(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】カーボン材料分散液
(51)【国際特許分類】
C01B 32/174 20170101AFI20231108BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20231108BHJP
C08L 55/00 20060101ALI20231108BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20231108BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20231108BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20231108BHJP
C09C 1/44 20060101ALI20231108BHJP
C01B 32/15 20170101ALN20231108BHJP
【FI】
C01B32/174 ZNM
C01B32/194
C08L55/00
C08K3/04
C08F290/06
C09D17/00
C09C1/44
C01B32/15
(21)【出願番号】P 2022535301
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2021025187
(87)【国際公開番号】W WO2022009805
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2020118584
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】嶋中 博之
(72)【発明者】
【氏名】村上 賀一
(72)【発明者】
【氏名】釜林 純
(72)【発明者】
【氏名】土居 誠司
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-075795(JP,A)
【文献】特開2010-37537(JP,A)
【文献】特開2012-021100(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024800(WO,A1)
【文献】特開2010-173886(JP,A)
【文献】特開2008-280450(JP,A)
【文献】特開2009-196853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 20/10、20/56、290/06
C09D 17/00
C09C 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、及びグラフェンからなる群より選択される少なくとも一種のカーボン材料と、有機溶剤と、高分子分散剤と、を含有し、
前記高分子分散剤が、下記一般式(1)で表される構成単位(1)3~55質量%、下記一般式(3)で表される構成単位(3)45~90質量%、及びこれらの構成単位と連結するその他の構成単位(4)0.5~20質量%(但し、すべての構成単位の合計を100質量%とする)を有するポリマーであり、
前記構成単位(4)が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルカプロラクトン、ビニルイミダゾール、α-メチルスチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも一種のモノマーに由来する構成単位を含み、
前記高分子分散剤のアミン価が100mgKOH/g以下であり、数平均分子量が5,000~20,000であるカーボン材料分散液。
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Bはエチレン基又はプロピレン基を示し、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、Arはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ビス(トリフルオロメチル)スルホイミド、又はビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを示し、pは任意の繰り返し数を示す)
(前記一般式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Qはエチレン基又はメチルエチレン基を示し、YはO、NHCOO、又はNHCONHを示し、m及びnは、相互に独立に、0以上の平均繰り返し単位数を示すとともに、m+n=20~100であり、R
3は炭素数1~18のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基を示し、rは任意の繰り返し数を示す)
【請求項2】
前記高分子分散剤が、下記一般式(2)で表される構成単位(2)をさらに有するポリマーである請求項1に記載のカーボン材料分散液。
(前記一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Bはエチレン基又はプロピレン基を示し、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、qは任意の繰り返し数を示す)
【請求項3】
前記構成単位(1)、前記構成単位(2)、及び前記構成単位(3)が、それぞれ下記一般式(1-1)、下記一般式(2-1)、及び下記一般式(3-1)で表され、
前記構成単位(4)が、α-メチルスチレンに由来する構成単位を含む請求項2に記載のカーボン材料分散液。
(前記一般式(1-1)中、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、Arはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ビス(トリフルオロメチル)スルホイミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを示し、pは任意の繰り返し数を示す)
(前記一般式(2-1)中、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、qは任意の繰り返し数を示す)
(前記一般式(3-1)中、YはNHCOO又はNHCONHを示し、m及びnは、相互に独立に、0以上の平均繰り返し単位数を示すとともに、m+n=20~100であり、R
3は炭素数1~18のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基を示し、rは任意の繰り返し数を示す)
【請求項4】
前記カーボン材料の含有量が15質量%以下であり、
前記カーボン材料100質量部に対する前記高分子分散剤の含有量が、10~200質量部である請求項1~3のいずれか一項に記載のカーボン材料分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン材料分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト等のカーボン材料(又は「ナノカーボン材料」とも記す)は、炭素原子の共有結合によって形成される六員環グラファイト構造を有する。これらのカーボン材料は、導電性や伝熱性等の特性を示す材料であることから、これらの特性を活かす使用方法が幅広い分野で検討されている。例えば、カーボン材料の電気的性質、熱的性質、及びフィラーとしての性質等に注目し、帯電防止剤、導電材料、及びプラスチック補強材としての使用方法がこれまでに提案されている。さらに、半導体、燃料電池電極、ディスプレーの陰極線等を構成するための材料としての開発が進められている。
【0003】
これらの用途には、通常、有機溶剤等の液媒体中にカーボン材料を分散させたカーボン材料分散液の状態で用いられる。そして、このようなカーボン材料分散液に対しては、カーボン材料が液媒体中に均一かつ安定して分散する、いわゆる分散性に優れていることが要求される。さらに、このような分散性が長期間にわたって安定して維持されることも要求される。但し、ナノサイズのカーボン材料は、表面エネルギーが高く、強いファンデルワールス力が働くために、凝集しやすい性質を有している。したがって、分散してもすぐに凝集してしまうといった課題を有する。
【0004】
このような課題を解決し、液媒体中にカーボン材料を安定して分散させるべく、分散剤が使用されることがある。例えば、アルカノールアミン塩等のカチオン性界面活性剤や、スチレン-アクリル系樹脂等の高分子分散剤を分散剤として用いた、カーボンナノチューブ等のカーボン材料を液媒体中に分散させることが提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-174084号公報
【文献】特表2013-537570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2で提案された分散剤を用いることで、カーボン材料を液媒体中にある程度分散させることが可能ではあった。しかし、分散性が不十分であったり、分散後に再凝集しやすかったりするので、分散性能が必ずしも十分であるとはとはいえず、さらなる改良の余地があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、有機溶剤を含む液媒体中にカーボン材料が高濃度であっても再凝集しにくく安定して分散されている、導電性に優れた塗膜を形成可能なインキ等の各種製品を構成しうるカーボン材料分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示すカーボン材料分散液が提供される。
【0009】
[1]カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、及びグラフェンからなる群より選択される少なくとも一種のカーボン材料と、有機溶剤と、高分子分散剤と、を含有し、前記高分子分散剤が、下記一般式(1)で表される構成単位(1)3~55質量%、下記一般式(3)で表される構成単位(3)45~90質量%、及びこれらの構成単位と連結するその他の構成単位(4)0.5~20質量%(但し、すべての構成単位の合計を100質量%とする)を有するポリマーであり、前記高分子分散剤のアミン価が100mgKOH/g以下であり、数平均分子量が5,000~20,000であるカーボン材料分散液。
【0010】
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Bはエチレン基又はプロピレン基を示し、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、Arはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ビス(トリフルオロメチル)スルホイミド、又はビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを示し、pは任意の繰り返し数を示す)
【0011】
(前記一般式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Qはエチレン基又はメチルエチレン基を示し、YはO、NHCOO、又はNHCONHを示し、m及びnは、相互に独立に、0以上の平均繰り返し単位数を示すとともに、m+n=20~100であり、R
3は炭素数1~18のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基を示し、rは任意の繰り返し数を示す)
【0012】
[2]前記高分子分散剤が、下記一般式(2)で表される構成単位(2)をさらに有するポリマーである前記[1]に記載のカーボン材料分散液。
【0013】
(前記一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Bはエチレン基又はプロピレン基を示し、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、qは任意の繰り返し数を示す)
【0014】
[3]前記構成単位(1)、前記構成単位(2)、及び前記構成単位(3)が、それぞれ下記一般式(1-1)、下記一般式(2-1)、及び下記一般式(3-1)で表され、前記構成単位(4)が、α-メチルスチレンに由来する構成単位を含む前記[2]に記載のカーボン材料分散液。
【0015】
(前記一般式(1-1)中、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、Arはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ビス(トリフルオロメチル)スルホイミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを示し、pは任意の繰り返し数を示す)
【0016】
(前記一般式(2-1)中、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、qは任意の繰り返し数を示す)
【0017】
(前記一般式(3-1)中、YはNHCOO又はNHCONHを示し、m及びnは、相互に独立に、0以上の平均繰り返し単位数を示すとともに、m+n=20~100であり、R
3は炭素数1~18のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基を示し、rは任意の繰り返し数を示す)
【0018】
[4]前記カーボン材料の含有量が15質量%以下であり、前記カーボン材料100質量部に対する前記高分子分散剤の含有量が、10~200質量部である前記[1]~[3]のいずれかに記載のカーボン材料分散液。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、有機溶剤を含む液媒体中にカーボン材料が高濃度であっても再凝集しにくく安定して分散されている、導電性に優れた塗膜を形成可能なインキ等の各種製品を構成しうるカーボン材料分散液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<カーボン材料分散液>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のカーボン材料分散液は、カーボン材料、有機溶剤、及び高分子分散剤を含有する。有機溶剤を含む液媒体中にカーボン材料を分散させる高分子分散剤は、下記一般式(1)で表される構成単位(1)、下記一般式(3)で表される構成単位(3)、及びこれらの構成単位と連結するその他の構成単位(4)を有するポリマーである。そして、この高分子分散剤のアミン価は100mgKOH/g以下であり、数平均分子量(Mn)は5,000~20,000である。以下、本発明のカーボン材料分散液の詳細について説明する。
【0021】
(カーボン材料)
カーボン材料は、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、及びグラフェンからなる群より選択される少なくとも一種である。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等の従来公知の様々なカーボンブラックを用いることができる。
【0022】
カーボンファイバーとしては、ポリアクリロニトリルを原料とするPAN系炭素繊維、ピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維、及びこれらの再生品等を挙げることができる。なかでも、繊維径がナノサイズであり、六員環グラファイト構造を巻いて筒状にした形状を有する、いわゆるカーボンナノファイバーや、繊維径がシングルナノサイズであるカーボンナノチューブが好ましい。カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブは、多層(マルチウォール)及び単層(シングルウォール)のいずれであってもよい。
【0023】
カーボン材料には、白金、パラジウム等の金属や金属塩がドープされていてもよい。さらに、カーボン材料は、酸化処理、プラズマ処理、放射線処理、コロナ処理、カップリング処理等により表面改質されていてもよい。
【0024】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、従来公知の有機溶剤を用いることができる。なお、有機溶剤とともに、水を用いることもできる。有機溶剤としては、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ドデカノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸ジメチル等のエステル系溶媒;ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等のアミド系溶媒;テトラメチルウレア、ジメチルイミダゾリジノン等のウレア系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジエーテル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルモノエーテルエステル系溶媒;等を挙げることができる。
【0025】
また、(メタ)アクリル系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、エポキシ化合物、オキセタン化合物等の反応性モノマーを有機溶剤として用いることができる。このような反応性モノマーを有機溶剤として用いることで、紫外線・電子線硬化性インク、紫外線・電子線硬化性コーティング剤等を調製可能なカーボン材料分散液とすることができる。
【0026】
(高分子分散剤)
高分子分散剤は、一般式(1)で表される構成単位(1)3~55質量%、一般式(3)で表される構成単位(3)45~90質量%、及びこれらの構成単位と連結するその他の構成単位(4)0.5~20質量%(但し、すべての構成単位の合計を100質量%とする)を有するポリマーである。
【0027】
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Bはエチレン基又はプロピレン基を示し、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、Arはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ビス(トリフルオロメチル)スルホイミド、又はビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを示し、pは任意の繰り返し数を示す)
【0028】
(前記一般式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Qはエチレン基又はメチルエチレン基を示し、YはO、NHCOO、又はNHCONHを示し、m及びnは、相互に独立に、0以上の平均繰り返し単位数を示すとともに、m+n=20~100であり、R
3は炭素数1~18のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基を示し、rは任意の繰り返し数を示す)
【0029】
[構成単位(1)]
構成単位(1)は、第4級アンモニウム塩基を有する構成単位である。構成単位(1)を構成しうるモノマー(モノマー1)としては、例えば、下記一般式(1a)で表されるモノマーを挙げることができる。構成単位(1)中の第4級アンモニウム塩基がカーボン材料に吸着することで、有機溶剤を含む液媒体中へのカーボン材料の分散性向上に寄与すると考えられる。また、第4級アンモニウム塩基の窒素原子に結合する置換基の1つが、アリールメチル基(-CH2-Ar)である。このアリールメチル基の芳香族環がカーボン材料と親和し、カーボン材料の分散性が向上すると考えられる。一般式(1)中のR1及びR2の炭素数が多すぎると、立体障害によってアリールメチル基が不安定化してしまい、第4級アンモニウム塩基が形成されにくくなる。このため、一般式(1)中のR1及びR2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基であることを要する。
【0030】
(前記一般式(1a)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Bはエチレン基又はプロピレン基を示し、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、Arはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ビス(トリフルオロメチル)スルホイミド、又はビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを示す)
【0031】
第4級アンモニウム塩基はイオン性の官能基であることから、この第4級アンモニウム塩基を持った構成単位(1)を有するポリマー(高分子分散剤)は、水分吸着やイオン導電によって導電性を示すことが期待される。すなわち、構成単位(1)を有するポリマーを高分子分散剤として用いることで、導電性の低下が抑制された塗膜を形成しうるカーボン材料分散液とすることが期待される。
【0032】
構成単位(1)は、下記一般式(1-1)で表されることが好ましい。
【0033】
(前記一般式(1-1)中、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、Arはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ビス(トリフルオロメチル)スルホイミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを示し、pは任意の繰り返し数を示す)
【0034】
一般式(1-1)で表される構成単位は、例えば、下記一般式(1a-1)で表されるモノマーにより構成される。
【0035】
(前記一般式(1a-1)中、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、Arはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、又はピレニル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ビス(トリフルオロメチル)スルホイミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを示す)
【0036】
一般式(1-1)で表される構成単位を構成しうるモノマーの具体例としては、ジメチルナフチルメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライド、ジメチルナフチルメチルアンモニウムエチルメタクリレートブロマイド、ジメチルナフチルメチルアンモニウムエチルメタクリレートビス(トリフルオロメチル)スルホイミド、ジメチルナフチルメチルアンモニウムエチルメタクリレートビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、ジエチルナフチルメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライド、ジエチルナフチルメチルアンモニウムエチルメタクリレートブロマイド、ジエチルナフチルメチルアンモニウムエチルメタクリレートビス(トリフルオロメチル)スルホイミド、ジエチルナフチルメチルアンモニウムエチルメタクリレートビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、アントラセニルメチルジメチルメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライド、アントラセニルメチルジメチルメチルアンモニウムエチルメタクリレートブロマイド、アントラセニルジメチルメチルアンモニウムエチルメタクリレートビス(トリフルオロメチル)スルホイミド、アントラセニルジメチルナフチルアンモニウムエチルメタクリレートビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、ジエチルビレニルメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライド、ジエチルピレニルメチルアンモニウムエチルメタクリレートブロマイド、ジエチルピレニルメチルアンモニウムエチルメタクリレートビス(トリフルオロメチル)スルホイミド、ジエチルピレニルメチルアンモニウムエチルメタクリレートビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド等を挙げることができる。
【0037】
[構成単位(2)]
高分子分散剤は、下記一般式(2)で表される構成単位(2)をさらに有するポリマーであることが好ましい。構成単位(2)をさらに有するポリマーを高分子分散剤として用いることで、カーボン材料の分散性をより高めることができる。なお、構成単位(2)中のアミノ基を第4級塩化することで、構成単位(1)中の第4級アンモニウム塩基を形成することができる。
【0038】
(前記一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Bはエチレン基又はプロピレン基を示し、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、qは任意の繰り返し数を示す)
【0039】
構成単位(2)を構成しうるモノマー(モノマー2)としては、例えば、下記一般式(2a)で表されるモノマーを挙げることができる。
【0040】
(前記一般式(2a)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Bはエチレン基又はプロピレン基を示し、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示す)
【0041】
構成単位(2)は、塩基性基であるアミノ基を有する。このため、酸化等によりカーボン材料の表面に形成されたカルボキシ基やフェノール性水酸基と、構成単位(2)中のアミノ基とがイオン結合することで、高分子分散剤がカーボン材料に吸着しやすくなり、カーボン材料の分散性がより向上すると考えられる。さらに、構成単位(1)中の第4級アンモニウム塩基や、第4級アンモニウム塩基を構成する多環芳香族基のカーボン材料への吸着との相乗効果により、カーボン材料の分散性がより向上すると考えられる。
【0042】
構成単位(2)は、下記一般式(2-1)で表されることが好ましい。
【0043】
(前記一般式(2-1)中、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示し、qは任意の繰り返し数を示す)
【0044】
一般式(2-1)で表される構成単位は、例えば、下記一般式(2a-1)で表されるモノマーにより構成される。
【0045】
(前記一般式(2a-1)中、R
1及びR
2は、相互に独立に、メチル基又はエチル基を示す)
【0046】
一般式(2-1)で表される構成単位を構成しうるモノマーの具体例としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等を挙げることができる。
【0047】
[構成単位(3)]
構成単位(3)は、ポリアルキレングリコール鎖を有する構成単位である。この構成単位(3)を有する高分子分散剤は、ポリアルキレングリコール鎖がグラフトした構造を有するポリマーである。そして、ポリアルキレングリコール鎖は、分散媒体である有機溶剤に溶解することが可能な分子鎖である。一般式(3)中、Yで表されるウレタン結合(NHCOO)やウレア結合(NHCONH)は、改質によってカーボン材料の表面に生成する水酸基等を構成する水素原子と水素結合する。このため、高分子分散剤は、グラフト鎖であるポリアルキレングリコール鎖が分散媒体である有機溶剤に溶解するとともに、構成単位(3)中のウレタン結合(NHCOO)やウレア結合(NHCONH)及び構成単位(1)を含む主鎖がカーボン材料に吸着する。そして、溶解したポリアルキレングリコール鎖が粒子状のカーボン材料どうしの間で立体障害となって反発し、カーボン材料を液媒体中に長期間にわたって良好かつ安定的に分散させることができる。
【0048】
一般式(3)中、mはプロピレンオキシ基(-CH(CH3)CH2O-)の平均繰り返し単位数であり、nはエチレンオキシ基(-CH2CH2O-)の平均繰り返し単位数である。そして、m及びnは、相互に独立に0以上の数値であり、m+n=20~100、好ましくはm+n=35~100である。すなわち、ポリアルキレングリコール鎖の分子量は、好ましくは880~5,800であり、さらに好ましくは1,540~5,800である。なお、一般式(3)中、R3で表される炭素数1~18のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ドデシル基、ステアリル基、フェニル基、ナフチル基、又はノニルフェニル基であることが好ましい。
【0049】
構成単位(3)を構成しうるモノマー(モノマー3)としては、例えば、下記一般式(3a)で表されるモノマー(マクロモノマー)を挙げることができる。
【0050】
(前記一般式(3a)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Qはエチレン基又はメチルエチレン基を示し、YはO、NHCOO、又はNHCONHを示し、m及びnは、相互に独立に、0以上の平均繰り返し単位数を示すとともに、m+n=20~100であり、R
3は炭素数1~18のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基を示す)
【0051】
構成単位(3)は、下記一般式(3-1)で表されることが好ましい。
(前記一般式(3-1)中、YはNHCOO又はNHCONHを示し、m及びnは、相互に独立に、0以上の平均繰り返し単位数を示すとともに、m+n=20~100であり、R
3は炭素数1~18のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基を示し、rは任意の繰り返し数を示す)
【0052】
一般式(3-1)で表される構成単位は、例えば、下記一般式(3a-1)で表されるモノマーにより構成される。
【0053】
(前記一般式(3a-1)中、YはNHCOO又はNHCONHを示し、m及びnは、相互に独立に、0以上の平均繰り返し単位数を示すとともに、m+n=20~100であり、R
3は炭素数1~18のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基を示す)
【0054】
一般式(3-1)で表される構成単位を構成しうるモノマーとしては、メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノドデシルエーテルなどのグリコールエーテルモノアルキルエーテルとを反応させて得られる、Yがウレタン結合(NHCOO)であるマクロモノマー;メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアミンなどのモノエーテルモノアミンとを反応させて得られる、Yがウレア結合(NHCONH)であるマクロモノマー;等を挙げることができる。
【0055】
一般式(3)、(3a)、(3-1)、及び(3a-1)中、Yは、イソシアネートとアミンを反応させる際に触媒を必要としない尿素結合(NHCONH)であることが好ましい。また、一般式(3)、(3a)、(3-1)、及び(3a-1)中のポリアルキレングリコール鎖は、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドのランダムコポリマーであることが好ましい。さらに、一般式(3)、(3a)、(3-1)、及び(3a-1)及び中、R3はメチル基であることが好ましい。なお、ポリアルキレングリコール鎖の分子量は2,000~4,000であることが好ましく、m+n=36~90であることが好ましい。
【0056】
[構成単位(4)]
構成単位(4)は、上述の構成単位と連結しうるその他の構成単位である。構成単位(4)を構成しうるモノマー(モノマー4)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルカプロラクトン、ビニルイミダゾール、α-メチルスチレン、酢酸ビニル等のビニルモノマー;等を挙げることができる。なかでも、分子量の制御が容易になる観点から、α-メチルスチレンが好ましい。
【0057】
(高分子分散剤の組成、物性)
高分子分散剤(ポリマー)中、すべての構成単位の合計に占める、構成単位(1)の割合は3~55質量%であり、好ましくは5~50質量%である。構成単位(1)の割合が3質量%未満であると、カーボン材料への吸着が不十分になる。一方、構成単位(1)の割合が55質量%超であると、有機溶剤への溶解性が不十分になる。
【0058】
ポリマー中、すべての構成単位の合計に占める、構成単位(2)の割合は30質量%以下であることが好ましく、2~25質量%であることがさらに好ましい。なお、ポリマーのアミン価は100mgKOH/g以下であり、好ましくは3~90mgKOH/gである。構成単位(2)の割合が30質量%超であると、ポリマーが着色することがある。
【0059】
ポリマー中、すべての構成単位の合計に占める、構成単位(3)の割合は45~90質量%であり、好ましくは50~85質量%である。すなわち、構成単位(3)は、ポリマー中に比較的多く含まれる構成単位である。構成単位(3)を多く含むことで、ポリアルキレングリコール鎖が密に配置されることになる。このため、高分子分散剤としてのポリマーがカーボン材料に吸着すると、密に配置されたポリアルキレングリコール鎖が立体障害となってカーボン材料どうしの近接を阻害し、カーボン材料を安定して分散させることができる。
【0060】
ポリマー中の構成単位(3)の割合が45質量%未満であると、十分な立体障害が形成されず、分散性を高めることが困難になる。一方、構成単位(3)の割合が90質量%超であると、構成単位(3)を構成するマクロモノマーの反応性がやや乏しいことから、重合せずに残存することがある。
【0061】
ポリマー中、すべての構成単位の合計に占める、構成単位(4)の割合は0.5~20質量%であり、好ましくは0.6~16質量%である。構成単位(4)の割合が0.5質量%超であると、他の構成単位の含有量が相対的に減少するので、分散剤としての機能が低下する。
【0062】
構成単位(1)、構成単位(2)、及び構成単位(3)が、それぞれ一般式(1-1)、一般式(2-1)、及び一般式(3-1)で表され、構成単位(4)がα-メチルスチレンに由来する構成単位を含むことが、カーボン材料が高濃度であってもより再凝集しにくく、さらに安定して分散されたカーボン材料分散液とすることができるために好ましい。
【0063】
高分子分散剤として用いるポリマーの、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mw)は、5,000~20,000であり、好ましくは10,000~15,000である。ポリマーの数平均分子量が5,000未満であると、マクロモノマーに由来する構成単位(3)の導入量が少なく、十分な分散安定性を得ることができない。一方、ポリマーの数平均分子量が20,000超であると、カーボン材料を分散させるのに必要な高分子分散剤の量が多くなりすぎるとともに、得られるカーボン材料分散液の粘度が過度に高くなる。
【0064】
(高分子分散剤の合成方法)
高分子分散剤であるポリマーは、従来公知の方法によって合成することができる。例えば、従来公知のラジカル重合法;チオール等の連鎖移動剤を使用して分子量を調整する重合法、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、可逆的付加開裂型連鎖移動重合法(RAFT法)、ニトロキサイド法(NMP法)、有機テルル法(TERP法)、ヨウ素移動重合法(ITP法)、可逆的移動触媒重合法(RTCP法)、可逆的触媒媒介重合法(RCMP法)等のリビングラジカル重合法;により合成することができる。なかでも、主鎖の分子量をより均一に揃えることが可能であるとともに、添加方法によってA-Bブロックコポリマーとすることができることから、リビングラジカル重合法が好ましい。
【0065】
重合は、熱重合及び光重合のいずれであってもよく、アゾ系ラジカル発生剤、過酸化物系ラジカル発生剤、光増感剤等を重合反応系に添加してもよい。重合形式は、無溶剤、溶液重合、及び乳化重合のいずれであってもよく、なかでも溶液重合が好ましい。カーボン材料分散液に用いる有機溶剤と同一の有機溶剤を溶液重合の際に用いることで、重合反応後のポリマーをカーボン材料分散液にそのまま使用できるために好ましい。
【0066】
例えば、前述の各モノマーを溶液重合することで、目的とするポリマー(高分子分散剤)を得ることができる。なお、構成単位(2)を構成するモノマー、構成単位(3)を構成するモノマー、及び構成単位(4)を構成するモノマーを重合して得られた反応溶液に、塩化ベンジル、ナフチルメチルクロライド、アセチニルメチルクロライド、ピレニルメチルクロライド、ナフチルメチルブロマイド等のハロゲン化アルキルを添加することで、構成単位(2)中のアミノ基を第4級アンモニウム塩化し、構成単位(2)を構成単位(1)へと変換することができる。さらに、ビス(トリフルオロメチルスルホン)イミドリチウム塩、ビス(ヘプタフルオロブチルスルホン)イミドリチウム塩等を添加することで、第4級アンモニウム塩を構成するアニオン(Cl-、Br-)をイオン交換することができる。
【0067】
(カーボン材料分散液)
カーボン材料分散液中のカーボン材料の含有量は、15質量%以下とすることが好ましく、0.5~12質量%とすることがさらに好ましい。また、カーボン材料100質量部に対する高分子分散剤の含有量は、10~200質量部であることが好ましく、20~150質量部であることがさらに好ましく、30~100質量部であることが特に好ましい。高分子分散剤の量がカーボン材料に対して過度に少ないと、分散性がやや不十分になることがある。一方、高分子分散剤の量がカーボン材料に対して過度に多いと、カーボン材料の比率が相対的に低下し、得られるカーボン材料分散液が増粘しやすくなる。
【0068】
カーボン材料分散液には、高分子分散剤以外の樹脂や添加剤等を含有させることができる。高分子分散剤以外の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリフェノール樹脂、ポリウレア樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等を挙げることができる。添加剤としては、油溶性染料、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、光重合開始剤、他の顔料分散剤等を挙げることができる。
【0069】
(カーボン材料分散液の製造方法)
高分子分散剤であるポリマーを用いて有機溶剤を含む液媒体中にカーボン材料を分散させることで、目的とするカーボン材料分散液を得ることができる。高分子分散剤を用いてカーボン材料を分散処理する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、ディスパー撹拌、三本ロールでの混練、超音波分散、ビーズミル分散、乳化装置、高圧ホモジナイザー等を用いる分散等の分散方法を用いることができる。なかでも、分散効果が高いことから、ビーズミル分散、超音波分散、高圧ホモジナイザーを用いる分散が好ましい。
【0070】
(カーボン材料の分散性の評価方法)
カーボン材料分散液中のカーボン材料の分散性を評価する方法としては、以下に示すような分光光度計を用いる吸光度測定法がある。まず、カーボン材料を極低濃度に含有する濃度既知の複数の分散液を調製するとともに、これらの分散液の特定波長における吸光度を測定し、カーボン材料の濃度に対して吸光度をプロットした検量線を作成する。次いで、カーボン材料、有機溶剤、及び高分子分散剤を混合し、適当な方法で分散処理する。その後、遠心分離処理して分散しきれなかったカーボン材料を沈降させて分離除去し、上澄み液を得る。得られた上澄み液を吸光度が測定可能な濃度にまで希釈してから吸光度を測定し、検量線からカーボン材料の濃度を算出する。そして、算出した分散液中のカーボン材料の濃度と、カーボン材料の仕込み量とを比較することで、カーボン材料の分散性を評価することができる。
【0071】
また、遠心分離処理後のカーボン材料分散液を長期間静置し、凝集物の有無を確認する方法によっても、カーボン材料の分散性を評価することができる。さらに、カーボン材料分散液をガラスプレート等に滴下し、電子顕微鏡等を使用して分散状態を評価してもよいし、カーボン材料分散液を塗布及び乾燥して形成した塗膜の電気導電率を測定し、所定の電気導電率に達するか否かで分散状態を評価してもよい。
【0072】
<カーボン材料分散液の使用>
上述のカーボン材料分散液は、カーボン材料が分散状態で含まれる、塗料、インキ、プラスチック製品等の材料として用いることが可能であり、導電性材料、熱導電性材料、帯電防止材料としての利用が期待される。カーボン材料が分散した状態で含まれる塗料やインキは、例えば、所定の塗料組成やインキ組成となるように、溶剤、樹脂、及び添加物等をカーボン材料分散液に添加して塗料化又はインキ化する方法によって調製することができる。また、市販の塗料やインキにカーボン材料分散液を添加する方法によっても、目的とする塗料やインキを調製することができる。カーボン材料が分散した状態で含まれるプラスチック製品は、例えば、溶融状態のプラスチック材料にカーボン材料分散液を添加して混合した後、溶剤を除去する方法によって製造することができる。また、微粉末状態のプラスチック材料にカーボン材料分散液を添加して混合した後、溶剤を除去する、又はカーボン材料を析出させる方法によっても、所望とするプラスチック製品を製造することができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0074】
<高分子分散剤(ポリマー)の合成>
(合成例1:高分子分散剤D-1)
撹拌機、還流コンデンサー、温度計、及び滴下ロートを取り付けた反応装置に、片末端アミノ化ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノメチルエーテル(商品名「ジェファーミンM2005」、ハンツマン社製、m+n=35(m=29、n=6)、実測アミン価28.05mgKOH/g)(M2005)100部(0.05mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)100部を入れ、室温で10分間撹拌して均一化した。別容器に、メタクリル酸2-イソシアナトエチル(商品名「カレンズMOI」、昭和電工社製)(MOI)7.75部(0.05mol)及びPGMAc7.75部を入れて混合し、混合液を調製した。調製した混合液を30分間かけて反応装置内に滴下して反応させた。反応溶液の一部をサンプリングしてIR測定し、MOI由来のイソシアネート基の消失及び尿素結合の生成を確認した。また、電位差自動滴定装置を使用し、0.1mol/L 2-プロパノール性塩酸溶液を用いて測定した生成物のアミン価は、0.1mgKOH/gであった。これにより、アミノ基とイソシアネート基の反応がほぼ完結していることを確認した。得られた生成物は、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PPG/PEG)の片末端にメタクリロイロ基が結合したマクロモノマー(MCR-1)である。水分計を使用して測定したMCR-1溶液の固形分は、50.0%であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を展開溶液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した、MCR-1のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、3,400であった。
【0075】
撹拌機、還流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応装置に、PGMAc49.6部、MCR-1溶液215.5部、α-メチルスチレン(αMS)1.8部、スチレン(St)25.1部、及びメタクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(DMAEMA)19.2部(0.122mol)を入れ、窒素をバブリングさせながら加温した。内温が70℃となった時点で、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(商品名「V-601」、富士フイルム和光純薬社製)(V-601)3.0部を添加し、75℃に加温して4時間重合した。V-601 0.5部を添加し、75℃でさらに4時間重合した。反応溶液の一部をサンプリングして測定した生成物のMnは8,500、分散度(PDI)は1.65、ピークトップ分子量(PT)は14,000であり、MCR-1に由来するピークはほとんど認められなかった。反応溶液の固形分は、50.1%であった。また、生成物のアミン価(樹脂純分換算)は、44.6mgKOH/gであった。
【0076】
PGMAc7.8部及び塩化ベンジル(BzCl)7.8部(0.0616mol)の溶液を、室温条件下で30分間かけて滴下した。滴下後、80℃まで加温して5時間維持し、高分子分散剤D-1を含む液を得た。高分子分散剤D-1のMnは8,700、PDIは1.66、PTは14,400であった。高分子分散剤D-1を含む液の固形分は、50.0%であった。高分子分散剤D-1のアミン価(樹脂純分換算)は21.0mgKOH/gであり、ほぼ定量的に反応が進行したことを確認した。得られた高分子分散剤D-1は、DMAEMAに由来するアミノ基の50%をBzClで第4級塩化した樹脂である。
【0077】
(合成例2~5:高分子分散剤D-2~D-5)
表1に示す処方としたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にして、高分子分散剤D-2~D-5を得た。表1中の略号の意味を以下に示す。
・M41:片末端アミノ化ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールメチルエーテル(商品名「ゲナミンM41/2000」、クラリアント社製、m+n=41(m=9、n=32))
・DMQ:メタクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノエチル)のベンジルクロリド塩
・MMA:メタクリル酸メチル
【0078】
表1中のDMQの組成の算出方法を、合成例1を例に挙げて説明する。ポリマー中のDMAEMA(Mw157.1)19.2部(0.122mol)と、添加したBzCl(Mw126.6)7.8部(0.0616mol)とは、定量的に反応している。このため、生成したDMQ(Mw283.6)は、0.0616mol×283.6=17.5部となる。以下、第4級塩化率を考慮し、同様にしてポリマー中のDMQの組成を算出した。
【0079】
ポリマーのアミン価の理論値の算出方法を、合成例1を例に挙げて説明する。ポリマー中のDMAEMA19.2部(0.122mol)の半量(0.0616mol)はBzClと反応して消失するので、ポリマー中に残るDMAEMAは、0.122×0.5×157.1=9.6部となる。ポリマー1g中に、9.6/(100+7.75+17.5+9.6+1.8+25.1)×100=0.059gのDMAEMAが含まれる。このため、アミン価は、0.059/157.1×56.1×1000=21.1mgKOH/gと算出することができる。
【0080】
【0081】
(合成例6:高分子分散剤D-6)
撹拌機、還流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応装置に、PGMAc49.5部、MCR-1溶液 216部、αMS1.8部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)12.5部、及びDMAEMA31.7部(0.202mol)を入れ、窒素をバブリングさせながら加温した。内温が70℃となった時点で、V-601 3.0部を添加し、75℃に加温して4時間重合した。V-601 0.5部を添加し、75℃でさらに4時間重合した。反応溶液の一部をサンプリングして測定した生成物のMnは10,600、PDIは1.89、PTは20,200であり、MCR-1に由来するピークはほとんど認められなかった。反応溶液の固形分は、50.1%であった。また、生成物のアミン価(樹脂純分換算)は、113.2mgKOH/gであった。
【0082】
BzClに代えて、1-クロロメチルナフタレン(CMN)17.8部(0.101mol)を用いたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にして第4級塩化反応を行い、高分子分散剤D-6を含む液を得た。高分子分散剤D-6のMnは10,900、PDIは1.88、PTは20,300であった。高分子分散剤D-6を含む液の固形分は、50.0%であった。高分子分散剤D-6のアミン価(樹脂純分換算)は、32.8mgKOH/gであった。得られた高分子分散剤D-6は、DMAEMAに由来するアミノ基の50%をCMNで第4級塩化した樹脂である。
【0083】
(合成例7及び8:高分子分散剤D-7及びD-8)
表2に示す処方としたこと以外は、前述の合成例6の場合と同様にして、高分子分散剤D-7及びD-8を得た。表2中の略号の意味を以下に示す。
・CMA:9-クロロメチルアントラセン
・CMP:1-クロロメチルピレン
・PME-4000:メタクリル酸末端メトキシポリエチレングリコール(商品名「ブレンマーPME-4000」、日油社製、m=0、n=90)
・NQ:メタクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノエチル)の1-クロロメチルナフタレン塩
・AQ:メタクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノエチル)の9-クロロメチルアントラセン塩
・PQ:メタクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノエチル)の1-クロロメチルピレン塩
【0084】
【0085】
(合成例9:高分子分散剤D-9)
撹拌機、還流コンデンサー、及び温度計を取り付けた反応装置に、高分子分散剤D-2を含む液100.0部(固形分50.0%)及びPGMAc150.0部を入れ、撹拌して均一な溶液とした。ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(TFSILi)5.04部(0.0176mol、DMQに対して30%)を添加し、溶解させた。これにより、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(TFSI)を対イオンとする第4級アンモニウム塩が生成し、高分子分散剤D-9を含む液を得た。高分子分散剤D-9を含む液の固形分は、21.5%であった。高分子分散剤D-9のアミン価(樹脂純分換算)は、21.8mgKOH/gであった。GPCにより高分子分散剤D-6のMnを測定しようとしたところ、カラムに強く吸着してしまい、正確に測定することができなかった。TFSILiが、等モルのDMQと反応すると、等モルのLiCl(Mw42.4)が生成する。このため、TFSILiとDMQの反応によって生成した第4級塩の量は、以下のように算出することができる。
0.0176mol×(283.7+287.1)-0.0176mol×42.4=9.30部
【0086】
(合成例10及び11:高分子分散剤D-10及びD-11)
表3に示す処方としたこと以外は、前述の合成例9の場合と同様にして、高分子分散剤D-10及びD-11を得た。表3中の略号の意味を以下に示す。
・DMTFSI:DMQの塩化物イオンがビストリフルオロメタンスルホニルイミドに塩交換された第4級塩
・DMNFSI:DMQの塩化物イオンがビスノナフルオロブタンスルホニルイミドに塩交換された第4級塩
・NTFSI:NQの塩化物イオンがビストリフルオロメタンスルホニルイミドに塩交換された第4級塩
【0087】
【0088】
(比較合成例1:高分子分散剤HD-1)
表4に示す処方としたこと、並びに滴下ロートを用いてαMS及びStを1時間かけて滴下したこと以外は、前述の合成例1の場合と同様にして重合を行った。反応溶液の一部をサンプリングして測定した生成物のMnは18,900、PDIは1.85、PTは34,300であった。反応溶液の固形分は、50.5%であった。また、生成物のアミン価(樹脂純分換算)は、28.5mgKOH/gであった。
【0089】
PGMAc7.8部及びBzCl7.8部(0.0616mol)の溶液を室温条件下で30分間かけて滴下した。滴下後、80℃まで加温して5時間維持し、高分子分散剤HD-1を含む液を得た。高分子分散剤HD-1のMnは19,500、PDIは1.84、PTは34,800であった。高分子分散剤HD-1を含む液の固形分は、50.4%であった。高分子分散剤HD-1のアミン価(樹脂純分換算)は、13.1mgKOH/gであった。
【0090】
(比較合成例2及び3:高分子分散剤HD-2及びHD-3)
表4に示す処方としたこと以外は、前述の比較合成例1の場合と同様にして、高分子分散剤HD-2及びHD-3を得た。表4中の略号の意味を以下に示す。
・M600:片末端アミノ化ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノメチルエーテル、商品名「ジェファーミンM600」、ハンツマン社製、m+n=9(m=9、n=0)
・NaBF4:テトラフルオロホウ酸ナトリウム
・DMBF:DMQの塩化物イオンがテトラフルオロホウ酸イオンに塩交換された第4級塩
【0091】
【0092】
<カーボンナノチューブ分散液の製造>
(実施例1:CNT分散液-1)
樹脂製の容器に、カーボンナノチューブ(CNT)(平均径:15nm、平均長:3.0μm、MWNT)2.0部、PGMAc94.01部、及び高分子分散剤D-1を含む液(固形分:50.1%)3.99部を入れた。CNTは有機溶剤に湿潤したが、元の形状のまま容器の底に沈んだ状態であり、上澄みは透明であった。容器に撹拌子を入れてマグネチックスターラーで撹拌するとともに、超音波分散機を使用して60分間超音波(出力300W)を照射した。超音波を照射することで液は均一に黒くなり、CNTの凝集状態が解れた状態となった。遠心分離処理して十分に分散しきれない固形物を沈降させて分離除去し、CNT分散液-1を得た。
【0093】
(実施例2:CNT分散液-2)
樹脂製の容器に、CNT2.0部、PGMAc94.00部、及び高分子分散剤D-2を含む液(固形分:50.0%)4.00部を入れた。CNTは有機溶剤に湿潤したが、元の形状のまま容器の底に沈んだ状態であり、上澄みは透明であった。ホモジナイザーを使用し、8,000rpmで60分間撹拌した。ホモジナイザーで撹拌することで液は均一に黒くなり、CNTの凝集状態が解れた状態となった。遠心分離処理して十分に分散しきれない固形物を沈降させて分離除去し、CNT分散液-2を得た。
【0094】
(実施例3:CNT分散液-3)
樹脂製の容器に、CNT2.0部、PGMAc94.02部、高分子分散剤D-3を含む液(50.2%)3.98部、及び直径0.5mmφのジルコニアビーズ150部を入れた。CNTは有機溶剤に湿潤したが、元の形状のまま容器の底に沈んだ状態であり、上澄みは透明であった。スキャンデックスを使用して60分間分散処理した。スキャンデックスで分散処理することで液は均一に黒くなり、CNTの凝集状態が解れた状態となった。遠心分離処理して十分に分散しきれない固形物を沈降させて分離除去し、CNT分散液-3を得た。
【0095】
(実施例4~11、比較例1~3:CNT分散液-4~14)
表5に示す処方にするとともに、表5に示す分散機を使用して分散処理したこと以外は、前述の実施例1~3の場合と同様にして、CNT分散液-4~14を得た。
【0096】
【0097】
<評価(1):CNT分散液の評価>
E型粘度計を使用し、分散直後のCNT分散液の25℃における粘度を測定した。また、CNT分散液を遠心分離処理した。そして、遠心分離後のCNT分散液のCNT濃度を、分光光度計を使用して測定及び算出した。なお、CNT濃度の算出には、濃度既知のサンプルの吸光度を測定して作成した検量線を用いた。さらに、分散安定度(遠心分離後のCNT濃度/設計時のCNT濃度(%))を算出した。また、遠心分離処理後のCNT分散液を7日間静置し、静置後のCNT分散液の状態を目視で確認した。結果を表6に示す。
【0098】
【0099】
<ナノグラフェン分散液の製造>
(実施例12:NGR分散液-1)
樹脂製の容器に、ナノグラフェン(NGR)(平均径:5μm、平均厚:6~8nm)5.0部、PGMAc85.02部、及び高分子分散剤D-1を含む液(固形分:50.1%)9.98部を入れた。容器に撹拌子を入れてマグネチックスターラーで撹拌するとともに、超音波分散機を使用して60分間超音波(出力300W)を照射して、粘性液体であるNGR分散液-1を得た。
【0100】
(実施例13及び14、比較例4及び5:NGR分散液-2~5)
表7に示す処方にするとともに、表7に示す分散機を使用して分散処理したこと以外は、前述の実施例12の場合と同様にして、NGR分散液-2~5を得た。
【0101】
【0102】
<評価(2):NGR分散液の評価>
E型粘度計を使用し、NGR分散液の25℃における粘度を測定した。また、動的光散乱式の粒度分布装置を使用して、NGR分散液中の粒子のメジアン径(D50)を測定した。さらに、動的光散乱式の粒度分布装置を使用して、NGR分散液中の粒子の粒度分布を測定し、凝集物の有無を確認した。結果を表8に示す。
【0103】
【0104】
<カーボンナノファイバー分散液の製造>
(実施例15:CNF分散液-1)
樹脂製の容器に、カーボンナノファイバー(CNF)(商品名「VGCF-H」、昭和電工社製、平均径:150nm、平均長:6.0μm)2.0部、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)(商品名「DEDG」、日本乳化剤社製)94.01部、高分子分散剤D-1(固形分:50.1%)3.99部、及び直径0.5mmφのジルコニアビーズ150部を入れた。CNFは有機溶剤に湿潤したが、元の形状のまま容器の底に沈んだ状態であり、上澄みは透明であった。超音波分散機を使用して60分間分散処理した。超音波分散機で分散処理することで液は均一に黒くなり、CNFの凝集状態が解れた状態となった。遠心分離処理して十分に分散しきれない固形物を沈降させて分離除去し、CNF分散液-1を得た。
【0105】
(実施例16及び17、比較例6:CNF分散液-2~4)
表9に示す処方にするとともに、表9に示す分散機を使用して分散処理したこと以外は、前述の実施例15の場合と同様にして、CNF分散液-2~4を得た。
【0106】
【0107】
<評価(3):CNF分散液の評価>
E型粘度計を使用し、分散直後のCNF分散液の25℃における粘度を測定した。また、CNF分散液を遠心分離処理した。そして、遠心分離後のCNF分散液のCNF濃度を、分光光度計を使用して測定及び算出した。なお、CNF濃度の算出には、濃度既知のサンプルの吸光度を測定して作成した検量線を用いた。さらに、分散安定度(遠心分離後のCNF濃度/設計時のCNF濃度(%))を算出した。また、遠心分離処理後のCNF分散液を7日間静置し、静置後のCNF分散液の状態を目視で確認した。結果を表10に示す。
【0108】
【0109】
<カーボンブラック分散液の製造>
(実施例18:CB分散液-1)
樹脂製の容器に、カーボンブラック(CB)(商品名「♯1000」、三菱ケミカル社製)20部、PGMAc68.02部、高分子分散剤D-1を含む液(固形分:50.1%)11.98部、シナジスト(銅フタロシアニン誘導体、商品名「ソルスパース12000」、ルーブリゾール社製)1.0部、及び直径0.5mmφのジルコニアビーズ150部を入れた。超音波分散機を使用して30分間分散処理して、CB分散液-1を得た。
【0110】
(実施例19及び20、比較例7:CB分散液-2~4)
表11に示す処方にするとともに、表11に示す分散機を使用して分散処理したこと以外は、前述の実施例18の場合と同様にして、CB分散液-2~4を得た。
【0111】
【0112】
<評価(4):CB分散液の評価>
E型粘度計を使用し、分散直後のCB分散液の25℃における粘度を測定した。また、動的光散乱式の粒度分布装置を使用して、CB分散液中の粒子のメジアン径(D50)を測定した。さらに、E型粘度計を使用し、45℃で7日間保存後のCB分散液の25℃における粘度を測定した。結果を表12に示す。
【0113】
【0114】
<CNT分散インキ塗膜の製造及び評価>
(応用例1)
実施例1で得たCNT分散液-1に、CNT100部に対するアクリル樹脂の量が100部となる量のアクリル樹脂溶液(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸共重合体、Mn:7,500、酸価:100mgKOH/g、PGMAc溶液、固形分:40%)を添加した。CNT濃度が1%となるようにPGMAcを添加して希釈し、CNT分散インキ-1を得た。厚さ100μmのPETフィルムの表面に、バーコーターを使用して得られたインキを平均膜厚5μmとなるように塗工した後、130℃で30分間乾燥させて、導電性の塗膜を形成した。抵抗率計(商品名「ハイレスタ」、日東精工アナリテック社製)を使用して塗膜の表面抵抗値を測定した。結果を表13に示す。
【0115】
(応用例2~4、比較応用例1)
表13に示す種類のCNT分散液を用いたこと以外は、前述の応用例1の場合と同様にして、CNT分散インキ-2~5をそれぞれ調製した。そして、調製したCNT分散インキをそれぞれ使用して、前述の応用例1の場合と同様にして導電性の塗膜を形成し、表面抵抗値を測定した。結果を表13に示す。
【0116】
【0117】
<NGR分散インキ塗膜の製造>
(応用例6)
実施例12で得たNGR分散液-1に、NGR100部に対するアクリル樹脂の量が100部となる量のアクリル樹脂溶液(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸共重合体、Mn:7,500、酸価:100mgKOH/g、PGMAc溶液、固形分:40%)を添加した。NGR濃度が3%となるようにPGMAcを添加して希釈し、NGR分散インキ-1を得た。厚さ100μmのPETフィルムの表面に、バーコーターを使用して得られたインキを平均膜厚5μmとなるように塗工した後、130℃で30分間乾燥させて、導電性の塗膜を形成した。抵抗率計(商品名「ハイレスタ」、日東精工アナリテック社製)を使用して塗膜の表面抵抗値を測定した。結果を表14に示す。
【0118】
(応用例7及び8、比較応用例2)
表14に示す種類のNGR分散液を用いたこと以外は、前述の応用例6の場合と同様にして、NGR分散インキ-2~4をそれぞれ調製した。そして、調製したNGR分散インキをそれぞれ使用して、前述の応用例6の場合と同様にして導電性の塗膜を形成し、表面抵抗値を測定した。結果を表14に示す。
【0119】
【0120】
<CNFの樹脂への練り込み>
(応用例9)
ビーカーに溶媒(メタノール/水=1/1)3,000部を入れた。ディスパーで撹拌しながら、実施例15で得たCNF分散液-1を徐々に投入し、高分子分散剤で被覆されたCNF(樹脂被覆CNF)を析出させた。析出した樹脂被覆CNFをろ過した後、メタノール及び水で洗浄した。乾燥機で乾燥させて、樹脂被覆CNF(固形分99.5%)を得た。
【0121】
ゴム変性ポリスチレン樹脂と、ゴム変性ポリスチレン樹脂100部に対して2部の樹脂被覆CNFとを混合した。Tダイを装着したラボプラストミル(東洋精機社製)を使用して押出成形し、厚さ約0.5mm、幅100mmのシート状の評価用サンプルを製造した。製造した評価用サンプルをプレスして、厚さ約20μmのシートを作製した。作製したシートを光学顕微鏡で観察したところ、CNFの凝集物は認められなかった。さらに、作製したシートの表面抵抗値を測定したところ、5.26×108Ω/□であった。
【0122】
(比較応用例3)
CNF分散液-1に代えて、比較例6で得たCNF分散液-4を用いたこと以外は、前述の応用例9の場合と同様にして、シート状の評価用サンプルを製造した。さらに、製造した評価用サンプルをプレスして、厚さ約20μmのシートを作製した。作製したシートを光学顕微鏡で観察したところ、多くのCNFの凝集物が存在することが認められた。さらに、作製したシートの表面抵抗値を測定したところ、8.38×1010Ω/□であった。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明のカーボン材料分散液は、塗料、インキ、プラスチック製品の他、電池材料、電子部品トレイ、ICチップ用カバー、電磁波シールド、自動車用部材、ロボット用部品等の様々な製品を製造するための材料として有用である。