(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】フィルタを内蔵した膜式酸素供給装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/18 20060101AFI20231108BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61M1/18 525
B01D63/02
(21)【出願番号】P 2022561201
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(86)【国際出願番号】 CN2021124836
(87)【国際公開番号】W WO2023284152
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】202110794386.8
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522393077
【氏名又は名称】江▲蘇▼▲賽▼▲騰▼医▲療▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 日▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 宇杰
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-507681(JP,A)
【文献】特表2020-531091(JP,A)
【文献】特開2009-148582(JP,A)
【文献】特開2000-84072(JP,A)
【文献】中国実用新案第208893292(CN,U)
【文献】中国実用新案第211024413(CN,U)
【文献】中国実用新案第201643112(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/18
B01D 63/02
A61M 1/16
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタを内蔵した膜式酸素供給装置であって、上蓋と、下蓋と、ケースと、酸素供給構造とを含み、
前記上蓋は中心からエッジに向かって順に第1の血液路空間、第1のガス路空間及び第1の水路空間に区画され、前記上蓋に前記第1のガス路空間と連通される吸気口及び前記第1の水路空間と連通される給水口が設けられ、
前記下蓋は中心からエッジに向かって順に第2の血液路空間、第2のガス路空間及び第2の水路空間に区画され、前記下蓋に前記第2の血液路空間と連通される血液出口、前記第2のガス路空間と連通される排気口及び前記第2の水路空間と連通される排水口が設けられ、
前記ケースの両端は前記上蓋及び前記下蓋にそれぞれ接続され、前記ケースの前記上蓋に近い箇所に前記ケースの内部キャビティと連通される血液入口が設けられ、
前記酸素供給構造は、前記ケースの内部キャビティ内に設けられ、芯金と、濾過網と、酸素圧力膜と、温度変化膜とを含み、前記芯金の上端は前記第1の血液路空間に入り、前記芯金の下端は前記血液出口に対向し、前記濾過網はプリーツ型濾過網であり、前記濾過網は前記芯金を囲んで設けられ、前記濾過網と前記芯金との間に隙間を有し、前記酸素圧力膜は前記濾過網の外面に覆われ、前記酸素圧力膜は前記第1のガス路空間と前記第2のガス路空間とを連通しており、前記温度変化膜は前記酸素圧力膜の外面に覆われ、前記温度変化膜は前記第1の水路空間と前記第2の水路空間とを連通しており、前記温度変化膜と前記ケースの内壁との間に隙間を有し、前記隙間の幅は前記上蓋から前記下蓋へ漸減する、ことを特徴とするフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置。
【請求項2】
前記膜式酸素供給装置はさらに第1の封止層及び第2の封止層を含み、前記第1の封止層は前記ケースと前記上蓋との接合部に設けられ、前記第2の封止層は前記ケースと前記下蓋との接合部に設けられ、
前記濾過網の上端は前記第1の封止層に接続され、前記濾過網の下端は前記第2の封止層に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置。
【請求項3】
前記酸素圧力膜は複数本の換気管を含み、前記換気管は両端が開口した中空管であり、各本の換気管の一端は前記第1の封止層を貫通して前記第1のガス路空間と連通され、他端は前記第2の封止層を貫通して前記第2のガス路空間と連通され、
前記温度変化膜は複数本の温度変化管を含み、前記温度変化管は両端が開口した中空管であり、各本の温度変化管の一端は前記第1の封止層を貫通して前記第1の水路空間と連通され、他端は前記第2の封止層を貫通して前記第2の水路空間と連通される、ことを特徴とする請求項2に記載の膜式酸素供給装置。
【請求項4】
前記膜式酸素供給装置は、血液の横方向流れをガイドするためのスポイラー構造をさらに含み、前記スポイラー構造は前記ケースと前記温度変化膜との間に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置。
【請求項5】
前記スポイラー構造は、前記ケースの内壁から前記温度変化膜へ突出する複数の突起を含む、ことを特徴とする請求項4に記載のフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置。
【請求項6】
複数の突起は階段状で分布し、前記上蓋に近い突起と前記温度変化膜との間の距離は前記下蓋に近い突起と前記温度変化膜との間の距離より大きい、ことを特徴とする請求項4に記載のフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置。
【請求項7】
前記上蓋に前記第1の血液路空間と連通される第1の排気口が設けられ、前記芯金の上端は前記第1の排気口に対向する、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置。
【請求項8】
前記上蓋に再循環ポートがさらに設けられ、前記再循環ポートは前記第1の排気口と連通される、ことを特徴とする請求項7に記載のフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置。
【請求項9】
前記ケースに第2の排気口が設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置。
【請求項10】
前記第2の排気口には、ケース内の液体を捕捉し、前記液体中の気泡が前記ケースから排出されることを許容するための一方向通気膜が設けられる、ことを特徴とする請求項9に記載のフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置。
【請求項11】
前記ケースは柱状ケースであり、前記ケースの内径は前記上蓋から前記下蓋へ漸減し、
前記芯金の断面は前記上蓋から前記下蓋へ漸減する、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置。
【請求項12】
前記上蓋は第1のセパレータリング及び第2のセパレータリングを有し、前記第2のセパレータリングは前記第1のセパレータリングを囲んで設けられ、前記第1のセパレータリングは前記第1の血液路空間と前記第1のガス路空間を仕切り、前記第2のセパレータリングは前記第1のガス路空間と前記第1の水路空間を仕切り、
前記下蓋は第3のセパレータリング及び第4のセパレータリングを有し、前記第4のセパレータリングは前記第3のセパレータリングを囲んで設けられ、前記第3のセパレータリングは前記第2の血液路空間と前記第2のガス路空間を仕切り、前記第4のセパレータリングは前記第2のガス路空間と前記第2の水路空間を仕切る、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の技術分野に関し、特に、フィルタを内蔵した膜式酸素供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
膜式酸素供給装置は、心臓が停止して肺の代わりになる医療機器であり、血液中酸素及び二酸化炭素の含有量を調節する機能を有し、心臓血管手術に必須の医療器具であり、急性呼吸器疾患の治療や肺移植を待つ段階に必須の医療器具でもある。膜式酸素供給装置は、肺胞のガス交換の原理に基づいて、酸素供給、温度変化、血液貯留、濾過などの機能を一体化し、その動作原理は、体内の静脈血を体外に引き出し、膜式酸素供給装置を経て酸素と二酸化炭素の交換を行って動脈血になり、さらに人体の動脈系に返送して、人体の臓器組織の酸素供給血の供給を維持し、手術の過程で一時的に肺臓の機能を代替し、術中の患者の需要を満たす。
【0003】
ガス交換能力は膜式酸素供給装置の主要な機能指標であり、関連技術では酸素圧力膜の面積を拡大することにより、膜式酸素供給装置のガス交換能力を高める試みがあったが、酸素圧力膜の面積を拡大することは同時に血液のプライミング量、血液と人工材料の接触面積を増加し、さらに多くの血液損失と破壊をもたらし、患者の術後回復にマイナスの影響を与える。
【0004】
また、体外循環の時には、血液をガス交換して患者の酸素供給を維持するための酸素供給装置と、血液中の塞栓(気泡又は固体粒子)を濾過するためのフィルタとを併用する必要があり、フィルタは、血液が人体に返送するための最後の安全バリアである。現在の臨床用途では、酸素供給装置とフィルタとの間にホース接続が使用されており、臨床的使用の前の医師の作業量及び製品が汚染される可能性を増加させ、血液とノンセルフシステムとの接触面積を拡大し、血液の破壊の増加をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施例が解決しようとする技術的問題は、酸素供給効果及び濾過効果を向上させ、血液の破壊を減らし、汚染、漏れリスクを低減することができるフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的問題を解決するために、本発明は、フィルタを内蔵した膜式酸素供給装置を提供し、上蓋と、下蓋と、ケースと、酸素供給構造とを含み、
前記上蓋は中心からエッジに向かって順に第1の血液路空間、第1のガス路空間及び第1の水路空間に区画され、前記上蓋に前記第1のガス路空間と連通される吸気口及び前記第1の水路空間と連通される給水口が設けられ、
前記下蓋は中心からエッジに向かって順に第2の血液路空間、第2のガス路空間及び第2の水路空間に区画され、前記下蓋に前記第2の血液路空間と連通される血液出口、前記第2のガス路空間と連通される排気口及び前記第2の水路空間と連通される排水口が設けられ、
前記ケースの両端は前記上蓋及び前記下蓋にそれぞれ接続され、前記ケースの前記上蓋に近い箇所に前記ケースの内部キャビティと連通される血液入口が設けられ、
前記酸素供給構造は、前記ケースの内部キャビティ内に設けられ、芯金と、濾過網と、酸素圧力膜と、温度変化膜とを含み、前記芯金の上端は前記第1の血液路空間に入り、前記芯金の下端は前記血液出口に対向し、前記濾過網はプリーツ型濾過網であり、前記濾過網は前記芯金を囲んで設けられ、前記濾過網と前記芯金との間に隙間を有し、前記酸素圧力膜は前記濾過網の外面に覆われ、前記酸素圧力膜は前記第1のガス路空間と前記第2のガス路空間とを連通しており、前記温度変化膜は前記酸素圧力膜の外面に覆われ、前記温度変化膜は前記第1の水路空間と前記第2の水路空間とを連通しており、前記温度変化膜と前記ケースの内壁との間に隙間を有し、前記隙間の幅は前記上蓋から前記下蓋へ漸減する。
【0007】
1つの実行可能な実現形態では、前記膜式酸素供給装置はさらに第1の封止層及び第2の封止層を含み、前記第1の封止層は前記ケースと前記上蓋との接合部に設けられ、前記第2の封止層は前記ケースと前記下蓋との接合部に設けられ、
前記濾過網の上端は前記第1の封止層に接続され、前記濾過網の下端は前記第2の封止層に接続される。
【0008】
1つの実行可能な実現形態では、前記酸素圧力膜は複数本の換気管を含み、前記換気管は両端が開口した中空管であり、各本の換気管の一端は前記第1の封止層を貫通して前記第1のガス路空間と連通され、他端は前記第2の封止層を貫通して前記第2のガス路空間と連通され、
前記温度変化膜は複数本の温度変化管を含み、前記温度変化管は両端が開口した中空管であり、各本の温度変化管の一端は前記第1の封止層を貫通して前記第1の水路空間と連通され、他端は前記第2の封止層を貫通して前記第2の水路空間と連通される。
【0009】
1つの実行可能な実現形態では、前記酸素供給装置は、血液の横方向流れをガイドするためのスポイラー構造をさらに含み、前記スポイラー構造は前記ケースと前記温度変化膜との間に設けられる。
【0010】
1つの実行可能な実現形態では、前記スポイラー構造は、前記ケースの内壁から前記温度変化膜へ突出する複数の突起を含む。
【0011】
1つの実行可能な実現形態では、複数の突起は階段状で分布し、前記上蓋に近い突起と前記温度変化膜との間の距離は前記下蓋に近い突起と前記温度変化膜との間の距離より大きい。
【0012】
1つの実行可能な実現形態では、前記上蓋に前記第1の血液路空間と連通される第1の排気口が設けられ、前記芯金の上端は前記第1の排気口に対向する。
【0013】
1つの実行可能な実現形態では、前記上蓋に再循環ポートがさらに設けられ、前記再循環ポートは前記第1の排気口と連通される。
【0014】
1つの実行可能な実現形態では、前記ケースに第2の排気口が設けられる。
【0015】
1つの実行可能な実現形態では、前記第2の排気口には、ケース内の液体を捕捉し、前記液体中の気泡が前記ケースから排出されることを許容するための一方向通気膜が設けられる。
【0016】
1つの実行可能な実現形態では、前記ケースは柱状ケースであり、前記ケースの内径は前記上蓋から前記下蓋へ漸減し、
前記芯金の断面は前記上蓋から前記下蓋へ漸減する。
【0017】
1つの実行可能な実現形態では、前記上蓋は第1のセパレータリング及び第2のセパレータリングを有し、前記第2のセパレータリングは前記第1のセパレータリングを囲んで設けられ、前記第1のセパレータリングは前記第1の血液路空間と前記第1のガス路空間を仕切り、前記第2のセパレータリングは前記第1のガス路空間と前記第1の水路空間を仕切り、
前記下蓋は第3のセパレータリング及び第4のセパレータリングを有し、前記第4のセパレータリングは前記第3のセパレータリングを囲んで設けられ、前記第3のセパレータリングは前記第2の血液路空間と前記第2のガス路空間を仕切り、前記第4のセパレータリングは前記第2のガス路空間と前記第2の水路空間を仕切る。
【発明の効果】
【0018】
本発明を実施することは、以下の有益な効果を有し、
本発明により提供される膜式酸素供給装置では、血液入口がケースの上部に設けられ、血液出口が下蓋に設けられ、血液が膜式酸素供給装置に入った後、まず温度変化膜とケースとの間の空間を満たし、この空間は上が広く下が狭い構造になっているので、注入された血液はすぐに下部空間を満たすことができ、その後に注入された血液は空間の上部により長い時間滞留し、それにより、より多くの血液が横方向に温度変化膜に入り、酸素供給装置に入り続ける血液の駆動により、温度変化膜に入った血液が酸素圧力膜に横方向に入り続け、さらに濾過網を通って芯金位置に入り、芯金の下端の血液出口から流出することができる。本発明では、血液は温度変化膜、酸素圧力膜、及び濾過網を横方向に通過するので、このプロセスでは、血液の流速が徐々に緩やかになり、温度変化膜、酸素圧力膜、及び濾過網と十分に接触し、膜式酸素供給装置の酸素供給効果及び濾過効果を向上させ、血液の破壊を低減することができる。濾過機能と酸素供給機能を統合したことで、手動接続工程が不要になり、手動操作による汚染、漏れなどのリスクも回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例により提供されるフィルタを内蔵した膜式酸素供給装置の構造概略図である。
【
図2】本発明の実施例により提供されるケースの構造の部分概略図である。
【
図3】本発明の実施例により提供されるケースの他の構造の部分概略図である。
【
図4】本発明の実施例により提供される濾過網の構造概略図である。
【
図5】本発明の実施例により提供される第2の排気口が設けられるケースの構造概略図である。
【
図6】本発明の実施例により提供される膜式酸素供給装置内の水の流れ方向の概略図である。
【
図7】本発明の実施例により提供される膜式酸素供給装置内のガスの流れ方向の概略図である。
【
図8】本発明の実施例により提供される膜式酸素供給装置内の血液の流れ方向の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明らかにするために、以下、添付の図面と併せて本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、本発明を十分に理解するために、多くの特定の詳細が説明される。ただし、本発明は、この説明とは異なる他の多くの方法で実施することができ、当業者は、本発明の含意に違反することなく同様の改善を行うことができ、したがって、本発明は、以下に開示する具体的な実施例によって制限されない。
【0021】
なお、1つの要素が別の要素に「固定されている」と表現される場合、その要素は他の要素に直接あってもよく、中央に位置する要素があってもよい。1つの要素が別の要素に「接続される」と表現される場合、その要素は他の要素に直接接続されてもよく、又は中央に位置する要素が同時にあってもよい。本明細書で使用される「垂直」、「水平」、「左」、「右」という用語、及び類似の表現は、単に説明を目的とするものである。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の明細書に使用される用語は、特定の実施例を説明することのみを目的としており、本発明を限定するために使用されるものではない。本明細書において用いられる用語「及び/又は」は、1つ又は複数の関連する列挙された項目の任意の組み合わせ及び全ての組み合わせを含む。
【0023】
本発明の実施例は、フィルタを内蔵した膜式酸素供給装置を提供し、当該膜式酸素供給装置は、上蓋10と、下蓋30と、ケース20と、酸素供給構造40とを含み、ケース20の両端は上蓋10及び下蓋30にそれぞれ接続され、酸素供給構造40はケース20の内部に設けられ、酸素供給構造40は静脈血を動脈血に変換するために用いられる。
【0024】
図1は、本発明の実施例により提供される膜式酸素供給装置の構造概略図を示す。
図1を参照すると、上蓋10は中心からエッジに向かって順に第1の血液路空間101、第1のガス路空間102及び第1の水路空間103に区画され、上蓋10には第1のガス路空間102と連通される吸気口105及び第1の水路空間103と連通される給水口104がさらに設けられる。1つの可能な実現形態では、上蓋10は上蓋本体と、第1のセパレータリングと、第2のセパレータリングとを含み、上蓋本体は開口及び当該開口に対向する底部を有し、底部は開口から離れる方向へ突出し、それにより、上蓋本体の中部が凹状になり、第1のセパレータリングは上蓋本体内に設けられ、第1のセパレータリングは上蓋本体にある凹状の空間を内外2つの空間に区画し、ここで、第1のセパレータリング内の空間は即ち第1の血液路空間101であり、第2のセパレータリングは第1のセパレータリングを囲んで設けられ、第2のセパレータリングは第1のセパレータリング外の空間を内外2つの空間に区画し、ここで、第1のセパレータリングと第2のセパレータリングとの間にある空間は第1のガス路空間102であり、第2のセパレータリングと上蓋本体のエッジとの間にある空間は第1の水路空間103である。吸気口105及び給水口104はいずれも上蓋本体に設けられ、且つ、吸気口105は第1のセパレータリングと第2のセパレータリングとの間にあり、給水口104は第2のセパレータリングと上蓋本体のエッジとの間にある。
【0025】
下蓋30は中心からエッジに向かって順に第2の血液路空間301、第2のガス路空間302及び第2の水路空間303に区画され、前記下蓋30には、前記第2の血液路空間301と連通される血液出口305、前記第2のガス路空間302と連通される排気口(図示せず)及び前記第2の水路空間303と連通される排水口306が設けられる。1つの可能な実現形態では、下蓋30は下蓋本体と、第3のセパレータリングと、第4のセパレータリングとを含み、下蓋本体は開口及び当該開口に対向する底部を有し、底部は開口から離れる方向へ突出し、それにより、下蓋本体の中部が凹状になり、第3のセパレータリングは下蓋本体内に設けられ、第3のセパレータリングは下蓋本体にある凹状の空間を内外2つの空間に区画し、ここで、第3のセパレータリング内の空間は即ち第2の血液路空間301であり、第4のセパレータリングは第3のセパレータリングを囲んで設けられ、第4のセパレータリングは第3のセパレータリング外の空間を内外2つの空間に区画し、ここで、第3のセパレータリングと第4のセパレータリングとの間にある空間は第2のガス路空間302であり、第4のセパレータリングと下蓋本体のエッジとの間にある空間は第2の水路空間303である。血液出口305、排気口及び排水口306はいずれも上蓋本体に設けられ、且つ、血液出口305は第3のセパレータリング内にあり、排気口は第3のセパレータリングと第4のセパレータリングとの間にあり、排水口306は第4のセパレータリングと上蓋本体のエッジとの間にある。
【0026】
ケース20は両端が開口した中空部材であり、ケース20の両端は上蓋10及び下蓋30にそれぞれ接続され、ケース2における上蓋10に近い箇所にケースの内部キャビティと連通される血液入口201が設けられる。1つの可能な実現形態では、ケース20は円柱状であり、ケース20の内部に第1のケースセパレータ及び第2のケースセパレータが設けられ、第1のケースセパレータ及び第2のケースセパレータはリング状部材であり、第1のケースセパレータの両端は上蓋10の第1のセパレータリング及び下蓋30の第3のセパレータリングにそれぞれ接続され、第2のケースセパレータの両端は上蓋10の第2のセパレータリング及び下蓋30の第4のセパレータリングにそれぞれ接続される。
【0027】
酸素供給構造40はケースの内部キャビティ内に設けられ、酸素供給構造40は芯金401と、濾過網406と、酸素圧力膜402と、温度変化膜403とを含み、芯金401の上端は第1の血液路空間101に入り、芯金401の下端は血液出口305に対向し、濾過網は芯金を囲んで設けられ、かつ濾過網と芯金との間に隙間を有し、血液はこの隙間に沿って芯金の下部に集まることができる。酸素圧力膜402は濾過網406の外面に覆われ、酸素圧力膜402は第1のガス路空間102と第2のガス路空間302とを連通し、温度変化膜403は酸素圧力膜402の外面に覆われ、温度変化膜403は第1の水路空間103と第2の水路空間303とを連通し、温度変化膜403とケース20との間に隙間404を有し、隙間404の幅は上蓋10から下蓋30へ漸減する。具体的には、芯金401は第1のケースセパレータ内に設けられ、濾過網406は第1のケースセパレータ上に設けられ、酸素圧力膜402は第1のケースセパレータと第2のケースセパレータとの間に位置し、温度変化膜403はケース20の内壁と第2のケースセパレータとの間に位置する。
【0028】
本発明の実施例では、上蓋10、ケース20、下蓋30及び酸素供給構造40の組み立てが完了した後、上蓋10にある第1の血液路空間101と第1のガス路空間102とは連通しておらず、第1のガス路空間102と第1の水路空間103とは連通しておらず、下蓋30にある第2の血液路空間301と第2のガス路空間302とは連通しておらず、第2のガス路空間302と第2の水路空間303とは連通していない。具体的には、上蓋10とケース20との接合部に第1の封止層501を設け、下蓋30とケース20との接合部に第2の封止層502を設けてもよい。第1の封止層501は第1の血液路空間101、第1のガス路空間102と第1の水路空間103を隔離することができ、さらにケースの内部キャビティと上蓋10の各空間を隔離することができ、第2の封止層502は第2の血液路空間301、第2のガス路空間302と第2の水路空間303を隔離することができ、さらにケースの内部キャビティと下蓋30の各空間を隔離することができる。濾過網の上端は第1の封止層に接続され、濾過網の下端は第2の封止層に接続される。
【0029】
膜式酸素供給装置は、手術や生命維持の際に、人体の肺機能に代わって体外でガス交換を行うことができる医療機器の一種である。酸素供給装置は、ガス交換機能と温度制御機能の2つの機能で構成されている。ガス交換機能は酸素圧力膜402によって実現され、温度制御機能は温度変化膜403によって実現される。本発明の実施例では、酸素圧力膜402は複数本の換気管を含み、前記換気管は両端が開口した中空管であり、換気管の孔径の大きさは0.1um~5umであり、各本の換気管の一端は前記第1の封止層501を貫通して前記第1のガス路空間102と連通され、他端は前記第2の封止層502を貫通して前記第2のガス路空間302と連通され、前記複数本の換気管の少なくとも一部の換気管の管壁は、ガスのみを通過させることができるが赤血球の通過を阻止する微細孔を有し、実際には、換気管の管壁をガスの通過のみを許容する半透膜と見なすこともでき、膜式酸素供給装置は半透膜を介して血中の換気プロセスを実現するものである。前記温度変化膜403は複数本の温度変化管を含み、前記温度変化管は両端が開口した中空管であり、各本の温度変化管の一端は前記第1の封止層501を貫通して前記第1の水路空間103と連通され、他端は前記第2の封止層502を貫通して前記第2の水路空間303と連通される。本実施例では、酸素圧力膜402及び温度変化膜403はいずれも多数の薄肉中空管から構成されているが、区別は次のとおりであり、酸素圧力膜402に用いられる中空管は、血液とガス交換を行うために少なくとも一部が有孔性膜であるが、流れをガイドし、中空管外の血液と熱交換を行うために温度変化膜403は全て無孔性膜である。
【0030】
1つの実行可能な実現形態では、濾過網406は、外側プリーツ先端、外側プリーツ谷、内側プリーツ先端及び内側プリーツ谷を有し、外側プリーツ先端の反対面が内側プリーツ谷であり、外側プリーツ谷の反対面が内側プリーツ先端である、複数の反対向きのプリーツを含むプリーツ型濾過網である。
図4は、濾過網の平面図を示し、濾過網は芯金の周りを1周して閉ループ構造を形成し、その外側プリーツ先端及び外側プリーツ谷は酸素圧力膜に面し、その内側プリーツ先端及び内側プリーツ谷は芯金に面している。プリーツ型濾過網の占有空間は小さいが、広い展開面積があり、血液と濾過網との接触面積を大きくすることができ、濾過効果を向上させるのに有利である。
【0031】
本実施例により提供される膜式酸素供給装置の使用方法及び作動プロセスは以下のとおりであり、
手術又は生命徴候の維持時に血液入口201を人体静脈にホースを介して接続し、血液出口305を人体動脈にホースを介して接続し、給水口104及び排水口306を温度変化水タンクにホースを介してそれぞれ接続する。吸気口105をガス源にホースを介して接続する。温度変化水タンクは設定された温度の水を給水口104から温度変化膜403を構成する各温度変化管の内部キャビティに入力し、ガス源は設定された濃度の酸素を吸気口105から酸素供給膜を構成する各換気管の内部キャビティに入力する。静脈血が血液入口201からケース20に入る時、温度変化膜403を流れる血液は温度変化管の外壁を介して血液と熱交換を行い、血液の昇温又は降温の目的を達成する。温度交換を完了した静脈血は横方向に酸素圧力膜402に入り、換気管内はガスであり、換気管外は血液であり、ガスと血液は半透膜の両側に拡散作用によって酸素と二酸化炭素の交換を行い、この時静脈血中の二酸化炭素は換気管の内部キャビティに入り、換気管内の酸素は血液に入り、静脈血から動脈血に変換するプロセスを完了する。さらに、動脈血は濾過網を通って芯金に到達し、かつ芯金に沿って第2の血液路空間に集まり、血液出口305から人体に返送し、患者の酸素供給を維持する。その作用は人体自身の肺機能と一致する。
【0032】
本発明の実施例では、温度変化膜403とケース20の内壁との間に隙間404を有し、当該隙間404の幅は上蓋10から下蓋30へ漸減するが、血液入口201は上蓋10に近く、それにより、血液が血液入口201から膜式酸素供給装置に入るとき、まず温度変化膜403とケース20の内壁との間の隙間404を満たし、当該隙間404は上が広く下が狭い形態(
図2に示す)を呈するため、少量の血液だけで隙間404の下部を満たすことができ、より多くの血液が隙間404の上部に滞留し、持続的に血液入口201から注入された血液の駆動により、隙間404の上部に滞留した血液は継続的に横方向に温度変化膜403及び酸素圧力膜402を貫通することができ、続いて芯金401が位置する空間に入り、さらに当該空間に連結される血液出口305から人体に返送する。
【0033】
ここで、温度変化膜403とケース20との間の隙間404が漸減する形態を呈するようにするためには、以下のいずれかの方法又はその組み合わせで実現されてもよく、
(1)ケース20の内径が上蓋10から下蓋30へ漸減するようにケース20を柱状に設計し、
(2)温度変化膜403の下蓋30に近い一端が上蓋10に近い一端よりケース20の内壁に近いように温度変化管を配列設計する。
【0034】
酸素供給された血液をよりよく合流させるために、芯金401を椎体構造に設け、芯金401の断面を上蓋10から下蓋30に向かって次第に縮小させることができる。
【0035】
さらに、より多くの血液が温度変化膜及び酸素圧力膜を横切り、十分な熱交換及びガス交換を行うことができるように、ケースと温度変化膜との間にスポイラー構造を設け、スポイラー構造によって血液の横方向の流れをガイドすることもできる。
【0036】
図3に示すように、スポイラー構造は、ケース20の内壁から温度変化膜403へ突出する複数の突起405を含む。血液は血液入口201からケース20の内壁と温度変化膜403との間の隙間に入り、下蓋30に流れるプロセスでは、突起405に阻止され、血流の流れ方向が強制的に変化され、横方向に温度変化膜403に入る。1つのより好ましい実現形態では、スポイラー構造を構成する複数の突起405は段階状に分布し、且つ、上蓋10に近い突起405と温度変化膜403との間の距離は下蓋30に近い突起405と温度変化膜403との間の距離より大きく、このように設計することにより、下蓋30へ流れる血液を各突起405によって遮断させることができ、それによりできるだけ多くの血液が温度変化膜403及び酸素圧力膜402を横切ることができる。
【0037】
ガス交換能力は酸素圧力膜402の表面積、ガス源酸素濃度に関連するほかに血流経路の設置に直接関係がある。大量の実験により、ガス経路と血流経路が逆方向であっても同方向であっても、経路が長いほどガス交換能力が悪くなり、経路が2メートルに達した後にガス交換能力が0に近づくことが分かる。したがって、酸素圧力膜を血流経路が横切る割合を高くするほど、酸素供給装置の効果が高くなる。
【0038】
上記実施例により提供される膜式酸素供給装置は、血液入口と血液出口の配置、温度変化膜とケースの内壁との間の隙間及びスポイラー構造により、血液が酸素圧力膜を横切る割合を向上させ、さらに膜式酸素供給装置の酸素供給効果を向上させ、従来技術に比べ、より小さい酸素圧力膜の面積を用いて同様のガス交換能力を達成することができる。
【0039】
関連技術の膜式酸素供給装置では、酸素供給構造は内側から外側に向かって設けられる芯金と、温度変化膜と、酸素供給膜とを含み、血液入口は酸素供給装置の下部に設けられ、血液出口は酸素供給装置の上部に設けられ、酸素供給装置における血液の流路は、血液入口→芯金がある空間→温度変化膜→酸素圧力膜→血液出口であり、芯金の空間が狭いため、芯金の近傍を流れる際に血液は十分に緩衝されず、乱流を形成しやすく、血液の破壊を引き起こす。しかしながら、上記実施例により提供される膜式酸素供給装置は、従来の酸素供給装置のレイアウトよりも大きな血流緩衝エリアを有し、血液が酸素供給装置に入った後、より多くの血液がより遅い速度で温度変化膜及び酸素圧力膜を横切ることができ、血液が温度変化膜及び酸素圧力膜と接触する時間がより長く、より良好な温度変化効率及び酸素供給効果を得ることができる。以上の設計はまた、酸素供給装置の抵抗損失をより小さくし、抵抗による血液の破壊を低減させる。
【0040】
酸素供給装置の主な指標はガス交換能力と温度変化能力に加え、さらに気泡除去能力を有する。臨床医師は膜式酸素供給装置を使用する前に膜式酸素供給装置に対して排気操作を行う必要があり、しかし、従来の膜式酸素供給装置は排気口をハウジングの側面に設置し、製品全体の最高点ではなく、そのため気泡集めを引き起こしやすく、気泡を排気口から排出するために医師は常に酸素供給装置を手で持ち酸素供給装置の角度を変えなければならず、また、酸素供給装置内部の気泡状況を直感的に観察することができず、物体を用いて酸素供給装置のハウジングを軽く叩き、酸素供給装置内部に隠された気泡をハウジングから観察できる場所に入らせる必要がある。これは酸素供給装置の臨床応用に多くの不便をもたらし、大量の術前準備時間を費やす必要がある。本発明の実施例は排気口を合理的に配置することにより、膜式酸素供給装置における気泡を排出しやすく、煩雑な排気操作を行う必要がない。具体的には、上蓋10において第1の血液路空間101と連通される第1の排気口106が設けられ、第1の排気口106は芯金401の上端に対向する。
【0041】
従来の酸素供給装置の設計レイアウトに比べ、本実施例により提供される血流経路は酸素供給装置内の空気を血流に沿って芯金の近傍に集めやすく、血液中の気泡が上方に移動するため、上蓋頂部の第1の排気口から排出されやすい。使用者は酸素供給装置を叩いたり回転させたりすることなく気楽に排気することができ、且つ透明な上蓋から酸素供給装置の内部に残存気泡があるか否かを直感的に観察することができ、且つ術中に頂部の気泡の集め状況を観察することにより、製品又は回路全体に安全リスクが存在するか否かを判断し、重大な結果を回避するためにできるだけ早く対策を講じることができる。
【0042】
よりさらに、ケース20が柱体形態であるため、一部の気泡が芯金401の近傍に入らず、ケース20の上部に集積する可能性があり、この部分の気泡を排出するために、本実施例ではさらにケース20の上蓋10に近い箇所に第2の排気口202が設けられる(
図5に示すように)。1つの可能な実現形態では、ホースを用いて第2の排気口202を他のモジュールに接続して排気することができる。もう1つの可能な実現形態では、第2の排気口202上に一方向通気膜203を設けてもよく、具体的には、
図4に示すように、一方向膜の外に押え蓋204を外嵌してもよく、一方向通気膜203を押圧して固定するために押え蓋204はねじ又はクリップを介して第2の排気口202に接続される。一方向通気膜203には、ガスのみを通過させることができるが血液を通過させない微細孔があるため、したがって、一方向通気膜203が設けられた第2の排気口202は、他のモジュールと接続することなく、血液を捕捉し、血液中の気泡を排出する機能を果たすことができる。
【0043】
さらに、上蓋10に再循環ポート107がさらに設けられ、再循環ポート107は前記第1の排気口106と連通される。他の用途に酸素供給後の血液を別途引き出す必要がある場合には、再循環ポートに接続することで、酸素供給後の血液を芯金の近傍から取り出すことができる。
【0044】
上記実施例では、血液出口は酸素供給装置の中心の最底部に位置しており、医師が術後に可能な限り残血回収を行うことを可能にし、異種輸血による交差感染のリスクを減少させ、また、預血の使用を減少させることができる。
【0045】
図6は、本発明の実施例により提供される膜式酸素供給装置内の水の流れ方向の概略図であり、
図6を参照すると、温度変化水タンクの水は、給水口104から第1の水路空間103に流入し、温度変化管を通って第2の水路空間303に入力し、続いて排水口306から温度変化水タンクに戻り、血液は温度変化管を流れるとき温度変化管内の水と熱交換を行い、血液の温度を所望の温度範囲に調整する。
【0046】
図7は、本発明の実施例により提供される膜式酸素供給装置内のガスの流れ方向の概略図であり、
図7を参照すると、ガス源の酸素は、吸気口105から第1のガス路空間102に入り、その後、換気管に流入し、換気管を流れる血液は換気管とガス交換を行い、換気管内の酸素は血液と結合し、血液中の二酸化炭素は換気管に入り、その後、第2のガス路空間302に流入して排気口から排出される。
【0047】
図8は、本発明の実施例により提供される膜式酸素供給装置内の血液の流れ方向の概略図であり、
図8を参照すると、血液は、血液入口201から膜式酸素供給装置に入り、温度変化膜403及び酸素圧力膜402を横切り、続いて芯金401が位置する空間に合流し、血液出口305に沿って流出する。
【0048】
本発明の実施例により提供される膜式酸素供給装置は、以下の利点を有し、
(1)酸素供給効果を向上させる。血液は温度変化膜、酸素圧力膜、及び濾過網を横方向に通過するので、このプロセスでは、血液の流速が徐々に緩やかになり、酸素圧力膜との接触時間が長くなり、膜式酸素供給装置の酸素供給効果を向上させることができ、従来技術に比べ、より小さい酸素圧力膜の面積で同様のガス交換能力を達成することができる。
(2)濾過効果を向上させる。濾過効果の影響因子は面積と速度であり(即ち濾過効果に大きな影響を与えるのは流体と膜の混合接触時間であり、混合接触時間が長いほど濾過効果が高くなる)、流速が低いほど捕捉効果が高くなり、濾過効果も高くなる。本発明の実施例では、血液は温度変化膜、酸素圧力膜、及び濾過網を横方向に通過するので、このプロセスでは、血液の流速が徐々に緩やかになり、濾過網に到達すると、血液の流速がさらに低下し、血液と濾過網との接触時間が多くなり、血液中の不純物や気泡を捕捉し、良好な濾過効果を得ることができ、また、プリーツ型濾過網は表面積がより大きく、血液と濾過網との接触面積を増加させ、濾過効果をさらに向上させることができる。
(3)血液の破壊を低減する。従来の膜式酸素供給装置は中心から外側に向かって順に芯金、温度変化膜、酸素圧力膜、及び濾過膜であり、血液の流れ方向は下側から入って側方から出て、このような血流経路は圧力損失が大きく、血液が濾過膜をスムーズに通過することを確保するために、より大きな圧力をかけて血液を濾過膜に通す必要があり、血液の破壊が大きくなる一方、血液の流速が速くなるため、血液中の気泡が一緒に濾過膜を通過しやすく、濾過効果は低い。本発明の実施例により提供される膜式酸素供給装置は、中心から外側に向かって順に芯金、濾過網、酸素圧力膜、及び温度変化膜であり、血液の流れ方向は上側から入って底面から出て、血液が酸素供給装置の上部に留まる時間が比較的長く、温度変化膜、酸素圧力膜、及び濾過網を横断する割合が大きく、横断中に血液の流速が徐々に緩やかになり、血液が低流速で酸素圧力膜、及び濾過網と十分に接触するようになり、圧力を高めて血液の流れを駆り立てる必要がなく、血液の破壊を低減することができる。
【0049】
上記の実施例の各技術的特徴は任意に組み合わせることができ、説明を簡潔にするために、上記の実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせについては記述していないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、全て本明細書に記載の範囲と見なされるべきである。
【0050】
上記の実施例は本発明のいくつかの実施形態を示しただけであり、その説明は具体的且つ詳細なものであるが、これによって発明特許範囲を限定するものと理解することはできない。当業者にとって、本発明の趣旨から逸脱することなく、いくつかの修正及び改善を行うことができ、これらは全て本発明の保護範囲に含まれることを指摘しておかなければならない。したがって、本発明特許の保護範囲は添付の特許請求の範囲を基準とすべきである。
【符号の説明】
【0051】
10…上蓋
101…第1の血液路空間
102…第1のガス路空間
103…第1の水路空間
104…給水口
105…吸気口
106…第1の排気口
107…再循環ポート
20…ケース
201…血液入口
202…第2の排気口
203…一方向通気膜
204…押え蓋
30…下蓋
301…第2の血液路空間
302…第2のガス路空間
303…第2の水路空間
305…血液出口
306…排水口
40…酸素供給構造
401…芯金
402…酸素圧力膜
403…温度変化膜
404…隙間
405…突起
406…濾過網
501…第1の封止層
502…第2の封止層