(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】腫瘍および/または転移の治療のための抗-HGFR抗体およびHEGFRの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20231108BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20231108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231108BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20231108BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231108BHJP
C07K 16/22 20060101ALI20231108BHJP
C07K 14/71 20060101ALI20231108BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K38/17
A61P35/00
A61P35/04
C07K19/00 ZNA
C07K16/22
C07K14/71
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2021500367
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(86)【国際出願番号】 IB2019052307
(87)【国際公開番号】W WO2019180658
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】102018000003875
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】522182459
【氏名又は名称】バーティカル バイオ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】バジリコ クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニャ エリーザ
(72)【発明者】
【氏名】コモグリオ パオロ マリア
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-526010(JP,A)
【文献】Int. J. Cancer,2018年04月25日,Vol.143,p.1774-1785
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/
C07K
A61K 39/
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍および/または転
移を患っている患者の治療のための医薬組成物であって、
ヒトHGFRの細胞外部分と組み合わせた抗-肝細胞増殖因子受容体(HGFR)抗体フラグメントを含み、
ここで:
(i)前記抗-HGFR抗体フラグメントは、ヒトHGFRの前記細胞外部分のエピトープに結合することが可能なパラトープを1つのみ有し、HGFRへ向けたアンタゴニスト活性を有し、
(ii)ヒトHGFRの前記細胞外部分は、安定した様式で肝細胞増殖因子(HGF)に結合することが可能であり、前記抗-HGFR抗体フラグメントによって認識されるエピトープ内に少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含み、前記抗-HGFR抗体フラグメントがそれに結合するのを防ぎ、および
(iii)前記抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの前記細胞外部分は、(a)タンパク質形態で、または(b)核酸形態で、前記患者へ投与するのに適切であり、
ここで、前記抗-HGFR抗体フラグメントは、1つの軽鎖可変ドメイン(VL)および1つの重鎖可変ドメイン(VH)を含み、
ここで前記軽鎖および重鎖可変ドメインは、非ヒト、またはヒト化であり、
前記軽鎖可変ドメインは配列番号1~3に示されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDRs)を含み、前記重鎖可変ドメインは配列番号4~6に示されるアミノ酸配列を有するCDRsを含み、
ヒトHGFRの前記細胞外部分は、(i)ヒトHGFRのSEMA、PSI、IPT-1、IPT-2、IPT-3およびIPT-4ドメインを含み、(ii)配列番号19の842位に対応する残基においてグルタミン酸を有し、
ここで、
(i)前記抗-HGFR抗体フラグメントは、リンカーを用いてヒトHGFRの前記細胞外部分にN末からC末の方向でコンジュゲートされて、その結果、抗-HGFR抗体フラグメント-リンカー-ヒトHGFRの細胞外部分の融合タンパク質を生じさせる;または、
(ii)ヒトHGFRの前記細胞外部分は、リンカーを用いて前記抗-HGFR抗体フラグメントにN末からC末の方向でコンジュゲートされて、その結果、ヒトHGFRの細胞外部分-リンカー-抗-HGFR抗体フラグメントの融合タンパク質を生じさせる、
医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の治療のための医薬組成物であって、
前記抗-HGFR抗体フラグメントは、1つのヒト軽鎖定常ドメインおよび1つのヒト重鎖CH1定常ドメインをさらに含み、前記軽鎖可変ドメインは、N末からC末の方向で前記ヒト軽鎖定常ドメインに融合されていて、前記重鎖可変ドメインは、N末からC末の方向で前記ヒト重鎖CH1定常ドメインに融合されている、
医薬組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の治療のための医薬組成物であって、
前記抗-HGFR抗体フラグメントは、単鎖Fabフラグメントである、
医薬組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の治療のための医薬組成物であって、
ヒトHGFRの前記細胞外部分は、配列番号20に示される配列を有する、
医薬組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の治療のための医薬組成物であって、
(i)前記抗-HGFR抗体フラグメントをコードする核酸分子は、リンカーをコードする核酸分子を用いて、ヒトHGFRの前記細胞外部分をコードする核酸分子に、5’末から3’末の方向で連結されて、その結果、抗-HGFR抗体フラグメント-リンカー-ヒトHGFRの細胞外部分の融合タンパク質をコードする;または、
(ii)ヒトHGFRの前記細胞外部分をコードする核酸分子は、リンカーをコードする核酸分子を用いて、前記抗-HGFR抗体フラグメントをコードする核酸分子に、5’末から3’末の方向で連結されて、その結果、ヒトHGFRの細胞外部分-リンカー-抗-HGFR抗体フラグメントの融合タンパク質をコードする、
医薬組成物。
【請求項6】
請求項1または5のいずれか一項に記載の
治療のための
医薬組成物であって、
(i)前記の抗-HGFR抗体フラグメント-リンカー-ヒトHGFRの細胞外部分の融合タンパク質は、配列番号26、27および28から選択されるアミノ酸配列を含む;または、
(ii)前記のヒトHGFRの細胞外部分-リンカー-抗-HGFR抗体フラグメントの融合タンパク質は、配列番号23、24および25から選択されるアミノ酸配列を含む、
医薬組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の治療のための医薬組成物であって、
前記患者は、野生型METがん遺伝子を保有している、
医薬組成物。
【請求項8】
N末からC末の方向で:
(i)抗-HGFR抗体フラグメント、リンカー、およびヒトHGFRの細胞外部分;または、
(ii)ヒトHGFRの細胞外部分、リンカー、および抗-HGFR抗体フラグメント
を含む、融合タンパク質であって、
ここで前記抗-HGFR抗体フラグメントは、ヒトHGFRの前記細胞外部分のエピトープに結合することが可能なパラトープを1つのみ有し、HGFRへ向けたアンタゴニスト活性を有し、
ヒトHGFRの前記細胞外部分は、前記抗-HGFR抗体フラグメントによって認識されるエピトープ内に少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含み、前記抗-HGFR抗体フラグメントがそれに結合するのを防ぎ、
ここで、前記抗-HGFR抗体フラグメントは、1つの軽鎖可変ドメイン(VL)および1つの重鎖可変ドメイン(VH)を含み、
ここで前記軽鎖および重鎖可変ドメインは、非ヒト、またはヒト化であり、
前記軽鎖可変ドメインは配列番号1~3に示されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDRs)を含み、前記重鎖可変ドメインは配列番号4~6に示されるアミノ酸配列を有するCDRsを含み、
ヒトHGFRの前記細胞外部分は、(i)ヒトHGFRのSEMA、PSI、IPT-1、IPT-2、IPT-3およびIPT-4ドメインを含み、(ii)配列番号19の842位に対応する残基においてグルタミン酸を有する、
融合タンパク質。
【請求項9】
請求項8に記載の融合タンパク質であって、
前記抗-HGFR抗体フラグメントは、1つのヒト軽鎖定常ドメインおよび1つのヒト重鎖CH1定常ドメインをさらに含み、前記軽鎖可変ドメインは、N末からC末の方向で前記ヒト軽鎖定常ドメインに融合されていて、前記重鎖可変ドメインは、N末からC末の方向で前記ヒト重鎖CH1定常ドメインに融合されている、
融合タンパク質。
【請求項10】
請求項8または9に記載の融合タンパク質であって、
前記抗-HGFR抗体フラグメントは、単鎖Fabフラグメントである、
融合タンパク質。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか一項に記載の融合タンパク質であって、
ヒトHGFRの前記細胞外部分は、配列番号20に示される配列を有する、
融合タンパク質。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載の融合タンパク質であって、
前記融合タンパク質は、配列番号23~28のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含む、
融合タンパク質。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、
核酸分子。
【請求項14】
請求項8から12のいずれか一項に記載の融合タンパク質または請求項13に記載の核酸分子および薬学的に許容できるビヒクルを含む、
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、腫瘍および/または転移、好ましくは転移の治療のための、治療的薬剤の新規の組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
転移拡散は、がん細胞が細胞間相互作用を破壊し、細胞外マトリックスを通って遊走し、それらの起源部位以外の組織において生存および増殖する能力に基づく。この複雑なプログラム(「浸潤性増殖」として知られる)の生理学的対応物は、胚形成の根底にあり、成人期中の創傷治癒および臓器再生の要因となる。浸潤性増殖は特異的な細胞外シグナルによって厳密に制御されていて、そのうちの1つが、METがん遺伝子によってコードされる受容体に関するリガンドである肝細胞増殖因子(HGF)である。異常な活性化の状態では、HGF/METシグナリングが、広範なヒト悪性腫瘍において、腫瘍の発症、進行および転移を引き起こす(drive)。少数事象では、METは「ドライバー」がん遺伝子として挙動し、腫瘍細胞は、増殖および生存に関して構成的なMETシグナリングに依存している(「MET依存性(addiction)」)。この状態は、遺伝子障害、主に遺伝子コピー数の増大、または、(より頻度が低い)構成的なリガンド非依存性の受容体活性化をもたらす突然変異2の存在に依拠する。このコンテキストにおいて、MET阻害剤を用いた治療は非常に効果的であり、細胞増殖の阻止および細胞周期停止をインビトロで誘導し、腫瘍増殖の阻害をインビボで誘導する。同一細胞内でのリガンドおよび受容体の共発現は、連続的なMET活性化を達成するためにがんによって利用される別のストラテジーであり、主に、非上皮ヒトがん、例えば骨肉腫、グリア芽腫および多発性骨髄腫において説明されている。しかしながら、ほとんどの場合において、腫瘍における異常なMET活性化は、野生型遺伝子の転写上方調節に起因した受容体過剰発現が原因となっていて、リガンド刺激に対するがん細胞感作をトリガーする3。後者の場合では、METシグナリング(浸潤促進性および抗-アポトーシス性の応答をもたらす)は、ストレス状態を迂回するためのストラテジーとしてがん細胞によって利用されていて、悪性表現型をブーストする(「MET好都合性(MET expedience)」6)。特有の遺伝子障害が存在しない場合は、METは腫瘍増殖に厳密に必要なものではないが、リガンドの存在は受容体活性化を維持して、悪性表現型を高める。最終的に、METは、グリア芽腫におけるがん「幹-前駆」細胞の機能性マーカーとして挙動して8、結腸直腸がんおよび乳がんにおける「幹」表現型を支持する12、15。さらに、間質由来HGFは、結腸直腸がん幹細胞のWNT自己再生経路を維持し、結腸がんを発生させる細胞の増殖を促進させて、抗-EGFR療法に対する抵抗性をトリガーすることが示されている27。
【0003】
METまたはHGFを標的化する複数のストラテジー(小分子インヒビター、抗体または組み換えタンパク質のいずれか)が設計されていて、現在研究中である。それらのうち、MvDN30抗体は、METの細胞外ドメインに結合する一価キメラFabフラグメントであり、細胞表面から受容体のタンパク質分解切断(「シェディング」)を誘導する21、28。DecoyMETは、METの細胞外領域全体を包含する組み換え可溶性受容体であり;高い親和性でHGFに結合し、リガンド主導の(driven)生物学的活性をインビトロおよびインビボで阻害する(レンチウイルスベクター技術によって17またはFc-融合タンパク質として7、26発現された場合)。生体系の大部分と同様に、シグナル伝達鎖の単一の要素を攻撃しても、応答の完全な遮断を生じさせることはあまりない。したがって、METの場合、全ての分子が100%阻害を達成するわけでは決してなく、残りの活性はHGF刺激に感受性のままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、腫瘍患者の治療において有用な抗-腫瘍薬剤の新規の組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記目的は、次のクレームにおいて明確に呼び起こされる(recalled)要旨により達成されて、それらは本開示の不可欠な部分を形成するものとして理解される。
【0006】
本発明は、腫瘍および/または転移、好ましくは転移を患っている患者の治療における使用のための、ヒトHGFRの細胞外部分と組み合わせた抗-肝細胞増殖因子受容体(HGFR)抗体フラグメントを提供し、ここで:
(i)抗-HGFR抗体フラグメントは、ヒトHGFRの細胞外部分のエピトープに結合することが可能なパラトープを1つのみ有し、HGFRへ向けたアンタゴニスト活性を有し
(ii)ヒトHGFRの細胞外部分は、安定した様式で肝細胞増殖因子(HGF)に結合することが可能であり、抗-HGFR抗体フラグメントによって認識されるエピトープ内に少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含み、抗-HGFR抗体フラグメントがそれに結合するのを防ぎ、および
(iii)抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分は、(a)タンパク質形態で、または(b)核酸形態で、患者へ投与するのに適切である。
【0007】
本発明はここに、純粋に例示的および非例示的な例として、添付の図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
DN30抗体に結合しない突然変異decoyMET受容体の産生。 (A)ヒト、マウス、ラットおよびイヌMETの3番目および4番目のIPTドメインのアミノ酸配列の比較。もっぱらマウス配列においてのみで変更された残基を黒背景に白の太字で強調し、ラットまたはイヌの配列においても(またはラットまたはイヌの配列においてのみ)変更されたアミノ酸を太字で強調している。IPT-3/IPT-4境界のみを示す。
(B)単一アミノ酸置換を保有するDecoyMET受容体を、DN30抗体とともにインキュベートした。プロテインA(抗体に結合する)を用いて複合体を免疫沈降させて、HRPコンジュゲート・ストレプトアクチン(streptactin)(decoy内のstrepタグに結合する)を用いて明らかにした(左パネル)。免疫沈降に用いた標準化上清の30μlをSDS PAGEに用いて、decoyMET受容体のローディングを確認した(右パネル)。
(C)ELISA結合分析。DN30 mAbは液相内であり、野生型decoyMETまたはdecoyMET
K842Eは固相内であった。HRP-コンジュゲート抗-マウス抗体を用いて抗体結合を検出した。OD,450nmでの光学濃度。各ポイントはトリプリケートでの値の平均±SDである。
【
図2】
decoyMET
K842E
は、高い親和性でHGFに結合し、HGFによって誘導されるMETリン酸化を阻害する。 (A)ELISA結合分析。野生型decoyMETまたはdecoyMET
K842Eは固相内であった;増加する濃度のHGFを液相内に添加した。ビオチン化抗-HGF抗体を用いてHGF結合を検出した。各ポイントは、トリプリケートでの値の平均±SDである。
(B)HGFによって誘導されるMETリン酸化。A549細胞を野生型decoyMETまたはdecoyMET
K842E(2μM)とともにインキュベートして、HGF(50ng/ml)を用いて刺激した。抗-ホスホMET(上パネル)、抗-MET抗体(中央パネル)または抗-ビンキュリン抗体(下パネル)を用いて、全細胞溶解物を免疫ブロットした。p145,METの成熟型;p190,METの単鎖前駆体;p117,ビンキュリン。
【
図3】
MvDN30およびdecoyMET
K842E
は、HGFによって誘導されるMETリン酸化およびMET主導の生物学的活性の減少において協同する。 (A)HGFによって誘導されるMETリン酸化。A549ヒト肺腺がん細胞を、2μM decoyMET
K842E、125nM MvDN30または2つの組み合わせとともにインキュベートして、50ng/ml HGFを用いて刺激した(またはしなかった)。抗-ホスホMET(上パネル)、抗-MET抗体(中央パネル)または抗-ビンキュリン(下パネル)を用いて全細胞溶解物を免疫ブロットした。p145,METの成熟型;p190,METの単鎖前駆体;p117,ビンキュリン。
(B)HGFによって誘導されるERKおよびAKTリン酸化。A549ヒト肺腺がん細胞を、500nM MvDN30、2μM decoyMET
K842Eまたは2つの組み合わせとともにインキュベートして、100ng/ml HGFを用いて刺激した(またはしなかった)。抗-ホスホERK、抗-ERK、抗-ホスホAKT、抗-AKT、抗-GAPDHを用いて全細胞溶解物を免疫ブロットした。p42/44,ERK;p60,AKT;p36,GAPDH。
(C)オートクリンHGF刺激によって維持される足場非依存性増殖。U87-MGヒト膠芽腫細胞(HGFおよびMETタンパク質の両方を発現する)を、0.5μM MvDN30または1μM decoyMET
K842Eを、単独または組み合わせで用いて処理した。グラフは、処理なしコントロールと比較した各処理に関する平均コロニー増殖のパーセンテージを表わす。
(D)パラクリンHGF刺激によって維持される足場非依存性増殖。A549細胞を、30ng/ml HGFを用いて刺激して、1μM MvDN30または1μM decoyMET
K842Eを、単独または組み合わせで用いて処理した。グラフは、HGFによって刺激されたコントロールと比較した各処理に関する平均コロニー増殖のパーセンテージを表わす。
(E)トランスウェル浸潤アッセイ。HPAF-IIヒト膵臓腺がん細胞を、12.5ng/ml HGFを用いて刺激して、0.5μM MvDN30または1μM decoyMET
K842Eを、単独または組み合わせで用いて処理した。グラフは、HGFによって刺激されたコントロールと比較した浸潤のパーセンテージを表わす。右パネル,マトリゲル層を通って遊走した細胞の1つの代表的な画像/グループ。n.t.,処理されなかった細胞。倍率,200×。各ポイントは、トリプリケートでの値の平均±SDである。
***=P≦0.001;
**=P≦0.01;
*=P≦0.05。
【
図4】
MvDN30およびdecoyMET
K842E
の組み合わせは、HGF-依存性METリン酸化を阻害する。 U87MG
(A)、A549
(B)およびHPAF-II
(C)細胞を、MvDN30、decoyMET
K842Eまたは2つの組み合わせ(COMBO)を用いて処理した。HPAF-IIおよびA549細胞を、HGFを用いて刺激した(またはしなかった);n.t.,処理されなかった細胞。左パネル:抗-ホスホMET(上列)およびファロイジン(下列)を示す代表的な共焦点断面。右のグラフは、バックグラウンドが差し引かれてファロイジンに対して標準化された、ホスホMETの平均蛍光強度(MFI)を報告する。各ポイントは、5つの値の平均±SEMである。バーは50μmである。
***=P≦0.001;
**=P≦0.01;
*=P≦0.05。
【
図5】
MvDN30およびdecoyMET
K842E
は、協同してHGF-依存性の細胞分散を阻害する。 (A)細胞運動の分析。HPAF-II細胞を異なる濃度(0.06、0.25、1または4μM)のMvDN30またはdecoyMET
K842E(単独または1:1の組み合わせ)とともに事前にインキュベートして、それから、6.25ng/ml HGFを用いて刺激した。細胞分散は、X-CELLigence RTCA装置を用いてリアルタイムで監視されて、標準化された細胞指標(Normalized Cell Index)として表される。各グラフは1つの処理濃度を指す。
(B)1μM MvDN30または1μM decoyMET
K842E(単独または組み合わせ)とともに事前インキュベートされて、それから6.25ng/ml HGFを用いて刺激された、HPAF-II細胞の代表的な画像。n.t.,処理されなかった細胞。
(C)細胞運動曲線。効果=各投与量の処理に関して実験の最後に測定されて、HGF単独で得られた値に対して標準化されて、[1-x]として表された、細胞指標の値。
(D)薬物の組み合わせの分析。細胞運動曲線からの値を、Calcusynソフトウェアを用いて作成して(elaborate)、各濃度のMvDN30およびdecoyMET
K842Eに関する組み合わせ指標(Combination Index)(CI)を計算した。CI=1,協同作用(cooperation);CI<1,相乗作用(synergism);CI>1,拮抗作用(antagonism)。
【
図6】
MvDN30およびdecoyMET
K842E
の組み合わせは、皮下U87-MG腫瘍の浸潤性表現型を減少させる。 U87-MG細胞をNOD-SCIDマウス内に皮下注入した。腫瘍が80~100mm
3の体積に到達したときに、マウスを4つの同質なグループに階層化した:ビヒクル(n=10);MvDN30(n=9);K842E(n=9);2つの組み合わせ(n=10)。
(A)増加倍率(fold increase)として表された屠殺時の腫瘍体積。各バーはグループの平均±SEMである。
(B)腫瘍負荷の組織化学的分析。ヘマトキシリン-エオシン染色された腫瘍断面の代表的な画像。矢印は、腫瘍と周囲組織の間の境界を指す。倍率100×。
【
図7】
hHGF-Kiマウス内へ同所性に注入された膵がん細胞の増殖およびアポトーシスに対する、MvDN30またはdecoyMET
K842E
(単独および組み合わせ)の効果。 ルシフェラーゼ発現HPAF-II細胞をhHGF-Kiマウスの膵臓内に注入して、4つの同質なグループに階層化した:ビヒクル(n=10)、MvDN30(n=6)、decoyMET
K842E(n=6)、2つの組み合わせ(n=6)。
(A)IVIS Spectrumによって検出された腫瘍生物発光。数字は、各実験グループの生物発光の全流束の平均値(光子/秒×10
8)±SEMを示す。
(B)Ki67免疫組織化学によって測定された腫瘍細胞増殖の分析。左パネル,各実験グループの代表的な画像。倍率,200×。右のグラフは、腫瘍あたり5つの画像の分析によって得られた平均値±SEMを報告する。増殖指標は、Ki67陽性細胞/細胞合計数として計算される。
(C)cleaved Caspase-3の免疫蛍光によって測定された腫瘍細胞アポトーシスの分析。左パネル,各実験グループの代表的な画像。バーは50μmである。右のグラフは、腫瘍あたり8個の画像の分析によって得られた平均値±SEMを報告する。アポトーシス指標は、cleaved Caspase-3陽性細胞/細胞合計数として計算される。バーは50μmである。
***=p値<0.001;
**=p値<0.01;
*=p値<0.05。
【
図8】
MvDN30およびdecoyMET
K842E
は、hHGF-Kiマウスにおける膵がん細胞の転移伝播およびMETリン酸化を減少させる。 ルシフェラーゼ発現HPAF-II細胞をhHGF-Kiマウスの膵臓内に注入して、4つの同質なグループに階層化した:ビヒクル(n=10)、MvDN30(n=6)、decoyMET
K842E(n=6)、2つの組み合わせ(n=6)。
(A)免疫蛍光によって測定された腫瘍内のホスホMETの状態。左パネル,抗-ホスホMETを示す各実験グループの代表的な共焦点断面。右のグラフは、バックグラウンドが差し引かれてDAPIに対して標準化された、ホスホMETの平均蛍光強度(MFI)を報告する。各ポイントは、12個の値の平均±SEMである。バーは50μmである。
(B)E-カドヘリンおよびビメンチン発現の免疫蛍光分析によるHPAF-II腫瘍のEMT表現型の評価。左パネル,各実験グループの代表的な画像。抗-E-カドヘリン(上列)、抗-ビメンチン(下列)。バーは50μmである。右のグラフは、各腫瘍あたり6個の画像の分析によって得られた平均値±SEMを報告する。EMT表現型は、ビメンチン/E-カドヘリン比として表される。
(C)組織化学的HE染色によって評価された、肺における転移小結節(nodules)。左のグラフ:転移病変の数;各ポイントは、各マウスに関してスコア化された病変数を表わす。右のグラフ:転移病変の面積;各ポイントは、各マウスに関して測定された転移の平均面積を表わす。10枚のスライド/マウスを分析した;転移病変をスコア化して、それらの面積をImageJで定量化した。
***=P≦0.001;
**=P≦0.01;
*=P≦0.05。
【
図9】
抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分を含む融合タンパク質の1つの実施態様の略図。 (A)N末にdecoyMET
K842EおよびC末にscMvDN30のインフレーム融合によって生産された分子の図。
(B)N末にscMvDN30およびC末にdecoyMET
K842Eのインフレーム融合によって生産された分子の図。2つの部分の間にリンカーが挿入されている。リンカーの配列は、
(C)に挙げたものから選択することができる。SEMA、PSI、IPT 1-4は、decoyMETの領域である。IPT 4にある星は、842位における突然変異K→Eを表わす。抗-HGFR抗体フラグメントは、第2のリンカーによって接合された2つの鎖によって構成される。VL,可変軽領域;CL,定常軽領域;VH,可変重領域;CH,定常重領域。黒い四角は、精製/検出目的のために組み換えタンパク質内に含まれるStrept-Hisタグを表わす。
【
図10】
抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分を含む融合タンパク質の、METまたはHGFに対する結合分析。 (A)ELISAによる、HGFに対する結合分析。左パネル,N末にdecoyMET
K842EおよびC末にscMvDN30を含む融合タンパク質の結合。右パネル,N末にscMvDN30およびC末にdecoyMET
K842Eを含む融合タンパク質の結合。融合タンパク質またはdecoyMET
K842E(ポジティブコントロール)は固相内であった。増加する濃度のHGFを液相内に添加した。ビオチン化抗-HGF抗体を用いてHGF結合を検出した。各ポイントは、トリプリケートでの値の平均±SDである。
(B)ELISAによる、METに対する結合分析。左パネル,N末にdecoyMET
K842EおよびC末にscMvDN30を含む融合タンパク質の結合。右パネル,N末にscMvDN30およびC末にdecoyMET
K842Eを含む融合タンパク質の結合。野生型decoyMETは固相内であり、増加する濃度の異なる融合タンパク質は液相内であった;ポジティブコントロールとしてscMvDN30をアッセイ内に含めた。HRP-コンジュゲート抗-ヒトk鎖抗体を用いて抗体結合を検出した。OD,450nmでの光学濃度。各ポイントは、トリプリケートでの値の平均±SDである。
【
図11】
抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分を含む融合タンパク質を用いた処理の際の腫瘍細胞増殖の阻害。 (A)増加する濃度の、N末にdecoyMET
K842EおよびC末にscMvDN30を含む融合タンパク質を用いて処理されたEBC-1肺癌腫細胞の増殖。
(B)増加する濃度の、N末にscMvDN30およびC末にdecoyMET
K842Eを含む融合タンパク質を用いて処理されたEBC-1肺癌腫細胞の増殖。ポジティブコントロールとして、scMvDN30およびdecoyMET
K842Eの等モルの組み合わせ(Combo)をアッセイ内に含めた。細胞は、処理の3日後に分析された。サンプルはトリプリケートであり、バーはSDを表わす。
(C)MvDN30/decoyK842Eの組み合わせによって発揮される阻害活性と比較した、少なくとも3つの独立した実験による平均値として計算された各融合タンパク質に関するIC
50値を示す表。
【
図12】
抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分を含む融合タンパク質を用いた処理の際の、腫瘍細胞運動の阻害。 HPAF-II細胞を、異なる融合タンパク質(3μM)とともに事前インキュベートして、それから、6.25ng/mlのHGFを用いて刺激した。細胞分散を、X-CELLigence RTCA装置を用いてリアルタイムで監視した(標準化された細胞指標として表される)。サンプルはトリプリケートであった。
(A)N末にdecoyMET
K842EおよびC末にscMvDN30を含む融合タンパク質を用いて処理された細胞。
(B)N末にscMvDN30およびC末にdecoyMET
K842Eを含む融合タンパク質を用いて処理された細胞。ポジティブコントロールとして、scMvDN30およびdecoyMET
K842Eの等モルの組み合わせ(COMBO)をアッセイ内に含めた。
(C)HGFを用いて処理された細胞に対する、2つの独立した実験による平均値として計算された細胞運動のパーセンテージを示す表。
【
図13】
抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分を含む融合タンパク質は、hHGF-Kiマウスにおける膵がん細胞の転移伝播を減少させる。 ルシフェラーゼ発現Capan-1細胞をhHGF-Kiマウスの膵臓内に注入して、7個の同質なグループに階層化した:ビヒクル(n=14)、1:1の組み合わせでのdecoyMET
K842EおよびscMvDN30(2グループ)、および、N末にdecoyMET
K842EおよびC末にscMvDN30を含むか、または、N末にscMvDN30およびC末にdecoyMET
K842Eを含む、異なる融合タンパク質を試験するための4つのグループ。2つの異なるリンカー(L60およびL134)を分析した。COMBO 1(n=4):MvDN30は7x週の送達およびdecoyMET
K842Eは2x週の送達;COMBO 2(n=6):MvDN30は4x週の送達およびdecoyMET
K842Eは2x週の送達;K842E_scMvDN30_L60(n=4);scMvDN30_K842E_L60(n=5);K842E_scMvDN30_L134(n=5);K842E_scMvDN30_L134(n=6)。全ての融合は2x週の送達だった。
(A)分析された全てのマウスに対する、肝臓転移を保有するマウスの数を示す表。マウスは、IVIS Spectrumによって肝臓において検出される生物発光が10
5光子/秒よりも高い場合に陽性と考えられた。
(B)ビヒクルによって処理されたグループに対する、各実験グループの肝臓においてIVIS Spectrumによって検出された生物発光のパーセンテージを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、非常に多くの具体的な詳細が、実施態様の徹底的な理解を提供するために与えられる。実施態様は、その具体的な詳細の1つまたは複数を用いずに実施することができ、または、他の方法、構成要素、材料などを用いて実施することができる。他の例では、よく知られた構造、材料、または操作は、実施態様の態様を不明瞭にすることを避けるために、示されずまたは詳細に説明されない。
【0010】
本明細書全体を通した言及「1つの実施態様(one embodiment)」または「一実施態様(an embodiment)」は、実施態様に関連して記載される特定の特色、構造、または特徴が、少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通した様々な箇所における、語句「1つの実施態様では」または「一実施態様では」という表現は、必ずしも全てが同一の実施態様を指しているわけではない。さらに、特定の特色、構造、または特徴は、任意の適切な様式で1つまたは複数の実施態様において組み合わされてよい。
【0011】
本明細書中に提供される見出しは、便宜のためのみであり、実施態様の範囲または意味と解釈されない。
【0012】
本開示は、腫瘍および/または転移の治療のための治療的薬剤の新規の組み合わせに関する。
【0013】
本発明は、腫瘍および/または転移、好ましくは転移の治療における、より高い治療的ロバスト性が、HGFおよびHGFRの両方を標的化することによって達成され得るというアイディアに基づく。本明細書において証明される実験的データは、MET/HGF軸の垂直阻害(vertical inhibition)が、腫瘍細胞増殖、運動性および浸潤をインビトロで効果的に妨げること、および、転移拡散をインビボで著しく減少させて、広範ながん発現野生型METにおける組み合わせの標的化療法を提供することを実際に示す。
【0014】
一実施態様では、本発明は、腫瘍および/または転移、好ましくは転移を患っている患者の治療における使用のための、ヒトHGFRの細胞外部分と組み合わせた抗-肝細胞増殖因子受容体(HGFR)抗体フラグメントに関し、ここで:
(i)抗-HGFR抗体フラグメントは、ヒトHGFRの細胞外部分のエピトープに結合することが可能なパラトープを1つのみ有し、HGFRへ向けたアンタゴニスト活性を有し、
(ii)ヒトHGFRの細胞外部分は、安定した様式で肝細胞増殖因子(HGF)に結合することが可能であり、抗-HGFR抗体フラグメントによって認識されるエピトープ内に少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含み、抗-HGFR抗体フラグメントがそれに結合するのを防ぎ、および
(iii)抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分は、(a)タンパク質形態で、または(b)核酸形態で、患者へ投与するのに適切である。
【0015】
好ましい実施態様では、本明細書中に開示される組み合わせ療法を用いた治療的処置の対象となる患者は、野生型METがん遺伝子を保有する(すなわち、彼/彼女は、METがん遺伝子内に遺伝子変異を保有しない)。
【0016】
1つまたは複数の実施態様では、抗-HGFR抗体フラグメントは、1つの軽鎖可変ドメイン(VL)および1つの重鎖可変ドメイン(VH)を含み、ここで軽鎖および重鎖可変ドメインは、非ヒトまたはヒト化であり、軽鎖可変ドメイン(VL)は配列番号1~3に示されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDRs)を含み、重鎖可変ドメイン(VH)は配列番号4~6に示されるアミノ酸配列を有するCDRsを含む。
【0017】
さらなる実施態様では、抗-HGFR抗体フラグメントは、1つのヒト軽鎖定常ドメイン(CL)および1つのヒト重鎖CH1定常ドメイン(CH1)をさらに含み、軽鎖可変ドメイン(VL)はヒト軽鎖定常ドメイン(CL)にN末からC末の方向で融合されて(その結果、VL-CL軽鎖を生じさせる)、重鎖可変ドメイン(VH)はヒト重鎖CH1定常ドメインにN末からC末の方向で融合される(その結果、VH-CH1重鎖を生じさせる)。好ましい実施態様では、VL-CL軽鎖は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなり、VH-CH1重鎖は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなる。
【0018】
本発明に包含される異なる実施態様では、抗-HGFR抗体フラグメントは核酸形態である。そのような場合では、抗-HGFR抗体フラグメントは、第1および第2の核酸分子によってコードされて、ここで:
(i)第1の核酸分子は、配列番号9、10および11に示される核酸配列を有するCDRsを含む1つの軽鎖可変ドメイン(VL)をコードし、ここで軽鎖は非ヒトまたはヒト化である;および
(ii)第2の核酸分子は、配列番号12、13および14に示される核酸配列を有するCDRsを含む1つの重鎖可変ドメイン(VH)をコードし、ここで重鎖は非ヒトまたはヒト化である。
【0019】
さらに好ましい実施態様では、抗-HGFR抗体フラグメントは、第1および第2の核酸分子によってコードされて、ここで:
(i)第1の核酸分子は、(a)配列番号9、10および11に示される核酸配列を有するCDRsを含む1つの軽鎖可変ドメイン(VL)(ここで軽鎖は非ヒトまたはヒト化である)、および(b)1つのヒト軽鎖定常ドメイン(CL)を、5’から3’末の方向でコードし(すなわちVL-CL軽鎖);および
(ii)第2の核酸分子は、(a)配列番号12、13および14に示される核酸配列を有するCDRsを含む1つの重鎖可変ドメイン(VH)(ここで重鎖は非ヒトまたはヒト化である)、および(b)1つのヒト重鎖CH1定常ドメイン(CH1)を、5’から3’末の方向でコードする(すなわちVH-CH1重鎖)。
【0020】
好ましい実施態様では、第1の核酸分子(VL-CL軽鎖をコードする)は、配列番号15に記載の核酸配列を含み、好ましくはそれからなり、第2の核酸分子(VH-CH1重鎖をコードする)は、配列番号16に記載の核酸配列を含み、好ましくはそれからなる。
【0021】
本発明によって包含されるさらなる実施態様では、抗-HGFR抗体フラグメントは、抗-HGFR単鎖Fabフラグメントである。抗-HGFR単-Fabフラグメントは、配列番号17に記載のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなり、または、抗-HGFR単-Fabフラグメントは、配列番号18に記載の核酸配列を含む、好ましくはそれからなる、核酸分子によってコードされる。
【0022】
1つまたは複数の実施態様では、本発明は、SEMA、PSI、IPT-1、IPT-2、IPT-3およびIPT-4ドメインを含むヒトHGFRの細胞外部分を提供する。
【0023】
好ましい実施態様では、ヒトHGFRの細胞外部分は、配列番号19に記載のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなり、ここで配列番号19の797位と875位の間のアミノ酸の1つまたは複数は突然変異している。本開示によれば、ヒトHGFRの細胞外部分は、抗体はHGFRと相互作用しないがHGFはヒトHGFRの細胞外部分に対するその結合能力を保持するような方法で、抗-HGFR抗体およびHGFR上のHGF結合部位に関する知識に従って突然変異した配列を有する。さらに好ましい実施態様では、ヒトHGFRの細胞外部分は、配列番号20に示される配列を有する。
【0024】
本発明によって包含されるさらなる実施態様では、ヒトHGFRの細胞外部分は核酸分子の形態であり、ここで核酸分子は、配列番号21に記載の核酸配列を含み、好ましくはそれからなり、ここで配列番号21の2391位と2625位の間の核酸の1つまたは複数は突然変異している。本開示によれば、核酸分子は、抗体はHGFRと相互作用しないがHGFはヒトHGFRの細胞外部分に対するその結合能力を保持するような方法で、抗-HGFR抗体およびHGFR上のHGF結合部位に関する知識に従って突然変異した配列を有するヒトHGFRの細胞外部分をコードする。さらに好ましい実施態様では、ヒトHGFRの突然変異した細胞外部分をコードする核酸分子は、配列番号22に示される配列を有する。
【0025】
本発明によって包含される異なる実施態様では、抗-HGFR抗体フラグメントは、リンカーを用いて、ヒトHGFRの細胞外部分にN末からC末の方向でコンジュゲートされて、その結果、抗-HGFR抗体フラグメント-リンカー-ヒトHGFRの細胞外部分の融合タンパク質を生じさせる。あるいは、ヒトHGFRの細胞外部分は、リンカーを用いて、抗-HGFR抗体フラグメントにN末からC末の方向でコンジュゲートされて、その結果、ヒトHGFRの細胞外部分-リンカー-抗-HGFR抗体フラグメントの融合タンパク質を生じさせる。
【0026】
本発明によって包含される異なる実施態様では、抗-HGFR抗体フラグメントをコードする核酸分子は、リンカーをコードする核酸分子を用いて、ヒトHGFRの細胞外部分をコードする核酸分子に、5’から3’末の方向で連結されて、その結果、抗-HGFR抗体フラグメント-リンカー-ヒトHGFRの細胞外部分の融合タンパク質をコードする。あるいは、ヒトHGFRの細胞外部分をコードする核酸分子は、リンカーをコードする核酸分子を用いて、抗-HGFR抗体フラグメントをコードする核酸分子に、5’から3’末の方向で連結されて、その結果、ヒトHGFRの細胞外部分-リンカー-抗-HGFR抗体フラグメントの融合タンパク質をコードする。
【0027】
本発明はしたがって、N末からC末の方向で:
(i)抗-HGFR抗体フラグメント、リンカー、およびヒトHGFRの細胞外部分;または
(ii)ヒトHGFRの細胞外部分、リンカー、および抗-HGFR抗体フラグメント
を含む融合タンパク質を提供する。
【0028】
好ましい実施態様では、上記に定義される融合タンパク質は、配列番号23~28のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなる。
【0029】
本発明はしたがって、N末からC末の方向で:
(i)抗-HGFR抗体フラグメント、リンカー、およびヒトHGFRの細胞外部分;または
(ii)ヒトHGFRの細胞外部分、リンカー、および抗-HGFR抗体フラグメント
を含む融合タンパク質をコードする核酸分子を包含する。
【0030】
好ましい実施態様では、上記に定義される融合タンパク質をコードする核酸分子は、配列番号29~34のいずれか1つから選択される核酸配列を含み、好ましくはそれからなる。
【0031】
さらなる実施態様では、本開示は、単一のボトルまたは2つのボトル内に、(a)抗-肝細胞増殖因子受容体(HGFR)抗体フラグメントおよび薬学的に許容できるビヒクル、および(b)ヒトHGFRの細胞外部分および薬学的に許容できるビヒクルを含む医薬製品に関し、ここで:
(i)抗-HGFR抗体フラグメントは、ヒトHGFRの細胞外部分のエピトープに結合することが可能なパラトープを1つのみ有し、HGFRへ向けたアンタゴニスト活性を有し、
(ii)ヒトHGFRの細胞外部分は、安定した様式で肝細胞増殖因子(HGF)に結合することが可能であり、抗-HGFR抗体フラグメントによって認識されるエピトープ内に少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含み、抗-HGFR抗体フラグメントがそれに結合するのを防ぎ、
(iii)抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分は、タンパク質形態または核酸形態のいずれかである。
【0032】
医薬製品はしたがって、単独または任意のそれぞれの組み合わせで、上記に開示される特色を有する抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分を含む。
【0033】
1つの態様では、本発明は、対象における腫瘍および/または転移を治療する方法を提供し、前記方法は、対象に、有効量の抗-HGFR抗体フラグメントをヒトHGFRの細胞外部分と組み合わせて投与するステップを含み、それにより、前記状態が治療される。
【0034】
1つの態様では、本発明は、HGFRを発現する細胞の増殖を阻害する方法を提供し、前記方法は、前記細胞を、本発明のヒトHGFRの細胞外部分と組み合わせた抗-HGFR抗体フラグメントと接触させるステップを含み、それにより、前記細胞の増殖の阻害を生じさせる。
【0035】
1つの態様では、本発明は、がん性腫瘍および/または転移を有する哺乳類を治療的に処置する方法を提供し、前記方法は、前記哺乳類に、有効量の抗-HGFR抗体フラグメントをヒトHGFRの細胞外部分と組み合わせて投与するステップを含み、それにより、前記哺乳類を効果的に治療する。
【0036】
1つの態様では、本発明は、細胞増殖性障害を治療する方法を提供し、前記方法は、そのような治療を必要とする対象に、有効量の抗-HGFR抗体フラグメントをヒトHGFRの細胞外部分と組み合わせて投与するステップを含み、それにより、前記細胞増殖性障害を効果的に治療または予防する。
【0037】
1つの態様では、本発明は、哺乳類における腫瘍および/または転移を治療的に処置する方法を提供し、ここで前記腫瘍の増殖は、細胞増殖における増加、アポトーシスからの防御のいずれかまたは両方の結果としての、系HGFR/HGFの増殖増強効果に少なくとも部分的に依存する。前記方法は、腫瘍細胞を、本発明の有効量のヒトHGFRの細胞外部分と組み合わせた有効量の抗-HGFR抗体フラグメントと接触させるステップを含み、それにより、前記腫瘍および/または転移を効果的に治療する。
【0038】
本発明の組み合わせ療法で効果的に治療することのできる腫瘍は、胸部、結腸直腸、肺、結腸、膵臓、前立腺、卵巣、頸部、中枢神経系、腎臓、肝細胞、膀胱、胃、頭頚部の腫瘍細胞、乳頭がん(例えば甲状腺)、黒色腫、リンパ腫、骨髄腫、神経膠腫/膠芽腫(例えば未分化星状細胞腫、多形性膠芽腫、退形成性乏突起膠腫、退形成性乏突起星細胞腫(anaplastic oligodendroastrocytoma))、白血病細胞、肉腫、横紋筋肉腫、または、原発不明がん(CUP)由来の腫瘍から選択される。
【0039】
1つの実施態様では、本発明の方法において治療的に標的化される細胞は、過剰増殖性および/または過形成性の細胞である。1つの実施態様では、本発明の方法において標的化される細胞は、形成異常の細胞である。さらに別の実施態様では、本発明の方法において標的化される細胞は、転移細胞である。さらなる実施態様では、本発明の方法において標的化される細胞は、腫瘍および/または転移を維持している微小環境に属するHGFR発現細胞である。
【0040】
本発明の治療的方法は、追加の治療ステップをさらに含むことができる。例えば、1つの実施態様では、治療的方法は、標的化される腫瘍細胞および/または組織が、放射線治療または化学療法の治療に曝されるステップをさらに含む。さらなる実施態様では、標的化される腫瘍細胞および/または組織は、本発明のヒトHGFRの細胞外部分と組み合わせた抗-HGFR抗体フラグメントに加えて、形質転換された表現型の保持において関連のある他の標的を特異的に攻撃する分子(すなわち抗-EGFR分子)を用いて処理される。
【0041】
本明細書において用いられる抗-HGFR抗体フラグメントの「アンタゴニスト活性」という表現は、HGFR活性化の際に細胞内で誘発される細胞内シグナリングをクエンチングすることが可能な抗体を指す。前記抗体のアンタゴニスト活性は、従来の技術、例えば、ウエスタンブロット、免疫蛍光、免疫組織化学、ELISA、細胞蛍光計(cytofluorimeter)分析、または、HGFR、またはリン酸化される場合はHGFR残基Tyr1234-1235(すなわちMETの主なリン酸化部位9)、もしくはリン酸化される場合はHGFR残基Tyr1349/1356(すなわちMETのドッキング部位22)を特異的に認識する抗体の使用を含む任意の他の方法による、HGFRの発現レベルおよび/またはリン酸化の評価によって測定され得る。
【0042】
本明細書において用いられる、「ヒトHGFRの細胞外部分は、安定した様式でヒトHGFに結合することが可能」という表現は、ヒトHGFRの細胞外部分が、100nMよりも高くない計算されたKdでHGFに結合することを意味する。
【0043】
本明細書において用いられる「ヒトHGFRの細胞外部分は、抗-HGFR抗体フラグメントによって認識されるエピトープにおいて少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む」という表現は、抗体可変ドメインによる上記領域の結合を防ぐHGFRの細胞外部分内の改変を誘導することが可能な、HGFRの細胞外部分内の1つまたは複数の突然変異(すなわちアミノ酸置換および/または欠失および/または挿入)の存在を意味する。当業者は、その共通の一般的知識を考慮して(とりわけ、DNA複製中の特異的プライマーを用いた、所定のDNA配列内の単一のヌクレオチドの変更を含むcDNAを産生する可能性により表される Maniatis T.Molecular cloning:A laboratory manual Cold Spring Harbor Laboratory(1982)を参照)、ヒトHGFに対して結合する能力を保持するが抗-HGFR抗体フラグメントに対して結合する能力は保持しないヒトHGFRの細胞外部分の突然変異形態の認識についてさらなる詳細は必要ではない。
【0044】
当業者は、共通の一般的知識を考慮して、配列番号19を有するヒトHGFRの細胞外部分の、抗-HGFR抗体がそれに結合するのを防ぐさらなる突然変異バージョンを生産することができるので、本発明は、本明細書中に開示されるヒトHGFRの突然変異した細胞外部分(すなわち配列番号8)のみを包含すると解釈されるべきでない。
【0045】
本明細書において用いられる用語「単鎖Fabフラグメント」は、抗体のVL、CL、VH、CH1ドメインをコードする単一ポリペプチドを指し、ここでVLおよびCLが前記ポリペプチドのN末に位置してフレキシブルリンカーによってVHおよびCH1ドメインに連結されてよく、または、VHおよびCH1ドメインが前記ポリペプチドのN末に位置してフレキシブルリンカーによってVLおよびCLドメインに連結されてよい。
【0046】
用語「SEMA」、「PSI」、「IPT-1」、「IPT-2」、「IPT-3」および「IPT-4」は、HGFRの細胞外領域を構成するHGFRドメインを指す。そのようなドメイン名は、とりわけ4、13によって示されるように当業者の共通の一般的知識に属する。SEMAドメインは、セマフォリンおよびプレキシンと共通した、MET(配列番号19)のアミノ酸25~516の間に含まれる領域を包含するタンパク質相互作用モジュールであり;PSIは、プレキシン、セマフォリン、インテグリンと共通した、MET(配列番号19)のアミノ酸519~561の間に含まれる領域を包含するドメインであり;IPTドメイン(4回繰り返される)は、プレキシンおよび転写因子と共通した、MET(配列番号19)のアミノ酸563~934の間に含まれる領域を包含する免疫グロブリン様領域である。詳しくは、IPTリピート1は、配列番号19のアミノ酸563位~656位をカバーし、IPTリピート2は、配列番号19のアミノ酸657位~740位をカバーし、IPTリピート3は、配列番号19のアミノ酸741位~837位をカバーし、IPTリピート4は、配列番号19のアミノ酸838位~934位をカバーする。
【0047】
本明細書中に開示される融合タンパク質は、とりわけManiatis T.Molecular cloning:A laboratory manual Cold Spring Harbor Laboratory(1982)によって示される組み換えDNA技術に関連する分野の共通の一般的知識を考慮して、当業者によって、タンパク質の形態、または、融合タンパク質をコードする核酸分子の形態のいずれかで容易に製造され得る。例として、以下の標準的な手順に従うことができる:(i)対応するcDNA配列の合成、(ii)従来の組み換えDNA方法による、哺乳類における発現に適切なプラスミド内へのcDNAの挿入、(iii)上述のプラスミドを用いた哺乳類の細胞株の一過的または安定したトランスフェクション、(iv)培養上清の回収、(v)アフィニティクロマトグラフィーによる融合タンパク質の精製。2つのタンパク質配列、すなわち抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分をコンジュゲートするために用いられるリンカーは、異なる長さおよび/またはアミノ酸組成を有してよく、フレキシブル、リジッド、またはフレキシブルおよびリジッド領域の組み合わせである。融合タンパク質の生産に用いられるリンカーは、制限されないが、配列番号35、36および37に記載のアミノ酸配列のいずれか1つから選択することができる。融合タンパク質をコードする核酸分子の生産に用いられるリンカーは、制限されないが、配列番号38、39および40に記載の核酸配列のいずれか1つから選択することができる。
【0048】
以下において、本発明は、WO2007/090807に開示されるDN30モノクローナル抗体に属する配列番号1~6のCDRsを含む抗-HGFR抗体フラグメント、および、SEMA、PSI、IPT-1~IPT-4ドメイン(以下においてDecoyMETと短縮して呼ぶ)を含むHGFRの細胞外部分の組み合わせを参照することによって例示される。
【0049】
本発明者らは、予期せずに、一価DN30抗体フラグメント(MvDN30)およびDecoyMETは、組み合わせて用いられると、リガンドおよび受容体のデュアル標的化を可能にし、MET発現がん細胞およびHGF分泌腫瘍間質に対して同時に作用して、腫瘍および/または転移の治療において相乗効果を発揮することを発見した。
【0050】
がん遺伝子「依存性(addicted)」がん細胞におけるMETチロシンキナーゼ受容体の薬理学的阻害は、細胞の増殖および浸潤を失わせる。したがって、METによって増幅される進行性NSCLC、転移性の胃がんまたは食道がんを有する患者は、抗-MET療法に反応する5、14、19。一方で、MET遺伝子変異のないがん細胞は、「好都合性(expedient)」としてがん遺伝子によってトリガーされる「生理学的」プログラムを利用して悪性表現型をブーストする6。「好都合性(expedience)」は、そのリガンドHGFによる野生型METの刺激を必要とする。この点で、がんの進行および転移に対する腫瘍微小環境の寄与は、ますます関連してくる(悪性表現型は、厳密に細胞自律的な方法では発生しないが、がん細胞と宿主間質の間のむしろ複雑な相互作用において発生することを実験的証拠が示唆しているので)。腫瘍微小環境は、HGFの重大な源であり、間葉起源の間質細胞によって不活性の前駆体(proHGF)として分泌される。後者は、ヘパラン硫酸に関するその結合性のおかげで細胞外マトリックス内に保存されて、腫瘍または間質細胞のいずれかによって産生される特異的なプロテアーゼによって活性化される。したがって、過剰の生物学的に活性のリガンドは、MET受容体に結合するのに容易に利用可能であり、「非依存性(non-addicted)」細胞における浸潤性増殖シグナリングカスケードをトリガーする。本明細書において提供されるデータは、MET「好都合性(expedience)」の状態において、MET/HGF軸の両側を攻撃する同時性の(concomitant)介入が、阻害活性の改善をもたらすことを示す。同時の(simultaneous)標的化は、一価MET抗体(MvDN30)を組み換え可溶性受容体(decoyMETK842E)と組み合わせて達成された。本明細書において提供されるデータは、補足的なツールを用いた同一パスウェイの標的化における重複性は存在しないことを示す。2つのインヒビターは、それらの作用メカニズムに基づいて選択された:抗体は、外部ドメインの「シェディング」により細胞表面からのMETの物理的除去を誘導する。後者は細胞外環境内に放出されて、HGFに関する「デコイ(decoy)」として作用する。組み換えdecoyMETの外因的な供給は、MvDN30によって生産される内因性decoyMETのHGF隔離(sequestering)活性を強化する。MvDN30およびdecoyMETの同時性の使用を可能にするために、MvDN30相互作用が欠損しているがHGFに対する高アフィニティ結合特性を備え持つ改変された可溶性受容体が生産された(decoyMETK842E)。2つの薬剤は組み合わせて様々ながん細胞において協同し、効果的な治療的用量を減少させる。さらに、この「デュアルのストラテジー」は、強い相乗効果を示し、優れた抗-腫瘍有効性を潜在的に発揮する。幹/前駆がん細胞の亜集団におけるMET発現は、MET「固有(inherence)」、すなわち、がん幹細胞(遺伝子障害の不存在下)において活性化される生理学的な(固有の(inherent))HGFによって誘導される細胞内応答として定義されていて、結腸直腸がんにおける上皮増殖因子受容体(EGFR)インヒビターのような標的化療法に対する抵抗性の要因である。がん幹細胞に関連する概念および従来の治療に対する抵抗性は広く認められていて、MET発現前駆細胞の幹表現型(stem phenotype)の維持における微小環境HGFの役割が、ますます確立されてきている。MvDN30およびdecoyMETK842Eの組み合わせとしての効果的な抗-MET治療は、がん幹細胞を鈍らせて(blunt)標的化療法に対する抵抗性の発現に対抗するための、治療的サポートを表わす。
【0051】
宿主微小環境の役割は、ヒトがん細胞上の特異的な標的とミューリン間質由来因子の間の制限された交差反応性に起因して、マウス異種移植片において研究することが困難である。ミューリンHGFはヒトMETを活性化しないので、これはHGF/MET系の場合において特に重大である。ノックインされたヒトHGF遺伝子を発現している遺伝子改変マウス株(hHGF-Kiマウス)の開発はこの問題を回避した。このトランスジェニックモデルでは、環境HGFおよびがん細胞上のその受容体の同時性の標的化は、悪性進行および転移を妨げるための効果的な治療的ストラテジーであり得ることが示されている。
【0052】
膵臓腺がんの異種移植片は、早発性の転移伝播によって特徴づけられ、腫瘍進行中の非常に初期に生じ、大量の間質区画によって維持される。最近になって、膵臓星細胞によって分泌されるHGFは、このタイプの悪性腫瘍における腫瘍-間質相互作用において関連のある機能を果たす因子として同定された。hHGF-Kiマウス内に移植されたヒト膵臓腺がんの同所性マウスモデルでは、MvDN30およびdecoyMETK842Eの組み合わせは、METがドライバーがん遺伝子でない場合に、「好都合性(expedience)」のモデルにおいて予期されるように、腫瘍増殖をわずかに遅らせた。一方で、combo治療は転移拡散の減少において非常に効果的であることが判明し、野生型METを特徴とする非依存性(non-addicted)がん細胞(non-addicted cancer cells featuring wild-type MET)における可能性のある治療的適用を示唆した。疫学的データは、上皮がんのたった2~3%が、遺伝子の増幅、再配列または突然変異のいずれかが原因で、METがん遺伝子依存性(oncogenic addiction)に依拠することを示す29。この理由のため、多くの臨床試験-がん患者の非選択集団を扱う-は失敗した。一方で、癌腫の大部分は、低酸素状態、電離放射線または化学療法に応答して浸潤性転移表現型を解放する(unleash)ために、リガンド依存性の野生型MET活性化を利用する。したがって、これらの知見は、患者の大コホート(特有の遺伝子障害の不存在のせいでMET標的化療法に現在のところ不適切である)は、HGF主導のMETシグナリングの最適な遮断を可能にするデュアルの抗体-デコイのストラテジーを包含する治療により恩恵を受けるはずであることを示唆する。
【0053】
本発明の活性成分、すなわち抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分を含む治療的組成物は、一緒に混合された2つの活性成分を含む単一製剤として、または、一方が抗-HGFR抗体フラグメントを含み他方がヒトHGFRの細胞外部分を含む別個の製剤として、調製され得る。活性成分は、所望の程度の純度を有する活性成分(単数または複数)を、生理的に許容できる担体、賦形剤または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって、水溶液、凍結乾燥または他の乾燥製剤の形態で、保管のために調製される。許容できる担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、バッファー;抗酸化;防腐剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;アミノ酸;単糖類、二糖類、および他の炭水化物;キレート剤;糖類;塩形成対イオン;金属複合体および/または非イオン性界面活性剤を含む。本明細書中に開示される製剤はまた、治療される特定の適応症に関して、必要に応じて他の活性化合物(単数または複数)、好ましくは、抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分の治療的活性に悪影響を及ぼさない補足的な活性を有するものを含んでよい。そのような分子は、意図する目的に効果的な量で、組み合わせで適切に存在する。
【0054】
活性成分(単数または複数)は、とりわけRemington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示される技術を用いて調製されるマイクロカプセル内にトラップされてもよい。
【0055】
インビボ投与のために用いられる製剤は、滅菌されなければならない。
【0056】
徐放性製剤が調製され得る。徐放性製剤の適切な例は、本発明の活性成分を含む固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、そのマトリックスは、成形品の形態、例えばフィルム、またはマイクロカプセルである。
【0057】
本発明の活性成分は、単独で、または、別の抗体、化学療法剤(単数または複数)(化学療法剤のカクテルを含む)、他の細胞傷害剤(単数または複数)、抗-血管新生剤(単数または複数)、サイトカイン、および/または増殖阻害剤(単数または複数)と組み合わせのいずれかで用いられ得る。上記のそのような組み合わせの治療は、組み合わせの投与(2以上の薬剤が同一または別個の製剤中に含まれる)、および別個の投与(その場合、本発明の抗体の投与は、補助の療法または治療の投与の前および/または後に生じてよい)を含む。
【0058】
本発明の活性成分(および補助の治療的薬剤(単数または複数))は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内を含む任意の適切な手段によって投与されて、局所治療のために必要な場合は、病巣内投与によって投与される。本発明の活性成分は、特に、減少する投与量の活性成分を用いて、パルスインフュージョンによって適切に投与され得る。投与は、投与が短期間または慢性的であるかどうかに部分的に依存して、任意の適切な経路、例えば静脈内または皮下注入のような注入によるものであってよい。本発明の活性成分は、局所的または全身性に投与されるウイルスベクター(すなわちレンチウイルスベクター)を用いて遺伝子導入によって送達することもでき、または、細胞療法、すなわち、抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分を発現するようにウイルスベクター形質導入(すなわちレンチウイルスベクター)によって遺伝子改変されたヒト細胞の静脈内の局所注入による送達を用いて送達することもできる。
【0059】
本発明の活性成分は、適した医療行為と一貫した様式で処方され、投薬され、および投与される。このコンテキストにおいて考慮される因子は、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、および医師に公知の他の因子を含む。本発明の活性成分は、問題となっている障害を予防または治療するために現在のところ用いられる1つまたは複数の薬剤とともに処方される必要はないが、処方されてもよい。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する本発明の活性成分の量、障害または治療のタイプ、および上述の他の因子に依存する。これらは、上記で用いられたのと同一の用量および投与経路で、または従前に用いられた用量の約1~99%で一般に用いられる。
【0060】
疾患の治療のために、本発明の活性成分の適切な用量は(単独、または化学療法剤(単数または複数)のような他の薬剤(単数または複数)と組み合わせて用いられる場合)、治療される疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、活性成分が予防的または治療的な目的のために投与されるのかどうかに依存して、患者の病歴および本発明の活性成分に対する応答が正当に考慮されて、主治医の裁量である。
【0061】
抗体フラグメントは、1度に、または一連の治療にわたって、患者に適切に投与される。疾患のタイプおよび重症度に応じて、約1mg/kg~15mg/kgの抗体が、例えば1または複数の別個の投与によるにしても、または連続的なインフュージョンによるにしても、患者への投与のための最初の候補用量である。1つの典型的な毎日の用量は、上述の因子に応じて、約1mg/kg~100mg/kgの範囲またはそれよりも多い。数日またはより長くにわたる繰り返しの投与に関しては、状態に応じて、疾患症候の所望の抑制が生じるまで治療が維持される。抗体フラグメントの1つの例示的な用量は、約0.05mg/kg~約20mg/kgの範囲である。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kgまたは10mg/kg(またはそれらの任意の組み合わせ)の1以上の用量が、患者に投与されてよい。そのような用量は、間欠的に、例えば毎週ごとに、または3週間ごとに(例えば、約2~約20、例えば約6の用量の抗体を患者が受け取るように)、投与されてよい。最初のより高い負荷投与量の後に、1または複数のより低い投与量が投与されてよい。例示的な投与レジメンは、約4mg/kgの最初の負荷投与量の後に、約2mg/kgの抗体の毎週の維持投与量の投与を含む。しかしながら、他の投与レジメンが有用で有り得る。この療法の経過は、従来の技術およびアッセイによって簡単に監視される。ヒトHGFRの細胞外部分は、抗体フラグメントと同時に送達されなければならず、疾患のタイプおよび重症度に応じて、優先的に、制限されないが、モル比1:1(抗体フラグメント:decoyMET)で、抗体フラグメントに比例して投与されなければならない。
【実施例】
【0062】
[結果]
decoyMETにおけるDN30-結合エピトープの部位特異的突然変異誘発
MvDN30抗体およびdecoyMETを組み合わせた活性を利用するために、相互中和をもたらす2つの分子間の相互作用を防ぐことが必須である。MvDN30は、IPT-3ドメインとの境界におけるMET細胞外領域のIPT-4ドメイン内のエピトープを認識することが以前に示されている
28。以前の研究は、ピコモルの親和性でヒト受容体に結合する親DN30抗体が、イヌおよびラットMETとも相互作用するが
11、23、マウスとは交差反応しない
21ことを示した。上述の哺乳類種のIPT-3およびIPT-4アミノ酸配列のアライメントの際に、マウスにおいて選択的に変化しているいくつかの残基を同定した(
図1A)。単一アミノ酸残基のヒトからマウスへのスワッピングが抗体結合を損なわせ得るかどうか試験するために、IPT3-4ドメイン内に点突然変異を保有する可溶性受容体を生産してDN30抗体に対して試験した。グルタミン酸によるリジン842の置換は、decoyMET
K842E(抗体によってもはや認識されない改変された可溶性受容体)を生じさせたが、他の突然変異は全て、相互作用に影響しなかった(
図1B)。抗体がdecoyMET
K842Eと相互作用することができないことは、アフィニティ精製されたdecoys(固相中)およびDN-30抗体(液相中)を用いて行われたELISAアッセイにおいて確認された(
図1C)。それ故に、酸性残基による842位の塩基性アミノ酸の置換は、結合部位の重大な摂動(critical perturbation)をもたらし、decoyMET
K842E-抗体の相互作用を妨害した。
【0063】
decoyMET
K842E
は、HGFに高い親和性で結合する
本発明者らはそれから、K842Eアミノ酸置換がHGFの結合を妨害するかどうか研究した。ELISA結合アッセイでは、HGFに関するdecoyMET
K842Eの親和定数(K
d=1.04±0.05nM)は、野生型decoyMETに関して測定されたK
d=1.44±0.07nMと重ねることができた(superimposible)(
図2A)。最後に、HGFによって誘導されるMETリン酸化アッセイにおいて、decoyMET
K842Eの阻害活性を試験した。
図2Bに示されるように、野生型decoyMETおよびdecoyMET
K842Eは、A549肺がん細胞におけるHGF-依存性METリン酸化を同等の能力で阻害した。したがって、K842E置換は、HGFとの安定した複合体の形成を妨げず、decoyの阻害活性は影響を受けないままである。
【0064】
MvDN30およびdecoyMET
K842E
は、METリン酸化および下流の生物学的応答の阻害において協同する
リガンドおよび受容体の同時性の標的化によって引き起こされるMETシグナル伝達に対する阻害活性を評価するために、MvDN30およびdecoyMET
K842Eの単独または組み合わせのいずれかの存在下でMETリン酸化を試験した。この目的を達成するために、野生型MET受容体を発現するA549細胞をナノモル濃度のHGFで刺激して、ホスホMET抗体によってMET活性化を測定した。両方の分子が阻害活性を示し、2つの組み合わせがより効率的であった(
図3A)。下流のシグナリング伝達因子(signaling transducer)の分析は、組み合わせが、ERKおよびAKT活性化の最も効果的な阻害を達成することを確認した(
図3B)。
【0065】
生物学的根拠に基づき、MvDN30およびdecoyMET
K842Eの組み合わせは、オートクリンまたはパラクリンのHGF刺激の両方の細胞モデルにおいて、足場非依存性コロニー増殖を強く阻害した。前者では、U87-MG膠芽腫細胞(MET/HGFオートクリンループに起因して軟寒天において非常に効率的なコロニー増殖を示す)は、MvDN30およびdecoyMET
K842Eが組み合わせで用いられた場合、75%阻害されたが、2つの分子が単一の薬剤として用いられた場合、コロニー増殖阻害は40%を決して越えなかった(
図3B)。同様に、combo治療は、ナノモル濃度の外因的に投与されたHGFによって誘導されるA549軟寒天コロニーの形成を完全に阻止したが、MvDN30およびdecoyMET
K842E単独では、コロニー増殖の有意であるが部分的な阻害を達成した(それぞれ、65%および74%、
図3C)。同様の結果が、マトリゲルによってコーティングされたチャンバー内で行われた浸潤アッセイにおいて得られた:MvDN30およびdecoyMET
K842Eの組み合わせは、HPAF-IIヒト膵臓腺がん細胞のHGF主導の浸潤を85%減少させたが、単一の薬剤としては、それぞれ、たった59%および52%の阻害を達成した(
図3D)。これらの生体系の全てにおいて、MvDN30およびdecoyMET
K842Eの組み合わせは、単一の治療よりも効果的にMETリン酸化を損なわせた(
図4)。
【0066】
2つのインヒビターの効果が相加的または相乗的であるかどうか評価するために、定量的な運動性アッセイを行なった。野生型METを発現しているHPAF-IIヒト膵臓腺がん細胞を、HGFによって、分散するように誘導した。細胞分散を、細胞によって覆われた電極(X-CELLigence Real Time Cell Analyzer)の電気インピーダンスの変動を測定することによって定量した。2つの分子の組み合わせは、HGF-依存性の細胞分散を用量依存的な様式で減少させ、250nMでの阻害に始まり、マイクロモルの範囲において完全な阻止を達成した(
図5AおよびB)。実験の最後に測定された(時間=48h)細胞指標の値をHGFに対して標準化して(
図5C)、CalcuSYNソフトウェアを用いて作成して、相乗作用を評価した(
図5D):試験した全ての濃度に関して、計算された組み合わせ指標(CI)は、0.5を十分に下回り(0.06、0.25、1および4μMについて、それぞれ、CI=0.1、0.09、0.17および0.38)、MvDN30およびdecoyMET
K842Eが相乗の挙動を示すことを示した
10。
【0067】
MvDN30およびdecoyMET
K842E
は、浸潤性表現型を弱めて、転移拡散を減少させる
リガンド主導のMET刺激のマウスモデルにおいて、MvDN30およびdecoyMETK842Eを組み合わせた阻害活性をインビボで評価した。
【0068】
オートクリンHGF刺激のU87-MG膠芽腫異種移植片腫瘍モデルを研究した。細胞をNOD-SCIDマウス内に皮下注入した;腫瘍が80~100mm
3の体積に到達したときに、マウスを同質なグループに階層化して、4つの処置アーム:ビヒクル、MvDN30、decoyMET
K842Eまたは2つの組み合わせに無作為に割り当てた。処置の22日後、マウスを屠殺して、原発性腫瘍を組織学的試験のために切除した。combo処置は増殖のわずかな(marginal)阻害を誘導しただけだったが(
図6A)、腫瘍浸潤の表現型の特徴(phenotypic hallmarks)の減少が観察された(
図6B)。
【0069】
combo処置は、HGF刺激のパラクリンモデルにおいてもチャレンジされた。以前に報告されたように、マウスHGFはヒトMET受容体を活性化しない
24、30。それ故に、ヒト腫瘍の異種移植片においてdecoyMET
K842Eの阻害活性を試験するために、我々は、マウスHGF遺伝子がヒト遺伝子によって置き換えられたトランスジェニックSCIDマウス(hHGF-Ki)
20を利用した。ヒト膵臓腺がん細胞(HPAF-II)を、ルシフェラーゼ遺伝子を用いた形質導入によって標識化して、hHGF-Kiマウスの膵臓内へ同所性に注入した。生着を全身発光の分析によって確認した;マウスを生物発光の値に基づいて同質なグループに階層化して、4つの処置グループ:ビヒクル、MvDN30、decoyMET
K842Eまたは2つの組み合わせに無作為に割り当てた。腫瘍増殖を全身発光によって監視した(
図7A)。屠殺において、細胞注入の5週間後に、腫瘍を切除して、METリン酸化、増殖、アポトーシスおよびビメンチン/E-カドヘリン発現(上皮間葉転換のマーカー)に関して分析した。同時に、転移小結節の組織化学的評価のために肺を回収した。チロシン1234~1235におけるMETのリン酸化状態は、いずれかの薬剤によって阻害されて、combo処置は劇的な効果を発揮した(
図8A)。METがん遺伝子「好都合性(expedience)」のこのモデルにおいて予期されるように(すなわち野生型METの発現)、増殖ならびにアポトーシスは、わずかに、そしてcombo処置によってのみ、影響を受けた(
図7BおよびC)。ビメンチンとE-カドヘリンの間の比の分析は、組み合わせの処置が、がん細胞をより上皮表現型の方へ押しやることを示した(
図8B)。したがって、MvDN30およびdecoyMET
K842Eの同時性の投与は、肺への、MET主導の(driven)転移伝播を有意に阻害した(
図8C)。
【0070】
抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分を含む融合タンパク質のパネルの生産
抗-HGFR抗体フラグメントおよびヒトHGFRの細胞外部分を含む融合タンパク質をコードする単一cDNAを産生するために、本発明者らは、単鎖MvDN30(ScMvDN30)を最初に設計して、軽鎖(VL-CL)および重鎖(VH-CH1)の間にリンカーを導入した。リンカーはフレキシブルであり、グリシン/セリン残基が豊富であり、そして、単量体分子(二量体および/または多量体を生じさせるように、それらは同一ポリペプチドに属する抗体軽鎖および重鎖の関連性によって構成され、別個のポリペプチド(polypepdites)由来ではない)の産生を優先的に可能にする長さを有していた。リンカーの好ましいアミノ酸配列は、配列番号36に報告されて;対応するヌクレオチド配列は配列番号39に報告される。それから、ScMvDN30 cDNAをdecoy MET
K842Eとインフレームで融合した。2つのグループの融合タンパク質が生産された:i)decoyMET
K842EがN末に位置してScMvDN30がC末に位置する、およびii)scMvDN30がN末に位置してdecoyMET
K842EがC末に位置する。構造全体に対して高い自由度を保証するために、本発明者らは、2つの部分の間に第2のリンカーを導入した。アミノ酸組成および/または長さが改変された3つの異なるリンカー:i)L45:アラニンおよび荷電残基が豊富な配列の2回繰り返しで構成された45アミノ酸のリジッドリンカー(配列番号35、対応するヌクレオチド配列は配列番号38に報告される);ii)L60,60アミノ酸のグリシン/セリン残基が豊富なフレキシブルリンカー(配列番号36、対応するヌクレオチド配列は配列番号39に報告される;iii)L134,134アミノ酸のフレキシブルおよびリジッド領域の組み合わせ(配列番号37、対応するヌクレオチド配列は配列番号40に報告される)を用いた。融合タンパク質の略図を
図9に報告する。
【0071】
scMvDN30をN末に含みdecoyMET
K842E
をC末に含む融合タンパク質は、METおよびHGFの両方に高い親和性で結合する。
本発明者らは、新たに生産された融合タンパク質が、HGFおよびMETの両方に結合する能力を維持するかどうかをELISAアッセイによって研究した。全ての融合タンパク質は、decoyMET
K842Eのものと重ねることができる(superimposable)親和性でHGFと相互作用したが(
図10A)、scMvDN30をC末に含む融合タンパク質は、N末に位置する抗体との融合と比較してより低い親和性でMETを認識した。この後者のグループの分子に関して測定されたKdは、scMvDN30単独に関して測定されたものと同等であった(
図10B)。
【0072】
融合タンパク質は、腫瘍細胞増殖を効率的に阻害した。
本発明者らは、decoyMET
K842Eと等モル比で組み合わせたscMvDN30と比較して、処置の3日後の細胞増殖障害を測定して、融合タンパク質の阻害特性を評価した。全ての融合タンパク質は、用量依存的な様式で阻害特性を示した。報告された実験では、L60リンカーを用いた融合は他の分子よりも強力でなかったが、L45およびL134タンパク質は、scMvDN30-decoyMET
K842Eの組み合わせと同様の活性を示した(
図11)。
【0073】
融合タンパク質は、HGFによって誘導される細胞運動を効率的に阻害した。
HGF主導の細胞運動の阻害における融合タンパク質の効果を評価するために、本発明者らは、HGFを用いて処理されたHPAF-IIヒト膵臓腺がん細胞をモデルとして用いて、X-CELLigence Real Time Cell Analyzerを用いて定量的な運動性アッセイを行なった。全ての融合は、HGF-依存性の細胞分散を減少させることができた(
図12)。
【0074】
融合タンパク質は、MvDN30およびdecoyMET
K842E
の組み合わせよりも強力に、転移拡散を減少させた
融合タンパク質の阻害活性を、hHGF-Ki SCIDマウスモデルにおいてインビボで評価した。ヒト膵臓腺がん細胞(Capan-I)を、ルシフェラーゼ遺伝子を用いた形質導入によって標識化して、マウスの膵臓内へ同所性に注入した。全身発光の分析によって生着を確認した;生物発光の値に基づいてマウスを同質なグループに階層化して、リンカーL60またはL134を含む融合タンパク質によって処置した。参考文献のように、MvDN30およびdecoyMET
K842Eの1:1組み合わせおよびビヒクルを実験グループに含んだ。屠殺の際、細胞注入の5週間後に、肝臓を切除して、IVIS Spectrumによって分析して転移をスコア化した。MvDN30およびdecoyMET
K842Eの同時性の投与は、肝臓への、MET主導の転移伝播を有意に阻害した;MvDN30投与が毎日された場合は高い有効性がスコアされたが(COMBO 1グループ)、より少ない頻度の投与が適用された場合は、治療的応答は有意に減少した(COMBO 2グループ)。この制限は、融合タンパク質を用いて処置されたマウスではスコア化されなかった。実際に、それらの全ては、1週間に2回の送達であっても肝臓への転移伝播を高い有効性で減少させた(
図13)。
【0075】
[材料および方法]
細胞培養
A549ヒト肺腺がん細胞、HPAF-IIおよびCapan-1ヒト膵臓腺がん細胞、およびU87-MGヒト膠芽腫細胞は、ATCC/LGC Standards S.r.l.(Sesto San Giovanni,Italy)から得て;EBC-1ヒト肺癌腫細胞は、Japanese Collection of Research Bioresourcesから得た。全ての細胞は、供給元によって示唆されるとおりに培養した。全ての細胞培養をマイコプラズマ汚染に関して試験した。
【0076】
抗-HGFR抗体フラグメントの産生、発現および精製
HGFRの細胞外部分のエピトープを認識することが可能な抗-HGFR抗体フラグメントの軽鎖(VL-CL)および重鎖(VH-CH1)をコードするcDNAを、配列番号7および配列番号8に報告される配列に従って、Invitrogen GeneArt Gene Synthesis(ThermoFisher)により外部委託で行なわれる遺伝子合成によって生産した。抗体フラグメントを、軽鎖(VL-CL)および重鎖(VH-CH1)をコードするcDNAを発現するpcDNA3.1プラスミド(カタログ番号V79020 Invitrogen Corporation,Camarillo,CA)を用いたHEK-293T細胞の一過的トランスフェクションによって生産した。トランスフェクトされた細胞を3日間飢餓させて、可溶性受容体を含む細胞培養上清を回収した。組み換えタンパク質の精製を、製造元の説明書に従ってHisTrap HPカラム(カタログ番号17524701 GE Healthcare,Freiburg,Germany)を用いたアフィニティクロマトグラフィーによって行なった。大スケールのタンパク質生産および精製を、U-Protein Express BV(Utrecht,The Netherlands)によって行なった。
【0077】
突然変異MET外部ドメインの産生、発現および精製
単一アミノ酸置換を保有するヒトMET外部ドメイン(decoyMET)のcDNA配列を、製造元の説明書に従ってQuickChange II部位特異的突然変異誘発キット(カタログ番号200524 Agilent Technologies,Santa Clara,CA)を用いて生産した。手順は、所望の点突然変異を含むセンスおよびアンチセンスのオリゴヌクレオチドの設計を要する。以下のオリゴを用いた:
【0078】
-突然変異K842E:
sn. 5’-gtacataatcctgtgtttgagccttttgaaaagccagtg-3’(配列番号41)
as. 5’-cactggcttttcaaaaggctcaaacacaggattatgtac-3’(配列番号42)
-突然変異Q807K:
sn. 5’-ccactccttccctgaaacagctgaatctgcaactcc-3’(配列番号43)
as. 5’-ggagttgcagattcagctgtttcagggaaggagtgg-3’(配列番号44)
-突然変異D864N:
sn. 5’-ctggaaattaagggaaataatattgaccctgaagcagttaaagg-3’(配列番号45)
as. 5’-cctttaactgcttcagggtcaatattatttcccttaatttccag-3’(配列番号46)。
【0079】
改変された可溶性受容体を、野生型decoyMETまたはdecoyMET突然変異体をコードするcDNAを発現するpcDNA3.1プラスミド(カタログ番号V79020 Invitrogen Corporation,Camarillo,CA)を用いたHEK-293T細胞の一過的トランスフェクションにより生産した。トランスフェクトされた細胞を3日間飢餓させて、可溶性受容体を含む細胞培養上清を回収した。組み換えタンパク質の精製は、製造元の説明書に従ってHisTrap HPカラム(カタログ番号17524701 GE Healthcare,Freiburg,Germany)を用いてアフィニティクロマトグラフィーによって行なった。大スケールのタンパク質生産および精製を、U-Protein Express BV(Utrecht,The Netherlands)によって行なった。
【0080】
METリン酸化アッセイ
血清飢餓A549を、125nMのMvDN30または2μMのdecoyMETK842Eを単独または組み合わせで用いて24時間インキュベートして、それから、50ng/mlのHGF(カタログ番号294-HG-025 R&D Systems)を用いて4℃で2時間刺激した。全細胞溶解物を、以下の一次抗体:抗-METホスホ-Tyr1234/1235(D26,カタログ番号3077 Cell Signaling Technology,Beverly,MA);抗-MET(3D4,カタログ番号08-1366 Invitrogen Corporation);抗-ビンキュリン(クローンhVIN-1,カタログ番号V9131 Sigma Life Science,Saint Louis,MO)を用いてウエスタンブロットによって分析した。抗‐マウスIgG1(カタログ番号JI115035003)および抗‐ウサギIgG(カタログ番号JI111035003)HRP-コンジュゲート二次抗体はJackson ImmunoResearch.(West Grove,PA)由来であった。
【0081】
ELISA結合アッセイ
decoyMETおよびDN30 mAbの間の相互作用の分析のために、アフィニティ精製された可溶性受容体(野生型decoyMETまたはdecoyMETK842E,100ng/well)をELISAプレート上に固定化して、増加する濃度の抗体(0~100nM)を液相内に添加した。HRP-コンジュゲート抗-マウス抗体(カタログ番号NA931 GE Healthcare)を用いて結合を明らかにした。 および融合タンパク質の間の相互作用の分析のために、アフィニティ精製されたdecoyMET野生型(100ng/well)をELISAプレート上に固定化して、増加する濃度の融合タンパク質またはscMvDN30(0~1000nM)を液相内に添加した。HRP-コンジュゲート抗-ヒトk鎖抗体(カタログ番号A7164 Sigma-Aldrich)を用いて結合を明らかにした。HGFに対するdecoyMETまたは融合タンパク質の結合の分析のために、可溶性受容体(100ng/ウェル)をELISAプレート上に固定化して、溶液中で、増加する濃度のHGF(0~11nM)とともにインキュベートした。結合を、抗-HGFビオチン化抗体(カタログ番号BAF294 R&D Systems)を用いて検出して、HRP-コンジュゲートストレプトアビジン(カタログ番号RPN 1231 GE Healthcare)を用いて明らかにした。
【0082】
比色分析法を、マルチラベルプレートリーダーVICTOR-X4(Perkin Elmer Instruments INC.,Whaltman,MA)によって定量化した。データを分析して、Prismソフトウェア(GraphPad)を用いてフィットさせた。
【0083】
インビトロの生物学的アッセイ
足場非依存性の増殖アッセイのために、2% FBSおよび0.5% Seaplaqueアガロース(カタログ番号50100 BMA,Rockland,ME)で補充された適切な培養培地中に細胞を懸濁して、1%アガロースの上部へ48ウェルプレート(500細胞/ウェル)内に蒔いた。処理を含む新鮮な培地を週に2回供給した。A549細胞を、1μMのMvDN30または1μMのdecoyMETK842Eを単独または組み合わせて用いて、30ng/mlのHGF存在下で処理した。U87-MG細胞を、0.5μMのMvDN30または1μMのdecoyMETK842Eを単独または組み合わせて用いて処理した。培養の12日後にテトラゾリウム塩(カタログ番号T01380 Sigma-Aldrich)を用いてコロニーを染色した。Metamorphソフトウェア(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を用いてコロニー増殖を判定した。細胞浸潤アッセイのために、HPAF-II細胞(1.5×105/ウェル)を、0.5μMのMvDN30または1μMのdecoyMETK842Eの単独または組み合わせの存在下で、血清フリーの培養培地中に懸濁して、30μg/ウェルのマトリゲルマトリックス(カタログ番号354234 Corning Incorporated,NY)で事前にコーティングされたトランスウェルチャンバーの上コンパートメントに蒔いた。2% FBSおよび12.5ng/ml HGFで補充された培養培地を、チャンバーの下コンパートメントに添加した。24時間後、トランスウェルフィルターの上側にある細胞を機械的に除去して、一方で、膜を通って遊走した細胞を、11%グルタルアルデヒド(カタログ番号340855 Sigma-Aldrich)を用いて固定して、0.1%クリスタルバイオレット(カタログ番号C3886 Sigma-Aldrich)を用いて染色した。Image-Jソフトウェアを用いて細胞浸潤を定量化した。細胞分散アッセイのために、HPAF-II細胞(8000/ウェル)を完全培養培地内の96ウェルプレート内に蒔いた。6時間後、増加する濃度(0~4μM)のMvDN30またはdecoyMETK842Eを、単独または1:1の組み合わせで添加した。さらに24時間後、6.25ng/mlのHGFを用いて20時間、細胞を刺激した。細胞を、11%グルタルアルデヒドを用いて固定して、0.1%クリスタルバイオレットを用いて染色した)。リアルタイムの細胞運動アッセイのために、HPAF-II細胞をE-プレート(8000/ウェル;Roche Diagnostics,Mannheim,Germany)内に蒔いて、上記のとおりに処理して;適用される場合(when applied)、融合タンパク質を3μMの濃度で試験した。電気インピーダンスを、X-Celligence RTCA装置(Roche Diagnostic)を用いてデータを10分ごとに記録しながら48時間連続的に監視した。値は、HGF添加の瞬間に標準化された細胞指標として表される。
【0084】
足場(anchorage)-依存性の細胞増殖のために、EBC-1細胞を、5%FBS培養培地内の96ウェルプレート内に2000細胞/ウェルで蒔いた。24時間後、培地を、5%FBS+試験される分子(0、001から3μMまでの増加する濃度)を含む新しいもので置き換えた。細胞生存能力を、製造元の説明書に従ってCellTiter-Glo(カタログ番号G7573 Promega Corp.,Madison,WI)を用いて72時間後に評価した。VICTOR X4を用いて化学発光を検出した。
【0085】
免疫蛍光
腫瘍細胞および組織に対する免疫蛍光分析を、記載16、25のとおりに行なった。染色を、抗-METホスホ-Tyr1234/1235一次抗体(D26)を用いて行ない、Alexa Fluor 555-コンジュゲート二次抗体(カタログ番号A31570 Thermo Fisher Scientific)によって明らかにした。488-コンジュゲートファロイジン(カタログ番号A12379 Thermo Fisher Scientific)を用いて細胞を対比染色した。全ての画像を、Leica TCS SP5 AOBS共焦点レーザ走査顕微鏡(Leica Microsystems)を用いてキャプチャーした。免疫蛍光取得設定は、各細胞株または腫瘍組織内で一定に維持した。平均蛍光強度(MFI)を、ImageJソフトウェアを用いて評価して、各チャンネルにおける平均ピクセル強度を測定して、バックグラウンドを差し引いた。細胞株に関してはホスホMET MFIはファロイジンに対して標準化されたが、腫瘍に関しては全てのシグナルはDAPIに対して標準化された。
【0086】
インビボ実験
全ての動物手順は、Fondazione Piemontese per la Ricerca sul Cancroの動物実験に関する倫理委員会およびItalian Ministry of Healthによって承認されたプロトコルに従って行われた。NOD-SCIDマウスは、Charles River(Calco,Italy)から購入し;hHGF-Ki SCIDマウス)は、AVEO Pharmaceuticals,Cambridge,MAから取得した。
【0087】
U87-MG細胞を、雌NOD-SCIDマウスの右わき腹内に皮下注入した(2×106/マウス)。腫瘍増殖を、カリパス測定によって週に2回監視した。腫瘍体積を、式:V=4/3π(x/2)(y/2)(z/2)(ここで、x、yおよびzは、腫瘍量(tumor mass)の高さ、幅および深さである)を用いて計算した。腫瘍が80~100mm3の体積に到達したときに(0日目)、4つの同質なグループにマウスを階層化して、ビヒクル(n=10);MvDN30,12.5μg(n=9);K842E,125μg(n=9);2つの組み合わせ(n=10)を用いて腫瘍内注入によって週に2回処置した。処置の22日後にマウスを屠殺して、腫瘍を切除して、組織学的分析のためにパラフィン包埋した。腫瘍体積の増加倍率(fold increase)を、22日目の値と0日目の値の間の比として計算した。
【0088】
HPAF-IIまたはCapan-1細胞を、記載されるように1CMVプロモーターの制御下でルシフェラーゼ遺伝子を保有するレンチウイルスベクターp24(100ng/ml)を用いて形質転換した。ルシフェラーゼ発現HPAF-II細胞(104/マウス)を、4~6週齢雌hHGF-KI SCIDマウスの膵臓内に注入した。2日後に、XenoLight D-ルシフェリン(150mg/kg;カタログ番号122799 Perkin Elmer)をマウスに腹腔内注入して、IVIS Spectrum CT器具(Perkin Elmer)を用いて生物発光シグナルに基づいて同質なグループに階層化して、4つの治療アーム:ビヒクル(n=10);MvDN30(10mg/kg,n=6);decoyMETK842E(10mg/kg,n=6);MvDN30+decoyMETK842E(10+10mg/kg,n=6)に無作為に割り当てた。処置は、毎日(MvDN30)または2日ごとに(decoyMETK842E)、腹腔内注入によって施された。屠殺の際、処置の5週間後に、腫瘍および肺を外植した。腫瘍をパラフィンまたはOCT包埋して、それぞれ免疫組織化学または免疫蛍光分析のために処理した。腫瘍細胞の増殖を、以前に説明されるとおりに18、モノクローナル抗-Ki67抗体(MIB-1,カタログ番号M724001-2 Agilent Technologies)を用いて判定した。肺を組織化学的分析のために処理して、パラフィン包埋されてHE染色された非連続部分に対して光学顕微鏡によって微小転移を評価した。各マウスについて、10枚のスライドを分析した;転移病変をスコア化して、ImageJソフトウェアを用いてそれらの面積を定量化した。
【0089】
ルシフェラーゼ発現Capan-1(106/マウス)を、4~6週齢雌hHGF-Ki SCIDマウスの膵臓内に注入した。マウス階層化を上記のとおりに行なった。処置アーム:ビヒクル(n=14)、MvDN30およびdecoyMETK842Eの組み合わせ(10+10mg/kg;グループ1,n=4;グループ2 n=6)、scMvDN30_K842E_L60(10mg/kg;n=5)、K842E scMvDN30_L60(10mg/kg;n=4)、scMvDN30_K842E_L134(10mg/kg;n=6)、K842E_scMvDN30_L134(10mg/kg;n=5)。処置は、毎日(MvDN30)または2日ごとに(decoyMETK842Eおよび組み換え融合タンパク質)、腹腔内注入によって施された。処置の5週間後に、動物を屠殺して、肝臓を回収してIVIS Spectrumによって生物発光シグナルを測定した。マウスは、IVIS Spectrumにより肝臓において検出される生物発光が105光子/秒よりも高い場合に、転移陽性と考えられた。
【0090】
統計分析
平均、標準偏差(SD)および平均の標準誤差(SEM)は、Microsoft Office Excel 2010ソフトウェア(Microsoft Corporation,Redmond,Washington)を用いて計算した。Kd値を計算するために、ELISAアッセイによるデータを分析して、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software,San Diego,California)を用いて、非線形回帰、1サイト結合・双曲線カーブ(one site binding hyperbola curve)に従ってフィットさせた。IC50値を計算するために、増殖アッセイによるデータを分析して、GraphPad Prismソフトウェアを用いて、非線形回帰、シグモイド型用量反応曲線(sigmoidal dose-response curve)に従ってフィットさせた。統計的有意性を、両側スチューデントt検定を用いて判定した。全ての実験は少なくとも3回繰り返した(生物学的レプリケート)。インビボ実験は2回繰り返した。図は1つの代表的な実験を示す。
【0091】
【配列表】