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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】導電性粒子、導電材料及び接続構造体
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/00 20060101AFI20231108BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20231108BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20231108BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20231108BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20231108BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01B5/00 M
H01B5/00 G
H01B1/00 G
H01B1/00 M
H01B1/22 A
H01B5/16
H01R11/01 501D
H01R11/01 501A
H01R43/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021192833
(22)【出願日】2021-11-29
(62)【分割の表示】P 2017531411の分割
【原出願日】2017-05-17
(65)【公開番号】P2022022293
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2016100595
(32)【優先日】2016-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山際 仁志
(72)【発明者】
【氏名】真原 茂雄
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-044773(JP,A)
【文献】特開2015-187984(JP,A)
【文献】特開2014-017213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
H01B 1/00
H01B 1/22
H01B 5/16
H01R 11/01
H01R 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部を有する導電性粒子本体と、前記導電性粒子本体の表面上に配置された絶縁性粒子とを備える導電性粒子であり
前記導電性粒子本体が、前記導電部の外表面に複数の突起を有し、
前記絶縁性粒子のガラス転移温度が80℃未満であり、
前記絶縁性粒子が、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件を満足する少なくとも1つの圧縮条件で圧縮されたときに、圧縮後の前記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値の、圧縮後の前記絶縁性粒子の圧縮方向と直交する方向での粒子径の最大値に対する比が0.7以下になるように変形可能であり、
前記導電性粒子は、120℃以下で熱圧着することにより、導電接続するために用いられる、導電性粒子。
【請求項2】
前記導電性粒子本体の表面上に複数の前記絶縁性粒子が配置されている、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項3】
前記絶縁性粒子の平均粒子径の前記突起の平均高さに対する比が0.5を超える、請求項2に記載の導電性粒子。
【請求項4】
前記絶縁性粒子が、温度100℃及び圧力60MPaで圧縮されたときに、圧縮後の前記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値の、圧縮後の前記絶縁性粒子の圧縮方向と直交する方向での粒子径の最大値に対する比が0.7以下になるように変形可能である、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項5】
前記絶縁性粒子が、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件を満足する少なくとも1つの圧縮条件で圧縮されたときに、圧縮後の前記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値が、圧縮前の前記突起の平均高さ以下になるように変形可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項6】
前記絶縁性粒子が、温度100℃及び圧力60MPaの圧縮条件で圧縮されたときに、圧縮後の前記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値が、圧縮前の前記突起の平均高さ以下になるように変形可能である、請求項5に記載の導電性粒子。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、導電材料。
【請求項8】
第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、
第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部の材料が、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性粒子であるか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料であり、
前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記導電性粒子における前記導電性粒子本体により電気的に接続されている、接続構造体。
【請求項9】
第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材との間に、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性粒子を配置するか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料を配置する工程と、
前記絶縁性粒子のガラス転移温度以上、120℃以下で熱圧着することにより、導電接続する工程とを備える、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電極間の電気的な接続に用いることができる導電性粒子に関する。また、本発明は、上記導電性粒子を用いた導電材料、接続構造体及び接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。これらの異方性導電材料では、バインダー樹脂中に導電性粒子が分散されている。また、導電性粒子として、導電性粒子本体の表面に、絶縁性粒子が付着した導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)が用いられることがある。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用されている。
【0004】
上記導電性粒子の一例として、下記の特許文献1には、導電性粒子の表面の少なくとも一部に、樹脂粒子が存在する絶縁化導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)が開示されている。上記樹脂粒子は、重合性成分の共重合物であり、該重合性成分は、少なくともアルキル(メタ)アクリレートと多価(メタ)アクリレートとを含む。上記多価(メタ)アクリレートは、各(メタ)アクリロイル基が互いに3個以上の炭素原子を介して結合した化合物である。また、特許文献1では、上記樹脂粒子のガラス転移温度が180℃以下であってもよいことが記載されている。特許文献1の実施例及び比較例では、ガラス転移温度が108℃、113℃、115℃、134℃、及び200℃以上の樹脂粒子が記載されている。
【0005】
下記の特許文献2には、導電性粒子と、該導電性粒子の外側に付着された複数の絶縁粒子とを備える絶縁被覆導電粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)が開示されている。上記導電性粒子の平均粒径は1~10μmである。上記絶縁粒子は、第1の絶縁粒子と、該第1の絶縁粒子よりもガラス転移温度が低い第2の絶縁粒子とを含む。特許文献2では、第2の絶縁粒子のガラス転移温度は、80~120℃であってもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-72324号公報
【文献】特開2014-17213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記異方性導電材料により、例えば、半導体チップの電極とガラス基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラス基板上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を配置する。次に、半導体チップを積層して、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、導電性粒子を介して電極間を電気的に接続して、接続構造体を得る。
【0008】
この接続構造体の作製において、低温での熱圧着の要望が高まっている。しかし、従来の導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)では、低温で熱圧着を行ったときに、接続抵抗が高くなり、導通信頼性が低くなることがある。
【0009】
本発明の目的は、比較的低温で導電接続を行うことができ、比較的低温で導電接続を行っても導通信頼性を高めることができる導電性粒子を提供することである。
【0010】
また、本発明は、上記導電性粒子を用いる導電材料、接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、導電部を有する導電性粒子本体と、前記導電性粒子本体の表面上に配置された絶縁性粒子とを備え、前記導電性粒子本体が、前記導電部の外表面に複数の突起を有し、前記絶縁性粒子のガラス転移温度が100℃未満であり、前記絶縁性粒子が、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件を満足する少なくとも1つの圧縮条件で圧縮されたときに、圧縮後の前記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値の、圧縮後の前記絶縁性粒子の圧縮方向と直交する方向での粒子径の最大値に対する比が0.7以下になるように変形可能である、導電性粒子が提供される。
【0012】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記導電性粒子本体の表面上に複数の前記絶縁性粒子が配置されている。
【0013】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記絶縁性粒子の平均粒子径の前記突起の平均高さに対する比が0.5を超える。
【0014】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記絶縁性粒子が、温度100℃及び圧力60MPaで圧縮されたときに、圧縮後の前記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値の、圧縮後の前記絶縁性粒子の圧縮方向と直交する方向での粒子径の最大値に対する比が0.7以下になるように変形可能である。
【0015】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記絶縁性粒子が、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件を満足する少なくとも1つの圧縮条件で圧縮されたときに、圧縮後の前記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値が、圧縮前の前記突起の平均高さ以下になるように変形可能である。
【0016】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記絶縁性粒子が、温度100℃及び圧力60MPaで圧縮されたときに、圧縮後の前記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値が、圧縮前の前記突起の平均高さ以下になるように変形可能である。
【0017】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記導電性粒子は、120℃以下で熱圧着することにより、導電接続するために用いられる。
【0018】
本発明の広い局面によれば、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、導電材料が提供される。
【0019】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記導電材料の100℃での粘度が1000Pa・s以上、5000Pa・s以下である。
【0020】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、前記接続部の材料が、上述した導電性粒子であるか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料であり、前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記導電性粒子における前記導電性粒子本体により電気的に接続されている、接続構造体が提供される。
【0021】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材との間に、上述した導電性粒子を配置するか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料を配置する工程と、前記絶縁性粒子のガラス転移温度以上、160℃以下で熱圧着することにより、導電接続する工程とを備える、接続構造体の製造方法が提供される。
【0022】
本発明に係る接続構造体の製造方法のある特定の局面では、前記絶縁性粒子のガラス転移温度以上、120℃以下で熱圧着する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る導電性粒子は、導電部を有する導電性粒子本体と、上記導電性粒子本体の表面上に配置された絶縁性粒子とを備え、上記導電性粒子本体が、上記導電部の外表面に複数の突起を有し、上記絶縁性粒子のガラス転移温度が100℃未満であり、上記絶縁性粒子が、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件を満足する少なくとも1つの圧縮条件で圧縮されたときに、圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値の、圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向と直交する方向での粒子径の最大値に対する比が0.7以下になるように変形可能であるので、比較的低温で導電接続を行うことができ、比較的低温で導電接続を行っても導通信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図3図3は、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図4図4は、絶縁部が絶縁層である場合の導電性粒子を示す断面図である。
図5図5は、図1に示す導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
(導電性粒子)
本発明に係る導電性粒子は、導電性粒子本体と、絶縁部とを備える。上記導電性粒子本体は、導電部を有する。上記絶縁部は、上記導電性粒子本体の表面上に配置されている。本発明に係る導電性粒子では、上記導電性粒子本体が、上記導電部の外表面に複数の突起を有する。本発明に係る導電性粒子では、上記絶縁部のガラス転移温度が100℃未満である。本発明に係る導電性粒子では、上記絶縁部は、絶縁性粒子である。本発明に係る導電性粒子では、上記絶縁性粒子が、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件を満足する少なくとも1つの圧縮条件で圧縮されたときに、圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値の、圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向と直交する方向での粒子径の最大値に対する比が0.7以下になるように変形可能である。本発明において、導電性粒子本体を、導電性粒子と呼ぶ場合に、絶縁部を備える導電性粒子を、絶縁部付き導電性粒子と呼ぶことができる。絶縁部が絶縁性粒子であるので、絶縁部付き導電性粒子は、絶縁性粒子付き導電性粒子である。
【0027】
本発明では、上記の構成が備えられているので、比較的低温で導電接続を行っても導通信頼性を高めることができる。
【0028】
本発明では、導電接続時に導電性粒子本体との電極との間に位置する絶縁部を排除するために、例えば120℃以下で熱圧着を行ったとしても、絶縁部を良好に排除することができる。結果として、電極と導電性粒子本体とを良好に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。本発明では、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0029】
本発明では、絶縁部のガラス転移温度を低くするだけでなく、導電性粒子本体が導電部の外表面に複数の突起を有することが重要である。例えば、絶縁部のガラス転移温度が100℃未満であっても、導電性粒子本体が導電部の外表面に複数の突起を有していなければ、導通信頼性を十分に高めることは困難である。この理由としては、熱圧着時の温度が絶縁部のガラス転移温度以下の場合には、絶縁部が軟らかくなり難いので、絶縁部が導電性粒子本体から外れ難くなるためであると考えられる。一方で、導電性粒子本体が導電部の外表面に複数の突起を有していると、該突起が絶縁部を排除することができ、電極と導電性粒子本体とを良好に接触させることができるので、導通信頼性を十分に高めることができると考えられる。本発明では、絶縁部のガラス転移温度を低くする構成と、導電性粒子本体が導電部の外表面に複数の突起を有する構成とを組み合わせることが極めて重要であることが見出された。
【0030】
低温での熱圧着により、導通信頼性をより一層高める観点からは、上記絶縁部のガラス転移温度は、好ましくは95℃未満、より好ましくは90℃未満、より一層好ましくは85℃未満、更に好ましくは80℃未満、更に一層好ましくは75℃未満、特に好ましくは70℃未満である。
【0031】
導電接続前の絶縁部の過度の脱離及び過度の変形を効果的に抑える観点からは、上記絶縁部のガラス転移温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、より一層好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上、更に一層好ましくは50℃以上、特に好ましくは55℃以上である。
【0032】
なお、本明細書において、上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定(TAInstruments社製「ARES-G2」)等を用いて測定することができる。
【0033】
本発明に係る導電性粒子では、上記絶縁部は、絶縁性粒子である。上記絶縁部は、絶縁層であってもよく、絶縁性粒子であってもよい。上記導電性粒子本体の表面を、上記絶縁層が被覆していてもよい。上記導電性粒子本体の表面に、上記絶縁性粒子が付着していてもよい。導電接続時の絶縁部の排除性をより一層高め、導通信頼性をより一層高める観点からは、上記絶縁部は、絶縁性粒子であることが好ましい。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子本体の表面上に複数の上記絶縁性粒子が配置されていることが好ましい。
【0034】
また、導電性粒子本体の表面上で、上記絶縁部は、単層であってもよく、多層であってもよく、絶縁性粒子本体の表面上に配置された絶縁性粒子の外側に、他の絶縁性粒子が配置されていてもよい。
【0035】
上記突起の平均高さは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記突起の平均高さが上記下限以上及び上記上限以下であると、接続抵抗が効果的に低くなる。
【0036】
上記突起の高さは、導電性粒子本体の中心と突起の先端とを結ぶ線(図1に示す破線L1)上における、突起が無いと想定した場合の導電部の仮想線(図1に示す破線L2)上(突起が無いと想定した場合の球状の導電性粒子本体の外表面上)から突起の先端までの距離を示す。すなわち、図1においては、破線L1と破線L2との交点から突起の先端までの距離を示す。
【0037】
導通信頼性をより一層高める観点からは、上記絶縁性粒子の平均粒子径の上記突起の平均高さに対する比(絶縁性粒子の平均粒子径/突起の平均高さ)は、好ましくは0.5を超え、より好ましくは2.0を超える。絶縁性粒子の意図しない脱離を抑え、絶縁信頼性をより一層高める観点からは、上記比(絶縁性粒子の平均粒子径/突起の平均高さ)は好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下である。
【0038】
上記絶縁性粒子の平均粒子径は、数平均粒子径を示す。絶縁性粒子の平均粒子径は、任意の絶縁性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0039】
本発明に係る導電性粒子では、上記絶縁性粒子が、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件を満足する少なくとも1つの圧縮条件(好ましくは温度100℃~120℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件を満足する少なくとも1つの圧縮条件)で圧縮されたときに、圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向(例えば鉛直方向)での粒子径の最大値(L1)の、圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向と直交する方向(例えば水平方向)での粒子径の最大値(L2)に対する比(L1/L2)が0.7以下になるように変形可能である。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記絶縁性粒子が、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件を満足する少なくとも1つの圧縮条件(好ましくは温度100℃~120℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件を満足する少なくとも1つの圧縮条件)で圧縮されたときに、圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向(例えば鉛直方向)での粒子径の最大値(L1)の、圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向と直交する方向(例えば水平方向)での粒子径の最大値(L2)に対する比(L1/L2)が0.5以下になるように変形可能であることが好ましく、0.3以下になるように変形可能であることがより好ましい。上記粒子径の最大値は、粒子径が最大となる部分の粒子径である。
【0040】
本発明では、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件の全体で、上記比(L1/L2)が上記上限以下であるように変形可能である必要はない。但し、温度100℃~120℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件の全体で、上記比(L1/L2)が上記上限以下であるように変形可能であることが好ましく、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件の全体で、上記比(L1/L2)が上記上限以下であるように変形可能であることがより好ましい。また、温度100℃及び圧力60MPaの圧縮条件で圧縮されたときに、上記比(L1/L2)が上記上限以下であるように変形可能であることが好ましい。
【0041】
なお、本明細書において、上記「変形」とは、絶縁性粒子が崩壊することも含まれる。
【0042】
導通信頼性をより一層高める観点からは、上記絶縁性粒子が、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件を満足する少なくとも1つの圧縮条件(好ましくは温度100℃~120℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件を満足する少なくとも1つの圧縮条件)で圧縮されたときに、圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向(例えば鉛直方向)での粒子径の最大値が、圧縮前の上記突起の平均高さ以下になるように変形可能であることが好ましく、圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向(例えば鉛直方向)での粒子径の最大値が、圧縮前の上記突起の平均高さの1.0倍以下になるように変形可能であることがより好ましい。
【0043】
本発明では、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件の全体で、上記圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値が上記上限以下であるように変形可能である必要はない。但し、温度100℃~120℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件の全体で、上記圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値が上記上限以下であるように変形可能であることが好ましく、温度100℃~160℃及び圧力60MPa~80MPaの圧縮条件の全体で、上記圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値が上記上限以下であるように変形可能であることがより好ましい。また、温度100℃及び圧力60MPaの圧縮条件で圧縮されたときに、上記圧縮後の上記絶縁性粒子の圧縮方向での粒子径の最大値が上記上限以下であるように変形可能であることが好ましい。
【0044】
上記絶縁性粒子を圧縮するときの温度は、好ましくは100℃以上であり、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下、特に好ましくは120℃以下である。上記絶縁性粒子を圧縮するときの圧力は、好ましくは60MPa以上であり、好ましくは80MPa以下、より好ましくは70MPa以下である。
【0045】
絶縁信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子本体の表面積全体に占める上記絶縁部(絶縁層又は絶縁性粒子)により被覆されている部分の面積である被覆率は、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは70%を超え、特に好ましくは75%以上、最も好ましくは80%以上である。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記被覆率は好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下、更に好ましくは95%以下である。上記被覆率は100%以下であってもよい。
【0046】
上記導電性粒子本体の表面積全体に占める上記絶縁性粒子により被覆されている部分の面積である被覆率は、以下のようにして求められる。
【0047】
走査型電子顕微鏡(SEM)での観察により、例えば20個の導電性粒子を観察し、導電性粒子における導電性粒子本体の被覆率(%)(付着率(%)ともいう)を求める。上記被覆率は、導電性粒子本体の表面積に占める絶縁部により被覆されている部分の合計の面積(投影面積)である。
【0048】
具体的には、絶縁部が絶縁性粒子である場合に、上記被覆率は、導電性粒子を一方向から走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した場合、観察画像における導電性粒子本体の表面の外周縁部分の円内の面積全体に占める、導電性粒子本体の表面の外周縁部分の円内における絶縁部の合計の面積を意味する。
【0049】
上記導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下である。導電性粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子本体と電極との接触面積を充分に大きくなり、かつ導電部を形成する際に凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。また、導電性粒子本体を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電部が基材粒子の表面から剥離し難くなる。さらに、上記導電性粒子の平均粒子径が大きい(10μmを超え、50μm以下である)場合には、上記導電性粒子の平均粒子径が小さい(1μm以上、10μm以下である)場合よりも、低圧及び低温度で実装できるため、上記導電性粒子をカメラモジュール等の半導体装置モジュールに好適に用いることができる。
【0050】
上記導電性粒子の平均粒子径は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0051】
上記導電性粒子は、160℃以下で熱圧着することにより、導電接続するために好適に用いられ、120℃以下で熱圧着することにより、導電接続するためにより好適に用いられ、110℃以下で熱圧着することにより、導電接続するために更に好適に用いられ、100℃以下で熱圧着することにより、導電接続するために特に好適に用いられる。
【0052】
上記導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散され、導電材料を得るために好適に用いられる。
【0053】
次に、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0054】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0055】
図1に示す導電性粒子1は、導電性粒子本体2と、複数の絶縁性粒子3とを備える。
【0056】
導電性粒子本体2は、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電部12と、複数の芯物質13とを有する。導電部12は導電層である。導電部12は、基材粒子11に接している。導電部12は、基材粒子11の表面を覆っている。導電性粒子本体2は、基材粒子11の表面が導電部12により被覆された被覆粒子である。導電性粒子本体2は表面に導電部12を有する。
【0057】
導電性粒子本体2は、導電部12の外表面に、複数の突起を有する。導電部12は外表面に、複数の突起を有する。複数の芯物質13が、基材粒子12の表面上に配置されている。複数の芯物質13は、導電部12内に埋め込まれている。芯物質13は、突起の内側に配置されている。導電部12は、複数の芯物質13を被覆している。複数の芯物質13により、導電部12の外表面が隆起されており、突起が形成されている。
【0058】
絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2の表面上に配置されている。複数の絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2の表面に接触しており、導電性粒子本体2の表面に付着している。複数の絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2における導電部12の外表面に接触しており、導電部12の外表面に付着している。
【0059】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0060】
図2に示す導電性粒子1Aは、導電性粒子本体2Aと、複数の絶縁性粒子3とを備える。
【0061】
導電性粒子1と導電性粒子1Aとでは、導電性粒子本体2と導電性粒子本体2Aとが異なる。
【0062】
導電性粒子本体2Aは、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電部12Aと、複数の芯物質13とを有する。
【0063】
導電性粒子1と導電性粒子1Aとでは、導電部12と導電部12Aとが異なる。導電部12Aは全体で、基材粒子11側に第1の導電部12AAと、基材粒子11側とは反対側に第2の導電部12ABとを有する。導電性粒子1では、1層構造の導電部12が形成されているのに対し、導電性粒子1Aでは、第1の導電部12AA及び第2の導電部12ABを有する2層構造の導電部12Aが形成されている。第1の導電部12AAと第2の導電部12ABとは、別の導電部として形成されている。
【0064】
第1の導電部12AAは、基材粒子11の表面上に配置されている。基材粒子11と第2の導電部12ABとの間に、第1の導電部12AAが配置されている。第1の導電部12AAは、基材粒子11に接している。第2の導電部12ABは、第1の導電部12AAに接している。従って、基材粒子11の表面上に第1の導電部12AAが配置されており、第1の導電部12AAの外表面上に第2の導電部12ABが配置されている。
【0065】
導電性粒子本体2Aは、導電部12Aの外表面に、複数の突起を有する。導電部12Aは外表面に、複数の突起を有する。複数の芯物質13が、基材粒子12の表面上に配置されている。複数の芯物質13は、導電部12A及び第1の導電部12AA内に埋め込まれている。導電部12A及び第1の導電部12AAは、複数の芯物質13を被覆している。複数の芯物質13により、導電部12A、第1の導電部12AA及び第2の導電部12ABの外表面が隆起されており、突起が形成されている。
【0066】
絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2Aの表面上に配置されている。
【0067】
芯物質は、基材粒子に接していなくてもよい。芯物質は、第1の導電部の外表面上に配置されていてもよい。第1の導電部の外表面の形状は、球状であってもよい。
【0068】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0069】
図3に示す導電性粒子1Bは、導電性粒子本体2Bと、複数の絶縁性粒子3とを備える。
【0070】
導電性粒子1と導電性粒子1Bとでは、導電性粒子本体2と導電性粒子本体2Bとが異なる。
【0071】
導電性粒子本体2Bは、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電部12Bとを有する。導電性粒子本体2Bは、芯物質を有さない。
【0072】
導電性粒子本体2と導電性粒子本体2Bとでは、芯物質の有無が異なり、結果として導電部が異なっている。導電性粒子1では、芯物質13が用いられ、かつ芯物質13を被覆するように導電部12が形成されているのに対し、導電性粒子1Bでは、芯物質は用いられておらず、導電部12Bが形成されている。
【0073】
導電部12Bは、第1の部分と、該第1の部分よりも厚みが厚い第2の部分とを有する。導電性粒子本体2Bは、導電部12Bの外表面に、複数の突起を有する。導電部12Bは外表面に、複数の突起を有する。複数の突起を除く部分が、導電部12Bの上記第1の部分である。複数の突起は、導電部12Bの厚みが厚い上記第2の部分である。
【0074】
絶縁性粒子3は、導電性粒子本体2Bの表面上に配置されている。
【0075】
図4は、絶縁部が絶縁層である場合の導電性粒子を示す断面図である。
【0076】
図4に示す導電性粒子1Cは、導電性粒子本体2と、絶縁層3Cとを備える。
【0077】
導電性粒子1と導電性粒子1Cとでは、絶縁性粒子3と絶縁層3Cとが異なる。
【0078】
導電性粒子1Cでは、絶縁層3Cは、導電性粒子本体2の表面上に配置されている。絶縁層3Cは、導電性粒子本体2の表面に接触しており、導電性粒子本体2の表面を被覆している。複数の絶縁層3Cは、導電性粒子本体2における導電部12の外表面に接触しており、導電部12の外表面を被覆している。導電部12の突起がある部分の表面上に、絶縁層3Cが配置されている。導電部12の突起がない部分の表面上にも、絶縁層3Cが配置されている。導電部12の突起がある部分の表面上に配置された絶縁層3Cと、導電部12の突起がない部分の表面上に配置された絶縁層3Cとは、連なっている。
【0079】
導電性粒子1Cでは、導電性粒子1,1A,1Bと比べて、導通信頼性が低くなる傾向がある。
【0080】
絶縁部は、絶縁性粒子又は絶縁層であることが好ましい。導通信頼性をより一層高める観点からは、絶縁部は、絶縁性粒子であることが好ましい。絶縁信頼性をより一層高める観点からは、絶縁部は、絶縁層であることが好ましい。本発明に係る導電性粒子では、絶縁部は、絶縁性粒子である。
【0081】
以下、導電性粒子、及び絶縁性粒子等の他の詳細を説明する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味し「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との一方又は双方を意味する。
【0082】
[導電性粒子本体]
上記導電性粒子本体は、導電部の外表面に突起を有する。該突起は複数であることが好ましい。導電性粒子本体により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。導電部の外表面に突起を有する導電性粒子を用いることで、電極間に導電性粒子を配置して圧着させることにより、突起により上記酸化被膜を効果的に排除できる。このため、電極と導電部とがより一層確実に接触し、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。さらに、電極間の接続時に、導電性粒子本体の突起によって、導電性粒子本体と電極との間の絶縁部を効果的に排除できる。また、本発明では、絶縁部のガラス転移温度が低いので、絶縁部を効果的に排除できる。
【0083】
上記導電性粒子本体は、導電部を有する。上記導電部は、導電層であることが好ましい。上記導電性粒子本体は、基材粒子と、基材粒子の表面上に配置された導電部を有する導電性粒子であってもよく、全体が導電部である金属粒子であってもよい。コストを低減したり、導電性粒子本体の柔軟性を高くして、電極間の導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、基材粒子と、基材粒子の表面上に配置された導電部とを有する導電性粒子本体が好ましい。
【0084】
基材粒子:
上記基材粒子としては、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。上記基材粒子は、金属粒子を除く基材粒子であることが好ましく、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であることがより好ましい。上記基材粒子は、コアシェル粒子であってもよい。
【0085】
上記基材粒子は、樹脂により形成された樹脂粒子であることが好ましい。導電性粒子を用いて電極間を接続する際には、導電性粒子を電極間に配置した後、圧着することにより導電性粒子を圧縮させる。基材粒子が樹脂粒子であると、上記圧着の際に導電性粒子本体が変形しやすく、導電性粒子本体と電極との接触面積が大きくなる。このため、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0086】
上記樹脂粒子の材料として、種々の樹脂が好適に用いられる。上記樹脂粒子の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及び、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させて得られる重合体等が挙げられる。
【0087】
導電材料に適した任意の圧縮時の物性を有する樹脂粒子を設計及び合成することができ、かつ基材粒子の硬度を好適な範囲に容易に制御できるので、上記樹脂粒子の材料は、エチレン性不飽和基を複数有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
【0088】
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を重合させて得る場合には、上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
【0089】
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート化合物;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル化合物;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
【0090】
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
【0091】
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
【0092】
上記基材粒子が金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である場合に、上記基材粒子の材料である無機物としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム、ジルコニア及びカーボンブラック等が挙げられる。上記無機物は金属ではないことが好ましい。上記シリカにより形成された粒子としては特に限定されないが、例えば、加水分解性のアルコキシシリル基を2つ以上持つケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
【0093】
上記有機無機ハイブリッド粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを有するコアシェル型の有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。上記コアが有機コアであることが好ましい。上記シェルが無機シェルであることが好ましい。電極間の接続抵抗を効果的に低くする観点からは、上記基材粒子は、有機コアと上記有機コアの表面上に配置された無機シェルとを有する有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。
【0094】
上記有機コアの材料としては、上述した樹脂粒子の材料等が挙げられる。
【0095】
上記無機シェルの材料としては、上述した基材粒子の材料として挙げた無機物が挙げられる。上記無機シェルの材料は、シリカであることが好ましい。上記無機シェルは、上記コアの表面上で、金属アルコキシドをゾルゲル法によりシェル状物とした後、該シェル状物を焼成させることにより形成されていることが好ましい。上記金属アルコキシドはシランアルコキシドであることが好ましい。上記無機シェルはシランアルコキシドにより形成されていることが好ましい。
【0096】
上記基材粒子が金属粒子である場合に、該金属粒子の材料である金属としては、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金及びチタン等が挙げられる。但し、上記基材粒子は金属粒子ではないことが好ましい。
【0097】
導電部:
上記導電部の材料である金属は特に限定されない。導電性粒子が、全体が導電部である金属粒子である場合、該金属粒子の材料である金属は特に限定されない。上記金属としては、例えば、金、銀、パラジウム、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。電極間の接続抵抗がより一層低くなるので、錫を含む合金、ニッケル、パラジウム、銅又は金が好ましく、ニッケル又はパラジウムが好ましい。
【0098】
また、導通信頼性を効果的に高めることができるので、上記導電部及び上記導電部の外表面部分はニッケルを含むことが好ましい。ニッケルを含む導電部100重量%中のニッケルの含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より一層好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記ニッケルを含む導電部100重量%中のニッケルの含有量は97重量%以上であってもよく、97.5重量%以上であってもよく、98重量%以上であってもよい。
【0099】
なお、導電部の表面には、酸化により水酸基が存在することが多い。一般的に、ニッケルにより形成された導電部の表面には、酸化により水酸基が存在する。このような水酸基を有する導電部の表面(導電性粒子本体の表面)に、化学結合を介して、絶縁部を配置することができる。
【0100】
上記導電部は、1つの層により形成されていてもよい。導電部は、複数の層により形成されていてもよい。すなわち、導電部は、2層以上の積層構造を有していてもよい。導電部が複数の層により形成されている場合には、最外層は、金層、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は錫と銀とを含む合金層であることが好ましく、金層であることがより好ましい。最外層がこれらの好ましい導電部である場合には、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、最外層が金層である場合には、耐腐食性がより一層高くなる。
【0101】
上記基材粒子の表面に導電部を形成する方法は特に限定されない。導電部を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。導電部の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
【0102】
上記導電部の厚みは、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.3μm以下である。導電部の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、充分な導電性が得られ、かつ導電性粒子が硬くなりすぎずに、電極間の接続の際に導電性粒子が充分に変形する。
【0103】
上記導電部が複数の層により形成されている場合に、最外層の導電層の厚みは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。上記最外層の導電層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、最外層の導電層による被覆が均一になり、耐腐食性が充分に高くなり、かつ電極間の接続抵抗が充分に低くなる。
【0104】
上記導電部の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子又は絶縁性粒子付き導電性粒子の断面を観察することにより測定できる。
【0105】
芯物質:
上記突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電部を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきにより導電部を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきにより導電部を形成する方法等が挙げられる。上記突起を形成する他の方法としては、基材粒子の表面上に、第1の導電部を形成した後、該第1の導電部上に芯物質を配置し、次に第2の導電部を形成する方法、並びに基材粒子の表面上に導電部(第1の導電部又は第2の導電部等)を形成する途中段階で、芯物質を添加する方法等が挙げられる。また、突起を形成するために、上記芯物質を用いずに、基材粒子に無電解めっきにより導電部を形成した後、導電部の表面上に突起状にめっきを析出させ、更に無電解めっきにより導電部を形成する方法等を用いてもよい。
【0106】
上記基材粒子の外表面上に芯物質を配置する方法としては、例えば、基材粒子の分散液中に、芯物質を添加し、基材粒子の表面に芯物質を、例えば、ファンデルワールス力により集積させ、付着させる方法、並びに基材粒子を入れた容器に、芯物質を添加し、容器の回転等による機械的な作用により基材粒子の表面に芯物質を付着させる方法等が挙げられる。付着させる芯物質の量を制御しやすいため、分散液中の基材粒子の表面に芯物質を集積させ、付着させる方法が好ましい。
【0107】
上記芯物質の材料は特に限定されない。上記芯物質の材料のモース硬度は高いことが好ましい。
【0108】
上記芯物質の材料の具体例としては、チタン酸バリウム(モース硬度4.5)、ニッケル(モース硬度5)、シリカ(二酸化珪素、モース硬度6~7)、酸化チタン(モース硬度7)、ジルコニア(モース硬度8~9)、アルミナ(モース硬度9)、炭化タングステン(モース硬度9)及びダイヤモンド(モース硬度10)等が挙げられる。上記無機粒子は、ニッケル、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが好ましく、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることがより好ましく、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが更に好ましく、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが特に好ましい。上記芯物質の材料のモース硬度は好ましくは4以上、より好ましくは5以上、より一層好ましくは6以上、更に好ましくは7以上、特に好ましくは7.5以上である。
【0109】
上記芯物質の形状は特に限定されない。芯物質の形状は塊状であることが好ましい。芯物質としては、例えば、粒子状の塊、複数の微小粒子が凝集した凝集塊、及び不定形の塊等が挙げられる。
【0110】
上記芯物質の平均径(平均粒子径)は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記芯物質の平均径が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。
【0111】
上記芯物質の「平均径(平均粒子径)」は、数平均径(数平均粒子径)を示す。芯物質の平均径は、任意の芯物質50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0112】
(絶縁部)
本発明に係る導電性粒子では、上記絶縁部は、絶縁性粒子である。上記絶縁部の材料としては、ポリオレフィン化合物、(メタ)アクリレート重合体、(メタ)アクリレート共重合体、ブロックポリマー、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の架橋物、熱硬化性樹脂及び水溶性樹脂等が挙げられる。上記絶縁部の材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0113】
上記ポリオレフィン化合物としては、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート重合体としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリドデシル(メタ)アクリレート及びポリステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ブロックポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、SB型スチレン-ブタジエンブロック共重合体、及びSBS型スチレン-ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ビニル重合体及びビニル共重合体等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂の架橋としては、ポリエチレングリコールメタクリレート、アルコキシ化トリメチロールプロパンメタクリレートやアルコキシ化ペンタエリスリトールメタクリレート等の導入が挙げられる。上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及びメチルセルロース等が挙げられる。また、重合度の調整には連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、チオールや四塩化炭素などを挙げることができる。
【0114】
上記絶縁部の材料は、絶縁部のガラス転移温度が100℃未満になるように適宜選ばれる。
【0115】
上記導電部の表面、及び絶縁部の表面はそれぞれ、反応性官能基を有する化合物によって被覆されていてもよい。導電部の表面と絶縁部の表面とは、直接化学結合していなくてもよく、反応性官能基を有する化合物によって間接的に化学結合していてもよい。導電部の外表面にカルボキシル基を導入した後、該カルボキシル基がポリエチレンイミンなどの高分子電解質を介して絶縁部の表面の官能基と化学結合していても構わない。
【0116】
(導電材料)
本発明に係る導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。上記導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散されて用いられることが好ましく、バインダー樹脂中に分散されて導電材料として用いられることが好ましい。上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。上記導電材料は、電極間の電気的な接続に用いられることが好ましい。上記導電材料は回路接続用導電材料であることが好ましい。
【0117】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂は、熱可塑性成分(熱可塑性化合物)又は硬化性成分を含むことが好ましく、硬化性成分を含むことがより好ましい。上記硬化性成分としては、光硬化性成分及び熱硬化性成分が挙げられる。上記光硬化性成分は、光硬化性化合物及び光重合開始剤を含むことが好ましい。上記熱硬化性成分は、熱硬化性化合物及び熱硬化剤を含むことが好ましい。
【0118】
上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル-スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0120】
上記導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0121】
導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電材料の100℃での粘度は好ましくは1000Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上である。絶縁信頼性をより一層高める観点からは、上記導電材料の100℃での粘度は好ましくは5000Pa・s以下、より好ましくは4000Pa・s以下である。
【0122】
上記粘度は、例えば、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)等を用いて、100℃及び5rpmの条件で測定可能である。
【0123】
本発明に係る導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。本発明に係る導電材料が、導電フィルムである場合には、導電性粒子を含む導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。上記導電ペーストは、異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電フィルムは、異方性導電フィルムであることが好ましい。
【0124】
上記導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上であり、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子本体が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
【0125】
上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下、更に好ましくは40重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0126】
(接続構造体)
上記導電性粒子を用いて、又は上記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
【0127】
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、上記接続部の材料が、上述した導電性粒子であるか、又は上述した導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料であることが好ましい。上記接続部が、上述した導電性粒子により形成されているか、又は上述した導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されていることが好ましい。導電性粒子が用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。
【0128】
上記第1の接続対象部材は、第1の電極を表面に有することが好ましい。上記第2の接続対象部材は、第2の電極を表面に有することが好ましい。上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記導電性粒子における上記導電性粒子本体により電気的に接続されていることが好ましい。
【0129】
上記接続構造体は、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材との間に、上記導電性粒子を配置するか、又は上記導電材料を配置する工程と、熱圧着することにより、導電接続する工程とを経て、得ることができる。上記熱圧着時に、上記絶縁部のガラス転移温度以上に加熱することが好ましい。
【0130】
図5は、図1に示す導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に示す断面図である。
【0131】
図5に示す接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1,第2の接続対象部材52,53を接続している接続部54とを備える。接続部54は、導電性粒子1を含む導電材料により形成されている。上記導電材料が熱硬化性を有し、接続部54が導電材料を熱硬化させることにより形成されていることが好ましい。なお、図5では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。導電性粒子1にかえて、導電性粒子1A,1Bを用いてもよい。
【0132】
第1の接続対象部材52は表面(上面)に、複数の第1の電極52aを有する。第2の接続対象部材53は表面(下面)に、複数の第2の電極53aを有する。第1の電極52aと第2の電極53aとが、1つ又は複数の導電性粒子1における導電性粒子本体2(図では符号を示さず)により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材52,53が導電性粒子本体2により電気的に接続されている。
【0133】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例としては、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記熱圧着の圧力は好ましくは40MPa以上、より好ましくは60MPa以上であり、好ましくは90MPa以下、より好ましくは70MPa以下である。上記熱圧着の加熱の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下である。
【0134】
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記接続対象部材は電子部品であることが好ましい。上記導電性粒子は、電子部品における電極の電気的な接続に用いられることが好ましい。
【0135】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銀電極、SUS電極、銅電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0136】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0137】
(実施例1)
(1)導電性粒子の作製
粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子(基材粒子A、積水化学工業社製「ミクロパールSP-203」)を用意した。パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、上記基材粒子A10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、基材粒子Aを取り出した。次いで、基材粒子Aをジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、基材粒子Aの表面を活性化させた。表面が活性化された基材粒子Aを十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、分散液を得た。次に、アルミナ粒子スラリー(平均粒子径152nm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着された基材粒子を含む懸濁液を得た。
【0138】
また、硫酸ニッケル0.35mol/L、ジメチルアミンボラン1.38mol/L及びクエン酸ナトリウム0.5mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。
【0139】
得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、基材粒子Aの表面にニッケル-ボロン導電層(厚み0.15μm)を配置して、表面が導電層である導電性粒子Aを得た。導電部の外表面の全表面積100%中、突起がある部分の表面積は70%であった。
【0140】
(2)絶縁性粒子の作製
4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブを取り付けた5000mLセパラブルフラスコに、蒸留水4000ml、エタノール900ml、メタクリル酸メチル3.3mol、メタクリル酸トリデシル4.1mol、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールメタクリレート0.5mmol、及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.3mmolを含むモノマー組成物を入れた後、250rpmで攪拌し、窒素雰囲気下60℃で5時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールメタクリレートに由来するP-OH基を表面に有する絶縁性粒子(平均粒子径374nm)を得た。
【0141】
(3)絶縁性粒子付き導電性粒子の作製
上記で得られた絶縁性粒子をそれぞれ超音波照射下で蒸留水に分散させ、絶縁性粒子の10重量%水分散液を得た。得られた導電性粒子A10gを蒸留水500mLに分散させ、絶縁性粒子の10重量%水分散液1gを添加し、室温で8時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターで濾過した後、更にメタノールで洗浄、乾燥し、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)を得た。
【0142】
(4)導電材料(異方性導電ペースト)の作製
得られた導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)7重量部と、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂25重量部と、フルオレン型エポキシ樹脂4重量部と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂30重量部と、SI-60L(三新化学工業社製)とを配合して、3分間脱泡及び攪拌することで、異方性導電ペーストを得た。
【0143】
(5)接続構造体の作製
L/Sが10μm/20μmであるIZO電極パターン(第1の電極、電極表面の金属のビッカース硬度100Hv)が上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが10μm/20μmであるAu電極パターン(第2の電極、電極表面の金属のビッカース硬度50Hv)が下面に形成された半導体チップを用意した。
【0144】
上記透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が100℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、60MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を100℃で硬化させ、接続構造体を得た。また、接続構造体の作製時の温度及び圧力を下記の表1に示すように変更して、接続構造体を得た。
【0145】
(実施例2)
絶縁性粒子の作製時に使用するメタクリル酸トリデシルをメタクリル酸ステアリルに変更したこと、並びに、絶縁性粒子の平均粒子径を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0146】
(実施例3)
絶縁性粒子の作製時に使用するメタクリル酸トリデシルをメタクリル酸ドデシルに変更したこと、並びに、絶縁性粒子の平均粒子径を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0147】
(実施例4)
絶縁性粒子の作製時に使用するメタクリル酸トリデシルをメタクリル酸オクチルに変更したこと、並びに、絶縁性粒子の平均粒子径を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0148】
参考例5)
絶縁性粒子の作製時に使用するメタクリル酸トリデシルをメタクリル酸アミルに変更したこと、並びに、絶縁性粒子の平均粒子径を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0149】
(実施例6)
導電性粒子の作製時に使用するアルミナ粒子スラリーの平均粒子径を102nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0150】
(実施例7)
導電性粒子の作製時に使用するアルミナ粒子スラリーの平均粒子径を308nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0151】
(実施例8)
導電性粒子の作製時に使用するアルミナ粒子スラリーをニッケル粒子スラリー(平均粒子径154nm)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0152】
(実施例9)
絶縁性粒子の平均粒子径を156nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0153】
(実施例10)
絶縁性粒子の平均粒子径を511nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0154】
(実施例11)
基材粒子Aの平均粒子径を10μmに変更したこと、並びに、絶縁性粒子の平均粒子径を下記の表2に示すように設定したこと以外は、実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0155】
(実施例12)
基材粒子Aの平均粒子径を10μmに変更したこと、導電性粒子の作製時に使用するアルミナ粒子スラリーをニッケル粒子スラリー(平均粒子径154nm)に変更したこと、並びに、絶縁性粒子の平均粒子径を下記の表2に示すように設定したこと以外は、実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0156】
(実施例13)
基材粒子Aの平均粒子径を20μmに変更したこと、導電性粒子の作製時に使用するアルミナ粒子スラリーの平均粒子径を457nmに変更したこと、並びに、絶縁性粒子の平均粒子径を下記の表2に示すように設定したこと以外は、実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0157】
(実施例14)
基材粒子Aの平均粒子径を20μmに変更したこと、導電性粒子の作製時に使用するアルミナ粒子スラリーをニッケル粒子スラリーの平均粒子径461nmに変更したこと、並びに、絶縁性粒子の平均粒子径を下記の表2に示すように設定したこと以外は、実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0158】
(比較例1)
絶縁性粒子の作製時に使用するメタクリル酸エステルを全てメタクリル酸メチルに変更したこと、並びに、絶縁性粒子の平均粒子径を下記の表2に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0159】
(比較例2)
絶縁性粒子の作製時に使用するメタクリル酸トリデシルをメタクリル酸ブチルに変更したこと、並びに、絶縁性粒子の平均粒子径を下記の表2に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0160】
(比較例3)
導電性粒子の作製時にアルミナ粒子スラリーを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0161】
(比較例4)
基材粒子Aの平均粒子径を10μmに変更したこと、導電性粒子の作製時にアルミナ粒子スラリーを使用しなかったこと、並びに、絶縁性粒子の平均粒子径を下記の表2に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0162】
(比較例5)
基材粒子Aの平均粒子径を20μmに変更したこと、導電性粒子の作製時にアルミナ粒子スラリーを使用しなかったこと、並びに、絶縁性粒子の平均粒子径を下記の表2に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0163】
(評価)
(1)導電材料(異方性導電ペースト)の粘度
E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、異方性導電ペーストの粘度を、100℃及び5rpmの条件で測定した。
【0164】
(2)圧縮時の絶縁性粒子の変形量
FIB-SEM複合装置を用いて、得られた接続構造体の薄膜切片のSEM画像を観察した。得られた接続構造体において、導電性粒子と透明ガラス基板の間に挟まれた絶縁性粒子10個の変形量(上述した比L1/L2)を測定し、測定値の平均値を求めた。
【0165】
(3)導通信頼性(上下の電極間)
実施例1と同様の方法で作製された20個の接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。導通信頼性を下記の基準で判定した。
【0166】
[導通信頼性の判定基準]
○○:接続抵抗が2.0Ω以下
○:接続抵抗が2.0Ωを超え、3.0Ω以下
△:接続抵抗が3.0Ωを超え、5.0Ω以下
×:接続抵抗が5.0Ωを超える
【0167】
(4)絶縁信頼性(横方向に隣り合う電極間)
上記(3)導通信頼性の評価で得られた20個の接続構造体において、隣接する電極間のリークの有無を、テスターで抵抗を測定することにより評価した。絶縁性を下記の基準で判定した。
【0168】
[絶縁信頼性の判定基準]
○○:抵抗値が10Ω以上の接続構造体の個数の割合が80%以上
○:抵抗値が10Ω以上の接続構造体の個数の割合が70%以上、80%未満
△:抵抗値が10Ω以上の接続構造体の個数の割合が60%以上、70%未満
×:抵抗値が10Ω以上の接続構造体の個数の割合が60%未満
【0169】
結果を下記の表1,2に示す。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【符号の説明】
【0172】
1,1A,1B,1C…導電性粒子
2,2A,2B…導電性粒子本体
3…絶縁性粒子
3C…絶縁層
11…基材粒子
12,12A,12B…導電部
12AA…第1の導電部
12AB…第2の導電部
13…芯物質
51…接続構造体
52…第1の接続対象部材
52a…第1の電極
53…第2の接続対象部材
53a…第2の電極
54…接続部
図1
図2
図3
図4
図5