(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】エネルギー硬化性インク及びコーティングの化学線硬化を改善する方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20231108BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20231108BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231108BHJP
B41M 1/18 20060101ALI20231108BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20231108BHJP
【FI】
C09D11/101
B41M1/30 D
B41M1/30 B
B41J2/01 125
B41J2/01 501
B41J2/01 127
B41M1/18
C09D11/54
(21)【出願番号】P 2022562840
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 US2021027201
(87)【国際公開番号】W WO2021211662
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507385165
【氏名又は名称】サン ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジー・ティーセン
(72)【発明者】
【氏名】ジュアニタ・エム・パリス
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-512182(JP,A)
【文献】特公昭62-047590(JP,B1)
【文献】特表2010-506748(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042193(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/060390(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/18
C09D 11/101
B41M 1/30
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク及び/又はコーティングの層状構築物を基材上に適用するための方法であって、
a)基材を提供することと、
b)1つ以上のエネルギー硬化性組成物(A)であって、
i)着色剤、
ii)化学放射線下で重合又は架橋することが可能な反応性官能基を含む、1つ以上のエネルギー硬化性ポリマー、モノマー、及び/又はオリゴマー、並びに
iii)組成物(A)の総重量に基づいて、0重量%~12重量%の1つ以上の光開始剤、を含む、1つ以上のエネルギー硬化性組成物(A)を提供することと、
c)非エネルギー硬化性組成物(B)であって、
i)化学放射線下で重合又は架橋することが可能な反応性官能基を含まない樹脂、及び
ii)組成物(B)の総重量に基づいて、1重量%~20重量%の1つ以上の光開始剤、を含む、非エネルギー硬化性組成物(B)を提供することと、
d
)1つ以上の組成物(A)
を前記基材上に適用
し、組成物(B)
を最後の下層として、前記組成物(A)の1つ以上の層の最上部
に適用することと、
e)組成物(B)の前記層を乾燥させることと、
f)組成物(A)の前記層の全てを同時に化学線硬化させて、硬化した印刷構築物を作製することと、を含み、
組成物(B)の前記層が、組成物(A)の前記層の全てを同時に化学線硬化させる前又は後のいずれに乾燥されてもよく、前記硬化した印刷構築物が、初期IPA擦り試験に合格し、初期又は硬化20時間後の親指ねじり試験(thumb-twist test)に合格する、方法。
【請求項2】
インク及び/又はコーティングの層状構築物を基材上に適用するための方法であって、
a)基材を提供することと、
b)1つ以上のエネルギー硬化性組成物(A)であって、
i)着色剤、
ii)化学放射線下で重合又は架橋することが可能な反応性官能基を含む、1つ以上のエネルギー硬化性ポリマー、モノマー、及び/又はオリゴマー、並びに
iii)組成物(A)の総重量に基づいて、0重量%~12重量%の1つ以上の光開始剤、を含む、1つ以上のエネルギー硬化性組成物(A)を提供することと、
c)非エネルギー硬化性組成物(B)であって、
i)化学放射線下で重合又は架橋することが可能な反応性官能基を含まない樹脂、及び
ii)組成物(B)の総重量に基づいて、1重量%~20重量%の1つ以上の光開始剤、を含む、非エネルギー硬化性組成物(B)を提供することと、
d)組成物(B)の1つ以上の層を最初に適用し、続いて組成物(A)の1つ以上の層を前記組成物(B)の最初に適用された1つ又は複数の層上に適用することによって、前記組成物を前記基材上に適用することと、
e)組成物(B)の前記層を乾燥させることと、
f)組成物(A)の前記層の全てを同時に化学線硬化させて、硬化したインク構築物を作製することと、を含み、
組成物(B)の前記層が、組成物(A)の前記層の全てを同時に化学線硬化させる前又は後のいずれに乾燥されてもよく、前記硬化した印刷構築物が、初期IPA擦り試験に合格し、初期又は硬化20時間後の親指ねじり試験に合格する、方法。
【請求項3】
前記組成物(A)のうちの少なくとも1つが、光開始剤を含まない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応性官能基が、フリーラジカル重合性末端基を含む
、請求項
1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応性官能基が、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、ビニルエーテル、アリルエーテル、マレエート、イタコネート、エポキシド、及び/又はオキセタンを含む
、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応性官能基が、アクリレートを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エネルギー硬化性ポリマー、モノマー、及び/又はオリゴマーが、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ基、及び/又はそれらの関連する塩を更に含む
、請求項
1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
非エネルギー硬化性コーティング層が、3~15重量%の光開始剤を含む
、請求項
1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
組成物(A)の2つ以上の層が適用される
、請求項
1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
組成物(A)の4つ以上の層が適用される
、請求項
1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
組成物(A)の少なくとも1つの層が、黒色プロセスインク層である
、請求項
1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
組成物(A)の各層が、独立して、以下から選択される
、請求項
1~11のいずれか一項に記載の方法:
a)前記組成物の前記総重量に基づいて、0重量%~3重量%の光開始剤を含む、黄色プロセスインク層、
b)前記組成物の前記総重量に基づいて、0重量%~3重量%の光開始剤を含む、マゼンタプロセスインク層、
c)前記組成物の前記総重量に基づいて、0重量%~5重量%の光開始剤を含む、シアンプロセスインク層、又は
d)前記組成物の前記総重量に基づいて、6重量%~12重量%の光開始剤を含む、黒色プロセスインク層。
【請求項13】
黄色プロセスインクが、0.1~3重量%の光開始剤を含み、マゼンタプロセスインクが、0.1~3重量%の光開始剤を含み、シアンプロセスインクが、0.5~5%の光開始剤を含み、前記黒色プロセスインクが、8~12%の光開始剤を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記エネルギー硬化性組成物(A)及び/又は非エネルギー硬化性組成物(B)のうちの少なくとも1つが、アミン相乗剤を更に含む
、請求項
1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記層が、高電圧水銀電球、中電圧水銀電球、キセノン電球、カーボンアークランプ、金属ハロゲン化物電球、UV-LEDランプ、UVレーザー、及びそれらの組み合わせからの光によって同時に化学線硬化する
、請求項
1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記層が、80ワット/cmのランプ電力を有する中圧水銀蒸気UVランプ下での40メートル/分の速度の単回通過で硬化可能である
、請求項
1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項
1~16のいずれか一項に記載の方法によって調製された、硬化したインク構築物。
【請求項18】
請求項16に記載の硬化したインク構築物を含む、基材。
【請求項19】
請求項17に記載の基材を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が本明細書に組み込まれる、2020年4月15日出願の米国仮出願第63/010,152号の優先権を主張する。
【0002】
本出願は、エネルギー硬化性インク及び/又はコーティングの複数の層を基材上に印刷及び硬化することに関する。
【背景技術】
【0003】
基材は、多くの場合、インク及び/又はコーティングの複数の層で印刷される。典型的には、エネルギー硬化性インク及び/又はコーティングを使用する場合、次の層が適用される前に各層は硬化する。典型的には、エネルギー硬化性(EC)インク及び/又はコーティングは、適切な硬化を可能にするために光開始剤を含有する必要がある。しかしながら、硬化後に残留する光開始剤残基は、可塑剤として作用することによって、硬化したインク又はコーティングの溶媒耐性を損なう可能性がある。加えて、物品、例えば、食品、医薬品、及び化粧品の包装において、未反応の光開始剤及び光開始剤断片は、印刷された基材を通って移動し、包装に収容される製品を汚染し得る。
【0004】
ECインク及び/又はコーティングに使用される光開始剤の量を低減するために、インク又はコーティング中の結合剤として使用するための、化学放射線下で硬化させるのに光開始剤を必要としないポリマーである、「自己開始」ECポリマーを作製する試みがなされている。この分野での進歩にもかかわらず、提案された解決策のうちのいずれも、例えば、複数の層のインク及び/又はコーティングで調製された物品に必要とされる、必要な耐性特性等を達成するのに適切ではない。
【0005】
CN105017487は、UV放射線下でフリーラジカルを生成し、二重結合重合を引き起こすために錫触媒を使用して、シラン結合剤を用いる、ポリエステルジオールから調製されたポリウレタンの重合について開示している。
【0006】
Xinhua Liu,Bin He,Haifeng Tang & Qigang Wang,“Tough nanocomposite ionogel-based actuator exhibits robust performance”,Scientific Reports,4:6673(2014)は、UV放射線下でTiO2ナノ粒子の使用をして、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(BMIMBF4)の混合物中でラジカルを開始して、アクリレートの架橋及びBMIMBF4イオノゲルの形成を引き起こすことについて開示している。
【0007】
Yuan Hua,Guo Wenxun,and Gao Peng,“Synthesis of a Self-Initiated UV-curing Polymer,”Applied Chemical Industry,Volume 40,Issue 7,Pages 1180-1182,1204;(2011)は、UVに30~60秒間曝露させると、おそらく自己開始UV硬化によって良好な硬度まで硬化するであろう不飽和ポリエステル-尿素コポリマーについて開示している。構成成分は、プロピレングリコール、尿素、無水フタル酸、無水マレイン酸、及びセバシン酸を含む。
【0008】
G.Douglass Dixon and Nancy W.Carlson,“Deep Section Polymerization Initiated by Surface Irradiation,Part 1 Monomers,”RadTech Report,Volume 13,Issue 2,Pages 28-32,(1999)は、光開始剤を含むアクリル系中のアミン促進剤を含む熱過酸化物開始剤が、表面UV放射線に短時間曝露させた後に十分な熱効果を生成し、完全な硬化が、UV光の視程範囲にない領域でさえも生じ得ることについて開示している。二次硬化は、非指向性であると記述されている。
【0009】
米国特許第6,245,827号は、脂環式エポキシド、カプロラクトン、カチオン性光開始剤、並びにフリーラジカルタイプアルファ-ヒドロキシ-ケトン光開始剤及び有機過酸化物熱フリーラジカル生成剤からなる「促進剤」を使用する系において、同様の二重硬化機構を介した硬化を通じて良好性を呈する液体樹脂生成物について開示している。アルファ-ヒドロキシ-ケトンが、崩壊したカチオン性光開始剤の塩断片を還元して、有機過酸化物を分解するのに必要な反応熱を生成すると考えられる。
【0010】
米国特許第7,214,725号は、マイケル付加反応にも参与し得る一連のアクリレート材料の硬化について記載している。UV曝露中の光開始剤の存在は排除されないが、顕著に低い光開始剤レベルを必要とする。
【0011】
インク中の光開始剤含有量を低下させ、依然として良好な硬化を得るには、酸素を還元又は除外して、酸素阻害を回避する必要がある。酸素阻害は、光開始剤の形成されたラジカル、又はモノマー若しくは成長中のポリマー鎖上のラジカルと容易に反応し、それらを不活性にし、インクにおける不十分な硬化をもたらし得る、二ラジカルとして作用する酸素によって引き起こされる。
【0012】
酸素阻害を最小限に抑えるために、いくつかの対策、例えば、UV乾燥機を窒素又は二酸化炭素で不活性化することが提案されている。しかしながら、これは、硬化時点の酸素含有量を低減するために洗練された様式でプレスを側に置くことを必要とし、シート供給プレスの設置は特に困難である。
【0013】
US2019/0389236は、1つ以上の光開始剤を含有する1つ以上のエネルギー硬化性インク又はコーティング層(A)を基材に適用することと、光開始剤を含有しない1つ以上のエネルギー硬化性インク又はコーティング層(B)を基材に適用することと、全てのコーティング及び/又はインク層を印刷実行の終了時に同時に硬化させることと、を含む、印刷された物品を調製する湿式トラッピング方法について開示している。光開始剤をほとんど又は全く含有しない層は、おそらく、より完全なレベルの光開始剤を含む層からの拡散によって供給される、硬化に必要なラジカル開始種又は伝播種に起因して、依然として硬化させることが可能であるので、全体的により少ない光開始剤が使用される。この方法の全体的なプロセスは、放射線硬化性インクを酸素から、すなわち、封止コーティングによって底部から、及びトップコートによって最上部から保護することによって補助される可能性が高い。同様のより従来的に調製されたUV硬化積層体で使用される典型的な初期光開始剤濃度の1/5~1/8のみで、完全硬化を得ることができる。
【0014】
US2019/0389236は、隣接層自体が、UV硬化性モノマー、例えば、ラジカル硬化モノマー、及びラジカル反応を開始する光開始剤の両方を含有するUV硬化性である場合、光開始剤を含有することなく、UV開始フリーラジカルプロセスによってECインク層を硬化させることができることについての最初の開示であった。そのような構成では、UV光への単回曝露で両方の層を硬化させることができる。この発見の利点は数多い。例えば、それ自体がかなりの改善である、UV硬化性層の一部分からの光開始剤を低減又は排除することに加えて、硬化のために全ての層が独自のランプを必要としないので、多色印刷作業に必要なUVランプの数を、各層のコーティング/印刷ステーション当たり1つのランプ(多くの場合、8個以上)から低減することもできる。本発明は、光開始剤を含まないECインク層が、UV吸収剤を含有するが、ラジカル伝播種を生成し得るラジカル反応性モノマーを含有しない非硬化性インク又はコーティング層に近接している場合、依然として硬化させることができるという発見によるこの開示を改善する。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、インク及び/又はコーティングの複数の層を基材上に印刷する効率及び費用対効果の更なる改善を提供する。
【0016】
多層構築物中のECインク又はコーティングを硬化させるのに必要な光開始剤は、エネルギー硬化性層に組み込まれる必要がないことが見出されている。むしろ、光開始剤は、オーバーコート又はプライマー等の光化学的に不活性な層に組み込まれると、多層系のEC層の硬化を依然として開始することができ、光によって開始された反応が、光開始剤を含まないEC層に拡散することができるラジカル開始又は伝播種の生成を生じる。
【0017】
特定の態様では、本発明は、インク及び/又はコーティングの層状構築物を基材上に適用するための方法であって、
a)基材を提供することと、
b)1つ以上のエネルギー硬化性組成物(A)であって、
i)着色剤、
ii)化学放射線下で重合又は架橋することが可能な反応性官能基を含む、1つ以上のエネルギー硬化性ポリマー、モノマー、及び/又はオリゴマー、並びに
iii)組成物(A)の総重量に基づいて、0重量%~12重量%の1つ以上の光開始剤、を含む、1つ以上のエネルギー硬化性組成物(A)を提供することと、
c)非エネルギー硬化性組成物(B)であって、
i)化学放射線下で重合又は架橋することが可能な反応性官能基を含まない樹脂、及び
ii)組成物(B)の総重量に基づいて、1重量%~20重量%の1つ以上の光開始剤、を含む、非エネルギー硬化性組成物(B)を提供することと、
d)組成物を基材上に適用することであって、1つ以上の組成物(A)が適用され、組成物(B)が最後の下層として、組成物(A)の1つ以上の層の最上部に適用される、適用することと、
e)組成物(B)の層を乾燥させることと、
f)組成物(A)の層の全てを同時に化学線硬化させて、硬化したインク構築物を作製することと、を含み、
組成物(B)の層が、組成物(A)の層の全てを同時に化学線硬化させる前又は後のいずれに乾燥されてもよく、硬化した印刷構築物が、初期IPA擦り試験に合格し、初期又は硬化20時間後の親指ねじり試験(thumb-twist test)に合格する、方法を提供する。
【0018】
別の特定の態様では、本発明は、インク及び/又はコーティングの層状構築物を基材上に適用するための方法であって、
a)基材を提供することと、
b)1つ以上のエネルギー硬化性組成物(A)であって、
i.着色剤、
ii.化学放射線下で重合又は架橋することが可能な反応性官能基を含む、1つ以上のエネルギー硬化性ポリマー、モノマー、及び/又はオリゴマー、並びに
iii.組成物(A)の総重量に基づいて、0重量%~12重量%の1つ以上の光開始剤、を含む、1つ以上のエネルギー硬化性組成物(A)を提供することと、
c)非エネルギー硬化性組成物(B)であって、
i.化学放射線下で重合又は架橋することが可能な反応性官能基を含まない樹脂、及び
ii.組成物(B)の総重量に基づいて、1重量%~20重量%の1つ以上の光開始剤、を含む、非エネルギー硬化性組成物(B)を提供することと、
d)組成物(B)の1つ以上の層を最初に適用し、続いて組成物(A)の1つ以上の層を組成物(B)の最初に適用された1つ又は複数の層上に適用することによって、組成物を基材上に適用することと、
e)組成物(B)の層を乾燥させることと、
f)組成物(A)の層の全てを同時に化学線硬化させて、硬化したインク構築物を作製することと、を含み、
組成物(B)の層が、組成物(A)の層の全てを同時に化学線硬化させる前又は後のいずれに乾燥されてもよく、硬化した印刷構築物が、初期IPA擦り試験に合格し、初期又は硬化20時間後の親指ねじり試験に合格する、方法を提供する。
【0019】
本発明は、非反応性層、例えばバリア層又はプライマーが、下層又は上層のエネルギー硬化性インクを硬化させるのに必要な光開始剤の大部分又は全てを含有し得る、非常に柔軟な方法である。本発明は、典型的に使用されるよりも少ない光開始剤を使用することを可能にするだけでなく、全ての光硬化性層を一度に同時に硬化させることによって、印刷プロセスを完了するのに必要な時間及びエネルギーの量を低減する。また、ランプ及び硬化ステーションの数を低減し、例えば、いくつかの実施形態では、単一のランプのみを必要とする。
【0020】
発明のこれら及び他の目的、利点、及び特色は、以下により完全に記載される配合物及び方法の詳細を閲読する際に、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】シアンインクの測定色密度に対するインクのg/m
2を示すグラフである。
【
図2】マゼンタインクの測定色密度に対するインクのg/m
2を示すグラフである。
【
図3】黄色インクの測定色密度に対するインクのg/m
2を示すグラフである。
【
図4A】トップコート、シアン上にマゼンタのトラップを含まない「ボトムアップ」印刷構成の概略図である。
図4Aは、トップコートを有しないが、
図4Bは、トップコートを有する。
【
図4B】トップコート、シアン上にマゼンタのトラップを含む「ボトムアップ」印刷構成の概略図である。
【
図5】シアン上にマゼンタのトラップである「トップダウン」印刷構成の概略図である。
【
図6】シアン上に黄色のトラップである「トップダウン」印刷構成の概略図である。
【
図7】マゼンタ上に黄色のトラップである「トップダウン」印刷構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一実施形態では、本発明は、化学放射線でECインク及びコーティングの多層構築物を硬化させ、化学放射線への曝露によって架橋又は重合することができるが、ECインク及び/又はコーティングが、光開始剤をほとんど又は全く含有しない材料、例えば、モノマー、オリゴマー、又はポリマーを含む、エネルギー硬化性(EC)インク及び/又はコーティングの1つ以上の層が、基材に適用され、エネルギー硬化性インク及び/又はコーティングの層の最上部上に、1つ以上の光開始剤を含むが、容易に重合可能な構成成分を含まない非ECインク及び/又はコーティングの1つ以上の層を適用し、任意の順序で、印刷された構築物を化学放射線に曝露させ、ECインク及び/又はコーティングの層の全てを同時に硬化させ、1つ以上の非ECインク及び/又はコーティング層を乾燥させるための、改良された方法を提供する。この構成は、「トップダウン」硬化を生じる。多くの場合、エネルギー硬化性インク及び/又はコーティングを硬化させる前に、非エネルギー硬化性インク及び/又はコーティング層を乾燥させる方がより便利であるが、これは、全ての実施形態で必要とされるわけではない。
【0023】
別の実施形態では、1つ以上の光開始剤を含むが、容易に重合可能な構成成分を含まない非ECインク及び/又はコーティングの1つ以上の層が最初に基材に適用され、次いで、化学放射線への曝露によって架橋又は重合することができるが、光開始剤をほとんど又は全く含有しない材料を含むエネルギー硬化性(EC)インク及び/又はコーティングの1つ以上の層が、1つ以上の光開始剤を含むが、すでに基材に適用されている容易に重合可能な構成成分を含まない非ECインク及び/又はコーティングの1つ以上の層の最上部に適用される。この構成は、「ボトムアップ」硬化を生じる。いくつかの実施形態では、非ECインク又はコーティングの1つ以上の層が、次いでオーバーコートとしてエネルギー硬化性インク及び/又はコーティングの層の最上部上に適用される。いくつかの実施形態では、オーバーコートは、光開始剤を含むことになるが、多くの実施形態では、オーバーコートに光開始剤は存在しない。前述のように、任意の順序で、印刷構築物は、ECインク及び/又はコーティングの層の全てを同時に硬化させる、化学放射線に曝露され、1つ以上の非ECインク及び/又はコーティング層を乾燥させる。
【0024】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的及び説明的なものに過ぎず、特許請求される任意の主題を限定するものではないことを理解されたい。
【0025】
見出しは、組織的な目的のためにのみ使用され、決して発明を限定することを意図するものではない。
【0026】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の開示全体を通して言及される全ての特許、特許出願、公開出願、及び刊行物、ウェブサイト、並びに他の公開資料は、別段留意されない限り、任意の目的のために参照によりその全体が組み込まれる。本明細書に記載のものと同様又は同等の任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験で使用され得るが、好ましい方法が記載される。
【0027】
定義
本明細書では、単数の使用は、別段具体的に記述されない限り、複数を含む。本明細書で使用される場合、別段文脈が明確に示さない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、同様に複数形を含むことが意図される。
【0028】
本明細書では、「又は」の使用は、別段記述されない限り、「及び/又は」を意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」及び/又は「含むこと(comprising)」という用語は、記述される特色、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成成分の存在を指定するが、1つ以上の他の特色、整数、ステップ、操作、要素、構成成分、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しない。更に、「含む(includes)」、「有すること(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、「構成される(composed)」、「構成される(comprised)」という用語、又はそれらの変形が、詳細な説明又は特許請求の範囲のいずれかで使用される範囲まで、そのような用語が、「含むこと(comprising)」という用語と同様の様式で包含されることが意図される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「基材」は、インク又はコーティングが適用され得る任意の表面又は物体を意味する。基材としては、限定されないが、紙、布地、皮革、織物、フェルト、コンクリート、石造物、石、プラスチック、プラスチック又はポリマーフィルム、ガラス、セラミック、金属、木材、複合材、それらの組み合わせ等が挙げられる。基材は、金属若しくは金属酸化物、又は他の無機材料の1つ以上の層を有し得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「1つの物品」又は「複数の物品」は、基材又は製造製品を意味する。物品の例としては、限定されないが、紙、布地、皮革、織物、フェルト、コンクリート、石造物、石、プラスチック、プラスチック又はポリマーフィルム、ガラス、セラミック、金属、木材、複合材等の基材;並びに出版物(例えば、パンフレット)、ラベル、及び包装材料(例えば、段ボールシート又は波形ボード)、容器(例えば、ボトル、缶)、衣類、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、金属箔(例えば、積層アルミニウム箔)、金属化ポリエステル、金属容器等の製造製品が挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「インク及び/又はコーティング」、「インク及びコーティング」、「インク又はコーティング」、「インク」、及び「コーティング」という用語は、交換可能に使用される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「エネルギー硬化」は、化学線効果を生じる様々な電磁放射線源への曝露下で達成される硬化を指す。そのような源としては、限定されないが、電子ビーム、UV光、可視光、IR、又はマイクロ波が挙げられる。組成物をUV光の作用下で硬化させる場合、次いで、以下のような非限定的なUV源が使用され得る:低圧水銀電球、中圧水銀電球、キセノン電球、エキシマランプ、カーボンアークランプ、金属ハロゲン化物電球、UV-LEDランプ、又は太陽光。本発明に従って調製された組成物を硬化させるために、任意のUV光源が使用され得ることが、当業者によって理解されるべきである。本発明の組成物は、UV光及び/又は電子ビームの作用下で硬化可能な組成物における使用に特に適している。
【0034】
本開示では、重合性又は架橋性材料は、硬化の重合又は架橋プロセスに参与するであろう1つ以上の官能基を含有する「ポリマー、モノマー、及び/又はオリゴマー」と称される。「モノマー、オリゴマー、及びポリマー」を含有する混合物は、ポリマー化学の歴史に起因して、多くの場合、当該技術分野で言及される。反応して繰り返し単位を形成する分子は、モノマーである。少数のモノマーが連結した場合、それらはオリゴマーを形成する。オリゴマーは、モノマーと同じ様式で更に反応して、より大きいポリマーの繰り返し単位を形成することができる。反応性官能基を有するポリマーはまた、モノマー及びオリゴマーと同じ様式で反応することができる。「ポリマー、モノマー、及び/又はオリゴマー」という言葉は、当該技術分野に根ざしており、問題の化合物のサイズに関するいくつかのガイダンスを提供することができる様式で、重合性又は架橋性材料を本質的に指す方式を提供する。
【0035】
本開示では、「オリゴマー」は、重合性又は架橋性材料から誘導された繰り返し単位で構成され、約3,000ダルトン以下の任意に選択される重量数平均分子量を有する重合性又は架橋性材料を指し、「ポリマー」は、そのような繰り返し単位を含み、約3,000ダルトン以上の重量数平均分子量を有する。「モノマー」は、オリゴマー又はポリマー中に繰り返し単位を形成することが可能な単一の単位である重合性又は架橋性材料である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「コーティングされた紙」又は「コーティングされた紙基材」は、紙製造業者による印刷のために粘土コート又は同様の滑らかな表面で仕上げられた紙を意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「コーティングされていない紙」又は「コーティングされていない紙基材」は、紙繊維上で直接印刷が行われるように、紙製造業者によってむき出しのままにされている紙を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、範囲及び量は、特定の値又は範囲について「約」として表され得る。「約」は、正確な量も含むことを意図する。したがって、「約5パーセント」は、「約5パーセント」を意味し、「5パーセント」も意味する。「約」は、意図された用途又は目的のための典型的な実験誤差内を意味する。数値範囲が列挙される場合、それは、具体的に列挙されるか否かにかかわらず、終点、その範囲内の全ての値、及びその範囲内の全てのより狭い範囲を含むことを理解されたい。
【0039】
組成物及び方法
特定の態様では、本発明は、インク及び/又はコーティングの層状印刷構築物を基材上に調製するための方法であって、方法が、
a)基材を提供することと、
b)1つ以上のエネルギー硬化性組成物(A)であって、
i)着色剤、
ii)化学放射線下で重合又は架橋することが可能な反応性官能基を含む、1つ以上のエネルギー硬化性ポリマー、モノマー、及び/又はオリゴマー、並びに
iii)組成物(A)の総重量に基づいて、0重量%~12重量%の1つ以上の光開始剤、を含む、1つ以上のエネルギー硬化性組成物(A)を提供することと、
c)非エネルギー硬化性組成物(B)であって、
i)化学放射線下で重合又は架橋することが可能な反応性官能基を含まない樹脂、及び
ii)組成物(B)の総重量に基づいて、1重量%~20重量%の1つ以上の光開始剤、例えば3~15重量%の光開始剤、を含む、非エネルギー硬化性組成物(B)を提供することと、
d)組成物を基材上に適用することであって、1つ以上の組成物(A)が適用され、組成物(B)が最後の下層として、組成物(A)の1つ以上の層の最上部に適用される、適用することと、
e)組成物(B)の層を乾燥させることと、
f)組成物(A)の層の全てを同時に化学線硬化させて、硬化した印刷構築物を作製することと、を含み、
硬化した印刷構築物が、初期IPA擦り試験に合格し、初期又は硬化20時間後の親指ねじり試験に合格する、方法を提供する。
【0040】
別の特定の態様では、本発明は、インク及び/又はコーティングの層状印刷構築物を基材上に調製するための方法であって、方法が、
a)基材を提供することと、
b)1つ以上のエネルギー硬化性組成物(A)であって、
i)着色剤、
ii)化学放射線下で重合又は架橋することが可能な反応性官能基を含む、1つ以上のエネルギー硬化性ポリマー、モノマー、及び/又はオリゴマー、並びに
iii)組成物(A)の総重量に基づいて、0重量%~12重量%の1つ以上の光開始剤、を含む、1つ以上のエネルギー硬化性組成物(A)を提供することと、
c)非エネルギー硬化性組成物(B)であって、
i)化学放射線下で重合又は架橋することが可能な反応性官能基を含まない樹脂、及び
ii)組成物(B)の総重量に基づいて、1重量%~20重量%の1つ以上の光開始剤、例えば3~15重量%の光開始剤、を含む、非エネルギー硬化性組成物(B)を提供することと、
d)組成物(B)の1つ以上の層を最初に適用し、続いて組成物(A)の1つ以上の層を組成物(B)の1つ又は複数の層上に適用することによって、組成物を基材上に適用することと、
e)組成物(B)の層を乾燥させることと、
f)組成物(A)の層の全てを同時に化学線硬化させて、硬化した印刷構築物を作製することと、を含み、
硬化した印刷構築物が、初期IPA擦り試験に合格し、初期又は硬化20時間後の親指ねじり試験に合格する、方法を提供する。
【0041】
多くの実施形態では、組成物(A)の1つ以上のエネルギー硬化性ポリマー、モノマー、及び/又はオリゴマーの反応性官能基は、フリーラジカル重合性末端基、例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、ビニルエーテル、アリルエーテル、マレエート、イタコネート、エポキシド、及び/又はオキセタンを含む。例えば、反応性官能基は、アクリレートを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、エネルギー硬化性ポリマー、モノマー、及び/又はオリゴマーは、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ基、及び/又はそれらの関連する塩を更に含む。
【0043】
多くの実施形態では、組成物(A)の2つ以上の層が基材に適用され、例えば、組成物(A)の4つ以上の層が基材に適用される。
【0044】
例えば、多くの実施形態では、組成物(A)の各層は、独立して、
a)組成物の総重量に基づいて、0重量%~3重量%、例えば0.1~3重量%の光開始剤を含む、黄色プロセスインク層、
b)組成物の総重量に基づいて、0重量%~3重量%、例えば、0.1~3重量%の光開始剤を含む、マゼンタプロセスインク層、
c)組成物の総重量に基づいて、0重量%~5重量%、例えば、0.5~5重量%の光開始剤を含む、シアンプロセスインク層、又は
d)組成物の総重量に基づいて、6重量%~12重量%、例えば8~12重量%を含む、黒色プロセスインク層から選択される。
【0045】
特定の実施形態では、組成物(A)のインク又はコーティングは、以下の量の少量の光開始剤を含む:
黄色プロセスインク-0.1~2%又は0.1~0.5%
マゼンタプロセスインク-0.1~2%又は0.1~0.5%
シアンプロセスインク-0.5~3%又は1~2%
黒色プロセスインク-6~12%、又は7~10%、又は7~8%。
【0046】
多くの場合、組成物(A)の少なくとも1つの層は、黒色プロセスインク層である。当該技術分野で周知であるように、黒色顔料は、インクのUV硬化に困難を引き起こす傾向があり、多くの場合、他の色と比較して、より多くの量の光開始剤及び硬化のための更なる時間を必要とする。
【0047】
本方法によれば、高電圧水銀電球、中電圧水銀電球、キセノン電球、カーボンアークランプ、金属ハロゲン化物電球、UV-LEDランプ、UVレーザー、及びそれらの組み合わせからの光によって、組成物(A)の層を同時に化学線硬化させ、例えば、層は、80ワット/cmのランプ電力を有する中圧水銀蒸気UVランプ下での40メートル/分の速度の単回通過で硬化可能である。
【0048】
また、提供されるのは、発明の方法によって調製される硬化したインク構築物(すなわち、印刷構築物)、例えば、発明の硬化したインク構築物を含む基材、及びそのようなコーティングされた基材を含む物品、例えば、電子物品又は構成要素である物品である。
【0049】
発明のインク及びコーティングのうちのいずれも、リソグラフィー、フレキソグラフィー、レタープレス、グラビア、デジタル、スクリーン、カーテンコーター、スライドコーター、ドロップダイ、スプレーバー、インクジェット、ブランケットコーター等の多種多様な印刷方法を介して適用することができる。印刷方法の組み合わせを使用してもよい。
【0050】
発明の一実施形態では、非ECインク及びコーティングは、カーテンコーター、スライドコーター、ドロップダイ、スプレーバー、インクジェット、ブランケットコーター、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスによって適用される。一実施形態では、非ECインク層及びコーティング層は、押出されたポリマー層又はインクジェットによるポリマー層を含む。
【0051】
発明のEC層は、例えば、高電圧水銀電球、中電圧水銀電球、キセノン電球、カーボンアークランプ、金属ハロゲン化物電球、UV-LEDランプ、UVレーザー、半導体レーザー、エキシマレーザーによって提供されるUV光、又は太陽光等の化学線光源によって硬化させることができる。いくつかの実施形態では、適用される放射線の波長は、約250~350nm等の約200~500nmの範囲内である。いくつかの実施形態では、UVエネルギーは、約50~500mJ/cm2の範囲等の約30~3,000mJ/cm2の範囲内である。加えて、EC組成物の吸収スペクトルに従って、電球を適切に選択してもよい。更に、インクは、不活性条件下で、又はプラスチック箔によって積層されたインクとして硬化させることができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明の方法が実施される前に、1つ以上の事前印刷ステップが実行される。基材は、インク、コーティングプライマー等の1つ以上の層で事前印刷され得る。次いで、事前印刷層を完全に乾燥又は硬化させる。この事前印刷された基材は、その後、本発明の印刷方法の基材として機能する。
【0053】
多くの実施形態では、光開始剤を含有しないか、又は少量の光開始剤を含有するかのいずれかのECインク又はコーティングの層は、光開始剤を含有する非ECインク又はコーティングで湿式トラップされ、例えば、硬化前にオーバーコーティングされ、次いでECインク又はコーティングを硬化させる。生じた印刷された物品は、高レベルの光開始剤を有する従来のECインクと同等以上の特性を呈する。この光開始剤の低減は、ステーション間硬化の必要性を低減し、複数の硬化ランプの必要性を低減し、並びに感受性の高い包装における移行問題を引き起こし得る光開始剤の量を低減する点において、非常に価値がある。本方法はまた、硬度、傷/擦り耐性、及び溶媒耐性における改善を提供し得る。
【0054】
従来のUV印刷に対する発明の技術の利点は、光開始剤を含有するコーティングの下でインクが湿式トラップされる場合、インクに追加の光開始剤が存在する状況、及び光開始剤を必要としない状況の両方で、複合材全体を硬化させるのに、1組のみのランプを必要とすることである。これによって、従来の印刷と比較してエネルギー使用量の大幅な低減が生じる。各印刷ステーションに典型的なダブルランプセットで長さ100cmの電球を、160W/cmのHg蒸気ランプに典型的なエネルギー消費量で用いるプレスでの電力低減は、電源を切ることができるランプセット当たり32kWになるであろう。UVコーティングを用いたシンプルな4色の作業では、典型的には、5つのランプセットが操作される。コーターのランプセット以外の全ての電源を切ることができる場合、低減は、128kWになるであろう。印刷されている色が多いほど、より多くのランプの電源を切ることができ、エネルギー節約が大きくなるであろう。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、同時乾燥/硬化機能がプレスのコーティングユニットの後ろに挿入されるであろう。オフセットシート供給プレスでは、このセクションは、「送達部」として知られている。これは、洗練された印刷機のメンテナンスショップの機能の範囲内であり、間違いなくプレス製造業者の機能の範囲内にある。ウェブ印刷機(オフセット、フレキソグラフ等)の要件は、幾分より複雑であるが、熱乾燥又はUV硬化を達成するための追加のインラインプロセスユニットの設置は、そのような印刷所の標準的な操作手順であり、多くの障害を提示しないであろう。
【0056】
発明では、多種多様な基材が、コーティングされ得る。いくつかの実施形態では、基材は、限定されないが、平坦なシート又はウェブの形態の不織布又は織布である紙又は板紙等の多孔質基材である。いくつかの実施形態では、紙は、固形漂白(SBS)板紙、ポリコーティングされた紙、及び高品質のスーパーカレンダー印刷ストック等の粘土コーティングされたカートンボードである。多孔質基材の多孔度は、高圧Gurley試験、10ccの空気、1.0平方インチのオリフィスを使用して(印刷面を上にして)測定され得る。好ましい実施形態では、多孔質基材は、130秒以上の平均Gurley試験値を有する。より具体的には、意図される基材から採取した15個の試料集団では、試験の95%下限信頼区間(平均値-2×標準偏差)は、好ましくは115超である。本明細書における多孔度測定は、TAPPI T460om-02等の標準的な方法を使用して、Gurley Precision Instrument CompanyからのGurley Automatic Densometer Model 4340を使用して得た。
【0057】
他の実施形態では、多孔質基材は、多孔質を一時的に低減するように湿潤され得る。湿潤液体は、水又は別の溶媒であり得る。いくつかの実施形態では、湿潤は、多孔質基材の裏側であり得る。湿潤は、リソグラフプレス印刷、フレキソ/グラビアプレス印刷、又は他の印刷方法によるものであり得る。いくつかの実施形態では、多孔質基材は、プライマー等によって、印刷前に封止される。
【0058】
いくつかの実施形態では、基材は、限定されないが、平坦なシート又はウェブの形態のポリマーフィルム又は金属箔等の非多孔質基材である。例としては、様々なプラスチック、ガラス、金属、及び/又はコーティングされた紙が挙げられる。これらとしては、限定されないが、成形プラスチック部品、並びにポリマーフィルムの平坦なシート又はロールを挙げることができる。ポリマーフィルムの一般的なタイプとしては、限定されないが、包装用途で使用されるフィルムが挙げられる。包装用途で使用されるフィルムの例としては、限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ乳酸(PLA)、及び/又はポリスチレン(PS)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリエチレン系フィルムは、単層フィルム又はバリアポリマー層を含む多層フィルムである。フィルムは、様々な機能的特性及び外観特性を提供するためのコーティング(又はスキン層)を有し得る。これらとしては、限定されないが、金属化、バリアコーティング、ヒートシール層、及び/又は印刷受容性プライマーが挙げられる。フィルムはまた、色及び/又は不透明度を追加するための顔料、充填剤、及び/又は空隙を含有し得る。フィルムとしては、スリーブラベルを含む収縮ラベルを生成するために使用される熱収縮フィルムを挙げることができる。金属基材としては、限定されないが、アルミニウム箔が挙げられる。多層積層基材もまた、使用され得る。多層積層基材の例としては、限定されないが、PET/PE、PET/Al箔/PE、PE/紙、及び/又は紙/PE/Al箔/PEを挙げることができる。印刷されたプラスチックフィルム、紙、又は板紙は、その後、1つ以上のプラスチックフィルムに積層されて、印刷された積層フィルムを形成することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、基材は、印刷された包装の製造に使用される。異なるタイプの包装としては、可撓性包装、ラベル、折り畳みカートン、硬質プラスチック容器、ガラス容器、及び/又は金属缶が挙げられる。硬質プラスチック容器としては、ボトル、ジャー、桶、及びチューブが挙げられる。印刷され包装された容器は、食品、非食品、医薬品、及び/又はパーソナルケアアイテムを収容し得る。
【0060】
ECインク又はコーティング中の重合性材料は、エネルギーリッチな放射線への曝露で互いに反応するか又は架橋剤と反応する反応性基を含有する。それらは、紫外線光(UV)を使用して、具体的には、光開始剤がUV光に曝露されると生成される光重合推進フリーラジカルの手段によって硬化し得る。高電圧水銀電球、中電圧水銀電球、キセノン電球、カーボンアークランプ、金属ハロゲン化物電球、UV-LEDランプ、半導体レーザー若しくはエキシマレーザー等のUVレーザーによって提供されるUV光、又は太陽光等の多様な化学線光源が使用され得る。
【0061】
重合性又は架橋性材料を含むECインクは、基材の一部、大部分、又は全てに印刷され得る。典型的には、非ECインク又はコーティングは、ECインクで印刷される全ての領域の最上部上に適用され、多くの実施形態では、全ての印刷される領域及び印刷されない領域を含む、下の構築物全体を覆うフラッドコートとして適用される。いくつかの実施形態では、非ECインク又はコーティングは、例えば、プライマーとして基材に適用され、ECインク又はコーティングは、プライマーの表面に適用される。
【0062】
発明のECインク及びコーティングは、典型的には、ビヒクル、典型的にはアクリレートオリゴマー及び/又はモノマーである希釈剤、並びに添加剤、並びに任意選択的に1つ以上の着色剤を含むが、光開始剤は含まない。希釈剤は、粘度及び粘着性を制御する。
【0063】
発明のECインクは、限定されないが、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、ビニルエーテル、アリルエーテル、マレエート、イタコネート、エポキシ、及び/又はオキセタンを含む反応性官能基を含む、分散可能な重合性及び/又は架橋性材料、例えば、モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、反応性基は、フリーラジカル重合性末端基である。いくつかの実施形態では、フリーラジカル硬化性基は、アクリレート基である。いくつかの実施形態では、限定されないが、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ基及び/又はそれらの関連する塩等のアクリレートモノマー又はオリゴマー上に他の官能基が存在する。いくつかの実施形態では、ECインクは、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、及びそれらの組み合わせを含む。
【0064】
典型的には、ECインクは、約0重量%~約15重量%の光開始剤を含む。本発明では、光開始剤を含有する非反応性コーティングは、その下にあるECインクを硬化させるのに十分であろう量の光開始剤を有する。本発明のECインク及び非ECコーティング複合材は、典型的な印刷プレス又はコーター速度で、商業的に利用可能な強度のUV光に曝露させることによって硬化する。いくつかの実施形態では、ECインクは、約0~12%、例えば、約0~10%、約0~8%、約0~6%、約0~5%、約0~4%、約0~2%、約0~0.5%、約0~0.3%、約0.5~10%、約0.5~8%、約0.5~6%、約0.5~5%、約0.5~4%、約0.5~2%、約0.5~1%、又は約0.1~0.5%の光開始剤を含有し、光開始剤含有量は、硬化させるインクの色に依存する。非反応性コーティングは、好ましくは、約3~12%、約3.5~13%、又は約4.5~10.0%等の約2~15%の光開始剤を含有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、光開始剤を含まないECインクの層は、約2~10%の光開始剤を含有する非反応性コーティングでコーティングされた後に硬化させる。いくつかの実施形態では、非反応性コーティングは、約5~10%、約6~9%、又は約7~8%の光開始剤を含有する。
【0066】
ECインクに少量の光開始剤を添加することが有利であり得る。異なる色を硬化させるのに必要な光開始剤の量は変動することが周知であるので、光開始剤の量は、インクの色に依存する。4色プロセス印刷インク(黄色、マゼンタ、シアン、黒)の場合、個々のECプロセス色での光開始剤の量が以下のとおりであった場合、優れた結果が得られた。
黄色プロセスインク-0.1~2%又は0.1~0.5%
マゼンタプロセスインク-0.1~2%又は0.1~0.5%
シアンプロセスインク-0.5~3%又は1~2%
黒色プロセスインク-6~12%、7~10%、又は7~8%
【0067】
発明の非ECコーティングでオーバープリントされる場合、黒色プロセスインクでは、6~12%、より好ましくは7%~10%、最も好ましくは7%~8%の光開始剤の添加によって、商業的に相対するUV曝露レベルで難なくインクを硬化させることが可能になるであろう。一実施例では、7.7%の光開始剤を含有する水系非ECアクリルコーティングの下の7.1%の光開始剤を含有する黒色ECインクを、80W/cmのランプ強度を用いて40m/分で商業的に許容される条件まで硬化させた。(インク中)11.7%の光開始剤を含有し、光開始剤を含まない同じ水系コーティングでコーティングされた同じ黒色インクは、この条件下では硬化せず、代わりに、商業的に許容される状態まで硬化するのに160W/cmの強度で40m/分の曝露を必要とした。
【0068】
しかしながら、1.8超の光学密度を有し、4~12%、6~10%の光開始剤、及びいくつかの実施形態では7~8%の光開始剤を含む黒色インクを使用すると、発明に従って黒色インクを硬化させた優れた結果が実現される。多くの実施形態では、黒色インク及び非ECコーティング中の光開始剤の組み合わせた重量は、その上にコーティングを有しない黒色インク単独を同一のUV曝露レベルで硬化させるのに必要とされるであろう光開始剤の量よりも少ない。一般に、その上にコーティングを有しない黒色インク単独に添加される場合、黒色インク及び発明の非ECコーティング中の光開始剤の組み合わせた重量では、黒色インクを硬化させることは不可能であろう。
【0069】
いくつかの実施形態では、発明のインク又はコーティングは、独立して、油改質フェノール樹脂、ケトン樹脂、アルデヒド-尿素樹脂、油改質ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルスチレン樹脂、又はそれらの混合物を含むが、ただし、樹脂が、インクに使用される任意のアクリルモノマー、オリゴマー、油、及びアルキドに可溶性であることを条件とする。
【0070】
ECインクは、重合性又は架橋性材料、例えば、重合性モノマー又はオリゴマーを含む。モノマー又はオリゴマーは、アクリレートモノマー又はアクリレートオリゴマーから選択され得る。いくつかの実施形態では、モノマーは、アクリレート、カプロラクトン、及びピロリドンモノマーから選択される。
【0071】
ECインクに好適なアクリレートモノマーは、1~6個のアクリレート基を有するアクリルモノマーを含む。アクリレートモノマーの例としては、限定されないが、1,2-エチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノール-Aジアクリレート、エトキシル化ビスフェノール-A-ジアクリレート、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテルジアクリレート、ポリ(エチレン)グリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールトリアクリレート、プロポキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、エトキシル化ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、モノマーは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、3-メチル1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノール-A-ジアクリレート、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテルジアクリレート、ポリ(エチレン)グリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、プロポキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0073】
いくつかの実施形態では、モノマーは、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、及びエトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、プロポキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0074】
いくつかの実施形態では、モノマーは、3-メチル1,5-ペンタンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0075】
いくつかの実施形態では、モノマーは、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0076】
ECインクは、約400~3,000ダルトンの重量数平均分子量を有する1つ以上のアクリル化オリゴマーを含み得る。重量数平均は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して決定される。いくつかの実施形態では、アクリル化オリゴマーは、2つ以上のアクリレート官能基を有する。アクリル化オリゴマーの例としては、限定されないが、亜麻仁油、大豆油、及びヒマシ油に基づくアクリル化油;エポキシアクリレート;Ebecryl870(Allnex)等の油改質ポリエステルアクリレート;アクリル化ポリウレタン;アクリル化ポリアクリレート;アクリル化ポリエーテル;並びにアクリル化アミンが挙げられる。アクリル化オリゴマーは、レオロジー、顔料湿潤、転写、光沢、化学物質耐性、及び他のフィルム特性を付与し得る。いくつかの実施形態では、アクリル化オリゴマーは、アクリル化油又は油改質ポリエステルである。
【0077】
ECインクの中の油及びアルキド樹脂中の二重結合の早期重合を回避するために、抗酸化剤が添加され得る。例示的な抗酸化剤としては、アスコルビン酸、アスタキサンチン、カロテン、クロマン(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン)、ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シナメート)、オクタデシル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シナメート、ビタミンE及びビタミンE類似体、ユーゲノール(4-アリル-2-メトキシフェノール)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ヒドロキノン、4-メトキシフェノール、モノ-tert-ブチルヒドロキノン(MTBHQ)、他のヒドロキノンエーテル、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、RahnからのGenorad(商標)阻害剤、並びにKromachemからのFLORSTAB(商標)安定剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗酸化剤は、MTBHQ、BHT、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0078】
発明の非反応性コーティングは、水系又は溶媒系であり得る。典型的には、下にあるECインクが化学放射線に曝露される前又は後に、非反応性コーティングは、空気流及び/又は熱及び/又はIR放射線への曝露によって熱乾燥される。一般に、仕上がった構造の耐性特性(摩擦及び/又は溶媒及び/又は傷耐性)は、バリアが存在しない状態で硬化させた同じインクのものを顕著に上回る。非反応性コーティングは、典型的には、限定されないが、カーテンコーター、スライドコーター、ドロップダイ、スプレーバー、及びインクジェットを含む非接触方法によって、基材に直接適用され得るか、又は基材及び/若しくはインクの一部、大部分、若しくは全てに印刷され得る。いくつかの実施形態では、コーティングは、フレキソ、グラビア、又はブランケットコーティングによって適用される。いくつかの実施形態では、非反応性コーティングは、少なくとも部分的に空気不透過性の層である。
【0079】
水系コーティングは、50重量%超が水であるが、インク及びコーティング配合物に典型的に用いられるもの等の、追加の溶媒を含み得る。これらとしては、限定されないが、アセテート、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、エステル、脂肪族及び芳香族炭化水素若しくは他の石油蒸留物、又はそれらのブレンドが挙げられる。
【0080】
溶媒系コーティングは、50%超の溶媒を含有する。溶媒系コーティングで使用される典型的な溶媒としては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、及びtert-ブタノール等のアルコール;グリコール;アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等のケトンが挙げられる。溶媒系コーティングで使用される追加の典型的な溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、及び酢酸イソブチル等のエステルが挙げられる。溶媒系コーティングで典型的に使用される更なる溶媒としては、炭化水素が挙げられ、これらのより一般的ないくつかとしては、n-ヘプタン、トルエン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、及びシクロヘプタンが挙げられる。溶媒系コーティングではあまり一般的に使用されないものは、1,4-ジオキサン、ジオキソラン、2-ブトキシエタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の揮発性の低いエーテルのうちのいくつかである。
【0081】
非反応性インク及びコーティングで使用され、当業者に既知のものを含むポリマー及び樹脂には、特に限定はない。
【0082】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の非反応性結合剤ポリマーは、アクリルポリマー、多くの場合メチルメタクリレート/ブチルアクリレートコポリマー等の少なくとも2つのアルキルエステルアクリレートのアクリルコポリマーである。例えば、アクリルホモポリマー及びコポリマー、例えば、スチレンアクリルエマルション、アクリルアミドコポリマー及びコ-ポリマー、並びに/又はアクリルコロイド分散体等の任意の水相溶性又は水溶性アクリルポリマーが用いられ得る。いくつかの実施形態では、組成物は、可溶性を維持するために、アクリル系組成物に対して過剰なアミンを用いるか、又は代替的に、参照により本明細書に組み込まれるEP2356184B1に明らかにされているデンプン又はその誘導体を使用してもよい。
【0083】
とりわけより一般的に使用される樹脂は、粒子が凝集しない、及び/又は水から沈降しないアルカリ及び安定化アクリル及びポリウレタン分散体である。これは、典型的には、例えば、ペンダントカルボン酸部分等の分散ポリマー酸部分を、アンモニア又はアミン等の塩基性化合物で中和することによって達成される。有用なアミンとしては、水溶性である1つ以上の一級、二級、又は三級アミノ基を有する脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式アミンが挙げられる。特に好ましいのは、アルコキシアミンである。例としては、限定されないが、アンモニア(水溶液)、エタノールアミン(モノ、ジ、トリ)、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、尿素、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、及び同様の材料が挙げられる。
【0084】
本明細書で使用される場合、「水系アクリル」(又は「水系ポリウレタン」)は、水溶性又は分散性であり、水性(waterborne)インク又はコーティング組成物と相溶性であるアクリル(又はポリウレタン)である。ポリエステル、スチレン-無水マレイン酸樹脂、及び半エステル、スチレン-ブタジエンラテックス、ポリビニルアルコール、SBRラテックス、酢酸ビニルエマルション、並びに他の水相溶性ポリマー等の他の樹脂もまた、存在し得る。樹脂は、分子量が変動し得、表面張力改質剤を含んでもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、様々な特性を付与するために、限定されないが、表面張力改質剤、消泡剤、防腐剤、殺生物剤、分散剤、増粘剤、及び架橋剤等の任意選択的な添加剤が、インク又はコーティングに添加される。いくつかの実施形態では、可塑剤及び/又は凝集剤は、樹脂の特性を改質するために、並びに乾燥プロセス中のフィルム形成を補助するために使用される。乾燥させたコーティングの表面特徴の調整は、限定されないが、アミドワックス、エルカミドワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルナウバワックス等のワックス、又はそれらの組み合わせで行われ得る。ワックスは、存在する場合、典型的には、最大約4重量%の量である。インク及びコーティングで典型的に用いられる既知の添加剤のうちのいずれかが、関連する水系コーティングの配合物中で使用され得る。
【0086】
非反応性インク及びコーティングで使用され、当業者に既知のものを含む樹脂には、特に限定はない。いくつかは、天然由来であり、いくつかは、合成ポリマーである。とりわけより一般的に使用されるものは、ポリウレタン、ニトロセルロース、ポリ酪酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、無水マレイン酸スチレン、アクリル樹脂、スチレンアリルアルコール、ポリエステル、エポキシ、炭化水素、セルロース、ポリアミド、ロジン、改質樹脂、及びそれらの組み合わせである。
【0087】
非反応性インク又はコーティングの樹脂としては、限定されないが、Tego Variplus AP(Evonik)、BASFからのLaropal Aアルデヒド樹脂シリーズ(例えばA-81、A-101等)、及びケトン樹脂(例えばTego APケトン-アルデヒド縮合樹脂)が挙げられる。
【0088】
光開始剤の例としては、限定されないが、ベンゾフェノン、ベンジルケタール、ジアルコキシアセトフェノン、ヒドロキシアルキル-アセトフェノン、アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド及びチオキサントン、例えば、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)-ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)-ベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシ-アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-2-オン、ジフェニルアシルフェニルホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6,-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0089】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、I型光開始剤から選択される。例の非限定的な列挙としては、以下が挙げられる:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス-アシルホスフィンオキシド(Irgacure819)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン、エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート、Darocur1173と2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンとの50/50ブレンド、2-メチル-1-[4(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-2-オン。
【0090】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、例えば、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、エチルMichler’sケトン等のII型光開始剤、及びポリマー性II型;並びにそれらの組み合わせから選択される。
【0091】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス-アシルホスフィンオキシド(Irgacure819)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン、エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート、Darocur1173と2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンとの50/50ブレンド、2-メチル-1-[4(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-2-オン、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0092】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、ビス-アシルホスフィンオキシド(Irgacure819)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン、エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート、Irgacure754;211510-16-6;ベンゼン酢酸、a-オキソ-、1,1’-(オキシジ-2,1-エタンジイル)エステル、及びメチルベンゾイルホルメート、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0093】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、ビス-アシルホスフィンオキシド(Irgacure819)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン、エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0094】
食品包装用に設計されたインクは、一般に、低分子量モノマー性光開始剤がインクから食品に移動し得るので、より少量の低分子量モノマー性光開始剤を含有する。いくつかの実施形態では、配合物は、低分子量モノマー性光開始剤を含有しない。代わりに、オリゴマー性又はポリマー性光開始剤を含有する。いくつかの実施形態では、オリゴマー性又はポリマー性光開始剤としては、限定されないが、IGM resinsからのOmnipol BP等のオリゴマー性ベンゾフェノン誘導体を含有する光開始剤、Rahn GroupからのGenopol AB-1等のオリゴマー性アミン、及びIGM companyからのOmnipol910等のオリゴマー性I型光開始剤等が挙げられる。
【0095】
アミン相乗剤もまた、ECインク配合物中に含まれ得る。限定されないが、好適な例としては、限定されないが、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート等の芳香族アミン;N-フェニルグリシン;安息香酸、4-(ジメチルアミノ)-、1,1’[(メチルイミノ)ジ-2,1-エタンジイル]エステル;並びに4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸と、エチル、アミル、2-ブトキシエチル、及び特に好ましくは2-エチルヘキシルエステルとの単純なアルキルエステルが挙げられ、N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エステルの他の位置異性体等も好適である。
【0096】
N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びトリ-イソプロパノールアミン等の脂肪族アミンもまた、好適なアミン相乗剤である。
【0097】
市販のアミン相乗剤としては、限定されないが、ALLNEXから入手可能なEBECRYL80、EBECRYL81、EBECRYL83、EBECRYL85、EBECRYL880、EBECRYLLEO10551、EBECRYLLEO10552、EBECRYLLEO10553、EBECRYL7100、EBECRYLP115、及びEBECRYLP116;全てSartomerから入手可能なCN501、CN550、CN UVA421、CN3705、CN3715、CN3755、CN381、及びCN386;RAHNからのGENOMER5142、GENOMER5161、GENOMER5271、及びGENOMER5275;全てIGMから入手可能なPHOTOMER4771、PHOTOMER4967、PHOTOMER5006、PHOTOMER4775、PHOTOMER5662、PHOTOMER5850、PHOTOMER5930、及びPHOTOMER4250、全てBASFから入手可能なLAROMER LR8996、LAROMER LR8869、LAROMER LR8889、LAROMER LR8997、LAROMER PO83F、LAROMER PO84F、LAROMER PO94F、LAROMER PO9067、LAROMER PO9103、LAROMER PO9106、及びLAROMER PO77F;AGISYN701、AGISYN702、AGISYN703、NeoRad P-81、及びNeoRad P-85 ex DSM-AGIを含む、アミノアクリレート及びアミン改質ポリエステルアクリレートが挙げられる。
【0098】
いくつかの実施形態では、顔料及び/又は染料の形態の着色剤が、ECインク又は非ECインクに組み込まれ得る。多くの実施形態では、ECインクのうちの1つ以上が、着色剤を含む。顔料は、乾燥粉末形態であってもよく、次いで、当該技術分野で周知の技術を使用して、ビヒクル又はモノマー又は樹脂の一部分とともに粉砕され得る。着色剤の例としては、限定されないが、有機顔料、金属顔料、真珠光沢顔料等の効果顔料、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0099】
1つ以上の着色剤は、染料又は顔料の形態であり得る。使用に好適な顔料としては、限定されないが、従来の有機又は無機顔料が挙げられる。代表的な顔料としては、限定されないが、顔料黄色1、顔料黄色3、顔料黄色12、顔料黄色13、顔料黄色14、顔料黄色17、顔料黄色63、顔料黄色65、顔料黄色73、顔料黄色74、顔料黄色75、顔料黄色83、顔料黄色97、顔料黄色98、顔料黄色106、顔料黄色111、顔料黄色114、顔料黄色121、顔料黄色126、顔料黄色127、顔料黄色136、顔料黄色138、顔料黄色139、顔料黄色174、顔料黄色176、顔料黄色188、顔料黄色194、顔料オレンジ5、顔料オレンジ13、顔料オレンジ16、顔料オレンジ34、顔料オレンジ36、顔料オレンジ61、顔料オレンジ62、顔料オレンジ64、顔料赤色2、顔料赤色9、顔料赤色14、顔料赤色17、顔料赤色22、顔料赤色23、顔料赤色37、顔料赤色38、顔料赤色41、顔料赤色42、顔料赤色48:2、顔料赤色53:1、顔料赤色57:1、顔料赤色81:1、顔料赤色112、顔料赤色122、顔料赤色170、顔料赤色184、顔料赤色210、顔料赤色238、顔料赤色266、顔料青色15、顔料青色15:1、顔料青色15:2、顔料青色15:3、顔料青色15:4、顔料青色61、顔料緑色7、顔料緑色36、顔料バイオレット1、顔料バイオレット19、顔料バイオレット23、顔料黒色7、及びそれらの組み合わせの群が挙げられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、ECインク又は非ECインクは、アクリレートモノマー及びオリゴマー、油及びアルキド樹脂と相溶性及び/又は可溶性である不活性硬質樹脂を含む。不活性硬質樹脂は、基材に適用した後に室温で粘着性のないフィルムを形成する、天然又は合成の非晶質材料である。これらの材料は、反応性官能基を有せず、エネルギー硬化によって架橋することが可能ではない。不活性硬質樹脂の例としては、限定されないが、アビエチン酸、レボピマル酸、ネオアビエチン酸、パルストル酸、デヒドロアビエチン酸、ピマル酸、及びイソピマル酸の誘導体等の多様な異性体及び異なる化学構造からなるロジン樹脂誘導体が挙げられる。ロジン誘導体は、無水マレイン酸又はフマル酸で修飾され、グリセロール及びペンタエリトリトール等のポリオールでエステル化され得るか、又はフェノール性ロジン樹脂であり得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、発明のインク又はコーティングは、独立して、アクリルモノマーに可溶性であるマレイン酸ロジン樹脂を含む。マレイン酸ロジン樹脂の例としては、限定されないが、Jonrez IM816、Jonrez IM817、Jonrez IM824、Jonrez IM833(全てWestvacoから)、Arez RE3010(AREZ International)、Resinallの440及び445、Filtrez3300(AKZO)が挙げられる。いくつかの実施形態では、樹脂は、100℃超の軟化点、Haltermann Carlessからの10%の6/9鉱物試験油中での100℃超の曇点、及び10~40mg KOH/gの酸価を有する。
【0102】
いくつかの実施形態では、発明のインク又はコーティングは、独立して、アクリレート可溶性炭化水素樹脂又は改質炭化水素樹脂を含む。アクリレート可溶性炭化水素樹脂又は改質炭化水素樹脂の例としては、限定されないが、Norsolene S125、S135、S145(Cray Valleyから)、又はGA-120等の100℃超の軟化点を有する芳香族C-9炭化水素樹脂、C-9芳香族炭化水素樹脂(Luen Liang Industrial、Taiwan)、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0103】
いくつかの実施形態では、ECインク又は非ECインクは、硬化させるコーティング又は印刷されるインクの流動性、表面張力、光沢、顔料湿潤、及び摩耗耐性を改質するための添加剤を更に含み得る。インク又はコーティングに含有されるそのような添加剤は、典型的には、表面活性剤、ワックス、貯蔵寿命安定剤等、及びそれらの組み合わせである。これらの添加剤は、レベリング剤、貯蔵寿命安定剤、湿潤剤、スリップ剤、流動剤、分散剤、及び脱気剤として機能し得る。添加剤の例としては、限定されないが、フルオロカーボン界面活性剤、シリコーン、及び有機ポリマー界面活性剤が挙げられる。例としては、Tego Rad(商標)製品ライン(Tego Rad(商標)は、商標登録されており、市販されているEvonik、Essen Germanyの製品である)、及びSolsperse(商標)製品ライン(Solsperse(商標)は、商標であり、市販されているLubrizol Companyの製品である)が挙げられる。
【0104】
吸水性、ミスチング、及び着色強度を調整するために、他の添加剤インク、例えば、粘土、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、又はそれらの組み合わせ等の伸長剤もまた存在し得る。
【0105】
発明のインク又はコーティングは、当該技術分野で既知の典型的な手順によって、通常は、乾式粉砕によって、又はフラッシュ、色濃縮物、若しくはベースを使用して作製され得る。
【0106】
インクのための典型的な乾式粉砕製造手順では、必要量の乾燥顔料は、全ての顔料を濡らすために、溶解器又は混合器内で従来の油、アルキド樹脂、不活性硬質樹脂、及びアクリレートと約15~30分間混合される。典型的には、不活性硬質樹脂は、油又はアクリレートモノマー(ワニス)のいずれか中の溶液として導入される。次いで、事前混合物は、所望の粉砕仕様を満たすまで、約1~4MPaの圧力及び20~40℃の温度の3ロールミル(又は他の粉砕ミル)で粉砕される。光開始剤は、溶液又はペーストの形態で粉砕前又は粉砕後に添加され得る。
【0107】
「フラッシングプロセス」では、湿式顔料プレスケーキは、例えば、シグマブレードミキサーのような高せん断粉砕装置で「フラッシュ」される。油、ワニス、アルキド、及び/又は他の非水性疎水性ビヒクルが添加され、顔料は最終的に有機相にフラッシュされ、水相は顔料に接触しないように維持される。次いで、水の実質的な部分は流し出される場合がある。残りの水を除去するために、通常は、熱及び真空が適用される。生じた生成物は、「フラッシュペースト」又は顔料濃縮物(ベース)と呼ばれる。次いで、顔料濃縮物は、アクリレートモノマー、オリゴマー、任意選択的に光開始剤、及び不活性硬質樹脂(ワニス)の溶液で希釈される。
【0108】
インクが食品包装に使用されるものである場合、顧客許容性の観点から、インクは、食品を汚染するか、又は不自然な臭気を食品に付与しない必要があることが不可欠である。更に、公衆衛生に影響を与え得る食品及び他の物質中の汚染物質のレベルを非常に低く規定する法律傾向が、増加している。この文脈において、汚染は、インクの構成成分が食品若しくは他の包装された材料への移行から、又はインクによって包装された材料に付与される望ましくない臭気から生じ得る。光開始剤の低減は、光開始剤が移動する可能性も低減する。加えて、改善された硬化は、未反応モノマーが移動する可能性を低減する。
【0109】
移行試験は、多くの場合、インク構成成分がパッケージに入り、包装された製品の品質を下げる潜在性を決定するために使用される。移行試験方法は、多くの場合、食品への移行を模倣するための食品模倣物の使用を含む。電子ビーム硬化性インクは、硬化時の移行を低くすることができる。いくつかの実施形態では、インク構成成分の移行レベルは、約100ppb未満、約90ppb未満、約80ppb未満、約70ppb未満、約50ppb未満、及び/又は約10ppb未満であり得る。いくつかの実施形態では、食品模倣物へのインク構成成分の移行レベルは、約10ppb未満等の約50ppb未満であり、これは、米国FDA規制を含む世界の多くの地域における食品及び医薬品包装規制への準拠を可能にし得る。
【実施例】
【0110】
発明を更に例示する以下の非限定的な実施例によって、発明は更に説明され、発明の範囲を限定することを意図するものではなく、またそのように解釈するべきではない。全ての部及びパーセンテージは、別段指定されない限り、重量(総重量に基づいた重量%又は質量%)である。
【0111】
適切なフィルタとともにX-RiteからのX-Rite Spectroeye(商標)REV D.分光密度計を使用して、色密度を測定した。X-Rite Spectroeye(商標)REV D.は、密度及びCIELABの両方の測定機能を備える。
【0112】
指擦り試験
指擦り試験を使用することによって、擦傷耐性を評価した。指を、印刷された物品を保持及び操作する典型的な力を用いて硬化した印刷構築物の最上層上で前後に擦った。印刷された層が無傷で残っている場合、構築物は、指擦り試験に合格する。印刷された層のうちの1つ以上が汚れる場合、又は擦傷される場合、構築物は、指擦り試験に不合格である。試験の主な目的は、表面硬化を評価することである。
【0113】
親指ねじり試験
擦傷を評価するために、親指ねじり試験もまた使用した。親指を、硬化した印刷構築物の最上層に力を込めて押しつけ、90度回転させる。印刷された層が無傷で残っている場合、構築物は、親指ねじり試験に合格する。印刷された層のうちの1つ以上に擦傷又は損傷(典型的には、基材とインク/コーティングとの間の結合の破損)がある場合、構築物は、親指ねじり試験に不合格である。試験の主な目的は、硬化を通じて評価することである。
【0114】
溶媒擦り試験
溶媒擦り試験を使用して、基材へのインク及びコーティングの接着性を評価した。先端に綿を付けた木製スワブを、イソプロパノールで湿らせ、硬化させた構築物の最上層上で前後に擦った(すなわち、二重擦り)。硬化させた構築物に損傷が生じる前の二重擦りの回数を記録する。
【0115】
以下の実施例で使用したインクは、Sun Chemicalからの市販の光開始剤を含まないインク:黄色インクFLCWB2445033、マゼンタインクFLCWB4445037、シアンインクFLCWB5445039、黒色インク(FLCWB9445043)であった。非常に一般的な用語では、それらは、アクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー、アクリレートに溶解させた不活性樹脂、着色顔料、及び当業者に既知の添加剤からなる。
【0116】
Rycoline181349は、一般条件では、水中のアクリルエマルジョン樹脂及び当業者に既知の添加剤からなり、総固形物レベルが、37.4%である水系非反応性コーティングである。Rycoline4232-71-1は、TPO-LとIGM73との、すなわち、HMPPとして一般的に知られているエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィネートと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン)との1:1混合物を含有する、94%のRycoline181349及び6%の光開始剤ブレンドを含む、水系非反応性コーティングである。
【0117】
以下の実施例では、現場で多くの場合使用されているオフセットローラー試刷り方法、及び現在、Thwing-Albert Instrument Company及び他から入手可能なQuick Peek(商標)ロールアウトシステムを使用して、インクを敷設した。Quick Peek(商標)プルーファは、滑らかな平板、スチール製の測定バー、正確な所定量のインクを得るためのプランジャー、及びローラーアセンブリを有する。ローラーアセンブリは、典型的には、従来のインク、ハイブリッドインク、及びUVインクとともに使用することができ、プレート上にインクを分配し、試刷りを作製するために使用されるニトリルPVCブレンドローラーである。必要な量のインクをスチール製のスパチュラで測定バーに入れ、次いでローラーの表面上に押し出す。次いで、プレート及びローラーの表面全体に均等に分配されるまで、インクをプレート上で回転させる。次いで、インクを付けたローラーを、所望の紙料上で回転させる。
【0118】
ショアA45のデュロメータ硬度を有するゴムローラー及び360lpi×4.23bcmのアニロックスローラーからなるロールセットを有するブレード付2ロールHarper Phantom(商標)ハンドプルーファ:pi=ローラーの幅インチ当たりの線(彫り込んだ線)、bcm=ローラー上のセル体積平方インチ当たり10億立方ミクロンを使用して、水系コーティングである、Rycoline841349及びRycoline4232-71-1を適用した。ハンドプルーファは、ブレード付きでもよく、ブレードは、ローラーから余分なインクを取り除くことが可能である。ブレードを使用することによってより薄い層が提供され、ブレードがない場合、より厚い層が得られる。そのようなハンドプルーファ、及びそれらの使用方法は、当該分野で長い間知られている。
【0119】
インク密度
実施例で作製した試刷りのインク密度はまた、X-Rite Spectroeye(商標)REV.D分光密度計(X-Rite Spectroeye(商標)REV D.は、密度及びCIELAB測定機能の両方を備えている)乾燥インク、ステータス「T」を使用して測定し、全て商業標準以上であった。最小密度は、黒色=1.70、シアン=1.45、マゼンタ=1.50、及び黄色=1.05であった。
【0120】
実施例1:光開始剤を含有する非反応性オーバーコートを有する、光開始剤を含まないECインク。
光開始剤を含む水系非反応性コーティングを、当該技術分野で一般的な添加剤を含有し、37.4%の総固形分レベルを有し、UV硬化の典型的な架橋反応を維持し得る官能性を有する化合物を含有しない、水中のアクリル樹脂のエマルションであるSun ChemicalのRycoline181349から調製した。181349を脱イオン水で希釈し、これに、イソプロパノール中の光開始剤Irgacure127の溶液を撹拌しながらゆっくりと添加して、70.4%の181349、14.7%の脱イオン水、7.7%のIrgacure127、及び7.2%のイソプロパノールを含み、34.0%の合計固形分を有するコーティング組成物を提供した。
【0121】
Irgacure127は、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オンの商品名である。
【0122】
着色顔料、アクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー、アクリレートに溶解させた不活性樹脂、着色顔料、及び一般的に使用される添加剤を含む、典型的には、一般的にリソグラフ印刷において見られるEB放射線への曝露によって硬化する、一連の市販の光開始剤を含まないECインクを、光開始剤を含まないECインクとして以下の実験で使用した。
【0123】
以下のSun Chemicalインクを使用した:
実施例1A-黄色(FLCWB2445033)
実施例1B-マゼンタ(FLCWB4445037)
実施例1C-シアン(FLCWB5445039)
実施例1D-黒色(FLCWB9445043)
【0124】
オフセットローラー方法を使用して、商業的印刷において一般的なものの典型的な又はそれ以上の光学密度で、コーティングされた試刷り紙であるBYK Chart2810上に、実施例1A~1Dのインクを別々に印刷した。上からの7.7%のIrgacure127を含有する非反応性水系コーティングを、360lpi×4.23bcmのアニロックスローラーを使用する2ロールHarper Phantom(商標)ハンドプルーファを用いて、湿潤インク上に適用した。コーティングを周囲条件下で1~2分間乾燥させ(強制換気、20℃~25℃で加熱なし)、次いで、コーティングの下にインクが存在しない位置を確認して、触ってコーティングが乾燥していることを確認した。溶媒及び水の蒸発後、乾燥させたコーティングにおいて、77.3/22.7の樹脂固形物(大部分がアクリル)対光開始剤の比を有する181349固形物及びIrgacure127のみが、コーティングされた表面上に残った。
【0125】
次いで、印刷/コーティングされた試料を、80ワット/cmのランプ電力を有する中圧水銀蒸気UVランプ下に40メートル/分の速度で通過させた。この条件下のUV吸収線量を、表1に示されるように測定した。UVエネルギーは、EITからのUV PowerPuck II(商標)放射線測定器を使用して測定し、「露光量」は、UV曝露の開始から終了までのセンサー読み取り値の積分であり、「放射線度」(時折「強度」と称される)は、2048Hzで操作して収集した全ての測定パケットの測定ピーク放射線度であり、典型的には、「スムージングオフ」と称される。ランプの下のおよそ40m/分での10cmの光のフットプリントでは、任意の所与の点は、以下を費やすことになる:T=10cm/{(40m/分)(100cm/m)(分/60秒)}=2048(0.15)=307の測定サイクルである「スムージングオフ」を用いたランプ下で0.15秒。
【表1】
【0126】
試験ごとの実際の曝露の対照チャートは、95%の確実性で、任意の個々の試験の実際の曝露が公称値の+/-20%であることを示していた。129mJ/cm2の公称UV曝露レベルでは、これは実際の曝露レベルとして103~155mJ/cm2の95%信頼区間で計算した。
【0127】
UVランプの下を通過してから1~2分以内に、親指ねじり試験に合格したかどうかについて、試刷りを確認した(親指を印刷された基材に圧力をかけながら適用し、90°ねじった)。インクが基材から緩んで破損した場合、又は画像に顕著に視認可能な汚れがあった場合、試験は不合格とみなした。このような試験は、UVインク又はコーティング系が硬化したかどうかについて印刷面を決定するための最も一般的な手段である。
【0128】
先端に綿を付けた木製スワブ及びイソプロパノールを使用して、UVランプの下を通過した後4~6分以内に、アルコール擦りに対する耐性について、試刷りを試験した。突破し、下にある紙の白色が視認可能になり始めるまで、イソプロパノールで湿らせたスワブを、印刷された画像を横切る前後の動きで擦った。各前後の動きは、1つの「二重の擦り」として計数した。結果を表2に示す。
【表2】
【0129】
黄色インク(1A)は、驚くべきことに、この構築物において商業的に許容されるレベルまで硬化し、2分で親指ねじり試験に合格し、4~6分で擦り試験に合格した。マゼンタインク(1B)は、初期IPA擦り試験にかろうじて合格し、初期親指ねじり試験に不合格であったが、硬化20時間後に両方の試験に明確に合格した。インク/コーティング複合材のうちのいくつか、例えばシアンインク(1C)は、UV曝露の直後に親指ねじり試験に合格した。いくつかの試刷りの溶媒擦り耐性もまた、商業的に許容され、時間の経過とともに増加した。商業的に許容されるIPA擦り耐性の定義について普遍的な合意は存在しないことに留意されるべきであるが、しかしながら、10未満は許容されないとみなされ得、そのようなレベルは、通常、親指ねじり破損及び反復指擦り下でのインク汚れと相関し、いずれも商業的に許容されない。
【0130】
各々光開始剤を含有しないインク1A、1B、及び1Cについての試験結果は、完全に予期外であった。実用的な観点では、試刷りの外観及び感触は、商業的な観点から許容されるように思われた。更に、インク/コーティングの表面硬度の観点では、黄色(1A)、マゼンタ(1B)、及びシアン(1C)は全て、かなり良好に硬化しているように思われた。追加の予想外の結果は、硬化が、経時的に溶媒擦り耐性の観点で改善し続けるように思われたことであった。UV硬化は、比較的「瞬時」なプロセスであり、硬化は数ミリ秒しかかからないと一般に想定される。
【0131】
黒色インク(1D)のみが硬化に不合格であり、予想どおり、依然として柔らかく、汚れた。上の実施例では黒色は完全に硬化しなかったにもかかわらず、以下の実施例2で黒色インク(1D)に少量から中程度の量の光開始剤を添加することによって、この状況を是正することができながら依然として、最終的な印刷構築物中の光開始剤含有量の総量は、従来のUV印刷に必要とされるよりもかなり低く維持されている。
【0132】
先行研究は、UV硬化が1つの層で始まる場合、その硬化は、反応性材料を含有するが光開始剤を含有しない隣接層に伝播し得ることを示している(US4,105,806及びWO2018/165068)。光開始剤を含有する層で生じる進行中の(フリーラジカル重合)反応がない場合でさえも隣接層でそのような硬化開始が生じ得ることが一度も示されていないので、本結果は、予想外である。
【0133】
実施例2:光開始剤を含有する非反応性コーティングでオーバープリントされた、少量の光開始剤を含有するECインク。
上のマゼンタ及び黒色インクにIrgacure127を添加した。各々が異なるレベルのIrgacureを含有する2つの異なる黒色インクを調製した。光開始剤を一切含まない黄色及びシアンインク、並びに0.3%の光開始剤を含有するマゼンタ、4.6%の光開始剤を含有する黒色インク、並びに7.2%の光開始剤を含有する黒色インクを使用して、上の実施例からのプロセスを繰り返した。使用した光開始剤は、再びIrgacure127であり、当業者に既知の方法を使用して、実施例2A~2Eを生成するためにオフセット印刷で使用可能な許容される粒径まで、実施例1A~1Dのインク(室温でペースト)中に粉砕した。実施例2A~2Eのインクを印刷し、コーティングし、次いで、上の実施例1に記載の同じ手順に従って、40m/分、80W/cmで硬化させた。結果を表3に示す:
【表3】
【0134】
許容可能な初期UV硬化を生成するためにUVインク中で必要とされる光開始剤がそのように少量であることは、予想外である。それはまた、高充填量の光開始剤を含むインク上に水系コーティングのみを使用して同等の結果を達成するのに必要であるよりも少ない光開始剤をインク中に使用して、完全な硬化を達成することができることを示している(比較例3を参照されたい)。また、UV曝露が非常に少ない条件下でさえも、黒色を硬化させることが可能であったことも予想外である。黒色インクを硬化させる他の手段は、より多くのUVエネルギーを必要とした。(続く比較例3及び4を参照されたい。)
【0135】
比較例3:光開始剤を含まないオーバーコートでコーティングされた、光開始剤を含むECインク。
本実施例では、実施例3A~3Dのインクをオーバーコーティングする前に硬化させた。
【0136】
実施例1A~1Dの光開始剤を含まないインクを様々なレベルでIrgacure127光開始剤を含むように改変して、実施例3A~3Dを生成した。使用したUV曝露レベルも実施例1と同じであった。オフセットローラー方法を使用して、コーティングされた試刷り紙BYK Chart2810上に典型的な商業的な印刷密度で、実施例3A~3Dのインクを印刷した。次いで、実施例1の条件に従って、中圧水銀蒸気UVランプからの放射線にインクを曝露させた。受領したままの(すなわち、コーティング中に光開始剤を一切含まない)水系コーティングRycoline181349を、硬化したインク上にコーティングし、熱乾燥させた。
【0137】
構築物をUV光に曝露させるプロセス順序は異なり、実施例3A~3Dのインクはオーバーコーティングされる前に硬化させ、熱乾燥させた。
【0138】
したがって、構築物は以下のとおりであった。
基材-ECインク(実施例3A~3D)-光開始剤を含まないRycoline181349コーティング
【0139】
実施例1との以下の違いに留意する。
実施例3A~3Dのインクは光開始剤を含有する一方で、実施例1A~1Dのインクは光開始剤を含まない
【0140】
硬化結果は、色への明確な依存性を示した。実施例3Aの黄色は、最も簡単に硬化し、実施例3Dの黒色は、硬化させることがより困難であった。
【表4】
【0141】
溶媒擦り耐性試験について、同様のパターンが見られた。
【表5】
【0142】
実施例1及び2と比較した実施例3A~3Dの硬化観察:
黄色インクFLCWB2445033は、この構築物で硬化させるのに3%の光開始剤を必要とした。(7.7%のIrgacure127を含有する水系コーティング下に湿式トラップした、実施例2Aの黄色を硬化させるのに、光開始剤の添加は必要ではなかった。)
【0143】
マゼンタインクFLCWB4445037は、この構築物で硬化させるのに6%の光開始剤を必要とした。(7.7%のIrgacure127を含有する水系コーティング下に湿式トラップした、実施例2Bのマゼンタを硬化させるには、0.3%の光開始剤の添加が必要であった。)
【0144】
シアンインクFLCWB5445039は、この構築物で硬化させるのに3%の光開始剤を必要とした。(7.7%のIrgacure127を含有する水系コーティング下に湿式トラップした、実施例2Cのシアンを硬化させるのに、光開始剤の添加は必要ではなかった。)
【0145】
黒色インクFLCWV9445043は、12%のIrgacure127がインクに添加された場合でさえ、この構築物では硬化しないであろう。(7.7%のIrgacure127を含有する水系コーティング下に湿式トラップした、実施例2Eの黒色を硬化させるには、7.2%の光開始剤の添加が必要であった。)
【0146】
比較例4:オーバーコートを有しない、光開始剤を含むECインク。
従来のUV印刷(現状の技術)は、典型的には、インク上にコーティングを使用しない。各印刷ステーションでUVランプにインクを曝露させ、硬化させ、硬くさせ、その後、次の印刷ステーションに移動させる。この実施例の目的は、従来の加工を使用して商業的に許容されるレベルまで硬化させるために、実施例1のインクに添加する必要がある光開始剤の量を決定することである。これは、従来の加工と比較した、実施例1及び2で見られた性能の改善を評価するためのベースラインとして機能する。基材、印刷密度、コーティング適用厚さ、及びUV曝露レベルは、実施例1で報告したものと同じであり、例えば、印刷密度は、以下を超えていた:黒=1.70、シアン=1.45、マゼンタ=1.50、黄=1.05。
【0147】
データは、実施例1~3(Hg蒸気ランプ、40m/分×80W/cm)で使用したものと同等の条件でUVへ曝露させた親指ねじり耐性のものである。
【表6】
【0148】
黒色は、含有する光開始剤の量に関係なく、実施例1及び2のUV曝露条件で硬化しないことが示される。従来のUV加工下で14.9%のレベルの光開始剤を含む黒色を硬化させるには、ランプの下を3回通過させる必要があった。したがって、従来どおり黒色を硬化させるには、3倍のUV吸収線量及び14.9%の光開始剤を必要とした一方で、実施例2では、1回の通過、並びにインク中7.2%及びコーティング中7.7%、同一の合計14.9%のレベルの光開始剤で硬化した。したがって、実施例1及び2のプロセスは、実施例4に記載の従来のUV加工よりも、硬化をもたらすUVエネルギーの利用の観点では顕著により効率的である。
【0149】
従来のUV印刷に対する実施例1A~1D及び2A~2Dの技術の利点は、光開始剤を含有するコーティングの下でインクが湿式トラップされるステーションでは、インクに追加の光開始剤が存在する状況、及び光開始剤を必要としない状況の両方で、複合材全体を硬化させるのに、1組のみのランプを必要とすることである。これによって、従来の印刷と比較してエネルギー使用量の大幅な低減が生じる。各印刷ステーションに典型的なダブルランプセットで長さ100cmの電球を、160W/cmのHg蒸気ランプに典型的なエネルギー消費量で用いるプレスでの電力低減は、電源を切ることができるランプセット当たり32kWになるであろう。UVコーティングを用いたシンプルな4色の作業では、典型的には、5つのランプセットが操作される。コーターのランプセット以外の全ての電源を切ることができる場合、低減は、128kWになるであろう。印刷されている色が多いほど、より多くのランプの電源を切ることができ、エネルギー節約が大きくなるであろう。
【0150】
実施例5:光開始剤を含有する非反応性コーティングでオーバープリントされた、光開始剤を含有しないECインク。
光開始剤のブレンドを試験した。光開始剤の2つの異なるブレンドを調製した:
Bd1-2つのI型光開始剤;HMPP(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノンとTPO-L、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィネートとの1:1混合物。
Bd2-I型光開始剤及びII型光開始剤の1:1混合物:25重量%のHMPP、25重量%のTPO-L、及び50重量%のII型光開始剤Omnipol BP(カルボキシメトキシベンゾフェノン及びポリテトラメチレングリコール250のジエステル)。
【0151】
約9重量%の光開始剤を含有する混合物を提供するために、グラフィックアートを意図した水系アクリル樹脂コーティングであるRycoline841349に各ブレンドを添加した。Quick Peek(商標)インク試刷りローラーを使用して、上で使用した光開始剤を含まないシアンインクの試料を、紙上で3回試刷りした。
【0152】
商業的な印刷密度を達成するために、ユニットにおよそ0.04~0.07グラムのインクをインク付けし、次いで紙上で回転させた。ドクターブレードを有しない2ロールHarper Phantom(商標)ハンドプルーファセットアップ、1インチ当たり360本の線×4.23bcm体積のアニロックスローラーを使用して、水系/光開始剤コーティングを湿潤インク上に回転させた。生じた試刷りを2分間空気乾燥させ、次いで様々な条件で中圧水銀ランプからのUV光に曝露させた。試験で使用した条件(全ての試刷りを全ての条件に曝露させてはいない)は、UV吸収線量を63~279mJ/cm
2に変動させた。上のように親指ねじり試験及びイソプロパノール擦り試験を使用して、各試刷りの硬化を試験した。様々なUV曝露露光量の代表的な結果を以下の表8に示す。イソプロパノールの結果は、6つの別々の試験の平均として示されており、親指ねじりの結果は、試験した3つのうちの合格した試刷りの数である。
【表7】
【0153】
表7に見られるように、優れた硬化結果は、I型及びII型光開始剤のブレンドを含む光開始剤のブレンドを使用して見られた。
【0154】
実施例の以下のセクションは、発明における異なる着色印刷インクのウェットオンウェット構築物であるカラートラップの性能を示す。これらの実施例で使用した光開始剤を含まないインクは、実施例1~4と同じである。
【0155】
実施例6:インク及びコーティングの単位面積当たりの重量の決定
色密度単独では、印刷された基材上に存在するインク量の測定が適切ではない場合がある。例えば、単位面積当たりのインクの重量における小さい変化によって、黄色及びシアンインクの単位面積当たりの重量における同一の変化の場合よりも、マゼンタの測定される色は、はるかに大きい影響を受ける。したがって、硬化データの分析に使用するために、インク及びコーティングの単位面積当たりの重量を決定した。
【0156】
コーティングされた試刷り紙片を、BYK Chart2810試刷りフォームの白い部分から10.0cm×2.5cm(25.0cm2)の長方形に切断した。各片を分析天秤で秤量した。次いで、フォームの裏(印刷されていない)側の縁部に沿ってテーピングすることによって、切断されたフォームに片をテープで留め直した。実施例の様々なインク及びコーティングを使用して作製した試刷りを試刷りフォームで調製し、次いで、印刷又はコーティングされたストックの25.0cm2片を、縁部によってのみ取り扱いながらフォームに保持しているテープから慎重に取り外し、再び秤量した。Quick Peekロールアウトシステムを使用して、ECインクを適用し、直ちに秤量することができた。
【0157】
以下の各実施例と同様に、ショアA45デュロメータ硬度を有するゴムローラー及び360lpi×4.23bcmのアニロックスローラーからなるロールセットを有するブレード付2ロールHarper Phantom(商標)ハンドプルーファ:pi=ローラーの幅インチ当たりの線(彫り込んだ線)、bcm=ローラー上のセル体積平方インチ当たり10億立方ミクロンを使用して、水系コーティングである、Rycoline841349及びRycoline4232-71-1を適用し、室温で印刷物上に吹き付けた強制空気を使用して乾燥させ、次いで室内条件で1時間平衡させ、その後再び秤量した。
【0158】
X-Rite SpectroEye(商標)分光光度計の密度機能の使用を介して、インク層の実際の厚さを決定した。インクフィルム厚さに対する色密度の研究から発展させた回帰方程式に従って、厚さを予測した。
【0159】
X-Rite SpectroEye(商標)分光密度計を使用して、上で調製したシアン、マゼンタ、及び黄色インク印刷物の色密度を測定した。以下の実施例を用いた光学回折に差異がないことを確認するために、光開始剤含有コーティングであるRycoline4232-71-1で先述のインク試料をコーティングし、115~125mJ/cm
2の吸収線量に設定した中圧水銀蒸気UVランプに曝露させて、以下に記載のように硬化させた。適切なフィルタでのX-Rite SpectroEye(商標)REV D.から得た5つの読み取り値を平均して、色値を得た。結果を
図1(シアン)、
図2(マゼンタ)及び
図3(黄色)にグラフで示す。色密度に対するインク重量の関係の線形性は、測定の範囲内で許容された。グラフに見られる各色及びインク重量の関係は以下である。
WtC(g/m2)=2.622DC-3.3808
WtM(g/m2)=1.4842DM-1.1137
WtY(g/m2)=4.0349DY-4.0861
式中、Wt=平方メートル当たりのインクのグラムでの重量
D=絶対色密度(ステータスT、乾燥インク)
C=シアン
M=マゼンタ
Y=黄色
【0160】
インクの色の強さに対する平方メートル当たりの重量の関係は、色によって変動する。これは、最初の下(高粘着)又は最後の下(低粘着)のいずれかが黒色であり、C→M→Y順にインク層をトラップするように、実験用インクを選択したことが理由である。一般に、トラップ品質を最大化するために、最初に強力な薄いインク層を下に置き、続いてますます厚いインク層を置くことが有益であり、例えば、以下である。
【0161】
シアンの商業的に関連する1.40~1.50の絶対色密度範囲では、平方メートル当たりの予測インク重量は、0.34~0.59グラムに変動する。これは、0.25グラムの差であり、範囲の初期値から終わりまで73.5%の重量増加である。
【0162】
マゼンタでは、商業的に関連する領域はまた、1.40~1.50の絶対色密度であり、平方メートル当たりの予測インク重量は、0.96~1.09グラムに変動する。これは、0.13グラムの差であるか、又は範囲の初期値から終わりまで13.5%の重量増加である。
【0163】
黄色では、プロセス印刷のための商業的に関連する領域は、一般に、0.95~1.05の絶対色密度であるが、スポット色密度は、慣行的に顕著に高くなる。
図3はまた、(商業的に関連する範囲外の)1.20~1.30の色密度の増加に関する、平方メートル当たりのインク重量は、0.79~1.17グラムの範囲であり、範囲の開始から終わりまで0.38グラムの増加又は48%の増加である。
【0164】
これらの数値は、表面に存在する「インクの量」の尺度として色密度単独に注目することについて論じられる不適切さを示している。単位面積当たりのインク重量の小さい変化は、測定された色に対して、色ごとに異なる非常に大きい影響を及ぼす。したがって、単位面積当たりの推定重量の観点からトラップに注目し、これを硬化性能に結び付けることが最善である。
【0165】
液体を除去した後、乾燥させたコーティングについて、水系コーティングの単位面積当たりの重量を推定した。大部分がアクリレート樹脂の非EC硬化分散体であるRycoline841349を、Sartorius Solids Testerで試験し、36.9%の固形物であることが見出された。上述のように、25.0cm2の切片を所定の位置にテープで留めたBYK Chart2810のコーティングされた紙に、ブレード付き2ロールHarper Phantom(商標)ハンドプルーファを使用して分散体を適用することによって、敷設されたRycoline841349層の密度を評価した。試刷りを室内条件(73°F及び13%のRH)で60分間乾燥させ、次いで切片セクションを秤量した。合計8つの試刷りを測定した。
【0166】
試料の平均風袋重量は、0.68495gであった。試料のコーティングされた平均重量は、0.68595gであり、0.00100gの平均増加は、0.40g/m2に変換した(0.00100g/25cm2)(10,000cm2/m2)=0.40g/m2。
【0167】
コーティングRycoline4232-71-1は、94%のRycoline841349及び6%の光開始剤の混合物である。乾燥させたR4232-71-1の組成を、以下のように計算した。
【表8】
【0168】
受領したままのRycoline4232-71-1の固形物部分は、総量(湿式)の40.7%であり、したがって、乾燥させた組成物は、コーティング固形物85.3%、光開始剤TPO-L7.4%、光開始剤HMPP7.4%である。したがって、乾燥基準では、光開始剤は、総固形物の14.8%を占めた。本明細書で適用される乾燥させたRycoline4232-71-1層の面積当たりの重量は、0.40g/m2であり、水系コーティングの層当たりに存在する光開始剤が、0.059g/m2、すなわち((0.40g/m2)(14.8%)=0.059g/m2)であることを意味する。
【0169】
実施例7:光開始剤を含む非反応性プライマー層上の、光開始剤を含有しない湿式トラップされたシアン及びマゼンタECインク層の硬化
ボトムアップ硬化は、光開始剤を含まないECインクが光開始剤を含有する非反応性プライマー層上に印刷される多層試料を指す。非反応性オーバーコートは、インク層の最上部に適用することができ、
図4に示される「ボトムアップ」構成を参照されたい。この構成では、硬化中のフリーラジカルの唯一の可能な供給源は、インクを通ってプライマーに浸透するUV光の相互作用に由来する。次いで、フリーラジカルは、それらを硬化させるために、おそらくインクを通って「上に」移動する必要がある。
【0170】
これらの実施例における目的のトラップは、紫色(シアン上にマゼンタ)、緑色(シアン上に黄色)、及び赤色(マゼンタ上に黄色)、黒色の市販の4色印刷を評価するために使用されたものと同じであり、黒色は通常、ほとんどの4色印刷スキームにトラップされないので、黒色との組み合わせは試験しなかった。
【0171】
図4(A)を参照すると、BYK Chart2810のコーティングされた紙(100)に、上述のようにブレード付き2ロールHarper Phantom(商標)ハンドプルーファを用いてRycoline4232-71-1である光開始剤を有する非ECコーティング(110)を適用し、乾燥させて、0.059g/m
2の光開始剤を有するプライマー層を提供した。光開始剤を含まないECシアンインクの第1のストライプ(120)をプライマー層(110)上に敷設した。次いで、光開始剤を含まないECマゼンタインクのストライプ(130)を、半分を湿式の最初の下のシアンインク(120)上に、半分をプライマー(110)上に直接敷設した。フリーラジカル(150)がプライマー層(110)で生成され、ECシアンインク(120)及びECマゼンタインク(130)に移行する。ベンチトップ上で、コーティングを室温で空気乾燥させた。
【0172】
115~125mJ/cm
2の吸収線量に設定した中圧水銀蒸気UVランプの下に、試刷りを通過させた。公称ベルト速度は、115fpm(35m/分)であった。公称電力は、160W/cmのUV電球で30%であった。フル電力では、これは105m/分の走行速度と相関し、商業的に使用される典型的なダブルランプセットでは、210m/分は同じエネルギー吸収線量を達成するであろう。当業者は、これらが商業的に目的の速度であることを認識している。EIT「UV PowerPuck II(商標)」放射線測定器を使用して実施例1で測定した、UV分画による典型的なエネルギー比は、以下であった。
【表9】
【0173】
これらのカラートラップを用いた第1の試験では、シアン上にマゼンタのトラップをプライマーとしてR4232-71-1上に印刷し、トップコーティングを有しなかった。最上部コーティングを有しないこれらの条件下では、ある程度の硬化が観察されたが、しかしながら、これらの構築物のうちのいずれも、商業的に許容されるレベルで硬化せず、全て許容できないほど汚れた。
【0174】
実施例8:光開始剤を含まないトップコーティングでオーバーコートした、光開始剤を含む非反応性プライマー層上の、光開始剤を含有しない湿式トラップされたシアン及びマゼンタECインク層の硬化
光開始剤を有しないRycoline841349水系アクリルコーティングをインク上に湿式トラップし、上述のようにUV光に曝露させる前にデスクトップ上で乾燥させたことを除いて、実験7の手順を繰り返した。
図4(B)を参照すると、BYK Chart2810のコーティングされた紙(100)に、上述のようにブレード付き2ロールHarper Phantom(商標)ハンドプルーファを用いてRycoline4232-71-1である光開始剤を有する非ECコーティング(110)をプライマーとして適用し、乾燥させて、0.059g/m
2の光開始剤を有するプライマー層を提供した。光開始剤を含まないECシアンインクの第1のストライプ(120)をプライマー層(110)上に敷設した。次いで、光開始剤を含まないECマゼンタインクのストライプ(130)を、半分を湿式の最初の下のシアンインク(120)上に、半分をプライマー(110)上に直接敷設した。フリーラジカル(150)がプライマー層(110)で生成され、ECシアンインク(120)及びECマゼンタインク(130)に移行する。光開始剤を含まないRycoline841349コーティング(140)をインク上に適用した。試刷りセクションは、単一色層では「n-C」及び「n-M」であり、「n」は、印刷番号を指す整数であり、「C」は、シアンインクであり、「M」は、マゼンタインクである。したがって、Pr#1-Cは、シアンインクの印刷番号1であり、Pr#1-Mは、マゼンタインクの印刷番号1である。
【0175】
試刷りが硬化した後、存在するインク重量を確立するために、色密度を測定した。トラップは、各色からのインク重量の合計であると想定した。
図4(B)に見ることができるように、各個々の色の密度を測定するために利用可能な試刷り上の面積はかなり存在した。報告した数は、そのような測定値の5つの平均である。次いで、親指のねじり耐性及び指擦り耐性について、各試刷りを試験した。インク構築物のうちの全てが許容される程度まで硬化するわけではないが、シアン上にマゼンタの多くのトラップ(試刷り4~6)、並びに単一層のうちの多くが完全に硬化したことが、表8で見ることができる。
【表10】
【表11】
【0176】
対照的に、この構築物では、プライマー中に光開始剤が存在しない場合、同様のUV曝露レベルで硬化を維持するために一般的に必要とされるインク層当たりの光開始剤の平均量は、以下である。
【表12】
【0177】
表9に見られるように、発明の条件下では、発明のいくつかのシアン/マゼンタトラップがそのレベルの半分で硬化し、ペナルティが少なく、単層に対しても同様に利点がある可能性さえある。
【0178】
実施例10光開始剤を含有する最上部層でオーバーコートされた、光開始剤を含有しない湿式トラップされたECインク層の硬化
以下の実施例は、「トップダウン」構築物、すなわち、光開始剤がオーバーコート(プライマーではない)に見出されることを取り扱う。上と同様の様式で以下の試料を調製した。インクの第1のストライプは、基材上に直接敷設した。次いで、異なる色のインクの第2のストライプを、半分を湿式の最初の下のインク上に、半分を基材上に直接敷設した。
図5~7を参照されたい。
【0179】
シアン/マゼンタトラップ
印刷#7-C~11-C及び7-M~11-Mは、先述の実施例のようにシアン/マゼンタトラップを使用して作製する。
図5を参照すると、光開始剤を含まないECマゼンタインク(130)を基材(100)に適用した。次いで、光開始剤を含まないECシアンインクのストライプ(120)を、半分を湿式の最初の下のマゼンタインク(130)上に、半分を基材(100)上に直接敷設した。光開始剤を含む非ECコーティングであるRycoline4232-71-1をオーバーコート(240)として適用した。フリーラジカルは、光開始剤(240)を含む非ECコーティングで生成され、光開始剤を含まないECシアンインク(120)、及び光開始剤を含まないECマゼンタインク(130)に移行する。試刷りセクションは、「n-M」及び「n-C」であり、「n」は、印刷番号を指す整数であり、「M」は、マゼンタインクであり、「C」は、シアンインクである。これらのトップダウン試料の硬化は、上のボトムアップ試料よりも明確により効果的であった。
【表13】
【0180】
注目すべきことに、上の表10に見られるように、トップコート中の光開始剤で硬化したシアン上にマゼンタのトラップを使用して作製した全ての試刷りは、曝露条件で許容される結果を達成した。トラップされたインクのパーセンテージとしての最低光開始剤含有量は、1.8重量%の光開始剤であった。個々のインクについて、シアンで記録された最低の許容される値は、3.0%の光開始剤であり、マゼンタでは3.4%の光開始剤であった(表11を参照されたい)。
【0181】
表11のデータは、2つの表を比較しやすくするために、トラップ中の最低総有効光開始剤濃度から最も高い濃度に進むように配置している。
【表14】
【0182】
「トップダウン」硬化は、シアン上にマゼンダのトラップの「ボトムアップ」硬化に対して優れている、すなわち、硬化の成功には、より少ない光開始剤を必要とする、すなわち
トラップ中の光開始剤2.6%に対して1.9%(31重量%減)
シアン単層中の光開始剤5.8%に対して3.1%(40重量%減)
従来の印刷における光開始剤充填量が、マゼンタで7.5%、シアンで8.3%、50/50トラップで平均7.9%の光開始剤であろうと想定すると、トップダウンシステムの利点は、更により大きい:
トラップ中の光開始剤7.9%に対して1.9%(77重量%減)
シアン単層中の光開始剤8.3%に対して3.1%(64重量%減)
マゼンタ単層中の光開始剤7.5%に対して3.8%(55重量%減)。
【0183】
シアン上に黄色のトラップ
上の手順に従って、第2の「トップダウン」構築物の試料であるシアン上に黄色のトラップである、試料12~16(
図6を参照されたい)を調製した。
図6を参照すると、光開始剤(120)を含まないECシアンインクを基材(100)に適用した。次いで、光開始剤を含まないEC黄色インクのストライプ(330)を、半分を湿式の最初の下のシアンインク(120)上に、半分を基材(100)上に直接敷設した。光開始剤を含む非ECコーティングであるRycoline4232-71-1をオーバーコート(240)として適用した。フリーラジカルは、光開始剤(240)を含む非ECコーティングで生成され、光開始剤を含まないECシアンインク(120)、及び光開始剤を含まないEC黄色インク(330)に移行する。試刷りセクションは、「n-C」及び「n-Y」であり、「n」は、印刷番号を指す整数であり、「C」は、シアンインクであり、「Y」は、黄色インクである。このトラップは、商業的に許容される印刷密度で許容可能に硬化したが、シアン上にマゼンタのトラップほど硬化しなかった(表12を参照されたい)。表は、黄色の色密度の降順で配置している。黄色の個々の層は、0.95~1.05の通常の印刷密度をはるかに上回る、1.51の密度まで硬化し、報告した密度は、5つの読み取り値の平均である。
【表15】
【0184】
単一インク層は十分に硬化した。しかしながら、トラップは、容易に硬化するとは思われなかった。青色光及びある程度の最長波長のUV光を濾光する色である黄色は、濃い印刷層を作製する場合硬化を阻害するのに十分なシアンの曝露を低減することが可能であった可能性がある。
【0185】
1.71密度以下のシアンインクの全ての単層実施例が合格した。また、全ての黄色単層実施例は、試刷り12-Yで最大1.51の密度まで合格した。これらの値は全て、商業的印刷で典型的に見られるシアン密度の1.50の通常の上限及び1.10の黄色密度を実質的に上回る。印刷14-C及び14-Yによって表されるトラップは、不合格であった。1.63のシアン密度及び1.19の黄色密度の両方が、商業的印刷で見られる典型的な密度を上回る。商業的印刷のより典型的な全ての密度のトラップが合格した。
【0186】
シアン及び黄色インク密度を各試刷りに存在する面積当たりの実際の重量と相関させるために、
図1及び3の等式を使用して、試刷りの単層及びシアン上に黄色のトラップに存在するインク量の推定値を作製した(表13を参照されたい)。
フィルム重量に対する色、シアンでの予測:g/m
2=2.622(シアン色密度-3.3808
フィルム重量に対する色、マゼンタでの予測:g/m
2=1.4842(マゼンタ色密度-1.1137
フィルム重量に対する色、黄色での予測:g/m
2=4.0349(黄色色密度-4.0861
【表16】
【0187】
注目すべきことに、シアン上にマゼンタの試刷り(シリーズ7~11)に対してシアン上に黄色の試刷り(シリーズ12~16)を比較すると、シアン/黄色の場合のトラップは、硬化させるのに少なくとも3.3%の光開始剤を必要とする一方で、シアン/マゼンタの場合では、トラップを硬化させるのに半分ほどのみの光開始剤を必要とすることが示されている(表13)。両方のトラップ配列において、単層を硬化させるのに必要なコーティング中の光開始剤は同等であった。
【0188】
シアン上に黄色のトラップ、シアン層に光開始剤を添加
生じたシアンインク組成物の総重量に基づいて、カルボキシメトキシチオキサントン及びポリテトラメチレングリコール250II型光開始剤のジエステルである1.85重量%のOmnipol TX、並びに1-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノ安息香酸である1.85重量%のアミン相乗剤をシアンインクに添加したことを除いて、シアン上に黄色のトラップの先述の評価で使用した手順を繰り返した。光開始剤のパーセンテージに基づく結果を、表14に示す。
【表17】
【0189】
硬化の結果は、先述のシアン上に黄色の試刷りを上回って改善される(表13を参照されたい)。この場合、シアン上に黄色のトラップは、シアン層に利用可能な4.8%の光開始剤及びトラップに利用可能な3.1%が存在する場合に硬化する。
【0190】
マゼンタ上に黄色のトラップ。
試験した第3の「トップダウン」構築物は、マゼンタ上に黄色のトラップであった(
図7を参照されたい)。
図7を参照すると、光開始剤を含まないECマゼンタインク(130)を基材(100)に適用した。次いで、光開始剤を含まないEC黄色インクのストライプ(330)を、半分を湿式の最初の下のマゼンタインク(130)上に、半分を基材(100)上に直接敷設した。光開始剤を含む非ECコーティングであるRycoline4232-71-1をオーバーコート(240)として適用した。フリーラジカルは、光開始剤(240)を含む非ECコーティングで生成され、光開始剤を含まないECマゼンタインク(130)、及び光開始剤を含まないEC黄色インク(330)に移行する。試刷りセクションは、「n-M」及び「n-Y」であり、「n」は、印刷番号を指す整数であり、「M」は、マゼンタインクであり、「Y」は、黄色インクである。報告した密度は、5つの読み取り値の平均である。全てのトラップは、各々の単層と同様に、親指ねじり及び指擦り試験の両方に合格した。マゼンタ密度は、1.89~1.27に変動し、黄色密度は、1.33~0.94に変動した。
【0191】
この場合、シアン/マゼンタトラップのように、全ての試刷りは硬化した。単層は全て、3.5%ほどの低い光開始剤含有量で硬化し、トラップは、それをはるかに下回るレベルで硬化した(表15及び16を参照されたい)。シアン/マゼンタ、黄色/シアン、及び黄色/マゼンタトラップでは、コーティング中の光開始剤のレベルが、インクに対する重量パーセントとして3.5%の等価値を超えると、一般に、試験した全ての単層及びトラップの適切な硬化を確保することができると思われる。
【表18】
【表19】
【0192】
上の実施例は、トップコート中に光開始剤を配置するトップダウン硬化が、シアン/マゼンタトラップの光開始剤を含まないトップコーティングを含むプライマー中に光開始剤を配置するよりも、インク層を硬化させるのにより効率的であることを示している。これは他の色及び同様にトラップにも拡張することができるので、妥当だと思われる。更に、トップダウン硬化は、単層、並びにシアン、マゼンタ、及び黄色インクの全ての主要なトラップの印刷密度の商業的に魅力的なレベルでプロセス印刷に使用される標準的なトラップを硬化させることが可能である。顕著には、非反応性トップコーティング中に光開始剤を含むトップダウン方法によって硬化させるために必要とされる光開始剤の量は、UVインクの個々の層及びトラップを硬化させるのに必要とされるであろう量よりも顕著に少ない。