(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】国債を裏付けとしたトークン資産と、関連するトークン取引のアイデンティティとリスクスコアリング
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/06 20120101AFI20231108BHJP
G06Q 20/36 20120101ALI20231108BHJP
G06Q 20/38 20120101ALI20231108BHJP
【FI】
G06Q20/06 300
G06Q20/36
G06Q20/38 310
(21)【出願番号】P 2021573292
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(86)【国際出願番号】 US2020037016
(87)【国際公開番号】W WO2020252036
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-09
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521538181
【氏名又は名称】パスチーニ,マイルズ
【氏名又は名称原語表記】PASCHINI, Miles
(73)【特許権者】
【識別番号】521538192
【氏名又は名称】アガルワル,ニティン
【氏名又は名称原語表記】AGARWAL, Nitin
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】パスチーニ,マイルズ
(72)【発明者】
【氏名】アガルワル,ニティン
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/101767(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/040855(WO,A1)
【文献】特表2019-506103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0239831(US,A1)
【文献】国際公開第2018/232297(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0240107(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0034936(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
政府発行の債務を担保とする安定した暗号通貨の発行及び交換を促進するためのコンピュータに実装されたシステムであって、
前記システムは、ブロックチェーンデータ構造を格納するように構成された複数の分散型ノードを含む取引検証及び記録ネットワークと通信する管理プラットフォームを含み、
前記管理プラットフォームは、
コンピュータプログラム命令を格納するように構成されたメモリと、
一つ又は複数の物理コンピュータプロセッサと
を含み、
前記コンピュータプログラム命令によって、前記一つ又は複数の物理コンピュータプロセッサは、
第1のユーザに関連付けられた第1のデジタルウォレット及び第2のユーザに関連付けられた第2のデジタルウォレットを確立するステップと、
第1のユーザに関連付けられたユーザパラメータ及び財務情報に基づいて、第1のデジタルウォレットのための第1のウォレットメタデータを決定するステップであって、第1のウォレットメタデータが第1のリスクスコア及び第1のID検証分類のうちの少なくとも一つを含む、決定するステップと、
前記第1のウォレットメタデータを、前記取引検証及び記録ネットワーク内のブロックチェーンに格納するステップと、
第1のデジタルウォレットに関連する粒度情報に基づいて生成される制限付き使用キーを用いて、第2のデジタルウォレットが、粒度情報によって決定される粒度のレベルにてブロックチェーンに格納された第1のウォレットメタデータにアクセスすることを可能にするステップと、
少なくとも第1のデジタルウォレット及び第2のデジタルウォレットを含む第1の取引要求を受信するステップと、
(i)第1のウォレットメタデータと、第2のデジタルウォレットに関連付けられた取引ルールとの比較
と、及び、(ii)粒度情報によって決定される粒度のレベルにて第1のウォレットメタデータ
にアクセスする第2のデジタルウォレットに応じて第2のユーザが提供するユーザインプット
と
の少なくとも一つに基づいて、前記第1の取引要求に応答するステップと
を実行するように構成されている、
システム。
【請求項2】
前記第1の取引要求に応答するステップは、前記第2のデジタルウォレットに関連付けられた第2のウォレットメタデータを、前記第1のデジタルウォレットに関連付けられた追加の取引ルールと比較することを、更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記命令は、
(i)第1のウォレットメタデータと、第2のデジタルウォレットに関連付けられた取引ルールとの比較と、及び、(ii)粒度情報によって決定される粒度のレベルにて第1のウォレットメタデータにアクセスする第2のデジタルウォレットに応じて第2のユーザが提供するユーザインプットと
の少なくとも一つに基づいて、前記第1の取引要求を拒否することと、
前記ブロックチェーンに前記第1の取引要求の拒否を記録することと
を、更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の取引要求は、転送要求に対応し、
前記命令は、
(i)第1のウォレットメタデータと、第2のデジタルウォレットに関連付けられた取引ルールとの比較と、及び、(ii)粒度情報によって決定される粒度のレベルにて第1のウォレットメタデータにアクセスする第2のデジタルウォレットに応じて第2のユーザが提供するユーザインプットと
の少なくとも一つに基づいて、前記安定した暗号通貨の指定された数のトークンを前記第1のデジタルウォレットから前記第2のデジタルウォレットに転送する命令を、更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記命令は、
第1のユーザに関連するユーザパラメータ及び金融情報の少なくとも幾つかに基づいて、第1のKYC
(know your customer)スコアを決定することと、
第1のKYCスコアに少なくとも部分的に基づいて、第1のデジタルウォレットのための第1のパブリックアドレス及び対応する秘密キーを作成することと
を、更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記命令は、
第1のユーザが所在する管轄に適用されるルールに基づいて、第1のユーザのKYCチェックを実行する命令を、更に含み、
かかるルールは、居住地ベースのKYC法と、アンチマネーロンダリング(AML)法との、少なくとも一つを含む、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記命令は、更に
少なくとも第1のデジタルウォレットを含む第2の取引要求を受信することと、
第1のデジタルウォレットに関連する追加の取引ルールに基づいて、第2の取引要求を評価することと
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2の取引要求は、償還要求に対応し、
前記命令は、更に、
前記第2の取引要求を評価することに続いて、前記第1のデジタルウォレットから、指定された数の安定した暗号通貨のトークンを償還する命令を
含む、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記命令は、更に、
(i)第1の取引要求の拒否、
(ii)第1の取引要求の受諾、及び、
(iii)第1のデジタルウォレットから第2のデジタルウォレットへの、指定された数の安定した暗号通貨のトークンの、完了した転送
の、いずれかに基づいて、前記第1のリスクスコアを調整する命令を
含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項10】
前記メモリは、更に、AI(人工知能)エンジンのための命令を格納するように構成され、
AIエンジンのための命令は、
前記システムのオペレータに関連するアカウントで、前記システムのユーザから受け取る前記政府発行の通貨の純額を決定することと、
受け取る前記政府発行の通貨の純額に基づいて、作成されるべき安定した暗号通貨の複数の新しいトークンを決定することと、
前記安定した暗号通貨の複数の新しいトークンを担保するために購入することが要求される前記政府発行の債務の量を決定することと、
前記安定した暗号通貨の複数の新しいトークンを作成し、システムのユーザに関連するデジタルウォレットに発行することと
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記メモリは、更に、AI(人工知能)エンジンのための命令を格納するように構成され、
AIエンジンのための命令は、
前記システムのユーザによって、前記システムのオペレータに関連するアカウントで、引き出される前記政府発行の通貨の純額を決定することと、
引き出される前記政府発行の通貨の純額に基づいて、破壊されるべき前記安定した暗号通貨の複数の既存のトークンを決定することと、
前記安定した暗号通貨の複数の既存のトークンの破壊に関連して売却されることが要求される、前記政府発行の債務の量を決定することと、
前記安定した暗号通貨の複数の既存のトークンを破壊することと
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記命令は、更に、前記第1のリスクスコアを定期的に
再計算する命令を含み、
前記第1のリスクスコアを再計算する際に使用されるユーザパラメータは、前記第1のユーザによって提供される前記政府発行の通貨のソース、前記第1のユーザの富のソース、及び、前記第1のユーザのアドレスの検証に、関する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記命令は、更に、前記第1のリスクスコアを定期的に
再計算する命令を含み、
前記第1のリスクスコアを再計算する際に使用される金融情報は、銀行口座の検証、クレジットカードの検証、及び、資産の検証に、関する、情報を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記命令は、更に、
(i)ユーザパラメータのいずれかの変更と、
(ii)前記第1のデジタルウォレットを含む取引の完了若しくは試みと、
(iii)前記第2のデジタルウォレットの第2のリスクスコア及び第2のID検証分類を含む、カウンタパーティリスク情報と
の、少なくとも一つに応答して、前記第1のリスクスコアを
再計算する命令を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記命令は、更に、
第1のリスクスコア及び第1のID検証分類の、少なくとも一つに基づいて、前記第1のデジタルウォレットが、前記第2のデジタルウォレットから、又は、前記第1のユーザによって提供される政府発行の通貨と引き換えに、前記安定した暗号通貨の複数のトークンを受け取る資格があることを決定することと、
前記複数のトークンを国庫ウォレットから前記第1のデジタルウォレットに転送することと
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記命令は、前記第1のデジタルウォレットと前記第2のデジタルウォレットとの間で発生する取引のパラメータに基づいて、前記第1のリスクスコアを
調整する命令を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記第2のデジタルウォレットは、
取引資格に関連する一連のルールを有するように構成され、
更に、
前記第1のリスクスコア及び前記第1のID検証分類が前記一連のルールに適合するかどうかを決定するように構成される、
請求項1記載のシステム。
【請求項18】
前記第1のリスクスコア及び前記第1のID検証分類の、少なくとも一つに関連する情報は、前記制限付き使用キーを生成する際に用いられる粒度情報によって決定される粒度のレベルで、前記第2のユーザによるレビューのために提供される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記命令は、前記第1のデジタルウォレットと前記第2のデジタルウォレットとの間で発生する取引に基づいて、前記第2のデジタルウォレットに関連する第1のリスクスコア及び第2のリスクスコアを
調整する命令を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記命令は、前記第1のデジタルウォレットと前記第2のデジタルウォレットとの間で提案される取引の拒否に基づいて、前記第2のデジタルウォレットに関連する前記第1のリスクスコア及び第2のリスクスコアを
調整する命令を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
政府発行の債務によって担保される安定した暗号通貨の発行及び交換を促進する方法において、
前記方法は、複数の分散型ノードを含む取引検証及び記録ネットワークと通信する管理プラットフォームによって実施され、
前記管理プラットフォームは、コンピュータプログラム命令を格納するように構成されたメモリを含み、
前記管理プラットフォームは、更に、
前記コンピュータプログラム命令を実施する
ように構成された一つ又は複数の物理コンピュータプロセッサを含み、
前記方法は、
第1のユーザに関連付けられた第1のデジタルウォレット、及び第2のユーザに関連付けられた第2のデジタルウォレットを確立するステップと、
第1のユーザに関連付けられたユーザパラメータ及び財務情報に基づいて、前記第1のデジタルウォレットのための第1のウォレットメタデータを決定するステップであって、第1のウォレットメタデータが、第1のリスクスコア及び第1のID検証分類の、少なくとも一つを含む、決定するステップと、
前記第1のウォレットメタデータを、前記取引検証及び記録ネットワーク内のブロックチェーンに格納するステップと、
前記第1のデジタルウォレットに関連付けられた粒度情報に基づいて生成される制限付き使用キーを用いて、前記第2のデジタルウォレットが、前記粒度情報によって決定される粒度のレベルにて、前記ブロックチェーンに格納される前記第1のウォレットメタデータにアクセスすることを可能にするステップと、
少なくとも前記第1のデジタルウォレット及び前記第2のデジタルウォレットを含む第1の取引要求を受信するステップと、
(i)第1のウォレットメタデータと第2のデジタルウォレットに関連付けられた取引ルールとの比較
と、及び、
(ii)前記粒度情報によって決定される粒度のレベルにて前記第1のウォレットメタデータ
にアクセスする第2のデジタルウォレットに応じて前記第2のユーザによって提供されるユーザインプット
と
の少なくとも一つに基づいて、前記第1の取引要求に応答するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年6月10日出願の米国特許仮出願第62/859,665号「TOKENIZED ASSET BACKED BY GOVERNMENT BONDS AND RISK SCORING OF ASSOCIATED TOKEN TRANSACTIONS」の優先権と利益を主張し、その開示は全ての目的で参照によりその全体が本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、一般に、例えば暗号通貨システムなどの価値を交換するための分散型デジタルシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
暗号通貨は、交換媒体として採用されるように設計されたデジタル資産である。既存の暗号通貨は、金融取引を保護し、追加ユニットの作成を制御し、資産の移転を検証するために強力な暗号を使用している。一形態として、暗号通貨は、中央集権的なデジタル通貨及び中央銀行システムとは対照的に、分散型制御を使用している。
【0004】
ビットコインやイーサリアムなどの暗号通貨は人気を集めているが、商品又はサービスについてマーチャントに広く受け入れられることはまだない。暗号通貨を支払形態として受け入れることを選択したマーチャントは、暗号通貨を使用して他の業者に支払いを行うか、又は暗号通貨を法定通貨と交換することができるようになり、相手方の身元も相手方の取引リスク履歴も分からないというリスクを引き受けることになる。そのような交換が可能な場合でも、暗号通貨の価値の変動は、それを受け入れることを選択したマーチャントが引き受ける別のリスクとなる。
【0005】
従来の暗号通貨の為替レートの変動を考慮して、代替的な暗号通貨システムが開発されてきた。一例として、「安定コイン」は、暗号通貨トークンの知覚価値以外のものに固定された価値を有する暗号通貨である。安定コインは、何らかの「安定した」資産又は資産のバスケットに裏打ちされている可能性がある。例えば、安定コインは、法定通貨である不換紙幣、金のような取引所取引商品、又は他の何らかの資産にペッグされ得る。
【0006】
安定コインの重大な欠点は、取引に分散型ネットワークを利用することはあっても、安定コインを支える資産が中央で所有又は管理されることである。安定コインが不換紙幣にペッグされている場合、銀行又は他の金融機関は一般的に、安定コインの供給残高を裏付けるのに十分な量の不換紙幣を保有している。しかし、この場合、安定コインの裏付けとなる資産やレバレッジを効果的に集中管理することになり、破綻リスクが生じ、「分散型」暗号通貨の主要な魅力の一つが損なわれてしまう。例えば、安定コインの裏付けとなる不換紙幣を保有する銀行やその他の金融機関が破綻した場合、安定コインの保有者は損失を被ることになる。更に、安定コインの取引は一般的に匿名性が高いため、多くの銀行が安定コインへの関与に消極的である。
【発明の概要】
【0007】
本明細書で開示するシステム及び方法は、ブロックチェーン上でユーザを識別し、検証し、その取引のスコアリングを追跡することを可能にすることによって、上記で言及した問題に対処するものである。
【0008】
本明細書で開示するのは、ソブリン債に裏付けられたトークン化された暗号資産(又は「安定コイン」)を、ネットワーク上の取引相手との取引のリスクをスコアリングし、他の方法で評価するように構成された制御ネットワークで取引することを可能にするシステムである。安定コインは、政府が発行する不換紙幣(例:米ドル、ユーロ)にペッグされ、同じ通貨建てのソブリン債(例:米国債、欧州中央銀行(ECB)債)を購入し保有することによって担保される。つまり、USD建ての安定コインは米国債、EUR建ての安定コインはECB債といった具合に、それぞれ裏付けがある。国債は規制された金融機関に保管される。トークン化された暗号資産は、特定の銀行に裏打ちされたり保有されたりするのではなく、政府の債務に裏打ちされているので、トークン化された暗号資産の安定性は、不換紙幣で担保を保有する単一の銀行の安定性というよりも、政府の債務の安定性に似ている。銀行は破綻する可能性があり、銀行にある不換紙幣や倉庫にある金などの資産に裏打ちされた分散型トークン化資産にリスクをもたらす可能性がある。例えば、資金を保有する銀行が債務超過に陥ったり、ライセンスを剥奪されたり、政府から制裁を受けたりする可能性がある。トークン化された暗号資産の担保を国庫債券などのソブリン債に置くことで、これらの銀行関連のリスクは排除される。
【0009】
流動性需要を管理するために、トークン化された暗号資産の総発行価値の一定の割合は、ペッグされた不換通貨に戻る償還を要求するトークン保有者に毎日の決済要件を行う目的のみのために、世界中の銀行口座に保持される。一つの実装では、流動性計算は、不換通貨日次決済バランス178、及び利用する不換決済ルート(最小コストルーティング)などの日次流動性要件を決定するように構成された人工知能ベースのサービスによって管理される。
【0010】
システムの各ユーザは、公開キー及び秘密キーのペアからなるウォレットアドレスを発行されてもよい。ユーザのアイデンティティの検証は、例えば、ウォレットが発行されるときに行われ、受け入れられた基準(例えば、銀行機密保護法(BSA)基準)に従ってもよい。一般に、ウォレットアドレスを構成するキーのペアは、ユーザによって提供される任意のアイデンティティ文書及び/又は採用される許容可能なアイデンティティ検証方法と関連付けられ、またユーザのリスクスコアと関連付けられ、ウォレット及びユーザと関連付けられたメタデータとして格納される。
【0011】
実施形態では、スマートコントラクトは、ウォレットのユーザがトークン化資産と同じ通貨で不換紙を提供すると、所定のウォレットアドレスに新しいトークンを発行する。その後、この不換紙幣の一部又は全部が、不換紙幣で表示された政府発行の債券を購入するために使用される。トークンは、世界中の代替暗号資産取引所に上場され、取引され得る。
【0012】
一つの実装では、ウォレットアドレスは、識別検証に関連するフラグと、ウォレットに関連するリスクスコアを示すフィールドとを有することになる。例えば、ID関連フラグは、検証が、例えば、欧州中央銀行基準及びBSA基準の一方又は両方を満たしていることを示すことができる。これにより、ウォレットに関連するユーザと取引しようとするカウンタパーティは、ユーザのアイデンティティが検証されたかどうかを知り、ウォレットのユーザが関連した取引のタイプ(例えば、潜在的にリスクが高いか良性の可能性が高いか)を感じ、更にリスクデータ、アイデンティティ文書(パスポートコピーや住所証明文書など)へアクセスすることができるようになる。アイデンティティとリスクスコアデータはブロックチェーン上に保存され、ウォレットのユーザが生成する制限付き使用キーを作成することによって取得することができ、サマリーデータ、ファイルアクセス(アイデンティティ文書のコピーなど)、リスクスコア、制限付き使用キーの有効期限などのオプションを含むデータの取得に関連する制限を決定する。使用制限キーは、ウォレットが個人取引、業者、金融機関、政府機関などの取引を行う可能性のあるカウンタパーティに提供される。
【0013】
所定のユーザのリスクスコアは、ユーザの行動、取引、KYC(Know Your Customer)及び/又はKYB(Know Your Business)データ及び基準、並びに地理的及び他の情報に基づいてもよい。KYC及び/又はKYB文書は、文書の有効性のスコアを強化するために複数のソースによって検証することができ、これらの確認結果はウォレットアドレスに関連付けられたブロックチェーン上に記録される。また、KYC及びKYBデータの確認データは、ガバナンスモデルで公開され、クラス適合性(BSAに適合、EEA中央銀行に適合、中国の規制に適合など)によって識別される場合がある。アイデンティティ及びリスクスコアデータは、ブロックチェーン上に格納され、ウォレットユーザが生成する制限付き使用キーを作成することによって取得することができ、要約データ、ファイルアクセス(アイデンティティ文書のコピーなど)、リスクスコア及び制限付き使用キーの有効期限などのオプションを含むデータの取得に関連する制限を決定する。制限付き使用キーは、ウォレットが個人取引、業者、金融機関、政府機関などの取引を行う可能性のあるカウンタパーティに提供される。
【0014】
一つの実装では、トークン・システムのユーザは、最小のKYC閾値を満たすことを要求し(ベースクラス適合)、任意のシステム参加者は、与えられたウォレットのKYCレベル(クラス適合)及びリスクスコアに基づいて、他の当事者との取引を制限することが可能である。例えば、アメリカの人がメキシコの人に送金したい場合、取引相手は送金者と受取人の両方がそれぞれの国のKYC要件にクラス適合していることを要求することができる。これは、ウォレットアドレスの制限付き使用キーから、以下のようなデータで取得することが可能である。
KYC:認証済み
KYCクラス適合性:米国BSA、EEA中央銀行、ETC
リスクスコア:(0~1000のスコア)、1000が最高リスク
利用できる書類:パスポート、運転免許証、公共料金の請求書など
書類の詳細(書類番号、有効期限、発行機関、個人情報など)
【0015】
ユーザは、データファイルを解除するための制限付き使用キーを取引相手に提供することにより、自分のプロファイル内のKYCデータへのアクセスを取引相手に提供することができるようになる予定である。(変更を管理するためのオンチェーンガバナンスとともに)リスクスコアアルゴリズムは公開され、要約されたデータは、ウォレットユーザから制限付き使用キーを提供された当事者に対してパブリックアドレスから利用可能となる予定である。
【0016】
一つの実装では、ネットワーク内のすべての参加者は、(KYC及びリスクスコアとともに)彼らのパブリックアドレスによって識別可能である。システムは、例えば、ネットワーク参加者に関連する行動及びデータを考慮に入れることができる人工知能(AI)アルゴリズムを使用して参加者のリスクスコアを決定することができる。リスクスコアを維持することで、ネットワーク参加者の信頼性を確保し、ネットワークが不正な活動(例えば、マネーロンダリングやテロ組織の資金調達)に使用されるリスクを軽減することができる。これにより、例えば、低リスクスコアを求める参加者は、ウォレットにKYCデータを提供し、他の検証済みで低リスクスコアの取引相手と取引を行うよう促される。リスクスコアは、取引相手がリスクを軽減することを支援するため、信用格付けシステムにおけるFICOスコアのような利点を有する。
【0017】
リスクスコアアルゴリズムは、好ましくは、地域と取引額を考慮する。例えば、イラン(制裁対象国)の誰かによって開かれたウォレットは、通常、米国市民によって開かれたウォレットよりも高いリスクスコアで開始されるであろう。同様に、一般に危険とみなされる国のユーザに関連するウォレットに非常に大きな金額を支払うために使用されるウォレットは、米国内の既知のカウンタパーティに比較的小さな金額を支払うために使用されるウォレットよりもはるかに高いリスクスコアを有する可能性が高い。したがって、好ましいリスクスコアを維持するために、ウォレットのユーザは、比較的良いリスクスコアを有する、アイデンティティ検証が検証された他のウォレットとのみ取引すると指定できる。
【0018】
このように、各ウォレットにリスクスコアを関連付ける結果、お金の保有と転送が監査可能、信頼性、及び報告可能になり、それによってAMLの問題が軽減される。
【0019】
一態様では、本開示は、政府発行の債務によって担保された安定した暗号通貨の発行及び交換を促進するためのコンピュータ実装システムに関し、本システムは、ブロックチェーンデータ構造を格納するように構成された複数の分散型ノードを含む取引検証及び記録ネットワークと通信する管理プラットフォームと、を含む。管理プラットフォームは、少なくともスマートコントラクトモジュール及びアイデンティティ(ID)及びリスクスコアモジュールに関連するコンピュータプログラム命令を格納するように構成されたメモリと、コンピュータプログラム命令によって、少なくともスマートコントラクトモジュール及びID及びリスクスコアモジュールを実装するように構成された一つ以上の物理コンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプログラム命令は、第1のユーザに関連付けられた第1のデジタルウォレット及び第2のユーザに関連付けられた第2のデジタルウォレットを確立するための命令を含む。命令は、第1のユーザに関連付けられたユーザパラメータ及び財務情報に基づいて、第1のデジタルウォレットのための第1のウォレットメタデータを決定するための命令を更に含み、第1のウォレットメタデータは、第1のリスクスコア及び第1のID検証分類のうちの少なくとも一つを含む。命令はまた、第1のウォレットメタデータを取引検証及び記録ネットワーク内のブロックチェーンに格納することと、第1のデジタルウォレットに関連付けられた粒度情報に基づいて生成された制限付き使用キーを使用して、第2のデジタルウォレットが、粒度情報によって決定される粒度のレベルでブロックチェーンに格納された第1のウォレットメタデータにアクセスすることを可能にすることとを含む。命令は、少なくとも第1のデジタルウォレット及び第2のデジタルウォレットを含む第1の取引要求を受信し、以下の少なくとも一つに基づいて第1の取引要求に応答するための命令を更に含む。(i)第1のウォレットメタデータと第2のデジタルウォレットに関連付けられた取引ルールとの比較、及び(ii)粒度情報によって決定された粒度のレベルで第1のウォレットメタデータを考慮した際に第2のユーザによって提供されたユーザ入力。
【0020】
評価するための命令は、第2のデジタルウォレットに関連付けられた第2のウォレットメタデータを第1のデジタルウォレットに関連付けられた追加の取引ルールと比較するための命令と、第1の取引要求に対応する第1の取引の完了を促進し、第1の取引をブロックチェーンに記録するための命令も含んでもよい。
【0021】
第1の取引要求が転送要求に対応する場合、命令は、評価に基づいて、安定した暗号通貨の指定された数のトークンを第1のデジタルウォレットから第2のデジタルウォレットに転送するための命令を更に含んでもよい。
【0022】
命令は、少なくとも第1のデジタルウォレットを含む第2の取引要求を受信するための命令と、第1のデジタルウォレットに関連する追加の取引ルールに基づいて第2の取引要求を評価するための命令を更に含んでもよい。第2の取引要求が償還要求に対応する場合、命令は、第2の取引要求の評価に続いて、第1のデジタルウォレットから安定した暗号通貨の指定された数のトークンを償還するための命令を更に含んでもよい。
【0023】
指示は、いずれかに基づいて第1のリスクスコアを調整するための指示を更に含んでもよい。(i)第1の取引要求の拒絶、(ii)第1の取引要求の受諾、及び(iii)第1のデジタルウォレットから第2のデジタルウォレットへの安定した暗号通貨の指定された数のトークンの転送が完了したこと。
【0024】
メモリは、人工知能(AI)エンジンのための命令を格納するように更に構成されてもよく、AIエンジンのための命令は、以下を含む。システムのオペレータに関連付けられたアカウントで、システムのユーザから受け取る政府発行の通貨の純額を決定すること、受け取る政府発行の通貨の純額に基づいて、作成すべき安定した暗号通貨の複数の新しいトークンを決定すること。安定した暗号通貨の複数の新しいトークンを担保するために購入する必要がある政府発行の債務の量を決定するステップと、安定した暗号通貨の複数の新しいトークンを作成し、システムのユーザに関連するデジタルウォレットに発行するステップと、を含む。
【0025】
AIエンジンのための命令は、更に以下のための命令を含んでもよい。システムのオペレータに関連付けられたアカウントで、システムのユーザによって引き出された政府発行通貨の純額を決定すること、引き出された政府発行通貨の純額に基づいて、破壊されるべき安定暗号通貨の複数の既存のトークンを決定すること、安定暗号通貨の複数の既存のトークンの破壊に関連して売却される必要がある政府発行債務の量を決定すること、安定暗号通貨の複数の既存のトークンを破壊すること。
【0026】
命令は、第1のリスクスコアを定期的に再計算するための命令を更に含んでもよく、第1のリスクスコアを再計算する際に使用されるユーザパラメータは、第1のユーザによって提供される政府発行通貨のソース、第1のユーザの富のソース、及び第1のユーザのアドレスの検証に関している。
【0027】
命令は、(i)ユーザパラメータのいずれかの変更、(ii)第1のデジタルウォレットを含む取引の完了又は試み、(iii)第2のデジタルウォレットの第2のリスクスコア及び第2のID検証分類を含むカウンタパーティリスク情報、の少なくとも一つに応答して第1のリスクスコアを再計算する命令を更に含んでもよい。
【0028】
第2のデジタルウォレットは、取引資格に関連する一連のルールを有するように構成されてもよく、第1のリスクスコア及び第1のID検証分類が一連のルールに適合しているかどうかを判断するように更に構成されてもよい。更に、第1のリスクスコア及び第1のID検証分類の少なくとも一方に関連する情報は、制限付き使用キーの生成に使用された粒度情報によって決定される粒度のレベルで、第2のユーザによるレビューのために提供されてもよい。
【0029】
命令は、第1のデジタルウォレットと第2のデジタルウォレットとの間で発生する取引に基づいて、第2のデジタルウォレットに関連する第1のリスクスコア及び第2のリスクスコアを調整するための命令を含んでもよい。
【0030】
別の態様では、本開示は、政府発行の債務によって担保された安定した暗号通貨の発行及び交換を促進するための方法に関し、本方法は、ブロックチェーンデータ構造を格納するように構成された複数の分散型ノードを含む取引検証及び記録ネットワークと通信する管理プラットフォームによって実装されている。管理プラットフォームは、少なくともスマートコントラクトモジュール及びID及びリスクスコアモジュールに関連するコンピュータプログラム命令を格納するように構成されたメモリを含み、管理プラットフォームは、コンピュータプログラム命令によって、少なくともスマートコントラクトモジュール及びID及びリスクスコアモジュールを実装するように構成された一つ又は複数の物理コンピュータプロセッサを更に含む。本方法は、第1のユーザに関連付けられた第1のデジタルウォレットと、第2のユーザに関連付けられた第2のデジタルウォレットとを確立することを含む。本方法は、第1のユーザに関連付けられたユーザパラメータ及び財務情報に基づいて、第1のデジタルウォレットのための第1のウォレットメタデータを決定することを更に含み、第1のウォレットメタデータは、第1のリスクスコア及び第1のID検証分類のうちの少なくとも一つを含む。第1のウォレットメタデータは、取引検証及び記録ネットワーク内のブロックチェーンに格納される。第1のデジタルウォレットに関連付けられた粒度情報に基づいて生成された制限付き使用キーは、第2のデジタルウォレットが、粒度情報によって決定される粒度のレベルでブロックチェーンに格納された第1のウォレットメタデータにアクセスすることを可能にする。本方法は、少なくとも第1のデジタルウォレット及び第2のデジタルウォレットを含む第1の取引要求を受信することと、以下のうちの少なくとも一つに基づいて第1の取引要求に応答することとを更に含む。(i)第1のウォレットメタデータと第2のデジタルウォレットに関連付けられた取引ルールとの比較、及び(ii)粒度情報によって決定された粒度のレベルで第1のウォレットメタデータを考慮した際に第2のユーザによって提供されたユーザ入力。
【0031】
本開示はまた、政府発行の債務によって担保された安定した暗号通貨の交換を促進する方法に関し、この方法は、複数の分散型ノードを含む取引検証及び記録ネットワークと通信する管理プラットフォームによって実施される。管理プラットフォームは、少なくともID及びリスクスコアモジュールに関連するコンピュータプログラム命令を格納するように構成されたメモリを含む。管理プラットフォームは、少なくともID及びリスクスコアモジュールを実装するためにコンピュータプログラム命令によって構成された一つ又は複数の物理コンピュータプロセッサを更に含む。本方法は、第1のデジタルウォレットの第1のウォレットインターフェースを介して、第1の制限付き使用キーの第1の粒度パラメータを受信することを含む。第1の制限付き使用キーは、第1のデジタルウォレットを使用して生成される。本方法は、第1の制限付き使用キーを第2のデジタルウォレットの所有者に提供し、第2の制限付き使用キーを受け取ることを更に含み、第2の制限付き使用キーは、第2のデジタルウォレットに関連する第2のウォレットインターフェースを介して受け取った第2の粒度パラメータに基づいて、第2のデジタルウォレットによって生成される。本方法はまた、第2の制限付き使用キーを使用して、ブロックチェーンウォレットから情報にアクセスすることを含み、情報は、第2の粒度パラメータによって決定される詳細レベルで第2のデジタルウォレットの所有者のID分類及びリスクスコアのうちの一つ以上に関連する。第1のデジタルウォレットと第2のデジタルウォレットとの間の取引を進めるための指示は、その後、第1のウォレットインターフェースを介して受信され得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明は、添付図面と併せて採用される以下の詳細な説明に関連して、より完全に理解されるものである。
【0033】
【
図1】
図1は、国債に裏付けられたトークン化された資産を提供し、そのようなトークン化された資産を含む取引をリスクスコアリングするためのシステムの主要構成要素のハイレベルの概観を提供する。
【
図2】
図2は、実施形態に従って実装されるスマートコントラクトモジュールの動作を説明する際に参照されるシステムを示す。
【
図3】
図3は、
図1のシステムへのユーザのオンボーディングのための例示的なプロセスのフロー図である。
【
図4】
図4は、
図1のシステム内で使用するためのトークンをユーザが購入する例示的なプロセスを示すフロー図である。
【
図5】
図5は、
図1のシステム内で安定した暗号通貨のトークンを鋳造又はバーンする例示的なプロセスを代表する流れ図である。
【
図6】
図6は、
図1のシステムから取得されたトークンをユーザが転送する例示的なプロセスを示すフロー図である。
【
図7】
図7は、実施形態によるID情報及びリスクスコアを管理するための例示的なプロセスのフロー図である。
【
図8】
図8は、潜在的な取引の各当事者が、取引の相手方当事者に対する識別情報及び分類情報並びにリスクスコアに、相手方当事者のデジタルウォレットによって生成された制限付き使用キーによって決定される粒度レベルでアクセスし得る例示的なプロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで、国債を裏打けとしたトークン化された資産を提供し、そのようなトークン化された資産を含む取引をリスクスコアリングするためのシステム100の主要構成要素のハイレベルな概観を提供する
図1に注目されたい。示されるように、システム100は、個人102、企業103、及びマーチャント104によって行われるデジタルウォレット取引を促進するように構成された、AIベースの管理プラットフォーム140を含む。本明細書で論じるように、プラットフォーム140は、デジタルウォレット108に関連する、又はデジタルウォレット108を含む、単にウォレットインターフェース107と呼ばれることもあるウォレットインターフェースアプリケーション107と通信する。システム100の動作中、トークン化された資産は、デジタルウォレット108の間で転送され、本明細書で説明する方法で購入及び償還され得る。
【0035】
一実施形態では、デジタルウォレット108間のトークン取引は、ウォレットインターフェース107と連動してプラットフォーム140によって調整される。個人102を含むトークン取引の場合、ウォレットインターフェース107Nは、例えば、一つ以上の無線又は他のネットワーク(図示せず)を介してプラットフォームのネットワークインターフェース141と通信しているモバイル通信デバイス109によって実行されるアプリケーションの形態であってよい。もちろん、ウォレットインターフェース107Nは、例えば、ノートブック又はタブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータなどの任意の数の個人用電子デバイスによって実行されてもよいことは理解されよう。ビジネス103又はマーチャント104の場合、ウォレットインターフェース1071、1072は、例えば、一つ以上のネットワーク(例えば、インターネット)を介してマーチャント接続モジュール156又はAPIと通信するコンピューティングインフラ(例えば、デスクトップ又はノートブックコンピュータ、サーバ、モバイル通信デバイスなど)によって実行されてもよい。また、システム100は、保有するトークン化資産又は当該トークン化資産に関連する国債170を裏付ける銀行105及び他の金融機関106とのインターフェースも有する。
【0036】
AIベースの管理プラットフォーム140は、多数の機能モジュールを用いて構成される。示されるように、AIベースの管理プラットフォーム140は、KYC(know your customer)モジュール110、ID及びリスクスコアモジュール114、及びスマートコントラクトモジュール118を含む。AIベースの管理プラットフォーム140は、トークン発行者/スマートコントラクト/トレードマネジャモジュール144、流動性マネジャモジュール152、及び銀行/金融機関接続インターフェース160を更に含む。
【0037】
システム100は、ユーザデジタルウォレット108に関連するメタデータ170と、デジタルウォレット108なら所有者によって指定された取引ルール122とを含むブロックチェーンデータベース112を更に含む。取引ルール122は、デジタルウォレット108間の取引を促進する際に、スマートコントラクトモジュール118及び取引マネジャ144によって利用される。データベース112は、更に、KYC情報174、及びユーザのID分類及びリスクスコア176を含む。デジタルウォレット108を含む取引は、複数の分散型ノード166を含む取引検証及び記録ネットワーク164内の一つ又は複数のブロックチェーン(以下、「ブロックチェーンウォレット」又は「ブロックチェーン」)として記録される。ID及びリスクスコアモジュール114は、本明細書に記載される方法で、かかる取引に少なくとも部分的に基づいて各デジタルウォレット108のリスクスコアを決定する。
【0038】
一実施形態では、トークン化された暗号資産は、政府が発行した不換紙幣(例えば、USD、EUR)にペッグされている。トークンは、ペッグされた不換紙幣に戻る決済のために飛行中の資金を除き、(トークンがペッグされているのと同じ国からの)国庫債券170を購入して保持することによって担保される。国債170は、規制された金融機関106に保管される。流動性需要を管理するために、不換紙幣182のパーセント担保は、ペッグされた不換紙幣に戻る償還を要求するトークン保有者の銀行184との毎日の決済取引を行う目的だけのために、世界中の機関105の銀行口座に保持される。流動性の計算は、AIエンジン148によって提供されるAIベースのサービスによって管理される。一実装では、このAIサービスは、(例えば、最小コストルーティング技術の使用によって)毎日の流動性要件及び利用するフィアット決済ルートを決定する。
【0039】
一実施形態では、AIベースの管理プラットフォーム140は、クラウドベースのプラットフォームとして実装される。既知のように、クラウドコンピューティングは、最小限の管理努力又はサービスプロバイダとの対話で迅速にプロビジョニング及びリリースすることができる構成可能なコンピューティングリソース(例えば、ネットワーク、サーバ、ストレージ、アプリケーション、ノード及びサービス)の共有プールへのオンデマンドのネットワークアクセスを促進するためのモデルとして特徴付けられる場合がある。クラウドシステムは、例えば、ストレージ、処理、帯域幅、及びアクティブユーザアカウントなどに関して、ある形式の計測機能を利用して、リソースの使用を自動的に制御する傾向がある。サービスとしてのクラウドソフトウェア(SaaS)、サービスとしてのクラウドプラットフォーム(PaaS)、サービスとしてのクラウドインフラ(IaaS)及びユーザ又はネットワーク参加者が展開した分散型ノード、ソフトウェアを実行する分散型ネットワークを妥協する、様々なクラウドサービスモデルが可能である。一実施形態においてプラットフォーム140は、Amazon(登録商標) Web Service Cloudを介して運用される。もちろん、他の実施形態では、プラットフォーム140の一部又は全部が、例えば、Microsoft(登録商標) Azureクラウド又は他のサードパーティクラウドなどの他のクラウド環境を使用して実装されてもよい。他の実施形態では、AIベースの管理プラットフォーム140は、クラウドベースのサービスを使用するのではなく、オンプレミスサーバ及び他のインフラストラクチャを使用することによって実装されてもよい。あるいは、独立したノードの分散型ネットワークを使用したシステムの提供を含む、オンプレミス及びクラウドベースのリソースの組み合わせを含むAIベースの管理プラットフォーム140のハイブリッド実装が可能である。
【0040】
一実施形態では、スマートコントラクトモジュール118によって格納されるメタデータ170は、ユーザID、KYCデータ、及びリスクスコアから構成される。メタデータは、一般に、ハッシュ化及び/又は暗号化され、当該メタデータ170が関係するデジタルウォレット108の所有者の許可なく、誰によっても読み取ることができない。一実施形態では、デジタルウォレット108の所有者は、カウンタパーティ(すなわち、別のデジタルウォレット108の所有者)に、提供するウォレット所有者のデジタルウォレット108を使用して生成された制限付き使用キーをカウンタパーティのウォレット所有者に提供することによって、そのような許可を与えることができる。
【0041】
このような制限付き使用キーは、ID分類、リスクスコア及び/又は他の情報に対してカウンタパーティに提供されるべきアクセスの程度に関して、ウォレットユーザの意図を明示するものである。一実施形態では、制限付き使用キーが生成されるべきデジタルウォレット108に関連するウォレットインターフェース107は、ウォレット所有者が制限付き使用キーの粒度を定義できるグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を用いて構成されるであろう。ある実施態様では、そのような粒度は、例えば、どのメタデータ170が、制限付き使用キーを提供された相手方ウォレット所有者に解放され得るかを決定し得る。ウォレットインターフェース107を通じて定義される粒度は、使用制限(例えば、制限付き使用キーの1回限りの使用(又は1より大きい定義された使用回数)、制限付き使用キーの有効期限など)も決定し得る。その後、アクセスが提供されているデジタルウォレット108の所有者は、電子メール、ウォレットインターフェース107間のアプリ間通信、又は他の電子通信を介して、制限付き使用キーをカウンタパーティウォレット所有者キーに配信し得る。
【0042】
AIエンジン148は、不換通貨と国債のバランスを管理する(国庫機能)。フィアット通貨の必要量は、国債をフィアットに変換するのに必要な時間、及びネットワーク上の決済需要をサポートするのに必要な時間に基づいて決定される。また、AIエンジン148は、ユーザが預けたフィアットに基づくトークンの発行やバーン、又はユーザが換金するためのスマートコントラクトモジュール118との調整も行う。
【0043】
KYCモジュール110は、ウォレット所有者の個人又はビジネスデータを収集し、スマートコントラクトで定義された地理的プロファイル及びルーチンに基づいて、それを検証する。これには、提出された文書(パスポート、公共料金請求書、企業登録文書)の検証、公的データベースに対する検証、画像比較、デバイスからの指紋採取、デバイスの指紋採取(すなわち、携帯電話のIMEI)などが含まれる。
【0044】
ここで、スマートコントラクトモジュール118の動作を説明する際に参照されるシステム200を示す
図2に注意が向けられる。
図2のシステムにおいて、スマートコントラクトモジュール118は、AIベース管理プラットフォーム140を実装するように構成されたクラウドベース管理プラットフォーム240上にインスタンス化される。明確にするために、管理プラットフォーム240は、スマートコントラクトモジュール118のみを含むものとして
図2に描かれており、プラットフォーム140の他のモジュールは、プラットフォーム240内に統合されているが
図2には図示されていないことが理解される。
【0045】
図2に示されるように、クラウドベース管理プラットフォーム240は、複数の分散型ノード252を含む取引検証及び記録ネットワーク248と通信している。ネットワーク248のノード252は、システム200のユーザのデジタルウォレット108間の取引を分散型台帳に記録する。各ユーザは、そのようなデジタルウォレット取引を促進するためのウォレットインターフェース107を備えるように構成されたコンピューティングデバイス109を有することができる。多数の外部データ、技術及びサービスプロバイダ264は、システム200内で使用するためのデジタルウォレットを発行するための新しいユーザによる要求を評価することに関連して、様々な検証又はチェック情報265をクラウドベース管理プラットフォーム240に提供することができる。この情報は、例えば、ソーシャルメディアプロファイルチェック266、アイデンティティチェック267、富の源泉チェック268、及びアンチマネーロンダリング(AML)チェック又は制裁チェック269を含むことができる。
【0046】
一実施形態では、スマートコントラクトモジュール118及び取引マネジャ144は、ウォレット作成、転送及びデータ記録に関連して、一連の検証及び制御を実施する。検証及び制御は、例えば、以下を含むことができる。(1)ウォレットアカウント作成、(2)ウォレットアカウント検証(KYC)、すなわち、ウォレットへのKYCの登録の管理;(3)ウォレットデータを用いたリスクスコアの計算及びウォレットの現在のリスクスコアの記録;(4)ユーザ及びその取引に関連するウォレットの取引データの更新;(5)送り手及び受け手のルールを用いた2つのウォレット間の安定した暗号通貨のトークンの転送及び管理の管理;(6)トークン転送を許容/防止するためのウォレットオーナールール(例えば、取引先のKYCレベル、取引先のリスクスコア、転送量、転送速度、トークン転送の最小最大サイズ、ウォレットユーザのデータファイルに関するルールの管理);(7)新しいトークンの発行(鋳造)及び発行のための国庫検証の管理;(8)トークンの償還及び退蔵(バーン)の管理。
【0047】
一実施形態では、デジタルウォレット108間のすべての取引は、スマートコントラクトモジュール118及び取引マネジャ144によって管理される。すなわち、全てのウォレット取引は、プラットフォーム240を流れ、スマートコントラクトモジュール118によって、取引検証及び記録ネットワーク248内に存在するブロックチェーンウォレットに記録される。これにより、有利には、スマートコントラクトモジュール118は、取引の各当事者によって確立された取引ルール122を実施することができ、それにより、各当事者は、取引の受け入れに係る彼らのルールが尊重されることを保証する。本実施形態では、ID及びリスクスコアモジュール114は、プラットフォーム240によって促進される各取引に関連する情報を用いて、取引に関与するデジタルウォレット108のリスクスコアをリアルタイムで調整するように構成されてもよい。
【0048】
他の実施形態では、直接取引は、プラットフォーム240の関与なしにデジタルウォレット108の間で発生することが許可されるであろう。この場合、取引に関与する第1及び第2のデジタルウォレット108に関連するウォレットインターフェース107の上又は両方が、取引検証及び記録ネットワーク248内のブロックチェーンウォレットに取引を記録することに参加することができる。この場合、スマートコントラクトモジュール118は、一般に、依然として、ブロックチェーン履歴に記録された第1及び第2のデジタルウォレット108のブロックチェーン履歴を読み取るように構成されるであろう。これにより、ID及びリスクスコアモジュール114は、以下に説明する方法で、第1及び第2のデジタルウォレット108に関連するリスクスコアを適切に調整することができる。
【0049】
デジタルウォレット108間の潜在的な取引がプラットフォーム240によって促進される場合、スマートコントラクト118は、潜在的な取引の適格性の初期判定を行うために、取引の各当事者の取引ルール122を実施する。例えば、潜在的な取引の第1の当事者の第1のデジタルウォレット108は、提案された取引の第2の当事者の第2のデジタルウォレット108のリスクスコア及び/又はID検証分類に係る取引ルール122に関連付けられる場合がある。例えば、第2の当事者のリスクスコア及び/又はID検証分類が確立された方法が第1の当事者のルールに準拠する場合、スマートコントラクト118は、第1のデジタルウォレット108に関連付けられたウォレットインターフェース107に適切な肯定的表示(例えば、取引資格を意味する一つ以上の緑のチェックマークを有するグラフィカルユーザインターフェース)を提供してもよい。逆に、第2の当事者のリスクスコア及び/又はID検証分類が第1の当事者のルールに従って確立されなかった場合、スマートコントラクト118は、第1のデジタルウォレット108に関連付けられたウォレットインターフェース107に適切な否定的表示(例えば、取引不適格を意味する一つ又は複数の赤の「X」を有するグラフィカルユーザインターフェース)を提供してもよい。
【0050】
概略、(例えば、第1及び第2のデジタルウォレットの所有者によって確立された取引ルール122の評価に基づいて)第1及び第2のデジタルウォレット間の提案された取引が進行する資格があるというスマートコントラクト118による発見は、提案された取引の実行に自動的につながることはない。その代わりに、取引適格性のこの肯定的な初期判定は、提案された取引の相対的リスクに関する情報をかかるウォレット108のユーザに提供するために、第1及び第2のデジタルウォレット108のウォレットインターフェース107に伝達され得る。この時点で、ウォレット108のユーザは、提案された取引の相手方に関連するブロックチェーンウォレット内に記録されたより詳細な情報を評価するように傾く可能性がある。一実施形態では、提案された取引の当事者が利用できる情報の粒度は、取引の相手方当事者によって当該当事者に提供される制限付き使用キーによって決定される。更に他の実施形態では、スマートコントラクトモジュール118は、提案された取引の適格性の初期判定を行うためにルール122を適用することはない。むしろ、第1及び第2のデジタルウォレット108の所有者(すなわち、提案された取引の当事者)はそれぞれ、取引の相手方当事者によって当該ユーザに提供された制限付き使用キーによって決定される粒度で、提案された取引の相手方当事者に関連するブロックチェーンウォレットの情報を評価することを可能にされる。この場合、第1及び第2のデジタルウォレットの所有者は、提案された取引の相手方当事者によって当該当事者に提供された再構築された使用キーを用いてブロックチェーンウォレットから各当事者が取得した情報のみに基づいて、提案された取引を進めることを許可するか否かについての決定を行うことができる。
【0051】
例示として、2つのデジタルウォレット108の間で提案された取引が、車両の売却に関連する場合を考える。この場合、デジタルウォレット108の一方又は両方に関連するルール122は、KYC情報に関連するデータが収集され、管轄のルールに従っている必要があり、一定の基準を満たすことを指定することができる。スマートコントラクト118がこのことを確認した場合、提案された取引に関与するデジタルウォレットの一方又は両方に関連するウォレットインターフェース107に、該当する場合、適切な肯定的表示を提供することができる。例えば、車両の売り手に対応する当事者は、相手方当事者(すなわち、車両の購入者)が米国からのID認証された顧客であると判断することができる。相手方当事者によって車両の売り手に提供された制限付き使用キーのパラメータに応じて、スマートコントラクトモジュール118は、相手方当事者のリスクスコア(例えば、低リスク、中リスク、高リスク)の表示を売り手に提供することも可能である。相手方のリスクスコアが低い場合、これは、相手方が疑わしいと思われる取引を行っておらず、(それぞれのリスクスコアによって決定される)不謹慎な当事者と取引を行っていないことを車両の売り手に通知し得る。このとき、車両の販売者は、相手方がID認証済みでリスクスコアも低いため、マネーロンダリングのリスクはないと判断することができる。従って、売り手は、ウォレットインターフェース107を介してスマートコントラクト118に、売り手がカウンタパーティから車両購入価格を受け取る意思があることを通知してもよい。
【0052】
一方、車両の売り手が、相手方のIDが最新でないと判断する程度、及び/又は相手方が高いリスクスコアを有する場合、売り手は、取引を進めることを選択しないことができる。売り手は、スマートコントラクトモジュール118が、売り手のウォレットインターフェース107に、相手方が売り手の一つ以上のルールに準拠していないことを通知したから、及び/又は売り手が、相手方によって売り手に提供された制限付き使用キーによって決まる粒度のブロックチェーンウォレットからこの情報を取得できたから、この決定を行うことができたかもしれない。
【0053】
一実施形態では、カウンタパーティウォレット所有者は、カウンタパーティウォレット所有者に提供された制限付き使用キーによって可能になる範囲を除いて、取引検証及び記録ネットワーク248内に記録されたブロックチェーンウォレット内に含まれる別のウォレット所有者の取引情報にアクセスすることができなくなる。上記に示したように、ウォレット所有者は、関連するウォレットインターフェース107を介してウォレット所有者のデジタルウォレット108によって生成された制限付き使用キーのパラメータを調整することができる。例えば、制限付き使用キーは、QRコード(登録商標)の形態とすることができ、QRコードを所持する相手方当事者によってスキャンされると、相手方当事者のウォレットインターフェース107を介して、ウォレット所有者のアイデンティティが確認され、ウォレット所有者のリスクスコアが低いという緑色のチェックマーク又は他の表示を提供する。他の場合、ウォレット所有者は、ウォレット所有者に関するより詳細な情報をカウンタパーティに提供するために、制限付き使用キーを構成することができる。例えば、カウンタパーティが制限付き使用キーに対応するQRコードをスキャンすると、パスポートの画像又は関連する詳細情報がカウンタパーティのウォレットインターフェース107に提供されるように、制限付き使用キーが生成され得る。別の例として、デジタルウォレット108の所有者との取引を考えている銀行は、ウォレット所有者のパスポート、IDスコア、リスクスコア、及びウォレット所有者がビジネスを行ってきた国のコピーを銀行に提供するように所有者に要求することができる。この場合、ウォレット所有者は、ウォレットインターフェース107を介して、ウォレット所有者のデジタルウォレット108に、銀行の職員がウォレット所有者のパスポートの画像、ウォレット所有者のIDエンティティスコア、ウォレット所有者が取引を行っている国のリスト、及びウォレット所有者のリスクスコアを(銀行のウォレットインターフェース107を介して)見ることができる制限付き使用キーを作成するよう指示する。そこで、潜在的なカウンタパーティの代表者(例えば、銀行の従業員)は、制限付き使用キー(例えば、QRコード)を使用して、ブロックチェーンウォレットに保存されているウォレット所有者のパスポートの画像、クレジット情報、IDスコア及び/又はID検証ステータスなどを取得することになる。この例では、QRコードは、そのような画像及び情報へのアクセス、及び/又はQRコードを使用してリンクにアクセスすることができるブロックチェーンウォレット上に格納されたウォレット所有者のパスポートの画像等を含むファイルへのリンクへのアクセスを許可する秘密キーとして機能する。この例では、制限付き使用キーは、ある定義された期間にわたって、又はウォレット所有者がプラットフォーム240を通じて取引を開始して以来、ウォレット所有者が取引に従事した相手方に関連する国のリストを返すために利用されることも可能である。したがって、ウォレット所有者のデジタルウォレット108は、カウンタパーティに公開されるタイプ及び粒度又はアイデンティティ検証及びリスクスコア情報を可能にする制限付き使用キーを生成するように構成されてもよいことが理解されよう。
【0054】
ここで、システム100の動作の様々な側面を代表するフロー図である
図3~7に注目されたい。
【0055】
図3は、ユーザをシステム100にオンボーディングするための例示的なプロセス300のフロー図である。オンボーディングプロセスの最初の段階として、ユーザ102はプラットフォーム140にウォレットアドレスを作成するための要求を送信する(段階302)。要求に応答して、取引マネジャ144は、メタデータ及びKYCスコアを伴う新しいウォレットアドレスを作成する(段階304)。その後、(管轄のルールに基づく)好ましい方法を用いて、KYCチェックが完了する(段階306)。ユーザによって提供されたデータ及びシステムによって実行された検証に基づいて、新しいデジタルウォレット108は、ID検証分類及びリスクスコアを割り当てられる(段階308)。
【0056】
図4は、ユーザがシステム100内で使用するためのトークンを購入する例示的なプロセス400を示すフロー図である。示されるように、ユーザ銀行184は、最初に不換紙幣(例えば、米ドル)をパートナー銀行105に送信する(段階402)。次いで、パートナー銀行105は、不換紙幣の対応する量を、例えば、プラットフォーム140の一つ以上のオペレータ(複数可)などの一つ以上のエンティティに関連するプラットフォーム国庫口座190に送信する(段階404)。次いで、スマートコントラクトモジュール118は、ユーザのID分類及びリスクスコアをチェックして、ユーザが購入が望まれるトークンを受け取る資格があるかどうかを判断する(段階408)、すなわち、スマートコントラクトモジュール118は、トークン購入取引を進めるために承認するか否かを判断する)。ユーザがトークンを送る資格があると判断された場合(段階412)、スマートコントラクトモジュール118は、トークンを国庫ウォレット192からデジタルウォレット108に転送し、すなわち、スマートコントラクトモジュール118は、取引検証及び記録ネットワーク164内に存在するブロックチェーンウォレットにトークン転送を記録する(段階416)。ユーザがトークンの送信に不適格であると判断された場合(段階412)、スマートコントラクトモジュール118は取引を拒否し(段階420)、国庫口座190内のフィアット通貨は、直接又はパートナー銀行105を介してユーザ銀行184に戻される(段階424)。一実施形態では、パートナー銀行105と、プラットフォーム国庫口座190を維持する金融機関106は、同じ機関であってもよい。
【0057】
図5は、システム100内で安定した暗号通貨のトークンを鋳造又はバーンさせる例示的なプロセス500を代表するフロー図である。新しいトークンを鋳造するプロセスは、プラットフォーム国庫口座190のユーザから不換紙幣(例えば、米ドル)を収集することから始まる(段階502)。これは、例えば、一つ以上のユーザ銀行184のユーザ口座から、プラットフォームによって利用されるパートナー銀行105を潜在的に経由して、プラットフォーム国庫口座190に不換紙幣を転送することによって発生する可能性がある。同様に、トークンをバーンする、すなわち破壊するプロセスは、ユーザによって開始された引き出し取引に応答して、プラットフォーム国庫口座190から不換紙幣を転送することによって始まる(段階502)。(新規発行用の)受け取った正味の不換紙幣又は引き出した(トークンをバーンする)ことに基づいて、安定した暗号通貨の新規トークンを鋳造する必要があるか、又は既存のトークンを燃やす必要があるかについての決定が行われる(段階506)。AIエンジン148は、発行されたすべてのトークンを100%担保するために購入又は売却すべき不換紙幣の国庫債券の量を決定する(段階510)。一実施形態では、購入又は売却すべき国庫債券の量を決定する際にAIエンジン148によって使用されるパラメータは、不換USDの正味日次流動性要件、債券満期、新規鋳造からの利用可能なUSD、米国経済のマクロ経済見通し、などを含む。国庫債券が売買されると、スマートコントラクトモジュール118は、新しいトークンを鋳造し、又は既存のトークンをバーンする(段階514)。
【0058】
図6は、ユーザがシステム100から取得したトークンを転送する例示的なプロセス600を示すフロー図である。プロセス600は、ユーザが安定した暗号通貨の一つ以上のトークンを償還する要求を送信したときに開始する(段階602)。スマートコントラクトモジュール118は、ユーザのID分類及びリスクスコアをチェックして、ユーザがトークンを不換紙幣と交換する資格があるかどうかを決定する(段階606)。ユーザがトークンを償還する資格がある場合(段階610)、スマートコントラクトモジュール118は、ユーザのデジタルウォレット108から国庫ウォレット192にトークンを転送し、償還するユーザに対して不換通貨による決済がトリガーされる(段階614)。ユーザがトークンを償還する資格がない場合(段階610)、取引は拒否される(段階618)。そして、拒否は、取引検証及び記録ネットワーク164内のブロックチェーンウォレットに記録され、ユーザのリスクスコアを決定する際にID及びリスクスコアモジュール114によって考慮され得る(段階622)。
【0059】
図7は、一実施形態によるID情報及びリスクスコアを管理するための例示的なプロセス700のフロー図である。一実施形態では、ID及びリスクスコアモジュール114は、ユーザのリスクスコアを定期的に、かつユーザのリスクスコアに潜在的に影響を与える全てのイベント後に再計算するように構成される(段階702)。プロセス700は、ユーザのリスクスコアの再計算を必要とするイベント(例えば、ユーザに関する任意のシステム取引、又は任意のユーザ若しくは他のパラメータにおける変化)の発生を検出することを含む(段階706)。一実施形態では、様々なユーザパラメータ、ソーシャルスコア、過去の取引(例えば、完了した取引及びウォレット所有者間で情報が交換されたが取引が成立しなかった取引案の両方)、及び財務スコアが、リスクスコアの計算において使用される。例示的なユーザパラメータは、例えば、ID確認、住所確認、資金源、富の源泉、制裁チェックなどを含むことができる。ユーザの財務スコアは、例えば、ユーザの銀行口座、デビットカード及びクレジットカード、並びに他の資産の検証に基づいてもよい。
【0060】
ユーザのリスクスコアに影響を与える可能性のあるイベントを検出すると(段階706)、ユーザのリスクスコアは、上記で特定されたものなどの定義されたパラメータセットに基づいて再計算される(段階710)。プロセス700は、ユーザが過去Xヶ月(例えば、X=12)以内にKYC情報を更新したかどうかを定期的に判断することも含み得る(段階714)。ユーザが過去Xヶ月以内にKYC情報を更新した場合(段階714)、他の関連情報が変更されない限り、そのユーザのID分類及びリスクスコアは変更されないままである(段階720)。ユーザが過去Xヶ月以内にKYC情報を更新していない場合(段階714)、ユーザのID分類は更新され、リスクスコアに対する任意の結果的な変更も行われる(段階724)。
【0061】
一実施形態では、デジタルウォレット108の所有者又はユーザは、例えば、予防接種、医療記録又は他の潜在的に関連するプロファイル情報などの追加データを、ユーザのKYC情報174及び/又はID分類及びリスクスコア176に追加してもよい。専門家の場合、この追加のプロファイル情報は、例えば、専門家ライセンスに関連する情報、及びそのようなライセンスが独立して検証されているかどうかを含み得る。
【0062】
図8は、潜在的な取引の各当事者が、取引相手のデジタルウォレットによって生成された制限付き使用キーによって決定される粒度のレベルで、取引の相手方の識別及び分類情報並びにリスクスコアにアクセスし得る例示的なプロセス800のフロー図である。プロセス800は、第1のデジタルウォレットの第1のウォレットインターフェースを介して、第1の制限付き使用キーの粒度パラメータを定義することを含む(段階802)。プロセス800は、第2のデジタルウォレットの第2のウォレットインターフェースを介して、第2の制限付き使用キーの粒度パラメータを定義することを更に含む(段階806)。第1制限付き使用キーは、第1デジタルウォレットを使用して生成され、第2制限付き使用キーは、第2デジタルウォレットを使用して生成される(段階810)。第1制限付使用キーは、第2デジタルウォレットの所有者に提供され、第2制限付使用キーは、第1デジタルウォレットの所有者に提供される(段階816)。次に、第1の制限付き使用キーは、(例えば、第2のデジタルウォレットの所有者の代わりに)第1のウォレットインターフェースを介して指定された粒度パラメータによって決定される詳細レベルで、第1のデジタルウォレットに関連するID分類及びリスクスコアのうちの一つ以上に関連する情報にアクセスするために使用されてもよい(段階820)。同様に、第2の制限付き使用キーは、(例えば、第1のデジタルウォレットの所有者に代わって)第2のウォレットインターフェースを介して指定された粒度パラメータによって決定される詳細なレベルで、第2のデジタルウォレットに関連するID分類及びリスクスコアのうちの一つ以上に関連する情報にアクセスするために使用されてもよい(段階820)。その後、第1のデジタルウォレットと第2のデジタルウォレットとの間の取引を進めるかどうかについて、第1のウォレットインターフェース及び第2のウォレットインターフェースから指示を受信することができる(段階826)。
【0063】
第1のデジタルウォレットと第2のデジタルウォレットのどちらの所有者も、取引ルールを指定していない可能性があり、したがって、取引適格性に関する決定を行う際にスマートコントラクトモジュール118が利用するための取引ルール122が存在しないことがある。この場合、第1のデジタルウォレット及び第2のデジタルウォレットの所有者は、各当事者に提供された使用制限キー(複数可)によって解放されたメタデータ170の目視検査に基づいて、独自の判断を行う。この場合、ウォレットの所有者は、取引が進行する資格があるかどうかを決定し、又は任意で所有者のウォレット及び/又はウォレットインターフェースにおいてルールを定義し、その後スマートコントラクトモジュール118によって自動的に実施され得る。
【0064】
本明細書で開示されるのは、トークン化資産と同じ通貨の不換紙幣を導入する新規ユーザに応答してスマートコントラクトから新しいトークンを発行することによって、トークン化資産の価格を安定させるための方法である。そして、受け取った不換紙幣は、政府発行の国庫債券や他の政府発行の債務を購入するために使用される。
【0065】
トークンは、世界中の代替暗号資産取引所に上場され、取引されることができる。トークン・システムの各参加者は、公開キーペアと秘密キーペアからなるウォレットアドレスを発行される。一実施形態では、各キーペア及び生成された制限付き使用キーは、ID文書及び又は許容されるID検証方法及びリスクデータに関連付けられる。システムは、ウォレット保有者の個人又は企業アイデンティティの検証及びリスクスコアを提供することができる。リスクスコアは、予め定義されたスケール上の単一の値からなり、例えば、ウォレット関連の行動、取引、KYC又はKYB、地理的及び他のデータ入力によって影響を受けてもよい。
【0066】
KYC及び/又はKYB文書は、文書の有効性のスコアを強化するために複数のソースによって確認することができ、これらの確認の結果は、ウォレットアドレスに関連付けられたブロックチェーンに記録される。
【0067】
KYC及びKYBデータ検証データは、ガバナンスモデルで公開され、クラス適合性(すなわち、BSAに適合、EEA中央銀行に適合、中国規制等に適合)によって識別されることができる。)
【0068】
様々な実施形態が上述されてきたが、それらは例としてのみ提示されたものであり、限定するものではないことが理解されるべきである。上述した方法が、特定のイベントが特定の順序で発生することを示す場合、特定のイベントの順序は、変更されてもよい。更に、イベントのうちの特定のものは、上記のように順次実行されるだけでなく、可能な場合には、並列処理で同時に実行されてもよい。異なる装置における様々なモジュールは、装置のプロセッサに位置するように示されているが、それらはまた、装置のメモリ(例えば、ソフトウェアモジュール)に位置し/格納され、プロセッサによってアクセスされ実行されることが可能である。したがって、本明細書は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に入る、開示された実施形態のすべてのそのような修正及び変形を包含することを意図している。
【0069】
本明細書で概説した様々な方法又はプロセスは、様々なオペレーティングシステム又はプラットフォームのうちの任意の一つを採用する一つ又は複数のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコード化することができる。更に、そのようなソフトウェアは、多数の適切なプログラミング言語及び/又はプログラミング若しくはスクリプトツールのいずれかを使用して書かれてもよく、フレームワーク又は仮想マシン上で実行される実行可能な機械語コード又は中間コードとしてコンパイルされてもよい。
【0070】
この点で、様々な発明概念は、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体(又は複数のコンピュータ可読記憶媒体)(例えば、コンピュータメモリ、一つ以上のフロッピーディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイ又は他の半導体デバイスの回路構成、又は他の非一時的媒体又は有形コンピュータ記憶媒体)であり、一つ以上のコンピュータ又は他のプロセッサで実行されると、上述した本発明の種々の実施形態を実行する方法を行う一つ又は複数のプログラムで符号化される。非一過性のコンピュータ可読媒体又は媒体は、その上に格納されたプログラム又はプログラムを一つ又は複数の異なるコンピュータ又は他のプロセッサにロードして、上で論じた本発明の様々な態様を実施できるように、輸送可能であることができる。
【0071】
用語「プログラム」又は「ソフトウェア」は、本明細書では、上記で論じたように実施形態の様々な態様を実装するためにコンピュータ又は他のプロセッサをプログラムするために採用することができる任意のタイプのコンピュータコード又はコンピュータ実行可能命令のセットを指す一般的な意味で使用されている。更に、一態様によれば、実行されたときに本発明の方法を実行する一つ又は複数のコンピュータプログラムは、単一のコンピュータ又はプロセッサ上に存在する必要はなく、本発明の様々な態様を実施するために多数の異なるコンピュータ又はプロセッサの間でモジュール方式で分散されてもよいことが理解されるべきである。
【0072】
コンピュータ実行可能な命令は、一つ以上のコンピュータ又は他のデバイスによって実行されるプログラムモジュールなどの多くの形態であってもよい。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行する、又は特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。一般的に、プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態において所望に応じて組み合わせたり、分散させたりすることができる。
【0073】
更に、データ構造は、任意の適切な形態で非一過性のコンピュータ可読媒体に格納されてもよい。図示を簡単にするために、データ構造は、データ構造内の位置を介して関連するフィールドを有するように示されてもよい。このような関係は、同様に、フィールド間の関係を伝える非一過性のコンピュータ可読媒体内の位置を有するフィールドのためのストレージを割り当てることによって達成されてもよい。しかしながら、データ構造のフィールドの情報間の関係を確立するために、ポインタ、タグ、又はデータ要素間の関係を確立する他の機構の使用など、任意の適切な機構が使用されてもよい。
【0074】
更に、様々な発明概念は、一つ以上の方法として具現化されてもよく、その例が提供されている。方法の一部として実行される行為は、任意の適切な方法で順序付けることができる。したがって、例示的な実施形態において連続的な行為として示されていても、いくつかの行為を同時に行うことを含む、例示とは異なる順序で行為が行われる実施形態が構築されてもよい。
【0075】
本明細書で定義され使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書における定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
【0076】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、反対のことが明確に示されない限り、“少なくとも一つ”を意味すると理解されるべきである。
【0077】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるフレーズ“及び/又は”は、そのように結合された要素の「いずれか又は両方」、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には接続的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。及び/又は」で記載された複数の要素は、同じ方法で解釈されるべきであり、すなわち、そのように結合された要素の「一つ又は複数」である。他の要素は、「及び/又は」節によって具体的に特定された要素以外に、具体的に特定された要素に関連するか否かにかかわらず、任意に存在することができる。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「comprising」などのオープンエンドの言語と組み合わせて使用される場合、ある実施形態では、Aのみ(任意にB以外の要素を含む);別の実施形態では、Bのみ(任意にA以外の要素を含む);更に別の実施形態では、A及びB両方(任意に他の要素を含む)などについて言及することができる。
【0078】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、「又は」は、上記で定義される「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的であること、すなわち、要素の数又はリストの少なくとも一つを含むが、一つ以上も含むこと、及び、任意に、追加のリストにない項目を含むことと解釈されるものとする。のみ」又は「のまさに一つ」のような明確に反対を示す用語のみ、又は特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」は、要素の数又はリストのまさに一つの要素を含むことを指すことになる。一般に、本明細書で使用される用語「又は」は、“どちらか”、“どちらかのみ”、“どちらかのみ”、又は“全く一つ”などの排他性の用語に先行される場合にのみ、排他的選択肢(即ち、「どちらか一方であって両方ではない」)を示すものと解釈されるものとする。“Consisting essentially of”は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0079】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、一つ以上の要素のリストに言及する「少なくとも一つ」という語句は、要素のリスト内の任意の一つ以上の要素から選択される少なくとも一つの要素を意味すると理解すべきであるが、必ずしも要素のリスト内に具体的にリストされた各々及び全ての要素の少なくとも一つを含むものではなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外しないものとする。また、この定義は、「少なくとも一つ」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連するか否かにかかわらず、任意に存在することができることを許容するものである。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも一つ」(又は、等価的に「A又はBの少なくとも一つ」、又は、等価的に「A及び/又はBの少なくとも一つ」)は、一実施形態において、Bが存在しない(及び任意にB以外の要素を含む)少なくとも一つの、任意に複数の、Aを参照することができる。別の実施形態では、Aが存在しない(及び任意にA以外の要素を含む)、任意に一つ以上のBを含む少なくとも一つ;更に別の実施形態では、一つ以上のA、及び一つ以上のBを含む(及び任意に他の要素を含む)、任意に少なくとも一つ;などである。
【0080】
上記明細書と同様に、特許請求の範囲において、「からなる」、「含む」、「運ぶ」、「有する」、「含む」、「伴う」、「保持する」、「からなる」等の全ての経過的フレーズは、オープンエンド、すなわち、含むがこれに限定しないことを意味すると理解されるものとする。経過的表現である「からなる」及び「から本質的になる」のみは、米国特許庁特許審査手続要覧第2111.03条に規定されるように、それぞれ閉じた又は半閉じた経過的表現でなければならない。