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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20231108BHJP
   B60R 21/237 20060101ALI20231108BHJP
   B60R 21/201 20110101ALI20231108BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/237
B60R21/201
B60N2/42
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022556948
(86)(22)【出願日】2021-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2021037491
(87)【国際公開番号】W WO2022080286
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2020172364
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 隆己
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137100(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105335(WO,A1)
【文献】特開平04-306149(JP,A)
【文献】国際公開第2013/034742(WO,A1)
【文献】特開2011-068159(JP,A)
【文献】特開2005-014862(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061452(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/207
B60R 21/237
B60R 21/201
B60N 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートフレームに固定されるサイドエアバッグ装置であって、
膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグクッションと;
前記シートフレームの内側に配置され、前記エアバッグクッションに対して膨張ガスを供給するインフレータと;
前記エアバッグクッションを保持する保持部と;を備え、
前記エアバッグクッションは、前記インフレータを内蔵する内側膨張部と、当該内側膨張部に連結され、前記シートフレームの前縁部で折り返されて当該シートフレームの外側に配置される外側膨張部とを含み、
前記外側膨張部は、前記エアバッグクッションの折り畳み部を含み、
前記保持部の前方部分は、前記外側膨張部の折り畳み部の外面に接触し、後方部分は、前記シートフレームに対して連結され、
前記保持部は、前記外側膨張部の一部を覆う構成であり、
前記保持部は保持布で構成され、当該保持布の前方部分は、前記外側膨張部の折り畳み部の外面に連結され、
前記折り畳み部の厚み方向に延び、前記保持布の前端の近傍と前記折り畳み部の厚み方向の中心近傍を通って貫通するように設けられ、前記エアバッグクッションの展開時に破断する仮縫製部が形成されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記保持布の前記前方部分は、前記エアバッグクッションに縫い付け固定される縫製部を含み、当該縫製部と前記後方部分の間に、前記エアバッグクッションが膨張展開するときに破断可能な脆弱部を有することを特徴とする請求項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
収容状態の前記エアバッグクッションを車両幅方向から見たときに、前記仮縫製部は、前記外側膨張部の表面上においては、上下方向に延びることを特徴とする請求項1又は2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記インフレータは、前記シートフレームの内側から外側に貫通するスタッドボルトを有し、
前記保持布の後端には、前記スタッドボルトに係止可能な取付け孔が設けられていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
車両用シートのシートフレームに固定されるサイドエアバッグ装置であって、
膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグクッションと;
前記シートフレームの内側に配置され、前記エアバッグクッションに対して膨張ガスを供給するインフレータと;
前記エアバッグクッションを保持する保持部と;を備え、
前記エアバッグクッションは、前記インフレータを内蔵する内側膨張部と、当該内側膨張部に連結され、前記シートフレームの前縁部で折り返されて当該シートフレームの外側に配置される外側膨張部とを含み、
前記外側膨張部は、前記エアバッグクッションの折り畳み部を含み、
前記保持部の前方部分は、前記外側膨張部の折り畳み部の外面に接触し、後方部分は、前記シートフレームに対して連結され、
前記保持部は、前記外側膨張部の一部を覆う構成であり、
前記保持部は保持布で構成され、当該保持布の前方部分は、前記外側膨張部の折り畳み部の外面に連結され、
前記折り畳み部の厚み方向に延び、前記エアバッグクッションの展開時に破断する仮縫製部が形成され、
前記インフレータは、前記シートフレームの内側から外側に貫通するスタッドボルトを有し、
前記保持布の後端には、前記スタッドボルトに係止可能な取付け孔が設けられ、
前記保持布は、前記仮縫製部と前記取付け孔との間に、前記エアバッグクッションの展開時に破断可能な脆弱部を有することを特徴とするサイドエアバッグ装置
【請求項6】
収容状態の前記エアバッグクッションを車両幅方向から見たときに、前記仮縫製部は、前記外側膨張部の表面上において上下方向に延び、
前記脆弱部は、前記仮縫製部と概ね平行に上下方向に延びることを特徴とする請求項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記脆弱部は、スリット又はミシン目であることを特徴とする請求項5又は6に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項8】
前記保持布は、前記取付け孔と前記後端との間にスリットを有する請求項5,6又は7に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項9】
前記折り畳み部は、蛇腹折り又はロール状に形成されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに搭載されるサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の事故発生時に乗員を保護するために、1つまたは複数のエアバッグを車両に設けることは周知である。エアバッグとしては、例えば、自動車のステアリングホイールの中心付近から膨張して運転者を保護する、いわゆる運転者用エアバッグ、自動車の窓の内側で下方向に展開して車両横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグ、更には、シートのサイドサポート部に収容され、車両横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員とサイドパネルとの間で展開するサイドエアバッグなどの様々な形態がある。本発明は、サイドエアバッグ装置に関するものである。
【0003】
サイドエアバッグ装置は、シートのサイドサポート部の内部に収容されるため、形状及び大きさの制約が多く、コンパクトにパッケージングすることが必要である。そこで、例えば、エアバッグを折り畳み、又はロールすることで圧縮し、全体を柔軟なカバーで覆うように保持した状態でシートフレームに取り付ける手法が提案されている。この場合、膨張ガスによりエアバッグが膨張を開始すると、カバーが破断してエアバッグが外部に大きく展開することになる。
【0004】
また、カバーによって圧縮状態のエアバッグを保持する方法の他にも、硬質なケースにエアバッグを収容する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、従来のように柔軟なカバーや硬質なケースによって圧縮されたエアバッグを保持する場合には、エアバッグが膨張を開始してから完全に展開するまでの時間が長くなってしまうという不都合がある。本来、エアバッグは迅速且つ確実に展開することが重要である。
【0006】
また、従来のようにエアバッグをカバーや、硬質なケースで保持する場合には、これらの部材がエアバッグの展開と干渉して、エアバッグの展開挙動を不安定なものにする恐れがある。
【0007】
更に、従来の装置においては、エアバッグを保持する構造によって製造コストが増大しやすく、且つ、製造工程が複雑になるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、簡素な構成でエアバッグをコンパクトに保持しつつ、エアバッグの速やかな展開に寄与するサイドエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、エアバッグの適切な展開挙動を促進可能なサイドエアバッグ装置を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、製造工程の簡素化及び製造コストの低減に寄与するサイドエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記のような目的を達成するために、車両用シートのシートフレームに固定されるサイドエアバッグ装置であって、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグクッションと;前記シートフレームの内側に配置され、前記エアバッグクッションに対して膨張ガスを供給するインフレータと;前記エアバッグクッションを保持する保持部とを備えている。前記エアバッグクッションは、前記インフレータを内蔵する内側膨張部と、当該内側膨張部に連結され、前記シートフレームの前縁部で折り返されて当該シートフレームの外側に配置される外側膨張部とを含む。前記外側膨張部は、前記エアバッグクッションの折り畳み部を含む。前記保持部の前方部分は、前記外側膨張部の折り畳み部の外面に接触し、後方部分は、前記シートフレームに対して連結される。そして、前記保持部は、前記外側膨張部の一部を覆うように構成される。
【0012】
上記のように本発明によれば、折り畳まれた(圧縮された)エアバッグクッションを保持する保持部の一端(前端)をエアバッグクッションの折り畳み部に連結し、他端(後端)をシートフレームに固定しする構成であるため、折り畳まれた(収容状態の)エアバッグクッションの形状が保持され、エアバッグクッション全体を覆うようなカバー部材やケースを必要としない。
【0013】
前記保持部を樹脂で形成し、前記シートフレームの前方側が開放された構成とすることができる。
【0014】
前記保持部を保持布で構成し、当該保持布の前方部分を前記外側膨張部の折り畳み部の外面に連結するとともに、前記折り畳み部の厚み方向に延び、前記エアバッグクッションの展開時に破断する仮縫製部を形成することができる。
【0015】
上記のように、エアバッグクッショの折り畳み部の厚み方向に延びて保持布の前端に縫製される仮縫製部を形成しているため、折り畳まれた(収容状態の)エアバッグクッションの形状が仮縫製部によって保持され、エアバッグクッション全体を覆うようなカバー部材やケースを必要としない。
【0016】
また、仮縫製部がエアバッグクッションの折り畳み部の厚み方向に延びているため、エアバッグの展開を開始した直後は、外側膨張部は折り畳み形状を維持し、乗員側の内側膨張部が先行して展開する。その後、仮縫製部に張力が加わって破断し、外側膨張部が大きく展開することになる。
【0017】
更に、折り畳まれたエアバッグクッション(外側膨張部)は、実質的に仮縫製部によって形状保持されているため、仮縫製部が破断してしまえば、エアバッグクッションと仮縫製部(縫製糸)とが干渉することがない。
【0018】
前記折り畳み部は、蛇腹折り又はロール状とすることができる。
【0019】
前記仮縫製部は、前記保持布の前端の近傍と前記折り畳み部の厚み方向の中心近傍を通って貫通するように設けることができる。これにより、エアバッグクッションの収容状態において、折り畳み部を確実に形状保持することが可能となる。
【0020】
前記保持布の前記前方部分は、前記エアバッグクッションに縫い付け固定される縫製部を含み、当該縫製部と前記後方部分の間に、前記エアバッグクッションが膨張展開するときに破断可能な脆弱部を有する構成とすることができる。
【0021】
このように、保持布の前方部分をエアバッグクッション(外側膨張部)に縫製することにより、保持布とエアバッグクッションとの連結を強固なものとすることができる一方、保持布の後方部分側に脆弱部を形成することにより、展開時にエアバッグクッションを確実に解放させることができる。
【0022】
収容状態の前記エアバッグクッションを車両幅方向から見たときに、前記仮縫製部は、前記外側膨張部の表面上において、上下方向に延びる構成とすることができる。このような構造とすることにより、エアバッグクッションの折り畳み部が上下方向で均一に保持され、その結果、エアバッグクッションの展開挙動が安定するというメリットがある。
【0023】
前記インフレータは、前記シートフレームの内側から外側に貫通するスタッドボルトを有し、前記保持布の後端に前記スタッドボルトに係止可能な取付け孔を設けることができる。これにより、保持布の後端を固定するための特別の構造(機構)を必要とせず、エアバッグクッションの形状保持のための構造がよりシンプルになる。
【0024】
前記保持布は、前記仮縫製部と前記取付け孔との間に、前記エアバッグクッションの展開時に破断可能な脆弱部を有する構成とすることができる。このように、保持布の後方部分に脆弱部を設けることにより、エアバッグクッションの展開時に仮縫製部が破断した後に脆弱部が破断し、保持布を確実にエアバッグクッションから引き離すことが可能となる。
【0025】
収容状態の前記エアバッグクッションを車両幅方向から見たときに、前記仮縫製部は、前記外側膨張部の表面上において上下方向に延び、前記脆弱部は、前記仮縫製部と概ね平行に上下方向に延びるように構成することができる。
【0026】
前記脆弱部は、スリット又はミシン目とすることができる。
【0027】
前記保持布は、前記取付け孔と前記後端との間にスリットを有する構成とすることができる。
【0028】
なお、本出願の明細書及び特許請求の範囲において、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員が向いている方向(車両の進行方向)を「前方」、その反対方向を「後方」と称し、座標の軸を示すときは「前後方向」と言う。また、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の右側を「右方向」、乗員の左側を「左方向」と称し、座標の軸を示すときは「左右方向」と言う。左右方向において、シートのサイドフレームより乗員側の領域を「内」とし、サイドフレームから見て乗員とは反対の領域を「外」を示すものとする。更に、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の頭部方向を「上方」、乗員の腰部方向を「下方」と称し、座標の軸を示すときは「上下方向」と言う。
【0029】
本発明に係るサイドエアバッグは、シートのドア側(外側)に展開するタイプの他、シートの車両中心側に展開するタイプを含むものとする。シートの車両中心側に展開するタイプのサイドエアバッグは、例えば、ファーサイドエアバッグ、フロントセンターエアバッグ、リアセンターエアバッグ等と称される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明に係る車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、サイドエアバッグ装置の図示は省略する。
図2図2は、図1に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体(シートフレーム)を示す斜視図であり、サイドエアバッグ装置の図示は省略する。
図3図3は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、サイドエアバッグ装置が収容された状態を車幅方向の外側から観察した様子を概略的に示す。
図4図4は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、エアバッグクッションが展開した状態を車幅方向の外側から観察した様子を示す。
図5図5は、本発明の第1実施例に係る車両用シートの構造を示す断面図であり、図3のA1-A1方向の断面の一部に対応する。
図6図6は、図5の一部を拡大して示す拡大断面図である。
図7図7は、本発明の第1実施例に係るサイドエアバッグ装置の概略構造を示す側面図である。
図8図8(A),(B)は、本発明の第1実施例に係るサイドエアバッグ装置の展開動作を示す模式図(断面)である。
図9図9(A),(B)は、本発明の第2実施例に係るサイドエアバッグ装置の要部の構造を示す断面図及び側面図である。
図10図10(A),(B)は、本発明の第3実施例に係るサイドエアバッグ装置の要部の構造を示す断面図及び側面図である。
図11図11(A),(B)は、本発明の第4実施例に係るサイドエアバッグ装置の要部の構造を示す断面図及び側面図である。
図12図12は、本発明の変形例を示す側面図である。
図13図13は、本発明の第5実施例に係るサイドエアバッグ装置の要部を示す断面図であり、第1実施例に係るサイドエアバッグ装置を示す図6に対応する。
図14図14は、図13に示す第5実施例の変形例である。
図15図15は、本発明の第6実施例に係る車両用シートの構造を示す断面図であり、図3のA1-A1方向の断面の一部に対応する。
図16図16は、図15の一部を拡大して示す拡大断面図である。
図17図17は、本発明の第6実施例に係るサイドエアバッグ装置の概略構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係るサイドエアバッグ装置について、添付図面に基づいて説明する。
【0032】
図1は、本発明に係る車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、エアバッグ装置(エアバッグモジュール)20の図示は省略する。図2は、図1に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体(シートフレーム)を示す斜視図であり、ここでも、エアバッグ装置(エアバッグモジュール)20の図示は省略する。図3は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、左側座席のドアに近い側面(ニアサイド)にエアバッグ装置(エアバッグモジュール)20が収容された状態を車幅方向の外側から観察した様子を示す。図4は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、エアバッグクッションが展開した状態を車幅方向の外側から観察した様子を示す。
【0033】
本実施例に係る車両用シートは、部位として観たときには、図1及び図2に示すように、乗員が着座する部分のシートクッション2と;背もたれを形成するシートバック1と、シートバック1の上端に連結されるヘッドレスト3とによって構成されている。
【0034】
図2に示すように、シートバック1の内部にはシートの骨格を形成するシートバックフレーム1fが設けられ、その表面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッド16(図5参照)が設けられ、当該パッド16の表面は皮革、ファブリック等の表皮14によって覆われている。シートクッション2の底側には着座フレーム2fが配置され、シートバック1と同様に、その上面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッドが設けられ、当該パッドの表面は皮革、ファブリック等の表皮14(図5)によって覆われている。着座フレーム2fとシートバックフレーム1fとは、リクライニング機構4を介して連結されている。
【0035】
シートバックフレーム1fは、図2に示すように、左右に離間して配置され上下方向に延在するサイドフレーム10と、このサイドフレーム10の上端部を連結する上部フレームと、下端部を連結する下部フレームとにより枠状に構成されている。ヘッドレストフレームの外側にクッション部材を設けることでヘッドレスト3が構成される。
【0036】
(第1実施例)
図5は、本発明に係る車両用シートの構造を示す断面図であり、図3のA1-A1方向の断面の一部に対応する。サイドフレーム10は、樹脂又は金属によって成形され、図5に示すようにL字断面形状又はコの字断面形状とすることができる。そして、サイドフレーム10に対してエアバッグモジュール(サイドエアバッグ装置)20が固定される。
【0037】
図5に示すように、シートバック1は、車幅方向側部(端部)において車両進行方向(車両前方)に膨出したサイドサポート部12を備える。サイドサポート部12の内部には、ウレタンパッド16が配置され、ウレタンパッド16の隙間にサイドエアバッグ装置20が収容される。サイドエアバッグ装置20は、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグクッション33と;エアバッグクッション33に対して膨張ガスを供給するインフレータ30とを備える。インフレータ30は、シートフレーム10の内側から外側に貫通するスタッドボルト32を有している。
【0038】
シートバック1の表皮14の継ぎ目18,22,24は内側に織り込まれて縫製によって連結されている。なお、前方の継ぎ目18は、エアバッグクッションが展開した時に開裂するようになっている。なお、図5において、符号25はドアトリムを示すものとする。
【0039】
図6は、図5の一部を拡大して示す拡大断面図であり、本発明の特徴が明確に示されている。図7は、本発明の第1実施例に係るサイドエアバッグ装置20の概略構造を示す側面図である。本発明に係るサイドエアバッグ装置20は、エアバッグクッション33を保持する保持布40を備えている。図6及び図7に示されているように、保持布40は、柔軟な矩形の布で成形され、エアバッグクッション33の一部に連結されるが、エアバッグクッション33全体を覆うものではない。
【0040】
図6に示すように、エアバッグクッション33は、インフレータ33を内蔵する内側膨張部33aと、当該内側膨張部33aに連結され、シートフレーム10の前縁部で折り返されてシートフレーム10の外側に配置される外側膨張部33bとを含んでいる。外側膨張部33bは、エアバッグクッション33の折り畳み部を形成する。なお、折り畳み部(33b)は、蛇腹折り又はロール状とすることができる。
【0041】
図7に示すように、保持布40の後端40bには、スタッドボルト32に係止可能な取付け孔43が設けられている。これにより、保持布40を固定するための特別の構造(機構)を必要とせず、エアバッグクッション33の形状保持のための構造がよりシンプルになる。
【0042】
図6に示すように、保持布40の前端40aは、外側膨張部33bの折り畳み部35の外面に縫製によって連結される。上述したように、保持布40の後端40bにおいては、取り付け孔43がインフレータ30のスタッドボルト32に係止され、これによってシートフレーム10に対して固定される。
【0043】
図6及び図7に示すように、本発明に係るサイドエアバッグ装置20は、更に、折り畳み部35の厚み方向に延び、保持布40の前端40aと折り畳み部35(外側膨張部33b)とを連結するように縫い付けられ、エアバッグクッション33の展開時に破断可能な仮縫製部42が形成されている。
【0044】
図6に示すように、仮縫製部42は、折り畳み部35の厚み方向の中心近傍を通って貫通するように設けられている。これにより、エアバッグクッション33の収容状態において、折り畳み部35を確実に形状保持することが可能となる。
【0045】
図7に示すように、収容状態のエアバッグクッション33を車両幅方向から見たときには、仮縫製部42は、外側膨張部33b(折り畳み部35)の表面上において、上下方向に延びている。このような構造とすることにより、エアバッグクッション33の折り畳み部35が上下方向で均一に保持され、その結果、エアバッグクッション33の展開挙動が安定する。
【0046】
(第1実施例の動作)
図8(A),(B)は、本発明の第1実施例に係るサイドエアバッグ装置20の展開挙動を示す模式図(断面)である。車両の衝突等の事象が発生したときにエアバッグ装置20が作動し、インフレータ30から膨張ガスが放出されると、エアバッグクッション33の内側膨張部33aが最初に膨張を開始し、その後、外側膨張部33bが膨張を始める。
【0047】
図8(A)に示すように、外側膨張部33bが膨張、展開を始めると、折り畳み部35に縫い付けられた仮縫製部42が破断し、当該仮縫製部42がエアバッグクッション33から離脱する。その後は、図8(B)に示すように、フリーな状態でエアバッグクッション33が膨張を続け、フル展開することになる。
【0048】
上記のように本実施例によれば、折り畳まれた(圧縮された)エアバッグクッション33を保持する保持布40の前端40aをエアバッグクッション33の折り畳み部35の外面に連結し、後端をシートフレーム10に対して固定し、更に、当該折り畳み部35の厚み方向に延びて保持布40の前端に縫製される仮縫製部42を形成しているため、仮縫製部42によって折り畳まれた(収容状態の)エアバッグクッション33の形状が保持され、エアバッグクッション33全体を覆うようなカバー部材やケースを必要としない。
【0049】
また、仮縫製部42がエアバッグクッション33の折り畳み部35の厚み方向に延びているため、エアバッグクッション33の展開初期の段階で、仮縫製部42に張力が加わって速やかに破断することになる。
【0050】
更に、折り畳まれたエアバッグクッション33は実質的に仮縫製部42によって形状保持されているため、仮縫製部42が破断してしまえば、展開動作時のエアバッグクッション33と干渉することもない。
【0051】
(第2実施例)
図9(A),(B)は、本発明の第2実施例に係るサイドエアバッグ装置を示す断面図及び側面図である。なお、先に説明した実施例と同一又は対応する構成要素については、同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0052】
本実施例においては、保持布140に形成された上下方向に延びる仮縫製部142に対して概ね平行に上下方向に延びる脆弱部150を設けている。脆弱部150は、エアバッグクッション33の展開時に破断可能になっている。なお、脆弱部150は、スリット又はミシン目とすることができる。
【0053】
本実施例のように、脆弱部150を保持布140に設けることにより、エアバッグクッション33の展開初期の段階で保持布140を確実にエアバッグクッション33から引き離すことが可能となる。
【0054】
(第3実施例)
図10(A),(B)は、本発明の第3実施例に係るサイドエアバッグ装置を示す断面図及び側面図である。なお、先に説明した実施例と同一又は対応する構成要素については、同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0055】
本実施例においては、保持布240に形成された上下方向に延びる仮縫製部242に対して概ね平行に上下方向に延びる脆弱部250を設けている。仮縫製部242と脆弱部250は、エアバッグクッション33の展開時に破断可能になっている。なお、脆弱部250は、第2実施例と同様に、スリット又はミシン目とすることができる。
【0056】
本実施例と上述した第2実施例との相違点は、仮縫製部242に加えて、通常の縫製部252を設けたことにある。縫製部252は、保持布240の前方部分と折り畳まれたエアバッグクッション33の外側膨張部33bの最外周部分とを連結する構成となっている。仮縫製部242と縫製部252の2カ所留めとなることで、折り畳まれたエアバッグクッション33のシートフレームへの取り付け時の形状保持機能がより向上する。
【0057】
(第4実施例)
図11(A),(B)は、本発明の第4実施例に係るサイドエアバッグ装置を示す断面図及び側面図である。なお、先に説明した実施例と同一又は対応する構成要素については、同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0058】
本実施例においては、保持布340に形成された上下方向に延びる仮縫製部342に対して概ね平行に上下方向に延びる脆弱部350を設けている。仮縫製部342と脆弱部350は、エアバッグクッション33の展開時に破断可能になっている。なお、脆弱部350は、第2、第3実施例と同様に、スリット又はミシン目とすることができる。縫製部352は、保持布340の前方部分と折り畳まれたエアバッグクッション33の外側膨張部33bの最外周部分とを連結する。
【0059】
本実施例と上述した第3実施例との相違点は、仮縫製部342がアバッグクッション33の外側膨張部33bと連結されるが、保持布340とは連結されていない構成となっている。第3実施例と同様に、仮縫製部342と縫製部352の2カ所留めとなることで、折り畳まれたエアバッグクッション33のシートフレームへの取り付け時の形状保持機能がより向上する。
【0060】
図12は、本発明の保持布に適用可能な他の脆弱部の構成を示す。この例においては、保持布440の後縁部443と取付け孔43との間に、前後方向に延び、エアバッグクッション33の展開時に破断可能な脆弱部として2本のスリット450が形成されている。
【0061】
(第5実施例)
図13は、本発明の第5実施例に係るサイドエアバッグ装置の要部を示す断面図であり、第1実施例に係るサイドエアバッグ装置を示す図6に対応する。本実施例においては、エアバッグ装置の取り付け用のブラケット652,654を採用しており、圧縮されたエアバッグクッション633は、ブラケット652,654を介してサイドフレーム10に固定されるようになっている。
【0062】
ブラケット(652,654)は、縦方向に延びる平板状の第1プレート654と、インフレータ30に連結された2本のスタッドボルト32が貫通し、サイドフレーム10に直接固定される第2プレート652とを備えている。これらのブラケット652,654は、長手方向に垂直な断面で見たときに、第1プレート654と第2プレート652とが概ね直交するように配置され、互いに溶接等によって連結される。
【0063】
ブラケットの第1プレート654は、車両進行方向に面する第1の面654aを有し、エアバッグクッション633の外側膨張部633bの折り畳み部635が、この第1の面654aに沿って配置される。そして、圧縮されたエアバッグクッション633が車両進行方向に膨張・展開するときに第1プレート654の第1の面654aが反力面となり、当該エアバッグクッション633が前方に向かって確実且つ速やかに展開することになる。
【0064】
一方、ブラケットの第2プレート652は、エアバッグクッション633の内側膨張部633aの一部が当接するように配置される。
【0065】
上述した第1実施例においては、エアバッグクッション33の折り畳み部35がシートフレーム10の外側の面に沿って配置されるが、本実施例においては、折り畳み部635はブラケットの第1プレート654に接する形で配置される。そして、保持布640の前端640aと折り畳み部635とは、仮縫製部642によって連結される。
【0066】
なお、本実施例及び後述する変形例においても、上述した第2実施例~第4実施例に採用されている脆弱部を適用することができる。
【0067】
図14は、図13に示す第5実施例の変形例であり、仮縫製部742が延びる方向が異なり、他の構成は同一である。この変形例においても、エアバッグクッション733は、ブラケット652,654を介してサイドフレーム10に固定される。
【0068】
保持布740の前端740aは、エアバッグクッション733の折り畳み部735の前方まで達しており、当該前端740aと折り畳み部735とは、仮縫製部742によって連結される。ここで、仮縫製部742は折り畳み部735を前後方向に貫通するように設けられている。
【0069】
(第6実施例)
図15は、本発明の第6実施例に係る車両用シートの構造を示す断面図であり、図3のA1-A1方向の断面の一部に対応する。図16は、図15の一部を拡大して示す拡大断面図であり、本実施例の特徴が明確に示されている。図17は、本実施例に係るサイドエアバッグ装置820の概略構造を示す側面図である。なお、上述した第1乃至第5実施例と同一又は対応する構成要素については、同一の参照符号を付し、重複した説明は省略する。
【0070】
本発明に係るサイドエアバッグ装置820は、エアバッグクッション33を保持する樹脂製の保持部材840を備えている。図16及び図17に示されているように、保持部材840は、側面から見たときに概ね矩形に成形され、田の実施例と同様に、エアバッグクッション33の一部を覆うように構成されている。
【0071】
図17に示すように、保持部材840の後端840bには、スタッドボルト32に係止可能な取付け孔843が設けられている。これにより、保持部材840を固定するための特別の構造(機構)を必要とせず、エアバッグクッション33の形状保持のための構造がよりシンプルになる。
【0072】
また、図16に示すように、保持部材840の前端840aは、外側膨張部33bの折り畳み部35の外面に沿って接触する。上述したように、保持部材840の後端840bにおいては、取り付け孔843がインフレータ30のスタッドボルト32に係止され、これによって、保持部材840がシートフレーム10に対して固定される。
【0073】
本実施例において、車両の衝突等の事象が発生し、エアバッグ装置820が作動すると、インフレータ30から膨張ガスが放出され、エアバッグクッション33の内側膨張部33aが最初に膨張を開始し、その後、外側膨張部33bが膨張を始める。
【0074】
外側膨張部33bが膨張、展開を始めると、折り畳み部35に接触している保持部材840が変形し、又は破損し、前端840aが広がって、エアバッグクッション33が前方に向かってフル展開することになる。
【0075】
上記のように本実施例によれば、樹脂製の保持部材840を採用しているため、保持部材840自体の剛性によってエアバッグクッション33を確実に保持することができる。その結果、布製の保持部材のように仮縫製したり、脆弱部を設けたりする必要が無く、構成の簡素化を図れる他、製造工程の簡略化を図ることが期待される。
【0076】
本発明について実施例を参照して説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更可能なものである。例えば、上記実施例においては、ニアサイドのサイドエアバッグについて重点的に述べたが、ファーサイドエアバッグ(車両用シートの車両ドアから遠い側の面)や、スモールモビリティなど超小型車両等における単座の車両(ドアの有る無しにかかわらず一列にシートが一つしかない部分を含むような車両)等にも用いることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17