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▶ ダグラス ファーマシューティカルズ エルティーディー.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】持続放出性の医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/13 20060101AFI20231108BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231108BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61K31/13
A61K9/20
A61K9/30
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/38
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/24
A61P43/00 121
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021553069
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 IB2020051909
(87)【国際公開番号】W WO2020194087
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】16/362,848
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521400235
【氏名又は名称】ダグラス ファーマシューティカルズ エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】グルー,ポール ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】メドリコット,ナタリー ジューン
(72)【発明者】
【氏名】サーマン,ピーター ウィリアム
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-531913(JP,A)
【文献】特表2018-501299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 25/00-25/36
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続放出性の固形経口医薬錠剤であって、該固形経口医薬錠剤は、
(A)コアであって、
i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される治療上有効量の活性薬剤、および
ii)硬化される少なくとも1つの高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)であって、レオロジー測定に基づき200万~700万のおおよその分子量を持ち、前記コアの少なくとも30重量%の量で存在する高分子量ポリエチレンオキシドを含むコアと、
(B)前記コア上にあるコーティングと
を含んでおり、
前記固形経口医薬錠剤には、粉砕への耐性があり、かつ少なくとも200Nの破壊強度があり、前記固形経口医薬錠剤は62℃~90℃で硬化されており、
前記固形経口医薬錠剤は、患者に投与されると、
i)ケタミン60mgの単回投与後の平均ケタミンCmaxが10ng/mLまたはケタミンCmaxが5ng/mLと15ng/mLとの間、
ii)ケタミン120mgの単回投与後の平均ケタミンCmaxが16ng/mLまたはケタミンCmaxが7ng/mLと32ng/mLとの間、
iii)ケタミン240mgの単回投与後の平均ケタミンCmaxが38ng/mLまたはケタミンCmaxが19ng/mLと47ng/mLとの間、
iv)活性薬剤60mgの単回投与後の平均ノルケタミンCmaxが74ng/mLまたはノルケタミンCmaxが59ng/mLと91ng/mLとの間、
v)活性薬剤120mgの単回投与後の平均ノルケタミンCmaxが161ng/mLまたはノルケタミンCmaxが90ng/mLと250ng/mLとの間、
vi)活性薬剤240mgの単回投与後の平均ノルケタミンCmaxが315ng/mLまたはノルケタミンCmaxが222ng/mLと394ng/mLとの間、
vii)ケタミン60mgの単回投与後の平均ケタミンAUC0-∞が79ng.h/mLまたはケタミンAUC0-∞が36ng.h/mLと135ng.h/mLとの間、
viii)ケタミン120mgの単回投与後の平均ケタミンAUC0-∞が197ng.h/mLまたはケタミンAUC0-∞が93ng.h/mLと460ng.h/mLとの間、
ix)ケタミン240mgの単回投与後の平均ケタミンAUC0-∞が389ng.h/mLまたはケタミンAUC0-∞が231ng.h/mLと521ng.h/mLとの間、
x)活性薬剤60mgの単回投与後の平均ノルケタミンAUC0-∞が872ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-∞が549ng.h/mLと1543ng.h/mLとの間、
xi)活性薬剤120mgの単回投与後の平均ノルケタミンAUC0-∞が2133ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-∞が1353ng.h/mLと3260ng.h/mLとの間、
xii)活性薬剤240mgの単回投与後の平均ノルケタミンAUC0-∞が4087ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-∞が3205ng.h/mLと5216ng.h/mLとの間、
xiii)12時間ごとにケタミン60mgの5回投与後の平均ケタミンCmaxが12ng/mLまたはケタミンCmaxが8ng/mLと23ng/mLとの間、
xiv)12時間ごとにケタミン120mgの5回投与後の平均ケタミンCmaxが21ng/mLまたはケタミンCmaxが7ng/mLと45ng/mLとの間、
xv)12時間ごとにケタミン240mgの5回投与後の平均ケタミンCmaxが42ng/mLまたはケタミンCmaxが33ng/mLと53ng/mLとの間、
xvi)12時間ごとに活性薬剤60mgの5回投与後の平均ノルケタミンCmaxが125ng/mLまたはノルケタミンCmaxが85ng/mLと185ng/mLとの間、
xvii)12時間ごとに活性薬剤120mgの5回投与後の平均ノルケタミンCmaxが230ng/mLまたはノルケタミンCmaxが168ng/mLと335ng/mLとの間、
xviii)12時間ごとに活性薬剤240mgの5回投与後の平均ノルケタミンCmaxが421ng/mLまたはノルケタミンCmaxが363ng/mLと474ng/mLとの間、
xix)12時間ごとにケタミン60mgの5回投与後の平均ケタミンAUC0-12が74ng.h/mLまたはケタミンAUC0-12が35ng.h/mLと156ng.h/mLとの間、
xx)12時間ごとにケタミン120mgの5回投与後の平均ケタミンAUC0-12が133ng.h/mLまたはケタミンAUC0-12が58ng.h/mLと287ng.h/mLとの間、
xxi)12時間ごとにケタミン240mgの5回投与後の平均ケタミンAUC0-12が221ng.h/mLまたはケタミンAUC0-12が145ng.h/mLと328ng.h/mLとの間、
xxii)12時間ごとに活性薬剤60mgの5回投与後の平均ノルケタミンAUC0-12が981ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-12が608ng.h/mLと1583ng.h/mLとの間、
xxiii)12時間ごとに活性薬剤120mgの5回投与後の平均ノルケタミンAUC0-12が1697ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-12が1124ng.h/mLと2557ng.h/mLとの間、
xxiv)12時間ごとに活性薬剤240mgの5回投与後の平均ノルケタミンAUC0-12が3025ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-12が2381ng.h/mLと3666ng.h/mLとの間、
xxv)60mg、120mg、または240mgの単回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが1.5時間と3.5時間との間、
xxvi)12時間ごとに60mgの5回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが1.5時間と3.5時間との間、
xxvii)12時間ごとに120mgの5回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが1.5時間と3.5時間との間、
xxviii)12時間ごとに240mgの5回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが1.5時間と3.5時間との間、
xxix)60mgの単回用量の投与後のノルケタミンCmax:ケタミンCmaxとの比が4:15、および、
xxx)60mgの単回用量の投与後のノルケタミンAUC:ケタミンAUCとの比が7:15、
からなる群から選択される薬物動態パラメータを提供する、持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項2】
前記高分子量PEOの分子量は、少なくとも4,000,000、少なくとも5,000,000、少なくとも6,000,000、および少なくとも7,000,000からなる群から選択される、請求項1に記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項3】
前記固形経口医薬錠剤は、少なくとも1重量%濃度で前記活性薬剤を含む、請求項1-2のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項4】
前記活性薬剤が、10重量%から20重量%の濃度で含まれる、請求項3に記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項5】
前記高分子量PEOは、コアの少なくとも50重量%の量で存在する、請求項1-4のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項6】
前記固形経口医薬錠剤は、30mg、60mg、120mg、または240mgの活性薬剤を含む、請求項1-5のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項7】
前記固形経口医薬錠剤は70℃~75℃の温度で硬化する、請求項1-6のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項8】
前記コーティングは、
i)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、
ii)二酸化チタンと、
iii)ポリエチレングリコールと
を含む、請求項1-7のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項9】
治療抵抗性うつ病、ならびに、DSM-V全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、外傷後ストレス障害、および/または強迫性障害を含むがこれらに限定されない治療抵抗性不安症からなる群から選択される疾病について患者の処置における使用のための、請求項1-8のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤であって、
前記処置が、
このような処置を必要とする患者を選択すること、および、
前記患者に前記固形経口医薬錠剤を経口投与することを含み、
前記固形経口医薬錠剤は、前記治療抵抗性うつ病または前記治療抵抗性不安症の症状を処置する、持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項10】
前記固形経口医薬錠剤は、患者に1日1回または1日2回投与される、請求項9に記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項11】
前記処置は前記固形経口医薬錠剤の単回用量または複数回用量の経口投与を含む、請求項9-10のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項12】
前記固形経口医薬錠剤の単回経口投与は、前記治療抵抗性うつ病または前記治療抵抗性不安症の作用を3~7日で緩和するのに十分なものである、請求項9-11のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項13】
前記固形経口医薬錠剤の患者に対する副作用は全くないか、または最小限である、請求項9-12に記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項14】
憂鬱な気分または不安な気分の評価に対する最大平均改善は、約6週間の維持療法後に顕著である、請求項9-13に記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項15】
前記処置は、第2または追加の療法を薬学的に有効な量で投与又は施すことをさらに含み、前記第2または追加の療法には抗うつ性特性があり、
前記追加の療法は、随意に、
シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドシエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラドゾン、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗うつ薬、
炭酸リチウム、オロチン酸リチウム、リチウム塩、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリジン、カルバマゼピン、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、トピラマート、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの気分安定薬、
セントジョーンズワート、カバカバ、エキナセア、ノコギリパルメット、ホーリーバジル、バレリアン、ミルクシスル、シベリアンジンセン、チョウセンニンジン、アシュワガンダ根、イラクサ、イチョウ、ゴツコラ、イチョウ/ゴツコラ、ゲンゲ、ヒドラスチス、ドンクアイ、ニンジン、エキナシア、コケモモ、緑茶、サンザシ、ショウガ、ウコン、ボスウェリア・セラータ、ブラックコホシュ、キャッツクロー、イヌハッカ、カモミール、タンポポ、チェストツリーベリー、ブラックエルダーベリー、ナツシロギク、ガーリック、セイヨウトチノキ、リコリス、レッドクローバーブロッサム、リーフロディオラルサ、コレウス・フォルスコリ、パッションフラワー、コゴメグサ、ヨヒンビ、ブルーベリープラント、ブラックペッパープラント、ツボクサ、ゲンゲ、バレリアン幼根、グレープシード、クマツヅラ、エナキセア根、スカルキャップ、セレニティエリキシル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの生薬抗うつ薬、
ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗精神病薬、
カウンセリング、心理療法、認知療法、電気痙攣療法、水治療法、高圧酸素療法、電気療法、電気刺激法、経皮的電気刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、および経頭蓋磁気刺激法からなる群から選択されるその他の治療的介入、ならびに
これらの組み合わせ
から選択される、請求項9-14に記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項16】
持続放出性の固形経口医薬錠剤であって、該固形経口医薬錠剤は、
コアであって、
i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される治療上有効量の活性薬剤、および
ii)硬化される少なくとも1つの高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)であって、レオロジー測定に基づき200万~700万のおおよその分子量を持ち、前記コアの少なくとも30重量%の量で存在する高分子量ポリエチレンオキシドを含むコアを含んでおり、
前記固形経口医薬錠剤には、粉砕への耐性があり、かつ少なくとも200Nの破壊強度があり、前記固形経口医薬錠剤は62℃~90℃で硬化されており、
前記固形経口医薬錠剤は、患者に投与されると、
i)ケタミン60mgの単回投与後の平均ケタミンCmaxが10ng/mLまたはケタミンCmaxが5ng/mLと15ng/mLとの間、
ii)ケタミン120mgの単回投与後の平均ケタミンCmaxが16ng/mLまたはケタミンCmaxが7ng/mLと32ng/mLとの間、
iii)ケタミン240mgの単回投与後の平均ケタミンCmaxが38ng/mLまたはケタミンCmaxが19ng/mLと47ng/mLとの間、
iv)活性薬剤60mgの単回投与後の平均ノルケタミンCmaxが74ng/mLまたはノルケタミンCmaxが59ng/mLと91ng/mLとの間、
v)活性薬剤120mgの単回投与後の平均ノルケタミンCmaxが161ng/mLまたはノルケタミンCmaxが90ng/mLと250ng/mLとの間、
vi)活性薬剤240mgの単回投与後の平均ノルケタミンCmaxが315ng/mLまたはノルケタミンCmaxが222ng/mLと394ng/mLとの間、
vii)ケタミン60mgの単回投与後の平均ケタミンAUC0-∞が79ng.h/mLまたはケタミンAUC0-∞が36ng.h/mLと135ng.h/mLとの間、
viii)ケタミン120mgの単回投与後の平均ケタミンAUC0-∞が197ng.h/mLまたはケタミンAUC0-∞が93ng.h/mLと460ng.h/mLとの間、
ix)ケタミン240mgの単回投与後の平均ケタミンAUC0-∞が389ng.h/mLまたはケタミンAUC0-∞が231ng.h/mLと521ng.h/mLとの間、
x)活性薬剤60mgの単回投与後の平均ノルケタミンAUC0-∞が872ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-∞が549ng.h/mLと1543ng.h/mLとの間、
xi)活性薬剤120mgの単回投与後の平均ノルケタミンAUC0-∞が2133ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-∞が1353ng.h/mLと3260ng.h/mLとの間、
xii)活性薬剤240mgの単回投与後の平均ノルケタミンAUC0-∞が4087ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-∞が3205ng.h/mLと5216ng.h/mLとの間、
xiii)12時間ごとにケタミン60mgの5回投与後の平均ケタミンCmaxが12ng/mLまたはケタミンCmaxが8ng/mLと23ng/mLとの間、
xiv)12時間ごとにケタミン120mgの5回投与後の平均ケタミンCmaxが21ng/mLまたはケタミンCmaxが7ng/mLと45ng/mLとの間、
xv)12時間ごとにケタミン240mgの5回投与後の平均ケタミンCmaxが42ng/mLまたはケタミンCmaxが33ng/mLと53ng/mLとの間、
xvi)12時間ごとに活性薬剤60mgの5回投与後の平均ノルケタミンCmaxが125ng/mLまたはノルケタミンCmaxが85ng/mLと185ng/mLとの間、
xvii)12時間ごとに活性薬剤120mgの5回投与後の平均ノルケタミンCmaxが230ng/mLまたはノルケタミンCmaxが168ng/mLと335ng/mLとの間、
xviii)12時間ごとに活性薬剤240mgの5回投与後の平均ノルケタミンCmaxが421ng/mLまたはノルケタミンCmaxが363ng/mLと474ng/mLとの間、
xix)12時間ごとにケタミン60mgの5回投与後の平均ケタミンAUC0-12が74ng.h/mLまたはケタミンAUC0-12が35ng.h/mLと156ng.h/mLとの間、
xx)12時間ごとにケタミン120mgの5回投与後の平均ケタミンAUC0-12が133ng.h/mLまたはケタミンAUC0-12が58ng.h/mLと287ng.h/mLとの間、
xxi)12時間ごとにケタミン240mgの5回投与後の平均ケタミンAUC0-12が221ng.h/mLまたはケタミンAUC0-12が145ng.h/mLと328ng.h/mLとの間、
xxii)12時間ごとに活性薬剤60mgの5回投与後の平均ノルケタミンAUC0-12が981ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-12が608ng.h/mLと1583ng.h/mLとの間、
xxiii)12時間ごとに活性薬剤120mgの5回投与後の平均ノルケタミンAUC0-12が1697ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-12が1124ng.h/mLと2557ng.h/mLとの間、
xxiv)12時間ごとに活性薬剤240mgの5回投与後の平均ノルケタミンAUC0-12が3025ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-12が2381ng.h/mLと3666ng.h/mLとの間、
xxv)60mg、120mg、または240mgの単回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが1.5時間と3.5時間との間、
xxvi)12時間ごとに60mgの5回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが1.5時間と3.5時間との間、
xxvii)12時間ごとに120mgの5回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが1.5時間と3.5時間との間、
xxviii)12時間ごとに240mgの5回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが1.5時間と3.5時間との間、
xxix)60mgの単回用量の投与後のノルケタミンCmax:ケタミンCmaxとの比が4:15、および、
xxx)60mgの単回用量の投与後のノルケタミンAUC:ケタミンAUCとの比が7:15、
からなる群から選択される薬物動態パラメータを提供する、持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項17】
前記高分子量PEOの分子量は、少なくとも4,000,000、少なくとも5,000,000、少なくとも6,000,000、および少なくとも7,000,000からなる群から選択される、請求項16に記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項18】
前記固形経口医薬錠剤は、少なくとも1重量%の濃度で前記活性薬剤を含む、請求項16-17のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項19】
前記活性薬剤が、10重量%から20重量%の濃度で含まれる、請求項18に記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項20】
前記高分子量PEOは、コアの少なくとも50重量%の量で存在する、請求項16-19のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項21】
前記固形経口医薬錠剤は、30mg、60mg、120mg、または240mgの活性薬剤を含む、請求項16-20のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項22】
前記固形経口医薬錠剤は70℃~75℃の温度で硬化する、請求項16-21のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項23】
治療抵抗性うつ病、ならびに、DSM-V全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、外傷後ストレス障害、および/または強迫性障害を含むがこれらに限定されない治療抵抗性不安症からなる群から選択される疾病について患者の処置における使用のための、請求項16-22のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤であって、
前記処置が、
このような処置を必要とする患者を選択すること、および、
前記患者に前記固形経口医薬錠剤を経口投与することを含み、
前記固形経口医薬錠剤は、前記治療抵抗性うつ病または前記治療抵抗性不安症の症状を処置する、持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項24】
前記固形経口医薬錠剤は、患者に1日1回または1日2回投与される、請求項23に記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項25】
前記処置は前記固形経口医薬錠剤の単回用量または複数回用量の経口投与を含む、請求項23-24のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項26】
前記固形経口医薬錠剤の単回経口投与は、前記治療抵抗性うつ病または前記治療抵抗性不安症の作用を3~7日で緩和するのに十分なものである、請求項23-25のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項27】
前記固形経口医薬錠剤の患者に対する副作用は全くないか、または最小限である、請求項23-26のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項28】
憂鬱な気分または不安な気分の評価に対する最大平均改善は、約6週間の維持療法後に顕著である、請求項23-27のいずれか1つに記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【請求項29】
前記処置は、第2または追加の療法を薬学的に有効な量で投与又は施すことをさらに含み、前記第2または追加の療法には抗うつ性特性があり、
前記追加の療法は、随意に、
シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドシエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラドゾン、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗うつ薬、
炭酸リチウム、オロチン酸リチウム、リチウム塩、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリジン、カルバマゼピン、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、トピラマート、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの気分安定薬、
セントジョーンズワート、カバカバ、エキナセア、ノコギリパルメット、ホーリーバジル、バレリアン、ミルクシスル、シベリアンジンセン、チョウセンニンジン、アシュワガンダ根、イラクサ、イチョウ、ゴツコラ、イチョウ/ゴツコラ、ゲンゲ、ヒドラスチス、ドンクアイ、ニンジン、エキナシア、コケモモ、緑茶、サンザシ、ショウガ、ウコン、ボスウェリア・セラータ、ブラックコホシュ、キャッツクロー、イヌハッカ、カモミール、タンポポ、チェストツリーベリー、ブラックエルダーベリー、ナツシロギク、ガーリック、セイヨウトチノキ、リコリス、レッドクローバーブロッサム、リーフロディオラルサ、コレウス・フォルスコリ、パッションフラワー、コゴメグサ、ヨヒンビ、ブルーベリープラント、ブラックペッパープラント、ツボクサ、ゲンゲ、バレリアン幼根、グレープシード、クマツヅラ、エナキセア根、スカルキャップ、セレニティエリキシル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの生薬抗うつ薬、
ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗精神病薬、
カウンセリング、心理療法、認知療法、電気痙攣療法、水治療法、高圧酸素療法、電気療法、電気刺激法、経皮的電気刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、および経頭蓋磁気刺激法からなる群から選択されるその他の治療的介入、ならびに
これらの組み合わせ
から選択される、請求項23-28に記載の持続放出性の固形経口医薬錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年10月10日出願の米国特許出願第15/728,695号(現在は2019年10月15日発行の米国特許第10,441,544号)の一部継続出願である、2019年3月25日出願の米国特許出願第16/362,848号の国際出願であり、この出願の全体は参照により本明細書に引用される。
【背景技術】
【0002】
低用量のNMDAアンタゴニストすなわちケタミンは治療抵抗性うつ病(TRD、Berman 2000)患者に対して即効性効果があるという初期の報告は、その後の複数の試験(Xu 2016)で確認されている。ここ最近では、ケタミンは、外傷後ストレス障害(PTSD、Feder 2014)、強迫性障害(OCD、Rodriguez 2013)、全般性不安障害(GAD)、および社会不安障害(SAD、Glue 2017)を含む治療抵抗性不安症(TRA)障害の範囲において同様の即効性作用があると示されている。これらの試験はすべて、通常は静脈内投与されるケタミンを使用した。経口ケタミンにはTRD患者に対し抗うつ効果があることを示唆する、一連の予備的な症例データ(preliminary case series data)が存在する(Schoevers 2016)。ケタミン注射の主要な副作用として、主に投与後1時間で生じる解離症状、および、最初の30分で生じる血圧と心拍数の軽微な増加が挙げられる。経口ケタミン製剤は、このような副作用を最小限にするとともに、ケタミン注射ほど面倒ではなく、投与時間が短い場合がある。
【0003】
経口ケタミンおよび/またはノルケタミン製剤がTRDまたはTRAの患者に対して活性を呈する可能性を調べるべく、発明者らは、親水性高分子マトリックス手法を用いて持続放出性ケタミン錠剤を開発した。ポリエチレンオキシド(PEO)は、調節された薬物送達製剤に使用される多数の親水性ポリマーのうち1つであり、非毒性、高い水溶解度、および膨潤性を含む多数の好ましい特質を持つ(Maggi 2002)。さらに、高濃度のPEOをベースとする錠剤製剤は、粉砕に耐性を示す、硬度が非常に高い所与の錠剤へと焼き戻す(加熱する)ことができる。ケタミンは乱用薬物であるため、この錠剤製剤は特に魅力的な特質を持つ製品である。ケタミンの速やかな吸収に伴う解離症状の可能性を最小限にするために、徐放性プロファイルが望ましかった。この製剤は、10~12時間にわたり線形のインビトロ溶解を実証した。この製剤に関するケタミンとノルケタミンに対して評価した排出半減期は、錠剤に対し以前に報告されたものよりもはるかに長かった。
【0004】
本明細書で引用される文献はすべて、その全体を参照することで本明細書に引用される。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供し、該錠剤は、(A)コアであって、i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される治療上有効量の活性薬剤、およびii)硬化される少なくとも1つの高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)であって、レオロジー測定に基づき約200万~700万の分子量を持ち、前記コアの少なくとも約30%(重量)の量で存在する高分子量ポリエチレンオキシドを含むコアと、(B)前記コア上にあるコーティングとを含んでおり、前記錠剤には、粉砕への耐性があり、かつ少なくとも約200Nの破壊強度があり、前記錠剤は、患者への単回投与後少なくとも約4時間で前記活性薬剤の平均tmaxをもたらす。
【0006】
本開示は、前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも約4,000,000、少なくとも約5,000,000、少なくとも約6,000,000、および少なくとも約7,000,000からなる群から選択される錠剤を提供する。本開示は、前記活性薬剤が少なくとも約1%(重量)のコアを含む錠剤を提供する。本開示は、前記高分子量PEOが少なくとも約50%(重量)のコアを含む錠剤を提供する。本開示は、前記活性薬剤の用量が、約30mg、約60mg、約120mg、および約240mgからなる群から選択される錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が約70℃~約75℃の温度で硬化する錠剤を提供する。本開示は、前記コーティングがi)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ii)二酸化チタンと、iii)ポリエチレングリコールとを含む錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が約12と約42ng/mLとの間のケタミンCmaxをもたらす錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が約79と約385ng・h/mLとの間のケタミンAUC0-infをもたらす錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が約74と約315ng/mLとの間のノルケタミンCmaxをもたらす錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が約872と約4079ng・h/mLとの間のノルケタミンAUC0-infをもたらす錠剤を提供する。本開示は、前記活性薬剤の平均tmaxが、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、および少なくとも約12時間からなる群から選択される錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が患者への1日1回または1日2回の投与に適している錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤の患者への投与に際した副作用が全くない、または最小限である錠剤を提供する。
【0007】
本開示は、患者の治療抵抗性うつ病を処置する方法を提供し、該方法は、このような処置を必要とする患者を選択する工程と、前記患者に錠剤を経口投与する工程とを含み、前記錠剤は、(A)コアであって、i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される治療上有効量の活性薬剤、およびii)硬化される少なくとも1つの高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)であって、レオロジー測定に基づき約200万~700万の分子量を持ち、前記コアの少なくとも約30%(重量)の量で存在する高分子量ポリエチレンオキシドを含むコアと、(B)前記コア上にあるコーティングとを含んでおり、前記錠剤には、粉砕への耐性があり、かつ少なくとも約200Nの破壊強度があり、前記錠剤は患者への単回投与後少なくとも約4時間で前記活性薬剤の平均tmaxをもたらし、前記治療抵抗性うつ病の症状を処置する。
【0008】
本開示は、前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも約2,000,000、少なくとも約4,000,000、少なくとも約5,000,000、少なくとも約6,000,000、および少なくとも約7,000,000からなる群から選択される方法を提供する。本開示は、前記活性薬剤が少なくとも約1%(重量)のコアを含む方法を提供する。本開示は、前記高分子量PEOが少なくとも約50%(重量)のコアを含む方法を提供する。本開示は、前記活性薬剤の用量が約1mg、約2mg、約5mg、約10mg、約30mg、約60mg、約120mg、および約240mgからなる群から選択される方法を提供する。本開示は、前記錠剤が約70℃~約75℃の温度で硬化する方法を提供する。本開示は、前記コーティングがi)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ii)二酸化チタンと、iii)ポリエチレングリコールとを含む方法を提供する。本開示は、前記錠剤が約12と約42ng/mLとの間のケタミンCmaxをもたらす方法を提供する。本開示は、前記錠剤が約79と約385ng・h/mLとの間のケタミンAUC0-infをもたらす方法を提供する。本開示は、前記錠剤が約74と約315ng/mLとの間のノルケタミンCmaxをもたらす方法を提供する。本開示は、前記錠剤が約872と約4079ng・h/mLとの間のノルケタミンAUC0-infをもたらす方法を提供する。本開示は、前記活性薬剤の平均tmaxが、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、および少なくとも約12時間からなる群から選択される方法を提供する。本開示は、前記錠剤が患者への1日1回または1日2回の投与に適している方法を提供する。本開示は、前記治療抵抗性うつ病の症状が前記ケタミンの経口投与後2時間以内に緩和する方法を提供する。本開示は、前記方法が前記ケタミンの単回経口投与を含む方法を提供する。本開示は、前記方法が前記ケタミンの複数回経口投与を含む方法を提供する。本開示は、30~180mgでの前記ケタミンの単回経口投与が3~7日間で前記治療抵抗性うつ病の作用を緩和するのに十分である方法を提供する。本開示は、前記錠剤の患者に対する副作用が全くない、または最小限である方法を提供する。本開示は、憂鬱な気分の評価における最大平均改善が約6週間の維持療法後に着目される法を提供する。本開示は、第2または追加の薬剤を薬学的に有効な量で投与する工程をさらに含む方法を提供し、前記第2または追加の薬剤には抗うつ性特性がある。
【0009】
本開示は、前記方法が、シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドシエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラドゾン、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗うつ薬、炭酸リチウム、オロチン酸リチウム、リチウム塩、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリジン、カルバマゼピン、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、トピラマート、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの気分安定薬、セントジョーンズワート、カバカバ、エキナシア、ノコギリパルメット、ホーリーバジル、バレリアン、ミルクシスル、シベリアンジンセン、チョウセンニンジン、アシュワガンダ根、イラクサ、イチョウ、ゴツコラ、最高級のイチョウ/ゴツコラ(ginkgo/gotu kola supreme)、ゲンゲ、ヒドラスチス、ドンクアイ、ニンジン、最高級のセントジョーンズワート、エキナシア、コケモモ、緑茶、サンザシ、ショウガ、イチョウ、ウコン、ボスウェリア・セラータ、ブラックコホシュ、キャッツクロー、イヌハッカ、カモミール、タンポポ、チェストツリーベリー、ブラックエルダーベリー、ナツシロギク、ガーリック、セイヨウトチノキ、リコリス、レッドクローバーブロッサム、リーフロディオラルサ(leaf rhodiola rusa)、コレウス・フォルスコリ、パッションフラワー、コゴメグサ、ヨヒンビ、ブルーベリープラント、ブラックペッパープラント、ツボクサ、ゲンゲ、バレリアン幼根、グレープシード、クマツヅラ、エナキセア根(echinacea ang root)、スカルキャップ、セレニティエリキシル(serenity elixir)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの生薬抗うつ薬、ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗精神病薬、カウンセリング、心理療法、認知療法、電気痙攣療法、水治療法、高圧酸素療法、電気療法、電気刺激法、経皮的電気刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、および経頭蓋磁気刺激法からなる群から選択されるその他の治療的介入、ならびにこれらの組み合わせから選択される追加の治療をさらに含む方法を提供する。
【0010】
本開示は、DSM-V全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、外傷後ストレス障害、および/または強迫性障害を含むがこれらに限定されない治療抵抗性不安症に対し患者を処置する方法であって、該方法は、このような処置を必要とする患者を選択する工程と、前記患者に錠剤を経口投与する工程とを含み、前記錠剤は、(A)コアであって、i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される治療上有効量の活性薬剤、およびii)硬化される少なくとも1つの高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)であって、レオロジー測定に基づき約200万~700万の分子量を持ち、前記コアの少なくとも約30%(重量)の量で存在する高分子量ポリエチレンオキシドを含むコアと、(B)前記コア上にあるコーティングとを含んでおり、前記錠剤には、粉砕への耐性があり、かつ少なくとも約200Nの破壊強度があり、前記錠剤は患者への単回投与後少なくとも約4時間で前記活性薬剤の平均tmaxをもたらし、前記治療抵抗性不安症の症状を処置する。
【0011】
本開示は、前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも約2,000,000、少なくとも約4,000,000、少なくとも約5,000,000、少なくとも約6,000,000、および少なくとも約7,000,000からなる群から選択される方法を提供する。本開示は、前記活性薬剤が少なくとも約1%(重量)のコアを含む方法を提供する。本開示は、前記高分子量PEOが少なくとも約50%(重量)のコアを含む方法を提供する。本開示は、前記活性薬剤の用量が約1mg、約2mg、約5mg、約10mg、約30mg、約60mg、約120mg、および約240mgからなる群から選択される方法を提供する。本開示は、前記錠剤が約70℃~約75℃の温度で硬化する方法を提供する。本開示は、前記コーティングがi)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ii)二酸化チタンと、iii)ポリエチレングリコールとを含む方法を提供する。本開示は、前記錠剤が約12と約42ng/mLとの間のケタミンCmaxをもたらす方法を提供する。本開示は、前記錠剤が約79と約385ng・h/mLとの間のケタミンAUC0-infをもたらす方法を提供する。本開示は、前記錠剤が約74と約315ng/mLとの間のノルケタミンCmaxをもたらす方法を提供する。本開示は、前記錠剤が約872と約4079ng・h/mLとの間のノルケタミンAUC0-infをもたらす方法を提供する。本開示は、前記活性薬剤の平均tmaxが、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、および少なくとも約12時間からなる群から選択される方法を提供する。本開示は、前記錠剤が患者への1日1回または1日2回の投与に適している方法を提供する。本開示は、前記錠剤の患者への投与に際した副作用が全くない、または最小限である方法を提供する。本開示は、前記治療抵抗性不安症の症状が前記ケタミンの経口投与後2時間以内に緩和する方法を提供する。本開示は、前記方法が前記ケタミンの単回経口投与を含む方法を提供する。本開示は、前記方法が前記ケタミンの複数回経口投与を含む方法を提供する。本開示は、30~180mgでの前記ケタミンの単回経口投与が3~7日間で前記治療抵抗性不安症の作用を緩和するのに十分である方法を提供する。本開示は、不安な気分の評価における最大平均改善が約2週間の維持療法後に着目される方法を提供する。本開示は、第2または追加の薬剤を薬学的に有効な量で投与する工程をさらに含む方法を提供し、前記第2または追加の薬剤には抗不安症特性がある。本開示は、シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドシエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラドゾン、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗うつ薬、ブスピロン、エルトプラジン、またはタンドスピロン、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのセロトニン1a部分作動薬、ガバペンチン、プレガバリン、3-メチルガバペンチン(1α,3α,5α)(3-アミノ-メチル-ビシクロ[3.2.0]ヘプタ-3-イル)-酢酸(3S,5R)-3アミノメチル-5メチル-ヘプタン酸、(3S,5R)-3アミノ-5メチル-ヘプタン酸、(3S,5R)-3アミノ-5メチル-オクタン酸、(2S,4S)-4-(3-クロロフェノキシ)プロリン、(2S,4S)-4-(3-フルオロベンジル)-プロリン、[(1R,5R,6S)-6-(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタ-6-イル]酢酸、3-(1-アミノメチル-シクロヘキシルメチル)-4H-[1,2,4]オキザジアゾール-5-オン、C-[1-(1H-テトラゾール-5-イルメチル)-シクロヘプチル]-メチルアミン、(3S,4S)-(1-アミノメチル-3,4-ジメチル-シクロペンチル)-酢酸、(3S,5R)-3アミノメチル-5メチル-オクタン酸、(3S,5R)-3アミノ-5メチル-ノナン酸、(3S,5R)-3アミノ-5メチル-オクタン酸、(3R,4R,5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-ヘプタン酸、(3R,4R,5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-オクタン酸、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのα-2-δリガンド、クロニジン、プラゾシン、プロプラノロール、グアンファシン(fuanfacine)、メチルドパ、グアナベンズ、ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシン、シロドシン、アルフゾシン、タムスロシン、デュタステリド/タムスロシン、グアナドレル、メセミラミン(mecemylamine)、グアネチジン、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗アドレナリン作動薬、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、テマゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、オキサゼパム、トリアゾラム、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのベンゾジアゼピン薬剤、ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗精神病薬、カウンセリング、心理療法、認知療法、電気痙攣療法、水治療法、高圧酸素療法、電気療法、電気刺激法、経皮的電気刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、および経頭蓋磁気刺激法からなる群から選択されるその他の治療的介入、ならびにこれらの組み合わせから選択される追加の治療をさらに含む方法を提供する。
【0012】
本開示は、持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供し、該錠剤は、(A)コアであって、i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される治療上有効量の活性薬剤、およびii)硬化される少なくとも1つの高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)であって、レオロジー測定に基づき約200万~700万の分子量を持ち、前記コアの少なくとも約30%(重量)の量で存在する高分子量ポリエチレンオキシドを含むコアと、(B)前記コア上にあるコーティングとを含んでおり、前記錠剤には、粉砕への耐性があり、かつ少なくとも約200Nの破壊強度があり、前記錠剤は、患者に投与されると、ケタミン60mgの単回投与後の平均ケタミンCmaxが約10ng/mLまたはケタミンCmaxが約5と約15ng/mLとの間、ケタミン120mgの単回投与後の平均ケタミンCmaxが約16ng/mLまたはケタミンCmaxが約7と約32ng/mLとの間、ケタミン240mgの単回投与後の平均ケタミンCmaxが約38ng/mLまたはケタミンCmaxが約19と約47ng/mLとの間、活性薬剤60mgの単回投与後の平均ノルケタミンCmaxが約74ng/mLまたはノルケタミンCmaxが約59と約91ng/mLとの間、活性薬剤120mgの単回投与後の平均ノルケタミンCmaxが約161ng/mLまたはノルケタミンCmaxが約90と約250ng/mLとの間、活性薬剤240mgの単回投与後の平均ノルケタミンCmaxが約315ng/mLまたはノルケタミンCmaxが約222と約394ng/mLとの間、ケタミン60mgの単回投与後の平均ケタミンAUC0-∞が約79ng.h/mLまたはケタミンAUC0-∞が約36と約135ng.h/mLとの間、ケタミン120mgの単回投与後の平均ケタミンAUC0-∞が約197ng.h/mLまたはケタミンAUC0-∞が約93と約460ng.h/mLとの間、ケタミン240mgの単回投与後の平均ケタミンAUC0-∞が約389ng.h/mLまたはケタミンAUC0-∞が約231と約521ng.h/mLとの間、活性薬剤60mgの単回投与後の平均ノルケタミンAUC0-∞が約872ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-∞が約549と約1543ng.h/mLとの間、活性薬剤120mgの単回投与後の平均ノルケタミンAUC0-∞が約2133ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-∞が約1353と約3260ng.h/mLとの間、および活性薬剤240mgの単回投与後の平均ノルケタミンAUC0-∞が約4087ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-∞が約3205と約5216ng.h/mLとの間からなる群から選択される薬物動態パラメータを提供する。本開示は、前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも約4,000,000、少なくとも約5,000,000、少なくとも約6,000,000、および少なくとも約7,000,000からなる群から選択される、持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記活性薬剤が少なくとも約1%(重量)のコアを含む持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記高分子量PEOが少なくとも約50%(重量)のコアを含む持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記活性薬剤の用量が、約30mg、約60mg、約120mg、および約240mgからなる群から選択される持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が約70℃~約75℃の温度で硬化する持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記コーティングが、i)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ii)二酸化チタンと、iii)ポリエチレングリコールとを含む持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が患者への1日1回または1日2回の投与に適している持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤の患者への投与に際した副作用が全くない、または最小限である持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、治療抵抗性うつ病、ならびに、DSM-V全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、外傷後ストレス障害、および/または強迫性障害を含むがこれらに限定されない治療抵抗性不安症からなる群から選択される疾病に対し患者を処置する方法を提供し、該方法は、このような処置を必要とする患者を選択する工程と、前記患者に本明細書に開示される錠剤を経口投与する工程とを含み、前記錠剤は、前記治療抵抗性うつ病または治療抵抗性不安症の症状を処置する。本開示は、前記コーティングがi)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ii)二酸化チタンと、iii)ポリエチレングリコールとを含む方法を提供する。本開示は、前記錠剤が患者への1日1回または1日2回の投与に適している方法を提供する。本開示は、前記治療抵抗性うつ病または前記治療抵抗性不安症の症状が、前記錠剤の経口投与2時間以内に緩和する方法を提供する。本開示は、前記方法が前記錠剤の単回経口投与を含む方法を提供する。本開示は、前記方法が前記錠剤の複数回経口投与を含む方法を提供する。本開示は、前記錠剤の単回経口投与が、前記治療抵抗性うつ病または前記治療抵抗性不安症の作用を3~7日で緩和するのに十分なものである方法を提供する。本開示は、前記錠剤の患者に対する副作用が全くない、または最小限である方法を提供する。本開示は、憂鬱な気分または不安な気分の評価における最大平均改善が約6週間の維持療法後に着目される方法を提供する。本開示は、第2または追加の薬剤を薬学的に有効な量で投与する工程をさらに含む方法を提供し、前記第2または追加の薬剤には抗うつ性特性がある。本開示は、前記方法が、シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドシエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラドゾン、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗うつ薬、炭酸リチウム、オロチン酸リチウム、リチウム塩、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリジン、カルバマゼピン、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、トピラマート、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの気分安定薬、セントジョーンズワート、カバカバ、エキナシア、ノコギリパルメット、ホーリーバジル、バレリアン、ミルクシスル、シベリアンジンセン、チョウセンニンジン、アシュワガンダ根、イラクサ、イチョウ、ゴツコラ、最高級のイチョウ/ゴツコラ、ゲンゲ、ヒドラスチス、ドンクアイ、ニンジン、最高級のセントジョーンズワート、エキナシア、コケモモ、緑茶、サンザシ、ショウガ、イチョウ、ウコン、ボスウェリア・セラータ、ブラックコホシュ、キャッツクロー、イヌハッカ、カモミール、タンポポ、チェストツリーベリー、ブラックエルダーベリー、ナツシロギク、ガーリック、セイヨウトチノキ、リコリス、レッドクローバーブロッサム、リーフロディオラルサ、コレウス・フォルスコリ、パッションフラワー、コゴメグサ、ヨヒンビ、ブルーベリープラント、ブラックペッパープラント、ツボクサ、ゲンゲ、バレリアン幼根、グレープシード、クマツヅラ、エナキセア根、スカルキャップ、セレニティエリキシル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの生薬抗うつ薬、ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗精神病薬、カウンセリング、心理療法、認知療法、電気痙攣療法、水治療法、高圧酸素療法、電気療法、電気刺激法、経皮的電気刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、および経頭蓋磁気刺激法からなる群から選択されるその他の治療的介入、ならびにこれらの組み合わせから選択される追加の治療をさらに含む方法を提供する。
【0013】
本開示は、持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供し、該錠剤は、(A)コアであって、i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される治療上有効量の活性薬剤、およびii)硬化される少なくとも1つの高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)であって、レオロジー測定に基づき約200万~700万の分子量を持ち、前記コアの少なくとも約30%(重量)の量で存在する高分子量ポリエチレンオキシドを含むコアと、(B)前記コア上にあるコーティングとを含んでおり、前記錠剤には、粉砕への耐性があり、かつ少なくとも約200Nの破壊強度があり、前記錠剤は、患者に投与されると、12時間ごとにケタミン60mgの5回投与後の平均ケタミンCmaxが約12ng/mLまたはケタミンCmaxが約8と約23ng/mLとの間、12時間ごとにケタミン120mgの5回投与後の平均ケタミンCmaxが約21ng/mLまたはケタミンCmaxが約7と約45ng/mLとの間、12時間ごとにケタミン240mgの5回投与後の平均ケタミンCmaxが約42ng/mLまたはケタミンCmaxが約33と約53ng/mLとの間、12時間ごとに活性薬剤60mgの5回投与後の平均ノルケタミンCmaxが約125ng/mLまたはノルケタミンCmaxが約85と約185ng/mLとの間、12時間ごとに活性薬剤120mgの5回投与後の平均ノルケタミンCmaxが約230ng/mLまたはノルケタミンCmaxが約168と約335ng/mLとの間、12時間ごとに活性薬剤240mgの5回投与後の平均ノルケタミンCmaxが約421ng/mLまたはノルケタミンCmaxが約363と約474ng/mLとの間、12時間ごとにケタミン60mgの5回投与後の平均ケタミンAUC0-12が約74ng.h/mLまたはケタミンAUC0-12が約35と約156ng.h/mLとの間、12時間ごとにケタミン120mgの5回投与後の平均ケタミンAUC0-12が約133ng.h/mLまたはケタミンAUC0-12が約58と約287ng.h/mLとの間、12時間ごとにケタミン240mgの5回投与後の平均ケタミンAUC0-12が約221ng.h/mLまたはケタミンAUC0-12が約145と約328ng.h/mLとの間、12時間ごとに活性薬剤60mgの5回投与後の平均ノルケタミンAUC0-12が約981ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-12が約608と約1583ng.h/mLとの間、12時間ごとに活性薬剤120mgの5回投与後の平均ノルケタミンAUC0-12が約1697ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-12が約1124と約2557ng.h/mLとの間、および12時間ごとに活性薬剤240mgの5回投与後の平均ノルケタミンAUC0-12が約3025ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-12が約2381と約3666ng.h/mLとの間からなる群から選択される薬物動態パラメータを提供する。本開示は、前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも約4,000,000、少なくとも約5,000,000、少なくとも約6,000,000、および少なくとも約7,000,000からなる群から選択される、持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記活性薬剤が少なくとも約1%(重量)のコアを含む持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記高分子量PEOが少なくとも約50%(重量)のコアを含む持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記活性薬剤の用量が、約30mg、約60mg、約120mg、および約240mgからなる群から選択される持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が約70℃~約75℃の温度で硬化する持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記コーティングが、i)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ii)二酸化チタンと、iii)ポリエチレングリコールとを含む持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が患者への1日1回または1日2回の投与に適している持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤の患者への投与に際した副作用が全くない、または最小限である持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、治療抵抗性うつ病、ならびに、DSM-V全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、外傷後ストレス障害、および/または強迫性障害を含むがこれらに限定されない治療抵抗性不安症からなる群から選択される疾病に対し患者を処置する方法を提供し、該方法は、このような処置を必要とする患者を選択する工程と、前記患者に本明細書に開示される錠剤を経口投与する工程とを含み、前記錠剤は、前記治療抵抗性うつ病または治療抵抗性不安症の症状を処置する。本開示は、前記コーティングがi)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ii)二酸化チタンと、iii)ポリエチレングリコールとを含む方法を提供する。本開示は、前記錠剤が患者への1日1回または1日2回の投与に適している方法を提供する。本開示は、前記治療抵抗性うつ病または前記治療抵抗性不安症の症状が、前記錠剤の経口投与2時間以内に緩和する方法を提供する。本開示は、前記方法が前記錠剤の単回経口投与を含む方法を提供する。本開示は、前記方法が前記錠剤の複数回経口投与を含む方法を提供する。
【0014】
本開示は、前記錠剤の単回経口投与が、前記治療抵抗性うつ病または前記治療抵抗性不安症の作用を約3~7日で緩和するのに十分なものである方法を提供する。本開示は、前記錠剤の患者に対する副作用が全くない、または最小限である方法を提供する。本開示は、憂鬱な気分または不安な気分の評価における最大平均改善が約6週間の維持療法後に着目される方法を提供する。本開示は、第2または追加の薬剤を薬学的に有効な量で投与する工程をさらに含む方法を提供し、前記第2または追加の薬剤には抗うつ性特性がある。本開示は、前記方法が、シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドシエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラドゾン、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗うつ薬、炭酸リチウム、オロチン酸リチウム、リチウム塩、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリジン、カルバマゼピン、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、トピラマート、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの気分安定薬、セントジョーンズワート、カバカバ、エキナシア、ノコギリパルメット、ホーリーバジル、バレリアン、ミルクシスル、シベリアンジンセン、チョウセンニンジン、アシュワガンダ根、イラクサ、イチョウ、ゴツコラ、最高級のイチョウ/ゴツコラ、ゲンゲ、ヒドラスチス、ドンクアイ、ニンジン、最高級のセントジョーンズワート、エキナシア、コケモモ、緑茶、サンザシ、ショウガ、イチョウ、ウコン、ボスウェリア・セラータ、ブラックコホシュ、キャッツクロー、イヌハッカ、カモミール、タンポポ、チェストツリーベリー、ブラックエルダーベリー、ナツシロギク、ガーリック、セイヨウトチノキ、リコリス、レッドクローバーブロッサム、リーフロディオラルサ、コレウス・フォルスコリ、パッションフラワー、コゴメグサ、ヨヒンビ、ブルーベリープラント、ブラックペッパープラント、ツボクサ、ゲンゲ、バレリアン幼根、グレープシード、クマツヅラ、エナキセア根、スカルキャップ、セレニティエリキシル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの生薬抗うつ薬、ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗精神病薬、カウンセリング、心理療法、認知療法、電気痙攣療法、水治療法、高圧酸素療法、電気療法、電気刺激法、経皮的電気刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、および経頭蓋磁気刺激法からなる群から選択されるその他の治療的介入、ならびにこれらの組み合わせから選択される追加の治療をさらに含む方法を提供する。
【0015】
本開示は、持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供し、該錠剤は、(A)コアであって、i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される治療上有効量の活性薬剤、およびii)硬化される少なくとも1つの高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)であって、レオロジー測定に基づき約200万~700万の分子量を持ち、前記コアの少なくとも約30%(重量)の量で存在する高分子量ポリエチレンオキシドを含むコアと、(B)前記コア上にあるコーティングとを含んでおり、前記錠剤には、粉砕への耐性があり、かつ少なくとも約200Nの破壊強度があり、前記錠剤は、患者に投与されると、60mg、120mg、または240mgの単回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが約1.5時間と約3.5時間との間、12時間ごとに60mgの5回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが約1.5時間と約3.5時間との間、12時間ごとに120mgの5回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが約1.5時間と約3.5時間との間、および12時間ごとに240mgの5回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが約1.5時間と約3.5時間との間からなる群から選択される薬物動態パラメータを提供する。本開示は、前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも約4,000,000、少なくとも約5,000,000、少なくとも約6,000,000、および少なくとも約7,000,000からなる群から選択される、持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記活性薬剤が少なくとも約1%(重量)のコアを含む持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記高分子量PEOが少なくとも約50%(重量)のコアを含む持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記活性薬剤の用量が、約30mg、約60mg、約120mg、および約240mgからなる群から選択される持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が約70℃~約75℃の温度で硬化する持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。
【0016】
本開示は、前記コーティングが、i)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ii)二酸化チタンと、iii)ポリエチレングリコールとを含む持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。
【0017】
本開示は、前記錠剤が患者への1日1回または1日2回の投与に適している持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤の患者への投与に際した副作用が全くない、または最小限である持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、治療抵抗性うつ病、ならびに、DSM-V全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、外傷後ストレス障害、および/または強迫性障害を含むがこれらに限定されない治療抵抗性不安症からなる群から選択される疾病に対し患者を処置する方法を提供し、該方法は、このような処置を必要とする患者を選択する工程と、前記患者に本明細書に開示される錠剤を経口投与する工程とを含み、前記錠剤は、前記治療抵抗性うつ病または治療抵抗性不安症の症状を処置する。本開示は、前記コーティングが、i)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ii)二酸化チタンと、iii)ポリエチレングリコールとを含む方法を提供する。本開示は、前記錠剤が患者への1日1回または1日2回の投与に適している方法を提供する。本開示は、前記治療抵抗性うつ病または前記治療抵抗性不安症の症状が、前記錠剤の経口投与2時間以内に緩和する方法を提供する。本開示は、前記方法が前記錠剤の単回経口投与を含む方法を提供する。本開示は、前記方法が前記錠剤の複数回経口投与を含む方法を提供する。本開示は、前記錠剤の単回経口投与が、前記治療抵抗性うつ病または前記治療抵抗性不安症の作用を約3~7日で緩和するのに十分なものである方法を提供する。本開示は、前記錠剤の患者に対する副作用が全くない、または最小限である方法を提供する。本開示は、憂鬱な気分または不安な気分の評価における最大平均改善が約6週間の維持療法後に着目される方法を提供する。本開示は、第2または追加の薬剤を薬学的に有効な量で投与する工程をさらに含む方法を提供し、前記第2または追加の薬剤には抗うつ性特性がある。本開示は、前記方法が、シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドシエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラドゾン、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗うつ薬、炭酸リチウム、オロチン酸リチウム、リチウム塩、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリジン、カルバマゼピン、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、トピラマート、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの気分安定薬、セントジョーンズワート、カバカバ、エキナシア、ノコギリパルメット、ホーリーバジル、バレリアン、ミルクシスル、シベリアンジンセン、チョウセンニンジン、アシュワガンダ根、イラクサ、イチョウ、ゴツコラ、最高級のイチョウ/ゴツコラ、ゲンゲ、ヒドラスチス、ドンクアイ、ニンジン、最高級のセントジョーンズワート、エキナシア、コケモモ、緑茶、サンザシ、ショウガ、イチョウ、ウコン、ボスウェリア・セラータ、ブラックコホシュ、キャッツクロー、イヌハッカ、カモミール、タンポポ、チェストツリーベリー、ブラックエルダーベリー、ナツシロギク、ガーリック、セイヨウトチノキ、リコリス、レッドクローバーブロッサム、リーフロディオラルサ、コレウス・フォルスコリ、パッションフラワー、コゴメグサ、ヨヒンビ、ブルーベリープラント、ブラックペッパープラント、ツボクサ、ゲンゲ、バレリアン幼根、グレープシード、クマツヅラ、エナキセア根、スカルキャップ、セレニティエリキシル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの生薬抗うつ薬、ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗精神病薬、カウンセリング、心理療法、認知療法、電気痙攣療法、水治療法、高圧酸素療法、電気療法、電気刺激法、経皮的電気刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、および経頭蓋磁気刺激法からなる群から選択されるその他の治療的介入、ならびにこれらの組み合わせから選択される追加の治療をさらに含む方法を提供する。
【0018】
本開示は、持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供し、該錠剤は、(A)コアであって、i)ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される治療上有効量の活性薬剤、およびii)硬化される少なくとも1つの高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)であって、レオロジー測定に基づき約200万~700万の分子量を持ち、前記コアの少なくとも約30%(重量)の量で存在する高分子量ポリエチレンオキシドを含むコアと、(B)前記コア上にあるコーティングとを含んでおり、前記錠剤には、粉砕への耐性があり、かつ少なくとも約200Nの破壊強度があり、前記錠剤が約60mgで患者に単回投与されると、ノルケタミンCmaxとケタミンCmaxとの比が約4:約15、およびノルケタミンAUCとケタミンAUCとの比が約7:約15、からなる群から選択される薬物動態パラメータが得られる。本開示は、前記高分子量PEOの分子量が、少なくとも約4,000,000、少なくとも約5,000,000、少なくとも約6,000,000、および少なくとも約7,000,000からなる群から選択される、持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記活性薬剤が少なくとも約1%(重量)のコアを含む持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記高分子量PEOが少なくとも約50%(重量)のコアを含む持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記活性薬剤の用量が、約30mg、約60mg、約120mg、および約240mgからなる群から選択される持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が約70℃~約75℃の温度で硬化する持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記コーティングが、i)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ii)二酸化チタンと、iii)ポリエチレングリコールとを含む持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤が患者への1日1回または1日2回の投与に適している持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、前記錠剤の患者への投与に際した副作用が全くない、または最小限である持続放出性の固形経口医薬錠剤を提供する。本開示は、治療抵抗性うつ病、ならびに、DSM-V全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、外傷後ストレス障害、および/または強迫性障害を含むがこれらに限定されない治療抵抗性不安症からなる群から選択される疾病に対し患者を処置する方法を提供し、該方法は、このような処置を必要とする患者を選択する工程と、前記患者に本明細書に開示される錠剤を経口投与する工程とを含み、前記錠剤は、前記治療抵抗性うつ病または治療抵抗性不安症の症状を処置する。本開示は、前記コーティングが、i)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ii)二酸化チタンと、iii)ポリエチレングリコールとを含む方法を提供する。本開示は、前記錠剤が患者への1日1回または1日2回の投与に適している方法を提供する。本開示は、前記治療抵抗性うつ病または前記治療抵抗性不安症の症状が、前記錠剤の経口投与2時間以内に緩和する方法を提供する。本開示は、前記方法が前記錠剤の単回経口投与を含む方法を提供する。本開示は、前記方法が前記錠剤の複数回経口投与を含む方法を提供する。本開示は、前記錠剤の単回経口投与が、前記治療抵抗性うつ病または前記治療抵抗性不安症の作用を約3~7日で緩和するのに十分なものである方法を提供する。本開示は、前記錠剤の患者に対する副作用が全くない、または最小限である方法を提供する。本開示は、憂鬱な気分または不安な気分の評価における最大平均改善が約6週間の維持療法後に着目される方法を提供する。本開示は、第2または追加の薬剤を薬学的に有効な量で投与する工程をさらに含む方法を提供し、前記第2または追加の薬剤には抗うつ性特性がある。本開示は、前記方法が、シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドシエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラドゾン、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗うつ薬、炭酸リチウム、オロチン酸リチウム、リチウム塩、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリジン、カルバマゼピン、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、トピラマート、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの気分安定薬、セントジョーンズワート、カバカバ、エキナシア、ノコギリパルメット、ホーリーバジル、バレリアン、ミルクシスル、シベリアンジンセン、チョウセンニンジン、アシュワガンダ根、イラクサ、イチョウ、ゴツコラ、最高級のイチョウ/ゴツコラ、ゲンゲ、ヒドラスチス、ドンクアイ、ニンジン、最高級のセントジョーンズワート、エキナシア、コケモモ、緑茶、サンザシ、ショウガ、イチョウ、ウコン、ボスウェリア・セラータ、ブラックコホシュ、キャッツクロー、イヌハッカ、カモミール、タンポポ、チェストツリーベリー、ブラックエルダーベリー、ナツシロギク、ガーリック、セイヨウトチノキ、リコリス、レッドクローバーブロッサム、リーフロディオラルサラント、ブラックペッパープラント、ツボクサ、ゲンゲ、バレリアン幼根、グレープシード、クマツヅラ、エナキセア根、スカルキャップ、セレニティエリキシル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの生薬抗うつ薬、ハロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、ドーパミン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、アリピプラゾール、テトラベナジン、カンナビジオール、それらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの抗精神病薬、カウンセリング、心理療法、認知療法、電気痙攣療法、水治療法、高圧酸素療法、電気療法、電気刺激法、経皮的電気刺激(「TENS」)、脳深部刺激、迷走神経刺激、および経頭蓋磁気刺激法からなる群から選択されるその他の治療的介入、ならびにこれらの組み合わせから選択される追加の治療をさらに含む方法を提供する。
【0019】
本発明は、同様の参照番号が同様の要素を表す、以下の図面とともに記述されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】3つの異なるpHでの徐放性ケタミン錠剤60mgの溶解プロファイルを示す図表である。
図2A】徐放性錠剤の単回投与後に臨床医投与解離状態評価尺度(CADSS)を用いた平均溶解尺度スコアを示す図表である。
図2B】コホート1~3に錠剤を複数回投与した後の平均CADSSスコアを示す図表である。
図3A】コホート1~3への単回投与後のケタミンおよびノルケタミンの平均濃度-時間プロファイルを示す図表である。
図3B】コホート1~3への複数回投与後のケタミンおよびノルケタミンの平均濃度-時間プロファイルを示す図表である。
図4A】持続放出性ケタミン錠剤60mg、120mg、および240mgの単回投与後のケタミンの最大濃度(Cmax)用量比例性を示す図表である。
図4B】持続放出性ケタミン錠剤60mg、120mg、および240mgの単回投与後のケタミンの濃度-時間曲線下面積(AUC)を示す図表である。
図4C】持続放出性ケタミン錠剤60mg、120mg、および240mgの複数回投与後のケタミンの最大濃度(Cmax)用量比例性を示す図表である。
図4D】持続放出性ケタミン錠剤60mg、120mg、および240mgの複数回投与後のケタミンの濃度-時間曲線下面積(AUC)を示す図表である。
図4E】持続放出性ノルケタミン錠剤60mg、120mg、および240mgの単回投与後のノルケタミンの最大濃度(Cmax)用量比例性を示す図表である。
図4F】持続放出性ノルケタミン錠剤60mg、120mg、および240mgの単回投与後のノルケタミンの濃度-時間曲線下面積(AUC)を示す図表である。
図4G】持続放出性ノルケタミン錠剤60mg、120mg、および240mgの複数回投与後のノルケタミンの最大濃度(Cmax)用量比例性を示す図表である。
図4H】コホート1~3に対し持続放出性ノルケタミン錠剤60mg、120mg、および240mgの複数回投与後のノルケタミンの濃度-時間曲線下面積(AUC)を示す図表である。
図5A】持続放出性ケタミン錠剤投与後のコホート4における個別および平均CADSSスコアを示す図表である。
図5B】両データセットを持つ6人のコホート4参加者を対象とする、ケタミン錠剤(黒丸)とケタミン皮下投与(白丸)開始後3時間にわたる平均CADSSスコアの比較を示す図表である。
図6A】持続放出性ケタミン錠剤投与後のコホート4における個別および平均ハミルトン不安尺度(HAMA)スコアを示す図表である。
図6B】持続放出性ケタミン錠剤投与後のコホート4における個別および平均Fear Questionnaire(FQ)スコアを示す図表である。
図7】両データセットを持つ6人のコホート4参加者を対象とするケタミン錠剤(黒丸)とケタミン皮下投与(白丸)開始後の平均HAMAスコアの比較を示す図表である。
図8】持続放出性ケタミン錠剤投与後のコホート4における個別および平均モンゴメリー・アスベルグ鬱病評価尺度(MADRS)スコアを示す図表である。
図9A】後に3か月の長期盲検(OLE)段階に入ったコホート4の患者3名の平滑化平均うつ病(smoothed mean depression)(MADRS)スコアを示す図表である。平均うつ病評価は最大の改善に6週間を要すると考えられ(図9A)、一方で最大不安症尺度の改善は2週目までに生じると考えられる(図9B、9C)。
図9B】後に3か月の長期盲検(OLE)段階に入ったコホート4の患者3名の不安症(FQ)スコアを示す図表である。平均うつ病評価は最大の改善に6週間を要すると考えられ(図9A)、一方で最大不安症尺度の改善は2週目までに生じると考えられる(図9B、9C)。
図9C】後に長期盲検(OLE)段階に入るコホート4の患者3名の不安症(HAMA)スコアを示す図表である。患者3名全員がこの期間中に気分評価の改善を報告した。平均うつ病評価は最大の改善に6週間を要すると考えられ(図9A)、一方で最大不安症尺度の改善は2週目までに生じると考えられる(図9B、9C)。
図10】コホート4におけるケタミンおよびノルケタミンの平均濃度-時間プロファイルを示す図表である。12時間間隔で投与した平均用量は、濃度-時間プロットの上に示す。
図11】持続放出性ケタミン錠剤の12時間ごとの投与に関連付けられる、個々のノルケタミン:ケタミン比の変化を、フィッティングされた回帰で示す図表である。
図12】持続放出性ケタミン錠剤30mg、60mg、120mg、180mg、および240mgに対する製造プロセスを示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用されるように、「医薬品有効成分」(「API」)または「薬学的に活性な薬剤」という用語は、本発明に採用することができ、疾患、病気、身体的損傷、または病理学的症状を治癒、緩和、予防、または診断するために、身体状態または精神状態の状態、調子、または機能を識別することができるようにするために;ヒトまたは動物の身体または体液によって作られた活性物質を置き換えるために;病原体、寄生虫、または外因性物質を防御し、除去し、または無害化するために、あるいは身体状態または精神状態の状態、調子、または機能に影響を与えるために、ヒトまたは動物の身体に使用することを意図した薬物または薬剤である。使用されている薬剤は、例えば、Rote ListeまたはMerck Indexなどの参考文献に記載されている。言及され得る例としては、ケタミンおよび/またはノルケタミンが挙げられる。
【0022】
本明細書で使用されるように、ある量が被験体に効果をもたらすとき、それは「有効」である。本明細書で使用されるように、「有効な量」という用語は、本明細書で開示された利益を単独でまたは組み合わせて含むプラスの利益を有意に誘発するのに十分であるが、当業者の健全な判断の範囲内で、重篤な副作用を回避する、つまり、合理的な利益対リスク比を提供するのに十分なほど低い、化合物または組成物の量を意味する。当業者にとって、有効な量、ならびに投与量および投与頻度は、本開示に基づく単なるルーチン実験の知識および標準的な方法論に従って容易に決定することができる。
【0023】
本明細書で使用されているように、「被験体」および「患者」という用語は、交互に使用される。本明細書で使用されるように、「患者」という用語は、動物、好ましくは、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)および霊長類(例えば、サルおよびヒト)などの哺乳動物を指し、最も好ましくはヒトを指す。いくつかの実施形態では、被験体は、農場動物(例えば、ウマ、ブタ、またはウシ)またはペット(例えば、イヌまたはネコ)などのヒト以外の動物である。特定の実施形態では、被験体は高齢のヒトである。別の実施形態では、被験体は大人のヒトである。別の実施形態では、被験体は子供のヒトである。さらに別の実施形態では、被験体は乳児のヒトである。
【0024】
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容可能な」というフレーズは、連邦政府または州政府の規制当局の承認を受けたもの、あるいは、米国薬局方もしくは欧州薬局方、あるいは、哺乳動物、より具体的にはヒトへの使用に一般に認められている他の薬局方に列記されているものを意味する。
【0025】
本明細書で使用されるように、被験体への治療の投与の文脈において、「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語は、疾患または疾病の再発、発症、および/または進行の予防または阻害、あるいは治療法の組み合わせ(例えば、予防薬または治療薬の組み合わせ)を意味する。
【0026】
本明細書で使用されるように、「治療法」および「治療」という用語は、疾患または疾病、あるいはそれらの1つ以上の症状の予防、処置、および/または管理に使用できる任意の方法、組成物、および/または薬剤を指すことができる。
【0027】
本明細書で使用されるように、被験体への治療法の投与の文脈において、「処置する」、「処置」、および「処置すること」という用語は、1つまたは複数の治療法の投与の結果として生じる、疾患または疾病の進行ならびに/あるいは期間の減少または阻害、疾患または疾病の重症度の減少または改善、ならびに/あるいはその1つ以上の症状の改善を指す。
【0028】
本明細書で使用されるように、記載された数値または範囲に関連して使用される「約」という用語は、当業者によって合理的に与えられる意味を持ち、すなわち、記載された数値または範囲よりも幾分多いまたは幾分少ないことを示す。
【0029】
うつ病は、気分の落ち込みと、活動に対する興味や喜びが著しく減退することを特徴とする。その他の症状としては、体重の大幅な減少または増加、食欲の減退または増加、不眠または過眠、精神運動性の興奮または遅滞、疲労またはエネルギーの喪失、無価値感または過剰なまたは不適切な罪悪感、思考力または集中力の減退または優柔不断、繰り返し起こる死の考え、自殺念慮または自殺企図などが挙げられる。また、様々な身体的症状が現れることもある。憂鬱な気分になることは、特に人生の挫折を経験した後にはよくあることであるが、症状が閾値に達し、少なくとも2週間続いた場合にのみ、うつ病性障害と診断される。うつ病の重症度は、軽いものから非常に重いものまで様々である。うつ病は多くの場合、一過性であるが、再発や慢性化することもあり得る。人によっては、エピソードが1回だけで、発症前の機能に完全に戻ることもある。しかしながら、1回の大うつ病エピソードを経験した人の50%以上が、その後、別の大うつ病エピソードを経験する。
【0030】
治療抵抗性うつ病は、最適に送達される1つ以上の処置に十分な反応を示さない単極性うつ病を含む。うつ病が、現在のエピソードにおいて異なるクラスの薬剤の少なくとも2回の適切な試験で利益が得られなかった場合、臨床的に有意な治療抵抗性が存在する。
【0031】
任意の慢性的な治療抵抗性のうつ病は、本明細書に記載された方法によって処置することができる。そのようなうつ病としては、限定されないが、大うつ病性障害、単発エピソード、再発性大うつ病性障害-単極性うつ病、季節性情動障害-冬季うつ病、双極性気分障害-双極性うつ病、大うつ病性エピソードを有する、一般的な医学的状態による気分障害、または、抑うつ的特徴を有する、一般的な医学的状態による気分障害のいずれかが挙げられ、これらの障害は、所定の患者において処置に抵抗性である。したがって、それらの障害の1つを呈し、現在のエピソードにおいて1つの抗うつ薬の十分な試験に反応せず、2年以上にわたって再発性または慢性的な抑うつ症状を有する任意の患者は、本発明の方法によって処置することができる。躁うつ病については、Goodwin,et al.2007にも記載されている。
【0032】
不安は、神経質、恐怖、憂慮、および心配などを特徴とする気分障害である。不安障害の患者は、過度の心配、パニック発作、または特定の状況(社会的交流、スーパーマーケットなど)の回避などの症状を訴えることがある。治療抵抗性不安(TRA;適切な薬物療法および心理療法にもかかわらず、解決または改善しない不安)は比較的一般的であり、約30%の患者が処置に反応せず、さらに30~40%の患者が部分的な反応を示している(Brown 1996)。現在、TRAに対して承認されている薬物治療はない。
【0033】
自己誘導は、薬物が自らの代謝を促進する酵素を誘導する能力のことであり、その結果、耐性が生じることがある。
【0034】
活性薬剤
本発明の医薬組成物は、例えば、ケタミン、ノルケタミン、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される活性薬剤を含むこともある。本明細書で使用される「ケタミン」は、2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オンというIUPAC名を有する、式(I)の化合物を含むものと理解される。
【0035】
【化1】
したがって、ケタミンは、RおよびSのエナンチオマー、ならびにその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を含む。一実施形態では、ケタミンは、(R)-ケタミンまたはその薬学的に許容可能な塩あるいは溶媒和物である。別の実施形態では、ケタミンは、(S)-ケタミン、またはその薬学的に許容可能な塩あるいは溶媒和物である。さらなる実施形態では、ケタミンは、(S)-ケタミンおよび(R)-ケタミンのラセミ体、またはそれらの薬学的に許容可能な塩あるいは溶媒和物、もしくは(S)-ケタミンおよび(R)-ケタミンの任意の混合物、またはそれらの薬学的に許容可能な塩あるいは溶媒和物である。ケタミンは好ましくは、その薬学的に許容可能な酸付加塩を含むことができる。薬学的に許容可能な酸付加塩を調製するために使用される酸は、好ましくは非毒性の酸付加塩を形成するものであり、すなわち、薬理学的に許容可能なアニオンを含む塩、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、(D,L)-酒石酸塩およびL-酒石酸塩、(D,L)-リンゴ酸塩およびL-リンゴ酸塩、ビタル酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩、および安息香酸塩などである。好ましい塩はケタミンの塩酸塩である。
【0036】
本明細書で使用されるようなケタミンは、その代謝物を含むこともできる。代謝物はノルケタミンまたはデヒドロノルケタミンであり、好ましくはノルケタミンである。ノルケタミンは、式(II)の2-アミノ-2-(2-クロロフェニル)シクロヘキサン-1-オンというIUPAC名を有しており、
【0037】
【化2】
N-脱メチル化によりケタミンから得られる。ノルケタミンは、(R)ノルケタミンまたはその薬学的に許容可能な塩あるいは溶媒和物、もしくは(S)ノルケタミンまたはその薬学的に許容可能な塩あるいは溶媒和物、(S)ノルケタミンと(R)ノルケタミンのラセミ体またはその薬学的に許容可能な塩あるいは溶媒和物、もしくは(S)ノルケタミンと(R)ノルケタミンの任意の混合物またはその薬学的に許容可能な塩あるいは溶媒和物として提供されることがある。
【0038】
例示的な実施形態では、本発明の製剤は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%の濃度で活性薬剤を含むことがある。例示的な実施形態では、本発明の製剤は、約1~約20%、約5~約25%、約10~約20%、または約15~約18%の濃度で活性薬剤を含むことがある。
【0039】
併用療法
被験体の状態を処置および/または予防する方法および組成物は、本発明の実施形態に従って提供され、上記方法および組成物は、本明細書に記載される本発明の化合物と、少なくとも1つのさらなる治療、例えば、少なくとも1つの抗不安薬、少なくとも1つの抗うつ薬、少なくとも1つの神経弛緩薬、少なくとも1つの気分安定薬、少なくとも1つの抗精神病薬、少なくとも1つの催眠薬、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される治療剤を組み合わせて投与することを含む。例示的な実施形態では、活性薬剤は、その有効性を高めるために、別の治療的介入と組み合わせて、または、別の治療的介入と同時に投与される。他の治療的介入の例としては、限定されないが、カウンセリング、心理療法、認知療法など、電気痙攣療法、水治療法、高圧酸素療法、電気療法および電気刺激、経皮的電気神経刺激または「TENS」(例えば、神経障害性疼痛などの痛みの処置のため)、脳深部刺激(例えば、神経障害性疼痛などの痛み、パーキンソン病、振戦、ジストニアなどの処置のため)、迷走神経刺激および/または経頭蓋磁気刺激などが挙げられる。
【0040】
例示的な実施形態では、少なくとも1つの抗不安薬は、アルプラゾラム、ブロマゼパム、ジアゼパム、ロラゼパム、クロナゼパム、テマゼパム、オキサゼパム、フルニトラゼパム、トリアゾラム、クロルジアゼポキシド、フルラゼパム、エスタゾラム、ニトラゼパム、およびこれらの薬学的に許容可能な塩、異性体、ならびに混合物である。抗不安薬のさらなる例としては、限定されないが、ベンゾジアゼピン(例えば、アルプラゾラム、ブロマゼパム(LEXOTAN)、クロルジアゼポキシド(LIBRIUM)、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、オキサゼパム(SERAX)、テマゼパム(RESTORIL、NORMISON、PLANUM、TENOX、およびTEMAZE)、トリアゾラム、セロトニン1Aアゴニスト(例えば、ブスピロン(BUSPAR))、バルビツレート(例えば、アモバルビタール(アミタールナトリウム)、ペントバルビタール(NEMBUTAL)、セコバルビタール(SECONAL)、フェノバルビタール、メトヘキシタール、チオペンタール、メチルフェノバルビタール、メタルビタール、バルベキサクロン)、ヒドロキシジン、カンナビジオール、および生薬治療薬(例えば、バレリアン、カバ(カバカバ)、カモミール、クラトム、ブルーロータスエキス、スケレチウム・トルツオスム(Sceletium tortuosum)(kanna)、およびバコパモニエラ(Bacopa monniera)などが挙げられる。
【0041】
例示的な実施形態では、少なくとも1つの抗うつ薬は、シタロプラム、シュウ酸エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ダポキセチン;ベンラファキシンおよびデュロキセチン;ハルマリン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、パルギリン、フェネルジン、セレギリン、トロキサトン、トラニルシプロミン、ブロファロミン、モクロベミド;アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドシエピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、トリミプラミン;マプロチリン、ミアンセリン、ネファゾドン、トラドゾン、およびそれらの薬学的に許容可能な塩、異性体、ならびに組み合わせである。抗うつ薬としては、合成された化学物質のほか、天然由来のものまたはセント・ジョーンズ・ワート(St.John’s Wort)などの生薬治療薬が挙げられる。
【0042】
生薬抗うつ薬としては、例えば、セントジョーンズワート;カバカバ;エキナシア;ノコギリヤシ;ホーリーバジル;バレリアン;ミルクシスル;シベリアンジンセン;チョウセンニンジン;アシュワガンダ根;イラクサ;イチョウ;ゴツコラ;最高級のイチョウ/ゴツコラ(ginkgo/gotu kola supreme)ゲンゲ;ヒドラスチス;ドンクアイ;ニンジン;最高級のセントジョーンズワート;エキナシア;コケモモ、緑茶;サンザシ;ショウガ、イチョウ、ウコン;ボスウェリア・セラータ;ブラックコホシュ;キャッツクロー;イヌハッカ;カモミール;タンポポ;チェストツリーベリー;ブラックエルダーベリー;ナツシロギク;ガーリック;セイヨウトチノキ;リコリス;レッドクローバーブロッサムおよびリーフロディオラルサ(leaf rhodiola rusa);コレウス・フォルスコリ;パッションフラワー;コゴメグサ;ヨヒンビ;ブルーベリープラント;ブラックペッパープラント;ツボクサ;ゲンゲ;バレリアン幼根およびグレープシード;クマツヅラ、エナキセア根(echinacea ang root);スカルキャップ;セレニティエリキシル(serenity elixir);およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
抗うつ薬の例としては、限定されないが、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)(例えば、フルオキセチン(PROZAC)、パロキセチン(PAXIL、SEROXAT)、エスシタロプラム(LEXAPRO、ESIPRAM)、シタロプラム(CELEXA)、およびセルトラリン(ZOLOFT))、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)(例えば、ベンラファキシン(EFFEXOR)およびデュロキセチン(CYMBALTA))、ノルアドレナリン作動性および特異的なセロトニン作動性抗うつ薬(NASSA)(例えば、ミルタザピン(AVANZA、ZISPIN、REMERON))、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害剤(NRI)(例えば、レボキセチン(EDRONAX))、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤(例えば、ブプロピオン(WELLBUTRIN、ZYBAN))、三環系抗うつ薬(TCA)(例えば、アミトリプチリンおよびデシプラミン)、モノアミン酸化酵素阻害剤(MAOI)(例えば、フェネルジン(NARDIL)、モクロベミド(MANERIX)、セレギリン)、および増強薬(例えば、トリプトファン(TRYPTAN)、およびブスピロン(BUSPAR)が挙げられる。
【0044】
典型的な実施形態では、少なくとも1つの神経弛緩薬は、ハロペリドール(HALDOL)、ドロペリドール、ベンペリドール、トリペリドール、メルペロン、レンペロン、アザペロン、ドンペリドン、リスペリドン、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、ペリシアジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、ピモジド、シアメマジン、クロルプロチキセン、クロペンチキソール、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、イロペリドン、ゾテピン、セルチンドール、ルラシドン、アリピプラゾール、およびこれらの薬学的に許容可能な塩、異性体、ならびに組み合わせである。
【0045】
例示的な実施形態では、少なくとも1つの気分安定薬は、限定されないが、炭酸リチウム、オロチン酸リチウム、リチウム塩、バルプロ酸(DEPAKENE)、ジバルプロエックスナトリウム(DEPAKOTE)、バルプロ酸ナトリウム(DEPACON)、ラモトリギン(LAMICTAL)、カルバマゼピン(TEGRETOL)、ガバペンチン(NEURONTIN)、オクスカルバゼピン(TRILEPTAL)、およびトピラマート(TOPAMAX)、ならびにこれらの組み合わせを含む。
【0046】
抗精神病薬の例としては、限定されないが、ブチロフェノン(例えば、ハロペリドール)、フェノチアジン(例えば、クロルプロマジン(THORAZINE)、フルフェナジン(PROLIXIN)、ペルフェナジン(TRILAFON)、プロクロルペラジン(COMPAZINE)、チオリダジン(MELLARIL)、トリフルオペラジン(STELAZINE)、メソリダジン(SERENTIL)、プロマジン、トリフルプロマジン(VESPRIN)、レボメプロマジン(NOZINAN)、プロメタジン(PHENERGAN))、チオキサンテン(例えば、クロルプロチキセン(TRUXAL)、フルペンチキソール(DEPIXOLおよびFLUANXOL)、チオチキセン(NAVANE)、ズクロペンチキソール(CLOPIXOLおよびACUPHASE))、クロザピン、オランザピン、リスペリドン(RISPERDAL)、クエチアピン(SEROQUEL)、ジプラシドン(GEODON)、アミスルプリド(SOLIAN)、ドーパミン、ビフェプルノクス、ノルクロザピン(ACP-104)、アリピプラゾール(ABILIFY)、テトラベナジン(XENAZINE)、およびカンナビジオール、およびこれらの薬学的に許容可能な塩、異性体、ならびに組み合わせが挙げられる。
【0047】
睡眠薬の例としては、限定されないが、バルビツレート、オピオイド、ベンゾジアゼピン(例えば、アルプラゾラム、ブロマゼパム(レキソタン)、クロルジアゼポキシド(リブリウム)、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプテート、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、オキサゼパム(SERAX)、テマゼパム(RESTORIL、NORMISON、PLANUM、TENOX、およびTEMAZE)、トリアゾラム)、非ベンゾジアゼピン(例えば、ZOLPIDEM、ZALEPLON、ZOPICLONE、ESZOPICLONE)、抗ヒスタミン薬(例えば、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、ヒドロキシジン、プロメタジン)、γ-ヒドロキシ酪酸(Xyrem)、グルテチミド、抱水クロラール、エトクロルビノール、レボメプロマジン、クロルメチアゾール、メラトニン、およびアルコールが挙げられる。鎮静剤の例としては、限定されないが、バルビツレート(例えば、アモバルビタール(Amytal)、ペントバルビタール(Nembutal)、セコバルビタール(Seconal)、フェノバルビタール、メトヘキシタール、チオペンタール、メチルフェノバルビタール、メタルビタール、バルベキサクロン)、ベンゾジアゼピン(例えば、アルプラゾラム、ブロマゼパム(LEXOTAN)、クロルジアゼポキシド(LIBRIUM)、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、オキサゼパム(SERAX)、テマゼパム(RESTORIL、NORMISON、PLANUM、TENOX、およびTEMAZE)、トリアゾラム)ならびに、薬学的に許容可能な塩、異性体、およびそれらの組み合わせが挙げられる。さらなる例は、生薬鎮静剤(例えば、アシュワガンダ、イヌハッカ、カバ(Piper methysticum)、マンドレイク、マリファナ、バレリアン)、溶剤系鎮静剤(例えば、抱水クロラール(NOCTEC)、ジエチルエーテル(Ether)、エチルアルコール(アルコール飲料)、三塩化メチル(クロロホルム))、非ベンゾジアゼピン系鎮静剤(例えば、エスゾピクロン(LUNESTA)、ザレプロン(SONATA)、ゾルピデム(AMBIEN)、ゾピクロン(IMOVANE、ZIMOVANE))、クロメチアゾール、γ-ヒドロキシブチレート(GHB)、サリドマイド、エトクロルビノール(PLACIDYL)、グルテチミド(DORIDEN)、ケタミン(KETALAR、KETASET)、メタカロン(SOPOR、QUAALUDE)、メチプリロン(NOLUDAR)、およびラメルテオン(ROZEREM)を含む。
【0048】
α-2-δリガンドの例としては、ガバペンチン、プレガバリン、3-メチルガバペンチン、(1α,3α,5α)(3-アミノ-メチル-ビシクロ[3.2.0]ヘプト-3-イル)酢酸、(3S,5R)-3アミノメチル-5メチル-ヘプタン酸、(3S,5R)-3 アミノ-5メチル-ヘプタン酸、(3S,5R)-3アミノ-5メチル-オクタン酸、(2S,4S)-4-(3-クロロフェノキシ)プロリン、(2S,4S)-4-(3-フルオロベンジル)-プロリン、[(1R,5R,6S)-6-(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト-6-イル]酢酸、3-(1-アミノメチル-シクロヘキシルメチル)-4H-[1,2,4]オキサジアゾール-5-オン、C-[1-(1H-テトラゾール-5-イルメチル)-シクロヘプチル]-メチルアミン、(3S,4S)-(1-アミノメチル-3,4-ジメチル-シクロペンチル)-酢酸、(3S,5R)-3アミノメチル-5メチル-オクタン酸、(3S,5R)-3アミノ-5メチル-ノナン酸、(3S,5R)-3アミノ-5メチル-オクタン酸、(3R,4R,5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-ヘプタン酸、および(3R,4R,5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-オクタン酸、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
セロトニン1a部分アゴニストの例としては、ブスピロン、ゲピロン、エルトプラジン、またはタンドスピロン、これらの薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせが挙げられる。
【0050】
抗アドレナリン薬剤の例としては、クロニジン、プラゾシン、プロプラノロール、フアンファシン、メチルドパ、グアナベンズ;ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシン、シロドシン、アルフゾシン、タムスロシン、デュタセルチド(dutasertide)/タムスロシン、グアナドレル、メセミルアミン、グアネチジン、その薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせが挙げられる。
【0051】
ベンゾジアゼピン薬剤の例としては、アルプラゾラム、ブロマゼパム(LEXOTAN)、クロルジアゼポキシド(LIBRIUM)、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、オキサゼパム(SERAX)、テマゼパム(RESTORIL、NORMISON、PLANUM、TENOX、およびTEMAZE)、トリアゾラム、その薬学的に許容可能な塩、異性体、および組み合わせが挙げられる。
【0052】
薬剤は治療上有効な量で投与される。特定の実施形態では、薬剤は同じ剤形で投与される。特定の実施形態では、治療薬は別々に投与される。
【0053】
薬物動態学
薬物動態学において、Cmaxという用語は、投与後の血液または血漿中のピーク薬物濃度を指す。Cmaxは、薬物の投与量(高用量であれば、通常、より高いCmax値が得られる)、薬物の投与方法(例えば、経口投与に比べて静脈内ボーラス投与後により高いCmax値が得られる)、および製剤の種類(持続放出性製剤に比べて、即時放出性経口製剤での投与後により高いCmax値が得られる)によって影響を受ける可能性がある。溶解性、浸透性、体内への吸収方法、代謝および代謝産物など、その他の薬物特性もCmaxに影響を与える可能性があり、このことは、上述の要因に基づいて一定の予測を行うことはできても、実際に観察される挙動を予測することは、ヒトでかなりの実験を行わなければ困難であり、予想外の結果となる可能性があるということを意味している。
【0054】
本明細書は、本明細書で開示されている組成物および方法が、患者への投与時に、例えば、
-ケタミン60mgの単回投与後の平均ケタミンCmaxが約10ng/mLまたはケタミンCmaxが約5ng/mLと約15ng/mLとの間;
-ケタミン120mgの単回投与後の平均ケタミンCmaxが約16ng/mLまたはケタミンCmaxが約7ng/mLと約32ng/mLとの間;
-ケタミン240mgの単回投与後の平均ケタミンCmaxが約38ng/mLまたはケタミンCmaxが約19ng/mLと約47ng/mLとの間;
-活性薬剤60mgの単回投与後の平均ノルケタミンCmaxが約74ng/mLまたはノルケタミンCmaxが約59ng/mLと約91ng/mLとの間;
-活性薬剤120mgの単回投与後の平均ノルケタミンCmaxが約161ng/mLまたはノルケタミンCmaxが約90ng/mLと約250ng/mLとの間;
-活性薬剤240mgの単回投与後の平均ノルケタミンCmaxが約315ng/mLまたはノルケタミンCmaxが約222ng/mLと約394ng/mLとの間;
-12時間ごとにケタミン60mgの5回投与後の平均ケタミンCmaxが約12ng/mLまたはケタミンCmaxが約8ng/mLと約23ng/mLとの間;
-12時間ごとにケタミン120mgの5回投与後の平均ケタミンCmaxが約21ng/mLまたはケタミンCmaxが約7ng/mLと約45ng/mLとの間;
-12時間ごとにケタミン240mgの5回投与後の平均ケタミンCmaxが約42ng/mLまたはケタミンCmaxが約33ng/mLと約53ng/mLとの間;
-12時間ごとに活性薬剤60mgの5回投与後の平均ノルケタミンCmaxが約125ng/mLまたはノルケタミンCmaxが約85ng/mLと約185ng/mLとの間;
-12時間ごとに活性薬剤120mgの5回投与後の平均ノルケタミンCmaxが約230ng/mLまたはノルケタミンCmaxが約168ng/mLと約335ng/mLとの間;
-12時間ごとに活性薬剤240mgの5回投与後の平均ノルケタミンCmaxが約421ng/mLまたはノルケタミンCmaxが約363ng/mLと約474ng/mLとの間、
からなる群から選択される薬物動態パラメータを提供することを開示している。
【0055】
Tmaxは、ピーク薬物濃度(Cmax)が発生する時間を指す。例示的な実施形態では、本明細書に開示されているような製剤および方法は、例えば、少なくとも約0.5時間、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、少なくとも約3.5時間、少なくとも約4時間、少なくとも約4.5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、および少なくとも約12時間からなる群から選択される活性薬剤の平均Tmaxを提供する。本明細書は、本明細書で開示されるような組成物および方法が、患者への投与時に、60mgまたは120mgまたは240mgの単回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが約1.5時間と約3.5時間との間;12時間ごとの60mgの5回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが約1.5時間と約3.5時間との間;12時間ごとの120mgの5回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが約1.5時間と約3.5時間との間;および、12時間ごとの240mgの5回投与後の前記活性薬剤の平均tmaxが約1.5時間と約3.5時間との間からなる群から選択された薬物動態パラメータを提供することを開示している。
【0056】
AUCとは、血液中または血漿中の薬物濃度曲線下面積(Area Under the drug concentration-time Curve)を意味する。AUCは、投与後の薬物に対する全身曝露量を反映する。繰り返しになるが、AUCの大きさはいくつかの要因-どんな用量を投与するか;薬物の吸収のしやすさと速さ;薬物が体内にどれだけ広く分布するか;体内からの薬物の排泄速度に影響される。これらの変数のために、ヒトでかなりの実験をしなければ、AUCを正確に予測することは困難である。
【0057】
本明細書は、本明細書で開示されるような組成物および方法が、患者への投与時に、
-ケタミン60mgの単回投与後の平均ケタミンAUC0-∞が約79ng.h/mLまたはケタミンAUC0-∞が約36ng.h/mLと約135ng.h/mLとの間;
-ケタミン120mgの単回投与後の平均ケタミンAUC0-∞が約197ng.h/mLまたはケタミンAUC0-∞が約93ng.h/mLと約460ng.h/mLとの間;
-ケタミン240mgの単回投与後の平均ケタミンAUC0-∞が約389ng.h/mLまたはケタミンAUC0-∞が約292ng.h/mLと521ng.h/mLとの間;
-活性薬剤60mgの単回投与後の平均ノルケタミンAUC0-∞が約872ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-∞が約549ng.h/mLと約1543ng.h/mLとの間;
-活性薬剤120mgの単回投与後の平均ノルケタミンAUC0-∞が約2133ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-∞が約1353ng.h/mLと約3260ng.h/mLとの間;および-活性薬剤240mgの単回投与後の平均ノルケタミンAUC0-∞が約4087ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-∞が約3205ng.h/mLと約5216ng.h/mLとの間;
-12時間ごとのケタミン60mgの5回投与後の平均ケタミンAUC0-12が約74ng.h/mLまたはケタミンAUC0-12が約35ng.h/mLと約156ng.h/mLとの間;
-12時間ごとのケタミン120mgの5回投与後の平均ケタミンAUC0-12が約133ng.h/mLまたはケタミンAUC0-12が約58ng.h/mLと約287ng.h/mLとの間;
-12時間ごとのケタミン240mgの5回投与後の平均ケタミンAUC0-12が約221ng.h/mLまたはケタミンAUC0-12が約145ng.h/mLと約328ng.h/mLとの間;
-12時間ごとの活性薬剤60mgの5回投与後の平均ノルケタミンAUC0-12が約981ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-12が約608ng.h/mLと約1583ng.h/mLとの間;
-12時間ごとの活性薬剤120mgの5回投与後の平均ノルケタミンAUC0-12が約1697ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-12が約1124ng.h/mLと約2557ng.h/mLとの間;および
-12時間ごとの活性薬剤240mgの5回投与後の平均ノルケタミンAUC0-12が約3025ng.h/mLまたはノルケタミンAUC0-12が約2381ng.h/mLと約3666ng.h/mLとの間、
からなる群から選択された薬物動態パラメータを提供することを開示している。
【0058】
本開示の製剤は、例えば、4時間以上、5時間以上、6時間以上、7時間以上、8時間以上、9時間以上、10時間以上、またはそれ以上のケタミンの持続放出をもたらす。本明細書に記載される製剤のケタミンおよびノルケタミンの排泄半減期の推定値は、即時放出型の錠剤製剤で以前に報告されたものよりもはるかに長い(例えば、8時間対2時間未満;Yanagihara 2003)。
【0059】
本発明の製剤が自己誘導をもたらすという証拠がある(図10)。これは、3-4日の反復投与後に安定したように見える。これに関する先行するヒトのデータはない。
【0060】
本発明の製剤では、吸収された薬物の90%以上がケタミンではなくノルケタミンとして存在するという証拠がある。患者コホート(コホート4)では、測定可能な主要な薬物がノルケタミンであったにもかかわらず、抑うつおよび不安の改善が見られた。科学文献では、ケタミンの投与後に気分の改善をもたらす上で、ケタミンと代謝物のどちらが重要かについて多くの議論がなされてきた。Zanos 2016とZarate 2017は、ケタミンの代謝物である6-ヒドロキシノルケタミンが重要であると強調している。本発明者らは、驚くべきことに、ノルケタミン自体が錠剤の治療効果において重要であることを発見した。これは、ケタミンとノルケタミンを別々にではなく組み合わせてデータを提示し、治療効果に対するノルケタミンの重要性を報告していなかった以前の報告とは対照的である。(WO 2015/031410を参照)。
【0061】
本明細書に記載される経口製剤は、60-120mgの投与後に解離性の副作用がなく、240mgで最小限の解離性の副作用を有する(図2Aおよび2B)。これは、投与後60分までは顕著な解離性症状がある、あらゆる投与経路によって注射されたケタミンとは著しく対照的である(例えば、Loo 2016)。
【0062】
本発明の製剤は、注射されたケタミンと比較して忍容性が改善され、憂鬱な気分と不安な気分の両方を改善するのに有効であるという証拠がある。例えば、最先端の研究グループは、解離体験をすることがTRDの気分改善に重要であるという知見を強調している。「ケタミンの抗うつ反応のメディエーターを調査した中で、解離性の副作用のみが、より強固で持続的な抗うつ作用を予測した」(www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24679390)本発明者らは、解離がない、または解離が最小限でうつ病スコアの改善が起こることを発見した(図8と5Aを参照)。解離のない状態でのこのうつ病スコアの改善という観察は、新規かつ非自明なものである。
【0063】
試験603のコホート4における不安症状の改善の開始は、ケタミン注射の1-2時間に比べて、より緩やか(48時間)であったが(図7)、初期の治療において注射された薬物のときと同様の全体的な効果の大きさが観察された。
【0064】
さらに、試験603を終了した患者での非盲検延長試験では、安全で効果的な投与量と投与スケジュールが特定された。不安/抑うつ混合型障害の患者4人のうち3人は、120mgの用量を週1回または週2回の経口投与により、寛解状態を維持した。
【0065】
これは、活性薬剤が高pH(例えば、腸液)よりも低pH(例えば、胃液)でより良好に放出されるように、徐放性製剤を調製することによって達成された。
【0066】
マトリックス製剤
特定の実施形態では、本発明は持続放出性の固形経口医薬品剤形を調製するプロセスを対象としており、上記プロセスは、少なくとも、
(a)組成物を形成するために、
(1)レオロジー測定に基づいて、少なくとも約1,000,000;少なくとも約2,000,000;少なくとも約3,000,000;少なくとも約4,000,000;少なくとも約5,000,000;少なくとも約6,000,000;少なくとも約6,000,000;少なくとも約7,000,000;および、少なくとも約8,000,000からなる群から選択されたおおよその分子量を有する少なくとも1つのポリエチレンオキシドと、
(2)少なくとも1つの活性薬剤と
を組み合わせる工程と;
(b)持続放出性マトリックス製剤を形成するために組成物を成形する工程と;
(c)前記持続放出性マトリックス製剤を硬化させる工程であって、少なくとも約1分、少なくとも約2分、少なくとも約3分、少なくとも約4分、少なくとも約5分、少なくとも約6分、少なくとも約7分、少なくとも約8分、少なくとも約9分、および少なくとも約10分からなる群から選択された期間にわたって、前記ポリエチレンオキシドの軟化温度である温度に、前記持続放出性マトリックス製剤を曝露する硬化工程を少なくとも含む、工程とを含む。好ましくは、硬化は大気圧で実施される。好ましい実施形態では、剤形はコーティングされる。
【0067】
特定の実施形態では、工程b)で組成物が成形されて、錠剤の形態の持続放出性マトリックス製剤を形成する。錠剤の形態の持続放出性マトリックス製剤を成形するために、直接圧縮プロセスを使用することができる。直接圧縮は、湿式造粒のようなプロセス工程を回避することで、錠剤を成形するための効率的で簡単なプロセスである。しかしながら、湿式造粒およびその後の錠剤を形成するための顆粒の圧縮などの、当該技術分野で知られている錠剤を製造するための他の任意のプロセスを使用することができる。
【0068】
一実施形態では、工程c)における持続放出性マトリックス製剤の硬化は、持続放出性マトリックス製剤中の高分子量ポリエチレンオキシドが少なくとも部分的に溶融する硬化工程を少なくとも含む。例えば、持続放出性マトリックス製剤中の高分子量ポリエチレンオキシドの少なくとも約20%または少なくとも約30%が溶融する。好ましくは、持続放出性マトリックス製剤中の高分子量ポリエチレンオキシドの少なくとも約40%、または少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、少なくとも約75%、または少なくとも約90%が溶融する。好ましい実施形態では、約100%の高分子量ポリエチレンオキシドが溶融する。
【0069】
他の実施形態では、工程c)における持続放出性マトリックス製剤の硬化は、持続放出性マトリックス製剤が一定期間、高温に晒される硬化工程を少なくとも含む。そのような実施形態では、工程c)で採用される温度、すなわち、硬化温度は、少なくとも高分子量ポリエチレンオキシドの軟化温度と同じくらい高い。任意の理論に拘束されることを望まないが、高分子量ポリエチレンオキシドの軟化温度と少なくとも同じ高さの温度で硬化することにより、ポリエチレンオキシド粒子が少なくとも互いに接着するか、さらには融合すると考えられる。いくつかの実施形態によれば、硬化温度は、少なくとも約60℃であるか、少なくとも約62℃であるか、約62℃から約90℃の範囲であるか、約62℃から約85℃の範囲であるか、約62℃から約80℃の範囲であるか、約65℃から約90℃の範囲であるか、約65℃から約85℃の範囲であるか、約65℃から約80℃の範囲である。硬化温度は、好ましくは、約68℃から約90℃、または約68℃から約85℃、または約68℃から約80℃までの範囲であり、より好ましくは、約70℃から約90℃、または約70℃から約85℃、または約70℃から約80℃までの範囲であり、最も好ましくは、約75℃から約90℃、または約75℃から約85℃、または約72℃から約80℃、または約70℃から約75℃までの範囲である。硬化温度は少なくとも約60℃、または少なくとも約62℃であってもよいが、約90℃未満または約80℃未満であってもよい。好ましくは、硬化温度は約62℃から約75℃の範囲、特に約68℃から約75℃の範囲である。好ましくは、硬化温度は、高分子量ポリエチレンオキシドの軟化温度範囲の下限と少なくとも同じくらいの高さであるか、あるいは少なくとも約62℃または少なくとも約68℃である。より好ましくは、硬化温度は、高分子量ポリエチレンオキシドの軟化温度範囲内であるか、または少なくとも約70℃である。さらに好ましくは、硬化温度は、高分子量ポリエチレンオキシドの軟化温度範囲の上限と少なくとも同じ高さであるか、または少なくとも約72℃である。代替的な実施形態では、硬化温度は、高分子量ポリエチレンオキシドの軟化温度範囲の上限よりも高く、例えば、硬化温度は、少なくとも約75℃または少なくとも約80℃である。
【0070】
硬化時間は、特定の組成物、および、調合と硬化温度に応じて、約1分から約24時間、または約5分から約20時間、または約10分から約15時間、または約15分から約10時間、または約30分から約5時間と変化してもよい。組成物のパラメータ、硬化時間、および硬化温度は、本明細書に記載される耐タンパー性を達成するために選択される。特定の実施形態によれば、硬化時間は、約15分から約30分まで変化する。
【0071】
本発明の特定の実施形態では、徐放性製剤は、本明細書に記載されるような制御放出コーティングを随意に有するマトリックスを介して達成されてもよい。本発明はさらに、所望の範囲内のAPIのインビトロ溶解速度を与え、pH依存性またはpH非依存性の方法でAPIを放出する徐放性マトリックスを利用してもよい。
【0072】
本発明に係る徐放性マトリックスに含まれ得る適切な徐放性材料の非限定的なリストとしては、親水性および/または疎水性の材料、例えば、ガム、セルロースエーテル、アクリル樹脂、タンパク質由来の材料、ワックス、シェラック、および硬化ヒマシ油と硬化植物油などの油が挙げられる。しかしながら、APIの徐放性を付与することができる、任意の薬学的に許容可能な疎水性または親水性の徐放性材料であれば、本発明に従って使用することができる。好ましい徐放性ポリマーとしては、アルキルセルロース、例えば、エチルセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーおよびコポリマーなど;および、セルロースエーテル、とりわけ、ヒドロキシアルキルセルロース(特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)およびカルボキシアルキルセルロースである。好ましいアクリル酸およびメタクリル酸のポリマーおよびコポリマーとしては、メチルメタクリレート、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、エチルアクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミンコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)(無水物)、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸無水物)、およびグリシジルメタクリレートコポリマーが挙げられる。特定の好ましい実施形態は、本発明のマトリックスにおいて、前述のいずれかの徐放性材料の混合物を利用する。マトリックスはさらに結合剤を含んでいてもよい。
【0073】
上記の成分に加えて、徐放性マトリックスは、適切な量の他の材料、例えば、医薬品分野で従来から用いられている、希釈剤、潤滑剤、結合剤、造粒助剤、および滑剤を含むことができる。
【0074】
徐放性マトリックスは、例えば、溶融造粒または溶融押し出し技術によって調製することができる。一般に、溶融造粒技術は、通常は固形の疎水性結合剤材料、例えば、ワックスを溶融することと、そこに粉末状の薬物を組み込むことを含む。徐放性剤形を得るためには、疎水性の徐放性材料、例えば、エチルセルロースまたは水不溶性アクリルポリマーを、溶融したワックスの疎水性結合材料に組み込むことが必要なことがある。
【0075】
さらなる疎水性結合材料は、1つ以上の水不溶性のワックス様熱可塑性物質を含んでもよく、水不溶性のワックス様熱可塑性物質は前記1つ以上の水不溶性のワックス様物質よりも疎水性の低い1つ以上の複数のワックス様熱可塑性物質と混合されていることもある。持続放出を達成するためには、製剤中の個々のワックス様物質は、初期放出段階において、実質的に非分解性であり、胃腸液に不溶性でなければならない。有用な水不溶性のワックス様結合剤物質は、水溶解度が約1:5,000(w/w)よりも低いものであってもよい。
【0076】
本発明に係る適切な溶融押出しされたマトリックスの調製は、例えば、均質な混合物を得るために、APIを徐放性材料、および好ましくは結合剤と混合する工程を含むことができる。次に、均質な混合物は、少なくともそれを押し出すのに十分なほど上記混合物を軟化させるのに十分な温度に加熱される。その後、結果として生じた均質な混合物を、例えば二軸押出機を用いて押し出することで、ストランドを形成する。押出物は好ましくは冷却され、当該技術分野で知られている任意の手段によって多粒子に切断される。マトリックスの多粒子は、その後、単位用量に分割される。押出物は、好ましくは、約0.1から約5mmの直径を有し、少なくとも約24時間にわたって、活性薬剤またはその薬学的に許容可能な塩の持続放出をもたらす。
【0077】
本発明の溶融押出しされた製剤を調製するための随意のプロセスは、疎水性徐放性材料、API、および随意の結合剤材料を、押出機に直接計量する工程と;均質な混合物を加熱する工程と;均質な混合物を押し出して、それによってストランドを形成する工程と;均質な混合物を含むストランドを冷却する工程と;ストランドを、約0.1mm~約12mmの大きさのマトリックス多粒子に切断する工程と;前記粒子を単位投与量に分割する工程とを含む。本発明のこの態様では、比較的連続的な製造手順が実現される。
【0078】
上記のような可塑剤は、溶融押出しされたマトリックスに含まれてもよい。可塑剤は、マトリックスの約0.1重量%~約30重量%として含まれることが好ましい。他の医薬賦形剤、例えば、タルク、単糖類または多糖類、潤滑剤などが、必要に応じて本発明の徐放性マトリックスに、含まれてもよい。含有量は、達成すべき所望の特性に依存する。
【0079】
押出機の開口ポートまたは出口ポートの直径は押し出されたストランドの太さを変更するために調整できる。さらに、押出機の出口部分は円形である必要はなく、それは長円形、長方形などであり得る。出てくるストランドを、熱いワイヤーカッター、ギロチンなどを使用して、粒子にすることをできる。
【0080】
溶融押出しされたマトリックス多粒子系は、例えば、押出機の出口開口部次第で、顆粒、スフェロイド、またはペレットの形態であってもよい。本発明の目的のために、「溶融押出しされたマトリックス多粒子」および「溶融押出しされたマトリックス多粒子系」および「溶融押出しされたマトリックス粒子」という用語は、好ましくは同様のサイズおよび/または形状の範囲内であり、1つ以上の活性薬剤および1つ以上の賦形剤を含み、好ましくは本明細書に記載される疎水性徐放性材料を含む、複数のユニットを指すものとする。好ましくは、溶融押出しされたマトリックス多粒子は、長さが約0.1から約12mmの範囲であり、約0.1から約5mmの直径を有する。加えて、溶融押出しされたマトリックス多粒子は、このサイズ範囲内の任意の幾何学的形状であってもよいことを理解されたい。特定の実施形態では、押出物を所望の長さに切断して、球形化工程を必要とすることなく治療活性薬剤の単位用量に分割するだけでよい。
【0081】
好ましい一実施形態では、有効な量の溶融押出しされたマトリックス多粒子をカプセル内に含む経口剤形が調製される。例えば、複数の溶融押出しされたマトリックス多粒子は、摂取して胃腸液と接触したときに有効な徐放性用量を提供するのに十分な量で、ゼラチンカプセル内に配置されてもよい。
【0082】
別の実施形態では、多粒子押出物の適切な量を、標準的な技術を用いる従来の錠剤化装置を用いて、経口錠剤に圧縮する。錠剤(圧縮および成形)、カプセル(ハードゼラチンおよびソフトゼラチン)、および丸剤を作るための技術および組成物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,(Arthur Osol,editor),1553-1593(1980)に記載されている。
【0083】
上記の成分に加えて、スフェロイド、顆粒、またはマトリックス多粒子は、必要に応じて、製剤の最大約50重量%までの量で、製薬技術において従来からある他の材料、例えば、希釈剤、潤滑剤、結合剤、造粒助剤、および滑剤を適切な量で含むことができる。これらの追加材料の量は、所望の製剤に所望の効果を与えるのに十分な量となる。
【0084】
一実施形態では、溶解性が改善された形態の少なくとも1つの活性薬剤が、侵食性または非侵食性ポリマーマトリックス制御放出デバイスに組み込まれる。侵食性マトリックスとは、純水に侵食可能または膨潤可能または溶解可能であるか、あるいは侵食または溶解を引き起こすために高分子マトリックスを十分にイオン化するために酸または塩基の存在を必要とするという意味で、水性侵食性または水膨潤性または水可溶性を意味する。浸食性ポリマーマトリックスは、使用される水性環境と接触すると、水を吸収して、活性薬剤の溶解性が改善された形態を封入する水性膨潤ゲルまたは「マトリックス」を形成する。水で膨潤したマトリックスは、使用環境で徐々に侵食し、膨潤し、崩壊し、または溶解し、それによって使用環境への活性薬剤の放出を制御する。活性薬剤が組み込まれた侵食性ポリマーマトリックスは、一般的には、形成後に溶解性が改善された製剤と混合される一連の賦形剤として記載されることがあり、それは、使用される水性環境と接触したときに水を吸収し、水で膨潤したゲルまたは「マトリックス」を形成し、これが薬剤の形態を封じ込める。薬物の放出は様々なメカニズムによって発生することがある:マトリックスは、溶解性が改善された形態の薬物の粒子または顆粒の周りから崩壊または溶解することがあり;あるいは、薬物は吸収された水溶液に溶解し、デバイスの錠剤、ビーズ、または顆粒から拡散することがある。この水で膨潤したマトリックスの重要な成分は、水膨潤性、浸食性、または可溶性のポリマーであり、これは一般にオスモポリマー、ヒドロゲル、または水膨潤性ポリマーと記載されることがある。このようなポリマーは、直鎖状、分岐鎖状、または架橋状であってもよい。それらはホモポリマーでもコポリマーでもよい。それらはビニル、アクリレート、メタクリレート、ウレタン、エステル、および酸化物モノマーに由来する合成ポリマーであってもよいが、多糖類またはタンパク質などの天然由来のポリマーの誘導体であることが最も好ましい。
【0085】
そのような材料は、キチン、キトサン、デキストラン、およびプルランなどの自然発生の多糖;寒天ガム(gum agar)、アラビアゴム、カラヤガム、ローカストビーンガム、トラガカントゴム、カラギーナン、ガディガム、グアーガム、キサンタンガム、およびスクレログルカン;デキストリンおよびマルトデキストリンなどのデンプン;ペクチンなどの親水コロイド;レシチンなどのリン脂質;アルギン酸アンモニウム、ナトリウム、カリウム、またはアルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコールなどのアルギネート;ゼラチン;コラーゲン;および、セルロース化合物を含む。「セルロース系」とは、エステル結合またはエーテル結合の置換基を形成するために、糖反復単位上の水酸基の少なくとも一部を化合物と反応させることによって修飾されたセルロースポリマーを意味する。例えば、セルロース系エチルセルロースは糖反復単位に結合したエーテル結合エチル置換基を有し、セルロース系アセテートはエステル結合アセテート置換基を有している。
【0086】
浸食性マトリックスのためのセルロースの好ましいクラスは、水可溶性および水浸食性のセルロース、例えば、エチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMEC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸セルロース(CA)、プロピオン酸セルロース(CP)、酪酸セルロース(CB)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、CAP、CAT、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP、HPMCAS、トリメリト酸酢酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAT)、およびエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)を含む。そのようなセルロース化合物の特に好ましいクラスは、様々なグレードの低粘度(MWが50,000ダルトン以下)および高粘度(MWが50,000ダルトン以上)のHPMCを含む。市販の低粘度HPMCポリマーは、Dow METHOCELシリーズのE5、E15LV、E50LV、およびK100LYを含み、高粘度HPMCポリマーは、E4MCR、E10MCR、K4M、K15M、およびK100Mを含み、この群で特に好ましいのはMETHOCEL Kシリーズである。他の市販されているHPMCのタイプは、信越化学工業の「METOLOSE 90SH」シリーズを含む。
【0087】
侵食性マトリックス材料の主な役割は、溶解性が向上した形態の活性薬剤の使用環境への放出速度を制御することであるが、本発明者らは、マトリックス材料の選択が、デバイスによって達成される最大薬物濃度と、高い薬物濃度の維持とに大きな影響を与えることを発見した。一実施形態では、マトリックス材料は、本明細書で以下に定義されるような濃度増強ポリマーである。
【0088】
浸食性マトリックス材料として有用な他の材料としては、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、グリセロール脂肪酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、エタクリル酸またはメタクリル酸のコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)、Rohm America,Inc,Piscataway,N.J.)、および他のアクリル酸誘導体、例えば、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート、および(トリメチルアミノエチル)メタクリレートクロリドのホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0089】
侵食性マトリックスポリマーは、デバイスの安定性または加工を促進する、オスモポリマー、オスモゲン、溶解性増強剤または溶解性阻害剤、および賦形剤を含む、製薬技術で知られている同じ種類の様々な添加剤および賦形剤を含むことができる。
【0090】
製剤は、ヒドロゲルなどの膨潤性材料である賦形剤を、膨潤および膨張可能な量で含んでいてもよい。膨潤性材料の例としては、ポリエチレンオキシド、軽く架橋された親水性ポリマー(そのような架橋は共有結合またはイオン結合によって形成される)が挙げられ、これらは水や水性の生物学的流体と相互作用し、一定の平衡状態まで膨潤または膨張する。ヒドロゲルなどの膨潤性材料は、水中で膨潤し、その構造内にかなりの割合の水を保持する能力を持ち、架橋されている場合には水に溶解しない。膨潤性ポリマーは、非常に高度に膨潤または膨張し、2~50倍の体積増加を示す。親水性ポリマー材料の具体例としては、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)、アニオン性およびカチオン性のヒドロゲル、高分子電解質複合体、アセテート残基が少なく、グリオキサール、ホルムアルデヒド、またはグルタルアルデヒドで架橋されたポリ(ビニルアルコール)、ジアルデヒドで架橋されたメチルセルロース、架橋された寒天とカルボキシメチルセルロースの混合物、無水マレイン酸とスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、またはイソブチレンとの微細に分割されたコポリマーであって、コポリマー中の無水マレイン酸1モルあたり0.001~約0.5モルの多価不飽和架橋剤で架橋されたコポリマーの分散液を形成することによって生成された水不溶性、水膨潤性のコポリマー、N-ビニルラクタムの水膨潤性ポリマー、架橋ポリエチレンオキシドなどが挙げられる。膨潤性材料の他の例としては、カーボポール酸性カルボキシポリマー、Cyanamer(商標)ポリアクリルアミド、架橋された水膨潤性インデン-無水マレイン酸ポリマー、Good-rite(商標)ポリアクリル酸、デンプングラフトコポリマー、Aqua-Keeps.(商標)アクリレートポリマー、ジエステル架橋ポリグルカンなどとして知られている架橋性の0.05~60%親水性ヒドロゲルを示すヒドロゲルが挙げられる。
【0091】
製剤は、添加剤、例えば、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリエチレングリコールポリマー、セルロースエーテルポリマー、セルロースエステルポリマー、ポリアルケニルポリエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、ポリ(メタ)アクリレート、ホモポリマー(例えば、アリルスクロースまたはアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸のポリマー)、コポリマー(例えば、アリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸およびC10-C30アルキルアクリレートのポリマー)、インターポリマー(例えば、ポリエチレングリコールと長鎖アルキル酸エステルのブロックコポリマーを含むホモポリマーまたはコポリマー)、崩壊剤、イオン交換樹脂、腸内細菌叢に反応するポリマー(例えば、多糖類、例えば、植物から得られるグアーガム、イヌリン、動物から得られるキトサンおよびコンドロイチン硫酸、または藻類から得られるアルギネート、微生物由来のデキストラン)、ならびに医薬用樹脂を含むことがある。
【0092】
ポリアルキレンオキシド
本発明の医薬組成物は、約300,000以下の平均分子量を有する少なくとも1つのポリアルキレンオキシドを含んでもよく、ポリエチレンオキシド、ポリメチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、またはそれらのコポリマーであってもよい。例示的な実施形態では、第1のポリアルキレンオキシドはポリエチレンオキシドである。いくつかの実施形態では、ポリエチレンオキシドであってもよいポリアルキレンオキシドは、約300,000の平均分子量を有する。他の実施形態では、ポリエチレンオキシドであってもよいポリアルキレンオキシドは、約200,000の平均分子量を有する。特定の実施形態では、ポリエチレンオキシドであってもよいポリアルキレンオキシドは、約100,000の平均分子量を有する。
【0093】
例示的な実施形態では、本発明の医薬組成物は、少なくとも1,000,000の平均分子量を有するポリアルキレンオキシドを含んでもよく、ポリエチレンオキシド、ポリメチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、またはそれらのコポリマーであってもよい。例示的な実施形態では、ポリアルキレンオキシドはポリエチレンオキシドである。いくつかの実施形態では、ポリエチレンオキシドであってもよい第2のポリアルキレンオキシドは、約2,000,000の平均分子量を有する。他の実施形態では、ポリエチレンオキシドであってもよい上記ポリアルキレンオキシドは、約4,000,000の平均分子量を有する。さらなる実施形態では、ポリエチレンオキシドであってもよい第2のポリアルキレンオキシドは、約5,000,000の平均分子量を有する。さらに他の実施形態では、ポリエチレンオキシドであってもよい上記ポリアルキレンオキシドは、約7,000,000の平均分子量を有する。さらなる実施形態では、ポリエチレンオキシドであってもよい上記ポリアルキレンオキシドは、約8,000,000の平均分子量を有する。他の実施形態では、ポリエチレンオキシドであってもよい上記ポリアルキレンオキシドは、約15,000,000の平均分子量を有する。
【0094】
例示的な実施形態では、ポリマーは、ポリアルキレンオキシド、好ましくはポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリ酸化プロピレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、それらのコポリマー、および少なくとも2つの述べられたポリマーの混合物を含む群から選択され得る。
【0095】
例示的な実施形態では、ポリマーは、ベースポリマー材料として、またはポリエチレンオキシド(PEO)、例えば、商標POLYOX(登録商標)(Dow)などの溶解調整剤として使用される水溶性ポリマーである場合がある。100K、200K、300K、400K、600K、900K、1000K、2000K、4000K、5000K、7000K、および8000K、ならびに随意にそれらの組み合わせなどの様々な分子量の熱可塑性ポリマーが使用されてもよいことが認められる。好ましい実施形態では、PEOは高分子量PEOである。好ましい実施形態では、PEOは、約7,000,000の分子量を有する。好ましい実施形態では、PEOは、約4,000,000~8,000,000の間の分子量を有する。ポリエチレンオキシドの例としては、POLYOX水溶性樹脂が挙げられ、これはNFに列挙され、100,000~約8,000,000の範囲のおおよその分子量を有する。好ましいポリエチレンオキシドは、POLYOX WSR-80、POLYOX WSR N-750、POLYOX WSR-205、POLYOX WSR-1105、POLYOX WSR N-12K、POLYOX WSR N-60K、WSR-301、WSR Coagulant、WSR-303、およびこれらの組み合わせである。
【0096】
医薬組成物中のポリアルキレンオキシドの量は変動する可能性があるか、または変動し、一般に、医薬組成物中のポリアルキレンオキシドの量は、医薬組成物の約10重量%~約95重量%の範囲である場合がある。様々な実施形態では、医薬組成物中のポリアルキレンオキシドの量は、医薬組成物の約20重量%~約90重量%、約30重量%~約80重量%、または約35重量%~約70重量%の範囲である場合がある。様々な実施形態では、医薬組成物中のポリアルキレンオキシドの量は、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%である場合がある。
【0097】
上記実施形態では、レオロジー測定に基づいて、2,000,000~15,000,000または2,000,000~8,000,000のおおよその分子量を有する高分子量ポリエチレンオキシドが使用されてもよい。レオロジー測定に基づいて、2,000,000、4,000,000、7,000,000、または8,000,000のおおよその分子量を有する特定のポリエチレンオキシドが使用されてもよい。レオロジー測定に基づいて、4,000,000のおおよその分子量を有する特定のポリエチレンオキシドが使用されてもよい。
【0098】
上記組成物が少なくとも1つの低分子量ポリエチレンオキシドをさらに含む実施形態では、レオロジー測定に基づいて、100,000~900,000のおおよその分子量を有するポリエチレンオキシドなど、レオロジー測定に基づいて、1,000,000未満のおおよその分子量を有するポリエチレンオキシドが使用されてもよい。そのような低分子量ポリエチレンオキシドの添加は、特定の目的のために遅くするために、一定の放出速度を他の方法で提供する製剤の放出速度を増強するなど、放出速度を特異的に調整するために使用される場合がある。そのような実施形態では、レオロジー測定に基づいて、100,000のおおよその分子量を有する少なくとも1つポリエチレンオキシドが使用されてもよい。
【0099】
あるそのような実施形態では、上記組成物は、レオロジー測定に基づいて、少なくとも1,000,000のおおよその分子量を有する少なくとも1つのポリエチレンオキシドと、レオロジー測定に基づいて、1,000,000未満のおおよその分子量を有する少なくとも1つのポリエチレンオキシドとを含み、ここで、上記組成物は、レオロジー測定に基づいて、1,000,000未満のおおよその分子量を有する少なくとも約10%(重量)または少なくとも約20%(重量)のポリエチレンオキシドを含む。あるそのような実施形態では、硬化温度は、約80°未満、またはさらには約77°未満である。ある実施形態では、組成物中のポリエチレンオキシドの総含有量は少なくとも約80%(重量)である。
【0100】
潤滑剤
例示的な実施形態では、本発明の医薬組成物は、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物などの潤滑剤と、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースなどの他の錠剤化補助剤(tableting aids)とを含む場合がある。
【0101】
本明細書で開示される医薬組成物は少なくとも1つの潤滑剤も含む場合があり、この潤滑剤は、医薬組成物の固形剤形の調製を容易にする。適切な潤滑剤の非限定的な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、コロイド状二酸化ケイ素、水添植物油、sterotex、ポリオキシエチレンモノステアレート(polyoxyethylene monostearate)、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、および軽油が挙げられる。例示的な実施形態では、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムであってもよい。
【0102】
潤滑剤が医薬組成物に含まれる実施形態では、潤滑剤の量は、医薬組成物の約0.1重量%~約3重量%の範囲であり得る。様々な実施形態では、潤滑剤の量は、医薬組成物の約0.1重量%~約0.3重量%、約0.3重量%~約1重量%、または約1重量%~約3重量%の範囲であり得る。例示的な実施形態では、潤滑剤の量は、医薬組成物の約0.5重量%、約1重量%、約1.5重量%、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約3.5重量%、約4重量%、約4.5重量%、または約5重量%であり得る。
【0103】
コーティング
医薬組成物は、1つ以上の腸溶コーティング、密封コーティング、フィルムコーティング、バリアコーティング、圧縮コーティング、速崩壊コーティング、または酵素分解性コーティングでコーティングされてもよい。
【0104】
場合によっては、本明細書で開示される製剤は、コーティング材料、例えば、シーラントでコーティングされ得る。いくつかの実施形態では、コーティング材料は水溶性である。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、ポリマー、可塑剤、顔料、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、フィルムコーティン、例えば、光沢フィルム、pH非依存性フィルムコーティング、水性のフィルムコーティング、乾燥粉末のフィルムコーティング、例えば、完全な乾燥粉末フィルムコーティング、またはそれらの任意の組み合わせの形態である。いくつかの実施形態では、コーティング材料は高接着性である。いくつかの実施形態では、コーティング材料は低レベルの水浸透性を提供する。いくつかの実施形態では、コーティング材料は酸素バリア保護を提供する。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、薬物活性剤(drug actives)の速い放出のために即時の崩壊を可能にする。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、色素性、透明、または白色である。いくつかの実施形態では、コーティング材料は透明である。例示的なコーティング材料としては、限定されることなく、ポリビニルアルコール(PVA)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、メタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(ヒプロメロースアセテートサクシネート)、セラック、アルギン酸ナトリウム、およびゼインが挙げられる。いくつかの実施形態では、コーティング材料はPVAを含むか、またはPVAである。いくつかの実施形態では、コーティング材料はHPMCを含むか、またはHPMCである。例示的なPVAベースのコーティング材料としてはOpadry IIが挙げられる。いくつかの例では、コーティング材料は、製剤の重量の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10%である。いくつかの例では、コーティング材料は、各第1の微粒子の全重量の約1%~約15%の間となり、限定されないが、約5%~約10%の間、約6%~約10%の間、約7%~約10%の間、約8%~約10%の間、または約9%~約10%の間を含む。いくつかの例では、コーティング材料は、製剤の重量の約2%を超えるか、約3%を超えるか、約4%を超えるか、約5%を超えるか、約6%を超えるか、約7%を超えるか、約8%を超えるか、約9%を超えるか、または約10%を超える。いくつかの例では、コーティング材料は、製剤の重量の約2%未満、約3%未満、約4%未満、約5%未満、約6%未満、約7%未満、約8%未満、約9%未満、または約10%未満である。
【0105】
所望のパフォーマンスのために複数のコーティングが施されてもよい。さらに、剤形は、即時放出、パルス放出、制御放出、持続放出、遅延放出、標的化放出、同期化放出(synchronized release)、または標的化遅延放出ために設計されてもよい。放出/吸収の制御に関しては、固形担体は、有効成分に関わらず、様々な成分の種類およびコーティングのレベルまたは厚さで作られてもよい。そのような多様な固形担体は、所望のパフォーマンスを達成するために剤形において混合することができる。これらの用語の定義は当業者に既知である。加えて、剤形放出プロファイルは、ポリマーマトリックス組成物、コーティングされたマトリックス組成物、多粒子組成物、コーティング多粒子組成物、イオン交換樹脂ベースの組成物、浸透ベースの組成物、または生分解性ポリマー組成物によって影響を受けることがある。理論によって制限されることなく、放出は、好ましい拡散、溶解、侵食、イオン交換、浸透、またはそれらの組み合わせを介してもたらされる場合があると考えられる。
【0106】
本発明の剤形は、例えば、密封コーティング、腸溶コーティング、持続放出性コーティング、または標的化遅延放出性コーティングでさらにコーティングされてもよい。これらの様々なコーティングは、当技術分野において既知であるが、明確にするために以下に簡単な説明を提供する。密封コーティング、または分離層を有するコーティング:粒子多孔性の減少、粉塵の減少、化学的防護、味のマスク、匂いの減少、胃腸刺激などを含む様々な理由のために、最大20ミクロンの厚さの薄層が適用されてもよい。分離の影響は、コーティングの厚さに比例する。この用途には水溶性のセルロースエーテルが好ましい。組み合わせたHPMCおよびエチルセルロース、すなわちEudragit E100は、特に適切であり得る。例示的な実施形態では、コーティングは、Colorconの即座のコーティングミックスであるOPADRYR Y-1-7000であってもよい。Opadry Y-1-7000は、ヒプロメロース5 cP、二酸化チタン、およびマクロゴール/PEG 400を含んでいる。他の場所に列挙される従来の腸溶コーティング材料も、分離層を形成するために適用されてもよい。
【0107】
随意に、徐放性のマトリックスの多粒子系、錠剤、またはカプセルは、本明細書に記載される徐放性コーティングなどの徐放性コーティングでコーティングされ得る。そのようなコーティングは好ましくは、約2~約25パーセントの重量増加レベルを得るために十分な量の疎水性および/または親水性の徐放性材料を含んでいるが、保護膜は、例えば、所望の放出速度に基づいて大きくなる場合がある。ある実施形態では、徐放性コーティングは、徐放性スフェロイド、顆粒剤、またはマトリックス多粒子に適用される。そのような実施形態では、徐放性コーティングは、(a)(単独での、または脂肪族アルコールとの混合物における)ワックス;または(b)セラックまたはゼインなどの水不溶性物質を含む場合がある。コーティングは、好ましくは、疎水性の徐放性材料の水性分散体に由来する。
【0108】
本発明の他の好ましい実施形態では、徐放性コーティングを含む徐放性材料は、限定されないが、アクリル酸とメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリレート)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(メタクリル酸無水物)、およびグリシジルメタクリレートコポリマーを含む、薬学的に許容可能なアクリルポリマーである。
【0109】
ある好ましい実施形態では、アクリルポリマーは、1つ以上のアンモニオメタクリレートコポリマーで構成される。アンモニオメタクリレートコポリマーは、第四級アンモニウム基の低い内容物を有するアクリルおよびメタクリル酸エステル類の完全に重合されたコポリマーとしての周知の当技術分野においてである。望ましい溶解プロファイルを得るために、中性の(メタ)アクリル酸エステルと第四級アンモニウム基との異なるモル比などの、異なる物理的性質を有する2つ以上のアンモニオメタクリレートコポリマーを組み込むことが必要な場合がある。
【0110】
あるメタクリル酸エステル型ポリマーは、本発明に従って使用される場合がある、pH依存性コーティングを調製するのに有用である。例えば、Rohm GMBH and Co. Kg Darmstadt(Germany)からEudragit(登録商標)として市販されている、メタクリル酸コポリマーまたは高分子メタクリレートとしても知られているジエチルアミノエチルメタクリレートおよび他の中性のメタクリル酸エステルから合成されたコポリマーのファミリーが存在する。いくつかの異なるタイプのEudragit(登録商標)がある。例えば、Eudragit Eは、酸性媒質中で膨潤して溶解するメタクリル酸コポリマーの例である。Eudragit Lは、約pH<5.7では膨潤せず、約pH>6で可溶性であるメタクリル酸コポリマーである。Eudragit Sは、約pH<6.5では膨潤せず、約pH>7で可溶性である。Eudragit RLおよびEudragit RSは膨潤性であり、これらのポリマーによって吸収される水の量はpHに依存するが、Eudragit RLおよびRSでコーティングされた剤形はpHに依存しない。
【0111】
特定の好ましい実施形態では、アクリルコーティングは、それぞれ商標名Eudragit(登録商標) RL30DおよびEudragit(登録商標) RS30Dで市販されている2つのアクリル樹脂ラッカーの混合物を含む。Eudragit(登録商標) RL30DおよびEudragit(登録商標) RS30Dは、第四級アンモニウム基の含有量が低いアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのコポリマーであり、アンモニウム基と残りの中性の(メタ)アクリル酸エステルとのモル比は、EudragitR RL30Dで1:20であり、Eudragit(登録商標) RS30Dで1:40である。平均分子量は約150,000である。コード表示RL(高浸透性)およびRS(低浸透性)は、これらの薬剤の浸透性の性質を指す。Eudragit(登録商標) RL/RSの混合物は、水および消化液中で不溶性である。しかし、同じものから形成されたコーティングは、水溶液および消化液中で膨潤性かつ浸透性である。
【0112】
エチルセルロースに適した可塑剤の例としては、ジブチルセバケート、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリブチル シトレート、およびトリアセチンなどの水不溶性可塑剤が挙げられるが、他の水不溶性可塑剤(アセチル化モノグリセリド、フタル酸エステル、ヒマシ油など)が使用されてもよい。クエン酸メチルは、本発明のエチルセルロースの水性分散体に特に好ましい可塑剤である。
【0113】
持続放出性コーティングは、長期間にわたる送達をもたらすように設計される。持続放出性コーティングは、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル酸エステル、またはカルボキシルメチルセルロースナトリウムから形成されたpH依存性のコーティングである。様々な持続放出性剤形は、コーティング材料および/またはコーティング厚さの選択に依存して、小腸と大腸の両方へと、小腸のみへと、または大腸のみへの送達をもたらすように当業者によって容易に設計され得る。
【0114】
腸溶コーティングは、担体または組成物に適用されるか、担体または組成物と組み合わされるか、担体または組成物と混合されるか、またはその他の方法で担体または組成物に添加される、薬学的に許容可能な賦形剤の混合物である。コーティングは、圧縮された、成型された、または押し出された錠剤、ゼラチンカプセル、および/または、担体あるいは組成物のペレット、ビーズ、顆粒剤、もしくは粒子に適用されてもよい。コーティングは、水性分散体を介してまたは適切な溶媒に溶解した後に、適用される場合がある。
【0115】
ある実施形態では、医薬組成物は、それを必要とするヒト患者または非ヒト患者への経口投与の際に、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、24、36、48、72、96、120、144、または168時間にわたる制御放出を提供する。
【0116】
「徐放性(sustained release)」との用語は、長期間(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、22、24、36、48、72、96、120、144、または168時間以上)にわたって、その血中濃度を、治療域以内(すなわち、最小有効濃度(MEC)以上)であるが毒性レベル以下に維持するような速度で、その剤形(例えば、錠剤)から薬物を放出することを指す。「徐放性」との用語は、「徐放性(slow-release)」、「制御放出性」、または「持続放出性」と交換可能に使用されてもよい。剤形の徐放性の性質は、インビトロの溶解方法によって典型的に測定され、インビボの血中濃度時間プロファイル(すなわち、薬物動態プロファイル)によって確認される。
【0117】
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、インビトロ溶解解析において、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、36、48、72、96、120、144、または168時間にわたって、直線様式またはほぼ直線様式でそれらの薬学的に活性な薬剤の約90%~100%を放出する。
【0118】
遅延放出は一般に、遅延放出の変化がなかった場合に達成されたであろう位置よりも遠位の下部胃腸管にあるいくつかの一般に予測可能な位置で、放出が達成され得るような送達を指す。遅延放出のための好ましい方法はコーティングである。コーティング全体が約5未満のpHでは胃腸液に溶けないが、5以上のpHでは溶けるように、コーティングは十分な厚みで適用されねばならない。pH依存性の溶解度プロファイルを示す任意のアニオン性ポリマーが、下部胃腸管への送達を達成するために本発明の実施の際に腸溶剤皮として使用され得ると予測される。本発明で使用されるポリマーは、アニオン性のカルボキシポリマーである。
【0119】
例示的な実施形態では、コーティングは、昆虫の樹脂分泌から得られた精製品である、精製ラック(purified lac)とも呼ばれるセラックを含む場合がある。このコーティングはpH>7の媒質で溶解する。
【0120】
可塑剤の他に、着色料、デタッキファイヤー(detackifiers)、界面活性剤、消泡剤、滑沢剤、安定剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、酸/塩基が、コーティング材料を可溶化するかまたは分散させるために、かつコーティングパフォーマンスとコーティングされた生成物を向上させるために、コーティングに添加されてもよい。
【0121】
硬度
ある実施形態では、本発明は、持続放出性マトリックス製剤を含む持続放出性の固形経口用医薬品剤形に関し、上記持続放出性マトリックス製剤は、
(1)レオロジー測定に基づいて、少なくとも約1,000,000;少なくとも約2,000,000、少なくとも約3,000,000、少なくとも約4,000,000、少なくとも約5,000,000、少なくとも約6,000,000、少なくとも約6,000,000、少なくとも約7,000,000、および少なくとも約8,000,000からなる群から選択されるおおよその分子量を有する、少なくとも1つのポリエチレンオキシドと、
(2)少なくとも1つの活性薬剤と、を含む組成物を含み、
ここで、上記持続放出性マトリックス製剤は、インデンテーション試験に供されたとき、少なくとも約200Nの「硬度」を有する。
【0122】
本発明のそのような実施形態では、持続放出性マトリックス製剤は、少なくとも約110N、好ましくは、少なくとも約120N、少なくとも約130N、または少なくとも約140N、より好ましくは、少なくとも約150N、少なくとも約160N、または少なくとも約170N、最も好ましくは、少なくとも約180N、少なくとも約190N、少なくとも約200N、少なくとも約210N、少なくとも約220N、少なくとも約230N、少なくとも約240N、または少なくとも約250Nの硬度またはクラッキング力(cracking force)を有する。本発明は、以下の実施例を参照してより詳細に示されるが、本発明はそれらに限定されると見なされるべきではないことを理解されたい。
【実施例
【0123】
実施例1
ケタミン30mg、60mg、120mg、180mg、および240mgの持続放出性の錠剤製剤(「R-107」錠剤製剤)
【0124】
【表1】
製造工程:
1.適切なミキサーにおいて、ケタミンHClをポリエチレンオキシドと均一になるまで混合する。
2.上記乾燥粉末の混合物にステアリン酸マグネシウムを混合する。
3.最終的な粉末混合物を圧縮して、400mgの目標錠剤質量および210Nの目標錠剤硬度の錠剤にする。
4.次の錠剤硬化の工程での損傷から錠剤を保護するために、最初のコーティングを行う。
5.所望の硬度を達成するために、70℃~75℃の温度範囲で錠剤を硬化する。
6.十分な重量を得るために、上記工程からの錠剤をコーティングし続ける。
【0125】
実施例2
試験ZPS-603(試験603)は、4つのコホートおよび複数の試験目的を有するハイブリッドの試験設計(hybrid study design)であった。コホート1、2、および3の目的は、単回投与および複数回投与後に、健康なボランティアにおいて持続放出性ケタミン経口用製剤の安全性、薬物動態(PK)、および薬力学(PD)を評価することであった。本設計は、健康なボランティアにおける二重盲検、プラセボ対照、単回漸増用量および複数回漸増用量試験であった。投与量は、コホート1、2、および3で、それぞれ60mg、120mg、および240mgであった。各用量レベルを最初に単一用量として与え、1週間後に12時間の間隔を置いて5回用量として与えた。エンドポイントには、安全性、忍容性、ケタミンとノルケタミンのPK、およびPD(自殺傾向評価、および解離症状評価尺度スコア)が含まれていた。
【0126】
コホート4の目的は、治療抵抗性うつ病および/または治療抵抗性不安症(TRD/TRA)患者において、持続放出性ケタミン経口用製剤の有効性、安全性、PK、およびPDを評価することであった。患者は、皮下ケタミンに対して以前に示された気分応答、およびモンゴメリー・アスベルグ鬱病評価尺度(Montgomery Asberg Depression Rating Scale)(MADRS;Montgomery 1979)および/またはHamilton Anxiety Scale(HAMA;Hamilton 1959)の臨床的に有意なスコアに基づいて選択した。本設計は、非盲検の複数回漸増用量試験であった。初回量は60mgであり、気分症状の評価に基づいて、12時間ごとにさらに60mgずつ、240mgの最高用量まで増大することができ、0~72時間の間で12時間ごとに合計7回用量を与えた。エンドポイントには、安全性、忍容性、ケタミンとノルケタミンのPK、およびPD(Fear Questionnaire(FQ;Marks 1979)、HAMA、およびMADRSを含む気分評価、ならびに解離症状評価尺度スコア)が含まれていた。
【0127】
プロトコルの修正により、さらなる目的をコホート4に追加した。この目的とは、すなわち、長期非盲検(OLE)処置相においてZPS-603の最初の96時間の漸増用量相での処置に応答したTRD/TRA患者において、持続放出性ケタミン経口用製剤の最大3ヶ月の投与の安全性および有効性を評価することであった。OLEのエンドポイントは、ZPS-603の最初の96時間の漸増用量相のエンドポイントに類似した。
【0128】
結果、コホート1~3:
人口統計:コホート1~3の参加者の平均(SD)パラメータを表1に示す。コホート2(#16)の1人の被験体は、安全性/忍容性に無関係な理由で、単回投与と複数回投与との間で試験から脱落した。
【0129】
【表2】
【0130】
安全性:試験中または試験完了後に、コホート1~3の任意の被験体において、バイタルサイン、ECG、安全性臨床検査、または尿検査における臨床的に有意な変化はなかった。
【0131】
忍容性:試験群により報告された有害事象を表2に示す。頻度の用量依存的な増加を示す唯一の有害事象は、240mgを投与した被験体における解離であった。
【0132】
【表3】
【0133】
薬力学:
CADSS:経時的な平均CADSSスコアを図2に示す。コホート1および3では単回投与後3時間で微増が認められ(図2A)、コホート3では、複数回投与相における第1の投与後3~12時間で微増が認められた(図2B)。(この規模での最高スコアが84点であり、これらは皮下ケタミン投与またはIVケタミン投与と比較して、徴少な変化であることに留意されたい)。
【0134】
自殺傾向の評価:コロンビア自殺重症度評価尺度(Columbia Suicide Severity Rating Scale)によって評価されるように、コホート1~3において自殺念慮を報告した参加者はいなかった。
【0135】
薬物動態:図3は、60、120、および240mgの単回投与および複数回投与後の、ケタミンおよびノルケタミンの濃度-時間プロファイルの平均を示す。両方の分析物の濃度は、投与後5~10時間にわたって比較的安定しており、このことは、錠剤の徐放性特性と一致していた。ノルケタミン濃度は、両方のプロットにおいてケタミン濃度よりも約10倍高く、このことは、経口投与後の広範な初回通過代謝を反映していた。3つすべてのコホートでは、ケタミンおよびノルケタミンの薬物動態パラメータは一次速度論に従うと考えられ、具体的には、ケタミンの60mg、120mg、および240mgの持続放出性錠剤の単回投与および複数回投与後に、AUCおよびCmaxは用量に比例していた(図4)。ケタミンとノルケタミンの両方に関して、複数回投与のAUC0-12値が単回投与のAUC0-∞よりも小さく、かつ、これらの比率が用量依存的に減少したという点で、自己誘導の証拠があると考えられる(表3を参照)。誘導のための機構は、CYP2B6を介していると考えられる。ケタミンは、CYP2B6の活性を誘導し(Chen 2010)、この酵素によってそれ自体が代謝される。
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
表3および4:ケタミン(上パネル)およびノルケタミン(下パネル)に関する、単回投与および複数回投与のAUCおよびCmax、ならびに比率。1未満のMD/SD AUC比率は、自己誘導(太字)を示唆する。単回投与、複数回投与、比率=MD/SD。
【0139】
【表6】
【0140】
表5は、即時放出性ケタミン錠剤(Yanagihara,Y.et al.Plasma Concentration Profiles of Ketamine and Norketamine after Administration of Various Ketamine Preparations to Healthy Japanese Volunteers. Biopharm.Drug Dispos.24:37-43(2003))およびケタミン溶液の皮下投与(Glue and Medlicott,unpublished data)に関して公開されたデータと比較した、R-107錠剤を使用したケタミンの単一用量の経口投与後の薬物動態特徴の概要を提供する。注射されたケタミン溶液および経口用即時放出性錠剤と比較して、R-107のCmaxおよびAUCのノルケタミン対ケタミンの比率は実質的により大きかった。注射されたケタミン溶液および経口用即時放出性錠剤と比較して、ケタミンとノルケタミンの両方のTmaxは、R-107経口投与後に遅延した。インビトロの溶解データに基づいて、ヒトにおける持続放出性錠剤の薬物動態的挙動を予測することが不可能であるという点で、R-107の結果は予期しないもであった。ノルケタミン対ケタミンの比率が投与の経口経路でより高いことが予測されたが、初回通過代謝のために、ヒトにおいて試験する前にこの変化の規模または影響がどの程度になるかは未知であり、予測できなかった。表5に示されるように、AUCおよびCmaxのノルケタミン対ケタミンの比率は、予測よりも大きかった。加えて、インビトロの溶解データに基づいて、R-107錠剤の経口投与後にいつTmaxが生じ得るかを予測することは不可能であった。これらの結果はまた、CmaxとAUCの両方での、ケタミンの曝露がノルケタミンよりも少ないことで(表5)、ケタミンの皮下注射と比較して解離症状が少なく、あまり強力ではないという点で、予想外にも有益である。加えて、R-107投与後のTmaxにおける遅延(表5)はまた、皮下注射したケタミンと比較して解離症状の軽減に寄与した。解離の軽減にもかかわらず、R-107の投与後に、患者が、依然としてうつ病および不安症の評価で改善を報告したことは注目すべきである。これより前に、ケタミンでうつ病患者を処置している臨床医は、抗うつ反応と解離の程度を明確におよび独自に関連付けた。本所見は予期しないものであり、本所見により、解離症状が最小限であるにもかかわらず、臨床的改善がR-107の投与後に観察される。
【0141】
【表7-1】
【0142】
【表7-2】
【0143】
表6は、即時放出性ケタミン錠剤(Yanagihara,Y.et al.Plasma Concentration Profiles of Ketamine and Norketamine after Administration of Various Ketamine Preparations to Healthy Japanese Volunteers.Biopharm.Drug Dispos.24:37-43 (2003))およびケタミン溶液の皮下投与(Glue and Medlicott、未公開のデータ)に関して公開されたデータと比較した、R-107錠剤を使用したケタミンの単一用量の経口投与後の薬物動態特徴を決定するための個別のデータを示す。
【0144】
【表8】
【0145】
表7は、R-107錠剤の経口投与後の、単一用量のケタミンおよびノルケタミンの薬物動態パラメータを示す(コホート1~3(健康なボランティア))。
【0146】
【表9】
【0147】
表8は、R-107錠剤の経口投与後の、複数回用量のケタミンおよびノルケタミン薬物動態パラメータを示す(コホート1~3(健康なボランティア))。
【0148】
【表10】
【0149】
表9は、コホート1~3における単一用量のケタミン薬物動態を示す。
【0150】
【表11】
【0151】
表10は、コホート1~3における単一用量のノルケタミン薬物動態を示す。
【0152】
【表12】
【0153】
表11は、コホート1~3における複数回用量のケタミン薬物動態を示す。
【0154】
【表13】
【0155】
表12は、コホート1~3の複数回用量のノルケタミン薬物動態を示す。
【0156】
結果、コホート4:人口統計:コホート4の参加者の平均(SD)パラメータを表12に示す。
【0157】
【表14】
【0158】
診断:7人の患者全員が、社交不安症の診断を受けた。5人は大うつ病性障害(MDD)の診断も受けており、1人は共存症の全般不安症(comorbid Generalized Anxiety Disorder)を有していた。スクリーニングにおいて、平均HAMAスコアは22.9であり(中程度の重症度と一致する)、平均FQスコアは48.4であった(非臨床的母平均よりも約2倍高い)。5人のMDD患者の平均MADRSスコアは31.2であった(中等度のうつ病と一致する)。
【0159】
投与:1日目の朝、7人の患者全員に対し、1×60mgの錠剤を投与した。7人の患者全員が12時間目に2×60mgの錠剤を受け、7人の患者全員が24時間目に3×60mgの錠剤を受けた。36時間目に、2人の患者は3×60mgの錠剤を受け、5人の患者は4×60mgの錠剤を受けた。48時間目に、1人の患者は3×60mgの錠剤を受け、6人の患者は4×60mgの錠剤を受けた。56時間目および72時間目に、7人の患者全員が4×60mgの錠剤を受けた(表14を参照)。
【0160】
【表15】
【0161】
安全性:試験中または試験完了後に、コホート4の任意の被験体におけるバイタルサイン、ECG、安全性臨床検査、または尿検査における臨床的に有意な変化はなかった。
【0162】
耐容性:コホート4によって報告された有害事象を表15に示す。全体的に、持続放出性ケタミン錠剤の単回用量および複数回用量で高い容認性が認められた。
【0163】
【表16】
【0164】
薬力学:
CADSS:経時的な平均CADSSスコアを図5Aに示す。平均CADSSスコアは、経時的に減少する傾向があった。このことは、皮下(SC)ケタミン後のCADSSスコアにおける変化とは著しく対照的である。図5Bは、両方のデータセットを有するコホート4の7人の参加者のうち6人における、経口投与およびSC投与後3時間までの平均CADSSスコアを示す。全体的に、CADSS尺度によって評価されるように、複数回用量の経口ケタミンは解離症状と関連しなかった。
【0165】
不安症の評価尺度:HAMAおよびFQ:個別および群の時点ごとの平均HAMAおよびFQスコアを、図6に示す(6A:HAMA;6B:FQ)。両方のスコアが経時的に減少するという一貫した傾向があり、この傾向は、ベースラインスコアがより高い患者において最も顕著であった。不安症が徐々に改善するという傾向は、皮下(SC)ケタミン後の不安症スコアの迅速な減少とは著しく対照的である。図7は、両方のデータセットを有するコホート4の7人の参加者のうち6人における、経口投与およびSC投与後の平均HAMAスコアを示す。HAMAスコアの変化に基づいて、7人の参加者全員が処置応答者(>50%の減少)であると評価され、FQスコアの変化に基づいて7人の参加者のうち6人が応答者であった。
【0166】
MADRS:個別および群の時点ごとの平均MADRSスコアを図8に示す。スコアが経時的に減少するという一貫した傾向があり、この傾向は、ベースラインスコアより高い患者で最も顕著であった。MADRSスコアの変化に基づいて、7人の参加者全員が処置応答者(>50%の減少)であると評価された。被験体042-026は、48時間および72時間目に、不安症の評価における変化はないが、うつ病の症状が悪化したことを報告した。診療所のスタッフと話し合いの後、彼は、これらは大うつ病の再発を示唆する気分の実質的かつ持続的な変化ではなく、グループ活動から除外された経験に対する悲しみの感情に関連すると報告した。この話し合いの後、彼のMADRSスコアは再び低下した。
【0167】
図9は、後に3ヶ月の長期非盲検(OLE)段階に入ったコホート4の患者3名の平滑化された平均うつ病(MADRS;9A)スコアおよび不安症(FQ、HAMA;9Bおよび9C)スコアを示す。3人の患者全員は、この期間中に気分評価の改善を報告した。平均うつ病評価は、最大の改善に6週間を要すると考えられ(図9A)、一方、最大の不安症尺度の改善は2週目までに生じると考えられる(図9B、9C)。
【0168】
薬物動態:図10は、コホート4における、96時間にわたるケタミンおよびノルケタミンの濃度-時間プロファイルの平均を示す。ケタミンとノルケタミンの両方の血漿中濃度における用量依存的な増加は、患者がより高用量を摂取し続けたために、48時間まで認められた。ノルケタミン濃度は、すべての時点においてケタミン濃度よりも一貫して高く、このことは広範な初回通過代謝を反映していた。このデータは、PKプロファイルにおける大きな被験体間と被験体間の変化を示す。
【0169】
反復投与の酵素誘導に対する影響を評価するために、個別のノルケタミン対ケタミン(NK:K)の比率を各時点で計算した。これらを図11にプロットする。NK:Kの比率の平均は0時間目で約11であり、この平均は連続的に増加して、96時間目に約20であった。時間に対するNK:Kの比率の相関性により、0.18の決定係数(r2)が得られた。データの変動性(%変動係数として表される)は、複数回投与の間に、0時間目で51%から96時間目で25%へと減少した。これらのデータは、12時間ごとの反復投与に関連する初回通過代謝の増加を示唆し、これは72時間まで漸近している(asymptote)と考えられる。
【0170】
本発明が詳細に、具体的な実施例を参照して説明されてきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変化および修飾を行なうことができることが当業者には明らかであろう。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12