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7381723量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム
<図1>
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図1
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図2
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図3
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図4
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図5
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図6
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図7
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図8
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図9
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図10
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図11
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図12
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図13
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図14
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図15
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図16
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図17
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図18
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図19
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図20
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図21
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図22
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図23
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図24
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図25
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図26
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図27
  • -量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム 図28
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/40 20220101AFI20231108BHJP
【FI】
G06N10/40
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2022513857
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 CN2021117519
(87)【国際公開番号】W WO2022205781
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】202110357168.8
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514187420
【氏名又は名称】テンセント・テクノロジー・(シェンジェン)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シエ,レイ
(72)【発明者】
【氏名】ジォン,イツォン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ションユィ
(72)【発明者】
【氏名】ジャイ,ジィドォン
【審査官】山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0174879(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110942152(CN,A)
【文献】Jinglei Cheng et al.,AccQOC: Accelerating Quantum Optimal Control Based Pulse Generation,arXiv [online],2020年05月01日,https://arxiv.org/abs/2003.00376,[2023年6月9日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00-10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ装置が実行する量子操作実行方法であって、
量子回路に対応するn個の未スケジューリングの量子操作を取得するステップであって、nは1以上であり、かつnは整数である、ステップ;
量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造及びn個の前記未スケジューリングの量子操作に基づいて操作スケジューリングを行い、ターゲット操作グループを取得するステップであって、前記ターゲット操作グループは各スケジューリングされる量子操作を含む、ステップ;及び
前記量子コンピューティングデバイス上で前記ターゲット操作グループに含まれる各スケジューリングされる量子操作を並列実行するステップを含み、
前記スケジューリングされる量子操作の制御波形は所定ターゲットに基づいて生成され、前記所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、前記領域間のクロストークは異なる連結領域に分属する量子ビットの間のクロストークであり、前記連結領域は、量子操作が実行されるかどうかに応じて、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットに対して分割を行うことで得られる、量子操作実行方法。
【請求項2】
請求項1に記載の量子操作実行方法であって、
前記の、前記量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造及びn個の前記未スケジューリングの量子操作に基づいて操作スケジューリングを行い、ターゲット操作グループを取得するステップは、
n個の前記未スケジューリングの量子操作に基づいてスケジューリング可能な集合を取得するステップであって、前記スケジューリング可能な集合にはn個の前記未スケジューリングの量子操作のうちのスケジューリング可能な量子操作が含まれる、ステップ;
前記スケジューリング可能な集合から候補操作グループを抽出するステップ;
量子ビット分割案を取得するステップであって、前記量子ビット分割案は前記トポロジー構造に基づいて所定分割方式で得られ、前記量子ビット分割案は、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットを2つの量子ビット集合に分け、前記量子コンピューティングデバイス上で少なくとも2つの前記連結領域を形成するように指示するために用いられる、ステップ;及び
前記候補操作グループ及び前記量子ビット分割案に基づいて前記ターゲット操作グループを取得するステップを含む、量子操作実行方法。
【請求項3】
請求項2に記載の量子操作実行方法であって、
前記の、前記スケジューリング可能な集合から候補操作グループを抽出するステップは、
前記スケジューリング可能な集合に2ビット量子操作が含まれることに応じて、前記スケジューリング可能な集合内の各2ビット量子操作を取得し、ダブルビット操作集合を取得するステップ;
前記ダブルビット操作集合に3つ又は3つ以上の操作が含まれることに応じて、前記ダブルビット操作集合内の、距離が最も小さい2つの量子操作に基づいて、2つの操作グループを構築するステップ;
前記ダブルビット操作集合内の他の量子操作と、前記2つの操作グループとの間の距離に基づいて、i回の操作追加を実行するステップであって、iは1以上であり、かつiは整数であり、前記他の量子操作は、前記ダブルビット操作集合内の前記2つの量子操作以外の量子操作である、ステップ;及び
前記i回の操作追加の結果に基づいて、前記候補操作グループを取得するステップを含む、量子操作実行方法。
【請求項4】
請求項3に記載の量子操作実行方法であって、
前記の、前記ダブルビット操作集合内の他の量子操作と、前記2つの操作グループとの間の距離に基づいて、i回の操作追加を実行するステップは、
j番目の操作追加プロセスにおいて、前記ダブルビット操作集合内の前記他の量子操作と、前記2つの操作グループのそれぞれとの間の距離を取得するステップであって、1≦j≦iであり、かつjは整数である、ステップ;
最大距離に対応する所定量子操作を、前記最大距離に対応する所定操作グループに追加するステップであって、前記最大距離は前記他の量子操作と、前記2つの操作グループのそれぞれとの間の距離のうちの最大値である、ステップ;
前記トポロジー構造及び前記所定操作グループに基づいて、第一所定分割方式でターゲット奇頂点ペアリング案を取得するステップであって、前記ターゲット奇頂点ペアリング案はターゲット双対グラフ中の各奇頂点対の間の経路を含み、前記ターゲット奇頂点ペアリング案は前記所定操作グループの前記量子ビット分割案を指示するために用いられ、前記ターゲット双対グラフはトポロジーグラフの双対グラフであり、前記トポロジーグラフは前記トポロジー構造の平面グラフである、ステップ;
前記ターゲット奇頂点ペアリング案がクロストーク抑制要求を満足することに応じて、前記所定量子操作を前記ダブルビット操作集合から削除するステップ;及び
前記所定量子操作を削除した後の前記他の量子操作の数が0でないことに応じて、次回の操作追加プロセスを実行するステップを含む、量子操作実行方法。
【請求項5】
請求項4に記載の量子操作実行方法であって、
前記の、前記トポロジー構造及び前記所定操作グループに基づいて、第一所定分割方式でターゲット奇頂点ペアリング案を取得するステップは、
前記ターゲット双対グラフにおいて前記所定操作グループ内の各量子操作に対応する辺を削除するステップ;
前記ターゲット双対グラフ中の奇頂点を頂点とする完全グラフを取得するステップ;
前記完全グラフにおいて各前記奇頂点対を決定するステップ;
各前記奇頂点対の少なくとも1つの奇頂点ペアリング案を取得するステップであって、前記奇頂点ペアリング案には、各前記奇頂点対の、前記ターゲット双対グラフにそれぞれ所在する1つの経路が含まれる、ステップ;
少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案に、前記所定操作グループ内の各量子操作に対応する、前記ターゲット双対グラフ中の辺を追加するステップ;
少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案から、前記ダブルビット操作に対応する量子ビットが同一の連結領域に属しない奇頂点ペアリング案を削除し、削除後の各前記奇頂点ペアリング案を取得するステップ;
削除後の各前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの最大領域量子ビット数、及び、削除後の各前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの抑制不可のクロストーク総数を取得するステップであって、前記抑制不可のクロストーク総数は前記奇頂点ペアリング案における経路に対応する、前記トポロジーグラフ中の辺の数により表され、前記最大領域量子ビット数は前記トポロジーグラフにおいてカット集合を除去した後の最大連結領域内の頂点の数により表され、前記カット集合は前記トポロジーグラフ中の、前記奇頂点ペアリング案における経路に対応する、前記トポロジーグラフ中の辺を除去した後の残りの辺からなる集合である、ステップ;
削除後の各前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの最大領域量子ビット数、及び、削除後の各前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの抑制不可のクロストーク総数に基づいて、削除後の各前記奇頂点ペアリング案のクロストーク抑制指数を取得するステップ;及び
最小の前記クロストーク抑制指数に対応する前記奇頂点ペアリング案を前記ターゲット奇頂点ペアリング案として取得するステップを含む、量子操作実行方法。
【請求項6】
請求項2に記載の量子操作実行方法であって、
前記の、前記スケジューリング可能な集合から候補操作グループを抽出するステップは、
前記スケジューリング可能な集合内の各量子操作がシングルビット量子操作であることに応じて、前記スケジューリング可能な集合を前記候補操作グループとして取得するステップを含み、
前記の、前記量子ビット分割案を取得するステップは、
前記トポロジー構造に基づいて、第二所定分割方式でターゲット奇頂点ペアリング案を取得するステップ;
トポロジーグラフにおいて前記ターゲット奇頂点ペアリング案に対応する辺を除去し、辺除去後の前記トポロジーグラフを取得するステップ;及び
辺除去後の前記トポロジーグラフに対して頂点2カラーリングを行い、前記量子ビット分割案を取得するステップを含む、量子操作実行方法。
【請求項7】
請求項6に記載の量子操作実行方法であって、
前記の、前記トポロジー構造に基づいて、第二所定分割方式でターゲット奇頂点ペアリング案を取得するステップは、
完全グラフを取得するステップであって、前記完全グラフ中の頂点はターゲット双対グラフ中の奇頂点であり、前記ターゲット双対グラフはトポロジーグラフの双対グラフであり、前記トポロジーグラフは前記量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造の平面グラフである、ステップ;
前記完全グラフにおいてペアリングの各奇頂点対を決定するステップ;
各前記奇頂点対の少なくとも1つの奇頂点ペアリング案を取得するステップであって、前記奇頂点ペアリング案には各前記奇頂点対の、前記ターゲット双対グラフにそれぞれ所在する1つの経路が含まれる、ステップ;
少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの最大領域量子ビット数、及び、少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの抑制不可のクロストーク総数を取得するステップであって、前記抑制不可のクロストーク総数は前記奇頂点ペアリング案における経路に対応する、前記トポロジーグラフ中の辺の数により表され、前記最大領域量子ビット数は前記トポロジーグラフにおいてカット集合を除去した後の最大連結領域内の頂点の数により表され、前記カット集合は前記トポロジーグラフ中の、前記奇頂点ペアリング案における経路に対応する、前記トポロジーグラフ中の辺を除去した後の残りの辺からなる集合である、ステップ;
少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの最大領域量子ビット数、及び、少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの抑制不可のクロストーク総数に基づいて、少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案のクロストーク抑制指数を取得するステップ;及び
最小の前記クロストーク抑制指数に対応する前記奇頂点ペアリング案を前記ターゲット奇頂点ペアリング案として得るステップを含む、量子操作実行方法。
【請求項8】
請求項5又は7に記載の量子操作実行方法であって、
前記クロストーク抑制指数はαNQ+NCであり、
ここで、NQは前記最大領域量子ビット数を表し、NCは前記抑制不可のクロストーク総数を表し、αはNQ及びNCの重要度を表す、量子操作実行方法。
【請求項9】
請求項2に記載の量子操作実行方法であって、
前記の、前記候補操作グループ及び前記量子ビット分割案に基づいて、前記ターゲット操作グループを取得するステップは、
前記量子ビット分割案に基づいて、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットを2つの量子ビット集合に分けるステップ;
前記候補操作グループを、前記2つの量子ビット集合にそれぞれ対応するサブ操作グループに分けるステップであって、前記サブ操作グループ内の量子操作に対応する量子ビットは前記サブ操作グループに対応する前記量子ビット集合内にある、ステップ;
ターゲットサブ操作グループ内の量子操作と充填操作を前記ターゲット操作グループとして合併するステップであって、前記ターゲットサブ操作グループは、前記2つの量子ビット集合にそれぞれ対応する前記サブ操作グループのうちの、数が最も多い操作を含むサブ操作グループであり、前記充填操作は充填量子ビットに対応する恒等量子操作であり、前記充填量子ビットは、前記ターゲットサブ操作グループに対応する量子ビット集合内の、前記ターゲットサブ操作グループに対応する量子ビット以外の他の量子ビットである、ステップを含む、量子操作実行方法。
【請求項10】
請求項1に記載の量子操作実行方法であって、
前記所定ターゲットは、量子操作の制御波形作用下の平均操作忠実度及び前記領域間のクロストークに基づいて取得されるシングルスカラーターゲットである、量子操作実行方法。
【請求項11】
請求項10に記載の量子操作実行方法であって、さらに、
前記シングルスカラーターゲットに基づいてターゲット量子操作の制御波形関数の関数パラメータに対してR回の反復更新を行うステップであって、R≧2であり、かつRは整数であり、前記ターゲット量子操作は各スケジューリング可能な量子操作及び恒等量子操作のうちの任意の1つである、ステップ;及び
反復更新後の前記関数パラメータに基づいて前記ターゲット量子操作の制御波形を生成するステップを含む、量子操作実行方法。
【請求項12】
請求項11に記載の量子操作実行方法であって、
前記の、前記シングルスカラーターゲットに基づいてターゲット量子操作の制御波形関数の関数パラメータに対してR回の反復更新を行うステップは、
第r回の反復プロセスにおける第一システムの時間発展を取得するステップであって、前記第一システムの時間発展はr番目の制御波形影響下の閉量子システムの時間発展であり、2≦r≦Rであり、かつrは整数であり、前記r番目の制御波形は第r-1回の反復更新後の前記関数パラメータに対応する制御波形である、ステップ;
前記第一システムの時間発展に基づいて第二システムの時間発展を取得するステップであって、前記第二システムの時間発展は第r回の反復プロセスにおける前記領域間のクロストーク影響下の閉量子システムの時間発展である、ステップ;
前記第二システムの時間発展及び前記ターゲット量子操作の前記r番目の制御波形作用下の平均操作忠実度に基づいて、第r回の反復プロセスにおける前記シングルスカラーターゲットを取得するステップ;及び
第r回の反復プロセスにおける前記シングルスカラーターゲットに基づいて第r-1回の反復更新後の前記関数パラメータに対して更新を行い、第r回の反復更新後の前記関数パラメータを取得するステップを含む、量子操作実行方法。
【請求項13】
コンピュータ装置が実行する、量子操作の制御波形の生成方法であって、
スケジューリングされる量子操作を取得するステップ;
所定ターゲットに基づいて、前記スケジューリングされる量子操作の制御波形関数の関数パラメータを取得するステップであって、前記所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、前記領域間のクロストークは、異なる連結領域に分属する量子ビットの間のクロストークであり、前記連結領域は、量子コンピューティングデバイスにおいて、含まれる量子ビットが量子操作を行うかどうかに応じて分割されることで得られる、ステップ;及び
前記関数パラメータに基づいて、前記スケジューリングされる量子操作の制御波形を生成するステップを含む、量子操作の制御波形の生成方法。
【請求項14】
量子操作実行装置であって、
量子回路に対応するn個の未スケジューリングの量子操作を取得するための量子操作取得モジュールであって、nは1以上であり、かつnは整数である、量子操作取得モジュール;
量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造及びn個の前記未スケジューリングの量子操作に基づいて操作スケジューリングを行い、ターゲット操作グループを取得するための量子操作スケジューリングモジュールであって、前記ターゲット操作グループは各スケジューリングされる量子操作を含む、量子操作スケジューリングモジュール;及び
前記量子コンピューティングデバイス上で前記ターゲット操作グループに含まれる各スケジューリングされる量子操作を並列実行するための量子操作実行モジュールを含み、
前記スケジューリングされる量子操作の制御波形は所定ターゲットに基づいて生成され、前記所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、前記領域間のクロストークは、異なる連結領域に分属する量子ビットの間のクロストークであり、前記連結領域は、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットに対して、量子操作が実行されるかどうかに応じて分割を行うことで得られる、量子操作実行装置。
【請求項15】
請求項14に記載の量子操作実行装置であって、
前記量子操作スケジューリングモジュールは、
n個の前記未スケジューリングの量子操作に基づいてスケジューリング可能な集合を得るためのスケジューリング可能な集合取得サブモジュールであって、前記スケジューリング可能な集合にはn個の前記未スケジューリングの量子操作のうちのスケジューリング可能な量子操作が含まれる、スケジューリング可能な集合取得サブモジュール;
前記スケジューリング可能な集合から候補操作グループを抽出するための候補操作グループ抽出サブモジュール;
量子ビット分割案を得るための分割案取得サブモジュールであって、前記量子ビット分割案は前記トポロジー構造に基づいて、所定分割方式で得られ、前記量子ビット分割案は、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットを2つの量子ビット集合に分け、前記量子コンピューティングデバイス上で少なくとも2つの前記連結領域を形成するように指示するために用いられる、分割案取得サブモジュール;及び
前記候補操作グループ及び前記量子ビット分割案に基づいて前記ターゲット操作グループを得るためのターゲット操作グループ取得サブモジュールを含む、量子操作実行装置。
【請求項16】
請求項15に記載の量子操作実行装置であって、
前記候補操作グループ抽出サブモジュールは、
前記スケジューリング可能な集合に2ビット量子操作が含まれることに応じて、前記スケジューリング可能な集合内の各2ビット量子操作を取得し、ダブルビット操作集合を得るためのダブルビット操作集合取得ユニット;
前記ダブルビット操作集合に3つ又は3つの以上操作が含まれることに応じて、前記ダブルビット操作集合内の、距離が最も小さい2つの量子操作に基づいて2つの操作グループを構築するための操作グループ構築ユニット;
前記ダブルビット操作集合内の他の量子操作と、前記2つの操作グループとの間の距離に基づいて、i回の操作追加を行うための操作追加ユニットであって、iは1以上であり、かつiは整数であり、前記他の量子操作は前記ダブルビット操作集合内の前記2つの量子操作以外の量子操作である、操作追加ユニット;及び
前記i回の操作追加の結果に基づいて前記候補操作グループを得るための候補操作グループ取得ユニットを含む、量子操作実行装置。
【請求項17】
請求項16に記載の量子操作実行装置であって、
前記操作追加ユニットは、
j番目の操作追加プロセスにおいて、前記ダブルビット操作集合内の前記他の量子操作と、前記2つの操作グループのそれぞれとの間の距離を取得し、1≦j≦iであり、かつjは整数であり;
最大距離に対応する所定量子操作を、前記最大距離に対応する所定操作グループに追加し、前記最大距離は、前記他の量子操作と、前記2つの操作グループのそれぞれとの間の距離のうちの最大値であり;
前記トポロジー構造及び前記所定操作グループに基づいて、第一所定分割方式でターゲット奇頂点ペアリング案を取得し、前記ターゲット奇頂点ペアリング案はターゲット双対グラフ中の各奇頂点対の間の経路を含み、前記ターゲット奇頂点ペアリング案は記所定操作グループの前記量子ビット分割案を指示するために用いられ、前記ターゲット双対グラフはトポロジーグラフの双対グラフであり、前記トポロジーグラフは前記トポロジー構造の平面グラフであり;
前記ターゲット奇頂点ペアリング案がクロストーク抑制要求を満足することに応じて、前記所定量子操作を前記ダブルビット操作集合から削除し;及び
前記所定量子操作の削除後の前記他の量子操作の数が0でないことに応じて、次回の操作追加プロセスを行うために用いられる、量子操作実行装置。
【請求項18】
請求項17に記載の量子操作実行装置であって、
前記トポロジー構造及び前記所定操作グループに基づいて、第一所定分割方式でターゲット奇頂点ペアリング案を得るときに、前記操作追加ユニットは、
前記ターゲット双対グラフにおいて前記所定操作グループ内の各量子操作に対応する辺を削除し;
前記ターゲット双対グラフ中の奇頂点を頂点とする完全グラフを取得し;
前記完全グラフにおいて各前記奇頂点対を決定し;
各前記奇頂点対の少なくとも1つの奇頂点ペアリング案を取得し、前記奇頂点ペアリング案には各前記奇頂点対の、前記ターゲット双対グラフにそれぞれ所在する1つの経路が含まれ;
少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案に、前記所定操作グループ内の各量子操作に対応する、前記ターゲット双対グラフ中の辺を追加し;
少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案から、前記ダブルビット操作に対応する量子ビットが同一の連結領域に属しない奇頂点ペアリング案を削除し、削除後の各前記奇頂点ペアリング案を取得し;
削除後の各前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの最大領域量子ビット数、及び、削除後の各前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの抑制不可のクロストーク総数を取得し、前記抑制不可のクロストーク総数は前記奇頂点ペアリング案における経路に対応する、前記トポロジーグラフ中の辺の数により表され、前記最大領域量子ビット数は、前記トポロジーグラフにおいてカット集合を除去した後の最大連結領域内の頂点の数により表され、前記カット集合は、前記トポロジーグラフ中の、前記奇頂点ペアリング案における経路に対応する、前記トポロジーグラフ中の辺を除去した後の残りの辺からなる集合であり;
削除後の各前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの最大領域量子ビット数、及び、削除後の各前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの抑制不可のクロストーク総数に基づいて、削除後の各前記奇頂点ペアリング案のクロストーク抑制指数を取得し;及び
最小の前記クロストーク抑制指数に対応する前記奇頂点ペアリング案を前記ターゲット奇頂点ペアリング案として得るために用いられる、量子操作実行装置。
【請求項19】
請求項15に記載の量子操作実行装置であって、
前記候補操作グループ抽出サブモジュールは、前記スケジューリング可能な集合内の各量子操作がシングルビット量子操作であることに応じて、前記スケジューリング可能な集合を前記候補操作グループとして得るために用いられ、
前記分割案取得サブモジュールは、
前記トポロジー構造に基づいて、第二所定分割方式でターゲット奇頂点ペアリング案を得るためのペアリング案取得ユニット;
トポロジーグラフにおいて前記ターゲット奇頂点ペアリング案に対応する辺を除去し、辺除去後の前記トポロジーグラフを得るための辺除去ユニット;及び
辺除去後の前記トポロジーグラフに対して頂点2カラーリングを行い、量子ビット分割案を得るためのカラーリングユニットを含む、量子操作実行装置。
【請求項20】
請求項19に記載の量子操作実行装置であって、
前記ペアリング案取得ユニットは、
完全グラフを取得し、前記完全グラフ中の頂点はターゲット双対グラフ中の奇頂点であり、前記ターゲット双対グラフはトポロジーグラフの双対グラフであり、前記トポロジーグラフは前記量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造の平面グラフであり;
前記完全グラフにおいてペアリングの各奇頂点対を決定し;
各前記奇頂点対の少なくとも1つの奇頂点ペアリング案を取得し、前記奇頂点ペアリング案には各前記奇頂点対の、前記ターゲット双対グラフにそれぞれ所在する1つの経路が含まれ;
少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの最大領域量子ビット数、及び、少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの抑制不可のクロストーク総数を取得し、前記抑制不可のクロストーク総数は、前記奇頂点ペアリング案における経路に対応する、前記トポロジーグラフ中の辺の数により表され、前記最大領域量子ビット数は、前記トポロジーグラフにおいてカット集合を除去した後の最大連結領域内の頂点の数により表され、前記カット集合は前記トポロジーグラフ中の、前記奇頂点ペアリング案における経路に対応する、前記トポロジーグラフ中の辺を除去した後の残りの辺からなる集合であり;
少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの最大領域量子ビット数、及び、少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案のそれぞれの抑制不可のクロストーク総数に基づいて、少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案のクロストーク抑制指数を取得し;及び
最小の前記クロストーク抑制指数に対する前記奇頂点ペアリング案をターゲット奇頂点ペアリング案として取得するために用いられる、量子操作実行装置。
【請求項21】
請求項18又は20に記載の量子操作実行装置であって、
前記クロストーク抑制指数はαNQ+NCであり、
ここで、NQは前記最大領域量子ビット数を表し、NCは前記抑制不可のクロストーク総数を表し、αはNQ及びNCの重要度を表す、量子操作実行装置。
【請求項22】
請求項15に記載の量子操作実行装置であって、
前記ターゲット操作グループ取得サブモジュールは、
前記量子ビット分割案に基づいて、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットを2つの量子ビット集合に分け;
前記候補操作グループを、前記2つの量子ビット集合にそれぞれ対応するサブ操作グループに分け、前記サブ操作グループ内の量子操作に対応する量子ビットは、前記サブ操作グループに対応する前記量子ビット集合内にあり;及び
ターゲットサブ操作グループ内の量子操作と充填操作を前記ターゲット操作グループとして合併するために用いられ、
前記ターゲットサブ操作グループは、前記2つの量子ビット集合にそれぞれ対応する前記サブ操作グループのうちの、数が最も多い量子操作を含むサブ操作グループであり、前記充填操作は充填量子ビットに対応する恒等量子操作であり、前記充填量子ビットは、前記ターゲットサブ操作グループに対応する量子ビット集合内の、前記ターゲットサブ操作グループに対応する量子ビット以外の他の量子ビットである、量子操作実行装置。
【請求項23】
請求項14に記載の量子操作実行装置であって、
前記所定ターゲットは、量子操作の制御波形作用下の平均操作忠実度及び前記領域間のクロストークに基づいて取得されるシングルスカラーターゲットである、量子操作実行装置。
【請求項24】
請求項23に記載の量子操作実行装置であって、さらに、
前記シングルスカラーターゲットに基づいてターゲット量子操作の制御波形関数の関数パラメータに対してR回の反復更新を行うための反復更新モジュールであって、R≧2であり、かつRは整数であり、前記ターゲット量子操作は各スケジューリング可能な量子操作及び恒等量子操作のうちの任意の1つである、反復更新モジュール;及び
反復更新後の前記関数パラメータに基づいて前記ターゲット量子操作の制御波形を生成するための波形生成モジュールを含む、量子操作実行装置。
【請求項25】
請求項24に記載の量子操作実行装置であって、
前記反復更新モジュールは、
第r回の反復プロセスにおける第一システムの時間発展を取得し、前記第一システムの時間発展はr番目の制御波形影響下の閉量子システムの時間発展であり、2≦r≦Rであり、かつrは整数であり、前記r番目の制御波形は、第r-1回の反復更新後の前記関数パラメータに対応する制御波形であり;
前記第一システムの時間発展に基づいて第二システムの時間発展を取得し、前記第二システムの時間発展は、第r回の反復プロセスにおける前記領域間のクロストーク影響下の閉量子システムの時間発展であり;
前記第二システムの時間発展及び前記ターゲット量子操作の前記r番目の制御波形作用下の平均操作忠実度に基づいて、第r回の反復プロセスにおける前記シングルスカラーターゲットを取得し;及び
第r回の反復プロセスにおける前記シングルスカラーターゲットに基づいて第r-1回の反復更新後の前記関数パラメータに対して更新を行い、第r回の反復更新後の前記関数パラメータを得るために用いられる、量子操作実行装置。
【請求項26】
量子操作の制御波形の生成装置であって、
スケジューリングされる量子操作を取得するための量子操作取得モジュール;
所定ターゲットに基づいて、前記スケジューリングされる量子操作の制御波形関数の関数パラメータを取得するためのパラメータ取得モジュールであって、前記所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、前記領域間のクロストークは、異なる連結領域に分属する量子ビットの間のクロストークであり、前記連結領域は、量子操作が実行されるかどうかに応じて、量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットに対して分割を行うことで得られる、パラメータ取得モジュール;及び
前記関数パラメータに基づいて、前記スケジューリングされる量子操作の制御波形を生成するための波形生成モジュールを含む、量子操作の制御波形の生成装置。
【請求項27】
量子操作チップであって、
前記量子操作チップは、請求項1乃至12のうちの何れか1つに記載の量子操作実行方法を実現するために用いられ、又は、前記量子操作チップは、請求項13に記載の量子操作の制御波形の生成方法を実現するために用いられる、量子操作チップ。
【請求項28】
コンピュータ装置であって、
前記コンピュータ装置には、少なくとも1つの請求項27に記載の量子操作チップが含まれている、コンピュータ装置。
【請求項29】
コンピュータに、
請求項1乃至12のうちの何れか1つに記載の量子操作実行方法;又は
請求項13に記載の量子操作の制御波形の生成方法
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年04月01日に中国専利局に出願した、出願番号が202110357168.8、発明の名称が「量子操作実行方法、装置及び量子操作チップ」である中国特許出願に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。
【0002】
本出願の実施例は、量子技術の分野に関し、特に、量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
量子コンピューティングデバイスにおいて、量子ビット間の結合(coupling)が量子ビット間のクロストーク(crosstalk)を引き起こす可能性があり、量子ビット間のクロストークを如何に抑制するかが量子コンピューティングにおいて早急に解決すべき問題である。
【0004】
関連技術では、量子コンピューティングにおけるクロストーク抑制のために、通常、ハードウェアベースの方式及びソフトウェアベースの方式があり、その中で、ソフトウェアベースの方式は主に、クロスレゾナンス効果(cross-resonance effect)を利用して実現される2ビット操作のシナリオに追加の波形を導入して2ビット操作のディストーションを修正することにより、2ビット操作下のクロストークの影響を低減する。
【0005】
しかし、上述のソフトウェアベースのクロストーク抑制方式は、クロスレゾナンス効果を利用して実現される2ビット操作のシナリオにのみ適用することが可能であるため、クロストーク抑制の適用性が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の実施例は、少なくとも、ソフトウェアベースの方式で任意の種類の量子操作に対してのクロストーク抑制を実現し、クロストーク抑制の適用性を向上させることができる量子操作実行方法及び装置、量子操作の制御波形の生成方法及び装置、量子操作チップ、並びにコンピュータ装置及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の実施例の1つの側面によれば、コンピュータ装置により実行される量子操作実行方法が提供され、前記方法は、
量子回路に対応するn個の未スケジューリングの量子操作を取得するステップであって、nは1以上であり、かつnは整数である、ステップ;
量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造及びn個の前記未スケジューリングの量子操作に基づいて操作スケジューリングを行い、ターゲット操作グループ(組)を取得するステップであって、前記ターゲット操作グループは各スケジューリングされる量子操作を含む、ステップ;及び
前記量子コンピューティングデバイス上で前記ターゲット操作グループに含まれる各スケジューリングされる量子操作を並列実行するステップを含み、
前記スケジューリングされる量子操作の制御波形が所定(指定)ターゲットに基づいて生成され、前記所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、前記領域間のクロストークは、異なる連結領域に分属する量子ビットの間のクロストークであり、前記連結領域は、量子操作が実行されるかどうかに応じて、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットに対して分割を行うことで得られる。
【0008】
本出願の実施例の1つの側面によれば、コンピュータ装置により実行される量子操作の制御波形の生成方法が提供され、前記方法は、
スケジューリングされる量子操作を取得するステップ;
所定ターゲットに基づいて、前記スケジューリングされる量子操作の制御波形関数の関数パラメータを取得するステップであって、前記所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、前記領域間のクロストークは、異なる連結領域に分属する量子ビットの間のクロストークであり、前記連結領域は、量子コンピューティングデバイスにおいて、含まれる量子ビットが量子操作を行うかどうかに応じて分割を行うことで得られる、ステップ;及び
前記関数パラメータに基づいて前記スケジューリングされる量子操作の制御波形を生成するステップを含む。
【0009】
本出願の実施例の1つの側面によれば、量子操作実行装置が提供され、前記装置は、
量子回路に対応するn個の未スケジューリングの量子操作を取得するための量子操作取得モジュールであって、nは1以上であり、かつnは整数である、量子操作取得モジュール;
量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造及びn個の前記未スケジューリングの量子操作に基づいて操作スケジューリングを行い、ターゲット操作グループを取得するための量子操作スケジューリングモジュールであって、前記ターゲット操作グループは各スケジューリングされる量子操作を含む、量子操作スケジューリングモジュール;及び
前記量子コンピューティングデバイス上で前記ターゲット操作グループに含まれる各スケジューリングされる量子操作を並列実行するための量子操作実行モジュールを含み、
前記スケジューリングされる量子操作の制御波形は所定ターゲットに基づいて生成され、前記所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、前記領域間のクロストークは、異なる連結領域に分属する量子ビットの間のクロストークであり、前記連結領域は、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットに対して、量子操作が実行されるかどうかに応じて分割を行うことで得られる。
【0010】
本出願の実施例の1つの側面によれば、量子操作の制御波形の生成装置が提供され、前記装置は、
スケジューリングされる量子操作を取得するための量子操作取得モジュール;
所定ターゲットに基づいて、前記スケジューリングされる量子操作の制御波形関数の関数パラメータを取得するためのパラメータ取得モジュールであって、前記所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、前記領域間のクロストークは、異なる連結領域に分属する量子ビットの間のクロストークであり、前記連結領域は、量子操作が実行されるかどうかに応じて、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットに対して分割を行うことで得られる、パラメータ取得モジュール;及び
前記関数パラメータに基づいて前記スケジューリングされる量子操作の制御波形を生成するための波形生成モジュールを含む。
【0011】
本出願の実施例の1つの側面によれば、量子操作チップが提供され、前記量子操作チップは上述のような量子操作実行方法を実現するために用いられ、又は、前記量子操作チップは上述のような量子操作の制御波形の生成方法を実現するために用いられる。
【0012】
本出願の実施例の1つの側面によれば、コンピュータ装置が提供され、前記コンピュータ装置には少なくとも1つの上述の量子操作チップが含まれる。
【0013】
本出願の実施例の1つの側面によれば、コンピュータ可読記憶媒体が提供され、前記記憶媒体には少なくとも1つのコンピュータ命令が記憶されており、前記少なくとも1つのコンピュータ命令は、コンピュータ装置における処理器により、前記コンピュータ装置に、上述のような量子操作実行方法を実現させ、あるいは、前記量子操作チップは上述のような量子操作の制御波形の生成方法を実現するために用いられる。
【0014】
本出願の実施例の1つの側面によれば、コンピュータプログラムプロダクトが提供され、前記コンピュータプログラムプロダクトはコンピュータ命令を含み、前記コンピュータ命令は、コンピュータ装置における処理器により実行されることで、前記コンピュータ装置に、上述のような量子操作実行方法を実行させ、あるいは、前記量子操作チップは上述のような量子操作の制御波形の生成方法を実現するために用いられる。
【発明の効果】
【0015】
本出願の実施例によって提供される技術案は少なくとも以下のような効果を有する。
【0016】
量子回路及び量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造に基づいて量子操作のスケジューリングを行い、スケジューリングされる量子操作を取得し、そして、量子コンピューティングデバイス上でスケジューリングされる量子操作を実行し、そのうち、実行される量子操作の波形は、量子コンピューティングデバイス上で量子操作がディストーションを有しないように保証する場合、領域間のクロストークを最小化する制御波形である。この技術案は、量子回路のトポロジー構造に基づいて量子操作の実行順序及び制御波形に対して最適化を行うことでクロストーク抑制を実現することができ、また、量子操作の操作種類及び実現原理の制限を受けることがなく、任意の種類及び任意の実現原理の量子操作に適用することができるので、クロストーク抑制の適用性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本出願の実施例における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面について簡単に紹介する。明らかのように、以下に記載される図面は、本発明の幾つかの実施例を示すためのものに過ぎず、当業者は、創造性のある労働をせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
図1】本出願の1つの実施例により提供される技術案の適用シナリオを示す図である。
図2】本出願の1つの実施例により提供される量子操作実行方法のフローチャートである。
図3】本出願の1つの実施例により提供される量子操作実行方法のフローチャートである。
図4図3に示す実施例に係るZZクロストーク抑制を示す図である。
図5図3に示す実施例に係る最大領域の量子ビット数と抑制不可のZZクロストークの総個数の相互制約を示す図である。
図6図3に示す実施例に係るトポロジーグラフ及びその双対グラフ(dual graph)である。
図7図3に示す実施例に係る最適抑制問題を解くことを示す図である。
図8図3に示す実施例に係る最適抑制問題を解く例を示す図である。
図9図3に示す実施例に係る量子回路を示す図である。
図10図3に示す実施例に係る抑制案を示す図である。
図11図3に示す実施例に係る抑制効果の差異を示す図である。
図12図3に示す実施例に係るシングルビット操作を示す図である。
図13図3に示す実施例に係るシングルビット波形を示す図である。
図14図3に示す実施例に係るシングルビット波形を示す図である。
図15図3に示す実施例に係るシングルビット操作及びダブルビット操作を示す図である。
図16図3に示す実施例に係るシングルビット波形のトポロジーグラフである。
図17図3に示す実施例に係る1つのクロストーク抑制の場合を示す図である。
図18図3に示す実施例に係るもう1つのクロストーク抑制の場合を示す図である。
図19図3に示す実施例に係る2ビット波形のトポロジーグラフである。
図20図3に示す実施例に係るRxx(π/2)操作実現時におけるZZクロストークに対しての抑制効果の比較を示す図である。
図21図3に示す実施例に係るグリッドトポロジーグラフである。
図22図3に示す実施例に係る2種類のスケジューリング方式の比較を示す図である。
図23図3に示す実施例に係る量子回路実行を示す図である。
図24図3に示す実施例に係る量子メモリを示す図である。
図25図3に示す実施例に係る恒等(identity)量子回路を示す図である。
図26】本出願の1つの実施例により提供される量子操作実行装置のブロック図である。
図27】本出願の1つの実施例により提供される量子操作の制御波形の生成装置のブロック図である。
図28】本出願の1つの実施例により提供されるコンピュータ装置の構成ブロック図であるあ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願の目的、技術案及び利点をより明らかにするために、以下、図面を参照しながら本出願の実施例について詳細に説明する。
【0019】
本出願の実施例を紹介する前に、まず、本出願に係る幾つかの名詞(用語)について簡単に説明する。
【0020】
1、量子コンピューティング(Quantum Computation):量子状態の重ね合わせ、もつれなどの性質を利用して計算タスクを迅速に完了する計算方式である。
【0021】
2、量子ビット(Qubit):量子情報のキャリー(carry)形式であり、以後、ビットと略称されることがある。
【0022】
3、量子操作(Quantum Operation):量子ビットに対して操作及び制御を行うことで、量子ビットにキャリーされる量子情報に対して処理を行う。一般的な量子操作として、パウリX、Y、Z変換(又はσx、σy、σzと表記される)、アダマール変換(H)、制御される(controlled)パウリX変換(CNOT)などがある。シングルビット操作(1ビット操作)及びダブルビット操作(2ビット操作)を使用するだけで、任意の量子コンピューティングを完了することができ、以後、操作と略称される場合がある。
【0023】
4、量子回路(Quantum Circuit):量子コンピューティングの記述モデルの1つであり、量子ビット及び量子ビット上の量子操作からなる。
【0024】
5、量子コンピューティングデバイス(Quantum Computing Device):量子コンピューティングを実行する物理的装置である。
【0025】
6、量子回路実行並列度(Execution Parallelism):量子コンピューティングデバイス上で量子回路を実行するときに同時に実行される量子操作の個数である。
【0026】
7、ハミルトニアン(Hamiltonian):量子システム(例えば、量子ビット)の時間発展を記述する数学ツールである。有効ハミルトニアンとは、原ハミルトニアンに対して座標変換を行い、無関係な要素を無視した後に得られた簡略化ハミルトニアンを指す。
【0027】
8、超伝導量子コンピューティングデバイス(Superconducting Quantum Computing Device):量子ビットが超伝導技術を採用して実現する量子コンピューティングデバイスを指す。超伝導量子コンピューティングデバイスでは、制御波形(Control Pulse)を印加してハミルトニアンにおける特定の項に影響を与えることで、量子ビットの時間発展に影響を与え、量子操作を実現する。
【0028】
9、ZZクロストーク(ZZ Crosstalk):量子ビットの高エネルギー準位間の結合によって生じる
【0029】
【数1】
相互作用(インタラクション)である。超伝導量子コンピューティングデバイスでは、物理的結合を有する2つのビット間にZZクロストークが存在し、これは永続的に存在する(always-on)相互作用である。
【0030】
10、量子メモリ(Quantum Memory):量子情報を格納する装置であり、量子コンピューティングデバイスとの相違点は、その設計の目的は計算のためでなく、情報を長時間格納するためであることにある。但し、量子メモリ上でも幾つかの量子操作(リフレッシュ(Refresh)ともいう)を行うことで情報格納時間を延ばすことができる。
【0031】
11、量子誤り訂正コード(Quantum Error Correction Code):実際の量子コンピューティングデバイスに各種のエラーが存在し、量子誤り訂正コードは量子ビットを符号化し、量子コンピューティングのエラー許容率を向上させるために用いられる。
【0032】
12、忠実度(Fidelity):実際の値と真の値の類似度を評価する指標であり、具体的なシナリオによって異なる定義形式がある。忠実度が高いほど、実際の値と真の値の類似度が高くなる。
【0033】
13、グラフ(Graph):数学上、グラフは頂点及び頂点を結ぶ辺からなり、G=(V,E)と記され、そのうち、Vは頂点集合であり、Eは辺集合である。量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造はフラフで表することができ、そのうち、頂点が量子ビットを表し、辺が量子ビット間の結合を表す。
【0034】
14、平面グラフ(Planar Graph)、双対グラフ(Dual Graph):或る方法で平面上に描画され、かつ異なる辺が交差しないように保証することができるグラフは平面グラフと称される。平面グラフは双対グラフを有し、双対グラフの頂点は平面グラフの面に対応し、平面グラフにおける2つの面が隣接するときに、双対グラフ中の対応する頂点の間は辺を成し、このようにして、双対グラフの辺は平面グラフの辺と一対一対応するようになる。平面グラフGの双対グラフはG*と記され、平面グラフの辺(u,v)は双対グラフの辺(u,v)*に対応する。
【0035】
15、最短経路(Shortest Path):2つの頂点を結ぶすべての経路のうち、最も短い経路である。
【0036】
16、連結成分(Connected Component):連結成分はグラフのサブグラフであり、各頂点の間はすべて連結する経路が存在するという条件(連結性条件)を満足する。グラフに何れの他の頂点を追加すると、連結性条件に違反するときに、このときの連結成分は最大連結成分と呼ばれる。
【0037】
17、カット(Cut)、カット集合(Cut-Set):グラフG=(V,E)のカットC=(S,T)がグラフの頂点集合Vを2つの交差しない集合SとTに分ける1種の分割であり、その対応するカット集合ECは、グラフの辺集合Eのうち、両端点がS及びTに分属する辺からなる集合であり、即ち、EC={(u,v)|u∈S,V∈T}である。
【0038】
18、奇頂点ペアリング(Odd-vertex Pairing):1つの辺集合Dを除去した後に残ったグラフに奇数次数の頂点がない場合、該辺集合は奇頂点ペアリングと称される。1つの頂点の次数とは、該頂点に接合する辺の数を意味する。任意の奇頂点ペアリングは何れもグラフ中のすべての奇頂点を含む。
【0039】
19、最大マッチング(Maximum Matching):グラフの1つのマッチングがグラフの1つのサブグラフであり、そのうち、各2つの辺は共通の頂点を有しない。グラフの最大マッチングとは、辺の数が最も多いマッチングを指す。
【0040】
20、頂点2彩色(頂点2カラーリングともいう)(Vertex
2-Coloring)(ここで、辺を共有する頂点を異なる色で塗ることを(頂点)彩色という):頂点に2つの色のうちの1つを付与することで、接合する辺がある頂点の色が異なるようにさせる。1つのグラフが頂点2カラーリング可能な場合、該グラフは2部グラフ(Bipartite Graph)と呼ばれる。
【0041】
21、探索(Search):問題の多くの可能な解のうち、最適解を効率的に求める方法である。一般的な探索方法として、しらみつぶし探索(Exhaustive Search)及びビームサーチ(Beam Search)があり、しらみつぶし探索(Exhaustive Search)は、すべての可能なことをして最適解を選択する方法であり(即ち、全ての可能性のある解の候補を体系的に数えあげ、それぞれの解候補が問題の解となるかをチェックする方法である)、ビームサーチ(Beam Search)は、問題の解が若干個のサブ問題の解からなり、解を求めるプロセスで各サブ問題について有限個の解のみを残す探索方法である。
【0042】
関連技術では、ZZクロストークを抑制するスキームは4つのカテゴリに分類され得る。
【0043】
1)調節可能なの結合を採用する。ZZクロストークは、量子ビット間の結合によって媒介される必要があり、結合を必要としないときに、結合の強度(強さ)を低く調整することで、結合を等価的に「オフ(off)」し、クロストークを抑えることができる。
【0044】
2)異種量子ビットを採用する。ZZクロストークの強度は、結合される2つの量子ビットの非調和性と関連しており、それらの非調和性は「大きさが同じであるが、符号(sign)が互いに反対する(絶対値が同じであるが、符号(sign)が相反する)」ときに、ZZクロストークの強度は0である。異種量子ビットを使用することにより、非調和性の「大きさが同じであるが、符号(sign)が互いに反対する」ことを実現し、そして、ZZクロストークに対する抑制を実現することができる。
【0045】
3)複数種の結合方式を導入する。異なる結合方式によって媒介されるZZクロストークは異なる強度を有し、特に、それらの符号(sign)は相反することができる。複数種の結合方式を導入することにより、異なる方式によって媒介されるクロストーク強度が相殺するようにさせ、ZZクロストークを抑えることができる。
【0046】
4)追加の波形を印加する。ダブルビット操作実行時に、ZZクロストークはダブルビット操作にディストーションを持たせる可能性があり、追加の波形を印加することにより、このようなディストーションをある程度修正し、ZZクロストークの影響を低減することができる。
【0047】
上述のスキームのうち、前の3つはハードウェアベースの実現スキームであり、その欠点は複雑なハードウェア構造及び制御ロジックを要することにある。例えば、調節可能な結合を採用するスキームは追加の結合器及び結合器を制御する制御ラインを導入する必要があり、異種量子ビットを採用するスキームはチップの製造プロセスに対してより高い要件を課し、複数種の結合方式を導入するスキームは異なる結合のパラメータを正確に制御する必要があり、これらの複雑なハードウェア構造は制御の複雑性を来すとともに追加のデコヒーレンス要因を導入することも可能である。これらのスキームに比べて、本出願の後述の実施例により提供される技術案は単一の固定結合を有する同種量子ビットチップに適用することができ、また、本出願に示す技術案はこの3つのハードウェアベースの実現スキームのハードウェアに適用することもできるので、優れた汎用性を具備する。
【0048】
一方、追加の波形を印加するスキームについて言えば、その欠点は適用性が低いことにある。このスキームは、クロスレゾナンス効果を利用して実現されるダブルビット操作に対して設計されたものであり、今のところ、他の方式で実現される操作又はシングルビット操作に用いられる例が未だにない。このスキームに比較して、本出願の後述の実施例により提供される技術案はシングルビット操作だけでなくダブルビット操作にも適用することができ、かつ操作の実現技術に特殊な要求がない。
【0049】
概して、本出願は、複雑なハードウェア構造によるサポートを必要とせず、かつ高い適用性を有する、より簡単かつ汎用なクロストーク抑制方法を提供する。
【0050】
フルスタックプログラム可能な量子コンピュータのフレームワークにおいて、上位層が量子アルゴリズム、量子高レベル言語及び量子コンパイラを含み、最下層が量子チップ(量子回路ともいう)である。両者を接続するために、古典コンピュータと同様に、中間層に量子システム構造がある。このような1台のフルスタックプログラム可能な量子コンピュータでは、量子システム構造(量子命令セット及び量子制御マイクロシステム構造を含む)は、量子ソフトウェアと量子ハードウェアとの通信(コミュニケーション)の重要な役割を果たし、例えば、プログラム流制御、フィードバック制御、正確なタイミングゲート操作シーケンスなどの機能を提供する必要がある。
【0051】
具体的な実現にあたって、量子命令セットはコンパイラによって生成され、量子制御マイクロシステム構造はハードウェア上で1つの量子制御処理器(Quantum Control Processor、QCP)として実現され、また、量子命令セットを実行することで量子チップに対しての制御を完了する。該量子制御処理器の出力が最終的に制御するのは一連のアナログ機器(即ち、制御&読み取り電子機器)である、例えば、超伝導量子コンピューティングシステムでは、ここでのアナログ機器はデジタル信号をアナログマイクロ波の波形に変換して量子チップに対して制御を行うことができる。
【0052】
図1を参照し、それは本出願の1つの実施例により提供される技術案の適用シナリオを示す図である。図1に示すように、該適用シナリオは超伝導量子コンピューティングプラットフォームであっても良く、該適用シナリオは量子コンピューティングデバイス11、希釈冷凍機12、制御装置13及びコンピュータ14を含む。
【0053】
量子コンピューティングデバイス11は物理量子ビットに作用する回路であり、量子コンピューティングデバイス11は、量子チップ、例えば、絶対零度近傍の超伝導量子チップとして実現することができる。希釈冷凍機12は超伝導量子チップに絶対零度の環境を提供するために用いられる。
【0054】
制御装置13は量子コンピューティングデバイス11を制御するために用いられ、コンピュータ14は制御装置13に対して制御を行うために用いられる。例えば、書かれた量子プログラムがコンピュータ14におけるソフトウェアによりコンパイルされることで生成された命令は、制御装置13(例えば、電子/マイクロ波制御システム)に送信される。制御装置13は、この命令を電子/マイクロ波制御信号に変換して希釈冷凍機12に入力し、10mKよりも低い温度での超伝導量子ビットを制御する。読み取りプロセスはそれと反対であり、読み取り波形は量子コンピューティングデバイス11に送信される。
【0055】
そのうち、希釈冷凍機12は量子コンピューティングデバイス11(例えば、超伝導量子チップ)にワーキング環境を提供するために用いられる。量子コンピューティングデバイス11は、アナログ波形により制御されるので、主にFPGA(Field Programmable Gate Array、フィールドプログラマブルゲートアレイ)及びADC(Analog-to-Digital Converter、アナログ-デジタルコンバータ)/DAC(Digital-to-Analog
Converter、デジタル-アナログコンバータ)からなるワンセットの測定・制御システムより制御及び測定を提供する必要がある。また、測定・制御システムは上位機(例えば、コンピュータ14)の測定・制御ソフトウェアにより制御され、測定・制御ソフトウェアは現在行う必要のある操作を決定し、また、測定・制御システムに対して操作の設定などを行うことができる。上位機は例えば、PC(Personal Computer、パソコン)のような古典コンピュータであり得る。
【0056】
本出願の方法の実施例を説明する前に、まず、該方法の実行環境を簡単に紹介する。本出願の実施例により提供される量子操作実行方法は、古典コンピュータ(例えば、PC(Personal Computer、パソコン))の実行により実現することができ、例えば、古典コンピュータにより対応するコンピュータプログラムを実行することで該方法を実現することができ、また、古典コンピュータ及び量子コンピュータのハイブリッド実行環境で実行することもでき、例えば、古典コンピュータにより制御波形生成などのステップを実行し、量子コンピュータにより制御波形に基づく量子操作実行などのステップを実現しても良い。
【0057】
なお、以下の方法の実施例では、説明の便宜のため、各ステップの実行主体がコンピュータ装置であることのみを例にして説明を行うが、理解すべきは、該コンピュータ装置は古典コンピュータであっても良く、古典コンピュータ及び量子コンピュータのハイブリッド実行環境を含んでも良いということである。本出願の実施例はこれについて限定しない。
【0058】
図2を参照し、それは本出願の1つの実施例により提供される量子操作実行方法のフローチャートである。該方法の各ステップの実行主体はコンピュータ装置であっても良い。該方法は次のような幾つかのステップを含み得る。
【0059】
ステップ21:量子回路に対応するn個の未スケジューリングの(スケジューリングされていない)量子操作を取得し、nは1以上であり、かつnは整数である。
【0060】
上述の量子回路に対応するn個の未スケジューリングの量子操作は、量子回路において実行されていない一部又は全部の量子操作である。
【0061】
ステップ22:量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造及びn個の該未スケジューリングの量子操作に基づいて操作スケジューリングを行い、ターゲット操作グループ(組)を取得し、該ターゲット操作グループは各スケジューリングされる量子操作を含む。
【0062】
本出願の実施例において、量子操作の操作スケジューリングとは、或る時点に量子コンピューティングデバイスにおいて並列実行する1つ又は複数の量子操作を決定することを指す。
【0063】
ステップ23:該量子コンピューティングデバイス上で該ターゲット操作グループに含まれる各スケジューリングされる量子操作を並列実行し、該スケジューリングされる量子操作の制御波形は所定ターゲットに基づいて生成され、該所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、該領域間のクロストークは、異なる連結領域に分属する量子ビット間のクロストークであり、該連結領域は、量子操作が実行されるかどうかに応じて、該量子コンピューティングデバイス中の各量子ビットに対して分割を行うことで得られる。
【0064】
本出願の実施例において、量子コンピューティングデバイス中の各量子ビットは或る時刻Aに2種類に分けることができ、1つは、該時刻Aに量子操作を実行する量子ビットであり(複数の量子操作を並列実行し得る)、もう1つは、時刻Aに量子操作を実行しない量子ビットである。この2種類の量子ビットは量子回路のトポロジー構造において少なくとも2つの連結領域を形成する。
【0065】
1つの連結領域について、該連結領域における全部の量子ビットの種類が同じであり、かつ、該連結領域が2つ又は2つ以上の量子ビットを含むときに、該連結領域における任意の1つの量子ビットは、該連結領域における少なくとも1つの他の量子ビットと隣接する(2つの量子ビットが隣接することとは、2つの量子ビットの間に辺があり、又は、結合があることを指す)。
【0066】
また、量子コンピューティングデバイス中の隣接する2つの量子ビットについて、時刻Aにこの2つの量子ビットの種類が異なる場合、この2つの量子ビットは時刻Aに異なる連結領域に分属する。
【0067】
そのうち、上述の領域間のクロストークは上述の連結領域間のZZクロストークであっても良く、又は、上述の連結領域間の他の種類のクロストークであっても良い。
【0068】
要約すれば、本出願の実施例に示す技術案では、量子回路及び量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造に基づいて量子操作のスケジューリングを行い、スケジューリングされる量子操作を取得し、そして、量子コンピューティングデバイス上でスケジューリングされる量子操作を実行し、そのうち、実行される量子操作の波形は、量子コンピューティングデバイス上で量子操作がディストーションを有しないように保証する場合、領域間のクロストークを最小化する制御波形である。この技術案は、量子回路のトポロジー構造に基づいて量子操作の実行順序及び制御波形に対して最適化を行うことでクロストーク抑制を実現することができ、また、量子操作の操作種類及び実現原理の制限を受けることがなく、任意の種類及び任意の実現原理の量子操作に適用することができるので、クロストーク抑制の適用性を大幅に向上させることができる。
【0069】
本出願の1つの実施例において、量子操作の操作(制御)波形の生成方法がさらに提供され、該方法は、スケジューリングされる量子操作を取得し;所定ターゲットに基づいて、該スケジューリングされる量子操作の制御波形関数の関数パラメータを取得し、該所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、該領域間のクロストークは、異なる連結領域に分属する量子ビット間のクロストークであり、該連結領域は、量子コンピューティングデバイスにおいて、含まれる量子ビットが量子操作を行うかどうかに応じて分割を行うことにより得られ;及び、該関数パラメータに基づいて、該スケジューリングされる量子操作の制御波形を生成するステップを含む。
【0070】
本出願の上述の図2に示す実施例は波形制御のレベルで量子操作の制御波形の最適化案を提供し、該技術案により得られた制御波形は量子操作を実現し得ると同時に領域間のクロストークを効果的に抑制することができる。これをもとに、さらに、量子回路のレベルで量子回路に基づく操作スケジューリング案(回路スケジューリング/量子回路スケジューリングと称されても良い)が提供される。該スケジューリング案は最適抑制を実現し得ると同時に量子回路実行の高並列度を保証することができるため、量子回路実行の忠実度を最大限に引き上げることができる。
【0071】
本出願に示す技術案は、ソフトウェアのレベルでワーキングすることができ、また、汎用の量子ビット制御モデルを用いることで、従来のスキームにおける複雑なハードウェアアセンブリ及び制御ロジックを回避することができるため、より簡単かつ汎用である。本技術案は、超伝導量子コンピューティングデバイスに応用されることでクロストークを抑制し得る高忠実度の量子コンピューティングを提供することができ、また、量子メモリの改良に応用されることで量子データの格納時間を長くすることもできる。
【0072】
図3を参照し、それは本出願の1つの実施例により提供される量子操作実行方法のフローチャートである。該方法の各ステップの実行主体はコンピュータ装置であっても良い。該方法は次のような幾つかのステップを含み得る。
【0073】
ステップ301:量子回路に対応するn個の未スケジューリングの量子操作を取得し、nは1以上であり、かつnは整数である。
【0074】
本出願の実施例において、量子コンピューティングシステムに実行待ちの量子コンピューティングタスクが存在するときに、コンピュータ装置は該量子コンピューティングタスクに対応する量子回路を取得し、そして、量子回路に対応するn個の未スケジューリングの量子操作を取得することができる。
【0075】
そのうち、上述の未スケジューリングの量子操作とは、コンピュータ装置により、量子コンピューティングデバイス上で実行されることがスケジューリングされてない量子操作を指す。
【0076】
ステップ302:n個の未スケジューリングの量子操作に基づいてスケジューリング可能な集合を取得し、該スケジューリング可能な集合には、n個の未スケジューリングの量子操作のうちのスケジューリング可能な量子操作が含まれる。
【0077】
1つの量子回路において、2つ又は2つ以上の量子操作の間には依存関係(実行順序の関係といっても良い)が存在する可能性があり、つまり、1つの量子操作Aについて言えば、その1つ前の量子操作Bの実行が既に完成した場合に実行されるようにスケジューリングされる必要がある。この量子操作Bは量子操作Aの前置量子操作と称されても良い。
【0078】
1つの可能な実現方式において、上述のn個の未スケジューリングの量子操作のうちのスケジューリング可能な量子操作は、量子回路において実行がスケジューリングされていない量子操作のうち、現在時刻に実行可能な量子操作であっても良く、ここで、1つの量子操作が実行可能であることとは、量子回路に該量子操作に対応する未実行の前置量子操作が存在しないことを指しても良い。
【0079】
ステップ303:該スケジューリング可能な集合のうちから候補操作グループを抽出し、量子ビット分割案を取得する。
【0080】
そのうち、該量子ビット分割案は該トポロジー構造に基づいて所定分割方式で得られ、該量子ビット分割案は、該量子コンピューティングデバイス中の各量子ビットを2つの量子ビット集合に分割し、該量子コンピューティングデバイス上で少なくとも2つの連結領域を形成するように指示するために用いられる。
【0081】
本出願の実施例において、コンピュータ装置は、スケジューリング可能な集合における量子操作が2ビット量子操作を含むかどうかに基づいて、異なる案の使用を選択して候補操作グループを抽出し、及び異なる案を使用して量子ビット分割案を得ることができる。以下、2つの側面に分けて、スケジューリング可能な集合における量子操作が2ビット量子操作を含むかどうかの量子ビット分割案について紹介する。
【0082】
一)スケジューリング可能な集合における各量子操作がシングルビット量子操作である
1つの可能な実現方式において、上述のスケジューリング可能な集合における各量子操がシングルビット量子操作であることに応じて、コンピュータ装置はスケジューリング可能な集合を上述の候補操作グループとして取得する。
【0083】
スケジューリング可能な集合における各量子操作が何れもシングルビット量子操作であるときに、コンピュータ装置は、同一の量子操作に対応する2つのビットが2つの集合の中に同時に分割されることを考慮する必要がなく、スケジューリング可能な集合におけるすべての量子操作からなる操作グループを候補操作グループとして取得するだけで済む。
【0084】
そのうち、候補操作グループが、スケジューリング可能な集合に含まれる量子操作がシングルビット量子操作であるときに抽出される操作グループである場合、コンピュータ装置は該トポロジー構造に基づいて第二所定分割方式でターゲット奇頂点ペアリング案を取得し、その後、トポロジーグラフからターゲット奇頂点ペアリング案に対応する辺を除去し、辺除去後のトポロジーグラフを取得し、それから、辺除去後のトポロジーグラフに対して頂点2カラーリングを行い、上述の量子ビット分割案を取得することができる。
【0085】
1つの可能な実現方式において、上述の該トポロジー構造に基づいて第二所定分割方式でターゲット奇頂点ペアリング案を取得することは、
完全グラフを取得し、該完全グラフにおける頂点はターゲット双対グラフにおける奇頂点であり、該ターゲット双対グラフはトポロジーグラフの双対グラフであり、該トポロジーグラフは該量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造の平面グラフであり;
該完全グラフにおいてペアリングされる各奇頂点対を決定し;
各該奇頂点対の少なくとも1つの奇頂点ペアリング案を取得し、該奇頂点ペアリング案には、各該奇頂点対の、該ターゲット双対グラフにそれぞれ所在する1つの経路が含まれ;
少なくとも1つの該奇頂点ペアリング案の各自の最大領域量子ビット数、及び、少なくとも1つの該奇頂点ペアリング案の各自の抑制不可のクロストーク総数を取得し、該抑制不可のクロストーク総数は、該奇頂点ペアリング案における経路に対応する、該トポロジーグラフ中の辺の数によって表され、該最大領域量子ビット数は、該トポロジーグラフにおいてカット集合を除去した後の最大連結領域内の頂点の数によって表され、該カット集合は、該トポロジーグラフにおいて該奇頂点ペアリング案における経路に対応する該トポロジーグラフ中の辺を除去した後に残った辺からなる集合であり;
少なくとも1つの該奇頂点ペアリング案の各自の最大領域量子ビット数、及び、少なくとも1つの該奇頂点ペアリング案の各自の抑制不可のクロストーク総数に基づいて、少なくとも1つの該奇頂点ペアリング案のクロストーク抑制指数を取得し;及び
最小の該クロストーク抑制指数に対応する該奇頂点ペアリング案をターゲット奇頂点ペアリング案として取得することを含む。
【0086】
1つの可能な実現方式において、上述の各該奇頂点対の少なくとも1つの奇頂点ペアリング案を取得することは、
各該奇頂点対の各自の該完全グラフにおける最初のk個の短経路(ショートカット)を取得し、k≧1であり、かつkは整数であり;及び
各該奇頂点対の各自の該完全グラフにおける最初のk個の短経路に対して組み合わせを行い、少なくとも1つの該奇頂点ペアリング案を得ることを含む。
【0087】
1つの可能な実現方式において、上述のクロストーク抑制指数はαNQ+NCであり、そのうち、NQは該最大領域量子ビット数を示し、NCは該抑制不可のクロストーク総数を示し、αはNQ及びNCの重要度を表す。
【0088】
上記内容の紹介をまとめると分かるように、スケジューリング可能な集合における各量子操がシングルビット量子操作であるときに、コンピュータ装置は、同一の量子操作に対応する2つのビットが2つの集合の中に同時に分割されることを考慮する必要がなく、スケジューリング可能な集合内の全部の量子操作からなる操作グループを候補操作グループとして取得するだけで良く、その後、第二所定分割方式で最終のターゲット奇頂点ペアリング案を取得し、それから、ターゲット奇頂点ペアリング案に基づいて量子ビット分割案を取得することができる。
【0089】
そのうち、第二所定分割方式に関して、その目的は、幾つかの量子ビットに恒等操作を選択的に印加することでZZクロストークを最大限に抑制することにある。図4を参照し、それは本出願の実施例に係る1つのZZクロストーク抑制を示す図である。図4では、9量子コンピューティングデバイス上でZZクロストークを抑制する例が示されている。この例では、黒色の頂点に恒等量子操作を印加することにより、量子コンピューティングデバイス上のすべてのZZクロストークが何れも抑制されている。本出願では、このようなケースを完全抑制と称してもい。
【0090】
そのうち、量子ビットに量子操作を印加し、各量子ビットを個別の領域に分割することで、量子コンピューティングデバイス上のすべてのZZクロストークを抑制することができ、この場合、該量子コンピューティングデバイスには完全抑制案が存在するという。
【0091】
そのうち、1つの量子コンピューティングデバイスのトポロジーグラフが2部グラフである場合、該量子コンピューティングデバイスには完全抑制案が存在する。
【0092】
完全抑制が存在しないトポロジー構造について、少なくとも1つの領域が存在し、それは2つ又は2つ以上の量子ビットを含み、この2つ又は2つ以上の量子ビットからなる連結領域内のクロストークは抑制されない。このような場合、次の2つの指標が注目される必要があり、即ち、最大領域の量子ビット数及び抑制不可のZZクロストーク総個数であり、この2つの指標は互いに制約される。図5を参照し、それは本出願の実施例に係る最大領域の量子ビット数と抑制不可のZZクロストーク総個数の相互制約を示す図である。
【0093】
このような制約を表すために、本出願では、以下のように「最適抑制」の概念が提案されている。
【0094】
量子ビットに量子操作を印加することで、量子コンピューティングデバイス中の量子ビットを若干個の連結領域内に分割し、最大連結領域の量子ビット数をNQと記し、抑制不可のZZクロストーク総個数をNCと記し、両者の重要度を示す係数をαと記す場合、或る種の抑制案によってαNQ+NCを最小にすることができれば、該量子コンピューティングデバイスには最適抑制案が存在するという。
【0095】
例えば、図5に示すトポロジー構造では、図5の(a)部分に示す案が最適抑制案であるときに、対応するα=0であり、図5の(b)部分に示す案が最適抑制案であるときに、対応するα=1.5であり、図5の(c)部分に示す案が最適抑制案であるときに、対応するα=2である。
【0096】
最適抑制案を解くために、それを以下のようにグラフのカット問題に変換することができる。
【0097】
グラフG=(V,E)のカットC=(S,T)は、グラフの頂点集合Vを2つの交差しない集合SとTに分ける1種の分割方式であり、その対応するカット集合ECはグラフの辺集合E内の両端点がS及びTに分属する辺からなる集合であり、即ち、EC={(u,v)|u∈S,V∈T}である。
【0098】
最適抑制案の等価問題を見つける。即ち、グラフG=(V,E)及び重要度係数αを与え、1つのカットC=(S,T)を見つけてαNQ+NCを最小にし、そのうち、NQはG中のカット集合EC除去後の最大連結成分の頂点の数であり、NCはG中のカット集合EC除去後に残った辺の総数である。
【0099】
カットにより導出される2つの頂点集合S及びTはそれぞれ「波形を印加する頂点集合」及び「波形を印加しない頂点集合」に対応し、カット集合に対応する結合は異なる領域に跨る。よって、カット集合に対応する結合によって媒介されるクロストークは抑制することができ、これに反して、カット集合の補集合に対応する結合について、それらに接続される2つの量子ビットが同一の連結領域内に属するので、カット集合の補集合に対応する結合によって媒介されるクロストークは抑制することができない。
【0100】
上記グラフの問題の解を与えた後に、「波形を印加する頂点集合」の中の量子ビットに量子操作を印加するだけで、最適抑制を実現することができる。例えば、図4では、黒白の2つの色の頂点がそれぞれ頂点集合S及びTを構成し、点線辺がカット集合内に含まれるので、これらの結合により媒介されるクロストークは抑制することができるが、実線辺がカット集合に属せず、それにより媒介されるクロストークは抑制することができない。
【0101】
上記のフラフのカット問題を解決するのが困難である。例えば、α=0の場合を考慮して、1つのカットを、カット集合除去後に残った辺が最も少なくなり、即ち、カット集合に含まれる辺が最も多くなるように見つける必要があり、これは最大カット問題であり、非決定性多項式時間完全(NP-Complete)問題に属し、普遍的な多項式アルゴリズムは存在しない。よって、本出願では、ヒューリスティックな方法を採用して解を求める。また、ほとんどのトポロジカル量子誤り訂正コードのトポロジー構造がすべて平面グラフ構造であることを考慮して、本出願では、平面グラフについて本出願の技術案を設計する。本出願に示す技術案は以下の概念に基づいている。
【0102】
奇頂点ペアリング:1つの辺集合Dを除去した後に残ったグラフに奇数次数の頂点がない場合、該辺集合を奇頂点ペアリングと称する。任意の奇頂点ペアリングは何れもグラフ中のすべての奇頂点を含む。任意のグラフ中の奇頂点の個数がすべて偶数であるため、辺集合Dをペアリングと呼ぶ。
【0103】
双対グラフ:平面グラフが双対グラフを有し、双対グラフの頂点が平面グラフの面に対応し、平面グラフにおける2つの面が隣接するときに、双対グラフ中の対応する頂点の間は辺を成し、このようにして、双対グラフの辺は平面グラフの辺と一対一対応するようになる。平面グラフGの双対グラフはG*と記され、平面グラフの辺(u,v)は双対グラフの辺(u,v)*に対応する。
【0104】
定理:グラフGの1つの辺集合Dの補集合
【0105】
【数2】
について、その双対グラフG*中の対応する辺集合
【0106】
【数3】
が双対グラフG*の1つの奇頂点ペアリングであるときにのみ、グラフGの1つの辺集合Dは1つのカット集合ECに含まれる。
【0107】
例えば、図6を参照し、それは1つのトポロジーグラフ及びその双対グラフを示す図である。そのうち、図6は、図5に示す例のトポロジーグラフ及びその双対グラフを示しており、図では、辺界(境界)において1つのみの頂点を有する辺はすべてsに接続され、双対グラフにおける奇頂点はi及びjである。図5の(a)部分では、カット集合の補集合が{(10,11)、(4,11)、(11,12)}であり、対応する双対グラフにおける{(c,i)、(c,d)、(d,j)}が双対グラフの1つの奇頂点ペアリングであり、同様に、図5の(b)部分では、カット集合の補集合及び対応する双対グラフの奇頂点ペアリングが{(10,11)、(11,12)、(3,4)、(4,5)→(c,i)、(d,j)、(c,s)、(d,s)}である。
【0108】
補題:グラフGの1つの辺集合Dが1つのカット集合ECに含まれる場合、カット集合ECを除去した後に残った辺
【0109】
【数4】
は、
【0110】
【数5】
である。
【0111】
上述の定理及び補題によれば、トポロジーグラフにおいてカットを見つける問題は、双対グラフにおいて奇頂点ペアリング
【0112】
【数6】
を見つける問題に変換することができる。奇頂点ペアリングがすべての奇頂点を含む必要があることを考慮して、最も簡単な奇頂点ペアリングが若干個の簡単な経路のみを含み、各経路に2つの奇頂点が接続され、かつ異なる経路に接続される奇頂点が互いに異なる(例えば、図6では、{(c,i)、(c,d)、(d,j)}は奇頂点iとjを接続する1つの簡単な経路である)。また、トポロジーグラフにおいてカット集合を除去した後に残った辺
【0113】
【数7】
【0114】
【数8】
であるため、上述の各経路のために最短経路を選択することができ、このように、
【0115】
【数9】
の最小化を試み、即ち、
【0116】
【数10】
を最小化する。これは最適抑制問題を解く開始点とすることができる。最大連結成分の頂点の数NQを総合的に考慮するために、本技術案では、最短経路を緩和することができ、即ち、最初のk個の短経路を考慮することで、最適抑制問題の解を求める。図7を参照し、それは本出願の実施例に係る最適抑制問題を解くことを示す図である。本出願に示す最適抑制問題を解くアルゴリズムは3つのステップに分けられる。
【0117】
ステップ1:頂点ペアリングを行う。
【0118】
双対グラフにおける奇頂点を頂点とする完全グラフを構築し、辺(u,v)の重み(weight)がM-d(u,v)であり、d(u,v)はu,v間の最短経路長であり、M=1+max{d(u,v)│u,vは双対グラフにおける奇頂点である}である。完全グラフ上で最大マッチングアルゴリズムを採用してペアリング案を決定し、このように、互いにマッチングする頂点の間で最短経路を採用して得られた奇頂点マッチングに含まれる経路が最も少ないため、問題を解く開始点とすることができる。例えば、図11の場合、頂点i及びjを頂点とする完全グラフを構築し、(i,j)辺の重みが最短経路長(1+3)-3=1である。2つのみの点があるから、最大マッチングは{(i,j)}である。
【0119】
ステップ2:経路を緩和する。
【0120】
各マッチングの頂点対について、その最初のk個の短経路を順次試して見る。試す度に、NQ及びNCを求め、そして、αNQ+NCを計算し、問題の解を求める。例えば、i,j間の最短経路が(1)i→c→d→jであり、対応するNQ=4、NC=3であり、その最初の3つの短経路を考慮して、(2)i→c→s→d→j、(3)i→c→s→l→k→jがあり、αが異なることにより、異なる解を得ることができる。
【0121】
ステップ3:カットを導出する。
【0122】
ステップ2で得られた奇頂点ペアリングに基づいて、トポロジーグラフにおいて奇頂点ペアリングに対応する双対辺を除去し、残ったグラフが2部グラフであるので、頂点2カラーリングにより、カットC=(S,T)を導出することができる。例えば、ステップ2で得られた3つの案(1)、(2)、(3)は図11における(a)、(b)、(c)に順次対応する。
【0123】
二)スケジューリング可能な集合における各量子操作が2ビット量子操作を含む
1つの可能な実現方式において、該スケジューリング可能な集合に2ビット量子操作が含まれることに応じて、該スケジューリング可能な集合における各2ビット量子操作を取得し、ダブルビット操作集合を得る。該ダブルビット操作集合に3つ又は3つ以上操作が含まれることに応じて、該ダブルビット操作集合内の距離が最も近い(最も小さい)2つの量子操作に基づいて2つの操作グループを構築し、該ダブルビット操作集合内の該2つの量子操作以外の他の量子操作と、該2つの操作グループとの間の距離に基づいて、i回の操作追加を行い、iは1以上であり、かつiは整数であり、そして、該i回の操作追加の結果に基づいて候補操作グループを取得する。
【0124】
本出願の実施例において、スケジューリング可能な集合に2ビット量子操作が含まれるときに、コンピュータ装置は先にその中の2ビット量子操作に対してスケジューリングを行うことができ、即ち、ダブルビット操作を主として量子ビット分割案を設計する。
【0125】
量子操作の並列度をできるだけ向上させるために、コンピュータ装置は、同時に実行されても抑制効果を低下させることがない操作を選択しても良い。量子コンピューティングデバイスでは、距離が比較的近い2つの量子操作が同時に実行されるときに、通常、クロストーク抑制効果を低下させることがあるが、距離が比較的遠い2つの量子操作が同時に実行される場合、クロストーク抑制効果に大きな影響を与えることがあまりない。よって、本出願の実施例において、ダブルビット操作集合に3つ又は3つ以上の操作が含まれるときに、コンピュータ装置は、まず、距離が最も近い2つの2ビット量子操作を選んで異なるグループに分けることで、両者が同時に実行されることがないようにさせ、次に、グループ外の操作から対応する操作グループまでの距離に基づいて、この2つのグループの規模を次第に拡充することで、クロストーク抑制効果を確保することを前提として、可能な限り並列度の高い候補操作グループを取得することができる。
【0126】
1つの可能な実現方式において、該ダブルビット操作集合内の、該2つの量子操作以外の他の量子操作と、該2つの操作グループとの間の距離に基づいて、i回の操作追加を行うことは、
j番目の操作追加プロセスにおいて、該ダブルビット操作集合内の該他の量子操作と、該2つの操作グループのそれぞれとの間の距離を取得し、1≦j≦iであり、かつjは整数であり;最大距離に対応する所定量子操作を、該最大距離に対応する所定操作グループに追加し、該最大距離は、該他の量子操作と、該2つの操作グループのそれぞれとの間の距離のうちの最大値であり;該トポロジー構造及び該所定操作グループに基づいて、第一所定分割方式で、ターゲット奇頂点ペアリング案を取得し、該ターゲット奇頂点ペアリング案は、ターゲット双対グラフにおける各奇頂点対の間の経路を含み、かつ該ターゲット奇頂点ペアリング案は、所定操作グループの該量子ビット分割案を指示するために用いられ、該ターゲット双対グラフはトポロジーグラフの双対グラフであり、該トポロジーグラフは該トポロジー構造の平面グラフであり;該ターゲット奇頂点ペアリング案がクロストーク抑制要求を満足することに応じて、該所定量子操作を該ダブルビット操作集合から削除し;及び、該所定量子操作削除後の該他の量子操作の数が0でないことに応じて、次の1回(次回)の操作追加プロセスを実行することを含む。
【0127】
1つの可能な実現方式において、該少なくとも1回の操作追加の結果に基づいて該候補操作グループを取得することは、
該i番目の操作追加後の該他の量子操作の数が0であることに応じて、又は、該i番目の操作追加プロセスで得られた該ターゲット奇頂点ペアリング案が該クロストーク抑制要求を満足しないことに応じて、該i番目の操作追加後の該2つの操作グループのうち、数が一番多い操作を含む操作グループを該候補操作グループとして得ることを含む。
【0128】
1つの可能な実現方式において、j番目の操作追加プロセスにおいて、該ダブルビット操作集合内の該他の量子操作と、該2つの操作グループのそれぞれとの間の距離を取得することは、
j番目の操作追加プロセスにおいて、第一量子操作と、第一操作グループ内の既存の各量子操作との間の操作距離を取得し、該操作距離は、2つのダブルビット操作に対応する量子ビットの該トポロジー構造における最短経路長の和を指示するために用いられ、該第一量子操作は該他の量子操作のうちの任意の1つであり、該第一操作グループは該2つの操作グループのうちの何れか1つであり;及び、該第一量子操作と、該第一操作グループの中の既存の各量子操作との間の操作距離に基づいて、該第一量子操作と該第一操作グループとの間の距離を取得することを含む。
【0129】
本出願の実施例において、2つの2ビット量子操作a=(a1,a2)及びb=(b1,b2)について、両者間の距離は

と定義され、そのうち、d(ai,bj)は量子ビットai及びbj間の最短経路長を表し、操作a=(a1,a2)と或る1グループの操作Gとの距離は、
【0130】
【数11】
と定義される。
【0131】
量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造は、トポロジーグラフで表すことができ、操作グループ内の操作に対応する量子ビットは、対応するのはグラフ中の頂点であり、量子ビットの間の結合関係は、対応するのはグラフ中の辺である。よって、本出願の実施例において、コンピュータ装置は、トポロジーグラフの双対グラフにおいて奇頂点ペアリング案を見つける方式で、クロストーク抑制要求を満足する量子ビット分割案を探索することができる。また、2つの操作グループを徐々に拡充することで、可能な限り並列度の高い候補操作グループを得るプロセスでは、毎回、1つの操作グループに1つの2ビット量子操作を追加した後に、追加操作後の操作グループ内の2ビット量子操作及び量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造に基づいてターゲット奇頂点ペアリング案を取得し、そして、取得したターゲット奇頂点ペアリング案がクロストーク抑制要求を満足したかを判断し、満足した場合、継続して追加を行い、満足しない場合、追加を停止する必要があり;クロストーク抑制要求を満足しないときに、追加の停止をトリガーし、又は、追加する必要のある2ビット量子操作が存在しないときに、コンピュータ装置は、現在の2つの操作グループのうち、一番多い量子操作を含む1つを候補操作グループとすることができ、オプションとして、現在の2つの操作グループに含まれる量子操作の数が同じである場合、そのうちの1つをランダムに選んで候補操作グループとすることができる。
【0132】
1つの可能な実現方式において、該トポロジー構造及び該所定操作グループに基づいて、第一所定分割方式で、ターゲット奇頂点ペアリング案を取得することは、
該ターゲット双対グラフにおいて、該所定操作グループ内の各量子操作に対応する辺を削除し;該ターゲット双対グラフにおける奇頂点を頂点とする完全グラフを取得し;該完全グラフにおいて各該奇頂点対を決定し;各該奇頂点対の少なくとも1つの奇頂点ペアリング案を取得し、該奇頂点ペアリング案には、各該奇頂点対の、該ターゲット双対グラフにそれぞれ所在する1つの経路が含まれ;少なくとも1つの該奇頂点ペアリング案に、該所定操作グループ内の各量子操作に対応する該ターゲット双対グラフ中の辺を追加し;少なくとも1つの該奇頂点ペアリング案のうちから、該ダブルビット操作に対応する量子ビットが同一の連結領域に属しない奇頂点ペアリング案を削除し、削除後の各該奇頂点ペアリング案を取得し;削除後の各該奇頂点ペアリング案の各自の最大領域量子ビット数、及び、削除後の各該奇頂点ペアリング案の各自の抑制不可のクロストーク総数を取得し、該抑制不可のクロストーク総数は、該奇頂点ペアリング案における経路に対応する該トポロジーグラフ中の辺の数により表され、該最大領域量子ビット数は、該トポロジーグラフにおいてカット集合を除去した後の最大連結領域内の頂点の数により表され、該カット集合は、該トポロジーグラフにおいて該奇頂点ペアリング案における経路に対応する該トポロジーグラフ中の辺を除去した後に残った辺からなる集合であり;削除後の各該奇頂点ペアリング案の各自の最大領域量子ビット数、及び、削除後の各該奇頂点ペアリング案の各自の抑制不可のクロストーク総数に基づいて、削除後の各該奇頂点ペアリング案のクロストーク抑制指数を取得し;及び、最小の該クロストーク抑制指数に対応する該奇頂点ペアリング案をターゲット奇頂点ペアリング案として取得することを含む。
【0133】
そのうち、スケジューリング可能な集合に2ビット量子操作が含まれる場合、上述のターゲット奇頂点ペアリング案に基づいて量子ビット分割案を得るプロセスは、該トポロジーグラフにおいてターゲット奇頂点ペアリング案に対応する辺を除去し、辺除去後の該トポロジーグラフを取得し;及び、辺除去後の該トポロジーグラフに対して頂点2カラーリングを行い、量子ビット分割案を取得することを含む(上述のスケジューリング可能な集合における各量子操作がシングルビット量子操作である場合における最適抑制アルゴリズムのステップ3の中のカット導出のステップに似ている)。
【0134】
スケジューリング可能な集合に2ビット量子操作が含まれる場合について、2ビット量子操作に対応する量子ビットが2つであるから、直接、上述の第二所定分割方式で量子ビットの分割を行うと、1つの2ビット量子操作に対応する2つの量子ビットを異なる集合の中に分割する可能性がある。さらに、複数の量子操作が同時に実行される場合、原則として、これらの操作に係る量子ビットは同一の集合に属する必要がある。しかし、第二所定分割方式はこの点を保証することができる。そのため、本出願の実施例は、上述の第二所定分割方式をベースにして改良を行うことで、所定量子ビット上で所定量子操作を行うときの量子ビット分割のシナリオに適用し得るようになる。該改良後の分割方式は上述の第一所定分割方式である。
【0135】
上述の第一所定分割方式に対応する場合は、次のような制約付き最適抑制問題と見なすことができ、即ち、所定の量子操作に係る量子ビットがカットにおいて同一の集合に属することが要される。本技術案では、「先に辺を削除し、その後、辺を追加し、追加チェックを行う」のストラテジーを採用して制約付き問題を制約無き問題に変換し、そして、上述の第二所定分割方式により与えられる方法を採用して解を求める。操作に係るビット集合をQと記し、Q内の量子ビットがカットにおいて同一の集合に属することが要される。
【0136】
先に辺を削除する。即ち、双対グラフにおいて辺{(u,v)*|(u,v)∈Eかつu,v∈Q}を削除する。
【0137】
その後、辺を追加する。即ち、ステップ2で辺削除後のグラフの奇頂点ペアリングを与えた後に、削除したばかりの辺を奇頂点ペアリングに追加する。
【0138】
追加チェックを行う。即ち、上述の2つのステップによって、幾つかの場合にQ内の量子ビットがすべて同一の集合にあることを確保することができないので、ステップ2で1つのカットの候補を与える度に、該候補が、同一の集合に属する条件を満足したかの追加チェックを行う必要があり、満足しない場合、該候補を破棄する。
【0139】
例えば、図8を参照し、それは本出願の実施例に係る最適抑制問題を解く例を示す図である。図8における量子ビット11、28上でダブルビット操作を実行する必要があるとし、先に双対グラフにおいて(11,28)*=(i,j)を削除し、第二所定分割方式により与えられた最適抑制アルゴリズムを使用して奇頂点ペアリングi→c→d→jを取得し、次に(i,j)を追加し、(i,j)追加後の奇頂点ペアリングに基づいてカットを導出し、このときに、この案は、11及び28がすべて1つの集合にある条件を満足したことを追加チェックで確認することができるため、1つの解とすることができる。
【0140】
トポロジーグラフG=(V,E)及び頂点集合Q⊆Vを与え、辺集合{(u,v)|(u,v)∈Eかつu,v∈Q}がトポロジーグラフGの若干個の連結成分C1,C2,…,Cnを構成している場合、上述の「先に辺を削除し、その後、辺を追加し、追加チェックを行う」のストラテジーにより、同一の連結成分内の頂点が導出されたカットにおいて同一の集合にあるように確保することができる。
【0141】
上述の結論によれば、単一の2ビット量子操作に係る辺集合が1つのみの連結成分を構成する場合(例えば、図8における例)、本技術案のストラテジーにより合理的な解を与えることができる。複数の2ビット量子操作について、それらに係る辺集合は複数の連結成分を構成する可能性があり、この場合、「追加チェック」を行うことで、異なる連結成分の量子ビットが1つの集合に属することを確保する必要がある。
【0142】
本技術案の完全なアルゴリズムが表1にまとめられている。そのうち、前のk個の短経路からなる奇頂点ペアリングに対するトラバーサルは、しらみつぶし探索(Exhaustive Search)、ビームサーチ(Beam Search)などを含む探索アルゴリズムを使用することができる。
【0143】
【表1】
1つの可能な実現方式において、該クロストーク抑制要求は、
該ターゲット奇頂点ペアリング案の最大領域量子ビット数がビット数閾値よりも小さいこと;及び
該ターゲット奇頂点ペアリング案の抑制不可のクロストーク総数がクロストーク総数閾値よりも小さいことを含む。
【0144】
本出願の実施例において、これらの2ビット量子操作をスケジューリングするときに、クロストーク抑制要求が満足される場合に実行並列度をできるだけ向上させる必要がある。本出願では、クロストーク抑制要求は、最大領域の量子ビット数NQ及び抑制不可のZZクロストーク総個数NCに対しての総合的な制限であっても良く、例えば、両者がそれぞれ幾つかの閾値よりも小さいことが要求される。
【0145】
そのうち、上述のアルゴリズム1に対応するのは、2ビット量子操作を含む操作グループを決定し、かつ得られたターゲット奇頂点ペアリング案がクロストーク抑制要求を満足したときに、該操作グループに対応する量子ビット分割案を出力する場合である。本出願の実施例に示す技術案では、コンピュータ装置について言えば、まず、クロストーク抑制要求を満足した候補操作グループを決定する必要があり、つまり、上述の2つの操作グループを次第に拡充するプロセスにおいて、毎回、1つの操作グループに1つの2ビット量子操作を追加した後に、追加操作後の操作グループ内の2ビット量子操作に基づいて、上述のアルゴリズム1における頂点ペアリング及び経路緩和のステップを行い、対応するターゲット奇頂点ペアリング案を取得し、その後、該ターゲット奇頂点ペアリング案により、現在の操作グループがクロストーク抑制要求を満足したかを決定する。
【0146】
1つの例示的な技術案において、ダブルビット操作集合に1のみの量子操作が含まれるときい、コンピュータ装置は該量子操作を候補操作グループとして得ることができる。
【0147】
もう1つの例示的な技術案において、ダブルビット操作集合に2つの量子操作が含まれるときに、コンピュータ装置は、先にこの2つの量子操作を同一の操作グループに追加し、そして、抑制要求を満足したかを決定し、はいの場合、この2つの量子操作からなる操作グループを候補操作グループとし、いいえの場合、この2つの量子操作のうちの任意の1つの操作からなる操作グループを候補操作グループとする。
【0148】
1つの可能な実現方式において、候補操作グループが、スケジューリング可能な集合に2ビット量子操作が含まれるときに抽出される操作グループである場合、コンピュータ装置は、上述のトポロジー構造に基づいて、第一所定分割方式で、該ターゲット奇頂点ペアリング案を取得し、その後、再びターゲット奇頂点ペアリング案に基づいて量子ビット分割案を取得する(即ち、上述の候補操作グループに基づいて上述のアルゴリズム1を再び実行することである)。
【0149】
もう1つの可能な実現方式において、候補操作グループが、スケジューリング可能な集合に2ビット量子操作が含まれるときに抽出された操作グループである場合、コンピュータ装置は、上述の候補操作グループ抽出プロセスにおいて上述の第一所定分割方式で取得されたターゲット奇頂点ペアリング案を直接取得し、その後、再びターゲット奇頂点ペアリング案に基づいて量子ビット分割案を取得しても良い。
【0150】
本出願の実施例に示す技術案は、量子回路実行について言えば、何時にどのような操作を実行するかを選択する必要があり、即ち、量子回路に対してスケジューリングを行う必要があり、異なるスケジューリング案は、クロストーク抑制効果及び実行並列度が異なるようにさせることができる。本出願に係るスケジューリング方法は、この2つの要因を総合的に考慮することで、最適抑制を実現し得ると同時に回路実行の並列度をできるだけ向上させることができる。本出願に係るスケジューリングアルゴリズムのフローは表2に示されている。
【0151】
【表2】
図9を参照し、それは本出願の実施例に係る量子回路を示す図である。そのうち、図9の(a)部分では量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造が示されており、図9の(b)部分では実行待ちの量子回路が示されている。本出願では図9に示す量子回路の実行を例にして上述の表2に示すアルゴリズムを説明する。量子回路を与え、スケジューリング可能な操作集合を構築し(表2のアルゴリズムにける行2に対する)、データの依存性に基づいてその前の依存する操作がすべて実行されたときにのみ、1つの操作の実行がスケジューリングされ得ると見なすことができる。例えば、図9では、任意の操作が実行されていないときに、スケジューリング可能な操作集合は{H1,H2,…,H8}であり、すべてのH操作が実行された後に、スケジューリング可能な操作集合は{CNOT1,4,CNOT2,5,CNOT3,6,X8}になる。その後、ケースに分けてスケジューリング可能な操作集合における操作の種類(行3、6)を検討する。シングルビット操作のみがある場合、以下の結論に従って実行案を設計する。
【0152】
1グループのスケジューリング可能なシングルビット操作について、最適抑制方式で最大2つの時間ステップ内でこのグループの操作を実行する。言い換えれば、第二所定分割方式に対応する最適抑制アルゴリズムを採用することにより、量子ビットをS,Tの2つの集合に分け、それ相応に、これらのシングルビット操作もこの2つの集合に分けることができ、この場合、1番目の時間ステップ内でSに波形を印加し、2番目の時間ステップ内でTに波形を印加することで、最大2つの時間ステップ内で実行を完了することができる。
【0153】
本出願に示す回路スケジューリングアルゴリズムについて、操作が最も多く含まれる集合を実行し(表2のアルゴリズムにおける行4、5に対応する)、もう1つの集合における操作について、後続のスケジューリングのために保留されても良い。このような方式により、最も良い抑制効果の下で最高の並列度を実現することができる。
【0154】
例えば、図10を参照し、それは本出願の実施例に係る抑制案を示す図である。図15におけるトポロジーについて言えば、本出願に係る最適抑制アルゴリズムは図10の量子ビット分割案を与えており、黒色の頂点に含まれるH操作の個数が4であり、白色の頂点に含まれる操作の個数が3のみであるため、黒色の頂点集合を選んで実行する。
【0155】
もう1つの場合、実行可能な操作集合にダブルビット操作が含まれるときに、本出願に示すの技術案において、対応する表2のアルゴリズムにおける行7により、2ビット量子操作を主として量子ビット分割案を生成する。
【0156】
例えば、図9のすべてのCNOT操作について、D(CNOT1,4,CNOT2,5)=D(CNOT2,5,CNOT3,6)=6、D(CNOT1,4,CNOT3,6)=10である。図9におけるCNOT操作に関し、図11を参照し、それは本出願の実施例に係る異なる実行案の距離及び抑制効果の差異を示す図である。
【0157】
2ビット量子操作について、本出願では、まず、距離が最も近い2つの量子操作を選択し、それらを異なるグループに分割することで、両者が同時に実行されることがないように確保し、その後、次のような方式でこの2つのグループの規模を次第に拡充し、即ち、抑制要求が満足されないまで、距離が最も遠い操作を順次選択する。例えば、図9におけるCNOT操作について、距離が最も近いCNOT1,4、CNOT2,5を選択して2つのグループに分け、A={CNOT1,4}、B={CNOT2,5}のようになり、残りのCNOT3,6について、Aグループまでの距離がBグループまでの距離よりも大きい(遠い)ので、それをAグループに追加し、最終的にはA={CNOT1,4,CNOT3,6}、B={CNOT2,5}を取得する。
【0158】
1グループの実行可能な2ビット量子操作について、該グループの操作がすべてスケジューリングされるまで、アルゴリズム3を複数回呼び出し、最後にこのグループの操作がK個の時間ステップに割り当てられ、実行された場合、このグループの操作のうち、前のK個までの距離が小さい操作は必ず異なる時間ステップに分属する。言い換えると、距離により抑制効果を評価する場合、実行時間の増加(並列度の減少、デコヒーレンスエラーの増加)は抑制効果の向上をもたらすことができ、何故なら、1つの時間ステップが増加する度に、距離が最も近い2つの操作を分けて実行するようになるからである。
【0159】
上述のA、Bグループが与えられた後に、本技術案では、操作が最も多いグループを選択して実行することができる。例えば、図9のCNOT操作について、グループA={CNOT1,4,CNOT3,6}を選び、このときの量子ビット分割案は図11の(b)部分に示されているとおりであり、実行可能な操作集合{CNOT1,4,CNOT2,5,CNOT3,6,X8}に基づいて、最終的にはCNOT1,4、CNOT3,6、X8を実行する。
【0160】
ステップ304:候補操作グループ及び量子ビット分割案に基づいて、ターゲット操作グループを取得する。
【0161】
1つの可能な実現方式において、候補操作グループ及び該量子ビット分割案に基づいて、該ターゲット操作グループを取得することは、
該量子ビット分割案に基づいて、該量子コンピューティングデバイス中の各量子ビットを2つの量子ビット集合に分割し;該候補操作グループを、該2つの量子ビット集合にそれぞれ対応するサブ操作グループに分割し、該サブ操作グループ内の量子操作に対応する量子ビットは該サブ操作グループに対応する該量子ビット集合内にあり;及び、ターゲットサブ操作グループ内の量子操作と充填操作を該ターゲット操作グループとして合併し、該ターゲットサブ操作グループは該2つの量子ビット集合にそれぞれ対応する該サブ操作グループのうち、数が最も多い量子操作を含むサブ操作グループであり、該充填操作は充填量子ビットに対応する恒等量子操作であり、該充填量子ビットは該ターゲットサブ操作グループに対応する量子ビット集合内の、該ターゲットサブ操作グループに対応する量子ビット以外の他の量子ビットであることを含む。
【0162】
本出願の実施例において、取得された量子ビット分割案に対応する2つの量子ビット集合について、コンピュータ装置は2つの量子ビット集合のうち、量子回路中の対応する操作が比較的多い1つの量子ビット集合を、操作を実行するターゲット量子ビット集合と決定し、該ターゲット量子ビット集合において量子回路中の操作に対応する量子ビット以外の他の量子ビットについて、これらの他の量子ビットに対して恒等量子操作を充填することで、最適のクロストーク抑制効果を実現することができる。
【0163】
1つの可能な実現方式において、候補操作グループ及び量子ビット分割案に基づいて該ターゲット操作グループを得た後に、さらに、
該ターゲット操作グループの外にm個の未スケジューリングの量子操作がさらに存在することに応じて、該トポロジー構造及びm個の未スケジューリングの量子操作に基づいて操作スケジューリングを行い、新しい該ターゲット操作グループを取得し、mは1以上であり、かつmは整数であり;及び、該量子コンピューティングデバイス上で新しい該ターゲット操作グループに含まれる各スケジューリングされる量子操作を並列実行することを含む。
【0164】
本出願の実施例において、コンピュータ装置は、1つの時間ステップでのターゲット操作グループを得る度に、量子回路に残りの未スケジューリングの量子操作がさらに存在するかを判断することができ、はいの場合、残りの未スケジューリングの量子操作に基づいて、上述のステップ301乃至ステップ304を再び実行することで、次の1つの時間ステップでのターゲット操作グループを取得し、コンピュータ装置は上述のステップ301乃至ステップ304を、量子回路中の量子操作がすべてスケジューリングされるまで反復実行する。
【0165】
ステップ305:該量子コンピューティングデバイス上で該ターゲット操作グループに含まれる各スケジューリングされる量子操作を並列実行する。
【0166】
そのうち、該スケジューリングされる量子操作の制御波形は所定ターゲットに基づいて生成され、該所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、該領域間のクロストークは、異なる連結領域に分属する量子ビットの間のクロストークであり、該連結領域は、量子操作が実行されるかどうかに応じて、該量子コンピューティングデバイス中の各量子ビットに対して分割を行うことで得られる。
【0167】
本出願の実施例において、コンピュータ装置は、実行しようとする量子操作について、量子操作がディストーションを有しない場合、量子操作の制御波形を最適化することで、領域間のクロストークを最小化することができる。
【0168】
1つの可能な実現方式において、該所定ターゲットは、量子操作の制御波形作用下の平均操作忠実度及び該領域間のクロストークに基づいて取得されるシングルスカラーターゲットである。
【0169】
1つの可能な実現方式において、該シングルスカラーターゲットの公式は、
【0170】
【数12】
である。
【0171】
そのうち、Lは該シングルスカラーターゲットであり、U(T)は対応する量子操作の制御波形作用下のユニタリ変換を表し、UTarget(T)は対応する量子操作のターゲットユニタリ変換を表し、F(U(T),UTarget(T))はU(T)とUTarget(T)の間の平均操作忠実度を表し、Ui Xtalk(T)は該領域間のクロストーク影響下の閉量子システムの時間発展を表す。
【0172】
1つの可能な実現方式において、コンピュータ装置は該シングルスカラーターゲットに基づいて、ターゲット量子操作の制御波形関数の関数パラメータに対してR回の反復更新を行い、R≧2であり、かつRは整数であり、該ターゲット量子操作は各該スケジューリング可能な量子操作及び該恒等量子操作のうちの任意の1つであり;及び、反復更新後の該関数パラメータに基づいて該ターゲット量子操作の制御波形を生成する。
【0173】
本出願の実施例において、コンピュータ装置は上述のシングルスカラーターゲットに基づいて、実行待ちの量子操作の制御波形関数のパラメータに対して複数のラウンドの反復を行い、各ラウンドの反復のプロセスにおいて、1つ前のラウンドの反復を基に、制御波形関数のパラメータに対して更新を、反復回数に達するまで、又は、パラメータの変化が或る閾値よりも小さくなるまで行う。
【0174】
1つの可能な実現方式において、該シングルスカラーターゲットに基づいてターゲット量子操作の制御波形関数の関数パラメータに対してR回の反復更新を行うことは、
第r回の反復プロセスにおける第一システムの時間発展を取得し、該第一システムの時間発展は、r番目の制御波形影響下の閉量子システムの時間発展であり、2≦r≦Rであり、かつrは整数であり、該r番目の制御波形は第r-1回の反復更新後の該関数パラメータに対応する制御波形であり;
該第一システムの時間発展に基づいて第二システムの時間発展を取得し、該第二システムの時間発展は第r回の反復プロセスにおける該領域間のクロストーク影響下の閉量子システムの時間発展であり;
該第二システムの時間発展及び該ターゲット量子操作の該r番目の制御波形作用下の平均操作忠実度に基づいて、第r回の反復プロセスにおける該シングルスカラーターゲットを取得し;及び
第r回の反復プロセスにおける該シングルスカラーターゲットに基づいて第r-1回の反復更新後の該関数パラメータに対して更新を行い、第r回の反復更新後の該関数パラメータを取得することを含む。
【0175】
本出願の実施例において、上述の領域間のクロストークは領域間のZZクロストークであっても良く、又は、他の種類のクロストークであっても良い。
【0176】
上述の領域間のクロストークがZZクロストークであることを例にとり、本出願の実施例における波形最適化案の目的は、量子操作が与えられるときに、量子操作を実現し得ると同時にZZクロストークを抑えることができる波形を設計することにある。この案では、まず、1つのシングルビット操作のみがある領域を考慮し、その後、1つのダブルビット操作のみがある領域を考慮し、最後に、複数のこの2種類の操作からなる領域を考慮する。
【0177】
1)1つのシングルビット操作のみがある領域
図12を参照し、それは本出願の実施例に係るシングルビット操作を示す図である。図12に示すように、この案では、量子ビットq上でシングルビット操作を実現すると同時にその周囲の量子ビットとの間のZZクロストークを抑制する必要がある。
【0178】
該領域の有効ハミルトニアンは、
【0179】
【数13】
と書くことができる。
【0180】
そのうち、Ωx,y(t)は制御波形を表し、σq x,y,zは量子ビットq上のパウリX/Y/Z操作を表し、恒等操作は省略され、
【0181】
【数14】
は量子ビットqとiの間のZZクロストークを表し、λiはその強度を表す。
【0182】

をとる場合、上記ハミルトニアンは、
H(t)=HCtrl(t)+λHXtalk
と表すことができる。
【0183】
そのうち、
【0184】
【数15】
及び
【0185】
【数16】
である。
【0186】
この案はΩx(t)及びΩy(t)のために適切な波形を選択することで、ZZクロストークHXtalkの影響を抑えることができる。
【0187】
2)1つのダブルビット操作のみがある領域
図13を参照し、それは本出願の実施例に係るダブルビット操作を示す図である。図13に示すように、この案では、量子ビットp,q上でダブルビット操作を実現すると同時にその周囲の量子ビットとの間のZZクロストークを抑制する必要がある。
【0188】
該領域の有効ハミルトニアンは、
【0189】
【数17】
と書くことができる。
【0190】
そのうち、

であり、λ'=λpqである。HCouplingは量子ビットの結合形式であり、例えば、
【0191】
【数18】
はCNOT操作を実現することができ、
【0192】
【数19】
はiSWAP操作を実現することができる。Ω(t)のために適切な波形を選択することで、領域に跨ぐZZクロストークHXtalkの影響を抑えることができる。しかし、このような方法では、ハードウェアが2ビット結合HCouplingに対して比較的強い調節能力を有し得ることが要される。図14を参照し、それは本出願の実施例に係るシングルビット波形を示す図である。ハードウェアはこのような能力を提供することができない場合、図14に示すようなシングルビット波形を採用して補助を行うことができる。
【0193】
図14に示すように、波形A、Cは量子ビットpに印加するシングルビット制御波形でり、波形B、Dは量子ビットqに印加するシングルビット制御波形であり、波形Eは結合項HCouplingに印加する波形である。
【0194】
上述の制御波形を記述するハミルトニアンは、
【0195】
【数20】

である。
【0196】
最適化時に、波形A~Dのみを最適化し、Eについて元々ダブルビット操作を実現するための波形を直接採用する。このような方式により、波形Eがハードウェアにより実現され得ることを保証できると同時に、波形A~Dを導入することによりZZクロストークを抑制することができる。
【0197】
3)波形の最適化
以上の説明から分かるように、シングルビット操作であれ、ダブルビット操作情形であれ、ハミルトニアン部分は、
H(t)=HCtrl(t)+λHXtalk
と書くことができる。
【0198】
そのうち、HCtrl(t)は制御可能な部分であり、シングル/ダブルビット操作を実現するために用いられ、HXtalkは抑制する必要のあるクロス領域クロストークであり、λはクロストーク強度である。まず、以下の結論を与える。
【0199】
閉量子システムがH(t)=HCtrl(t)+λHXtalkに従って時間発展を行い、時間発展に対応するユニタリ変換は、
U(t)=UCtrl(t)UXtalk(t)
と書くことができる。
【0200】
そのうち、UCtrl(t)は、
【0201】
【数21】
により定義され、制御波形作用下のシステムの時間発展を表す。
【0202】
UXtalk(t)はクロストーク影響下のシステムの時間発展を表す。UXtalk(t)は、次のクロストーク強度λの公式、即ち、
【0203】
【数22】
として表すことができる。
【0204】
【数23】
と記す。
【0205】
そうすると、
【0206】
【数24】
である。
【0207】
上述の結論から分かるように、Ui Xtalk(t)(i≧1)がすべて0のときに、U(t)=UCtrl(t)UXtalk(t)=UCtrl(t)U0 Xtalk(t)=UCtrl(t)であり、即ち、クロストークの影響が完全に除去されている。本出願の1つの可能な実現案において、λの前のn次の影響を除去することを選択しても良く、このときに、n次クロストーク抑制問題を以下のマルチターゲット最適化問題にまとめることができる。
【0208】
【数25】
そのうち、Tは操作持続時間を示し、UTarget(T)は実現しようとするターゲット操作を表す。
【0209】
この案ではさらにそれをシングルスカラーターゲットマルチパラメータ最適化問題に変換し、例えば、勾配降下法を採用して解を求めることができる。このプロセスは以下のとおりである。
【0210】
まず、波形Ω(t)のためにパラメータ付き関数の形式を選択する。例えば、次のようなN個の異なる周波数のコサイン関数の和の形式を選択する。
【0211】
【数26】
そのうち、A=(A1,A2,…,AN)は最適化待ちパラメータであり、Tは波形総時間である。
【0212】
次に、次のようなシングルスカラーターゲットを構築する。
【0213】
【数27】
【0214】
【数28】
は、行列XのF-ノルム(Frobenius-ノルム)であり、wiは重み係数であり、通常、その値が10-3~10-5の範囲内にある。
【0215】
解を求めるときに、この案では、シュレディンガー方程式を解くことで各時刻のUCtrl(t)を取得し、そして、数値積分の方法を用いてUi Xtalk(t)を求め、最後にLを得ることができる。数値導出(Numerical derivation)の方法により∂L/∂Aを求め、勾配降下法を採用してパラメータAを更新する。
【0216】
4)複数のシングル/ダブルビット操作からなる領域
領域が複数のシングル/ダブルビット操作からなるときに、上記の場合と同様に、領域の有効ハミルトニアンは、
【0217】
【数29】
と書くことができる。
【0218】
そのうち、λは領域に跨るZZクロストークの等価強度を表し、λ'は領域内のZZクロストークの等価強度を表す。
【0219】
このような場合、領域に跨るクロストークを抑えるために、再び波形を最適化する必要がなく、上述の方法で最適化された波形を対応する操作に適用すれば良い。例えば、図15を参照し、それはシングルビット操作及びダブルビット操作を示す図である。そのうち、図15は1つのシングルビット操作(3)及び1つのダブルビット操作(1,2)からなる1つの領域及び領域周囲の結合を示している。該領域の有効ハミルトニアンは、
【0220】
【数30】
と書くことができる。
【0221】
上述の場合のハミルトニアンと比較して分かるように、量子ビット3に最適化後のシングルビット操作波形(H1 Ctrl(t))を適用することで、
【0222】
【数31】
クロストークを抑制することができ、量子ビット1、2に最適化後のダブルビット操作波形を適用することで、1-a、1-b、2-c、2-eクロストークを抑制することができる。これにより、すべての領域に跨るクロストークを抑制することができる。つまり、最適化済みの波形を独立して適用することで、すべての領域に跨るクロストークを抑えることができる。この特徴は、本出願に示す技術案の拡張可能性を確保することができ、即ち、1つのシングル/ダブルビット操作のみを有する領域に対して最適化を行うだけで、任意の形状の領域に拡張することができる。
【0223】
本出願の後述の内容は、コンピュータシミュレーション実験を通じて本出願に示す技術案がもたらす改善を説明する。まず、関連技術における波形と本出願の技術案に係る最適化後の波形を用いてZZクロストークを抑える抑制効果を比較して分析し、その後、本出願の技術案の量子コンピューティングタスクの面での関連技術案に対する改善を説明する。
【0224】
一、波形のZZクロストークに対する抑制効果
1)シングルビット波形
関連技術に示すスキームは、通常、ガウス波形を採用してシングルビット操作を実現し、対して、本技術案は、N項のコサイン波形の重ね合わせを用いてシングルビット操作を実現し、N=5である。
【0225】
シングルビット波形のZZクロストークに対しての抑制効果を示すために、図16を参照し、それは本出願の実施例にシングルビット波形のトポロジーグラフを示している。図16に示すトポロジーでは、量子ビット1に波形実現の特定操作を印加し、ZZクロストークが抑制される場合、量子ビット2の状態は波形印加前後で一定に保たれるはずである。
【0226】
本出願では、波形印加後の量子ビット2の状態と波形印加前の状態の差異を用いて波形のZZクロストークに対する抑制効果を示すことができる。ここで、不忠実度(Infidelity)を採用して状態の差異を示し、2つの状態の不忠実度は、
【0227】
【数32】
と定義される。
【0228】
そのうち、
【0229】
【数33】
は、
【0230】
【数34】
【0231】
【数35】
の内積である。
【0232】
図17を参照し、それは本出願の実施例に係るクロストーク抑制の場合を示す図である。図18を参照し、それは本出願の実施例に係るもう1つのクロストーク抑制の場合を示す図である。そのうち、図17は量子ビット1上でRx(π/2)操作を実現するときのクロストーク抑制の場合を示しており、図18は恒等I操作を実現するときのクロストーク抑制の場合を示している。横軸は異なるクロストーク強度を示し、縦軸は不忠実度で評価されたクロストーク抑制効果を示し、不忠実度が低いほど、クロストーク抑制効果が良くなる。
【0233】
図17図18の対較及び分析によって以下のような結果を得ることができる。
【0234】
ガウス波形に比べて、本技術案に係る最適化後の波形のZZクロストークに対しての抑制効果が4~5桁(オーダー)改善されている。
【0235】
本出願に示す技術案に係る最適化後の波形は異なる強度のクロストークに対してすべて強い抑制効果がある。例えば、不忠実度10-8を基準とし、本技術案で最適化されたRx(π/2)は6MHz以内のクロストークを抑えることができ、本技術案で最適化されたI波形は8MHz以内のクロストークを抑制することができる。実験で観測したZZクロストークが通常1MHzよりも小さいことを考慮して、本技術案はZZクロストークに対しての強い抑制を実現しているとは言える。
【0236】
2)2ビット波形
関連技術におけるスキームは、通常、フラットトップガウス波形を採用してダブルビット操作を実現し、対して、本技術案は、
【0237】
【数36】
種類の結合を考慮し、また、結合項に波形を直接印加する方式を採用してダブルビット操作を実現する。本技術案はN項のコサイン波形の重ね合わせを採用し、N=5である。
【0238】
2ビット波形のZZクロストークに対する抑制効果を示すために、図19を参照し、それは本出願の実施例に係る2ビット波形のトポロジーグラフを示している。図19に示すトポロジーでは、量子ビット2、3に波形実現の特定操作を印加し、ZZクロストークが抑制される場合、量子ビット1、4の状態は波形印加前後で一致に保たれるはずである。よって、波形印加前後の量子ビット1、4の状態不忠実度を用いて抑制効果を示す。
【0239】
図20を参照し、それはRxx(π/2)操作を実現するときにZZクロストークに対しての抑制効果の比較を示す図である。図20を分析することにより、以下のように、シングルビット波形の場合と同様の結果を得ることができる。
【0240】
フラットトップガウス波形に比べて、本技術案に係る最適化後の波形のZZクロストークに対しての抑制効果が4~5桁向上している。つまり、本技術案に係る最適化後の波形は異なる強度のクロストークに対してすべて強い抑制効果を有する。
【0241】
要約すると、本技術案は、簡単で統一された方式により、シングルビット操作及びダブルビット操作の両方の場合、すべて、ZZクロストークに対しての強い抑制を実現することができる。
【0242】
二、量子コンピューティングタスクの面での向上
本出願は、Hidden-Shift(HS)アルゴリズム、BernsteinーVazirani(BV)アルゴリズム、量子フーリエ変換(Quantum Fourier Transform、QFT)、Isingモデルシミュレーション、及び量子ボリューム(Quantum Volume、QV)推定を量子コンピューティングタスクとして選択する。図21を参照し、それは本出願の実施例に係るグリッドトポロジーを示している。図21に示すグリッドトポロジー上でコンピュータシミュレーションを行い、トポロジーグラフ中の隣接する2ビットの間にZZクロストークが存在し、実験結果に基づいてその強度を200kHzに設定する。
【0243】
本出願により提供される量子操作スケジューリングの案と並列最大化方式のスケジューリング(Parallel Schedule)の比較を行い、本出願に係るスケジューリング方式はクロストーク抑制スケジューリング(X-suppressed Schedule)と記される。図22を参照し、それは2種類のスケジューリング方式の対比を示す図である。
【0244】
図22では、異なる量子コンピューティングタスクについて、本出願により提供されるスケジューリング方式(X-suppressed Schedule)は、並列最大化方式のスケジューリング(Parallel
Schedule)に比べて、明らかな改善をもたらしいる。
【0245】
そのうち、図22における横軸において、HS-4は4ビットのHidden Shiftアルゴリズムを表し、その他はこれに基づいて類推することができる。
【0246】
図22から以下のような結果を得ることができる。
【0247】
本出願により提供される方法は、並列最大化方式のスケジューリングに比較して、ZZクロストークの量子コンピューティングタスクへの影響を大幅に低減することができる。本出願で評価された量子コンピューティングタスクにおいて、本出願により提供される方法は、従来の方法の10~110倍の向上を達成することができる。
【0248】
本出願により提供される方法は優れた拡張性を有し、即ち、量子コンピューティングタスクに使用する量子ビット数の増加に伴って、本出願により提供される方法がもたらす向上も増加する。本出願により提供される方法は、量子ビットが比較的少ない現在の量子コンピューティングデバイスに適用することができるのみならず、将来の大規模量子コンピューティングデバイスに適用することもできる。
【0249】
本出願に係る波形最適化方案はクロストークHXtalkの形式に対して特に要求がない。ZZクロストークへの適用以外に、他の種類のクロストークがある場合、HXtalkをそれ相応の形式に置換するだけで、本出願の方法は依然として適用することができる。同様に、上述の「最適抑制」アルゴリズム及び量子操作スケジューリングアルゴリズムは他のクロストークに適用することもできる。
【0250】
本出願に係る波形最適化方法は最終的には多目的最適化問題を解くことになる。上述の実施例では、それをシングルスカラーターゲットマルチパラメータ最適化に変換する解決方法が与えられており、該方法における勾配下降法は他の最適化方法、例えば、Nelder-Mead(NM)アルゴリズム、Broyden-Fletcher-Goldfarb-Shanno(BFGS)アルゴリズムなどで置換され得る。これに加えて、他のマルチターゲット最適化アルゴリズム、例えば、遺伝アルゴリズム、シミュレーテッドアニーリングなども該問題の解決に適用することができる。
【0251】
本出願に示す技術案は、超伝導量子コンピューティングデバイス上で量子回路を実行するときにデバイスに存在するZZクロストークの計算への影響を抑え、計算の忠実度を向上させるために用いられ得る。図23を参照し、それは本出願の実施例に係る実行量子回路を示す図である。図23に示すように、本出願に係る量子操作スケジューリング方法は量子回路を処理し、量子回路実行案を生成するために用いられ得る。本出願に係る波形最適化方法は、実行案に係る量子操作のためにその対応する制御波形を生成し、そして、量子回路実行案に基づいて、制御波形を用いて量子コンピューティングデバイスを制御することで、量子コンピューティングデバイス上で量子回路を実行し得ると同時にZZクロストークの計算への影響を抑制することができる。
【0252】
また、本出願は量子メモリの改善、量子メモリデバイスに存在するZZクロストークの抑制、量子メモリのデータ格納時間の向上にも応用され得る。図24及び図25を参照する。そのうち、図24は本出願の実施例に係る量子メモリを示す図であり、図25は本出願の実施例に係る恒等量子回路を示す図である。図24及び図25に示すように、量子メモリのリフレッシュ操作は量子メモリ上で恒等量子回路を実行することと同等である。
【0253】
要約すれば、本出願の実施例に示す技術案では、量子コンピューティングデバイスに対応する量子操作について、量子操作がディストーションを有しないように保証する場合、量子操作が前記量子コンピューティングデバイス上で実行されるときに生じる領域間のクロストークを最小化し得る制御波形を取得し、そして、該制御波形に基づいて量子コンピューティングデバイス上で該量子操作を実行し、このようにして、量子操作の制御波形に対して最適化を行う方式で該量子操作がもたらす領域間のクロストークを抑えることができる。任意の種類の量子操作についてその制御波形の最適化を行うことができるので、該技術案は、任意の種類の量子操作に対してのクロストーク抑制を実現し、クロストーク抑制の適用性を向上させることができ、そして、クロストーク抑制の効果を向上させることができる。
【0254】
図26を参照し、それは本出願の1つの実施例により提供される量子操作実行装置のブロック図である。該装置は上述の方法の実施例で示される機能を有し、前記機能はハードウェアにより実現されても良く、ハードウェアにより対応するソフトウェアを実行することで実現されても良い。該装置は上述のコンピュータ装置であって良く、コンピュータ装置に設置されても良い。図26に示すように、該装置は以下のものを含んでも良い。
【0255】
量子操作取得モジュール2601:量子回路に対応するn個の未スケジューリングの量子操作を取得するために用いられ、nは1以上であり、かつnは整数であり;
量子操作スケジューリングモジュール2602:量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造及びn個の前記未スケジューリングの量子操作に基づいて操作スケジューリングを行い、ターゲット操作グループを取得するために用いられ、前記ターゲット操作グループは各スケジューリングされる量子操作を含み;
量子操作実行モジュール2603:前記量子コンピューティングデバイス上で前記ターゲット操作グループに含まれる各スケジューリングされる量子操作を並列実行するために用いられ、
そのうち、前記スケジューリングされる量子操作の制御波形は所定ターゲットに基づいて生成され、前記所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、前記領域間のクロストークは、異なる連結領域に分属する量子ビットの間のクロストークであり、前記連結領域は、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットに対して、量子操作が実行されるかどうかに応じて分割を行うことで得られる。
【0256】
1つの可能な実現方式において、前記量子操作スケジューリングモジュール2602は以下のものを含む。
【0257】
スケジューリング可能な集合取得サブモジュール:n個の前記未スケジューリングの量子操作に基づいてスケジューリング可能な集合を得るために用いられ、前記スケジューリング可能な集合にはn個の前記未スケジューリングの量子操作のうちのスケジューリング可能な量子操作が含まれ;
候補操作グループ抽出サブモジュール:前記スケジューリング可能な集合のうちから候補操作グループを抽出するために用いられ;
分割案取得サブモジュール:量子ビット分割案を取得するために用いられ、前記量子ビット分割案は前記トポロジー構造に基づいて、所定分割方式で得られ、前記量子ビット分割案は、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットを2つの量子ビット集合に分割し、前記量子コンピューティングデバイス上で少なくとも2つの前記連結領域を形成するように指示するために用いられ;
ターゲット操作グループ取得サブモジュール:前記候補操作グループ及び前記量子ビット分割案に基づいて前記ターゲット操作グループを得るために用いられる。
【0258】
1つの可能な実現方式において、前記装置はさらに以下の機能を有する。
【0259】
前記量子操作スケジューリングモジュール2602はさらに、前記ターゲット操作グループの外にm個の前記未スケジューリングの量子操作がさらに存在することに応じて、前記トポロジー構造及びm個の前記未スケジューリングの量子操作に基づいて操作スケジューリングを行い、新しい前記ターゲット操作グループを取得し、mは1以上であり、かつmは整数である。
【0260】
前記量子操作実行モジュール2603はさらに、前記量子コンピューティングデバイス上で新しい前記ターゲット操作グループに含まれる各スケジューリングされる量子操作を並列実行する。
【0261】
1つの可能な実現方式において、前記候補操作グループ抽出サブモジュールは以下のものを含む。
【0262】
ダブルビット操作集合取得ユニット:前記スケジューリング可能な集合に2ビット量子操作が含まれることに応じて、前記スケジューリング可能な集合内の各2ビット量子操作を取得し、ダブルビット操作集合を得るために用いられ;
操作グループ構築ユニット:前記ダブルビット操作集合に3つ又は3つ以上の操作が含まれることに応じて、前記ダブルビット操作集合内の距離が最も近い2つの量子操作に基づいて2つの操作グループを構築するために用いられ;
操作追加ユニット:前記ダブルビット操作集合内の前記2つの量子操作以外の他の量子操作と、前記2つの操作グループとの間の距離に基づいて、i回の操作追加を行うために用いられ、iは1以上であり、かつiは整数であり;
候補操作グループ取得ユニット:前記i回の操作追加の結果に基づいて、前記候補操作グループを得るために用いられる。
【0263】
1つの可能な実現方式において、前記操作追加ユニットは、
j番目の操作追加プロセスにおいて、前記ダブルビット操作集合内の前記他の量子操作と、前記2つの操作グループのそれぞれとの間の距離を取得し、1≦j≦iであり、かつjは整数であり;
最大距離に対応する所定量子操作を、前記最大距離に対応する所定操作グループを追加し、前記最大距離は、前記他の量子操作と、前記2つの操作グループのそれぞれとの間の距離のうちの最大値であり;
前記トポロジー構造及び前記所定操作グループに基づいて、第一所定分割方式でターゲット奇頂点ペアリング案を取得し、前記ターゲット奇頂点ペアリング案は、ターゲット双対グラフ中の各奇頂点対の間の経路を含み、かつ前記ターゲット奇頂点ペアリング案は、所定操作グループの前記量子ビット分割案を指示するために用いられ、前記ターゲット双対グラフはトポロジーグラフの双対グラフであり、前記トポロジーグラフは前記トポロジー構造の平面グラフであり;
前記ターゲット奇頂点ペアリング案がクロストーク抑制要求を満足することに応じて、前記所定量子操作を前記ダブルビット操作集合のうちから削除し;
前記所定量子操作を削除した後の前記他の量子操作の数が0でないことに応じて、次の1回(次回)の操作追加プロセスを実行するために用いられる。
【0264】
1つの可能な実現方式において、前記候補操作グループ取得ユニットは、前記i番目の操作追加後の前記他の量子操作の数が0であることに応じて、又は、前記i番目の操作追加プロセスで得られた前記ターゲット奇頂点ペアリング案が前記クロストーク抑制要求を満足しないことに応じて、前記i番目の操作追加後の前記2つの操作グループのうち、数が最も多い操作を含む操作グループを前記候補操作グループとして取得するために用いられる。
【0265】
1つの可能な実現方式において、前記トポロジー構造及び前記所定操作グループに基づいて、第一所定分割方式でターゲット奇頂点ペアリング案を得るときに、前記操作追加ユニットは、
前記ターゲット双対グラフにおいて前記所定操作グループ内の各量子操作に対応する辺を削除し;
前記ターゲット双対グラフ中の奇頂点を頂点とする完全グラフを取得し;
前記完全グラフにおいて各前記奇頂点対を決定し;
各前記奇頂点対の少なくとも1つの奇頂点ペアリング案を取得し、前記奇頂点ペアリング案には各前記奇頂点対の、前記ターゲット双対グラフにそれぞれ所在する1つの経路が含まれ;
少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案に、前記所定操作グループ内の各量子操作に対応する前記ターゲット双対グラフ中の辺を追加し;
少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案うちから、前記ダブルビット操作に対応する量子ビットが同一の連結領域に属しない奇頂点ペアリング案を削除し、削除後の各前記奇頂点ペアリング案を取得し;
削除後の各前記奇頂点ペアリング案の各自の最大領域量子ビット数、及び、削除後の各前記奇頂点ペアリング案の各自の抑制不可のクロストーク総数を取得し、前記抑制不可のクロストーク総数は前記奇頂点ペアリング案における経路に対応する前記トポロジーグラフ中の辺の数により表され、前記最大領域量子ビット数は前記トポロジーグラフにおいてカット集合が除去された後の最大連結領域の中の頂点の数により表され、前記カット集合は前記トポロジーグラフにおいて前記奇頂点ペアリング案における経路に対応する前記トポロジーグラフ中の辺が除去された後の残りの辺からなる集合であり;
削除後の各前記奇頂点ペアリング案の各自の最大領域量子ビット数、及び、削除後の各前記奇頂点ペアリング案の各自の抑制不可のクロストーク総数に基づいて、削除後の各前記奇頂点ペアリング案のクロストーク抑制指数を取得し;
最小の前記クロストーク抑制指数に対応する前記奇頂点ペアリング案を前記ターゲット奇頂点ペアリング案として得るために用いられる。
【0266】
1つの可能な実現方式において、前記クロストーク抑制要求は、
前記ターゲット奇頂点ペアリング案の最大領域量子ビット数がビット数閾値よりも小さいこと;及び
前記ターゲット奇頂点ペアリング案の抑制不可のクロストーク総数がクロストーク総数閾値よりも小さいことを含む。
【0267】
1つの可能な実現方式において、j番目の操作追加プロセスにおいて、前記ダブルビット操作集合内の前記他の量子操作と、前記2つの操作グループのそれぞれとの間の距離を得るときに、前記操作追加ユニットは、
j番目の操作追加プロセスにおいて、第一量子操作と、第一操作グループ内の既存の各量子操作との間の操作距離を取得し、前記操作距離は、2つのダブルビット操作に対応する量子ビットの前記トポロジー構造における最短経路長の和を指示するために用いられ、前記第一量子操作は前記他の量子操作のうちの任意1つであり、前記第一操作グループは前記2つの操作グループのうちの任意の1つであり;及び
前記第一量子操作と、前記第一操作グループ内の既存の各量子操作との間の操作距離に基づいて、前記第一量子操作と前記第一操作グループとの間の距離を得るために用いられる。
【0268】
1つの可能な実現方式において、前記候補操作グループ抽出サブモジュールは、前記スケジューリング可能な集合の中の各量子操作がシングルビット量子操作であることに応じて、前記スケジューリング可能な集合を前記候補操作グループとして得るために用いられる。
【0269】
前記分割案取得サブモジュールは以下のものを含む。
【0270】
ペアリング案取得ユニット:前記トポロジー構造に基づいて、第二所定分割方式でターゲット奇頂点ペアリング案を取得するために用いられ;
辺除去ユニット:前記トポロジーグラフにおいて前記ターゲット奇頂点ペアリング案に対応する辺を除去し、辺除去後の前記トポロジーグラフを得るために用いられ;
カラーリングユニット:辺除去後の前記トポロジーグラフに対して頂点2カラーリングを行い、量子ビット分割案を得るために用いられる。
【0271】
1つの可能な実現方式において、前記ペアリング案取得ユニットは、
完全グラフを取得し、前記完全グラフ中の頂点はターゲット双対グラフ中の奇頂点であり、前記ターゲット双対グラフはトポロジーグラフの双対グラフであり、前記トポロジーグラフは前記量子コンピューティングデバイスのトポロジー構造の平面グラフであり;
前記完全グラフにおいてペアリングされる各奇頂点対を決定し;
各前記奇頂点対の少なくとも1つの奇頂点ペアリング案を取得し、前記奇頂点ペアリング案には各前記奇頂点対の、前記ターゲット双対グラフにそれぞれ所在する1つの経路が含まれ;
少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案の各自の最大領域量子ビット数、及び、少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案の各自の抑制不可のクロストーク総数を取得し、前記抑制不可のクロストーク総数は前記奇頂点ペアリング案における経路に対応する前記トポロジーグラフ中の辺の数により表され、前記最大領域量子ビット数は前記トポロジーグラフにおいてカット集合が除去された後の最大連結領域内の頂点の数により表され、前記カット集合は前記トポロジーグラフにおいて前記奇頂点ペアリング案における経路に対応する前記トポロジーグラフ中の辺を除去した後の残りの辺からなる集合であり;
少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案の各自の最大領域量子ビット数、及び、少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案の各自の抑制不可のクロストーク総数に基づいて、少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案のクロストーク抑制指数を取得し;及び
最小の前記クロストーク抑制指数に対応する前記奇頂点ペアリング案をターゲット奇頂点ペアリング案として得るために用いられる。
【0272】
1つの可能な実現方式において、各前記奇頂点対の少なくとも1つの奇頂点ペアリング案を得るときに、前記操作追加ユニット又は前記ペアリング案取得ユニットは、
各前記奇頂点対の各自の前記完全グラフ中の前のk個の短経路を取得し、k≧1であり、かつkは整数であり;及び
各前記奇頂点対の各自の前記完全グラフ中の前のk個の短経路に対して組み合わせを行い、少なくとも1つの前記奇頂点ペアリング案を得るために用いられる。
【0273】
1つの可能な実現方式において、前記クロストーク抑制指数はαNQ+NCであり、そのうち、NQは前記最大領域量子ビット数を示し、NCは前記抑制不可のクロストーク総数を示し、αはNQ及びNCの重要度を示す。
【0274】
1つの可能な実現方式において、前記ターゲット操作グループ取得サブモジュールは、
前記量子ビット分割案に基づいて、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットを2つの量子ビット集合に分割し;
前記候補操作グループを前記2つの量子ビット集合にそれぞれ対応するサブ操作グループに分割し、前記サブ操作グループ内の量子操作に対応する量子ビットは前記サブ操作グループに対応する前記量子ビット集合内にあり;
ターゲットサブ操作グループ内の量子操作と充填操作を前記ターゲット操作グループとして合併し、前記ターゲットサブ操作グループは前記2つの量子ビット集合にそれぞれ対応する前記サブ操作グループのうち、数が最も多い量子操作を含むサブ操作グループであり、前記充填操作は充填量子ビットに対応する恒等量子操作であり、前記充填量子ビットは前記ターゲットサブ操作グループに対応する量子ビット集合内の、前記ターゲットサブ操作グループに対応する量子ビット以外の他の量子ビットであることを行うために用いられる。
【0275】
1つの可能な実現方式において、前記所定ターゲットは量子操作の制御波形作用下の平均操作忠実度及び前記領域間のクロストークに基づいて取得されるシングルスカラーターゲットである。
【0276】
1つの可能な実現方式において、前記シングルスカラーターゲットの公式は、
【数37】
である。
【0277】
そのうち、Lは前記シングルスカラーターゲットであり、U(T)は対応する量子操作の制御波形作用下のユニタリ変換であり、UTarget(T)は対応する量子操作のターゲットユニタリ変換を示し、F(U(T),UTarget(T))はU(T)とUTarget(T)の間の平均操作忠実度を表し、Ui Xtalk(T)は前記領域間のクロストーク影響下の閉量子システムの時間発展を示す。
【0278】
1つの可能な実現方式において、前記装置はさらに以下のものを含む。
【0279】
反復更新モジュール:前記シングルスカラーターゲットに基づいてターゲット量子操作の制御波形関数の関数パラメータに対してR回の反復更新を行うために用いられ、R≧2であり、かつRは整数であり、前記ターゲット量子操作は各前記スケジューリング可能な量子操作及び前記恒等量子操作のうちのの任意の1つであり;
波形生成モジュール:反復更新後の前記関数パラメータに基づいて前記ターゲット量子操作の制御波形を生成するために用いられる。
【0280】
1つの可能な実現方式において、前記反復更新モジュールは、
第r回の反復プロセスにおける第一システムの時間発展を取得し、前記第一システムの時間発展はr番目の制御波形の影響下の閉量子システムの時間発展であり、2≦r≦Rであり、かつrは整数であり、前記r番目の制御波形は第r-1回の反復更新後の前記関数パラメータに対応する制御波形であり;
前記第一システムの時間発展に基づいて第二システムの時間発展を取得し、前記第二システムの時間発展は第r回の反復プロセスにおける前記領域間のクロストーク影響下の閉量子システムの時間発展であり;
前記第二システムの時間発展及び前記ターゲット量子操作の前記r番目の制御波形作用下の平均操作忠実度に基づいて、第r回の反復プロセスにおける前記シングルスカラーターゲットを取得し;及び
第r回の反復プロセスにおける前記シングルスカラーターゲットに基づいて第r-1回の反復更新後の前記関数パラメータに対して更新を行い、第r回の反復更新後の前記関数パラメータを得るために用いられる。
【0281】
1つの可能な実現方式において、前記領域間のクロストークは領域間ZZクロストークを含む。
【0282】
要約すれば、本出願の実施例に示す技術案では、量子コンピューティングデバイスに対応する量子操作について、量子操作がディストーションを有しないように保証する場合、量子操作が前記量子コンピューティングデバイス上で実行されるときに生じる領域間のクロストークを最小化する制御波形を取得し、そして、該制御波形に基づいて量子コンピューティングデバイス上で該量子操作を実行し、このようにして、量子操作の制御波形に対して最適化を行う方式で該量子操作がもたらす領域間のクロストークを抑えることができる。任意の種類の量子操作についてその制御波形の最適化を行うことができるので、該技術案は任意の種類の量子操作に対してのクロストーク抑制を実現し、クロストーク抑制の適用性を向上させることができ、そして、クロストーク抑制の効果を向上させることができる。
【0283】
図27を参照し、それは本出願の1つの実施例により提供される量子操作の制御波形の生成装置のブロック図である。図27に示すように、該装置は以下のものを含んでも良い。
【0284】
量子操作取得モジュール2701:スケジューリングされる量子操作を取得するために用いられ;
パラメータ取得モジュール2702:所定ターゲットに基づいて、前記スケジューリングされる量子操作の制御波形関数の関数パラメータを取得するために用いられ、前記所定ターゲットは、量子操作がディストーションを有しないように制御する場合、領域間のクロストークを最小化するために用いられ、前記領域間のクロストークは、異なる連結領域に分属する量子ビットの間のクロストークであり、前記連結領域は、量子操作が実行されるかどうかに応じて、前記量子コンピューティングデバイスにおける各量子ビットに対して分割を行うことで得られ;
波形生成モジュール2703:前記関数パラメータに基づいて、前記スケジューリングされる量子操作の制御波形を生成するために用いられる。
【0285】
そのうち、上述の量子操作の制御波形の生成装置がスケジューリングされる量子操作の制御波形を生成するプロセスについて、上述の図3に示す実施例における関連説明を参照することができるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0286】
要約すると、本出願の実施例に示す技術案では、量子コンピューティングデバイスに対応する量子操作について、量子操作がディストーションを有しないように保証する場合、量子操作が前記量子コンピューティングデバイス上で実行されるときに生じる領域間のクロストークを最小化する制御波形を取得し、そして、量子操作の制御波形に対して最適化を行う方式で該量子操作がもたらす領域間のクロストークを抑制することができる。任意の種類の量子操作についてその制御波形の最適化を行うことができるので、該技術案は任意の種類の量子操作に対してのクロストーク抑制を実現し、クロストーク抑制の適用性を向上させることができ、そして、クロストーク抑制の効果を向上させることができる。
【0287】
なお、上述の実施例により提供される装置は、その機能を実現するときに、上述の各機能モジュールの分割を例にして説明を行うが、実際の応用にあたって、ニーズに応じて上述の機能を異なる機能モジュールに完了してもらうように割り当ても良く、即ち、装置の内部構造を異なる機能モジュールに分割することで、上述の全部又は一部の機能を完了することもできる。また、上述の実施例により提供される装置は方法の実施例と同一の構想に属し、その具体的な実現プロセスについて方法の実施例を参照することができ、ここではその詳しい説明を省略する。
【0288】
図28を参照し、それは本出願の1つの実施例により提供されるコンピュータ装置の構成ブロック図である。該コンピュータ装置は上述の実施例により提供される方法を実施することができる。該コンピュータ装置が古典コンピュータであることを例とする。
【0289】
該コンピュータ装置2800は、処理ユニット(例えば、CPU(Central Processing Unit、中央処理器)、GPU(Graphics Processing Unit、グラフィックスプロセッシングユニット)及びFPGA(Field Programmable Gate Array、フィールドプログラマブルゲートアレイ)など)2801、RAM(Random-Access
Memory)2802及びROM(Read-Only Memory)2803を含むシステム記憶器2804、並びシステム記憶器2804及び中央処理ユニット2801に接続されるシステムバス2805を含む。該コンピュータ装置2800はさらに、サーバ内の各デバイス間の情報伝送を助けるための基本入力/出力システム(Input Output System、I/Oシステム)2806、オペレーティングシステム2813、アプリケーションプログラム2814、他のプログラムモジュール2815などを記憶するための大容量記憶装置2807を含む。
【0290】
該基本入力/出力システム2806は情報を表示するための表示器2808及びユーザに情報を入力させるためのマウス、キーボードなどの入力装置2809を含む。そのうち、該表示器2808及び入力装置2809はすべてシステムバス2805に接続される入出力制御器2810により中央処理ユニット2801に接続される。該基本入力/出力システム2806はさらに入出力制御器2810を、キーボード、マウス、電子スタイラスなどの複数の他の装置の入力を受信及び処理するために含んでも良い。同様に、入出力制御器2810はさらに表示器、プリンター又は他の種類の出力装置への出力を提供し得る。
【0291】
該大容量記憶装置2807はシステムバス2805に接続される大容量記憶制御器(図示せず)により中央処理ユニット2801に接続される。該大容量記憶装置2807及びその関連するコンピュータ可読媒体はコンピュータ装置2800に不揮発性記憶を提供する。つまり、該大容量記憶装置2807は例えばハードディスク又はCD-ROM(Compact Disc Read-Only Memory)ドライブのようなコンピュータ可読媒体(図示せず)を含んでも良い。
【0292】
一般性を失うことなく、該コンピュータ可読媒体はコンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含み得る。コンピュータ記憶媒体には、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法又は技術により実現される揮発性及び不揮発性、移動可能及び移動不可能な媒体が含まれ得る。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フレッシュメモリ、他の固体記憶技術、CD-ROM、DVD(Digital
Video Disc)、他の光ストレージ、テープカセット、磁気テープ、ディスクストレージ、又は他の磁性記憶装置を含んでも良い。もちろん、当業者は、コンピュータ記憶媒体が上記のタイプに限定されないことを知っている。また、上述のシステム記憶器2804及び大容量記憶装置2807は記憶器と総称され得る。
【0293】
本出願の実施例によれば、該コンピュータ装置2800はさらに、インターネットなどのネットワークを介してネットワーク上のリモートコンピュータに接続されても良い。即ち、コンピュータ装置2800は、該システムバス2805に接続されるネットワークインターフェースユニット2811によりネットワーク2812に接続され、あるいは、ネットワークインターフェースユニット2811を用いて他の種類のネットワーク又は遠隔コンピュータシステム(図示せず)に接続されると言っても良い。
【0294】
上述の記憶器はさらに、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットを含み、該少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットは記憶器に保存されており、かつ1つ又は1つ以上の処理器により実行されることにより、上述の量子操作実行方法を実行するように構成されても良い。
【0295】
1つの例示的な実施例では、コンピュータ可読記憶媒体がさらに提供され、前記記憶媒体には少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶されており、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は命令セットは処理器により実行されるときに上述の量子操作実行方法を実現し得る。
【0296】
オプションとして、該コンピュータ可読記憶媒体はROM(Read-Only Memory)、RAM(Random-Access Memory)、SSD(Solid State Drives)、光ディスクなどを含んでも良い。そのうち、ランダムアクセスメモリには、ReRAM(抵抗ランダムアクセスメモリ及びDRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)が含まれる場合がある。
【0297】
1つの例示的な実施例では、コンピュータプログラムプロダクト又はコンピュータプログラムがさらに提供され、前記コンピュータプログラムプロダクト又はコンピュータプログラムはコンピュータ命令を含み、前記コンピュータ命令はコンピュータ可読記憶媒体に記憶されている。コンピュータ装置の処理器は前記コンピュータ可読記憶媒体のうちから前記コンピュータ命令を読み取り、前記処理器は前記コンピュータ命令を実行することにより、前記コンピュータ装置に上述の実施例に示す方法を実行させる。
【0298】
1つの例示的な実施例では、量子操作チップがさらに提供され、該量子操作チップは上述の実施例に示す方法を実現するために用いられる。
【0299】
なお、本文で言及されている「複数」とは、2つ又は2つ以上を指す。「及び/又は」は、関連対象の関連関係を記述し、3種類の関係があることを示し、例えば、A及び/又はBは、Aのみが存在し、A及びBが同時に存在し、及びBのみが存在するという3つの場合を表す。文字「/」は、一般に、関連対象の前後の関係が「又は」であることを示す。また、本文に記載されているステップの順番号は、ステップ間の1つの可能な実行順序を例示的に示すだけであり、幾つかの他の実施例において、これらのステップは順番号の順序に従って実行されなくても良く、例えば、2つの異なる順番号のステップは同時に実行されても良く、2つの異なる順番号のステップは図示とは逆の順序に従って実行されても良いが、本出願の実施例はこれについて限定しない。
【0300】
以上、本出願の好ましい実施例を説明したが、本出願はこの実施例に限定されず、本出願の趣旨を離脱しない限り、本出願に対するあらゆる変更は本出願の技術的範囲に属する。
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