IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

特許7381637集合継手および下部遮音カバーの取り付け方法
<>
  • 特許-集合継手および下部遮音カバーの取り付け方法 図1
  • 特許-集合継手および下部遮音カバーの取り付け方法 図2
  • 特許-集合継手および下部遮音カバーの取り付け方法 図3
  • 特許-集合継手および下部遮音カバーの取り付け方法 図4
  • 特許-集合継手および下部遮音カバーの取り付け方法 図5
  • 特許-集合継手および下部遮音カバーの取り付け方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】集合継手および下部遮音カバーの取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20231108BHJP
   F16L 41/02 20060101ALI20231108BHJP
   F16L 55/033 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
E03C1/12 E
F16L41/02
F16L55/033
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022041553
(22)【出願日】2022-03-16
(62)【分割の表示】P 2018071788の分割
【原出願日】2018-04-03
(65)【公開番号】P2022079522
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】渕上 斉太
(72)【発明者】
【氏名】木村 英治
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 総
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 武司
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-014762(JP,A)
【文献】特開2017-014769(JP,A)
【文献】特開2011-208474(JP,A)
【文献】中国実用新案第206352329(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12
F16L 41/02
F16L 55/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦管接続部と横管接続部を有する上部接続管と、
前記上部接続管に接続され、上方よりも下方が縮径された管状をなすとともに合成樹脂材料により形成された下部接続管と、
前記下部接続管を覆う下部遮音カバーと、
を備えた集合継手であって、
前記下部接続管は、前記上部接続管の下方に接続される接続管部と、前記接続管部の下方に接続され、下方に向かうに従い縮径する傾斜管部と、前記傾斜管部の下端部に接続された下側管部と、を備え、
前記接続管部と前記傾斜管部との接続部分、および、前記傾斜管部と前記下側管部との接続部分、それぞれには段差があり、
前記接続管部の外径は、前記傾斜管部の上端の外径よりも大きく、かつ、前記傾斜管部の下端の外径は、前記下側管部の外径よりも小さく、
前記下部遮音カバーは、
前記下部接続管の外周に配置される管体と、
管状に変形させられた状態で前記下部接続管と前記管体の間に配置されるシート体と、を備え、
前記管体は、前記接続管部を覆う上管部と、前記上管部の下端部に連なり、下方に向かうに従って縮径して前記傾斜管部を覆うテーパ部と、を有し、弾性を備えた樹脂材料により前記上管部と前記テーパ部が一体成型され、
前記縦管接続部の中心軸方向における前記上管部の大きさは前記テーパ部の大きさよりも小さく、
前記シート体の内面と前記傾斜管部の外面との間には隙間がある、集合継手。
【請求項2】
前記管体の上端部は、前記横管接続部より下側の前記上部接続管の下端部に配置されている、請求項1に記載の集合継手。
【請求項3】
前記上部接続管の径方向の外側から巻きつけられる上部遮音カバーを備え、
前記上部遮音カバーの下端部は、前記下部遮音カバーの上端部に径方向の外側から巻き付けられている、請求項1または2に記載の集合継手。
【請求項4】
前記管体の外径が165~190mmである、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の集合継手。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の集合継手における下部遮音カバーの取り付け方法であって、
前記シート体を前記管体内に配置して前記下部遮音カバーを形成した後、前記下部接続管を前記下部遮音カバー内に挿通して前記下部遮音カバーを前記下部接続管に取り付ける、下部遮音カバーの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合継手および下部遮音カバーの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に示すような集合継手の遮音カバーが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-117245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の遮音カバーには、遮音性および施工性が求められる。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、遮音性および施工性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る集合継手の遮音カバーは、管体と、管状に変形させられた状態で前記管体の内周面に装着されるシート体と、を備えている。
【0007】
遮音カバーが、管体と、管体の内周面に装着されたシート体と、を備えている。したがって、例えば、遮音カバーが管体単品である場合に比べて、遮音カバーに、シート体に基づく遮音性能を付加することができる。これにより、遮音カバーの遮音性能を確保することができる。
シート体が、管状に変形させられた状態で管体の内周面に装着されている。したがって、施工に際しては、例えば、展開されているシート体を管状に変形させ、管体の内周面に装着させて遮音カバーを形成した後、遮音カバーに集合継手を挿通する等することで、遮音カバーを集合継手に取り付けることができる。これにより、例えば、2枚のシート体を1枚ずつ集合継手に巻き付けてなる遮音カバーや、2枚のシート体を事前に1枚の積層シート体に加工して集合継手に巻き付けてなる遮音カバー等に比べて、施工性を確保することができる。
【0008】
前記管体は、遮音材により形成され、前記シート体は、吸音材により形成されていてもよい。
【0009】
管体が、遮音材により形成され、かつ、シート体が、吸音材により形成されている。したがって、例えば集合継手内を流れる排水から生じる音などを、吸音材であるシート体を介して弱めた後、管体に伝搬することができる。これにより、遮音カバーの遮音性能を効果的に確保することができる。
【0010】
前記管体は、第1テーパ部を備え、前記シート体は、前記第1テーパ部内に配置される第2テーパ部を備えていてもよい。
【0011】
シート体の第2テーパ部が、管体の第1テーパ部内に配置されている。したがって、例えば、テーパ部を備える集合継手にこの遮音カバーを適用するとき等に、テーパ部を第1テーパ部および第2テーパ部によって覆うことができる。これにより、テーパ部を有するような集合継手にも遮音カバーを適用することができる。
【0012】
前記管体の内周面には、前記シート体に係止して前記シート体の前記管体に対する移動を規制する係止部が設けられていてもよい。
【0013】
係止部が、管体の内周面に設けられてシート体に係止する。したがって、例えば、シート体を管体の内周面に容易に装着させること等ができる。
【0014】
本発明の一態様に係る集合継手の遮音構造は、前記遮音カバーを備える集合継手の遮音構造であって、前記集合継手の外周面に固定されて前記集合継手の外周面と前記管体の内周面との間に配置され、前記集合継手の外周面と前記管体の内周面とを離間させる緩衝材を備えている。
【0015】
緩衝材が、集合継手の外周面と管体の内周面とを離間させている。したがって、例えば、集合継手内を流れる排水を起因として集合継手に生じた振動が管体に直接、伝搬するのを抑制すること等ができる。これにより、例えば、遮音構造による防振性能を高めること等ができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、施工性および遮音性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る集合継手の正面図である。
図2図1に示す集合継手を備えたカバー付き集合継手を示す正面図である。
図3図2に示すカバー付き集合継手の上面図である。
図4図2に示すカバー付き集合継手における要部を拡大した縦断面図である。
図5図2に示すカバー付き集合継手を構成する遮音カバーの縦断面図である。
図6図5に示す遮音カバーを構成する管体の正面図およびシート体の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1から図6を参照し、本発明の一実施形態に係るカバー付き集合継手1(カバー付き集合管継手)について説明する。カバー付き集合継手1は、例えば、建物排水用として用いられ、図示しない床スラブに形成されたスラブ貫通孔内に配置される。
図1および図2に示すように、本実施形態に係るカバー付き集合継手1は、集合継手10(集合管継手)と、この集合継手10を覆う遮音カバー20と、を備えている。
【0019】
集合継手10は、上部接続管11と、上部接続管11に接続された下部接続管12と、を備えている。上部接続管11は、第1の縦管P1に接続可能な縦管接続部13と、縦管接続部13の側面に突設されて横管P3を接続可能な横管接続部14と、を有している。上部接続管11の上端部に第1の縦管P1が接続される。
【0020】
以下の説明において、縦管接続部13の中心軸線Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向に沿う縦管接続部13の上部接続管11側を上方、下部接続管12側を下方という。また、軸方向から見た平面視で、中心軸線Oと直交する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0021】
横管接続部14は、図3に示すように、縦管接続部13の周壁から径方向の外側に向けて延びている。図示の例では横管接続部14は3つ配置されている。
3つの横管接続部14のうちの2つが中心軸線Oを径方向に挟む位置に各別に配置されている。残りの横管接続部14は、径方向のうち、前記2つの横管接続部14それぞれが延びる方向と、上面視で90°をなす方向に延びている。なお、横管接続部14の数量および延びる方向は、このような態様に限られず、任意に変更することができる。
図1に示すように、横管接続部14における径方向の外端部には、横管P3が各別に接続される接続環15が取付けられている。接続環15の外径は、横管接続部14の外径よりも大きくなっている。
【0022】
下部接続管12は、上方よりも下方が縮径された管状をなしている。下部接続管12は、上端部に位置し、上部接続管11の下方に接続される接続管部16と、接続管部16の下方に接続されるとともに、下方に向かうに従い漸次、縮径する傾斜管部17と、傾斜管部17の下端部に接続されるとともに、第2の縦管P2が接続される下側管部18と、を備えている。接続管部16、傾斜管部17、および下側管部18は、例えば合成樹脂材料の射出成形により一体に形成されている。
【0023】
接続管部16の外径は、上部接続管11における縦管接続部13の外径よりも小さくなっている。接続管部16の周壁が、縦管接続部13の内側に嵌合されている。傾斜管部17の上端部における外径は、接続管部16の外径よりも小さくなっている。傾斜管部17の下端部における外径は、接続管部16の外径よりも小さくなっている。傾斜管部17の軸方向の大きさは、接続管部16の軸方向の大きさよりも大きくなっている。
【0024】
接続管部16は、ポリ塩化ビニル系樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物を含有する。すなわち、接続管部16は、樹脂組成物を成形することによって作製される。通常、接続管部16は、樹脂組成物を押出成形することによって作製される。
接続管部16は、接続管部16の全体が樹脂組成物からなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。複層構造の場合、いずれかの層が樹脂組成物から形成されていればよい。例えば、接続管部16が、表層と中間層と内層とからなる3層構造である場合には、中間層が樹脂組成物から形成されたものが挙げられ、表層、中間層、内層は吸熱剤を含有していてもよい。
【0025】
中間層は熱膨張性黒鉛を含有するため黒色を呈する。そのため、表層と内層は黒色以外の着色剤を含有させ、中間層と区別可能にしておくことが好ましい。
表層および内層の厚みとしては、それぞれ0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.6mm以上1.5mm以下が好ましい。被覆層の厚みが0.3mm以上であれば、管としての機械的強度を充分に確保でき、3.0mm以下であれば、耐火性の低下を抑制できる。
また、接続管部16は、JIS K6741に記載の性能を満たすものであることが好ましい。
【0026】
下側管部18の外径は、接続管部16の外径よりも小さく、かつ傾斜管部17における下端部の外径よりも大きくなっている。下側管部18の軸方向の大きさは、接続管部16の軸方向の大きさよりも小さくなっている。下側管部18の内側に、第2の縦管P2が下方から嵌合されることにより、第2の縦管P2が下部接続管12に接続される。
【0027】
なお、上部接続管11および下部接続管12を透明にしてもよい。これにより、上部接続管11および下部接続管12の接続状態を視認することができる。また、上部接続管11および下部接続管12に、非熱膨張黒鉛や水酸化マグネシウムなどの難燃剤を配合しても良い。
【0028】
図2に示すように、遮音カバー20は、可撓性を有し、上部接続管11に径方向の外側から巻きつけられる上部遮音カバー21と、管状をなし、下部接続管12が挿通される下部遮音カバー22と、を備えている。下部遮音カバー22の上端部内には、上部接続管11の下端部が配置されている。上部遮音カバー21の下端部は、下部遮音カバー22の上端部に径方向の外側から巻き付けられている。
【0029】
上部遮音カバー21は、例えば、改質アスファルトやエラストマー、ゴム、ポリオレフィン樹脂、軟質塩化ビニル樹脂等といった弾性を備えた材料をシート状に形成したものである。上部遮音カバー21は、炭酸カルシウムや硫酸バリウム等の無機材料、鉄や鉛などの金属シート、金属粉などを含有していてもよい。また、上部遮音カバー21の厚さは1.0mm以上5.0mm以下が好ましく、1.5mm以上4.0mm以下がより好ましい。さらに、上部遮音カバー21の片面または両面に、合成繊維不織布やガラス繊維不織布等の表面材を積層してもよい。
【0030】
図4および図5に示すように、下部遮音カバー22は、管体31と、管状に変形させられた状態で管体31の内周面に装着されたシート体32と、を備えている。
図5に示すように、管体31の軸線は、縦管接続部13の中心軸線O上に位置し、管体31の軸線方向は、前記軸方向と平行である。管体31の軸方向の大きさは、例えば283mm程度である。管体31の肉厚は、例えば1~5mm程度であることが好ましい。また管体31の面密度は、1~8kg/mであることが好ましい。
【0031】
カバー付き集合継手1を前記床スラブに施工するときに管体31を床スラブ内に埋め戻す場合であって、例えば、スラブ貫通孔の口径が209mmである場合には、管体31の外径が165~190mm程度であることが好ましい。なお図示の例では、管体31は円管形状であるが、例えば管体31が多角管形状であってもよい。
【0032】
管体31は、第1上管部33と、第1テーパ部34と、第1下管部35と、を備えている。
図5に示すように、第1上管部33は、軸方向の全長にわたって同径となっている。第1上管部33の外径は、例えば170mm程度である。
第1テーパ部34は、第1上管部33に軸方向に連なり、第1上管部33から離れるに従って先細りになっている。具体的には、第1テーパ部34は、第1上管部33の下端部に連なり、下方に向かうに従って縮径している。
【0033】
第1下管部35は、第1テーパ部34の下端部から下方に延びている。第1下管部35は、第1テーパ部34を軸方向に挟んで第1上管部33の反対側に配置され、第1上管部33よりも下方に位置している。第1下管部35の内径は、軸方向の全長にわたって同等となっている。第1下管部35において下端部を除く部分では、外径が、軸方向の全長にわたって同等となっている。この部分の外径(第1下管部35の最大外径)は、例えば150mm程度である。
【0034】
第1下管部35における下端部の外周面は、面取りされている。第1下管部35の下端部では、外径が、下方に向かうに従って縮径し、肉厚が、下方に向かうに従って小さくなっている。第1下管部35における下端部の外周面は、軸方向に沿う縦断面視において、中心軸線O(軸方向)に対して傾斜する傾斜面35aをなす。
【0035】
第1上管部33、第1テーパ部34および第1下管部35は、上側から下側に向けて(軸方向に沿って)この順に連続して配置されている。図2に示すように、第1上管部33は接続管部16を覆い、第1テーパ部34は傾斜管部17を覆い、第1下管部35は下側管部18を覆う。第1上管部33は、第1テーパ部34よりも軸方向に小さく、第1下管部35よりも軸方向に大きい。
【0036】
図5に示すように、管体31の内周面には、係止部36(位置決めリブ)が設けられている。係止部36は、管体31の内周面から突出している。係止部36は、周方向の全周にわたって延びる環状に形成されている。係止部36は、第1下管部35に設けられている。係止部36は、第1下管部35における軸方向の中央よりも下方に位置している。係止部36は、第1下管部35の下端部(傾斜面35a)よりも上方に位置している。
【0037】
係止部36は、例えば、第1下管部35の下端縁から軸方向に沿って5~20mm程度離れた位置に配置することが好ましい。図示の例では、係止部36の突出量(径方向の大きさ)および肉厚(軸方向の大きさ)は、第1下管部35において下端部を除く部分の肉厚と同等である。係止部36の突出量および肉厚はいずれも、例えば、2~8mm程度であることが好ましい。ただし、成形上や施工上の観点から、係止部36の突出量および肉厚はいずれも3mm程度であることが好ましい。
【0038】
管体31は、遮音材により形成されている。管体31の遮音性は、後述する吸音材の遮音性よりも高い。管体31は、例えば、射出成形、圧空成形、ブロー成形、真空成形等により一体成型されている。管体31は、例えば、オレフィン系材料(オレフィン系樹脂100重量部に対して、無機フィラーを300~600重量部含有する樹脂組成物)等といった弾性を備えた樹脂材料により形成されている。
【0039】
前記無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらのうち、重量とコストのバランスから炭酸カルシウムを前記無機フィラーとして用いることが好ましい。なおこれらは、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
前記オレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリαオレフィンが挙げられる。中でも密度が0.87~0.93g/cmのポリエチレンが前記オレフィン系樹脂として好ましい。なお、密度が0.87g/cm未満だと、管体31の強度が十分ではなく、0.93g/cmを超えると、管体31を偏平させたとき(管体31に軸力が加えられたとき)に座屈してしまうおそれがある。また、オレフィン系樹脂の曲げ弾性率が、100~3000kg/cmであれば、強度、巻き加工性として十分である。 なお管体31は、オレフィン系材料とは異なる材料で形成されていてもよく、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、エラストマー材料等を用いても構わない。
【0041】
シート体32は、管体31内では管状に変形させられている。しかしながら、シート体32は、図6に示すように管体31から取り出した状態で平面状に展開可能である。シート体32は、平面状から管状に変形可能な程度の可撓性を具備している。
以下では、展開した状態のシート体32の説明に際し、シート体32を管状に変形させて管体31内に配置したときに、軸方向となる方向をY方向、周方向となる方向をX方向といい、軸方向の上側になる向きをY方向の第1側Y1といい、下側になる向きをY方向の第2側Y2という。
【0042】
展開した状態でのシート体32は、シート体32の平面視においてY方向よりもX方向に長い。シート体32は、X方向に対称をなす六角形状に形成されている。シート体32は、シート体32のX方向の中央を通りY方向に延びる基準線Lを基準として線対称をなす。シート体32の厚さは、全域にわたって同等であり、1~20mm程度が好ましい。シート体32の面密度は、0.1~2kg/m程度が好ましい。
シート体32は、第1領域37と、第2領域38と、を備えている。第1領域37は、管体31の第1上管部33に対応し、第2領域38は、管体31の第1テーパ部34および第1下管部35に対応する。
【0043】
第1領域37は、第2領域38よりも第1側Y1に位置している。第1領域37は、第2領域38よりもY方向に小さくX方向に大きい。第1領域37のY方向の長さは、第1上管部33の軸方向の長さと同等である。
第1領域37において第1側Y1に位置する第1軸端縁39は、X方向に直線状に延びている。第1軸端縁39の長さは、管体31の第1上管部33の内周面の周長と同等である。
第1領域37は、第2側Y2に向かうに従ってX方向に小さくなる。第1領域37においてX方向の両側に位置する一対の第1周端縁40は、Y方向に対して傾斜する方向に延びている。なお第1周端縁40は、Y方向に平行に延びていてもよい。
【0044】
第2領域38は、第2側Y2に向かうに従ってX方向に小さくなる。第2領域38においてX方向の両側に位置する一対の第2周端縁41は、Y方向に対して傾斜する方向に延びている。Y方向に延びる仮想線に対してなす第2周端縁41が傾斜角度θ2は、前記仮想線に対して第1周端縁40がなす傾斜角度θ1よりも大きい。
第2領域38において第2側Y2に位置する第2軸端縁42は、第1側Y1に向けて凸となる円弧状(曲線状)に形成されている。第2軸端縁42は、X方向の外側から中央に向かうに従って第1側Y1に向かう。第2軸端縁42の長さは、管体31の第1下管部35の内周面の周長と同等である。
【0045】
シート体32のY方向の長さd0(第1軸端縁39におけるX方向の中央と第2軸端縁42におけるX方向の中央との間のY方向に沿った長さ)は、図5に示すような、管体31の第1上管部33の上端縁から第1テーパ部34の下端縁までの軸方向の長さd1以上、管体31の上端縁から係止部36までの軸方向の長さd2以下である。
【0046】
図6に示すようなシート体32を、一対の第1周端縁40同士および一対の第2周端縁41同士が突き合うように、または重なるように変形させる(丸める)と、図5に示すように、シート体32が、第1軸端縁39が上端縁となり第2軸端縁42が下端縁となる管状に変形させられる。このとき、第1領域37は、第1上管部33内に配置される第2上管部43となり、第2領域38は、第1テーパ部34内に配置される第2テーパ部44となる。なおシート体32には、シート体32を管状に変形させることを容易に実現するための切込み等が形成されていてもよい。
【0047】
管状のシート体32は、管体31の内周面に沿うように変形させられている。なおシート体32には、皺などが形成されていてもよい。
第2テーパ部44は、第2上管部43に軸方向に連なり、第2上管部43から離れるに従って先細りになっている。具体的には、第2テーパ部44は、第2上管部43の下端部に連なり、下方に向かうに従って縮径している。
【0048】
第2テーパ部44の長さや、軸方向に対してなす傾斜角は、第2軸端縁42の長さやシート体32のY方向の長さによって適宜決定される。本実施形態では、第2テーパ部44の下端部が、第1下管部35内に配置され、第2軸端縁42が、係止部36に上方から係止している。
【0049】
第2テーパ部44のうち、第1下管部35内に位置する部分は、図4に示すように、下部遮音カバー22内に下部接続管12が配置された状態で、下部接続管12(下側管部18)によって径方向の外側に変形させられる。これにより、この部分は、第1下管部35内に配置される第2下管部45となる。第2下管部45は、管状に変形させられたシート体32の第2領域38が、集合継手10の外周面と管体31の内周面との間に挟み込まれて形成される。
第2下管部45は、第2テーパ部44の下端部から下方に延びている。第2下管部45は、第2テーパ部44を軸方向に挟んで第2上管部43の反対側に配置され、第2上管部43よりも下方に位置している。
【0050】
シート体32の形状は、遮音性能、防振性能の観点から上記形状が好適だが、特に限定されるものではない。例えば、前記床スラブへ埋め戻される部分が、第1上管部33のみの場合(第1テーパ部34および第1下管部35が前記床スラブから下方に突出する場合)、第1上管部33内のみにシート体32を設ける構成を採用してもよい。これにより、生産コストの削減が可能である。この場合、第1テーパ部34および第1下管部35においては、集合継手10の外周面と管体31の内周面との間の隙間が、管体31の厚さ以下であってもよく、集合継手10の外周面と管体31の内周面とが直接、接触しないことが好ましい。
なお、集合継手10に熱膨張管が設けられている場合には、耐火性能確保のために、下部遮音カバー22と熱膨張管との間に隙間が形成されていないことが好ましい。
【0051】
シート体32は、吸音材により形成されている。吸音材の吸音性は、遮音材の吸音性よりも高い。シート体32は、多孔質体、例えば、グラスウール、ロックウール、フェルト、発泡ウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等により形成されている。これらのうち、耐火性能、遮音性能、防振性能、コスト面から、シート体32としてはグラスウールが好適である。
上記下部遮音カバー22において、係止部36は、シート体32に係止してシート体32の管体31に対する移動を規制する。係止部36は、シート体32を下方から支持し、シート体32が管体31に対して下方に移動することを規制する。
【0052】
上記遮音カバー20は、集合継手の遮音構造60を形成している。遮音構造60は、緩衝材61を更に備えている。緩衝材61は、集合継手10の外周面に固定(固着)されている。緩衝材61は、集合継手10の外周面と管体31の内周面との間に配置されている。緩衝材61は、集合継手10の外周面と管体31の内周面とを離間させ、集合継手と管体31とを縁切りしている。緩衝材61は、係止部36を下方から支持している。緩衝材61は、下部遮音カバー22の集合継手10からの離脱を規制している。
【0053】
緩衝材61は、発泡テープ(例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリスチレン等)により形成されている。緩衝材61は、発泡テープを集合継手に巻き付けることにより形成されている。緩衝材61の面密度(密度)は、管体31の面密度(密度)よりも低い。緩衝材61の面密度は0.5~1.0kg/m程度が好適である。緩衝材61は、上記材料に限られず、例えばゴム材等でも構わない。
【0054】
上記遮音カバー20を集合継手10に取り付ける方法の一例を説明する。なお取り付け方法は一例であり、他の方法によって下部遮音カバー22を集合継手に取り付けることも可能である。
【0055】
まず下部遮音カバー22を下部接続管12に取り付ける。作業者は、展開されているシート体32を丸めて管状に変形させて管体31の内周面に装着させ、下部遮音カバー22を形成する(第1工程)。このとき作業者は、例えば、管状のシート体32を管体31の上方から挿入し、シート体32の第2軸端縁42を係止部36に係止させる。
【0056】
その後、作業者は、下部遮音カバー22内に下部接続管12を挿通する(第2工程)。 そして、下部接続管12に緩衝材61を貼り付け等により固定する(第3工程)。これにより、緩衝材61が管体31の係止部36に係止し、下部遮音カバー22が集合継手10から離脱することが抑制される。
【0057】
なお第2工程および第3工程は、例えば、集合継手10を上下反転させた状態で実施することが可能である。この場合、上下反転させられた状態の集合継手10に対して、上方から下部遮音カバー22を装着させる等して、施工性を高めることができる。
【0058】
その後、上部遮音カバー21を上部接続管11に取り付ける。これにより、遮音カバー20が集合継手10に取り付けられ、カバー付き集合継手1が完成する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る遮音カバー20および遮音構造60によれば、下部遮音カバー22が、管体31と、管体31の内周面に装着されたシート体32と、を備えている。したがって、例えば、下部遮音カバー22が管体31単品である場合に比べて、下部遮音カバー22に、シート体32に基づく遮音性能を付加することができる。これにより、下部遮音カバー22の遮音性能を確保することができる。
【0060】
シート体32が、管状に変形させられた状態で管体31の内周面に装着されている。したがって、施工に際しては、例えば、展開されているシート体32を管状に変形させ、管体31の内周面に装着させて下部遮音カバー22を形成した後、下部遮音カバー22に集合継手10を挿通する等することで、下部遮音カバー22を集合継手10に取り付けることができる。これにより、例えば、2枚のシート体を1枚ずつ集合継手に巻き付けてなる下部遮音カバーや、2枚のシート体を事前に1枚の積層シート体に加工して集合継手に巻き付けてなる下部遮音カバー等に比べて、施工性を確保することができる。
【0061】
管体31が、遮音材により形成され、かつ、シート体32が、吸音材により形成されている。したがって、例えば集合継手10内を流れる排水から生じる音などを、吸音材であるシート体32を介して弱めた後、管体31に伝搬することができる。これにより、下部遮音カバー22の遮音性能を効果的に確保することができる。
【0062】
シート体32の第2テーパ部44が、管体31の第1テーパ部34内に配置されている。したがって、例えば本実施形態ように、傾斜管部17(テーパ部)を備える集合継手10にこの下部遮音カバー22を適用するとき等に、傾斜管部17を第1テーパ部34および第2テーパ部44によって覆うことができる。これにより、傾斜管部17を有するような集合継手10にも下部遮音カバー22を適用することができる。
【0063】
係止部36が、管体31の内周面に設けられてシート体32に係止する。したがって、例えば、シート体32を管体31の内周面に容易に装着させること等ができる。
【0064】
緩衝材61が、集合継手10の外周面と管体31の内周面とを離間させている。したがって、例えば、集合継手10内を流れる排水を起因として集合継手10に生じた振動が管体31に直接、伝搬するのを抑制すること等ができる。これにより、例えば、遮音構造60による防振性能を高めること等ができる。
【0065】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0066】
管体31およびシート体32が第1テーパ部34および第2テーパ部44を備えていなくてもよい。
係止部36や緩衝材61がなくてもよい。
【0067】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 集合継手
20 遮音カバー
31 管体
32 シート体
34 第1テーパ部
36 係止部
44 第2テーパ部
60 遮音構造
61 緩衝材
図1
図2
図3
図4
図5
図6