(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ナチュラルキラー細胞培養用組成物及びこれを用いたナチュラルキラー細胞の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20231108BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20231108BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231108BHJP
A61K 35/17 20150101ALN20231108BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20231108BHJP
A61P 35/02 20060101ALN20231108BHJP
C12N 15/26 20060101ALN20231108BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
C07K14/54
C07K19/00
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/26
C12N15/62
(21)【出願番号】P 2022529598
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 KR2020016376
(87)【国際公開番号】W WO2021101270
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0149779
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0015802
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521126254
【氏名又は名称】ジーアイ・セル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GI CELL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】チャン ミョンホ
(72)【発明者】
【氏名】ホン チュンピョ
(72)【発明者】
【氏名】コ ドンウ
(72)【発明者】
【氏名】イ チュンソプ
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】PARK, J. C. et al.,GI101, a novel triple-targeting bispecific CD80-IgG4-IL2variant fusion protein, elicits synergistic anti-tumor effects in preclinical models.,Annals of Oncology,2019年10月,Vol.30, Suppl 5,P1223(v500),doi: 10.1093/annonc/mdz253.049
【文献】CARMENATE, Tania et al.,Human IL-2 Mutein with Higher Antitumor Efficacy Then Wild Type IL-2.,J. Immunol.,2013年06月15日,Vol.190, No.12,p.6230-6238,doi: 10.1049/jimmunol.1201895
【文献】INGLAM, Wendy et al.,Human CD80/IL2 lentivirus transduced acute myeloid leukaemia cells enhance cytolytic activity in vitro in spite of an increase in regulatory CD4+ T cells in a subset of cultures.,Cancer Immunol. Immunother.,2009年03月13日,Vol.58, No.10,p.1679-1690,doi: 10.1007/s00262-009-0679-6
【文献】INGLAM, Wendy et al.,Human CD80/IL2 lentivirus-transduced acute myeloid leukaemia (AML) cells promote natural killer (NK) cell activation and cytolytic activity: implications for a phase I clinical study.,Br. J. Haematol.,2009年04月20日,Vol.145, No.6,p.749-760,doi: 10.1111/j.1365-2141.2009.07684.x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/0783
C07K 14/54
C07K 19/00
A61K 35/17
A61P 35/00
A61P 35/02
C12N 15/26
C12N 15/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質二量体を有効成分として含む
CD3+細胞又はCD56-細胞なしの分離されたナチュラルキラー細胞
のin vitro培養用組成物であって、
前記IL-2タンパク質変異体は、配列番号10のアミノ酸配列における38番目及び42番目のアミノ酸の置換を含み、
前記CD80断片はCD80の細胞外ドメインを含
み、
前記分離されたナチュラルキラー細胞はCD3-CD56+ナチュラルキラー細胞である、分離されたナチュラルキラー細胞培養用組成物。
【請求項2】
前記融合タンパク質二量体は、下記構造式(I)又は(II)を含む、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞培養用組成物。
N’-X-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-Y-C’(I)
N’-Y-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-X-C’(II)
(式中、N’は、融合タンパク質のN末端であり、
C’は、融合タンパク質のC末端であり、
Xは、CD80タンパク質、又はその断片であり、
Yは、IL-2タンパク質、又はその変異体であり、
リンカー(1)及びリンカー(2)は、ペプチドリンカーであり、そして
n及びmはそれぞれ独立して、0又は1である。)
【請求項3】
前記IL-2の変異体は、配列番号6で表示されるアミノ酸配列からなるものである、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞培養用組成物。
【請求項4】
前記CD80の断片は、配列番号11で表示されるアミノ酸配列のうち35番~242番のアミノ酸からなるものである、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞培養用組成物。
【請求項5】
前記融合タンパク質二量体は、配列番号9で表示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のナチュラルキラー細胞培養用組成物。
【請求項6】
IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質二量体の存在下で、CD3+細胞又はCD56-細胞なし
の、分離されたナチュラルキラー細胞を培養する段階を含むナチュラルキラー細胞の培養方法であって、
前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列における38番目及び42番目のアミノ酸の置換を含み、
前記CD80断片はCD80の細胞外ドメインを含
み、
前記分離されたナチュラルキラー細胞はCD3-CD56+ナチュラルキラー細胞である、ナチュラルキラー細胞の培養方法。
【請求項7】
前記融合タンパク質二量体は、1nM~500nMの濃度で処理されたものである、請求項6に記載のナチュラルキラー細胞の培養方法。
【請求項8】
前記培養する段階において、培養期間は5日~25日であることを特徴とする、請求項6に記載のナチュラルキラー細胞の培養方法。
【請求項9】
前記融合タンパク質二量体は、下記構造式(I)又は(II)を含む、請求項6に記載のナチュラルキラー細胞の培養方法。
N’-X-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-Y-C’(I)
N’-Y-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-X-C’(II)
(式中、N’は、融合タンパク質のN末端であり、
C’は、融合タンパク質のC末端であり、
Xは、CD80タンパク質、又はその断片であり、
Yは、IL-2タンパク質、又はその変異体であり、
リンカー(1)及びリンカー(2)は、ペプチドリンカーであり、そして
n及びmはそれぞれ独立して、0又は1である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナチュラルキラー細胞培養用組成物及びこれを用いたナチュラルキラー細胞の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌を治療するために外科的な手術、放射線治療、化学療法などの多様な治療法が開発されてきたが、多くの副作用が報告されながら、近年、患者の免疫機能を用いた免疫治療法が開発されている。特に、大量生産及び凍結が可能なナチュラルキラー細胞を用いた免疫治療法が研究されている。
【0003】
具体的に、ナチュラルキラー細胞は、リンパ球の一種として体内骨髓、脾臓、末梢リンパ節及び末梢血液に分布し、末梢血リンパ球(peripheral blood lymphocyte)の約10%程度を占め、先天性免疫反応に重要な役割をする(Ann Rev Immunol.,24:257-286,2006)。また、ナチュラルキラー細胞は、CD56及びCD16には陽性を示すが、CD3には陰性を示す。ナチュラルキラー細胞が細胞を殺害する方法は、パーフォリン(perforin)及びグランザイム(granzyme)を含む細胞質顆粒の排出を通じて行われる。ナチュラルキラー細胞は、IFN-γ、TNF-α、GM-CSF及びIL-10などの多様なサイトカインを分泌する。
【0004】
また、ナチュラルキラー細胞は、細胞表面に多くの受容体を発現するが、これらの受容体は、細胞吸着、細胞殺害能力の活性化、又は細胞殺害能力の抑制に関与する。しかし、正常人の体内に存在するほとんどのナチュラルキラー細胞は非活性化状態で存在する。よって、癌を除去するためには、活性化されたナチュラルキラー細胞が必要である。また、癌患者の体内に存在するナチュラルキラー細胞の場合、癌細胞の免疫回避機構によってナチュラルキラー細胞の機能的欠陥が存在する。したがって、ナチュラルキラー細胞を治療剤として用いるためには、ナチュラルキラー細胞を活性化させることが非常に重要である。また、体内に存在するナチュラルキラー細胞の細胞数は限定されているので、正常人の血液又は患者の血液のナチュラルキラー細胞を大量に増殖させて凍結する技術の開発が必須となる。
【0005】
一方、IL-2は、T細胞成長因子(T-cell growth factors、TCGF)とも呼ばれ、リンパ球の生成、生存及び恒常性において中心的な役割をする球状の糖タンパク質である。IL-2のタンパク質は、そのサイズが15.5kDa乃至16kDaで、133個のアミノ酸からなっている。IL-2は、個別的な3個のサブユニットで構成されたIL-2受容体に結合することによって各種免疫作用を媒介する。
【0006】
また、CD80はB7-1として知られており、リガンドと結合することによって共刺激反応(costimulatory responses)及び共抑制反応(coinhibitory responses)を伝達し、免疫調節に関与する膜タンパク質(membrane-bound proteins)のうちB7ファミリの一つである。CD80は、T細胞、B細胞、樹状細胞及び単核球(monocyte)の表面に発現する膜貫通タンパク質である。CD80は、CD28、CTLA4(CD152)及びPD-L1に結合するものとして知られている。
【0007】
このように、ナチュラルキラー細胞が抗癌治療に重要であることは多く知られているが、これを効果的に使用するために増幅できる具体的な方法は未だに不足な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者等は、活性化されたナチュラルキラー細胞を大量に製造するために研究した結果、IL-2タンパク質及びCD80タンパク質を含む融合タンパク質二量体を用いてナチュラルキラー細胞を製造した。また、このように製造したナチュラルキラー細胞の活性が増加し、優れた抗癌効果を示すことを確認することによって本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一側面は、IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質二量体を有効成分として含むナチュラルキラー細胞培養用組成物を提供する。
【0010】
本発明の他の側面は、i)PBMC(peripheral blood mononuclear cell)からCD3を発現しない細胞を分離する段階;ii)前記分離されたCD3を発現しない細胞からCD56を発現する細胞を分離する段階;及びiii)IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質二量体の存在下で、前記分離された細胞を培養する段階;を含むナチュラルキラー細胞を培養する方法を提供する。
【0011】
本発明の更に他の側面は、前記ナチュラルキラー細胞の培養方法で製造されたナチュラルキラー細胞を提供する。
【0012】
本発明の更に他の側面は、前記ナチュラルキラー細胞を有効成分として含む癌予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0013】
本発明の更に他の側面は、i)PBMCからCD3を発現しない細胞を分離する段階;及びii)IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質二量体の存在下で、前記分離された細胞を培養する段階;を含むナチュラルキラー細胞を培養する方法を提供する。
【0014】
本発明の更に他の側面は、前記ナチュラルキラー細胞の培養方法で製造されたナチュラルキラー細胞を提供する。
【0015】
本発明の更に他の側面は、前記ナチュラルキラー細胞を有効成分として含む癌予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明の更に他の側面は、i)PBMCからCD56を発現する細胞を分離する段階;及びii)IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質二量体の存在下で、前記分離された細胞を培養する段階;を含むナチュラルキラー細胞を培養する方法を提供する。
【0017】
本発明の更に他の側面は、前記ナチュラルキラー細胞の培養方法で製造されたナチュラルキラー細胞を提供する。
【0018】
本発明の更に他の側面は、前記ナチュラルキラー細胞を有効成分として含む癌予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明の更に他の側面は、IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質二量体の存在下で、PBMCを培養する段階を含むPBMC内のナチュラルキラー細胞の活性を促進させる方法を提供する。
【0020】
本発明の更に他の側面は、前記PBMC内のナチュラルキラー細胞の活性を促進させる方法で製造されたPBMCを提供する。
【0021】
本発明の更に他の側面は、前記PBMCを有効成分として含む癌予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のIL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質を有効成分として含むナチュラルキラー細胞培養用組成物は、ナチュラルキラー細胞の増殖を促進させ、CD16、NKp46発現を誘導し、グランザイムB及びパーフォリンの発現及び分泌を増加させ、抗癌免疫機能に優れたナチュラルキラー細胞の製造に有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1aは、本発明で使用された融合タンパク質二量体の模式図である。
【0024】
図1bは、収得した融合タンパク質二量体(GI-101)をSDS-PAGEで確
認した図である。
【0025】
図1cは、吸光度による融合タンパク質二量体(GI-101)の含量を示した図で
ある。
【0026】
図1dは、収得した融合タンパク質二量体(GI-101)をサイズ排除クロマトグ
ラフィー(SEC)で分析した図である。
【0027】
図2aは、収得したhCD80-Fc融合タンパク質二量体をSDS-PAGEで確
認した図である。
【0028】
図2bは、収得したhCD80-Fc融合タンパク質二量体をサイズ排除クロマトグ
ラフィー(SEC)で分析した図である。
【0029】
図3aは、収得したFc-IL2v2融合タンパク質二量体をSDS-PAGEで確
認した図である。
【0030】
図3bは、収得したFc-IL2v2融合タンパク質二量体をサイズ排除クロマトグ
ラフィー(SEC)で分析した図である。
【0031】
図3cは、収得したFc-IL2wt融合タンパク質二量体をSDS-PAGEで確
認した図である。
【0032】
図3dは、収得したFc-IL2wt融合タンパク質二量体をサイズ排除クロマトグ
ラフィー(SEC)で分析した図である。
【0033】
図4aは、収得したhCD80-Fc-IL2wt融合タンパク質二量体をSDS-
PAGEで確認した図である。
【0034】
図4bは、収得したhCD80-Fc-IL2wt融合タンパク質二量体をサイズ排
除クロマトグラフィー(SEC)で分析した図である。
【0035】
図5a及び
図5bは、AIM-V(5%SR)条件で培養するときのNK細胞数を示
した図である。
【0036】
図6a及び
図6bは、AIM-V(5%SR)条件で培養するときのNK細胞の生存
率を示した図である。
【0037】
図7a及び
図7bは、AIM-V(5%hABS)条件で培養するときのNK細胞数
を示した図である。
【0038】
図8a及び
図8bは、AIM-V(5%hABS)条件で培養するときのNK細胞の
生存率を示した図である。
【0039】
図9a及び
図9bは、X-vivo(5%hABS)条件で培養するときのNK細胞
数を示した図である。
【0040】
図10a及び
図10bは、X-vivo(5%hABS)条件で培養するときのNK
細胞の生存率を示した図である。
【0041】
図11a及び
図11bは、NK MACS(5%hABS)条件で培養するときのN
K細胞数を示した図である。
【0042】
図12a及び
図12bは、NK MACS(5%hABS)条件で培養するときのN
K細胞の生存率を示した図である。
【0043】
図13は、AIM-V(5%SR)培地含有組成物から培養されたナチュラルキラー
細胞の純度を確認したFACS分析結果を示した図である。
【0044】
図14は、AIM-V(5%hABS)培地含有組成物から培養されたナチュラルキ
ラー細胞の純度を確認したFACS分析結果を示した図である。
【0045】
図15は、X-vivo15(5%hABS)培地含有組成物から培養されたナチュ
ラルキラー細胞の純度を確認したFACS分析結果を示した図である。
【0046】
図16は、NK MACS(5%hABS)培地含有組成物から培養されたナチュラ
ルキラー細胞の純度を確認したFACS分析結果を示した図である。
【0047】
図17は、AIM-V(5%SR)培地含有組成物から培養されたナチュラルキラー
細胞の活性マーカーに対する分析結果を示した図である。
【0048】
図18は、AIM-V(5%SR)培地含有組成物から培養されたナチュラルキラー
細胞の阻害マーカーに対する分析結果を示した図である。
【0049】
図19は、AIM-V(5%hABS)培地含有組成物から培養されたナチュラルキ
ラー細胞の活性マーカーに対する分析結果を示した図である。
【0050】
図20は、AIM-V(5%hABS)培地含有組成物から培養されたナチュラルキ
ラー細胞の阻害マーカーに対する分析結果を示した図である。
【0051】
図21は、X-vivo(5%hABS)培地含有組成物から培養されたナチュラル
キラー細胞の活性マーカーに対する分析結果を示した図である。
【0052】
図22は、X-vivo(5%hABS)培地含有組成物から培養されたナチュラル
キラー細胞の阻害マーカーに対する分析結果を示した図である。
【0053】
図23は、NK MACS(5%hABS)培地含有組成物から培養されたナチュラ
ルキラー細胞の活性マーカーに対する分析結果を示した図である。
【0054】
図24は、NK MACS(5%hABS)培地含有組成物から培養されたナチュラ
ルキラー細胞の阻害マーカーに対する分析結果を示した図である。
【0055】
図25は、AIM-V(5%SR)培地含有組成物から培養されたナチュラルキラー
細胞の細胞殺害(cytotoxicity)マーカーに対する分析結果を示した図である。
【0056】
図26は、AIM-V(5%hABS)培地含有組成物から培養されたナチュラルキ
ラー細胞の細胞殺害(cytotoxicity)マーカーに対する分析結果を示した図である。
【0057】
図27は、X-vivo15(5%hABS)培地含有組成物から培養されたナチュ
ラルキラー細胞の細胞殺害マーカーに対する分析結果を示した図である。
【0058】
図28は、NK MACS(5%hABS)培地含有組成物から培養されたナチュラ
ルキラー細胞の細胞殺害マーカーに対する分析結果を示した図である。
【0059】
図29は、AIM-V(5%hABS)培地にGI-101(50nM)、GI-1
01_wt(50nM)、CD80-Fc(50nM)+Fc-IL2v2(50nM)又はCD80-Fc(50nM)+Fc-IL2wt(50nM)を含む組成物から21日間培養されたナチュラルキラー細胞の脱顆粒能を分析した結果を示した図である。
【0060】
図30は、AIM-V(5%hABS)培地にGI-101(50nM)、GI-1
01_wt(50nM)、CD80-Fc(50nM)+Fc-IL2v2(50nM)又はCD80-Fc(50nM)+Fc-IL2wt(50nM)を含む組成物から21日間培養されたナチュラルキラー細胞による癌細胞死滅効果を分析した結果を示した図である。
【0061】
図31は、X-vivo15(5%hABS)培地にGI-101(50nM)、G
I-101_wt(50nM)、CD80-Fc(50nM)+Fc-IL2v2(50nM)又はCD80-Fc(50nM)+Fc-IL2wt(50nM)を含む組成物から21日間培養されたナチュラルキラー細胞の脱顆粒能を分析した結果を示した図である。
【0062】
図32は、X-vivo15(5%hABS)培地にGI-101(50nM)、G
I-101_wt(50nM)、CD80-Fc(50nM)+Fc-IL2v2(50nM)又はCD80-Fc(50nM)+Fc-IL2wt(50nM)を含む組成物から21日間培養されたナチュラルキラー細胞による癌細胞死滅効果を分析した結果を示した図である。
【0063】
図33は、NK MACS(5%hABS)培地にGI-101(50nM)、GI
-101_wt(50nM)、CD80-Fc(50nM)+Fc-IL2v2(50nM)又はCD80-Fc(50nM)+Fc-IL2wt(50nM)を含む組成物から21日間培養されたナチュラルキラー細胞の脱顆粒能を分析した結果を示した図である。
【0064】
図34は、NK MACS(5%hABS)培地にGI-101(50nM)、GI
-101_wt(50nM)、CD80-Fc(50nM)+Fc-IL2v2(50nM)又はCD80-Fc(50nM)+Fc-IL2wt(50nM)を含む組成物から21日間培養されたナチュラルキラー細胞による癌細胞死滅効果を分析した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
NK細胞増殖用組成物及び培地
【0066】
本発明の一側面は、IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質二量体を有効成分として含むナチュラルキラー細胞培養用組成物を提供する。また、前記融合タンパク質二量体を有効成分として含むナチュラルキラー細胞培養用培地を提供する。
【0067】
前記ナチュラルキラー細胞培養用組成物は、培地、血清、補充剤及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるいずれか一つをさらに含むことができる。
【0068】
前記NK細胞培養用培地は、細胞培養用培地に前記IL-2タンパク質及びCD80タンパク質を含む融合タンパク質二量体が添加された培地であり得る。このとき、前記細胞培養用培地は、アミノ酸(amino acids)、糖類(sugars)、無機塩(inorganic salts)及びビタミンからなる群から選ばれるいずれか一つを含むことができる。好ましくは、前記細胞培養用培地は、アミノ酸、糖類、無機塩及びビタミンを全て含むものであり得る。一具体例として、前記NK細胞培養用培地は、下記の表1乃至表4の成分を含むことができる。
【0069】
本明細書で使用された用語である「細胞培養用培地」は、細胞を培養するために使用された培地を意味し、具体的にNK細胞、より具体的にCD3-CD56+細胞を培養するための培地を意味する。試験管内で(in vitro)細胞成長及び生存のために細胞が必要とする成分を含有したり、細胞成長及び生存を促進する成分を含有する。具体的に、前記成分は、ビタミン、必須又は非必須アミノ酸、及び微量元素であり得る。前記培地は、細胞、好ましくは真核細胞、さらに好ましくはNK細胞の培養に使用される培地であり得る。
【0070】
本発明に係る前記細胞培養培地は、アミノ酸成分、ビタミン成分、無機塩成分、その他の成分及び精製水で構成され、
【0071】
a)前記アミノ酸成分は、グリシン、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-トレオニン、L-セリン、L-システイン、L-メチオニン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、L-リシン、L-アルギニン、L-ヒスチジン、L-フェニルアラニン、L-チロシン、L-トリプトファン、L-プロリン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、オルニチン、シトルリン、ホモセリン、トリヨードチロニン、チロキシン及びジオキシフェニルアラニンで構成された群から選ばれる少なくともいずれか一つのアミノ酸又はその組み合わせで、好ましくは、グリシン、L-アラニン、L-アルギニン、L-システイン、L-グルタミン、L-ヒスチジン、L-リシン、L-メチオニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン及びL-バリンで構成された群から選ばれる少なくともいずれか一つのアミノ酸又はその組み合わせであり、
【0072】
b)前記ビタミン成分は、ビオチン、D-パントテン酸カルシウム、葉酸、ナイアシンアミド、ピリドキシン塩酸塩、リボフラビン、チアミン塩酸塩、ビタミンB12、塩化コリン、i-イノシトール及びアスコルビン酸で構成された群から選ばれる少なくともいずれか一つのビタミン又はその組み合わせで、好ましくは、i-イノシトール、チアミン塩酸塩、ナイアシンアミド及びピリドキシン塩酸塩で構成された群から選ばれる少なくとも一つ以上のビタミン又はその組み合わせであり、
【0073】
c)前記無機塩成分は、塩化カルシウム(CaCl2)(無水)、硫酸銅五水和物(CuSO4-5H2O)、硫酸第二鉄七水和物(FeSO4-7H2O)、塩化マグネシウム(無水)、硫酸マグネシウム(MgSO4)(無水)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸水素ナトリウム一水和物(NaH2PO4-H2O)、硫酸亜鉛七水和物(ZnSO4-7H2O)、硝酸第二鉄九水和物(Fe(NO3)3・9H2O)及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)で構成された群から選ばれる少なくともいずれか一つの無機塩又はその組み合わせで、好ましくは、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl2)(無水)及びリン酸水素ナトリウム一水和物(NaH2PO4-H2O)で構成された群から選ばれる少なくともいずれか一つの無機塩又はその組み合わせであり、
【0074】
d)前記その他の成分は、D-グルコース(デキストロース)、ピルビン酸ナトリウム、ヒポキサンチンNa、チミジン、リノール酸、リポ酸、アデノシン、シチジン、グアノシン、ウリジン、2'-デオキシアデノシン、2'-デオキシシチジンHCl及び2'-デオキシグアノシンで構成された群から選ばれる少なくともいずれか一つのその他の成分又はその組み合わせで、好ましくは、ピルビン酸ナトリウムであり得る。
【0075】
e)精製水は、前記アミノ酸、ビタミン、無機塩及びその他の成分を溶解させるために使用され、1次以上の蒸留を経て収得されたり、フィルターを通じて精製された水であり得る。
【0076】
また、本発明に係る前記細胞培養培地に成長因子又はサイトカインをさらに含むことができる。前記成長因子として、IGF、bFGF、TGF、HGF、EGF、VEGF又はPDGFなどを単独で又は2種以上使用できるが、これに特に制限するのではない。前記サイトカインとして、IL-1、IL-4、IL-6、IFN-γ、IL-10、IL-15、IL-17又はIL-21などを単独で又は2種以上使用できるが、これに特に制限するのではない。
【0077】
また、本発明に係る前記細胞培養培地にナチュラルキラー細胞活性用抗体をさらに含むことができる。前記活性用抗体として、抗CD3抗体、抗CD2抗体、抗CD335抗体などを単独で又は2種以上使用できるが、これに特に制限するのではない。また、前記ナチュラルキラー細胞活性用抗体が結合されたビーズを含むことができる。また、前記ナチュラルキラー細胞活性用抗体又は可変領域断片を2種以上含む融合タンパク質を使用することができる。
【0078】
特に、前記NK培養用培地は、IL-15、IL-21及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるいずれか一つをさらに含むことができる。
【0079】
前記IL-15及びIL-21は、インターロイキン(Interleukin、IL)の一種類として、リンパ球や単核球及び大食細胞などの免疫担当細胞が生産するタンパク質性生物活性物質を意味する。前記IL-15及びIL-21は、ナチュラルキラー細胞の増殖を促進させ、単核細胞を原料細胞として用いてナチュラルキラー細胞を培養する場合に使用できるが、これらのみを単独で又は混合して使用する場合、増殖率及び純度が低いという問題がある(Biossel L.et al.,Biology of Blood and Marrow Transplantation,14,1031-1038,2008)。
【0080】
具体的に、前記培地としては、DMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)、EDM(Endothelial differentiation medium)、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI 1640、F-10、F-12、a-MEM(a-Minimal Essential Medium)、G-MEM(Glasgow's Minimal Essential Medium)、Iscove's Modified Dulbecco’s Medium、AIM-V Medium、X-vivoTM 15 Medium、NK MACS Mediumなどの通常の動物細胞培養用培地を使用することができる。本発明の一実施例では、培地として、AIM-V Medium、X-vivoTM 15 Medium、NK MACS Mediumを使用した。
【0081】
本発明で使用される用語である「血清」とは、血液が完全に凝固された後、血液から遊離された透明な上澄液を意味する。また、動物細胞の培養には、合成培地に血清を必ず添加しなければならなく、ウシやウマ、ヒトの血清を使用することが一般的である。ウシ由来血清の場合、採血時期によってウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)、ウシ新生仔血清(newborn bovine serum)、子ウシ血清(calf serum)、母ウシ血清(bovine serum)などを使用することができる。ヒト由来血清の場合、血液型がAB型である供与者のヒト血清を使用し、A及びB血液型抗原に対する抗体がないため免疫反応性を最小化できるヒトAB血清(Human AB serum)を使用することができる。また、前記「血清」の代替剤として、CTS Immune Cell SRなどを使用することができる。本発明の一実施例では、ヒトAB血清又はCTS Immune Cell SRを使用した。
【0082】
前記補充剤は、細胞を培養するときの安定性及び細胞活性を改善するために、L-グルタミン代替剤であるGlutaMAX(Gibco(登録商標))を使用することができる。また、前記補充剤は、NK MACS supplement(Miltenyi Biotec、130-113-102)であり得る。
【0083】
IL-2タンパク質及びCD80タンパク質を含む融合タンパク質二量体
【0084】
本明細書で使用する用語である「IL-2」又は「インターロイキン-2」は、別に断りのない限り、哺乳動物、例えば、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)を含めて任意の脊椎動物供給源から収得した任意の野生型IL-2を意味する。前記IL-2は、動物細胞から収得されたものであってもよいが、IL-2を生産できる組換え細胞から収得されたものも含む。また、前記IL-2は、野生型IL-2又はその変異体であり得る。
【0085】
本明細書では、IL-2或いはその変異体を総称して「IL-2タンパク質」或いは「IL-2ポリペプチド」の用語と表現することもある。IL-2、IL-2タンパク質、IL-2ポリペプチド、及びIL-2変異体は、例えば、IL-2受容体(receptor)に特異的に結合する。この特異的な結合は、当業者に知られている方法によって確認することができる。
【0086】
前記IL-2の一具体例は、配列番号35又は配列番号36のアミノ酸配列を有することができる。また、このとき、前記IL-2は、成熟した形態であり得る。具体的に、前記成熟したIL-2は、信号配列を含まないものであってよく、配列番号10のアミノ酸配列を有するものであってよい。このとき、前記IL-2は、野生型IL-2のN末端又はC末端の一部が欠失した(truncated)断片を含む概念で利用され得る。
【0087】
また、前記IL-2の断片は、配列番号35又は配列番号36のアミノ酸配列を有するタンパク質のN末端から連続して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個又は25個のアミノ酸が欠失した形態であり得る。また、前記IL-2の断片は、配列番号35又は配列番号36のアミノ酸配列を有するタンパク質のC末端から連続して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個又は25個のアミノ酸が欠失した形態であり得る。
【0088】
本明細書で使用する用語である「IL-2変異体」は、全長(full-length)IL-2又は上述したIL-2断片のアミノ酸の一部が置換された形態を意味する。すなわち、IL-2変異体は、野生型IL-2又はその断片と異なるアミノ酸配列を有することができる。しかし、前記IL-2変異体は、野生型IL-2と同等又は類似の活性を有することができる。ここで、「IL-2活性」は、例えば、IL-2受容体に特異的に結合することを意味でき、この特異的結合は、当業者に知られている方法によって測定できる。
【0089】
具体的に、前記IL-2変異体は、野生型IL-2のアミノ酸の一部が置換されたものであり得る。アミノ酸置換によるIL-2変異体の一具体例としては、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目、45番目、61番目及び72番目のアミノ酸のうち少なくとも一つが置換されたものであり得る。
【0090】
具体的に、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目、45番目、61番目又は72番目のアミノ酸のうち少なくともいずれか一つが別のアミノ酸に置換されたものであり得る。その他にも、IL-2が配列番号35のアミノ酸配列のN末端の一部分が欠失した形態である場合、配列番号10のアミノ酸配列において相補的に対応する位置のアミノ酸が別のアミノ酸に置換され得る。例えば、IL-2が配列番号35のアミノ酸配列を有する場合に、前記IL-2の変異体は、配列番号35のアミノ酸配列において58番目、62番目、65番目、81番目又は92番目のアミノ酸のうち少なくともいずれか一つが別のアミノ酸に置換されたものであり得る。それらは、それぞれ、配列番号10のアミノ酸配列の38番目、42番目、45番目、61番目及び72番目のアミノ酸残基に該当する。一具体例によると、IL-2活性が維持される限り、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、或いは10個のアミノ酸が置換され得る。更に他の具体例によると、1個から5個までのアミノ酸が置換され得る。
【0091】
一具体例として、前記IL-2変異体は、2箇所のアミノ酸が置換された形態であり得る。具体的に、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目及び42番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目及び45番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において42番目及び45番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において42番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において42番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において45番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において45番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において61番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。
【0092】
さらに、前記IL-2変異体は、3箇所のアミノ酸が置換された形態であり得る。具体的に、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目及び45番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、45番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、45番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、61番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において42番目、45番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において42番目、45番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において45番目、61番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。
【0093】
また、前記IL-2変異体は、4箇所のアミノ酸が置換された形態であり得る。具体的に、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目、45番目及び61番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目、45番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、45番目、61番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目、61番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において42番目、45番目、61番目及び72番目のアミノ酸が置換されたものであり得る。
【0094】
さらに、前記IL-2変異体は、5箇所のアミノ酸が置換された形態であり得る。具体的に、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列において38番目、42番目、45番目、61番目及び72番目のアミノ酸がいずれも別のアミノ酸に置換されたものであり得る。
【0095】
このとき、前記置換によって導入される「別のアミノ酸」は、アラニン(alanine)、アルギニン(arginine)、アスパラギン(Asparagine)、アスパラギン酸(aspartic acid)、システイン(cysteine)、グルタミン酸(glutamic acid)、グルタミン(glutamine)、ヒスチジン(histidine)、イソロイシン(isoleucine)、ロイシン(leucine)、リシン(lysine)、メチオニン(methionine)、フェニルアラニン(phenyl alanine)、プロリン(proline)、セリン(serine)、トレオニン(threonine)、トリプトファン(tryptophan)、チロシン(tyrosine)及びバリン(valine)からなる群から選ばれるいずれか一つであり得る。ただし、前記IL-2変異体のアミノ酸置換において、前記配列番号10のアミノ酸配列において38番目はアルギニンに置換できなく、42番目はフェニルアラニンに置換できなく、45番目はチロシンに置換できなく、61番目はグルタミン酸に置換できなく、72番目はロイシンに置換できない。
【0096】
前記IL-2変異体のアミノ酸置換において、配列番号10のアミノ酸配列において38番目のアミノ酸であるアルギニンは、アルギニン以外の別のアミノ酸に置換され得る。好ましくは、前記IL-2変異体のアミノ酸置換において、配列番号10のアミノ酸配列において38番目のアミノ酸であるアルギニンは、アラニンに置換(R38A)され得る。
【0097】
前記IL-2変異体のアミノ酸置換において、配列番号10のアミノ酸配列において42番目のアミノ酸であるフェニルアラニンは、フェニルアラニン以外の別のアミノ酸に置換され得る。好ましくは、前記IL-2変異体のアミノ酸置換において、配列番号10のアミノ酸配列において42番目のアミノ酸であるフェニルアラニンは、アラニンに置換(F42A)され得る。
【0098】
前記IL-2変異体のアミノ酸置換において、配列番号10のアミノ酸配列において45番目のアミノ酸であるチロシンは、チロシン以外の別のアミノ酸に置換され得る。好ましくは、前記IL-2変異体のアミノ酸置換において、配列番号10のアミノ酸配列において45番目のアミノ酸であるチロシンは、アラニンに置換(Y45A)され得る。
【0099】
前記IL-2変異体のアミノ酸置換において、配列番号10のアミノ酸配列において61番目のアミノ酸であるグルタミン酸は、グルタミン酸以外の別のアミノ酸に置換され得る。好ましくは、前記IL-2変異体のアミノ酸置換において、配列番号10のアミノ酸配列において61番目のアミノ酸であるグルタミン酸は、アルギニンに置換(E61A)され得る。
【0100】
前記IL-2変異体のアミノ酸置換において、配列番号10のアミノ酸配列において72番目のアミノ酸であるロイシンは、ロイシン以外の別のアミノ酸に置換され得る。好ましくは、前記IL-2変異体のアミノ酸置換において、配列番号10のアミノ酸配列において72番目のアミノ酸であるロイシンは、グリシンに置換(L72G)され得る。
【0101】
具体的に、前記IL-2変異体は、配列番号10のアミノ酸配列においてR38A、F42A、Y45A、E61R及びL72Gからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの置換が起こったものであり得る。
【0102】
具体的に、前記IL-2変異体は、R38A、F42A、Y45A、E61R及びL72Gからなる群から選ばれる位置において2箇所、3箇所、4箇所又は5箇所の位置でアミノ酸置換が起こり得る。
【0103】
また、前記IL-2変異体は、2箇所のアミノ酸が置換された形態であり得る。具体的に、前記IL-2変異体は、R38A及びF42Aに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A及びY45Aに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A及びE61Rに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A及びL72Gに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A及びY45Aに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A及びE61Rに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A及びL72Gに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、E61R及びL72Gに置換が起こったものであり得る。
【0104】
さらに、前記IL-2変異体は、3箇所のアミノ酸が置換された形態であり得る。具体的に、前記IL-2変異体は、R38A、F42A及びY45Aに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、F42A及びE61Rに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、F42A及びL72Gに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、Y45A、E61Rに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、Y45A及びL72Gに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A、Y45A及びE61Rに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A、Y45A及びL72Gに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A、E61R及びL72Gに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、Y45A、E61R及びL72Gに置換が起こったものであり得る。
【0105】
また、前記IL-2変異体は、4箇所のアミノ酸が置換された形態であり得る。具体的に、前記IL-2変異体は、R38A、F42A、Y45A及びE61Rに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、F42A、Y45A及びL72Gに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、F42A、E61R及びL72Gに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、R38A、Y45A、E61R及びL72Gに置換が起こったものであり得る。また、一具体例として、前記IL-2変異体は、F42A、Y45A、E61R及びL72Gに置換が起こったものであり得る。
【0106】
さらに、前記IL-2変異体は、R38A、F42A、Y45A、E61R及びL72Gに置換が起こったものであり得る。
【0107】
好ましくは、前記IL-2変異体の一具体例は、配列番号10のアミノ酸配列において下記の(a)~(d)組み合わせから選ばれるいずれか一つの組み合わせの置換が起こったものであり得る:
【0108】
(a)R38A/F42A
【0109】
(b)R38A/F42A/Y45A
【0110】
(c)R38A/F42A/E61R
【0111】
(d)R38A/F42A/L72G
【0112】
このとき、IL-2が配列番号35のアミノ酸配列を有する場合に、配列番号10と相補的に対応する位置にアミノ酸置換を有することができる。また、IL-2が配列番号35のアミノ酸配列の断片である場合にも、配列番号10と相補的に対応する位置のアミノ酸が置換され得る。
【0113】
具体的に、前記IL-2の変異体は、配列番号6、22、23又は24のアミノ酸配列を有するものであり得る。
【0114】
また、前記IL-2変異体は、生体内で低い毒性を有することを特徴とするものであり得る。このとき、前記「生体内で低い毒性」とは、IL-2がIL-2受容体のアルファチェーン(IL-2Rα)と結合して誘発される副作用であり得る。前記IL-2とIL-2Rαとの結合による副作用を改善させるために様々なIL-2変異体が開発されており、このようなIL-2変異体は、米国特許第5,229,109号及び大韓民国特許第10-1667096号に開示されたものを使用することができる。特に、本出願で記述されるIL-2の変異体は、IL-2受容体のアルファチェーン(IL-2Rα)との結合力が低いので、生体内毒性が野生型IL-2に比べて低い。
【0115】
本明細書で使用する用語である「CD80」は、「B7-1」とも呼ばれ、樹状細胞、活性化されたB細胞及び単核球に存在する膜タンパク質である。CD80は、T細胞の活性化と生存に必須な共刺激信号を提供する。CD80は、T細胞表面に存在する異なる2つのタンパク質であるCD28及びCTLA-4に対するリガンドとして知られている。CD80は、288個のアミノ酸で構成されており、具体的に、配列番号11のアミノ酸配列を有するものであり得る。また、本明細書において「CD80タンパク質」は、全長CD80又はCD80断片を意味する。
【0116】
本明細書で使用する用語である「CD80断片」とは、CD80の切断型を意味する。また、前記CD80断片は、CD80の細胞外ドメインであり得る。CD80断片の一具体例は、CD80の信号配列であるN末端から1番目乃至34番目のアミノ酸が除外されたものであり得る。具体的に、前記CD80断片の一具体例は、配列番号11の35番目乃至288番目のアミノ酸で構成されたタンパク質であり得る。また、前記CD80断片の一具体例は、配列番号11の35番目乃至242番目のアミノ酸で構成されたタンパク質であり得る。また、前記CD80断片の一具体例は、配列番号11の35番目乃至232番目のアミノ酸で構成されたタンパク質であり得る。また、前記CD80断片の一具体例は、配列番号11の35番目乃至139番目のアミノ酸で構成されたタンパク質であり得る。また、前記CD80断片の一具体例は、配列番号11の142番目乃至242番目のアミノ酸で構成されたタンパク質であり得る。前記一実施例として、CD80断片は、配列番号2のアミノ酸配列を有するものであり得る。
【0117】
また、前記IL-2タンパク質及び前記CD80タンパク質は、リンカー或いはキャリア(carrier)によって結合したものであり得る。具体的に、前記IL-2又はその変異体及び前記CD80(B7-1)又はその断片は、リンカー或いはキャリアによって結合したものであり得る。本明細書において、リンカーとキャリアは同じ意味で使用されてもよい。
【0118】
前記リンカーは、2つのタンパク質を連結する。リンカーの一具体例としては、1個乃至50個のアミノ酸、アルブミン又はその断片、又は免疫グロブリンのFcドメインなどを含むことができる。このとき、前記免疫グロブリンのFcドメインは、免疫グロブリンの重鎖定常領域2(CH2)及び重鎖定常領域3(CH3)を含み、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域及び軽鎖定常領域1(CH1)を含まないタンパク質を意味する。前記免疫グロブリンはIgG、IgA、IgE、IgD又はIgMであってよく、好ましくは、IgG4であってよい。このとき、野生型免疫グロブリンG4のFcドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を有するものであり得る。
【0119】
また、前記免疫グロブリンのFcドメインは、野生型Fcドメインの他、Fcドメイン変異体であり得る。また、本明細書で使用する用語である「Fcドメイン変異体」は、野生型Fcドメインの糖鎖形態(glycosylation pattern)と異なるか、野生型Fcドメインに比べて増加した糖鎖、野生型Fcドメインに比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された(deglycosylated)形態であり得る。また、無糖鎖(aglycosylated)Fcドメインも含まれる。Fcドメイン或いは変異体は、培養条件或いはホストの遺伝子操作によって含量が調節されたシアル酸(sialic acid)、フコシル化(fucosylation)、糖化(glycosylation)を有させたものであり得る。
【0120】
また、化学的方法、酵素的方法及び微生物を使用した遺伝工学的エンジニアリング方法などのように通常の方法で免疫グロブリンのFcドメインの糖鎖を変形させることができる。また、前記Fcドメイン変異体は、免疫グロブリンIgG、IgA、IgE、IgD又はIgMのFc領域が混合された形態であり得る。また、前記Fcドメイン変異体は、前記Fcドメインの一部のアミノ酸が別のアミノ酸に置換された形態であり得る。前記Fcドメイン変異体の一具体例としては、配列番号12のアミノ酸配列を有するものであり得る。
【0121】
融合タンパク質は、Fcドメインをリンカー(或いは、キャリア)にしてそのN末端及びC末端にそれぞれCD80及びIL-2タンパク質が連結されるか或いはIL-2及びCD80が連結された構造を有することができる(
図1a)。FcドメインのN末端或いはC末端とCD80或いはIL-2との連結は、任意にリンカーペプチドによってなされ得る。
【0122】
具体的に、前記融合タンパク質は、下記構造式(I)又は(II)からなるものであり得る:
【0123】
N’-X-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-Y-C’(I)
【0124】
N’-Y-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-X-C’(II)
【0125】
このとき、前記構造式(I)及び(II)において、
【0126】
前記N’は、融合タンパク質のN末端であり、
【0127】
前記C’は、融合タンパク質のC末端であり、
【0128】
前記Xは、CD80タンパク質であり、
【0129】
前記Yは、IL-2タンパク質であり、
【0130】
前記リンカー(1)及びリンカー(2)は、ペプチドリンカーであり、
【0131】
前記n及びmはそれぞれ独立に、O又は1である。
【0132】
好ましくは、前記融合タンパク質は、構造式(I)からなるものであり得る。前記IL-2タンパク質は、上述した通りである。また、前記CD80タンパク質は、上述した通りである。一具体例によると、IL-2タンパク質は、野生型IL-2と比較して、1個から5個までのアミノ酸が置換されたIL-2変異体であり得る。CD80タンパク質は、野生型CD80のN末端或いはC末端から連続して約34個までのアミノ酸残基が欠失した(truncated)断片であり得る。或いは、CD80タンパク質は、T細胞表面受容体(T cell surface receptors)CTLA-4とCD28に結合する活性を有する細胞外免疫グロブリン様ドメインであり得る。
【0133】
具体的に、前記融合タンパク質は、配列番号9、26、28又は30のアミノ酸配列を有するものであり得る。更に他の具体例によると、融合タンパク質は、配列番号9、26、28又は30のアミノ酸配列に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%或いは100%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。このとき、同一性は、例えば、パーセント相同性、NCBI(National Center of Biotechnology Information)のBlastN softwareのような相同性比較ソフトウェアによって決定され得る。
【0134】
前記CD80タンパク質とFcドメインとの間にはペプチドリンカー(1)が含まれ得る。前記ペプチドリンカー(1)は、5個乃至80個の連続したアミノ酸、20個乃至60個の連続したアミノ酸、又は25個乃至50個の連続したアミノ酸、又は30個乃至40個のアミノ酸からなり得る。一具体例として、ペプチドリンカー(1)は、30個のアミノ酸からなり得る。また、ペプチドリンカー(1)は、少なくとも一つのシステインを含むことができ、具体的に、1個、2個又は3個のシステインを含むことができる。また、前記ペプチドリンカー(1)は、免疫グロブリンのヒンジに由来するものであり得る。一具体例では、前記ペプチドリンカー(1)が配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドリンカーであり得る。
【0135】
前記ペプチドリンカー(2)は、1個乃至50個の連続したアミノ酸、又は3個乃至30個の連続したアミノ酸、又は5個乃至15個のアミノ酸からなり得る。一具体例として、前記ペプチドリンカー(2)は、(G4S)n(ここで、nは1~10の整数)であり得る。このとき、(G4S)nにおいて、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり得る。一実施例として、前記ペプチドリンカー(2)が配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチドリンカーであり得る。
【0136】
本発明の他の側面は、前記IL-2タンパク質及び前記CD80タンパク質を含む融合タンパク質が2個結合した二量体を提供する。前記IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質は、上述した通りである。
【0137】
このとき、二量体を構成する融合タンパク質間の結合は、リンカー内に存在するシステインによって二硫化結合によってなされたものであり得るが、これに限定されるものではない。二量体を構成する融合タンパク質は、同一又は個別の融合タンパク質であり得る。好ましくは、前記二量体は、同型二量体(homodimer)であり得る。前記二量体を構成する融合タンパク質の一実施例は、配列番号9のアミノ酸配列を有するタンパク質であり得る。
【0138】
NK細胞培養方法1
【0139】
本発明の他の側面は、i)PBMC(peripheral blood mononuclear cell)からCD3を発現しない細胞を分離する段階;ii)前記段階で分離されたCD3を発現しない細胞からCD56を発現する細胞を分離する段階;及びiii)IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質二量体の存在下で、前記分離された細胞を培養する段階;を含むナチュラルキラー細胞を培養する方法を提供する。
【0140】
本発明で使用する用語である「PBMC」とは、末梢血液単核細胞(peripheral blood mononuclear cell)を意味する。前記PBMCは、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞)及び単核球で構成され、全血からフィコール(Ficoll)と遠心分離を用いて分離することができる。前記PBMCは、個体から収得された全血から分離されたものであり得る。
【0141】
前記融合タンパク質二量体は、ナチュラルキラー細胞培養用組成物で既に説明した通りである。前記融合タンパク質二量体は、1nM乃至500nMの濃度で処理され得る。具体的に、前記融合タンパク質二量体は、1nM乃至500nM、5nM乃至300nM又は10nM乃至150nMの濃度で処理され得る。本発明の一実施例では、前記融合タンパク質二量体を1.6nM及び50nMの濃度で処理した。
【0142】
前記分離された細胞を培養する方法は、当業界に広く知られている方法を用いて行うことができる。具体的に、前記分離された細胞を培養する段階において、培養温度は、27℃乃至40℃又は30℃乃至37℃であり得る。本発明の一実施例では、37℃の温度で培養した。また、前記分離された細胞を培養する段階において、培養時のCO2濃度条件は1%乃至10%であってよく、好ましくは、5%CO2の条件で培養することができる。
【0143】
前記分離された細胞を培養する段階において、培養期間は5日乃至25日、6日乃至23日又は7日乃至21日であり得る。本発明の一実施例では、培養期間は20日で、5日目から有意味な増殖差が表れた。
【0144】
収得されたNK細胞及びその用途
【0145】
本発明の更に他の側面は、前記ナチュラルキラー細胞の培養方法で製造されたナチュラルキラー細胞を提供する。
【0146】
前記ナチュラルキラー細胞は、CD16及びNKp46の発現が増加したものであり得る。前記ナチュラルキラー細胞は、グランザイムB及びパーフォリンの発現が増加したものであり得る。前記ナチュラルキラー細胞の培養方法によって培養されたナチュラルキラー細胞は凍結が可能であり、再び解凍する場合にも細胞の機能が損傷しない。
【0147】
前記ナチュラルキラー細胞は、CD16及びNKp46などの活性化受容体(activating receptor)の発現が高く、癌細胞株に対する殺害能及びグランザイムB及びパーフォリンの分泌が増加するので、優れた抗癌効果を期待することができる。よって、臨床適用が可能な多量の活性化されたナチュラルキラー細胞を用いて癌治療に有効な治療剤を製造することができる。また、前記ナチュラルキラー細胞は、NKp30、DNAM1の発現が高い場合がある。
【0148】
本発明の更に他の側面は、前記ナチュラルキラー細胞を有効成分として含む癌予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0149】
また、前記ナチュラルキラー細胞の培養方法によって製造されたナチュラルキラー細胞は、医薬組成物の総重量に対して10重量%乃至95重量%で含むことができる。また、前記医薬組成物は、前記有効成分以外に同一又は類似の機能を示す有効成分を1種以上さらに含むことができる。
【0150】
前記医薬組成物の投与量は、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含まれた有効成分及び他の成分の種類及び含量、剤形の種類、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路、組成物の分泌率、治療期間、同時に使用される薬物を始めとした多様な因子によって調節され得る。
【0151】
しかし、好ましい効果のために、前記医薬組成物の投与量は、有効成分であるナチュラルキラー細胞を基準にして1×102cells/kg乃至1.0×1013cells/kgであってよく、1×107cells/kg乃至1.5×1011cells/kgであってよい。このとき、投与は、1日に1回行うことができ、数回に分けて行うこともできる。
【0152】
また、前記医薬組成物は、当業界に公知となっている多様な方法で個体に投与され得る。前記投与経路は、投与方法、体液の体積、粘度などを考慮した上で、通常の技術者が適宜選択することができる。
【0153】
前記癌は、胃癌、肝癌、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、子宮頸癌、甲状腺癌、喉頭癌、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部癌、唾液腺癌及びリンパ腫からなる群から選ばれるいずれか一つであり得る。
【0154】
収得されたNK細胞を用いた治療方法
【0155】
本発明の更に他の側面において、前記NK細胞を癌にかかった個体に投与する段階を含む癌治療方法を提供する。このとき、NK細胞及び癌は、上述した通りである。本発明の更に他の側面において、癌の治療のための前記NK細胞の用途を提供する。
【0156】
NK細胞培養方法2
【0157】
本発明の更に他の側面は、i)PBMCからCD3を発現しない細胞を分離する段階;及びii)IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質二量体の存在下で、前記分離された細胞を培養する段階;を含むナチュラルキラー細胞を培養する方法を提供する。
【0158】
本発明の更に他の側面は、前記ナチュラルキラー細胞の培養方法で製造されたナチュラルキラー細胞を提供する。本発明の更に他の側面は、前記ナチュラルキラー細胞を有効成分として含む癌予防又は治療用医薬組成物を提供する。本発明の更に他の側面において、前記NK細胞を癌にかかった個体に投与する段階を含む癌治療方法を提供する。このとき、NK細胞及び癌は上述した通りである。本発明の更に他の側面において、癌の治療のための前記NK細胞の用途を提供する。
【0159】
前記ナチュラルキラー細胞は、CD16及びNKp46などの活性化受容体(activating receptor)の発現が高く、癌細胞株に対する殺害能及びグランザイムB及びパーフォリンの分泌が増加するので、優れた抗癌効果を期待することができる。よって、臨床適用が可能な多量の活性化されたナチュラルキラー細胞を用いて癌治療に有効な治療剤を製造することができる。また、前記ナチュラルキラー細胞は、NKp30、DNAM1の発現が高い場合がある。
【0160】
前記癌は、胃癌、肝癌、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、子宮頸癌、甲状腺癌、喉頭癌、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部癌、唾液腺癌及びリンパ腫からなる群から選ばれるいずれか一つであり得る。
【0161】
NK細胞培養方法3
【0162】
本発明の更に他の側面は、i)PBMCからCD56を発現する細胞を分離する段階;及びii)IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質二量体の存在下で、前記分離された細胞を培養する段階;を含むナチュラルキラー細胞を培養する方法を提供する。
【0163】
本発明の更に他の側面は、前記ナチュラルキラー細胞の培養方法で製造されたナチュラルキラー細胞を提供する。前記ナチュラルキラー細胞は、CD16及びNKp46などの活性化受容体(activating receptor)の発現が高く、癌細胞株に対する殺害能及びグランザイムB及びパーフォリンの分泌が増加するので、優れた抗癌効果を期待することができる。よって、臨床適用が可能な多量の活性化されたナチュラルキラー細胞を用いて癌治療に有効な治療剤を製造することができる。また、前記ナチュラルキラー細胞は、NKp30、DNAM1の発現が高い場合がある。
【0164】
本発明の更に他の側面は、前記ナチュラルキラー細胞を有効成分として含む癌予防又は治療用医薬組成物を提供する。本発明の更に他の側面において、前記NK細胞を癌にかかった個体に投与する段階を含む癌治療方法を提供する。このとき、NK細胞及び癌は上述した通りである。本発明の更に他の側面において、癌の治療のための前記NK細胞の用途を提供する。
【0165】
前記癌は、胃癌、肝癌、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、子宮頸癌、甲状腺癌、喉頭癌、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部癌、唾液腺癌及びリンパ腫からなる群から選ばれるいずれか一つであり得る。
【0166】
NK細胞培養方法4
【0167】
本発明の更に他の側面は、IL-2又はその変異体及びCD80又はその断片を含む融合タンパク質二量体の存在下で、PBMCを培養する段階を含むPBMC内のナチュラルキラー細胞の活性を促進させる方法を提供する。
【0168】
本 発明の更に他の側面は、前記PBMC内のナチュラルキラー細胞の活性を促進させる方法で製造されたPBMCを提供する。前記PBMC内のナチュラルキラー細胞は、CD16及びNKp46などの活性化受容体(activating receptor)の発現が高く、癌細胞株に対する殺害能及びグランザイムB及びパーフォリンの分泌が増加するので、優れた抗癌効果を期待することができる。よって、臨床適用が可能な多量の活性化されたナチュラルキラー細胞を含むPBMCを用いて癌治療に有効な治療剤を製造することができる。また、前記PBMC内のナチュラルキラー細胞は、NKp30、DNAM1の発現が高い場合がある。
【0169】
本発明の更に他の側面は、前記PBMCを有効成分として含む癌予防又は治療用医薬組成物を提供する。本発明の更に他の側面において、前記NK細胞を癌にかかった個体に投与する段階を含む癌治療方法を提供する。このとき、NK細胞及び癌は上述した通りである。本発明の更に他の側面において、癌の治療のための前記NK細胞の用途を提供する。
【0170】
前記癌は、胃癌、肝癌、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、子宮頸癌、甲状腺癌、喉頭癌、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部癌、唾液腺癌及びリンパ腫からなる群から選ばれるいずれか一つであり得る。
【実施例】
【0171】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎなく、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【0172】
I.GI-101、ナチュラルキラー細胞及びナチュラルキラー細胞培養組成物の製造
【0173】
製造例1.hCD80-Fc-IL-2変異体(2M)の製造:GI-101
【0174】
ヒトCD80断片、Fcドメイン及びIL-2変異体を含む融合タンパク質を生産するために、シグナルペプチド(配列番号1)、CD80断片(配列番号2)、リンカーが結合したIgヒンジ(配列番号3)、Fcドメイン(配列番号4)、リンカー(配列番号5)及び2個のアミノ酸が置換されたIL-2変異体(2M)(R38A、F42A)(配列番号6)をN末端から順次に含む融合タンパク質をコードする塩基配列(配列番号8)を含むポリヌクレオチドを、ThermoFisher Scientific社のInvitrogen GeneArt Gene Synthesisサービスを用いてポリヌクレオチド合成してpcDNA3_4ベクターに積載した。また、前記ベクターをCHO細胞(Expi-CHOTM)に導入し、配列番号9の融合タンパク質を発現させた。ベクターを導入した後、37℃、125RPM、CO2 8%濃度の環境において7日培養後に培養液を回収し、融合タンパク質を精製した。前記精製した融合タンパク質二量体を「GI-101」と命名した。
【0175】
精製は、MabSelect SuRe protein Aレジンが含まれたクロマトグラフィーを用いて行った。25mMトリス、25mM NaCl、pH 7.4の条件で融合タンパク質を結合させた。その後、100mM NaCl、pH 3の100mMの酢酸で溶出した。pH 9の20%の1Mトリス-HClを回収用チューブに入れた後、融合タンパク質を回収した。回収した融合タンパク質をPBSバッファーで16時間透析して変えた。
【0176】
その後、TSKgel G3000SWXLカラム(TOSOH Bioscience)を用いてサイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)で時間による280nm波長における吸光度を測定し、高濃度融合タンパク質を確保した。このとき、分離精製された融合タンパク質は、還元(R)又は非還元(NR)条件下でSDS-PAGEを行い、クマシーブルー(coomassie blue)で染色し、その純度を確認した(
図1b)。NanoDropを用いた検出時に、2.78mg/mlの濃度で融合タンパク質が含まれたことを確認した(
図1c)。また、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分析した結果は、
図3に示す通りである。
【0177】
製造例2.Fc-IL-2変異体(2M)二量体の製造:Fc-IL-2v2
【0178】
Fcドメイン及びIL-2変異体を含む融合タンパク質を生産するために、シグナルペプチド(配列番号1)、Igヒンジ(配列番号38)、Fcドメイン(配列番号4)、リンカー(配列番号5)及び2個のアミノ酸が置換されたIL-2変異体(2M)(R38A、F42A)(配列番号6)を含む融合タンパク質をコードする塩基配列(配列番号45)をN末端から順次に含むポリヌクレオチドを、ThermoFisher Scientific社のInvitrogen GeneArt Gene Synthesisサービスを用いてポリヌクレオチド合成してpcDNA3_4ベクターに積載した。また、前記ベクターをCHO細胞(Expi-CHOTM)に導入し、配列番号44の融合タンパク質を発現させた。ベクターを導入した後、37℃、125RPM、CO2 8%濃度の環境において7日培養後に培養液を回収し、融合タンパク質二量体を精製した。前記精製した融合タンパク質二量体を「Fc-IL2v2」と命名した。
【0179】
前記精製及び融合タンパク質の回収は、前記製造例1と同じ方法で行った。分離精製された融合タンパク質は、還元(R)又は非還元(NR)条件下でSDS-PAGEを行い、クマシーブルーで染色し、その純度を確認した(
図3a)。その結果、前記融合タンパク質が二量体を形成することを確認した。また、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分析した結果は、
図3bに示す通りである。
【0180】
製造例3.Fc-IL-2二量体の製造:Fc-IL-2wt
【0181】
Fcドメイン及び野生型IL-2を含む融合タンパク質を生産するために、シグナルペプチド(配列番号1)、Igヒンジ(配列番号38)、Fcドメイン(配列番号4)、リンカー(配列番号5)及び野生型IL-2(配列番号10)を含む融合タンパク質をコードする塩基配列(配列番号43)をN末端から順次に含むポリヌクレオチドを、ThermoFisher Scientific社のInvitrogen GeneArt Gene Synthesisサービスを通じてポリヌクレオチド合成してpcDNA3_4ベクターに積載した。また、前記ベクターをCHO細胞(Expi-CHOTM)に導入し、配列番号42の融合タンパク質を発現させた。ベクターを導入した後、37℃、125RPM、CO2 8%濃度の環境において7日培養後に培養液を回収し、融合タンパク質二量体を精製した。前記精製した融合タンパク質二量体を「Fc-IL2wt」と命名した。
【0182】
前記精製及び融合タンパク質の回収は、前記製造例1と同じ方法で行った。分離精製された融合タンパク質は、還元(R)又は非還元(NR)条件下でSDS-PAGEを行い、クマシーブルーで染色し、その純度を確認した(
図3c)。その結果、前記融合タンパク質が二量体を形成することを確認した。また、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分析した結果は、
図3dに示す通りである。
【0183】
製造例4.hCD80-Fc-IL-2野生型二量体の製造:hCD80-Fc-IL-2wt
【0184】
ヒトCD80断片、Fcドメイン及びIL-2野生型タンパク質を含む融合タンパク質を生産するために、シグナルペプチド(配列番号1)、CD80断片(配列番号2)、リンカーが結合されたIgヒンジ(配列番号3)、Fcドメイン(配列番号4)、リンカー(配列番号5)及びIL-2野生型(配列番号10)をN末端から順次に含む融合タンパク質をコードする塩基配列(配列番号41)を含むポリヌクレオチドを、ThermoFisher Scientific社のInvitrogen GeneArt Gene Synthesisサービスを通じてポリヌクレオチド合成してpcDNA3_4ベクターに積載した。また、前記ベクターをCHO細胞(Expi-CHOTM)に導入し、配列番号46の融合タンパク質を発現させた。ベクターを導入した後、37℃、125RPM、CO2 8%濃度の環境において7日培養後に培養液を回収し、融合タンパク質二量体を精製した。前記精製した融合タンパク質二量体を「hCD80-Fc-IL2wt」と命名した。
【0185】
精製は、MabSelect SuRe protein Aレジンが含まれたクロマトグラフィーを用いて行った。25mMトリス、25mM NaCl、pH 7.4の条件で融合タンパク質を結合させた。その後、100mM NaCl、pH 3の100mMの酢酸で溶出した。pH 9の20%の1Mトリス-HClを回収用チューブに入れた後、融合タンパク質を回収した。回収した融合タンパク質をPBSバッファーで16時間透析して変えた。
【0186】
その後、TSKgel G3000SWXLカラム(TOSOH Bioscience)を用いてサイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)で時間による280nm波長における吸光度を測定し,高濃度融合タンパク質を確保した。このとき、分離精製された融合タンパク質は、還元(R)又は非還元(NR)条件下でSDS-PAGEを行い、クマシーブルー(coomassie blue)で染色し、その純度を確認した(
図4a)。その結果、前記融合タンパク質が二量体を形成することを確認した。また、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分析した結果は、
図4bに示す通りである。
【0187】
製造例5.hCD80-Fc二量体の製造:hCD80-Fc
【0188】
ヒトCD80断片及びFcドメインを含む融合タンパク質を生産するために、シグナルペプチド(配列番号1)、CD80断片(配列番号2)、リンカーが結合されたIgヒンジ(配列番号3)及びFcドメイン(配列番号4)をN末端から順次に含む融合タンパク質をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号39)を、ThermoFisher Scientific社のInvitrogen GeneArt Gene Synthesisサービスを通じてポリヌクレオチド合成してpcDNA3_4ベクターに積載した。また、前記ベクターをCHO細胞(Expi-CHOTM)に導入し、配列番号40の融合タンパク質を発現させた。ベクターを導入した後、37℃、125RPM、CO2 8%濃度の環境において7日培養後に培養液を回収し、融合タンパク質二量体を精製した。前記精製した融合タンパク質二量体を「hCD80-Fc」と命名した。
【0189】
精製は、MabSelect SuRe protein Aレジンが含まれたクロマトグラフィーを用いて行った。25mMトリス、25mM NaCl、pH 7.4の条件で融合タンパク質を結合させた。その後、100mM NaCl、pH 3の100mMの酢酸で溶出した。pH 9の20%の1Mトリス-HClを回収用チューブに入れた後、融合タンパク質を回収した。回収した融合タンパク質をPBSバッファーで16時間透析して変えた。
【0190】
その後、TSKgel G3000SWXLカラム(TOSOH Bioscience)を用いてサイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)で時間による280nm波長における吸光度を測定し,高濃度融合タンパク質を確保した。このとき、分離精製された融合タンパク質は、還元(R)又は非還元(NR)条件下でSDS-PAGEを行い、クマシーブルー(coomassie blue)で染色し、その純度を確認した(
図2a)。その結果、前記融合タンパク質が二量体を形成することを確認した。また、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分析した結果は、
図2bに示す通りである。
【0191】
準備例1.ナチュラルキラー細胞培養培地の製造
【0192】
下記の表1乃至表4の組成を有する基本培養培地別に下記の表5の添加条件1乃至4に該当する物質をそれぞれ添加し、ナチュラルキラー細胞培養培地組成物を製造した。
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
実施例1.末梢血液単核細胞(PBMC)由来CD3(-)CD56(+)ナチュラルキラー細胞の準備
【0199】
CD3(-)細胞を収得するために、PBMC(peripheral blood mononuclear cell、Zen-Bio.Inc、NC 27709、USA、Cat#:SER-PBMC-200-F)に対して、ADAM-MC2自動細胞計数器(NanoEnTek、(株)コスモジンテック社製)を用いて細胞数を測定した。前記PBMCを新しいチューブに移した後、300×g、4℃の温度で5分間遠心分離した。PBSに0.5%(v/v)BSA(bovine serum albumin)と2mM濃度のEDTAが含まれたMACSバッファー(pH 7.2)を製造した。遠心分離が終了した後、1×107細胞数当たり80μlのMACsバッファーと20μlのCD3磁性ビーズ(Miltenyi biotech、130-050-101)を処理し、細胞ペレットを懸濁した後、4℃の温度で15分間反応させた。洗浄のために、10mlのMACsバッファーを入れ、300×g、4℃の温度で10分間遠心分離した後、0.5mlのMACsバッファーに細胞ペレットを再懸濁した。
【0200】
LDカラム(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany、Cat#:130-042-901)にまず2mlのMACsバッファーを流した後、前記細胞懸濁液を流した。その後、LDカラムを通過して出るCD3(-)細胞を収得した。このとき、LDカラム内に残っている細胞が十分に分離され得るように、2mlのMACsバッファーを3回流し、CD3(-)細胞を収得した。収得したCD3(-)細胞に対して細胞計数器を用いて細胞数を測定した後、新しいチューブに入れ、300×g、4℃の温度で5分間遠心分離した。その後、上澄液を除去した後、1×107個の細胞数当たり80μlのMACsバッファーと20μlのCD56磁性ビーズ(Miltenyi biotech、Cat#:130-050-401)を入れ、4℃の温度で15分間反応させた。洗浄のために、10mlのMACsバッファーを入れ、300×g、4℃の温度で10分間遠心分離した後、0.5mlのMACsバッファーに細胞ペレットを再懸濁した。
【0201】
LSカラム(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany、Cat#:130-042-901)にまず3mlのMACsバッファーを流した後、前記細胞懸濁液を流した。このとき、LSカラム内に残っている細胞が十分に分離され得るように2mlのMACsバッファーを3回流した。その後、LSカラムを磁性スタンド(Magnet stand)から分離した後、5mlのMACsバッファーを入れ、ピストンで圧力を与えてCD3(-)CD56(+)ナチュラルキラー細胞を収得した。前記収得したCD3(-)CD56(+)ナチュラルキラー細胞を新しいチューブに入れ、300×g、4℃の温度で5分間遠心分離した。上澄液を除去した後、培養条件を考慮した上で、表1乃至表4の基本培養培地に細胞を懸濁した。前記懸濁された細胞の細胞数は、細胞計数器を用いて測定した。
【0202】
実施例2.末梢血液単核細胞(PBMC)由来CD3(-)CD56(+)ナチュラルキラー細胞の培養
【0203】
NK Cell Activation/Expansion Kit(Cat#:130-112-968)(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)内に含まれているCD335(NKp46)-Biotin 100μLとCD2-Biotin 100μLを1.5mLマイクロチューブに入れて混ぜた後、Anti-Biotin MACSSiBead Particles 500μLを入れて混ぜた。その後、MACsバッファー300μLを入れ、マイクロチューブローテーター(Microtube Rotator)を用いて2℃~8℃で2時間にわたって混ぜた。細胞数を考慮した上で、1×106 cells当たり5μLのNK activation Beadsを新しいチューブに移した。1mLのPBSを入れ、300×gで5分間遠心分離した。上澄液を除去した後、使用するNK MACs培地(Cat#:130-094-483)(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)を106 NK cells当たり5μLを基準にして追加し、ビーズ(bead)を解した後、実施例1で分離されたCD3(-)CD56(+)ナチュラルキラー細胞に接種した。
【0204】
次に、前記準備されたCD3(-)CD56(+)ナチュラルキラー細胞を、総細胞数が2.5×105になるように準備例1で製造した添加物質を含む培養培地組成物に懸濁して48-ウェルプレートに播種した後、37℃、5%CO2の条件下で培養した。その後、2日間隔で細胞数を確認し、細胞が培養容器の80%以上を占める(Confluency)場合、48-ウェルプレート、24-ウェルプレート、12-ウェルプレート、6-ウェルプレート、25Tフラスコの順に継代培養し、最終的に、21日目に全ての細胞を収穫した。
【0205】
実施例3.細胞数の測定及び細胞生存率の比較
【0206】
培養されたナチュラルキラー細胞の総細胞数及び生存率を5日、9日、11日、13日、15日、17日、21日に細胞計数器(ADAM-MC2)を用いて測定した。このとき、処理された物質及び培養培地の種類によって細胞増殖速度が異なるので、継代基準である80%を満たす速度に合わせて前記日付に細胞数を測定した。
【0207】
準備例1で製造された培養培地組成物の条件下で培養されたCD3-CD56+細胞の総細胞数及び生存率を比較した結果は、表6乃至表13、及び
図5a乃至
図12bに示した。
【0208】
その結果、製造例1によって製造されたGI-101が添加された培養培地組成物は、4種の基本培養培地(表1乃至表4)の条件において、処理濃度と関係なく、いずれも対照群(CD80-Fc+Fc-IL2v2、CD80-Fc+Fc-IL2WT添加)に比べてナチュラルキラー細胞の総細胞数が多いことを確認した(
図5a、
図5b、
図7a、
図7b、
図9a、
図9b、
図11a及び
図11b)。
【0209】
【0210】
前記結果を通じて、GI-101は、基本培養培地及び濃度と関係なく、対照群(CD80-Fc+Fc-IL2v2、CD80-Fc+Fc-IL2WT添加)よりもナチュラルキラー細胞増殖能力の向上及び生存率に重要な役割をすることが確認された。
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
II.ナチュラルキラー細胞培養組成物を用いたナチュラルキラー細胞の特性分析
【0220】
実施例4.ナチュラルキラー細胞の純度確認
【0221】
実施例2で収得したCD3-CD56+ナチュラルキラー細胞をそれぞれ300×gの条件で5分間遠心分離し、上澄液を除去し、FACSバッファー1mlを入れてペレットを解した。その後、PBSに3%(v/v)FBS、10mM EDTA、20mM HEPES、10μg/mlポリミキシンB、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウムを添加して製造したFACSバッファー1mlを入れ、細胞ペレットを再懸濁した。その後、細胞計数器を用いて2×106細胞数/mlになるようにFACSバッファーで希釈した。
【0222】
5ml FACSチューブに希釈した細胞溶液を100μlずつ入れ、FACSバッファー100μlをさらに入れ、PerCPが標識された抗-ヒトCD3抗体(PerCP human anti-CD3(Clone UCHT1))及びPE/cy7が標識された抗-ヒトCD56抗体(PE/cy7 human anti-CD56(Clone B159))を処理した。その後、20分間4℃の温度で反応させた後、200μl FACSバッファーを入れ、1,500rpmで3分間遠心分離した。上澄液を除去し、200μl FACSバッファーを入れて懸濁した後、フローサイトメーター(Cytek(登録商標) Aurora、Cytek、Fremont、CA、USA)を用いて細胞の表現型を確認した。
【0223】
前記実験で使用された抗体情報は表14に示した。また、準備例1で製造された培養培地組成物の条件下で21日間培養されたCD3-CD56+ナチュラルキラー細胞の純度を測定し、これを
図13乃至
図16に示した。
【0224】
【0225】
実施例5.ナチュラルキラー細胞の活性及び阻害マーカーの確認
【0226】
実施例2で収得したCD3-CD56+ナチュラルキラー細胞をそれぞれ300×gの条件で5分間遠心分離し、上澄液を除去し、FACSバッファー1mlを入れてペレットを解した。
【0227】
PBSに3%(v/v)FBS、10mM EDTA、20mM HEPES、10μg/mlポリミキシンB、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウムを添加して製造したFACSバッファー1mlを入れ、細胞ペレットを再懸濁した。その後、細胞計数器を用いて2×106細胞数/mlになるようにFACSバッファーで希釈した。5ml FACSチューブに希釈した細胞溶液を100μlずつ入れ、フローサイトメーターを用いてPe-CF594が標識された抗-ヒトCD16抗体(PE-CF594 human anti-CD16(Clone 3G8))、APCが標識された抗-ヒトDNAM1抗体(APC human anti-DNAM1(Clone 11A8))、BV605が標識された抗-ヒトNKG2C抗体(BV605 human anti-NKG2C(Clone 134591))、BV650が標識された抗-ヒトNKG2D抗体(BV650 human anti-NKG2D(Clone 1D11))、BB515が標識された抗-ヒトNKp46抗体(BB515 human anti-NKp46(Clone 9E2))、BV480が標識された抗-ヒトNKp30抗体(BV480 human anti-NKp30(Clone p30-15))、PEが標識された抗-ヒトPD-1抗体(PE human anti-PD-1(Clone EH12.2H7))、及びAPCが標識された抗-ヒトNKG2A抗体(APC anti-human NKG2A(Clone 131411))を用いて確認した。その後、20分間4℃の温度で反応させた後、100μl FACSバッファーを入れ、1,500rpmで3分間遠心分離した。
【0228】
上澄液を除去し、200μl FACSバッファーを入れて懸濁した後、フローサイトメーター(Cytek(登録商標) Aurora、Cytek、Fremont、CA、USA)を用いて細胞の表現型を確認した。前記実験で使用された抗体情報は表15に示した。準備例1で製造された培養培地組成物の条件下で21日間培養されたCD3-CD56+ナチュラルキラー細胞の活性及び阻害マーカーを確認し、これを
図17乃至
図24に示した。
【0229】
【0230】
実施例6.ナチュラルキラー細胞のグランザイムB、パーフォリン、インターフェロンガンマ分泌能の確認
【0231】
実施例2で収得したCD3-CD56+ナチュラルキラー細胞のグランザイム及びパーフォリンの分泌能を確認するために、細胞内染色(intracellular staining)を通じてナチュラルキラー細胞内のグランザイムB、パーフォリン、インターフェロンガンマの発現量を測定した。培養されたナチュラルキラー細胞を300×gの条件で5分間遠心分離し、上澄液を除去した。その後、細胞計数器を用いて2×106細胞数/mlになるように各培養組成物で希釈した。
【0232】
準備された細胞を96-ウェルプレートのそれぞれのウェルに200μlずつ分注した後、1%(v/v)Stimulation Cocktail(1X)(ThermoScientific、Waltham、MA、USA)を入れ、37℃、CO2の条件で4時間反応させた。その後、プレートを300×gの条件で5分間遠心分離し、上澄液を除去した。その後、PBSに3%(v/v)FBS、10mM EDTA、20mM HEPES、10μg/mlポリミキシンB、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウムを添加して製造したFACSバッファー100μlを入れ、細胞ペレットを再懸濁した。上澄液を除去し、固定(fixation)及び浸透(permeation)のために100μl BD Cytofix/CytopermTMバッファー(perm/fixation buffer、BD science)を入れて懸濁した後、これを30分間4℃の温度で反応させた。FACSバッファー100μlをさらに入れ、1,500rpmで3分間遠心分離した。
【0233】
Pe/cy7が標識された抗-ヒトグランザイムB抗体(PE/cy7 anti-human Granzyme B(Clone NGZB))、及びAPCが標識された抗-ヒトパーフォリン抗体(APC anti-human Perforin(Clone B-D48))、BV421が標識された抗-ヒトインターフェロンガンマ抗体(BV421 anti-human IFN-gamma(Clone B27))を処理した。その後、20分間4℃の温度で反応させた後、100μl FACSバッファーを入れ、1,500rpmで3分間遠心分離した。上澄液を除去し、200μl FACSバッファー(fixation buffer)を入れて懸濁した後、フローサイトメーターを用いて細胞の発現量を確認した。
【0234】
前記実験で使用された抗体情報は表16に示した。準備例1で製造された培養培地組成物の条件下で21日間培養されたCD3-CD56+ナチュラルキラー細胞のマーカーを確認し、これを
図25乃至
図28に示した。
【0235】
【0236】
III.培養組成物によるナチュラルキラー細胞の癌細胞殺害能分析
【0237】
実施例8.癌細胞に対するナチュラルキラー細胞の脱顆粒能及び死滅効果の確認
【0238】
具体的に、K562癌細胞株(American Type Culture Collection、ATCC)を下記の表17に示した細胞数になるようにPBSに希釈させ、これを各ウェルに分注した。
【0239】
【0240】
具体的に、K562癌細胞株を1×107細胞数/mlになるように各培養組成物で希釈させた後、各ウェル当たり前記表に定められた細胞数によって分注した。その後、ナチュラルキラー細胞も、5×106細胞数/mlになるように各培養組成物で希釈させた後、各ウェル当たり前記表に定められた細胞数によって分注し、30×gの条件で3分間遠心分離させた。その後、37℃、5%CO2の条件で4時間培養した後、BV421が標識された抗-ヒトCD3抗体(BV421 human anti-CD3(Clone UCHT1))、PEが標識された抗-ヒトCD16抗体(PE human anti-CD16(Clone 3G8))、PE/cy7が標識された抗-ヒトCD56抗体(PE/cy7 human anti-CD56(Clone B159))及びFITCが標識された抗-ヒトCD107a抗体(Clone H4A3)を処理し、これを氷の上で20分間反応させた。
【0241】
その後、100μlのFACSバッファーを入れ、1,300rpm、4℃の条件で5分間遠心分離した。上澄液を除去した後、7-AAD Viability Staining Solutionを処理し、光を遮断して常温で15分間反応させた。その後、100μlのFACSバッファーを入れ、1,300rpm、4℃の条件で5分間遠心分離した。再び200μlのFACSバッファーを入れ、1,300rpm、4℃の条件で5分間遠心分離した。前記過程をもう一度繰り返した後、上澄液を除去し、400μlのFACSバッファーを入れ、フローサイトメーター(Cytek(登録商標) Aurora、Cytek、Fremont、CA、USA)を用いて分析した。
【0242】
前記実験を通じて表1乃至表4の基本培養培地に表5の添加物質をそれぞれ50nM添加した組成物で21日間培養されたナチュラルキラー細胞の脱顆粒能及び死滅効果は、
図29乃至
図34に示した。
【配列表】