(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】複数の電界紡糸繊維からなる綿形状の構造を有する骨再生用材料
(51)【国際特許分類】
A61L 27/54 20060101AFI20231108BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20231108BHJP
A61L 27/46 20060101ALI20231108BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61L27/54
A61L27/58
A61L27/46
A61L27/18
(21)【出願番号】P 2022178131
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2022100415の分割
【原出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-11-07
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511267996
【氏名又は名称】ORTHOREBIRTH株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126826
【氏名又は名称】二宮 克之
(72)【発明者】
【氏名】平良寛之
(72)【発明者】
【氏名】ルイス アルバレズ
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-320442(JP,A)
【文献】特開2006-020930(JP,A)
【文献】特表2014-500276(JP,A)
【文献】特表2016-529057(JP,A)
【文献】特表2007-530099(JP,A)
【文献】特表2014-510763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0117165(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0079147(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0260673(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0255042(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0159869(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0015734(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0193527(US,A1)
【文献】国際公開第2017/188435(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1456360(CN,A)
【文献】Artif Organs,2012年,Vol. 36, No. 7,pp.642-647
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
A61K 9/00- 9/72
A61K 38/00-38/58
C12N 5/00- 5/28
C12M 1/00- 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性繊維から形成された綿形状の骨誘導性骨再生用材料を製造する方法であって、前記方法は、
電界紡糸法を用いて紡糸された生分解性繊維から形成された綿形状の足場材料を作製し、
前記生分解性繊維はβ―TCP粒子を25~65vol%含んでおり、前記β―TCP粒子は粒子の一部が前記生分解性繊維の表面上に露出し、粒子の残りの部分は前記生分解性繊維内に埋め込まれており、前記生分解性繊維の繊維径は10~100μmであり、繊維と繊維の間に体液が浸透するための十分なスペースが形成されており、
前記綿形状の足場材料をBMP-2を含む弱酸性の緩衝溶液に所定時間浸漬することによって、前記生分解性繊維の表面に露出している前記β-TCP粒子に前記BMP-2を結合させ、
前記BMP-2が繊維の表面に結合した前記綿形状の足場材料を前記弱酸性の緩衝溶液から回収して洗浄する、工程を含む、
前記生分解性繊維から形成された綿形状の骨誘導性骨再生用材料を製造する方法。
【請求項2】
前記綿形状の足場材料をBMP-2を含む弱酸性の緩衝溶液に約30分間浸漬する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生分解性繊維はPLGAを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記β-TCP粒子の直径が1~5μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨再生用材料に関し、特に、β-リン酸三カルシウムおよび骨形成タンパク質を含む生分解性繊維から形成された骨再生用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸カルシウム(特に、β-リン酸三カルシウム、β-TCP)は、骨伝導性を示すため、骨再生用途に広く用いられている。カルシウムイオンとリンイオンの放出は、骨芽細胞と破骨細胞の活性化を調節し、骨再生を促進する。リン酸カルシウムの表面特性及び気孔率の制御は、細胞/タンパク質の接着及び増殖に影響を及ぼし、骨ミネラルの形成を統制する。(ジウォン・ジェオン他「生体活性リン酸カルシウム物質及び骨再生用途」、バイオマター研究23.4(2019) doi:10.1186/s40824-018-0149-3)。
【0003】
本願の出願人の一人は、エレクトロスピニングプロセスを用いてβ-TCPを含有する生分解性繊維を開発したが、そこにおいては、紡糸溶液はノズルから極細繊維として吐出され、電場の静電引力によって引っぱられてコレクターに堆積される。本願の特許出願人は、新規なエレクトロスピニング装置を用いて、このような生分解性繊維を、β-TCP及び生分解性樹脂を含む綿形状の構造に調製することに成功した。(米国特許第8,853,298号および10,092,650号参照)。綿形状の構造は独特のものであり、(1)体液が骨移植材料の構造に容易に浸透することができるように組織内に大きな空間を有していること、(2)β-TCPからカルシウム及びリンの体液への放出を可能にするための広い表面積を提供すること、(3)骨修理場の形状に適合させることができる柔軟な構造を有していること、(4)BMP-2のような他の生体活性又は骨形成因子を支援するための広い表面積を提供すること、のいくつかの特長を与えている。綿形状の複合材料を骨代替材料としてin vivo及びin vitroで評価した結果、複雑な骨欠損の修復において有利であることが実証された。
【0004】
骨形成性タンパク質-2(BMP-2)は、骨誘導を生じさせるものであり、骨の形成/再生を促進することが可能である。例えば、Infuse Bone Graft (メドトロニック)は、遺伝子組み換えヒトBMP-2(rhBMP-2)を含む骨移植材料があり、上顎洞挙上術および局所的歯槽堤増成術における骨移植材料としての使用が米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。BMP-2は骨充填剤 (INFUSE)に組み込まれ、骨欠損部位に運ばれる。BMP-2は骨欠損部位において徐々に放出され、骨形成を刺激する。BMPによる骨形成の刺激は局在化され、そこで数週間持続する。BMP-2が遠隔部位に漏出すると、悪影響が生じる。実際、rhBMP-2から生じるいくつかの副作用が報告されている。これらの副作用には、術後炎症とそれに伴う有害作用、異所性骨化、破骨細胞を介した骨吸収、不適切な脂肪生成などがある。Aaron W. James et al., “A review of the Clinical Side Effects of Bone Morphogenetic Protein-2,” Tissue Eng. Part B Rev., 2016, 22(4): 284-297)
【0005】
従って、BMP-2をゆるやかに徐放することができるような態様でBMP-2を含有することが可能であり、一方で意図しない場所にこの骨形成因子を浸出することを許容しない骨移植材料が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施の形態は、ReBOSSIS(登録商標)繊維及び骨形成性タンパク質-2(BMP-2)を含む骨再生用材料に関するものである。本発明の実施形態で使用するBMPは、BMP-2またはBMP-2の誘導体であり得る。BMP-2は、ヒトBMP-2またはアニマル (ペットまたは家畜など) BMP-2であり得る。BMP-2の誘導体には、1つまたは複数のβ-TCP結合ペプチドがと融合されたBMP-2を含み、それは「ターゲット型BMP-2」または「tBMP-2」と呼ばれる。これらの全ての異なる形態のBMP-2(遺伝子組換えヒトBMP-2、rhBMP-2および野生型BMP-2、wtBMP-2を含む)、アニマルBMP-2およびtBMP-2のようなBMP-2を、一般的に「BMP-2」と呼ぶことができる。すなわち、「BMP-2」という語は、rhBMP-2、wtBMP-2、動物BMP-2およびtBMP-2を含む。
【0007】
ReBOSSIS(登録商標)は、直径10~100マイクロメートルの複数の生分解性電界紡糸繊維で構成され、カルシウム化合物粒子(例えばβ-TCP粒子)及びポリ(乳酸) (PLLA)又は乳酸・グリコール酸共重合体 (PLGA)等の生分解性樹脂を含む綿形状の構造を有する。生分解性繊維には、ケイ素を溶出するバテライト相炭酸カルシウム(ケイ素がドーピングされたバテライト相炭酸カルシウム、SiV)のような、その他のカルシウム化合物粒子を含むことができる。従って、ReBOSSIS繊維は、生分解性ポリマー(例:PLLAまたはPLGA)およびカルシウム化合物粒子(例:β-TCP粒子および/またはSIV粒子)を含むことができる。ここで使用される場合、「カルシウム化合物粒子」とは、β-TCP粒子、SiV粒子、又はβ-TCP粒子とSiV粒子の組み合わせであってもよい。
【0008】
ReBOSSIS(登録商標)の生分解性電界紡糸繊維には、繊維上又は繊維中に多量のカルシウム化合物粒子(50~85wt%又は25~65vol%)が分散して含まれている。β-TCP粒子の一部は繊維の表面に露出しており、β-TCP粒子の残りの部分は外部に露出することなく繊維の中に埋め込まれている。骨形成タンパク質-2(tBMP-2を含むBMP-2)は繊維の表面に露出したβ-TCP粒子及び/又はSiV粒子と結合されており、レボシスの綿形状の全体にわたって、BMP-2が繊維の表面に露出したβ-TCP粒子及び/又はSiV粒子によって捕捉されている。
【0009】
生分解性繊維は、直径約10~100μm、好ましくは約10~60μmの直径を有しており、直径約1~5μmのカルシウム化合物粒子(例えば、β-TCP及び/又はSiV粒子)を繊維中に分散させることができ、また、ReBOSSISを骨欠損部に埋植した後も綿形状構造物の機械的強度を維持することができる。
【0010】
好ましくは、ReBOSSIS(登録商標)の綿形状構造の嵩密度は約0.01~0.1g/cm3であり、繊維間のギャップは約1~50μmであり、骨形成に寄与する細胞を含む体液が繊維間の間隙を通過することができ、骨形成のための空間が綿形状構造の全体にわたって確保されている。
【0011】
ReBOSSIS(登録商標)を骨欠損部に埋植後、間葉系幹細胞を含む体液が、β-TCP粒子上に捕捉されたBMP-2(rhBMP-2又はt-BMP-2等)に接触することができる。次いで、BMP―2(例えば、rhBMP―2またはtBMP-2)は、骨前駆細胞が骨芽細胞に分化することを促進する。BMP-2(rhBMP-2またはt-BMP-2など)を結合するβ-TCP粒子は、破骨細胞によって徐々に溶解される。その上で、骨芽細胞はβ-TCP粒子上に骨を形成する作用(すなわち骨リモデリング)を遂行する。
【0012】
ReBOSSIS(登録商標)を骨欠損部に埋め込んだ後、電界紡糸繊維中の生分解性ポリマー(例:PLGA)は、次第に繊維に埋め込まれたβ-TCP粒子が露出するように分解され、その結果新たに露出されたβ-TCP粒子が、繊維の表面に付着していたBMP-2(例:rhBMP-2またはtBMP-2)を再び捕捉することができる。ポリマーの分解が進むにつれて、新たに露出されたβ-TCP粒子によるBMP-2(rhBMP-2、tBMP-2等)を再び補足することにより、生分解性繊維の足場の網全体を通じて継続的に骨のリモデリングが行われ、その結果、骨欠損部において効率的な骨の形成が生じる。
【0013】
BMP-2(rhBMP-2、tBMP-2など)が、生分解性繊維の表面に固定されたβ-TCP粒子と結合するため、BMP-2が骨欠損部外へ漏洩することが防止される。その結果、BMP-2/ReBOSSISの使用の安全性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1A~
図1Fは、ReBOSSIS繊維の電子顕微鏡画像である。
図1Aは、200x倍率でのいくつかのReBOSSIS(85)繊維(PLGA 30重量%、SiV 30重量%、β-TCP 40重量%)の画像を示し、綿形状構造の繊維間の間隙空間を示す。
図1Bは、1つのReBOSSIS(85)繊維の2000x倍率での画像を示す。繊維の表面のカルシウム粒子は、容易に識別することができる。
図1Cは、同じ繊維を5000x拡大で示しており、この中で、白色の矢印はβ-TCP粒子を示し、暗い矢印はSiV粒子を示している。
【
図2】
図2は、tBMP-2とReBOSSISとの結合を説明するSDS-PAGEのゲル画像を示している。パネルAは、洗浄バッファーとして酸性バッファー (酢酸緩衝液)を使用して得られたゲル画像を示し、パネルBは、洗浄バッファーとして中性バッファー (PBS)を使用して得られたゲル画像を示す。各ゲル画像では、右の4レーンがtBMP-2の分析結果を示し、左の4レーンがBSAの分析結果を示している。
【
図3】
図3は、tBMP-2と複数のカルシウムを含有する材料との結合のゲル画像である。tBMP2は、β-TCPおよび/またはSiVを含む材料(SiV70、ReBOSSIS (85)、およびORB-03)によく結合する。
【
図4】
図4は、rhBMP-2と複数のカルシウムを含有する材料との結合からのゲル画像である。rhBMP-2は、β-TCPを含む材料(ReBOSSIS (85)およびORB-03)上にのみ保持されているが、SiVを含む材料には保持されていない。
【
図5】
図5は、Chronic Caprine Critical Defect (CCTD)モデルの概略を示している。処置前において、骨格的に成熟した雌ヤギに5cmセグメントの重大な欠損を形成する。欠損部には、5cm×直径2cmのポリメチルメタクリレート(PMMA)スペーサーが設置されて、生体膜を生じさせる。4週間後、PMMAスペーサーは緩やかに取り外され、移植材料と交換される。欠損部の治癒を評価するために、4週間ごとに正中X線写真を撮影する。図では、APは頭尾方向を表し、MLは内外側方向を表す。白い矢印は、PMMAスペーサーの配置における移植材料を示す。
【
図6】
図6は、移植手術後8週(A)および12週(B)に撮影したX線写真(内外側(ML)および頭尾側(AP)の突起)を示す。投与群あたり6頭のヤギ。tBMP-2含有群(第2群及び第3群)は、第1群(tBMP-2なし)と比較して、新規の骨形成の割合が高い。
【
図7】
図7は、固定X線装置で撮影した12週の外植脛骨のX線写真(内側(ML)および頭尾方向 (AP)投影)を示す。より高用量のtBMP-2群(1.5mg/cc)において、大量の新生骨が得られた。tBMP-2をTCPとReBOSSISに混ぜたしたところ、CCTDモデルにおける骨治癒が向上した。
【
図8】
図8は、透過現象の概念図であり、β-TCP粒子の量が透過しきい値を超える場合のβ-TCP粒子集積の形成を説明するものである。
【
図9】
図9(A)は、β-TCP粒子を50wt% (24.3vol%)含有する電界紡糸PLGA繊維の表面を示している。
図9(B)は、70wt% (42.9vol%)のβ-TCP粒子を含む電界紡糸PLGA繊維の表面を示したものである。
図9(C)は、80wt% (56.3vol%)のβ-TCP粒子を含む電界紡糸PLGA繊維の表面を示したものである。
図9(D)は、85wt% (64.6vol%)のβ-TCP粒子を含む電界紡糸PLGA繊維の表面を示している。
【
図10】
図10は、SDS-PAGEによる分析のためのサンプル調製方法を説明する図である。
【発明の詳細な説明】
【0015】
本発明の実施の形態は、β-TCP及び骨形成性タンパク質-2(rhBMP-2又はtBMP-2のようなBMP-2)を含む骨置換材料に関するものである。また、本願発明の骨再生用材料は、綿形状の構造体上の表面積が大きいBMP-2が、骨の修復部位において体液と相互に作用することにより、骨誘導工程が促進されるような綿形状の構造を有するものである。
【0016】
骨誘導には、骨前駆細胞を刺激して骨芽細胞に分化させ、それから新たな骨形成を開始させることが含まれる。これに対し、骨伝導は骨移植材料が新生骨を成長させるための足場として機能する場合に生じるものであり、それは欠損部位を取り囲んでいる生体骨の周縁から既に生体内に存在している骨芽細胞によって継続される。
【0017】
本発明の実施形態は、遺伝子組換えBMP-2(rhBMP-2等)又はターゲット型BMP-2を使用することができる。ターゲット型BMP-2とは、BMP-2が、BMP-2が骨交換材料中のβ-TCPに密着できるように、β-TCP結合ペプチドとBMP-2を融合したタンパク質(すなわち融合タンパク質)である。β-TCP結合ペプチドは、BMP-2のN-ターミナルまたはC-ターミナルに融合されることができる。
【0018】
BMP-2は強力な骨形成活性を有し、脊椎固定術などの整形外科用途に用いられる。しかし、BMP-2が治療部位から漏れ出てしまうと、意図しない部位で骨形成を誘導する可能性がある。これらのBMP-2関連合併症は症例の20%~70%に及ぶ比較的高い頻度で発生し、これらの有害作用
は生命を脅かす可能性がある。(Aaron W. James et al., “A review of the Clinical Side Effects of Bone Morphogenetic Protein-2,” Tissue Eng. Part B Rev., 2016, 22(4): 284-297) 従って、BMPを治療部位に閉じ込めることが不可欠である。例えば、BMP-2を骨代替/修復材料に確実に結合させ、BMP-2を治療部位から離れて拡散させないようにすることが不可欠である。
【0019】
本発明の実施の形態は、各々1つまたは複数のβ-TCP結合ペプチドを含むrhBMP-2またはBMP-2融合タンパク質を使用することができる。これらのBMP-2融合タンパク質は、ターゲット型BMP-2またはtBMP-2と呼ばれる。tBMP-2は、tBMP-2がβ-TCP及び/又はSiVを含有する骨代替/修復材料と共に使用され、そこにおいて、tBMP-2はβ-TCP及び/又はSiVと密接に結合しており、治療部位から拡散せず、それによる悪影響を除去又は最小限に抑えるように設計されている。
【0020】
本発明の骨代替・修復材料は、β-TCP及び生分解性ポリマー(例えば、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体; PLGA))からなる生分解性繊維からなる綿形状の構造を有する。tBMP-2融合タンパク質は、これらの綿形状の構造物上で、β-TCP及び/又はSiV粒子に密着することができ、かつ、治療部位から離れて拡散しない。
【0021】
綿形状の構造は、(1)体液が骨移植材料の構造に容易に浸透することができる大きな間隙を有していること、(2)β-TCPからカルシウム及びリンが生体液に溶出されることを可能にする大きい表面積を提供すること、(3)rhBMP-2又はtBMP-2のような他の生理活性又は骨形成要因を支持/運搬するための広い表面積を提供すること、(4)骨修復部位の形状に適合させることができる柔軟な構造を有すること、といういくつかの利点を与える。
【0022】
綿形状の構造物は、生分解性ポリマー及びβ-TCPを含有する溶液を電界紡糸することにより製造される。綿形状構造物の製造の詳細は、米国特許番号8,853,298, 10,092,650、米国特許出願公開番号2016/0121024, 2018/0280569に記載されている。それらの記載は、引用によって全て組み込まれている。これらの綿形状材料は、商標「ReBOSSIS」のもとでORTHOREBIRTH株式会社 (横浜)から入手可能である。
【0023】
ReBOSSIS(登録商標)は、β-TCP及び/又はSiV粒子並びに乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)又はポリ乳酸 (PLLA)のような生分解性ポリマーを含む電界紡糸された複数の生分解性繊維からなる綿形状の構造を有する。生分解性繊維はβ-TCP又はケイ素含有炭酸カルシウム(SiV)等のその他のカルシウム化合物粒子を含有することができる。ケイ素がドープされたバテライト相炭酸カルシウム粒子は、生分解性複合材料における細胞活性を高める能力を有することが判明している。(Obata等、「Enhanced in vitro cell activity on silicon-doped vaterite/poly(lactic acid) composites」、Acta Biomater.、2009、5(1):57~62; doi:10.1016/j.actbio.2008.08.004)。
【0024】
ReBOSSIS(登録商標)では、電界紡糸された生分解性繊維は当該繊維中に多量のカルシウム化合物粒子(β-TCP及び/又はSIV粒子)を含有する。典型的なReBOSSIS繊維においては、カルシウム化合物粒子(例えば、β-TCP粒子又はβ-TCP + SIV粒子)の含有量は約30~85wt%、好ましくは約50~80wt%、さらに好ましくは約70~80wt%である。カルシウム化合物粒子の量が85重量%を超えると、PLGAとカルシウム化合物粒子との混合物を混練してポリマー中に分散させることが困難になる。
【0025】
カルシウム化合物粒子はPLGAより密度が高い。例えば、PLGAは1.01g/cm3の密度を有し、β‐TCPは3.14g/cm3の密度を有する。したがって、wt%とvol%は、次のような相関関係がある:表1:β-TCP含有量相関
【0026】
本発明の実施の形態に従って、ReBOSSIS(登録商標)繊維のコンテンツは、wt%又はvol%で参照することができる。例えば、ReBOSSIS(登録商標)繊維には、約25~65 vol%の量のβ-TCP及び約75~35vol%の量のPLGAが含まれていてもよく、より好ましくは、β-TCP粒子40~60 vol%及びPLGA 60~40 vol%の量が含まれていてもよい。
【0027】
本発明の実施の形態に従って、ReBOSSIS(登録商標)繊維は、カルシウム化合物粒子(例えば、β-TCP粒子、又はSiV粒子、又はβ-TCP + SiV粒子)の一部を繊維の表面に露出する一方、カルシウム化合物粒子の残存部分は繊維の内部に埋め込まれている。例えば、
図1A-1Fは、2つのReBOSSIS(登録商標)サンプルの走査電子顕微鏡画像を示している。 ReBOSSIS(85)はPLGA (30wt%または50.8vol%)、SIV(30wt%または27.4vol%)、およびβ-TCP (40wt%または21.8vol%)、ORB-03はPLGA (30wt%または57.1vol%)およびβ-TCP (70wt%または42.9vol%)からなる。
【0028】
図1Aは、200倍の拡大倍率でのいくつかのReBOSSIS(85)繊維(PLGA 30重量%、SiV 30重量%、β-TCP 40重量%)の画像を示し、綿形状構造の繊維間の間隙空間を示す。繊維間の大きな間隙容量は、生体液の灌流を促進する。
図1Bは、2000倍の拡大倍率における一本のReBOSSIS(85)繊維のイメージを示している。繊維の表面のカルシウム粒子は、容易に識別することができる。
図1Cは、同じ繊維を5000倍の拡大倍率で示しており、この中で、白色の矢印はβ-TCP粒子を示し、暗い矢印はSiV粒子を示している。繊維の表面に露出した多数のカルシウム粒子は、BMP-2またはtBMP-2が結合する場所を提供する。加えて、露出したカルシウム粒子は、骨リモデリングや新骨形成の際に、破骨細胞や骨芽細胞との相互作用を容易にする。
【0029】
図1Dは、200倍の拡大倍率におけるいくつかのORB-03繊維(PLGA 30wt%/β-TCP 70wt%)の画像を示しており、綿形状構造における繊維間の間隙空間を示している。繊維間の大きた間隙容量は、生体液の灌流を促進する。
図1Eは、1本のORB-03ファイバーの画像を2000倍の倍率で示している。繊維の表面のカルシウム粒子は、容易に識別することができる。
図1Fは、同じ繊維を5000倍の拡大倍率で示しており、白の矢印は、β-TCP粒子を示す。繊維の表面に露出した多数のカルシウム粒子は、BMP-2またはtBMP-2が結合する場所を提供する。加えて、露出したカルシウム粒子は、リモデリングや新骨形成の際に、破骨細胞や骨芽細胞との相互作用を促進する。
【0030】
本発明の実施形態によれば、ReBOSSIS(登録商標)中の繊維は、好ましくは約5μm~約100μm (範囲内の全ての数を含む)、好ましくは約10μm~約100μm、より好ましくは約10μm~約60μmの直径を有し、その結果、1~5μmの直径を有するカルシウム化合物粒子を繊維中および繊維上に分布させることができ、綿形状構造の機械的強度は、骨欠損部位でのReBOSSIS(登録商標)繊維の移植後に所望の形状を維持するのに十分である。ReBOSSISの綿形状構造体の嵩密度は約0.01~0.2g/cm3、好ましくは約0.01~0.1g/cm3であり、綿形状構造体内の繊維間のギャップは、約1~1000μm、より好ましくは約1~100μmであり、これにより、体液は、繊維間のギャップを通して透過することができ、骨形成のためのスペースが綿形状構造体全体にわたって確保される。
【0031】
骨欠損部位にReBOSSIS(登録商標)を埋植後、間葉系幹細胞を含む体液が、β-TCP粒子上で捕獲されたBMP-2(rhBMP-2、tBMP-2など)に接触する可能性がある。BMP-2は次に、骨前駆細胞を骨芽細胞に分化させるのを促進する。BMP-2と結合するβ-TCP粒子は、破骨細胞またはその他の生理活性物質によって徐々に溶解される。そして、骨芽細胞は、骨リモデリングプロセスにおけると同様にβ-TCP粒子上に新しい骨を形成するように働く。
【0032】
骨欠損部位にReBOSSIS(登録商標)を埋植後、電界紡糸繊維のPLGAポリマーは、繊維に埋め込まれたβ-TCP粒子が露出するように徐々に分解し、新たに露出されたβ-TCP粒子は、繊維の表面に付着したBMP-2を再捕獲する。PLGAの分解が進むにつれて、新たに露出したβ-TCP粒子によってBMP-2が再捕獲されて、生分解性繊維の足場のネットワーク全体を通じて継続的に骨のリモデリングが発生し、その結果、骨の欠損部位で効率的な骨の形成が生じる。
【0033】
本発明の実施の形態に従い、BMP-2(例えば、rhBMP-2又はtBMP-2)は、BMP-2が綿形状構造全体を通じてReBOSSIS(登録商標)繊維に捕捉されるように、繊維の表面に露出されたβ-TCP及び/又はSiV粒子と結合する。β-TCP結合ペプチドの融合は、BMP-2のN-ターミナルまたはC-ターミナルに対してすることができる。
【0034】
tBMP-2は、従来の分子生物学的手法又は当該技術分野において知られている他の技術(例えば、BMPへのβ-TCP結合ペプチドの化学的又は酵素的結合)を用いて製造することができる。例えば、BMPの塩基配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、β-TCP結合ペプチドの塩基配列につなげることができる。あるいは、融合タンパク質の塩基配列を化学的に合成することができる。その後、融合タンパク質のコンストラクトは、制限場所において適切な発現ベクターに組み込まれる。そして、発現ベクターを、タンパク質の発現系(例えば、大腸菌、酵母、又は、CHO細胞)にトランスフェクションする。次に、発現させたタンパク質を精製する。タンパク質の精製を容易にするために、特定のタグ(例えば、ヒスチジンタグ)を、当該の発現に組み込むことができる。これらのプロセスと技術はすべて、既知の慣用的なものである。当業者であれば、過度の実験を行うことなくこれらを実施することができる。
【0035】
本発明の実施形態に従って、β-TCP結合ペプチドは、アミノ酸配列LLADTTHHRPWT (SEQ ID NO: 1), GQVLPTTTPSSP (SEQ ID NO: 2), VPQHPYPVPSHK (SEQ ID NO: 3), HNMAPATLHPLP (SEQ ID NO: 4), QSFASLTNPRVL (SEQ ID NO: 5), HTTPTTTYAAPP (SEQ ID NO: 6), QYGVVSHLTHTP (SEQ ID NO: 7), TMSNPITSLISV (SEQ ID NO: 8), IGRISTHAPLHP (SEQ ID NO: 9), MNDPSPWLRSPR (SEQ ID NO: 10), QSLGSMFQEGHR (SEQ ID NO: 11), KPLFTRYGDVAI (SEQ ID NO: 12), MPFGARILSLPN (SEQ ID NO: 13), QLQLSNSMSSLS (SEQ ID NO: 14), TMNMPAKIFAAM (SEQ ID NO: 15), EPTKEYTTSYHR (SEQ ID NO: 16), DLNELYLRSLRA (SEQ ID NO: 17), DYDSTHGAVFRL (SEQ ID NO: 18), SKHERYPQSPEM (SEQ ID NO: 19), HTHSSDGSLLGN (SEQ ID NO: 20), NYDSMSEPRSHG (SEQ ID NO: 21), 又は ANPIISVQTAMD (SEQ ID NO: 22) を含むことができる。これらは米国特許法第10,329,327号B2号に開示されており、その開示は、その全てを引用することにより本発明に組み込まれる。
【0036】
本発明のいくつかの実施例に従い、β-TCP結合ペプチドは、上記の配列から選択された2つ以上の配列を含むことができる。この2つ以上の配列は、互いに直接結びつけることができ、あるいは、その間に短いペプチドリンカーをつなげて、より長いβ-TCP結合ペプチドを形成することができる。
【0037】
β-TCP結合ペプチドが存在することで、tBMP-2のβ-TCP粒子への結合は非常に密になっており、それによってtBMP-2が骨欠部の外部に流出することがさらに防止される。その結果、tBMP-2/ReBOSSIS(登録商標)繊維の使用の安全性はさらに確保される。ReBOSSIS(登録商標)
【0038】
ReBOSSIS(登録商標)は、生分解性繊維で形成された綿形状の構造を有する骨欠損部充填材料である。ReBOSSIS(登録商標)の詳細は、米国特許第8,853,298号、米国特許第10,092,650号、米国特許出願公開第2016/0121024号、および米国特許出願公開第2018/0280569号に説明されている。 これらの文献の開示は、引用によってその全部が本出願に組み込まれている。
【0039】
ReBOSSIS(登録商標)の電界紡糸された生分解性繊維の直径は、約5~100μm、好ましくはできれば約10~100μm、さらに好ましくは約10~60μmの範囲である。これに対し、従来の電界紡糸繊維の直径は、通常数十ナノメートルないし数百ナノメートル(nm)である。Orthorebirth社は、電界紡糸(ES)溶液を高速で大径ノズルに送り、ES装置の上部から下部に繊維を落下させることによって紡糸することによって
、より太く電界紡糸された繊維を得た。カルシウム化合物粒子の量が増加するにつれて、電界紡糸繊維の直径はさらに太くなり、最終的に直径は60μmを超えることになる。電界紡糸法は極めて細いナノファイバーを製造する方法として知られているので、Orthorebirth社が太い生分解生繊維を製造するために用いる方法は独特である。2019年9月13日出願のPCT/JP2019/036052に、Orthorebirth社の方法の詳細が記載されている。この太い電界紡糸された生分解性繊維を製造することにより、本発明者らは、繊維上に粒子が露出するように、繊維中に多量のカルシウム化合物粒子を含有させることが可能となった。また、太い繊維は、骨修復部位に埋植した後に繊維の形状を維持する機械的強度を有する。
【0040】
ReBOSSIS(登録商標)の生分解性繊維には、カルシウム粒子(例えば、β-TCP、SiV、又はβ-TCP +SiV)が多量に含まれている。このような多量のカルシウム粒子を混入することは、混練工程を用いることによって達成される。簡単に言えば、生分解性樹脂とカルシウム粒子の混合物を強い力で練ることによって複合体を製造する。次に、この複合体を溶剤(例えば、クロロホルム)に溶解して紡糸溶液を製造する。混練工程の詳細は、2017年4月28日に出願されたWO2017/188435に記載されている。
【0041】
ニーダーの中でカルシウム粒子を樹脂に加えて生分解性樹脂とカルシウム粒子の混合物を混練することによって、カルシウム粒子はマトリックス樹脂中に均一に分散される。しかし、カルシウム粒子の容積比がしきい値を超えると、パーコレーシン現象の発生により、粒子はもはや均質分散状態を維持することができなくなり、クラスター相が現れ始める(
図8参照)。粒子のクラスター相の形成の結果、一部のカルシウム粒子は生分解性繊維の表面に露出する(
図1A~1F参照)。これにより、BMP-2が、生分解性繊維上のβ-TCP粒子に結合することが可能となる。発明者等の経験によれば、このパーコレーション効果は、無機粒子の容積パーセントが約25vol%を超える場合に現れる。
【0042】
図9A~9Dには、本発明のREBOSSIS繊維のSEM画像が示されており、生分解性繊維に含まれるβ-TCP粒子のvol%の割合が増加するにつれて、生分解性繊維へのβ-TCP粒子の露出が増加していることが示されている。
図9Aは、β-TCPを有する繊維(50wt%、24.3vol%)を示しており、繊維の表面に露出したβ-TCP粒子は多くない。
図9Bは、β-TCPを有する繊維(70wt%、42.9vol%)を示しており、繊維の表面には多くのβ-TCP粒子が露出している。
図9Cは、β-TCPを有する繊維(80wt%、56.3vol%)を示しており、繊維の表面に露出したβ-TCP粒子はさらに多い。
図9Dは、β-TCPを有する繊維(85wt%、64.6vol%)を示しており、繊維の表面に露出したβ-TCP粒子はさらに多い。
【0043】
本件発明の方法に従い、電界紡糸(ES)装置のノズルから紡糸された繊維を、エタノールを充填したコレクターに入射し、これを綿形状に回収する。コレクターでは、繊維中の溶剤(クロロホルム等)がエタノール中で溶解により除去される。
【0044】
綿形状の構造物は、BMP-2が結合するための大きな表面積と、骨形成に関与できる細胞を含む生体液が注入/浸透するために十分な間接空間を提供し、これにより、骨誘導が向上される。tBMP-2
【0045】
本発明のいくつかの実施形態は、ターゲット型BMP-2(tBMP-2)を使用している。この実施形態では、β-TCP結合ペプチドはBMP2と融合(fused)されている。tBMP-2は、本発明の発明者の1人によって開発されたβ-TCP結合ペプチドと融合されている。β-TCP結合ペプチドの詳細は、米国特許公開第10,329,327 B2号、及び「Tethering of Epidermal Growth Factor (EGF) to Beta Tricalcium Phosphate (βTCP) via Fusion to a High Affinity, Multimeric β-TCP binding Peptide: Effects on Human Multipotent Stromal Cells/Connective Tissue Progenitors」、Alvarez et al., PLoS ONE DOI: 10.1371/journal.pone.0129600, June 29, 2015において説明されている。これらの参考文献の開示は、引用によって、その全部が本出願に組み込まれている。
【0046】
本発明の実施形態によれば、β-TCP結合ペプチドは、アミノ酸配列LLADTTHHRPWT (SEQ ID NO: 1), GQVLPTTTPSSP (SEQ ID NO: 2), VPQHPYPVPSHK (SEQ ID NO: 3), HNMAPATLHPLP (SEQ ID NO: 4), QSFASLTNPRVL (SEQ ID NO: 5), HTTPTTTYAAPP (SEQ ID NO: 6), QYGVVSHLTHTP (SEQ ID NO: 7), TMSNPITSLISV (SEQ ID NO: 8), IGRISTHAPLHP (SEQ ID NO: 9), MNDPSPWLRSPR (SEQ ID NO: 10), QSLGSMFQEGHR (SEQ ID NO: 11), KPLFTRYGDVAI (SEQ ID NO: 12), MPFGARILSLPN (SEQ ID NO: 13), QLQLSNSMSSLS (SEQ ID NO: 14), TMNMPAKIFAAM (SEQ ID NO: 15), EPTKEYTTSYHR (SEQ ID NO: 16), DLNELYLRSLRA (SEQ ID NO: 17), DYDSTHGAVFRL (SEQ ID NO: 18), SKHERYPQSPEM (SEQ ID NO: 19), HTHSSDGSLLGN (SEQ ID NO: 20), NYDSMSEPRSHG (SEQ ID NO: 21), 又は ANPIISVQTAMD (SEQ ID NO: 22)を含むことができる。本発明のいくつかの実施例によると、β-TCP結合ペプチドは、上記の配列から選択された2つ以上の配列を含むことができる。2つ以上の配列は、互いに直接結びつけることができ、あるいは、それらの間に短いペプチドを相互に綴じ合わせて、より長いβ-TCP結合ペプチドを形成することができる。
【0047】
本発明の実施形態によると、tBMPで使用されるBMPには、ターゲット型BMP-2および遺伝子組換えヒトBMP-2(rhBMP-2)を含めることができる。BMP-2 のReBOSSIS(登録商標)への結合
【0048】
本発明の実施例において、BMP-2はReBOSSIS(登録商標)繊維に結合することができる。BMP-2のReBOSSIS(登録商標)繊維への結合特性を評価するために、以下の実験を実施した(例としてtBMP-2およびrhBMP-2を使用した)。本実験では、ReBOSSIS(登録商標)の生分解性繊維にはPLGA (30wt%)およびβ-TCP粒子(40wt%)ならびにSiV(ケイ素がドープされたバテライト相炭酸カルシウム)粒子(30wt%)が含まれる。β-TCP粒子及びSiV粒子は、繊維の内部及び繊維上に分散している。巨視的に見ると、粒子の一部が繊維の表面の外部に露出している。
【0049】
4つのサンプル溶液を調製した。以下の4つの試料溶液中のtBMP-2およびrhBMP―2の濃度を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を用いてコントロールサンプルと比較した。コントロールサンプルとして、牛血清アルブミン(BSA)を用いた。
【0050】
具体的には、以下の試液を調製した。(a) tBMP-2(Theradative TCP-2結合BMP-2、10mM 酢酸ナトリウム、0.1M 尿素有り または無し、pH 4.75)、(b) BSA Stock溶液: 酢酸緩衝液の洗浄バッファーで42 mg/mLに溶解、(c) 酢酸緩衝液の洗浄バッファー: 5 mM 酢酸ナトリウムpH 4.75、100 mM 塩化ナトリウム、(d) ReBOSSIS(Orthorebirth)、(e) PBS (Roche, cat# 11666789001, 1X solution = 137 mM 塩化ナトリウム, 2.7 mM 塩化カリウム, 10 mM リン酸水素二ナトリウム, 1.8 mM リン酸二水素カリウム, pH 7.0)。
【0051】
方法::20μgのtBMP-2またはBSA / mgのReBOSSIS(登録商標) (合計200μgのtBMP-2および100mgのReBOSSIS)を結合し、洗浄し、溶出し、非還元SDS-PAGEに負荷する。具体的なプロトコルは以下の通りである:準備1. スピンチューブ内に ReBOSSIS(登録商標)10gを入れる。2. BSA溶液の調製: BSA Stock溶液 29μLを971 μLの酢酸緩衝液に加えて希釈し、1.22 mg/ml, pH4.75のBSA溶液とする。3. 各チューブに500μlの洗浄用酢酸緩衝液を添加することにより、ReBOSSIS(登録商標)を予備洗浄する。転倒混和によりよく混合した後、5分間インキュベートする。小型遠心機を用いてスピンダウンする。ピペットチップをチューブの底にあて、洗浄用の緩衝液を除去する。ReBOSSIS(登録商標)はチューブ内に残る。4. ゲルサンプル: SDS-PAGE用として、BSAおよびtBMP2のLoadを取り分ける。評価5. 予備洗浄した10mgのReBOSSISに、200μgのtBMP2を総容量が164μlとなるように溶液を調製し添加する;6. 予備洗浄した10mgのReBOSSISに200μgのBSAを総容量が164μlとなるように調製し添加する。
調製方法の例
7.
Loading 30分間結合させる。 (結合は20分ほどで終了する);結合しなかった成分の回収8. 小型遠心機により最高回転速度で4-5分間、チューブを遠心する。9.
Non-bound(Flow Through) チューブ内の上部の上清にピペットを挿入し、結合していない成分をピペットで取り除く。(注: ピペットチップの先端からReBOSSISが入らないように注意し、チューブ下部に先端を置き、残りを廃棄する。);洗浄10.
Wash PBS又は洗浄用酢酸緩衝液のいずれか500μLを加える;11. 穏やかにボルテックスする。5分間くり返し混合した後、再び穏やかにボルテックスする。;12. 小型遠心機により最高回転速度でチューブを4-5分間遠心し、洗浄バッファーを除く。洗浄を更に2回繰り返す。溶出13. Elution 164μlの非還元1×SDS PAGEゲル色素(BMP-2ダイマーを破壊するため、β-メルカプトエタノールは含まない)を添加することによって溶出させる;14. 穏やかにボステックスし、5分間インキュベートした後、再びボルテックスを行う。;15. 小型遠心機により最高速度で4~5分間チューブを遠心し、溶出物を回収する。;16. 以下のようにゲルをロードする: ReBOSSIS(登録商標) Load:10 μl, Non-Bound 10 μl, Wash 10μl, Elution 11 μl。
【0052】
SDS-PAGE分析用サンプルには、以下のようなラベルが付される(
図10に示す):Ld:既知量のtBMP-2またはBSAを含む試料溶液(Loading)。FT: LdをReBOSSISに供した後、ReBOSSISに保持されずに通過した画分を回収することにより得られたサンプル(Flow Through)W: たん白質を保持しているReBOSSISを通過させた洗浄用緩衝液を回収することによって得られたサンプル(Wash)。ReBOSSISに結合したタンパク質が洗浄緩衝液によって解離する場合、洗浄後に流出した画分は解離したタンパク質を含有する。埋植部位のpH環境が酸性または中性であるとし、2種類の洗浄用緩衝液(pBS pH7.0 及び 酢酸緩衝液 pH 4.5)を調製し、試験を行った。EL: 洗浄用緩衝液によって洗浄した後のReBOSSISに、さらに溶出用緩衝液を供し、ReBOSSISを通過させた溶出用緩衝液を回収することにより得られるサンプル(Elution)タンパク質の結合能の評価(SDS-PAGE)
【0053】
tBMP-2(またはBSA)のReBOSSIS(登録商標)への結合をSDS-PAGEにより評価し、染色溶液を用いてタンパク質バンドを検出した。検出されたたんぱく質は、レーンにバンドとして現れる。たんぱく質の量が既知の試料と、たんぱく質の量が分かっていない試料の電気泳動のバンドのシグナル強度を比較することにより、たんぱく質の量を定量的に推定することができる。画像解析用のソフトを使用することにより、シグナルの強度を定量的に評価することができる。
【0054】
この実験では、目視観察によってゲル画像を比較した。タンパク(tBMP2又はBSA)を青色で染色することにより、レーンに表示された青色のバンドが得られた。バンドが濃いことは、たんぱく質の量が多いことを示す。
【0055】
SDS-PAGEの泳動条件は、130Vの定電圧とした。泳動用ゲルにはNuPAGE 4-12%Bis-Trisタンパク質ゲル、1.0mm、12ウェル(Life Technologies、cat#NP0322BOX)、泳動用緩衝液にはNuPAGE MOPS SDS Running Buffer (20X) (Life Technologies、cat#NP0001)を使用した。電気泳動が終了後、タンパク質を染色するための染色液として、Gelcode Blue Sage Protein Stain (Thermos Scientific, cat # 24596) を使用した。
【0056】
図2に示すように、パネルAは、洗浄緩衝液に酸性緩衝液(酢酸緩衝液)を用いた場合のサンプルについて電気泳動を行うことにより得られたゲル画像を示し、パネルBは、洗浄緩衝液に中性緩衝液(PBS)を用いた場合のサンプルについて電気泳動を行うことにより得られたゲル画像を示す。各ゲルイメージでは、右の4レーンはtBMP2の分析結果を示し、左の4レーンはBSAの分析結果を示している。
【0057】
Ldレーン(ローディングサンプル)では、tBMP-2およびBSAのメインバンドの位置を特定することができる。tBMP-2またはBSAがFT、W、またはELレーンに含まれる場合、そのバンドはLdレーンのバンドの位置と同じ位置に表示されることが予想される。
【0058】
図2において、点線で囲まれた部分は、条件AでBSAを用いて調製したサンプルのゲルイメージを示しており、BSAのメインバンドの位置は、BSAメインバンドと表記された長方形の実線ボックスによって示されている。各レーンにおけるBSAのメインバンドの強度の比較から、FT及びLdレーンは同等程度のたんぱく質量を示しており、ほとんどのBSAはReBOSSISに結合せずに通過していることを示している。すなわち、BSAはネガティブコントロールとして振舞い、ReBOSSIS繊維には結合しない。WレーンとELレーンは、BSAバンドがやや確認できるものの、WレーンとELレーンのBSAバンドのレベルはLdレーンのレベルと比べてかなり低く、BSAはReBOSSISにほとんど結合しないことを示している。
【0059】
中性pHの緩衝液を洗浄バッファーとして用いた場合 (パネルB)、BSAはReBOSSISに非特異的に結合することを示している。ほとんどのBSAはフロースルー画分(FL)において回収されており、このことは、ほとんどのBSAがReBOSSIS(登録商標)ファイバーに結合しないことを示す。洗浄バッファーによる画分(W)では、一部のBSAが引き続き回収されているが、その量はフロースルー画分(FL)で回収された量より少ない。溶出バッファーによる画分 (EL)で回収される量はさらに少ない。これらの結果は、BSAはReBOSSIS繊維に対して非特異的に結合していることを示している。
【0060】
これに対し、tBMP-2はReBOSSIS(登録商標)によく結合しており、酸性又は中性緩衝液のいずれを洗浄バッファーとして用いた場合でも、フロースルー(FT)又は洗浄(W) の画分からはtBMP-2はほぼ含まれておらず、溶出後(E)にのみ結合していたtBMP-2が回収された。 (
図2、パネルA及びパネルB)。このことは、tBMP-2がReBOSSISに特異的に結合していることを示している。
【0061】
この実験から、tBMP‐2はReBOSSIS繊維に強力に結合すること、およびReBOSSIS繊維に結合したtBMP-2は酸性または中性の洗浄バッファーによってReBOSSISから解離されないことを確認した。
【0062】
この実験から、中性および酸性のいずれの条件においても、tBMP2の98%以上がReBOSSISに拘束され、保持されていることが確認された。このことは、破骨細胞によるカルシウム成分の吸収の影響下においても、tBMP-2のReBOSSIS(登録商標)への結合が持続することを意味する。tBMP-2とrhBMP(INFUSE)との保存比較
【0063】
この実験は、tBMP-2およびrhBMP-2(INFUSE)の結合能を各ReBOSSIS繊維について比較するためのものである。下表のとおり、いくつかの組成比率の綿状物について比較試験を行った。
PLGA:乳酸・グリコール酸共重合体
SiV:シロキサン含有バテライト(炭酸カルシウム(CaCO3)の結晶相の一つ)
β-TCP:β相リン酸三カルシウム
【0064】
結合能を確認するための試験のプロトコルは上記の通り。
図3は、tBMP-2を様々な綿状物に結合させた結果を示す。β-TCP及び/又はSiV(シロキサンを含有するバテライト)を含有する材料(SIV70、ReBOSSIS (85)及びORB-03)には、tBMP-2が十分に保持されている。tBMP-2の保持は、BSAとは明らかに異なる。
【0065】
図4は、組換えヒトBMP2(rhBMP2)の結果を示している。rhBMP-2は、β-TCP (ReBOSSIS (85)およびORB-03)を含む材料にのみ保持されるが、SiVを含む材料には保持されない。rhBMP-2の結合能はtBMP2の結合能より若干弱い。それにもかかわらず、rhBMP2は、ReBOSSISで使用するのに依然として良好である。その理由は、ReBOSSISによるrhBMP-2の保持はtBMP-2の保持よりも少ないため、tBMP2が治療部位から漏れる可能性は低いと予測することができるためである。したがって、本発明の好ましい実施形態は、rhBMP-2(例えば、INFUSE Bone Graft)と比較して、副作用が(もしあれば) より少ない副作用を有するtBMP-2を使用することができる。慢性ヤギ脛骨欠損(CCTD)モデルにおけるReBOSSIS/tBMP2の評価
【0066】
骨修復におけるtBMP-2/ReBOSSSの有用性を評価するために、ReBOSSIS(登録商標)上のターゲット型BMP-2(tBMP-2)の有効性をCCTDモデルで評価した。これは、挑戦的な長骨部分欠損ヤギモデルである。埋植部位での表面に結合されたtBMP2の局所保持の長期化は、長骨部分欠損を是正する整形外科手術の安全性と有効性を、現行の慣行に比べて改善することが期待される。スタディデザイン動物の選択
【0067】
試験には40~60kgのヤギ(Spanish Boer種)12頭を使用した。以下の3つの試験群に分けられた:グループ1 TCP + ReBOSSIS + BMA のみグループ2 TCP + ReBOSSIS + BMA + tBMP-2 @0.15g/cc欠陥グループ3 TCP + ReBOSSIS + BMA + tBMP-2 @1.5g/cc欠陥TCP、リン酸三カルシウム顆粒; BMA、骨髄吸引液CCTDモデル
【0068】
CCTDは、Drs. Muschler (Cleveland Clinic)、Pluhar (University of Minnesota)、Bechtold (University of Minnesota)、およびWenke (ISR)によって考案および開発された。CCTDモデルは、大動物モデルのハードルを「上げる」ことを目的としており、現在の大きな骨欠損に対する治療法が容認できない頻度で失敗し続けている厳しい臨床生物学的環境に、よりよくマッチするように設計されている。
【0069】
CCTDモデルには、骨の臨界サイズ(5cm)の脛骨部位の欠損が含まれている。CCTDモデルには急性欠損モデルとは異なるいくつかの特徴がある。1. 欠損部位の各端から2cmの骨膜を切除し、9cmの骨膜セグメント(5cmの欠損+両側2cm)を作成し、2. 欠損部位の周囲に10gの骨格筋を配置し、3. 髄内管をリーミングして欠損部位に隣接する骨髄と骨内膜を除去し、4. 移植前に4週間、PMMAスペーサーを欠損部に配置します。これにより繊維状の "誘導膜"(IM)または "マスカレット膜 "によってスペーサーを包み込むことができる。5. 各動物は、これらの生物学的条件を作成するための「前処置」と、臨床的に関連する処置シナリオを実施することができる「処置手順」としてここで定義されている2つの手術を受ける。
【0070】
図5は、Chronic Caprine臨界欠陥(CCTD)モデルの概略を示している。前処置の間に骨格が成熟した雌ヤギに5cmの大欠損セグメントを作製する。欠陥には、長さ5cm×直径2cmのポリメチルメタクリレート(PMMA)スペーサーが生体膜を誘導するために配置されている。4週間後、PMMAスペーサーを緩やかに取り外し、骨充填剤と交換する。欠損部の治癒を評価するために、4週間ごとに直行X線写真を撮影する。図では、APは頭尾方向を表し、MLは中外測方向を表す。白い矢印は、PMMAスペーサーを配置する際の骨充填剤を示す。
【0071】
前処理は、以下の本質的な特徴からなる。1. 頭尾方向に皮膚切開を作成し、脛骨骨幹部および骨膜にたいして5cmのセグメントを切除2. 近位および遠位の骨セグメント上のさらに2cmの骨膜を切除。3. 前脛骨筋と腓腹筋を10cm3切除。4. 5cmの欠損を維持するために、カスタムスペーサークランプを用いたインターロッキング髄内釘を配置。5. 欠損部の爪の周りに、あらかじめ成形した長さ5cm×直径2cmのPMMAスペーサーを配置。6. 創部に一般的な生理食塩水(0.9%)を注入し、創部を閉鎖。
【0072】
前処置の4週間後に実施される処置手順は、次の通りである:1. 脛骨の頭蓋側面で前回の皮膚切開を開く。2. PMMAスペーサーの周囲に"誘導膜 "を "ボムベイ・ドア・オープニング(bomb bay door opening) "を使用して開く。3. メンブレンや爪を傷つけずにスペーサーを除去する。4. 以下に定める適切な組織サンプルの収集。5. 欠損部に適切な治療法を配置。6. 誘導された膜を3-0ナイロンで閉鎖し、内在性マーカーと創傷閉鎖を提供。放射線分析:
【0073】
脛骨、頭尾方向(AP)および内外側(ML)投影の透視画像撮影を、スペーサー処置(0週)、埋植処置(4週)、および経過観察(8週および12週)後に実施した。X線写真は、術後12週安楽死させた後(軟部組織の解剖後)に取得た。サンプルの準備
【0074】
サンプル構成: 5cc TCP + 50cc ReBOSSIS + 6cc BMA(tBMP-2の有無に依らない)。tBMP2 のReBOSSISへの結合1. 無菌環境下で、50ccのReBOSSISをシャーレに入れて、均一な層になるように広げる。;2. 露出した表面の上で静かにピペッティングすることによりReBOSSISに30mLの結合バッファーを追加し、溶液中にReBOSSISを浸漬し、20分間結合させる。3. 10mLピペットを垂直に持ち、チップの先を表面に押し当てることによって、 30mL の結合バッファーを除去する。表面を押さえながら注意深く液を吸い取る。ピペットを別の場所に移動させ、できるだけ多くの液体を回収するようにする。回収量を記録する。4. 40mlの滅菌されたPBSをReBOSSISに加え、10分間洗浄する。手順2と同様に加える;5. 手順3に記載されているように10mlのピペットを用いて40mlのPBSを取り除き、50mlのコニカルチューブにPBSを保管する;6. 手順 4-5をもう1回繰り返す;7. シャーレに蓋をし、端をパラフィルムで覆い、tBMP-2 / ReBOSSISを密閉する。tBMP-2 のTCP への結合1. TCPの所望の量を測定し、滅菌チューブに入れる。2. チューブに70%エタノールを充填し、2~4時間または一晩インキュベートすることによって、TCPを滅菌する。3. アルコールを除去するために、滅菌された二段蒸留水で繰り返し3回洗浄。4. TCP を TCP結合バッファー(10mM 酢酸ナトリウム pH 4.75, 100mM NaCl)で 5 分間、穏やかに攪拌しながら洗浄。5. TCPを滅菌PBSで洗浄し、TCP結合バッファーを除去。6. チューブ内のTCPに適量のtBMP2を添加。7. TCPを覆うのに十分なTCP結合バッファーを追加。8. 2時間、穏やかに混合。9. TCP結合バッファーを除去するためにPBS 繰り返し2回洗浄。10. tBMP-2 / TCPを無菌容器に4℃で保管。術時1. tBMP2/ReBOSSISを入れたディッシュを1枚開く。2. 同じディッシュの隅に、tBMP-2でコーティングされたTCP 5 ccを静かに移す。その後、骨髄吸引駅 6 ccをTCPに加え、均等に分散させる。3. 滅菌済みのスパーテルを用いてtBMP-2/TCP/BMAをReBOSSIS上に移し、それらがReBOSSIS上で全体にわたって均等に広がっていることを確認する。4. 上述のtBMP-2/TCP/BMAが均等に細かい小石の層のようにReBOSSIS上に分布しているので、滅菌済みの手袋を用いて穏やかに押し固める。5. ReBOSSISをブリトーのようにそっとロールアップし、必要に応じて混ぜて形を整える。結果
【0075】
ReBOSSISを添加することにより、埋植材料の外科的取扱い性が大幅に向上した。
図6Aは埋植から8週間後、
図6Bは埋植後12週で撮影されたに撮影されたX線写真(内側(ML)および頭尾方向(AP))を示す。各群につき、6頭のヤギを使用した。
【0076】
埋植後のX線写真では、グループ1(TCP + ReBOSSIS + BMA)の4頭のヤギ全てで欠損部位に新しい骨は得られなかった。グループ2(低用量tBMP-2)では、4頭のヤギのうち1頭は欠損部位での新生骨の形成が約75%であり、残り3頭では25%以下であった。グループ3(高用量tBMP-2)では、2頭のヤギが骨癒合を呈し、残り2頭のヤギが50%未満の新生骨を呈した。これらのデータは、スキャフォールドへのtBMP2の添加が新生骨の形成を増加させたことを示している。
【0077】
図7は、固定X線装置で撮影した12本の摘出脛骨のX線写真(内側(ML)および頭尾方向(AP))を示しています。高用量のtBMP-2群(1.5mg/cc)では、大量の新しい骨が得られた。
【0078】
これらの結果に示されるように、ReBOSSIS(登録商標)は埋植材料の外科的な操作性を大幅に向上させた。TCPおよびReBOSSIS(登録商標)へのtBMP-2の添加は、CCTDモデルにおける骨治癒を強化した。これらの結果は、本発明の実施形態が、骨修復のために現在使用されている材料よりも優れているであろうことを示している。これらの特定の実施例はtBMP-2を使用しているが、rhBMP-2は、以前に実証されたのと同じ結果をもたらすであろう。
【0079】
本発明の実施形態は、限られた実施例を用いて例示されているが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の修正及び変形が可能であることを理解する。したがって、保護の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるべきである。