(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】p62-ZZ化学抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/137 20060101AFI20231108BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231108BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231108BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20231108BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K45/00
A61P3/10
A61P19/08
A61P25/28
A61P35/00
A61P43/00 111
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022069218
(22)【出願日】2022-04-20
(62)【分割の表示】P 2017564373の分割
【原出願日】2016-06-07
【審査請求日】2022-05-16
(32)【優先日】2015-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501111751
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ピッツバーグ-オブ・ザ・コモンウェルス・システム・オブ・ハイヤー・エデュケイション
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF PITTSBURGH-OF THE COMMONWEALTH SYSTEM OF HIGHER EDUCATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】シャングン シェ
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特許第7062442(JP,B2)
【文献】特開2004-217600(JP,A)
【文献】特開2004-315511(JP,A)
【文献】国際公開第2014/068388(WO,A1)
【文献】特表2012-527435(JP,A)
【文献】米国特許第03152182(US,A)
【文献】国際公開第2013/022919(WO,A1)
【文献】特表2017-518961(JP,A)
【文献】RN 1647792-56-0 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE] Retrieved from STN,2015年02月15日,検索日:18 MAY 2020
【文献】Buemi,Maria Rosa et al.,Indole derivatives as dual-effective agents for the treatment of neurodegenerative diseases: Synthes,Bioorganic & medicinal chemistry,2013年06月02日,vol.21 (15),pp.4575-4580
【文献】RN 1298046-56-6 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE] Retrieved from STN,2011年05月20日,<http://web.archive.org/web/20180202202745/https://www.iwsec.org/scis/2018/program.html>,検索日:18 MAY 2020
【文献】Elizarov, Arkadij M. et al.,Self-Assembly of Dendrimers by Slippage,Organic Letters,2002年,vol.4 (21),pp.3565-3568
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
A61K 31/137
A61K 45/00
A61P 3/10
A61P 19/08
A61P 25/28
A61P 35/00
A61P 43/00
・DB
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効な量の少なくとも1つのp62-ZZインヒビター化合物
を含む、対象においてp62-媒介疾患を治療するための
医薬組成物であって、
p62-ZZインヒビターは、
【化1-1】
【化1-2】
から選択される、
医薬組成物。
【請求項2】
p62-媒介疾患は、多発性骨髄腫である、請求項
1の
医薬組成物。
【請求項3】
破骨細胞形成を阻害し、および/または、破骨細胞の活性化を低減させることをさらに含む、請求項
1の
医薬組成物。
【請求項4】
p62-媒介疾患は、薬剤耐性の多発性骨髄腫である、請求項
1の
医薬組成物。
【請求項5】
前記化合物を少なくとも1つの抗癌剤と同時投与することをさらに含む、請求項
1から
4のいずれか1つの
医薬組成物。
【請求項6】
p62-媒介疾患は、癌である、請求項
1の
医薬組成物。
【請求項7】
p62-媒介疾患は、神経変性疾患である、請求項
1の
医薬組成物。
【請求項8】
p62-媒介疾患は、糖尿病疾患である、請求項
1の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年6月11日に出願された米国仮出願62/174,465の利益を主張し、
参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
セクエストソーム1(SQSTM1/p62)は、N末端PB1ドメイン、ZZ-型ジ
ンクフィンガードメイン、TRAF6結合ドメイン(TBS)、LC3相互作用領域(L
IR)、KEAP1-相互作用領域(KIR)、およびC末端ユビキチン結合ドメイン(
UBA)を含む、タンパク質-相互作用ドメインに富む。p62は、主に、選択的なオー
トファジーによる、タンパク質凝集物、細胞形質小体、および機能不全のオルガネラの分
解についての重要なアダプタとして作用し、一方、それは、多くの細胞のシグナル経路お
よび機能における密接で複雑な関係についての関心物を得るために続く。概して、p62
は、腫瘍形成において、細胞オートファジーおよびアポトーシスの引き金を引く、タンパ
ク質ユビキチン化反応における重要な役割を果たすことが示され、細胞恒常性を調節する
のを助ける、転写因子NF-KB、p38MAPKおよびmTOR経路の活性化に特に関
連があるとされる。
【0003】
研究は、p62が選択的なオートファジーに関係することを明らかにした。オートファ
ジーは、厳密に調節されて保持された、全ての細胞で生じる異化プロセスであり、したが
って、機能の中でも、細胞恒常性、発達、および免疫応答について重要で密接な関係を有
する。例えば、ニューロンにおける微小管結合タウタンパク質は、p62により、プロテ
アソームにランスファーされる。興味深いことに、マウスにおけるp62遺伝子の崩壊は
、表現型が似ているアルツハイマー病をもたらす。同様に、凝集された突然変異体のハン
チンチンタンパク質の蓄積は、ハンチングトン病の病理学的な根拠であり、p62を含む
ことが発見され、そのUBAドメインの欠落は、突然変異体ハンチンチンによる細胞死を
増加させる。また、p62は、パーキンソン病および筋萎縮性側索硬化症において並びに
乳がんの腫瘍に示される細胞質内集蔟体でみられた。さらに、マウスp62の標的とされ
た欠落は、インシュリンおよびレプチン抵抗性、2型糖尿病および肥満を導くことがわか
っている。現れたサポートがいくつかの変化する疾病におけるp62の密接な関係を支持
するため、標的のセクエストソーム1(SQSTM1/p62)が薬物の設計および発見
のために非常に重要である。
【0004】
p62が、NF-kB、p38MAPK、およびmTOR経路を含む細胞シグナルおよ
びオートファジーにおける重要な役割を果たすことが知られている。特に、p62-欠損
マウスによる研究は、p62の1つの機能が破骨細胞形成および骨リモデリングを制御す
ることを示した。通常の破骨細胞の機能は、p62によるNF-kBの経路のこの調節に
依拠する。ZZドメインは、RIP1タンパク質と結合するため、このメカニズムと関係
があるとされており、RIP1タンパク質は、NF-kBおよびp38MAPKシグナル
を活性化できる、TNFレポーターと相互に作用する「デス」ドメインを含む。これらお
よびこれまでの発見に鑑み、p62は、無数の疾病、具体的には、多発性骨髄腫(MM)
および関連する癌、並びに神経障害および糖尿病疾患のような他の疾病のための魅力的な
標的薬物である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の疾病のなかでも、MMは不治の血液学的な悪性病変であり、最大80%の患者に
おける、プラズマ細胞の調節不全の増殖および漸進性の骨破壊により特徴づけられる。サ
リドマイドおよびボルテゾミブを含み、新規でより可能性のある治療の方式であるにも関
わらず、MMは、いまだ、2番目に多い血液学的悪性疾患である。Leukemia & Lymphoma
Society (Facts 2009-2010)により報告されているように、MMの患者数と新たに診断さ
れた症例は、ともに年々著しく増加している。したがって、腫瘍の増殖を効果的に阻害し
、従来の薬物耐性を克服する新規な治療が早急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示されるのは、式Iを有する化合物、または薬学的に許容可能なその塩で
あって、
【化1】
・・・ 式I
Arは、アリーレンまたはヘテロアリーレンであり、
R
1は、
【化2】
の構造を有し、
ここで、
Wは、アルカンジイル、アルケンジイル、カルボニルまたはその組み合わせであり、
Xは、-NR
5-であって、R
5は、Hまたはアルキル、または-O-であり、
Yは、置換基を有してもよいシクロアルキル、置換基を有してもよいシクロアルキル
-置換アルキル、置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル、または置換基を有しても
よいヘテロシクロアルキル-置換アルキルであり、
各R
2は、同じまたは異なり、
【化3】
の構造を有し、
ここで、
Zは、-NR
6-であり、R
6は、Hまたはアルキル、-O-、-S-、または-C
H
2-であり、
Z
1は、(-CH
2-)
mであり、mは0~5であり、または2~6の炭素原子を有
するアルケンジイルであり、
Cyは、3~8員シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロア
リール環であり、
各R
4は、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコ
キシ、置換あるいは非置換のアルキル、またはアミノから選択され、cは0~5であり、
各R
3は、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコ
キシ、置換あるいは非置換のアルキル、アミノ、置換あるいは非置換のシクロアルキル、
置換あるいは非置換のヘテロシクロアルキル、置換あるいは非置換のアリール、またはニ
トロから選択され、
aは2~5であり、bは0~3である。
【0007】
また、本明細書に開示されるのは、対象においてp62-媒介疾患を治療するための方
法であって、治療上有効な量の、本明細書に開示される少なくとも1つのp62-ZZイ
ンヒビター化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0008】
さらに、本明細書に開示されるのは、ストローマ細胞においてp62活性を調節する方
法であって、本明細書に開示される少なくとも1つのp62-ZZインヒビター化合物を
、ストローマ細胞に接触させることを含む方法である。
【0009】
追加的に、本明細書に開示されるのは、多発性骨髄腫の細胞増殖を阻害する方法であっ
て、本明細書に開示される少なくとも1つのp62-ZZインヒビター化合物を多発性骨
髄腫細胞に接触させることを含む方法である。
【0010】
上述のものは、以下の詳細な記載から明らかであり、添付の図面に対する参照により進
める。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、種々のシグナル経路を示す概略図である。
【
図2】
図2は、p62-zzドメインおよびPKCζボルテゾミブの阻害を介する、多発性骨髄腫細胞増殖についての、スクリーニングされた化合物を確認するための、インビトロでの生物学的アッセイを示す概略図である。
【
図3】
図3は、RPMI-8226ヒト多発性骨髄腫異種移植モデルの治療における、化合物XIELP1-106の抗腫瘍活性を示すグラフである。
【
図4】
図4は、皮下にRPMI-8226の担腫瘍マウスの生存曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概要
本明細書に記載されるのは、例えば、ストローマ細胞および多発性骨髄腫細胞に影響を
及ぼす、新規なp62-ZZインヒビターである。新規なp62-ZZインヒビターは、
正常なストローマ細胞に対して毒性がなく、多発性骨髄腫の細胞増殖に対してマイクロモ
ル(~2μM)の阻害活性を示す。ある実施形態では、化合物は、他のp62ドメインと
関連するZZドメインについて選択的である阻害活性を示す化合物を意味する、選択的な
p62-ZZインヒビターである。
【0013】
セクエストソーム1(p62)は、MMを有する患者の骨髄の微小環境における、NF
-KB、p38MAPK、およびPI3Kの活性化をもたらす、シグナル複合体の形成に
重要な役割を果たす。骨髄のストローマ細胞において、MM細胞により活性化された複数
の各シグナル経路(例えば、NF-KBまたはp38MAPK)のインヒビターで対象を
治療することに対し、p62の機能をブロックすることは、p62により媒介された複数
の経路の活性化を阻害し、骨髄の微小環境でのより広い効果を有する。
【0014】
用語
以下の用語および方法の説明が、本開示の実施にあたり、当業者を導くために、本化合
物、組成物、および方法をより十分に記載するために提供される。また、本開示で使用さ
れる用語は、実施形態および実施例を具体的に記載する目的とするのみであり、限定を意
図していないことは理解されるべきである。
【0015】
本明細書で使用されるように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、およ
び「その(the)」は、別途の明確な記載がない限り、複数形を含む。また、本明細書
で使用されるように、用語「含む(comprises)」は、「含む(includes)」を意味する
。
【0016】
化合物を「投与」または「投与すること」は、本明細書に記載される、化合物、化合物
の前駆薬、または医薬組成物を提供することを意味することが理解されるべきである。化
合物または組成物は、対象(例えば、静脈内)に対して別のひとにより投与されることと
してもよく、対象により自分で投与することとしてもよい(例えば、錠剤)。
【0017】
「アルカンジイル」は、脂肪族、炭化水素由来の一般式-CnH2n-の二価基を指す
。より低級のアルカンジイルは、1(メチレンラジカルともいう)から10の炭素原子、
特に、1から5の炭素原子を有する。
【0018】
「アルケンジイル」は、同じ炭素原子からの2つの水素原子の除去によりアルカンから
形成された二価基を指し、その遊離原子価は二重結合の一部である。より低級のアルケン
ジイルは、2から10の炭素原子、特に、1から5の炭素原子を有する。
【0019】
用語「アルケニル」は、2から24の炭素原子の炭化水素基と少なくとも1つの炭素-
炭素二重結合を含む構造式を指す。「より低級のアルケニル」基は、1から10の炭素原
子を有する。
【0020】
用語「アルキル」は、1~24の炭素原子の分岐または非分岐の飽和炭化水素基であり
、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t
-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデ
シル、エイコシル、テトラコシル等を指す。「より低級のアルキル」基は、1から10の
炭素原子の分岐または非分岐の飽和炭化水素基である。好ましいアルキル基は1から4の
炭素原子を有する。アルキル基は、「置換アルキル」であることとしてもよく、1つ以上
の水素原子がハロゲン、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシル、アリール
、またはカルボキシルのような置換基で置換されている。
【0021】
用語「アルキルアリール」は、アルキル基がアリール基の水素原子に置換されている基
を指す。例は、-Ar-Rであり、Arはアリーレン基であり、Rはアルキル基である。
【0022】
用語「アルコキシ」は、連結点で酸素原子を含む、1~20の炭素原子、好ましくは1
~8の炭素原子、より好ましくは1~4の炭素原子を含む、直鎖、分岐、または環状の炭
化水素配置およびこれらの組み合わせを指す。「アルコキシ基」の例は、式-ORで表さ
れ、ここで、Rはアルキル基であり、任意に、アルケニル、アルキニル、アリール、アラ
ルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、または上記のようなヘテロシクロアルキ
ル基で置換されていてもよい。適切なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n-プロポ
キシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブ
トキシシクロプロポキシ、シクロヘキシルオキシ等を含む。
【0023】
用語「アミン」または「アミノ」は、式-NRR’を指し、ここで、RおよびR’は、
独立して、水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シク
ロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。例えば、
「アルキルアミノ」または「アルキル化アミノ」は-NRR’を指し、ここで、少なくと
も1つのRまたはR’はアルキルである。
【0024】
用語「アミノアルキル」は、上記のように定義されるアルキル基を指し、ここで、少な
くとも1つの水素原子は、アミノ基(例えば、-CH2-NH2)で置換される。
【0025】
「アミノカルボニル」は、単体または組み合わせで、アミノ基置換カルボニル(カルバ
モイル)ラジカルを意味し、ここで、アミノラジカルは、例えば、アルキル、アリール、
アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルカノイル、アルコキシカル
ボニル、アラルルコキシカルボニル(aralkoxycarbonyl)等で任意に一置換または二置換
されていることとしてもよい。
【0026】
用語「アミド(amide)」または「アミド(amido)」は、式-C(O)NRR’により
表され、RおよびR’は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アシル
、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、または上記のようなヘ
テロシクロアルキル基であることとしてもよい。適切なアミド基はアセトアミドである。
【0027】
「動物」は、多細胞の脊椎動物の生物、例えば、哺乳類および鳥類を含むカテゴリを指
す。用語「哺乳類」は、ヒトおよび非ヒト哺乳類を含む。同様に、用語「対象」は、鳥類
と、霊長目の動物、コンパニオンアニマル(例えば、イヌおよびネコ)、家畜(豚、羊、
牛など)、および飼いならした動物、例えば、ネコ科の動物、のような非ヒト哺乳類とを
含む非ヒト並びにヒト対象を含む。用語「対象」は、生物の生存サイクルにおけるステー
ジに関わらず適用する。したがって、用語「対象」は、生物に応じて(つまり、生物が哺
乳類または鳥類、例えば、飼いならされた、または野生の鳥であるかどうか)、子宮内で
または胚内で生物に対して適用する。
【0028】
「類似体」は、例えば、相同体(アルキル鎖の長さまたはより多くの同位体の1つの含
有における相違のような、化学的構造または質量における増加により相違する)、分子フ
ラグメント、1以上の官能基により相違する構造、またはイオン化における変化が、親化
合物とは化学的構造が異なる分子である。類似体は、親化合物から合成される必要はない
。構造上の類似体は、Remington (The Science and Practice of Pharmacology, 19th Ed
ition (1995), chapter 28)に記載されるもののような技術により、量的な構造活性の関
係(QSAR)を用いることがしばしば発見されている。誘導体は、基本構造から誘導さ
れた分子である。
【0029】
用語「アラルキル」は、アリール基をもってアルキル基の水素原子と置換されている基
を指す。アラルキル基の例は、ベンジル基である。
【0030】
用語「アリール」は、芳香族基由来のあらゆる基を指し、ベンゼン環、または1以上の
任意に置換されたベンゼン環に融合された、任意に置換されたベンゼン環系を含むが、こ
れに限定されない。「ヘテロアリール基」は、アリール基の環内に組み込まれた少なくと
も1つのヘテロ原子を有するアリール基として定義される。ヘテロ原子の例は、窒素、酸
素、硫黄、リンを含むがこれらに限定されない。アリール基は、アルキル、アルキニル、
アルケニル、アリール、ハロゲン化合物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒ
ド、ヒドロキシ、カルボン酸、もしくはアルコキシを含むがこれに限定されない1つ以上
の基で置換されてもよく、またはアリール基は置換されないこととしてもよい。アリール
基の例は、フェニル、2-ナフチル、1-ナフチル、1-アントラセニル等を含むが、こ
れらに限定されない。
【0031】
用語「アリーレン」は、二価もしくはより高い価のベンゼン環基、または、もう1つの
任意に置換されたベンゼン環と融合された二価もしくはより高い価のベンゼン環系を指す
。アリーレン基は、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化合物、ニ
トロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、もしくはアル
コキシを含むがこれに限定されない1つ以上の基で置換されてもよく、またはアリーレン
基は置換されないこととしてもよい。アリーレン基の例は、フェニレン(例えば、ベンゼ
ン-1,4-ジイル)、ナフタレン-1,8-ジイル、ベンゼントリル、ベンゼンテトラ
イル等を含むが、これらに限定されない。
【0032】
「カルボニル」は、式-C(O)-のラジカルを指す。カルボニル含有基は、アシル基
、アミド、カルボキシ基、エステル、尿素、カーバメート、カーボネート、およびケトン
を含む炭素-酸素二重結合(C=O)、並びに、-CORまたは-RCHOに基づく置換
基のようなアルデヒドを含む、あらゆる置換基であって、Rは脂肪族、ヘテロ脂肪族、ア
ルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、または、第二級、第三級、もしくは第四級アミ
ンであるアルデヒドである。
【0033】
カルボニルアミノ基は、-N(R)-C(O)-Rであることとしてもよい(ここで、
各Rは独立して、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリール、アラ
ルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基,または
Hのような置換基である。)。
【0034】
「カルボキシル」は、-COOHラジカルを指す。カルボキシル基は、カルボン酸を形
成することとしてもよい。「置換されたカルボキシル」は、-COORであって、Rは、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン
化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基である。例えば、置換されたカルボキシル基
は、カルボン酸エステルまたはその塩(例えば、カルボン酸塩)であることとしてもよい
。
【0035】
用語「シクロアルキル」は、少なくとも3つの炭素原子で構成される非芳香性炭素系環
を指す。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シ
クロヘキシル等を含むがこれらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルキル基」は、上
記のようなシクロアルキル基であり、環の少なくとも1つの炭素原子が、これらに限定さ
れないが、窒素、酸素、硫黄、またはリンのようなヘテロ原子で置換される。
【0036】
「誘導体」:化学では、誘導体は、例えば、1つの原子が別の原子または原子のグルー
プと置換される場合に、別の化合物から生じることを想像できる化合物もしくは類似の化
合物由来の化合物である。後者の定義は有機化学において一般的である。生物化学では、
少なくとも理論上は前駆化合物から形成され得る化合物を指す。
【0037】
「薬剤耐性」または「多薬剤耐性」は、癌を治療するために歴史的に投与された少なく
とも1つの治療薬による治療に対する耐性がある癌を指す。これらの再発癌は、手術、一
次化学療法、放射線療法、または免疫療法の後に生じることが多い。ある実施形態では、
癌は、化学療法耐性癌である。
【0038】
用語「ハロゲン化アルキル」または「ハロアルキル基」は、上記で定義したように、ハ
ロゲン(F、Cl、Br、I)で置換されたこれらの基に存在する1つ以上の水素原子を
有するアルキル基を指す。
【0039】
用語「ヒドロキシル」は、式-OHにより置換される。
【0040】
用語「ヒドロキシアルキル」は、ヒドロキシル基により置換された少なくとも1つの水
素原子を有するアルキル基を指す。用語「アルコキシアルキル基」は、上述したアルコキ
シ基により置換された少なくとも1つの水素原子を有するアルキル基として定義される。
【0041】
「阻害すること」は、疾病または病気の完全な発達を阻害することを指す。また、「阻
害すること」は、制御に関連して、あらゆる量的なまたは質的な生物学的な活性または結
合における低減を指す。
【0042】
用語「新生物」は、異常な細胞増殖を指し、それは、良性及び悪性腫瘍、並びに他の増
殖性疾患を含む。
【0043】
「任意」または「任意に」は、続いて記載されるイベントまたは状況が生じる必要なな
く、明細書は、これらのイベントまたは状況が生じ、これらのイベントまたは状況が生じ
る例、それが生じない例を含むことを意味する。
【0044】
用語「薬学的に許容される塩またはエステル」は、例えば、無機および有機酸の塩、例
えば、塩酸、臭水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸
、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチ
ル酸、安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸等を含むがこれらに限定されない、慣用手段
により調製された塩またはエステルを指す。ここに開示される化合物の「薬学的に許容さ
れる塩」は、また、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグ
ネシウム、亜鉛のようなカチオンから、またはアンモニア、エチレンジアミン、N-メチ
ル-グルタミン、リジン、アルギニン、またはオルニチン、コリン、N、N’-ジベンジ
ルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジ
ルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノ
メタン、および水酸化テトラメチルアンモニウムのような塩基から形成されるものを含む
。これらの塩は、標準的な手順、例えば、遊離酸と適切な有機または無機塩基との反応に
よって調製することができる。本明細書に挙げられるあらゆる化学的化合物は、薬学的に
許容されるその塩として代替的に投与されることとしてもよい。「薬学的に許容される塩
」は、また、遊離の酸、塩基、および両性イオンの形態も含む。適切な薬学的に許容され
る塩の記載は、Handbook of Pharmaceutical Salts, Properties, Selection and Use, W
iley VCH (2002)でみることができる。本明細書に記載される化合物がカルボキシ基のよ
うな酸性官能基を含む場合、適切な薬学的に許容されるカルボキシ基についてのカチオン
対は当業者によく知られており、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、第4級アンモ
ニウムカチオンを含む。このような塩は、当業者により知られている。「薬理学的に許容
される塩」の追加の実施例は、Berge et al., J. Pharm. Sci. 66:1 (1977)を参照された
い。
【0045】
「薬学的に許容されるエステル」は、ヒドロキシまたはカルボキシル基を含むように変
更される、本明細書に記載される化合物由来のものを含む。インビボでの加水分解性のエ
ステルは、もとの酸またはアルコールを産生するために、ヒトまたは動物の体内で加水分
解されるエステルである。適切なカルボキシル基を含む適切な薬学的に許容されるエステ
ルは、C1-6アルコキシメチルエステル、例えば、メトキシ-メチル、C1-6アルカ
ノイルオキシメチルエステル、例えば、ピバロイルオキシメチル、フタリジルエステル、
C3-8シクロアルコキシカルボニルオキシ、C1-6アルキルエステル、例えば、1-
シクロヘキシルカルボニル-オキシエチル、1,3-ジオキソレン(dioxolen)-2-オ
ニル(onyl)メチルエステル、例えば、5-メチル-1,3-ジオキソレン-2-オニル
メチル、およびC1-6アルコキシカルボニルオキシエチルエステル、例えば、化合物に
おけるあらゆるカルボキシ基で形成されてもよい、1-メトキシカルボニル-オキシエチ
ルを含む。
【0046】
ヒドロキシ基を含む、インビボでの加水分解性のエステルは、無機エステル、例えば、
リン酸エステルおよびα-アシルオキシアルキルエステル、並びに、もとのヒドロキシ基
を得るためにエステル崩壊のインビボでの加水分解をもたらす関連する化合物を含む。α
-アシルオキシアルキルエステルの例は、アセトキシ-メトキシおよび2,2-ジメチル
プロピオニルオキシ-メトキシを含む。ヒドロキシについての基を形成するインビボでの
加水分解性のエステルの選択は、アルカノイル、ベンゾイル、フェニルアセチルおよび置
換されたベンゾイルおよびフェニルアセチル、アルコキシカルボニル(アルキルカーボネ
ートエステルを得る)、ジアルキルカルバモイルおよびN-(ジアルキルアミノエチル)
-N-アルキルカルバモイル(カルバメートを得る)、ジアルキルアミノアセチルおよび
カルボキシアセチルを含む。ベンゾイルでの置換基の例は、ベンゾイル環の3位または4
位に対するメチレン基を介して環状の窒素原子から連結されたモルフォリノおよびピペラ
ジノを含む。
【0047】
治療用途のために、化合物の塩は、対イオンが薬学的に許容されるものである。しかし
ながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩は、例えば、薬学的に許容される化合物
の調製時または精製時における使用がみられることとしてもよい。
【0048】
上記のように言及されるような、薬学的に許容される酸および塩基の追加の塩は、化合
物が形成可能な、治療的に活性のある非毒性の酸および塩基の追加の塩の形態を含むこと
が意味される。薬学的に許容される酸の追加の塩は、従来、このような適切な酸により塩
基形態を処理することにより得られている。適切な酸は、例えば、ハロゲン化水素の酸の
ような無機の酸、例えば、塩化水素または臭水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の酸、または
有機の酸、例えば、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸(
つまり、エタン二酸)、マロン酸、コハク酸(つまり、ブタン二酸)、マレイン酸、フマ
ル酸、リンゴ酸(つまり、ヒドロキシブタン二酸)、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン
酸エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サイクラミン、サ
リチル酸、p-アミノサリチル酸、パモ酸等の酸を含む。逆に、前記の塩の形態は、適切
な塩基で自由な塩基の形態へと処理により変換されることとしてもよい。
【0049】
酸性のプロトンを含む化合物は、また、それらの非毒性金属またはアミン追加塩基へと
、適切な有機および無機塩基での処理により変換されることとしてもよい。適切な塩基の
塩の形態は、例えば、アンモニウム塩、アルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えば、リ
チウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの塩等、有機塩基を有する塩
、例えば、ベンザチン、N-メチル-D-グルカミン、ヒドラバミン塩、および例えばア
ルギニン、リジン等のアミノ酸を有する塩を含む。
【0050】
また、上記で使用される用語「追加の塩」は、本明細書に記載される化合物を形成する
ことができる、溶媒和化合物を含む。このような溶媒和化合物は、例えば、水和物、アル
コラート等である。
【0051】
上記で使用される用語「第四級アミン」は、その化合物は、化合物の塩基の窒素と、適
切な第四級化剤、例えば、任意の置換されたアルキルハロゲン化合物、アリールハロゲン
化合物、またはアリールアルキルハロゲン化合物、例えば、ヨウ化メチルまたはヨウ化ベ
ンジル間の反応により形成することができるような第四級アンモニウム塩を定義する。ま
た、よい離脱基を有する他の反応物質、例えばアルキルトリフルオロメタンスルホン酸、
アルキルメタンスルホン酸、およびアルキルp-トルエンスルホン酸が使用されることと
してもよい。第四級アミンは、正に帯電した窒素を有する。薬学的に許容される対イオン
は、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロ酢酸塩および酢酸塩を含む。対イオンの選択
は、イオン交換樹脂を用いて導入することができる。
【0052】
本明細書に記載される化合物は、金属結合、キレート化、複合体形成の特性を有するこ
ととしてもよく、したがって、金属複合体または金属キレートとして存在することとして
もよい。
【0053】
また、本明細書に記載される化合物のいくつかは、それらの互変異性型で存在すること
としてもよい。
【0054】
疾病または病気を「防止する」は、疾病のサインを示していない、または、病状もしく
は病気に発展するリスクを低減する、または、病状もしくは病気の重症度を低減する目的
についての早期のサインのみを示す対象に、組成物を予防的に投与することを指す。
【0055】
また、開示される化合物のプロドラッグが、本明細書で熟考される。プロドラッグは、
加水分解、代謝等のインビボでの生理的作用により、化学的に、活性のある化合物に変更
され、その後、対象にプロドラッグの投与を行う、活性または不活性の化合物である。こ
のテキストを通して使用される用語「プロドラッグ」は、エステル、アミド、およびリン
酸塩のような薬理学的に許容可能な誘導体を意味し、得られたインビボでの誘導体の生体
内変化の産物が、本明細書に記載される化合物で定義されるような活性化薬物となるよう
なものである。好ましくは、プロドラッグは、優れた水溶解度、高いバイオアベイラビリ
ティを有し、インビボで、活性化したインヒビターへと容易に代謝される。本明細書に記
載される化合物のプロドラッグは、親化合物に対して、変更カオチンが切断される方法で
化合物に存在する官能基を変更することにより、または、インビボもしくは通常の操作に
おいて、調製されることとしてもよい。プロドラッグを用いるおよび作成することを含む
技術および適合性は、当業者によりよく知られる。エステルを含むプロドラッグの一般的
な検討は、Svensson and Tunek, Drug Metabolism Reviews 165 (1988)およびBundgaard,
Design of Prodrugs, Elsevier (1985)を参照されたい。
【0056】
また、用語「プロドラッグ」は、対象にプロドラッグが投与された場合に、インビボで
、活性のある本発明の親薬物を放出する、あらゆる共有結合的に結合された担体を含むこ
とを意図する。プロドラッグは、可溶性およびバイオアベイラビリティーのような活性化
のある薬剤医薬に対して拡張された特性を有することが多いため、本明細書に記載される
化合物は、プロドラッグ形態にて送達される。よって、本明細書に開示される化合物のプ
ロドラッグ、プロドラッグを送達する方法、このようなプロドラッグを含む組成物が熟考
される。典型的には、開示される化合物のプロドラッグは、親化合物を得るために、通常
の操作またはインビボで、変更カオチンが切断される方法で、化合物に存在する1つ以上
の官能基を変更することにより調製される。プロドラッグは、対応するアミノおよび/ま
たはホスホネート基をそれぞれ産生するために、インビボで切断されたあらゆる基で官能
基を持たせたホスホネートおよび/またはアミノ基を有する化合物を含む。プロドラッグ
の例は、限定されないが、アシル化アミノ基および/またはホスホネートエステルまたは
ホスホネートアミド基を有する化合物を含む。具体的な実施例では、プロドラッグは、低
級アルキルホスホネートエステル、例えば、イソプロピルホスホネートエステルである。
【0057】
また、開示された化合物の保護された誘導体が熟考される。開示された化合物による使
用のための種々の適切な保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Sy
nthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York, 1999に開示される。
【0058】
概して、保護基は、分子の残りの部分に影響を及ぼさない条件下で取り除かれる。これ
らの方法は、酸加水分解、水解等を含み、当業者によく知られる。1つの好ましい方法は
、遊離ホスホネートを得るために、TMS-Br媒介エステル切断のような、ルイス酸性
条件を用いるホスホネートエステルの切断のような、エステルの除去を含む。第2の好ま
しい方法は、保護基の除去であり、例えば、アルコール、酢酸等、またはこれらの混合物
のような適切な溶媒系における、炭素でのパラジウムを利用した水解による、ベンジル基
の除去を含む。適切な溶媒系、例えば、水、ジオキサンおよび/または塩化メチレンで、
無機酸または有機酸、例えば、HClまたはまたはトリフルオロ酢酸を利用して、t-ブ
トキシカルボニル保護基を含むt-ブトキシ系の基を除去することができる。アミノおよ
びヒドロキシ機能アミノを保護するのに適切な別の例示的な保護基は、トリチルである。
他の従来の保護基が知られ、適切は保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups in
Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York, 1999で評議されるときに
、当業者により選択され得る。アミンが脱保護されるとき、得られる塩は、容易に遊離ア
ミンを産生するために中和される。同様に、ホスホン酸部分のような酸の部分が現れると
き、化合物は酸化合物またはその塩として分離されることとしてもよい。
【0059】
「対象」は、ヒトと獣医学の対象の両方を含む。
【0060】
「置換された」または「置換」は、1つ以上の追加のR基による、R基または水素原子
の分子の置換を指す。別途の定義がない限り、本明細書で使用される、用語「置換基を有
してもよい」または「任意の置換基」は、1、2、3、4、またはそれ以上の基で、好ま
しくは、1、2、または3、より好ましくは、1または2の基でさらに置換されていても
よく、置換されていなくてもよい基を指す。置換基は、例えば、C1-6アルキル、C2
-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-8シクロアルキル、ヒドロキシル、オキソ
、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6アルコキシアリール、ハロ、C1-6
アルキルハロ(例えば、CF3およびCHF2)、C1-6アルコキシハロ(例えば、O
CF3およびOCHF2)、カルボキシル、エステル、シアノ、ニトロ、アミノ、置換さ
れたアミノ、二置換のアミノ、アシル、ケトン、アミド,アミノアシル、置換されたアミ
ド、二置換のアミド、チオール、アルキルチオ、チオキソ、スルフェート、スルホネート
、スルフィニル、置換されたスルフィニル、スルホニル、置換されたスルホニル、スルホ
ニルアミド、置換されたスルホンアミド、二置換のスルホンアミド、アリール、arC1
-6アルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択されてもよく、ここで、各
アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロシクリル、
並びに、それらを含む基は、さらに任意に置換されてもよい。また、N-ヘテロ環におけ
る任意の置換基は、C1-6アルキル、つまり、N-C1-3アルキル、より好ましくは
、メチル、特に、N-メチルを含むこととしてもよいが、これらに限定されない。
【0061】
「治療に有効な量」は、その薬剤により治療される対象において所望の効果を達成する
のに十分な、特定の薬剤の所定の量を指す。理想的には、治療上有効な量の薬剤は、対象
において、実質的な細胞毒性効果を生じさせることなく、疾病または病気を阻害しまたは
治療するための十分な量である。治療上有効な量の薬剤は、治療を受ける対象、苦痛の重
症度、および治療用組成物の投与の態様に依存するものである。
【0062】
「治療」は、発症し始めた後に、疾病または病理的な状態のサインまたは兆候を改善す
る治療介入を指す。本明細書で使用される場合、用語「改善する」とは、疾病または病理
的な状態に照らして、観察可能な有益なあらゆる治療の効果を指す。有益な効果は、例え
ば、病気にかかりやすい対象における、疾病の臨床症状の発症の遅延、疾病のいくつかま
たはすべての臨床症状の重症度の低下、疾病のより遅い進行、対象における全体的な健康
や健康状態の向上により、または、特定の疾病に特異的である当技術分野で周知の他のパ
ラメータにより証明され得る。用語「疾病の治療」は、例えば、疾病のリスクを有する、
または、癌、特に、転移性癌のような疾病を有する対象において、疾病の全体的な発症ま
たは状態を阻害することを含む。
【0063】
インヒビター
明確な別途の記載がない限り、本明細書に記載される全ての化合物は、薬学的に許容さ
れるその塩として提供される。いくつかの実施形態では、インヒビターは、塩ではない。
いくつかの実施形態では、インヒビターは、塩である。ある実施形態では、インヒビター
は、低分子量の化合物であることとしてもよい(「LMWC」は、例えば、限定されない
が、約600ダルトン未満の分子量を有する)。
【0064】
本明細書に開示される化合物の具体的な例は、1つ以上の不斉中心を含むこととしても
よく、よって、化合物は、異なる立体異性の形態で存在し得る。したがって、化合物およ
び組成物は、ラセミ混合物を含む、立体異性の混合物として、または、個々の純粋な鏡像
異性体として提供されることとしてもよい。ある実施形態では、本明細書に開示される化
合物は、エナンチオピュアな形態において、90%の鏡像異性体過剰率、95%の鏡像異
性体過剰率、97%の鏡像異性体過剰率、または99%以上の鏡像異性体過剰率のような
実質的にエナンチオピュアな形態へと合成され、または、精製される。
【0065】
本明細書に開示される化合物は、少なくとも1つの不斉中心または幾何学中心、シス-
トランス中心(C=C、C=N)を有し得る。別途の特定がない限り、全てのキラル、ジ
アステレオマー、ラセミ、メソ、回転および幾何異性体の構造が意図される。化合物は、
単一の異性体として、または、異性体の混合物として単離され得る。また、化合物の全て
の互変異性体は、本開示の考慮される部分である。また、本開示の化合物は、化合物に存
在する原子の全ての同位体を含み、限定されないが、重水素、三重水素、18F等を含む
。
【0066】
本明細書で開示されるのは、
式Iを有するp62-ZZインヒビターである化合物であって、
【化4】
・・・ 式I
Arは、アリーレンまたはヘテロアリーレン基であり、
R
1は、
【化5】
の構造を有し、
ここで、
Wは、アルカンジイル、アルケンジイル、カルボニルまたはその組み合わせであり、
Xは、-NR
5-であって、R
5は、Hまたはアルキル、または-O-であり、
Yは、置換基を有してもよいシクロアルキル、置換基を有してもよいシクロアルキル
-置換アルキル、置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル、または置換基を有しても
よいヘテロシクロアルキル-置換アルキルであり、
各R
2は、同じまたは異なり、
【化6】
の構造を有し、
ここで、
Zは、-NR
6-であり、R
6は、Hまたはアルキル、-O-、-S-、または-C
H
2-であり、
Z
1は、(-CH
2-)
mであり、mは0~5であり、または2~6の炭素原子を有
するアルケンジイルであり、
Cyは、3~8員シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロア
リール環であり、
各R
4は、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコ
キシ、置換あるいは非置換のアルキル、またはアミノから選択され、cは0~5であり、
各R
3は、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコ
キシ、置換あるいは非置換のアルキル、アミノ、置換あるいは非置換のシクロアルキル、
置換あるいは非置換のヘテロシクロアルキル、置換あるいは非置換のアリール、またはニ
トロから選択され、aは2~5であり、bは0~3である、
化合物である。
【0067】
Arは、例えば、ベンゼントリル(例えば、ベンゼン-1,3,4-トリイル)または
ベンゼンテトリルであることとしてもよい。
【0068】
Wは、例えば、低級のアルカンジイル、または低級のアルケンジイル、またはカルボニ
ルも含む低級のアルカンジイル、またはカルボニルも含む低級のアルケンジイルであるこ
ととしてもよい。Xは、例えば、-NR5-であることとしてもよく、ここで、R5は、
低級のアルキルであることとしてもよく、それは任意に置換されることとしてもよい。Y
は、例えば、シクロアルキル-置換アルキルであることとしてもよく、アルキル基は1~
4の炭素原子を含む。ある実施形態では、R1は、-CH2-X-(CH2)m-R11
であり、Xは、NHまたはO、mは0~6であり、R11は、置換基を有してもよいシク
ロアルキルである(具体的には、置換基を有してもよいシクロヘキシル。)。ある実施形
態では、R11は、置換されていないシクロヘキシルである。
【0069】
ある実施形態では、Yは、
【化7】
または
【化8】
である。
【0070】
ある実施形態では、R
2は、
【化9】
の構造を有し、
Zは、例えば、-NR
6-であることとしてもよく、ここで、R
6は、低級のアルキル
であることとしてもよく、それは任意に置換されていることとしてもよく、またはZは-
O-であることとしてもよい。R
4は、例えば、-F、-Cl、-OCH
3、-OH、-
CH
3または-NH
2であることとしてもよい。ある実施形態では、cは1であり、また
は2である。ある実施形態では、R
4は、4-フルオロ、2,4-ジフルオロ、または4
-メチルである。
【0071】
R3は、例えば、-F、-Cl、-OCH3、-OH、または-NH2であることとし
てもよい。ある実施形態では、R3は、低級のアルキル、低級のアルコキシ、C1~C4
アルキルアミノ(アルキルアミノのC1~C4アルキル部分は、直鎖または分岐鎖である
こととしてもよい。)、ジ(C1-C4アルキル)アミノ、C3~C7シクロアルキル(
特に、C3~C5シクロアルキル、特に、シクロプロピル)、ヒドロキシル置換されたC
3~C7シクロアルキル、N、O、およびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子
を含む3~6員ヘテロシクロアルキル、アルキル置換された3~6員ヘテロシクロアルキ
ル、ヒドロキシル置換された3~6員ヘテロシクロアルキル、またはフェニル、ナフチル
またはアントラセニル(anthracenyl)、またはニトロ基のようなアリールである。
【0072】
ある実施形態ではaは2、3、4、または5である。好ましい実施形態では、aは2で
ある。ある実施形態では、第1のR2基はR1基に対してAr環のメタ位にあり、第2の
R2基はR1基に対してAr環のパラ位にある。ある実施形態では、 各R2基は同じ構
造を有する。
【0073】
ある実施形態では、bは0、1、2、または3である。
【0074】
ある実施形態では、cは0、1、2、3、4、または5である。
【0075】
より具体的な実施形態では、p62-ZZインヒビターは、
【化10】
、または
【化11】
から選択され、
ここで、各R
7、R
8、およびR
9は同じまたは異なり、-F、-Cl、-OCH
3、
-OH、-CH
3、または-NH
2から選択され、dは0~3であり、eは0~5であり
、fは0~5である。
【0076】
本明細書に開示される化合物は、以下に示されるように合成される。
一般的な合成経路:
【化12】
【化13】
【0077】
まず、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(1.38g、10.0mmol)を、
ドライジメチルホルムアミド(DMF,40mL)で希釈した。1-(ブロモメチル)-
4-フルオロベンゼン(3.96g、21.0mmol)、その後、無水K2CO3(5
.52g、40.0mmol)をゆっくりと加えた。混合物を6時間、室温で撹拌した。
混合物は、H2Oとエーテル(各120ml)との間で分配された。有機層は分離され、
水層はエーテルで抽出された(3×50mL)。プールされた有機層はH2O(2×50
mL)および飽和した水溶NaCl(50mL)で洗浄された。薄い色の、淡黄色の抽出
物は、無水硫酸ナトリウムのもとで乾燥させ、濃縮して、ヘキサン(75mL)による洗
浄および乾燥後に、ホワイトクリーム色の固体3,4-ビス((4-フルオロベンジル)
オキシ)ベンズアルデヒド(4.31g、82%)を得た。
【0078】
その後、3,4-ビス((4-フルオロベンジル)オキシ)ベンズアルデヒド(354
mg、1mmol)がドライエタノールに溶かされ、シクロヘキシルメタンアミン(0.
13mL、1mmol)が添加された。反応混合物は、60℃で12時間撹拌された。反
応液は室温まで冷却された。NaBH4(57mg、1.5mmol)を、少量でゆっく
りと添加し、得られた溶液をさらに12時間撹拌した。溶剤を真空で蒸発させ、残留物を
水に溶かし、酢酸エチルで抽出した。有機層を、Na2SO4と組み合わせて乾燥させ、
ろ過し、真空で蒸発させた。残留物を新しいカラムで精製し、所望の産生物N-(3,4
-ビス((4-フルオロベンジル)オキシ)ベンジル)-1-シクロヘキシルメタンアミ
ン(260mg、57%)を生成した。
【0079】
最後に、2-((3,4-ビス(ベンジルオキシ)ベンジル)アミノ)エタン-1-オ
ール(260mg、0.58mmol)を25mLの無水メタノールに溶解し、HClガ
スで1時間ポンプ輸送した。混合物をさらに2時間撹拌し、約1mLになるまで蒸発させ
た。固体の化合物を得るためにヘキサンがその後添加され、それはろ過されて乾燥されて
、最終化合物が得られた(210 mg, 74%). 1H NMR (CDCl3): 7.52-7.33 (m, 10H), 7.01-6.
84 (m, 3H), 5.20 (s, 2H), 5.17 (s, 2H), 3.71 (s, 2H), 3.64 (t, J = 4.8, 2H), 2.9
3 (s, 2H), 2.72 (t, J = 4.8, 2H)。
【0080】
治療および医薬組成物
本明細書に記載される化合物は、p62-媒介疾患を治療するのに有用であり得る。例
示的なp62-媒介疾患は、多発性髄髄腫、オートファジー関連疾患、メタボリックシン
ドローム、アルツハイマー病、および他の神経変性疾患、並びに、黄色ブドウ球菌、エン
テロコッカス、サルモネラ菌のような感染症を含む。
【0081】
本明細書に開示される化合物は、腎癌、肺癌、甲状腺癌、前立腺癌、多発性髄髄腫およ
び乳癌のような癌を治療するのに有用であることとしてもよい。
【0082】
ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、多発性骨髄腫の細胞増殖を阻害す
る。特に、化合物は、OPM-2細胞、OPM-2様細胞、MM-IS細胞、MM-IS
様細胞、MM.1R細胞、MM-1R様細胞、KMS-18細胞、KMS-18様細胞、
S6B45細胞、S6B45様細胞、MR20細胞、MR20様細胞、ARD細胞、およ
び/またはARD様細胞の1つ以上から選択される、細胞タイプにより、特徴づけられる
多発性骨髄腫を治療するために使用されることとしてもよい。腫瘍のタイプおよび疾病の
進行ステージにより、治療方法の抗癌の効果は、限定されないが、腫瘍増殖の阻害、腫瘍
増殖の遅延、腫瘍の退行、腫瘍の収縮、治療終了時の腫瘍の再増殖までの時間の増加、疾
患の進行の遅延、および転移の予防を含む。治療の方法が、このような治療を必要とする
対象に施される場合、当該治療の方法は、例えば、抗癌効果、奏効率、疾患進行までの時
間、または生存率により測定される効果を産みだすことが期待される。特に、ヒト患者、
具体的には、最初の治療法も把握しているものの、再発している患者、これまでの化学療
法に対して不応性である患者に、当該治療方法は適している。例えば、本明細書に開示さ
れる化合物は、デキサメサゾン、アルキル化剤(例えば、メルファラン、シクロホスファ
ミド(cyclophosamide))、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)、サリドマ
イド、レナリドマイド、CC-4047、ボルテゾミブ、およびマルチターゲットキナー
ゼインヒビターの1つ以上に対して抵抗力がある、癌、特に、薬剤耐性の多発性骨髄腫を
治療するために使用されることとしてもよい。また、本明細書に開示される化合物は、上
記のように言及されたあらゆる薬剤と同時投与されることとしてもよい。本明細書に開示
される化合物は、オートファジーをブロックすることとしてもよい。オートファジーをブ
ロックすることは、癌治療のためのDNA損傷剤および可能な他の薬剤の効能を高めるこ
とができる(Suppression of autophagy by FIP200 deletion impairs DNA damage repair
and increases cell death upon treatments with anti-cancer agents. Bae et al., J
l. Mol Cancer Res. 2011 Aug. 1)。
【0083】
ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、腫瘍の成長と骨破壊を低減できる
ストローマ細胞におけるp62活性を調節する。
【0084】
具体的な実施形態では、本明細書で開示される化合物は、破骨細胞形成を阻害するおよ
び/または破骨細胞の活性化を低減するために使用されることとしてもよい。骨細胞は、
正常および病的状態の両方における主要骨再吸収細胞である。増殖した破骨細胞の骨吸収
は、破骨細胞形成の増加および骨の再吸収のために予め形成された破骨細胞の活性化の両
方をもたらすことができる。骨転移を有する患者では、溶骨性の骨破壊が、重度の骨痛、
病的骨折、高カルシウム血症、および神経圧迫症候群をもたらし得る。いくつかの腫瘍は
、腎臓癌、肺癌、甲状腺癌、前立腺癌、多発性髄髄腫および乳癌を含む骨についての高い
偏向を示す。例えば、Roodman, Journal of Clinical Oncology, vol. 19, 2001, p. 356
2を参照。破骨細胞の形成および活性化は、また、閉経後の骨粗しょう症などの骨粗鬆症
、パジェット病、関節リウマチおよび頭頸部扁平上皮癌にかかっている個々における溶骨
性の疾病および骨欠損に貢献する。米国特許第7,462,646号参照。
【0085】
開示される化合物は、別の治療薬、具体的には別の抗癌剤とともに同時投与することと
してもよい。ある実施形態では、少なくともp62-ZZインヒビターおよび少なくとも
1つの他の抗癌剤を含む医薬組成物が提供される。例示的な化学療法剤は、EGF受容体
アンタゴニスト、硫化ヒ素、アドリアマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、シメチ
ジン、カルミノマイシン(caminomycin)、メクロレタミンハイドロクロライド、ペンタ
メチルメラミン、チオテパ、テニポシド、シクロホスファミド、クロラムブシル、デメト
キシヒポクレリンA、メルファラン、イホスファミド、トロポスファミド、トレスルファ
ン、ポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体、リン酸エトポシド、テニポシ
ド、エトポシド、ロイロシジン、ロイロシン、ビンデシン、9-アミノカンプトテシン、
カンプトイリノテカン(Camptoirinotecan)、クリスナトール、メゲストロール、メトプ
テリン、マイトマイシンC、エクテイナシジン743、ブスルファン、カルムスチン、ロ
ムスチン、ロバスタチン、1-メチル-4-フェニールピリジニウムイオン、セムスチン
、スタウロスポリン、ストレプトゾシン、フタロシアニン、ダカルバジン、アミノプテリ
ン、メトトレキセート、トリメトレキセート、チオグアニン、メルカプトプリン、フルダ
ラビン、ペンタスタチン、クラドリビン、シタラビン、ポルフィロマイシン、5-フルオ
ルロウラシル、6-メルカプトプリン、塩酸ドキソルビシン、ロイコボリン、ミコフェノ
ール酸、ダウノルビシン、デフェロキサミン、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラ
クチトレキセド、イダルビシン、エピルビカン、ピラールビカン、ゾルビシン、ミトキサ
ントロン、硫酸ブレオマイシン、アクチノマイシンD、サフラシン、サフラマイシン、キ
ノカルシン(quinocarcin)、ディスコデルモライド、ビンクリスチン、ビンブラスチン
、酒石酸ビノレルビン、ベルテポルフィン(vertoporfin)、パクリタキセル、タモキシ
フェン、ラロキシフェン、チアゾフラン、チオグアニン、リバビリン、EICAR、エス
トラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、フルタミド、ビカルタミド、ブセレ
リン、ロイプロリド、プテリジン、エンジイン、レバミゾール、アフラコン、インターフ
ェロン、インターロイキン、アルデスロイキン、フィルグラスチム、サルグラモスチム、
リツキシマブ、BCG、トレチノイン、ベタメタゾン、塩酸ゲムシタビン、ベラパミル、
VP-16、アルトレタミン、タプシガルギン、オキサリプラチン、イプロプラチン、テ
トラプラチン、ロバプラチン、DCP、PLD-147、JM118、JM216、JM
335、サトラプラチン、ドセタキセル、脱酸素化パクリタキセル、TL-139、5’
-ノル-アンヒドロビンブラスチン、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、BA
Y38-3441、9-ニトロカンプトテシン、エキサテカン(exatecan)、ラルトテカ
ン、ジャイマテカン、ホモカンプトテシンジフルモテカン(homocamptothecins diflomot
ecan)および9-アミノカンプトテシン、SN-38、ST1481、カラニテシン、イ
ンドロカルバゾール、プロトベルベリン、イントプリシン、イデノイソキノロン、ベンゾ
フェナジンおよびNB-506を含む。
【0086】
本明細書に記載される化合物は、また、摂食量および体重、リバースインシュリンおよ
びレプチン抵抗性、逆肝脂肪症(脂肪肝)を低減し、並びに、脂質異常症を改善するため
に、それを必要とする対象に投与されることとしてもよい。それらは、肥満、糖尿病(例
えば、2型糖尿病)、および非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患(NAFLD
/AFLD)の治療に使用することができ、あとは、インスリン抵抗性、肝硬変および肝
臓癌、動脈硬化性心疾患、糖尿病性腎症、痛風および線維症にかかりやすい異脂肪血症に
ついてのリスクファクターとなり得る。
【0087】
糖尿病疾患は、1型糖尿病、2型糖尿病、不適切な耐糖能、および/またはインシュリ
ン耐性であり得る。
【0088】
本明細書に開示される化合物は、また、例えば、アルツハイマー病、毛細血管拡張性運
動失調症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病のような、神経変性疾
患または疾病を治療するために、それを必要とする対象に投与されることとしてもよい。
【0089】
本明細書で特定される化合物は、薬剤に加えて、少なくとも1つの薬学的に許容される
添加剤、例えば、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、防腐剤、界面活性剤などを含む医薬組
成物に含まれることとしてもよい。また、医薬組成物は、抗菌剤、消炎剤、麻酔剤、麻薬
などのような、1つ以上の追加の有効成分を含むことができる。これらの製剤に有用な薬
学的に許容される担体は、慣習的なものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences
, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 19th Edition (1995)は、本明
細書に開示される化合物の薬学的な送達に適する製剤および組成物を記載する。
【0090】
概して、担体の性質は、採用される投与の具体的なモードによるであろう。例えば、非
経口製剤は、通常、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロール
などの薬学的および生理学的に許容される流体を含む注射液をビヒクルとして含有する。
固体の組成物に関し(例えば、粉末、丸剤、錠剤、またはカプセル形態)、従来の非毒性
の固体担体は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはス
テアリン酸マグネシウムを含むことができる。生物学的にニュートラルな担体に加えて、
投与される医薬組成物は、湿潤剤、乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢
酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートのような、少量の非毒性補助物質を含むこ
ととしてもよい。
【0091】
本明細書に開示される化合物は、経口、直腸、鼻腔内、肺内、もしくは経皮的送達によ
ることを含む、種々の粘膜投与モードにより、または、他の表面への局所送達により、対
象に投与され得る。任意に、化合物は、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、関節内、腹腔内
、くも膜下腔内、脳室内、または非経口経路を含む、非粘膜ルートにより投与され得る。
別の代替的な実施形態では、化合物は、細胞、組織、または対象由来の組織に対して直接
暴露することにより、生体外で投与され得る。
【0092】
医薬組成物を処方するために、化合物を、種々の薬学的に許容される添加剤、並びに、
化合物の分散のためのビヒクルもしくはベースと組み合わせることができる。所望の添加
材は、限定されないが、pH調整剤、例えば、アルギニン、水酸化ナトリウム、グリシン
、塩酸、クエン酸等を含む。さらに、局所麻酔(例えば、ベンジルアルコール)、等張化
剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール)、吸着型インヒビター(例
えば、Tween80またはMiglyol812)、溶解促進剤(例えば、シクロデキ
ストリンおよびその誘導体)、安定剤(例えば、血清アルブミン)、並びに還元剤(例え
ば、グルタチオン)を含むことができる。アジュバント、例えば、当該技術分野でよく知
られる多くの他の適切なアジュバントの中でも、水酸化アルミニウム(例えば、Amphogel
, Wyeth Laboratories, Madison, NJ)、Freund'sアジュバント、MPLTM(3-O-脱
アシル化モノホスホリルリピドA;Corixa, Hamilton, IN)およびIL-12(Genetics I
nstitute, Cambridge, MA)を組成物中に含めることができる。組成物が液体である場合、
統一をとるために、0.9%(w/v)の生理食塩水の張度を基準にして測定された製剤
の張度は、典型的には、投与部位において実質的で不可逆的な組織損傷が誘発されない値
に調整される。概して、溶液の張度は、約0.3~約3.0の値、例えば、約0.5~約
2.0、または約0.8~1.7に調整される。
【0093】
化合物をベースまたはビヒクルで分散させることができ、それは、化合物を分散させる
能力を有する親水性の化合物、およびあらゆる所望の添加剤を含むことができる。ベース
は、限定されないが、ポリカルボン酸のコポリマーまたはその塩、他のモノマーを有する
(例えば、メチル(メタ)アクリレート、アクリル酸等)を有するカルボキシル無水物(
例えば、無水マレイン酸)、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニル
ピロリドンのような親水性のビニルポリマー、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシ
プロピルセルロース等のようなセルロース誘導体、キトサン、コラーゲン、アルギン酸ナ
トリウム、ゼラチン、ヒアルロン酸、およびそれらの非毒性金属塩のような天然高分子を
含む、幅広い範囲の適切な化合物から選択することができる。しばしば、生分解性ポリマ
ーが、例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-グリコール酸)コポリマー、ポリヒドロキシ酪酸
、ポリ(ヒドロキシ酪酸-グリコール酸)コポリマー、およびこれらの混合物から、ベー
スまたはビヒクルとして選択される。代替的にまたは追加的に、ポリグリセリン脂肪酸エ
ステル、ショ糖脂肪酸エステル等のような合成脂肪酸エステルをビヒクルとして採用する
ことができる。親水性のポリマーおよび他のビヒクルは、単体でまたは組み合わせて使用
され、部分的結晶化、イオン結合、架橋などにより、ビルクルに強化された構造的完全性
を付与することができる。ビヒクルは、粘膜表面に直接適用するために、液体または粘性
のある溶液、ゲル、ペースト、粉末、ミクロスフェアおよびフィルムを含む様々な形態で
提供することができる。
【0094】
化合物は、様々な方法に従ってベースまたはビヒクルと組み合わせることができ、化合
物の放出は、ビヒクルの拡散、崩壊、またはそれに関連する水路の形成によって行うこと
ができる。いくつかの状況では、化合物は、適切なポリマーから調整された、例えば、イ
ソブチル2-シアノアクリレートのような、ナノカプセル(ナノスフェア)、マイクロカ
プセル(マイクロスフェア)中に分散され(例えば、Michael et al., J. Pharmacy Phar
macol. 43:1-5, 1991参照。)、および生体適合性分散媒体に分散され、長時間にわたり
持続的な送達および生物学的な活性をもたらす。
【0095】
開示の組成物は、代替的には、pH調整剤および緩衝剤、等張化剤、湿潤剤などの添加
剤、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カ
ルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンを、おおよその
生理学的条件に必要とされる薬学的に許容可能なビヒクル物質として含むことができる。
固体の組成物について、従来の非毒性の薬学的に許容されるビヒクルを使用することがで
き、これは、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン
酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカン、セルロース、グルコース、スクロー
ス、炭酸マグネシウムなどを含む。
【0096】
化合物を投与するための医薬組成物は、また、溶液、マイクロエマルジョン、または高
濃度の有効成分に適する他の規則構造として処方され得る。ビヒクルは、例えば、水、エ
タノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレ
ングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む、溶剤または分散媒であること
としてもよい。溶液のための適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使
用、分散性調合物の場合の所望の粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって維
持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えばマンニトールおよびソルビ
トールなどの糖類、ポリアルコール、または塩化ナトリウムを含むことが望ましいであろ
う。化合物の長期吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩
およびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0097】
ある実施形態では、例えば徐放性ポリマーを含む組成物のような、時間放出製剤中で化
合物を投与することができる。これらの組成物は、例えばポリマー、マイクロカプセル化
送達システムまたは生体接着性ゲルのような制御放出ビヒクルのような急速放出に対して
保護するビヒクルを用いて調製することができる。本開示の種々の組成物中での延長され
た送達は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムヒドロゲルおよ
びゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされ得る。制御放出製剤が所望される場
合、本開示に従って使用するのに適した制御放出結合剤は、活性物質に対して不活性であ
り、かつ化合物および/または他の生物学的活性物質を組み込むことができる、あらゆる
生体適合性制御放出物質を含む。多数のこのような材料が当該技術分野で知られる。有用
な徐放性結合剤は、送達後の生理学的条件下で(例えば、粘膜表面で、または体液の存在
下で)ゆっくりと代謝される物質である。適切な結合剤には、徐放性製剤に使用するため
の当該分野で周知の生体適合性ポリマーおよびコポリマーが含まれるが、これらに限定さ
れない。このような生体適合性のある化合物は、毒性がなく周囲の組織に対して不活性で
あり、鼻の炎症、免疫応答、炎症などの重大な副作用を引きださない。それらは代謝産物
に代謝され、生体適合性があり、身体から容易に排除される。
【0098】
本開示において使用するための例示的なポリマー材料には、加水分解可能なエステル結
合を有するコポリマーおよびホモポリマーポリエステル由来のポリマーマトリックスが含
まれるが、これらに限定されない。これらの多くが、生物分解性であり、毒性が全くない
または低い分解産物をもたらすことが当該技術分野で知られている。例示的なポリマーに
は、ポリグリコール酸およびポリ乳酸、ポリ(DL-乳酸-共-グリコール酸)、ポリ(
D-乳酸-共-グリコール酸)およびポリ(L-乳酸-共-グリコール酸)が含まれる。
他の有用な生分解性または生体侵食性ポリマーには、これに限定されるものではないが、
ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(ε-アプロラクトン-CO-乳酸)、ポリ(ε-ア
プロラクトン-CO-グリコール酸)、ポリ(ベータヒドロキシ酪酸)、ポリ(アルキル
-2-シアノアクリレート)のようなポリマー、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート
)、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)(例えば、L-ロイシン、グルタミン酸、L-アスパ
ラギン酸など)、ポリ(エスエル尿素)、ポリ(2-ヒドロキシエチルDL-アスパルト
アミド)、ポリアセタールポリマー、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリマー
ルアミド、多糖類、およびそれらのコポリマー、のようなハイドロゲルを含む。
【0099】
このような製剤を調製するための多くの方法が、当該技術分野でよく知られている(例
えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed
., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978参照。)。他の有用な製剤は、徐放性マイクロ
カプセル(米国特許第4,652,441号および第4,917,893号)、マイクロカプセルおよび他の
製剤を製造するのに有用な乳酸-グリコール酸コポリマー(米国特許第4,677,191号およ
び第4,728,721号)、並びに水溶性ペプチドの徐放組成物(米国特許第4,675,189号)を含
む。
【0100】
本開示の医用組成物は、典型的には、製造、貯蔵および使用の条件下で無菌で安定であ
る。滅菌溶液は、必要に応じて本明細書に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに
、適切な溶媒中に必要量の化合物を組み込み、続いてろ過滅菌することによって調製する
ことができる。概して、分散液は、塩基性分散媒体および本明細書に列挙したものからの
必要な他の成分を含む滅菌ビヒクル中に、化合物および/または他の生物学的活性物質を
組み込むことによって調製される。滅菌粉末の場合、調製方法には、真空乾燥および凍結
乾燥が含まれ、化合物に予め滅菌濾過されたその溶液からの任意の追加の所望の成分を加
えた粉末を得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン
、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成すること
ができる。
【0101】
本開示の様々な治療方法によれば、治療または予防が求められる疾病の管理に関連する
従来の方法論と一致した方法で、化合物を対象に送達することができる。本明細書の開示
によれば、予防上または治療上有効な量の化合物は、選択された疾患または病気または1
つ以上のその症状を予防、阻止、および/または改善するのに十分な時間および条件下で
、そのような治療を必要とする対象に投与される。この化合物の投与は、予防的でも治療
的な目的でもよい。予防的に提供される場合、任意の症状の前に、その化合物が提供され
る。化合物の予防的投与は、その後のあらゆる疾患プロセスを防止または寛解させるのに
役立つ。治療的に提供される場合、化合物は、病気または感染の症状の発症時に(または
直後に)提供される。
【0102】
予防的および治療的目的のために、化合物は、長期間にわたる連続送達(例えば、連続
経皮、粘膜または静脈内送達)を介して、単一のボーラス送達で、または、反復投与プロ
トコルで(例えば、1時間ごと、毎日または毎週反復される投与プロトコルによって)、
経口経路によって被験体に投与することができる。化合物の治療有効量は本明細書に示さ
れる標的とされる疾病および病気に関連する1つ以上の兆候または検出可能な症状を緩和
するための臨床的に有意な結果をもたらす治療レジメンおよび長期間の予防内での繰り返
しの投与として提供され得る。この文脈における有効投与量の決定は、典型的には、その
後ヒト臨床試験によりフォローされた動物モデル研究に基づいており、対象疾患症状の発
生または重症度を有意に低下させる投与プロトコールによって導かれる。これに関する適
切なモデルには、例えば、マウス、ラット、トリ、ブタ、ネコ、非ヒト霊長類および当技
術分野で知られている他の容認された動物モデルが含まれる。あるいは、インビトロモデ
ルを用いて有効投薬量を決定することができる。このようなモデルを使用すると、治療上
有効な量の化合物を投与するための適切な濃度と投与量を決定するために、通常の計算と
調整のみが必要とされる(例えば、標的疾患の1つ以上の症状を緩和する、または所望の
免疫応答を引き出すのに有効である量)。代替的な実施形態では、薬剤の有効量または有
効な投与量は、治療または診断の目的のために、本明細書に示される疾病または病気と関
連する、1つ以上の選択された生物学的活性を単に阻害するまたは高めることとしてもよ
い。
【0103】
化合物の実際の投与量は、疾病の兆候および対象の具体的な状態(例えば、対象の年齢
、大きさ、適応度、症状の程度、感受性因子など)、投与の時間および経路、同時に投与
される他の薬剤または治療、並びに、対象における、所望の活性または生物学的反応を誘
発するための特定の薬理学の薬剤のような因子に従って変化する。投与レジメンは、最適
予防または治療反応を提供するように調整することができる。治療上有効な量はまた、治
療上有益な効果によって、化合物の毒性または有害な副作用が臨床的に凌駕される量であ
る。本開示の方法および処方物中の治療有効量の化合物の非限定的な範囲は、約0.01
mg/kg体重~約20mg/kg体重、例えば約0.05mg/kg~約5mg/kg
体重、または約0.2mg/kg~約2mg/kg体重である。
【0104】
投薬量は、標的部位(例えば、肺または全身循環)で所望の濃度を維持するために、主
治医によって変更することができる。 より高いまたはより低い濃度は、送達様式、例え
ば、経表皮、直腸、経口、肺、または鼻腔内送達対静脈または皮下送達に基づいて選択す
ることができる。投与量は、投与された製剤の放出速度、例えば、肺内スプレー対粉末、
徐放性経口対注射粒状または経皮送達製剤などに基づいて調整することもできる。
【0105】
実施例
骨髄の微小環境は、MMにおける重要な支えとなる役割を提供し、ストローマ細胞にお
ける複数のシグナル経路の活性化により、腫瘍の増殖と骨破壊の両方を増大させることが
知られている。セクエストソーム1(p62)は、MMを有する患者の骨髄微小環境にお
ける、NF-
KB、p38MAPKおよびPI3Kの活性化をもたらす、シグナル複合体
の形成における重要な役割を果たす。特定のp62ドメイン:ΔSH2、ΔPB1、ΔZ
Z、Δp38、ΔTBSおよびΔUBAが欠損された、p62の欠失構造が生成され、M
Mについての潜在的な治療薬として、阻害ペプチド/分子を発現させる手段としての、N
F-
KBおよびp38MAPKシグナルにより媒介されたMM細胞増殖および破骨細胞(
OCL)形成の増加に関係するドメイン、具体的にはp62のZZドメインを特定する(
図1)。これらの構築物は、その後、p62-ノックアウトストローマ細胞系にトランス
フェクトされ、p62のZZドメインが、MM細胞増殖のストローマ細胞のサポート、増
加したIL-6、VCAM-1発現、およびOCL形成に必要とされる。これらの結果は
、p62のZZドメインを標的とする小分子またはドミナントネガティブ構築物が、骨髄
の微小環境によりMM細胞のサポートおよびOCL形成を阻害し、p62機能をブロック
しているであろうことを示唆する。
インヒビターの系統的な生物学的実験が、
図2に示されるように行われた。
【0106】
実施例1
化合物XIELP1-106:N-(3,4-ビス((4-フルオロベンジル)オキシ)ベンジル)-1-シクロヘキ
シルメタンアミンハイドロクロライド
【化14】
【表1】
【0107】
XIELP1-12b:N-(3,4-ビス((4-フルオロベンジル)オキシ)ベンジル)-1-シクロヘキサナミ
ン
【化15】
【表2】
【0108】
XIELP1-17b:N-(3,4-ビス((4-ジフルオロベンジル)オキシ)ベンジル)-1-シクロヘキシル
メタンアミン
【化16】
【表3】
【0109】
XIELP1-20a:N-(3,4-ビス((2,4-ジフルオロベンジル)オキシ)ベンジル)シクロヘキサナ
ミン
【化17】
【表4】
【0110】
XIELP1-24b:2-((3,4-ビス((4-メチルベンジル)オキシ)ベンジル)アミノ)エタン-1-オ
ル
【化18】
【表5】
【0111】
XIELP1-25b:N-(3,4-ビス((4-メチルベンジル)オキシ)ベンジル)-1-シクロヘキシルメタ
ンアミン
【化19】
【表6】
【0112】
XIELP1-51:N-(3,4-ビス((4-メチルベンジル)オキシ)ベンジル)シクロヘキサナミン
【化20】
【表7】
【0113】
XIELP1-58:N-(3,5-ビス((2,4-ジフルオロベンジル)オキシ)ベンジル)-1-シクロヘキシ
ルメタンアミン
【化21】
【表8】
【0114】
XIELP1-60:N-(3,5-ビス((2,4-ジフルオロベンジル)オキシ)ベンジル)シクロヘキサナミ
ン
【化22】
【表9】
【0115】
化合物XIELP1-106(10bとしても言及される)の治療有効性および許容性
は、皮下のRPMI-8226ヒト多発性骨髄腫異種移植モデルの治療において評価され
た。異なる時点での2つのグループにおける腫瘍の体積は、
図3に示される。XIELP
1-106ビヒクルコントロールグループの平均腫瘍体積は、腫瘍移植後30日で1,4
52mm
3に達した。XIELP1-106(60mg/kg、ip、q3d×4wks
)の治療は、23%のT/C値(p=0.001)を有する強力な抗腫瘍活性を産み出し
た。
【0116】
ビヒクル処理されたマウスの生存期間中央値(MST)は、42日であった(
図4)。
XIELP1-106グループでは、実験終了まで動物は死亡しなかった(腫瘍接種後6
0日)。
【0117】
安全性のプロファイルに関し、所与の投与レベルで、XIELP1-106で治療され
たマウスは、3投与後に11.2%の中程度の体重減少がもたらされ、その後、残りの期
間中の治療の許容性へと展開した。全体的な他の臨床異常は生じなかった。まとめると、
所与の投与レベルでのXIELP1-106は、この実験において、RPMI-8226
ヒト多発性骨髄腫異種移植モデルの治療における強い抗腫瘍の効能を示し、皮下のRPM
I-8226腫瘍に耐えるマウスの生存時間を有意に延長した。
【0118】
開示された化合物、組成物、および方法の原理が適用される、多くの可能な実施例に鑑
み、示された実施形態は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定するよう
に解釈すべきではないことが認識されるべきである。