(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】生分解性フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20231108BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20231108BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20231108BHJP
C08L 3/02 20060101ALI20231108BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20231108BHJP
B65D 65/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
C08L67/02
C08L67/04
C08L3/02
C08L101/16
B65D65/00 A BRQ
(21)【出願番号】P 2021197595
(22)【出願日】2021-12-06
(62)【分割の表示】P 2019554878の分割
【原出願日】2018-03-26
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】102017003341.2
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503422262
【氏名又は名称】バイオ-テック ビオローギッシュ ナチューフェアパックンゲン ゲーエムベーハー ウント コンパニ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング フリーデク
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス マタール
(72)【発明者】
【氏名】トシュテン ロロフ
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド シュミット
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/079244(WO,A1)
【文献】特表2004-510868(JP,A)
【文献】特表2004-510867(JP,A)
【文献】特表2004-510500(JP,A)
【文献】特表2016-513153(JP,A)
【文献】特開2018-016720(JP,A)
【文献】特開平11-080524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B65D 65/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分AおよびBの合計に対して10~90重量%の成分Aと10~90重量%の成分Bとを含む、海水中で分解される用途のフィルムであって、
Aが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリヒドロキシアルカノエートであり、
Bが、少なくとも1つのジオール成分と少なくとも2つのジカルボン酸成分とから構成される脂肪族コポリエステルであり、
さらに、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)、ポリ(ブチレンセバケート-co-テレフタレート)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー成分を含み、
前記フィルムが、1~200μmの全厚を有
し、
ASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃での180日以内での塩水への導入後に、前記フィルムの有機炭素の少なくとも40%または少なくとも50%が二酸化炭素に転化されていることを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記フィルムが、以下の機械的特性:
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での前記フィルムの引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での前記フィルムの引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での前記フィルムの破断点伸びが、少なくとも100%である、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での前記フィルムの破断点伸びが、少なくとも100%である、
のうちの少なくとも1つを示すことを特徴とする、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムが、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大30重量%を有し、かつ/または
ASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃での180日以内での塩水への導入後に、前記フィルムの有機炭素の少なくとも40%または少なくとも50%が二酸化炭素に転化されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
成分Aが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヘキサノエート)であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
成分Aが、
100,000~1,500,000g/モルの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
成分Aが、400,000~700,000g/モルの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
成分Aが、500,000~600,000g/モルの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
成分Bが、ポリ(ブチレンアジペート-co-スクシネート)であることを特徴とする、請求項1から
7までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
成分Bが、
50,000~500,000g/モルの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から
8までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
成分Bが、90,000~300,000g/モルの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
成分Bが、100,000~200,000g/モルの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
前記フィルムが、全重量に対して0.1~30重量
%のポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)を含むことを特徴とする、請求項1から
11までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
前記フィルムが、全重量に対して15~25重量%のポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)を含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項14】
前記フィルムが、全重量に対して18~22重量%のポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)を含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項15】
前記フィルムが、全重量に対して0.1~30重量
%のポリ(ブチレンセバケート-co-テレフタレート)を含むことを特徴とする、請求項1から
14までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項16】
前記フィルムが、全重量に対して15~25重量%のポリ(ブチレンセバケート-co-テレフタレート)を含むことを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項17】
前記フィルムが、全重量に対して18~22重量%のポリ(ブチレンセバケート-co-テレフタレート)を含むことを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項18】
前記フィルムが、全重量に対して0.1~30重量
%のポリカプロラクトンを含むことを特徴とする、請求項1から
17までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項19】
前記フィルムが、全重量に対して15~25重量%のポリカプロラクトンを含むことを特徴とする、請求項1から17までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項20】
前記フィルムが、全重量に対して18~22重量%のポリカプロラクトンを含むことを特徴とする、請求項1から17までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項21】
前記フィルムが、全重量に対して0.1~20重量
%のデンプン、あるいは熱可塑性デンプンを含むことを特徴とする、請求項1から
20までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項22】
前記フィルムが、全重量に対して5~15重量%のデンプン、あるいは熱可塑性デンプンを含むことを特徴とする、請求項1から20までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項23】
前記フィルムが、全重量に対して8~12重量%のデンプン、あるいは熱可塑性デンプンを含むことを特徴とする、請求項1から20までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項24】
前記フィルムが、5~200μ
mの全厚を有することを特徴とする、請求項1から
23までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項25】
前記フィルムが、10~80μmの全厚を有することを特徴とする、請求項1から23までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項26】
前記フィルムが、15~60μmの全厚を有することを特徴とする、請求項1から23までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項27】
前記フィルムが、成分AおよびBの合計に対して20~80重量
%の成分Aを含むことを特徴とする、請求項1から
26までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項28】
前記フィルムが、成分AおよびBの合計に対して25~75重量%の成分Aを含むことを特徴とする、請求項1から26までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項29】
EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも20MP
aであることを特徴とする、請求項1から
28までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項30】
EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも25MPaであることを特徴とする、請求項1から28までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項31】
EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも20MP
aであることを特徴とする、請求項1から
30までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項32】
EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも25MPaであることを特徴とする、請求項1から30までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項33】
EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも200
%であることを特徴とする、請求項1から
32までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項34】
EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも400%であることを特徴とする、請求項1から32までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項35】
EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも200
%であることを特徴とする、請求項1から
34までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項36】
EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも400%であることを特徴とする、請求項1から34までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項37】
前記フィルムが、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大20重量%または最大10重量%を有することを特徴とする、請求項1から
36までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項38】
DIN EN ISO 14855-1:2012の方法に準拠した活性分解条件において、180日以内で、前記フィルムの有機炭素の少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%が二酸化炭素に転化されたことを特徴とする、請求項1から
37までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項39】
1~200μmの全厚を有するとともに、以下の機械的特性:
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
のうちの少なくとも1つを示すフィルムであって、該フィルムは、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大30重量%を有し、かつ/またはASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃の温度での180日以内での塩水への導入後に、該フィルムの有機炭素の少なくとも30%が二酸化炭素に転化されているフィルムを製造するための、成分A、成分B、及び、さらに、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)、ポリ(ブチレンセバケート-co-テレフタレート)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー成分を含むポリマーブレンドの使用方法
であって、
Aが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリヒドロキシアルカノエートであり、
Bが、少なくとも1つのジオール成分と少なくとも2つのジカルボン酸成分とから構成される脂肪族コポリエステルである、方法。
【請求項40】
成分Aが、請求項1、4または5のいずれか一項に規定されているとおりであり、かつ/または成分Bが、請求項1、6または7のいずれか一項に規定されているとおりであることを特徴とする、請求項
39に記載の使用方法。
【請求項41】
前記ポリマーブレンドが、成分AおよびBの合計に対して10~90重量
%の成分Aを含み、かつ/または成分AおよびBの合計に対して10~90重量
%の成分Bを含むことを特徴とする、請求項
39または
40に記載の使用方法。
【請求項42】
前記ポリマーブレンドが、成分AおよびBの合計に対して25~75重量%の成分Aを含み、かつ/または成分AおよびBの合計に対して25~75重量%の成分Bを含むことを特徴とする、請求項39または40に記載の使用方法。
【請求項43】
請求項1から
38までのいずれか一項に記載のフィルムを含む、輸送用袋。
【請求項44】
前記輸送用袋が、手提げ袋、果実用袋、野菜用袋、軽量Tシャツバッグおよび超軽量Tシャツバッグからなる群から選択されることを特徴とする、請求項
43に記載の輸送用袋。
【請求項45】
前記輸送用袋が、1~90
gの重量を有することを特徴とする、請求項
43または
44に記載の輸送用袋。
【請求項46】
前記輸送用袋が、1~10gの重量を有することを特徴とする、請求項43または44に記載の輸送用袋。
【請求項47】
前記輸送用袋が、1.5~5gの重量を有することを特徴とする、請求項43または44に記載の輸送用袋。
【請求項48】
a.成分Aおよび成分Bを含むポリマーブレンドを準備するステップと、
b.ステップaよる前記ポリマーブレンドからフィルムを形成するステップと、
を含む、請求項1から
38までのいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項49】
前記方法が、共押出ステップを含むことを特徴とする、請求項
48に記載の方法。
【請求項50】
前記方法が、積層ステップを含むことを特徴とする、請求項
48または
49に記載の方法。
【請求項51】
成分Aが、請求項1、4または5のいずれか一項に規定されているとおりであり、かつ/または成分Bが、請求項1、6または7のいずれか一項に規定されているとおりであることを特徴とする、請求項
48から
50までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記ポリマーブレンドが、成分AおよびBの合計に対して10~90重量
%の成分Aを含み、かつ/または成分AおよびBの合計に対して10~90重量
%の成分Bを含むことを特徴とする、請求項
48から
51までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記ポリマーブレンドが、成分AおよびBの合計に対して25~75重量%の成分Aを含み、かつ/または成分AおよびBの合計に対して25~75重量%の成分Bを含むことを特徴とする、請求項48から51までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムおよびその製造方法に関する。さらに本発明は、フィルム製造へのポリマーブレンドの使用に関する。さらに本発明は、輸送用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック廃棄物による海洋への負荷は、すでに数十年来にわたり知られている、今日まで解決されていない問題である。特に海洋動物にとって、プラスチックは重大な問題である。こうした動物は、比較的大きな合成樹脂部品に引っかかり、小さな合成樹脂部品を、消化できない食物と混同する。特に小さな合成樹脂部品、いわゆるマイクロプラスチックは、食物を通して動物に吸収され、人間の食物連鎖にまで達する。
【0003】
海洋中に存在する合成樹脂部品の大半は、買い物など日常的に使用されるような合成樹脂製手提げ袋(「プラスチック袋」)に由来する。「合成樹脂」および「プラスチック」という概念は、以下で同義に用いられる。
【0004】
合成樹脂製品のリサイクル、持続可能な使用および海洋の浄化は、海洋中のプラスチック量の削減に寄与するアプローチである。しかし、最も安全でかつ最も持続可能な解決策は、海洋中に存在する自然条件下で生分解されるプラスチック製品を製造し得ることであろう。
【0005】
天然の海水(塩水)中での合成樹脂製品の生分解は、堆肥などの活性媒体中での生分解や産業用堆肥化プラント内に存在するような比較的高温での生分解よりもはるかに時間がかかり、また問題が多い。一方では、堆肥は、分解に関与する微生物の濃度が特に高い。他方で、産業用堆肥化プラントでは、堆肥の最適な生分解を保証する条件(温度、酸素濃度など)が厳密に制御されている。したがって、海洋の自然条件で生分解し得る合成樹脂製品に課される要求は、他の分解条件よりもはるかに高い。
【0006】
さらに、合成樹脂製品は、海洋の自然条件下での良好な生分解性に加え、用途に応じた機械的特性をも備えている必要がある。例えば、合成樹脂製の輸送用袋は、日常生活で目的に応じて使用できるようにするためには、例えば十分な引張強さおよび破断点伸びの値を有する必要がある。そうして初めて、合成樹脂製の輸送用袋が、従来の非生分解性プラスチック製品の代替品として考慮される。
【0007】
(a)一方での海水中での合成樹脂フィルムの良好な生分解性と、(b)他方での合成樹脂フィルムの良好な機械的特性との組合せは、実際には極めて困難であることが判明している。フィルムのこうした2つの一見相反する特性を互いに合致させるこれまでの試みは、部分的にしか成功しなかった。
【0008】
特許文献1には、微生物が存在する環境での生分解性が改善されていると同時に、良好な貯蔵安定性、強度および柔軟性を示す、ポリヒドロキシアルカノエートとポリラクチドとを含むフィルムが記載されている。しかしこの生分解は、天然海水中の特に厳しい分解条件に最適化されているわけではない。
【0009】
特許文献2には、100重量部の脂肪族ポリエステル樹脂と1~200重量部のポリカプロラクトンとを含む生分解性ポリエステル樹脂が記載されている。このポリマー混合物から、多数の様々な生分解性製品を製造することが可能である。しかしこの生分解性は、天然海水中の特に厳しい分解条件に適合しているわけではない。
【0010】
上記のフィルムはいずれも、海水中での生分解という特定の課題を同時に解決するものではなく、そうかといって、満足のいく機械的特性を示すものでもない。
【0011】
上述の従来技術から出発して、本発明の課題は、海水中で非常に良好な生分解性を示すと同時に、卓越した機械的特性をも示すフィルムを提供することである。有利には、該フィルムは、海水への導入後に、該フィルム(部分)から二酸化炭素および水への生分解の開始と同時にまたはその前後に、より小さな粒子に分解する。本発明ではさらに、輸送用袋の製造に特に適したフィルムを提供するという目標も設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許出願公開第2 913 362(A1)号
【文献】欧州特許出願公開第1 008 629(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、請求項1記載のフィルム、請求項24記載の使用、請求項27記載の製品および請求項30記載の方法により、完全にまたは部分的に解決される。
【0014】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されており、一般的発明概念のように以下に詳細に説明される。
【0015】
本発明によるフィルムは、該フィルムが、成分AおよびBの合計に対して10~90重量%の成分Aと10~90重量%の成分Bとを含み、成分Aが、ポリヒドロキシアルカノエートであり、成分Bが、少なくとも1つのジオール成分と少なくとも1つのジカルボン酸成分とから構成される脂肪族コポリエステルであり、該フィルムが、1~200μmの全厚を有することを特徴とする。
【0016】
驚くべきことに、本発明によるフィルムは、高い引張強さおよび/または高い破断点伸びといった卓越した機械的特性と、天然海水中での非常に良好な生分解性とを併せ持つことが判明した。
【0017】
科学的理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の驚くべき効果は、成分AとBの組合せの特定の特性によるものと考えられる。成分AおよびBについての適切な構成要素および比率を見出すには、広範な実験的研究が必要であった。成分AおよびBについて規定されたもの以外のポリマーを一緒に組み合わせた場合、それから製造されたフィルムは、機械的特性が不十分であるか、または海水中での該フィルムの生分解性が不十分であった。さらに、該フィルムの海水中での生分解性および機械的特性には、成分Aと成分Bとの正しい量比率を選択することが不可欠である。
【0018】
有利には、該フィルムは、以下の機械的特性:
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
のうちの少なくとも1つを示す。
【0019】
上記の機械的特性が、EN ISO 527-3:2003-07に準拠して測定されることが好ましい。
【0020】
有利には、該フィルムは、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大30重量%を有し、かつ/またはASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃の温度での180日以内での塩水への導入後に、該フィルムの有機炭素の少なくとも30%が二酸化炭素に転化されている。
【0021】
ASTM D6691-09に準拠した制御試験条件による塩水中での分解性についての測定は有利には、1~100μm、特に10~40μm、より好ましくは約20μmの厚さを有するフィルムで行われる。
【0022】
好ましい実施形態によれば、該フィルムは、成分AおよびBの合計に対して10~90重量%の成分Aと10~90重量%の成分Bとを含み、成分Aは、ポリヒドロキシアルカノエートであり、成分Bは、少なくとも1つのジオール成分と少なくとも1つのジカルボン酸成分とから構成される脂肪族コポリエステルであり、該フィルムは、1~200μmの全厚を有するとともに、以下の機械的特性:
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
のうちの少なくとも1つを示し、該フィルムは、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大30重量%を有し、かつ/またはASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃の温度での180日以内での塩水への導入後に、該フィルムの有機炭素の少なくとも30%が二酸化炭素に転化されている。
【0023】
本発明によるフィルムは、ポリヒドロキシアルカノエートである成分Aを含む。
【0024】
ここでまたは他の箇所でポリヒドロキシアルカノエートに言及する場合、それは、少なくとも4個の炭素原子、特に4~18個の炭素原子または4~9個の炭素原子の鎖長を有するモノマーを含むヒドロキシ脂肪酸のポリエステルを意味する。したがって、例えばポリ乳酸は、本発明の趣意におけるポリヒドロキシアルカノエートではない。
【0025】
成分Aは、本発明の有利な実施形態によれば、ポリ(3-ヒドロキシブタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-バレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヘキサノエート)およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。さらなる有利な実施形態によれば、成分Aは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-バレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヘキサノエート)およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。本発明の特に好ましい実施形態では、成分Aは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヘキサノエート)である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、成分Aは、100000~1500000g/モル、有利には200000g/モル~1000000g/モル、有利には300000~800000g/モル、さらに好ましくは400000~700000g/モル、特に好ましくは500000~600000g/モルの数平均分子量MWを有する。
【0027】
成分Aに加えて、該フィルムは、少なくとも1つのさらなる成分Bを含む。本発明によれば、成分Bは、少なくとも1つのジオール成分と少なくとも1つのジカルボン酸成分とから構成される脂肪族コポリエステルである。本発明の好ましい実施形態によれば、成分Bは、少なくとも1つのジオール成分と少なくとも2つのジカルボン酸成分とから構成される脂肪族コポリエステルである。
【0028】
ジオール成分の炭素骨格は、本発明によれば、直鎖状、鎖分岐状および/または環状であり得る。本発明によるジオール成分は、少なくとも2個の炭素原子でかつ最大12個の炭素原子の鎖長を有する。2~6個の炭素原子の鎖長が好ましい。好ましくは、ジオール成分は、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。本発明による成分Bのジオール成分として、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるジオールが特に好ましい。ジオール成分として、1,4-ブタンジオールが非常に特に好ましい。
【0029】
ジカルボン酸成分の炭素骨格は、本発明によれば、直鎖状、分岐状および/または環状であってよく、好ましくは、ジカルボン酸成分の炭素骨格は、直鎖状である。本発明によるジカルボン酸成分は、2~20個の炭素原子、好ましくは4~12個の炭素原子の鎖長を有する。好ましくは、ジカルボン酸成分は、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,12-ドデカン二酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、本発明によるジカルボン酸成分は、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
成分Bによる脂肪族コポリエステルは、好ましくは熱可塑性脂肪族コポリエステルである。本発明による成分Bによるジオールおよびジカルボン酸成分は、化学的および/または生物学的に製造可能である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、成分Bによる脂肪族コポリエステルは、ポリブチレンスクシネートまたはポリブチレンアジペート-co-スクシネートである。本発明の特に好ましい実施形態では、成分Bとしてポリブチレンアジペート-co-スクシネートを利用する。
【0032】
有利には、成分Bによる脂肪族コポリエステルは、50000~500000g/モル、有利には70000~400000g/モル、好ましくは90000~300000g/モル、特に好ましくは100000~200000g/モルの数平均分子量MWを有する。
【0033】
本発明によるフィルムは、成分AおよびBに加えてさらなるポリマー成分を含んでもよい。特に、本発明によるフィルムは、成分AおよびBに加えて、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)(PBAT)またはポリ(ブチレンセバケート-co-テレフタレート)(PBST)またはそれらの混合物を含んでよい。
【0034】
一実施形態によれば、該フィルムは、0.1~30重量%、有利には1~25重量%、有利には3~20重量%、さらに好ましくは4~15重量%、特に好ましくは5~12重量%のポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)および/またはポリ(ブチレンセバケート-co-テレフタレート)(PBST)を有する。さらなる実施形態によれば、該フィルムは、15~25重量%、有利には17~23重量%、特に好ましくは18~22重量%のポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)および/またはポリ(ブチレンセバケート-co-テレフタレート)(PBST)を有する。
【0035】
さらなる構成要素として、本発明によるフィルムは、0.1~20重量%、有利には2~18重量%、さらに好ましくは5~15重量%、特に好ましくは8~12重量%のデンプンを含んでよい。
【0036】
本発明によれば、デンプンとして、特に熱可塑性デンプン、加工デンプンおよび/またはデンプン誘導体を使用することができる。好ましくは、熱可塑性デンプンを使用することができる。
【0037】
該フィルムの全厚が5~200μm、有利には10~80μm、特に好ましくは15~60μmである場合に、多くの用途に有利である。該フィルムは、様々な製品の製造に様々な厚さで適している。記載されている厚さのフィルムは、日常使用向けの手提げ袋および輸送用袋の製造に特に適している。
【0038】
本発明によるフィルムの機械的特性および生分解性は、主に成分Aと成分Bとの量比率によって決定される。
【0039】
本発明によるフィルムは、成分AおよびBの合計に対して10~90重量%の成分Aを含む。本発明の好ましい実施形態によれば、該フィルムは、成分AおよびBの合計に対して、有利には20~80重量%、特に好ましくは25~75重量%の成分Aを含む。
【0040】
本発明によるフィルムは、成分AおよびBの合計に対して10~90重量%の成分Bを含む。本発明の好ましい実施形態では、該フィルムは、成分AおよびBの合計に対して、有利には20~80重量%、特に好ましくは25~75重量%の成分Bを含む。
【0041】
本発明の好ましい実施形態によれば、該フィルムは、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%、有利には20~40重量%、さらに好ましくは25~40重量%、さらに好ましくは25~35重量%、特に好ましくは28~32重量%の成分Aを含む。この実施形態によれば、該フィルムはさらに、成分AおよびBの合計に対して、有利には50~90重量%、さらに好ましくは60~80重量%、さらに好ましくは60~75重量%、さらに好ましくは65~75重量%、特に好ましくは68~72重量%の成分Bを含む。
【0042】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、該フィルムは、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%、有利には20~40重量%、さらに好ましくは25~40重量%、さらに好ましくは25~35重量%、特に好ましくは28~32重量%の成分Bを含む。この実施形態によれば、該フィルムはさらに、成分AおよびBの合計に対して、有利には50~90重量%、さらに好ましくは60~80重量%、さらに好ましくは60~75重量%、さらに好ましくは65~75重量%、特に好ましくは68~72重量%の成分Aを含む。
【0043】
ここでまたは他の箇所で成分Bに言及する場合、この成分Bは、1つの化合物および/または複数の化合物からなっていてよい。本発明の好ましい実施形態では、成分Bは、単一の化合物からなる。本発明のさらなる好ましい実施形態では、成分Bは、いくつかの異なる化合物からなり、特に2つまたは3つの異なる化合物からなる。
【0044】
本発明によるフィルムは、優れた機械的特性が顕著であり、それによって輸送用袋におけるその使用が可能となる。
【0045】
したがって、乾燥状態での本発明によるフィルムは有利には、EN ISO 527に準拠した押出方向(MD(独:Maschinenlaufrichtung,英:machine direction))における破断点伸びが、少なくとも100%である。本発明の好ましい実施形態では、EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における破断点伸びは、少なくとも150%、有利には少なくとも200%、好ましくは少なくとも300%、特に好ましくは少なくとも400%である。
【0046】
さらに、乾燥状態での本発明によるフィルムは有利には、EN ISO 527に準拠した押出方向と直交する方向(TD(独:Querrichtung,英:transverse direction))における破断点伸びが、少なくとも100%である。本発明の好ましい実施形態では、EN ISO 527に準拠した押出方向と直交する方向(TD)における破断点伸びは、少なくとも150%、有利には少なくとも200%、好ましくは少なくとも300%、特に好ましくは少なくとも400%である。
【0047】
さらに、乾燥状態での本発明によるフィルムは有利には、EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における引張強さが、少なくとも15MPaである。本発明の好ましい実施形態によれば、乾燥状態での該フィルムの押出方向(MD)における引張強さは、少なくとも20MPa、有利には少なくとも25MPa、特に好ましくは少なくとも30MPaである。
【0048】
さらに、乾燥状態での本発明によるフィルムは有利には、EN ISO 527に準拠した押出方向と直交する方向(TD)における引張強さが、少なくとも15MPaである。本発明の好ましい実施形態によれば、乾燥状態での該フィルムの押出方向と直交する方向(TD)における引張強さは、少なくとも20MPa、有利には少なくとも25MPa、特に好ましくは少なくとも30MPaである。
【0049】
有利には該フィルムは、ASTM D1709の方法に準拠した乾燥状態でのダートドロップ値が、少なくとも4g/μm、有利には少なくとも5g/μm、特に好ましくは少なくとも6g/μmである。
【0050】
本発明によるフィルムは、卓越した機械的特性に加え、塩水中での非常に良好な生分解性および迅速な分解が顕著である。
【0051】
したがって、本発明によるフィルムは有利には、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大30重量%を有する。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、該フィルムは、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大20重量%、有利には最大10重量%を有する。
【0053】
本明細書中での塩水という概念は、ASTM D6691-09の方法の第7.5.2項による天然の海水媒体を指す。
【0054】
ここでまたは他の箇所でASTM D6691-09の方法に言及する場合、これは、標題「Standard Test Method for Determining Aerobic Biodegradation of Plastic Materials in the Marine Environment by a Defined Microbial Consortium or Natural Sea Water Inoculum」の2009年11月15日発行版を意味する。
【0055】
本発明によるフィルムは、塩水中で卓越した生分解性を示す。有利には、ASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃の温度での180日以内での塩水への本発明によるフィルムの導入後に、該フィルムの有機炭素の少なくとも30%が二酸化炭素に転化されている。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での30±2℃の温度での180日間にわたる塩水への該フィルムの導入後に、該フィルムの有機炭素の有利には少なくとも40%、特に好ましくは少なくとも50%が二酸化炭素に転化されている。本明細書中での塩水という概念は、ASTM D6691-09の方法の第7.5.2項による天然の海水媒体を指す。
【0057】
本発明によるフィルムの生分解が非常に効果的に生じるのは、海水の自然条件においてのみではない。本発明の好ましい実施形態では、DIN EN ISO 14855-1:2012の方法に準拠した活性分解条件において、180日以内で、該フィルムの有機炭素の有利には少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%が二酸化炭素に転化されている。
【0058】
海水中での該フィルムの生分解は、通常は2ステップで行われ、各ステップは、同時にまたは互いに時間をずらして始まる。一方では、本発明によるフィルムは、海水中でより小さな部分へと分解する(「断片化」)。他方で、合成樹脂部品は、微生物によって二酸化炭素および水に転化されることで、生物学的に分子レベルで分解される(「生分解」)。多くの場合、必ずというわけではないが、「生分解」ステップの前に「断片化」ステップが始まる。
【0059】
本発明によるフィルムは、単層フィルムとして形成されていてもよいし、多層フィルムとして形成されていてもよい。本発明によるフィルムは、有利には単層フィルムとして形成されている。なぜならば、単層フィルムは、特に簡便かつ廉価に製造でき、また輸送用袋へとさらに加工できるためである。しかし、本発明によるフィルムが、1つまたは複数の同一のまたは異なるさらなる層を含むことも可能である。多層フィルムの個々の層は、例えばそれらの組成および厚さが互いに異なっていてもよい。
【0060】
本発明によるフィルムは、上述の構成要素に加えて、さらなる構成要素を含んでもよい。
【0061】
本発明によるフィルムは、さらに例えば可塑剤を含んでもよい。可塑剤の例は、グリセリン、ソルビトール、アラビノース、リコース、キシロース、グリコース、フルクトース、マンノース、アロース、アルトロース、ガラクトース、グロース、イドース、イノシトール、ソルボース、タリトールおよびそれらのモノエトキシレート-、モノプロポキシレート-およびモノアセテート誘導体、およびエチレン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンジグリコール、プロピレンジグリコール、エチレントリグリコール、プロピレントリグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-、1,3-、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-、1,5-ヘキサンジオール、1,2,6-、1,3,5-ヘキサントリオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびそれらのアセテート-、エトキシレート-およびプロポキシレート誘導体、ならびにそれらの混合物である。
【0062】
有利には、本発明によるフィルムは、重量平均分子量が500~5000g/モルであるオリゴマーエステル化合物を含まず、特に、それぞれ重量平均分子量が500~5000g/モルである、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(1,3-ブチレングリコール-co-1,2-プロピレングリコールアジピン酸)、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(ネオペンチルグリコール-co-1,4-ブチレングリコールアジピン酸)、末端部を有しないポリ(1,3-ブチレングリコールアジピン酸)、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(1,2-プロピレングリコールアジピン酸-co-フタル酸)、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(ネオペンチルグリコールアジピン酸)、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(1,2-プロピレングリコールアジピン酸-co-フタル酸)、混合脂肪酸末端を有するポリ(1,3-ブチレングリコールアジピン酸)、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(1,2-プロピレングリコールアジピン酸)、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(1,2-プロピレングリコール-co-1,4-ブチレングリコールアジピン酸)、ポリ(1,4-ブチレングリコールアジピン酸)またはポリ(1,4-ブチレングリコール-co-エチレングリコールアジピン酸)を含まない。
【0063】
さらに本発明によるフィルムは、分散助剤、例えば界面活性剤、溶融安定剤、加工助剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、充填剤および/または添加剤を含んでもよい。
【0064】
さらに本発明によるフィルムは、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、セルロース、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートおよびそれらの混合物などのさらなるポリマーをさらに含んでもよい。
【0065】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、本発明によるフィルムは、1つもしくは複数の充填剤および/または1つもしくは複数の崩壊剤を含む。充填剤および/または崩壊剤の種類および量に応じて、本発明によるフィルムの崩壊速度が影響を受ける可能性がある。
【0066】
この目的のための好ましい充填剤は、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、ドロマイト、マイカ、ケイ酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0067】
崩壊剤は、当業者に知られている。この目的のための好ましい崩壊剤は、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。デンプンは、天然のものであっても分解されたものであってもよい。
【0068】
本発明はさらに、1~200μmの全厚を有するとともに、以下の機械的特性:
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
のうちの少なくとも1つを示すフィルムであって、該フィルムは、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大30重量%を有し、かつ/またはASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃の温度での180日以内での塩水への導入後に、該フィルムの有機炭素の少なくとも30%が二酸化炭素に転化されているフィルムを製造するための、成分Aおよび成分Bを含むポリマーブレンドの使用に関する。
【0069】
本発明による使用の成分AおよびBについては、本発明によるフィルムの成分AおよびBに関してなされた記述がそれぞれ準用される。
【0070】
有利には該ポリマーブレンドは、成分AおよびBの合計に対して10~90重量%、特に20~80重量%または25~75重量%の成分Aを含む。さらに該ポリマーブレンドは、成分AおよびBの合計に対して有利には10~90重量%、特に20~80重量%または25~75重量%の成分Bを含む。
【0071】
本発明の好ましい実施形態によれば、該ポリマーブレンドは、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%、有利には20~40重量%、さらに好ましくは25~40重量%、さらに好ましくは25~35重量%、特に好ましくは28~32重量%の成分Aを含む。この実施形態によれば、該ポリマーブレンドはさらに、成分AおよびBの合計に対して、有利には50~90重量%、さらに好ましくは60~80重量%、さらに好ましくは60~75重量%、さらに好ましくは65~75重量%、特に好ましくは68~72重量%の成分Bを含む。
【0072】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、該ポリマーブレンドは、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%、有利には20~40重量%、さらに好ましくは25~40重量%、さらに好ましくは25~35重量%、特に好ましくは28~32重量%の成分Bを含む。この実施形態によれば、該ポリマーブレンドはさらに、成分AおよびBの合計に対して、有利には50~90重量%、さらに好ましくは60~80重量%、さらに好ましくは60~75重量%、さらに好ましくは65~75重量%、特に好ましくは68~72重量%の成分Aを含む。
【0073】
さらに、該ポリマーブレンドは、前述の構成要素のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0074】
さらに、本発明によるフィルムを用いて製造されたまたは製造可能である製品も本発明の対象である。
【0075】
特に重要であるのは、本発明によるフィルムから製造されたまたは製造可能である輸送用袋である。本発明によるフィルムは、手提げ袋、果実用袋、野菜用袋、軽量Tシャツバッグおよび超軽量Tシャツバッグを含む、あらゆる種類の輸送用袋の製造に適している。
【0076】
異なる種類の輸送用袋は、用途に応じて異なる重量を有し得る。本発明の好ましい実施形態では、例えば本発明による輸送用袋は、有利には1~90g、さらに好ましくは2~50gまたは特に好ましくは20~40gの重量を有する。他の用途に適しているのは特に、有利には1~10g、特に好ましくは1.5~5gの重量を有する本発明による輸送用袋である。
【0077】
最後に、本発明は、フィルムの製造方法にも関する。フィルムの本発明による製造方法は、
a.成分Aおよび成分Bを含むポリマーブレンドを準備するステップと、
b.ステップaよる前記ポリマーブレンドからフィルムを形成するステップと、
を少なくとも含む。
【0078】
ステップbによりフィルムを形成するための適切な方法は当業者に周知であり、典型的には押出ステップ(特に共押出ステップ)および/または積層ステップを含む。
【0079】
本発明による方法の成分AおよびBについては、本発明によるフィルムの成分AおよびBに関してなされた記述がそれぞれ準用される。
【0080】
有利には該ポリマーブレンドは、成分AおよびBの合計に対して10~90重量%、特に20~80重量%または25~75重量%の成分Aを含む。さらに該ポリマーブレンドは、成分AおよびBの合計に対して有利には10~90重量%、特に20~80重量%または25~75重量%の成分Bを含む。
【0081】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、該ポリマーブレンドは、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%、有利には20~40重量%、さらに好ましくは25~40重量%、さらに好ましくは25~35重量%、特に好ましくは28~32重量%の成分Aを含む。この実施形態によれば、該ポリマーブレンドはさらに、成分AおよびBの合計に対して、有利には50~90重量%、さらに好ましくは60~80重量%、さらに好ましくは60~75重量%、さらに好ましくは65~75重量%、特に好ましくは68~72重量%の成分Bを含む。
【0082】
本発明による方法のさらなる好ましい実施形態によれば、該ポリマーブレンドは、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%、有利には20~40重量%、さらに好ましくは25~40重量%、さらに好ましくは25~35重量%、特に好ましくは28~32重量%の成分Bを含む。この実施形態によれば、該ポリマーブレンドはさらに、成分AおよびBの合計に対して、有利には50~90重量%、さらに好ましくは60~80重量%、さらに好ましくは60~75重量%、さらに好ましくは65~75重量%、特に好ましくは68~72重量%の成分Aを含む。
【0083】
さらに、該ポリマーブレンドは、前述の構成要素のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0084】
本発明を、実施例を参照して以下に詳説する。
【実施例】
【0085】
比較例および実施例において、以下の材料を使用した。ポリ(ブチレンスクシネート-co-アジペート)PBSA(BioPBS FD92PM、PTT MCCバイオケム社(PTT MCC Biochem Company Limited社));ポリ(ヒドロキシブチレート-co-ヘキサノエート)PHBH(AONILEX 151N、株式会社カネカ);エルカ酸アミド(LOXIOL E SPEZ P、エメリー オレオケミカルズ社(Emery Oleochemicals社))。
【実施例1】
【0086】
スクリュ径40mm、L/D=42のヴェルナー・ウント・プフライデラー社(Coperion Werner & Pfleiderer社)ZSK 40型2軸スクリュ押出機(2軸スクリュ混練機)を使用して、表1に示す配合Aのポリマーブレンドを製造し、造粒体に加工した(計量供給割合を質量パーセントで示す)。
【0087】
【0088】
その際、以下のコンパウンディングパラメータを維持した。
【0089】
【0090】
製造した造粒体から、インフレーションフィルムを製造した。このために、造粒体Aを、スクリュ径65mm、L/D=23のKABRA型単軸押出機で溶融して、インフレーションフィルムに加工した。
【0091】
水中での該フィルムの耐久性を調べるために、該フィルムのサンプルをスライドフレームに張り、天然の海水に漬けた。該フィルムの分解を、目視により評価した。表3に、海水中での72日の期間内での該フィルムの相対的な分解を示す。
【0092】
【0093】
さらに、フィルムの機械的特性を試験した。引張強さおよび破断点伸びの測定を、ティニウス オルセン社(Tinius Olsen社)万能試験機H10KSで行った。フィルムの厚さを求めるために、ヴォルフ メシュテクニク社(Wolf-Messtechnik社)製精密厚さ計DM 2000を使用した。測定結果を、表4に示す。
【0094】
【0095】
表3および表4から分かるように、該フィルムは、輸送用袋として使用するための卓越した機械的特性と、海水中での非常に良好な分解性とを示す。海水中で約1ヶ月経過した後、該フィルムはすでにほぼ完全に分解した(表3の第3行目)。
【実施例2】
【0096】
スクリュ径40mm、L/D=42のヴェルナー・ウント・プフライデラー社(Coperion Werner & Pfleiderer社)ZSK 40型2軸スクリュ押出機(2軸スクリュ混練機)を使用して、表5に示す配合Bのポリマーブレンドを製造し、造粒体に加工した(計量供給割合を質量パーセントで示す)。
【0097】
【0098】
その際、以下のコンパウンディングパラメータを維持した。
【0099】
【0100】
製造した造粒体から、インフレーションフィルムを製造した。このために、造粒体Bを、スクリュ径65mm、L/D=23のKABRA型単軸押出機で溶融して、インフレーションフィルムに加工した。
【0101】
表7に、海水中での72日の期間内での該フィルムの相対的な分解を示す。
【0102】
【0103】
該フィルムの機械的特性を試験した。この測定を、実施例1と同一の装置で行った。測定結果を、表8に示す。
【0104】
【0105】
表7および表8から分かるように、造粒体Bから得られたフィルムは、海水中での分解性と、輸送用袋として使用するための機械的特性との良好な組合せを示す。