(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】癌を治療するための多価PD-L1結合化合物
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20231108BHJP
C07K 14/075 20060101ALI20231108BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231108BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20231108BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231108BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20231108BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20231108BHJP
A61K 47/00 20060101ALI20231108BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231108BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
C12N7/01
C07K14/075
C07K19/00 ZNA
C12N15/861 Z
C12N15/62 Z
A61K38/17
A61K47/62
A61K47/00
A61K48/00
A61P35/00
C07K14/705
(21)【出願番号】P 2021564249
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 US2020030240
(87)【国際公開番号】W WO2020223217
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-12-03
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】バリー・マイケル・エイ
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/157165(WO,A1)
【文献】特表2015-506372(JP,A)
【文献】国際公開第2018/006005(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/00- 7/08
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合性の組換えアデノウイルス(Ad)であって、
前記組換えAdは、Ad株Ad6のカプシドヘキソンポリペプチドおよびAd株Ad57からの少なくとも1つのカプシドヘキソン超可変領域(HVR)ポリペプチドを
、Ad株Ad6のカプシドヘキソンポリペプチドの対応するHVRポリペプチドをAd57 HVRポリペプチドで置換することにより含み、
前記組換えAdのコートポリペプチド上には、各
ポリペプチド鎖が少なくとも1つのプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)ポリペプチドを含む複数の
ポリペプチド鎖が存在し、かつ、各
ポリペプチド鎖が前記組換えAdの表面と結合しており、
前記コートポリペプチドがヘキソンポリペプチドである、
前記の組換えAd。
【請求項2】
Ad株Ad6の前記カプシドヘキソンポリペプチドがAd株Ad57からのHVRポリペプチド1~7を
、Ad株Ad6のカプシドヘキソンポリペプチドの対応するHVRポリペプチドをAd57 HVRポリペプチド1~7で置換することにより含む、請求項
1に記載の組換えAd。
【請求項3】
Ad株Ad6の前記カプシドヘキソンポリペプチドがAd株Ad57からのHVRポリペプチド2~6を
、Ad株Ad6のカプシドヘキソンポリペプチドの対応するHVRポリペプチドをAd57 HVRポリペプチド2~6で置換することにより含む、請求項
1に記載の組換えAd。
【請求項4】
前記プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)ポリペプチドがヒトPD-1またはマウスPD-1である、請求項
1に記載の組換えAd。
【請求項5】
標的化ポリペプチド、治療ポリペプチドおよび抗原から選択される異種ポリペプチドを含むようにさらに改変されている、請求項
1に記載の組換えAd。
【請求項6】
前記標的化ポリペプチドが、麻疹ウイルスヘマグルチニン(MVH)ポリペプチド、麻疹ウイルス融合(MVF)ポリペプチドおよび水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSVG)ポリペプチドから選択される、請求項
5に記載の組換えAd。
【請求項7】
前記治療ポリペプチドが、4-1BBリガンド(4-1BBL)ポリペプチド、OX40リガンド(OX40L)ポリペプチド、CD40リガンド(CD40L)ポリペプチドおよび顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)ポリペプチドから選択される、請求項
5に記載の組換えAd。
【請求項8】
前記PD-1ポリペプチドが第X因子単鎖抗体ポリペプチドのビタミンK依存性ガンマ-カルボキシグルタミン酸ドメイン(FXポリペプチドのGLAドメイン)に融合している、請求項
1に記載の組換えAd。
【請求項9】
癌を治療するための、請求項
1~
8のいずれか1つに記載の組換えAd。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1つに記載の組換えAd、および薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項11】
癌の治療を必要とする対象における癌の治療に使用するための医薬の製造における、
請求項1~8のいずれか1つに記載の組換えAdの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌を治療するための方法および材料に関する。本発明は、多価PD-L1結合化合物を作製するための方法および材料を提供する。本発明はまた、癌を有する哺乳動物の細胞中でPD-1ポリペプチドを発現させるための方法および材料を提供する。特に、本発明は、PD-1ポリペプチドを含む組成物に関し、PD-1ポリペプチドは、1つまたは複数の多価プログラム細胞死リガンド1(programmed death-ligand 1:PD-L1)結合化合物の形態であってもよい。一部の場合において、多価(multivalent)PD-L1結合化合物は、2つまたはそれより多くのプログラム細胞死タンパク質1(programmed cell death protein 1:PD-1)ポリペプチド(および/またはPD-L1に結合する能力を有するその断片)を含むことができる。PD-L1結合化合物を含む組成物は、癌を治療するために有効な量で癌を有する哺乳動物に投与され、および任意選択的に、1つまたは複数の癌療法と組み合わせて投与される。
【背景技術】
【0002】
B7-H1とも呼ばれるPD-L1は、PD-1受容体へのその結合を通じて免疫系を調節する免疫チェックポイントタンパク質である。腫瘍微環境において、腫瘍細胞上のPD-L1の過剰発現は抗腫瘍免疫を抑制するのを助ける(Dong et al.、Nat Med. 8:793~800頁、(2002)(非特許文献1);Hamanishi et al.、Int. J. Clin. Oncol. 21:462~473頁(2016)(非特許文献2);Dong et al.、Nat. Med. 5:1365~1369頁(1999)(非特許文献3);Chen et al.、J. Clin. Invest. 125:3384~3391頁(2015)(非特許文献4);He et al.、Sci. Rep. 5:13110頁(2015)(非特許文献5);Chen et al.、Clin. Cancer Res. 18:6580~6587頁(2012)(非特許文献6);Ohaegbulam et al.、Trends Mol. Med. 21:24~33頁(2015)(非特許文献7);およびPostow et al.、J. Clin. Oncol. 33:1974~1982頁(2015)(非特許文献8))。
【0003】
抗原提示細胞(APC)は、癌細胞から放出された抗原を受け取り、それらをT細胞に提示する。癌細胞はまた、主要組織適合複合体の状況において活性化T細胞に抗原を提示することができる。T細胞活性化でPD-1受容体はT細胞上に発現され、APC上のPD-L1およびPD-L2リガンドならびに癌細胞上のPD-L1のエンゲージメントにより免疫応答を阻害する。したがって、PD-1/PD-L1/PD-L2経路のモノクローナル抗体(mAb)媒介性特異的遮断は抗腫瘍免疫を増強することができる。T細胞およびAPCに加えて、PD-1およびPD-L1は他の免疫細胞上で誘導され得る。
【0004】
癌疾患状態において、PD-L1陽性癌細胞上に存在するPD-L1の、T細胞上に存在するPD-1との相互作用は、T細胞機能シグナルを低減させて、免疫系がPD-L1陽性癌細胞を攻撃することを予防することができる。可溶性PD-1(sPD-1)は、PD-L1陽性癌細胞上に存在するPD-L1に結合することによりデコイとして作用することができる。例えば、sPD-1が、PD-L1陽性癌細胞上に存在するPD-L1に結合している場合、PD-L1は、T細胞上に存在するPD-1と自由に相互作用できず、それにより、PD-L1陽性癌細胞を攻撃することによりT細胞が機能することを可能とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Dong et al.、Nat Med. 8:793~800頁、(2002)
【文献】Hamanishi et al.、Int. J. Clin. Oncol. 21:462~473頁(2016)
【文献】Dong et al.、Nat. Med. 5:1365~1369頁(1999)
【文献】Chen et al.、J. Clin. Invest. 125:3384~3391頁(2015)
【文献】He et al.、Sci. Rep. 5:13110頁(2015)
【文献】Chen et al.、Clin. Cancer Res. 18:6580~6587頁(2012)
【文献】Ohaegbulam et al.、Trends Mol. Med. 21:24~33頁(2015)
【文献】Postow et al.、J. Clin. Oncol. 33:1974~1982頁(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、1つまたは複数の多価PD-L1結合化合物を作製するための方法および材料を提供する。本発明は、PD-1ポリペプチドを含むPD-L1結合化合物を含む組成物を提供し、PD-1ポリペプチドは1つまたは複数の多価PD-L1結合化合物の形態であってもよい。PD-L1結合化合物は、PD-L1陽性癌細胞上に存在するPD-L1に結合することによりデコイとして作用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、PD-1ポリペプチドを含む方法および材料を提供し、PD-1ポリペプチドは、癌を有する哺乳動物に投与されて哺乳動物を治療する1つまたは複数の多価PD-L1結合化合物の形態であってもよい。一部の場合において、多価PD-L1結合化合物は、PD-L1に結合することができる2つまたはそれより多くのアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含む。多価PD-L1結合化合物は、2つまたはそれより多くのPD-1ポリペプチド(またはPD-L1に結合する能力を有するそれらの断片)を含み、その結果、化合物は2つまたはそれより多くのPD-L1ポリペプチドに結合することができる。本発明はまた、PD-L1結合化合物、および本明細書に記載のPD-L1結合化合物または多価PD-L1結合化合物を形成するPD-1ポリペプチドを含む少なくとも1つのアミノ酸セグメントを含む組換えAdを含む組成物を作製方法を提供する。
【0008】
1つの実施態様において、スキャフォールド(scaffold)ポリペプチドに融合したマウスPD-1ポリペプチドおよび/またはヒトPD-1ポリペプチドは、ポリペプチドコンジュゲート(例えば、複数(例えば、2つまたはそれより多く)の会合したアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート)を形成することができ、その結果、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドに融合したスキャフォールドポリペプチドがポリペプチドコンジュゲート中にある場合、ポリペプチドコンジュゲートは、2つまたはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む多価PD-L1結合化合物を形成することができる。
【0009】
1つの実施態様において、ポリペプチドコンジュゲートは3つのアミノ酸鎖を含むことができ、スキャフォールドポリペプチドは、哺乳動物オルトレオウイルス3(Mammalian orthoreovirus 3)に由来するシグマ-1ポリペプチドであることができ、かつポリペプチドコンジュゲートは3つのPD-1ポリペプチドを含むことができる。
【0010】
1つの実施態様において、ポリペプチドコンジュゲートは4つのアミノ酸鎖を含むことができ、スキャフォールドポリペプチドはストレプトアビジンポリペプチドであることができ、かつポリペプチドコンジュゲートは4つのPD-1ポリペプチドを含むことができる。
【0011】
本発明はまた、PD-L1に結合するPD-1ポリペプチドをコードする核酸を含む組換えAdを含む組成物を提供する。1つの実施態様において、マウスPD-1ポリペプチドおよび/またはヒトPD-1ポリペプチドは、第X因子単鎖抗体ポリペプチドのビタミンK依存性ガンマ-カルボキシグルタミン酸ドメイン(Vitamin K-dependent gamma-carboxyglutamic domain)(FXポリペプチドのGLAまたはGLA-EGFドメイン)に融合しており、かつアデノウイルスヘキソンポリペプチド上に存在し、その結果、ポリペプチドが、ウイルス粒子のカプシド上に存在する2つまたはそれより多くのウイルスヘキソンポリペプチド上に存在する場合、ウイルス粒子は、約240~約720個のPD-1ポリペプチドを含む多価PD-L1結合化合物を形成することができる。
【0012】
本発明は、PD-1タンパク質および/またはPD-L1に結合するアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を発現する1種または複数の組換えアデノウイルス(Ad)を投与することにより癌を治療するための方法および材料を提供する。PD-1を発現する組換えAdは、治療的処置レジーム(regime)にしたがって癌免疫療法と組み合わせて投与されてもよい。
【0013】
多価PD-L1結合化合物の使用は、(例えば、単量体PD-1ポリペプチドと比較して、)PD-L1陽性癌細胞上に存在するPD-L1を中和するPD-1の有効性を増加させることができ、PD-L1陽性癌細胞が免疫系を回避することを予防することができ、かつ/または抗癌剤(例えば、癌免疫療法)をPD-L1陽性癌細胞により有効に標的化することを可能とすることができる。一部の場合において、PD-1ポリペプチドのアデノウイルス提示は、核酸送達のために細胞上のPD-L1に治療用Adを再標的化するためまたは腫瘍溶解性細胞死によりPD-L1発現細胞を殺すために使用することができる。
【0014】
1つの実施態様において、PD-L1結合化合物はまた、標的化分子を含むことができる。標的化および細胞融合分子は、ウイルスポリペプチド、例えば麻疹ウイルス(MV)ヘマグルチニン(H)ポリペプチド、MV融合(F)ポリペプチド、または水疱性口内炎ウイルス(VSV)糖タンパク質(G)ポリペプチドであることができる。
【0015】
PD-L1結合化合物はまた、1つまたは複数の治療ポリペプチドを含むことができる。治療ポリペプチドは、4-1BBリガンド(4-1BBL)ポリペプチド、OX40リガンド(OX40L)ポリペプチド、CD40リガンド(CD40L)ポリペプチド、または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)ポリペプチドから選択される。治療ポリペプチドはまた、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(TNFR)関連タンパク質(GITR)シグナル伝達を活性化させるポリペプチドであってもよい。
【0016】
PD-L1結合化合物はまた、検出可能なポリペプチドを含むことができる。検出可能なポリペプチドは緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼポリペプチドであることができる。
【0017】
本発明は、PD-1ポリペプチドをコードする核酸を含むPD-L1結合化合物の発現用の組換えベクターを包含し、PD-1ポリペプチドは、1つもしくは複数の標的化ポリペプチド、ならびに/または1つもしくは複数の治療ポリペプチド、ならびに/またはタンパク質(例えば、コラーゲン、エラスチン、ラミニン、およびフィブリノーゲン)と共に発現されてもよい。PD-1ポリペプチドは、異種ポリペプチドとの融合タンパク質として発現されてもよい。PD-1ポリペプチドをコードする核酸、ならびに、標的化ポリペプチド、治療ポリペプチドおよびタンパク質をコードする核酸が、発現ベクター中に含まれてもよく、発現ベクターは任意選択的に、原核または真核細胞中でのポリペプチドの発現を可能とする発現カセットを含む。ベクターはウイルスベクターであることができる。ウイルスベクターは、Ad、アデノ随伴ウイルス(AAV)、またはレンチウイルスであることができる。ウイルスベクターは、Ad657、Ad6/57/6、およびこれらのバリアントから選択されるAdであってもよい。Adは制限増殖型Ad(Conditionally Replicating Ad;CRAd)であってもよい。ウイルスベクターは腫瘍溶解性ウイルスベクターであることができる。
【0018】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるようなPD-1ポリペプチドおよびスキャフォールドポリペプチドを含むアミノ酸鎖をコードする核酸を含むPD-L1結合化合物(例えば、複数のアミノ酸鎖を含むことができるポリペプチドコンジュゲートであって、各アミノ酸鎖がPD-1ポリペプチドおよびスキャフォールドポリペプチドを含み、かつ当該複数のアミノ酸鎖がポリペプチドコンジュゲートを形成することができる、ポリペプチドコンジュゲート)の発現用のウイルスベクターを包含する。
【0019】
別の態様において、本発明は、癌を有する哺乳動物を治療する方法を包含する。当該方法は、PD-L1結合化合物を含む組成物を癌を有する哺乳動物に投与することを含む、またはから本質的になることができる。
【0020】
本発明の方法は、本明細書に記載のPD-L1結合化合物を含む有効量の組成物を投与することを含む。1つの実施態様において、PD-L1結合化合物は、1つまたは複数の癌治療法と組み合わせて哺乳動物に投与され、それにより、哺乳動物中に存在する癌細胞の数は低減される。1つまたは複数の癌治療法は、PD-1またはPD-L1を標的化する免疫療法を含んでもよい。免疫療法は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、セミプリマブ、およびデュルバルマブから選択されてもよい。
【0021】
別の態様において、本発明は、多価PD-L1結合化合物を含む組成物を癌を有する哺乳動物に投与することを含む、またはから本質的になる、癌を有する哺乳動物を治療する方法に関する。多価PD-L1結合化合物は、本明細書に記載のポリペプチドコンジュゲート(例えば、複数のアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートであって、各アミノ酸鎖がPD-1ポリペプチドおよびスキャフォールドポリペプチドを含む、ポリペプチドコンジュゲート)を含んでもよい。癌は、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、肝細胞癌、膵臓癌、腎臓癌、黒色腫、脳腫瘍、結腸癌、リンパ腫、骨髄腫、リンパ球性白血病、または骨髄性白血病であってもよい。投与することは全身または局所投与(例えば静脈内、腫瘍内、筋肉内、器官内、リンパ節内投与)を含むことができる。
【0022】
本発明の一態様は、複数のアミノ酸鎖を含む多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物であって、各アミノ酸鎖が少なくとも1つのプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)ポリペプチドを含む、多価PD-L1結合化合物に関する。
【0023】
本発明のさらなる態様は、Igポリペプチド、シグマ-1ポリペプチドおよびストレプトアビジンポリペプチドから選択されるスキャフォールドポリペプチドを含むポリペプチドコンジュゲートであるような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0024】
本発明のさらなる態様は、1つより多くのスキャフォールドポリペプチドを含むポリペプチドコンジュゲートであるような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0025】
本発明のさらなる態様は、PD-1ポリペプチドがヒトPD-1またはマウスPD-1であるような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0026】
本発明のさらなる態様は、複数のアミノ酸鎖が、治療ポリペプチド、標的化ポリペプチドまたは抗原性ポリペプチドを含むような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0027】
本発明のさらなる態様は、標的化ポリペプチドが、麻疹ウイルスヘマグルチニン(MVH)ポリペプチド、麻疹ウイルス融合(MVF)ポリペプチド、および水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSVG)ポリペプチドから選択されるような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0028】
本発明のさらなる態様は、治療ポリペプチドが、4-1BBリガンド(4-1BBL)ポリペプチド、OX40リガンド(OX40L)ポリペプチド、CD40リガンド(CD40L)ポリペプチド、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)ポリペプチドおよびGITRアゴニストから選択されるような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0029】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1つのプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)ポリペプチドを含む各アミノ酸鎖が組換えアデノウイルス(Ad)と会合しており、かつ複数のアミノ酸鎖が組換えAdのコートポリペプチド上に存在するような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0030】
本発明のさらなる態様は、組換えAdがAd株Ad6のカプシドヘキソンポリペプチドおよびAd株Ad57からの少なくとも1つのカプシドヘキソン超可変領域(HVR)ポリペプチドを含むような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0031】
本発明のさらなる態様は、Ad株Ad6のカプシドヘキソンポリペプチドがAd株Ad57からのHVRポリペプチド1~7を含むような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0032】
本発明のさらなる態様は、Ad株Ad6のカプシドヘキソンポリペプチドがAd株Ad57からのHVRポリペプチド2~6を含むような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0033】
本発明のさらなる態様は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)ポリペプチドがヒトPD-1であるような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0034】
本発明のさらなる態様は、PD-1ポリペプチドが第X因子単鎖抗体ポリペプチドのビタミンK依存性ガンマ-カルボキシグルタミン酸ドメイン(FXポリペプチドのGLAドメイン)に融合しているような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0035】
本発明のさらなる態様は、各アミノ酸鎖が、麻疹ウイルスヘマグルチニン(MVH)ポリペプチド、麻疹ウイルス融合(MVF)ポリペプチド、および水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSVG)ポリペプチドから選択される標的化分子を含むような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0036】
本発明のさらなる態様は、各アミノ酸鎖が、4-1BBリガンド(4-1BBL)ポリペプチド、OX40リガンド(OX40L)ポリペプチド、CD40リガンド(CD40L)ポリペプチド、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)ポリペプチドから選択される1つまたは複数の治療ポリペプチドを含むような多価PD-L1結合化合物に関する。
【0037】
本発明のさらなる態様は、多価PD-L1結合化合物および薬学的に許容可能な担体を含むような医薬組成物に関する。
【0038】
本発明のさらなる態様は、多価PD-L1結合化合物を投与することを含む、それを必要とする対象において癌を治療する方法に関する。
【0039】
本発明のさらなる態様は、1つまたは複数の癌治療法を哺乳動物に投与することをさらに含むような方法に関する。
【0040】
本発明のさらなる態様は、癌治療法が、PD-1を標的化する免疫療法であるような方法に関する。
【0041】
本発明のさらなる態様は、免疫療法が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、セミプリマブ、およびデュルバルマブからなる群から選択されるような方法に関する。
【0042】
他に定義されなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本発明が関連する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を使用して本発明を実施することができるが、好適な方法および材料が以下に記載される。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は参照によりそれらの全体が組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含めて、本明細書が優先される。追加的に、材料、方法、および例は実例的なものに過ぎず、限定的であることは意図されない。
【0043】
本発明の1つまたは複数の実施態様の詳細が、添付の図面および以下の説明において記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、該説明および図面、ならびに請求項から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1A】
図1Aは、例示的な操作された多価PD-L1結合化合物の図式を示す。1つのPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つのアミノ酸鎖を含む二量体ポリペプチドコンジュゲートであるIgポリペプチドに融合したPD-1ポリペプチドを含む多価PD-L1結合化合物。シグマポリペプチドに融合した1つのPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む3つのアミノ酸鎖を含む三量体ポリペプチドコンジュゲートである多価PD-L1結合化合物。四量体ポリペプチドコンジュゲートである多価PD-L1結合化合物は、ストレプトアビジンポリペプチドに融合した1つのPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む4つのアミノ酸鎖を含む。FXポリペプチドのGLAドメインに融合した1つのPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖。N末端またはC末端上の実体のいずれかを用いて融合タンパク質を構築することができる。アデノウイルス粒子の表面に結合した融合タンパク質は多価PD-L1結合化合物を生成する。
【
図1B】
図1Bは、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、またはエラスチンのような天然バイオポリマーへのPD-1モチーフの導入による操作されたPD-L1結合化合物を示す。タンパク質単量体へのPD-1の融合および細胞中での発現は、多くのPD-L1結合性モチーフを提示する多価ポリマーへのそれらのアセンブリーを可能とする。
【
図2A】
図2Aは、多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードすることができる核酸ベクターを示す。
図2Aは、IgGポリペプチドに融合した1つのマウスPD-1(mPD-1)ポリペプチドを含むアミノ酸鎖をコードすることができる核酸ベクター(左上)、IgGポリペプチドに融合した1つのヒトPD-1(hPD-1)ポリペプチドを含むアミノ酸鎖をコードすることができる核酸ベクター(右上)、およびFXポリペプチドのGLAドメインに融合したPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖をコードすることができる核酸ベクターを生成するためにIgGをコードする核酸をFXポリペプチドのGLAドメインをコードする核酸で置き換えるため、またはシグマ-1ポリペプチドに融合したPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖をコードすることができる核酸ベクターを生成するためにIgGをコードする核酸をシグマ-1ポリペプチドをコードする核酸で置き換えるための例示的なクローニング戦略(下)の図式を示す。
【
図2B】
図2Bは、PD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖の発現を示すゲルの画像を含む。レーン1:分子量マーカー(塩基対;bp);レーン2:FXポリペプチドのGLAドメインに融合したPD-1ポリペプチド;レーン3:分子量マーカー(bp);レーン4:シグマ-1ポリペプチドに融合したPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖。
【
図3】
図3は、FXポリペプチドのGLAドメインに融合したhPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖をコードすることができる核酸ベクター(左上)、シグマ-1ポリペプチドに融合したhPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖をコードすることができる核酸ベクター(右上)、およびhPD-1ポリペプチドをコードする核酸をmPD-1ポリペプチドをコードする核酸で置き換えるための例示的なクローニング戦略(下)の図式を示す。
【
図4】
図4は、多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードすることができる例示的な核酸ベクターの図式を示す。
【
図5】
図5は、多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードすることができる例示的なアデノウイルス(Ad)ベクターの図式を示す。
【
図6】
図6は、T細胞を活性化させることができる免疫チェックポイントポリペプチド(4-1BBL)をコードする核酸、1つまたは複数のPD-1ポリペプチド(PD-1-X、ここでXは二量体、三量体、四量体、または多量体の結合性スキャフォールドである)をコードする核酸、および抗原、例えば癌抗原または感染性疾患抗原(HPVエピトープ)をコードする核酸を有するAdのゲノムの図式を示す。Adゲノムの制限部位マップもまた示される。
【
図7】
図7は、ヘキソンおよびE3領域中のバリエーションを示すAd5、6、および57のアライメントを示す。(A)Ad6およびAd57のゲノムのPustell DNAアライメント。ボックスは、バリエーションが2つのウイルスの間で最も高いヘキソンおよびE3領域を指し示す。(B)Ad5、Ad6、およびAd57からのヘキソンタンパク質中の超可変領域のClustalWアミノ酸アライメント。
【
図8】
図8は、Ad6 HVRのAd57 HVRでの置き換えによるAd657の構築を示す。略語:HVR、超可変領域。
【
図9】
図9は、E1発現がネイティブなE1プロモーターにより制御される、複製能を有するAd(RC-Ad);E1発現が前立腺特異的プロバシンプロモーターにより制御されるバリアントCRAd-プロバシン-E1A(Ad-PB);正常細胞におけるIFN経路に感受性の、p300経路との結合能が除去された、CRAd-dl1101;pRB結合との結合能が、ウイルスがRB経路途絶を有する癌細胞を殺すことを可能とするが、RB+正常細胞において抑制される、CRAd-dl1107;p300経路との結合能が除去され、IFN経路に感受性の、pRBとの結合能が除去されることによってウイルスがRB経路途絶を有する癌細胞を殺すことを可能とするが、RB+正常細胞においては抑制される、CRAd-dl1101/07の図式である。
【
図10】
図10は、野生型E1AポリペプチドのN末端部分、ならびにCRAdバリアント、dl1101、dl1107およびdl1101/1107のE1A N末端のアミノ酸配列を示す。
【
図11】
図11は、Ad種Cの例としてのAd6およびAd種Dの例としてのAd26における異なるE3免疫回避遺伝子の図式を示す。両方のAdは、E3 12.5K、6.7K、19K、10.4K(RIDα)、14.5K(RIDβ)、および14.7K遺伝子のサイズおよび配列バリアントを発現し、これらのE3によりコードされるタンパク質の機能も描写している。
【
図12】
図12は、例えば、PEG化またはビオチンアクセプターペプチド(BAP)を用いる「BAP化(BAPylation)」により、修飾され得るAd HVR上の部位を描写する。
【
図13】
図13は、Ad治療サイクルを示す図式である。A)Adを用いる血清型スイッチング(serotype-switching)の図式。B)共有結合性ポリマー連絡と組み合わせた血清型スイッチングによる処理の複数のラウンドのためにAd6およびAd657を使用することができる例示的な治療サイクルの図式。
【
図14】
図14は、Ad657-HVR1-Cへのポリエチレングリコール(PEG)の連結を示す。A)PEG化を伴うおよび伴わないAdタンパク質のSDS-PAGE。矢印は、ヘキソンへのPEGの化学的取付けに起因するサイズ増加を示す。B)ウイルス感染に対するマレイミド-PEGおよび非標的化NHS-PEGによる標的化されたPEG化の効果。
【
図15】
図15は、細胞および血液因子との天然の相互作用をモジュレートするための異なるAd血清型からの異なるHVRを組み合わせたキメラHVR構築物は、細胞侵入および細胞回避を変化させるための異なるHVRにおける細胞結合性および細胞脱標的化ペプチドの挿入と組み合わせて薬理を向上させることを示す。この例において、薬理をモジュレートするため、およびポリエチレングリコールのようなポリマーまたはフルオロフォアのようなイメージング剤のような他の部分の標的化された連結を可能とするために単一のシステインアミノ酸がAd657のHVR1およびHVR5に挿入されている。
【
図16】
図16は、代表的なCRAdおよびペプチドの組み合わせのプラスミドマップを示す。ヘキソン、ならびに、個々のHVRへの細胞標的化ペプチドの挿入が示される。
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図17】
図17は、代表的なCRAdおよびペプチドの組み合わせのプラスミドマップを示す。ヘキソン、ならびに、個々のHVRへの細胞標的化ペプチドの挿入が示される。
【
図18】
図18は、代表的なCRAdおよびペプチドの組み合わせのプラスミドマップを示す。ヘキソン、ならびに、個々のHVRへの細胞標的化ペプチドの挿入が示される。
【
図19】PD-1 PD-L1遮断アッセイ - pAd6/57/6-dl1107-DE3-RSV-hPD-1-HA-Ig-Iを感染させた細胞から融合タンパク質をプロテインAカラム上で精製した。このタンパク質を陽性対照、Promega(Madison、WI、USA)からの抗PD-1モノクローナル抗体と共に滴定した。
【
図20】腫瘍成長評価 - B16-CAR黒色腫細胞をC57BL/6マウスの皮下に注射し、指し示されるベクターの3e11ウイルス粒子を腫瘍に注射した。CRAd+PD-L1デコイはpAd6/57/6-dl1107-ΔE3-RSV-hPD-1-HA-Ig-Iである。CRAd+PD-L1デコイ+免疫刺激剤は、pAd6/57/6-dl1107-ΔE3-RSV-hPD-1-HA-Ig-Iおよび4-1BBLを発現する第2のアデノウイルスを併用注射された腫瘍を表す。
【0045】
発明の詳細な説明
本発明は、PD-1ポリペプチドを含む癌を治療するための方法および組成物を提供する。PD-1ポリペプチドは多価PD-L1結合化合物の形態であってもよい。
【0046】
一部の場合において、多価PD-L1結合化合物は、PD-L1に結合することができる2つまたはそれより多くのアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含む。例えば、2つまたはそれより多くのPD-1ポリペプチド(および/またはPD-L1に結合する能力を有するそれらの断片)を含む多価PD-L1結合化合物は、2つまたはそれより多くのPD-L1ポリペプチドに結合することができる。一部の場合において、多価PD-L1結合化合物は、PD-L1に結合することができる2つまたはそれより多くのアミノ酸セグメントを含む単一のアミノ酸鎖を含むことができる。
【0047】
一部の場合において、多価PD-L1結合化合物は、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメントをそれぞれが含む複数(例えば、2つまたはそれより多く)のアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートを含むことができる。例えば、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメントを含むアミノ酸鎖は、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメントを含む1つまたは複数の他のポリペプチドとポリペプチドコンジュゲート(例えば、複数の会合したアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート)を形成することができるスキャフォールドポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む融合ポリペプチドであることができる。1つまたは複数のPD-1ポリペプチドに融合したスキャフォールドポリペプチドがポリペプチドコンジュゲート中にある場合、ポリペプチドコンジュゲートは2つまたはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含むことができる。
【0048】
1つの実施態様において、PD-1ポリペプチドを含むウイルス粒子は、2つまたはそれより多くのウイルスコートポリペプチドが、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメントを含む1つまたは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、多価PD-L1結合化合物の形態であってもよい。
【0049】
1つの実施態様において、PD-L1結合化合物は、ウイルスのコート上に提示されるPD-1ポリペプチドを発現するように遺伝子改変された組換えウイルスを含む。さらなる実施態様において、組換えウイルスは、組換えウイルス骨格にとって異種の1つまたは複数のポリペプチド、例えば、治療ポリペプチド、標的化分子/ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドと組み合わせてPD-1ポリペプチドを発現するように遺伝子改変されている。
【0050】
1つの実施態様において、PD-L1結合化合物は、ウイルスカプシドタンパク質の1つまたは複数のヘキソン超可変領域(HVR)において改変されている組換えAd(すなわち、Ad657、Ad6/57/6およびこれらのバリアント)を含み、かつ少なくとも1つのPD-1ポリペプチドを含む。1つの実施態様において、組換えAdは、異種ポリペプチド、例えば標的化ポリペプチド、治療ポリペプチドおよび/または抗原を含むようにさらに改変されている。PD-1ポリペプチドならびに異種ポリペプチドはウイルス複製で発現される。ウイルスアセンブリーで、発現されたポリペプチドは、ウイルスカプシド構造の成分としてウイルスの表面上に提示されてもよい。
【0051】
さらなる実施態様において、PD-L1結合化合物は、ウイルス粒子のカプシド上に提示される1つまたは複数の異種ポリペプチドとの融合タンパク質としてPD-1ポリペプチドを発現するように遺伝子改変された組換えAdを含む。異種ポリペプチドは、FXポリペプチド、CARポリペプチド、CD46ポリペプチド、デスモグレインポリペプチド、インテグリンポリペプチド、単鎖抗体ポリペプチド、ラクダ科動物抗体ポリペプチド、カプシドポリペプチド、およびエンベロープ結合性ポリペプチドからのGLAドメインを含んでもよい。
【0052】
一部の場合において、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドを含むアミノ酸鎖は、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドを含む融合ポリペプチドであることができる。1つの実施態様において、PD-1および異種ポリペプチドの融合タンパク質は、宿主細胞中で発現され、精製され、かつAdと混合されて、その結果、融合タンパク質が、Adへの異種ポリペプチドの共有結合を介してAdの表面に結合しているようにされてもよい。ウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む第1の融合ポリペプチドがウイルス粒子上の第1のウイルスコートポリペプチドに結合しており、かつウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む第2の融合ポリペプチドがそのウイルス粒子上の第2のウイルスコートポリペプチドに結合している場合、ウイルス粒子は2つまたはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む。
【0053】
一部の場合において、PD-L1結合化合物は、1つまたは複数のウイルスコートポリペプチドが、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含む1つまたは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子を含むことができる。PD-1ポリペプチドは、ウイルス複製およびアセンブリーの間に発現され、かつウイルスのコート上に提示されてもよい。1つの実施態様において、Ad(すなわち、Ad657、Ad6/57/6およびこれらのバリアント)は、治療ポリペプチド、標的化ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドから選択される1つまたは複数の異種ポリペプチドと組み合わせてPD-1ポリペプチドを発現するようにHVR領域において改変されている。PD-1ポリペプチドは、1つまたは複数の異種ポリペプチドとの融合タンパク質として発現されてもよい。例えば、ウイルス粒子は、少なくとも1つのPD-1ポリペプチドおよび異種ポリペプチドをそれぞれが含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖を発現するように遺伝子改変されており、該アミノ酸鎖はウイルスカプシドの成分としてウイルス粒子の表面上に提示され、それにより多価PD-L1結合化合物を形成する。一部の場合において、ウイルス粒子は、PD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖を発現するように遺伝子改変されており、かつ異種ポリペプチドを含む1つまたは複数のアミノ酸鎖を発現するように改変されており、該アミノ酸鎖はウイルスカプシドの成分としてウイルス粒子の表面上に提示され、それにより多価PD-L1結合化合物を形成する。一部の場合において、アミノ酸鎖は、ウイルス粒子の表面上に提示される2つまたはそれより多くのPD-1ポリペプチドおよび異種ポリペプチドを含む。
【0054】
1つの実施態様において、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖は、異種ポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む融合タンパク質であることができる。異種ポリペプチドは、Adの表面に結合してウイルス粒子をコートしていてもよい。1つの実施態様において、融合タンパク質は、宿主細胞中で発現され、精製され、かつAdと混合され、その結果、融合タンパク質はAdウイルス粒子の表面をコートし、それにより多価PD-L1結合化合物を形成する。
【0055】
一部の場合において、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物は、(例えば、単量体PD-1ポリペプチドと比較して)PD-L1に対する増加した親和性を有することができる。一部の場合において、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物は、(例えば、単量体PD-1ポリペプチドと比較して)PD-L1に対する増加したアビディティを有することができる。
【0056】
本発明は、PD-1ポリペプチドおよび多価PD-L1結合化合物を含む組成物を作製するための方法および材料、ならびに、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードする核酸分子を含む組換えウイルスを作製するための方法および材料を提供する。
【0057】
本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物(例えば、1つもしくは2つもしくはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む融合ポリペプチド、または1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つもしくはそれより多くのアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート、またはウイルスコートタンパク質が、1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含む、ウイルス粒子、または1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドがウイルス粒子の表面に結合しているウイルス粒子)は、任意の適切な数の、PD-L1に結合することができるアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはPD-L1に結合することができるそれらの断片)を含むことができる。
【0058】
一部の場合において、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物は、PD-L1に結合することができる2つまたはそれより多く(例えば、2、3、4、5、6、240、720、またはそれより多く)のアミノ酸セグメントを含むことができる。一部の場合において、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物は、PD-L1に結合することができる約2~約720個のアミノ酸セグメントを含むことができる。例えば、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物が、PD-L1に結合することができる2つまたはそれより多くのアミノ酸セグメントを含む単一のアミノ酸鎖である場合、多価PD-L1結合化合物は、約2、3、4、5、6、7、または8つのPD-1ポリペプチド(またはPD-L1に結合するそれらの断片)を含むことができる。例えば、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物が、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメントをそれぞれが含む複数のアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートである場合、多価PD-L1結合化合物は、約2、3、4、5、6、7、または8つのPD-1ポリペプチド(またはPD-L1に結合するそれらの断片)を含むことができる。
【0059】
例えば、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物が、2つまたはそれより多くのウイルスコートポリペプチド(例えばカプシドポリペプチド)が、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメントを含む1つまたは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されたウイルス粒子である場合、多価PD-L1結合化合物は、約240個のPD-1ポリペプチド~約720個のPD-1ポリペプチド(またはPD-L1に結合するそれらの断片)を含むことができる。本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物が、PD-L1に結合することができる2つのアミノ酸セグメント(または1つもしくは複数のウイルスコートポリペプチドが、PD-L1に結合することができる2つもしくはそれより多くのアミノ酸セグメントを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子)を含む場合、多価PD-L1結合化合物は二量体または二価PD-L1結合化合物と称することができる。本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物が、PD-L1に結合することができる3つのアミノ酸セグメントを含む場合、多価PD-L1結合化合物は三量体または三価PD-L1結合化合物と称することができる。本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物が、PD-L1に結合することができる4つのアミノ酸セグメントを含む場合、多価PD-L1結合化合物は四量体または四価PD-L1結合化合物と称することができる。
【0060】
本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物は、PD-L1に結合することができる任意の適切なアミノ酸セグメント(複数可)を含むことができる。
【0061】
1つの実施態様において、PD-L1に結合することができるアミノ酸セグメントはPD-1ポリペプチドを含むことができる。一部の場合において、PD-L1に結合することができるアミノ酸セグメントは、断片がPD-L1に結合する能力を保持する限り、PD-1ポリペプチドの任意の断片を含むことができる。一部の場合において、PD-1ポリペプチドはsPD-1ポリペプチドであることができる。PD-1ポリペプチドは任意の適切な動物からのものであることができる。一部の場合において、PD-1ポリペプチドは哺乳動物からのものであることができる。例えば、PD-1ポリペプチドはhPD-1ポリペプチドであることができる。例えば、PD-1ポリペプチドはmPD-1ポリペプチドであることができる。PD-1ポリペプチドは任意の適切なPD-1ポリペプチド配列を含むことができる。一部の場合において、PD-1ポリペプチドは(例えば、PD-L1とのより高い親和性相互作用のために)改変されることができる。例示的なPD-1ポリペプチド配列(およびそのようなポリペプチドをコードする核酸)は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)データベースにおいて、例えば、アクセッション番号AI928135(バージョンAI928135.1)、アクセッション番号AY238517(バージョンAY238517.1)、およびアクセッション番号CR988122(バージョンCR988122.1)、アクセッション番号U64863(バージョンU64863.1)、アクセッション番号NM_008798(バージョンNM_008798.2)、およびアクセッション番号NP_032824(バージョンNP_032824.1)で記載された通りであり得る。一部の場合において、PD-1ポリペプチドは配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む。一部の場合において、PD-1ポリペプチドは配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む。
【0062】
一部の場合において、PD-L1に結合することができるアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)は、バリアント配列と称されることがある、野生型PD-1ポリペプチド配列(例えば、配列番号5または配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する野生型PD-1ポリペプチド)から逸脱した配列を有することができる。例えば、PD-1ポリペプチド配列(および/またはPD-L1に結合する能力を有するそれらの断片)は、配列番号5または配列番号6に対して少なくとも80%の配列同一性を有することができる。一部の実施態様において、PD-L1に結合することができるアミノ酸セグメントは、配列番号5または配列番号6に対して少なくとも85%の配列同一性、90%の配列同一性、95%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を有することができる。配列同一性パーセントは、アライメントされたポリペプチド配列中のマッチした位置の数を決定し、マッチした位置の数を、アライメントされたアミノ酸の総数でそれぞれ割り、100を掛けることにより算出される。マッチした位置は、同一のアミノ酸が、アライメントされた配列中の同じ位置において生じる位置を指す。アライメントされたアミノ酸の総数は、第2の配列をアライメントするために必要なPD-1ポリペプチド中のアミノ酸の最小数を指し、非PD-1配列、例えばPD-1ポリペプチドに融合した非PD-1配列(例えば、PD-1ポリペプチドに融合したIgGポリペプチド、ストレプトアビジンポリペプチド、シグマ-1、またはFXポリペプチドのGLAドメインからのアミノ酸)とのアライメント(例えば、強制的なアライメント)を含まない。アライメントされたアミノ酸の総数は、PD-1配列全体に対応してもよく、または全長PD-1配列の断片に対応してもよい。配列は、ワールドワイドウェブ上のncbi.nlm.nih.govにおいて利用可能な、BLAST(basic local alignment search tool)プログラムに組み込まれた、Altschul et al. (Nucleic Acid Res.、 25:3389~3402頁(1997))により記載されたアルゴリズムを使用してアライメントすることができる。Altschul et al.のアルゴリズムを使用してPD-1ポリペプチドおよび任意の他の配列またはその部分の間の配列同一性パーセントを決定するためにBLASTサーチまたはアライメントを行うことができる。BLASTNは、核酸配列の間でアライメントを行い、同一性を比較するために使用されるプログラムであり、BLASTPは、アミノ酸配列の間でアライメントを行い、同一性を比較するために使用されるプログラムである。PD-1配列および別の配列の間の同一性パーセントを算出するためにBLASTプログラムを利用する場合、各々のプログラムのデフォルトのパラメーターが使用される。
【0063】
一部の場合において、多価PD-L1結合化合物は、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)をそれぞれが含む複数のアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートを含むことができる。本明細書において使用される場合、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメントをそれぞれが含む複数のアミノ酸鎖は、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメントをそれぞれが含む2つまたはそれより多く(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれより多く)のアミノ酸鎖を指す。例えば、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖は、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメントを含む1つまたは複数の他のポリペプチドとポリペプチドコンジュゲート(例えば、複数の会合したアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート)を形成することができるスキャフォールドポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む融合ポリペプチドであることができる。1つまたは複数のPD-1ポリペプチドに融合したスキャフォールドポリペプチドがポリペプチドコンジュゲート中にある場合、ポリペプチドコンジュゲートは2つまたはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含むことができる。一部の場合において、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む複数のアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートは、ホモマーPD-1ポリペプチドであることができる(例えば、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つまたはそれより多くの同じアミノ酸鎖を含むことができる)。一部の場合において、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む複数のアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートは、ヘテロマーPD-1ポリペプチドであることができる(例えば、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つまたはそれより多くの異なるアミノ酸鎖を含むことができる)。
【0064】
本明細書に記載のポリペプチドコンジュゲート(例えば、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む複数のアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート)中に存在するPD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含むアミノ酸鎖は、任意の適切なスキャフォールドポリペプチドに融合したPD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメントを含むことができる。例えば、本明細書に記載のポリペプチドコンジュゲート中に存在する1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖は、任意の適切なスキャフォールドポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む融合ポリペプチドであることができる。一部の場合において、スキャフォールドポリペプチドは、ポリペプチドコンジュゲート(例えば、複数の会合したアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート)を形成する能力を有することができる。例えば、スキャフォールドポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖は、2つまたはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含むポリペプチドコンジュゲートを形成することができる。スキャフォールドポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖がポリペプチドコンジュゲートを形成する場合、2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖は(例えば、共有結合またはイオン結合により)結合することができる。スキャフォールドポリペプチドは、別のポリペプチドとポリペプチドコンジュゲートを形成することができる任意の適切なポリペプチドであることができる。スキャフォールドポリペプチドは、ポリペプチドコンジュゲートを天然に形成することができ、またはポリペプチドコンジュゲートを形成するように操作されることができる。ポリペプチドコンジュゲートを形成することができるスキャフォールドポリペプチドの例は、非限定的に、Igポリペプチド(例えば、IgGポリペプチド、例えばIgG2ポリペプチド)、シグマ-1ポリペプチド、およびストレプトアビジンポリペプチドを含むことができる。
【0065】
本明細書に記載のポリペプチドコンジュゲート(例えば、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む複数のアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート)中に存在することができるPD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含むアミノ酸鎖は任意の適切なアミノ酸配列を含むことができる。例えば、スキャフォールドポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖は任意の適切なアミノ酸配列を含むことができる。1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびスキャフォールドポリペプチドを含むアミノ酸鎖の例示的なアミノ酸配列としては、非限定的に、配列番号7、10、11、12、13、16、17、18、19、20、21、24、25、26、または27に記載のアミノ酸配列が挙げられる。一部の場合において、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびスキャフォールドポリペプチドを含むアミノ酸鎖のアミノ酸配列は、バリアント配列と称されることがある、配列番号7、10、11、12、13、16、17、18、19、20、21、24、25、26、または27に記載のアミノ酸配列のうちの1つから逸脱した配列を有することができる。例えば、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびスキャフォールドポリペプチドを含有する融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号7、10、11、12、13、16、17、18、19、20、21、24、25、26、または27に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列同一性を有することができる。一部の実施態様において、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびスキャフォールドポリペプチドを含有する融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号7、10、11、12、13、16、17、18、19、20、21、24、25、26、または27に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性、90%の配列同一性、95%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を有することができる。配列同一性パーセントは、アライメントされたポリペプチド配列中のマッチした位置の数を決定し、マッチした位置の数を、アライメントされたアミノ酸の総数でそれぞれ割り、100を掛けることにより算出される。マッチした位置は、同一のアミノ酸が、アライメントされた配列中の同じ位置において生じる位置を指す。配列は、ワールドワイドウェブ上のncbi.nlm.nih.govにおいて利用可能な、BLAST(basic local alignment search tool)プログラムに組み込まれた、Altschul et al. (Nucleic Acid Res.、 25:3389~3402頁(1997))により記載されたアルゴリズムを使用してアライメントすることができる。Altschul et al.のアルゴリズムを使用してポリペプチドおよび任意の他の配列またはその部分の間の配列同一性パーセントを決定するためにBLASTサーチまたはアライメントを行うことができる。BLASTNは、核酸配列の間でアライメントを行い、同一性を比較するために使用されるプログラムであり、BLASTPは、アミノ酸配列の間でアライメントを行い、同一性を比較するために使用されるプログラムである。ポリペプチド配列および別の配列の間の同一性パーセントを算出するためにBLASTプログラムを利用する場合、各々のプログラムのデフォルトのパラメーターが使用される。一部の場合において、本明細書に記載のポリペプチドコンジュゲート(例えば、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む複数のアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート)中に存在することができる1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖は、例7に記載の通りであることができる。
【0066】
一部の場合において、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含むアミノ酸鎖は、2つの会合したアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートを形成することができるスキャフォールドポリペプチド(例えば、IgGポリペプチド、例えばIgG2ポリペプチド)に融合していることができる。例えば、IgG2ポリペプチドに融合した1つのPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つのアミノ酸鎖は、2つのPD-1ポリペプチドを含むポリペプチドコンジュゲートを形成することができる。IgG2ポリペプチドに融合した1つのPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖の例示的なアミノ酸配列としては、非限定的に、配列番号7、配列番号13、または配列番号21に記載のアミノ酸配列が挙げられる。
【0067】
一部の場合において、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含むアミノ酸鎖は、3つの会合したアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートを形成することができるスキャフォールドポリペプチド(例えば、シグマ-1ポリペプチド)に融合していることができる。例えば、シグマ-1ポリペプチドに融合した1つのPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む3つのアミノ酸鎖は、3つのPD-1ポリペプチドを含むポリペプチドコンジュゲートを形成することができる。シグマ-1ポリペプチドに融合した1つのPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖の例示的なアミノ酸配列としては、非限定的に、配列番号10、配列番号16、または配列番号24に記載のアミノ酸配列が挙げられる。
【0068】
一部の場合において、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含むアミノ酸鎖は、4つの会合したアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートを形成することができるスキャフォールドポリペプチド(例えば、ストレプトアビジンポリペプチド)に融合していることができる。例えば、ストレプトアビジンポリペプチドに融合した1つのPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む4つのアミノ酸鎖は、4つのPD-1ポリペプチドを含むポリペプチドコンジュゲートを形成することができる。ストレプトアビジンポリペプチドに融合した1つのPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖の例示的なアミノ酸配列としては、非限定的に、配列番号11または配列番号17に記載のアミノ酸配列が挙げられる。
【0069】
一部の場合において、多価PD-L1結合化合物は、2つまたはそれより多くのウイルスコートポリペプチドが、PD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含む1つまたは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子を含むことができる。例えば、ウイルス粒子は、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドをそれぞれが含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖を用いてウイルス粒子をコーティングすることにより改変されることができる。ウイルス粒子をコートして多価PD-L1結合化合物(例えば、2つまたはそれより多くのウイルスコートポリペプチドが、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む1つまたは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子)を生成するために使用することができるPD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含むアミノ酸鎖は、ウイルスコートポリペプチドに結合することができる任意の適切なポリペプチドに融合したPD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメントを含むことができる。一部の場合において、ウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドは1つまたは複数のウイルスコートポリペプチドに共有結合することができる。一部の場合において、ウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドは、高い親和性(例えば、約0.25μM~約100μM)でウイルスコートポリペプチドに結合することができる。ウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドは、ウイルスコートポリペプチドに天然に結合することができ、またはウイルスコートポリペプチドに結合するように操作されている。ウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドは任意の適切なウイルスコートポリペプチドに結合することができる。
【0070】
ウイルスコートポリペプチドの例としては、非限定的に、カプシドポリペプチド(例えば、ヘキソンポリペプチド、ファイバーポリペプチド、ペントンポリペプチド)、およびアデノウイルスIXポリペプチドが挙げられる。ウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドは、任意の適切な種類のウイルス粒子上に存在するウイルスコートポリペプチドに結合することができる。ウイルス粒子は複製能を有する(RC:replication competent)ウイルス粒子(例えば、ヘルパー依存性(HD)ウイルス粒子および単一サイクル(SC:single-cycle)ウイルス粒子)であることができ、ウイルス粒子は複製欠損(RD:replication-defective)ウイルス粒子であることができ、またはウイルスは制限増殖型ウイルス粒子(CRAd:conditionally replicating virus particle)であることができる。一部の場合において、ウイルス粒子は腫瘍溶解性ウイルス粒子であることができる。
【0071】
一部の場合において、ウイルス粒子はウイルスベクターであることができる。1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドを含む1つまたは複数のアミノ酸鎖でコートすることができるウイルス粒子の例としては、非限定的に、Ad、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、エンテロウイルス、レオウイルス、ポックスウイルス、麻疹ウイルス、およびヘルペスウイルスが挙げられる。
【0072】
ウイルスコートポリペプチド上に存在してもよいポリペプチドの例としては、非限定的に、GLAドメインポリペプチド(例えば、FXポリペプチドからのGLAドメイン)、CARポリペプチド、CD46ポリペプチド、デスモグレインポリペプチド、インテグリンポリペプチド、単鎖抗体ポリペプチド、ラクダ科動物抗体ポリペプチド、カプシドポリペプチド、およびエンベロープ結合性ポリペプチドが挙げられる。
【0073】
ウイルス粒子をコートして多価PD-L1結合化合物(例えば、1つまたは2つまたはそれより多くのウイルスコートポリペプチドが、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む1つまたは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子)を生成するために使用することができるPD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含むアミノ酸鎖は任意の適切なアミノ酸配列を含むことができる。例えば、ウイルス粒子は、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに共有結合することができるポリペプチドをそれぞれが含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖を含み、その結果、アミノ酸鎖がウイルス粒子をコートする、組成物と接触させることができる。一部の場合において、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドを含むアミノ酸鎖は、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドを含む融合ポリペプチドであることができる。1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドを含むアミノ酸鎖は任意の適切なアミノ酸配列を含むことができる。1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドを含むアミノ酸鎖の例示的なアミノ酸配列としては、非限定的に、配列番号8、9、14、15、22、または23に記載のアミノ酸配列が挙げられる。一部の場合において、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドを含むアミノ酸鎖のアミノ酸配列は、バリアント配列と称されることがある、配列番号8、9、14、15、22、または23に記載のアミノ酸配列のうちの1つから逸脱した配列を有することができる。例えば、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドを含有する融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号8、9、14、15、22、または23に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列同一性を有することができる。一部の実施態様において、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドを含有する融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号8、9、14、15、22、または23に記載のアミノ酸配列のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性、90%の配列同一性、95%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を有することができる。配列同一性パーセントは、アライメントされたポリペプチド配列中のマッチした位置の数を決定し、マッチした位置の数を、アライメントされたアミノ酸の総数でそれぞれ割り、100を掛けることにより算出される。マッチした位置は、同一のアミノ酸が、アライメントされた配列中の同じ位置において生じる位置を指す。配列は、BLAST(basic local alignment search tool)プログラムに組み込まれた、Altschul et al. (Nucleic Acid Res.、 25:3389~3402頁(1997))により記載されたアルゴリズムを使用してアライメントすることができる。一部の場合において、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドを含むアミノ酸鎖は例に記載の通りであることができる。
【0074】
一部の場合において、ウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチド(例えば、FXポリペプチドのGLAドメイン)に融合したPD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメント(例えば、PD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含むアミノ酸鎖は、(例えば、1つまたは複数のウイルスコートポリペプチドを改変するために)ウイルス粒子をコートして、ウイルス粒子の表面上に存在する1つまたは複数のウイルスコートポリペプチドに結合したPD-L1に結合することができる1つまたは複数のアミノ酸セグメントを含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖を有するコートされたウイルス粒子を形成するために使用することができる。
【0075】
例えば、FXポリペプチドのGLAドメインに融合した1つのPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む1つまたは複数のアミノ酸鎖は、2つもしくはそれより多くのウイルスヘキソンポリペプチドおよび/または他のウイルスコートタンパク質に結合して、FXポリペプチドのGLAドメインに融合した1つのPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖でウイルス粒子をコートすることができる。ウイルス粒子がAdである場合、240個のヘキソンポリペプチドホモ三量体(例えば、3つのヘキソンポリペプチドを含むポリペプチドコンジュゲート)がウイルス粒子上に存在することができる(例えば、Chen et al.、Human gene therapy、 21:739~749頁(2010)を参照)。一部の場合において、1つのPD-1ポリペプチドおよびFXポリペプチドのGLAドメインを含む融合ポリペプチドは、Ad粒子をコートして、約240個のPD-1ポリペプチドを含む多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができる。例えば、FXポリペプチドのGLAドメインに融合した1つのPD-1ポリペプチドを含む融合ポリペプチドがAdウイルス粒子上の各ヘキソンポリペプチド三量体に結合している場合、ウイルス粒子は240個のPD-1ポリペプチドを含む。一部の場合において、1つのPD-1ポリペプチドおよびFXポリペプチドのGLAドメインを含む融合ポリペプチドは、Ad粒子をコートして、約240個のPD-1ポリペプチド~約720個のPD-1ポリペプチドを含んでもよい多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができる。例えば、FXポリペプチドのGLAドメインに融合した1つのPD-1ポリペプチドを含む融合ポリペプチドがAdウイルス粒子上の各ヘキソンポリペプチドに結合している場合、ウイルス粒子は720個のPD-1ポリペプチドを含む。
【0076】
一部の場合において、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物(例えば、2つもしくはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む融合ポリペプチド、または1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む1つもしくは2つもしくはそれより多くのアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート、または2つもしくはそれより多くのウイルスコートポリペプチドが、1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含む、ウイルス粒子、または1つもしくは複数のウイルスコートポリペプチドが、2つもしくはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含む、ウイルス粒子)はまた、1つまたは複数の追加の分子/ポリペプチドを含むことができる。
【0077】
本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物中に含まれることができる分子の例としては、非限定的に、標的化分子(例えば、標的化ポリペプチドおよび標的化核酸配列)、抗原、治療用分子、ならびに検出可能なポリペプチドが挙げられる。一部の場合において、多価PD-L1結合化合物が、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよび/またはPD-L1に結合する能力を有するPD-1ポリペプチド断片をそれぞれが含む複数のアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートであり、かつポリペプチドコンジュゲートが1つまたは複数の追加の分子を含む場合、1つまたは複数の追加の分子は、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよび/またはポリペプチドコンジュゲート中に存在するPD-L1に結合する能力を有するPD-1ポリペプチド断片を含む少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、またはそれより多く)のアミノ酸鎖中に含まれることができる。例えば、多価PD-L1結合化合物が、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよび/またはPD-L1に結合する能力を有するPD-1ポリペプチド断片をそれぞれが含む複数のアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートであり、かつポリペプチドコンジュゲートが1つまたは複数の追加の分子を含む場合、1つまたは複数の追加の分子は、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよび/またはポリペプチドコンジュゲート中に存在するPD-L1に結合する能力を有するPD-1ポリペプチド断片を含む各アミノ酸鎖中に含まれることができる。一部の場合において、多価PD-L1結合化合物が、2つもしくはそれより多くのウイルスコートポリペプチドが、1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドおよび/もしくはPD-L1に結合する能力を有するPD-1ポリペプチド断片を含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子(または1つもしくは複数のウイルスコートポリペプチドが、1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドおよび/もしくはPD-L1に結合する能力を有するPD-1ポリペプチド断片を含む2つもしくはそれより多くのアミノ酸セグメントを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含む、ウイルス粒子)である場合、1つまたは複数の追加の分子は、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよび/またはウイルス粒子上のウイルスコートポリペプチドを改変するために使用されるPD-1ポリペプチド断片を含む少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、またはそれより多く)のアミノ酸鎖中に含まれることができる。例えば、多価PD-L1結合化合物が、2つもしくはそれより多くのウイルスコートポリペプチドが、1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドおよび/もしくはPD-L1に結合する能力を有するPD-1ポリペプチド断片を含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子(または1つもしくは複数のウイルスコートポリペプチドが、1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドおよび/もしくはPD-L1に結合する能力を有するPD-1ポリペプチド断片を含む2つもしくはそれより多くのアミノ酸セグメントを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子)である場合、1つまたは複数の追加の分子は、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよび/またはウイルス粒子上のウイルスコートポリペプチドを改変するために使用されるPD-1ポリペプチド断片を含む各アミノ酸鎖中に含まれることができる。
【0078】
本明細書に記載のPD-L1結合化合物が1つまたは複数の標的化分子(例えば、標的化ポリペプチドおよび標的化核酸配列)も含む場合、標的化分子は任意の適切な標的化分子であることができる。一部の場合において、標的化分子はポリペプチド(例えば、標的化ポリペプチド)であることができる。一部の場合において、標的化分子は核酸配列(例えば、標的化核酸配列)であることができる。一部の場合において、標的化分子はT細胞をPD-L1陽性細胞(例えば、PD-L1陽性癌細胞)に誘引することができる。例えば、標的化分子を含む多価PD-L1結合化合物がPD-L1陽性細胞上のPD-L1に結合している場合、多価PD-L1結合化合物上の標的化分子はT細胞をPD-L1陽性細胞に誘引することができる。例えば、多価PD-L1結合化合物が標的化分子を含む場合、多価PD-L1結合化合物上の標的化分子は多価PD-L1結合化合物を哺乳動物内の標的位置(例えば、標的組織)に方向付けることができる。本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物中に含まれることができる標的化分子の例としては、ウイルスポリペプチド、抗原(例えば、ペプチド抗原)、miRNA標的化配列(例えば、組織特異的miRNA標的化配列)、抗体、増殖因子、および炭水化物が挙げられる。標的化ポリペプチドがウイルスポリペプチドである場合、ウイルスポリペプチドは任意の適切なウイルス(例えば、麻疹ウイルス(MV)、イヌジステンパーウイルス(CDV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、ジカウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびヒト内在性レトロウイルス(HERV))に由来することができる。標的化ポリペプチドがウイルスポリペプチドである場合、ウイルスポリペプチドは任意の適切なウイルスポリペプチド(例えば、ヘマグルチニン(H)ポリペプチド、例えば脱標的化Hポリペプチド、融合(F)ポリペプチド、ウイルス糖タンパク質(G)ポリペプチド、エンベロープ(env;例えば、HERV env)、シンシチン-1、およびシンシチン-2であることができる。一部の場合において、ウイルスポリペプチドはMV Hポリペプチドであることができる。一部の場合において、ウイルスポリペプチドはMV Fポリペプチドであることができる。一部の場合において、ウイルスポリペプチドはVSV Gポリペプチドであることができる。
【0079】
本明細書に記載のPD-L1結合化合物が1つまたは複数の治療用分子も含む場合、治療用分子は任意の適切な治療用分子であることができる。一部の場合において、治療用分子は治療ポリペプチドであることができる。一部の場合において、治療用分子は1つまたは複数のT細胞のPD-L1不活性化を低減させまたは排除することができる。一部の場合において、治療用分子は1つまたは複数の医薬剤(例えば、抗癌薬物)を活性化および/または蓄積させることができる。本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物中に含まれることができる治療用分子の例としては、4-1BBリガンド(4-1BBL)ポリペプチド、OX40リガンド(OX40L)ポリペプチド、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)ポリペプチド、抗PD-1抗体、抗PD-1抗体をコードする核酸、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、およびヨード共輸送体(iodide symporter)が挙げられる。一部の場合において、治療用分子は治療用抗体であることができる。治療用抗体は、GITRを標的化するアゴニスト抗体であってもよい。GITRを通じたシグナル伝達は、T細胞増殖およびエフェクター機能を増強し、活性化誘導性細胞死からT細胞を保護し、次いでそれはメモリーT細胞の頻度を増加させる。GITRアゴニストを本発明のPD-L1結合化合物と組み合わせることは強い相乗作用を実証し得る。
【0080】
本明細書に記載のPD-L1結合化合物が1つまたは複数の検出可能なポリペプチドも含む場合、検出可能なポリペプチドは任意の適切な検出可能なポリペプチドであることができる。一部の場合において、検出可能なポリペプチドは、1つまたは複数の本明細書に記載のPD-L1結合化合物の位置を決定するために(例えば、臨床医により)検出されることができる。一部の場合において、検出可能なポリペプチドは、1つまたは複数の本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物の持続をモニターするために(例えば、臨床医により)検出されることができる。本明細書に記載のPD-L1結合化合物中に含まれることができる検出可能なポリペプチドの例は、蛍光ポリペプチド(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼポリペプチド、ペプチド標識、およびナトリウム・ヨード共輸送体(sodium iodide symporter)から選択される。
【0081】
本書はまた、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物(例えば、2つもしくはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む融合ポリペプチド、または1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つもしくはそれより多くのアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート、または1つもしくは2つもしくはそれより多くのウイルスコートポリペプチドが、1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子、または1つもしくは複数のウイルスコートポリペプチドが、2つもしくはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子)を生成するために使用することができる本明細書に記載のアミノ酸鎖(例えば、スキャフォールドポリペプチドに融合した1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖、またはウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドに融合した1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖)をコードすることができる核酸(例えば、核酸ベクター)を提供する。一部の場合において、核酸は、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートを生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードすることができる。例えば、核酸は、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびスキャフォールドポリペプチドを含むアミノ鎖をコードすることができる。一部の場合において、核酸は、1つまたは複数のウイルスコートポリペプチドが、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む1つまたは複数のアミノ酸鎖を含む、ウイルス粒子を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードすることができる。例えば、核酸は、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドおよびウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドを含むアミノ鎖をコードすることができる。
【0082】
本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができる本明細書に記載のアミノ酸鎖(例えば、スキャフォールドポリペプチドに融合した1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖、またはウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドに融合した1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖)をコードする核酸(例えば、核酸ベクター)は、DNA(例えば、DNA構築物)、RNA(例えば、mRNA)、またはこれらの組み合わせから選択される核酸であることができる。一部の場合において、本明細書に記載のアミノ酸鎖をコードする核酸はベクター(例えば、発現ベクターまたはウイルスベクター)であることができる。ベクターはRCベクター(例えば、HDベクターおよびSCベクター)であることができ、またはベクターはRDベクターであることができる。ベクターがウイルスベクターである場合、ウイルスベクターは任意の適切な種類のウイルスに由来することができる。一部の場合において、ウイルスベクターは腫瘍溶解性ウイルスに由来することができる。ウイルスベクターが由来することができるウイルスの例としては、非限定的に、Ad、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、エンテロウイルス、レオウイルス、ポックスウイルス、麻疹ウイルス、およびヘルペスウイルスが挙げられる。
【0083】
一部の場合において、本明細書に記載のアミノ酸鎖をコードする核酸はまた、(例えば、アミノ酸鎖の発現を調節するための)1つまたは複数の調節エレメントを含むことができる。本明細書に記載のアミノ酸鎖をコードする核酸中に含まれることができる調節エレメントの例としては、非限定的に、プロモーター(例えば、構成的プロモーター、組織/細胞特異的プロモーター、および誘導性プロモーター、例えば化学的に活性化されるプロモーターおよび光活性化プロモーター)、エンハンサー、その発現がアポトーシス、ネクローシス、および細胞死の他の形態を誘導することができる核酸配列(例えば、自殺遺伝子)が挙げられる。
【0084】
一部の場合において、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物(例えば、2つもしくはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む融合ポリペプチド、または1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つもしくはそれより多くのアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート、または2つもしくはそれより多くのウイルスコートポリペプチドが、1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子、または1つもしくは複数のウイルスコートポリペプチドが、2つもしくはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子)を生成するために使用することができる本明細書に記載のアミノ酸鎖(例えば、スキャフォールドポリペプチドに融合した1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖、またはウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドに融合した1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖)をコードする核酸(例えば、核酸ベクター)は、2つまたはそれより多く(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多く)の本明細書に記載のアミノ酸鎖を生成することができる。
【0085】
一部の場合において、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物(例えば、2つもしくはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む融合ポリペプチド、または1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つもしくはそれより多くのアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート、または2つもしくはそれより多くのウイルスコートポリペプチドが、1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子、または1つもしくは複数のウイルスコートポリペプチドが、2つもしくはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子)を生成するために使用することができる本明細書に記載のアミノ酸鎖(例えば、スキャフォールドポリペプチドに融合した1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖、またはウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドに融合した1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖)をコードする核酸(例えば、核酸ベクター)は、1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多く)の本明細書に記載のアミノ酸鎖を連続的に生成することができる。
【0086】
一部の場合において、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物(例えば、2つもしくはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む融合ポリペプチド、または1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つもしくはそれより多くのアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲート、または2つもしくはそれより多くのウイルスコートポリペプチドが、1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子、または1つもしくは複数のウイルスコートポリペプチドが、2つもしくはそれより多くのPD-1ポリペプチドを含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖を含むように改変されている、ウイルス粒子)を生成するために使用することができる本明細書に記載のアミノ酸鎖(例えば、スキャフォールドポリペプチドに融合した1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖、またはウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドに融合した1つもしくは複数のPD-1ポリペプチドを含むアミノ酸鎖)をコードする核酸(例えば、核酸ベクター)は、核酸の持続の継続期間にわたり(例えば、核酸が分解されるまで)1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多く)の本明細書に記載のアミノ酸鎖を生成することができる。
【0087】
一部の場合において、本明細書に記載の核酸によりコードされるアミノ酸鎖は、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができる。例えば、スキャフォールドポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖は、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートにアセンブル(例えば、自己アセンブル)して、本明細書に記載のポリペプチドコンジュゲートを生成することができる。スキャフォールドポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖が、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む2つまたはそれより多くのアミノ酸鎖を含むポリペプチドコンジュゲートにアセンブルしてポリペプチドコンジュゲートを生成する場合、アミノ酸鎖はin vivoまたはin vitroでアセンブルすることができる。例えば、ウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む1つまたは複数のアミノ酸鎖は、ウイルス粒子の表面上に存在する2つまたはそれより多くのウイルスコートポリペプチドに結合してコートし、本明細書に記載のコートされたウイルス粒子を生成することができる。ウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドに融合した1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む1つまたは複数のアミノ酸鎖がウイルス粒子をコートして、コートされたウイルス粒子を生成する場合、ウイルス粒子はin vivoまたはin vitroでコートされることができる。
【0088】
一部の場合において、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物は精製されることができる。「精製された」ポリペプチド、タンパク質または核酸は、成分の混合物中で主成分、例えば、30%もしくはより高い、40%もしくはより高い、50%もしくはより高い、60%もしくはより高い、70%もしくはより高い、80%もしくはより高い、90%もしくはより高い、95%もしくはより高い、または99%もしくはより高い重量を構成する、ポリペプチドまたは核酸を指す。例えば、精製された多価PD-L1結合化合物は、1つまたは複数の多価PD-L1結合化合物を含有する組成物の約30%またはより高い重量を構成することができる。ポリペプチドは、アフィニティークロマトグラフィーおよび免疫吸着アフィニティーカラムが挙げられるがこれらに限定されない方法により精製されてもよい。例えば、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードする精製された核酸は、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができる1つまたは複数のアミノ酸鎖を含有する組成物の約30%またはより高い重量を構成することができる。核酸は、フェノール-クロロホルム抽出およびカラム精製(例えば、ミニカラム精製)が挙げられるがこれらに限定されない方法により精製されてもよい。
【0089】
代替的に、本発明はまた、PD-1に結合することができる2つまたはそれより多くのアミノ酸セグメント(例えば、PD-L1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含む多価PD-1結合化合物、ならびに、PD-1に結合することができる2つまたはそれより多くのアミノ酸セグメント(例えば、PD-L1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含む多価PD-1結合化合物の作製および使用方法を提供する。一部の場合において、多価PD-1結合化合物は、PD-1に結合することができる2つまたはそれより多くのアミノ酸セグメント(例えば、PD-L1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片)を含むことができる。例えば、2つまたはそれより多くのPD-L1ポリペプチド(および/またはPD-1に結合する能力を有するそれらの断片)を含む多価PD-1結合化合物は、2つまたはそれより多くのPD-1ポリペプチドに結合することができる。一部の場合において、多価PD-1結合化合物は、PD-1に結合することができる2つまたはそれより多くのアミノ酸セグメントを含む単一のアミノ酸鎖を含むことができる。
【0090】
ここでは、癌を治療する、例えば、1つまたは複数の本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を含有する組成物を投与するための方法および材料もまた提供される。1つまたは複数の多価PD-L1結合化合物は、治療ポリペプチドと組み合わせて対象に投与されてもよい。1つの実施態様において、多価PD-L1結合化合物は、癌を治療するために対象に投与される治療ポリペプチドを含む。別の実施態様において、多価PD-L1結合化合物は、癌を治療するために対象に治療ポリペプチドを発現するAdと併用投与される。
【0091】
本発明は、2つまたはそれより多くのウイルスコートポリペプチドが、1つまたは複数のPD-1ポリペプチドを含む1つまたは複数のアミノ酸鎖を含む、ウイルス粒子を包含する。ウイルス粒子は、ウイルス粒子のカプシドタンパク質中に、PD-1融合タンパク質を含めて、PD-1ポリペプチドを含む組換えウイルス粒子であってもよい。ウイルス粒子は、PD-1ポリペプチド、例えば、PD-1融合タンパク質でコートされたウイルス粒子であってもよい。
【0092】
1つの実施態様において、PD-L1結合化合物が組換えウイルスを含む場合、ウイルスは組換えAd、例えば、Ad株Ad657またはAd株Ad6/57/6、およびこれらのバリアントである。組換えAdは、制限増殖型Ad(CRAd)となるように改変されてもよい。そのような組換えAdは、米国特許出願第16/690,733号(特許文献1)に記載されており、その開示は、本明細書に全体が記載されたかのように参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0093】
1つの実施態様において、本発明は、1つもしくは2つもしくはそれより多くのPD-1ポリペプチドをそれぞれが含む1つもしくは複数のアミノ酸鎖、または多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードする核酸を含む、組換えの制限増殖型Adウイルス粒子を包含する。
【0094】
一部の場合において、本明細書に記載の組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば組換えAd657)は、1つまたは複数の核酸欠失を含有するAdゲノムを含むことができる。核酸欠失は完全欠失(例えば、ポリペプチドをコードする核酸の欠失)または部分欠失(例えば、ポリペプチドをコードする核酸内の1つもしくは複数のヌクレオチドの欠失)であることができる。核酸欠失は、欠失された核酸によりコードされるポリペプチドの転写および翻訳を低減させまたは排除することができる。一部の場合において、感染性子孫の生成と関連付けられるポリペプチドをコードする核酸は欠失されることができる。本明細書に記載の組換えAd中で欠失および/または改変されることができる核酸の例は、E1(例えば、E1AおよびE1B)、E2、E3、E4、pIIIA、ファイバー、E1Bをコードしてもよく、ウイルスエンハンサーおよびプロモーターを含んでもよい。例えば、本明細書に記載の組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば組換えAd657)は、E1ポリペプチドをコードする核酸内の1つまたは複数のヌクレオチドの欠失を含有するAdゲノムを含むことができる。一部の場合において、本明細書に記載の組換えAdは、E1ポリペプチドをコードする核酸中の1つまたは複数の置換を含むことができる。
【0095】
特定の実施態様において、本明細書に記載の組換えAdは、例えば、配列番号41の核酸を含む、プロバシンプロモーターを含むように改変されており、E1ポリペプチドをコードする核酸中のdl1101欠失を含むように改変されており、本明細書に記載の組換えAdは、E1ポリペプチドをコードする核酸中のdl1107欠失を含むように改変されており、本明細書に記載の組換えAdは、dl1101欠失およびdl1107欠失を含むように改変されている。E1aに対するdl1101改変はp300への結合を予防し、ウイルスをインターフェロン(INF)抑制に対して感受性にする。E1aにおけるdl1107突然変異は、pRBへのその結合を予防して、インタクトなpRB経路を有する細胞においてウイルス複製を遮断する。E1Aポリペプチド、例えば、野生型Ad E1A、ならびにCRAd-657-dl1101、CRAd-657-dl1107およびCRAd-657-dl1101/1107バリアントのN末端アミノ酸配列について
図10を参照。
【0096】
ウイルスを制限増殖型Ad(CRAd)に変換するためのE1タンパク質中の突然変異を伴うAd6、Ad657およびこれらのバリアントにおける突然変異の図式は
図9および
図10に示される。これらは、それぞれp300およびpRBへの結合を遮断するdl1101および/またはdl1107を含む。
【0097】
図10は、野生型Ad、ならびに、AdバリアントE1A dl1101、E1A dl1107およびE1A dl1101/1107におけるE1AのN末端アミノ酸配列を示す。
【0098】
CRAd、Ad-PBを生成するための前立腺特異的プロモータープロバシン-E1 DNA配列(配列番号41)でのAd E1プロモーターの置き換えもまた示される(
図9)。プロバシンプロモーターはアンドロゲン依存性であるため、LNCaPのようなアンドロゲン感受性腫瘍において機能するが、DU145のようなアンドロゲン耐性腫瘍においては機能しない。
【0099】
本発明の複製能を有するAdならびにCRAdは、1つまたは複数の治療ポリペプチドを発現させるために当業者に公知の方法により遺伝子改変される。治療ポリペプチドは、免疫刺激性ポリペプチド、例えば、CD40L、4-1BBL、OX40、GM-CSF、およびこれらの組み合わせであってもよい。
【0100】
さらに、1つの実施態様において、本発明の複製能を有するAdならびにCRAdは、PD-1ポリペプチドおよび1つまたは複数の治療ポリペプチドの両方を融合タンパク質として発現させるために当業者に公知の方法により遺伝子改変される。
【0101】
本発明の複製能を有するAdならびにCRAdは、改変されたファイバー/ノブカプシドタンパク質を含むために当業者に公知の方法により遺伝子改変されてもよい。Adファイバータンパク質は、初期付着ステップを媒介する3つの見かけ上同一のサブユニットの複合体である。ネイティブなAd6ファイバータンパク質(配列番号35)はCARに結合する。
【0102】
本発明のさらなる態様において、異なるファイバータンパク質または親Adにとってネイティブでないファイバー/ノブタンパク質中の改変を有するファイバー改変組換えAdを生成した。異なるAd株からのカプシドタンパク質および異種ファイバー/ノブタンパク質を含む、CRAdを含めて、組換えAd、例えば、異種Ad35ファイバーポリペプチドまたはチンパンジーC68ファイバーポリペプチド、+/-K7ペプチドを含む組換えAdを生成した。
【0103】
キメラAdであるAdF35ファイバーキメラは配列番号36のアミノ酸配列を有し、Ad5およびAd6ファイバータンパク質よりも短く、ウイルスをCD46に再標的化する。
【0104】
配列番号37の配列を有するK7ファイバーを含むファイバー改変組換えAdは、ウイルスを細胞上のヘパリン硫酸プロテオグリカンおよび負電荷に標的化する。
【0105】
配列番号38の配列を含む組換えキメラAdである6/FC68ファイバーは、チンパンジーアデノウイルスC68からのファイバータンパク質を有するキメラAdである。ファイバータンパク質はAd5またはAd6ファイバータンパク質よりも短く、CARに結合する。
【0106】
配列番号39の配列を含む組換えキメラAdである6/FC68-K7ファイバーは、チンパンジーアデノウイルスC68からのファイバータンパク質を有するキメラAdである。ファイバータンパク質はAd5またはAd6ファイバータンパク質よりも短い。6/FC68-K7ファイバーはCARに結合し、ヘパリン硫酸および負電荷に再標的化される。
【0107】
配列番号40の配列を含む組換えキメラAdである6/FC68-HI-K7ファイバーは、チンパンジーアデノウイルスC68からのファイバータンパク質を有するキメラAdである。ファイバータンパク質はAd5またはAd6ファイバータンパク質よりも短い。6/FC68-HI-K7ファイバーはCARに結合し、ヘパリン硫酸および負電荷に再標的化される。
【0108】
一部の場合において、本明細書に記載の組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば組換えAd657)は、1つまたは複数の核酸挿入を含有するAdゲノムを含むことができる。例えば、核酸挿入は、ポリペプチド、例えば治療ポリペプチドをコードする核酸を含むことができる。核酸は、本明細書に記載の組換えAdのゲノム内の任意の適切な位置に挿入されることができる。一部の場合において、ポリペプチドをコードする核酸は、本明細書に記載の組換えAdのゲノムのHVR(例えば、HVR 5ループ)に挿入されることができる。例えば、ポリペプチドをコードする核酸が本明細書に記載の組換えAdのゲノムのHVRに挿入される場合、ポリペプチドをコードする核酸は1つまたは複数のポリペプチドを発現することができ、かつ発現されたポリペプチド(複数可)は組換えAdのカプシドに組み込まれることができる。ポリペプチドをコードする核酸が本明細書に記載の組換えAdのゲノムのHVR領域に挿入される場合、組換えAdは、挿入された核酸によりコードされる約1~約720個のポリペプチドをその表面上に提示することができる。核酸挿入は、任意の適切なポリペプチドをコードする核酸であることができる。一部の場合において、核酸挿入は、治療ポリペプチド、ポリペプチド抗原またはサイトカインをコードすることができる。
【0109】
一般に、Adは、本明細書に記載のCRAd改変を含むように改変されてもよい。
【0110】
1つの実施態様において、組換えAdは、p300への結合を予防し、ウイルスをIFN抑制に対して感受性にする、E1aに対するdl1101改変、およびpRBへのその結合を予防して、インタクトなpRB経路を有する細胞においてウイルス複製を遮断する、E1aにおけるdl1107突然変異、およびE3A欠失を有する制限増殖型Adである。前記CRAdは、ヒト免疫グロブリンに融合したヒトPD-1を発現する。
【0111】
1つの実施態様において、組換えAd(例えば Ad657)は、p300への結合を予防し、ウイルスをIFN抑制に対して感受性にする、E1aに対するdl1101改変、およびE3A欠失を有する制限増殖型Adである。前記CRAdは、ヒト第X因子(GLA)に融合したヒトPD-1をウイルス粒子の表面上に発現し、該CRAdは、細胞の表面上にPD-L1を発現する細胞に再標的化される。
【0112】
1つの実施態様において、組換えAdは、p300への結合を予防し、ウイルスをIFN抑制に対して感受性にする、E1aに対するdl1101改変、およびpRBへのその結合を予防して、インタクトなpRB経路を有する細胞においてウイルス複製を遮断する、E1aにおけるdl1107突然変異、およびE3A欠失を有する制限増殖型Ad(例えばAd657)である。前記CRAdは、ヒト第X因子(GLA)に融合したヒトPD-1をウイルス粒子の表面上に発現し、該CRAdは、細胞表面上にPD-L1を発現する細胞に再標的化される。
【0113】
ウイルス粒子の表面に結合したPD-1ポリペプチドを有するウイルス粒子は、癌(例えば、1つまたは複数のPD-L1陽性癌細胞を含む癌)を有する哺乳動物を治療するために使用することができる。ウイルス粒子は、癌の治療のために有効な量で対象に投与されてもよく、任意選択的に、免疫療法および化学療法剤を含めて、癌療法と組み合わせて投与されてもよい。
【0114】
本発明の一態様において、1つまたは複数の多価PD-L1結合化合物または本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードする核酸、および任意選択的に、1つまたは複数の癌療法を含有する組成物は、癌を有する哺乳動物を治療するために該哺乳動物に投与されることができる。本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物は、PD-L1陽性癌細胞上のPD-L1に結合することができる。PD-1ポリペプチドの結合は、PD-L1機能を中和することができ、かつそれにより、PD-L1陽性細胞(例えば、PD-L1陽性癌細胞)が免疫系を回避することを予防することができかつ/または抗癌剤(例えば、癌免疫療法)がPD-L1陽性細胞をより有効に標的化することを可能とすることができる。本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物をコードする核酸が、本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物をコードする腫瘍溶解性Adベクターである場合、腫瘍溶解性Adは細胞に感染することができ、かつ感染細胞に方向付けられたT細胞応答を駆動することができる。腫瘍溶解性Adは任意の適切な種類の細胞に感染することができる。一部の場合において、腫瘍溶解性AdはPD-L1陽性細胞(例えば、PD-L1陽性癌細胞)に感染することができる。一部の場合において、腫瘍溶解性Adは非分裂細胞(例えば、腎臓細胞)に感染することができる。
【0115】
一部の場合において、1つまたは複数の本明細書に記載のPD-L1結合化合物を含むまたはから本質的になる組成物は、癌(例えば、1つまたは複数のPD-L1陽性癌細胞を含む癌)を有する哺乳動物を治療するために使用することができる。例えば、1つまたは複数の多価PD-L1結合化合物、および任意選択的に、1つまたは複数の癌治療法を含有する組成物は、癌を有する哺乳動物を治療するために該哺乳動物に投与されることができる。
【0116】
代替的に、本明細書に記載の方法および材料は、PD-L1陽性細胞と関連付けられる他の疾患または障害を治療するために使用することができる。一部の場合において、1つまたは複数の本明細書に記載のPD-L1結合化合物を含有する組成物は、感染性疾患(例えば、1つまたは複数のPD-L1陽性マクロファージ、例えば癌浸潤性マクロファージを含む感染性疾患)を有する哺乳動物を治療するために使用することができる。1つまたは複数のPD-L1陽性細胞を含み得る感染性疾患の例としては、非限定的に、HIV、肝炎、およびマラリアが挙げられる。一部の場合において、1つまたは複数の本明細書に記載のPD-L1結合化合物を含有する組成物は、自己免疫疾患(例えば、1つまたは複数のPD-L1陽性マクロファージ、例えば癌浸潤性マクロファージを含む自己免疫疾患)を有する哺乳動物を治療するために使用することができる。
【0117】
癌を有する任意の適切な哺乳動物は、本明細書に記載されるように治療されることができる。例えば、癌を有するヒトおよび他の霊長類、例えばサルは、1つまたは複数の本明細書に記載のPD-L1結合化合物を含有する組成物を用いて治療されることができ、かつ任意選択的に、癌の重症度を低減させるため、癌の症状を低減させるため、および/または哺乳動物内、ヒトまたは他の霊長類内に存在する癌細胞の数を低減させるために1つまたは複数の癌治療と組み合わせて治療されることができる。一部の場合において、癌を有するイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、マウス、およびラットは、1つもしくは複数の本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物、PD-L1結合化合物を含むウイルス、または本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードする核酸を含有する組成物を用いて治療されることができ、かつ任意選択的に、本明細書に記載されるような1つまたは複数の癌治療を用いて治療されることができる。
【0118】
癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を本明細書に記載されるように治療する場合、癌は任意の適切な癌であることができる。癌は1つまたは複数のPD-L1陽性癌細胞を含むことができる。癌は1つまたは複数の固形腫瘍を含むことができる。癌は血液癌であることができる。本明細書に記載されるように治療されることができる癌の例としては、非限定的に、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、卵巣癌、黒色腫、脳腫瘍、肉腫、前立腺癌、膵臓癌、頭頸部癌、肝臓癌、網膜芽腫、リンパ腫、および白血病が挙げられる。
【0119】
一部の場合において、哺乳動物は、癌(例えば、1つまたは複数のPD-L1陽性癌細胞を含む癌)を有するとして同定され得る。癌を有する哺乳動物を同定するために任意の適切な方法を使用することができる。例えば、癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を同定するためにイメージング技術および生検技術を使用することができる。
【0120】
癌を有すると同定されると、哺乳動物は、1つまたは複数の本明細書に記載のPD-L1結合化合物を含有する組成物を投与されることができ、任意選択的に、1つまたは複数の癌治療法および/または癌治療を用いて治療されることができる。1つまたは複数の癌治療法は任意の適切な癌治療を含むことができる。一部の場合において、癌治療は手術を含むことができる。一部の場合において、癌治療は放射線療法を含むことができる。一部の場合において、癌治療は、薬物療法、例えば化学療法、ホルモン療法、標的化療法、および/または細胞傷害性療法の投与を含むことができる。癌治療の例としては、非限定的に、1つまたは複数の受容体チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、エルロチニブ)の投与、1つまたは複数のPD1/PD-L1阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、セミプリマブ、およびデュルバルマブ)の投与、1つまたは複数の免疫療法、例えばPD1/PD-L1を標的化することができる免疫療法(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、アレムツズマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、およびリツキシマブ)の投与、GITRを標的化する1つまたは複数の抗体の投与、1つまたは複数の白金化合物(例えば、シスプラチンまたはカルボプラチン)の投与、1つまたは複数のタキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、またはアルブミン結合パクリタキセル、例えばnab-パクリタキセル)の投与、アルトレタミンの投与、カペシタビンの投与、シクロホスファミドの投与、エトポシド(vp-16)の投与、ゲムシタビンの投与、イホスファミドの投与、イリノテカン(cpt-11)の投与、リポソームドキソルビシンの投与、メルファランの投与、ペメトレキセドの投与、トポテカンの投与、ビノレルビンの投与、1つまたは複数の黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(例えばゴセレリンおよびロイプロリド)の投与、1つまたは複数の抗エストロゲン療法(例えばタモキシフェン)の投与、1つまたは複数のアロマターゼ阻害剤(例えばレトロゾール、アナストロゾール、およびエキセメスタン)の投与、1つまたは複数の血管新生阻害剤(例えばベバシズマブ)の投与、1つまたは複数のポリ(ADP)-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤(例えばオラパリブ、ルカパリブ、およびニラパリブ)の投与、外部ビーム放射線療法の投与、小線源療法の投与、放射性リンの投与、ならびにこれらの任意の組み合わせの投与が挙げられる。癌を有する哺乳動物が、1つまたは複数の多価PD-L1結合化合物または本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードする核酸を含有する組成物を用いて治療され、かつ1つまたは複数の癌治療を用いて治療される場合、1つまたは複数の癌治療を含有する組成物は同時にまたは独立して投与されることができる。例えば、1つもしくは複数の多価PD-L1結合化合物または本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードする核酸を含有する組成物が1番目に投与され、かつ1つまたは複数の癌治療が2番目に投与される、またはその逆であることができる。
【0121】
一部の場合において、1つまたは複数の本明細書に記載のPD-L1結合化合物を含む組成物は、癌を有する哺乳動物への投与のための薬学的に許容可能な組成物に製剤化されることができる。例えば、治療有効量の1つまたは複数の多価PD-L1結合化合物または本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードする核酸は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体(添加剤)および/または希釈剤と共に製剤化されることができる。医薬組成物は、治療ポリペプチドおよび/または治療ポリペプチドを発現するように遺伝子改変された組換えウイルスをさらに含んでもよい。多価PD-L1結合化合物、および任意選択的に治療ポリペプチドを含む、またはから本質的になる医薬組成物は、固体または液体形態での投与のために製剤化されることができ、該形態としては、非限定的に、無菌溶液、懸濁液、持続放出製剤、錠剤、カプセル、丸剤、粉末、ナノ粒子、および顆粒が挙げられる。本明細書に記載の医薬組成物において使用されてもよい薬学的に許容可能な担体、充填剤、およびビヒクルとしては、非限定的に、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベース物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0122】
本明細書に記載されるような1つまたは複数の多価PD-L1結合化合物、および任意選択的に治療ポリペプチドを含むまたはから本質的になる医薬組成物は、経口または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、腫瘍内、および皮内を含む)投与のために製剤化される。
【0123】
経口的に投与される場合、1つまたは複数のPD-L1結合化合物または本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードする核酸を含む医薬組成物は、丸剤、錠剤、またはカプセルの形態であることができる。
【0124】
非経口投与のために好適な組成物としては、抗酸化剤、バッファー、静菌剤、および意図されるレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有することができる水性および非水性無菌注射溶液;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量または複数用量容器、例えば、密閉されたアンプルおよびバイアル中に提示されることができ、使用直前に無菌液体担体、例えば注射用水の追加のみを要求するフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵されてもよい。即席注射溶液および懸濁液が無菌粉末、顆粒、および錠剤から調製されてもよい。そのような注射溶液は、例えば、無菌注射用水性または油性懸濁液の形態であることができる。この懸濁液は、例えば、好適な分散または湿潤剤(例えば、Tween 80など)および懸濁化剤を使用して製剤化されてもよい。無菌注射用調製物は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液としての、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液であることができる。使用することができる許容可能なビヒクルおよび溶媒の例としては、非限定的に、マンニトール、水、リンゲル溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。追加的に、溶媒または懸濁媒体として無菌固定油を使用することができる。一部の場合において、無菌性の(bland)固定油、例えば合成モノ-またはジ-グリセリドを使用することができる。脂肪酸、例えばオレイン酸およびそのグリセリド誘導体を注射剤の調製において使用することができ、それらのポリオキシエチル化バージョンのものを含めて、天然の薬学的に許容可能な油、例えばオリーブ油またはヒマシ油も使用が可能である。一部の場合において、これらの油溶液または懸濁液は長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含有することができる。
【0125】
本明細書に開示される特有の実施態様は、「からなる」または「から本質的になる」の言い回しを使用して請求項においてさらに限定されることがある。請求項において使用される場合、出願時のものであれ、補正で追加されたものであれ、「からなる」という移行句は、請求項中で指定されないあらゆる要素、ステップ、または成分を除外する。「から本質的になる」という移行句は、指定された材料またはステップおよび基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しないものに請求項の範囲を限定する。
【0126】
一部の場合において、1つまたは複数の本明細書に記載のPD-L1結合化合物を含む薬学的に許容可能な組成物は局所的または全身的に投与されることができる。例えば、細胞内PD-L1ドメインの機能を阻害する化合物を含有する組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)中の癌(例えば、腫瘍)の中またはその近くに注射により局所的に投与されることができる。例えば、細胞内PD-L1ドメインの機能を阻害する化合物を含有する組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)に経口投与により全身的にまたは注射(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、腫瘍内、および皮内注射)により投与されることができる。
【0127】
有効な用量は、癌の重症度、投与の経路、対象の年齢および全般的健康状態、賦形剤の使用、他の治療的処置との併用、例えば他の剤の使用の可能性、ならびに治療医の判断に依存して変動することができる。
【0128】
1つまたは複数の本明細書に記載のPD-L1結合化合物を含有する組成物の有効量は、哺乳動物に対する有意な毒性を生成することなく癌の重症度を低減させ、癌の症状を低減させ、かつ/または哺乳動物内に存在する癌細胞の数を低減させることができる任意の量であることができる。有効量は、一定のままであることができ、または治療に対する哺乳動物の応答に依存して変動スケールまたは可変用量として調整されることができる。様々な要因が、特定の適用のために使用される実際の有効量に影響を及ぼし得る。例えば、投与の頻度、治療の継続期間、複数の治療剤の使用、投与の経路、および状態(例えば、癌)の重症度は、投与される実際の有効量における増加または減少を要求することがある。
【0129】
投与の頻度は、哺乳動物に対する有意な毒性を生成することなく1つまたは複数の癌治療(例えば、1つまたは複数の癌免疫療法)に対して哺乳動物中の癌細胞を感作する任意の頻度であることができる。例えば、投与の頻度は、おおよそ週に1回~おおよそ日に3回、またはおおよそ月に2回~おおよそ日に6回、またはおおよそ週に2回~おおよそ日に1回であることができる。投与の頻度は一定のままであることができ、または治療の継続期間の間に可変であることができる。1つまたは複数の本明細書に記載のPD-L1結合化合物を含有する組成物を用いる治療の過程は休息期間を含むことができる。例えば、1つまたは複数の多価PD-L1結合化合物または本明細書に記載の多価PD-L1結合化合物を生成するために使用することができるアミノ酸鎖をコードする核酸を含有する組成物は、2週の期間にかけて毎日投与され、続いて2週の休息期間とすることができ、そのようなレジメンを複数回繰り返すことができる。有効量と同様に、様々な要因が、特定の適用のために使用される投与の実際の頻度に影響を及ぼし得る。例えば、有効量、治療の継続期間、複数の治療剤の使用、投与の経路、および状態(例えば、癌)の重症度は、投与頻度における増加または減少を要求することがある。
【0130】
1つまたは複数の本明細書に記載のPD-L1結合化合物を含有する組成物を投与するための有効な継続期間は、哺乳動物に対する有意な毒性を生成することなく癌の重症度を低減させ、癌の症状を低減させ、かつ/または哺乳動物内に存在する癌細胞の数を低減させることができる任意の継続期間であることができる。そのため、有効な継続期間は、数日から数週、月または年までで変動することができる。一般に、癌の治療のための有効な継続期間は、6か月~1年の継続期間の範囲内であることができる。複数の要因が、特定の治療のために使用される実際の有効な継続期間に影響を及ぼし得る。例えば、有効な継続期間は、投与の頻度、有効量、複数の治療剤の使用、投与の経路、および治療されている状態の重症度と共に変動し得る。
【0131】
ある特定の事例において、治療の過程および治療されている状態(例えば、癌)に関する1つまたは複数の症状の重症度をモニターすることができる。任意の適切な方法を使用して、1つまたは複数の癌治療(例えば、1つまたは複数の癌免疫療法)に対する哺乳動物中の癌細胞の感受性が増加しているか否かを決定することができる。例えば、(例えば、腫瘍のサイズおよび/または数に基づく)癌の応答性は、異なる時点にオフィスイメージング技術を使用して評価されることができる。
【0132】
本発明は以下の例においてさらに記載され、これらの例は請求項に記載の発明の範囲を限定しない。
【0133】
例
例1
組換えアデノウイルスの構築:細胞標的化/脱標的化ペプチドまたは新規のアミノ酸の挿入を伴う異なるAd血清型からの個々のHVRの挿入。
当業者に公知の方法を利用する組換えDNA技術により組換えアデノウイルスを構築した。組換えAd(Ad657)は、第1のAd株Ad6に由来し(例えば、第1のAd株のゲノムを含むことができる)、第2のAd株であるAd57からのカプシドヘキソンHVRを含んでもよい。
図8を参照。これらの実施態様は一般に、異なるAdからの異なるカプシドヘキソンHVRを組み合わせる(すなわち、シャッフリングHVR)Adの文脈において適用された。
図7は、ヘキソン領域中のバリエーションを示すAd5、Ad6、およびAd57のアライメントを示す。例えば、Ad株Ad57のHVR2~7を伴うAd株Ad6のHVR1またはAd株Ad57のHVR2~6を伴うAd株Ad6のHVR1および7。さらなる実施態様において、Ad6/56/6ウイルスは、Ad株Ad6からのHVR 1および7ならびにAd株Ad657からのHVR2~6を有する。
【0134】
本発明の一態様において、Ad6 HVR1およびAd57 HVR2~7を有するキメラAdを生成し、Ad6/57 HVRキメラと称される該キメラは配列番号28のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0135】
本発明のさらに別の態様において、Ad6 HVR1および7ならびにAd57 HVR2~6を有するキメラAdを生成し、Ad6/57/6 HVRキメラと称される該キメラは配列番号29のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0136】
組換えAd株Ad657を得るために、Ad57 HVR1~7をコードする核酸を合成し、pVIおよびヘキソンの間にFRT-Zeocin(登録商標)-FRTカセットを有するプラスミドにおいてAd6ヘキソン中に挿入した。これを様々なpAd6プラスミド中に組換えてAd657およびそのバリアントを生成した。Ad657ヘキソンのアミノ酸配列は配列番号30に記載される。
【0137】
Ad657のバリアントに関して、システイン、柔軟性アミノ酸、および他のペプチドの挿入を可能とするための制限部位を用いて改変されたHVR1を用いてAd57 HVR配列を合成した。これをpVIおよびヘキソンの間にFRT-Zeocin(登録商標)-FRTカセットを有するプラスミドにおいてAd6ヘキソン中に挿入した。これを様々なpAd6プラスミドに組換えて、HVR1中にシステインを有するAd657バリアントを生成し、Ad657-HVR1-XXAと称される該バリアントは配列番号42のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0138】
Ad657のバリアントに関して、システイン、柔軟性アミノ酸、および他のペプチドの挿入を可能とするための制限部位を用いて改変されたHVR5を用いてAd57 HVR配列を合成した。これをpVIおよびヘキソンの間にFRT-Zeocin(登録商標)-FRTカセットを有するプラスミドにおいてAd6ヘキソン中に挿入した。これを様々なpAd6プラスミドに組換えて、HVR5中にシステインを有するAd657バリアントを生成し、Ad657-HVR5-XXAと称される該バリアントは配列番号43のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0139】
Ad657のバリアントに関して、システイン、柔軟性アミノ酸、および他のペプチドの挿入を可能とするための制限部位を用いて改変されたHVR1を用いてAd57 HVR配列を合成した。これをpVIおよびヘキソンの間にFRT-Zeocin(登録商標)-FRTカセットを有するプラスミドにおいてAd6ヘキソン中に挿入した。これを様々なpAd6プラスミドに組換えて、HVR1中のシステインを有しないが、HVR1へのペプチド挿入を可能とするための制限部位を有するAd657バリアントを生成し、Ad657-HVR1-XAと称される該バリアントは配列番号44のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0140】
Ad657のバリアントに関して、システイン、柔軟性アミノ酸、および他のペプチドの挿入を可能とするための制限部位を用いて改変されたHVR5を用いてAd57 HVR配列を合成した。これをpVIおよびヘキソンの間にFRT-Zeocin(登録商標)-FRTカセットを有するプラスミドにおいてAd6ヘキソン中に挿入した。これを様々なpAd6プラスミドに組換えて、HVR5中のシステインを有しないが、HVR5へのペプチド挿入を可能とするための制限部位を有するAd657バリアントを生成し、Ad657-HVR5-XAと称される該バリアントは配列番号45のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0141】
Ad657のバリアントに関して、ビオチンアクセプターペプチドのHVR1への挿入によりAd657 HVR1-XA配列を改変した。これを様々なpAd6プラスミドに組換えて、HVR1中のBAPのAd657バリアントを生成し、Ad657-HVR1-PSTCDと称される該バリアントは配列番号46のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0142】
ビオチンアクセプターペプチドの挿入はウイルスバリアントを肝臓から脱標的化し、ウイルスがアビジンまたはストレプトアビジンおよびビオチン化されたリガンドを用いて再標的化されることを可能とし、ウイルスが単量体アビジンまたはストレプトアビジンカラム上で精製されることを可能とする。
【0143】
Ad657のバリアントに関して、ビオチンアクセプターペプチド(BAP)のHVR1への挿入によりAd657 HVR1-XA配列を改変した。これを様々なpAd6プラスミドに組換えて、HVR1中にBAPを有するAd657バリアントを生成し、Ad657-HVR5-PSTCDと称される該バリアントは配列番号47のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0144】
Ad657のバリアントに関して、HIVエンベロープからの合成V1/V2ループのHVR5への挿入によりAd657 HVR5-XA配列を改変し、Ad657-HVR5-V1/V2と称される該バリアントは配列番号48のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0145】
HIVエンベロープからの合成V1/V2ループの挿入は、ワクチンとして役立つためのこの抗原の提示、ならびに、HIVエンベロープと相互作用するタンパク質への結合による再標的化を可能とする。
【0146】
Ad657のバリアントに関して、ヒトパピローマウイルス(HPV)からの合成ペプチドのHVR5への挿入によりAd657 HVR5-XA配列を改変し、Ad657-HVR5-HPVと称される該バリアントは配列番号49のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0147】
ヒトパピローマウイルスからの合成ペプチドの挿入は、ワクチン目的のため、ならびに、HPVペプチドと相互作用するタンパク質への結合による再標的化のための抗原としてのHPVペプチドの提示を可能とする。
【0148】
本発明の別の態様において、Ad6 HVR1およびAd57 HVR 2~7を有するキメラAdを生成し、Ad6/57 HVRキメラと称される該キメラは配列番号50のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0149】
本発明のさらに別の態様において、Ad6 HVR1および7ならびにAd57 HVR 2~6を有するキメラAdを生成し、Ad6/57/6 HVRキメラと称される該キメラは配列番号51のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0150】
図16~18のプラスミドマップは、異なるAd血清型からの個々のHVRの挿入と、標的化された化学修飾および遮蔽のための細胞標的化/脱標的化ペプチド、治療ポリペプチド、または新規のアミノ酸、例えばシステインのヘキソンへの挿入との組み合わせを示す。
【0151】
特定の実施態様において、細胞結合性ペプチドはHVR 1またはHVR 5に挿入され、この実施態様はAdのHVRのいずれかにおいてこれらおよび他のペプチドを挿入する例として役立つ。
【0152】
例2
システイン修飾ヘキソン改変Ad657-HVR5Cの標的化された化学的連結。
図13は、異なるAd血清型からの個々のHVRの挿入と、標的化された化学修飾および遮蔽のための新規のアミノ酸、例えばシステインのヘキソンへの挿入との組み合わせを示すAdバリアントの描写である。
【0153】
この例は、Adヘキソンに挿入されたシステインにポリマーおよび他の化学修飾を標的化する能力を実証する(
図15)。標的化されていないPEGはウイルス感染を不活性化する一方、システイン標的化PEG化はウイルス機能を保持する。
【0154】
本発明の一態様において、抗体、タンパク質、細胞の脱標的化、再標的化、および遮蔽のためのポリマーまたは挿入されたペプチド/タンパク質の使用が想定される。
図12および
図14は、例えば、PEG化または「BAP化」により、修飾され得るAd HVRの部位を描写する。別の例は、ビオチンアクセプターペプチド(BAP)の挿入はこれらのHVRに挿入されて、アビジンもしくはストレプトアビジンおよびビオチン化されたリガンドまたはアビジンもしくはストレプトアビジン融合タンパク質を用いるベクター再標的化を可能とすることを示す。BAP挿入はまた、ベクター製造のためにウイルスが単量体アビジンまたはストレプトアビジンカラム上で精製されることを可能とする。同様に、Ad57-HVR1-XXAおよびXAは、マレイミドまたは他のシステイン反応性剤を用いる標的化された化学修飾を可能とするためにこの部位にシステインを挿入する例を示す。
【0155】
1つの実施態様において、異なるAd血清型および/またはバリアントは、Ad6およびAd657バリアントの複数投与(multi dosing)を可能とするためのポリマー遮蔽を含む。Ad6およびAd657が、共有結合ポリマー連結と組み合わせて血清型スイッチングによる処理の複数のラウンドのために使用することができる例示的な治療サイクルが示される(
図13)。
【0156】
GFPルシフェラーゼを発現するAd657-HVR1Cを細胞から産生させ、CsCl勾配で精製した。5kDaのポリエチレングリコール(PEG)を用いてウイルスを共有結合的に修飾した。ウイルスタンパク質上のアミン/リジンとランダムに反応するNHS-PEGまたはXXAシャトルプラスミドを使用してHVR1に挿入されたシステインと特異的に反応するマレイミドPEGのいずれかを用いてウイルスを処理した。これらの修飾されていないまたは修飾されたウイルスを次に、最終のCsClスピン、続いて脱塩により精製した。指し示されるウイルスをSDS-PAGEゲル上で分離し、SyproRubyを用いて染色し、イメージングにより可視化した(
図14)。タンパク質の見かけ質量(矢印により指し示される)における増加により実証されるように、NHS-PEG化は多くのウイルスタンパク質をランダムに修飾することをこれは示す。対照的に、HVR1中のシステインとの標的化マレイミドPEG反応はヘキソンのみを修飾し、他のウイルスカプソマータンパク質を損傷しない。ウイルス機能に対するPEG化の効果を評価する。
【0157】
例3
制限増殖型Ad(CRAd)。
ウイルスを制限増殖型Ad(CRAd)に変換するためのE1タンパク質中の突然変異を伴うAd6、Ad657およびこれらのバリアントにおける突然変異の図式を
図9、
図10および
図11に示す。これらは、それぞれp300およびpRBへの結合を遮断するdl1101および/またはdl1107を含む。
【0158】
図10は、野生型Ad、ならびに、AdバリアントE1A dl1101、E1A dl1107およびE1A dl1101/1107におけるE1AのN末端アミノ酸配列を示す。
【0159】
CRAd、Ad-PBを生成するための前立腺特異的プロモータープロバシンおよび配列番号31のE1 DNA配列でのAd E1プロモーターの置き換えもまた示される(
図9)。プロバシンプロモーターはアンドロゲン依存性であるため、LNCaPのようなアンドロゲン感受性腫瘍において機能するが、DU145のようなアンドロゲン耐性腫瘍においては機能しない。
【0160】
1つの実施態様において、E1に対するdl1101改変、およびE1aにおけるdl1107突然変異、およびE3A欠失を有する制限増殖型Ad657ウイルスを構築して、PD-L1デコイタンパク質としてのヒト免疫グロブリンに融合したヒトPD-1を発現させる。前記ウイルスはまた、CMVプロモーターからGFPルシフェラーゼを発現する。そのような制限増殖型Ad657ウイルスバリアントはCrAd6d1101/1107DE3ADP-hPD-1-Ig-GLと称される。
【0161】
例4
再標的化および脱標的化された組換えアデノウイルス。
in vitroで、Adは細胞表面受容体とのそのファイバーおよびペントンベースタンパク質(penton base proteins)の組み合わせた相互作用を通じて細胞に結合し、進入する。三量体ファイバーはコクサッキー-アデノウイルス受容体(CAR)に結合し、CARを欠いた細胞は、ペントンベース上のRGDモチーフにより結合されることができるαvインテグリンも発現しない限り、感染に対して比較的抵抗性である。
【0162】
Adファイバータンパク質は、初期付着ステップを媒介する3つの見かけ上同一のサブユニットの複合体である。ネイティブなAd6ファイバータンパク質は配列番号35に記載のアミノ酸配列を含み、CARに結合する。
【0163】
本発明のさらなる態様において、親Adにとってネイティブでない異なるファイバータンパク質を有するファイバー改変組換えAdを生成した。異なるAd株からのカプシドタンパク質を含む、CRAdを含めて、組換えAd、例えば、異種Ad35ファイバーポリペプチドまたはチンパンジーC68ファイバーポリペプチド、+/-K7ペプチドを含む組換えAdを生成した。
【0164】
キメラAdであるAdF35ファイバーキメラは配列番号36のアミノ酸配列を有し、Ad5およびAd6ファイバータンパク質よりも短く、ウイルスをCD46に再標的化する。
【0165】
配列番号37の配列を有するK7ファイバーを含むファイバー改変組換えAdは、ウイルスを細胞上のヘパリン硫酸プロテオグリカンおよび負電荷に標的化する。
【0166】
配列番号38の配列を含む組換えキメラAdである6/FC68ファイバーは、チンパンジーアデノウイルスC68からのファイバータンパク質を有するキメラAdである。ファイバータンパク質はAd5またはAd6ファイバータンパク質よりも短く、CARに結合する。
【0167】
配列番号39の配列を含む組換えキメラAdである6/FC68-K7ファイバーは、チンパンジーアデノウイルスC68からのファイバータンパク質を有するキメラAdである。ファイバータンパク質はAd5またはAd6ファイバータンパク質よりも短い。6/FC68-K7ファイバーはCARに結合し、ヘパリン硫酸および負電荷に再標的化される。
【0168】
配列番号40の配列を含む組換えキメラAdである6/FC68-HI-K7ファイバーは、チンパンジーアデノウイルスC68からのファイバータンパク質を有するキメラAdである。ファイバータンパク質はAd5またはAd6ファイバータンパク質よりも短い。6/FC68-HI-K7ファイバーはCARに結合し、ヘパリン硫酸および負電荷に再標的化される。
【0169】
血液第X因子(FX)はナノモルの親和性で種Cアデノウイルスのヘキソンに結合し、結果として、IV注射後に種Cアデノウイルスが肝臓の肝細胞に効率的に形質導入することを可能にする。
【0170】
ヒトPD-1に融合したヒト第X因子(GLA)を発現する以下のCRAdウイルスを構築する。野生型および高親和性マウスおよびヒトPD-1ドメインをヒトFX GLA-EGFドメインのNまたはC末端に融合し、それらの発現をRSVまたはCMVのいずれかのプロモーターにより駆動した。一部の場合において、これらの融合タンパク質発現カセットを、指し示されるウイルスのE3ドメインに挿入した。他の場合において、それらをウイルスのファイバーおよびE4遺伝子の間に挿入した。
【0171】
制限増殖型Ad657は、p300へのその結合を予防し、IFNに対して感受性となるためのE1aに対するdl1101改変、E3A欠失、E3欠失に挿入されたRSV発現カセットを有する。このウイルスは、ヒトPD-1およびPD-L1+細胞へのアデノウイルス再標的化タンパク質に融合したヒト第X因子(GLA)を発現する(すなわち、CrAd657d1101DE3ADP*hPD1-GLA-GL-L)。
【0172】
制限増殖型Ad657は、p300へのその結合を予防し、ウイルスをIFN抑制に対して感受性にするためのE1aに対するdl1101改変、およびpRBへのその結合を予防して、インタクトなpRB経路を有する細胞においてウイルス複製を遮断するためのE1aにおけるdl1107突然変異、欠失されたE3を有し、かつE3欠失に挿入されたRSV発現カセットを含む。このウイルスは、ヒトPD-1に融合したヒト第X因子(GLA)を発現する(すなわち、CrAd657*1101/1107DE3BSTRSVhPD1-GLA*IgIZI)。ウイルス複製の間に、PD-1は、細胞から放出された場合にPD-L1に結合することができる単量体として細胞中で発現される。PD-1はまた、Adの表面に結合して、AdをPD-L1発現細胞に再標的化することができる。
【0173】
E1aにおけるdl1107突然変異、およびE3A欠失、E3欠失に挿入されたRSV発現カセットを有する、制限増殖型Ad6/57/6を構築して、PD-L1デコイタンパク質としてヒト免疫グロブリンに融合したヒトPD-1を発現させる(すなわち、pAd/57/6-dl1107-ΔE3-RSV-hPD-1-HA-Ig-I)。
図16を参照。
【0174】
pAd6/57/6-dl1107-DE3-RSV-hPD-1-HA-Ig-Iを感染させた細胞から融合タンパク質をプロテインAカラム上で精製した。このタンパク質をPromega(Madison、WI、USA)からのPD-1/PD-L1 Blockade Assayにおいて陽性対照抗PD-1モノクローナル抗体と共に滴定した。高親和性ヒトhPD-1-HA-Ig融合タンパク質はPD-L1を阻害する。
図19を参照。
【0175】
例5
異種ポリペプチドと組み合わせたPD-L1結合化合物の発現用の組換えAdの構築。
制限増殖型Adウイルス(CRAd657またはCRAd 6/57/6)を改変して、1つまたは複数の異種ポリペプチド(例えば、治療ポリペプチドおよび/または標的化ポリペプチド)と組み合わせてPD-1ポリペプチドを発現させる。1つの実施態様において、当業者に公知の方法にしたがってRSV-PD-1融合カセットをウイルスのE3欠失に挿入し、かつ治療用導入遺伝子をファイバーおよびE4遺伝子の間にCMVまたはMCMVまたはRSV発現カセットとして挿入する。
図17および
図18を参照。
【0176】
例6
高親和性ヒトhPD-1-HA-Ig融合タンパク質を単独でまたは免疫療法ペイロードと組み合わせて発現するCRAdの腫瘍成長評価。
B16-CAR黒色腫細胞をC57BL/6マウスの皮下に注射し、結果としてもたらされた腫瘍に本発明の多価PD-L1結合化合物の3e11ウイルス粒子を注射する。CRAd+PD-L1デコイはpAd6/57/6-dl1107-ΔE3-RSV-hPD-1-HA-Ig-Iである。pAd6/57/6-dl1107-ΔE3-RSV-hPD-1-HA-Ig-Iおよび4-1BBLを発現する第2のアデノウイルスを使用してCRAd+PD-L1デコイ+免疫刺激剤を腫瘍に併用注射する。高親和性ヒトhPD-1-HA-Ig融合タンパク質を発現するCRAdは単独でまたは免疫療法ペイロードと組み合わせて腫瘍成長を遅延させる。
図20を参照。
【0177】
1つの実施態様において、1つまたは複数の治療ポリペプチドと組み合わせてPD-1ポリペプチドを発現するようにCRAd657またはCRAd6/57/6を改変する。治療ポリペプチドは、GM-CSF、4-1BBL、CD40LおよびOX40、ならびにこれらの組み合わせから選択されてもよい。1つの態様において、PD-1ポリペプチドは、融合タンパク質として治療ポリペプチドと共に発現される。さらなる態様において、RSV-PD-1融合カセットをウイルスのE3欠失に挿入し、治療用導入遺伝子をウイルスファイバーおよびE4遺伝子の間にCMVまたはMCMVまたはRSV発現カセットとして挿入する。
図17および
図18を参照。
【0178】
例7
多価PD-L1結合化合物の構築。
当業者に公知の方法にしたがって、PD-1ポリペプチドおよびスキャフォールドポリペプチドまたはFXポリペプチドのGLAドメインのいずれかを含む融合タンパク質を、野生型、突然変異体、または合成遺伝子からの突然変異および融合ジャンクションと共にPCRクローニングされた遺伝子から生成する。発現ベクターにクローニングし、タンパク質の発現およびアセンブリーを可能とする条件下で培養し、かつ任意選択的に、細胞環境からタンパク質を精製することにより、融合タンパク質をアセンブルさせる。
【0179】
融合タンパク質は、ウイルスコートポリペプチドに結合することができるポリペプチドに融合したPD-1ポリペプチドおよび/またはそれらの断片を発現するベクターを用いる細胞のプラスミドトランスフェクションまたは感染、続いて抗体カラム上またはPD-L1カラム上またはビオチンカラム上でのPD-1または融合パートナーを用いる精製により製造されてもよい。
【0180】
1つの実施態様において、Adは、融合タンパク質でのAd表面のコーティングを可能とする条件下で、精製されたPD-1融合タンパク質と接触させられてもよい。例えば、FXポリペプチドのGLAドメインはAdの表面に結合し、その結果、PD-1はAdの表面上で曝露されて細胞の表面上のPD-L1に結合する。融合パートナーがAd表面に結合しており、かつPD-1が細胞上のPD-L1に自由に結合するアデノウイルスはマルチマーPD-L1結合化合物を提供する。
【0181】
1つの実施態様において、融合タンパク質をコードする核酸をプラスミドもしくはウイルスベクターに挿入し、またはmRNA生成ベクターに挿入し、これらをin vitroで細胞培養物にトランスフェクトもしくは感染させ、またはin vivoで動物に感染させる。PD-1および/または融合タンパク質パートナーに対する抗体を用いてタンパク質発現について試料をアッセイする。
【0182】
融合タンパク質をコードする核酸(例えば、DNA、mRNA、およびウイルスベクター)を正常または癌保有動物に送達し、CD3、CD4、CD8、PD-1、PD-L1、およびT細胞活性化マーカーを用いる染色により末梢血細胞、リンパ節細胞、脾臓細胞、および腫瘍細胞集団における変化を評価する。
【0183】
融合タンパク質をコードする核酸(例えば、DNA、mRNA)またはウイルスベクターを癌保有動物に送達し、腫瘍サイズ、転移、播種、および生存に対する効果を評価した。
【0184】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と組み合わせて記載したが、以上の記載は、本発明を実例と共に説明することを意図しており、その範囲を限定することは意図されず、該範囲は添付の請求項の範囲により定義されることが理解されるべきである。他の態様、利点、および改変は以下の請求項の範囲内である。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.複数のアミノ酸鎖を含み、各アミノ酸鎖が少なくとも1つのプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)ポリペプチドを含む、多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
2.Igポリペプチド、シグマ-1ポリペプチドおよびストレプトアビジンポリペプチドから選択されるスキャフォールドポリペプチドを含むポリペプチドコンジュゲートである、上記1に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
3.1を超えるスキャフォールドポリペプチドを含むポリペプチドコンジュゲートである、上記2に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
4.前記プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)ポリペプチドがヒトPD-1またはマウスPD-1である、上記1に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
5.前記アミノ酸鎖が、治療ポリペプチド、標的化ポリペプチドまたは抗原性ポリペプチドを含む、上記1に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
6.前記標的化ポリペプチドが、麻疹ウイルスヘマグルチニン(MVH)ポリペプチド、麻疹ウイルス融合(MVF)ポリペプチドおよび水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSVG)ポリペプチドから選択される、上記5に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
7.前記治療ポリペプチドが、4-1BBリガンド(4-1BBL)ポリペプチド、OX40リガンド(OX40L)ポリペプチド、CD40リガンド(CD40L)ポリペプチドおよび顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)ポリペプチドから選択される、上記5に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
8.少なくとも1つのプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)ポリペプチドを含む各アミノ酸鎖が組換えアデノウイルス(Ad)と会合しており、かつ前記複数のアミノ酸鎖が前記組換えAdのコートポリペプチド上に存在する、上記1に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
9.前記組換えAdが、Ad株Ad6のカプシドヘキソンポリペプチドおよびAd株Ad57からの少なくとも1つのカプシドヘキソン超可変領域(HVR)ポリペプチドを含む、上記8に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
10.Ad株Ad6の前記カプシドヘキソンポリペプチドがAd株Ad57からのHVRポリペプチド1~7を含む、上記9に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
11.Ad株Ad6の前記カプシドヘキソンポリペプチドがAd株Ad57からのHVRポリペプチド2~6を含む、上記9に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
12.前記プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)ポリペプチドがヒトPD-1である、上記8に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
13.前記PD-1ポリペプチドが第X因子単鎖抗体ポリペプチドのビタミンK依存性ガンマ-カルボキシグルタミン酸ドメイン(FXポリペプチドのGLAドメイン)に融合している、上記8に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
14.各アミノ酸鎖が、麻疹ウイルスヘマグルチニン(MVH)ポリペプチド、麻疹ウイルス融合(MVF)ポリペプチドおよび水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSVG)ポリペプチドから選択される標的化分子を含む、上記8に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
15.各アミノ酸鎖が、4-1BBリガンド(4-1BBL)ポリペプチド、OX40リガンド(OX40L)ポリペプチド、CD40リガンド(CD40L)ポリペプチド、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)ポリペプチドから選択される1つまたは複数の治療ポリペプチドを含む、上記8に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物。
16.上記1に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物および薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
17.上記8に記載の多価プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)結合化合物を投与することを含む、癌の治療を必要とする対象において癌を治療する方法。
18.1つまたは複数の癌治療法を哺乳動物に投与することをさらに含む、上記17に記載の方法。
19.前記癌治療法が、PD-1を標的化する免疫療法である、上記18に記載の方法。
20.前記免疫療法が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、セミプリマブおよびデュルバルマブからなる群から選択される、上記19に記載の方法。
【配列表】