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特許7381779接着剤組成物、接着性樹脂層、及び積層物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】接着剤組成物、接着性樹脂層、及び積層物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/08 20060101AFI20231108BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20231108BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231108BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C09J175/08
C09J175/06
B32B27/00 M
B32B27/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023001616
(22)【出願日】2023-01-10
【審査請求日】2023-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】平野 大河
(72)【発明者】
【氏名】星野 七海
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠正
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-004799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂Aと、末端にイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂Bと、有機溶剤と、を含有し、
前記ポリウレタン樹脂Aが、下記式(1)で表されるポリオール(a)に由来する構成単位、鎖伸長剤(b)に由来する構成単位、及び芳香族ジイソシアネートに由来する構成単位を有し、
前記ポリウレタン樹脂Bが、下記式(2)で表されるポリオール(c)に由来する構成単位を有し、
前記鎖伸長剤(b)が、トリオール化合物(b1)及び前記トリオール化合物(b1)以外のポリオール化合物(b2)を含み、
前記ポリオール化合物(b2)が、三官能ポリオール1モルに酸無水物1モルを開環付加した化合物、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールオクタン酸、及びジメチロールノナン酸からなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記ポリオール(a)と前記ポリオール(c)の質量比が、(a)/(c)=70/30~30/70である接着剤組成物。
(前記式(1)中、nは、前記ポリオール(a)の数平均分子量が400~3,000となる数を示し、前記式(2)中、mは、ポリオール(c)の数平均分子量が300~2,000となる数を示す)
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂Aの含有量に対する、前記ポリウレタン樹脂Bの含有量の比の値が、前記ポリウレタン樹脂A中の水酸基(OH)に対する、前記ポリウレタン樹脂B中のイソシアネート基(NCO)のモル比で、NCO/OH=1.05以上である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂Aの水酸基価が、5.0~40.0mgKOH/gであり、
前記ポリウレタン樹脂Bのイソシアネート基含有率が、3.2~5.1%である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリオール化合物(b2)の水酸基価が、200~1,200mgKOH/gであり、
前記鎖伸長剤(b)の平均水酸基価(mgKOH/g)に対する、前記ポリオール(a)の平均水酸基価(mgKOH/g)の比((a)/(b))の値が、0.15~0.70である請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂Aのバイオマス度が、10質量%以上である請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物の塗布乾燥物である接着性樹脂層。
【請求項7】
第1の基材、第2の基材、及び前記第1の基材と前記第2の基材の間に配置される請求項に記載の接着性樹脂層を備え、
前記第2の基材が、プラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、又は金属箔である積層物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、接着性樹脂層、及び積層物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、通常、高分子量のポリオールとポリイソシアネートを反応させて、必要に応じて鎖伸長剤をさらに反応させて得られる樹脂であり、各成分の種類や組み合わせを変化させることによって接着性をはじめとする種々の特性を持たせることができる。但し、ポリウレタン樹脂を構成するポリオール等の各成分は、主として石油資源由来の材料であることから、環境への影響を考慮した改善が要請されている。
【0003】
工業材料分野の各種積層体を製造するために用いられる接着剤は、高い接着性の他、耐熱性や高速ラミネート加工適性等の特性を有することが必要とされる。このような特性を有する接着剤に用いる樹脂として、ポリエーテル系のポリウレタン樹脂は有用である。一方、枯渇性資源でない産業資源として、生物に由来する再生可能な有機性資源であるバイオマスが近年注目されている。
【0004】
関連する技術として、例えば、植物由来のポリテトラメチレンエーテルグリコール(バイオマスPTMG)を原料とするポリエーテルウレタンポリオールを主剤とする二液硬化型の接着剤組成物が提案されている(特許文献1)。また、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物であるポリエーテルポリオールの硬化物を含む接着層を有する、バイオマス由来成分を一部の構成材料に含む包装材料が提案されている(特許文献2)。さらに、1,3-プロパンジオール単位を含むポリエーテルポリオールを用いて得られる、フィルムや繊維の構成材料として用いられるポリウレタンが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6587584号公報
【文献】特開2019-142041号公報
【文献】特開2008-274205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で提案された接着剤組成物で形成される接着層の接着力は、加熱条件下で低下しやすかった。このため、例えばラミネート品等の積層物の層間に配置される接着層を形成するための接着剤として用いると、ボイル殺菌等の加熱時に層間が剥離する、いわゆる「層間剥離(デラミネーション)」が生じやすいといった課題があった。
【0007】
また、特許文献2で提案された包装材料の接着層は、バイオマス度を高める観点で有用である一方で、耐熱性等の特性については改善の余地があった。さらに、特許文献3で提案されたポリウレタンは、そもそも接着剤が主な用途ではないため、耐熱性だけでなく、接着性についても十分であるとは言えなかった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、各種オレフィン及び金属等の基材に対する濡れ性が良好であるとともに、これらの基材への密着性及び耐熱性に優れた接着性樹脂層である接着層を速やかに形成しうる、構成材料の一部をバイオマス材料とすることも可能な接着剤組成物を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、この接着剤組成物を用いた接着性樹脂層、及び積層物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示す接着剤組成物が提供される。
[1]末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂Aと、末端にイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂Bと、有機溶剤と、を含有し、前記ポリウレタン樹脂Aが、下記式(1)で表されるポリオール(a)に由来する構成単位、鎖伸長剤(b)に由来する構成単位、及び芳香族ジイソシアネートに由来する構成単位を有し、前記ポリウレタン樹脂Bが、下記式(2)で表されるポリオール(c)に由来する構成単位を有し、前記鎖伸長剤(b)が、トリオール化合物(b1)及び前記トリオール化合物(b1)以外のポリオール化合物(b2)を含み、前記ポリオール(a)と前記ポリオール(c)の質量比が、(a)/(c)=70/30~30/70である接着剤組成物。
【0010】
(前記式(1)中、nは、前記ポリオール(a)の数平均分子量が400~3,000となる数を示し、前記式(2)中、mは、ポリオール(c)数平均分子量が300~2,000となる数を示す)
【0011】
[2]前記ポリウレタン樹脂Aの含有量に対する、前記ポリウレタン樹脂Bの含有量の比の値が、前記ポリウレタン樹脂A中の水酸基(OH)に対する、前記ポリウレタン樹脂B中のイソシアネート基(NCO)のモル比で、NCO/OH=1.05以上である前記[1]に記載の接着剤組成物。
[3]前記ポリウレタン樹脂Aの水酸基価が、5.0~40.0mgKOH/gであり、前記ポリウレタン樹脂Bのイソシアネート基含有率が、3.2~5.1%である前記[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
[4]前記ポリオール化合物(b2)の水酸基価が、200~1,200mgKOH/gであり、前記鎖伸長剤(b)の平均水酸基価(mgKOH/g)に対する、前記ポリオール(a)の平均水酸基価(mgKOH/g)の比((a)/(b))の値が、0.15~0.70である前記[1]~[3]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[5]前記ポリオール化合物(b2)が、三官能ポリオール1モルに酸無水物1モルを開環付加した化合物、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールオクタン酸、及びジメチロールノナン酸からなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]~[4]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[6]前記ポリウレタン樹脂Aのバイオマス度が、10質量%以上である前記[1]~[5]のいずれかに記載の接着剤組成物。
【0012】
また、本発明によれば、以下に示す接着性樹脂層及び積層物が提供される。
[7]前記[1]~[6]のいずれかに記載の接着剤組成物の塗布乾燥物である接着性樹脂層。
[8]第1の基材、第2の基材、及び前記第1の基材と前記第2の基材の間に配置される前記[7]に記載の接着性樹脂層を備え、前記第2の基材が、プラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、又は金属箔である積層物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各種オレフィン及び金属等の基材に対する濡れ性が良好であるとともに、これらの基材への密着性及び耐熱性に優れた接着性樹脂層である接着層を速やかに形成しうる、構成材料の一部をバイオマス材料とすることも可能な接着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、この接着剤組成物を用いた接着性樹脂層、及び積層物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<接着剤組成物>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の接着剤組成物の一実施形態は、末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂Aと、末端にイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂Bと、有機溶剤と、を含有する接着剤組成物である。ポリウレタン樹脂Aは、特定のポリオール(a)に由来する構成単位、鎖伸長剤(b)に由来する構成単位、及び芳香族ジイソシアネートに由来する構成単位を有する。ポリウレタン樹脂Bは、特定のポリオール(c)に由来する構成単位を有する。鎖伸長剤(b)は、トリオール化合物(b1)及びトリオール化合物以外のポリオール化合物(b2)を含む。そして、ポリオール(a)とポリオール(c)の質量比は、(a)/(c)=70/30~30/70である。
【0015】
(ポリウレタン樹脂A)
ポリウレタン樹脂Aは、本実施形態の接着剤組成物の主剤として機能しうる成分であり、その末端に水酸基(OH基)を有するウレタン樹脂である。ポリウレタン樹脂Aは、特定のポリオール(a)に由来する構成単位、鎖伸長剤(b)に由来する構成単位、及び芳香族ジイソシアネートに由来する構成単位を有する。
【0016】
[ポリオール(a)]
ポリオール(a)(以下、「ポリオキシトリメチレングリコール」又は「PO3G」とも記す)は、下記式(1)で表される。下記式(1)に示すように、ポリオール(a)は2級水酸基を有しないので、イソシアネート基との反応性が良好(NCO減衰率が高い)であり、エージングを短縮することが期待される。また、金属のみならずオレフィンとの密着性も良好である。
【0017】
(式(1)中、nは、ポリオール(a)の数平均分子量が400~3,000となる数を示す)
【0018】
PO3Gとしては、植物由来のPO3Gを用いることができる。PO3Gの数平均分子量は400~3,000であり、好ましくは600~2,000である。PO3Gの数平均分子量が400未満であると、接着剤組成物の接着性能が低下する。一方、PO3Gの数平均分子量が3,000超であると、形成される接着層(接着性樹脂層)の耐熱性が低下する。
【0019】
[その他のポリオール]
ポリウレタン樹脂Aは、前述のポリオール(a)(PO3G)以外のポリオール(その他のポリオール)に由来する構成単位を有してもよい。その他のポリオールとしては、石油由来のポリオールや植物由来のポリオールを用いることができる。石油由来のポリオールとしては、ポリプロピレンエーテルトリオール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、及びアクリルポリオール等を挙げることができる。植物由来のポリオールとしては、植物由来原料の、セバシン酸系ポリオール、コハク酸系ポリオール、グルタル酸系ポリオール、及びダイマー酸系ポリオール等を挙げることができる。
【0020】
[鎖伸長剤(b)]
鎖伸長剤(b)は、トリオール化合物(b1)、及びトリオール化合物(b1)以外のポリオール化合物(b2)を含む。トリオール化合物(b1)及びポリオール化合物(b2)を併用した鎖伸長剤(b)に由来する構成単位を有するポリウレタン樹脂Aを用いることで、耐熱性に優れているとともに、金属箔、金属蒸着プラスチックフィルム、及びシリカやアルミナ等を蒸着した透明プラスチックフィルム等の各種基材への密着性が向上した接着剤組成物とすることができる。なお、トリオール化合物(b1)とポリオール化合物(b2)の質量比は、(b1)/(b2)=1/99~20/80であることが好ましく、3/97~10/90であることがさらに好ましい。
【0021】
トリオール化合物(b1)は、その分子中に3つの水酸基を有する多官能アルコールである。トリオール化合物(b1)としては、グリセリン、トリオール型ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、及びトリエチロールプロパン等を挙げることができる。
【0022】
ポリオール化合物(b2)としては、その酸価が80~600mgKOH/gのジヒドロキシカルボン酸化合物等を用いることができる。このようなジヒドロキシカルボン酸化合物等をポリオール化合物(b2)として用いることで、金属密着性を高めることができる。ジヒドロキシカルボン酸化合物としては、具体的には、三官能ポリエステルポリオールや三官能ポリエーテルポリオール等の三官能ポリオール1モルに酸無水物1モルを開環付加した化合物、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールオクタン酸、及びジメチロールノナン酸等を挙げることができる。三官能ポリオールの数平均分子量は、通常、150~500であり、好ましくは200~400である。
【0023】
鎖伸長剤(b)は、トリオール化合物(b1)及びポリオール化合物(b2)以外のその他の多官能アルコールを含んでいてもよい。その他の多官能アルコールとしては、石油由来の多官能アルコールや植物由来の脂肪族多官能アルコール等を用いることができる。石油由来の多官能アルコールとしては、1分子中に2以上、好ましくは2~8の水酸基を有する化合物等を挙げることができる。このような多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及び1,9-ノナンジオール等を挙げることができる。
【0024】
植物由来の脂肪族多官能アルコールとしては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、及びエチレングリコール等を挙げることができる。植物由来の1,3-プロパンジオールは、植物資源(例えば、トウモロコシ)を分解する発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒドを経て製造することができる。発酵法等のバイオ法で1,3-プロパンジオールを製造する際には、EO製造法によって1,3-プロパンジオールを製造する場合と異なり、乳酸等の有用な副生成物を得ることができるとともに、製造コストを低く抑えることもできる。1,4-ブタンジオールは、植物資源から製造したグリコールを発酵させて得たコハク酸を水添することによって製造することができる。また、エチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造することができる。
【0025】
ポリオール化合物(b2)の水酸基価は、200~1,200mgKOH/gであることが好ましく、230~1,000mgKOH/gであることがさらに好ましい。そして、鎖伸長剤(b)の平均水酸基価(mgKOH/g)に対する、ポリオール(a)の平均水酸基価(mgKOH/g)の比((a)/(b))の値が、0.15~0.70であることが好ましく、0.30~0.50であることがさらに好ましい。これにより、各種オレフィン及び金属等の基材に対する濡れ性と、耐熱性とのバランスにより優れた接着剤組成物とすることができる。
【0026】
[芳香族ジイソシアネート]
芳香族ジイソシアネートに由来する構成単位を有するポリウレタン樹脂Aを用いることで、各種基材への密着性及び耐熱性が向上した接着剤組成物とすることができる。芳香族イソシアネートに代えて脂肪族ジイソシアネートを用いると、接着剤組成物に適度な硬さが発現せず、ポリプロピレン製の基材等に対する密着性が不足する。芳香族ジイソシアネートとしては、石油由来の芳香族ジイソシアネートを用いることができる。芳香族ジイソシアネートとしては、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート/トルエン-2,6-ジイソシアネート=80/20混合品、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジュリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、及び4,4’-ジイソシアネートジベンジル等を挙げることができる。
【0027】
ポリウレタン樹脂Aは、ポリオール(a)(PO3G)、鎖伸長剤(b)、及び芳香族ジイソシアネートを含む成分を共重合ウレタン反応させることで得ることができる。なかでも、ポリオール(a)中の水酸基(OH)及び鎖伸長剤(b)中の水酸基(OH)の合計に対する、芳香族ジイソシアネート中のイソシアネート基(NCO)のモル比が、NCO/OH=0.6~0.99となるように反応させることが好ましく、NCO/OH=0.7~0.99となるように反応させることがさらに好ましい。NCO/OHの値が0.6未満であると、接着剤組成物の接着強度及び耐熱性がやや低くなることがある。一方、NCO/OH値が0.99超であると、ポリウレタン樹脂Aの末端に十分量の水酸基を導入することが困難になる場合がある。
【0028】
なお、共重合ウレタン反応の最後に、溶液粘度の経時安定性の確保等を目的とし、鎖伸長剤(b)と同種の2以上の水酸基を有する化合物を反応停止剤として反応させることもできる。
【0029】
ポリウレタン樹脂Aの水酸基価は、5.0~40.0mgKOH/gであることが好ましく、7.5~25.0mgKOH/gであることがさらに好ましい。ポリウレタン樹脂Aの水酸基価が5.0mgKOH/g未満であると、濡れ性がやや低下することがある。一方、ポリウレタン樹脂Aの水酸基価が40.0mgKOH/g超であると、ラミネートフィルムの接着強度がやや低下することがある。
【0030】
上述の通り、本実施形態の接着剤組成物に用いるポリウレタン樹脂Aは、構成材料の少なくとも一部に植物由来の化合物を用いることができる。このため、ポリウレタン樹脂Aのバイオマス度を、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上とすることができる。したがって、そのバイオマス度が10質量%以上のポリウレタン樹脂Aを含有する本実施形態の接着剤組成物は、カーボンニュートラルの考えに沿った環境に配慮された材料であり、CO排出量の削減に寄与しうるものである。
【0031】
(ポリウレタン樹脂B)
ポリウレタン樹脂Bは、本実施形態の接着剤組成物の主剤と反応して硬化させる硬化剤として機能しうる成分であり、その末端にイソシアネート基(NCO基)を有するウレタン樹脂である。ポリウレタン樹脂Bは、特定のポリオール(c)に由来する構成単位を有する。
【0032】
[ポリオール(c)]
ポリオール(c)(以下、「ポリプロピレングリコール」とも記す)は、下記式(2)で表される。ポリオール(c)の数平均分子量は300~2,000であり、好ましくは400~1,000である。ポリオール(c)の数平均分子量が300未満であると、接着剤組成物の接着性能が低下する。一方、ポリオール(c)の数平均分子量が2,000超であると、形成される接着剤層(接着剤樹脂層)の耐熱性が低下する。
【0033】
(式(2)中、mは、ポリオール(c)の数平均分子量が300~2,000となる数を示す)
【0034】
[その他のポリオール]
ポリウレタン樹脂Bは、前述のポリオール(c)(ポリプロピレングリコール)以外のポリオール(その他のポリオール)に由来する構成単位を有してもよい。その他のポリオールとしては、前述のポリウレタン樹脂Aに用いることができるその他のポリオールと同様のものを挙げることができる。
【0035】
[鎖伸長剤]
ポリウレタン樹脂Bは、例えば、前述のポリオール(c)、鎖伸長剤、及びジイソシアネートを含む成分を共重合ウレタン反応させることで得ることができる。鎖伸長剤としては、前述のポリウレタン樹脂Aを製造する際に用いることができる「その他の多官能アルコール」と同様のものを用いることができる。なかでも、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、及び2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等の分枝アルキル側鎖を有するジオールを鎖伸長剤として用いることで、初期を含めた接着強度をさらに向上させることができるために好ましい。
【0036】
鎖伸長剤としては、さらに、トリオール化合物を用いることができる。トリオール化合物としては、前述のポリウレタン樹脂Aを製造する際に用いるトリオール化合物(b1)や、分岐アルキル側鎖を有するジオールが好ましく、トリオール化合物(b1)が特に好ましい。
【0037】
鎖伸長剤の使用量は、ポリオール(c)1モルに対して、0.05~2モルとすることが好ましく、0.1~1.5モルとすることがさらに好ましい。ポリオール(c)1モルに対して上記の範囲内で鎖伸長剤を用いることで、接着強度及び耐熱性により優れた接着剤組成物とすることができる。
【0038】
[ジイソシアネート]
ジイソシアネートとしては、前述のポリウレタン樹脂Aを製造する際に用いる芳香族ジイソシアネートと同様のものを用いることができる。
【0039】
ポリウレタン樹脂Bは、例えば、ポリオール(c)、鎖伸長剤、及びジイソシアネートを含む成分を共重合ウレタン反応させることで得ることができる。なかでも、ポリオール(c)中の水酸基(OH)及び鎖伸長剤中の水酸基(OH)の合計に対する、ジイソシアネート中のイソシアネート基(NCO)のモル比が、NCO/OH=1.01~2.0となるように反応させることが好ましく、NCO/OH=1.1~1.5となるように反応させることがさらに好ましい。NCO/OHの値が2.0超であると、遊離するジイソシアネートの量が多くなる場合がある。一方、NCO/OHの値が1.01未満であると、ポリウレタン樹脂Bの末端に十分量のイソシアネート基を導入することが困難になる場合がある。
【0040】
ポリウレタン樹脂Bのイソシアネート基(NCO基)含有率は、3.2~5.1%であることが好ましく、3.5~4.9%であることがさらに好ましい。ポリウレタン樹脂Bのイソシアネート基含有率を上記の範囲内とすることで、耐熱性及び接着性能をさらに向上させることができる。なお、ポリウレタン樹脂Bのイソシアネート基(NCO基)含有率は、JIS K1603に準拠して測定される値である。
【0041】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチルエチルケトン等を用いることができる。なかでも、植物原料に由来する有機溶剤を用いることで、CO排出量の削減に寄与することができるために好ましい。植物原料に由来する有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、及び乳酸ブチル等を挙げることができる。
【0042】
(接着剤組成物)
本実施形態の接着剤組成物は、例えば、主剤であるポリウレタン樹脂Aと、硬化剤であるポリウレタン樹脂Bとを、使用時に混合して反応させる二液硬化型の接着剤として用いることができる。ポリオール(a)とポリオール(c)の質量比は、(a)/(c)=70/30~30/70であることが好ましく、60/40~40/60であることがさらに好ましい。ポリオール(a)とポリオール(c)の質量比((a)/(c))を上記の範囲内とすることで、オレフィンとの接着性能、金属密着性、及び耐熱性をさらに向上させることができる。
【0043】
ポリウレタン樹脂Aの含有量に対する、ポリウレタン樹脂Bの含有量の比の値は、ポリウレタン樹脂A中の水酸基(OH)に対する、ポリウレタン樹脂B中のイソシアネート基(NCO)のモル比で、NCO/OH=1.05以上であることが好ましく、湿気に対するイソシアネート基の消費を考慮すると、NCO/OH=2.00以上であることがさらに好ましい。また、アロファネート結合での高次元化による接着物性の向上を考慮すると、NCO/OH=2.50~10.0であることが特に好ましい。NCO/OHの値が1.05未満であると、硬化不良が生じやすくなることがあり、オレフィンとの接着性が低下しやすくなる場合がある。
【0044】
本実施形態の接着剤組成物は、接着層(接着性樹脂層)を介して各種材料からなるシート(基材)どうしを積層及び接着した積層物を製造する際に用いる、接着層を形成するための接着剤として有用である。なかでも、各種基材への密着性及び耐熱性に優れた接着性樹脂層を形成することができるので、高速ラミネート用の接着剤として好適である。
【0045】
本実施形態の接着剤組成物は、硬化触媒をさらに含有することが好ましい。硬化触媒を含有させることで、形成する接着性樹脂層(接着層)の耐熱性をさらに向上させることができる。硬化触媒としては、金属触媒やアミン系触媒等を用いることができる。
【0046】
本実施形態の接着剤組成物は、ビュレット構造、イソシアヌレート構造、又はトリメチロールプロパンアダクト構造を有する芳香族多官能イソシアネート化合物及び脂肪族多官能イソシアネート化合物の少なくとも1種をさらに含有することが好ましい。このようなイソシアネート化合物をさらに含有させることで、形成する接着性樹脂層(接着層)の耐熱性をさらに向上させることができる。
【0047】
本実施形態の接着剤組成物は、必要に応じて、ウレタン化伸長時に使用する反応触媒、接着力向上のためのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤等の各種公知の添加剤をさらに含有してもよい。
【0048】
<接着性樹脂層、積層物>
本発明の接着性樹脂層の一実施形態は、前述の接着剤組成物の塗布乾燥物である。本実施形態の接着性樹脂層は、例えば、各種基材等の表面に接着剤組成物を塗布して形成した塗工層を乾燥することで形成することができる。このようにして形成される本実施形態の接着性樹脂層は、各種オレフィン及び金属等の基材への密着性及び耐熱性に優れている。このため、本実施形態の接着性樹脂層は、シートやフィルム等の各種基材どうしを積層及び接着する際の接着層として有用である。
【0049】
また、本発明の積層物の一実施形態は、第1の基材、第2の基材、及び第1の基材と第2の基材の間に配置される、上述の接着性樹脂層を備えるものである。そして、第2の基材が、プラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、又は金属箔である。第1の基材と第2の基材の間に配置される接着性樹脂層は、前述の接着剤組成物の塗布乾燥物であることから、各種オレフィン及び金属等の基材への密着性及び耐熱性に優れている。このため、本実施形態の積層物は、ボイル殺菌等の加熱によっても層間剥離(デラミネーション)しにくい。したがって、本実施形態の積層物は、加熱条件下での使用が想定されるレトルト袋等の高速ラミネート製品を構成するための材料として有用である。さらに、植物由来の原料で形成された第1の基材及び第2の基材を用いることで、より環境に配慮された積層物とすることができる。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0051】
<材料の用意>
表1示す材料を用意した。
【0052】
【0053】
<ポリウレタン樹脂Aの合成(1)>
(合成例A-1)
POL3 380部、数平均分子量300のポリプロピレンエーテルトリオール1モルに無水フタル酸1モルを開環付加したジヒドロキシカルボン酸化合物(製品名「MN-F300」、大日精化工業社製、水酸基価250mgKOH/g、酸価125mgKOH/g)(MN-F300)101.5部、トリメチロールプロパン(TMP、水酸基価:837mgKOH/g)3.37部、トリレンジイソシアネート(TDI)111部、及び酢酸エチル(EA)270.9部を合成容器に入れた。内容物を撹拌しながら適量のオクチル酸第一錫を添加し、90℃で5時間反応させて、ポリウレタン樹脂A-1の溶液(不揮発分70%)を得た。なお、ポリウレタン樹脂A-1のバイオマス度(%)は、63.8%であった。バイオマス度は、ポリウレタン樹脂Aの固形分中のバイオマス成分の含有量(質量%)である。
【0054】
(合成例A-2)
POL3 1,000部、MN-F300 89.4部、TMP8.92部、TDI347部、及びEA531部を合成容器に入れた。内容物を撹拌しながら適量のオクチル酸第一錫を添加し、90℃で3時間反応させて、ウレタンプレポリマーの溶液を得た。1,4-ブタンジオール(1,4-BD)85.3部、ジエチレングリコール(DEG)37部、及び2-メチル-1,3-プロパンジオール(2-MPG)8.98部を添加し、撹拌しながら90℃で1時間反応させて、ポリウレタン樹脂A-2の溶液(不揮発分70%)を得た。
【0055】
(合成例A-3~7)
表2の上段に示す種類及び量の各成分を用いたこと以外は、前述の合成例A-1と同様にして、ポリウレタン樹脂A-3~7の溶液(不揮発分70%)を得た。
【0056】
<ポリウレタン樹脂Bの合成(1)>
(合成例B-1)
TDI174部、POL5 100部、及びPOL7 250部を合成容器に入れた。内容物を撹拌しながら90℃で2時間反応させた後、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)250部、POL5 100部、及びPOL7 250部を添加し、撹拌しながら90℃で1時間反応させた。TMP22.3部をさらに添加した後、撹拌しながら90℃で1時間反応させた。EA287部を添加して希釈し、ポリウレタン樹脂B-1の溶液(不揮発分80%)を得た。また、ポリウレタン樹脂B-1のNCO含有率(%)は4.4%であった。NCO%は、JIS K1603に準拠して測定した値である。
【0057】
(合成例B-2)
表2の上段に示す種類及び量の各成分を用いたこと以外は、前述の合成例B-1と同様にして、ポリウレタン樹脂B-2の溶液(不揮発分75%)を得た。
【0058】
【0059】
<ポリウレタン樹脂Cの合成>
(合成例C-1)
POL7 600部、MN-F300 161部、TMP5.35部、及びTDI177部を合成容器に入れた。内容物を撹拌しながら適量のオクチル酸第一錫を添加し、90℃で5時間反応させた。EA428部を添加して希釈し、水酸基価が9.7mgKOH/gのポリウレタン樹脂C-1の溶液(不揮発分75%)を得た。
【0060】
<ポリウレタン樹脂Aの合成(2)>
(合成例A-8~13)
表3に示す種類及び量の各成分を用いたこと以外は、前述の合成例A-1と同様にして、ポリウレタン樹脂A-8~13の溶液(不揮発分70%)を得た。
【0061】
<ポリウレタン樹脂Bの合成(2)>
(合成例B-3)
TDI62.5部、MDI210部、POL7 600部、及びTMP16.1部を合成容器に入れた。内容物を撹拌しながら90℃で5時間反応させた後、EA222部を添加して希釈し、ポリウレタン樹脂B-3の溶液(不揮発分80%)を得た。
【0062】
【0063】
<接着剤組成物の調製>
(実施例1~8、比較例1~7)
調製したポリウレタン樹脂の溶液を表4に示す組み合わせで配合し、二液硬化型の接着剤組成物を調製した。具体的には、ポリウレタン樹脂Aを主剤とし、ポリウレタン樹脂Bを硬化剤として、ポリウレタン樹脂A中の水酸基(OH)に対する、ポリウレタン樹脂B中のイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH(モル比))が表4に示す値となるように、各溶液を配合した。その後、EAを添加して希釈し、固形分30%である接着剤組成物を調製した。
【0064】
【0065】
<評価>
調製した接着剤組成物について、(1)接着強度試験(PP密着性)、(2)接着強度試験(金属密着性)、(3)耐熱性、(4)NCO減衰率、及び(5)濡れ性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0066】
(1)接着強度試験(PP密着性)
調製した接着剤組成物を延伸ポリプロピレンフィルム(コロナ処理済、厚さ25μm)上に固形樹脂分3.0g/m-dryとなるように塗布した。ドライヤーを用いて希釈溶剤を乾燥させた後、未延伸ポリプロピレンフィルム(コロナ処理済、厚さ30μm)を載置し、ニップロール(ニップ温度40℃、ロール圧3MPa)を通してラミネートした。その後、40℃で2日間エージングしてラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムから切り出した15mm幅の試験片を評価用サンプルとした。この評価用サンプルにつき、引張試験機(型名「EZ-S」、島津製作所社製)を使用し、25℃、65%RHの環境下、引張速度300mm/分でT形剥離強度(N/15mm)を測定するとともに、以下に示す評価基準にしたがってPP密着性を評価した。
◎:T形剥離強度が2.3N/15mm以上であった。
○:T形剥離強度が1.9N/15mm以上2.3N/15mm未満であった。
△:T形剥離強度が1.7N/15mm以上1.9N/15mm未満であった。
×:T形剥離強度が1.7N/15mm未満であった。
【0067】
(2)接着強度試験(金属密着性)
調製した接着剤組成物を延伸ポリプロピレンフィルム(コロナ処理済、厚さ25μm)上に固形樹脂分3.0g/m-dryとなるように塗布した。ドライヤーを用いて希釈溶剤を乾燥させた後、金属蒸着した未延伸ポリプロピレンフィルム(コロナ処理済、厚さ30μm)を載置し、ニップロール(ニップ温度40℃、ロール圧3MPa)を通してラミネートした。その後、40℃で2日間エージングしてラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムから切り出した15mm幅の試験片を評価用サンプルとした。この評価用サンプルにつき、引張試験機(型名「EZ-S」、島津製作所社製)を使用し、25℃、65%RHの環境下、引張速度300mm/分でT形剥離強度(N/15mm)を測定するとともに、以下に示す評価基準にしたがって金属密着性を評価した。
◎:T形剥離強度が0.9N/15mm以上であった。
○:T形剥離強度が0.5N/15mm以上0.9N/15mm未満であった。
×:T形剥離強度が0.5N/15mm未満であった。
【0068】
(3)耐熱性
調製した接着剤組成物を延伸ナイロンフィルム(コロナ処理済、厚さ15μm)上に固形樹脂分3.0g/m-dryとなるように塗布した。ドライヤーを用いて希釈溶剤を乾燥させた後、未延伸ポリエチレンシーラントフィルム(コロナ処理済、厚さ50μm)を載置し、ニップロール(ニップ温度40℃、ロール圧3MPa)を通してラミネートした。その後、40℃で2日間エージングしてラミネートフィルムを得た。得られた各ラミネートフィルムの未延伸ポリエチレンシーラントフィルム面側同士を向い合わせるとともに、1cm幅のシールバーを使用し、160℃、0.1MPa、1秒間のシール条件で三方シール製袋して、内辺8cm×12.5cmサイズの試料袋を作製した。充填口から試料袋内に水100gを充填した後、充填口をシールし、内容物充填試料袋を10袋ずつ作製した。滅菌試験機(型名「SR-240」、トミー精工社製)を使用して、内容物充填試料袋を98℃で30分間ボイル滅菌処理する耐熱性試験を行った。耐熱性試験後の試料袋を構成するラミネートフィルムにおける剥離による浮きの状況を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって耐熱性を評価した。
○:10袋のすべてに浮きが認められなかった。
×:10袋のうち1袋以上に浮きが認められた。
【0069】
(4)NCO減衰率
調製した接着剤組成物を延伸ポリプロピレンフィルム(コロナ処理済、厚さ25μm)上に固形樹脂分3.0g/m-dryとなるように塗布した。ドライヤーを用いて希釈溶剤を乾燥させた後、延伸ポリプロピレンフィルム(コロナ処理済、厚さ25μm)を載置し、ニップロール(ニップ温度40℃、ロール圧3MPa)を通してラミネートし、ラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムを40℃、5%RHの条件下でエージングしつつ、フーリエ変換赤外分光光度計(製品名「FT/IR-4600」、日本分光社製)を使用して経時的にIR測定を実施し、イソシアネート基のピーク(2,260cm-2付近)からNCO減衰率を算出した。40℃、5%RHの条件下で80時間までIR測定を実施した後、25℃、65%RHの条件下で3日間放置して完全に硬化させた。完全に硬化した状態のNCO減衰率を基準(100%)とする経過時間毎のNCO減衰率を算出し、以下に示す評価基準にしたがってNCO減衰率を評価した。NCO減衰率が高いほど、基材に貼り合わせた後の硬化時間が短いので、エージングに要する時間を短縮することができる。
◎:24時間後のNCO減衰率が81%以上であった。
○:24時間後のNCO減衰率が65%以上81%未満であった。
×:24時間後のNCO減衰率が65%未満であった。
【0070】
(5)濡れ性
接着剤組成物の流動性や基材に対する濡れ性がさほど良好でない場合、ロールtoロールの加工条件では瞬間的な熱圧着となるため、気泡巻き込み不良が生じやすくなる。ラミネート後の外観不良の有無を以下の手順で確認することで、接着剤組成物の濡れ性を評価した。調製した接着剤組成物を延伸ポリプロピレンフィルム(コロナ処理済、厚さ25μm)上に固形樹脂分3.0g/m-dryとなるように塗布した。ドライヤーを用いて希釈溶剤を乾燥させた後、延伸ポリプロピレンフィルム(コロナ処理済、厚さ25μm)を載置し、ニップロール(ニップ温度40℃、ロール圧3MPa)を通してラミネートし、ラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムの外観を観察し、以下に示す評価基準にしたがって濡れ性を評価した。
○:気泡巻き込み不良が認められなかった。
×:気泡巻き込み不良が認められた。
【0071】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の接着剤組成物は、各種積層物を構成する接着層を形成するための材料として有用である。また、基材に対する濡れ性が高いので、塗布量が少なくて済む効果も期待される。
【要約】      (修正有)
【課題】基材に対する濡れ性が良好であるとともに、これらの基材への密着性及び耐熱性に優れた接着性樹脂層である接着層を速やかに形成しうる接着剤組成物を提供する。
【解決手段】末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂Aと、末端にイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂Bと、有機溶剤とを含有し、ポリウレタン樹脂Aが、式(1)で表されるポリオール(a)に由来する構成単位を有し、ポリウレタン樹脂Bが、式(2)で表されるポリオール(c)に由来する構成単位を有し、ポリオール(a)とポリオール(c)の質量比が、(a)/(c)=70/30~30/70である接着剤組成物。

(nは、ポリオール(a)の平均分子量が400~3,000となる数を示し、mは、ポリオール(c)平均分子量が300~2,000となる数を示す)
【選択図】なし