停止させることを可能にするものである。
【0031】
<実施形態>
[全体構成]
図1は、実施形態に係る自車両Mに搭載される車両制御装置100を中心とした構成図である。自車両Mは、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0032】
自車両Mは、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、物体認識装置16と、通信装置20と、入力装置30と、車両センサ40と、外部報知器50と、乗員報知器60と、ドライバモニタカメラ70と、運転操作子80と、車両制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220と、を備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0033】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0034】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0035】
物体認識装置16は、カメラ10、またはレーダ装置12による検出結果に基づいて自車両Mの周辺状況を認識する。物体認識装置16は、少なくとも自車両Mと後続車両との間の距離を認識する。物体認識装置16は、カメラ10、またはレーダ装置12による検出結果に基づいて、物体の位置や種類などを認識してもよい。物体認識装置16は、認識結果を車両制御装置100に出力する。なお、物体認識装置16の機能は車両制御装置100に設けられてもよい。その場合、物体認識装置16は、カメラ10、およびレーダ装置12の検出結果をそのまま車両制御装置100に出力してよいし、自車両Mから物体認識装置16が省略されてもよい。
【0036】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0037】
入力装置30は、自車両Mの乗員による操作を受け付ける。入力装置30は、タッチパネルや、ボタン、スイッチ、キーなどを含む。入力装置30は、入力された操作に応じた信号を車両制御装置100に出力する。
【0038】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0039】
外部報知器50は、自車両Mの外部に対して所定の報知動作を行う。外部報知器50は、例えば、表示灯やスピーカなどを含む。また、外部報知器50として方向指示器が用いられてもよい。また、外部報知器50には、外部の通信機器に対して報知のための情報を送信する通信インターフェースが含まれてもよい。外部報知器50が報知動作を行うタイミングは車両制御装置100によって制御される。また、外部報知器50が複数の報知動作を行える場合、報知動作の種類も車両制御装置100によって制御されてよい。外部報知器50は「第2の情報出力装置」の一例である。
【0040】
乗員報知器60は、自車両Mの乗員に対して所定の報知動作を行う。乗員報知器60は、例えば、タッチパネルや表示灯、スピーカなどを含む。タッチパネルは、入力装置30が備えるものと兼用されてもよい。乗員報知器60が報知動作を行うタイミングは車両制御装置100によって制御される。また、乗員報知器60が複数の報知動作を行える場合、報知動作の種類も車両制御装置100によって制御されてよい。乗員報知器60は「第1の情報出力装置」の一例である。
【0041】
ドライバモニタカメラ70は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。ドライバモニタカメラ70は、自車両Mの運転席に着座した乗員(以下、運転者)の頭部を正面から(顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置および向きで、自車両Mにおける任意の箇所に取り付けられる。例えば、ドライバモニタカメラ70は、自車両Mのインストルメントパネルの中央部に設けられたディスプレイ装置の上部に取り付けられる。
【0042】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイールやアクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、車両制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
【0043】
車両制御装置100は、例えば、操作認識部110、制御部120と、設定部130と、外部報知部140と、乗員報知部150と、を備える。これらの構成要素は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め車両制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで車両制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0044】
操作認識部110は、入力装置30の出力信号に基づいて入力装置30に対して行われた操作の内容を認識する。入力装置30は、タッチパネルや、スイッチ、キーなどを含む。例えば、操作認識部110は、緊急停止機能の実行指示を入力する操作(以下「指示操作」という。)、および実行中の緊急停止機能を終了させる、又は、緊急停止機能の実行指示を取り消す操作(以下「取消操作」という。)を認識する。上述のとおり、緊急停止機能は、乗員に対して呼びかけを行い、乗員が呼びかけに応答しない場合に自動的に自車両Mを減速して停止させる機能である。指示操作及び取消操作は、入力装置30に対して行われた操作によって識別可能であればどのような操作であってもよい。例えば、操作認識部110は、スイッチのON操作を指示操作、スイッチのOFF操作を取消操作と認識してもよい。操作認識部110は「入力部」および「入力取消部」の一例であり、指示操作は「入力操作」の一例である。
【0045】
制御部120は、物体認識装置16による自車両M周辺の認識結果や、車両センサ40による自車両Mに関する検知結果、ドライバモニタカメラ70によって撮像された運転者の画像等に基づいて、自車両Mの運転に関する各種の支援機能を実現するための制御処理を実施する。例えば、制御部120は、車線維持や車線変更等の運転支援機能に加えて、緊急停止機能の制御機能を有する。具体的には、制御部120は、緊急停止機能の指示操作が入力された場合に自車両Mを自動的に停止させるための制御(以下「自動停止制御」という。)を行う。具体的には、制御部120は、まず乗員に対して呼びかけを行い、その呼びかけに対して乗員が所定時間以内に応答しない場合に自動停止制御を開始する。また、制御部120は、自動停止制御の実行中に取消操作が入力された場合に自動停止制御を終了する。
【0046】
設定部130は、緊急停止機能の指示操作が入力された場合に、自車両Mの後続車両の状況に応じた応答確認時間を制御部120に対して設定する。応答確認時間は、緊急停止機能において、制御部120が乗員に対して行った呼びかけに対して乗員からの応答を待機する時間である。すなわち、制御部120は、設定部130が設定した応答確認時間の間、乗員からの応答がない場合に自動停止制御を開始する。
【0047】
また、設定部130は、応答確認時間の設定に加えて、外部報知の実行タイミングを設定する機能を有する。上述のとおり、緊急停止機能に付随して行われる外部報知には、病院等への連絡のように停車後に行われるものと、車外報知のように停車前から行われるものとがある。設定部130は、このような外部報知のうち、少なくとも、停車前に行われる外部報知の実行タイミングを設定する機能を有する。例えば、設定部130は、自動停止制御が開始されてから外部報知を実行するまでの待機時間を外部報知部140に対して設定する。
【0048】
外部報知部140は、所定のタイミングにおいて外部報知器50に所定の報知動作を行わせる。外部報知部140は、外部報知器50が複数の報知動作を行える場合、報知する事象や報知のタイミングに応じて異なる報知動作を外部報知器50に行わせてもよい。
【0049】
乗員報知部150は、所定のタイミングにおいて乗員報知器60に所定の報知動作を行わせる。乗員報知部150は、乗員報知器60が複数の報知動作を行える場合、報知する事象や報知のタイミングに応じて異なる報知動作を乗員報知器60に行わせてもよい。
【0050】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、制御部120から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0051】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、制御部120から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、制御部120から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0052】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、制御部120から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0053】
図3は、実施形態の車両制御装置100が緊急停止機能を実現する処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、操作認識部110が、入力装置30の出力信号に基づいて入力装置30に対して指示操作が入力されたか否かを判定する(ステップS201)。ここで、指示操作が入力されていないと判定された場合、操作認識部110は指示操作が入力されるまでステップS201を繰り返し実行する。一方、ステップS201において指示操作が入力されたと判定された場合、続いて、設定部130が物体認識装置16の認識結果に基づいて後続車両情報を取得する(ステップS202)。後続車両情報は、少なくとも後続車両の有無と、後続車両が存在する場合には自車両Mと後続車両との間の距離とが含まれる。
【0054】
続いて、設定部130は、取得した後続車両情報に基づいて、参照領域の範囲内に後続車両が存在するか否かを判定する(ステップS203)。参照領域とは、自車両Mの位置から、自車両Mの規定距離後方の位置までを含む領域である。すなわち、設定部130は、後続車両が認識され且つその後続車両と自車両Mとの距離が閾値未満である場合に、参照領域に後続車両が存在すると判定し、後続車両が認識されない場合または後続車両と自車両Mとの距離が閾値以上である場合に、参照領域に後続車両が存在しないと判定する。ここで、参照領域の範囲内に後続車両が存在すると判定された場合、設定部130は、応答確認時間をより長い時間に変更して(ステップS204)ステップS205に進む。一方、ステップS203において参照領域の範囲内に後続車両が存在しないと判定された場合、設定部130は、応答確認時間を変更することなくステップS205に進む。
【0055】
続いて、ステップS205では、乗員報知部150が、乗員報知器60を用いて乗員への報知を開始する(ステップS205)。乗員報知部150が乗員への報知を開始した後、制御部120が、緊急停止機能の終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップS206)。例えば、緊急停止機能の終了条件には(1)乗員が応答確認時間内に呼びかけに応答したこと、(2)自動停止制御の実行中に取消操作が入力されたこと、(3)自車両Mが停止したこと、(4)自動停止制御が終了したこと、などが含まれる。ここで、緊急停止機能の終了条件は満たされていないと判定した場合、制御部120は自動停止制御を開始して(ステップS207)、ステップS206に戻る。なお、ステップS206の実行時において既に自動停止制御が開始されている場合、制御部120はステップS207をスキップしてステップS206に進む。一方、ステップS206において、緊急停止機能の終了条件が満たされたと判定した場合、制御部120は緊急停止機能を終了する(ステップS208)。
【0056】
このような一連の処理によれば、実施形態に係る車両制御装置100は、参照領域の範囲内に後続車両が存在する状況での応答確認時間を、参照領域の範囲内に後続車両が存在しない状況での応答確認時間よりも長くすることができる。これはすなわち、自車両Mが自動停止制御を開始するまでにより長い加速抑制期間が設けられることを意味する。したがって、実施形態に係る車両制御装置100は、参照領域の範囲内に後続車両が存在する状況で自動停止制御を行う場合、参照領域の範囲内に後続車両が存在しない状況に比べて、自車両Mをより緩やかに停止させることが可能となる。
【0057】
以下、実施形態の車両制御装置100による緊急停止機能の制御例を示す。
【0058】
[第1の制御例]
図4~
図7は、第1の制御例を説明する図である。第1の制御例は、後続車両Bが自車両Mから遠い場合には、応答確認時間を短くして自動停止制御の開始を早め、後続車両Bが自車両Mから近い場合には、応答確認時間を長くして自動停止制御の開始を遅くする制御である。
図4は、自車両Mと後続車両Bとの車間距離xが上限値xmax以上である場合には、応答確認時間twを規定の最小値tminとする場合を表す。
図5は、車間距離xが下限値xmin未満である場合には、応答確認時間twを規定の最大値tmaxとする場合を表している。
図4および
図7の例では領域A1が参照領域の最大範囲を表し、
図5の例では領域A2が参照領域の最小範囲を表している。
【0059】
また、
図6は、上限値xmax未満かつ下限値xmin以上の車間距離xに対して、応答確認時間twの長さを最小値tminから最大値tmaxまでの範囲内で線形に変化させる場合を表している。この場合、応答確認時間twは、車間距離xの関数として次の(1)式のように表すことができる。
【0060】
【0061】
ここで、xminは応答確認時間の最大値tmaxを与える車間距離であり、xmaxは応答確認時間の最小値tminを与える車間距離である。例えば、あおり運転を受けた乗員が危険回避のために自車両Mを停止させようとして自動停止制御を使用する場面では、より緩やかな停車が望ましい。そのため、このような場面を想定する場合、後続車両Bが自車両Mに対してあおり運転を行っていると判断できる十分に短い車間距離を最小値xminとすることが考えられる。また、例えば、乗員が体調異常を原因として自車両Mを停止させようとして自動停止制御を使用する場面では、より速やかな停車が望ましい。そのため、このような場面を想定すると、最短の応答確認時間後に自動停止制御を開始することができると判断できる十分に長い車間距離を最大値xmaxとすることが考えられる。そして、最小値xminから最大値xmaxの範囲内で増加する(または減少する)車間距離に対し、応答確認時間を車間距離に応じて短く(または長く)することにより、緊急停止機能を異なる利用場面に対応させることができる。なお、車間距離に対する応答確認時間の増減の度合いは(1)式のゲインG(固定値)によって調整されるとよい。
【0062】
なお、
図7に示すように、自車両Mに後続車両Bが存在しない場合は、車間距離xが十分に大きい(x≧xmax)として応答確認時間をtminとしてよい。ここで「自車両Mと後続車両Bの車間距離が閾値以上である場合」または「自車両Mに後続車両Bが存在しない場合」は、「参照領域の範囲内に後続車両Bが存在しない場合」と同義である。そのため、
図4および
図7の制御例は「参照領域の範囲内に後続車両Bが存在しない場合」、参照領域の範囲内に後続車両Bが存在する場合に比べて応答確認時間を長くする、と言い換えることができる。
【0063】
ここでは、応答確認時間を車間距離の一次関数で表す場合について説明したが、応答確認時間を表す関数の一部または全部は車間距離の高次関数で表されてもよい。また、ここでは、応答確認時間を車間距離に応じて連続的に変化する値としたが、応答確認時間は車間距離に応じて離散的に変化する値とされてもよい。例えば、車間距離について或る1つの閾値xthを設け、xth以上の車間距離でt11となり、xth未満の車間距離でt12(>t11)となるような応答確認時間を設けてもよい。これは、換言すれば、
図6において、xminとxmaxを限りなく近づけた場合ということができる。
【0064】
[第2の制御例]
図8および
図9は第2の制御例を説明する図である。第2の制御例は、自動停止制御の実行中において外部報知のタイミングを後続車両Bの状況に応じて変更する制御である。第1の制御例で説明したように、車両制御装置100は、
図4のように自車両Mと後続車両Bの車間距離が十分に大きい場合や、
図7のように自車両Mに後続車両Bが存在しない場合、自車両Mの速やかな停車を優先して自動停止制御の開始タイミングを早める。この場合、乗員救護の観点から、自動停止制御の実行に合わせて外部報知も速やかに行われることが望ましい。
【0065】
一方で、車両制御装置100は、
図5のように自車両Mと後続車両Bの車間距離が閾値よりも小さい場合、自車両Mの安全な停車を優先して自動停止制御の開始タイミングを遅くする。この場合、後続車両Bへの影響の観点から、速やかに外部報知を行うことを控えた方がよい場合がある。例えば、後続車両Bが自車両Mに対してあおり運転を行っている場面で速やかに外部報知を行った場合、そのことが後続車両Bの運転者を刺激してしまい危険度を増してしまう可能性があるからである。
【0066】
そこで、実施形態の車両制御装置100は、自車両Mと後続車両Bの車間距離が閾値以上である場合または自車両Mに後続車両Bが存在しない場合、すなわち参照領域の範囲内に後続車両Bが存在しない場合には、自車両Mと後続車両Bの車間距離が閾値未満である場合、すなわち参照領域の範囲内に後続車両Bが存在する場合に比べて外部報知の実行タイミングを早めるように構成される。また、車両制御装置100は、参照領域の範囲内に後続車両Bが存在する場合には、参照領域の範囲内に後続車両Bが存在しない場合に比べて外部報知の実行タイミングを遅くするように構成される。
【0067】
そして、このような外部報知のタイミング制御が行われることにより、後続車両Bが自車両Mの近くに存在する場合において、自動停止制御による自車両Mの停車をより安全に実施することができる。また、後続車両Bが自車両Mの近くに存在しない場合において、自車両Mの乗員の異常を自車両Mの外部に速やかに報知することができる。
【0068】
なお、
図8および
図9の例では、応答確認時間の経過後に外部報知を行う場合について説明したが、この例に限られず、外部報知は乗員が指示操作を入力した後であれば、応答確認時間が経過する以前に行われてもよい。
【0069】
[第3の制御例]
図10および
図11は第3の制御例を説明する図である。第3の制御例は、自動停止制御の実行中において自車両Mの減速度を後続車両Bの状況に応じて変更する制御である。第1の制御例で説明したように、車両制御装置100は、
図4のように自車両Mと後続車両Bの車間距離が十分に大きい場合や、
図7のように自車両Mに後続車両Bが存在しない場合、自動停止制御の開始タイミングを早める。これは、乗員救護の観点から、自車両Mの速やかな停車を優先するためのものであったが、自車両Mを速やかに停止させるという目的のためには自動停止制御の実行中における減速度もより大きくすることが望ましい。
【0070】
一方で、車両制御装置100は、
図5のように自車両Mと後続車両Bの車間距離が閾値よりも小さい場合、自動停止制御の開始タイミングを遅くする。これは、自車両Mを安全に停車させるという観点から、応答確認時間を長くとり自車両Mを緩やかに減速させるためのものであったが、自車両Mを緩やかに停止させるという目的のためには自動停止制御の実行中における減速度もより小さくすることが望ましい。
【0071】
そこで、実施形態の車両制御装置100は、参照領域の範囲内に後続車両Bが存在しない場合には、参照領域の範囲内に後続車両Bが存在する場合に比べて、自動停止制御の実行中における自車両Mの減速度を大きくするように構成される。また、車両制御装置100は、参照領域の範囲内に後続車両Bが存在する場合には、参照領域の範囲内に後続車両Bが存在しない場合に比べて、自動停止制御の実行中における自車両Mの減速度を小さくするように構成される。
【0072】
そして、自動停止制御の実行中においてこのような減速度の制御を行うことにより、後続車両Bが自車両Mの近くに存在する場合において、自動停止制御による自車両Mの停車をより安全に実施することができる。また、後続車両Bが自車両Mの近くに存在しない場合において、自車両Mをより速やかに停車させることができる。
【0073】
[第4の制御例]
図12は第4の制御例を説明する図である。第4の制御例は、自動停止制御の実行中において取消操作が入力された場合に一部の運転支援機能の実行を抑制する制御である。
図1で説明したように、緊急停止機能による自動停止制御の実行中に乗員が取消操作を入力した場合、車両制御装置100は緊急停止機能を解除する。しかしながら、乗員は取消操作を入力できたとしても、必ずしも運転に必要なすべての動作を行える状態とは限らない。また、乗員が意図しない動作によって取消操作を入力した可能性もある。
【0074】
そこで、実施形態の車両制御装置100は、自動停止制御の実行中において取消操作が入力された場合に、所定の機能抑制時間tsの間、一部の運転支援機能の実行を抑制するように構成される。ここで抑制の対象となる一部の運転支援機能は、乗員の承認を必要とするものであればどのような機能であってもよい。
図12は、一例として車線変更機能を抑制する場合を示すものである。
図12の例の場合、制御部120は、操作認識部110によって取消操作の入力が認識された場合、取消操作が入力されたタイミングにおいて車線変更機能の抑制を開始し、当該タイミングから機能抑制時間tsが経過したタイミングで車線変更機能の抑制を解除する。
【0075】
このように、取消操作が入力された場合に、乗員の承認を必要とする運転支援機能が機能抑制時間tsの間抑制されることにより、緊急停止機能の解除時における自車両Mの走行の安全性を高めることができる。ここで、機能抑制時間tsは「第2の時間」の一例である。
【0076】
[第5の制御例]
図13は、第5の制御例を説明する図である。第5の制御例は、確認応答時間の変更後に後続車両Bの認識状態が変化した場合に自車両Mの乗員に対して報知を行うための制御である。以下、この報知を「第3の報知」という。上述のとおり、実施形態の車両制御装置100は、緊急停止機能の開始時において参照領域の範囲内に後続車両Bが認識された場合、応答確認時間を、参照領域の範囲内に後続車両Bが認識されない場合に比べて長くするものである。しかしながら、緊急停止機能の開始時において自車両Mの近くにいた後続車両Bがその後自車両Mの近くにいなくなる場合も考えられる。その場合、後続車両Bが自車両Mの近くにいないにも関わらず、自動停止制御の開始が遅れたり、緩やかな減速を行うことで自車両Mの停止が遅くなったりする。
【0077】
そこで、実施形態の車両制御装置100は、緊急停止機能の開始時において参照領域の範囲内に後続車両Bが認識されたことに応じて応答確認時間を変更した後、当該後続車両Bが参照領域の範囲内に認識されない状態に変化した場合に自車両Mの乗員に対して第3の報知を行うように構成される。例えば、第3の報知は「危険車両(後続車両B)がいなくなりました」といったような内容のメッセージ表示や音声出力であってもよい。
【0078】
このような第3の報知が乗員に対して行われることにより、乗員は後続車両Bの認識状態に応じて緊急停止機能を継続するか否かを判断することが可能となる。例えば、応答確認時間内に第3の報知が行われた場合、乗員は後続車両Bがいなくなったことを受けて呼びかけに応答することにより緊急停止機能を解除することができる。また、例えば、応答確認時間が経過して自動停止制御が開始された後で第3の報知が行われた場合、乗員は後続車両Bがいなくなったことを受けて取消操作を入力することにより緊急停止機能を解除することができる。
【0079】
以上説明した車両制御装置100によれば、乗員の操作に応じて、より適切な態様で車両を自動停止させることができる。
【0080】
(変形例)
上記実施形態では、車両制御装置100は、自車両Mの運転支援機能を制御するものとして説明したが、車両制御装置100は自動運転の機能を備えてもよい。この場合、緊急停止機能を含む運転支援機能は、自動運転制御の一部として構成されてもよいし、単体の運転支援機能として利用可能なように構成されてもよい。また、緊急停止機能は、車線維持制御等の他の運転支援機能と並列して又は協働して動作するように構成されてもよい。
【0081】
上記実施形態では、自動停止制御の例として走行路上で停車させる場合を想定したが、車両制御装置100は、自車両Mが十分に減速した後、自車両Mを路肩に寄せて停止させるように構成されてもよい。この場合、車両制御装置100は、カーナビゲーションシステム等と連携して停止可能位置を決定するように構成されてもよい。
【0082】
上記実施形態の車両制御装置100において、第1の制御例に係る緊急停止機能は必須機能として実装され、第2~第5の制御例に係る緊急停止機能はオプション機能として選択可能な形で実装されてもよい。
【0083】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記プログラムを実行することにより、
自車両の周辺状況を認識し、
前記自車両の乗員による入力操作を受け付け、
前記入力操作を受け付けた場合に、前記自車両を減速して停止させる自動停止制御を行い、
前記入力操作を受け付けてから前記自動停止制御を開始するまでの第1の時間を設定する設定処理を実行し、
前記設定処理において、前記自車両の後続車両の認識結果に基づいて前記第1の時間を変更する、
ように構成されている、車両制御装置。
【0084】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0085】
10…カメラ、12…レーダ装置、16…物体認識装置、20…通信装置、30…入力装置、40…車両センサ、50…外部報知器、60…乗員報知器、70…ドライバモニタカメラ、80…運転操作子、100…車両制御装置、110…操作認識部、120…制御部、130…設定部、140…外部報知部、150…乗員報知部、200…走行駆動力出力装置、210…ブレーキ装置、220…ステアリング装置