(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】塗工装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20231108BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2022198630
(22)【出願日】2022-12-13
(62)【分割の表示】P 2019025429の分割
【原出願日】2019-02-15
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 行良
(72)【発明者】
【氏名】江川 裕也
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-111470(JP,A)
【文献】特開2018-065079(JP,A)
【文献】特開2018-183748(JP,A)
【文献】特開2016-087572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブが前後方向に下周面を走行するバックアップロールと、
前記バックアップロールの下方に配されたダイと、
を有し、
前記ダイは、
基部と、
前記基部の上面の前部から一体に立設され、上部が断面三角形に形成された第1本体と、
前記第1本体の前面に組み合わさり、上部が断面三角形に形成された第2本体と、
前記基部の上面の前部と前記第2本体の下面との間に形成された取り付け空間と、
前記第1本体に設けられた塗工液の液溜め部と、
前記液溜め部から前記第1本体と前記第2本体の間に延びる前記塗工液の液通路と、
前記液通路の上端にあるスリット状の前記塗工液の吐出口と、
前記第1本体と前記第2本体に挟まれ、前記液溜め部の左側に配された左側部と、前記液溜め部の右側に配された右側部と、前記液溜め部の下部に配された下側部とが一体となった1枚のシムと、
前記シムの横方向の位置を調整する横調整
部材と、
を有し、
前記横調整部材は、
前記シムの少なくとも一側部から突出すると共に、前記第1本体の一側部と前記第2本体の一側部から露出した突片と、
前記第1本体に設けられた台座と、
前記台座上を横方向にスライドするスライド部材と、
を有し、前記スライド部材に前記突片が取り付けられている、
塗工装置。
【請求項2】
前記台座に対し横方向に移動する横シム調整ボルトを有し、
前記横シム調整ボルトが前記スライド部材に回転自在に取り付けられている、
請求項1に記載の塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、1つのダイで、異なる塗工液を積層して塗工する積層ダイが提案されている。この積層ダイは、先端が三角状に尖り、2つの吐出口が並んで設けられ、それぞれから異なる塗工液を吐出し、バックアップロールで搬送されているウエブに異なる塗工液を積層して塗工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-337519号公報
【文献】特許第3777404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような積層ダイにおいては、ダイを構成する各本体の間にシムが配され、塗工液の塗工幅を調整している。そのため、このシムの横方向の位置を各本体の間において正確に取り付けないと、目的の塗工を行うことができないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、ダイの各本体の間に設けられたシムの横方向の位置を調整できる塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ウエブが前後方向に下周面を走行するバックアップロールと、前記バックアップロールの下方に配されたダイと、を有し、前記ダイは、基部と、前記基部の上面の前部から一体に立設され、上部が断面三角形に形成された第1本体と、前記第1本体の前面に組み合わさり、上部が断面三角形に形成された第2本体と、前記基部の上面の前部と前記第2本体の下面との間に形成された取り付け空間と、前記第1本体に設けられた塗工液の液溜め部と、前記液溜め部から前記第1本体と前記第2本体の間に延びる前記塗工液の液通路と、前記液通路の上端にあるスリット状の前記塗工液の吐出口と、前記第1本体と前記第2本体に挟まれ、前記液溜め部の左側に配された左側部と、前記液溜め部の右側に配された右側部と、前記液溜め部の下部に配された下側部とが一体となった1枚のシムと、前記シムの横方向の位置を調整する横調整部材と、を有し、前記横調整部材は、前記シムの少なくとも一側部から突出すると共に、前記第1本体の一側部と前記第2本体の一側部から露出した突片と、前記第1本体に設けられた台座と、前記台座上を横方向にスライドするスライド部材と、を有し、前記スライド部材に前記突片が取り付けられている、塗工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シムの横方向の位置を正確に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1を示す塗工装置の側面図である。
【
図6】第1本体と中間本体とを第1締結ボルトで固定する部分の縦断面図である。
【
図7】第2本体と中間本体とを固定する第2締結ボルトの部分の縦断面図である。
【
図8】中間ダイを支持する第1調整ボルトにおける積層ダイの縦断面図である。
【
図9】中間本体の高さを測定する部分の縦断面図である。
【
図10】
図8におけるA-A線断面図の右側部分である。
【
図11】第2本体を支持する第2シム調整ボルトにおける積層ダイの縦断図である。
【
図12】第2本体の高さを測定する部分積層ダイの縦断面図である。
【
図14】第1シムと第2シムを支持する部分の積層ダイの縦断面図である。
【
図15】第1シムを支持する部分の拡大斜視図である。
【
図17】第2シムを支持する部分の拡大斜視図である。
【
図18】第2シムの横調整部材の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のウエブWの塗工装置10について図面を参照して説明する。
【実施形態1】
【0010】
以下、実施形態1のウエブWの塗工装置10について
図1~
図19を参照して説明する。長尺状のウエブWとしては、フィルム、金属箔、金属メッシュ、紙、布帛などである。また、本実施形態の塗工装置10は、ウエブWに対し異なる第1塗工液と第2塗工液を積層して塗工するものである。ここで異なる塗工液とは、互いに全く成分の異なる塗工液でなく、成分は同じであるが粘度が異なる塗工液も含まれるものとする。
【0011】
(1)塗工装置10
塗工装置10の構成について、
図1~
図2を参照して説明する。塗工装置10は、
図1に示すように、所定の回転速度で回転するバックアップロール12と、バックアップロール12の下方に配された積層ダイ14と、積層ダイ14の下方に配されたベンド装置16とを有している。バックアップロール12の回転軸18は水平方向に配され、ウエブWがバックアップロール12の下周面を前進で走行する。
【0012】
(2)積層ダイ14
次に、積層ダイ14の構造について
図1~
図3を参照して説明する。積層ダイ14の基部20は、直方体であり、ウエブWの幅方向、すなわち、左右方向に延びている。この基部20の上面前部から第1本体22が一体に立設されている。第1本体22の後方には第1シム70、中間本体24が配され、中間本体24の後方には第2シム80、第2本体26が配されている。以下各部材について順番に説明していく。
【0013】
(2-1)第1本体22
図4に示すように、第1本体22の前面は垂直面であり、上面は前方ほど下方に傾斜した第1傾斜面30が形成されている。第1傾斜面30の上端部、すなわち第1本体22の後面上端部には
図5に示すように、第1塗工刃先34が左右方向に延びている。この第1塗工刃先34の上面は平面形状である。
図3、
図4に示すように、第1本体22の後面は垂直面であり、第1液溜め部32が左右方向に延びている。第1液溜め部32の左右方向における中央部には第1塗工液が供給される第1供給口36が水平方向に貫通している。
図1~
図3に示すように、第1本体22の左右一対の側面には、左右一対の軸基板28,28がボルトで取り付けられ、これら軸基板28,28から左右一対の支持軸38,38が左右方向に突出している。また、この軸基板28から中間本体24に向かって第1横位置決め部29が突出している。
【0014】
(2-2)中間本体24
中間本体24は、
図4に示すように、第1本体22の後方に第1シム70を挟んで配され、縦断面形状が
図4に示すように三角状であり、上部に行くほど細くなっている。
図5に示すように、中間本体24の上端部は、左右方向に延びた中間塗工刃先40が形成されている。この中間塗工刃先40の上面は平面形状である。中間本体24は、
図6に示すように、第1本体22と一体となった基部20の後部の上方に配され、複数の第1締結ボルト90で固定されている。
【0015】
中間本体24の両側面には、
図13、
図18に示すように、左右一対の直方体の第2横位置決め部44がボルト194で取り付けられ、この第2横位置決め部44の後部が、中間本体24から後方に突出している。
【0016】
中間本体24の下面と基部20の後部の上面との間には、
図4に示すように、空間27が形成されている。
【0017】
中間本体24の下面には、
図8、
図10に示すように、複数の第1固定ピン45が垂直に所定間隔毎に嵌め込まれている。そして、第1本体22の基部20の後部には、左右方向に沿って所定間隔毎に第1調整ネジ孔41が上下方向に貫通している。第1調整ボルト42が、第1調整ネジ孔41を上下方向に貫通し、その上端が中間本体24の下面にある第1固定ピン45に当たり、中間本体24を支持している。
【0018】
図10に示すように、基部20の後部であって、第1調整ネジ孔41の近傍位置には第1引き込みネジ孔43が垂直方向に貫通している。第1引き込みボルト46が、第1引き込みネジ孔43を貫通し、さらにその上部が中間本体24の下面に螺合している。第1引き込みボルト46は、締め付けることにより、中間本体24を基部20側に引き寄せる。
【0019】
中間本体24の下面における第1調整ネジ孔41の近傍には、
図9、
図10に示すように、第1取り付け片47が取り付けられ、後方に延びている。第1取り付け片47の位置に対応する基部20の後面には垂直方向に第1高さ表示計48が固定され、その第1高さ表示計48の測定部49が第1取り付け片47に当接している。基部20に対し中間本体24を第1調整ボルト42で上下動させるとそれと共に第1取り付け片47が上下動するため、第1高さ表示計48は、第1本体22に対する中間本体24の高さを正確に測定できる。
【0020】
(2-3)第2本体26
図3、
図4に示すように、中間本体24の後方に第2シム80を挟んで第2本体26が配されている。第2本体26は、左右方向に延びた直方体であり、その前上端部から後上端部に向かって第2傾斜面60が形成されている。
図5に示すように、第2本体26の上端部、すなわち、第2傾斜面60の上端部には第2塗工刃先64が左右方向に設けられている。この第2塗工刃先64の上面は平らである。第2本体26の前面は平らな面であって、第2シム80を挟んで中間本体24の後面と組み合わさり、第2締結ボルト100で固定されている。また、
図3、
図4に示すように、第2本体26の前面には左右方向に第2液溜め部62が形成されている。左右方向に延びた第2液溜め部62の中央には第2塗工液を供給する第2供給口66がほぼ前後方向に貫通している。
【0021】
基部20の後面には、
図11、
図13に示すように、所定間隔毎に縦調整部材50が設けられている。縦調整部材50は、縦部50aと、縦部50aの上端部から後方に突出した横部50bとよりなる。縦部50aが、ボルト51により基部20の後面に固定されている。
【0022】
図11、
図13に示すように、第2本体26の下面には垂直方向に第2固定ピン52が、上記した縦調整部材50と対応する位置に設けられている。
【0023】
図11、
図13に示すように、縦調整部材50の横部50bには、第2調整ネジ孔53が貫通し、ここに第2調整ボルト54が螺合し、この第2調整ボルト54の上端部が第2固定ピン52と当接している。
図13に示すように縦調整部材50の横部50bには、第2引き込みネジ孔55が貫通している。この第2引き込みネジ孔55には、下方から第2引き込みボルト56が螺合し、その上部は第2本体26の下面に螺合している。第2調整ボルト54によって第2本体26の高さ方向の位置が調整され、さらに第2引き込みボルト56によって第2本体26が浮き上がらないように固定されている。
【0024】
図12、
図13に示すように、第2本体26の下面には、測定ピン57が取り付けられている。また、この測定ピン57に対応する基部20には、第2高さ表示計58が上下方向に取り付けられている。この第2高さ表示計58の測定部59が測定ピン57と当接している。そして、この第2高さ表示計58によって第1本体22に対する第2本体26の高さを測定できる。
【0025】
(2-4)第1シム70
板状の第1シム70は、
図3、
図14~
図16に示すように、第1本体22の後面と中間本体24の前面との間に配されている。第1シム70は、第1液溜め部32を周囲に配されるものであり、第1液溜め部32の左側に配された左側部72、右側に配された右側部74、下部に配された下側部76とが一体となった形状となっている。この第1シム70には、所定間隔毎にシム孔78が貫通している。また、第1シム70の下側部76の下端部には、横方向に長い横長孔144が開口している。
【0026】
図14、
図16に示すように、第1本体22の基部20の下面には所定間隔毎に補強板130がボルト132によって固定されている。この補強板130には、ネジ孔134が開口している。また、このネジ孔134に対応する基部20には垂直方向に第1シム調整孔136が貫通している。
【0027】
補強板130の下面にはナット148が固定され、ネジ孔134に下方から第1シム調整ボルト138が螺合している。この第1シム調整ボルト138は、第1シム調整孔136の途中まで延びている。第1シム調整ボルト138の上には、第1シム縦調整部材140が載置されている。
図14に示すように、この第1シム縦調整部材140は円柱形であり、第1シム調整孔136に挿入され、その上端部の後部は切欠き部142が設けられている。一方、この切欠き部142に対応する第1シム70の下側部76の下端部には横長孔144が開口している。
図14に示すように、第1シム70の下側部76は、この切欠き部142によって形成された空間部分に配置され、横長孔144に第1シムピン146が挿通され、第1シム縦調整部材140に固定される。第1シム調整ボルト138を回転させて上下動させることにより、第1シム縦調整部材140が上下動し、第1シム70の高さを調整できる。
【0028】
(2-5)第2シム80
第2シム80は、
図3、
図14に示すように、中間本体24の後面と第2本体26の前面との間に配されている。第2シム80は、第2液溜め部62を周囲に配されるものであり、第2液溜め部62の左側に配された左側部82、右側に配された右側部84、下側に配された下側部86とが一体となった形状となっている。この第2シム80には、所定間隔毎にシム孔88が開口している。第2シム80の下側部86の下端には、横方向に長い横長孔164が開口している。
【0029】
図14、
図17、
図19に示すように、中間本体24の下面には所定間隔毎に板状の第2シム縦調整部材150が取り付けられている。第2シム縦調整部材150は、
図14に示すように、中間本体24の下面に接する上部150aと上部150aから下方に延びた傾斜部150bと下部150cとよりなる。上部150aは、ボルト152によって中間本体24の下面に固定されている。また、下部150cには、孔154が開口している。孔154の下面にはナット156が固定されている。ナット156と孔154を第2シム調整ボルト158が下から貫通する。
【0030】
図14、
図17に示すように、板状の傾斜部150bは、第2シム80の傾斜方向と平行であり、この傾斜部150bには板状のスライド部材160が配されている。スライド部材160の下部にはフランジ部162が設けられ、このフランジ部162には第2シム調整ボルト158が回転自在に固定されている。第2シム調整ボルト158を回転させることによりスライド部材160が傾斜部150bに沿って上下方向にスライドする。また、第2シム80の下側部86の横長孔164とスライド部材160に第2シムピン166が差し込まれてスライド部材160に固定されている。これによって第2シム調整ボルト158を回転させることにより、スライド部材160と共に第2シム80が上下動する。
【0031】
図18、
図19に示すように、第2シム80の左側部82及び右側部84からそれぞれ外方に突片170が突出している。左右一対の突片170には、縦方向に長い縦長孔172が設けられている。一方、軸基板28から突出している第1横位置決め部29には、横調整部材174が設けられている。
図18に示すように、横調整部材174は、第1横位置決め部29にボルト192で固定された台座176を有している。台座176の側端部からフランジ部178が突出し、フランジ部178にはネジ孔が開口している。このネジ孔に対応したフランジ部178の外側にはナット182が固定されている。ネジ孔とナット182には、横方向に横シム調整ボルト184が貫通している。一方、
図18に示すように、台座176の後面には板状のスライド部材186が配されている。スライド部材186には、第2シム80の突片170に開口した縦長孔172が位置し、突片170が縦ピン190でスライド部材186に固定されている。スライド部材186の端部からはフランジ部188が突出している。このフランジ部188には、フランジ部178を貫通した横シム調整ボルト184の先端部が螺合している。これによって、横シム調整ボルト184を回転させることによりスライド部材186が横方向に移動し、第2シム80も横方向に移動する。
【0032】
(2-6)積層ダイ14の固定方法
積層ダイ14の固定方法について説明する。
【0033】
図6に示すように、第1本体22、第1シム70、中間本体24は、複数の第1締結ボルト90によって一体に固定されている。第1締結ボルト90は、第1本体22の左右両側に設けられた第1締結孔92、第1シム70に設けられたシム孔78、中間本体24に設けられた中間第1締結孔94に螺合される。
【0034】
図7に示すように、第2本体26、第2シム80、中間本体24は、複数の第2締結ボルト100によって一体に固定されている。第2締結ボルト100は、第2本体26に設けられた第2締結孔102、第2シム80に設けられたシム孔88、中間本体24に設けられた中間第2締結孔104に螺合される。
【0035】
(3)ベンド装置16
次に、ベンド装置16と積層ダイ14の関係について説明する。
【0036】
ベンド装置16は、
図2に示すように、積層ダイ14の下方に設けられたほぼ直方体であり、上面の左右両側部から左右一対の腕部110,110が立設されている。一方、第1本体22の左右両側部から支持軸38が突出しているため、この支持軸38を腕部110が回転自在に支持している。
【0037】
ベンド装置16内部には、
図4に示すように、上下動部112が設けられ、この上下動部112の上端部には、円柱型のダイ押圧部114が設けられている。上下動部112が有するコッターが水平に移動して、ダイ押圧部114を上下動させる。
【0038】
(4)バックアップロール12、積層ダイ14、ベンド装置16の位置関係
バックアップロール12、積層ダイ14、ベンド装置16の位置関係について説明する。
【0039】
図1に示すように、積層ダイ14の第1本体22の第1塗工刃先34の上面の前部を、回転軸18の中心Oの真下(中心Oからの垂線Sと交差する位置)に位置させている。このようにすると、
図5に示すように、第1塗工刃先34の上面の前部とバックアップロール12の下周面との間隔が最も接近し、この接近した位置が最も塗工圧がかかることになる。そのため、この最も塗工圧の高い位置で塗工できる。すなわち、第1塗工刃先34の上面の前部とバックアップロール12の下周面との間隔が、塗工間隔となり、塗工厚が決定される。特に、
図5に示すように、第1塗工刃先34の上面と第2塗工刃先64の上面を同じ高さに設定されているのでウエブWがスムーズに走行する。また、第2塗工刃先64の上面の後部とバックアップロール12の下周面との間隔をL1、第2塗工刃先64の上面の前部とバックアップロール12の下周面との間隔をL2、中間塗工刃先40の上面の後部と下周面との間隔をL3、中間塗工刃先40の上面の前部と下周面との間隔をL4、第1塗工刃先34の上面の後部と下周面との間隔をL5、第1塗工刃先34の上面の前部と下周面との間隔をL6とすると、L1>L2>L3>L4>L5>L6となり、ウエブWにかかる塗工圧が次第に上昇し、L6の最も塗工圧が高い位置で塗工できる。
【0040】
一方、
図1、
図2に示すように、第1吐出口122、第2吐出口126から吐出される第1塗工液、第2塗工液の圧力によって、積層ダイ14の上端部が、左右方向の中央ほど下方に湾曲する。この湾曲を防止するため、ベンド装置16のダイ押圧部114によって、積層ダイ14の基部20の下面を押圧する。本実施形態では、このダイ押圧部114の押圧位置は、左右方向の中央であって、かつ、前後方向においてはバックアップロール12の回転軸18の中心Oの真下の位置としている。なぜ、バックアップロール12の回転軸18の中心Oの真下の位置を押圧するかを説明する。上記したように、バックアップロール12の回転軸18の中心Oの真下の位置に対応する第1塗工刃先34の上面の前部とバックアップロール12の下周面との間隔が最も接近し、この接近した位置が最も塗工圧がかかる。そのため、前後方向においてはこの部分で湾曲が最も発生しやすくなる。そこで本実施形態では、前後方向においてバックアップロール12の回転軸18の中心O(第1塗工刃先34の上面の前部)の真下の位置を押圧して、湾曲を防止している。
【0041】
また、基部20と第1本体22をベンドさせると、第1本体22に固定された中間本体、第2本体も同時にベンドさせることができる。
【0042】
(5)塗工装置10の動作状態
塗工装置10の動作状態について説明する。
図1においてウエブWがバックアップロール12の下周面を前進(
図1において左から右に走行)させる。
【0043】
まず、第1液溜め部32には、
図4に示すように、第1供給口36から第1塗工液が供給される。また、第2液溜め部62には第2供給口66から第2塗工液が供給される。
【0044】
次に、第2液溜め部62から第2液通路124、第2吐出口126を通って第2塗工液が吐出され、前進するウエブWに塗工される。
【0045】
次に、第1液溜め部32から第1液通路120を通って第1吐出口122から第1塗工液が吐出される。そして、さらに前進するウエブWに塗工された第2塗工液の上に第1塗工液が積層され塗工される。
【0046】
(6)積層ダイ14の組み立て方法
次に、積層ダイ14の組み立て方法について説明する。
【0047】
まず、
図2に示すように、ベンド装置16の上面から立設された左右一対の腕部110,110の間に、第1本体22の軸基板28から突出した左右一対の支持軸38,38を取り付ける。
【0048】
次に、
図6に示すように、第1本体22に第1シム70を挟んで中間本体24を配する。そして、複数の第1締結ボルト90で第1本体22、第1シム70、中間本体24を一体に固定する。なお、
図3に示すように、第1本体22の左右一対の軸基板28からは第1横位置決め部29が突出しているため、第1本体22に中間本体24を固定すると、中間本体24は、左右一対の第1横位置決め部29,29によって横方向の移動が阻止される。
【0049】
次に、
図4に示すように、中間本体24に第2シム80を挟んで第2本体26を配する。そして、複数の第2締結ボルト100で第2本体26、第2シム80、中間本体24を一体に固定する。これによって、第1本体22、中間本体24、第2本体26が、第1シム70と第2シム80を挟持した状態で一体に固定される。
【0050】
次に、
図8~
図13に示すように、第1締結ボルト90と第2締結ボルト100を若干緩め、第1調整ボルト42、第2調整ボルト54を上下動させて、第1塗工刃先34、中間塗工刃先40、第2塗工刃先64が同一面上、即ち水平になるように調整する。このとき、中間本体24の高さは第1高さ表示計48で測定して調整を行い、第2本体26の高さは、第2高さ表示計58で測定して高さの調整を行う。
【0051】
次に、
図14~
図16に示すように、第1シム70の位置を、第1シム調整ボルト138を回転させて調整する。このとき、第1シム70の左側部72と右側部74の上端部が、第1塗工刃先34と中間塗工刃先40よりも若干低く(例えば、0.1mm~3mm)設定する。
【0052】
次に、第1締結ボルト90を締めて、第1本体22と中間本体24を完全に固定する。
【0053】
次に、
図14、
図17、
図19に示すように、第2シム80の高さを第2シム調整ボルト158によって調整する。このとき、第2シム80の左側部82と右側部84の上端部が、中間塗工刃先40と第2塗工刃先64よりも若干低く(例えば、0.1mm~3mm)取り付ける。なお、突片170の縦長孔172は、縦方向に長いため、第2シム80を上下動させることができる。
【0054】
次に、
図14、
図18、
図19に示すように、第2シム80の横方向の位置を、第1シム70の位置と合わせるために横シム調整ボルト184を回転させて調整する。第1シム70の左側部72、右側部74の位置と、第2シム80の左側部82と右側部84の位置が合致するようにする。なお、第2シム80の下端にある横長孔144は、横方向に長いため、第2シム80を横移動させることができる。
【0055】
次に、中間本体24の両側部に左右一対の第2横位置決め部44を取り付け、中間本体24に対し第2本体26が横方向にずれないように固定する。
【0056】
(7)効果
本実施形態によれば、第1本体22に対し中間本体24の高さ方向の位置を第1調整ボルト42によって調整でき、また、第1本体22に対し中間本体24が上方に浮くように移動する力が掛かっても、第1引き込みボルト46によって下方へ引き込まれているため、第1本体22に対し中間本体24の高さ方向の位置が完全に固定されている。また、第1本体22に対する中間本体24の高さは、第1高さ表示計48によって測定できる。
【0057】
また、中間本体24は、第1本体22の第1横位置決め部29,29によって挟まれているため横方向にずれない。
【0058】
また、中間本体24に対する第2本体26の高さ方向の位置は、第2調整ボルト54によって調整できる。また、中間本体24に対し第2本体26が浮くような方向に力が掛かっても、第2引き込みボルト56によって下方に引き込まれているため、中間本体24に対し第2本体26の高さ方向の位置が完全に固定されている。また、第1本体22に対する第2本体26の高さは、第2高さ表示計58で測定できる。
【0059】
また、第2本体26は、中間本体24の両側面に設けられた左右一対の第2横位置決め部44によって挟まれているため、横方向にずれない。
【0060】
また、第1シム70の位置は、第1本体22と第2本体26よって固定され、その高さ方向の位置は第1シム調整ボルト138により調整できる。そのとき、第1シム70の上端部の高さを第1塗工刃先34と中間塗工刃先40よりも若干低く設定することにより、ウエブWの塗工部分における幅方向の両端部の盛り上がりを少なくすることができる。
【0061】
また、第2シム80の高さは、第1シム70を基準にして第2シム調整ボルト158により調整できる。また、このとき第2シム80の上端部の高さを中間塗工刃先40と第2塗工刃先64よりも若干低く設定することによりウエブWの塗工部分における幅方向の両端部の盛り上がりを少なくすることができる。
【0062】
また、第2シム80は、左右一対の横シム調整ボルト184を調整することにより横方向に移動できるため、第1シム70と横方向の位置と一致させることができ、二層の塗工部分が横方向にずれない。
【0063】
(8)変更例
上記実施形態では、第2シム80を第2シム調整ボルト158で調整する構成であったが、これに加えて第2シム80の下側部86の下端部を測定できる高さ表示計をさらに設け、この高さ表示計を見ながら第2シム80の高さを調整してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、中間本体24と第2本体26に挟まれた第2シム80に関して横方向の調整構造を設けたが、これに限らず第1シム70においても横方向のずれを調整できる横調整部材を設けてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、横調整部材174の台座176を、第1本体22にある横位置決め部29に設けたが、これに代えて中間本体24に直接取り付けてもよい。
【実施形態2】
【0066】
実施形態2の塗工装置210について
図20を参照して説明する。塗工装置210は、バックアップロール212とダイ214とベンド装置208とを有する。
【0067】
図20に示すように、バックアップロール212は、水平な回転軸213の中心Oを中心として、反時計回り方向に回転し、その下周面をウエブWが前後方向(
図20における左から右、すなわち、上流から下流)に走行する。
【0068】
図20に示すように、ダイ214は、バックアップロール212の下方に設けられている。ダイ214は、第1本体216と第2本体218と基部220と空間244を有している。
【0069】
基部220は、左右方向に延びた直方体であり、上面前部から第1本体216が一体に立設されている。
【0070】
第1本体216は、左右方向に延びた直方体であり、後面上端部から前面上端部に向かって第1傾斜面222が形成され、上部が断面三角形である。第1本体216の後面は垂直面であり、液溜め部224が左右方向に形成されている。第1本体216の上部の先端部には、左右方向に延び、上面が平面形状の直方体である第1塗工刃が形成され、その位置は、
図1の垂線Sに示すように、回転軸213の中心Oの真下に位置している。
【0071】
第2本体218は、第1本体216とは別体であり、第1本体216の後方、すなわち、基部220の上部に配されるものであって、左右方向に延びた直方体であり、上下寸法が第1本体216よりも小さく形成されている。第2本体218の前面上端部から後面上端部に向かって第2傾斜面226が形成されている。第2本体218の上部の先端部には、左右方向に延び、上面が平面形状の直方体である第2塗工刃部が形成されている。
【0072】
第2本体218と基部220との間には、空間244が形成されている。この空間244は、その上面が第2本体218の下面で形成され、下部が基部220の上面で形成され、後面が開口し、前面が第1本体216の後面で形成され、左右両側部が開口した空間である。
【0073】
板状のシム228が、第1本体216の後面と第2本体218の前面との間に挟持されている。シム228は、液溜め部224を囲むように構成されている。
【0074】
第1本体216と第2本体218とシム228とは、一体に固定され、第1傾斜面222と第2傾斜面226とが、三角形に形成される。第1塗工刃部の上端面と第2塗工刃部の上端面とは同じ高さになり、その上方に塗工間隔を開けてバックアップロール212の下周面が位置する。
【0075】
シム228の少なくとも一側部から不図示の突片シム228が突出している。この突片は、第1本体216の一側部と第2本体218の一側部から露出している。横調整部材174が、第1本体216の両側面に設けられている。この横調整部材174は、実施形態1と同様の構造であって、シム228の側部から突出した突片に取り付けられ、シム228の横方向の位置を調整できる。
【0076】
本実施形態であると、横調整部材174によってシム228の横方向の位置を第1本体216と第2本体218に一致させることができる。
【変更例】
【0077】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
10・・・塗工装置、12・・・バックアップロール、14・・・積層ダイ、16・・・ベンド装置、18・・・回転軸、20・・・基部、22・・・第1本体、24・・・中間本体、26・・・第2本体、34・・・第1塗工刃先、40・・・中間塗工刃先、44・・・第2横位置決め部、46・・・第1引き込みボルト、48・・・第1高さ表示計、50・・・縦調整部材、54・・・第2調整ボルト、56・・・第2引き込みボルト、58・・・第2高さ表示計、59・・・測定部、64・・・第2塗工刃先、70・・・第1シム、80・・・第2シム、138・・・第1シム調整ボルト、140・・・第1シム縦調整部材、146・・・第1シムピン、158・・・第2シム調整ボルト、160・・・スライド部材、166・・・第2シムピン、174・・・横調整部材、176・・・台座、184・・・横シム調整ボルト、186・・・スライド部材、190・・・縦ピン