(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】アルミニウム溶融物を調製するためのシステム及び混合配置構成
(51)【国際特許分類】
F27B 14/08 20060101AFI20231108BHJP
F27D 27/00 20100101ALI20231108BHJP
F27D 3/16 20060101ALI20231108BHJP
F27D 13/00 20060101ALI20231108BHJP
B01F 27/50 20220101ALI20231108BHJP
C22C 1/10 20230101ALI20231108BHJP
【FI】
F27B14/08
F27D27/00
F27D3/16 Z
F27D13/00 B
B01F27/50
C22C1/10 G
(21)【出願番号】P 2021520178
(86)(22)【出願日】2018-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2018079095
(87)【国際公開番号】W WO2020083476
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】521147466
【氏名又は名称】オートモーティブ コンポーネンツ フロビー アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ヨートリンド マグヌス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアンソン ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン アンデルス
(72)【発明者】
【氏名】ヤンソン パトリック
【審査官】櫻井 雄介
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-068728(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107385263(CN,A)
【文献】国際公開第2016/152350(WO,A1)
【文献】特表2022-511617(JP,A)
【文献】特開平04-021731(JP,A)
【文献】特開2011-031292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 14/00-14/20
F27D 27/00
F27D 3/16-3/18
F27D 13/00
B01F 27/50
C22C 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両部品を成形する際に使用するための、SiC粒子を含むアルミニウム溶融物を得るシステムであって、
SiC粒子を受け入れ、前記SiC粒子を前処理するための前処理手順を適用するように構成された前処理槽(2)と、
前記前処理槽(2)から溶融炉装置(8)のるつぼ(6)に前処理された前記SiC粒子を搬送するように構成されたSiC粒子搬送部材(4)と
を含み、
前記溶融炉装置(8)は、固体アルミニウムを受け入れて溶融し、アルミニウム溶融物(10)を保持し、前記前処理されたSiC粒子(12)を受け入れるように構成されており、
前記システムは、細長い混合チャンバ(16)を画定し、それを取り囲むチューブ状のSiC粒子混合装置(14)であって、
前記混合装置(14)は、使用時にそれが略垂直な位置にあるように前記るつぼ(6)に装着されるように構成されており、
前記混合装置は長手方向軸Aに沿って細長く、第1の入口(18)を介して前記前処理されたSiC粒子(12)を、及び少なくとも1つの第2の入口(20)を介して前記アルミニウム溶融物(10)を前記混合チャンバ(16)に受け入れる構造になっており、かつ
前記混合チャンバ(16)内に配置された回転可能な混合部材(22)を前記長手方向軸Aの周りに回転させることによって混合手順を適用する構造になっており、
前記前処理されたSiC粒子は、前記混合チャンバ内で前記アルミニウム溶融物と一緒に混合されるSiC粒子混合装置(14)をも含み、
前記混合部材(22)は、前記混合チャンバ(16)の内壁面(24)と協働して、回転中に前記混合部材と前記内壁面との間に機械的な剪断力が得られるように構成されており、
前記剪断力は前記SiC粒子及びアルミニウム溶融物に加えられ、前記アルミニウム溶融物中でのSiC粒子の高い濡れ性をもたらし、
前記混合部材が、前記アルミニウム溶融物及びSiC粒子の混合物に移動力を与える構造になっており、
前記混合装置(14)は、前記混合物を前記混合チャンバから前記るつぼに送出するための少なくとも1つの出口(26)を備え、
前記混合部材(22)がスクリュー状部材(28)を備え、前記スクリュー状部材(28)が、前記スクリュー状部材に沿って走る半径方向に延在する条部を含み、前記スクリュー状部材(28)が、前記混合チャンバ(16)の前記内壁面(24)の内径d2よりもわずかに小さい外径d1を有し、d2-d1が0.15mm未満であることを特徴とするシステム。
【請求項2】
SiC粒子混合装置(14)が、前記混合チャンバ(16)を画定するハウジング壁(30)を有する細長いハウジングを含み、前記ハウジングが、前記スクリュー状部材(28)を収容しかつ前記出口(26)が底面及び壁面に形成された部分である第1の本体部(32)と、前記ハウジングの残部である第2の本体部(34)とを含む請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ハウジング壁(30)が、略円形の断面を有する円筒状の形状を有しており、前記第1の入口(18)及び前記少なくとも1つの第2の入口(20)が、前記第2の本体部(34)に配置されており、使用中、前記混合装置(14)は、前記第1の入口が前記アルミニウム溶融物の上にあり、かつ前記少なくとも1つの第2の入口が前記アルミニウム溶融物の中に浸漬されるように配置され、前記アルミニウム溶融物(10)の中に浸漬される請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記回転可能な混合部材(22)が、前記混合チャンバに適合した細長い形状を有し、前記ハウジングの前記第1の本体部(32)に配置されるように構成された第1の部分(36)及び前記ハウジングの前記第2の本体部(34)に配置されるように構成された第2の部分(38)を含み、前記第1の部分(36)が前記スクリュー状部材(28)を備える請求項2又は請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記混合装置(14)の使用中、前記少なくとも1つの出口(26)の1つが下方に向けられ、前記SiC粒子及びアルミニウム溶融物の混合物が、前記スクリュー状部材の回転によって前記出口を介して強制的に排出される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記高い濡れ性が、接触角90°未満である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記前処理槽(2)が流動化槽であり、前記前処理手順が、前記SiC粒子を加熱及び流動化することを含む流動化手順である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記流動化槽が、前記槽の上部に少なくとも1つの開口部(40)を備え、そこで前記SiC粒子が前記槽内に導入され、前記流動化槽は、前記槽の底部を貫通する少なくとも1本の供給管(42)を備え、そこで前記槽内に流動化ガスが供給される請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記流動化ガスが、不活性ガスであり、前記流動化ガスが、20~35リットル/分の速度で前記槽内に導入される請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
車両部品を成形する際に使用するための、SiC粒子を含むアルミニウム溶融物を得るために適用されるチューブ状のSiC粒子混合装置(14)であって、
前記混合装置は、細長い混合チャンバ(16)を画定し、それを取り囲む構造になっており、
前記混合装置は、使用時に前記混合装置が垂直な位置にあるように、溶融炉装置(8)のるつぼ(6)に装着されるように構成されており、
前記混合装置は、長手方向軸Aに沿って細長く、第1の入口(18)を介してSiC粒子(12)を、及び少なくとも1つの第2の入口(20)を介して前記アルミニウム溶融物(10)を前記混合チャンバに受け入れる構造になっており、
前記混合チャンバ内に配置された回転可能な混合部材(22)を前記長手方向軸Aの周りに回転させることによって混合手順を適用する構造になっており、
前記SiC粒子が前記混合チャンバ内で前記アルミニウム溶融物と一緒に混合され、
前記混合部材(22)は、前記混合チャンバの内壁面(24)と協働して、回転中に前記混合部材と前記内壁面との間に機械的な剪断力が得られるように構成されており、
前記剪断力が前記SiC粒子及びアルミニウム溶融物に加えられ、前記アルミニウム溶融物中でのSiC粒子の高い濡れ性が得られ、
前記混合部材(22)は、前記アルミニウム溶融物及びSiC粒子の混合物に移動力を与える構造になっており、
前記混合装置は、前記混合物を前記混合チャンバ(16)から前記るつぼ(6)に送出するための少なくとも1つの出口(26)を備え、
前記混合部材(22)がスクリュー状部材(28)を備え、前記スクリュー状部材(28)が、前記スクリュー状部材に沿って走る半径方向に延在する条部を含み、前記スクリュー状部材(28)が、前記混合チャンバ(16)の前記内壁面(24)の内径d2よりもわずかに小さい外径d1を有し、d2-d1が0.15mm未満であることを特徴とする混合装置(14)。
【請求項11】
前記混合チャンバ(16)を画定するハウジング壁(30)を有する細長いハウジングを含み、前記ハウジングが、前記スクリュー状部材(28)を収容しかつ前記出口(26)が底面及び壁面に形成された部分である第1の本体部(32)と、前記ハウジングの残部である第2の本体部(34)を含む請求項10に記載の混合装置。
【請求項12】
前記ハウジング壁(30)が、略円形の断面を有する円筒状の形状を有しており、前記第1の入口(18)及び前記少なくとも1つの第2の入口(20)が、前記第2の本体部(34)に配置されており、使用中、前記混合装置が、前記第1の入口(18)が前記アルミニウム溶融物(10)の上にあり、かつ前記少なくとも1つの第2の入口(20)が前記アルミニウム溶融物(10)の中に浸漬されるように配置され、前記アルミニウム溶融物(10)の中に浸漬される請求項11に記載の混合装置。
【請求項13】
前記回転可能な混合部材(22)が、前記混合チャンバに適合した細長い形状を有し、前記ハウジングの前記第1の本体部(32)に配置されるように構成された第1の部分(36)及び前記ハウジングの前記第2の本体部(34)に配置されるように構成された第2の部分(38)を含み、前記第1の部分(36)が前記スクリュー状部材(28)を備える請求項11又は請求項12に記載の混合装置。
【請求項14】
前記混合装置の使用中、前記少なくとも1つの出口(26)の1つが下方に向けられ、前記SiC粒子及びアルミニウム溶融物の混合物が、前記スクリュー状部材(28)の回転によって前記出口を介して強制的に排出される請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の混合装置。
【請求項15】
前記高い濡れ性が接触角90°未満である請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の混合装置。
【請求項16】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のシステムによって、又は請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の混合装置によりSiC粒子を含むアルミニウム溶融物からブレーキディスクを成形するブレーキディスクの製造方法であって、前記ブレーキディスクは、15~25μmの範囲内のデンドライト間の距離(DAS)を有するブレーキディスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化ケイ素粒子(SiC)のマトリクスを形成する、アルミニウム合金の車両部品、例えばブレーキディスク、用のアルミニウム溶融物を調製するためのシステム及び混合配置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のブレーキは周知である。典型的なブレーキは摩擦に頼っているため、ブレーキの設計では熱を逃がすこと(熱放散)が最も重要である。摩擦で発生した熱を吸収して放散する必要があるため、ブレーキロータは、通常、ヒートシンクとして機能する。ロータが加熱されると、ロータは熱を吸収するが、ロータの温度がロータが冷却できるよりも早く上昇すると、ロータ、タイヤ、及び他のホイール部品に深刻なダメージが生じる可能性がある。ほとんどの熱対策では、システムからより効率的に熱を排出するために、より大きなヒートシンクが使用される。そのためには、通常、ヒートシンクの物理的寸法を大きくする必要があるが、ロータのサイズを大きくするにはロータの慣性モーメントも大きくする必要があるため、ロータのサイズを大きくすることは通常は現実的ではない。
【0003】
そのため、例えば質量を減らしたブレーキディスクであるが、摩擦による制動からそのブレーキディスクに伝達される熱エネルギーをうまく処理できる能力を持つブレーキディスクを設計することが望ましい。自動車メーカーでは、従来のねずみ鋳鉄製のブレーキディスクに代えて、アルミニウム製の金属マトリクス複合材(AMC)のブレーキディスクを採用するために多くの取り組みがなされてきた。このような取り組みは、鋳鉄に比べて高熱伝導率及び低密度等のAMCの有利な特性を利用することを目的として行われてきた。AMCブレーキ部品の熱伝導率と膨張率は、微粒子状の強化材のレベルと分布を調整することで目的に合わせることができる。このように、炭化ケイ素強化アルミニウム複合材は、シリンダーヘッド、ライナー、ピストン、ブレーキロータ、ブレーキディスク、及びキャリパーの代替材料として使用される機会が増えている。
【0004】
このブレーキ用強化微粒子アルミニウム金属マトリクス複合材は、細かい微粒子の分散で強化され、それによりその耐摩耗性を向上させるアルミニウム合金を提供する。
【0005】
この複合材は、ブレーキロータ、ブレーキカプラー等のブレーキ部品を形成するために使用される。この複合材は、セラミック微粒子で強化されたアルミニウム金属マトリクスから形成される。セラミック微粒子は、約0.1~1.0マイクロメートルの粒子径を持ち、強化微粒子アルミニウム金属マトリクス複合材の約10体積%以上を形成している。
【0006】
アルミニウム金属マトリクスは、任意の所望のアルミニウム合金、例えば、AlSi9Mg06、Al-Si、Al-Cu、2xxx Al合金、6xxx Al合金、6160 Al合金、6061 Al合金、又はそれらの組み合わせから形成されてもよい。アルミニウム金属マトリクスを補強するために、任意の所望のセラミック材料、例えば、Al2O3、SiC、C、SiO2、B、BN、B4C、又はAlNが使用されてもよい。好ましくは、セラミック微粒子は、粒の輪郭が実質的に球形であり、約0.7マイクロメートルのオーダーの粒径を有し、任意の好適な粉末冶金技術等によって加工されてもよい。
【0007】
炭化ケイ素(SiC)はカーボランダムとしても知られ、ケイ素及び炭素を含む半導体である。SiCは、自然界では、非常に希少な鉱物であるモワサナイトとして存在する。合成SiC粉末は、1893年から研磨剤として使用するために大量生産されている。炭化ケイ素の粒は、焼結によって互いに結合されて、自動車のブレーキや自動車のクラッチ、及び防弾チョッキのセラミックプレート等、高い耐久性が要求される用途に広く使用されている非常に硬いセラミックスを形成することができる。
【0008】
ケイ素を浸透させた炭素-炭素複合材は、極端な温度に耐えることができるため、高性能の「セラミック」ブレーキディスク又は例えばブレーキロータに使用されている。ケイ素は炭素-炭素複合材料中のグラファイトと反応し、炭素繊維強化炭化ケイ素(C/SiC)となる。米国特許第6,821,447号明細書には、このようなブレーキディスクの一例が示されている。
【0009】
SiCの体積は約20%であるが、車に対する材料の性能と、材料の鋳造/成形性や加工性のバランスをとるために、変えることができる。
【0010】
特許文献では、ブレーキ部品のアルミニウムにSiC粒子を含有させる例が多く見られる。以下、いくつかの関連特許文書について簡単に論じる。
【0011】
中国特許出願公開第107100949号明細書は、アルミニウムマトリクスとSiC粒子との複合材ブレーキディスク、及びその製造方法を開示する。
【0012】
米国特許出願公開第2012-079916号明細書は、セラミック粒子を伴うアルミニウムマトリクスからなるブレーキ部品を開示する。粒子の例として、SiCが示されている。製造に関しては、従来の方法が参照されている。
【0013】
特開2000-160319号公報は、Mg、Al、Al-Mg合金の粉末にSiC粒子を供給することを示す。この文献には、窒素を用いた流動化について記載されている。
【0014】
特開平03-71967号公報は、アルミニウム溶融物にSiC粒子を導入する方法を開示する。尿素が、SiC粒子を挿入するための手段として使用される。撹拌装置のプロペラで溶融金属を撹拌しながら、小片状の分散媒体が溶融金属中に順次導入された。この場合、分散媒体のユリア樹脂は溶融金属で加熱されて蒸発し、SiC粒子のみが溶融金属中に取り込まれた。
【0015】
中国特許出願公開第105525153号明細書は、列車用のブレーキディスクを開示する。このブレーキディスクは、アルミニウムマトリクス中にSiC粒子を含む。前処理され、加熱されるSiC粒子の調製についても記載されている。その後、SiC粒子を含むアルミニウム溶融物が撹拌される。
【0016】
中国特許出願公開第103484707号明細書は、例えば、SiC粒子を含むアルミニウム合金のブレーキディスクの製造を示す。この文献には、SiC粒子強化アルミニウム系複合材料の調製方法が開示されている。
【0017】
中国特許出願公開第103103374号明細書は、SiC粒子を含むアルミニウムマトリクスを含む材料の製造を開示する。この文献で提供されている方法は、マトリクス金属中に強化材を均一に分散させる必要があり、高温での強化材と金属との有害な反応を避ける必要があり、凝固過程で発生する鋳造の欠点を減らすという撹拌鋳造法の問題を解決することを目的とする。
【0018】
中国特許出願公開第102703771号明細書は、SiC粒子を含むアルミニウム合金のブレーキディスクの製造を示す。この開示は、ブレーキディスクの技術分野に関し、特に、ブレーキディスク用の炭化ケイ素/アルミニウム合金複合材料の調製方法に関する。
【0019】
中国特許出願公開第106521252号明細書は、SiC粒子を含むアルミニウム合金のブレーキディスクの製造を示す。列車用ブレーキディスクのための炭化ケイ素粒子強化アルミニウム系複合材とその調製方法が開示されている。SiC細粒子はMg-SiCの形で添加されているので、マトリクスへの炭化ケイ素粒子の均一な分散の難しさや、界面結合の悪さといった問題が効果的に解決されている。
【0020】
中国特許出願公開第105463265号明細書は、SiC粒子を含むアルミニウム合金の調製方法を開示しており、炭化ケイ素粒子強化アルミニウム系複合材料の調製方法を含み、アルミニウム系複合材料の分野に関するものである。
【0021】
アルミニウム溶融物中のSiC粒子の凝集は、その溶融物によって成形された車両部品、例えばブレーキディスク、の性能に悪影響を及ぼす可能性があることが分かっている。その理由は、SiC粒子がアルミニウム溶融物中に均一に分散されず、その結果、例えばブレーキディスクの制動効果と制動摩耗が完全には予測できなくなることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】米国特許第6,821,447号明細書
【文献】中国特許出願公開第107100949号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012079916号明細書
【文献】特開2000-160319号公報
【文献】特開平03-71967号公報
【文献】中国特許出願公開第105525153号明細書
【文献】中国特許出願公開第103484707号明細書
【文献】中国特許出願公開第103103374号明細書
【文献】中国特許出願公開第102703771号明細書
【文献】中国特許出願公開第106521252号明細書
【文献】中国特許出願公開第105463265号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、本発明の目的は、とりわけブレーキディスクの成形に適合した、SiC粒子を含むアルミニウム溶融物を得るための現在使用されている技術を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述の目的は、独立請求項に係る発明によって達成される。
【0025】
好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0026】
本発明の1つの態様によれば、車両部品、例えばブレーキディスクを成形する際に使用するための、SiC粒子を含むアルミニウム溶融物を得るシステムが提供される。このシステムは、SiC粒子を受け入れ、そのSiC粒子を前処理するための前処理手順を適用するように構成された前処理槽と、固体アルミニウム、例えばアルミニウムスラブを受け入れて溶融し、アルミニウム溶融物を保持し、前処理されたSiC粒子を受け入れるように構成された溶融炉装置のるつぼに、前処理槽から前処理された(前処理済みの)粒子を搬送するように構成されたSiC粒子搬送部材とを含む。当該システムは、細長い混合チャンバを画定し、それを取り囲むチューブ状のSiC粒子混合配置構成も含む。この混合配置構成は、使用時にそれが本質的に垂直な位置にあるようにるつぼに装着されるように構成されており、この混合配置構成は長手方向軸Aに沿って細長く、第1の入口を介して前処理されたSiC粒子を、及び少なくとも1つの第2の入口を介してアルミニウム溶融物を混合チャンバに受け入れる構造になっている。さらには、この混合配置構成は、混合チャンバ内に配置された回転可能な混合部材を長手方向軸Aの周りに回転させることによって混合手順を適用するように構成されており、上記前処理されたSiC粒子は、上記混合チャンバ内でアルミニウム溶融物と一緒に混合されるようになっている。上記混合部材は、上記混合チャンバの内壁面と協働して、回転中に混合部材と内壁面との間に機械的な剪断力が得られるように構成されており、この剪断力がSiC粒子及びアルミニウム溶融物に加えられ、アルミニウム溶融物中でのSiC粒子の高い濡れ性が得られる。この混合部材は、アルミニウム溶融物及びSiC粒子の混合物に移動力を与える構造になっており、混合配置構成は、上記混合物を上記混合チャンバからるつぼに送出するための少なくとも1つの出口を備える。
【0027】
一実施形態によれば、前処理槽は流動化槽であり、前処理手順は、SiC粒子を加熱及び流動化することを含む流動化手順である。
【0028】
別の態様によれば、本発明は、るつぼに装着されるように構成され、上述してきた特徴を備える混合配置構成に関する。
【0029】
開示されたシステム及び混合配置構成は、アルミニウム溶融物中のSiC粒子の改善された濡れ性を達成し、その結果、アルミニウムとSiC粒子の混合が改善され、SiC粒子の凝集が本質的に起こらなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明に係るシステムの模式図である。
【
図2】
図2は、当該システムに適用される前処理槽の様々な図を示す。
【
図3】
図3は、当該システムに適用される搬送部材の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の1つの実施形態に係る混合配置構成のハウジングの様々な図を示す。
【
図5】
図5は、回転可能な混合部材の様々な図を示す。
【
図6】
図6は、本発明の1つの実施形態に係る溶融炉装置の側断面図を示す。
【
図7】
図7は、本発明の1つの実施形態に係る混合配置構成の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、添付の図を参照しながら、当該システムを詳細に説明する。図全体を通して、同一又は類似の構成要素は、同じ参照符号を有する。さらに、構成要素や図は必ずしも縮尺通りではなく、本発明の原理を説明することに重点が置かれている。
【0032】
まず、
図1の模式図を参照すると、車両部品、例えばブレーキディスクを成形する際に使用するための、SiC粒子を含むアルミニウム溶融物を得るシステムが提供される。このシステムは、SiC粒子を受け入れ、そのSiC粒子を前処理するための前処理手順を適用するように構成された前処理槽2を含む。前処理されたSiC粒子を前処理槽2から溶融炉装置8のるつぼ6に搬送するように構成されたSiC粒子搬送部材4がさらに設けられている。前処理槽に導入されるSiC粒子は、10~30μm、好ましくは13~23μmの範囲で、異なるサイズフラクション、例えば3つの異なるサイズフラクションで存在してもよい。溶融炉装置8は、固体アルミニウム、例えばアルミニウムスラブを受け入れて溶融し、アルミニウム溶融物10を保持するとともに、前処理されたSiC粒子12を受け入れるように構成されている。好ましくは、アルミニウムの炭化物を避けるために、アルミニウム溶融物の最高温度は750℃である。
【0033】
当該システムは、細長い混合チャンバ16を画定し、それを取り囲むチューブ状のSiC粒子混合配置構成14も含み、混合配置構成14は、使用時にそれが本質的に垂直な(鉛直の)位置にあるようにるつぼ6に装着されるように構成されており、混合配置構成は長手方向軸Aに沿って細長くなっている。
【0034】
図3は、本発明で適用可能なSiC粒子搬送部材4の模式的側面図である。この搬送部材は、前処理されたSiC粒子を前処理槽2から溶融炉装置8のるつぼに搬送するように構成されている。搬送部材は、搬送される粒子を受け入れるために、前処理槽の底部から挿入されるように配置された管に設けられたスクリュー搬送手段5を備えることが好ましい。その後、スクリュー搬送手段5が回転し、それによって、前処理された粒子が溶融炉装置に搬送され、この設定では、上記管は、第1の入口18を介して混合配置構成14に前処理された粒子を供給するように装着される。搬送部材は、当然のことながら、その代わりに、粒子を搬送するための例えばコンベアベルトを含んでもよい。
【0035】
混合配置構成14は、
図4~
図7にさらに図示されており、第1の入口18を介して前処理されたSiC粒子12を、及び少なくとも1つの第2の入口20を介してアルミニウム溶融物10を混合チャンバ16内に受け入れ、混合チャンバ16内に配置された回転可能な混合部材22を長手方向軸Aの周りに回転させることによって混合手順を適用する構造になっている。これによって、前処理されたSiC粒子が混合チャンバ内でアルミニウム溶融物と一緒に混合される。
【0036】
混合部材22は、混合チャンバ16の内壁面24と協働して、回転中に混合部材と内壁面との間に機械的な剪断力が得られるように構成されており、この剪断力がSiC粒子及びアルミニウム溶融物に加えられ、アルミニウム溶融物中でのSiC粒子の高い濡れ性が得られる。
【0037】
混合配置構成14は、上記混合物を上記混合チャンバから上記るつぼに送出するための少なくとも1つの出口26を備える。混合部材は、アルミニウム溶融物及びSiC粒子の混合物に移動力を与える構造になっている。
図1では、アルミニウム溶融物とSiC粒子の混合物が、混合手順の間、るつぼ内を循環することが矢印で示されている。この循環又は撹拌は、混合部材の移動力によってもたらされる。混合手順は、SiC粒子がるつぼに挿入されたときから少なくとも20分間続く。
【0038】
1つの実施形態では、混合部材22はスクリュー状部材28を備え、このスクリュー状部材28は、そのスクリュー状部材に沿って走る半径方向に延在する条部(筋、スレッド)を含む。この実施形態は、
図5~
図7に示されている。スクリュー状部材28は、混合チャンバ16の内壁面24の内径d2よりもわずかに小さい外径d1を有し、そのd2-d1は0.15mm未満、好ましくは0.10mm未満である(
図7参照)。過剰な摩耗は低すぎる剪断力を引き起こし、最終的には濡れていない粒子が溶融物に導入される可能性があるため、スクリュー状部材と内壁面との間の摩耗/遊びを慎重に制御する必要がある。
【0039】
図4を参照すると、SiC粒子混合配置構成14へのハウジングの様々な図が示されている。左側には、長手方向軸Aに沿った断面図が示されている。右上の図は斜視図を示し、右下の図は軸Aに対して垂直方向の断面図を示す。
【0040】
混合配置構成14は、混合チャンバ16を画定するハウジング壁30を有する細長いハウジングを含む。ハウジングは、第1の本体部32と、第2の本体部34とを含む。より詳細には、ハウジング壁30は、本質的に円形の断面を有する円筒状の形状を有しており、第1の入口18及び少なくとも1つの第2の入口20は、第2の本体部34に配置されている。少なくとも1つの出口26は、第1の本体部32に配置されている。使用中、混合配置構成14は、第1の入口がアルミニウム溶融物の上にあり、少なくとも1つの第2の入口がそのアルミニウム溶融物の中に浸漬されるように、アルミニウム溶融物10の中に浸漬される。
【0041】
図5を参照すると、回転可能な混合部材22の様々な図が示されている。右には長手方向軸Aに沿った断面図が示されている。左には斜視図が示され、下には上から見た図が示されている。
【0042】
混合部材22は、混合配置構成のハウジングに挿通されるものであり、混合チャンバに適合した細長い形状を有する。この混合部材は、混合部材の第1の部分36がハウジングの第1の本体部32に配置され、混合部材の第2の部分38がハウジングの第2の本体部34に配置されるように、混合配置構成のハウジング内に配置されるように構成されている。第1の部分36は、スクリュー状部材28を備える。組み立てられた混合配置構成14は、るつぼに装着された状態で
図6に示されている。
【0043】
混合配置構成14の使用中、少なくとも1つの出口26の1つは下方に向けられ、SiC粒子及びアルミニウム溶融物の混合物は、スクリュー状部材の回転によって出口を介して強制的に排出される。
図4から分かるように、さらなる出口26は、第1の本体部32の壁を介して設けられてもよい。
【0044】
混合配置構成は、少なくとも800℃まで、好ましくは少なくとも1000℃までの作業温度に耐えることができる任意の好適な材料、例えば、様々なグラファイト材料から作られる。1つの有利な設定では、ハウジングはDiamante ISO Universalから作られ、混合部材はグラファイトEG92から作られる。
【0045】
1つの実施形態によれば、アルミニウム溶融物中のSiC粒子の高い濡れ性は、凝集を最小限にするために90°未満の接触角によって規定される。
【0046】
以下では、「濡れ性」という用語についてさらに議論する。
【0047】
濡れ性とは、液体が固体表面との接触を維持する能力であり、両者が一緒になったときの分子間相互作用に起因する。濡れ性の度合い(濡れやすさ)は、接着力と凝集力の力のバランスで決定される。濡れ性は、物質の三相(気体、液体、固体)を扱う。濡れ性は2つの物質の接合や付着に重要である。
【0048】
液体と固体の間の接着力は、液滴が表面に広がる原因となる。液体内の凝集力により、液滴は球状になり、表面との接触を避ける。
【0049】
接触角とは、液体と蒸気との界面が、固体と液体との界面と交わる角度と定義される。接触角は、接着力と凝集力とのバランスで決まる。液滴が平らな固体表面に広がる傾向が強まると、接触角は小さくなる。従って、接触角は濡れ性の逆の尺度となる。90°より小さい接触角(低接触角)は、表面の濡れが非常に良好で、流体が表面の広い範囲に広がることを示す。90°より大きい接触角(高接触角)は、一般的に表面の濡れ性が好ましくないことを意味し、流体は表面との接触を最小限に抑え、コンパクトな液滴を形成する。
【0050】
別の実施形態によれば、前処理槽2は流動化槽であり、前処理手順は、SiC粒子を加熱及び流動化することを含む流動化手順である。
図2には、流動化槽の様々な図が示されており、左には槽の長手方向軸に沿った断面図が示され、右には上から見た図が示され、上中図には上から見た斜視図が示され、下中図には下から見た斜視図が示されている。
【0051】
流動化手順は所定の時間実行され、この所定の時間は少なくとも45分、好ましくは少なくとも1時間であってもよい。
【0052】
流動化手順の間、SiC粒子は、SiC粒子の周りにSiO2の保護酸化物層を達成するために、少なくとも400℃まで、好ましくは約1200℃まで加熱される。有利な流動化手順では、流動化及び加熱は、1000℃超、最も好ましくは約1200℃までの温度で約1時間行われた。前処理槽を少なくとも400℃まで、好ましくは約1200℃まで加熱するように構成された加熱配置構成44が設けられている。加熱配置構成44は、例えば、槽に巻かれた加熱コイルであってもよい。加熱配置構成の外側には、温度絶縁層が配置されている。1つの有利な変形例では、流動化槽の外側の断面寸法は約1000mmであり、内側の空洞は700~800mmの範囲の直径を有する。
【0053】
流動化槽は、槽の上部に少なくとも1つの開口部40を備え、そこでSiC粒子が槽内に導入される。流動化槽は、槽の底部を貫通する少なくとも1本の供給管42を備え、そこで槽内に流動化ガスが供給される。流動化ガスは、不活性ガス、好ましくは窒素であり、20~35リットル/分、好ましくは25~30リットル/分の速度で槽内に導入される。
【0054】
上方に向けられた本質的に均等な流動化ガスストリームを達成するために、ガス流制御部材46が槽の底部に設けられている。この制御部材は本質的に円盤状であり、好ましくは槽の底部端面の中央に最下点を有する円錐形状を有する。この制御部材は、槽の断面全体にガス流を均一に広げるための多数の小さな開口部(図示せず)を備える。制御部材46は、1200℃超までの温度範囲全体で均一なガスストリームを供給してもよい任意の好適な材料から作られる。1つの好適な材料は、グラファイト品質ISEM-1である。
【0055】
流動化は、粒状物質が静的な固体様の状態から動的な流体様の状態に変換される液状化に類似したプロセスである。このプロセスは、流体(液体又は気体)が粒状物質の中を上向きに通過するときに起こる。
【0056】
固体粒子のベッド(床)の底部からガス流が導入されると、そのガス流は、粒子間の空隙を経由してベッド内を上方に移動する。低いガス速度では、各粒子にかかる空力抵抗も小さいため、ベッドは固定された状態を保つ。速度を上げていくと、空力抵抗力が重力に対抗し始め、粒子が互いに離れていくことでベッドの体積が拡大する。さらに速度を上げると、速度は、上向きの抗力が下向きの重力とちょうど等しくなる臨界値に達し、粒子が流体内に浮遊するようになる。この臨界値で、ベッドは流動化したと言われ、流体的な挙動を示すことになる。ガスの速度をさらに上げると、ベッドのかさ密度は減少し続け、その流動化は、粒子がもはやベッドを形成せずガス流によって上方に「運ばれる」まで、さらに激しくなる。
【0057】
流動化すると、固体粒子のベッドは、液体や気体のような流体として振る舞う。この流体的な挙動により、粒子は流体のように搬送され、パイプを通って流されることが可能になる。
【0058】
ここで、粒子の凝集とは、懸濁液中で集合体を形成することを指し、コロイド系の不安定化につながるメカニズムを表す。このプロセスの間に、液相中に分散した粒子が互いに付着し、自然に不規則な粒子のクラスター、フロック、又は粒団(アグリゲート)を形成する。アルミニウム溶融物中の凝集したSiC粒子は、ブレーキディスクのより予測不可能な挙動を引き起こす可能性があるため、避けるべきである。
【0059】
本発明は、車両部品、例えばブレーキディスクを成形する際に使用するための、SiC粒子を含むアルミニウム溶融物を得るために適用される、チューブ状のSiC粒子混合配置構成14にも関する。混合配置構成14は、当該システムに関連して上述されており、ここではその説明を参照する。しかしながら、以下では、特に
図1及び
図4~
図7を参照して、この混合配置構成を説明する。
【0060】
混合配置構成は、細長い混合チャンバ16を画定し、それを取り囲む構造になっており、使用時にその混合配置構成が垂直な位置にあるように、溶融炉装置8のるつぼ6に装着されるように構成されている。混合配置構成は、長手方向軸Aに沿って細長く、第1の入口18を介してSiC粒子12を、及び少なくとも1つの第2の入口20を介してアルミニウム溶融物10を混合チャンバに受け入れる構造になっている。さらには、この混合配置構成は、混合チャンバ内に配置された回転可能な混合部材22を長手方向軸Aの周りに回転させることによって混合手順を適用するように構成されており、SiC粒子が回転中に混合チャンバ内でアルミニウム溶融物と一緒に混合される。
【0061】
混合部材22は、混合チャンバの内壁面24と協働して、回転中に混合部材と内壁面との間に機械的な剪断力が得られるように構成されており、この剪断力がSiC粒子及びアルミニウム溶融物に加えられ、アルミニウム溶融物中でのSiC粒子の高い濡れ性が得られる。混合部材22は、アルミニウム溶融物及びSiC粒子の混合物に移動力を与える構造になっており、混合配置構成は、上記混合物を上記混合チャンバ16から上記るつぼ6に送出するための少なくとも1つの出口26を備える。
【0062】
1つの実施形態では、混合部材22はスクリュー状部材28を備え、このスクリュー状部材28は、そのスクリュー状部材に沿って走る半径方向に延在する条部を含む。スクリュー状部材は、混合チャンバの内壁面の内径d2よりもわずかに小さい外径d1を有し、そのd2-d1は0.15mm未満、好ましくは0.10mm未満である(
図7参照)。
【0063】
混合配置構成14は、混合チャンバ16を画定するハウジング壁30を有する細長いハウジングを含む。ハウジングは、第1の本体部32と、第2の本体部34とを含む。より詳細には、ハウジング壁30は、本質的に円形の断面を有する円筒状の形状を有しており、第1の入口18及び少なくとも1つの第2の入口20は、第2の本体部34に配置されている。少なくとも1つの出口26は、第1の本体部32に配置されている。使用中、混合配置構成14は、第1の入口がアルミニウム溶融物の上にあり、少なくとも1つの第2の入口がそのアルミニウム溶融物の中に浸漬されるように、アルミニウム溶融物10の中に浸漬される。
【0064】
図5を参照すると、回転可能な混合部材22の様々な図が示されている。右には長手方向軸Aに沿った断面図が示されている。左には斜視図が示され、下には上から見た図が示されている。混合部材22は、混合配置構成のハウジングに挿通されるものであり、混合チャンバに適合した細長い形状を有する。この混合部材は、混合部材の第1の部分36がハウジングの第1の本体部32に配置され、混合部材の第2の部分38がハウジングの第2の本体部34に配置されるように、混合配置構成のハウジング内に配置されるように構成されている。第1の部分36は、スクリュー状部材28を備える。組み立てられた混合配置構成14は、るつぼに装着された状態で
図6に示されている。
【0065】
混合配置構成14の使用中、少なくとも1つの出口26の1つは下方に向けられ、SiC粒子及びアルミニウム溶融物の混合物は、スクリュー状部材の回転によって出口を介して強制的に排出される。
【0066】
1つの実施形態によれば、アルミニウム溶融物中のSiC粒子の高い濡れ性は、凝集を最小限にするために90°未満の接触角によって規定される。濡れ性については、当該システムの説明に関連して上記でより詳細に議論されている。
【0067】
図では、本明細書に記載されていない構成要素が示されているが、その理由は、これらの構成要素が、多くの異なる方法で実現されうる従来の技術を示しているためである。一例として、
図6には、るつぼに挿入された部材が示されている。これらの部材は、例えばアルミニウム溶融物の撹拌又は移動を行うために使用される従来の構成要素である。さらには、
図6には、移動部材22に回転運動を与えるように適合された手段も示されている。
【0068】
本発明は、上述のようなシステム又は混合配置構成によって調製されたSiC粒子を含むアルミニウム溶融物から成形されたブレーキディスクにも関する。具体的には、このブレーキディスクは、その後、15~25μmの範囲内の所望のデンドライト間の距離(Dendrite Arm Space、DAS)を達成する。
【0069】
上述のシステムを改良するために、溶融炉装置は、SiC粒子の導入前にアルミニウム溶融物に導入される微細化剤(結晶微細化剤)を受け入れるように適合されており、この微細化剤は、アルミニウム溶融物中のSiC粒子の濡れ性をさらに改善する。
【0070】
溶融物の酸素への暴露は凝集のリスクを高めるため、溶融物の酸素への暴露を最小限に抑えることが重要である。粒子が濡れた後、溶融物は継続的に撹拌する必要があり、そうしなければ、粒子が溶融物の中に沈み(約1mm/分)、凝集し始める。粒子が導入されて濡れたら、上記混合配置構成を取り外し、従来の撹拌手段を使って撹拌が続けられる。微細化処理された溶融物は、破壊されてスラリー状の粘稠度を獲得し始めるので、24時間以上温めておくべきではない。
【0071】
SiC粒子を供給し、アルミニウム溶融物が完全に富化された後、確立された手順に従って鋳造が行われる。
【0072】
本発明は、上述の好ましい実施形態に限定されるものではない。様々な代替物、変形物、及び同等物が使用されてもよい。それゆえ、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。