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特許7381719データ生成装置、データ生成方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】データ生成装置、データ生成方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20231108BHJP
   G01S 19/11 20100101ALI20231108BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20231108BHJP
【FI】
G01C21/26 B
G01S19/11
G06N20/00 130
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022512915
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2020014606
(87)【国際公開番号】W WO2021199175
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】是永 剛志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 健司
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】知識 陽平
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-174771(JP,A)
【文献】特開2019-159462(JP,A)
【文献】特開2014-002103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-25/00
G01S 19/11
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を走行させて取得した実測GNSSデータと、前記実測GNSSデータが示す前記車両の位置を含む3D地図データとに基づいて第1疑似データ生成モデルを学習し、学習済みの前記第1疑似データ生成モデルである第2疑似データ生成モデルを記憶媒体に記憶するジェネレータを有する学習部と、
前記車両が仮想的に移動する仮想位置の時系列を表す模擬走行経路データと、前記仮想位置を含む3D地図データとを前記記憶媒体から読み出した前記第2疑似データ生成モデルに入力して、前記仮想位置のそれぞれにおいて得られるGNSSデータを推測した疑似GNSSデータを生成する疑似データ生成部と、
を備えるデータ生成装置。
【請求項2】
前記学習部は、
入力されたGNSSデータの真偽を判定するディスクリミネータを更に有し、
前記ジェネレータは、
前記実測GNSSデータと、前記3D地図データとに基づいて前記第1疑似データ生成モデルを学習し、学習済みの前記第1疑似データ生成モデルである第3疑似データ生成モデルに前記模擬走行経路データと前記3D地図データとを入力して評価用疑似GNSSデータを生成し、生成した前記評価用疑似GNSSデータを前記ディスクリミネータに出力し、
前記ディスクリミネータの判定結果に基づいて、前記第3疑似データ生成モデルを更に学習し、学習済みの前記第3疑似データ生成モデルである前記第2疑似データ生成モデルを前記記憶媒体に記憶する、
請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項3】
前記ディスクリミネータは、実測GNSSデータであるか疑似GNSSデータであるかを示すラベルを付したGNSSデータと、前記3D地図データとに基づいて学習された識別モデルを用いて、入力されたGNSSデータの真偽を判定する、
請求項2に記載のデータ生成装置。
【請求項4】
前記学習部は、
前記実測GNSSデータに基づいて、当該車両の走行位置の時系列を表す走行経路履歴を作成する走行経路履歴作成部を更に有し、
前記走行経路履歴に基づいて前記第1疑似データ生成モデルを更に学習する、
請求項1から3の何れか一項に記載のデータ生成装置。
【請求項5】
前記学習部は、前記実測GNSSデータを取得した前記車両の車種に基づいて前記第1疑似データ生成モデルを更に学習し、
前記疑似データ生成部は、指定された車種に応じた前記疑似GNSSデータを生成する、
請求項1から4の何れか一項に記載のデータ生成装置。
【請求項6】
車両を走行させて取得した実測GNSSデータと、前記実測GNSSデータが示す前記車両の位置を含む3D地図データとに基づいて第1疑似データ生成モデルを学習し、学習済みの前記第1疑似データ生成モデルである第2疑似データ生成モデルを記憶媒体に記憶するステップと、
前記車両が仮想的に移動する仮想位置の時系列を表す模擬走行経路データと、前記仮想位置を含む3D地図データとを前記記憶媒体から読み出した前記第2疑似データ生成モデルに入力して、前記仮想位置のそれぞれにおいて得られるGNSSデータを推測した疑似GNSSデータを生成するステップと、
を有するデータ生成方法。
【請求項7】
車両を走行させて取得した実測GNSSデータと、前記実測GNSSデータが示す前記車両の位置を含む3D地図データとに基づいて第1疑似データ生成モデルを学習し、学習済みの前記第1疑似データ生成モデルである第2疑似データ生成モデルを記憶媒体に記憶するステップと、
前記車両が仮想的に移動する仮想位置の時系列を表す模擬走行経路データと、前記仮想位置を含む3D地図データとを前記記憶媒体から読み出した学習済みの前記第2疑似データ生成モデルに入力して、前記仮想位置のそれぞれにおいて得られるGNSSデータを推測した疑似GNSSデータを生成するステップと、
をデータ生成装置のコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ生成装置、データ生成方法、疑似データ生成モデルの学習方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、GNSS(Global Navigation Satellite System)の技術を利用して、GNSS受信機が受信した衛星信号から車両の位置(緯度、経度、高度)を測位する技術が広く使われている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、GNSS受信機による測位データ(以下、「GNSSデータ」とも記載する。)をサーバで収集し、マップマッチング処理により車両の走行経路を特定するシステムが考えられている。このようなシステムでは、マップマッチング処理、及びマップマッチング処理を用いたサービス処理(例えば、有料道路の課金処理等)の検証等を行うために、多数のGNSSデータが必要となる。
【0004】
走行経路の組み合わせは膨大であり、全ての走行経路について車両を走行させて実測したGNSSデータを収集することは費用及び時間がかかり困難である。このため、車両が走行経路に沿って走行した場合に取得されるGNSSデータを推測した疑似GNSSデータを生成し、この疑似GNSSデータを各種処理の検証に用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-205373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、生成した疑似GNSSデータと、実測したGNSSデータとの乖離が大きいと、検証時に正しい結果を得られない可能性がある。このため、実測したGNSSデータに精巧に似せた疑似GNSSデータを生成する技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、データ生成装置は、車両を走行させて取得した実測GNSSデータと、前記実測GNSSデータが示す前記車両の位置を含む3D地図データとに基づいて疑似データ生成モデルを学習する学習部と、前記車両が仮想的に移動する仮想位置の時系列を表す模擬走行経路データと、前記仮想位置を含む3D地図データとを前記疑似データ生成モデルに入力して、前記仮想位置のそれぞれにおいて得られるGNSSデータを推測した疑似GNSSデータを生成する疑似データ生成部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様によれば、データ生成方法は、車両を走行させて取得した実測GNSSデータと、前記実測GNSSデータが示す前記車両の位置を含む3D地図データとに基づいて疑似データ生成モデルを学習するステップと、前記車両が仮想的に移動する仮想位置の時系列を表す模擬走行経路データと、前記仮想位置を含む3D地図データとを前記疑似データ生成モデルに入力して、前記仮想位置のそれぞれにおいて得られるGNSSデータを推測した疑似GNSSデータを生成するステップと、を有する。
【0009】
本開示の一態様によれば、データ生成装置(1)の製造方法は、車両を走行させて取得した実測GNSSデータと、前記実測GNSSデータが示す前記車両の位置を含む3D地図データとに基づいて疑似データ生成モデルを学習するステップと、学習した前記疑似データ生成モデルに、前記車両が仮想的に移動する仮想位置の時系列を表す模擬走行経路データと前記3D地図データとを入力して前記疑似GNSSデータを出力するステップと、入力されたGNSSデータの真偽を判定するステップと、前記真偽の判定結果に基づいて、前記疑似データ生成モデルを更に学習するステップと、を有する。
【0010】
本開示の一態様によれば、プログラムは、車両を走行させて取得した実測GNSSデータと、前記実測GNSSデータが示す前記車両の位置を含む3D地図データとに基づいて疑似データ生成モデルを学習するステップと、前記車両が仮想的に移動する仮想位置の時系列を表す模擬走行経路データと、前記仮想位置を含む3D地図データとを前記疑似データ生成モデルに入力して、前記仮想位置のそれぞれにおいて得られるGNSSデータを推測した疑似GNSSデータを生成するステップと、をデータ生成装置のコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るデータ生成装置、データ生成方法、疑似データ生成モデルの学習方法、及びプログラムによれば、実測したGNSSデータに精巧に似せた疑似GNSSデータを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係るデータ生成装置の機能構成を示す図である。
図2】本開示の一実施形態に係る学習部の機能構成を示す図である。
図3】本開示の一実施形態に係る疑似データ生成部の機能構成を示す図である。
図4】本開示の一実施形態に係る学習部の処理の一例を示す第1のフローチャートである。
図5】本開示の一実施形態に係る学習部の処理の一例を示す第2のフローチャートである。
図6】本開示の一実施形態に係る疑似データ生成部の処理の一例を示す第1のフローチャートである。
図7】本開示の一実施形態に係るデータ生成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態に係るデータ生成装置1について、図1図7を参照しながら説明する。
【0014】
(データ生成装置の機能構成)
図1は、本開示の一実施形態に係るデータ生成装置の機能構成を示す図である。
図1に示すように、データ生成装置1は、CPU10と、記憶媒体20とを備えている。
【0015】
CPU10は、データ生成装置1全体の動作を司るプロセッサであり、所定のプログラムに従って動作することにより、学習部11、疑似データ生成部12としての機能を発揮する。
【0016】
学習部11は、車両を走行させて取得した実測GNSSデータと、実測GNSSデータが示す車両の位置を含む3D地図データとに基づいて疑似データ生成モデルを学習する。
【0017】
実測GNSSデータには、例えば車両の位置を表す緯度、経度、高度等の情報が含まれている。また、実測GNSSデータには、移動速度、移動方位、捕捉した衛星の数、捕捉した衛星を特定可能な衛星番号、信号強度等が含まれていてもよい。3D地図データは、地形、建築物等の3次元形状を特定可能な地図データである。
【0018】
疑似データ生成部12は、車両が仮想的に移動する仮想位置の時系列を表す模擬走行経路データと、仮想位置を含む3D地図データとを疑似データ生成モデルに入力して、仮想位置のそれぞれにおいて得られるGNSSデータを推測した疑似GNSSデータを生成する。即ち、疑似データ生成部12は、実際に車両を走行させることなく、模擬走行経路において得られると推測されるGNSSデータを疑似的に生成する。
【0019】
模擬走行経路データに含まれる仮想位置は、例えばリンク(道路)を特定可能なリンクIDと、リンク上の位置を示す情報(リンク始点からの距離等)とにより表される。また、模擬走行経路データは、例えばデータ生成装置1のユーザにより、マップマッチング処理及び/又はマップマッチング処理を用いたサービス処理の検証対象となる走行経路が予め入力される。
【0020】
記憶媒体20は、いわゆる補助記憶装置であって、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などである。記憶媒体20には、データ生成装置1が取得、生成した各種データが保存される。例えば、記憶媒体20には、実測GNSSデータ、3D地図データ、学習部11により学習された疑似データ生成モデル、疑似データ生成部12により生成された疑似GNSSデータ等が記憶される。
【0021】
車両の周辺環境(衛星信号を遮蔽、反射する地形、建築物の有無等)により、GNSS受信機による衛星信号の受信状態(捕捉する衛星の数、捕捉した衛星から受信する信号の強度等)が変化する。このため、GNSS受信機が計測する実測GNSSデータには、衛星信号の受信状態に応じた測位誤差が含まれる。
【0022】
この測位誤差を考慮せずに、単に車両の仮想位置(緯度、経度)を含むGNSSデータを疑似的に生成しただけでは、実測GNSSデータとは大きく乖離したデータが生成される可能性がある。
【0023】
このため、本実施形態に係るデータ生成装置1は、車両の走行経路に応じた測位誤差が反映された疑似データ生成モデルを学習し、学習された疑似データ生成モデルを用いて実測GNSSデータを精巧に模倣した疑似GNSSデータを生成する。以下、疑似データ生成モデルの学習を行う学習部11と、学習された疑似データ生成モデルM1を用いて疑似GNSSデータを生成する疑似データ生成部12の機能構成について説明する。
【0024】
(学習部の機能構成)
図2は、本開示の一実施形態に係る学習部の機能構成を示す図である。
図2に示すように、学習部11は、ジェネレータ110と、ディスクリミネータ111と、走行経路履歴作成部112とを有している。本実施形態にかかる学習部11は、敵対的生成ネットワーク(GAN:Generative Adversarial Networks)の技術を利用して、疑似GNSSデータを生成する疑似データ生成モデルM1を学習する。
【0025】
ジェネレータ110は、実測GNSSデータと、3D地図データとに基づいて疑似データ生成モデルM1を学習し、学習した疑似データ生成モデルM1に模擬走行経路データと3D地図データとを入力して疑似GNSSデータを出力する。
【0026】
ディスクリミネータ111は、入力されたGNSSデータの真偽を判定する。具体的には、ディスクリミネータ111は、実測GNSSデータと、疑似GNSSデータであることを示すラベルを付した疑似GNSSデータと、3D地図データとに基づいて学習された識別モデルM2を用いて真偽を判定する。
【0027】
走行経路履歴作成部112は、実測GNSSデータに基づいて、車両の走行位置の時系列を表す走行経路履歴を作成する。
【0028】
(疑似データ生成部の機能構成)
図3は、本開示の一実施形態に係る疑似データ生成部の機能構成を示す図である。
図3に示すように、疑似データ生成部12は、学習部11により学習された疑似データ生成モデルM1に模擬走行経路データ及び3D地図を入力して、疑似GNSSデータを生成する。このとき、疑似データ生成部12は、疑似データ生成モデルM1に乱数を更に入力してもよい。これにより、疑似データ生成部12は、同一の模擬走行経路データから、乱数により変化をつけられた複数種類の疑似GNSSデータを生成することができる。
【0029】
(学習部の処理フロー)
図4は、本開示の一実施形態に係る学習部の処理の一例を示す第1のフローチャートである。
以下、図4を参照しながら、学習部11のジェネレータ110の学習処理の流れについて説明する。
【0030】
図4に示すように、走行経路履歴作成部112は、車両を実際に走行させて得た実測GNSSデータから、当該車両の走行経路履歴を作成する(ステップS01)。例えば、走行経路履歴作成部112は、マップマッチング処理を行い、実測GNSSデータの時刻歴から、車両の走行位置(リンク上の位置)の時系列を示す走行経路履歴を作成する。
【0031】
次に、ジェネレータ110は、実測GNSSデータと、実測GNSSデータから特定される車両の走行位置周辺の3D地図と基づいて、疑似データ生成モデルM1を学習する(ステップS02)。疑似データ生成モデルM1は、例えばリカレントニューラルネットワークを利用したモデルであって、走行経路及び走行経路周辺の3D地図データを入力すると、この走行経路を走行した場合に得られるGNSSデータを推測した疑似GNSSデータを出力する。ジェネレータ110は、車両の走行位置周辺の3D地図データを学習に用いることにより、車両周辺の地形、建築物等の影響に応じてどのような実測GNSSデータが取得できるかを疑似データ生成モデルM1に学習させる。学習した疑似データ生成モデルM1は、記憶媒体20に記憶される。
【0032】
また、ジェネレータ110は、走行経路履歴作成部112が作成した走行経路履歴を利用して、車両の走行経路に応じた実測GNSSデータを疑似データ生成モデルM1に学習させてもよい。
【0033】
更に、ジェネレータ110は、実測GNSSデータを取得した車両の車種に基づいて、疑似データ生成モデルM1を更に学習させてもよい。車両の車種によってGNSS受信機の取り付け位置が異なる場合がある。そうすると、衛星信号の受信状態が変化し、測位誤差の傾向も変わる可能性がある。このため、ジェネレータ110は、疑似データ生成モデルM1に実測GNSSデータに加えて、当該実測GNSSデータを取得した車両の車種を入力して、疑似データ生成モデルM1を学習する。なお、実測GNSSデータを取得した車両の車種は、例えばデータ生成装置1のユーザにより入力される。
【0034】
次に、例えば所定データ数の学習が完了すると、ジェネレータ110は、学習された疑似データ生成モデルM1に模擬走行経路データと、模擬走行経路周辺の3D地図とを入力して、模擬走行経路を走行した場合に得られると推測される疑似GNSSデータを出力(生成)させる(ステップS03)。
【0035】
このとき、ジェネレータ110は、疑似データ生成モデルM1に乱数を更に入力してもよい。これにより、ジェネレータ110は、同一の模擬走行経路データを入力した場合であっても、異なる疑似GNSSデータを生成することができる。
【0036】
また、ジェネレータ110は、車両の車種を入力して疑似データ生成モデルM1を学習した場合、任意の車種を疑似データ生成モデルM1に入力して、予め指定された車種に応じた疑似GNSSデータを生成してもよい。
【0037】
ジェネレータ110は、生成した疑似GNSSデータをディスクリミネータに出力し、ディスクリミネータ111による真偽判定結果を受領する。なお、このディスクリミネータ111は、識別モデルM2を学習済みであるとする。そうすると、ジェネレータ110は、ディスクリミネータ111から出力された判定結果に基づいて、疑似データ生成モデルM1を更に学習する(ステップS04)。
【0038】
ジェネレータ110は、生成した疑似GNSSデータがディスクリミネータ111により「真(実測GNSSデータ)」と判定されるように、ステップS03~S04を繰り返し実行して、疑似データ生成モデルM1を学習する。
【0039】
図5は、本開示の一実施形態に係る学習部の処理の一例を示す第2のフローチャートである。
以下、図5を参照しながら、学習部11のディスクリミネータ111の学習処理の流れについて説明する。
【0040】
図5に示すように、ディスクリミネータ111は、真偽ラベル付きのGNSSデータと、GNSSデータから特定される車両の走行位置周辺の3D地図と基づいて、識別モデルM2を学習する(ステップS11)。具体的には、ディスクリミネータ111は、識別モデルM2に、実測データ(真)であることを示すラベルを付した実測GNSSデータと、疑似データ(偽)であることを示すラベルを付した疑似GNSSデータと、3D地図データとを入力して、GNSSデータの真偽の識別を学習させる。学習した識別モデルM2は、記憶媒体20に記憶される。
【0041】
次に、ディスクリミネータ111は、例えば所定データ数の学習が完了すると、真偽ラベルを外したGNSSデータと、3D地図データとを識別モデルM2に入力して、入力されたGNSSデータが実測GNSSデータ(真)であるか、疑似GNSSデータ(偽)であるかを判定する(ステップS12)。このとき、ディスクリミネータ111は、識別モデルM2に実測GNSSデータ及び疑似GNSSデータの何れか一方をランダムで入力する。
【0042】
次に、ディスクリミネータ111は、自身の判定結果に基づいて識別モデルM2を更に学習する(ステップS13)。例えば、ディスクリミネータ111は、識別モデルM2に入力するGNSSデータが実測GNSSデータであるか、疑似GNSSデータであるかを記憶しておき、識別モデルM2の判定結果と照らし合わせて、判定の成否に応じて識別モデルM2を学習する。
【0043】
ディスクリミネータ111は、入力されたGNSSデータの真偽を正しく判定できるように、ステップS12~S13を繰り返し実行して、識別モデルM2を学習する。
【0044】
データ生成装置1は、学習部11のジェネレータ110及びディスクリミネータ111に上述の学習を交互に繰り返し実行させることにより、疑似データ生成モデルM1を用いて実測GNSSデータに精巧に似せた疑似GSNNデータを生成することができる。
【0045】
(疑似データ生成部の処理フロー)
図6は、本開示の一実施形態に係る疑似データ生成部の処理の一例を示す第1のフローチャートである。
以下、図6を参照しながら、疑似データ生成部12の処理の流れについて説明する。
【0046】
図6に示すように、疑似データ生成部12は、まず、データ生成装置のユーザによる模擬走行経路データの入力を受け付ける(ステップS21)。
【0047】
次に、疑似データ生成部12は、学習部11により学習された疑似データ生成モデルM1に、入力された模擬走行経路データと、模擬走行経路周辺の3D地図データとを入力して、疑似GNSSデータを出力(生成)させる(ステップS22)。
【0048】
このとき、疑似データ生成部12は、疑似データ生成モデルM1に乱数を更に入力してもよい。これにより、疑似データ生成部12は、同一の模擬走行経路データを入力した場合であっても、異なる疑似GNSSデータを生成することができる。
【0049】
また、疑似データ生成部12は、ステップS21において、模擬走行経路データとともに、車種の指定を更に受け付けてもよい。これにより、例えば、ある走行経路について、特定の車種(例えば、「大型」)の実測GNSSデータが不足している場合は、この車種の疑似GNSSデータを生成して補うことができる。
【0050】
(データ生成装置のハードウェア構成)
図7は、本開示の一実施形態に係るデータ生成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
以下、図7を参照しながら、本実施形態に係るデータ生成装置1のハードウェア構成について説明する。
【0051】
コンピュータ900は、プロセッサ901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
【0052】
上述のデータ生成装置1は、一つ又は複数のコンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。プロセッサ901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置902に確保する。プロセッサ901の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0053】
プログラムは、コンピュータ900に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ900は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ901によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0054】
補助記憶装置903の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904または通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部記憶装置910であってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0055】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0056】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係るデータ生成装置1は、実測GNSSデータ及び3D地図データに基づいて学習した疑似データ生成モデルM1に、模擬走行経路データ及び3D地図データを入力することにより、疑似GNSSデータを生成する。このようにすることで、データ生成装置1は、実際に車両を走行させたときに取得した実測GNSSデータと、車両の走行位置周辺の地形、建築物等の環境との関連を学習し、実測GNSSデータに精巧に似せた疑似GNSSデータを生成することができる。これにより、車両に多数の走行経路を走行させることなく、検証用のGNSSデータを容易に準備することができる。
【0057】
また、データ生成装置1の学習部11は、疑似データ生成モデルM1を学習するジェネレータ110と、入力されたGNSSデータの真偽を判定するディスクリミネータ111とを有する。ジェネレータ110は、ディスクリミネータ111の判定結果に基づいて、疑似データ生成モデルM1を更に学習する。このようにすることで、データ生成装置1は、ディスクリミネータ111に真のデータ(実測GNSSデータ)であると判定されるような精巧な疑似GNSSデータを生成できるように、疑似データ生成モデルM1を更に学習することができる。
【0058】
また、データ生成装置1の学習部11は、実測GNSSデータであるか疑似GNSSデータであるかを示すラベルを付したGNSSデータと、3D地図データとに基づいて学習された識別モデルM2を用いて、入力されたGNSSデータの真偽を判定する。このようにすることで、データ生成装置1は、真偽の判定精度(実測GNSSデータと疑似GNSSデータとを識別する精度)を向上させることができる。また、データ生成装置1は、判定精度が高いディスクリミネータ111に真のデータであると判定されるような、より精巧な疑似GNSSデータを生成するように疑似データ生成モデルM1を更に学習させることができる。
【0059】
また、データ生成装置1の学習部11は、実測GNSSデータに基づいて車両の走行経路履歴を作成する走行経路履歴作成部を更に有していてもよい。これにより、データ生成装置1は、走行経路と、この走行経路に沿って走行したときに得られるGNSSデータとの関連性をより精度よく学習することができる。
【0060】
また、データ生成装置1の学習部11は、実測GNSSデータを取得した車両の車種に基づいて、疑似データ生成モデルM1を更に学習してもよい。これにより、データ生成装置1は、車種に応じた疑似GNSSデータを生成することができる。これにより、特定の車種の実測GNSSデータが不足している場合は、当該車種の疑似GNSSデータを生成して、検証等に利用することができる。
【0061】
<付記>
上述の実施形態に記載のデータ生成装置、データ生成方法、データ生成装置の製造方法、及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0062】
本開示の第1の態様によれば、データ生成装置(1)は、車両を走行させて取得した実測GNSSデータと、前記実測GNSSデータが示す前記車両の位置を含む3D地図データとに基づいて疑似データ生成モデルを学習する学習部(11)と、前記車両が仮想的に移動する仮想位置の時系列を表す模擬走行経路データと、前記仮想位置を含む3D地図データとを前記疑似データ生成モデルに入力して、前記仮想位置のそれぞれにおいて得られるGNSSデータを推測した疑似GNSSデータを生成する疑似データ生成部(12)と、を備える。
【0063】
このようにすることで、データ生成装置は、実際に車両を走行させたときに取得した実測GNSSデータと、車両の走行位置周辺の地形、建築物等の環境との関連を学習し、実測GNSSデータに精巧に似せた疑似GNSSデータを生成することができる。これにより、車両に多数の走行経路を走行させることなく、検証用のGNSSデータを容易に準備することができる。
【0064】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係るデータ生成装置(1)において、前記学習部(11)は、前記実測GNSSデータと、前記3D地図データとに基づいて前記疑似データ生成モデルを学習し、学習した前記疑似データ生成モデルに前記模擬走行経路データと前記3D地図データとを入力して前記疑似GNSSデータを出力するジェネレータ(110)と、入力されたGNSSデータの真偽を判定するディスクリミネータ(111)と、を有する。前記ジェネレータ(110)は、前記ディスクリミネータ(111)の判定結果に基づいて、前記疑似データ生成モデルを更に学習する。
【0065】
このようにすることで、データ生成装置は、ディスクリミネータに真のデータ(実測GNSSデータ)であると判定されるような精巧な疑似GNSSデータを生成できるように、疑似データ生成モデルを更に学習することができる。
【0066】
本開示の第3の態様によれば、第2の態様に係るデータ生成装置(1)において、前記ディスクリミネータ(111)は、実測GNSSデータであるか疑似GNSSデータであるかを示すラベルを付したGNSSデータと、前記3D地図データとに基づいて学習された識別モデルを用いて、入力されたGNSSデータの真偽を判定する。
【0067】
このようにすることで、データ生成装置は、真偽の判定精度(実測GNSSデータと疑似GNSSデータとを識別する精度)を向上させることができる。また、データ生成装置1は、判定精度が高いディスクリミネータに真のデータであると判定されるような、より精巧な疑似GNSSデータを生成するように疑似データ生成モデルを更に学習させることができる。
【0068】
本開示の第4の態様によれば、第1から第3の何れか一の態様に係るデータ生成装置(1)において、前記学習部(11)は、前記実測GNSSデータに基づいて、当該車両の走行位置の時系列を表す走行経路履歴を作成する走行経路履歴作成部(112)を更に有し、前記走行経路履歴に基づいて前記疑似データ生成モデルを更に学習する。
【0069】
このようにすることで、データ生成装置は、走行経路と、この走行経路に沿って走行したときに得られるGNSSデータとの関連性をより精度よく学習することができる。
【0070】
本開示の第5の態様によれば、第1から第4の何れか一の態様に係るデータ生成装置(1)において、前記学習部(11)は、前記実測GNSSデータを取得した前記車両の車種に基づいて前記疑似データ生成モデルを更に学習し、前記疑似データ生成部(12)は、指定された車種に応じた前記疑似GNSSデータを生成する。
【0071】
このようにすることで、特定の車種の実測GNSSデータが不足している場合は、当該車種の疑似GNSSデータを生成して、検証等に利用することができる。
【0072】
本開示の第6の態様によれば、データ生成方法は、車両を走行させて取得した実測GNSSデータと、前記実測GNSSデータが示す前記車両の位置を含む3D地図データとに基づいて疑似データ生成モデルを学習するステップと、前記車両が仮想的に移動する仮想位置の時系列を表す模擬走行経路データと、前記仮想位置を含む3D地図データとを前記疑似データ生成モデルに入力して、前記仮想位置のそれぞれにおいて得られるGNSSデータを推測した疑似GNSSデータを生成するステップと、を有する。
【0073】
本開示の第7の態様によれば、データ生成装置(1)の製造方法は、車両を走行させて取得した実測GNSSデータと、前記実測GNSSデータが示す前記車両の位置を含む3D地図データとに基づいて疑似データ生成モデルを学習するステップと、学習した前記疑似データ生成モデルに、前記車両が仮想的に移動する仮想位置の時系列を表す模擬走行経路データと前記3D地図データとを入力して前記疑似GNSSデータを出力するステップと、入力されたGNSSデータの真偽を判定するステップと、前記真偽の判定結果に基づいて、前記疑似データ生成モデルを更に学習するステップと、を有する。
【0074】
本開示の第8の態様によれば、プログラムは、車両を走行させて取得した実測GNSSデータと、前記実測GNSSデータが示す前記車両の位置を含む3D地図データとに基づいて疑似データ生成モデルを学習するステップと、前記車両が仮想的に移動する仮想位置の時系列を表す模擬走行経路データと、前記仮想位置を含む3D地図データとを前記疑似データ生成モデルに入力して、前記仮想位置のそれぞれにおいて得られるGNSSデータを推測した疑似GNSSデータを生成するステップと、をデータ生成装置(1)のコンピュータ(900)に実行させる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
上述のデータ生成装置、データ生成方法、疑似データ生成モデルの学習方法、及びプログラムによれば、実測したGNSSデータに精巧に似せた疑似GNSSデータを生成することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 データ生成装置
10 CPU
11 学習部
110 ジェネレータ
111 ディスクリミネータ
112 走行経路履歴作成部
12 疑似データ生成部
20 記憶媒体
900 コンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7