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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20231108BHJP
   B60K 1/02 20060101ALI20231108BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20231108BHJP
   A01D 34/76 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K1/02
A01D34/64 A
A01D34/76 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022141695
(22)【出願日】2022-09-06
(62)【分割の表示】P 2018116428の分割
【原出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2022173247
(43)【公開日】2022-11-18
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛和
(72)【発明者】
【氏名】萬治 寧大
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-012464(JP,A)
【文献】特開2004-182214(JP,A)
【文献】特開2011-188789(JP,A)
【文献】特開2012-056542(JP,A)
【文献】特開2012-213345(JP,A)
【文献】実開平04-080204(JP,U)
【文献】米国特許第05983612(US,A)
【文献】米国特許第07578116(US,B1)
【文献】国際公開第2014/061052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00-8/00,16/00
A01D 34/64,34/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、
前記走行機体に設けられたボンネットと、
前記走行機体の左右それぞれに設けられた前輪及び後輪を有する車輪ユニットと、
前記車輪ユニットに回転駆動力を供給するモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリと、
前記走行機体の左右に配置された左右のフェンダと、を備え、
前記バッテリは、前記走行機体の左右方向の概ね中心に配置された第1バッテリと、前記走行機体の左右方向の中心に対して概ね対称に配置された第2バッテリとを含み、
前記第2バッテリのそれぞれは、平面視で、対応する前記フェンダに少なくとも一部が重畳するように前記フェンダ上に配置され、
前記第1バッテリは、前記ボンネットの内部に配置され、
前記第2バッテリは、前記ボンネットの外部に配置され、
前記第1バッテリは、当該第1バッテリの前後方向長さの範囲内の前後方向位置に前記前輪の中心が位置するように配置され、
前記第2バッテリは、当該第2バッテリの前後方向長さの範囲内の前後方向位置に前記後輪の中心が位置するように配置され、
側面視で、前記第2バッテリの下面が、前記第1バッテリの下面よりも高い位置に位置し、且つ、前記第2バッテリの上面が、ステアリングホイールの上端よりも低い位置に位置している電動作業車。
【請求項2】
前記第1バッテリは、前記走行機体の前後方向の前部に配置されており、
前記第2バッテリは、前記走行機体の後部において、前記第1バッテリの左右方向の中心線を挟んで左右に概ね対称に配置されている、請求項1に記載の電動作業車。
【請求項3】
平面視で、前記第2バッテリの後端部が、前記フェンダの後端部よりも前方に位置している請求項1又は2に記載の電動作業車。
【請求項4】
平面視で、運転座席のアームレスト及び前記フェンダに設けられた作業具が、左右の前記第2バッテリの間に設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の電動作業車。
【請求項5】
左右の前記第2バッテリは、側面視で、前記走行機体に設けられた転倒保護フレームと重畳する位置に配置され、且つ、平面視で、左右の前記第2バッテリの各々が、前記転倒保護フレームに、前記走行機体の幅方向における外側において近接する位置に配置されている請求項1~4のいずれか1項に記載の電動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータによって駆動される駆動輪を備えた電動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、左後車輪及び右後車輪からなる後車輪ユニットと、左前車輪及び右前車輪からなる前車輪ユニットと、後車輪ユニットに回転駆動力を与えるモータと、モータに電力を供給するバッテリとを備える電動作業車が開示されている。モータから所定の回転駆動力を受けて後車輪ユニットが回転駆動され、前車輪ユニットは後車輪ユニットの回転駆動に応じて回転する。後車輪ユニットに含まれる左後車輪及び右後車輪へのモータの回転駆動力の供給量はそれぞれ独立的に制御されており、左後車輪及び右後車輪の回転速度を異ならせることができる。これにより左右後車輪に速度差が生じるため、電動作業車の方向転換が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-086001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の通り、特許文献1の電動作業車は、モータからの回転駆動力を受けて後車輪ユニットが回転駆動され、その前進及び方向転換等が行われる。モータに電力を供給するためには電動作業車に蓄電量を十分に確保できるバッテリを搭載する必要があるが、このようなバッテリを電動作業車に配置する際のバッテリの適切な配置位置の検討が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、適切な位置に配置されたバッテリを有する電動作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電動作業車の特徴構成は、走行機体と、前記走行機体に設けられたボンネットと、前記走行機体の左右それぞれに設けられた前輪及び後輪を有する車輪ユニットと、前記車輪ユニットに回転駆動力を供給するモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、前記走行機体の左右に配置された左右のフェンダと、を備え、前記バッテリは、前記走行機体の左右方向の概ね中心に配置された第1バッテリと、前記走行機体の左右方向の中心に対して概ね対称に配置された第2バッテリとを含み、前記第2バッテリのそれぞれは、平面視で、対応する前記フェンダに少なくとも一部が重畳するように前記フェンダ上に配置され、前記第1バッテリは、前記ボンネットの内部に配置され、前記第2バッテリは、前記ボンネットの外部に配置され、前記第1バッテリは、当該第1バッテリの前後方向長さの範囲内の前後方向位置に前記前輪の中心が位置するように配置され、前記第2バッテリは、当該第2バッテリの前後方向長さの範囲内の前後方向位置に前記後輪の中心が位置するように配置され、側面視で、前記第2バッテリの下面が、前記第1バッテリの下面よりも高い位置に位置し、且つ、前記第2バッテリの上面が、ステアリングホイールの上端よりも低い位置に位置している。
また、本発明に係る電動作業車の特徴構成は、
走行機体と、
前記走行機体の左右それぞれに設けられた車輪を有する車輪ユニットと、
前記車輪ユニットに回転駆動力を供給するモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリとを備え、
前記バッテリは、前記走行機体の左右方向の概ね中心に配置された第1バッテリと、前記走行機体の左右方向の中心に対して概ね対称に配置された第2バッテリとを含む点にある。
【0007】
上記構成によれば、車輪ユニットを回転駆動するモータに電力を供給するバッテリとして、第1バッテリに加えてさらに第2バッテリを備えているため、第1バッテリのみ備える場合に比べて、バッテリ全体としての蓄電量を十分に確保できる。よって、車輪ユニットの駆動時間を長く確保することができ、ひいては、電動作業車の稼働時間を長く確保できる。
【0008】
また、第1バッテリが走行機体の左右方向の概ね中心に配置され、第2バッテリが走行機体の左右方向に概ね対称に配置されているため、電動作業車の左右方向の重量バランスがとれている。よって、電動作業車の重心が左右の何れかに傾くのを抑制し、電動作業車が円滑に走行及び停車等できる。
また、第2バッテリは走行機体の左右それぞれに配置されているため、走行機体の左側及び右側それぞれから着脱容易である。
【0009】
本発明に係る電動作業車の更なる特徴構成は、
前記第1バッテリは、前記走行機体の前後方向の後部に配置されており、
前記第2バッテリは、前記走行機体の後部において、前記第1バッテリを挟んで左右に概ね対称に配置されている点にある。
【0010】
上記構成によれば、走行機体の後部に第1バッテリを配置し、第2バッテリを第1バッテリを挟んで概ね左右対称に配置するため、走行機体の後部にスペースを有する電動作業車において、重量バランスを考慮したバッテリ配置を採用できる。
【0011】
本発明に係る電動作業車の更なる特徴構成は、
前記第1バッテリは、前記走行機体の前後方向の前部に配置されており、
前記第2バッテリは、前記走行機体の後部において、前記第1バッテリの左右方向の中心線を挟んで左右に概ね対称に配置されている点にある。
【0012】
上記構成によれば、走行機体の前部に第1バッテリを配置し、第2バッテリを第1バッテリの左右方向の中心線を挟んで概ね左右対称に配置するため、走行機体の前部にスペースを有する電動作業車において、重量バランスを考慮したバッテリ配置を採用できる。
【0013】
本発明に係る電動作業車の更なる特徴構成は、
前記走行機体の左右方向それぞれに配置されたフェンダを備え、
前記第2バッテリは前記フェンダに対応して配置されている点にある。
【0014】
上記構成によれば、第2バッテリを走行機体の左右方向に亘るフェンダに対応して配置しているため、第2バッテリが走行機体の左右側から大きくはみ出ることなく、電動作業車全体をコンパクトにすることができる。
【0015】
本発明に係る電動作業車の更なる特徴構成は、
前記第2バッテリは、前記走行機体の左右それぞれに配置された第2左バッテリ及び第2右バッテリを有し、
前記第2左バッテリ及び前記第2右バッテリは、概ね同一形状であり、かつ、概ね同一の重量である点にある。
【0016】
上記構成によれば、第2左バッテリ及び第2右バッテリは概ね同一形状であり、かつ、同一の重量であるため、電動作業車の左右方向の重量バランスがとれている。
【0017】
本発明に係る電動作業車の更なる特徴構成は、
前記第1バッテリと前記第2バッテリとを、手動又は自動で切り替える切替機構を備える点にある。
【0018】
上記構成によれば、第1バッテリと第2バッテリとを切り替える切替機構を備えているため、例えば、第1バッテリの蓄電量が少なくなった場合に、第2バッテリに手動又は自動で切り替えることができる。よって、第1バッテリによるモータへの電力の供給が不足する場合には、第1バッテリから第2バッテリに切り替えることで、第2バッテリからモータに電力を供給でき、電動作業車の稼働時間を長く確保できる。
また、切替機構を備えることで、バッテリに充電を行う場合において、第1バッテリの充電と第2バッテリの充電とを別個に行うことができ、バッテリの充電の自由度を高めることができる。
また、切替機構により、第1バッテリからモータへの電力供給と第2バッテリからモータへの電力供給とを独立的に行えるため、第1バッテリと第2バッテリとの間で蓄電量が異なっても、第1バッテリ及び第2バッテリの相互間の充放電を抑制できる。
【0019】
本発明に係る電動作業車の更なる特徴構成は、
前記第1バッテリ及び前記第2バッテリに蓄積されている蓄電量を表示器に表示させる表示制御及び前記蓄電量に応じた警告を行う警告制御の少なくともいずれかを行う蓄電制御部を備える点にある。
【0020】
上記構成によれば、利用者は、蓄電量の表示に対応して、また蓄電量に応じた警告に対応して、第1及び第2バッテリを切り替えることができる。
【0021】
本発明に係る電動作業車の更なる特徴構成は、
前記切替機構は、前記第1バッテリからモータに供給される電力量と、前記第2バッテリからモータに供給される電力量とを同程度に制御している点にある。
【0022】
上記構成によれば、第1及び第2バッテリそれぞれからモータに供給される電力量が同程度であるため、第1及び第2バッテリが切り替えられても車輪ユニットは切り替え前後で供給される電力量の変動を受けることなく円滑に駆動される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る乗用電動草刈機の側面図である。
図2】第1実施形態に係る乗用電動草刈機の上面図である。
図3】乗用電動草刈機の電気系統及び動力系統を示す系統図である。
図4】第2実施形態に係る乗用電動草刈機の側面図である。
図5】第2実施形態に係る乗用電動草刈機の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による電動作業車について、ゼロターンモーアと称される、モーアユニットを車体に装備している乗用電動草刈機を例に挙げて実施形態を説明する。なお、特に断り書きがない限り、この明細書で記載されている前後方向は乗用電動草刈機の走行方向である機体の長手方向を意味しており、横方向(横断方向)または左右方向は機体長手方向に対して水平に横断する方向を意味しており、上下方向または高さ方向は地面ないしは機体水平面に対する法線方向を意味している。
【0025】
乗用電動草刈機には、駆動輪が含まれる駆動輪ユニット、及び、草刈用の刈刃が備えられたモーアユニット等に電力を供給するためにバッテリが配置されている。バッテリの配置としては、例えば、乗用電動草刈機の後部にバッテリが配置されている第1実施形態に係るタイプと、乗用電動草刈機の前部及び後部にバッテリが配置されている第2実施形態に係るタイプとがある。代表例として、以下にそれぞれのタイプの乗用電動草刈機について説明する。
【0026】
[第1実施形態]
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係るタイプの乗用電動草刈機は、走行機体10の基本構造体であるフレームユニット9を備えている。このフレームユニット9は、機体前後方向に延びた左フレーム91及び右フレーム92と、これらを連結する複数のクロスフレーム93と、運転座席11の周囲のフロアプレート95とを含む。フレームユニット9は、遊転自在なキャスタ型の左前車輪1a及び右前車輪1bとからなる前車輪ユニット1と、左後車輪2a及び右後車輪2bとからなる駆動輪ユニット2とによって対地支持される。フレームユニット9の後部には、運転座席11が配置されており、運転座席11の周囲には左右一対のフェンダ41が設けられている。
【0027】
また、運転座席11の後方から転倒保護フレーム12が立設されている。転倒保護フレーム12の後方には、後部ボンネット45Bが設けられている。
さらに、モーアユニット3が、前車輪ユニット1と駆動輪ユニット2との間でフレームユニット9の下方空間に昇降機構13としての昇降リンク機構を介して昇降可能にフレームユニット9から吊り下げられている。
【0028】
運転座席11の前方には運転者の足載せ場であるフロアプレート95が設けられており、そこからブレーキペダル14が突き出している。運転座席11の両側には、機体横断方向の水平揺動軸回りに揺動する左操縦レバー15aと右操縦レバー15bとからなる操縦ユニット15が配置されている。
また、運転座席11の周辺には、図示されていないが、刈刃操作レバー、モーアユニット昇降ペダルなどの操作具等が配置されている。
【0029】
乗用電動草刈機において、駆動輪ユニット2及びモーアユニット3が電力により駆動される。乗用電動草刈機には、モータを介して、これらに電力を供給するバッテリ51が搭載されている。本実施形態に係る乗用電動草刈機は、バッテリ51として、主バッテリ(第1バッテリ)51A及び補完バッテリ(第2バッテリ)51Bを有している。主バッテリ51Aは、例えば概ね直方体状であり、運転座席11の後方に配置されている。より具体的には、主バッテリ51Aは、運転座席11の後方において、主バッテリ51Aの左右方向の概ね中心と、走行機体10の左右方向の概ね中心とが概ね一致するように配置されている。そして、本実施形態では、主バッテリ51Aは、例えば、後部ボンネット45Bの下方に配置されている。しかし、例えば、主バッテリ51Aは、例えば、後部ボンネット45B内に配置されていてもよい。
【0030】
さらに、走行機体10には、図1図2に示すように、左右一対の補完バッテリ51B(第2左バッテリ、第2右バッテリ)が設けられている。補完バッテリ51Bは、主バッテリ51Aの蓄電量が不足している場合に、不足している電力量を補完するために用いられる。一対の補完バッテリ51Bは、走行機体10の後部において、主バッテリ51Aを挟んで走行機体10の左右方向の中心に対して概ね対称に配置されている。本実施形態では、左右一対の補完バッテリ51Bは運転座席11の後方に配置されている。さらに、本実施形態では、左右一対の補完バッテリ51Bそれぞれは、左右一対のフェンダ41に少なくとも一部が重畳するようにフェンダ41上に配置されている。
これら左右一対の補完バッテリ51Bは、概ね直方体状であり概ね同一形状であり、かつ、概ね同一の重量である。よって、主バッテリ51Aに加えて補完バッテリ51Bをさらに設けた場合でも、乗用電動草刈機の左右方向の重量バランスをとることができる。
【0031】
図2に示すように、モーアユニット3を構成するモーアデッキ3aは天壁31と側壁32を有している。側壁32は、天壁31の外周縁から下方に、外周縁から垂直下方に延びている。これら天壁31及び側壁32により、モーアデッキ3aは地面に対して開口している内部空間を作り出す。この内部空間に3つの刈刃20が収容されている。各刈刃20は、モーアデッキ3aの天壁31を貫通して上方に、実質的には鉛直方向に延びている第1回転軸21、第2回転軸22、第3回転軸23の下端に取り付けられている。図1の例では、第1回転軸21が機体の左側、第2回転軸22が機体のほぼ中央、第3回転軸23が機体の右側に位置しており、隣り合う刈刃20の回転軌跡は、わずかにオーバーラップしており、3つの刈刃20の横方向に連続した回転軌跡がこの草刈機の刈幅となる。
【0032】
より詳しくは、機体横断方向(左右方向)で中央に位置する刈刃20が左側の刈刃20及び右側の刈刃20より機体前進方向に突き出している。言い換えれば、第2回転軸22が左側の第1回転軸21及び右側の第3回転軸23より機体前後方向で前方に突き出している。これにより、モーアデッキ3aの内部空間において、平面視で3枚の刈刃20の回転軌跡の外側、特に機体後方にデッドスペースが作り出される。このデッドスペースは、図2で示されているように、平面視で中央の刈刃20の回転軌跡の後方で左側の刈刃20の回転軌跡の右側で右側の刈刃20の回転軌跡の左側に位置している。
図2の例では、このデッドスペースにモーアデッキ3aの側壁32をくい込ませることで、モーアデッキ3aの中央後部に作り出される有用空間USに、バッテリ51から電力の供給を受ける刈刃モータ64が配置される。
【0033】
図3に示すように、左後車輪2aと右後車輪2bとをそれぞれ回転駆動する電気アクチュエータである左モータ61と右モータ62が装備されている。左モータ61と右モータ62はそれぞれ独立的にインバータ4を介してバッテリ51(主バッテリ51A及び補完バッテリ51B)から供給される電力量によってその回転速度が変化する。したがって、左後車輪2aと右後車輪2bの回転速度を相違させることができ、この左右後車輪の速度差によって乗用電動草刈機の方向転換が行われる。なお、この実施形態では、左モータ61と左後車輪2aとの間及び右モータ62と右後車輪2bとの間の動力伝達のために、それぞれ走行駆動機構63が設けられている。
【0034】
バッテリ51において、主バッテリ51Aと補完バッテリ51Bとは、切替機構53を介して切替可能にインバータ4に接続されている。よって、インバータ4は、切替機構53により切り替えられることで、主バッテリ51A又は補完バッテリ51Bの何れかに接続されている。切替機構53は、例えば、スイッチ及びリレー等の機構で構成可能であり、手動又は自動で切り替え可能である。
【0035】
このように主バッテリ51Aと補完バッテリ51Bとを切り替える切替機構53を備えているため、例えば、主バッテリ51Aの蓄電量が少なくなった場合に、補完バッテリ51Bに手動又は自動で切り替えることができる。よって、主バッテリ51Aによるインバータ4を介した左モータ61、右モータ62及び刈刃モータ64等へのモータへの電力の供給が不足する場合には、主バッテリ51Aから補完バッテリ51Bに切り替えることで、補完バッテリ51Bからモータに電力を供給でき、乗用電動草刈機の稼働時間を長く確保できる。
また、切替機構53を備えることで、バッテリ51に充電を行う場合において、主バッテリ51Aの充電と補完バッテリ51Bの充電とを別個に行うことができ、バッテリ51の充電の自由度を高めることができる。
また、切替機構53により、主バッテリ51Aからモータへの電力供給と補完バッテリ51Bからモータへの電力供給とを独立的に行えるため、主バッテリ51Aと補完バッテリ51Bとの間で蓄電量が異なっても、主バッテリ51A及び補完バッテリ51Bの相互間の充放電を抑制できる。
【0036】
また、上記切替機構53が、主バッテリ51Aからモータに供給される電力量と、補完バッテリ51Bからモータに供給される電力量とを同程度に制御しているのが好ましい。
主バッテリ51A及び補完バッテリ51Bそれぞれからモータに供給される電力量が同程度であるため、主バッテリ51A及び補完バッテリ51Bが切り替えられても駆動輪ユニット2及びモーアユニット3は切り替え前後で供給される電力量の変動を受けることなく円滑に駆動される。
【0037】
走行機体10には、左モータ61ないしは左後車輪2aの回転数(回転速度)を検出する左回転数計測部として機能する左回転検出センサ71及び右モータ62ないしは右後車輪2bの回転数(回転速度)を検出する右回転数計測部として機能する右回転検出センサ72が配置されている。また、走行機体10には、走行機体10のヨーイングを検出するヨーレート検出器70、及び、走行機体10の加速状態を検出する加速度センサ73、左操縦角検出センサ74a、右操縦角検出センサ74bも配置されている。
【0038】
この実施形態では、モーアユニット3は、図2図3に示すように、3枚刈刃(ブレード)20のサイドディスチャージタイプであり、3枚の刈刃20はモーアデッキ3aに回転可能に支持されている。刈刃20のそれぞれは、その両端部に切断刃先を形成しており、さらに各切断刃先の背後側に形成された起風羽根を形成している。草刈り作業走行時には、刈刃20によって切断処理された刈草は、刈刃20の起風羽根によって発生した風により、バッフルプレートに案内されてモーアデッキ3aの内部を排出口の位置する横一端側に搬送されて、排出口からモーアデッキ3aの横外側に放出される。3枚の回転式の刈刃20を回転駆動させる刈刃駆動機構65は、電気アクチュエータである刈刃モータ64と刈刃モータ64の動力を刈刃20に伝達する刈刃動力伝達機構67とからなる。
【0039】
走行のための左モータ61と右モータ62、及び草刈りのための刈刃モータ64へのインバータ4を通じての給電は、ECUとも呼ばれるコントローラ5によるインバータ制御によって自動で行われる。ただし、左モータ61と右モータ62、及び草刈りのための刈刃モータ64へのインバータ4を通じての給電は、図示しない操作部を利用者が操作することにより切り替えられてもよい。
また、上記では、左モータ61と右モータ62、及び刈刃モータ64が設けられているが、これらのモータが一体で一つに構成されていてもよい。そして、1つに構成されたモータから、駆動輪ユニット2及びモーアユニット3に回転駆動力を分岐して供給してもよい。
【0040】
駆動輪ユニット2及びモーアユニット3を回転駆動するモータに電力を供給するバッテリ51として、主バッテリ51Aに加えてさらに補完バッテリ51Bを備えているため、主バッテリ51Aのみ備える場合に比べて、バッテリ51全体としての蓄電量を十分に確保できる。よって、駆動輪ユニット2の駆動時間を長く確保することができ、ひいては、乗用電動草刈機の稼働時間を長く確保できる。
また、主バッテリ51Aが走行機体10の後部において左右方向の概ね中心に配置され、補完バッテリ51Bが走行機体10の後部において左右方向に概ね対称に配置されているため、乗用電動草刈機の左右方向の重量バランスがとれている。よって、乗用電動草刈機の重心が左右の何れかに傾くのを抑制し、乗用電動草刈機が円滑に走行及び停車等できる。
【0041】
また、補完バッテリ51Bは走行機体10の左右それぞれに配置されているため、走行機体10の左側及び右側それぞれから着脱容易である。よって、例えば補完バッテリ51Bが不要の場合に補完バッテリ51Bを容易に取り外しでき、一方、補完バッテリ51Bが必要となった場合に補完バッテリ51Bを容易に取り付けでき、補完バッテリ51Bの着脱に伴う作業時間を削減できる。
なお、第1実施形態に係る乗用電動草刈機では、走行機体10の後部に主バッテリ51Aを配置し、補完バッテリ51Bを主バッテリ51Aを挟んで概ね左右対称に配置するため、走行機体10の後部にスペースを有する乗用電動草刈機において、重量バランスを考慮したバッテリ配置を採用できる。
【0042】
また、上記実施形態では、補完バッテリ51Bを走行機体10の左右方向それぞれに設けられたフェンダ41に対応して配置しているため、補完バッテリ51Bが走行機体10の左右側から大きくはみ出ることなく、乗用電動草刈機をコンパクトにすることができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、図4及び図5を用いて、第2実施形態に係るタイプの乗用電動草刈機について説明する。第2実施形態に係るタイプの乗用電動草刈機は、第1実施形態に係るタイプの乗用電動草刈機が乗用電動草刈機の後部にバッテリが配置されているのに対して、乗用電動草刈機の前部及び後部にバッテリが配置されている点において基本的構成が異なる。
【0044】
第2実施形態に係るタイプの乗用電動草刈機は、走行機体10の基本構造体であるフレームユニット9を備えている。このフレームユニット9は、左フレーム及び右フレームと、複数のクロスフレームと、運転座席11の周囲のフロアプレート95とを含む。フレームユニット9は、遊転自在なキャスタ型の左前車輪1a及び右前車輪1bとからなる前車輪ユニット1と、左後車輪2a及び右後車輪2bとからなる駆動輪ユニット2とによって対地支持される。フレームユニット9の後部には、運転座席11が配置されており、運転座席11の周囲には左右一対のフェンダ41が設けられている。
また、運転座席11の後方から転倒保護フレーム12が立設されている。
さらに、モーアユニット3が、前車輪ユニット1と駆動輪ユニット2との間でフレームユニット9の下方空間に昇降機構13としての昇降リンク機構を介して昇降可能にフレームユニット9から吊り下げられている。
【0045】
運転座席11の前方には運転者の足載せ場であるフロアプレート95が設けられており、そこからブレーキペダル14、HSTのトラニオン軸に連係された前進用変速ペダル82と後進用変速ペダル83等が突き出している。運転座席11の前方には、前輪操舵用のステアリングホイール81が配置されている。ステアリングホイール81の前方には、前部ボンネット45Fが設けられている。
また、運転座席11の周辺には、図示されていないが、刈刃操作レバー、モーアユニット昇降ペダルなどの操作具等が配置されている。
【0046】
乗用電動草刈機において、駆動輪ユニット2及びモーアユニット3が電力により駆動される。乗用電動草刈機には、これらに電力を供給するバッテリ51が搭載されている。本実施形態に係る乗用電動草刈機は、バッテリ51として、主バッテリ(第1バッテリ)51A及び補完バッテリ(第2バッテリ)51Bを有している。主バッテリ51Aは、例えば概ね直方体状であり、運転座席11の前方に配置されている。より具体的には、主バッテリ51Aは、運転座席11の前方において、主バッテリ51Aの左右方向の概ね中心と、走行機体10の左右方向の概ね中心とが概ね一致するように配置されている。そして、本実施形態では、主バッテリ51Aは、例えば、前部ボンネット45Fの内部に配置されている。
【0047】
さらに、走行機体10には、図4図5に示すように、左右一対の補完バッテリ51B(第2左バッテリ、第2右バッテリ)が設けられている。一対の補完バッテリ51Bは、走行機体10の後部において、走行機体10の左右方向の中心に対して概ね対称に配置されている。よって、一対の補完バッテリ51Bは、走行機体10の後部において、主バッテリ51Aを挟んで左右に概ね対称に配置されている。本実施形態では、左右一対の補完バッテリ51Bそれぞれは、運転座席11の後方において、左右一対のフェンダ41に少なくとも一部が重畳するようにフェンダ41上に配置されている。
これら左右一対の補完バッテリ51Bは、概ね直方体状であり概ね同一形状であり、かつ、概ね同一の重量である。よって、主バッテリ51Aに加えて補完バッテリ51Bをさらに設けた場合でも、乗用電動草刈機の左右方向の重量バランスをとることができる。
【0048】
モーアユニット3の構成は、第1実施形態と概ね同様である。図4図5に示すモーアユニット3には刈刃が示されていないが、第1実施形態と同様に3つの刈刃が左右方向に並んで配置されている。刈刃は、バッテリ51から電力の供給を受ける、図示しない刈刃モータによって駆動される。
【0049】
バッテリ51において、主バッテリ51Aと補完バッテリ51Bとは、切替機構(図示せず)を介して自動又は手動で切替可能に接続されている。よって、切替機構により切り替えられることで、主バッテリ51A又は補完バッテリ51Bと、駆動輪ユニット2及びモーアユニット3とが接続される。このように主バッテリ51Aと補完バッテリ51Bとを切り替える切替機構を備えているため、例えば、主バッテリ51Aの蓄電量が少なくなった場合に、補完バッテリ51Bに手動又は自動で切り替えることができる。よって、乗用電動草刈機の稼働時間を長く確保でき、主バッテリ51Aの充電と補完バッテリ51Bの充電とを別個に行うことができるとともに、相互間の充放電を抑制できる。
また、上記切替機構は、主バッテリ51Aからモータに供給される電力量と、補完バッテリ51Bからモータに供給される電力量とを同程度に制御しているのが好ましい。この場合、駆動輪ユニット2及びモーアユニット3は切り替え前後で電力量の変動を受けることなく円滑に駆動される。
【0050】
バッテリ51から電力の供給を受けて、駆動輪ユニット2及びモーアユニット3を駆動するモータ(図示せず)が設けられているが、例えば、駆動輪ユニット2及びモーアユニット3それぞれに対応してモータが設けられている。また、左後車輪2aと右後車輪2bそれぞれに対応してモータが設けられていてもよい。ただし、駆動輪ユニット2及びモーアユニット3に対応して1つのモータが設けられ、1つのモータが、駆動輪ユニット2及びモーアユニット3それぞれに駆動力を分岐して供給してもよい。
【0051】
主バッテリ51Aに加えてさらに補完バッテリ51Bを備えているため、主バッテリ51Aのみ備える場合に比べて、乗用電動草刈機の稼働時間を長く確保できる。
また、主バッテリ51Aが走行機体10の前部において左右方向の概ね中心に配置され、補完バッテリ51Bが走行機体10の後部において左右方向に概ね対称に配置されているため、乗用電動草刈機の左右方向の重量バランスがとれている。よって、乗用電動草刈機の重心が左右の何れかに傾くのを抑制し、乗用電動草刈機が円滑に走行及び停車等できる。さらには、走行機体10の前部の主バッテリ51Aと、走行機体10の後部の補完バッテリ51Bとで、乗用電動草刈機の前後方向の重量バランスがとれている。
【0052】
また、補完バッテリ51Bは走行機体10の左右それぞれに配置されているため、走行機体10の左側及び右側それぞれから着脱容易である。
なお、第2実施形態に係る乗用電動草刈機では、走行機体10の前部に主バッテリ51Aを配置し、補完バッテリ51Bを概ね左右対称に配置するため、走行機体10の前部にスペースを有する乗用電動草刈機において、重量バランスを考慮したバッテリ配置を採用できる。
【0053】
また、上記実施形態では、補完バッテリ51Bを走行機体10の左右方向に亘るフェンダ41に対応して配置しているため、補完バッテリ51Bが走行機体10の左右側から大きくはみ出ることなく、乗用電動草刈機をコンパクトにすることができる。
【0054】
[別実施形態]
(1)上記第1及び第2実施形態において、乗用電動草刈機は、主バッテリ51A及び補完バッテリ51Bに蓄積されている蓄電量を表示器(図示せず)に表示させる表示制御、及び、蓄電量に応じた警告を行う警告制御の少なくともいずれかを行う蓄電制御部(図示せず)を備えていてもよい。
表示器に主バッテリ51A及び補完バッテリ51Bの蓄電量が表示され、あるいは、蓄電量に応じた警告がなされることで、利用者は、蓄電量に応じて主バッテリ51A及び補完バッテリ51Bを切り替えることができる。
【0055】
(2)上記第1及び第2実施形態では、電動作業車として、左前車輪1a及び右前車輪1bが独立して駆動制御可能なゼロターンモーアと呼ばれる乗用電動草刈機が取り上げたが、左前車輪1a及び右前車輪1bを操向輪として左後車輪2a及び右後車輪2bがディファレンシャル機構で連結されている草刈機にも本発明は適用できる。この場合、バッテリから電力を供給されたモータは左前車輪1a及び右前車輪1bに回転駆動力を供給する。
【0056】
(3)上記実施形態では、モーアユニット3には3つのブレードが備えられていたが、2つまたは4つ以上であってもよい。
【0057】
(4)上記実施形態では、モーアユニットを備えた草刈機を例に挙げたが、モーアユニットを備えない電動草刈機であってもよく、さらには草刈機ではない電動で作動する電動作業車であっても本発明を適用可能である。
【0058】
(5)上記実施形態では、運転座席11の周囲には左右一対のフェンダ41が設けられている。しかし、フェンダ41は、運転座席11の周囲の左右方向に亘って一体に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
2 車輪ユニット
10 走行機体
51 バッテリ
51A 主バッテリ
51B 補完バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5